説明

自動水栓

【課題】停電時にも吐水可能な自動水栓を提供する。
【解決手段】電磁弁4のON,OFF制御により吐水管2aから自動吐水させる自動水栓2の自動吐水管路3において、電磁弁4の上流側の分岐部3aから分岐して、手動でON,OFFさせる手動弁9を有し吐水管2aに連通する手動吐水管路8を設けるとともに、分岐部3aの上流側に定流量弁10を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電時でも吐水させることのできる自動水栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているような吐水装置が存在し、この吐水装置では、水流路と湯流路の上流に定流量弁が設けられており、流路には2つの電磁弁が設けられて、一方の電磁弁を開けると自動水栓から水が出て、他方の電磁弁を開けると自動水栓から湯が出るように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−270367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されている吐水装置のように、電磁弁で流路をON,OFFさせるものは通常用いられる構造であるが、停電時には電磁弁を作動させることができず、水栓が使用できなくなるという問題点があった。かといって、このような吐水装置に、手動でON,OFFさせる弁を適用すると自動水栓として成立せず、手動弁を用いることはできないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、停電時でも吐水させることのできる自動水栓の提供を目的とし、この目的の少なくとも一部を達成するために以下の手段を採った。
本発明は、電磁弁のON,OFF制御により吐水管から自動吐水させる自動水栓の自動吐水管路において、
前記電磁弁の上流側の分岐部から分岐して、手動でON,OFFさせる手動弁を有し前記吐水管に連通する手動吐水管路を設けるとともに、
前記分岐部の上流側に定流量弁を設けたことを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
電磁弁を有する自動吐水管路から分岐して、手動弁を有する手動吐水管路を設けているため、停電時で電磁弁が作動しない場合でも、手動弁を開けて吐水管から吐水させて自動水栓を使用することができるものとなる。
また、上流側に定流量弁が設けられているため、自動吐水から手動吐水に切り替えた後でも一定流量の吐水が得られ、流量が多すぎて水が飛び散ることもなく、また、吐水が少なすぎることもなく、手動で吐水させる場合にも自動吐水の場合と同じ吐水感が得られ、手を快適に洗うことができる。
【0007】
また、本発明の自動水栓において、前記吐水管の背面に、前記手動弁をON,OFF操作するための開閉取っ手を設けた構成とすることもできる。
こうすれば、吐水管の背面の目立たない所に設けられた開閉取っ手を引き上げる操作のみで、何ら流量調整をすることなく、容易に吐水管から吐水させることができるものとなる。
【0008】
また、本発明の自動水栓において、前記定流量弁の上流側に減圧弁を設けた構成とすることもできる。
こうすれば、高水圧下では減圧し、低水圧下では流量を一定にすることができ、水圧変動の大きい高範囲水圧下でも、水圧変動による流量変化を調整して一定流量を維持することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】洗面器に取り付けられた自動水栓の斜視構成図である。
【図2】自動水栓を構成する部材の概略配置構成図である。
【図3】手動弁の概略拡大構成図である。
【図4】手動弁を開けた状態の作用説明図である。
【図5】手動弁を閉じた状態の作用説明図である。
【図6】定流量弁の拡大概略構成図である。
【図7】定流量弁の通常時の作用説明図である。
【図8】入水流量が多い場合の定流量弁の作用説明図である。
【図9】減圧弁の拡大概略構成図である。
【図10】減圧弁の通常時の作用説明である。
【図11】高水圧時の減圧弁の作用説明図である。
【図12】第2実施例の自動水栓の構成部材の概略配置構成図である。
【図13】第2実施例の変更例の自動水栓の構成部材の概略配置構成図である。
【図14】自動水栓の構成部材を1つのヒーターユニット内に設けた場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、洗面化粧台の洗面器1に自動水栓2を取り付けた状態の要部斜視構成図である。
洗面化粧台のミラーキャビネットの下方にはカウンターが設置され、このカウンターには洗面器1が設けられており、洗面器1の後部の取付面1aに、自動水栓2の吐水管2aが台座2cから逆U字状に立設されて、吐水管2aの先端には、洗面器1内に向かって吐水させる吐水口2bが形成されている。
この吐水口2b付近には、吐水口2bの下方に人の手が挿入された時に人の手を検知する図示しない人体検知センサが設けられている。
【0012】
図2は、自動水栓2を構成する部材の概略配置構成図である。
図2に示すように、吐水管2aには自動吐水管路3が接続されており、自動吐水管路3内には、自動吐水管路3を開閉する電磁弁4が設けられている。
この電磁弁4は、制御部5と駆動信号線6で接続されている。また、制御部5には、前述した図示しない人体検知センサからの信号が伝達されるセンサ信号線7が接続されている。
この自動水栓2では、吐水口2bの下方に人の手が挿入されると、人体検知センサによりその状態を検知して、制御部5を介して電磁弁4に駆動信号が送られて電磁弁4が開けられ、これにより自動吐水管路3を通って吐水管2aの吐水口2bから自動吐水が行われるものであり、吐水口2bの下方から手が引き出されると、制御部5は電磁弁4をOFFして、吐水口2bからの吐水を停止させるように構成されている。
【0013】
本例における自動水栓2では、自動吐水管路3の電磁弁4の上流側の分岐部3aから分岐して手動吐水管路8が設けられ、手動吐水管路8は、その下流端が、自動吐水管路3の電磁弁4の下流側のT字管部3bに接続されている。この手動吐水管路8内には、手動でON,OFFできる手動弁9が設けられている。
また、自動吐水管路3の分岐部3aの上流側には、定流量弁10が設けられている。
【0014】
図3は、手動弁9の概略構成図であり、手動弁9は、弁ケース91に入口側開口91aと出口側開口91bが形成されており、入口側開口91aには手動吐水管路8の上流側8aが、出口側開口91bには手動吐水管路8の下流側8bがそれぞれ接続されるものである。
入口側開口91a側の弁ケース91内には、上端の揺動軸92を中心として左右方向に揺動可能な皿型状の弁体93が配置されており、この弁体93の上下方向中央部には連結部94が設けられ、連結部94にはワイヤー95が接続されている。
【0015】
このワイヤー95は、図1および図4,図5に示すように、前記吐水管2aの背面側の台座2cに設けられている開閉取っ手2dに接続されている。
開閉取っ手2dは、台座2cを貫通して台座2cから上方へ延び、上端が鉤状に曲げられている。
また、ワイヤー95の途中には保持球部97が設けられており、この保持球部97を所定位置に保持するために、くの字状の弾性材96,96を左右側に有する保持機構部が所定位置に配置されて、左右の弾性材96,96間に弾性孔96aが形成されている。
【0016】
停電時またはビルの集中管理室で元電源がOFFされたような場合に、図4のように、吐水管2aの背面に設けられている開閉取っ手2dを上方へ引き上げると、弁体93が揺動軸92を中心として図示右方向へ開き、これにより入口側開口91aが開かれて、手動吐水管路8内に水が通り、水は吐水管2aの吐水口2bから吐水されることとなり、停電時においても開閉取っ手2dを上方へ引き上げる操作のみで手動弁9を開状態として、吐水口2bから良好に吐水させて自動水栓2を使用することができる。
なお、この開状態においては、ワイヤー95に設けられた保持球部97が、弾性孔96aを通過して左右の弾性材96,96上に保持されることとなり、良好に手動弁9の開状態が維持されて、吐水口2bからの吐水が連続して行われるものである。
【0017】
この状態から、図5のように、開閉取っ手2dを下方側へ押し込むことにより、保持球部97が弾性孔96aを通過して左右の弾性材96,96の下方側に移動し、弁体93は入口側開口91aを閉じ、これにより手動吐水管路8は閉ざされ、吐水口2bからの吐水が停止されるものである。
【0018】
次に、図6に示すものは、定流量弁10の概略構成図であり、この定流量弁10はガバナ式のものであり、弁ケース10a内に形成された流路10bの外周側に、オーリング10cが配置されて構成されている。
通常時には、図7のように、流路10bは開放されており、この流路10bを通り一定流量の水が自動吐水管路3に流されている。
入水流量が多い時には、図8に示すように、オーリング10cが膨らみ、これにより流路10bが塞がれて、下流側への出水量が自動調整されるものである。
【0019】
即ち、この定流量弁10は、下流側への流量を常に一定に保つ機能を備えたものであり、他に定流量弁10として、ダイヤフラム式の定流量弁を設けて構成しても良く、更には、ダイヤフラム式の定流量弁と図6〜図8に示すガバナ式の定流量弁を併用して設けることもできる。
この定流量弁10を設けたことにより、自動吐水管路3あるいは手動吐水管路8の何れにも一定流量の水が流れるため、手動弁9を開けて手動吐水管路8を通して吐水口2bから手動吐水させた場合と、電磁弁4のON,OFF制御により自動吐水管路3を通して吐水口2bから自動吐水させた場合とで水量が変わることはなく、水量が多すぎて水が飛び散ることもなく、また、水量が少なすぎることもなく、手動で吐水させる場合にも自動吐水の場合と同じ吐水感が得られ、手を快適に洗うことができる。
【0020】
このように定流量弁10が分岐部3aの上流側に設けられているため、手動弁9には流量調整機能を備える必要はなく、手動弁9は単純に開閉できる構造のものであれば良く、開閉取っ手2dを引き上げたり押し下げたりする操作で容易に手動弁9を開閉させて、手動で吐水口2bから吐水させることができるものである。
なお、ワイヤー95を用いた構成であれば、棒状のものに比べてワイヤー95の配置レイアウトを自由に設定することができるものとなり、洗面器1の裏側に良好にワイヤー95を配置させることが可能で、停電時には手動で手動吐水させることのできる自動水栓2を容易に洗面器1に設置できるものである。
【0021】
なお、電磁弁4に自動吐水管路3の一部を一体化させ、さらに、手動弁9を備えた手動吐水管路8の一部を一体化させて、全体をユニット化して形成することもでき、このように電磁弁4と手動弁9と自動吐水管路3の一部と手動吐水管路8の一部を一体化させたユニットを用いれば、配管構成をコンパクト化させることができ、洗面器1の裏側あるいは下方側に省スペースで設置することが可能となる。
【0022】
なお、定流量弁10の上流側に減圧弁11を設けて構成することもでき、さらには、減圧弁11と定流量弁10とを一体化させたものを分岐部3aの上流側に設けても良い。
減圧弁11は、例えば図9に拡大して示すような構造のものである。
即ち、図9において、減圧弁11は、内部の流路11a内に弁口11bが形成されており、この弁口11bを開閉する弁体12aが配置されて、弁体12aの中心部にはロッド12が立設され、ロッド12には、弁体12aの上方に移動弁12bが設けられ、この移動弁12bは、左右に垂設されたガイド壁11c,11cに沿って上下動できるように構成され、ロッド12の上端外周にはバネ13が配置されている。
【0023】
この減圧弁11は、上流側の高い水圧を下流側において低圧に下げ、上流側の圧力変動があっても水圧を一定に自動調整することができるものであり、通常時では、図10に示すように、バネ13の付勢力によりロッド12は下方側へ付勢され、弁体12aは下方側へ移動されて弁口11bは開かれた状態となっているが、上流側が高水圧の時には、図11に示すように、移動弁12bが水圧によりバネ13の付勢力に抗して上方へ移動し、これにより弁体12aが弁口11bを閉ざして、下流側の水圧を低圧にすることができるものである。
【0024】
減圧弁11を定流量弁10の上流側に配置することで、高水圧をカットし、使用水圧範囲を限定的にすることが可能であり、例えば、減圧弁11を介して使用水圧範囲を0.1〜0.4MPaにした場合、流量のバラツキはかなり狭くなるため、定流量弁10により1300mL/min±5%の流量とすることができ、自動吐水管路3および手動吐水管路8内を流れる水の流量を毎分1.5リットル以下にすることができ、節水効果が得られるものとなる。
なお、減圧弁11を設けない場合は、定流量弁10を流れる流量は1300mL/min±15%となり、下流側へ流れる水の流量のバラツキが多くなり、吐水口2bから吐水される吐水のバラツキが大で、手洗い感を損なうこととなる。
【実施例2】
【0025】
次に、図12に概略図で示す自動水栓2においては、電磁弁4の下流側の自動吐水管路3内にヒーター14を設けたものであり、その他の構成は図2の第1実施例のものと同様であるため、同一部材については同一符号を付して、その説明は省略する。
この図12では、ヒーター14へ供給する電力を制御部5で制御することにより、自動吐水管路3内の水温を制御して、吐水口2bから適温の湯を吐出させるものである。即ち、制御部5でヒーター14への通電を制御して、吐水口2bから吐出させる湯温を決めるものである。
なお、この図12に示す自動水栓2においても、定流量弁10および減圧弁11を設けておけば、ヒーター14により加熱した時の水温がばらつかないため、手洗い時の温感は良くなる。また、ヒーター14の発熱負担が少なくなり、使用電気量も少なく、経済的なものとなる。即ち、流量が多くなるとヒーター14の発熱量を上げる必要があるため、電気代が多くかかることとなるのである。
【0026】
通常は、電磁弁4が開き、ヒーター14に通電され、自動吐水管路3内を通して吐水口2bから湯が吐出されるが、吐水口2bから水を出したい場合は、一旦ヒーター14をOFFにする必要がある。しかし、ヒーター14をOFFにすると、次に吐水口2bから湯を出す場合に、湯になるまでに時間がかかり、直ぐに湯が使えないという問題が生じる。そこで、直ぐに水を使いたいような場合に、手動弁9を開状態にして、手動吐水管路8を通し、直ちに吐水口2bから水を吐水させることができるものである。
【0027】
この手動弁9を開けて水を吐水させる場合は、手動弁9が開状態であることを手動弁用信号線19を介して制御部5に伝えることにより、制御部5は、吐水口2bの近傍に設けられている人体検知センサが人体を検知しても電磁弁4が開かないように制御するとともに、電磁弁4をOFF状態に維持し、またヒーター14をOFF状態に維持する制御を行う。
この図12の構造においても、停電時には手動弁9を開けて吐水口2bから吐水させることができるものである。
【0028】
次に、図13で示すものは第2実施例の変更例であり、図13では、ヒーター14をタンク15内に設けて、タンク15内で湯を沸かすように構成したものであり、このタンク15を備えた自動吐水管路3を迂回して、電磁弁4の下流側からバイパス状に水管路16を設け、水管路16の下流端を、手動弁9の下流の手動吐水管路8に接続し、更に下流側のT字管部3bの位置にサーモバルブ18を配置したものである。
なお、水管路16内には逆止弁17が設けられている。
【0029】
このような構成では、タンク15内の高温の湯と、水管路16を通る水とをサーモバルブ18で混合して適温の湯とし、この適温の湯を吐水口2bから吐出させることができるものであり、吐水口2bからの出湯量を多くすることが可能である。また、タンク15内では高温の湯を作れば良いため、ヒーター14は2.5キロワット程度のフルパワーでON状態とすれば良く、ヒーター14への通電制御は不要なものとなる。
このような構成においても、停電時には手動弁9を開けて吐水口2bから良好に吐水させることができるものであり、また、直ぐに水を使いたいような場合にも、手動弁9を開けて吐水口2bから水を吐水させることができ、この場合は電磁弁4およびヒーター14をOFF状態に維持する制御を行う。
また、ヒーター14とタンク15は瞬間式のヒーターユニットとしても良い。
【0030】
次に、図14で示すものは、図13における自動吐水管路3,手動吐水管路8および、それらの管路内に配置される電磁弁4,定流量弁10,手動弁9および制御部5を、全てヒーターユニット20内にユニット化したものであり、このユニット化したヒーターユニット20をコンパクトに洗面器1の裏側等に設置できるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 洗面器
2 自動水栓
2a 吐水管
2b 吐水口
2c 台座
3 自動吐水管路
3a 分岐部
3b T字管部
4 電磁弁
5 制御部
6 駆動信号線
7 センサ信号線
8 手動吐水管路
9 手動弁
10 定流量弁
10a 弁ケース
10b 流路
10c オーリング
11 減圧弁
11a 流路
11b 弁口
12 ロッド
12a 弁体
12b 移動弁
13 バネ
14 ヒーター
15 タンク
16 水管路
17 逆止弁
18 サーモバルブ
19 手動弁用信号線
91 弁ケース
91a 入口側開口
91b 出口側開口
92 揺動軸
93 弁体
95 ワイヤー
96 弾性材
96a 弾性孔
97 保持球部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁のON,OFF制御により吐水管から自動吐水させる自動水栓の自動吐水管路において、
前記電磁弁の上流側の分岐部から分岐して、手動でON,OFFさせる手動弁を有し前記吐水管に連通する手動吐水管路を設けるとともに、
前記分岐部の上流側に定流量弁を設けた
ことを特徴とする自動水栓。
【請求項2】
前記吐水管の背面に、前記手動弁をON,OFF操作するための開閉取っ手を設けたことを特徴とする請求項1に記載の自動水栓。
【請求項3】
前記定流量弁の上流側に減圧弁を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の自動水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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