説明

自動精米システム

【課題】利用者持参の玄米を全自動精米処理する自動精米システムにおいて、煩わしい操作なしに、携帯電話を含む近接型非接触ICカードによって簡易に利用することができる自動精米システムを提供する。
【解決手段】自動精米システムは、投入ホッパ(2)を備えて所定量の投入玄米を取込んで精白処理する精米装置(A)と、この精米装置(A)を投入玄米の残留範囲で繰返し稼動制御する制御部(B)と、この繰返しによる精米装置(A)の稼動の条件としての課金額を決済する決済手段(D)とから構成され、上記決済手段(D)は、近接型非接触ICチップを組込んだ携帯電話を含む近接型非接触ICチップ担体(K)を安定保持しつつ、その近接型非接触ICチップとの近接非接触通信により課金額の決済を行うトレイ状の非接触入出力部(7)を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者持参の玄米について所定額単位の前課金による決済方式で全自動精米処理する自動精米システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、投入玄米を受けるための投入ホッパと、この投入ホッパ内の投入玄米から取扱い単位となる所定量の玄米を取込んで搗精する精米機等を備えるとともに、対応する一定金額を現金投入部からの引落しによって玄米を全自動精米処理する自動精米システムが知られている。
【0003】
この自動精米システムは、利用者持参の玄米を投入ホッパに投入し、相当料金分の現金を料金口に投入し、精米設定することにより、前課金のための所定金額の引落しとともに、取込み移送機構によって投入ホッパから所定量の玄米を取込んで取扱い単位となる1単位分の単位精米処理を自動で行い、この単位精米処理による定額課金と投入ホッパからの定量取込みを繰り返すことにより、投入玄米が精米されて払出し用の白米タンクから受取ることができ、また、料金口に投入されたままで課金引落し前の余剰現金は、返却口から戻される。
【0004】
この場合において、投入金額が不足した場合にあっては、現金の追加投入を待って単位精米処理が開始される。また、現金の投入に代えて、磁気記録カードやICカードによる電子決済を適用することにより、課金の都度の引落しによる自動精米システムの利用が可能となる。同様に、携帯電話を含む近接型非接触ICカードの適用により、現金投入に伴う煩わしい取扱いやカード使用の際の特有の操作を要することなく、ICカード等を決済装置の非接触入出力部にかざすだけの簡単な操作で自動精米システムを利用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−9370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、携帯電話を含む近接型非接触ICカードの場合は、投入全量の玄米が精米されるまでの間について、単位精米処理の都度、前課金のための所定金額の引落しのために、非接触入出力部にICカード等をかざす操作が必要となり、煩わしさに耐えないという問題が避けられず、その他、機器のトラブルによって精米処理が中断した場合の電子決済による前課金分の料金精算という問題が残されていた。
【0007】
本発明の目的は、所定量の投入玄米を取扱い単位として前課金による決済方式で全自動精米処理する自動精米システムにおいて、非接触入出力部に随時ICカード等をかざすような煩わしい操作を要することなく、携帯電話を含む近接型非接触ICカードによって簡易に利用することができる自動精米システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、投入玄米を受けるための投入ホッパを備えてこの投入ホッパから取扱い単位となる所定量の投入玄米を取込んで精白処理する精米装置と、この精米装置の稼動を投入玄米の残留範囲で繰返し制御する制御部と、この繰返しによる精米装置の稼動の条件としての所定の課金額を決済する決済手段とからなる自動精米システムにおいて、上記決済手段は、近接型非接触ICチップを組込んだ携帯電話を含む近接型非接触ICチップ担体を安定保持しつつ、その近接型非接触ICチップとの近接非接触通信により課金額の決済を行うトレイ状の非接触入出力部を備えてなることを特徴とする。
【0009】
上記自動精米システムは、投入ホッパに玄米を投入すると、決済手段による所定金額の課金決済を条件として精米装置が取扱い単位の玄米を投入ホッパから取込んで精白し、この時、決済手段のトレイ状の非接触入出力部に携帯電話を含む近接型非接触ICチップ担体を載置することにより、同ICチップ担体が安定保持されることから、近接非接触通信によって課金額が随時決済が可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記決済手段は、釣銭払出し機能を付帯して現金決済するための現金決済部を備えるとともに、制御部は、精米装置が機器異常により稼動停止した時に、既に決済された課金額を現金決済部によって払出す制御処理を備えたことを特徴とする。
この自動精米システムは、精米装置のトラブルによって精米が未完のまま終了した場合に、精米が終了されなかった分の料金が、現金決済部から釣銭としての現金返却により精算される。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1の構成において、前記決済手段は、投入された現金について課金額の引落しにより決済を行う現金決済部を備えるとともに、制御部は、非接触入出力部が近接型非接触ICチップ担体の取外しを検出した場合に、それ以降の課金の引落を現金決済部に切替える制御処理を備えたことを特徴とする。
この自動精米システムは、精米運転中に携帯電話をトレイから取出した場合に、コインの追加投入によって運転が継続される。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明の自動精米システムは、投入ホッパに玄米を投入すると、決済手段による所定金額の課金決済を条件として精米装置が取扱い単位の玄米を投入ホッパから取込んで精白し、この時、決済手段のトレイ状の非接触入出力部に携帯電話を含む近接型非接触ICチップ担体を載置することにより、同ICチップ担体が安定保持されることから、近接非接触通信によって課金額が随時決済が可能となるので、精米装置が投入玄米の残留範囲で繰返し稼動することにより、課金の都度、近接型非接触ICチップ担体を非接触入出力部にかざすという煩わしい操作を要することなく、トレイ状の非接触入出力部に載置する操作だけで簡易に最後まで精米を継続することができる。
【0013】
請求項2に係る発明の自動精米システムは、請求項1の効果に加え、精米装置のトラブルによって精米が未完のまま終了した場合に、前課金によって既に電子決済された場合であっても現金決済部から現金で返却されることから、前課金によって電子決済される全自動システムにおける料金返却の問題を解決することができる。
【0014】
請求項3に係る発明の自動精米システムは、請求項1の効果に加え、精米運転中に携帯電話をトレイ状の非接触入出力部から取出した場合にコインの追加投入によって運転が継続されることから、携帯電話を精米処理のための電子決済に使用している場合であっても、一切の制約を受けることなく、随時、通話等のために携帯電話を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】自動精米システムの一構成例のシステム構成図
【図2】精米装置の精米処理系統展開線図
【図3】客室部の操作パネル見取図
【図4】現金決済部の斜視図
【図5】自動精米システムの制御フローチャート
【図6】携帯電話決済の中断対応処理の制御フローチャート
【図7】返却金額の精算処理の制御フローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
自動精米システム1は、その一構成例のシステム構成図を図1に示すように、投入玄米を受けて精白するまでの機器1式からなる精米装置Aと、精米装置Aの各機器を条件に応じて連係制御する制御装置Bと、精米装置Aの運転条件を設定するための運転条件設定部Cと、精米料金を処理するための課金決済装置Dとから構成される。
【0017】
詳細に説明すると、精米装置Aは、図2の精米処理系統展開線図に示すように、投入された玄米を受けて所定量の繰出しをする投入ホッパ2、玄米中の石等の異物を除去選別する石抜機3、玄米を精白する精米機4、精白米の払い出し用の白米タンク5、それぞれの間を接続する昇降機6等により、玄米を精白するように構成する。投入ホッパ2には、投入規制用の扉2aと、投入ホッパ2内の玄米の有無を検出する玄米有無検出センサー2bと、投入ホッパ2内の玄米を繰出すロータリバルブ2cを備える。
【0018】
制御装置Bは、利用条件、機器条件等の各種の条件に応じて投入玄米を精白するべく、自動精米システム1の各機器の稼動制御機能を備え、特に、後述のように、携帯電話による電子決済に適合する制御機能を設けて構成する。運転条件設定部Cは、図3の客室部の操作パネル見取図に示すように、利用条件を設定するためのスイッチボタン、例えば、精白度を指定する「上白」、「標準」、「8ぶ」のスイッチボタン群等からなり、制御装置Bにより条件に沿って精米装置Aが制御される。
【0019】
課金決済装置Dは、図4の斜視図に示すように、コイン投入口11a、コイン判別収納部11に釣銭払出部12を備えた現金決済部D1のほかに、磁気記録カード、ICカード等の電子マネー決済部D2を備えて構成され、制御装置Bにより精米量に応じた利用料金を多様な形態で引落しを行う。特に、電子マネー決済部D2は、携帯電話やICカード等の近接型非接触ICチップを組み込んだ近接型非接触ICチップ担体Kについて安定保持しつつ課金額の電子決済を行うために、その近接型非接触ICチップと近接型非接触通信によってメモリデータの入出力を行うトレイ状の非接触入出力部7を設けて構成する。
【0020】
次に、上記構成の自動精米システム1について、制御装置Bの制御機能に基づく各機器の具体的な連係動作について説明する。
図5は、携帯電話によって電子決済する場合の自動精米システム1の制御フローチャートである。
まず、利用者の入室に応じて音声ガイダンスを行うステップ1(以下において「S1」の如く略記する。)の制御処理により「携帯電話をトレイに載せるかコインを投入してください」等の音声案内をし、続いて、携帯電話Kがトレイ状の非接触入出力部7に載せられると初期料金(最初の1単価分)の引落しと投入ホッパ2の扉2aの開動を行い(S2〜S4)、この投入ホッパ2に玄米等の持参穀物が投入され、かつ、精白度の設定が行われると精米運転が開始(S5〜S7)されることにより、1単価分の穀物が投入ホッパ2から取込まれて石抜機3で石抜処理され、次いで、精米機4によって精白され、白米タンク5に貯留される。この精白穀物は、利用者が操作することにより取出口5aから取出すことができる
【0021】
1単価分の穀物について所定時間の運転が行われると、引落し不可能な場合を除いて携帯電話Kから次の1単価分の引落しが行われ、これが投入ホッパ2の玄米有無検出センサー2bが穀粒無しを検出するまで非接触入出力部7の携帯電話Kからの引落しが繰り返えして行われ(S8〜S11)る。玄米有無検出センサー2bが穀粒無しを検出すると終了動作処理(S12,S13)の工程に入る。終了動作処理ではまずロータリバルブ2cが停止し、次いで、昇降機6や石抜機3や精米機4内の残留穀粒の精米処理を行なう。設定時間終了動作処理を行なうと運転停止となる。
【0022】
このように、上記自動精米システムは、投入ホッパ2に玄米を投入すると、決済手段による所定金額の課金決済を条件として精米装置が取扱い単位の玄米を投入ホッパ2から取込んで精白し、この時、決済手段は、そのトレイ状の非接触入出力部7に携帯電話を含む近接型非接触ICチップ担体Kを載置することにより、同ICチップ担体Kを安定保持しつつ近接非接触通信によって課金の決済を行うことから、制御部Bが投入玄米の残留範囲で精米装置を繰返し稼動する。したがって、近接型非接触ICチップ担体を非接触入出力部にかざす操作を要することなく、精米が継続される。
【0023】
また、精米運転の途中において非接触入出力部7から携帯電話を取外した場合については、図6の携帯電話決済の中断対応処理の制御フローチャートに示すように、課金決済装置Dの非接触入出力部7による携帯電話の取外しの検出(S21)に応じて現金決済部D1に制御を移し、コインの未投入の場合を除いて精米運転を継続(S22,S23)する制御処理を設けることにより、課金決済装置Dから携帯電話を途中で取出して使用する場合に対応することができる。
【0024】
また、精米運転の途中において何らかの機器トラブルによる異常停止の場合については、図7の返却金額の精算処理の制御フローチャートに示すように、機器の異常停止の検出(S31)によって、運転がコイン投入による場合は現金決済部D1の返却制御によって投入現金を釣銭払出部12より返却(S32,S32a)し、携帯電話Kによる場合は釣銭制御により計算した返却額を現金による釣銭として釣銭払出部12より返却(S33〜S35)する制御処理を構成することにより、電子マネー課金後の返金精算の問題を解決することができる。
【0025】
また、コイン投入の後においても玄米投入が確認されなかった場合は、人検知手段による検出がなくなった時に不審者エラー信号を出力し、この不審者エラー信号によってビデオカメラ情報を含む非常通報を行う警備警報システムを作動する制御処理を設ける。不審者エラー信号は、コントローラの入出力端子等の特定部位のデジタル信号がオンまたはオフに変化すること、または、ソフト上の仮想信号が状態変化することを含む。
【0026】
例えば、自動精米システムが待機中において、投入ホッパ2の扉2aの開閉操作による扉開閉信号を検知した場合に不審者エラー信号を発するように構成する。このような異常変化に基づいて警備警報システムを作動することにより、扉2a用の堅固なロック機構による高コストの装備を要することなく、不審者による事件の早期解決につなげることができるとともに、不審者による異常行動に対して食の安全を確保することができる。
【0027】
また、液晶タッチパネルによる操作部を備えるとともに、その画面保護用の透明窓を設けたものにあっては、管理者がメンテ画面に触れるためには透明窓を外す必要があることから、通常待機中画面にメンテナンス情報としてメンテナンス時期に達した部品を番号一覧表やランプで表示するように構成する。例えば、精米機の清掃時期が来た場合は、対応するランプを点灯表示する。このランプ表示については、利用客から見て違和感を与えない程度で、かつ、システム管理者に分かり易く構成する。
【0028】
このようなメンテナンス情報を通常待機中画面内に表示することにより、透明窓を外すという煩わしい操作を要することなく、メンテナンス箇所を容易に認識でき、迅速にメンテナンス作業に取り掛かることができることから、多数のシステムについてそれぞれの管理に必要なメンテナンスや集金の作業の効率化が可能となる。
【符号の説明】
【0029】
1 自動精米システム
2 投入ホッパ
2a 扉
2b センサー
3 石抜機
4 精米機
7 非接触入出力部
11 コイン判別収納部
12 釣銭払出部
A 精米装置
B 制御装置
C 運転条件設定部
D 課金決済装置
D1 現金決済部
D2 電子マネー決済部
K 近接型非接触ICチップ担体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入玄米を受けるための投入ホッパ(2)を備えてこの投入ホッパ(2)から取扱い単位となる所定量の投入玄米を取込んで精白処理する精米装置(A)と、この精米装置(A)の稼動を投入玄米の残留範囲で繰返し制御する制御部(B)と、この繰返しによる精米装置(A)の稼動の条件としての所定の課金額を決済する決済手段(D)とからなる自動精米システムにおいて、
上記決済手段(D)は、近接型非接触ICチップを組込んだ携帯電話を含む近接型非接触ICチップ担体(K)を安定保持しつつ、その近接型非接触ICチップとの近接非接触通信により課金額の決済を行うトレイ状の非接触入出力部(7)を備えてなることを特徴とする自動精米システム。
【請求項2】
前記決済手段(D)は、釣銭払出し機能を付帯して現金決済するための現金決済部(D1)を備えるとともに、制御部(B)は、精米装置(A)が機器異常により稼動停止した時に、既に決済された課金額を現金決済部(D1)によって払出す制御処理を備えたことを特徴とする請求項1記載の自動精米システム。
【請求項3】
前記決済手段(D)は、投入された現金について課金額の引落しにより決済を行う現金決済部(D1)を備えるとともに、制御部(B)は、非接触入出力部(7)が近接型非接触ICチップ担体(K)の取外しを検出した場合に、それ以降の課金の引落を現金決済部(D1)に切替える制御処理を備えたことを特徴とする請求項1記載の自動精米システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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