説明

自動無段変速装置

自動無段変速装置には、駆動軸、該駆動軸により回転可能なドライブディスク、及び該ドライブディスクにより回転可能なクラッチホィール組立体を含む。2つの平行なガイドスロットを駆動軸に設ける。切欠部を有する偏心板を、駆動軸上にスリーブ嵌合する。圧縮可能な弾性調節機構を、切欠部と駆動軸との間に配置する。ドライブディスクを、ベアリングを介して偏心板上に設置する。偏心板を、駆動軸の軸に対してオフセットする。自動無段変速装置は、負荷に従い、弾性調節機構を圧縮又は開放することができる。偏心板と駆動軸との間の偏心量を、従って、調節でき、偏心板によりドライブディスクを駆動して、運動させられる。このように、ドライブディスクの偏心量を、手動操作せずに調節できる。本変速装置は、単純な構造を備え、簡単に操作できる。本変速装置は、自動的に変速比を調節できる。したがって、コスト及び故障率を、効率的に減少できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して変速装置に関し、特には自動無段変速装置に関する。
【背景技術】
【0002】
可変変速装置は、自転車、電気自転車、自動車、布巻機と紙巻機で広く使用されている。これらの可変変速装置では、一般的にギヤ可変変速装置構造又は偏心クラッチ構造を使用している。ギヤ可変変速装置では、異なる大きさのギヤを用いてギヤ変速装置を介してギヤシフトを実現する。この変速方法では、ギヤの衝突によって、大きなノイズや摩擦が発生する。そのため長期間、高効率的に使用するのには適さない。
【0003】
中国特許第92105836.5号では、無段変速装置の摺動ブロック偏心クラッチについて開示している。図7及び図8で示すように、無段変速装置4には、固定管41、支持管42、シャフト425、クランプ431、432、ばねスプレッダ433、摺動ロッド44、U字型作動ラック45、ワイヤ結着ボルト451、連結部品452、ボールベアリング453、制御部品454、455及び鋼線の2端部46、461を含む。運転時には、ユーザが制御ハンドルで鋼線の端部46又は461を引く。これにより、次に制御部品455を引き、制御部品454、ボールベアリング453、連結部品452、ワイヤ結着ボルト451、の他クランプ431、432を作動させ、クランプ431、432を摺動ロッド44に沿って摺動させ、支持管42を溝付き板1に連結し、それにより固定管41とクラッチ部品2、2aの相対運動で、偏心度を調節して、変速装置を制御する。この種の変速装置は、複雑な構造をしており、手動運転を必要とする。この種の変速装置は、動力入力に必要な幾つかの条件を満足できず、負荷に従って可変比を調節できない。例えば、布巻機のリール台が連続的に布を巻着する際には、負荷が増加する。
【発明の開示】
【0004】
現在の無段変速技術が直面する技術的問題を解決可能な変速装置を提供する必要性があり、構造が単純で、偏心量及び可変比を自動的に調節できる自動無段変速装置を提供する必要性がある。
【0005】
本出願の1態様によれば、自動無段変速装置には、駆動軸、該駆動軸で駆動するドライブディスク、及び該ドライブディスクで駆動するクラッチホィール組立体を含む。駆動軸の外面には、2つの平行なガイドスロットを備える。駆動軸を、偏心板の切欠部に、ガイドスロットの位置で受容する。偏心板の切欠部により、ガイドスロットに当接し、偏心板をガイドスロットに平行にのみ移動可能にする2平行部分を画定する。圧縮可能な弾性調節機構を、偏心板の内側と駆動軸の外面との間に配置する。ドライブディスクを、ベアリングを介して偏心板に実装する。偏心板は、弾性調節機構で調節されつつ、駆動軸の軸に向かい垂直方向に偏心運動を行い、ドライブディスクを駆動して、対応する偏心運動を行わせる。偏心板の切欠部で、駆動軸の外面と嵌合する平行部分の端部間に延在する弧部分を更に画定する。
【0006】
1実施例では、弾性調節機構をばね又はゴムの形とし、偏心板の内側と駆動軸の外面との間に配置する。
【0007】
別の実施例では、弾性調節機構を、駆動軸に設けたチャンバ、及び偏心板に連結したピストンの形とし、該チャンバには気体又は液体を所定の圧力で充填する。
【0008】
ドライブディスクの最大偏心量を、ベアリングの内径と駆動軸の直径との差の半分とする。
【0009】
自動無段変速装置により、偏心板及び駆動軸の偏心量を、圧縮可能な弾性調節機構に作用する負荷に従い自動的に調節することができ、偏心板によりドライブディスクを駆動して、ドライブディスクの偏心量を調節する運動を行うことができる。偏心量を手動で調節する必要はない。その結果、自動可変比となり、構造が単純となり、コストが安く、故障率が低く、操作が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本出願で開示する自動無段変速装置に関する特定の実施例について、次に添付図を参照して例証として記述する。
【0011】
図1-6で示すように、本出願の1実施例による自動無段変速装置には、駆動軸10、該駆動軸10にスリーブ嵌合する偏心板20、偏心板20と駆動軸10との間に備えた弾性調節機構30、ベアリング50を介して偏心板20に実装するドライブディスク、及び該ドライブディスクにより駆動するクラッチホィール組立体を含む。ドライブディスク及びクラッチホィール組立体については、背景技術で開示した構造に限定せず、他のクラッチ構造のものであってもよい。
【0012】
図1及び図2で示すように、駆動軸10の外面には、2つの平行なガイドスロット11を備えてもよい。図3で示すように、偏心板20を、該駆動軸10と協働する切欠部21を有する略C字型とする。切欠部21には、2ガイドスロット11と平行係合する2つの平行な部分22、及び該2平行部分22の端部間に延在する弧部分23を含んでもよい。偏心板20を、駆動軸10にスリーブ嵌合させると、偏心板20の平行部分22が、駆動軸10のガイドスロット11に当接し、強制的に偏心板20をガイドスロット11に対して平行方向にのみ移動させるが、駆動軸10に関して回転可能には移動させない。
【0013】
図4及び図5で示すように、弾性調節機構30を、偏心板20と駆動軸10との間に配置する。図示した実施例によれば、弾性調節機構30を、ばね31の形にしてもよい。また、例えばゴム又は板ばね等弾性物体の形にしてもよい。偏心板20と駆動軸10との間にばね31を容易に介設させるために、第1凹部24を、偏心板20の内側に形成してもよく、第2凹部12を、第1凹部24に対向する位置で駆動軸に形成してもよい。ばね31の一端部を、第1凹部24内部で受容でき、ばね31の他端部を、第2凹部12で受容して、ばねの変位を防止することができる。
【0014】
図4で示すように、ドライブディスクのベアリング50の内輪を、偏心板20にスリーブ嵌合する。ばね31の作用で、偏心板20は最大偏心位置となり、ドライブディスクは最大偏心状態となる。駆動軸10が回転すると、ドライブディスクは駆動軸10と共に回転する。ドライブディスクの最大偏心量は、ベアリング50の内径と駆動軸10の直径との差の半分となる。言い換えると、自動無段変速装置の最大偏心量によって、本出願の変速装置の、最小可変比、最大回転速度及び最小トルクが決まる。
【0015】
本出願で開示する自動無段変速装置は、主に、電気自転車や布巻機等、負荷変化を伴う稼働条件に対して使用することができる。弾性調節機構に作用する負荷が、特定の値未満即ち、本実施例によれば、ばね31の剛性より小さい場合、負荷はばね31を圧縮する程大きくはなく、ドライブディスクは最大偏心量を維持する。ばね31に作用する負荷が、この特定値を超えた場合、ばね31を圧縮し、偏心板20が駆動軸10に向かい摺動する。これにより、ドライブディスクの偏心量が減少する。ドライブディスクの偏心量が減少すると、自動無段変速装置では可変比が増大し、回転速度が低下し、トルクが増大する。入力動力を一定に保った場合、自動無段変速装置の出力回転速度及びトルクを、負荷が変化すると、自動的に調節することができる。
【0016】
図5で示すように、偏心板20の内側の弧部分23がばね31を圧縮して、駆動軸10の外面に接触すると、ドライブディスクは、自動無段変速装置が最小回転速度、最大可変比及び最大トルク状態となる最小偏心位置となる。従って、ガイドスロットと平行な偏心板20の中心線での厚みで、ドライブディスクの最小偏心量が決まる。
【0017】
図6では、自動無段変速装置の弾性調節機構30の第2実施例を示す。該実施例では、駆動軸10に設けたチャンバ13及び偏心板20に固定したピストン25を含む。ピストン25を、気体又は液体を所定の圧力で充填したチャンバ13内で、摺動可能にする。当然ながら、代わりにチャンバ13を、偏心板20に設けてもよく、ピストン25を駆動軸10に固定してもよい。負荷が、チャンバ13内部の気体又は液体圧力より小さい場合、ピストン25は最遠端にあり、偏心板20は最大偏心位置にある。換言すると、ドライブディスクは、最大偏心位置にある。負荷が、気体又は液体圧力より大きい場合、該負荷がピストン25を押圧し、それにより気体又は液体を加圧して、偏心板20の偏心量を減少させる。ドライブディスクの偏心量が減少すると、可変比及びトルクが増大し、回転速度が低下し、その結果、自動的な回転速度及びトルクの出力を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本出願の1実施例による自動無段変速装置の駆動軸の正面端面図である。
【図2】図1の駆動軸の部分側面図である。
【図3】本出願の実施例による自動無段変速装置の偏心板の正面端面図である。
【図4】ベアリング内での駆動軸、偏心板の組立体について、自動無段変速装置を最大偏心状態にして、これを示す。
【図5】自動無段変速装置が最小偏心状態での、駆動軸及び偏心板を示す。
【図6】本出願の実施例による自動無段変速装置の弾性調節機構を示す。
【図7】先行技術の無段変速装置の断面図である。
【図8】図7の無段変速装置のギヤシフト機構である。
【符号の説明】
【0019】
1 溝付き板
2、2a クラッチ部品
4 無段変速装置
10 駆動軸
11 ガイドスロット
12 第2凹部
13 チャンバ
20 偏心板
21 切欠部
22 平行部分
23 弧部分
24 第1凹部
25 ピストン
30 弾性調整機構
31 ばね
41 固定管
42 支持管
44 摺動ロッド
45 作動ラック
425 シャフト
431、432クランプ
433 ばねスプレッダ
451 ワイヤ結着ボルト
453 ボールベアリング
454、455制御部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸、該駆動軸で駆動するドライブディスク、及び該ドライブディスクで駆動するクラッチホィール組立体を備える自動無段変速装置であって、前記駆動軸の外面には、2つの平行なガイドスロットを設けており、前記駆動軸を、偏心板の切欠部に、前記ガイドスロットの位置で受容し、前記偏心板の前記切欠部により、該ガイドスロットに当接し、前記偏心板を該ガイドスロットに平行にのみ移動可能にする2平行部分を画定し、圧縮可能な弾性調節機構を、前記偏心板の内側と前記駆動軸の外面との間に配置し、前記ドライブディスクを、ベアリングを介して前記偏心板に実装し、それにより前記偏心板は、前記弾性調節機構で調節されつつ、前記駆動軸の軸に向かい垂直方向に偏心運動を行い、前記ドライブディスクを駆動して、対応する偏心運動を行わせること、を特徴とする自動無段変速装置。
【請求項2】
前記偏心板の前記切欠部で、前記駆動軸の外面と嵌合する前記平行部分の端部間に延在する弧部分を更に画定すること、を特徴とする請求項1に記載の自動無段変速装置。
【請求項3】
前記弾性調節機構をばね又はゴムの形とし、前記偏心板の内側と前記駆動軸の外面との間に配置すること、を特徴とする請求項1に記載の自動無段変速装置。
【請求項4】
前記偏心板の内側には第1凹部を設け、前記駆動軸には、該第1凹部と対向して第2凹部を設け、前記ばね又はゴムを、前記第1及び第2凹部で受容すること、を特徴とする請求項3に記載の自動無段変速装置。
【請求項5】
前記弾性調節機構を、前記駆動軸に設けたチャンバ、及び前記偏心板に連結したピストンの形とし、該チャンバには気体又は液体を所定の圧力で充填すること、を特徴とする請求項1に記載の自動無段変速装置。
【請求項6】
前記弾性調節機構を、前記偏心板に設けたチャンバ、及び前記駆動軸に連結したピストンの形とし、該チャンバには気体又は液体を所定の圧力で充填すること、を特徴とする請求項1に記載の自動無段変速装置。
【請求項7】
前記ドライブディスクの最大偏心量を、前記ベアリングの内径と前記駆動軸の直径との差の半分とすること、を特徴とする請求項1に記載の自動無段変速装置。
【請求項8】
前記ドライブディスクの最小偏心量を、前記ガイドスロットと平行する中心線での前記偏心板の厚みとすること、を特徴とする請求項7に記載の自動無段変速装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−504996(P2009−504996A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525365(P2008−525365)
【出願日】平成18年7月3日(2006.7.3)
【国際出願番号】PCT/CN2006/001537
【国際公開番号】WO2007/016840
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(508033535)
【Fターム(参考)】