自動給水装置
【課題】状況に応じた吐水が可能な自動給水装置を提供する。
【解決手段】自動給水装置は、吐水形態を変更することのできる吐水機構と、吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識する形状認識手段と、形状認識手段による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように吐水機構を制御する吐水制御手段とを含む。
【解決手段】自動給水装置は、吐水形態を変更することのできる吐水機構と、吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識する形状認識手段と、形状認識手段による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように吐水機構を制御する吐水制御手段とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、状況に応じた吐水が可能な自動給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公共施設などにおいては、節水などを目的として、吐水の開始/停止を自動的に切り替える自動給水装置(自動水栓)が普及している。このような自動水栓を用いることで、節水以外にも、衛生的であることや心理的嫌悪感の低減というメリットもある。
【0003】
このような自動給水装置に関する先行技術としては、以下のようなものが知られている。
【0004】
特開2008−280673号公報(特許文献1)には、物体の発見・消失の認識結果にもとづき自動で吐水開始・停止するモードと、一定時間吐水して自動停止するモードとを切り替えることができる給水装置が開示されている。
【0005】
また、特開2009−46836号公報(特許文献2)には、2つのセンサの感知順序によってユーザの手の移動を認識し移動に応じて流量を制御する水栓装置が開示されている。この水栓装置は、ユーザの意思で流量を変更できるようにすることに向けられている。
【0006】
さらに、特開2010−43465号公報(特許文献3)には、複数の吐水形態のどれが選択されているかによって、吐水条件を変えて吐水する自動水栓が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−280673号公報
【特許文献2】特開2009−46836号公報
【特許文献3】特開2010−43465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1および2に開示されるように、従来の自動給水装置(自動水栓)は、主として、手(あるいは、物体)の存在に応じて、吐水の開始および停止を自動的に制御することに向けられていた。これは、主として、手などを洗う場面を想定したものであった。また、主として節水を目的としているため、吐水形状もシャワータイプのものが主流であった。
【0009】
一方、上述のような自動給水装置(自動水栓)を家庭などで使用する場合を考えると、単に、吐水の開始および停止を自動的に制御するだけでは実用的に十分ではないと想定される。たとえば、家庭の用途としては、炊事などの目的で何らかの容器内に「水を汲む」という動作(注水作業)も頻繁に発生するからである。
【0010】
さらに、家庭内での使用を考えると、洗浄時には洗浄効果および節水効果に優れた状態(典型的には、シャワー形状)で吐水し、注水時には容器や水を濡らさず効率的に注水できる状態(典型的には、ストレート形状)で吐水できるようにしたい、というニーズが存在する。
【0011】
また、具体的な状況を考えると、ユーザは片手に何らかの物を持ちながら、もう片方の手のみで注水作業を行なう場合や、水を入れる容器が重いため、ユーザが両手でその容器を支える必要がある場合もある。そのため、ユーザが、吐水を開始するタイミング、および、吐水を継続させる時間を任意に決定できるような自動給水装置(自動水栓)に対するニーズが存在する。
【0012】
上述の特許文献1は、主として、吐水の開始タイミングおよび停止タイミングを動的に決定するのみであり、特許文献2は、主として、吐水量を動的に決定するのみである。したがって、上述のような家庭での用途を考えた場合に、十分な実用性を提供するものではなかった。
【0013】
また、上述の特許文献3に記載の自動水栓は、ユーザによって吐水ヘッドが水栓本体から着脱されているか否かに基づいて、吐水形態の切り替えを行なっており、上述のような自動制御を提供するものではない。すなわち、ユーザは、吐水形態や吐水条件を切り替えるために装置に対して何らかの明示的な操作を行なう必要があり、何らかの物をもっているためユーザの手が塞がっている場合や、衛生面から装置に触りたくない場合などにおける自動化技術を提供するものではなかった。
【0014】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、状況に応じた吐水が可能な自動給水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある局面に従う自動給水装置は、吐水形態を変更することのできる吐水機構と、吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識する形状認識手段と、形状認識手段による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように吐水機構を制御する吐水制御手段とを含む。
【0016】
好ましくは、吐水制御手段は、形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識すると、物体に水を注ぐための第1のモードを設定し、形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識しなければ、物体を洗浄するための第2のモードを設定する。
【0017】
さらに好ましくは、第1のモードでは、第2のモードに比較して、吐水断面範囲がより狭くなるように吐水を行なう。
【0018】
さらに好ましくは、本自動給水装置は、吐水機構から吐水される水流の状態を検知する水流検知手段をさらに含み、吐水制御手段は、第1のモードでの吐水中に、形状認識手段による認識結果と水流検知手段による検知結果とに基づいて物体への注水の状態を判断し、吐水機構からの吐水の停止、および、第1のモードから第2のモードへの切り替えの少なくとも一方を行なう。
【0019】
さらに好ましくは、形状認識手段は、水を蓄えることのできる形状を有する物体を認識すると、当該物体が有する開口部の領域を検知し、水流検知手段は、重力下方向への時間的変化を示す塊部分を水流として特定するとともに、当該特定された水流の重力方向の下端位置を検知し、吐水制御手段は、形状認識手段により検知された開口部の内側に水流の下端位置が存在するか否かに基づいて、物体への注水の状態を判断する。
【0020】
さらに好ましくは、形状認識手段は、検知された物体の存在領域の吐水口に近い側の範囲から開口部の領域を検知する。
【0021】
好ましくは、本自動給水装置は、エリアへの物体の進入を検知する物体検知手段をさらに含む。吐水制御手段は、物体検知手段が物体の侵入を検知することに応答して、吐水機構からの吐水を開始する手段と、吐水中における形状認識手段による認識結果に基づいて、吐水機構からの吐水を停止する手段とを含む。
【0022】
好ましくは、本自動給水装置は、予め認識されるべき各物体の形状や位置についての物体情報を記憶する物体情報記憶手段をさらに含み、形状認識手段は、物体情報記憶手段に記憶された物体情報との一致/不一致に基づいて、特定の形状を有する物体を検知する。
【0023】
好ましくは、形状認識手段は、取得された画像に対してエッジ抽出した結果に基づいて、物体の形状を認識する。
【0024】
好ましくは、形状認識手段は、抽出されたエッジのうち閉じた空間を抽出し、当該抽出した閉じた空間を物体が有する開口部と検知する。
【0025】
好ましくは、吐水制御手段は、吐水形状、吐水量、吐水温度、洗浄液の混合量のうち少なくとも一つについて異なる複数の吐水形態のうち、1つの吐水形態を選択する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、状況に応じた吐水が可能な自動給水装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態に従うセンサの取り付け状態を説明するための図である。
【図2】第1の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に従う吐水口から吐水される水の形状を示す模式図である。
【図4】第1の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台の外観を示す図である。
【図6】第1の実施の形態に従うセンサの取り付け状態を説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の処理を説明するためのブロックである。
【図9】第1の実施の形態に従う物体検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の別の処理方法を説明するための図である。
【図11】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理のさらに別の処理方法を説明するための図である。
【図12】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の処理を説明するための図である。
【図13】閉路抽出処理に用いられるパターン例を示す図である。
【図14】第1の実施の形態に従う形状認識処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の別の例を説明するための図である。
【図16】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理の概要を示す図である。
【図17】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理におけるクラスタリング処理の概要を示す図である。
【図18】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における水流領域の下端位置を判定する処理の概要を示す図である。
【図19】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における物体情報を利用する処理の概要を示す図である。
【図20】第1の実施の形態に従う水領域検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図21】第2の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【図22】第2の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。
【図23】第2の実施の形態に従う自動給水装置におけるモード設定の対象となった容器の一例を示す図である。
【図24】図23に対応する形状情報の設定例を示す図である。
【図25】本実施の形態に従う自動給水装置における動作を示すタイムチャートである。
【図26】第2の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0029】
[第1の実施の形態]
<A.概要>
本発明に従う第1の実施の形態として、家庭用の一般的用途を想定して、自動給水装置を搭載した流し台について説明する。この自動給水装置は、少なくとも、容器といった物体に水を注ぐための第1のモード(以下「注水モード」とも称す。)と、手や容器などの物体を洗浄するための第2のモード(以下「洗浄モード」とも称す。)を切り替えて設定できるようになっているとする。
【0030】
本実施の形態によれば、注水モードにおいては、容器内のみへの効率的な注水および手や容器を不用意に濡らさない吐水制御を提供し、洗浄モードにおいては、高い洗浄効果および高い節水効果を実現できる吐水制御を提供する。このような吐水制御を実現するため、本実施の形態によれば、吐水開始時に、吐水の対象となる物体(オブジェクト)の検知、および、吐水停止時に、吐水されている物体(オブジェクト)の状態の検知を行なうことで、適切な吐水形状・吐水開始タイミング・吐水停止タイミングを判断する。
【0031】
<B.外観および動作概要>
図1は、第1の実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台1の外観を示す図である。図1を参照して、流し台1は、本体部2と、本体部2の上に設けられたシンク3と、その先端に吐水口5が設けられた蛇口4と、蛇口4の根元に配置されたセンサ6とを含む。
【0032】
本実施の形態に従う自動給水装置は、センサ6による検知結果に基づいてユーザの行なおうとしている動作を判断し、吐水形態(吐水形状、吐水量、吐水温度、洗浄液の混合量など)を変化させる。具体的には、以下のような動作が可能となっている。
【0033】
(1) ユーザが容器(コップなど)を蛇口4に近づけると、吐水口5からストレート形状で吐水する。具体的には、センサ6が所定条件を満たす形状(すなわち、容器を表わす形状)が蛇口4付近で静止したことを検知すると、吐水口5からストレート形状で吐水を開始する。なお、センサ6により検知された形状が所定条件を満たさない場合や、センサ6により検知された位置が蛇口4付近ではない場合には、その他の形状(シャワー形状)での吐水を行なう。
【0034】
(2) ユーザがシャワー形状の流水で容器を洗っている場合に、蛇口4付近でその容器の開口部を上向きに向けて静止させると、吐水口5からストレート形状で吐水する。具体的には、センサ6はシャワー形状で吐水中において、物体検知を継続しており、検知された形状が所定条件を満たし、かつ、蛇口4の付近で静止されたことを検知すると、吐水形状をストレート形状に変更する。
【0035】
(3) 容器への注水中に、容器内の水が容器の開口部に達したり、容器からこぼれ出したりした場合には、吐水形状をシャワー形状に変更、あるいは、吐水を停止する。具体的には、センサ6が所定条件を満たす形状を検知し、かつ、検知した形状の内部に水の流れの端がある場合には、ストレート形状での吐水を継続する。また、センサ6が所定条件を満たさなくなると、吐水形状を変更、あるいは、吐水を停止する。
【0036】
(4) 容器への注水中に、ユーザがその容器を上下させるといった動作を行なうと、吐水形状を変更、あるいは、吐水を停止する。具体的には、センサ6が所定条件を満たす形状を検知し、かつ、検知した位置が蛇口4に近づく動き(または、遠ざかる動き)を検知すると、吐水形状を変更、あるいは、吐水を停止する。
【0037】
なお、図1には図示していないが、吐水量や吐水形状を変更するためのマニュアル操作用ボタンをさらに設けてもよい。
【0038】
<C.制御機能>
図2は、第1の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【0039】
図2を参照して、本実施の形態に従う自動給水装置を構成するセンサ6は、第1カメラ61と、第2カメラ62と、画像処理エンジン63とを含む。第1カメラ61および第2カメラ62は、後述するように、いわゆるステレオ撮像が可能に配置されており、それぞれのカメラにより取得された画像の差異(視差)などに基づいて、物体の位置や形状などを検知する。また、第1カメラ61または第2カメラ62で撮像された画像は、後述するような、水領域検知などの画像処理にも用いられる。
【0040】
画像処理エンジン63は、本実施の形態に必要な各種の画像処理を実行する演算処理機構である。この画像処理エンジン63は、ソフトウェアをプロセッサで実行することで提供されてもよいし、専用のハードウェアとして実装されてもよい。この画像処理エンジン63が提供する画像処理の内容については、後述する。
【0041】
本実施の形態に従う自動給水装置を構成するコントローラ7は、典型的には、プロセッサベースの演算処理装置であり、プロセッサ71と、メモリ72と、インターフェイス73とを含む。もちろん、コントローラ7を専用のハードウェアとして実現してもよい。
【0042】
プロセッサ71は、メモリ72などの格納されているプログラム(命令セット)を実行することで、本実施の形態に係る処理を提供する。メモリ72は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリと、フラッシュなどの不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリの領域には、プログラムの実行に必要なワークデータが一時的に保持され、不揮発メモリの領域には、プログラム自体や各種パラメータなどが保持される。
【0043】
蛇口4には、吐水形態変更機構を含む導管41が接続されている。導管41には、密閉弁42が設けられており、アクチュエータ81がこの密閉弁42を駆動することで、導管41を通じて蛇口4へ流体(水)が提供され、あるいは、その水の提供が停止される。
【0044】
さらに、吐水口5と連係した切替機構82が設けられている。この切替機構82は、コントローラ7からの指令に応答して、吐水口5から吐水される水の形状を変更する。すなわち、本実施の形態に従う自動給水装置は、吐水形態を変更することのできる吐水機構を有している。
【0045】
図3は、第1の実施の形態に従う吐水口5から吐水される水の形状を示す模式図である。図3(a)には、ストレート形状で吐水されている状態を示し、図3(b)には、シャワー形状で吐水されている状態を示す。切替機構82(図2)は、図示しない吐水口5内部のシャッターなどを駆動することで、このような吐水形状の切り替えを実現する。
【0046】
図3(a)に示すストレート形状では、水が存在する範囲が狭くなっており、かつ、流量は相対的に多い。その結果、ストレート形状によれば、コップなどの容器内への注水などを容易に行なうことができる。一方、図3(b)に示すシャワー形状では、水が存在する範囲が広くなっており、かつ、流量は相対的に少ない。その結果、シャワー形状によれば、コップなどの容器の洗浄や、ユーザが自身の手を洗う場合などに有効である。
【0047】
すなわち、注水モード(第1のモード)では、洗浄モード(第2のモード)に比較して、吐水断面範囲がより狭くなるように吐水が行なわれる。
【0048】
なお、図3に示す例では、吐水形状をストレート形状とシャワー形状との間で切り替えると同時に、シャワー形状ではストレート形状に比較して比べて吐水量(吐水圧)が小さくなるように設計されている例を示す。但し、利用状況や要望などにあわせて、蛇口4の吐水形状だけを変更してもよいし、例えば、容器の口のサイズや位置などに応じて吐水形状および/または吐水量を何段階かまたは間欠的に変更できるようにしてもよい。なお、具体的な吐水形状の切替方法としては、シャワー形状用の吐水口とストレート形状用の吐水口とを交換するような構成を採用したり、絞りのような機構を用いたりすることができ、この切り替え動作を、上述したような「洗浄モード」および「注水モード」に応じて、自動的に制御される。
【0049】
次に、図2に示すハードウェアによって提供される機能について図4を参照して説明する。
【0050】
図4は、第1の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。図4を参照して、センサ6の画像処理エンジン63は、位置情報取得部631と、画像情報取得部632とを有する。
【0051】
位置情報取得部631は、検知エリア内の物体(オブジェクト)の位置などを取得(算出)する。画像情報取得部632は、第1カメラ61または第2カメラ62の撮像により取得された画像データを受付けるとともに、コントローラ7などへ出力する。
【0052】
コントローラ7は、オブジェクト認識部711と、モード管理部716と、吐水指令生成部717とを含む。
【0053】
オブジェクト認識部711は、検知範囲内における物体(オブジェクト)を認識する。より具体的には、検知範囲内において、手・容器・水の流れといったオブジェクトについて、その存在の有無、その位置、その形状、その状態などを認識する。
【0054】
モード管理部716は、形状認識部713による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように吐水機構を制御する。また、モード管理部716は、オブジェクト認識部711による認識結果に基づいて、吐水の開始/停止を行なうための処理や、吐水状態の切り替えを判断するための処理を行なう。
【0055】
吐水指令生成部717は、モード管理部716での判断結果などに応じて、吐水の開始/停止を行なうための指令や、吐水状態の切り替えを行なうための指令を生成する。
【0056】
より具体的には、オブジェクト認識部711は、物体検知部712と、形状認識部713と、水流検知部714と、物体情報記憶部715とを含む。
【0057】
物体検知部712は、検知エリア内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知する。すなわち、物体検知部712は、検知エリアへの物体の進入を検知する。
【0058】
形状認識部713は、検知範囲内での物体(オブジェクト)の形状を検知するとともに、検知された形状が、対象の容器などに基づいて予め用意される所定条件を満たしているか否かを判断する。すなわち、形状認識部713は、吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識するとともに、処理条件を満たした形状を有している物体であるか否かを判断する。
【0059】
水流検知部714は、水領域検知処理を実行することで、検知範囲内における水流の存在および場所を検知する。すなわち、水流検知部714は、吐水機構から吐水される水流の状態を検知する。なお、水流検知部714は、第1カメラ61または第2カメラ62により撮像された画像データを利用して水流について検知を行なわない場合には、水流を検知するための別のセンサを含む。
【0060】
物体情報記憶部715は、主として、実行済の形状認識結果を格納するものである。この物体情報記憶部715に格納される形状認識結果は、形状認識精度を向上させるために利用される(典型的には、学習制御)。なお、この物体情報記憶部715による形状認識結果の格納機能は、認識精度が必要十分である場合には(コスト低減の観点から)省略することもできる。
【0061】
なお、センサ6は、物体(オブジェクト)の存在・形状・位置などを検知するための情報を取得できればどのような原理に基づくものであってもよい。但し、本実施の形態においては、より実用的なセンサとして画像センサを用いる。すなわち、センサ6は、二眼ステレオ画像センサを含み、上述したように、第1カメラ61および第2カメラ62によりそれぞれ撮像される画像データ(ステレオ画像)に基づいて、物体を検知する。より具体的には、物体(オブジェクト)の位置情報は、ステレオ画像処理によって算出するとともに、画像情報は、ステレオカメラである第1カメラ61および第2カメラ62の一方からの出力を利用して取得される。
【0062】
本実施の形態に従うセンサ6においては、物体検知部712、形状認識部713、および、水流検知部714がいずれも第1カメラ61および第2カメラ62を共通に利用する形態に付いて例示したが。目的の空間エリア内での物体(オブジェクト)についての検知・認識・判定が行なえるのであれば、それぞれ別の位置に設置したセンサを用いてもよい。また、画像センサと赤外センサなどの異なる複数の種類のセンサを用いてもよい。
【0063】
センサの設置位置は、必要な認識処理における認識性能が高くなる場所であることが望ましい。具体的には、物体検知部712や形状認識部713(後述する、オブジェクト認識や容器の開口部形状の認識)の性能を高めることができる場所に、撮像するための画像センサを配置することが望ましい。また、画像を取得するためのカメラは、ユーザの手、容器、蛇口から容器に至るまでの水の経路などが視野範囲に含まれる場所に配置することが好ましい。
【0064】
図5は、第1の実施の形態に従うセンサ6の取り付け状態を説明するための図である。すなわち、図5(a)には、シンク3の側面から見た取り付け状態の一例を示し、図5(b)には、シンク3の上面から見た取り付け状態の一例を示す。すなわち、図5には、センサ6の配置位置、および、それに応じて設定されるセンシング対象領域の例について示す。
【0065】
図5に示すように、本実施の形態に従うセンサ6の表面には、第1カメラ61および第2カメラ62が所定距離だけ離れて配置されている。原理的には、この第1カメラ61および第2カメラ62の共通の視野範囲内にあるオブジェクトに対して、各種検知処理を行なうことができる。但し、本実施の形態においては、その検知目的・検知対象に応じて、2つの検知エリアS1およびS2が設定されているものとする。
【0066】
検知エリアS2は、物体(オブジェクト)の形状を認識できる領域である。この検知エリアS2の内側に検知エリアS1が設定される。この検知エリアS1は、物体(オブジェクト)の形状を認識する以外の検知処理の対象となる領域である。このように、検知すべき内容に応じて検知エリアを異ならせることで、検知精度を高めることができるとともに、不必要な画像処理を低減することができる。
【0067】
なお、図5に示す例では、検知エリア(センシング対象領域)が予め固定されている例を示すが、先に形状認識処理によって検知された対象の物体(オブジェクト)のサイズや形状に応じて、検知エリアS1の位置や大きさを動的に変化させてもよい。
【0068】
<D.動作例>
次に、本実施の形態に従う自動給水装置の典型的な動作例について、タイムチャートを参照しながら説明する。
【0069】
本実施の形態に従う自動給水装置は、蛇口4の付近への手や容器などの進入を検知すると、吐水のモードを判断する。より具体的には、蛇口4に十分近いエリアで容器の開口部(注水口)の形状が検知され、かつ、そのオブジェクトが静止している検知された場合には、注水モードが選択され、ストレート形状での吐水が開始される。これに対して、そのような検知がなされない場合には、洗浄モードが選択され、シャワー形状での吐水が開始される。
【0070】
すなわち、形状認識部713は、水を蓄えることのできる形状を有する物体を認識すると、当該物体が有する開口部の領域を検知する。そして、形状認識部713が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識すると、注水モードが選択され、形状認識部713が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識しなければ、洗浄モードが選択される。
【0071】
注水モードにおいては、自動給水装置は、容器内が水で溢れる直前までストレート形状で注水を続ける。すなわち、自動給水装置は、ストレート形状での吐水中において、その水流の先端(以下「水流端」とも称す)が容器の開口内に水が入り続けていると認識されている間は、容器内が水で満たされていないと判断し、注水を継続する。これに対して、検知される開口部の位置が大きく移動したり、開口部の輪郭と水流端とが接触しそうになったりしたことが検知された場合は、吐水を停止する。
【0072】
さらに、ストレート形状での注水を停止した直後(注水モードでの吐水後)であっても、容器や手といった物体が蛇口4の付近で一定時間に亘って検知され続けた場合は、シャワー形状での吐水を開始する。これは、ユーザが容器などを洗浄するような使用形態が想定されるからである。
【0073】
一方、洗浄モードにおいては、自動給水装置は、シャワー形状での吐水中において、蛇口4の付近に物体が存在すると検知されている間は、そのまま吐水を継続する。そして、蛇口4の付近に物体が存在しなくなったと検知されると、吐水を停止する。
【0074】
さらに、洗浄モードにおいては、シャワー形状で吐水中であっても、蛇口4に十分近いエリアで容器の開口部(注水口)の形状が検知され、かつ、そのオブジェクトが静止している検知された場合には、ストレート形状での吐水に切り替えられる。すなわち、このような条件が成立した場合には、「容器を洗った後にその内部に注水をしたいとユーザは考えている」と判断し、注水モードが選択される。
【0075】
このように、物体検知部712が物体の侵入を検知することに応答して、吐水機構からの吐水を開始し、吐水中における形状認識部713による認識結果に基づいて、吐水機構からの吐水を停止する。
【0076】
図6は、第1の実施の形態に従うセンサ6の取り付け状態を説明するための図である。なお、図6(a)〜(c)の各々には、蛇口4の吐水口5から吐水された水をその形状別に区分して記載している。すなわち、図6(a)〜(c)に記載のグラフは、横軸が時間であり、縦軸が各々対応する吐水パターンにおける単位時間当たりの吐水量の大きさを示す。
【0077】
(d1.洗浄時)
図6(a)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて容器などを洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザは、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0078】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、図6(a)に示す時刻t11において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t11〜t12)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0079】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t11から判定期間ΔTaが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトが検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t12において、「洗浄モード」で給水すべきであると判断する。そして、シャワー形状での吐水が開始される。
【0080】
その後、ユーザがオブジェクトを蛇口4から離れた位置に移動させたため、時刻t13において、検知エリアS1(図5参照)内ではオブジェクト(手または容器)の存在を検知できなくなったとする。その後、検知されていたオブジェクトが蛇口4から現実に離れたことを判断するため、所定期間(時刻t13〜t14)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0081】
そして、対象のオブジェクトが蛇口4から離れた場合には、時刻t13から判定期間ΔTbが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトを検知できない状態が継続したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t14において、給水すべき対象がいなくなったと判断する。そして、シャワー形状での吐水が停止される。
【0082】
(d2.注水時)
次に、図6(b)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて容器などに水を注ぐ場合の基本的な動作を示す。図6(b)に示す時刻t21において、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4に近づけたとする。このとき、ユーザは、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4の近くで静止させたとする。
【0083】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、時刻t21において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。続いて、自動給水装置が、時刻t21において、検知エリアS2(図5参照)内にオブジェクトが開口部を有していることを検知したとする。なお、このオブジェクトの開口部の検知には、後述するように、形状認識処理によって「閉じた空間」の有無を判断する。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t22〜t23)に亘って、「閉じた空間」の検知が継続するか否かを判断する。
【0084】
そして、検知エリアS2内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t22から判定期間ΔTcが経過するまでの間、検知エリアS2内で「閉じた空間」が検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t23において、「注水モード」で給水すべきであると判断する。そして、ストレート形状での吐水が開始される。
【0085】
その後、容器内に注入された水が容器から溢れる直前までストレート形状での吐水が継続される。すなわち、時刻t24において、検知される水流端が容器の開口部の輪郭に対して十分に接触しそうなことを検知したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t24において、ストレート形状での吐水を停止する。
【0086】
(d3.洗浄モードと注水モードとが連続的に切り替わる使用形態の一例について説明する。
【0087】
図6(c)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて容器などを洗浄した後、その容器に水を注ぐ場合の基本的な動作を示す。
【0088】
図6(c)には、注水モードと洗浄モードとが連続的に切り替わる使用形態の一例として、例えば、ユーザが容器を横や下向きなどに回転させながら洗浄し、洗浄が終わり次第、容器の口を上向きにして容器を静止させてその中に水を注ぐ。このとき、洗浄モードが選択され、ストレート形状で吐水される。さらに、容器に水が溜まってほぼ満タンに近くなると、水流端と容器の開口部の輪郭との接近を検知して注水が停止される。あるいは、ユーザがその容器を静止状態から動かし始めることでも注水が停止される。
【0089】
ストレート形状での注水停止後も、容器がその場に留まっている場合には、シャワー形状での吐水が再開される。
【0090】
容器の内側を洗浄するために吐水するという用途を想定する場合は、ストレート形状での注水後であっても、一定時間経過後の間は、シャワー形状での吐水を開始することが好ましい。
【0091】
その後、ユーザが容器をその開口部を蛇口に向けて静止させると、それを再度検知してストレート形状での吐水に切り替えてもよい。
【0092】
あるいは、最初にシャワー形状からストレート形状に変わった後に、容器の移動を検知してストレート形状での吐水を停止した後に、一定時間、容器の口の停止を再度検知すれば、ストレート形状での吐水を再開するようにしてもよい。
【0093】
以下、具体的なタイムチャートについて説明する。
まず、ユーザは、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、図6(c)に示す時刻t31において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t31〜t32)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0094】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t31から判定期間ΔTaが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトが検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t32において、「洗浄モード」で給水すべきであると判断する。そして、シャワー形状での吐水が開始される。
【0095】
このシャワー形状の吐水を用いて容器を洗浄したユーザは、その開口部を蛇口4に向けたとする。このとき、ユーザは、開口部を蛇口4に向けた状態で容器などの対象のオブジェクトを静止させたとする。
【0096】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、時刻t33において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在の検知に加えて、検知エリアS2(図5参照)内にオブジェクトが開口部を有していることを検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t33〜t34)に亘って、「閉じた空間」の検知が継続するか否かを判断する。
【0097】
そして、検知エリアS2内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t33から判定期間ΔTcが経過するまでの間、検知エリアS2内で「閉じた空間」が検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t34において、「注水モード」で給水すべきであると判断する。そして、ストレート形状での吐水が開始される。
【0098】
その後、容器内に注入された水が容器から溢れる直前までストレート形状での吐水が継続される。すなわち、時刻t35において、検知される水流端が容器の開口部の輪郭に対して十分に接触しそうなことを検知したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t35において、ストレート形状での吐水を停止する。
【0099】
さらに、ユーザは、その容器に注水された水を飲み、その後、そのよう域を再度洗浄しようとしたとする。すなわち、ユーザは、蛇口4から一旦離した容器などの対象のオブジェクトを再度蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0100】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、図6(c)に示す時刻t35において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t35〜t36)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0101】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t35から判定期間ΔTaが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトが検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t36において、「洗浄モード」で給水すべきであると判断する。そして、シャワー形状での吐水が開始される。
【0102】
その後、ユーザがオブジェクトを蛇口4から離れた位置に移動させたため、時刻t37において、検知エリアS1(図5参照)内ではオブジェクト(手または容器)の存在を検知できなくなったとする。その後、検知されていたオブジェクトが蛇口4から現実に離れたことを判断するため、所定期間(時刻t37〜t38)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0103】
そして、対象のオブジェクトが蛇口4から離れた場合には、時刻t37から判定期間ΔTbが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトを検知できない状態が継続したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t38において、給水すべき対象がいなくなったと判断する。そして、シャワー形状での吐水が停止される。
【0104】
上述のように、モード管理部716は、注水モードでの吐水中に、形状認識部713による認識結果と水流検知部714による検知結果とに基づいて、容器などの物体への注水の状態を判断し、吐水機構からの吐水の停止、および、注水モードから洗浄モードへの切り替えの少なくとも一方を行なう。
【0105】
(d4.その他)
上述の図6に示すタイムチャートでは、タイムアウト機能を含んでいない吐水制御の一例について説明したが、ストレート形状またはシャワー形状のいずれに対しても、連続吐水時間に上限を設けてタイムアウト処理することで、異常時の対処としてもよい。また、吐水形状の切替頻度や切替回数などにも上下制限を設定してもよい。
【0106】
<E.全体処理フロー>
図7は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0107】
図7を参照して、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を実行する(ステップS1)。この物体検知処理の内容については、後述する。続いて、ステップS1の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS2)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS2においてNOの場合)には、ステップS1の処理が繰返される。
【0108】
何らかの物体が検知された場合(ステップS2においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知された物体(オブジェクト)が実質的に静止状態であるか否かを判断するためのタイマ値ΔT1をゼロリセットする(ステップS3)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT1のカウントアップを開始する。
【0109】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT1が判定期間ΔTaまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS4)。
【0110】
タイマ値ΔT1が判定期間ΔTaまでカウントアップされていない場合(ステップS4においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS2(図5参照)内に対して形状認識処理を実行する(ステップS5)。すなわち、コントローラ7は、検知エリアS2内に「閉じた空間」が存在するか否かを判断する。続いて、コントローラ7は、形状認識処理が成功したか否かを判断する(ステップS6)。すなわち、コントローラ7は、予め登録された形状と一致する形状を検知できたか否かを判断する。
【0111】
形状認識処理が成功しなかった場合(ステップS6においてNOの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS7)。続いて、コントローラ7は、ステップS7の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS8)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS8においてNOの場合)には、処理は終了する。
【0112】
これに対して、何らかの物体が検知されている場合(ステップS8においてYESの場合)には、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS9)、ステップS3以下の処理を再度実行する。なお、ステップS9におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT1は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTpだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTpは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0113】
これに対して、形状認識処理が成功した場合(ステップS6においてYESの場合)には、コントローラ7は、容器の開口部を検知するためのタイマ値ΔT2をゼロリセットする(ステップS10)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT2のカウントアップを開始する。
【0114】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT2が判定期間ΔTbまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS11)。タイマ値ΔT2が判定期間ΔTbまでカウントアップされていない場合(ステップS11においてYESの場合)には、コントローラ7は、物体(オブジェクト)が静止状態であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0115】
物体(オブジェクト)が静止状態である場合(ステップS12においてYESの場合)には、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS13)、ステップS11以下の処理を再度実行する。なお、ステップS13におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT2は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTqだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTqは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0116】
これに対して、物体(オブジェクト)が静止状態ではない場合(ステップS12においてNOの場合)には、ステップS10以下の処理が再度実行される。
【0117】
また、タイマ値ΔT2が判定期間ΔTbまでカウントアップされている場合(ステップS11においてNOの場合)には、コントローラ7は、注水モードでの吐水を開始する(ステップS14)。続いて、コントローラ7は、水流の流れを検知するための水領域検知処理を実行する(ステップS15)。
【0118】
そして、コントローラ7は、ステップS15における水領域検知処理の結果、水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部に位置しており、かつ、その開口部から離れているか否かを判断する(ステップS16)。
【0119】
水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部に位置しており、かつ、その開口部から離れている場合(ステップS16においてYESの場合)には、ステップS16の処理が繰返される。
【0120】
これに対して、水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部に位置しておらず、または、その開口部に接近している場合(ステップS16においてNOの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止する(ステップS17)。そして、処理は終了する。
【0121】
一方、タイマ値ΔT1が判定期間ΔTaまでカウントアップされている場合(ステップS4においてNOの場合)には、コントローラ7は、洗浄モードで吐水を開始する(ステップS20)。続いて、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS21)。続いて、コントローラ7は、ステップS21の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS22)。何らからの物体が検知されている場合(ステップS22においてYESの場合)には、ステップS21の処理が繰返される。
【0122】
これに対して、何らの物体も検知されていない場合(ステップS22においてNOの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止するためのタイマ値ΔT3をゼロリセットする(ステップS23)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT3のカウントアップを開始する。
【0123】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT3が判定期間ΔTcまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS24)。タイマ値ΔT3が判定期間ΔTcまでカウントアップされている場合(ステップS24においてYESの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止する(ステップS25)。そして、処理は終了する。
【0124】
これに対して、タイマ値ΔT3が判定期間ΔTcまでカウントアップされていない場合(ステップS24においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS26)。続いて、コントローラ7は、ステップS26の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS27)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS27においてNOの場合)には、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS28)には、ステップS24以下の処理を再度実行する。なお、ステップS28におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT3は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTqだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTrは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0125】
これに対して、何らかの物体が検知されている場合(ステップS27においてYESの場合)には、ステップS21以下の処理が繰返される。
【0126】
<F.物体検知処理>
次に、図7のフローチャートに示す物体検知処理(図4の物体検知部712が提供する機能)の詳細について説明する。この物体検知処理は、ある検知範囲内での何らかの物体(オブジェクト)が存在しているか否かを判断する処理である。この物体検知処理の典型的な実装形態として、概ね3つの方法について説明する。
【0127】
(f1.物体検知処理(その1))
代表的な物体検知処理の方法として、ステレオマッチング処理を用いる方法がある。この方法では、一対のカメラ(ステレオカメラ)が所定の視野範囲を連続的に監視するとともに、何らかの変化があった場合には、その変化部分(差分)を抽出して、この差分についてステレオマッチング処理を実行する。
【0128】
図8は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の処理を説明するためのブロックである。
【0129】
図8を参照して、物体検知処理を実現するための機能として、第1入力画像取得部611と、第1カメラ背景画像保持部612と、第1差分画像生成部613と、第2入力画像取得部621と、第2カメラ背景画像保持部622と、第2差分画像生成部623と、ステレオマッチング処理部633とを含む。
【0130】
第1入力画像取得部611および第2入力画像取得部621は、それぞれ、第1カメラ61および第2カメラ62の撮像により取得される入力画像を取得する。第1カメラ背景画像保持部612および第2カメラ背景画像保持部622は、それぞれ、第1カメラ61および第2カメラ62の視野(撮像範囲)における背景画像を予め保持する。この背景画像は、検知エリアS1に何らの物体(オブジェクト)も存在しない状態で、第1カメラ61および第2カメラ62の撮像により得られる画像に相当する。
【0131】
第1差分画像生成部613は、第1カメラ61の撮像により取得された第1入力画像と予め取得されている第1背景画像との差分(第1差分画像)を算出する。同様に、第2差分画像生成部623は、第2カメラ62の撮像により取得された第2入力画像と予め取得されている第2背景画像との差分(第2差分画像)を算出する。すなわち、第1差分画像生成部613および第2差分画像生成部623は、何らの物体(オブジェクト)も存在しない状態からの変化、すなわち、物体の検知エリアへの侵入を検知する。そして、この変化した部分についてのみを後述するステレオマッチング処理の対象とする。
【0132】
ステレオマッチング処理部633は、相関値算出部634および位置算出部635を含む。
【0133】
相関値算出部634は、第1差分画像および第2差分画像について、局所ブロック毎に画像の相関値を算出し、最も相関値が高くなる位置を特定する。この最も相関値が高くなる位置に基づいて、第1差分画像と第2差分画像との間の相対的な位置関係を決定する。
【0134】
位置算出部635は、相関値算出部634によりマッチングされた状態での第1差分画像および第2差分画像に基づいて、ステレオイメージを仮想的に生成する。すなわち、センサ6上の第1カメラ61および第2カメラ62から物体(オブジェクトOBJ)の各ブロックの位置までの距離を三角測量の原理で算出する。
【0135】
そして、位置算出部635は、所定サイズより大きな塊が検知されたか否かを判断し、所定サイズより大きな塊が検知された場合には、何らかの物体(オブジェクト)が検知エリアS1に侵入したと判断する。
【0136】
なお、背景画像は、予め1回の撮像により得られた画像を用いてもよいが、照明環境などの変化に対応できるように、複数回の撮像によって得られた画像を平均化処理することで、背景画像を動的に生成してもよい。
【0137】
上述の処理手順について、フローチャートを用いてさらに説明する。
図9は、第1の実施の形態に従う物体検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0138】
図9を参照して、コントローラ7は、第1カメラ61および第2カメラ62の撮像によって、第1入力画像および第2入力画像を取得する(ステップS101)。続いて、コントローラ7は、予め登録されている第1背景画像および第2背景画像に対する、取得した第1入力画像および第2入力画像についての差分画像(第1差分画像および第2差分画像)を生成する(ステップS103)。
【0139】
コントローラ7は、ステップS103において生成した一対の差分画像について、その差分値が所定のしきい値以上の領域(たとえば、輝度、明度、彩度などが所定値以上の領域)を抽出し、これらの領域同士についてステレオマッチング処理を実行する(ステップS105)。
【0140】
続いて、コントローラ7は、ステレオマッチング処理により検知された物体(オブジェクト)のサイズが所定値以上であるか否かを判断する(ステップS107)。典型的には、最小の物体サイズとして、縦の最小サイズおよび横の最小サイズが定められており、検知された物体のサイズが、縦および横のそれぞれの最小サイズを越えている場合には、物体(オブジェクト)のサイズが所定値以上であると判断する。
【0141】
検知された物体のサイズが所定値以上である場合(ステップS107においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)があったと判断する(ステップS109)。すなわち、コントローラ7は、物体検知処理が成功と判断する。そして、処理はリターンする。
【0142】
検知された物体のサイズが所定値未満である場合(ステップS107においてNOの場合)には、コントローラ7は、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)はなかったと判断する(ステップS111)。すなわち、コントローラ7は、物体検知処理が失敗と判断する。そして、処理はリターンする。
【0143】
(f2.物体検知処理(その2))
上述のようなステレオマッチング処理を利用する方法に代えて、移動物体の位置および向きに基づいて、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)を検知してもよい。典型的には、オプティカルフローと称される技術を用いることができる。
【0144】
図10は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の別の処理方法を説明するための図である。図10を参照して、何らかの物体(オブジェクトOBJ)の移動(侵入)を検知するために、公知の方法で、移動ベクトルを示すオプティカルフロー64を算出する。そして、このオプティカルフロー64のベクトル方向やベクトルサイズなどに基づいて、物体の移動などを検知する。
【0145】
このオプティカルフローは、時系列上に配置された画像フレームについて、隣り合うフレーム間の画素値の輝度勾配や局所ブロック対応など利用することで算出できる。そして、この算出されたオプティカルフローに対してクラスタリングなどの処理を行なうことで、同一とみなすことができる成分同士をクラスタリングして得られるブロックについてのベクトルサイズやベクトル方向から進入物体を検知する。
【0146】
(f3.物体検知処理(その3))
さらに、検知エリアに対応付けてセンサをグリッド状に配置することで、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)を検知してもよい。
【0147】
図11は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理のさらに別の処理方法を説明するための図である。図11を参照して、検知エリアに対応付けて、複数のセンサがグリッド状に配置されているものとする。このセンサとしては、障害物の検知が可能なデバイスであり、たとえば超音波センサなどを利用できる。
【0148】
そして、これらのグリッド状に配置されたセンサによる検知結果およびその配置位置の状態に基づいて、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)を検知する。
【0149】
<G.形状認識処理>
次に、図7のフローチャートに示す形状認識処理(図4の形状認識部713が提供する機能)の詳細について説明する。この形状認識処理は、ある検知範囲内で、予め登録された形状と一致する形状を有する物体(オブジェクト)が存在しているか否かを判断する処理である。
【0150】
本実施の形態に従う吐水制御においては、主として、容器などの物体(オブジェクト)の開口部を検知するために用いられる。このような開口部を検知するための予め登録された形状として、本実施の形態においては、開口部が(閉曲線などの)閉路であると想定して、検知エリア内で「閉じた空間」をサーチする。
【0151】
なお、この検知される「閉じた空間」について、最小サイズ、または、最大のサイズに関する制約範囲をさらに加えてもよいし、色や太さなどの属性情報に関する制約範囲をさらに加えてもよい。
【0152】
さらに、形状そのものだけでなく、検知された物体(オブジェクト)が静止を維持している時間などのように、検知対象の物体(オブジェクト)が満たすべき挙動に関する制約条件を加えてもよい。
この形状認識処理の典型的な実装形態として、概ね3つの方法について説明する。
【0153】
(g1.形状認識処理(その1))
代表的な物体検知処理の方法として、画像にエッジ抽出処理を用いる方法がある。この方法では、カメラの撮像により得られた画像内のエッジを抽出し、この抽出したエッジが開口部を示す閉路である場合には、開口部が存在すると判断する。
【0154】
図12は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の処理を説明するための図である。
【0155】
図12(a)に示すように、蛇口4を視野範囲とするカメラの撮像によって得られた画像では、容器などの物体(オブジェクト)の主要部が含まれる。この画像が取得される時点、すなわち、形状認識処理が最初に開始された時点では、容器に水が注入されていないため、容器の開口部全体を視認することができる。
【0156】
典型的に、形状認識部713は、取得された画像に対してエッジ抽出した結果に基づいて、物体の形状を認識する。すなわち、図12(a)に示す画像に対して、エッジ抽出処理を実行すると、図12(b)に示すようなエッジ抽出画像が得られる。そして、この抽出されたエッジをたどってゆくことで、エッジの分岐や途切れなどを特定して、一巡するエッジを閉路として抽出する。たとえば、抽出されたエッジ部分のうち、図12(c)に示すような一巡の閉路EDGを開口部として特定する。なお。複数のエッジの閉路が抽出された場合には、最も上部側に位置する閉路を容器の開口部として特定する。すなわち、形状認識部713は、物体検知部712により検知された物体の存在領域の吐水口に近い側の範囲から開口部の領域を検知する。
【0157】
なお、このエッジの閉路抽出処理については、公知の方法を採用することができる。たとえば、抽出したエッジを所定のサイズのブロックに分割するとともに、各ブロックについて、エッジの端点または分岐点に該当するか否かを判断する。そして、抽出された端点、および、分岐点から直近の端点までの間のエッジを消去する。これらの消去の結果、残ったエッジから閉路を特定する。
【0158】
図13は、閉路抽出処理に用いられるパターン例を示す図である。すなわち、図13(a)には、端点に相当すると判断されるパターン例を示す。図13に示す例では、3画素×3画素の単位ブロックについて、いずれかのパターンと一致するか否かを判断する。そして、いずれかのパターンと一致した単位ブロックについては、その中心画素を端点として特定する。
【0159】
また、図13(b)には、分岐点に相当すると判断されるパターン例を示す。図13に示す例では、3画素×3画素の単位ブロックについて、いずれかのパターンと一致するか否かを判断する。そして、いずれかのパターンと一致した単位ブロックについては、その中心画素を分岐点として特定する。
【0160】
なお、図12(c)に示すエッジの閉路抽出処理の結果に対して、さらに、容器の開口部と判断できる範囲に関する制約条件を設定してもよい。このような制約条件を設定することで、開口部の検知精度や検知速度を向上させることもできる。
【0161】
このような制約条件としては、例えば、閉路で囲まれた領域面積の上限サイズ、鉛直方向に対する閉路の傾き角度などを用いることができる。
【0162】
このように、形状認識部713は、抽出されたエッジのうち閉じた空間を抽出し、当該抽出した閉じた空間を物体が有する開口部と検知する。上述の処理手順について、フローチャートを用いてさらに説明する。
【0163】
図14は、第1の実施の形態に従う形状認識処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0164】
図14を参照して、コントローラ7は、第1カメラ61または第2カメラ62の撮像によって、対象の物体(オブジェクト)を写した入力画像を取得する(ステップS201)。続いて、コントローラ7は、ステップS201において取得した入力画像に対してエッジ抽出処理を実行する(ステップS203)。これにより、エッジ抽出画像が得られる。
【0165】
続いて、コントローラ7は、ステップS203において取得されたエッジ抽出画像に対して、エッジの端点および分岐点の抽出処理を実行する(ステップS205)。さらに、コントローラ7は、抽出した端点、および、分岐点から端点までの間のエッジ部分を消去する(ステップS207)。
【0166】
さらに、コントローラ7は、ステップS207の処理後の画像に含まれる閉路の部分を特定し(ステップS209)、複数の閉路が抽出された場合には、最も上部の閉路のみを抽出する(ステップS211)。なお、この「最も上部」であるかの判断は、上述の物体検知処理において取得されたステレオ画像に基づいて算出される位置情報から判断される。
【0167】
最終的に、コントローラ7は、ステップS211において抽出された閉路の形状と位置とを含む物体情報を格納する(ステップS213)。なお。この物体情報は、物体情報記憶部715(図4)に保持される。そして、処理はリターンする。
【0168】
(g2.形状認識処理(その2))
上述したようなエッジ抽出処理を用いる方法に代えて、容器の開口部に所定の色または模様を付しておき、その領域をサーチすることで開口部を検知してもよい。
【0169】
図15は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の別の例を説明するための図である。図15に示すように、容器などの物体(オブジェクトOBJ)の開口部を特定の色または模様としておくことで、他の領域から区別する。
【0170】
なお、開口部に付する色または模様としては、どのようなものであってもよいが、背景の色や模様に対してより明確に区別できるようなものが好ましい。すなわち、背景に含まれる色や模様に対して、輝度、明度、彩度などが大きく異なる色などが好ましい。
【0171】
(g3.形状認識処理(その3))
さらに別の方法として、カメラで撮像される画像を用いない方法も採用することができる。
【0172】
たとえば、容器の開口部に感光性の物質を予め付しておき、感光物質の検知センサで検知するようにしてもよい。同様の方法として、容器の開口部にICタグなどを予め埋め込んでおき、アンテナで検知するようにしてもよい。
【0173】
また、容器への注水中においては、当該注水中の水に対して超音波を照射し、その反射波を測定することで、その水流位置を特定する。そして、その特定した水流位置の最下部の周辺を容器の開口部として判断することができる。
【0174】
<H.水領域検知>
次に、図7のフローチャートに示す水領域検知処理(図4の水流検知部714が提供する機能)の詳細について説明する。この水領域検知処理は、ある検知範囲内で、水流の存在および場所を検知する処理である。
【0175】
本実施の形態に従う吐水制御においては、水領域検知処理によって検知された水流の場所などに基づいて、容器に対してどの程度の量の水が注水されているかを判断し、吐水の停止制御を行なう。
【0176】
このような水領域検知処理の典型的な実装形態として、以下のような方法が想定される。
【0177】
(g1.水領域検知処理(その1))
代表的な水領域検知処理の方法として、オプティカルフローを用いる方法について説明する。
【0178】
図16は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理の概要を示す図である。図16(a)に示すように、容器に注水されている状態をカメラで撮像して得られる画像に対して、上述したようなオプティカルフローの算出処理が実行される。その結果、図16(b)に示すようなオプティカルフロー64が算出されたとする。
【0179】
さらに、図16(b)に示される多数のオプティカルフロー64に対してクラスタリング処理を実行することで、類似したベクトル方向、および/または、ベクトル量の差(バラツキ)が小さいグループ(フローの塊)を検知する。そして、この検知された塊の最も下部を水流端と判定する。
【0180】
すなわち、水流検知部714は、重力下方向への時間的変化を示す塊部分を水流として特定するとともに、当該特定された水流の重力方向の下端位置を検知する。
【0181】
次に、図17を参照して、オプティカルフローのクラスタリング処理について説明する。図17は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理におけるクラスタリング処理の概要を示す図である。
【0182】
図17を参照して、ベクトル方向およびベクトルサイズの揃ったオプティカルフローの塊の領域を水流領域と判定するために、まず、形状認識の対象エリア(検知エリアS2)内において、検知されたオプティカルフローの最外周の範囲を特定する。ここで、特定された最外周の範囲を幅W×高さHであるとすると、水流領域と判定するために、以下のような条件(後述する図20のフローチャートにおいては「条件A」とも称す。)を設定する。
【0183】
(a)幅W<しきい値Th1
(b)高さH>しきい値Th2
(c)水流領域の下端位置が形状認識対象エリア(検知エリアS2)内であること
これらの条件のうち、条件(a)は、吐水口5から吐出される水の範囲を超えて注水されないことを考慮したものである。条件(b)は、吐水を停止するための条件として、容器に注入される水流端の上下移動、容器自体の上下移動を判断するためのものである。条件(c)は、容器内に注水されるのではなく、単に水が流れている状態を誤検知したり、シンク3による乱反射した光を誤検知したりすることを防止するためのものである。
【0184】
次に、水流端と容器の開口部との位置関係を判定するための処理について説明する。
図18は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における水流領域の下端位置を判定する処理の概要を示す図である。
【0185】
水流端が容器の開口部(閉じた空間の輪郭)から十分内側に位置すると判定するために、以下のような条件(後述する図20のフローチャートにおいては「条件B」とも称す。)を設定する。
【0186】
(d)水流領域の下端面と開口部内部の最も接近した部分との距離>Th3
すなわち、図18に示すような、水流領域の下端面から開口部内部への距離、図18左図に示す複数の矢印のうち最も短いものの長さについて、所定のしきい値以上であるか否かを判断する。
【0187】
この条件(d)は、容器内に注水が継続している状態を判定するためのものである。
このように、モード管理部716は、形状認識部713により検知された開口部の内側に水流の下端位置が存在するか否かに基づいて、物体への注水の状態を判断する。
【0188】
なお、容器への注水中は、容器の開口部の一部が不可視となるので、先に実行された形状認識処理によって得られた物体情報を利用して、その検知精度を高めることが好ましい。以下、先に取得された物体情報(対象の容器の形状情報)を利用する方法について説明する。
【0189】
図19は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における物体情報を利用する処理の概要を示す図である。
【0190】
図19(a)に示すように、形状認識処理によって得られた物体情報は、水の流れがない状態で得られた情報である。そのため、図19(b)に示すように、注水中においては、その水流によって容器の開口部の一部が視認できないため、認識率が低下してしまう。
【0191】
そこで、図19(c)に示すように、予め取得された物体情報からテンプレートを作成し、このテンプレートを用いて、局所マッチングによって一致する場所を探索する。このようなテンプレートを用いた局所マッチングを行なうことで、容器の開口部についての物体情報を一旦取得した後は、開口部が部分的に視認できない状態であっても、それを適切に認識することができる。
【0192】
このように、ユーザが使用する容器の形状は千差万別であり、また、注水が始まるとその開口部の一部が隠蔽されるため、開口部の認識難易度が上昇してしまう。さらに、ユーザが手に持っているため、容器がぶれることもあるため、開口部の内側に水流が存在するか否かの判断が難しくなる。これに対して、上述のような吐水前の形状との対応をとることで認識精度を高く維持することができる。
【0193】
図20は、第1の実施の形態に従う水領域検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0194】
図20を参照して、コントローラ7は、形状認識処理によって得られた物体情報(容器の開口部の形状情報や位置情報)を読出し、テンプレートを作成する(ステップS301)。続いて、コントローラ7は、取得された画像に対してオプティカルフローの算出処理を実行する(ステップS303)。さらに、コントローラ7は、算出したオプティカルフローの類似性および近接性に基づいて、クラスタリング処理を実行する(ステップS305)。コントローラ7は、ステップS305におけるクラスタリング処理によって複数のクラスタ(グループ)が取得された場合には、最も上部側に位置するクラスタを処理対象に設定する(ステップS307)。
【0195】
そして、コントローラ7は、処理対象のクラスタが上述した条件Aを満たすか否かを判断する(ステップS309)。処理対象のクラスタが上述した条件Aを満たさない場合(ステップS309においてNOの場合)には、コントローラ7は、処理対象に設定されていないクラスタが残っていないか否かを判断する(ステップS311)。処理対象に設定されていないクラスタが残っている場合(ステップS311においてYESの場合)には、コントローラ7は、残りのクラスタのうち、次に上部側に位置するクラスタを処理対象に設定する(ステップS313)。そして、ステップS309以下の処理が繰返される。
【0196】
一方、処理対象に設定されていないクラスタが残っていない場合(ステップS311においてNOの場合)には、コントローラ7は、水流領域が存在しないと判断する(ステップS315)。すなわち、コントローラ7は、水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部には位置していないと判断する。そして、処理はリターンする。
【0197】
処理対象のクラスタが上述した条件Aを満たしている場合(ステップS309においてYESの場合)には、コントローラ7は、テンプレートを走査することで、局所マッチングを行ない、容器の開口部を探索する(ステップS317)。すなわち、コントローラ7は、閉じた空間を検知する。
【0198】
続いて、コントローラ7は、クラスタ領域の輪郭位置と、ステップS317において検知された、閉じた空間の位置情報とを照合する(ステップS319)。そして、コントローラ7は、クラスタの下部(水流領域の下端面)と閉じた空間の位置(容器の開口部)との関係が条件Bを満たすか否かを判断する(ステップS321)。
【0199】
クラスタの下部と閉じた空間の位置との関係が条件Bを満たさない場合(ステップS321においてNOの場合)には、コントローラ7は、水流端が容器の開口部から処理距離以上離れてはいないと判断する(ステップS323)。そして、処理はリターンする。
【0200】
これに対して、クラスタの下部と閉じた空間の位置との関係が条件Bを満たす場合(ステップS321においてYESの場合)には、コントローラ7は、水流端が容器の開口部から処理距離以上離れていると判断する(ステップS325)。そして、処理はリターンする。
【0201】
(g2.水領域検知処理(その2))
上述のような画像処理を利用する方法に代えて、注水中に水に対して超音波を照射し、その反射波を測定することで水流位置を検知してもよい。このとき、注水動作によって、水の流れに揺らぎが生じるので、この揺らぎ領域を特定することで、水流位置を検知できる。
【0202】
(g3.水領域検知処理(その3))
上述のようなオプティカルフローを利用する方法に代えて、色空間における変化に基づいて水流位置を検知してもよい。たとえば、水流が存在しない状態で撮像して得られる画像に含まれる波長成分を抽出して、背景画像を示すチャートを作成しておく。このチャートは、画像内のエッジ量を示すようなものが想定される。そして、水流が存在している場合に得られる画像から同様の方法でチャートを作成し、両チャートを比較することで、水流の存在を判断することができる。
【0203】
たとえば、背景画像では、水流により視野が妨げられないのでシンク3の内面を明確に監視することができ、その結果、エッジ成分が相対的に多い画像を取得することができる。これに対して、水流が存在する場合には、「ぼやけた」ような状態となり、エッジ成分が相対的に少なくなる。すなわち、上述のような2つの状態でそれぞれ取得された画像の特徴量を比較した場合には、低周波成分(典型的には、平均色)についてはあまり変化しないが、高周波成分(典型的には、エッジ成分)については異なって見えることになる。
【0204】
このような手法により、水領域を検知することができる。
(g4.水領域検知処理(その4))
用途によっては、予め感光性の物質を添加することもでき、この場合には、感光性の物質を含む水を感光物質に感度を有するセンサを用いて測定する。そして、この測定結果にうち、所定の大きさを有する塊の領域を水領域として特定することができる。
【0205】
すなわち、検知された情報のうち、重力方向に長い長方形に近似した形状の領域が水流領域であり、容器内に入ると当該領域が途切れ、手や容器の縁にあたると拡散して領域の大きさが極端に変化するため、このような特性を利用して検知することができる。
【0206】
(g5.水領域検知処理(その5))
用途によっては、比較的温度の高いお湯を吐水する場合もある。この場合には、赤外センサなどの温度に対して感度を有するセンサを用いることで、水領域を検知することができる。
【0207】
<I.本実施の形態における作用効果>
本実施の形態によれば、洗浄時には、高い洗浄効果および高い節水効果を実現できる吐水制御を行なうことができ、かつ、注水時には、容器内のみへの効率的な注水および手や容器を不用意に濡らさない吐水制御を行なうことができる。すなわち、ユーザが容器を手に持った状態で注水する場合には、洗浄や水張りといった用途とはことなり、水をこぼさずに所望の量だけ速く注水したいというニーズがあり、本実施の形態によれば、吐水形状を適切に変化させること、かつ、容器への注水量が適切なタイミングで吐水を停止することができる。このように、吐水形状に切り替えることで水の用途に適した吐水制御を行なうことができる。
【0208】
より具体的には、本実施の形態によれば、利用者が蛇口やボタンを操作することなく、洗浄なら洗浄効果と節水効果に優れた状態(シャワー形状)で吐水し、注水なら容器や水を濡らさず効率的に注水できる状態(ストレート形状)で吐水というように、用途に応じた吐水制御を利用者に提供できる。
【0209】
より具体的には、本実施の形態によれば、ユーザが片手に物を持ちながらもう片方の手のみで容器に注水する場合や、容器が重くて両手で支える必要がある場合でも所望の量だけ注水することができる。
【0210】
[第2の実施の形態]
上述した第1の実施の形態においては、主として、家庭などで使用される自動給水装置(自動水栓)について説明した。一方、第2の実施の形態においては、飲食店などで使用される自動給水装置(自動水栓)について説明する。
【0211】
飲食店などでは、多数の容器が使用されるが、使用される容器は予め決まっている場合も多い。そのため、このような容器の洗浄や注水を想定すると、対象の容器を特定し、当該特定した容器に適合した、吐水温度や洗浄液の混合などを制御することが好ましい。
【0212】
そこで、本実施の形態においては、形状認識処理によって対象となっている容器を特定するとともに、当該特定した容器の種類や目的に応じて、複数のモードから適切なモードを選択して吐水制御を行なう構成について例示する。
【0213】
<J.概要>
本発明に従う第2の実施の形態として、飲食店などの特殊用途を想定して、自動給水装置を搭載した流し台について説明する。この自動給水装置は、少なくとも、吐水温度、ならびに、洗浄液混合の量およびタイミングを制御可能に構成されている。なお、上述した第1の実施の形態と同様に、吐水形状または吐水量(吐水圧)をさらに制御可能であってもよい。
【0214】
特に、本実施の形態においては、注水または洗浄の対象となる容器の種類の数だけモードを設定することが可能である。このような多数のモードを設定することで、対象の容器の種類に適合した吐水を行なうことができる。
【0215】
なお、上述した第1の実施の形態においては、その付加機能として、洗浄モードと注水モードとを吐水途中で切り替えることも可能であってが、本実施の形態においては、容器の種類別にモードが割当てられるので、基本的には、吐水途中でモードを切り替える必要はない。しかしながら、このことは、本発明の範囲を不当に制限することを意味しない。
【0216】
<K.外観>
本実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台の外観については、上述の図1に示す第1の実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台1の外観と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。但し、後述するように、吐水温度を調整するための温度調整機構や洗浄液を混合するための洗浄液混合機構などがさらに付加されるため、これらの機構が外部に露出する場合には、その外観がその点において図1の流し台1とは相違し得る。
【0217】
<L.制御機能>
図21は、第2の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【0218】
図21を参照して、本実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するハードウェアとしては、図2に示す第1の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能に対して、温度調整機構83および洗浄液混合機構84をさらに付加したものである。
【0219】
温度調整機構83は、導管41の途中に並列的に配置され、コントローラ7からの指令に応じて、吐出される水の温度を調整する。図21に示す例では、温度調整機構83の内部に図示しないヒータが組込まれており、このヒータの加熱によって吐水温度を調整する。
【0220】
なお、このような吐水温度を調整する方法としては種々の公知の構成を採用することができる。なお、温度調節のための物理的機構は、温水(給湯水)の配水管以外はユーザに見えない形態で設置される場合が多い。たとえば、系の外部に配置された給湯器からの配水量や給水温の制御、および、給湯してない給水との混合割合の制御がされる。
【0221】
洗浄液混合機構84は、導管41に接続され、コントローラ7からの指令に応じた量の洗浄液を吐出される水に付加する。すなわち、洗浄液混合機構84は、吐水される水に対する洗浄液の混合度を制御する。
【0222】
その他の部位については、コントローラ7における制御機能を除いて、図2に示すハードウェア構成と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0223】
図22は、第2の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。図22に示す第1の実施の形態に従うブロック図に比較して、オブジェクト認識部711の物体情報記憶部715に、形状情報718が予め格納されている点、ならびに、モード管理部716および吐水指令生成部717における制御動作が異なっている。その他の点については、上述したので、詳細な説明は繰返さない。
【0224】
オブジェクト認識部711は、基本的には、上述した第1の実施の形態に従うオブジェクト認識部711と同様の機能を提供する。但し、本実施の形態においては、対象となる容器の別の定義を含む形状情報718に基づいて、形状認識処理が実行される。すなわち、形状情報718は、予め認識されるべき各物体の形状や位置についての物体情報が記述されており、形状認識部713は、物体情報に記述された物体情報との一致/不一致に基づいて、特定の形状を有する物体を検知する。
【0225】
モード管理部716は、オブジェクト認識部711によるオブジェクト認識処理の結果に応じて、吐水の開始/停止の判定や吐水状態の切り替え判定を行なう。本実施の形態においては、複数のモードを設定可能であり、各モードの別に吐水状態を独立に設定することができる。そして、モード別に、吐水温度、洗浄液混合の有無、洗浄液混合の割合などがそれぞれ独立に設定される。なお、上述した第1の実施の形態において述べたように、吐水量や吐水形状についても、モード別に設定することもできる。なお、実施の形態においては、理解を容易にするために、3種類の容器が洗浄または注水の対象となることが想定される場合を考える。少なくとも、容器の種類の数だけモードが設定可能であるので、吐水状態は、後述するように、3種類が設定されているものとする。
【0226】
吐水指令生成部717は、モード管理部716での判定結果に基づいて、アクチュエータ81に指令を与えることで、吐水の開始・停止を制御したり、温度調整機構83に指令を与えることで、吐水の温度を制御したり、洗浄液混合機構84に指令を与えることで、吐水中の洗浄液の割合などを制御したりする。さらに、吐水形状などを変更する場合には、切替機構82に指令を与えることで、ストレート形状とシャワー形状とを切り替えることができる。
【0227】
<M.モード設定例>
本実施の形態においては、洗浄や給水の対象となる容器の材質や用途によって、きめ細やかな吐水状態を設定できる。たとえば、以下のような3種類の容器に応じた吐水を行なう場合について説明する。
【0228】
(1) 洗剤を使う必要がない容器、あるいは、洗剤を使う必要がないのでコストや環境負荷の面から洗浄液やお湯を使わない方がよい容器であるとの設定
(2) 耐熱素材でないため高温のお湯を使うことが望ましくない容器(この場合には、洗浄時の吐水温度を低めに維持する代わりに洗浄液を濃くする)であるとの設定
(3) 通常容器(この場合には、洗浄時の吐水温度を高めに維持することで洗剤液の使用量を最小限に抑えながら効率的に洗浄する)であるとの設定
本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)は、形状認識機能を搭載しているので、識別できる形状を有する容器であれば、上述のような吐水状態の切り替えを行なうことができる。
【0229】
図23は、第2の実施の形態に従う自動給水装置におけるモード設定の対象となった容器の一例を示す図である。図24は、図23に対応する形状情報718の設定例を示す図である。以下の説明では、図23(a)〜(c)に示すように、開口部の形状やサイズの異なる容器(花瓶、ガラス容器、マグカップ、箸収納ケース)を想定する。
【0230】
すなわち、上述した第1の実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)では、吐水開始前の形状認識処理によって得られた形状情報をテンプレートとしてマッチングを行なうことで、注水中の「閉じた空間」に対する形状認識処理を行なう例について示した。一方、本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)では、図23に示すような容器についての形状情報(あるいは、形状情報から生成されるテンプレート)を事前に格納しておき、これらの情報に基づいて、形状認識処理を実行する。
【0231】
なお、本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)においては、形状認識処理の結果から得られる物体の形状などの情報を改めて登録する必要はない。
【0232】
より具体的には、図24に示すような形状情報718A〜718Cが予め登録される。これらの形状情報718A〜718Cの各々においては、認識対象の物体(オブジェクト)の形状についての特徴量に加えて、吐水温度および洗浄液混合割合が設定される。なお、形状情報718A〜718Cをパターン1〜3と称する場合もある。
【0233】
本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)においては、洗浄または注水の対象となっている物体の形状がいずれのパターンに合致するかを判断し、合致するパターンに対応する形状情報に記載された内容に基づいて、吐水制御を行なう。
【0234】
図24に示す形状情報718A〜718C中の「吐水温度」は、吐水口5から吐水される水温を示し、「混合液割合」は、吐水口5から吐水される水に含まれる洗浄液割合を示す。なお、形状情報718A(吐水パターン1)においては、具体的な温度の値が記載されていない。本実施の形態に従う温度調整機構83は、基本的には加熱機能のみを有するので、水道管あるいは給湯機から供給される水の通常温度よりも吐水温度を高くすることはできるが、通常温度よりも低くしたり、通常温度自体を制御したりすることはできないため、「昇温を行なわない」あるいは「給湯機からのお湯は混ぜない」という制御動作を「給湯無し」と記載している。
【0235】
<N.動作例>
次に、本実施の形態に従う自動給水装置の典型的な動作例について、タイムチャートを参照しながら説明する。
【0236】
なお、本実施の形態に従う自動給水装置では、洗浄液を混合する場合であっても、吐水開始から一定時間経過した後に、洗浄液の混合を停止する。そして、この洗浄液の混合停止からさらに一定時間経過すると、吐水を停止する。これは、洗浄液を用いて容器を洗浄した後、洗浄液を含まない水ですすぐという動作を想定したものである。
【0237】
図25は、本実施の形態に従う自動給水装置における動作を示すタイムチャートである。なお、図25(a)〜(c)は、図24(a)〜(c)の各パターンに対応した吐水制御動作を示す。なお、図25(a)〜(c)には、吐水温度制御と洗浄液混合制御とを区別可能な形態でグラフが表示されている。すなわち、図25(a)〜(c)に記載のグラフは、共通の時刻を横軸とし、「吐水有無・温度」を縦軸とするグラフと、「洗浄液混合割合」を縦軸とするグラフとが並列的に気合いされている。「吐水有無・温度」には、吐水の開始/停止の状態に加えて、吐水温度なども示される。
【0238】
(n1.パターン1)
図25(a)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて図23(a)に示す花瓶を洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザが図23(a)に示す花瓶を蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0239】
すると、自動給水装置が、図25(a)に示す時刻t41において、検知エリアS1(図5参照)内に当該オブジェクト(花瓶)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクト(花瓶)が実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t41〜t42)に亘って、オブジェクト(花瓶)の状態を判断する。
【0240】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクト(花瓶)が実質的に静止している場合には、時刻t41から判定期間ΔTdが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクト(検知)が検知され続ける。すると、自動給水装置は、時刻t42において、形状認識処理を開始する。
【0241】
そして、時刻t43において、検知エリアS1内のオブジェクトが図24(a)に示す形状情報718Aに記載された形状と一致すると判断されたとする。すなわち、自動給水装置が検知エリアのオブジェクトが図25(a)に示す花瓶と一致すると判断したとする。
【0242】
すると、自動給水装置は、時刻t43において吐水を開始する。このとき、先の形状認識処理においてパターン1に記載の形状と一致すると判断されたので、パターン1の形状情報718Aに記載の設定に従って、吐水温度制御および洗浄液混合制御が実行される。パターン1の場合には、吐水温度制御としては、供給される水の温度のままでよく、かつ、洗浄液についても混合する必要がないので、供給される水がそのままの状態(通常温度)で吐水される。
【0243】
その後、吐水開始から判定時間ΔTfだけ経過した時刻t45において吐水が停止される。なお、吐水の停止は、検知エリア内にオブジェクトが存在しなくなったことを条件としてもよい。
【0244】
なお、検知エリアS1(図5参照)内へのオブジェクト(花瓶)の侵入の検知から所定の判定期間ΔTeが経過するまでに、形状認識処理によって予め定められたいずれかのパターンと一致する形状が検知できなかった場合(時刻t44)には、吐水制御は中断され、オブジェクト検知前の状態にリセットされる。
【0245】
(n2.パターン2)
図25(b)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて図23(b)に示すガラス容器を洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザが図23(b)に示すガラス容器を蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0246】
すると、自動給水装置が、図25(b)に示す時刻t51において、検知エリアS1(図5参照)内に当該オブジェクト(ガラス容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクト(ガラス容器)が実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t51〜t52)に亘って、オブジェクト(ガラス容器)の状態を判断する。
【0247】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクト(ガラス容器)が実質的に静止している場合には、時刻t42から判定期間ΔTdが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクト(検知)が検知され続ける。すると、自動給水装置は、時刻t52において、形状認識処理を開始する。
【0248】
そして、時刻t53において、検知エリアS1内のオブジェクトが図24(b)に示す形状情報718Bに記載された形状と一致すると判断されたとする。すなわち、自動給水装置が検知エリアのオブジェクトが図25(b)に示すガラス容器と一致すると判断したとする。
【0249】
すると、自動給水装置は、時刻t53において吐水を開始する。このとき、先の形状認識処理においてパターン2に記載の形状と一致すると判断されたので、パターン2の形状情報718Bに記載の設定に従って、吐水温度制御および洗浄液混合制御が実行される。パターン2の場合には、吐水温度制御について、目標温度が35℃に設定され、かつ、洗浄液については、洗浄液混合割合が2%に設定される。そのため、それぞれの設定に従って吐水される。
【0250】
その後、吐水開始から判定時間ΔTgだけ経過した時刻t55において洗浄液の混合が停止され、さらにその後、吐水開始から判定時間ΔTfだけ経過した時刻t56において吐水が停止される。
【0251】
その他の動作については、図25(a)において説明した動作と同じであるので、詳細な説明は繰返さない。
【0252】
(n3.パターン3)
図25(c)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて図23()に示すマグカップを洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザが図23(c)に示すマグカップを蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0253】
すると、自動給水装置は、上述の図25(b)と同様の制御を行なう。なお、パターン3においては、吐水温度制御の目標温度および洗浄液混合制御の混合割合がパターン2のものとは異なっているが、その他については、パターン2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0254】
(n4.変形例)
吐水パターンの数やパターンの種類は、上述したものに限定されない。また、認識対象のオブジェクトとしては、容器の開口部の形状だけでなく、容器全体の形状や容器に付与されたマークなどであってもよい。さらに、マークを付与したカードをかざすことを想定して容器以外のマークを認識するようにしてもよい。さらに、認識は形状だけでなく、色や模様の認識を利用してもよいし、容器の開口部などICタグなどを埋め込んでおきこれを検知するようにしてもよい。
【0255】
上述したように、第2の実施の形態において、第1の実施の形態において説明したような、吐出形状の切替制御を組み合わせてもよい。
【0256】
<O.全体処理フロー>
図26は、第2の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0257】
図26を参照して、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を実行する(ステップS51)。この物体検知処理の内容については、上述した第1の実施の形態において詳述したので、詳細な説明は繰返さない。続いて、ステップS51の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS52)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS52においてNOの場合)には、ステップS51の処理が繰返される。
【0258】
何らかの物体が検知された場合(ステップS52においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知された物体(オブジェクト)が実質的に静止状態であるか否かを判断するためのタイマ値ΔT4、および、検知された物体(オブジェクト)についての形状認識処理の成否を判断するためのタイマ値ΔT5をゼロリセットする(ステップS53)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT4およびΔT5のカウントアップを開始する。
【0259】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT4が判定期間ΔTdまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS54)。
【0260】
タイマ値ΔT4が判定期間ΔTdまでカウントアップされていない場合(ステップS54においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS55)。続いて、ステップS55の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS56)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS56においてNOの場合)には、処理は終了する。
【0261】
これに対して、何らかの物体が検知された場合(ステップS56においてYESの場合)には、コントローラ7は、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS57)、ステップS54以下の処理を再度実行する。なお、ステップS57におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT4およびΔT5は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTsだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTsは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0262】
一方、タイマ値ΔT4が判定期間ΔTdまでカウントアップされている場合(ステップS54においてNOの場合)には、コントローラ7は、タイマ値ΔT5が判定期間ΔTeまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS58)。タイマ値ΔT5が判定期間ΔTeまでカウントアップされている場合(ステップS58においてNOの場合)には、処理は終了する。
【0263】
これに対して、タイマ値ΔT5が判定期間ΔTeまでカウントアップされていない場合(ステップS58においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS2(図5参照)内に対して形状認識処理を実行する(ステップS59)。なお、この形状認識処理については、上述した第1の実施の形態において詳述したので、詳細な説明は繰返さない。
【0264】
続いて、コントローラ7は、形状認識処理が成功したか否かを判断する(ステップS60)。すなわち、コントローラ7は、予め登録された形状(パターン)と一致する形状を検知できたか否かを判断する。
【0265】
形状認識処理が成功しなかった場合(ステップS60においてNOの場合)には、ステップS57以下の処理が繰返される。
【0266】
これに対して、形状認識処理が成功した場合(ステップS60においてYESの場合)には、コントローラ7は、ステップS60において検知された形状認識に相当するパターンを判断する(ステップS61)。
【0267】
検知された形状認識に相当するパターンが「1」であった場合(ステップS61において「パターン1」)には、コントローラ7は、パターン1の形状情報を選択する(ステップS62)。また、検知された形状認識に相当するパターンが「2」であった場合(ステップS61において「パターン2」)には、コントローラ7は、パターン2の形状情報を選択する(ステップS63)。また、検知された形状認識に相当するパターンが「3」であった場合(ステップS61において「パターン3」)には、コントローラ7は、パターン3の形状情報を選択する(ステップS64)。
【0268】
その後、コントローラ7は、選択した形状情報に記載の状態で吐水を開始するとともに、洗浄液および吐水の停止タイミングを判断するためのタイマ値ΔT6をゼロリセットする(ステップS65)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT6のカウントアップを開始する。
【0269】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTgまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS66)。タイマ値ΔT6が判定期間ΔTgまでカウントアップされていない場合(ステップS66においてYESの場合)には、コントローラ7は、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS67)には、ステップS66以下の処理を再度実行する。なお、ステップS67におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT6は、洗浄液の停止タイミングを判断するための繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTtだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTtは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0270】
これに対して、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTtまでカウントアップされている場合(ステップS66においてNOの場合)には、コントローラ7は、洗浄液の混合を停止する(ステップS68)。そして、コントローラ7は、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTfまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS69)。タイマ値ΔT6が判定期間ΔTfまでカウントアップされていない場合(ステップS69においてYESの場合)には、コントローラ7は、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS70)には、ステップS69以下の処理を再度実行する。なお、ステップS70におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT6は、吐水の停止タイミングを判断するための繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTtだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTtは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0271】
これに対して、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTfまでカウントアップされている場合(ステップS69においてNOの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止する(ステップS71)。そして、処理は終了する。
【0272】
<P.本実施の形態における作用効果>
本実施の形態によれば、飲食店などにおいて、容器の種類によって洗浄や注水をきめ細かに切り替えたいような場合に、ユーザが、対象の容器の種類などについて特に意識や記憶をすることなく、蛇口の近くで容器を静止させるだけで、自動的にその容器に適した吐水モードでの吐水が開始される。そのため、ユーザの負担を下げつつ、洗浄などの効率を向上させることができる。
【0273】
さらに、第1の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせることで、家庭内での通常の用途向けに適用する場合には、上述の第1の実施の形態における作用効果に加えて、洗浄効率を高めつつ、注水時には温度制御や洗浄混入などの不必要な制御が行なわれないようにすることもできる。
【0274】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0275】
1 流し台、2 本体部、3 シンク、4 蛇口、5 吐水口、6 センサ、7 コントローラ、41 導管、42 密閉弁、61 第1カメラ、62 第2カメラ、63 画像処理エンジン、64 オプティカルフロー、71 プロセッサ、72 メモリ、73 インターフェイス、81 アクチュエータ、82 切替機構、83 温度調整機構、84 洗浄液混合機構、611 第1入力画像取得部、612 第1カメラ背景画像保持部、613 第1差分画像生成部、621 第2入力画像取得部、622 第2カメラ背景画像保持部、623 第2差分画像生成部、631 位置情報取得部、632 画像情報取得部、633 ステレオマッチング処理部、634 相関値算出部、635 位置算出部、711 オブジェクト認識部、712 物体検知部、713 形状認識部、714 水流検知部、715 物体情報記憶部、716 モード管理部、717 吐水指令生成部、718,718A〜718C,718A,718B 形状情報。
【技術分野】
【0001】
本発明は、状況に応じた吐水が可能な自動給水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、公共施設などにおいては、節水などを目的として、吐水の開始/停止を自動的に切り替える自動給水装置(自動水栓)が普及している。このような自動水栓を用いることで、節水以外にも、衛生的であることや心理的嫌悪感の低減というメリットもある。
【0003】
このような自動給水装置に関する先行技術としては、以下のようなものが知られている。
【0004】
特開2008−280673号公報(特許文献1)には、物体の発見・消失の認識結果にもとづき自動で吐水開始・停止するモードと、一定時間吐水して自動停止するモードとを切り替えることができる給水装置が開示されている。
【0005】
また、特開2009−46836号公報(特許文献2)には、2つのセンサの感知順序によってユーザの手の移動を認識し移動に応じて流量を制御する水栓装置が開示されている。この水栓装置は、ユーザの意思で流量を変更できるようにすることに向けられている。
【0006】
さらに、特開2010−43465号公報(特許文献3)には、複数の吐水形態のどれが選択されているかによって、吐水条件を変えて吐水する自動水栓が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−280673号公報
【特許文献2】特開2009−46836号公報
【特許文献3】特開2010−43465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述の特許文献1および2に開示されるように、従来の自動給水装置(自動水栓)は、主として、手(あるいは、物体)の存在に応じて、吐水の開始および停止を自動的に制御することに向けられていた。これは、主として、手などを洗う場面を想定したものであった。また、主として節水を目的としているため、吐水形状もシャワータイプのものが主流であった。
【0009】
一方、上述のような自動給水装置(自動水栓)を家庭などで使用する場合を考えると、単に、吐水の開始および停止を自動的に制御するだけでは実用的に十分ではないと想定される。たとえば、家庭の用途としては、炊事などの目的で何らかの容器内に「水を汲む」という動作(注水作業)も頻繁に発生するからである。
【0010】
さらに、家庭内での使用を考えると、洗浄時には洗浄効果および節水効果に優れた状態(典型的には、シャワー形状)で吐水し、注水時には容器や水を濡らさず効率的に注水できる状態(典型的には、ストレート形状)で吐水できるようにしたい、というニーズが存在する。
【0011】
また、具体的な状況を考えると、ユーザは片手に何らかの物を持ちながら、もう片方の手のみで注水作業を行なう場合や、水を入れる容器が重いため、ユーザが両手でその容器を支える必要がある場合もある。そのため、ユーザが、吐水を開始するタイミング、および、吐水を継続させる時間を任意に決定できるような自動給水装置(自動水栓)に対するニーズが存在する。
【0012】
上述の特許文献1は、主として、吐水の開始タイミングおよび停止タイミングを動的に決定するのみであり、特許文献2は、主として、吐水量を動的に決定するのみである。したがって、上述のような家庭での用途を考えた場合に、十分な実用性を提供するものではなかった。
【0013】
また、上述の特許文献3に記載の自動水栓は、ユーザによって吐水ヘッドが水栓本体から着脱されているか否かに基づいて、吐水形態の切り替えを行なっており、上述のような自動制御を提供するものではない。すなわち、ユーザは、吐水形態や吐水条件を切り替えるために装置に対して何らかの明示的な操作を行なう必要があり、何らかの物をもっているためユーザの手が塞がっている場合や、衛生面から装置に触りたくない場合などにおける自動化技術を提供するものではなかった。
【0014】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、状況に応じた吐水が可能な自動給水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のある局面に従う自動給水装置は、吐水形態を変更することのできる吐水機構と、吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識する形状認識手段と、形状認識手段による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように吐水機構を制御する吐水制御手段とを含む。
【0016】
好ましくは、吐水制御手段は、形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識すると、物体に水を注ぐための第1のモードを設定し、形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識しなければ、物体を洗浄するための第2のモードを設定する。
【0017】
さらに好ましくは、第1のモードでは、第2のモードに比較して、吐水断面範囲がより狭くなるように吐水を行なう。
【0018】
さらに好ましくは、本自動給水装置は、吐水機構から吐水される水流の状態を検知する水流検知手段をさらに含み、吐水制御手段は、第1のモードでの吐水中に、形状認識手段による認識結果と水流検知手段による検知結果とに基づいて物体への注水の状態を判断し、吐水機構からの吐水の停止、および、第1のモードから第2のモードへの切り替えの少なくとも一方を行なう。
【0019】
さらに好ましくは、形状認識手段は、水を蓄えることのできる形状を有する物体を認識すると、当該物体が有する開口部の領域を検知し、水流検知手段は、重力下方向への時間的変化を示す塊部分を水流として特定するとともに、当該特定された水流の重力方向の下端位置を検知し、吐水制御手段は、形状認識手段により検知された開口部の内側に水流の下端位置が存在するか否かに基づいて、物体への注水の状態を判断する。
【0020】
さらに好ましくは、形状認識手段は、検知された物体の存在領域の吐水口に近い側の範囲から開口部の領域を検知する。
【0021】
好ましくは、本自動給水装置は、エリアへの物体の進入を検知する物体検知手段をさらに含む。吐水制御手段は、物体検知手段が物体の侵入を検知することに応答して、吐水機構からの吐水を開始する手段と、吐水中における形状認識手段による認識結果に基づいて、吐水機構からの吐水を停止する手段とを含む。
【0022】
好ましくは、本自動給水装置は、予め認識されるべき各物体の形状や位置についての物体情報を記憶する物体情報記憶手段をさらに含み、形状認識手段は、物体情報記憶手段に記憶された物体情報との一致/不一致に基づいて、特定の形状を有する物体を検知する。
【0023】
好ましくは、形状認識手段は、取得された画像に対してエッジ抽出した結果に基づいて、物体の形状を認識する。
【0024】
好ましくは、形状認識手段は、抽出されたエッジのうち閉じた空間を抽出し、当該抽出した閉じた空間を物体が有する開口部と検知する。
【0025】
好ましくは、吐水制御手段は、吐水形状、吐水量、吐水温度、洗浄液の混合量のうち少なくとも一つについて異なる複数の吐水形態のうち、1つの吐水形態を選択する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、状況に応じた吐水が可能な自動給水装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施の形態に従うセンサの取り付け状態を説明するための図である。
【図2】第1の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。
【図3】第1の実施の形態に従う吐水口から吐水される水の形状を示す模式図である。
【図4】第1の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台の外観を示す図である。
【図6】第1の実施の形態に従うセンサの取り付け状態を説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の処理を説明するためのブロックである。
【図9】第1の実施の形態に従う物体検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の別の処理方法を説明するための図である。
【図11】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理のさらに別の処理方法を説明するための図である。
【図12】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の処理を説明するための図である。
【図13】閉路抽出処理に用いられるパターン例を示す図である。
【図14】第1の実施の形態に従う形状認識処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図15】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の別の例を説明するための図である。
【図16】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理の概要を示す図である。
【図17】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理におけるクラスタリング処理の概要を示す図である。
【図18】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における水流領域の下端位置を判定する処理の概要を示す図である。
【図19】第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における物体情報を利用する処理の概要を示す図である。
【図20】第1の実施の形態に従う水領域検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【図21】第2の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【図22】第2の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。
【図23】第2の実施の形態に従う自動給水装置におけるモード設定の対象となった容器の一例を示す図である。
【図24】図23に対応する形状情報の設定例を示す図である。
【図25】本実施の形態に従う自動給水装置における動作を示すタイムチャートである。
【図26】第2の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0029】
[第1の実施の形態]
<A.概要>
本発明に従う第1の実施の形態として、家庭用の一般的用途を想定して、自動給水装置を搭載した流し台について説明する。この自動給水装置は、少なくとも、容器といった物体に水を注ぐための第1のモード(以下「注水モード」とも称す。)と、手や容器などの物体を洗浄するための第2のモード(以下「洗浄モード」とも称す。)を切り替えて設定できるようになっているとする。
【0030】
本実施の形態によれば、注水モードにおいては、容器内のみへの効率的な注水および手や容器を不用意に濡らさない吐水制御を提供し、洗浄モードにおいては、高い洗浄効果および高い節水効果を実現できる吐水制御を提供する。このような吐水制御を実現するため、本実施の形態によれば、吐水開始時に、吐水の対象となる物体(オブジェクト)の検知、および、吐水停止時に、吐水されている物体(オブジェクト)の状態の検知を行なうことで、適切な吐水形状・吐水開始タイミング・吐水停止タイミングを判断する。
【0031】
<B.外観および動作概要>
図1は、第1の実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台1の外観を示す図である。図1を参照して、流し台1は、本体部2と、本体部2の上に設けられたシンク3と、その先端に吐水口5が設けられた蛇口4と、蛇口4の根元に配置されたセンサ6とを含む。
【0032】
本実施の形態に従う自動給水装置は、センサ6による検知結果に基づいてユーザの行なおうとしている動作を判断し、吐水形態(吐水形状、吐水量、吐水温度、洗浄液の混合量など)を変化させる。具体的には、以下のような動作が可能となっている。
【0033】
(1) ユーザが容器(コップなど)を蛇口4に近づけると、吐水口5からストレート形状で吐水する。具体的には、センサ6が所定条件を満たす形状(すなわち、容器を表わす形状)が蛇口4付近で静止したことを検知すると、吐水口5からストレート形状で吐水を開始する。なお、センサ6により検知された形状が所定条件を満たさない場合や、センサ6により検知された位置が蛇口4付近ではない場合には、その他の形状(シャワー形状)での吐水を行なう。
【0034】
(2) ユーザがシャワー形状の流水で容器を洗っている場合に、蛇口4付近でその容器の開口部を上向きに向けて静止させると、吐水口5からストレート形状で吐水する。具体的には、センサ6はシャワー形状で吐水中において、物体検知を継続しており、検知された形状が所定条件を満たし、かつ、蛇口4の付近で静止されたことを検知すると、吐水形状をストレート形状に変更する。
【0035】
(3) 容器への注水中に、容器内の水が容器の開口部に達したり、容器からこぼれ出したりした場合には、吐水形状をシャワー形状に変更、あるいは、吐水を停止する。具体的には、センサ6が所定条件を満たす形状を検知し、かつ、検知した形状の内部に水の流れの端がある場合には、ストレート形状での吐水を継続する。また、センサ6が所定条件を満たさなくなると、吐水形状を変更、あるいは、吐水を停止する。
【0036】
(4) 容器への注水中に、ユーザがその容器を上下させるといった動作を行なうと、吐水形状を変更、あるいは、吐水を停止する。具体的には、センサ6が所定条件を満たす形状を検知し、かつ、検知した位置が蛇口4に近づく動き(または、遠ざかる動き)を検知すると、吐水形状を変更、あるいは、吐水を停止する。
【0037】
なお、図1には図示していないが、吐水量や吐水形状を変更するためのマニュアル操作用ボタンをさらに設けてもよい。
【0038】
<C.制御機能>
図2は、第1の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【0039】
図2を参照して、本実施の形態に従う自動給水装置を構成するセンサ6は、第1カメラ61と、第2カメラ62と、画像処理エンジン63とを含む。第1カメラ61および第2カメラ62は、後述するように、いわゆるステレオ撮像が可能に配置されており、それぞれのカメラにより取得された画像の差異(視差)などに基づいて、物体の位置や形状などを検知する。また、第1カメラ61または第2カメラ62で撮像された画像は、後述するような、水領域検知などの画像処理にも用いられる。
【0040】
画像処理エンジン63は、本実施の形態に必要な各種の画像処理を実行する演算処理機構である。この画像処理エンジン63は、ソフトウェアをプロセッサで実行することで提供されてもよいし、専用のハードウェアとして実装されてもよい。この画像処理エンジン63が提供する画像処理の内容については、後述する。
【0041】
本実施の形態に従う自動給水装置を構成するコントローラ7は、典型的には、プロセッサベースの演算処理装置であり、プロセッサ71と、メモリ72と、インターフェイス73とを含む。もちろん、コントローラ7を専用のハードウェアとして実現してもよい。
【0042】
プロセッサ71は、メモリ72などの格納されているプログラム(命令セット)を実行することで、本実施の形態に係る処理を提供する。メモリ72は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの揮発性メモリと、フラッシュなどの不揮発性メモリとを含む。揮発性メモリの領域には、プログラムの実行に必要なワークデータが一時的に保持され、不揮発メモリの領域には、プログラム自体や各種パラメータなどが保持される。
【0043】
蛇口4には、吐水形態変更機構を含む導管41が接続されている。導管41には、密閉弁42が設けられており、アクチュエータ81がこの密閉弁42を駆動することで、導管41を通じて蛇口4へ流体(水)が提供され、あるいは、その水の提供が停止される。
【0044】
さらに、吐水口5と連係した切替機構82が設けられている。この切替機構82は、コントローラ7からの指令に応答して、吐水口5から吐水される水の形状を変更する。すなわち、本実施の形態に従う自動給水装置は、吐水形態を変更することのできる吐水機構を有している。
【0045】
図3は、第1の実施の形態に従う吐水口5から吐水される水の形状を示す模式図である。図3(a)には、ストレート形状で吐水されている状態を示し、図3(b)には、シャワー形状で吐水されている状態を示す。切替機構82(図2)は、図示しない吐水口5内部のシャッターなどを駆動することで、このような吐水形状の切り替えを実現する。
【0046】
図3(a)に示すストレート形状では、水が存在する範囲が狭くなっており、かつ、流量は相対的に多い。その結果、ストレート形状によれば、コップなどの容器内への注水などを容易に行なうことができる。一方、図3(b)に示すシャワー形状では、水が存在する範囲が広くなっており、かつ、流量は相対的に少ない。その結果、シャワー形状によれば、コップなどの容器の洗浄や、ユーザが自身の手を洗う場合などに有効である。
【0047】
すなわち、注水モード(第1のモード)では、洗浄モード(第2のモード)に比較して、吐水断面範囲がより狭くなるように吐水が行なわれる。
【0048】
なお、図3に示す例では、吐水形状をストレート形状とシャワー形状との間で切り替えると同時に、シャワー形状ではストレート形状に比較して比べて吐水量(吐水圧)が小さくなるように設計されている例を示す。但し、利用状況や要望などにあわせて、蛇口4の吐水形状だけを変更してもよいし、例えば、容器の口のサイズや位置などに応じて吐水形状および/または吐水量を何段階かまたは間欠的に変更できるようにしてもよい。なお、具体的な吐水形状の切替方法としては、シャワー形状用の吐水口とストレート形状用の吐水口とを交換するような構成を採用したり、絞りのような機構を用いたりすることができ、この切り替え動作を、上述したような「洗浄モード」および「注水モード」に応じて、自動的に制御される。
【0049】
次に、図2に示すハードウェアによって提供される機能について図4を参照して説明する。
【0050】
図4は、第1の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。図4を参照して、センサ6の画像処理エンジン63は、位置情報取得部631と、画像情報取得部632とを有する。
【0051】
位置情報取得部631は、検知エリア内の物体(オブジェクト)の位置などを取得(算出)する。画像情報取得部632は、第1カメラ61または第2カメラ62の撮像により取得された画像データを受付けるとともに、コントローラ7などへ出力する。
【0052】
コントローラ7は、オブジェクト認識部711と、モード管理部716と、吐水指令生成部717とを含む。
【0053】
オブジェクト認識部711は、検知範囲内における物体(オブジェクト)を認識する。より具体的には、検知範囲内において、手・容器・水の流れといったオブジェクトについて、その存在の有無、その位置、その形状、その状態などを認識する。
【0054】
モード管理部716は、形状認識部713による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように吐水機構を制御する。また、モード管理部716は、オブジェクト認識部711による認識結果に基づいて、吐水の開始/停止を行なうための処理や、吐水状態の切り替えを判断するための処理を行なう。
【0055】
吐水指令生成部717は、モード管理部716での判断結果などに応じて、吐水の開始/停止を行なうための指令や、吐水状態の切り替えを行なうための指令を生成する。
【0056】
より具体的には、オブジェクト認識部711は、物体検知部712と、形状認識部713と、水流検知部714と、物体情報記憶部715とを含む。
【0057】
物体検知部712は、検知エリア内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知する。すなわち、物体検知部712は、検知エリアへの物体の進入を検知する。
【0058】
形状認識部713は、検知範囲内での物体(オブジェクト)の形状を検知するとともに、検知された形状が、対象の容器などに基づいて予め用意される所定条件を満たしているか否かを判断する。すなわち、形状認識部713は、吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識するとともに、処理条件を満たした形状を有している物体であるか否かを判断する。
【0059】
水流検知部714は、水領域検知処理を実行することで、検知範囲内における水流の存在および場所を検知する。すなわち、水流検知部714は、吐水機構から吐水される水流の状態を検知する。なお、水流検知部714は、第1カメラ61または第2カメラ62により撮像された画像データを利用して水流について検知を行なわない場合には、水流を検知するための別のセンサを含む。
【0060】
物体情報記憶部715は、主として、実行済の形状認識結果を格納するものである。この物体情報記憶部715に格納される形状認識結果は、形状認識精度を向上させるために利用される(典型的には、学習制御)。なお、この物体情報記憶部715による形状認識結果の格納機能は、認識精度が必要十分である場合には(コスト低減の観点から)省略することもできる。
【0061】
なお、センサ6は、物体(オブジェクト)の存在・形状・位置などを検知するための情報を取得できればどのような原理に基づくものであってもよい。但し、本実施の形態においては、より実用的なセンサとして画像センサを用いる。すなわち、センサ6は、二眼ステレオ画像センサを含み、上述したように、第1カメラ61および第2カメラ62によりそれぞれ撮像される画像データ(ステレオ画像)に基づいて、物体を検知する。より具体的には、物体(オブジェクト)の位置情報は、ステレオ画像処理によって算出するとともに、画像情報は、ステレオカメラである第1カメラ61および第2カメラ62の一方からの出力を利用して取得される。
【0062】
本実施の形態に従うセンサ6においては、物体検知部712、形状認識部713、および、水流検知部714がいずれも第1カメラ61および第2カメラ62を共通に利用する形態に付いて例示したが。目的の空間エリア内での物体(オブジェクト)についての検知・認識・判定が行なえるのであれば、それぞれ別の位置に設置したセンサを用いてもよい。また、画像センサと赤外センサなどの異なる複数の種類のセンサを用いてもよい。
【0063】
センサの設置位置は、必要な認識処理における認識性能が高くなる場所であることが望ましい。具体的には、物体検知部712や形状認識部713(後述する、オブジェクト認識や容器の開口部形状の認識)の性能を高めることができる場所に、撮像するための画像センサを配置することが望ましい。また、画像を取得するためのカメラは、ユーザの手、容器、蛇口から容器に至るまでの水の経路などが視野範囲に含まれる場所に配置することが好ましい。
【0064】
図5は、第1の実施の形態に従うセンサ6の取り付け状態を説明するための図である。すなわち、図5(a)には、シンク3の側面から見た取り付け状態の一例を示し、図5(b)には、シンク3の上面から見た取り付け状態の一例を示す。すなわち、図5には、センサ6の配置位置、および、それに応じて設定されるセンシング対象領域の例について示す。
【0065】
図5に示すように、本実施の形態に従うセンサ6の表面には、第1カメラ61および第2カメラ62が所定距離だけ離れて配置されている。原理的には、この第1カメラ61および第2カメラ62の共通の視野範囲内にあるオブジェクトに対して、各種検知処理を行なうことができる。但し、本実施の形態においては、その検知目的・検知対象に応じて、2つの検知エリアS1およびS2が設定されているものとする。
【0066】
検知エリアS2は、物体(オブジェクト)の形状を認識できる領域である。この検知エリアS2の内側に検知エリアS1が設定される。この検知エリアS1は、物体(オブジェクト)の形状を認識する以外の検知処理の対象となる領域である。このように、検知すべき内容に応じて検知エリアを異ならせることで、検知精度を高めることができるとともに、不必要な画像処理を低減することができる。
【0067】
なお、図5に示す例では、検知エリア(センシング対象領域)が予め固定されている例を示すが、先に形状認識処理によって検知された対象の物体(オブジェクト)のサイズや形状に応じて、検知エリアS1の位置や大きさを動的に変化させてもよい。
【0068】
<D.動作例>
次に、本実施の形態に従う自動給水装置の典型的な動作例について、タイムチャートを参照しながら説明する。
【0069】
本実施の形態に従う自動給水装置は、蛇口4の付近への手や容器などの進入を検知すると、吐水のモードを判断する。より具体的には、蛇口4に十分近いエリアで容器の開口部(注水口)の形状が検知され、かつ、そのオブジェクトが静止している検知された場合には、注水モードが選択され、ストレート形状での吐水が開始される。これに対して、そのような検知がなされない場合には、洗浄モードが選択され、シャワー形状での吐水が開始される。
【0070】
すなわち、形状認識部713は、水を蓄えることのできる形状を有する物体を認識すると、当該物体が有する開口部の領域を検知する。そして、形状認識部713が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識すると、注水モードが選択され、形状認識部713が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識しなければ、洗浄モードが選択される。
【0071】
注水モードにおいては、自動給水装置は、容器内が水で溢れる直前までストレート形状で注水を続ける。すなわち、自動給水装置は、ストレート形状での吐水中において、その水流の先端(以下「水流端」とも称す)が容器の開口内に水が入り続けていると認識されている間は、容器内が水で満たされていないと判断し、注水を継続する。これに対して、検知される開口部の位置が大きく移動したり、開口部の輪郭と水流端とが接触しそうになったりしたことが検知された場合は、吐水を停止する。
【0072】
さらに、ストレート形状での注水を停止した直後(注水モードでの吐水後)であっても、容器や手といった物体が蛇口4の付近で一定時間に亘って検知され続けた場合は、シャワー形状での吐水を開始する。これは、ユーザが容器などを洗浄するような使用形態が想定されるからである。
【0073】
一方、洗浄モードにおいては、自動給水装置は、シャワー形状での吐水中において、蛇口4の付近に物体が存在すると検知されている間は、そのまま吐水を継続する。そして、蛇口4の付近に物体が存在しなくなったと検知されると、吐水を停止する。
【0074】
さらに、洗浄モードにおいては、シャワー形状で吐水中であっても、蛇口4に十分近いエリアで容器の開口部(注水口)の形状が検知され、かつ、そのオブジェクトが静止している検知された場合には、ストレート形状での吐水に切り替えられる。すなわち、このような条件が成立した場合には、「容器を洗った後にその内部に注水をしたいとユーザは考えている」と判断し、注水モードが選択される。
【0075】
このように、物体検知部712が物体の侵入を検知することに応答して、吐水機構からの吐水を開始し、吐水中における形状認識部713による認識結果に基づいて、吐水機構からの吐水を停止する。
【0076】
図6は、第1の実施の形態に従うセンサ6の取り付け状態を説明するための図である。なお、図6(a)〜(c)の各々には、蛇口4の吐水口5から吐水された水をその形状別に区分して記載している。すなわち、図6(a)〜(c)に記載のグラフは、横軸が時間であり、縦軸が各々対応する吐水パターンにおける単位時間当たりの吐水量の大きさを示す。
【0077】
(d1.洗浄時)
図6(a)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて容器などを洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザは、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0078】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、図6(a)に示す時刻t11において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t11〜t12)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0079】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t11から判定期間ΔTaが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトが検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t12において、「洗浄モード」で給水すべきであると判断する。そして、シャワー形状での吐水が開始される。
【0080】
その後、ユーザがオブジェクトを蛇口4から離れた位置に移動させたため、時刻t13において、検知エリアS1(図5参照)内ではオブジェクト(手または容器)の存在を検知できなくなったとする。その後、検知されていたオブジェクトが蛇口4から現実に離れたことを判断するため、所定期間(時刻t13〜t14)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0081】
そして、対象のオブジェクトが蛇口4から離れた場合には、時刻t13から判定期間ΔTbが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトを検知できない状態が継続したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t14において、給水すべき対象がいなくなったと判断する。そして、シャワー形状での吐水が停止される。
【0082】
(d2.注水時)
次に、図6(b)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて容器などに水を注ぐ場合の基本的な動作を示す。図6(b)に示す時刻t21において、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4に近づけたとする。このとき、ユーザは、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4の近くで静止させたとする。
【0083】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、時刻t21において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。続いて、自動給水装置が、時刻t21において、検知エリアS2(図5参照)内にオブジェクトが開口部を有していることを検知したとする。なお、このオブジェクトの開口部の検知には、後述するように、形状認識処理によって「閉じた空間」の有無を判断する。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t22〜t23)に亘って、「閉じた空間」の検知が継続するか否かを判断する。
【0084】
そして、検知エリアS2内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t22から判定期間ΔTcが経過するまでの間、検知エリアS2内で「閉じた空間」が検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t23において、「注水モード」で給水すべきであると判断する。そして、ストレート形状での吐水が開始される。
【0085】
その後、容器内に注入された水が容器から溢れる直前までストレート形状での吐水が継続される。すなわち、時刻t24において、検知される水流端が容器の開口部の輪郭に対して十分に接触しそうなことを検知したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t24において、ストレート形状での吐水を停止する。
【0086】
(d3.洗浄モードと注水モードとが連続的に切り替わる使用形態の一例について説明する。
【0087】
図6(c)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて容器などを洗浄した後、その容器に水を注ぐ場合の基本的な動作を示す。
【0088】
図6(c)には、注水モードと洗浄モードとが連続的に切り替わる使用形態の一例として、例えば、ユーザが容器を横や下向きなどに回転させながら洗浄し、洗浄が終わり次第、容器の口を上向きにして容器を静止させてその中に水を注ぐ。このとき、洗浄モードが選択され、ストレート形状で吐水される。さらに、容器に水が溜まってほぼ満タンに近くなると、水流端と容器の開口部の輪郭との接近を検知して注水が停止される。あるいは、ユーザがその容器を静止状態から動かし始めることでも注水が停止される。
【0089】
ストレート形状での注水停止後も、容器がその場に留まっている場合には、シャワー形状での吐水が再開される。
【0090】
容器の内側を洗浄するために吐水するという用途を想定する場合は、ストレート形状での注水後であっても、一定時間経過後の間は、シャワー形状での吐水を開始することが好ましい。
【0091】
その後、ユーザが容器をその開口部を蛇口に向けて静止させると、それを再度検知してストレート形状での吐水に切り替えてもよい。
【0092】
あるいは、最初にシャワー形状からストレート形状に変わった後に、容器の移動を検知してストレート形状での吐水を停止した後に、一定時間、容器の口の停止を再度検知すれば、ストレート形状での吐水を再開するようにしてもよい。
【0093】
以下、具体的なタイムチャートについて説明する。
まず、ユーザは、容器などの対象のオブジェクトを蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、図6(c)に示す時刻t31において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t31〜t32)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0094】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t31から判定期間ΔTaが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトが検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t32において、「洗浄モード」で給水すべきであると判断する。そして、シャワー形状での吐水が開始される。
【0095】
このシャワー形状の吐水を用いて容器を洗浄したユーザは、その開口部を蛇口4に向けたとする。このとき、ユーザは、開口部を蛇口4に向けた状態で容器などの対象のオブジェクトを静止させたとする。
【0096】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、時刻t33において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在の検知に加えて、検知エリアS2(図5参照)内にオブジェクトが開口部を有していることを検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t33〜t34)に亘って、「閉じた空間」の検知が継続するか否かを判断する。
【0097】
そして、検知エリアS2内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t33から判定期間ΔTcが経過するまでの間、検知エリアS2内で「閉じた空間」が検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t34において、「注水モード」で給水すべきであると判断する。そして、ストレート形状での吐水が開始される。
【0098】
その後、容器内に注入された水が容器から溢れる直前までストレート形状での吐水が継続される。すなわち、時刻t35において、検知される水流端が容器の開口部の輪郭に対して十分に接触しそうなことを検知したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t35において、ストレート形状での吐水を停止する。
【0099】
さらに、ユーザは、その容器に注水された水を飲み、その後、そのよう域を再度洗浄しようとしたとする。すなわち、ユーザは、蛇口4から一旦離した容器などの対象のオブジェクトを再度蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0100】
すると、本実施の形態に従う自動給水装置が、図6(c)に示す時刻t35において、検知エリアS1(図5参照)内にオブジェクト(手または容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクトが実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t35〜t36)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0101】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクトが実質的に静止している場合には、時刻t35から判定期間ΔTaが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトが検知され続ける。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t36において、「洗浄モード」で給水すべきであると判断する。そして、シャワー形状での吐水が開始される。
【0102】
その後、ユーザがオブジェクトを蛇口4から離れた位置に移動させたため、時刻t37において、検知エリアS1(図5参照)内ではオブジェクト(手または容器)の存在を検知できなくなったとする。その後、検知されていたオブジェクトが蛇口4から現実に離れたことを判断するため、所定期間(時刻t37〜t38)に亘って、オブジェクトの状態を判断する。
【0103】
そして、対象のオブジェクトが蛇口4から離れた場合には、時刻t37から判定期間ΔTbが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクトを検知できない状態が継続したとする。すると、本実施の形態に従う自動給水装置は、時刻t38において、給水すべき対象がいなくなったと判断する。そして、シャワー形状での吐水が停止される。
【0104】
上述のように、モード管理部716は、注水モードでの吐水中に、形状認識部713による認識結果と水流検知部714による検知結果とに基づいて、容器などの物体への注水の状態を判断し、吐水機構からの吐水の停止、および、注水モードから洗浄モードへの切り替えの少なくとも一方を行なう。
【0105】
(d4.その他)
上述の図6に示すタイムチャートでは、タイムアウト機能を含んでいない吐水制御の一例について説明したが、ストレート形状またはシャワー形状のいずれに対しても、連続吐水時間に上限を設けてタイムアウト処理することで、異常時の対処としてもよい。また、吐水形状の切替頻度や切替回数などにも上下制限を設定してもよい。
【0106】
<E.全体処理フロー>
図7は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0107】
図7を参照して、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を実行する(ステップS1)。この物体検知処理の内容については、後述する。続いて、ステップS1の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS2)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS2においてNOの場合)には、ステップS1の処理が繰返される。
【0108】
何らかの物体が検知された場合(ステップS2においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知された物体(オブジェクト)が実質的に静止状態であるか否かを判断するためのタイマ値ΔT1をゼロリセットする(ステップS3)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT1のカウントアップを開始する。
【0109】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT1が判定期間ΔTaまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS4)。
【0110】
タイマ値ΔT1が判定期間ΔTaまでカウントアップされていない場合(ステップS4においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS2(図5参照)内に対して形状認識処理を実行する(ステップS5)。すなわち、コントローラ7は、検知エリアS2内に「閉じた空間」が存在するか否かを判断する。続いて、コントローラ7は、形状認識処理が成功したか否かを判断する(ステップS6)。すなわち、コントローラ7は、予め登録された形状と一致する形状を検知できたか否かを判断する。
【0111】
形状認識処理が成功しなかった場合(ステップS6においてNOの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS7)。続いて、コントローラ7は、ステップS7の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS8)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS8においてNOの場合)には、処理は終了する。
【0112】
これに対して、何らかの物体が検知されている場合(ステップS8においてYESの場合)には、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS9)、ステップS3以下の処理を再度実行する。なお、ステップS9におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT1は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTpだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTpは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0113】
これに対して、形状認識処理が成功した場合(ステップS6においてYESの場合)には、コントローラ7は、容器の開口部を検知するためのタイマ値ΔT2をゼロリセットする(ステップS10)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT2のカウントアップを開始する。
【0114】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT2が判定期間ΔTbまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS11)。タイマ値ΔT2が判定期間ΔTbまでカウントアップされていない場合(ステップS11においてYESの場合)には、コントローラ7は、物体(オブジェクト)が静止状態であるか否かを判断する(ステップS12)。
【0115】
物体(オブジェクト)が静止状態である場合(ステップS12においてYESの場合)には、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS13)、ステップS11以下の処理を再度実行する。なお、ステップS13におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT2は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTqだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTqは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0116】
これに対して、物体(オブジェクト)が静止状態ではない場合(ステップS12においてNOの場合)には、ステップS10以下の処理が再度実行される。
【0117】
また、タイマ値ΔT2が判定期間ΔTbまでカウントアップされている場合(ステップS11においてNOの場合)には、コントローラ7は、注水モードでの吐水を開始する(ステップS14)。続いて、コントローラ7は、水流の流れを検知するための水領域検知処理を実行する(ステップS15)。
【0118】
そして、コントローラ7は、ステップS15における水領域検知処理の結果、水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部に位置しており、かつ、その開口部から離れているか否かを判断する(ステップS16)。
【0119】
水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部に位置しており、かつ、その開口部から離れている場合(ステップS16においてYESの場合)には、ステップS16の処理が繰返される。
【0120】
これに対して、水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部に位置しておらず、または、その開口部に接近している場合(ステップS16においてNOの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止する(ステップS17)。そして、処理は終了する。
【0121】
一方、タイマ値ΔT1が判定期間ΔTaまでカウントアップされている場合(ステップS4においてNOの場合)には、コントローラ7は、洗浄モードで吐水を開始する(ステップS20)。続いて、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS21)。続いて、コントローラ7は、ステップS21の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS22)。何らからの物体が検知されている場合(ステップS22においてYESの場合)には、ステップS21の処理が繰返される。
【0122】
これに対して、何らの物体も検知されていない場合(ステップS22においてNOの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止するためのタイマ値ΔT3をゼロリセットする(ステップS23)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT3のカウントアップを開始する。
【0123】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT3が判定期間ΔTcまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS24)。タイマ値ΔT3が判定期間ΔTcまでカウントアップされている場合(ステップS24においてYESの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止する(ステップS25)。そして、処理は終了する。
【0124】
これに対して、タイマ値ΔT3が判定期間ΔTcまでカウントアップされていない場合(ステップS24においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS26)。続いて、コントローラ7は、ステップS26の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS27)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS27においてNOの場合)には、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS28)には、ステップS24以下の処理を再度実行する。なお、ステップS28におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT3は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTqだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTrは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0125】
これに対して、何らかの物体が検知されている場合(ステップS27においてYESの場合)には、ステップS21以下の処理が繰返される。
【0126】
<F.物体検知処理>
次に、図7のフローチャートに示す物体検知処理(図4の物体検知部712が提供する機能)の詳細について説明する。この物体検知処理は、ある検知範囲内での何らかの物体(オブジェクト)が存在しているか否かを判断する処理である。この物体検知処理の典型的な実装形態として、概ね3つの方法について説明する。
【0127】
(f1.物体検知処理(その1))
代表的な物体検知処理の方法として、ステレオマッチング処理を用いる方法がある。この方法では、一対のカメラ(ステレオカメラ)が所定の視野範囲を連続的に監視するとともに、何らかの変化があった場合には、その変化部分(差分)を抽出して、この差分についてステレオマッチング処理を実行する。
【0128】
図8は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の処理を説明するためのブロックである。
【0129】
図8を参照して、物体検知処理を実現するための機能として、第1入力画像取得部611と、第1カメラ背景画像保持部612と、第1差分画像生成部613と、第2入力画像取得部621と、第2カメラ背景画像保持部622と、第2差分画像生成部623と、ステレオマッチング処理部633とを含む。
【0130】
第1入力画像取得部611および第2入力画像取得部621は、それぞれ、第1カメラ61および第2カメラ62の撮像により取得される入力画像を取得する。第1カメラ背景画像保持部612および第2カメラ背景画像保持部622は、それぞれ、第1カメラ61および第2カメラ62の視野(撮像範囲)における背景画像を予め保持する。この背景画像は、検知エリアS1に何らの物体(オブジェクト)も存在しない状態で、第1カメラ61および第2カメラ62の撮像により得られる画像に相当する。
【0131】
第1差分画像生成部613は、第1カメラ61の撮像により取得された第1入力画像と予め取得されている第1背景画像との差分(第1差分画像)を算出する。同様に、第2差分画像生成部623は、第2カメラ62の撮像により取得された第2入力画像と予め取得されている第2背景画像との差分(第2差分画像)を算出する。すなわち、第1差分画像生成部613および第2差分画像生成部623は、何らの物体(オブジェクト)も存在しない状態からの変化、すなわち、物体の検知エリアへの侵入を検知する。そして、この変化した部分についてのみを後述するステレオマッチング処理の対象とする。
【0132】
ステレオマッチング処理部633は、相関値算出部634および位置算出部635を含む。
【0133】
相関値算出部634は、第1差分画像および第2差分画像について、局所ブロック毎に画像の相関値を算出し、最も相関値が高くなる位置を特定する。この最も相関値が高くなる位置に基づいて、第1差分画像と第2差分画像との間の相対的な位置関係を決定する。
【0134】
位置算出部635は、相関値算出部634によりマッチングされた状態での第1差分画像および第2差分画像に基づいて、ステレオイメージを仮想的に生成する。すなわち、センサ6上の第1カメラ61および第2カメラ62から物体(オブジェクトOBJ)の各ブロックの位置までの距離を三角測量の原理で算出する。
【0135】
そして、位置算出部635は、所定サイズより大きな塊が検知されたか否かを判断し、所定サイズより大きな塊が検知された場合には、何らかの物体(オブジェクト)が検知エリアS1に侵入したと判断する。
【0136】
なお、背景画像は、予め1回の撮像により得られた画像を用いてもよいが、照明環境などの変化に対応できるように、複数回の撮像によって得られた画像を平均化処理することで、背景画像を動的に生成してもよい。
【0137】
上述の処理手順について、フローチャートを用いてさらに説明する。
図9は、第1の実施の形態に従う物体検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0138】
図9を参照して、コントローラ7は、第1カメラ61および第2カメラ62の撮像によって、第1入力画像および第2入力画像を取得する(ステップS101)。続いて、コントローラ7は、予め登録されている第1背景画像および第2背景画像に対する、取得した第1入力画像および第2入力画像についての差分画像(第1差分画像および第2差分画像)を生成する(ステップS103)。
【0139】
コントローラ7は、ステップS103において生成した一対の差分画像について、その差分値が所定のしきい値以上の領域(たとえば、輝度、明度、彩度などが所定値以上の領域)を抽出し、これらの領域同士についてステレオマッチング処理を実行する(ステップS105)。
【0140】
続いて、コントローラ7は、ステレオマッチング処理により検知された物体(オブジェクト)のサイズが所定値以上であるか否かを判断する(ステップS107)。典型的には、最小の物体サイズとして、縦の最小サイズおよび横の最小サイズが定められており、検知された物体のサイズが、縦および横のそれぞれの最小サイズを越えている場合には、物体(オブジェクト)のサイズが所定値以上であると判断する。
【0141】
検知された物体のサイズが所定値以上である場合(ステップS107においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)があったと判断する(ステップS109)。すなわち、コントローラ7は、物体検知処理が成功と判断する。そして、処理はリターンする。
【0142】
検知された物体のサイズが所定値未満である場合(ステップS107においてNOの場合)には、コントローラ7は、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)はなかったと判断する(ステップS111)。すなわち、コントローラ7は、物体検知処理が失敗と判断する。そして、処理はリターンする。
【0143】
(f2.物体検知処理(その2))
上述のようなステレオマッチング処理を利用する方法に代えて、移動物体の位置および向きに基づいて、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)を検知してもよい。典型的には、オプティカルフローと称される技術を用いることができる。
【0144】
図10は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理の別の処理方法を説明するための図である。図10を参照して、何らかの物体(オブジェクトOBJ)の移動(侵入)を検知するために、公知の方法で、移動ベクトルを示すオプティカルフロー64を算出する。そして、このオプティカルフロー64のベクトル方向やベクトルサイズなどに基づいて、物体の移動などを検知する。
【0145】
このオプティカルフローは、時系列上に配置された画像フレームについて、隣り合うフレーム間の画素値の輝度勾配や局所ブロック対応など利用することで算出できる。そして、この算出されたオプティカルフローに対してクラスタリングなどの処理を行なうことで、同一とみなすことができる成分同士をクラスタリングして得られるブロックについてのベクトルサイズやベクトル方向から進入物体を検知する。
【0146】
(f3.物体検知処理(その3))
さらに、検知エリアに対応付けてセンサをグリッド状に配置することで、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)を検知してもよい。
【0147】
図11は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る物体検知処理のさらに別の処理方法を説明するための図である。図11を参照して、検知エリアに対応付けて、複数のセンサがグリッド状に配置されているものとする。このセンサとしては、障害物の検知が可能なデバイスであり、たとえば超音波センサなどを利用できる。
【0148】
そして、これらのグリッド状に配置されたセンサによる検知結果およびその配置位置の状態に基づいて、検知エリア内への物体(オブジェクト)の移動(侵入)を検知する。
【0149】
<G.形状認識処理>
次に、図7のフローチャートに示す形状認識処理(図4の形状認識部713が提供する機能)の詳細について説明する。この形状認識処理は、ある検知範囲内で、予め登録された形状と一致する形状を有する物体(オブジェクト)が存在しているか否かを判断する処理である。
【0150】
本実施の形態に従う吐水制御においては、主として、容器などの物体(オブジェクト)の開口部を検知するために用いられる。このような開口部を検知するための予め登録された形状として、本実施の形態においては、開口部が(閉曲線などの)閉路であると想定して、検知エリア内で「閉じた空間」をサーチする。
【0151】
なお、この検知される「閉じた空間」について、最小サイズ、または、最大のサイズに関する制約範囲をさらに加えてもよいし、色や太さなどの属性情報に関する制約範囲をさらに加えてもよい。
【0152】
さらに、形状そのものだけでなく、検知された物体(オブジェクト)が静止を維持している時間などのように、検知対象の物体(オブジェクト)が満たすべき挙動に関する制約条件を加えてもよい。
この形状認識処理の典型的な実装形態として、概ね3つの方法について説明する。
【0153】
(g1.形状認識処理(その1))
代表的な物体検知処理の方法として、画像にエッジ抽出処理を用いる方法がある。この方法では、カメラの撮像により得られた画像内のエッジを抽出し、この抽出したエッジが開口部を示す閉路である場合には、開口部が存在すると判断する。
【0154】
図12は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の処理を説明するための図である。
【0155】
図12(a)に示すように、蛇口4を視野範囲とするカメラの撮像によって得られた画像では、容器などの物体(オブジェクト)の主要部が含まれる。この画像が取得される時点、すなわち、形状認識処理が最初に開始された時点では、容器に水が注入されていないため、容器の開口部全体を視認することができる。
【0156】
典型的に、形状認識部713は、取得された画像に対してエッジ抽出した結果に基づいて、物体の形状を認識する。すなわち、図12(a)に示す画像に対して、エッジ抽出処理を実行すると、図12(b)に示すようなエッジ抽出画像が得られる。そして、この抽出されたエッジをたどってゆくことで、エッジの分岐や途切れなどを特定して、一巡するエッジを閉路として抽出する。たとえば、抽出されたエッジ部分のうち、図12(c)に示すような一巡の閉路EDGを開口部として特定する。なお。複数のエッジの閉路が抽出された場合には、最も上部側に位置する閉路を容器の開口部として特定する。すなわち、形状認識部713は、物体検知部712により検知された物体の存在領域の吐水口に近い側の範囲から開口部の領域を検知する。
【0157】
なお、このエッジの閉路抽出処理については、公知の方法を採用することができる。たとえば、抽出したエッジを所定のサイズのブロックに分割するとともに、各ブロックについて、エッジの端点または分岐点に該当するか否かを判断する。そして、抽出された端点、および、分岐点から直近の端点までの間のエッジを消去する。これらの消去の結果、残ったエッジから閉路を特定する。
【0158】
図13は、閉路抽出処理に用いられるパターン例を示す図である。すなわち、図13(a)には、端点に相当すると判断されるパターン例を示す。図13に示す例では、3画素×3画素の単位ブロックについて、いずれかのパターンと一致するか否かを判断する。そして、いずれかのパターンと一致した単位ブロックについては、その中心画素を端点として特定する。
【0159】
また、図13(b)には、分岐点に相当すると判断されるパターン例を示す。図13に示す例では、3画素×3画素の単位ブロックについて、いずれかのパターンと一致するか否かを判断する。そして、いずれかのパターンと一致した単位ブロックについては、その中心画素を分岐点として特定する。
【0160】
なお、図12(c)に示すエッジの閉路抽出処理の結果に対して、さらに、容器の開口部と判断できる範囲に関する制約条件を設定してもよい。このような制約条件を設定することで、開口部の検知精度や検知速度を向上させることもできる。
【0161】
このような制約条件としては、例えば、閉路で囲まれた領域面積の上限サイズ、鉛直方向に対する閉路の傾き角度などを用いることができる。
【0162】
このように、形状認識部713は、抽出されたエッジのうち閉じた空間を抽出し、当該抽出した閉じた空間を物体が有する開口部と検知する。上述の処理手順について、フローチャートを用いてさらに説明する。
【0163】
図14は、第1の実施の形態に従う形状認識処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0164】
図14を参照して、コントローラ7は、第1カメラ61または第2カメラ62の撮像によって、対象の物体(オブジェクト)を写した入力画像を取得する(ステップS201)。続いて、コントローラ7は、ステップS201において取得した入力画像に対してエッジ抽出処理を実行する(ステップS203)。これにより、エッジ抽出画像が得られる。
【0165】
続いて、コントローラ7は、ステップS203において取得されたエッジ抽出画像に対して、エッジの端点および分岐点の抽出処理を実行する(ステップS205)。さらに、コントローラ7は、抽出した端点、および、分岐点から端点までの間のエッジ部分を消去する(ステップS207)。
【0166】
さらに、コントローラ7は、ステップS207の処理後の画像に含まれる閉路の部分を特定し(ステップS209)、複数の閉路が抽出された場合には、最も上部の閉路のみを抽出する(ステップS211)。なお、この「最も上部」であるかの判断は、上述の物体検知処理において取得されたステレオ画像に基づいて算出される位置情報から判断される。
【0167】
最終的に、コントローラ7は、ステップS211において抽出された閉路の形状と位置とを含む物体情報を格納する(ステップS213)。なお。この物体情報は、物体情報記憶部715(図4)に保持される。そして、処理はリターンする。
【0168】
(g2.形状認識処理(その2))
上述したようなエッジ抽出処理を用いる方法に代えて、容器の開口部に所定の色または模様を付しておき、その領域をサーチすることで開口部を検知してもよい。
【0169】
図15は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る形状認識処理の別の例を説明するための図である。図15に示すように、容器などの物体(オブジェクトOBJ)の開口部を特定の色または模様としておくことで、他の領域から区別する。
【0170】
なお、開口部に付する色または模様としては、どのようなものであってもよいが、背景の色や模様に対してより明確に区別できるようなものが好ましい。すなわち、背景に含まれる色や模様に対して、輝度、明度、彩度などが大きく異なる色などが好ましい。
【0171】
(g3.形状認識処理(その3))
さらに別の方法として、カメラで撮像される画像を用いない方法も採用することができる。
【0172】
たとえば、容器の開口部に感光性の物質を予め付しておき、感光物質の検知センサで検知するようにしてもよい。同様の方法として、容器の開口部にICタグなどを予め埋め込んでおき、アンテナで検知するようにしてもよい。
【0173】
また、容器への注水中においては、当該注水中の水に対して超音波を照射し、その反射波を測定することで、その水流位置を特定する。そして、その特定した水流位置の最下部の周辺を容器の開口部として判断することができる。
【0174】
<H.水領域検知>
次に、図7のフローチャートに示す水領域検知処理(図4の水流検知部714が提供する機能)の詳細について説明する。この水領域検知処理は、ある検知範囲内で、水流の存在および場所を検知する処理である。
【0175】
本実施の形態に従う吐水制御においては、水領域検知処理によって検知された水流の場所などに基づいて、容器に対してどの程度の量の水が注水されているかを判断し、吐水の停止制御を行なう。
【0176】
このような水領域検知処理の典型的な実装形態として、以下のような方法が想定される。
【0177】
(g1.水領域検知処理(その1))
代表的な水領域検知処理の方法として、オプティカルフローを用いる方法について説明する。
【0178】
図16は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理の概要を示す図である。図16(a)に示すように、容器に注水されている状態をカメラで撮像して得られる画像に対して、上述したようなオプティカルフローの算出処理が実行される。その結果、図16(b)に示すようなオプティカルフロー64が算出されたとする。
【0179】
さらに、図16(b)に示される多数のオプティカルフロー64に対してクラスタリング処理を実行することで、類似したベクトル方向、および/または、ベクトル量の差(バラツキ)が小さいグループ(フローの塊)を検知する。そして、この検知された塊の最も下部を水流端と判定する。
【0180】
すなわち、水流検知部714は、重力下方向への時間的変化を示す塊部分を水流として特定するとともに、当該特定された水流の重力方向の下端位置を検知する。
【0181】
次に、図17を参照して、オプティカルフローのクラスタリング処理について説明する。図17は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理におけるクラスタリング処理の概要を示す図である。
【0182】
図17を参照して、ベクトル方向およびベクトルサイズの揃ったオプティカルフローの塊の領域を水流領域と判定するために、まず、形状認識の対象エリア(検知エリアS2)内において、検知されたオプティカルフローの最外周の範囲を特定する。ここで、特定された最外周の範囲を幅W×高さHであるとすると、水流領域と判定するために、以下のような条件(後述する図20のフローチャートにおいては「条件A」とも称す。)を設定する。
【0183】
(a)幅W<しきい値Th1
(b)高さH>しきい値Th2
(c)水流領域の下端位置が形状認識対象エリア(検知エリアS2)内であること
これらの条件のうち、条件(a)は、吐水口5から吐出される水の範囲を超えて注水されないことを考慮したものである。条件(b)は、吐水を停止するための条件として、容器に注入される水流端の上下移動、容器自体の上下移動を判断するためのものである。条件(c)は、容器内に注水されるのではなく、単に水が流れている状態を誤検知したり、シンク3による乱反射した光を誤検知したりすることを防止するためのものである。
【0184】
次に、水流端と容器の開口部との位置関係を判定するための処理について説明する。
図18は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における水流領域の下端位置を判定する処理の概要を示す図である。
【0185】
水流端が容器の開口部(閉じた空間の輪郭)から十分内側に位置すると判定するために、以下のような条件(後述する図20のフローチャートにおいては「条件B」とも称す。)を設定する。
【0186】
(d)水流領域の下端面と開口部内部の最も接近した部分との距離>Th3
すなわち、図18に示すような、水流領域の下端面から開口部内部への距離、図18左図に示す複数の矢印のうち最も短いものの長さについて、所定のしきい値以上であるか否かを判断する。
【0187】
この条件(d)は、容器内に注水が継続している状態を判定するためのものである。
このように、モード管理部716は、形状認識部713により検知された開口部の内側に水流の下端位置が存在するか否かに基づいて、物体への注水の状態を判断する。
【0188】
なお、容器への注水中は、容器の開口部の一部が不可視となるので、先に実行された形状認識処理によって得られた物体情報を利用して、その検知精度を高めることが好ましい。以下、先に取得された物体情報(対象の容器の形状情報)を利用する方法について説明する。
【0189】
図19は、第1の実施の形態に従う吐水制御に係る水領域検知処理における物体情報を利用する処理の概要を示す図である。
【0190】
図19(a)に示すように、形状認識処理によって得られた物体情報は、水の流れがない状態で得られた情報である。そのため、図19(b)に示すように、注水中においては、その水流によって容器の開口部の一部が視認できないため、認識率が低下してしまう。
【0191】
そこで、図19(c)に示すように、予め取得された物体情報からテンプレートを作成し、このテンプレートを用いて、局所マッチングによって一致する場所を探索する。このようなテンプレートを用いた局所マッチングを行なうことで、容器の開口部についての物体情報を一旦取得した後は、開口部が部分的に視認できない状態であっても、それを適切に認識することができる。
【0192】
このように、ユーザが使用する容器の形状は千差万別であり、また、注水が始まるとその開口部の一部が隠蔽されるため、開口部の認識難易度が上昇してしまう。さらに、ユーザが手に持っているため、容器がぶれることもあるため、開口部の内側に水流が存在するか否かの判断が難しくなる。これに対して、上述のような吐水前の形状との対応をとることで認識精度を高く維持することができる。
【0193】
図20は、第1の実施の形態に従う水領域検知処理に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0194】
図20を参照して、コントローラ7は、形状認識処理によって得られた物体情報(容器の開口部の形状情報や位置情報)を読出し、テンプレートを作成する(ステップS301)。続いて、コントローラ7は、取得された画像に対してオプティカルフローの算出処理を実行する(ステップS303)。さらに、コントローラ7は、算出したオプティカルフローの類似性および近接性に基づいて、クラスタリング処理を実行する(ステップS305)。コントローラ7は、ステップS305におけるクラスタリング処理によって複数のクラスタ(グループ)が取得された場合には、最も上部側に位置するクラスタを処理対象に設定する(ステップS307)。
【0195】
そして、コントローラ7は、処理対象のクラスタが上述した条件Aを満たすか否かを判断する(ステップS309)。処理対象のクラスタが上述した条件Aを満たさない場合(ステップS309においてNOの場合)には、コントローラ7は、処理対象に設定されていないクラスタが残っていないか否かを判断する(ステップS311)。処理対象に設定されていないクラスタが残っている場合(ステップS311においてYESの場合)には、コントローラ7は、残りのクラスタのうち、次に上部側に位置するクラスタを処理対象に設定する(ステップS313)。そして、ステップS309以下の処理が繰返される。
【0196】
一方、処理対象に設定されていないクラスタが残っていない場合(ステップS311においてNOの場合)には、コントローラ7は、水流領域が存在しないと判断する(ステップS315)。すなわち、コントローラ7は、水流端が形状認識処理によって得られた容器の開口部の内部には位置していないと判断する。そして、処理はリターンする。
【0197】
処理対象のクラスタが上述した条件Aを満たしている場合(ステップS309においてYESの場合)には、コントローラ7は、テンプレートを走査することで、局所マッチングを行ない、容器の開口部を探索する(ステップS317)。すなわち、コントローラ7は、閉じた空間を検知する。
【0198】
続いて、コントローラ7は、クラスタ領域の輪郭位置と、ステップS317において検知された、閉じた空間の位置情報とを照合する(ステップS319)。そして、コントローラ7は、クラスタの下部(水流領域の下端面)と閉じた空間の位置(容器の開口部)との関係が条件Bを満たすか否かを判断する(ステップS321)。
【0199】
クラスタの下部と閉じた空間の位置との関係が条件Bを満たさない場合(ステップS321においてNOの場合)には、コントローラ7は、水流端が容器の開口部から処理距離以上離れてはいないと判断する(ステップS323)。そして、処理はリターンする。
【0200】
これに対して、クラスタの下部と閉じた空間の位置との関係が条件Bを満たす場合(ステップS321においてYESの場合)には、コントローラ7は、水流端が容器の開口部から処理距離以上離れていると判断する(ステップS325)。そして、処理はリターンする。
【0201】
(g2.水領域検知処理(その2))
上述のような画像処理を利用する方法に代えて、注水中に水に対して超音波を照射し、その反射波を測定することで水流位置を検知してもよい。このとき、注水動作によって、水の流れに揺らぎが生じるので、この揺らぎ領域を特定することで、水流位置を検知できる。
【0202】
(g3.水領域検知処理(その3))
上述のようなオプティカルフローを利用する方法に代えて、色空間における変化に基づいて水流位置を検知してもよい。たとえば、水流が存在しない状態で撮像して得られる画像に含まれる波長成分を抽出して、背景画像を示すチャートを作成しておく。このチャートは、画像内のエッジ量を示すようなものが想定される。そして、水流が存在している場合に得られる画像から同様の方法でチャートを作成し、両チャートを比較することで、水流の存在を判断することができる。
【0203】
たとえば、背景画像では、水流により視野が妨げられないのでシンク3の内面を明確に監視することができ、その結果、エッジ成分が相対的に多い画像を取得することができる。これに対して、水流が存在する場合には、「ぼやけた」ような状態となり、エッジ成分が相対的に少なくなる。すなわち、上述のような2つの状態でそれぞれ取得された画像の特徴量を比較した場合には、低周波成分(典型的には、平均色)についてはあまり変化しないが、高周波成分(典型的には、エッジ成分)については異なって見えることになる。
【0204】
このような手法により、水領域を検知することができる。
(g4.水領域検知処理(その4))
用途によっては、予め感光性の物質を添加することもでき、この場合には、感光性の物質を含む水を感光物質に感度を有するセンサを用いて測定する。そして、この測定結果にうち、所定の大きさを有する塊の領域を水領域として特定することができる。
【0205】
すなわち、検知された情報のうち、重力方向に長い長方形に近似した形状の領域が水流領域であり、容器内に入ると当該領域が途切れ、手や容器の縁にあたると拡散して領域の大きさが極端に変化するため、このような特性を利用して検知することができる。
【0206】
(g5.水領域検知処理(その5))
用途によっては、比較的温度の高いお湯を吐水する場合もある。この場合には、赤外センサなどの温度に対して感度を有するセンサを用いることで、水領域を検知することができる。
【0207】
<I.本実施の形態における作用効果>
本実施の形態によれば、洗浄時には、高い洗浄効果および高い節水効果を実現できる吐水制御を行なうことができ、かつ、注水時には、容器内のみへの効率的な注水および手や容器を不用意に濡らさない吐水制御を行なうことができる。すなわち、ユーザが容器を手に持った状態で注水する場合には、洗浄や水張りといった用途とはことなり、水をこぼさずに所望の量だけ速く注水したいというニーズがあり、本実施の形態によれば、吐水形状を適切に変化させること、かつ、容器への注水量が適切なタイミングで吐水を停止することができる。このように、吐水形状に切り替えることで水の用途に適した吐水制御を行なうことができる。
【0208】
より具体的には、本実施の形態によれば、利用者が蛇口やボタンを操作することなく、洗浄なら洗浄効果と節水効果に優れた状態(シャワー形状)で吐水し、注水なら容器や水を濡らさず効率的に注水できる状態(ストレート形状)で吐水というように、用途に応じた吐水制御を利用者に提供できる。
【0209】
より具体的には、本実施の形態によれば、ユーザが片手に物を持ちながらもう片方の手のみで容器に注水する場合や、容器が重くて両手で支える必要がある場合でも所望の量だけ注水することができる。
【0210】
[第2の実施の形態]
上述した第1の実施の形態においては、主として、家庭などで使用される自動給水装置(自動水栓)について説明した。一方、第2の実施の形態においては、飲食店などで使用される自動給水装置(自動水栓)について説明する。
【0211】
飲食店などでは、多数の容器が使用されるが、使用される容器は予め決まっている場合も多い。そのため、このような容器の洗浄や注水を想定すると、対象の容器を特定し、当該特定した容器に適合した、吐水温度や洗浄液の混合などを制御することが好ましい。
【0212】
そこで、本実施の形態においては、形状認識処理によって対象となっている容器を特定するとともに、当該特定した容器の種類や目的に応じて、複数のモードから適切なモードを選択して吐水制御を行なう構成について例示する。
【0213】
<J.概要>
本発明に従う第2の実施の形態として、飲食店などの特殊用途を想定して、自動給水装置を搭載した流し台について説明する。この自動給水装置は、少なくとも、吐水温度、ならびに、洗浄液混合の量およびタイミングを制御可能に構成されている。なお、上述した第1の実施の形態と同様に、吐水形状または吐水量(吐水圧)をさらに制御可能であってもよい。
【0214】
特に、本実施の形態においては、注水または洗浄の対象となる容器の種類の数だけモードを設定することが可能である。このような多数のモードを設定することで、対象の容器の種類に適合した吐水を行なうことができる。
【0215】
なお、上述した第1の実施の形態においては、その付加機能として、洗浄モードと注水モードとを吐水途中で切り替えることも可能であってが、本実施の形態においては、容器の種類別にモードが割当てられるので、基本的には、吐水途中でモードを切り替える必要はない。しかしながら、このことは、本発明の範囲を不当に制限することを意味しない。
【0216】
<K.外観>
本実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台の外観については、上述の図1に示す第1の実施の形態に従う自動給水装置を搭載した流し台1の外観と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。但し、後述するように、吐水温度を調整するための温度調整機構や洗浄液を混合するための洗浄液混合機構などがさらに付加されるため、これらの機構が外部に露出する場合には、その外観がその点において図1の流し台1とは相違し得る。
【0217】
<L.制御機能>
図21は、第2の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するためのハードウェア構成を示す図である。
【0218】
図21を参照して、本実施の形態に従う自動給水装置の制御機能を提供するハードウェアとしては、図2に示す第1の実施の形態に従う自動給水装置の制御機能に対して、温度調整機構83および洗浄液混合機構84をさらに付加したものである。
【0219】
温度調整機構83は、導管41の途中に並列的に配置され、コントローラ7からの指令に応じて、吐出される水の温度を調整する。図21に示す例では、温度調整機構83の内部に図示しないヒータが組込まれており、このヒータの加熱によって吐水温度を調整する。
【0220】
なお、このような吐水温度を調整する方法としては種々の公知の構成を採用することができる。なお、温度調節のための物理的機構は、温水(給湯水)の配水管以外はユーザに見えない形態で設置される場合が多い。たとえば、系の外部に配置された給湯器からの配水量や給水温の制御、および、給湯してない給水との混合割合の制御がされる。
【0221】
洗浄液混合機構84は、導管41に接続され、コントローラ7からの指令に応じた量の洗浄液を吐出される水に付加する。すなわち、洗浄液混合機構84は、吐水される水に対する洗浄液の混合度を制御する。
【0222】
その他の部位については、コントローラ7における制御機能を除いて、図2に示すハードウェア構成と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0223】
図22は、第2の実施の形態に従う制御機能を提供するためのブロック図である。図22に示す第1の実施の形態に従うブロック図に比較して、オブジェクト認識部711の物体情報記憶部715に、形状情報718が予め格納されている点、ならびに、モード管理部716および吐水指令生成部717における制御動作が異なっている。その他の点については、上述したので、詳細な説明は繰返さない。
【0224】
オブジェクト認識部711は、基本的には、上述した第1の実施の形態に従うオブジェクト認識部711と同様の機能を提供する。但し、本実施の形態においては、対象となる容器の別の定義を含む形状情報718に基づいて、形状認識処理が実行される。すなわち、形状情報718は、予め認識されるべき各物体の形状や位置についての物体情報が記述されており、形状認識部713は、物体情報に記述された物体情報との一致/不一致に基づいて、特定の形状を有する物体を検知する。
【0225】
モード管理部716は、オブジェクト認識部711によるオブジェクト認識処理の結果に応じて、吐水の開始/停止の判定や吐水状態の切り替え判定を行なう。本実施の形態においては、複数のモードを設定可能であり、各モードの別に吐水状態を独立に設定することができる。そして、モード別に、吐水温度、洗浄液混合の有無、洗浄液混合の割合などがそれぞれ独立に設定される。なお、上述した第1の実施の形態において述べたように、吐水量や吐水形状についても、モード別に設定することもできる。なお、実施の形態においては、理解を容易にするために、3種類の容器が洗浄または注水の対象となることが想定される場合を考える。少なくとも、容器の種類の数だけモードが設定可能であるので、吐水状態は、後述するように、3種類が設定されているものとする。
【0226】
吐水指令生成部717は、モード管理部716での判定結果に基づいて、アクチュエータ81に指令を与えることで、吐水の開始・停止を制御したり、温度調整機構83に指令を与えることで、吐水の温度を制御したり、洗浄液混合機構84に指令を与えることで、吐水中の洗浄液の割合などを制御したりする。さらに、吐水形状などを変更する場合には、切替機構82に指令を与えることで、ストレート形状とシャワー形状とを切り替えることができる。
【0227】
<M.モード設定例>
本実施の形態においては、洗浄や給水の対象となる容器の材質や用途によって、きめ細やかな吐水状態を設定できる。たとえば、以下のような3種類の容器に応じた吐水を行なう場合について説明する。
【0228】
(1) 洗剤を使う必要がない容器、あるいは、洗剤を使う必要がないのでコストや環境負荷の面から洗浄液やお湯を使わない方がよい容器であるとの設定
(2) 耐熱素材でないため高温のお湯を使うことが望ましくない容器(この場合には、洗浄時の吐水温度を低めに維持する代わりに洗浄液を濃くする)であるとの設定
(3) 通常容器(この場合には、洗浄時の吐水温度を高めに維持することで洗剤液の使用量を最小限に抑えながら効率的に洗浄する)であるとの設定
本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)は、形状認識機能を搭載しているので、識別できる形状を有する容器であれば、上述のような吐水状態の切り替えを行なうことができる。
【0229】
図23は、第2の実施の形態に従う自動給水装置におけるモード設定の対象となった容器の一例を示す図である。図24は、図23に対応する形状情報718の設定例を示す図である。以下の説明では、図23(a)〜(c)に示すように、開口部の形状やサイズの異なる容器(花瓶、ガラス容器、マグカップ、箸収納ケース)を想定する。
【0230】
すなわち、上述した第1の実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)では、吐水開始前の形状認識処理によって得られた形状情報をテンプレートとしてマッチングを行なうことで、注水中の「閉じた空間」に対する形状認識処理を行なう例について示した。一方、本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)では、図23に示すような容器についての形状情報(あるいは、形状情報から生成されるテンプレート)を事前に格納しておき、これらの情報に基づいて、形状認識処理を実行する。
【0231】
なお、本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)においては、形状認識処理の結果から得られる物体の形状などの情報を改めて登録する必要はない。
【0232】
より具体的には、図24に示すような形状情報718A〜718Cが予め登録される。これらの形状情報718A〜718Cの各々においては、認識対象の物体(オブジェクト)の形状についての特徴量に加えて、吐水温度および洗浄液混合割合が設定される。なお、形状情報718A〜718Cをパターン1〜3と称する場合もある。
【0233】
本実施の形態に従う自動給水装置(自動水栓)においては、洗浄または注水の対象となっている物体の形状がいずれのパターンに合致するかを判断し、合致するパターンに対応する形状情報に記載された内容に基づいて、吐水制御を行なう。
【0234】
図24に示す形状情報718A〜718C中の「吐水温度」は、吐水口5から吐水される水温を示し、「混合液割合」は、吐水口5から吐水される水に含まれる洗浄液割合を示す。なお、形状情報718A(吐水パターン1)においては、具体的な温度の値が記載されていない。本実施の形態に従う温度調整機構83は、基本的には加熱機能のみを有するので、水道管あるいは給湯機から供給される水の通常温度よりも吐水温度を高くすることはできるが、通常温度よりも低くしたり、通常温度自体を制御したりすることはできないため、「昇温を行なわない」あるいは「給湯機からのお湯は混ぜない」という制御動作を「給湯無し」と記載している。
【0235】
<N.動作例>
次に、本実施の形態に従う自動給水装置の典型的な動作例について、タイムチャートを参照しながら説明する。
【0236】
なお、本実施の形態に従う自動給水装置では、洗浄液を混合する場合であっても、吐水開始から一定時間経過した後に、洗浄液の混合を停止する。そして、この洗浄液の混合停止からさらに一定時間経過すると、吐水を停止する。これは、洗浄液を用いて容器を洗浄した後、洗浄液を含まない水ですすぐという動作を想定したものである。
【0237】
図25は、本実施の形態に従う自動給水装置における動作を示すタイムチャートである。なお、図25(a)〜(c)は、図24(a)〜(c)の各パターンに対応した吐水制御動作を示す。なお、図25(a)〜(c)には、吐水温度制御と洗浄液混合制御とを区別可能な形態でグラフが表示されている。すなわち、図25(a)〜(c)に記載のグラフは、共通の時刻を横軸とし、「吐水有無・温度」を縦軸とするグラフと、「洗浄液混合割合」を縦軸とするグラフとが並列的に気合いされている。「吐水有無・温度」には、吐水の開始/停止の状態に加えて、吐水温度なども示される。
【0238】
(n1.パターン1)
図25(a)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて図23(a)に示す花瓶を洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザが図23(a)に示す花瓶を蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0239】
すると、自動給水装置が、図25(a)に示す時刻t41において、検知エリアS1(図5参照)内に当該オブジェクト(花瓶)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクト(花瓶)が実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t41〜t42)に亘って、オブジェクト(花瓶)の状態を判断する。
【0240】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクト(花瓶)が実質的に静止している場合には、時刻t41から判定期間ΔTdが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクト(検知)が検知され続ける。すると、自動給水装置は、時刻t42において、形状認識処理を開始する。
【0241】
そして、時刻t43において、検知エリアS1内のオブジェクトが図24(a)に示す形状情報718Aに記載された形状と一致すると判断されたとする。すなわち、自動給水装置が検知エリアのオブジェクトが図25(a)に示す花瓶と一致すると判断したとする。
【0242】
すると、自動給水装置は、時刻t43において吐水を開始する。このとき、先の形状認識処理においてパターン1に記載の形状と一致すると判断されたので、パターン1の形状情報718Aに記載の設定に従って、吐水温度制御および洗浄液混合制御が実行される。パターン1の場合には、吐水温度制御としては、供給される水の温度のままでよく、かつ、洗浄液についても混合する必要がないので、供給される水がそのままの状態(通常温度)で吐水される。
【0243】
その後、吐水開始から判定時間ΔTfだけ経過した時刻t45において吐水が停止される。なお、吐水の停止は、検知エリア内にオブジェクトが存在しなくなったことを条件としてもよい。
【0244】
なお、検知エリアS1(図5参照)内へのオブジェクト(花瓶)の侵入の検知から所定の判定期間ΔTeが経過するまでに、形状認識処理によって予め定められたいずれかのパターンと一致する形状が検知できなかった場合(時刻t44)には、吐水制御は中断され、オブジェクト検知前の状態にリセットされる。
【0245】
(n2.パターン2)
図25(b)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて図23(b)に示すガラス容器を洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザが図23(b)に示すガラス容器を蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0246】
すると、自動給水装置が、図25(b)に示す時刻t51において、検知エリアS1(図5参照)内に当該オブジェクト(ガラス容器)の存在を検知したとする。その後、検知したオブジェクト(ガラス容器)が実質的に静止状態であるか否かを判断するため、所定期間(時刻t51〜t52)に亘って、オブジェクト(ガラス容器)の状態を判断する。
【0247】
そして、検知エリアS1内で検知されたオブジェクト(ガラス容器)が実質的に静止している場合には、時刻t42から判定期間ΔTdが経過するまでの間、検知エリアS1内でオブジェクト(検知)が検知され続ける。すると、自動給水装置は、時刻t52において、形状認識処理を開始する。
【0248】
そして、時刻t53において、検知エリアS1内のオブジェクトが図24(b)に示す形状情報718Bに記載された形状と一致すると判断されたとする。すなわち、自動給水装置が検知エリアのオブジェクトが図25(b)に示すガラス容器と一致すると判断したとする。
【0249】
すると、自動給水装置は、時刻t53において吐水を開始する。このとき、先の形状認識処理においてパターン2に記載の形状と一致すると判断されたので、パターン2の形状情報718Bに記載の設定に従って、吐水温度制御および洗浄液混合制御が実行される。パターン2の場合には、吐水温度制御について、目標温度が35℃に設定され、かつ、洗浄液については、洗浄液混合割合が2%に設定される。そのため、それぞれの設定に従って吐水される。
【0250】
その後、吐水開始から判定時間ΔTgだけ経過した時刻t55において洗浄液の混合が停止され、さらにその後、吐水開始から判定時間ΔTfだけ経過した時刻t56において吐水が停止される。
【0251】
その他の動作については、図25(a)において説明した動作と同じであるので、詳細な説明は繰返さない。
【0252】
(n3.パターン3)
図25(c)には、ユーザが本実施の形態に従う自動給水装置を用いて図23()に示すマグカップを洗浄する場合の基本的な動作を示す。ユーザが図23(c)に示すマグカップを蛇口4に近づけ、そのまま蛇口4の近くで静止させたとする。
【0253】
すると、自動給水装置は、上述の図25(b)と同様の制御を行なう。なお、パターン3においては、吐水温度制御の目標温度および洗浄液混合制御の混合割合がパターン2のものとは異なっているが、その他については、パターン2と同様であるので、詳細な説明は繰返さない。
【0254】
(n4.変形例)
吐水パターンの数やパターンの種類は、上述したものに限定されない。また、認識対象のオブジェクトとしては、容器の開口部の形状だけでなく、容器全体の形状や容器に付与されたマークなどであってもよい。さらに、マークを付与したカードをかざすことを想定して容器以外のマークを認識するようにしてもよい。さらに、認識は形状だけでなく、色や模様の認識を利用してもよいし、容器の開口部などICタグなどを埋め込んでおきこれを検知するようにしてもよい。
【0255】
上述したように、第2の実施の形態において、第1の実施の形態において説明したような、吐出形状の切替制御を組み合わせてもよい。
【0256】
<O.全体処理フロー>
図26は、第2の実施の形態に従う吐水制御に係る処理手順を示すフローチャートである。
【0257】
図26を参照して、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を実行する(ステップS51)。この物体検知処理の内容については、上述した第1の実施の形態において詳述したので、詳細な説明は繰返さない。続いて、ステップS51の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS52)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS52においてNOの場合)には、ステップS51の処理が繰返される。
【0258】
何らかの物体が検知された場合(ステップS52においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知された物体(オブジェクト)が実質的に静止状態であるか否かを判断するためのタイマ値ΔT4、および、検知された物体(オブジェクト)についての形状認識処理の成否を判断するためのタイマ値ΔT5をゼロリセットする(ステップS53)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT4およびΔT5のカウントアップを開始する。
【0259】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT4が判定期間ΔTdまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS54)。
【0260】
タイマ値ΔT4が判定期間ΔTdまでカウントアップされていない場合(ステップS54においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS1(図5参照)内での何らかの物体(オブジェクト)の存在を検知するための物体検知処理を再度実行する(ステップS55)。続いて、ステップS55の物体検知処理によって、何らかの物体(オブジェクト)が検知されたか否かを判断する(ステップS56)。何らの物体も検知されていない場合(ステップS56においてNOの場合)には、処理は終了する。
【0261】
これに対して、何らかの物体が検知された場合(ステップS56においてYESの場合)には、コントローラ7は、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS57)、ステップS54以下の処理を再度実行する。なお、ステップS57におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT4およびΔT5は、形状認識処理の繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTsだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTsは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0262】
一方、タイマ値ΔT4が判定期間ΔTdまでカウントアップされている場合(ステップS54においてNOの場合)には、コントローラ7は、タイマ値ΔT5が判定期間ΔTeまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS58)。タイマ値ΔT5が判定期間ΔTeまでカウントアップされている場合(ステップS58においてNOの場合)には、処理は終了する。
【0263】
これに対して、タイマ値ΔT5が判定期間ΔTeまでカウントアップされていない場合(ステップS58においてYESの場合)には、コントローラ7は、検知エリアS2(図5参照)内に対して形状認識処理を実行する(ステップS59)。なお、この形状認識処理については、上述した第1の実施の形態において詳述したので、詳細な説明は繰返さない。
【0264】
続いて、コントローラ7は、形状認識処理が成功したか否かを判断する(ステップS60)。すなわち、コントローラ7は、予め登録された形状(パターン)と一致する形状を検知できたか否かを判断する。
【0265】
形状認識処理が成功しなかった場合(ステップS60においてNOの場合)には、ステップS57以下の処理が繰返される。
【0266】
これに対して、形状認識処理が成功した場合(ステップS60においてYESの場合)には、コントローラ7は、ステップS60において検知された形状認識に相当するパターンを判断する(ステップS61)。
【0267】
検知された形状認識に相当するパターンが「1」であった場合(ステップS61において「パターン1」)には、コントローラ7は、パターン1の形状情報を選択する(ステップS62)。また、検知された形状認識に相当するパターンが「2」であった場合(ステップS61において「パターン2」)には、コントローラ7は、パターン2の形状情報を選択する(ステップS63)。また、検知された形状認識に相当するパターンが「3」であった場合(ステップS61において「パターン3」)には、コントローラ7は、パターン3の形状情報を選択する(ステップS64)。
【0268】
その後、コントローラ7は、選択した形状情報に記載の状態で吐水を開始するとともに、洗浄液および吐水の停止タイミングを判断するためのタイマ値ΔT6をゼロリセットする(ステップS65)。そして、コントローラ7は、このタイマ値ΔT6のカウントアップを開始する。
【0269】
その後、コントローラ7は、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTgまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS66)。タイマ値ΔT6が判定期間ΔTgまでカウントアップされていない場合(ステップS66においてYESの場合)には、コントローラ7は、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS67)には、ステップS66以下の処理を再度実行する。なお、ステップS67におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT6は、洗浄液の停止タイミングを判断するための繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTtだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTtは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0270】
これに対して、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTtまでカウントアップされている場合(ステップS66においてNOの場合)には、コントローラ7は、洗浄液の混合を停止する(ステップS68)。そして、コントローラ7は、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTfまでカウントアップされたか否かを判断する(ステップS69)。タイマ値ΔT6が判定期間ΔTfまでカウントアップされていない場合(ステップS69においてYESの場合)には、コントローラ7は、所定期間だけ処理をスリープし(ステップS70)には、ステップS69以下の処理を再度実行する。なお、ステップS70におけるスリープ処理によって、タイマ値ΔT6は、吐水の停止タイミングを判断するための繰り返し周期(ポーリング間隔)ΔTtだけ加算される。なお、このポーリング間隔ΔTtは、対象のユーザやオブジェクトに応じて、経験的に設計すればよい。
【0271】
これに対して、タイマ値ΔT6が判定期間ΔTfまでカウントアップされている場合(ステップS69においてNOの場合)には、コントローラ7は、吐水を停止する(ステップS71)。そして、処理は終了する。
【0272】
<P.本実施の形態における作用効果>
本実施の形態によれば、飲食店などにおいて、容器の種類によって洗浄や注水をきめ細かに切り替えたいような場合に、ユーザが、対象の容器の種類などについて特に意識や記憶をすることなく、蛇口の近くで容器を静止させるだけで、自動的にその容器に適した吐水モードでの吐水が開始される。そのため、ユーザの負担を下げつつ、洗浄などの効率を向上させることができる。
【0273】
さらに、第1の実施の形態と第2の実施の形態とを組み合わせることで、家庭内での通常の用途向けに適用する場合には、上述の第1の実施の形態における作用効果に加えて、洗浄効率を高めつつ、注水時には温度制御や洗浄混入などの不必要な制御が行なわれないようにすることもできる。
【0274】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0275】
1 流し台、2 本体部、3 シンク、4 蛇口、5 吐水口、6 センサ、7 コントローラ、41 導管、42 密閉弁、61 第1カメラ、62 第2カメラ、63 画像処理エンジン、64 オプティカルフロー、71 プロセッサ、72 メモリ、73 インターフェイス、81 アクチュエータ、82 切替機構、83 温度調整機構、84 洗浄液混合機構、611 第1入力画像取得部、612 第1カメラ背景画像保持部、613 第1差分画像生成部、621 第2入力画像取得部、622 第2カメラ背景画像保持部、623 第2差分画像生成部、631 位置情報取得部、632 画像情報取得部、633 ステレオマッチング処理部、634 相関値算出部、635 位置算出部、711 オブジェクト認識部、712 物体検知部、713 形状認識部、714 水流検知部、715 物体情報記憶部、716 モード管理部、717 吐水指令生成部、718,718A〜718C,718A,718B 形状情報。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水形態を変更することのできる吐水機構と、
前記吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識する形状認識手段と、
前記形状認識手段による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように前記吐水機構を制御する吐水制御手段とを備える、自動給水装置。
【請求項2】
前記吐水制御手段は、
前記形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識すると、物体に水を注ぐための第1のモードを設定し、
前記形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識しなければ、物体を洗浄するための第2のモードを設定する、請求項1に記載の自動給水装置。
【請求項3】
前記第1のモードでは、前記第2のモードに比較して、吐水断面範囲がより狭くなるように吐水を行なう、請求項2に記載の自動給水装置。
【請求項4】
前記吐水機構から吐水される水流の状態を検知する水流検知手段をさらに備え、
前記吐水制御手段は、前記第1のモードでの吐水中に、前記形状認識手段による認識結果と前記水流検知手段による検知結果とに基づいて物体への注水の状態を判断し、前記吐水機構からの吐水の停止、および、前記第1のモードから前記第2のモードへの切り替えの少なくとも一方を行なう、請求項2または3に記載の自動給水装置。
【請求項5】
前記形状認識手段は、水を蓄えることのできる形状を有する物体を認識すると、当該物体が有する開口部の領域を検知し、
前記水流検知手段は、重力下方向への時間的変化を示す塊部分を水流として特定するとともに、当該特定された水流の重力方向の下端位置を検知し、
前記吐水制御手段は、前記形状認識手段により検知された開口部の内側に前記水流の下端位置が存在するか否かに基づいて、物体への注水の状態を判断する、請求項4に記載の自動給水装置。
【請求項6】
前記形状認識手段は、検知された物体の存在領域の吐水口に近い側の範囲から前記開口部の領域を検知する、請求項5に記載の自動給水装置。
【請求項7】
前記エリアへの物体の進入を検知する物体検知手段をさらに備え、
前記吐水制御手段は、
前記物体検知手段が物体の侵入を検知することに応答して、前記吐水機構からの吐水を開始する手段と、
吐水中における前記形状認識手段による認識結果に基づいて、前記吐水機構からの吐水を停止する手段とを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項8】
予め認識されるべき各物体の形状や位置についての物体情報を記憶する物体情報記憶手段をさらに備え、
前記形状認識手段は、前記物体情報記憶手段に記憶された物体情報との一致/不一致に基づいて、特定の形状を有する物体を検知する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項9】
前記形状認識手段は、取得された画像に対してエッジ抽出した結果に基づいて、物体の形状を認識する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項10】
前記形状認識手段は、抽出されたエッジのうち閉じた空間を抽出し、当該抽出した閉じた空間を物体が有する開口部と検知する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項11】
前記吐水制御手段は、吐水形状、吐水量、吐水温度、洗浄液の混合量のうち少なくとも一つについて異なる複数の吐水形態のうち、1つの吐水形態を選択する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項1】
吐水形態を変更することのできる吐水機構と、
前記吐水機構により吐水される先のエリアに存在する物体の形状を認識する形状認識手段と、
前記形状認識手段による認識結果に基づいて吐水形態を決定するとともに、当該決定した吐水形態で吐水されるように前記吐水機構を制御する吐水制御手段とを備える、自動給水装置。
【請求項2】
前記吐水制御手段は、
前記形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識すると、物体に水を注ぐための第1のモードを設定し、
前記形状認識手段が対象の物体は水を蓄えることのできる形状を有していると認識しなければ、物体を洗浄するための第2のモードを設定する、請求項1に記載の自動給水装置。
【請求項3】
前記第1のモードでは、前記第2のモードに比較して、吐水断面範囲がより狭くなるように吐水を行なう、請求項2に記載の自動給水装置。
【請求項4】
前記吐水機構から吐水される水流の状態を検知する水流検知手段をさらに備え、
前記吐水制御手段は、前記第1のモードでの吐水中に、前記形状認識手段による認識結果と前記水流検知手段による検知結果とに基づいて物体への注水の状態を判断し、前記吐水機構からの吐水の停止、および、前記第1のモードから前記第2のモードへの切り替えの少なくとも一方を行なう、請求項2または3に記載の自動給水装置。
【請求項5】
前記形状認識手段は、水を蓄えることのできる形状を有する物体を認識すると、当該物体が有する開口部の領域を検知し、
前記水流検知手段は、重力下方向への時間的変化を示す塊部分を水流として特定するとともに、当該特定された水流の重力方向の下端位置を検知し、
前記吐水制御手段は、前記形状認識手段により検知された開口部の内側に前記水流の下端位置が存在するか否かに基づいて、物体への注水の状態を判断する、請求項4に記載の自動給水装置。
【請求項6】
前記形状認識手段は、検知された物体の存在領域の吐水口に近い側の範囲から前記開口部の領域を検知する、請求項5に記載の自動給水装置。
【請求項7】
前記エリアへの物体の進入を検知する物体検知手段をさらに備え、
前記吐水制御手段は、
前記物体検知手段が物体の侵入を検知することに応答して、前記吐水機構からの吐水を開始する手段と、
吐水中における前記形状認識手段による認識結果に基づいて、前記吐水機構からの吐水を停止する手段とを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項8】
予め認識されるべき各物体の形状や位置についての物体情報を記憶する物体情報記憶手段をさらに備え、
前記形状認識手段は、前記物体情報記憶手段に記憶された物体情報との一致/不一致に基づいて、特定の形状を有する物体を検知する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項9】
前記形状認識手段は、取得された画像に対してエッジ抽出した結果に基づいて、物体の形状を認識する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項10】
前記形状認識手段は、抽出されたエッジのうち閉じた空間を抽出し、当該抽出した閉じた空間を物体が有する開口部と検知する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【請求項11】
前記吐水制御手段は、吐水形状、吐水量、吐水温度、洗浄液の混合量のうち少なくとも一つについて異なる複数の吐水形態のうち、1つの吐水形態を選択する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の自動給水装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図14】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図12】
【図13】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−2033(P2012−2033A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140399(P2010−140399)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】
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