自動薄切装置
【課題】ホルダへの切断刃の搬送と切断刃の確実なクランプ固定とを行って、切断刃を自動で交換しながら包埋ブロックの薄切を行うこと。
【解決手段】包埋ブロックを薄切する装置であって、切断刃8と、刃先8aが外側に露出しながら切断刃が載置される載置プレートと、切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する押さえプレート61とを有するホルダ10と、包埋ブロックとホルダとを相対的に移動させて切断刃により包埋ブロックを薄切する移動機構と、切断刃を収納する収納ケース9と、収納ケースから切断刃を1枚取り出して載置プレートに搬送させると共に、使用した切断刃をホルダから押し出して交換させる搬送機構11と、載置プレートの所定位置で切断刃が1枚だけ押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する検出機構と、を備えている自動薄切装置を提供する。
【解決手段】包埋ブロックを薄切する装置であって、切断刃8と、刃先8aが外側に露出しながら切断刃が載置される載置プレートと、切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する押さえプレート61とを有するホルダ10と、包埋ブロックとホルダとを相対的に移動させて切断刃により包埋ブロックを薄切する移動機構と、切断刃を収納する収納ケース9と、収納ケースから切断刃を1枚取り出して載置プレートに搬送させると共に、使用した切断刃をホルダから押し出して交換させる搬送機構11と、載置プレートの所定位置で切断刃が1枚だけ押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する検出機構と、を備えている自動薄切装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製し、この薄切片に対して染色処理を行って、生体試料を観察する観察する方法が知られている。通常、包埋ブロックから薄切片を作製する場合には、細胞レベルでの観察を可能とするために3μm〜5μm程度の厚さで均一に、且つ、包埋されている生体試料を損傷しないように薄切する必要がある。このため、一般的に薄切片を作製する作業は、鋭利な薄い切断刃を使用して、熟練の作業者による手作業で行っていた。
【0003】
ところが、前臨床試験等を行う場合には、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片を作製する必要がある。そのため、膨大な数の薄切片を作製し続ける必要がある。従って、薄切片を作製する作業を、手作業ではなく、機械による自動化で行うことが望まれている。
【0004】
このようなニーズに応えるために、包埋ブロックを薄切して薄切片を作製する作業を自動で行うことができる装置が提供されている(特許文献1及び2参照)。
これらの装置によれば、作業者に負担をかけることなく薄切片を作製し続けることが可能である。
【特許文献1】特開2007−212329号公報
【特許文献2】特開2007−240522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包埋ブロックを薄切する際には、切断面が極力綺麗で平坦な面となるように薄切する必要がある。そのため、常に良好な切れ味を確保するために、切断刃を頻繁に交換する必要がある。
しかしながら、従来の装置では、切断刃の交換までは自動で行うことができず、依然として作業者に頼らざるを得なかった。そのため、作業者に負担がかかっていた。しかも、切断刃は、非常に鋭利であるので取り扱いに注意を要する。この点においても、作業者にかかる負担が大きなものであった。
【0006】
また、切断刃は、ホルダにてクランプ固定されるものであるが、予め決められた正規の位置にセットしないと、確実なクランプ固定を行うことができない場合があった。仮に、この状態で薄切を行ってしまうと、切断刃の姿勢不良やがたつき等によって正確な薄切を行えないだけでなく、切断刃の落下による周囲構成品の損傷等を招く可能性もあった。そのため、作業者は、クランプ固定が確実なものであるかを確認する必要があった。よって、この点においても、作業者にかかる負担が大きかった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、ホルダへの切断刃の搬送と切断刃の確実なクランプ固定とを行って、切断刃を自動で交換しながら包埋ブロックの薄切を行うことができ、作業者への負担を極力低減することができる自動薄切装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決して係る目的を達成するために以下の手段を提供する。
本発明に係る自動薄切装置は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置であって、一端側が刃先とされ、刀身に位置決め用の貫通孔が形成された切断刃と、前記刃先が外側に露出しながら前記切断刃が載置される載置プレートと、載置された切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する押さえプレートと、を有するホルダと、前記包埋ブロックと前記ホルダとを相対的に移動させ、クランプ固定した前記切断刃により包埋ブロックを薄切する移動機構と、前記切断刃を複数収納する収納ケースと、前記収納ケースと前記ホルダとの間に配置され、収納ケースから前記切断刃を1枚取り出して前記載置プレートにスライド移動により搬送させると共に、前記薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃をスライド移動によりホルダから押し出して交換させる搬送機構と、前記載置プレートの所定位置で前記切断刃が1枚だけ前記押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する検出機構と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る自動薄切装置においては、まず、搬送機構が収納ケース内から切断刃を1枚取り出した後、ホルダの載置プレートに向けてスライド移動により搬送し、載置プレート上に切断刃を載置する。この際、切断刃は刃先が載置プレートの外側に露出した状態となっている。すると、ホルダの押さえプレートが作動して、載置された切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する。この際、検出機構は、切断刃が載置プレートの所定位置で1枚だけ押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する。つまり、切断刃が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、しかも、確実に1枚だけ固定されているか否かを検出する。その結果、検出機構が否と検出した場合には、切断刃のクランプ不良と判断して、以降の薄切を行わない。
【0010】
このように、検出機構を備えているので、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことができる。
そして、切断刃が固定されると、移動手段が包埋ブロックとホルダとを相対的に移動させて、クランプ固定した切断刃により包埋ブロックを薄切する。これにより、包埋ブロックを粗削りして面だしをしたり、包埋ブロックを本削りして薄切片を作製したりすることができる。そして、薄切が所定回数終了すると、押さえプレートが切断刃の押さえ付けを解除すると同時に、搬送機構が使用した切断刃をスライド移動によりホルダから押し出して交換する。その後、搬送機構は、再度収納ケース内から新たな切断刃を1枚取り出して、載置プレートに搬送する。
【0011】
このように、薄切を所定回数行う毎に切断刃の交換を自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃を交換でき、作業者にかかる負担を極力軽減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃を使用して薄切を行うことができるので、高品質な薄切片の作製を実現することができる。
加えて、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃を1枚だけホルダにクランプ固定できるので、正確な薄切を行うことができると共に、切断刃の落下等を未然に防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明の自動薄切装置において、前記検出機構が、前記載置プレートの所定位置に形成された逃げ孔と、前記押さえプレートに設けられ、前記貫通孔を挿通可能であると共に前記逃げ孔内に挿入可能とされた突出ピンと、を備え、前記載置プレートに対する前記押さえプレートの押さえ付け角度に基づいて、前記検出を行うことを特徴とする。
【0013】
この発明に係る自動薄切装置においては、搬送機構によって切断刃が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、確実に1枚だけ搬送されてきた場合には、突出ピンが貫通孔を挿通した後、逃げ孔内に挿入される。従って、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度が一定角度になった状態で、切断刃をクランプ固定することができる。
ところが、切断刃が搬送されてきた際に、位置不良や姿勢不良等となっている場合には、突出ピンが刀身に接触して干渉してしまう。そのため、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度が上記角度とは異なる角度になる。一方、何らかの理由によって切断刃が搬送されてこなかった場合や、2枚同時に搬送されてきた場合には、予め決められた位置に、予め決められた姿勢でいくら搬送されてきたとしても、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度がやはり上記角度とは異なる角度になってしまう。
【0014】
このように、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度に基づいて、載置プレートの所定位置で切断刃が1枚だけ押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを容易且つ確実に検出することができる。
【0015】
また、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明の自動薄切装置において、前記載置プレートに載置された前記切断刃の基端側を吸着して、切断刃の姿勢を保持する吸着部材を備えていることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る自動薄切装置においては、載置プレートに載置された切断刃の基端側(刃先とは逆側)を吸着部材によって吸着することができる。そのため、ホルダが包埋ブロックに対してすくい角が付いた状態で斜めに配置されていたとしても、切断刃は重力の影響を受けてずれ落ちることがなく、姿勢が保持されて安定した状態となる。従って、すくい角を付けた状態で、包埋ブロックを薄切することができ、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る自動薄切装置によれば、ホルダへの切断刃の搬送と切断刃の確実なクランプ固定とを行って、切断刃を自動に交換しながら包埋ブロックの薄切を行うことができる。従って、作業者への負担を極力低減することができ、薄切作業を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を、図1から図39を参照して説明する。この自動薄切装置は、図1に示すように、生体試料Sが包埋材であるパラフィンPによって包埋された包埋ブロックBを、所定のすくい角θが付いた状態で薄切(例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切)する装置である。
【0019】
よって、この自動薄切装置によって、図2に示す薄切片Mを作製することが可能とされている。なお、この薄切片Mは、その後、水やお湯等の液体上に浮かべて、薄切時に生じた皺やカール等の歪みを除去する伸展工程を経た後、スライドガラス等の基板Gに掬い取られて、薄切片標本Hとなるものである。
なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンPによってブロック状に固められたものである。これにより、生体試料SがパラフィンP内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。
【0020】
ところで、本実施形態では、図1に示すように、包埋ブロックBが箱状に形成されたカセットK上に固定されているものとして説明する。
はじめに、このカセットKについて簡単に説明すると、耐薬品性を有する樹脂等により形成されたものであり、包埋ブロックBを固定する固定台としての役割を果している。カセットKの一側面は、下方に面が向いた傾斜面K1となっている。なお、この傾斜面K1上には、カセットKの製造番号や、包埋ブロックBの作製日、生体試料Sの各種データ等を含む図示しない識別コードが記録されている。そのため、この識別コードを読み取ることで、包埋ブロックBの品質管理を行えるようになっている。
【0021】
続いて、本実施形態の自動薄切装置について、説明する。
図3及び図4に示すように、自動薄切装置1は、カセットKを複数収納するマガジン2と、マガジン2から1つのカセットKを出し入れすると共に載置台3に載置するオートローダ4と、載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しするカセットローダ6と、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを撮像する撮像カメラ7と、切断刃8と、切断刃8を複数収納する収納ケース9と、切断刃8を固定するホルダ10と、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10に搬送してセットする搬送機構11と、使用済みの切断刃8を収容する廃棄用ボトル12と、使用済みの切断刃8をホルダ10から回収して廃棄用ボトル12に排出する排出機構13と、これら各構成品を内部に収容する装置ケース14と、各構成品を総合的に制御する制御部15と、で主に構成されている。
【0022】
装置ケース14について、先に説明する。
この装置ケース14は、全体的に箱型に形成されており、内部が密閉可能とされているうえ、湿度や温度等の環境条件を所望する条件に設定可能とされている。また、装置ケース14の内部は、中間パネル14aによって上部空間E1と下部空間E2とに区分けされており、各構成品の大部分が上部空間E1に配置されている。下部空間E2には、主に廃棄用ボトル12が配置されている。
【0023】
装置ケース14の前面には、作業者が開け閉めする2つの出入扉14b、14cが設けられている。一方の出入扉14bは、マガジン2を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14bを開けるとマガジン2をセットが装着されるストッカ30が露出するようになっている。一方、他方の出入扉14cは、廃棄用ボトル12を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14cを開けると廃棄用ボトル12が露出して外部からアクセスできるようになっている。
【0024】
次に、マガジン2について、説明する。
図5から図7に示すように、マガジン2は、全体として縦長の直方体状に形成された収納ケースであり、包埋ブロックBを固定したまま、複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納できるように設計されている。詳細には、このマガジン2は、正面が開口した箱型のマガジン本体20と、マガジン本体20に固定された開閉扉21と、で主に構成されている。
【0025】
図8及び図9に示すように、マガジン本体20の2つの側面の内側には、カセットKをガイドするガイド溝20aが正面側から背面側に向かって左右で対向するように形成されている。これにより、カセットKを正面側から差し込むように挿入して、マガジン本体20内に収納可能とされている。しかも、このガイド溝20aは、高さ方向に一定の間隔を開けて複数形成されている。これにより、上述したように複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納可能とされている。
なお、マガジン本体20は、カセットK及び包埋ブロックBが若干正面側に飛び出るように、カセットKに比べて奥行が短くなるようにサイズ設計されている。
【0026】
また、マガジン本体20の側面の内側には、内方に向かって突出したピン22が複数形成されている。なお、図を見易くするために、各図においてピン22を適宜実線で図示している。このピン22は、カセットKを予め決められた向きで収納させるための誤挿入防止用のピンであって、各ガイド溝20aの背面側近くにそれぞれ形成されている。具体的には、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを挿入したときに、傾斜面K1とマガジン本体20の背面との間に確保された隙間に収まるようにピン22が形成されている。そのため、図9に示す向きでカセットKを挿入した場合には、ピン22がカセットKに接触することがない。
【0027】
これに対して、図10に示すように、逆向き(傾斜面K1が正面側に向いた状態)でカセットKを挿入してしまった場合には、途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。この場合には、図11に示すように、開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。そのため、カセットKの誤挿入を容易且つ明確に見分けることが可能とされている。
【0028】
同様に、包埋ブロックBを下向きにした状態で(上下逆向き)カセットKを挿入してしまった場合には、傾斜面K1が背面側或いは正面側のどちらを向いていても、図12及び図13に示すように、やはり途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、やはりカセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。
この場合には、同様に開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。
【0029】
従って、本実施形態のマガジン本体20には、図8及び図9に示す向きでカセットKを挿入しないかぎり開閉扉21が閉まらない設計となっている。つまり、包埋ブロックBが上向きで、且つ、傾斜面K1を背面側に向けた状態で複数のカセットKを全て挿入しない限り、開閉扉21を閉めることができない。よって、作業者の人為的ミスを未然に防止することができる。また、マガジン2内に収納された複数のカセットKの向きを、確実に全て統一することが可能とされている。
【0030】
マガジン本体20の背面には、図7に示すように長穴の開口部20bが複数形成されており、収納されている複数のカセットKを背面側からでも視認できるように設計されている。
マガジン本体20の一方の側面の外側には、図6に示すように長手方向に沿って回動軸23が設けられている。そして、この回動軸23にヒンジ部24を介して上記開閉扉21が固定されている。開閉扉21は、図5に示すようにマガジン本体20と同じ長さに設計されており、閉状態になったときに、図8及び図9に示すようにマガジン本体20の正面側から若干突出するカセットKの一部を覆って脱落を防止している。これにより、開閉扉21を開けない限り、収納したカセットKがマガジン本体20から抜け落ちないようになっている。そのため、作業者は、カセットKの落下に注意を払うことなくマガジン2を安心して持ち運びできるようになっている。
【0031】
ところで、開閉扉21を固定しているヒンジ部24の内部には、図示しない捩りバネが内蔵されており、開閉扉21が閉まっているときに、この閉状態を維持するように付勢している。これにより、マガジン2を持ち運びしている際に、不意に開閉扉21が開いてしまうことを規制している。
【0032】
更に、マガジン本体20の側面の外側には、図14及び図15に示すように、ヒンジ部24の下面に摺接するブロック25が回動軸23に隣接して固定されている。このブロック25の上面には、嵌合溝25aが凹み形成されている。そして、ヒンジ部24の内部には、図示しないコイルバネで付勢されたボールプランジャ26が内蔵されている。
このボールプランジャ26は、開閉扉21を閉状態から一定角度以上開けたときに、嵌合溝25aに嵌合するようになっている。この際、嵌合したときの力が捩りバネの付勢力に打ち勝つように、コイルバネの付勢力が調整されている。これにより、カセットKをマガジン2に収納する際に、開閉扉21を開けたままの状態で作業できるように設計されている。
【0033】
また、開閉扉21の略中央部分には、図5に示すように、扉開閉用のピン27が外方に突出した状態で設けられている。よって、このピン27を利用して開閉扉21を開閉することも可能とされている。
【0034】
このように構成されたマガジン2は、図16に示すように、ストッカ30に装着可能とされている。このストッカ30は、上述したように装置ケース14の出入扉14bを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、手動でマガジン2をストッカ30に差し込んで装着したり、ストッカ30から抜き取ったりすることが可能とされている。
ストッカ30は、枠型に形成されており、マガジン2を2つ横に並べた状態で保持できるように設計されている。なお、ストッカ30は、マガジン2が正面側(開閉扉21側)から差し込まれたときだけ受け入れるように設計されている。なお、図16では、マガジン2を1つだけ装着した場合を図示している。
【0035】
また、ストッカ30は、マガジン2が装着されたか否かを検出するマガジン検出センサ31と、装着されたマガジン2の開閉扉21を開閉する開閉機構32と、開閉扉21の開閉状態を検出する開閉検出センサ33と、を備えている。
マガジン検出センサ31は、図17に示すように、ストッカ30の上部に固定されており、下方に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lがマガジン2で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、マガジン2の装着を検出したことを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、マガジン検出センサ31から送られてきた検出信号に基づいて、マガジン2が装着されたか否かを把握できるようになっている。
【0036】
同様に、開閉検出センサ33もストッカ30の上部に固定されており、閉状態の開閉扉21に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lが閉状態の開閉扉21で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、開閉扉21が閉状態であることを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、開閉検出センサ33から送られてきた検出信号に基づいて、開閉扉21の開閉状態を把握できるようになっている。つまり、マガジン2が装着されたうえで、開閉検出センサ33から検出信号が送られてきた場合には、開閉扉21が閉まっていると判断し、検出信号が送られてこない場合には、開閉扉21が開いていると判断する。
【0037】
開閉機構32は、図16に示すように、開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛け可能な鉤型の爪部32aと、爪部32aを可動させて開閉扉21を開閉させるシリンダ機構32bと、で主に構成されている。シリンダ機構32bは、制御部15からの指示を受けて作動するようになっている。
なお、マガジン2の開閉扉21が開いている状態では、ストッカ30からマガジン2を取り外すことができないように設計されている。
【0038】
次に、オートローダ4について、説明する。
図4に示すように、オートローダ4は、装置ケース14の上部空間E1内にてストッカ30に隣接する位置に配置されている。このオートローダ4は、ストッカ30に装着されたマガジン2に収納されたカセットKを挟持可能なハンド部4aと、ハンド部4aを垂直なZ軸回りに回転自在に固定すると共にストッカ30と載置台3とを結ぶX軸方向に移動可能なX軸スライダ4bと、X軸スライダ4bを支持すると共にX軸及びZ軸の2軸に対して直交するY軸方向に移動可能なY軸スライダ4cと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部4a、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0039】
ハンド部4aは、マガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜組み合わせることで、マガジン2から所望するカセットKを1つだけ出し入れしたり、載置台3上にカセットKを載置したりすることができるようになっている。
【0040】
なお、本実施形態では、オートローダ4をハンド部4aとX軸スライダ4bとY軸スライダ4cとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。マガジン2から所望のカセットKを1つ出し入れでき、且つ、カセットKを載置台3上に載置できるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0041】
次に、カセットローダ6について、説明する。
図4に示すように、カセットローダ6は、装置ケース14の上部空間E1内にて最奥部(開閉扉21が形成されている前面とは反対側の後面に近い部分)に配置されている。このカセットローダ6は、載置台3に載置されたカセットKを挟持可能なハンド部6aと、ハンド部6aをZ軸回りに回転自在に固定すると共にZ軸方向に延びたガイド6bに沿って移動可能な固定プレート6cと、ガイド6bをY軸方向に移動させるY軸移動機構6dと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部6a、固定プレート6c及びY軸移動機構6dは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0042】
ハンド部6aは、載置されたカセットKの両側を真上から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜組み合わせることで、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置したり、ステージ5上から載置台3に戻したりすることができるようになっている。
なお、Y軸移動機構6dは、一対のプーリ40に巻回されてY軸方向に移動する無端ベルト41と、無端ベルト41に連結され、無端ベルト41の移動に伴って移動するスライダ42と、スライダ42と固定プレート6cとを連結する連結プレート43と、で構成されている。なお、一対のプーリ40のうちの一方が、駆動部44によって回転することで無端ベルト41が移動する。
【0043】
なお、本実施形態では、カセットローダ6をハンド部6aと固定プレート6cとY軸移動機構6dとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しでき、カセットKを所望する向きでステージ5上にセットできるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0044】
ステージ5は、内部に圧電素子等が組み込まれており、制御部15からの指示に基づいて適宜Z軸方向に移動するように構成されている。これにより、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを高さ調整することができ、所望する厚み(例えば、5μm)で薄切することが可能とされている。
加えて、このステージ5は、Z軸回りの回転と、X軸回り及びY軸回りの傾きとが自在に調整可能とされた多軸のステージとされている。そのため、包埋ブロックBの姿勢を自在にコントロールして、包埋ブロックBの向きや傾き等を所望する状態に設定することが可能とされている。
【0045】
次に、撮像カメラ7について、説明する。
図4に示すように、撮像カメラ7は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の真上にくるように配置されている。この際、撮像カメラ7は、Z軸方向に移動可能なZ軸移動部7aに支持されている。このZ軸移動部7aは、Y軸移動部7bによってY軸方向に移動可能とされている。よって、撮像カメラ7は、必要に応じてステージ5上の真上から退避可能とされている。具体的には、カセットローダ6によってカセットKが載置台3とステージ5との間で受け渡しする間、カセットローダ6の動きを邪魔しないように撮像カメラ7は退避するようになっている。
なお、これらZ軸移動部7a及びY軸移動部7bは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0046】
また、撮像カメラ7は、ステージ5上にカセットKが載置されると、図示しない光源からの照明光によって照明された包埋ブロックBを撮像するようになっている。この際、照明光の種類(例えば、落射照明光や拡散照明光)によって、包埋ブロックBの表面状態や内部状態を撮像できるようになっている。なお、撮像された撮像画像は、制御部15に送られて記録されると共に、制御部15に接続されたモニタ15aに表示される。
【0047】
次に、切断刃8について、説明する。
図18及び図19に示すように、切断刃8は、一端側が刃先8aとされた長尺な磁性体の刃である。また、切断刃8の刀身には、楕円状に形成された位置決め用の貫通孔8bが間隔を開けて2つ形成されている。なお、本実施形態では、刃先8aが両刃となっている場合を例にしている。片刀でも構わない。
切断刃8のサイズの一例としては、長さLが約80mm、幅Wが約8mm、厚さTが約0.25mmである。
【0048】
このように構成された切断刃8は、図20から図22に示す収納ケース9内に多段に積層された状態で複数枚収納されている。
この収納ケース9は、ケース本体50と、ケース本体50から切断刃8を1枚だけ取り出すためのレバー部51と、で主に構成されている。ケース本体50は、略直方体状に形成されており、上面には長手方向に沿って長溝50aが形成されている。また、内部に収納された切断刃8は、ケース本体50の底部に設けられた図示しない付勢手段により上面側に常に付勢されている。ケース本体50の一方の側面には、長手方向に沿ってガイド溝50bが対向した状態で形成されている。更に、ケース本体50の側面には、切断刃8が通過する図示しない開口部が形成されており、ケース本体50に収納されている切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8がこの開口部を通って外側に搬出されるようになっている。
【0049】
レバー部51は、断面略コ形状に形成されており、爪部51aが一対のガイド溝50bに嵌った状態でケース本体50の上面に被さっている。そして、レバー部51は、爪部51aがガイド溝50bにガイドされた状態でケース本体50の長手方向に移動自在とされている。また、レバー部51には、ケース本体50の上面に形成された長溝50a内に入り込む突起部51bが形成されている。この突起部51bは、ケース本体50に収納された複数の切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8にのみに接触するように長さが調整されている。これにより、レバー部51を移動させることで、1番上方に位置する切断刃8のみを押しだして、ケース本体50に形成された開口部からケース本体50の外側に搬出することが可能とされている。
【0050】
このように構成された収納ケース9は、図4及び図23に示すように、水平面に対して若干傾くすくい角θ(例えば、27°前後)が付いた状態で、装置ケース14の上部空間E1内に配置されている。
【0051】
次に、ホルダ10について説明する。
図4に示すように、ホルダ10は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の近傍に配置されている。この際、ホルダ10は、収納ケース9と同様にすくい角θが付いた状態で斜めに配置されている。
具体的には、ホルダ10は、図24及び図25に示すように、刃先8aが外側に露出しながら切断刃8が載置される載置プレート60と、載置された切断刃8を載置プレート60に押さえ付けてクランプ固定する押さえプレート61と、で主に構成されている。
【0052】
載置プレート60は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が載置される載置面60aが長手方向に沿って先端側に形成されている。また、載置プレート60には、載置面60aに隣り合うように載置面60aに沿ってシート板62が固定されている。そして、載置面60a側に向いたシート板62の端面には、間隔を開けて複数の磁石(吸着手段)63が埋め込まれて固定されている。
この磁石63は、載置面60aに載置された切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく載置プレート60に載置されるようになっている。
【0053】
押さえプレート61は、載置プレート60に支持されているシャフト64に回転自在に連結された状態で、載置面60aの全体を覆うように配置されている。この押さえプレート61は、制御部15の指示によって押し出されるロッド65aによって、基端側が上方に押されるようになっている。すると、押さえプレート61はシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。これにより、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けて、クランプ固定することが可能とされている。
【0054】
また、押さえプレート61は、図示しないコイルバネによって基端側が載置プレート60側に付勢されている。そのため、ロッド65aを引き込んだ場合には、バネ力によって押さえプレート61が逆回転し、先端側が持ち上がるようになる。これにより、切断刃8の押さえ付けが解除されるようになっている。
なお、ロッド65aは、載置プレート60の基端側を支持する支持体66に対して接近離間するスライド部65に連結されており、スライド部65の移動に伴って可動するようになっている。
【0055】
ところで、載置プレート60の載置面60aには、図26に示すように、間隔を開けて載置プレート60を貫通する逃げ孔68が3つ形成されている。なお、本実施形態では、逃げ孔68を貫通孔として説明するが、後述する突出ピン60が入り込んで挿入可能とされる程度に十分深い凹部であっても構わない。
この際、隣り合う逃げ孔68の中心間距離は、切断刃8の貫通孔8bの中心間距離に一致している。一方、押さえプレート61の先端側には、図27に示すように、載置プレート60側に突出して逃げ孔68に入り込む3つの突出ピン69が、逃げ孔68に対向するように設けられている。従って、突出ピン69は、載置プレート60に干渉しないように設計されている。なお、これら突出ピン69は、切断刃8の貫通孔8bを貫通可能なサイズとされている。
【0056】
上述したように、突出ピン69が設けられているので、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを検出するようになっている。
つまり、搬送機構11によって、切断刃8が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、確実に1枚だけ搬送されてきた場合には、図28及び図29に示すように、突出ピン69が貫通孔8bを挿通した後、逃げ孔68に挿入される。従って、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が一定角度になった状態で、切断刃8をクランプ固定することができる。
ところが、切断刃8が搬送されてきた際に、位置不良や姿勢不良等となっている場合には、貫通孔8bが逃げ孔68上からずれてしまうので、図30に示すように、突出ピン69が切断刃8の刀身に接触して干渉してしまう。そのため、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が上記角度とは異なる角度になる。つまり、押さえプレート61と載置プレート60の間に隙間が開いてしまう。
【0057】
また、図31及び図32に示すように、何らかの理由により切断刃8が搬送されてこなかった場合や、2枚同時に搬送されてきた場合等には、予め決められた位置に、予め決められた姿勢でいくら搬送されてきたとしても、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度がやはり上記角度とは異なってしまう。
このように、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを容易且つ確実に検出することができるようになっている。なお、制御部15は、ロッド65aのストローク量で押さえプレート61の押さえ付け角度をモニタしている。
【0058】
上述した制御部15、逃げ孔68及び突出ピン69は、上記検出を行う検出機構70として機能する。このように検出機構70を備えているので、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことが可能とされている。
なお、本実施形態では、貫通孔8bが2つ形成されているのに対して、逃げ孔68及び突出ピン69が3つ形成されているので、切断刃8を2つの位置でクランプ固定することが可能である。
【0059】
このように構成されたホルダ10は、図3及び図4に示すように、移動機構71によってステージ5上を往復移動するように設計されている。これにより、クランプ固定した切断刃8によって、ステージ5上に載置された包埋ブロックBを薄切することが可能とされている。この際、ホルダ10は、所定の引き角が付いた状態で包埋ブロックBを薄切するように設計されている。
なお、上述したように切断刃8を2つの位置でクランプ固定が可能であるので、1枚の切断刃8であっても、2箇所のポイントを利用して薄切を行える。そのため、切断刃8を幅広く有効に利用することが可能とされている。
【0060】
なお、本実施形態では、ステージ5に対してホルダ10側を移動させるように移動機構71を構成したが、これとは逆にステージ5側を移動させても構わないし、ホルダ10側及びステージ5側を共に移動させるように構成しても構わない。
いずれにしても、包埋ブロックBとホルダ10とを相対的に移動させて、切断刃8によって薄切を行うことができれば移動機構71は、どのように設計しても構わない。
【0061】
次に、搬送機構11について、説明する。
図4に示すように、搬送機構11は、装置ケース14の上部空間E1内において、収納ケース9とホルダ10との間に配置されている。この搬送機構11は、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10の載置プレート60にスライド移動により搬送させると共に、薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出して交換させる役割を果している。
【0062】
具体的には、搬送機構11は、図33に示すように、収納ケース9から取り出された切断刃8をホルダ10まで搬送するための搬送路80と、収納ケース9のレバー部51を移動させて切断刃8を搬送路80側にスライド移動させる第1の搬送部81と、搬送路80に移動させられた切断刃8をホルダ10の近傍までスライド移動させる第2の搬送部82と、ホルダ10の近傍まで移動してきた切断刃8をホルダ10側に完全にスライド移動させると共に、薄切終了後に、使用した切断刃8をホルダ10から押し出す第3の搬送部83と、で主に構成されている。
【0063】
搬送路80は、図33及び図34に示すように、下部プレート90と、下部プレート90に接合された上部プレート91とで、主に構成されている。下部プレート90は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が搬送される搬送面90aが長手方向に沿って先端側に形成されている。切断刃8は、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で搬送面90a上を搬送させられるようになっている。
なお、この搬送面90aは、収納ケース9及びホルダ10と同様にすくい角θが付いて斜めになっていると共に、収納ケース9の開口部及びホルダ10の載置面60aに対して面一な高さとなるように高さ調整されている。
【0064】
また、下部プレート90には、搬送面90aに隣り合うように搬送面90aに沿ってシート板92が固定されている。そして、搬送面90a側に向いたシート板92の端面には、間隔を開けて複数の磁石93が埋め込まれて固定されている。この磁石93は、搬送される切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによって斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく搬送されるようになっている。
上部プレート91は、切断刃8の厚み以上の隙間を開けた状態で、搬送面90aの上方を覆うように下部プレート90に接合されている。
【0065】
第1の搬送部81は、図33に示すように、移動プレート100に固定されたLアングル101と、Lアングル101に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド102と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド102に固定されたZ軸プレート103と、収納ケース9のレバー部51に嵌合可能な嵌合爪104aを先端に有し、Z軸プレート103の下部に固定された搬送アーム104と、で主に構成されている。
【0066】
移動プレート100は、基礎プレート105上に移動可能に支持されており、収納ケース9やホルダ10の長手方向に移動可能とされている。嵌合爪104aは、Z軸プレート103がZ軸方向に下降したときに、収納ケース9のレバー部51に嵌合してレバー部51を挟持するように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、レバー部51を動かして収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出し、搬送路80側にスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第1の搬送部81は、収納ケース9の上方に待機している。
【0067】
第2の搬送部82は、移動プレート100に固定されたLアングル110と、Lアングル110に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド111と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド111に固定されたZ軸プレート112と、Z軸プレート112の下部に固定され、搬送路80に移動させられた切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部113aを有する搬送ブロック113と、で主に構成されている。
【0068】
突起部113aは、Z軸プレート112がZ軸方向に下降したときに、図35に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10の近傍まで搬送路80に沿ってスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第2の搬送部82は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0069】
第3の搬送部83は、移動プレート100に固定されたLアングル120と、Lアングル120に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド121と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド121に固定されたZ軸プレート122と、Z軸プレート122の下部に固定され、ホルダ10の近傍まで移動させられた切断刃8を押し出す押し出し片123aを有する搬送ブロック123と、で主に構成されている。
【0070】
押し出し片123aは、切断刃8と略同じ厚みに形成された薄いプレートであり、Z軸プレート122がZ軸方向に下降したときに、図36に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の後端に並ぶように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10側に押し出すようにスライド移動させることが可能とされている。これにより、図37に示すように、切断刃8を搬送路80の搬送面90aからホルダ10の載置面60aに移送して、完全に切断刃8をホルダ10側に受け渡すことができる。この際、切断刃8の貫通孔8bが載置面60aに形成された逃げ孔68上に位置するように、切断刃8を受け渡すように調整されている。
なお、通常、この第3の搬送部83は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0071】
上述したように、第1の搬送部81と、第2の搬送部82と、第3の搬送部83と、移動プレート100とを複合的に作動させることで、切断刃8を収納ケース9から1枚取り出してホルダ10に滑らかに搬送することができるようになっている。なお、これら各構成品は、制御部15からの指示によって作動する。
ところで、制御部15は、包埋ブロックBの薄切が所定回数終了すると、第3の搬送部83と移動プレート100を作動させて、使用した切断刃8をホルダ10から押し出すようにスライド移動させるようになっている。
【0072】
次に、廃棄用ボトル12について、説明する。
図4に示すように、廃棄用ボトル12は、装置ケース14の下部空間E2内に配置されており、装置ケース14の出入扉14cを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、外部からアクセスすることができ、手動で廃棄用ボトル12を回収することが可能とされている。
この廃棄用ボトル12は、例えば透明な樹脂材料によって形成されたボトルであり、内部に数百から千枚程度の切断刃8を一度に収容可能とされている。特に、透明であるので、作業者は収容状況を目視で確認可能である。
【0073】
次に、排出機構13について、説明する。
図4に示すように、排出機構13は、ホルダ10から押し出された切断刃8を回収する回収機構130と、回収した切断刃8を廃棄用ボトル12に排出する排出シュータ(案内機構)140と、で主に構成されている。
なお、本実施形態では、重力による落下を利用して切断刃8を排出する排出シュータ140で案内機構を構成した場合を例に挙げて説明する。
【0074】
回収機構130は、装置ケース14の上部空間E1内にてホルダ10に隣接配置されており、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aに投入する役割を果している。即ち、この回収機構130は、図38に示すように、ホルダ10の長手方向に延びたガイド131と、ガイド131に沿って移動可能な移動プレート132と、移動プレート132に固定されたLアングル133と、Lアングル133に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド133と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド133に固定されたZ軸プレート134と、Z軸プレート134の下部に固定された搬送ブロック135と、で主に構成されている。
【0075】
搬送ブロック135は、ホルダ10から押し出された切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部135aと、切断刃8の刀身を磁力によって吸着する磁性体135bとを有している。
突起部135aは、Z軸プレート134がZ軸方向に下降したときに、ホルダ10の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そして、これと同時に磁性体135bが、切断刃8の刀身を吸着して切断刃8を保持するようになっている。そのため、この状態で移動プレート132を移動させることで、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収できるようになっている。また、回収された切断刃8は、排出シュータ140の一端側に設けられた開口部140aの真上まで移動させられる。
【0076】
ところで、Z軸プレート134には、非磁性体の爪部136が突起部135aと磁性体135bとの間に位置するように設けられている。この爪部136は、突起部135a及び磁性体135bがZ軸プレート134に連られて移動するのとは異なり、固定された部材である。そのため、突起部135a及び磁性体135bを上昇させると、相対的に爪部136があたかも下降した形になる。従って、排出シュータ140の開口部140aの真上まで移動させた切断刃8を、図39に示すように排出シュータ140に叩き落とすことが可能とされている。
【0077】
一方、排出シュータ140は、装置ケース14の上部空間E1から下部空間E2を貫くように配置されている。この際、装置ケース14の後面側から前面側に向かって傾斜した状態で配置されている。また、切断刃8が投入される開口部140aが設けられた一端側が回収機構130の近傍に位置し、他端側が廃棄用ボトル12の真上に位置している。そして、投入された切断刃8を重力による落下により他端側まで案内した後、廃棄用ボトル12に排出する役割を果している。
そのため、回収機構130で叩き落された切断刃8は、図4に示すように、開口部140から他端側に向かって排出シュータ140を滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後、排出されるようになっている。これにより、使用済みの切断刃8を廃棄用ボトル12で回収することが可能とされている。
【0078】
ところで、開口部140aは、他端側に向かうにつれて漸次窄まる漏斗状に形成されており、切断刃8の長手方向が重力方向に向くように姿勢を規制している。そのため、長尺な切断刃8は、ほぼ縦向きで排出シュータ140を滑り落ちていき、途中で引っ掛かって詰まることなく他端側まで案内されるようになっている。
【0079】
次に、このように構成された自動薄切装置1を利用して、包埋ブロックBを薄切する場合について説明する。
はじめに、事前準備として、図14及び図15に示すように、包埋ブロックBが固定されたカセットKをマガジン2に複数収納する作業を行う。まず、作業者は、手元にカセットKを複数用意した後、マガジン2の開閉扉21を開ける。すると、開閉扉21に固定されたヒンジ部24のボールプランジャ26がブロック25の嵌合溝25aに嵌まり込むので、開閉扉21を開けたままの状態に維持することができる。よって、作業者は、開閉扉21を気にせずにカセットKをマガジン本体20に次々と収納することができる。
【0080】
この際、作業者は、図8及び図9に示すように、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを差し込んで収納する。仮に、逆向き或いは包埋ブロックBを下向きにした状態でカセットKを差し込んでしまったとしても、これらの場合にはカセットKを差し込む際に、マガジン本体20の内部に設けられたピン22がカセットKに接触してしまう。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。よって、作業者は、カセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。よって、全てのカセットKを正しい向きで確実に収納することができ、人為的なミスを未然に防止できる。
【0081】
また、万が一、差し込んでいる段階でカセットKの向きの誤りに気づかなかったとしても、開閉扉21を最後に閉める段階で気づくことができる。つまり、誤った向きに差し込まれたカセットKがある場合には、図11に示すように、開閉扉21が途中でカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができない。そのため、この時点で作業者はカセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。この点においても、人為的なミスを未然に防止できる。
【0082】
そして、複数のカセットKをマガジン本体20内に収納した後、図5に示すように、開閉扉21を閉めてカセットKの脱落を防止する。この際、開閉扉21は、捩りバネによって閉状態が維持されるので、作業者が再度開けない限り、不意に開いてしまうことがない。よって、カセットKの落下を気にすることなくマガジン2を安全に持ち運びすることができる。
【0083】
そして、作業者は、装置ケース14の出入扉14bを開けた後、図4に示すように、複数のカセットKを収納したマガジン2をストッカ30内に差し込んで装着する。この際、開閉扉21側からカセットKを差し込む。そして、カセットKを装着した後、開けていた出入扉14bcを閉める。
そして、廃棄用ボトル12がセットされていること、収納ケース9内に切断刃8がセットされていること、を確認して、事前準備が終了する。
【0084】
次に、作業者は、制御部15を介して装置ケース14内の各構成品の作動を開始させる。すると、搬送機構11が収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出した後、ホルダ10の載置プレート60に向けてスライド移動により搬送し、載置プレート60上に切断刃8を載置する作業を行う。
【0085】
詳細には、まず、図33に示すように、第1の搬送部81のZ軸プレート103を下降させて、搬送アーム104の嵌合爪104aをレバー部51に嵌合させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第1の搬送部81全体を収納ケース9の長手方向に移動させる。これにより、収納ケース9のレバー部51を移動させることができ、収納ケース9の1番上方に位置している切断刃8を、開口部を介して押し出すことができる。
すると、押し出された切断刃8は、図35に示すように、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で、搬送路80にスライド移動する。この時点で、Z軸プレート103を上昇させて、嵌合爪104aをレバー部51から離間させて嵌合を解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0086】
続いて、第2の搬送部82のZ軸プレート112を下降させて、突起部113aを切断刃8の貫通孔8bに差し込む。続いて、移動プレート100を移動させて、第2の搬送部82全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図36に示すように、切断刃8をスライド移動させながらホルダ10の近傍まで移動させることができる。この時点で、Z軸プレート112を上昇させて、突起部113aを貫通孔8bから抜いて切断刃8との係わりを解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0087】
続いて、第3の搬送部83のZ軸プレート122を下降させて、押し出し片123aを切断刃8の後端に並ぶように位置させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第3の搬送部83全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図37に示すように、切断刃8を押し出すようにスライド移動させて、搬送路80からホルダ10に受け渡すことができる。なお、ホルダ10の押さえプレート61は、この段階では先端側が浮いた状態となっているので、切断刃8をホルダ10側に搬送することができる。
【0088】
切断刃8をホルダ10側に搬送した後、移動プレート100を若干逆方向に移動させて押し出し片123aをホルダ10の外側に露出させる。そして、Z軸プレート122を上昇させて、押し出し片123aを元の位置に戻す。その後、移動プレート100を完全に元の位置に戻す。
一方、ホルダ10に搬送された切断刃8は、図25に示すように、刃先8aが外側に露出した状態で載置面60aに載置されている。この際、切断刃8は、基端側が磁石63によって吸着されているので、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていても、重力の影響を受けてずれ落ちることなく姿勢が保持されて安定した状態となっている。
【0089】
切断刃8が載置面60aに載置されると、押さえプレート61が作動して切断刃8を載置プレート60に押さえ付ける。つまり、スライド部65に連結されているロッド65aを押し出して、押さえプレート61の基端側を上方に押し上げる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。従って、上述したように、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けることができ、クランプ固定することができる。
【0090】
この際、検出機構70が、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけクランプ固定されているか否かを検出する。その結果、検出機構70が否と検出した場合、即ち、搬送されてきた切断刃8が何らかの理由(例えば、過度の押し出されや、磁石63の吸着不良による位置ずれ等)によって位置不良や姿勢不良等が生じている場合や、切断刃8そのものが搬送されてきていない場合や、切断刃8が2枚搬送されてきた場合等には、切断刃8のkyランプ不良と判断して以降の薄切を行わない。
従って、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことができる。
【0091】
ところで、制御部15は、上述した工程と同時に、カセットKをステージ5上に載置させる作業を行わせている。この作業について説明する。
まず、ストッカ30にマガジン2が装着された段階で、図17に示すように、マガジン検出センサ31はマガジン2で反射した反射光により、マガジン2が装着されたことを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2が装着されたことを把握する。また、開閉検出センサ33は、閉状態の開閉扉21で反射した反射光により、開閉扉21が閉まっていることを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2の開閉扉21が閉まっていることを把握する。
【0092】
そこで、制御部15は、シリンダ機構32bを作動させて、図16に示すように爪部32aをマガジン2の開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛けて、開閉扉21を開状態にさせる。すると、開閉検出センサ33は、反射光を受光しなくなるので、検出信号の出力を停止する。これにより、制御部15は、マガジン2の開閉扉21が開いたことを把握することができる。
【0093】
続いて、制御部15は、オートローダ4を作動させる。すると、オートローダ4は、図4に示すようにX軸スライダ4b及びY軸スライダ4cを適宜作動させながら、ハンド部4aを利用してマガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持して掴む。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜行わせて、掴んだカセットKをマガジン2取り出した後、載置台3上に載置させる。
【0094】
続いて、制御部15は、カセットローダ6を作動させる。すると、カセットローダ6は、固定プレート6cとY軸移動機構6dとを適宜作動させながら、ハンド部6aを利用して載置台3に置かれたカセットKを挟持して掴む。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜行わせて、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置する。
【0095】
このようにして、カセットKをステージ5上に載置させる作業を、切断刃8の固定作業と平行して行う。そして、切断刃8のクランプ固定作業と、ステージ5上へのカセットKのセット作業とが終了すると、包埋ブロックBの薄切作業を開始する。
まず、ステージ5を高さ調整して、包埋ブロックBの上面を所望する高さ位置に調整する。そして、移動機構71がホルダ10を移動させることで、クランプ固定した切断刃8により包埋ブロックBを薄切する。これにより、包埋ブロックBを粗削りして面だしを行うことができる。
【0096】
ところで、薄切を行っている際、撮像カメラ7が包埋ブロックBを撮像する。この撮像画像は、モニタ15aに表示される。よって、作業者は、包埋ブロックBの表面状態や内部状態をモニタ15aに表示された撮像画像で確認することができる。そして、この撮像画像を参考にして、薄切の合間に、適宜ステージ5を傾斜させたり、回転させたりすることができる。その結果、包埋ブロックBの粗削りによって、最適な面を表面に露出させることができる。
なお、粗削り後、包埋ブロックBを本削りして薄切片Mを作製しても構わない。
【0097】
そして、薄切が所定回数終了すると、制御部15は押さえプレート61による切断刃8の押さえ付けを解除させる。つまり、ロッド65aを引き込んで、バネ力により押さえプレート61の基端側を載置プレート60側に移動させる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に逆回転するので、先端側が押し上がる。従って、押さえ付けが解除される。
【0098】
また、制御部15は、これと同時に搬送機構11を作動させて、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出させる。つまり、第3の搬送部83のZ軸プレート122を再度下降させた後、移動プレート100を移動させる。これにより、図38に示すように、押し出し片123aを利用して切断刃8を押し出すようにスライド移動させることができ、切断刃8の一部をホルダ10の外側に突出させることができる。これにより、切断刃8の交換を行うことができる。
【0099】
なお、切断刃8がホルダ10から押し出されると、制御部15は、回収機構130を作動させる。すると、回収機構130は、Z軸プレート134を下降させて、ホルダ10の外側に突出している切断刃8の貫通孔8bに突起部135aを挿入させると同時に、切断刃8の刀身を磁性体135bで吸着させて切断刃8を保持させる。その後、移動プレート132を移動させて、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収すると共に、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aの真上に移動させる。
【0100】
続いて、この位置で、Z軸プレート134を上昇させて、突起部135a及び磁性体135bを上昇させる。これにより、相対的に爪部136があたかも下降した形になるので、図39に示すように、排出シュータ140の開口部140aに切断刃8を叩き落として投入することができる。叩き落された切断刃8は、図4に示すように、排出シュータ140を重力による落下によって滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後に排出される。これにより、使用済みの切断刃8は、廃棄用ボトル12に回収される。
【0101】
その後、搬送機構11は、再度収納ケース9内から新たな切断刃8を1枚取り出して、ホルダ10に搬送する。そして、ホルダ10が、新たな切断刃8をクランプ固定して次の薄切に備える。一方、薄切が終了した後のカセットKは、カセットローダ6によってステージ5から載置台3に受け渡される。そして、オートローダ4によって、載置台3からマガジン2内に戻されて、再収納される。
このように、本実施形態の自動薄切装置1によれば、上述した工程を繰り返すことで、マガジン2内の全てのカセットKについて、包埋ブロックBの薄切を自動で行うことができる。
【0102】
特に、この自動薄切装置1によれば、薄切を所定回数行う毎に切断刃8の交換と回収とを自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃8を交換でき、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃8を使用して薄切を行うことができるので、高品質な薄切片Mの作製を実現することができる。また、各構成品が装置ケース14内に収容されているので、塵埃等の影響を受け難く、薄切を最適な環境下で行うことができる。この点においても、薄切片Mの高品質化に繋げることができる。
【0103】
加えて、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8をホルダ10にクランプ固定できるので、正確な薄切を行うことができ、切断刃8の落下等を未然に防止することができる。しかも、すくい角θを付けた状態で包埋ブロックBを薄切することができるので、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【0104】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態では、逃げ孔68と突出ピン69とを利用して検出機構70を構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、押さえプレート61側に切断刃8の位置や姿勢、切断刃8の有無を検出するための非接触タイプのセンサを設け、このセンサを利用して検出機構を構成しても構わない。いずれにしても、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを検出できれば、検出機構をどのように設計しても構わない。
【0106】
また、上記実施形態では、重力による落下を利用して切断刃8を案内する排出シュータ140で案内機構を構成した場合を例に挙げたが、この場合に限定されるものではなく、例えば、コンベアやエアシリンダ等を利用して切断刃8を案内し、廃棄用ボトル12に排出するように案内機構を設計しても構わない。但し、構成の簡略化及び低コスト化を図る点で、排出シュータ140とすることが好ましい。
【0107】
また、上記実施形態では、磁石63による磁力を利用して載置プレート60に載置された切断刃8を吸着する構成としたが、磁石63に限定されるものでない。例えば、複数の吸引ノズルで吸着手段を構成し、切断刃8を吸引力で吸着するようにしても構わない。但し、磁石63を利用することで、簡単且つ安価で吸着手段を構成できるので、構成の単純化及び低コスト化を点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る自動薄切装置で用いられる包埋ブロック及びカセットの斜視図である。
【図2】図1に示す包埋ブロックから薄切された薄切片がスライドガラス上に固定されて薄切片標本となった状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を示す簡略構成図である。
【図4】図3に示す自動薄切装置の構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す自動薄切装置を構成するマガジンの斜視図である。
【図6】図5に示すマガジンを矢印A方向から見た側面図である。
【図7】図5に示すマガジンを矢印B方向から見た背面図である。
【図8】図5に示すマガジンの一部拡大図である。
【図9】図8に示すマガジンを側方から見た図である。
【図10】カセットを誤った向きで差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図11】図10に示すマガジンの斜視図である。
【図12】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が背面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図13】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が正面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図14】図5の状態からマガジンの開閉扉を開けた状態を示す図である。
【図15】図14に示すマガジンを背面側から見た斜視図である。
【図16】図5に示すマガジンをストッカに装着した状態を示す斜視図である。
【図17】図16に示すストッカの一部拡大図である。
【図18】図3に示す自動薄切装置で用いられる切断刃の上面図である。
【図19】図18に示す切断刃の側面図である。
【図20】図3に示す自動薄切装置を構成する収納ケースの側面図である。
【図21】図20に示す収納ケースの上面図である。
【図22】図20に示す収納ケースの正面図である。
【図23】図20に示す収納ケースの装着状態を示す図である。
【図24】図3に示す自動薄切装置を構成するホルダの斜視図である。
【図25】図24に示すホルダの断面図である。
【図26】図24に示すホルダを構成する載置プレートに形成された凹部を示す図である。
【図27】図24に示すホルダを構成する押さえプレートに形成された突出ピンを示す図である。
【図28】図24に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、予め決められた所定位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図29】図28に示す断面矢視C−C図である。
【図30】図24に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、誤った位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図31】切断刃がない状態で図24に示すホルダの押さえプレートが押さえ付け位置に移動した移動した状態を示す図である。
【図32】切断刃が2枚ある状態で図24に示すホルダが切断刃を押さえ付けた状態を示す図である。
【図33】図3に示す自動薄切装置を構成する搬送機構の斜視図である。
【図34】図33に示す搬送機構を構成する搬送路の断面図であって、断面矢視D−D図である。
【図35】図33に示す状態から、切断刃を搬送路に取り出した状態を示す図である。
【図36】図35に示す状態から、切断刃をホルダの近傍までスライド移動させた状態を示す図である。
【図37】図36に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダ側に搬送させた状態を示す図である。
【図38】図37に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダから押し出した状態を示す図である。
【図39】図38に示す状態から、切断刃を回収して排出シュータの開口部に叩き落としている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
B…包埋ブロック
S…生体試料
1…自動薄切装置
8…切断刃
8a…切断刃の刃先
8b…貫通孔
9…収納ケース
10…ホルダ
11…搬送機構
60…ホルダの載置プレート
61…ホルダの押さえプレート
63…磁石(吸着部材)
68…逃げ孔(凹部)
69…突出ピン
70…検出機構
71…移動機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製し、この薄切片に対して染色処理を行って、生体試料を観察する観察する方法が知られている。通常、包埋ブロックから薄切片を作製する場合には、細胞レベルでの観察を可能とするために3μm〜5μm程度の厚さで均一に、且つ、包埋されている生体試料を損傷しないように薄切する必要がある。このため、一般的に薄切片を作製する作業は、鋭利な薄い切断刃を使用して、熟練の作業者による手作業で行っていた。
【0003】
ところが、前臨床試験等を行う場合には、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片を作製する必要がある。そのため、膨大な数の薄切片を作製し続ける必要がある。従って、薄切片を作製する作業を、手作業ではなく、機械による自動化で行うことが望まれている。
【0004】
このようなニーズに応えるために、包埋ブロックを薄切して薄切片を作製する作業を自動で行うことができる装置が提供されている(特許文献1及び2参照)。
これらの装置によれば、作業者に負担をかけることなく薄切片を作製し続けることが可能である。
【特許文献1】特開2007−212329号公報
【特許文献2】特開2007−240522号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、包埋ブロックを薄切する際には、切断面が極力綺麗で平坦な面となるように薄切する必要がある。そのため、常に良好な切れ味を確保するために、切断刃を頻繁に交換する必要がある。
しかしながら、従来の装置では、切断刃の交換までは自動で行うことができず、依然として作業者に頼らざるを得なかった。そのため、作業者に負担がかかっていた。しかも、切断刃は、非常に鋭利であるので取り扱いに注意を要する。この点においても、作業者にかかる負担が大きなものであった。
【0006】
また、切断刃は、ホルダにてクランプ固定されるものであるが、予め決められた正規の位置にセットしないと、確実なクランプ固定を行うことができない場合があった。仮に、この状態で薄切を行ってしまうと、切断刃の姿勢不良やがたつき等によって正確な薄切を行えないだけでなく、切断刃の落下による周囲構成品の損傷等を招く可能性もあった。そのため、作業者は、クランプ固定が確実なものであるかを確認する必要があった。よって、この点においても、作業者にかかる負担が大きかった。
【0007】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、ホルダへの切断刃の搬送と切断刃の確実なクランプ固定とを行って、切断刃を自動で交換しながら包埋ブロックの薄切を行うことができ、作業者への負担を極力低減することができる自動薄切装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決して係る目的を達成するために以下の手段を提供する。
本発明に係る自動薄切装置は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置であって、一端側が刃先とされ、刀身に位置決め用の貫通孔が形成された切断刃と、前記刃先が外側に露出しながら前記切断刃が載置される載置プレートと、載置された切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する押さえプレートと、を有するホルダと、前記包埋ブロックと前記ホルダとを相対的に移動させ、クランプ固定した前記切断刃により包埋ブロックを薄切する移動機構と、前記切断刃を複数収納する収納ケースと、前記収納ケースと前記ホルダとの間に配置され、収納ケースから前記切断刃を1枚取り出して前記載置プレートにスライド移動により搬送させると共に、前記薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃をスライド移動によりホルダから押し出して交換させる搬送機構と、前記載置プレートの所定位置で前記切断刃が1枚だけ前記押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する検出機構と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
この発明に係る自動薄切装置においては、まず、搬送機構が収納ケース内から切断刃を1枚取り出した後、ホルダの載置プレートに向けてスライド移動により搬送し、載置プレート上に切断刃を載置する。この際、切断刃は刃先が載置プレートの外側に露出した状態となっている。すると、ホルダの押さえプレートが作動して、載置された切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する。この際、検出機構は、切断刃が載置プレートの所定位置で1枚だけ押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する。つまり、切断刃が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、しかも、確実に1枚だけ固定されているか否かを検出する。その結果、検出機構が否と検出した場合には、切断刃のクランプ不良と判断して、以降の薄切を行わない。
【0010】
このように、検出機構を備えているので、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことができる。
そして、切断刃が固定されると、移動手段が包埋ブロックとホルダとを相対的に移動させて、クランプ固定した切断刃により包埋ブロックを薄切する。これにより、包埋ブロックを粗削りして面だしをしたり、包埋ブロックを本削りして薄切片を作製したりすることができる。そして、薄切が所定回数終了すると、押さえプレートが切断刃の押さえ付けを解除すると同時に、搬送機構が使用した切断刃をスライド移動によりホルダから押し出して交換する。その後、搬送機構は、再度収納ケース内から新たな切断刃を1枚取り出して、載置プレートに搬送する。
【0011】
このように、薄切を所定回数行う毎に切断刃の交換を自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃を交換でき、作業者にかかる負担を極力軽減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃を使用して薄切を行うことができるので、高品質な薄切片の作製を実現することができる。
加えて、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃を1枚だけホルダにクランプ固定できるので、正確な薄切を行うことができると共に、切断刃の落下等を未然に防止することができる。
【0012】
また、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明の自動薄切装置において、前記検出機構が、前記載置プレートの所定位置に形成された逃げ孔と、前記押さえプレートに設けられ、前記貫通孔を挿通可能であると共に前記逃げ孔内に挿入可能とされた突出ピンと、を備え、前記載置プレートに対する前記押さえプレートの押さえ付け角度に基づいて、前記検出を行うことを特徴とする。
【0013】
この発明に係る自動薄切装置においては、搬送機構によって切断刃が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、確実に1枚だけ搬送されてきた場合には、突出ピンが貫通孔を挿通した後、逃げ孔内に挿入される。従って、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度が一定角度になった状態で、切断刃をクランプ固定することができる。
ところが、切断刃が搬送されてきた際に、位置不良や姿勢不良等となっている場合には、突出ピンが刀身に接触して干渉してしまう。そのため、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度が上記角度とは異なる角度になる。一方、何らかの理由によって切断刃が搬送されてこなかった場合や、2枚同時に搬送されてきた場合には、予め決められた位置に、予め決められた姿勢でいくら搬送されてきたとしても、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度がやはり上記角度とは異なる角度になってしまう。
【0014】
このように、載置プレートに対する押さえプレートの押さえ付け角度に基づいて、載置プレートの所定位置で切断刃が1枚だけ押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを容易且つ確実に検出することができる。
【0015】
また、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明の自動薄切装置において、前記載置プレートに載置された前記切断刃の基端側を吸着して、切断刃の姿勢を保持する吸着部材を備えていることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る自動薄切装置においては、載置プレートに載置された切断刃の基端側(刃先とは逆側)を吸着部材によって吸着することができる。そのため、ホルダが包埋ブロックに対してすくい角が付いた状態で斜めに配置されていたとしても、切断刃は重力の影響を受けてずれ落ちることがなく、姿勢が保持されて安定した状態となる。従って、すくい角を付けた状態で、包埋ブロックを薄切することができ、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る自動薄切装置によれば、ホルダへの切断刃の搬送と切断刃の確実なクランプ固定とを行って、切断刃を自動に交換しながら包埋ブロックの薄切を行うことができる。従って、作業者への負担を極力低減することができ、薄切作業を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を、図1から図39を参照して説明する。この自動薄切装置は、図1に示すように、生体試料Sが包埋材であるパラフィンPによって包埋された包埋ブロックBを、所定のすくい角θが付いた状態で薄切(例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切)する装置である。
【0019】
よって、この自動薄切装置によって、図2に示す薄切片Mを作製することが可能とされている。なお、この薄切片Mは、その後、水やお湯等の液体上に浮かべて、薄切時に生じた皺やカール等の歪みを除去する伸展工程を経た後、スライドガラス等の基板Gに掬い取られて、薄切片標本Hとなるものである。
なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンPによってブロック状に固められたものである。これにより、生体試料SがパラフィンP内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。
【0020】
ところで、本実施形態では、図1に示すように、包埋ブロックBが箱状に形成されたカセットK上に固定されているものとして説明する。
はじめに、このカセットKについて簡単に説明すると、耐薬品性を有する樹脂等により形成されたものであり、包埋ブロックBを固定する固定台としての役割を果している。カセットKの一側面は、下方に面が向いた傾斜面K1となっている。なお、この傾斜面K1上には、カセットKの製造番号や、包埋ブロックBの作製日、生体試料Sの各種データ等を含む図示しない識別コードが記録されている。そのため、この識別コードを読み取ることで、包埋ブロックBの品質管理を行えるようになっている。
【0021】
続いて、本実施形態の自動薄切装置について、説明する。
図3及び図4に示すように、自動薄切装置1は、カセットKを複数収納するマガジン2と、マガジン2から1つのカセットKを出し入れすると共に載置台3に載置するオートローダ4と、載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しするカセットローダ6と、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを撮像する撮像カメラ7と、切断刃8と、切断刃8を複数収納する収納ケース9と、切断刃8を固定するホルダ10と、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10に搬送してセットする搬送機構11と、使用済みの切断刃8を収容する廃棄用ボトル12と、使用済みの切断刃8をホルダ10から回収して廃棄用ボトル12に排出する排出機構13と、これら各構成品を内部に収容する装置ケース14と、各構成品を総合的に制御する制御部15と、で主に構成されている。
【0022】
装置ケース14について、先に説明する。
この装置ケース14は、全体的に箱型に形成されており、内部が密閉可能とされているうえ、湿度や温度等の環境条件を所望する条件に設定可能とされている。また、装置ケース14の内部は、中間パネル14aによって上部空間E1と下部空間E2とに区分けされており、各構成品の大部分が上部空間E1に配置されている。下部空間E2には、主に廃棄用ボトル12が配置されている。
【0023】
装置ケース14の前面には、作業者が開け閉めする2つの出入扉14b、14cが設けられている。一方の出入扉14bは、マガジン2を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14bを開けるとマガジン2をセットが装着されるストッカ30が露出するようになっている。一方、他方の出入扉14cは、廃棄用ボトル12を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14cを開けると廃棄用ボトル12が露出して外部からアクセスできるようになっている。
【0024】
次に、マガジン2について、説明する。
図5から図7に示すように、マガジン2は、全体として縦長の直方体状に形成された収納ケースであり、包埋ブロックBを固定したまま、複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納できるように設計されている。詳細には、このマガジン2は、正面が開口した箱型のマガジン本体20と、マガジン本体20に固定された開閉扉21と、で主に構成されている。
【0025】
図8及び図9に示すように、マガジン本体20の2つの側面の内側には、カセットKをガイドするガイド溝20aが正面側から背面側に向かって左右で対向するように形成されている。これにより、カセットKを正面側から差し込むように挿入して、マガジン本体20内に収納可能とされている。しかも、このガイド溝20aは、高さ方向に一定の間隔を開けて複数形成されている。これにより、上述したように複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納可能とされている。
なお、マガジン本体20は、カセットK及び包埋ブロックBが若干正面側に飛び出るように、カセットKに比べて奥行が短くなるようにサイズ設計されている。
【0026】
また、マガジン本体20の側面の内側には、内方に向かって突出したピン22が複数形成されている。なお、図を見易くするために、各図においてピン22を適宜実線で図示している。このピン22は、カセットKを予め決められた向きで収納させるための誤挿入防止用のピンであって、各ガイド溝20aの背面側近くにそれぞれ形成されている。具体的には、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを挿入したときに、傾斜面K1とマガジン本体20の背面との間に確保された隙間に収まるようにピン22が形成されている。そのため、図9に示す向きでカセットKを挿入した場合には、ピン22がカセットKに接触することがない。
【0027】
これに対して、図10に示すように、逆向き(傾斜面K1が正面側に向いた状態)でカセットKを挿入してしまった場合には、途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。この場合には、図11に示すように、開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。そのため、カセットKの誤挿入を容易且つ明確に見分けることが可能とされている。
【0028】
同様に、包埋ブロックBを下向きにした状態で(上下逆向き)カセットKを挿入してしまった場合には、傾斜面K1が背面側或いは正面側のどちらを向いていても、図12及び図13に示すように、やはり途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、やはりカセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。
この場合には、同様に開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。
【0029】
従って、本実施形態のマガジン本体20には、図8及び図9に示す向きでカセットKを挿入しないかぎり開閉扉21が閉まらない設計となっている。つまり、包埋ブロックBが上向きで、且つ、傾斜面K1を背面側に向けた状態で複数のカセットKを全て挿入しない限り、開閉扉21を閉めることができない。よって、作業者の人為的ミスを未然に防止することができる。また、マガジン2内に収納された複数のカセットKの向きを、確実に全て統一することが可能とされている。
【0030】
マガジン本体20の背面には、図7に示すように長穴の開口部20bが複数形成されており、収納されている複数のカセットKを背面側からでも視認できるように設計されている。
マガジン本体20の一方の側面の外側には、図6に示すように長手方向に沿って回動軸23が設けられている。そして、この回動軸23にヒンジ部24を介して上記開閉扉21が固定されている。開閉扉21は、図5に示すようにマガジン本体20と同じ長さに設計されており、閉状態になったときに、図8及び図9に示すようにマガジン本体20の正面側から若干突出するカセットKの一部を覆って脱落を防止している。これにより、開閉扉21を開けない限り、収納したカセットKがマガジン本体20から抜け落ちないようになっている。そのため、作業者は、カセットKの落下に注意を払うことなくマガジン2を安心して持ち運びできるようになっている。
【0031】
ところで、開閉扉21を固定しているヒンジ部24の内部には、図示しない捩りバネが内蔵されており、開閉扉21が閉まっているときに、この閉状態を維持するように付勢している。これにより、マガジン2を持ち運びしている際に、不意に開閉扉21が開いてしまうことを規制している。
【0032】
更に、マガジン本体20の側面の外側には、図14及び図15に示すように、ヒンジ部24の下面に摺接するブロック25が回動軸23に隣接して固定されている。このブロック25の上面には、嵌合溝25aが凹み形成されている。そして、ヒンジ部24の内部には、図示しないコイルバネで付勢されたボールプランジャ26が内蔵されている。
このボールプランジャ26は、開閉扉21を閉状態から一定角度以上開けたときに、嵌合溝25aに嵌合するようになっている。この際、嵌合したときの力が捩りバネの付勢力に打ち勝つように、コイルバネの付勢力が調整されている。これにより、カセットKをマガジン2に収納する際に、開閉扉21を開けたままの状態で作業できるように設計されている。
【0033】
また、開閉扉21の略中央部分には、図5に示すように、扉開閉用のピン27が外方に突出した状態で設けられている。よって、このピン27を利用して開閉扉21を開閉することも可能とされている。
【0034】
このように構成されたマガジン2は、図16に示すように、ストッカ30に装着可能とされている。このストッカ30は、上述したように装置ケース14の出入扉14bを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、手動でマガジン2をストッカ30に差し込んで装着したり、ストッカ30から抜き取ったりすることが可能とされている。
ストッカ30は、枠型に形成されており、マガジン2を2つ横に並べた状態で保持できるように設計されている。なお、ストッカ30は、マガジン2が正面側(開閉扉21側)から差し込まれたときだけ受け入れるように設計されている。なお、図16では、マガジン2を1つだけ装着した場合を図示している。
【0035】
また、ストッカ30は、マガジン2が装着されたか否かを検出するマガジン検出センサ31と、装着されたマガジン2の開閉扉21を開閉する開閉機構32と、開閉扉21の開閉状態を検出する開閉検出センサ33と、を備えている。
マガジン検出センサ31は、図17に示すように、ストッカ30の上部に固定されており、下方に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lがマガジン2で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、マガジン2の装着を検出したことを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、マガジン検出センサ31から送られてきた検出信号に基づいて、マガジン2が装着されたか否かを把握できるようになっている。
【0036】
同様に、開閉検出センサ33もストッカ30の上部に固定されており、閉状態の開閉扉21に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lが閉状態の開閉扉21で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、開閉扉21が閉状態であることを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、開閉検出センサ33から送られてきた検出信号に基づいて、開閉扉21の開閉状態を把握できるようになっている。つまり、マガジン2が装着されたうえで、開閉検出センサ33から検出信号が送られてきた場合には、開閉扉21が閉まっていると判断し、検出信号が送られてこない場合には、開閉扉21が開いていると判断する。
【0037】
開閉機構32は、図16に示すように、開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛け可能な鉤型の爪部32aと、爪部32aを可動させて開閉扉21を開閉させるシリンダ機構32bと、で主に構成されている。シリンダ機構32bは、制御部15からの指示を受けて作動するようになっている。
なお、マガジン2の開閉扉21が開いている状態では、ストッカ30からマガジン2を取り外すことができないように設計されている。
【0038】
次に、オートローダ4について、説明する。
図4に示すように、オートローダ4は、装置ケース14の上部空間E1内にてストッカ30に隣接する位置に配置されている。このオートローダ4は、ストッカ30に装着されたマガジン2に収納されたカセットKを挟持可能なハンド部4aと、ハンド部4aを垂直なZ軸回りに回転自在に固定すると共にストッカ30と載置台3とを結ぶX軸方向に移動可能なX軸スライダ4bと、X軸スライダ4bを支持すると共にX軸及びZ軸の2軸に対して直交するY軸方向に移動可能なY軸スライダ4cと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部4a、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0039】
ハンド部4aは、マガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜組み合わせることで、マガジン2から所望するカセットKを1つだけ出し入れしたり、載置台3上にカセットKを載置したりすることができるようになっている。
【0040】
なお、本実施形態では、オートローダ4をハンド部4aとX軸スライダ4bとY軸スライダ4cとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。マガジン2から所望のカセットKを1つ出し入れでき、且つ、カセットKを載置台3上に載置できるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0041】
次に、カセットローダ6について、説明する。
図4に示すように、カセットローダ6は、装置ケース14の上部空間E1内にて最奥部(開閉扉21が形成されている前面とは反対側の後面に近い部分)に配置されている。このカセットローダ6は、載置台3に載置されたカセットKを挟持可能なハンド部6aと、ハンド部6aをZ軸回りに回転自在に固定すると共にZ軸方向に延びたガイド6bに沿って移動可能な固定プレート6cと、ガイド6bをY軸方向に移動させるY軸移動機構6dと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部6a、固定プレート6c及びY軸移動機構6dは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0042】
ハンド部6aは、載置されたカセットKの両側を真上から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜組み合わせることで、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置したり、ステージ5上から載置台3に戻したりすることができるようになっている。
なお、Y軸移動機構6dは、一対のプーリ40に巻回されてY軸方向に移動する無端ベルト41と、無端ベルト41に連結され、無端ベルト41の移動に伴って移動するスライダ42と、スライダ42と固定プレート6cとを連結する連結プレート43と、で構成されている。なお、一対のプーリ40のうちの一方が、駆動部44によって回転することで無端ベルト41が移動する。
【0043】
なお、本実施形態では、カセットローダ6をハンド部6aと固定プレート6cとY軸移動機構6dとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しでき、カセットKを所望する向きでステージ5上にセットできるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0044】
ステージ5は、内部に圧電素子等が組み込まれており、制御部15からの指示に基づいて適宜Z軸方向に移動するように構成されている。これにより、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを高さ調整することができ、所望する厚み(例えば、5μm)で薄切することが可能とされている。
加えて、このステージ5は、Z軸回りの回転と、X軸回り及びY軸回りの傾きとが自在に調整可能とされた多軸のステージとされている。そのため、包埋ブロックBの姿勢を自在にコントロールして、包埋ブロックBの向きや傾き等を所望する状態に設定することが可能とされている。
【0045】
次に、撮像カメラ7について、説明する。
図4に示すように、撮像カメラ7は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の真上にくるように配置されている。この際、撮像カメラ7は、Z軸方向に移動可能なZ軸移動部7aに支持されている。このZ軸移動部7aは、Y軸移動部7bによってY軸方向に移動可能とされている。よって、撮像カメラ7は、必要に応じてステージ5上の真上から退避可能とされている。具体的には、カセットローダ6によってカセットKが載置台3とステージ5との間で受け渡しする間、カセットローダ6の動きを邪魔しないように撮像カメラ7は退避するようになっている。
なお、これらZ軸移動部7a及びY軸移動部7bは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0046】
また、撮像カメラ7は、ステージ5上にカセットKが載置されると、図示しない光源からの照明光によって照明された包埋ブロックBを撮像するようになっている。この際、照明光の種類(例えば、落射照明光や拡散照明光)によって、包埋ブロックBの表面状態や内部状態を撮像できるようになっている。なお、撮像された撮像画像は、制御部15に送られて記録されると共に、制御部15に接続されたモニタ15aに表示される。
【0047】
次に、切断刃8について、説明する。
図18及び図19に示すように、切断刃8は、一端側が刃先8aとされた長尺な磁性体の刃である。また、切断刃8の刀身には、楕円状に形成された位置決め用の貫通孔8bが間隔を開けて2つ形成されている。なお、本実施形態では、刃先8aが両刃となっている場合を例にしている。片刀でも構わない。
切断刃8のサイズの一例としては、長さLが約80mm、幅Wが約8mm、厚さTが約0.25mmである。
【0048】
このように構成された切断刃8は、図20から図22に示す収納ケース9内に多段に積層された状態で複数枚収納されている。
この収納ケース9は、ケース本体50と、ケース本体50から切断刃8を1枚だけ取り出すためのレバー部51と、で主に構成されている。ケース本体50は、略直方体状に形成されており、上面には長手方向に沿って長溝50aが形成されている。また、内部に収納された切断刃8は、ケース本体50の底部に設けられた図示しない付勢手段により上面側に常に付勢されている。ケース本体50の一方の側面には、長手方向に沿ってガイド溝50bが対向した状態で形成されている。更に、ケース本体50の側面には、切断刃8が通過する図示しない開口部が形成されており、ケース本体50に収納されている切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8がこの開口部を通って外側に搬出されるようになっている。
【0049】
レバー部51は、断面略コ形状に形成されており、爪部51aが一対のガイド溝50bに嵌った状態でケース本体50の上面に被さっている。そして、レバー部51は、爪部51aがガイド溝50bにガイドされた状態でケース本体50の長手方向に移動自在とされている。また、レバー部51には、ケース本体50の上面に形成された長溝50a内に入り込む突起部51bが形成されている。この突起部51bは、ケース本体50に収納された複数の切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8にのみに接触するように長さが調整されている。これにより、レバー部51を移動させることで、1番上方に位置する切断刃8のみを押しだして、ケース本体50に形成された開口部からケース本体50の外側に搬出することが可能とされている。
【0050】
このように構成された収納ケース9は、図4及び図23に示すように、水平面に対して若干傾くすくい角θ(例えば、27°前後)が付いた状態で、装置ケース14の上部空間E1内に配置されている。
【0051】
次に、ホルダ10について説明する。
図4に示すように、ホルダ10は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の近傍に配置されている。この際、ホルダ10は、収納ケース9と同様にすくい角θが付いた状態で斜めに配置されている。
具体的には、ホルダ10は、図24及び図25に示すように、刃先8aが外側に露出しながら切断刃8が載置される載置プレート60と、載置された切断刃8を載置プレート60に押さえ付けてクランプ固定する押さえプレート61と、で主に構成されている。
【0052】
載置プレート60は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が載置される載置面60aが長手方向に沿って先端側に形成されている。また、載置プレート60には、載置面60aに隣り合うように載置面60aに沿ってシート板62が固定されている。そして、載置面60a側に向いたシート板62の端面には、間隔を開けて複数の磁石(吸着手段)63が埋め込まれて固定されている。
この磁石63は、載置面60aに載置された切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく載置プレート60に載置されるようになっている。
【0053】
押さえプレート61は、載置プレート60に支持されているシャフト64に回転自在に連結された状態で、載置面60aの全体を覆うように配置されている。この押さえプレート61は、制御部15の指示によって押し出されるロッド65aによって、基端側が上方に押されるようになっている。すると、押さえプレート61はシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。これにより、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けて、クランプ固定することが可能とされている。
【0054】
また、押さえプレート61は、図示しないコイルバネによって基端側が載置プレート60側に付勢されている。そのため、ロッド65aを引き込んだ場合には、バネ力によって押さえプレート61が逆回転し、先端側が持ち上がるようになる。これにより、切断刃8の押さえ付けが解除されるようになっている。
なお、ロッド65aは、載置プレート60の基端側を支持する支持体66に対して接近離間するスライド部65に連結されており、スライド部65の移動に伴って可動するようになっている。
【0055】
ところで、載置プレート60の載置面60aには、図26に示すように、間隔を開けて載置プレート60を貫通する逃げ孔68が3つ形成されている。なお、本実施形態では、逃げ孔68を貫通孔として説明するが、後述する突出ピン60が入り込んで挿入可能とされる程度に十分深い凹部であっても構わない。
この際、隣り合う逃げ孔68の中心間距離は、切断刃8の貫通孔8bの中心間距離に一致している。一方、押さえプレート61の先端側には、図27に示すように、載置プレート60側に突出して逃げ孔68に入り込む3つの突出ピン69が、逃げ孔68に対向するように設けられている。従って、突出ピン69は、載置プレート60に干渉しないように設計されている。なお、これら突出ピン69は、切断刃8の貫通孔8bを貫通可能なサイズとされている。
【0056】
上述したように、突出ピン69が設けられているので、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを検出するようになっている。
つまり、搬送機構11によって、切断刃8が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、確実に1枚だけ搬送されてきた場合には、図28及び図29に示すように、突出ピン69が貫通孔8bを挿通した後、逃げ孔68に挿入される。従って、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が一定角度になった状態で、切断刃8をクランプ固定することができる。
ところが、切断刃8が搬送されてきた際に、位置不良や姿勢不良等となっている場合には、貫通孔8bが逃げ孔68上からずれてしまうので、図30に示すように、突出ピン69が切断刃8の刀身に接触して干渉してしまう。そのため、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が上記角度とは異なる角度になる。つまり、押さえプレート61と載置プレート60の間に隙間が開いてしまう。
【0057】
また、図31及び図32に示すように、何らかの理由により切断刃8が搬送されてこなかった場合や、2枚同時に搬送されてきた場合等には、予め決められた位置に、予め決められた姿勢でいくら搬送されてきたとしても、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度がやはり上記角度とは異なってしまう。
このように、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを容易且つ確実に検出することができるようになっている。なお、制御部15は、ロッド65aのストローク量で押さえプレート61の押さえ付け角度をモニタしている。
【0058】
上述した制御部15、逃げ孔68及び突出ピン69は、上記検出を行う検出機構70として機能する。このように検出機構70を備えているので、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことが可能とされている。
なお、本実施形態では、貫通孔8bが2つ形成されているのに対して、逃げ孔68及び突出ピン69が3つ形成されているので、切断刃8を2つの位置でクランプ固定することが可能である。
【0059】
このように構成されたホルダ10は、図3及び図4に示すように、移動機構71によってステージ5上を往復移動するように設計されている。これにより、クランプ固定した切断刃8によって、ステージ5上に載置された包埋ブロックBを薄切することが可能とされている。この際、ホルダ10は、所定の引き角が付いた状態で包埋ブロックBを薄切するように設計されている。
なお、上述したように切断刃8を2つの位置でクランプ固定が可能であるので、1枚の切断刃8であっても、2箇所のポイントを利用して薄切を行える。そのため、切断刃8を幅広く有効に利用することが可能とされている。
【0060】
なお、本実施形態では、ステージ5に対してホルダ10側を移動させるように移動機構71を構成したが、これとは逆にステージ5側を移動させても構わないし、ホルダ10側及びステージ5側を共に移動させるように構成しても構わない。
いずれにしても、包埋ブロックBとホルダ10とを相対的に移動させて、切断刃8によって薄切を行うことができれば移動機構71は、どのように設計しても構わない。
【0061】
次に、搬送機構11について、説明する。
図4に示すように、搬送機構11は、装置ケース14の上部空間E1内において、収納ケース9とホルダ10との間に配置されている。この搬送機構11は、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10の載置プレート60にスライド移動により搬送させると共に、薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出して交換させる役割を果している。
【0062】
具体的には、搬送機構11は、図33に示すように、収納ケース9から取り出された切断刃8をホルダ10まで搬送するための搬送路80と、収納ケース9のレバー部51を移動させて切断刃8を搬送路80側にスライド移動させる第1の搬送部81と、搬送路80に移動させられた切断刃8をホルダ10の近傍までスライド移動させる第2の搬送部82と、ホルダ10の近傍まで移動してきた切断刃8をホルダ10側に完全にスライド移動させると共に、薄切終了後に、使用した切断刃8をホルダ10から押し出す第3の搬送部83と、で主に構成されている。
【0063】
搬送路80は、図33及び図34に示すように、下部プレート90と、下部プレート90に接合された上部プレート91とで、主に構成されている。下部プレート90は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が搬送される搬送面90aが長手方向に沿って先端側に形成されている。切断刃8は、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で搬送面90a上を搬送させられるようになっている。
なお、この搬送面90aは、収納ケース9及びホルダ10と同様にすくい角θが付いて斜めになっていると共に、収納ケース9の開口部及びホルダ10の載置面60aに対して面一な高さとなるように高さ調整されている。
【0064】
また、下部プレート90には、搬送面90aに隣り合うように搬送面90aに沿ってシート板92が固定されている。そして、搬送面90a側に向いたシート板92の端面には、間隔を開けて複数の磁石93が埋め込まれて固定されている。この磁石93は、搬送される切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによって斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく搬送されるようになっている。
上部プレート91は、切断刃8の厚み以上の隙間を開けた状態で、搬送面90aの上方を覆うように下部プレート90に接合されている。
【0065】
第1の搬送部81は、図33に示すように、移動プレート100に固定されたLアングル101と、Lアングル101に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド102と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド102に固定されたZ軸プレート103と、収納ケース9のレバー部51に嵌合可能な嵌合爪104aを先端に有し、Z軸プレート103の下部に固定された搬送アーム104と、で主に構成されている。
【0066】
移動プレート100は、基礎プレート105上に移動可能に支持されており、収納ケース9やホルダ10の長手方向に移動可能とされている。嵌合爪104aは、Z軸プレート103がZ軸方向に下降したときに、収納ケース9のレバー部51に嵌合してレバー部51を挟持するように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、レバー部51を動かして収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出し、搬送路80側にスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第1の搬送部81は、収納ケース9の上方に待機している。
【0067】
第2の搬送部82は、移動プレート100に固定されたLアングル110と、Lアングル110に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド111と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド111に固定されたZ軸プレート112と、Z軸プレート112の下部に固定され、搬送路80に移動させられた切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部113aを有する搬送ブロック113と、で主に構成されている。
【0068】
突起部113aは、Z軸プレート112がZ軸方向に下降したときに、図35に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10の近傍まで搬送路80に沿ってスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第2の搬送部82は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0069】
第3の搬送部83は、移動プレート100に固定されたLアングル120と、Lアングル120に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド121と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド121に固定されたZ軸プレート122と、Z軸プレート122の下部に固定され、ホルダ10の近傍まで移動させられた切断刃8を押し出す押し出し片123aを有する搬送ブロック123と、で主に構成されている。
【0070】
押し出し片123aは、切断刃8と略同じ厚みに形成された薄いプレートであり、Z軸プレート122がZ軸方向に下降したときに、図36に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の後端に並ぶように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10側に押し出すようにスライド移動させることが可能とされている。これにより、図37に示すように、切断刃8を搬送路80の搬送面90aからホルダ10の載置面60aに移送して、完全に切断刃8をホルダ10側に受け渡すことができる。この際、切断刃8の貫通孔8bが載置面60aに形成された逃げ孔68上に位置するように、切断刃8を受け渡すように調整されている。
なお、通常、この第3の搬送部83は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0071】
上述したように、第1の搬送部81と、第2の搬送部82と、第3の搬送部83と、移動プレート100とを複合的に作動させることで、切断刃8を収納ケース9から1枚取り出してホルダ10に滑らかに搬送することができるようになっている。なお、これら各構成品は、制御部15からの指示によって作動する。
ところで、制御部15は、包埋ブロックBの薄切が所定回数終了すると、第3の搬送部83と移動プレート100を作動させて、使用した切断刃8をホルダ10から押し出すようにスライド移動させるようになっている。
【0072】
次に、廃棄用ボトル12について、説明する。
図4に示すように、廃棄用ボトル12は、装置ケース14の下部空間E2内に配置されており、装置ケース14の出入扉14cを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、外部からアクセスすることができ、手動で廃棄用ボトル12を回収することが可能とされている。
この廃棄用ボトル12は、例えば透明な樹脂材料によって形成されたボトルであり、内部に数百から千枚程度の切断刃8を一度に収容可能とされている。特に、透明であるので、作業者は収容状況を目視で確認可能である。
【0073】
次に、排出機構13について、説明する。
図4に示すように、排出機構13は、ホルダ10から押し出された切断刃8を回収する回収機構130と、回収した切断刃8を廃棄用ボトル12に排出する排出シュータ(案内機構)140と、で主に構成されている。
なお、本実施形態では、重力による落下を利用して切断刃8を排出する排出シュータ140で案内機構を構成した場合を例に挙げて説明する。
【0074】
回収機構130は、装置ケース14の上部空間E1内にてホルダ10に隣接配置されており、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aに投入する役割を果している。即ち、この回収機構130は、図38に示すように、ホルダ10の長手方向に延びたガイド131と、ガイド131に沿って移動可能な移動プレート132と、移動プレート132に固定されたLアングル133と、Lアングル133に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド133と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド133に固定されたZ軸プレート134と、Z軸プレート134の下部に固定された搬送ブロック135と、で主に構成されている。
【0075】
搬送ブロック135は、ホルダ10から押し出された切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部135aと、切断刃8の刀身を磁力によって吸着する磁性体135bとを有している。
突起部135aは、Z軸プレート134がZ軸方向に下降したときに、ホルダ10の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そして、これと同時に磁性体135bが、切断刃8の刀身を吸着して切断刃8を保持するようになっている。そのため、この状態で移動プレート132を移動させることで、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収できるようになっている。また、回収された切断刃8は、排出シュータ140の一端側に設けられた開口部140aの真上まで移動させられる。
【0076】
ところで、Z軸プレート134には、非磁性体の爪部136が突起部135aと磁性体135bとの間に位置するように設けられている。この爪部136は、突起部135a及び磁性体135bがZ軸プレート134に連られて移動するのとは異なり、固定された部材である。そのため、突起部135a及び磁性体135bを上昇させると、相対的に爪部136があたかも下降した形になる。従って、排出シュータ140の開口部140aの真上まで移動させた切断刃8を、図39に示すように排出シュータ140に叩き落とすことが可能とされている。
【0077】
一方、排出シュータ140は、装置ケース14の上部空間E1から下部空間E2を貫くように配置されている。この際、装置ケース14の後面側から前面側に向かって傾斜した状態で配置されている。また、切断刃8が投入される開口部140aが設けられた一端側が回収機構130の近傍に位置し、他端側が廃棄用ボトル12の真上に位置している。そして、投入された切断刃8を重力による落下により他端側まで案内した後、廃棄用ボトル12に排出する役割を果している。
そのため、回収機構130で叩き落された切断刃8は、図4に示すように、開口部140から他端側に向かって排出シュータ140を滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後、排出されるようになっている。これにより、使用済みの切断刃8を廃棄用ボトル12で回収することが可能とされている。
【0078】
ところで、開口部140aは、他端側に向かうにつれて漸次窄まる漏斗状に形成されており、切断刃8の長手方向が重力方向に向くように姿勢を規制している。そのため、長尺な切断刃8は、ほぼ縦向きで排出シュータ140を滑り落ちていき、途中で引っ掛かって詰まることなく他端側まで案内されるようになっている。
【0079】
次に、このように構成された自動薄切装置1を利用して、包埋ブロックBを薄切する場合について説明する。
はじめに、事前準備として、図14及び図15に示すように、包埋ブロックBが固定されたカセットKをマガジン2に複数収納する作業を行う。まず、作業者は、手元にカセットKを複数用意した後、マガジン2の開閉扉21を開ける。すると、開閉扉21に固定されたヒンジ部24のボールプランジャ26がブロック25の嵌合溝25aに嵌まり込むので、開閉扉21を開けたままの状態に維持することができる。よって、作業者は、開閉扉21を気にせずにカセットKをマガジン本体20に次々と収納することができる。
【0080】
この際、作業者は、図8及び図9に示すように、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを差し込んで収納する。仮に、逆向き或いは包埋ブロックBを下向きにした状態でカセットKを差し込んでしまったとしても、これらの場合にはカセットKを差し込む際に、マガジン本体20の内部に設けられたピン22がカセットKに接触してしまう。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。よって、作業者は、カセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。よって、全てのカセットKを正しい向きで確実に収納することができ、人為的なミスを未然に防止できる。
【0081】
また、万が一、差し込んでいる段階でカセットKの向きの誤りに気づかなかったとしても、開閉扉21を最後に閉める段階で気づくことができる。つまり、誤った向きに差し込まれたカセットKがある場合には、図11に示すように、開閉扉21が途中でカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができない。そのため、この時点で作業者はカセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。この点においても、人為的なミスを未然に防止できる。
【0082】
そして、複数のカセットKをマガジン本体20内に収納した後、図5に示すように、開閉扉21を閉めてカセットKの脱落を防止する。この際、開閉扉21は、捩りバネによって閉状態が維持されるので、作業者が再度開けない限り、不意に開いてしまうことがない。よって、カセットKの落下を気にすることなくマガジン2を安全に持ち運びすることができる。
【0083】
そして、作業者は、装置ケース14の出入扉14bを開けた後、図4に示すように、複数のカセットKを収納したマガジン2をストッカ30内に差し込んで装着する。この際、開閉扉21側からカセットKを差し込む。そして、カセットKを装着した後、開けていた出入扉14bcを閉める。
そして、廃棄用ボトル12がセットされていること、収納ケース9内に切断刃8がセットされていること、を確認して、事前準備が終了する。
【0084】
次に、作業者は、制御部15を介して装置ケース14内の各構成品の作動を開始させる。すると、搬送機構11が収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出した後、ホルダ10の載置プレート60に向けてスライド移動により搬送し、載置プレート60上に切断刃8を載置する作業を行う。
【0085】
詳細には、まず、図33に示すように、第1の搬送部81のZ軸プレート103を下降させて、搬送アーム104の嵌合爪104aをレバー部51に嵌合させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第1の搬送部81全体を収納ケース9の長手方向に移動させる。これにより、収納ケース9のレバー部51を移動させることができ、収納ケース9の1番上方に位置している切断刃8を、開口部を介して押し出すことができる。
すると、押し出された切断刃8は、図35に示すように、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で、搬送路80にスライド移動する。この時点で、Z軸プレート103を上昇させて、嵌合爪104aをレバー部51から離間させて嵌合を解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0086】
続いて、第2の搬送部82のZ軸プレート112を下降させて、突起部113aを切断刃8の貫通孔8bに差し込む。続いて、移動プレート100を移動させて、第2の搬送部82全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図36に示すように、切断刃8をスライド移動させながらホルダ10の近傍まで移動させることができる。この時点で、Z軸プレート112を上昇させて、突起部113aを貫通孔8bから抜いて切断刃8との係わりを解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0087】
続いて、第3の搬送部83のZ軸プレート122を下降させて、押し出し片123aを切断刃8の後端に並ぶように位置させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第3の搬送部83全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図37に示すように、切断刃8を押し出すようにスライド移動させて、搬送路80からホルダ10に受け渡すことができる。なお、ホルダ10の押さえプレート61は、この段階では先端側が浮いた状態となっているので、切断刃8をホルダ10側に搬送することができる。
【0088】
切断刃8をホルダ10側に搬送した後、移動プレート100を若干逆方向に移動させて押し出し片123aをホルダ10の外側に露出させる。そして、Z軸プレート122を上昇させて、押し出し片123aを元の位置に戻す。その後、移動プレート100を完全に元の位置に戻す。
一方、ホルダ10に搬送された切断刃8は、図25に示すように、刃先8aが外側に露出した状態で載置面60aに載置されている。この際、切断刃8は、基端側が磁石63によって吸着されているので、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていても、重力の影響を受けてずれ落ちることなく姿勢が保持されて安定した状態となっている。
【0089】
切断刃8が載置面60aに載置されると、押さえプレート61が作動して切断刃8を載置プレート60に押さえ付ける。つまり、スライド部65に連結されているロッド65aを押し出して、押さえプレート61の基端側を上方に押し上げる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。従って、上述したように、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けることができ、クランプ固定することができる。
【0090】
この際、検出機構70が、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけクランプ固定されているか否かを検出する。その結果、検出機構70が否と検出した場合、即ち、搬送されてきた切断刃8が何らかの理由(例えば、過度の押し出されや、磁石63の吸着不良による位置ずれ等)によって位置不良や姿勢不良等が生じている場合や、切断刃8そのものが搬送されてきていない場合や、切断刃8が2枚搬送されてきた場合等には、切断刃8のkyランプ不良と判断して以降の薄切を行わない。
従って、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことができる。
【0091】
ところで、制御部15は、上述した工程と同時に、カセットKをステージ5上に載置させる作業を行わせている。この作業について説明する。
まず、ストッカ30にマガジン2が装着された段階で、図17に示すように、マガジン検出センサ31はマガジン2で反射した反射光により、マガジン2が装着されたことを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2が装着されたことを把握する。また、開閉検出センサ33は、閉状態の開閉扉21で反射した反射光により、開閉扉21が閉まっていることを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2の開閉扉21が閉まっていることを把握する。
【0092】
そこで、制御部15は、シリンダ機構32bを作動させて、図16に示すように爪部32aをマガジン2の開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛けて、開閉扉21を開状態にさせる。すると、開閉検出センサ33は、反射光を受光しなくなるので、検出信号の出力を停止する。これにより、制御部15は、マガジン2の開閉扉21が開いたことを把握することができる。
【0093】
続いて、制御部15は、オートローダ4を作動させる。すると、オートローダ4は、図4に示すようにX軸スライダ4b及びY軸スライダ4cを適宜作動させながら、ハンド部4aを利用してマガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持して掴む。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜行わせて、掴んだカセットKをマガジン2取り出した後、載置台3上に載置させる。
【0094】
続いて、制御部15は、カセットローダ6を作動させる。すると、カセットローダ6は、固定プレート6cとY軸移動機構6dとを適宜作動させながら、ハンド部6aを利用して載置台3に置かれたカセットKを挟持して掴む。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜行わせて、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置する。
【0095】
このようにして、カセットKをステージ5上に載置させる作業を、切断刃8の固定作業と平行して行う。そして、切断刃8のクランプ固定作業と、ステージ5上へのカセットKのセット作業とが終了すると、包埋ブロックBの薄切作業を開始する。
まず、ステージ5を高さ調整して、包埋ブロックBの上面を所望する高さ位置に調整する。そして、移動機構71がホルダ10を移動させることで、クランプ固定した切断刃8により包埋ブロックBを薄切する。これにより、包埋ブロックBを粗削りして面だしを行うことができる。
【0096】
ところで、薄切を行っている際、撮像カメラ7が包埋ブロックBを撮像する。この撮像画像は、モニタ15aに表示される。よって、作業者は、包埋ブロックBの表面状態や内部状態をモニタ15aに表示された撮像画像で確認することができる。そして、この撮像画像を参考にして、薄切の合間に、適宜ステージ5を傾斜させたり、回転させたりすることができる。その結果、包埋ブロックBの粗削りによって、最適な面を表面に露出させることができる。
なお、粗削り後、包埋ブロックBを本削りして薄切片Mを作製しても構わない。
【0097】
そして、薄切が所定回数終了すると、制御部15は押さえプレート61による切断刃8の押さえ付けを解除させる。つまり、ロッド65aを引き込んで、バネ力により押さえプレート61の基端側を載置プレート60側に移動させる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に逆回転するので、先端側が押し上がる。従って、押さえ付けが解除される。
【0098】
また、制御部15は、これと同時に搬送機構11を作動させて、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出させる。つまり、第3の搬送部83のZ軸プレート122を再度下降させた後、移動プレート100を移動させる。これにより、図38に示すように、押し出し片123aを利用して切断刃8を押し出すようにスライド移動させることができ、切断刃8の一部をホルダ10の外側に突出させることができる。これにより、切断刃8の交換を行うことができる。
【0099】
なお、切断刃8がホルダ10から押し出されると、制御部15は、回収機構130を作動させる。すると、回収機構130は、Z軸プレート134を下降させて、ホルダ10の外側に突出している切断刃8の貫通孔8bに突起部135aを挿入させると同時に、切断刃8の刀身を磁性体135bで吸着させて切断刃8を保持させる。その後、移動プレート132を移動させて、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収すると共に、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aの真上に移動させる。
【0100】
続いて、この位置で、Z軸プレート134を上昇させて、突起部135a及び磁性体135bを上昇させる。これにより、相対的に爪部136があたかも下降した形になるので、図39に示すように、排出シュータ140の開口部140aに切断刃8を叩き落として投入することができる。叩き落された切断刃8は、図4に示すように、排出シュータ140を重力による落下によって滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後に排出される。これにより、使用済みの切断刃8は、廃棄用ボトル12に回収される。
【0101】
その後、搬送機構11は、再度収納ケース9内から新たな切断刃8を1枚取り出して、ホルダ10に搬送する。そして、ホルダ10が、新たな切断刃8をクランプ固定して次の薄切に備える。一方、薄切が終了した後のカセットKは、カセットローダ6によってステージ5から載置台3に受け渡される。そして、オートローダ4によって、載置台3からマガジン2内に戻されて、再収納される。
このように、本実施形態の自動薄切装置1によれば、上述した工程を繰り返すことで、マガジン2内の全てのカセットKについて、包埋ブロックBの薄切を自動で行うことができる。
【0102】
特に、この自動薄切装置1によれば、薄切を所定回数行う毎に切断刃8の交換と回収とを自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃8を交換でき、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃8を使用して薄切を行うことができるので、高品質な薄切片Mの作製を実現することができる。また、各構成品が装置ケース14内に収容されているので、塵埃等の影響を受け難く、薄切を最適な環境下で行うことができる。この点においても、薄切片Mの高品質化に繋げることができる。
【0103】
加えて、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8をホルダ10にクランプ固定できるので、正確な薄切を行うことができ、切断刃8の落下等を未然に防止することができる。しかも、すくい角θを付けた状態で包埋ブロックBを薄切することができるので、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【0104】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0105】
例えば、上記実施形態では、逃げ孔68と突出ピン69とを利用して検出機構70を構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、押さえプレート61側に切断刃8の位置や姿勢、切断刃8の有無を検出するための非接触タイプのセンサを設け、このセンサを利用して検出機構を構成しても構わない。いずれにしても、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを検出できれば、検出機構をどのように設計しても構わない。
【0106】
また、上記実施形態では、重力による落下を利用して切断刃8を案内する排出シュータ140で案内機構を構成した場合を例に挙げたが、この場合に限定されるものではなく、例えば、コンベアやエアシリンダ等を利用して切断刃8を案内し、廃棄用ボトル12に排出するように案内機構を設計しても構わない。但し、構成の簡略化及び低コスト化を図る点で、排出シュータ140とすることが好ましい。
【0107】
また、上記実施形態では、磁石63による磁力を利用して載置プレート60に載置された切断刃8を吸着する構成としたが、磁石63に限定されるものでない。例えば、複数の吸引ノズルで吸着手段を構成し、切断刃8を吸引力で吸着するようにしても構わない。但し、磁石63を利用することで、簡単且つ安価で吸着手段を構成できるので、構成の単純化及び低コスト化を点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明に係る自動薄切装置で用いられる包埋ブロック及びカセットの斜視図である。
【図2】図1に示す包埋ブロックから薄切された薄切片がスライドガラス上に固定されて薄切片標本となった状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を示す簡略構成図である。
【図4】図3に示す自動薄切装置の構成を示す斜視図である。
【図5】図4に示す自動薄切装置を構成するマガジンの斜視図である。
【図6】図5に示すマガジンを矢印A方向から見た側面図である。
【図7】図5に示すマガジンを矢印B方向から見た背面図である。
【図8】図5に示すマガジンの一部拡大図である。
【図9】図8に示すマガジンを側方から見た図である。
【図10】カセットを誤った向きで差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図11】図10に示すマガジンの斜視図である。
【図12】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が背面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図13】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が正面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図14】図5の状態からマガジンの開閉扉を開けた状態を示す図である。
【図15】図14に示すマガジンを背面側から見た斜視図である。
【図16】図5に示すマガジンをストッカに装着した状態を示す斜視図である。
【図17】図16に示すストッカの一部拡大図である。
【図18】図3に示す自動薄切装置で用いられる切断刃の上面図である。
【図19】図18に示す切断刃の側面図である。
【図20】図3に示す自動薄切装置を構成する収納ケースの側面図である。
【図21】図20に示す収納ケースの上面図である。
【図22】図20に示す収納ケースの正面図である。
【図23】図20に示す収納ケースの装着状態を示す図である。
【図24】図3に示す自動薄切装置を構成するホルダの斜視図である。
【図25】図24に示すホルダの断面図である。
【図26】図24に示すホルダを構成する載置プレートに形成された凹部を示す図である。
【図27】図24に示すホルダを構成する押さえプレートに形成された突出ピンを示す図である。
【図28】図24に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、予め決められた所定位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図29】図28に示す断面矢視C−C図である。
【図30】図24に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、誤った位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図31】切断刃がない状態で図24に示すホルダの押さえプレートが押さえ付け位置に移動した移動した状態を示す図である。
【図32】切断刃が2枚ある状態で図24に示すホルダが切断刃を押さえ付けた状態を示す図である。
【図33】図3に示す自動薄切装置を構成する搬送機構の斜視図である。
【図34】図33に示す搬送機構を構成する搬送路の断面図であって、断面矢視D−D図である。
【図35】図33に示す状態から、切断刃を搬送路に取り出した状態を示す図である。
【図36】図35に示す状態から、切断刃をホルダの近傍までスライド移動させた状態を示す図である。
【図37】図36に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダ側に搬送させた状態を示す図である。
【図38】図37に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダから押し出した状態を示す図である。
【図39】図38に示す状態から、切断刃を回収して排出シュータの開口部に叩き落としている状態を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
B…包埋ブロック
S…生体試料
1…自動薄切装置
8…切断刃
8a…切断刃の刃先
8b…貫通孔
9…収納ケース
10…ホルダ
11…搬送機構
60…ホルダの載置プレート
61…ホルダの押さえプレート
63…磁石(吸着部材)
68…逃げ孔(凹部)
69…突出ピン
70…検出機構
71…移動機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置であって、
一端側が刃先とされ、刀身に位置決め用の貫通孔が形成された切断刃と、
前記刃先が外側に露出しながら前記切断刃が載置される載置プレートと、載置された切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する押さえプレートと、を有するホルダと、
前記包埋ブロックと前記ホルダとを相対的に移動させ、クランプ固定した前記切断刃により包埋ブロックを薄切する移動機構と、
前記切断刃を複数収納する収納ケースと、
前記収納ケースと前記ホルダとの間に配置され、収納ケースから前記切断刃を1枚取り出して前記載置プレートにスライド移動により搬送させると共に、前記薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃をスライド移動によりホルダから押し出して交換させる搬送機構と、
前記載置プレートの所定位置で前記切断刃が1枚だけ前記押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する検出機構と、を備えていることを特徴とする自動薄切装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動薄切装置において、
前記検出機構は、前記載置プレートの所定位置に形成された逃げ孔と、前記押さえプレートに設けられ、前記貫通孔を挿通可能であると共に前記逃げ孔内に挿入可能とされた突出ピンと、を備え、
前記載置プレートに対する前記押さえプレートの押さえ付け角度に基づいて、前記検出を行うことを特徴とする自動薄切装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動薄切装置において、
前記載置プレートに載置された前記切断刃の基端側を吸着して、切断刃の姿勢を保持する吸着部材を備えていることを特徴とする自動薄切装置。
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置であって、
一端側が刃先とされ、刀身に位置決め用の貫通孔が形成された切断刃と、
前記刃先が外側に露出しながら前記切断刃が載置される載置プレートと、載置された切断刃を載置プレートに押さえ付けてクランプ固定する押さえプレートと、を有するホルダと、
前記包埋ブロックと前記ホルダとを相対的に移動させ、クランプ固定した前記切断刃により包埋ブロックを薄切する移動機構と、
前記切断刃を複数収納する収納ケースと、
前記収納ケースと前記ホルダとの間に配置され、収納ケースから前記切断刃を1枚取り出して前記載置プレートにスライド移動により搬送させると共に、前記薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃をスライド移動によりホルダから押し出して交換させる搬送機構と、
前記載置プレートの所定位置で前記切断刃が1枚だけ前記押さえプレートによってクランプ固定されているか否かを検出する検出機構と、を備えていることを特徴とする自動薄切装置。
【請求項2】
請求項1に記載の自動薄切装置において、
前記検出機構は、前記載置プレートの所定位置に形成された逃げ孔と、前記押さえプレートに設けられ、前記貫通孔を挿通可能であると共に前記逃げ孔内に挿入可能とされた突出ピンと、を備え、
前記載置プレートに対する前記押さえプレートの押さえ付け角度に基づいて、前記検出を行うことを特徴とする自動薄切装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動薄切装置において、
前記載置プレートに載置された前記切断刃の基端側を吸着して、切断刃の姿勢を保持する吸着部材を備えていることを特徴とする自動薄切装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【公開番号】特開2010−54483(P2010−54483A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222692(P2008−222692)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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