自動薄切装置
【課題】切断刃の刃先の走行面と包埋ブロックの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することで、良好な薄切片を取り出すことができるとともに、切断刃の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる自動薄切装置を提供する。
【解決手段】センサ20は、移動手段によりステージ12がZ方向に移動し、包埋ブロックBがレーザ光Lを遮蔽して、受光部22がレーザ光Lを受光しなくなったときに、包埋ブロックBの表面の位置を検出し、投光部21と包埋ブロックBとの間には、投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を絞るビーム絞り25が配置されていることを特徴とする。
【解決手段】センサ20は、移動手段によりステージ12がZ方向に移動し、包埋ブロックBがレーザ光Lを遮蔽して、受光部22がレーザ光Lを受光しなくなったときに、包埋ブロックBの表面の位置を検出し、投光部21と包埋ブロックBとの間には、投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を絞るビーム絞り25が配置されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動薄切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトーム(自動薄切装置)が一般的に知られている。薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片をスライドガラス等の基板上に固定させたものである。薄切片は、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックを上述した厚さで極薄に薄切して作製されたものである。また、包埋ブロックは、人体や実験動物等から取り出されてホルマリン固定された生体試料をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンで固めてブロック状に作製したものである。
自動薄切装置により薄切片を得るためには、まず包埋ブロックを自動薄切装置のステージにセットして、切断刃により厚さが例えば10μm程度に薄切する粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面を平滑にするとともに、実験や観察の対象物である包埋された生体試料を表面に露出(以下、面出しという)させる。この粗削りを終了した後、包埋ブロックを3μm〜5μmの厚みで極薄にスライスする本削りを行い、薄切片標本となる薄切片を得る。
【0003】
ところで、上述した包埋ブロックから厚さの均一な薄切片を得るためには、はじめに上述した粗削り工程において包埋ブロックの表層部分に形成された凹凸や傾斜面等を薄切し、包埋ブロックの表面を平滑にして面出しを行う必要がある。包埋ブロックの面出しを行うには、まずステージ上にセットされた包埋カセットの表層とミクロトームの切断刃の刃先との相対位置を調整する。そして、切断刃の刃先と包埋ブロックの表層との相対位置が決定された時点で、切断刃の刃先をステージの表面に沿わせて往復移動させることで包埋ブロックの表層部分が薄切される。その後、切断刃を作動させた状態で、ステージを徐々に上昇させることで連続的に薄切が行われ、包埋ブロックの表面を平滑にして面出しを行うことができる。
【0004】
また、包埋ブロックの面出しを行う際には、包埋カセットの表層と切断刃の刃先の走行面との相対位置が重要となる。万が一、包埋カセットの表層と切断刃の刃先の走行面とがラップしすぎると、薄切される薄切片が厚くなり生体試料を所望の断面とともに切断してしまう虞がある。一方、包埋ブロックの表層と切断刃の刃先の走行面との相対位置が余りにも離れた位置から切断刃を作動させると、切断刃の空振り状態が長く続いて包埋ブロックの表層が薄切されるまでに長い時間を要するため、作業効率が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、傾動可能なステージ上に包埋ブロックを載置し、ロードセルを介して支持された基準面を包埋ブロックの試料面に対して押し当てることで、包埋ブロックの試料面が基準面に対して平行な状態で保持する構成が開示されている。
また、例えば特許文献2では、受光部及び投光部を有するラインセンサを備え、受光部により受光されるレーザの光量の変化から、包埋ブロックによるレーザの遮光量を算出し、包埋ブロックの位置(高さや傾斜角度)の検出を行う構成が開示されている。
【特許文献1】特許3656005号
【特許文献2】特開2008−76251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、包埋ブロックの試料面に対して基準面を直接押し付ける構成であるため不衛生である。また、包埋ブロックに包埋された生体試料に影響が及ぶ可能性がある。具体的には、生体試料が包埋されたパラフィンの欠損や、破壊、また包埋ブロックが押し付けられることにより生体試料の組織崩壊に繋がる可能性がある。
【0007】
図10、11は上述した特許文献2のように、ラインセンサを用いた従来の包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図であり、図10は包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合、図11は傾斜面を有する場合を示している。
図10に示すように、包埋ブロック100の表層部分が平坦面の場合には、センサと包埋ブロックとの相対位置を接近させていくと、センサの投光部101から出射されたレーザ光L’は、包埋ブロック100の表層部分に一部が遮蔽される。これにより、投光部101から出射されたレーザ光L’の光量(ビーム幅)D1と、センサの受光部102で受光されたレーザ光L’の光量D2とが変化する(D1>D2)。その結果、包埋ブロック100の位置を検出することができ、包埋ブロック100と切断刃(不図示)との相対位置を調整することができる。
一方、図11に示すように、例えば包埋ブロック100’の表層部分に傾斜面103が形成されている場合、包埋ブロック100’の表層部分に入射するレーザ光L’は、包埋ブロック100’により遮蔽されずに傾斜面103で反射する。そして、受光部102では、投光部101から直進してきたレーザ光と、傾斜面103で反射したレーザ光とが受光される。その結果、投光部101から出射されたレーザ光L’の光量D1’と、センサの受光部102で受光されたレーザ光L’の光量D2’との変化が少なく、正確な光量の変化を検出できないため、包埋ブロック100’の正確な高さを検出することができず、包埋ブロック100’を所定の位置で停止させることができない。
【0008】
つまり、特許文献2の構成では、包埋ブロックの表面で反射したレーザ光も受光部で受光する虞があり、包埋ブロックにより遮蔽された正確な遮蔽量を検出することができず、実際の遮蔽量と検出された遮蔽量との間で誤差が生じるという問題がある。また、ラインセンサは比較的レーザ幅が広いため、微小な光量の変化を検出できず、包埋ブロックの高さ調整の精度が不十分である。
【0009】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、切断刃の刃先の走行面と包埋ブロックの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することで、良好な薄切片を取り出すことができるとともに、切断刃の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる自動薄切装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る自動薄切装置は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置において、前記包埋ブロックを載置するXY平面と平行な載置面を有するステージと、刃先を前記XY平面に沿って走行させ、前記包埋ブロックの表層を前記XY平面と平行に薄切する切断刃と、前記XY平面に直交するZ方向に前記ステージを移動させる移動手段と、前記Z方向における前記包埋ブロックの表面の位置を検出するセンサとを備え、前記センサは、前記XY平面に沿ってレーザ光を出射する投光部と、前記レーザ光の光路上において前記包埋ブロックを間に挟んで配置され、前記投光部から出射された前記レーザ光を受光する受光部とを備え、前記センサは、前記移動手段により前記ステージが前記Z方向に移動し、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して、前記受光部が前記レーザ光を受光しなくなったときに、前記包埋ブロックの表面の位置を検出し、前記投光部と前記包埋ブロックとの間には、前記投光部から出射された前記レーザ光のビーム径を絞るビーム絞りが配置されていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、投光部と包埋ブロックとの間に、投光部から出射されたレーザ光のビーム径を絞るビーム絞りを配置することで、投光部から出射されるビーム径を小さくすることができる。すなわち、投光部から出射する光にレーザ光を用いるとともに、ビーム絞りを配置してビーム径を小さくすることで、包埋ブロックの表面にはレーザ径が小さい絞られた光が通過することになる。そのため、移動手段により包埋ブロックを移動させ、投光部と受光部との間に包埋ブロックが介在した時点で即座にレーザ光が遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックの位置を検出することができる。
これにより、従来と異なり包埋ブロックに触れることなく包埋ブロックの位置を検出することができるため、生体試料が包埋された包埋剤の欠損や、破壊、生体試料の組織崩壊を防止することができる。
また、ラインセンサを用いた従来の構成に比べてビーム径が小さいので、包埋ブロックがレーザ光を横切るとほぼ同時にレーザ光を遮蔽することができる。これにより、包埋ブロックの表面において反射した反射光の受光を抑制することができるとともに、包埋ブロックのXY平面の表層部分における頂部を高精度に検出することができるため、センサによる検出誤差を小さくすることができる。
したがって、切断刃の刃先の走行面と包埋ブロックの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することができるため、切り始めから均一な厚さの薄切片を得ることができるとともに、切断刃の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における中心部を通過する際の前記レーザ光のビーム径は、50μm以上1000μm以下に設定されていることを特徴としている。
ビーム径を50μm未満に設定すると、ビーム絞りにおいてレーザ光の回折が広がる影響に加え、受光量が減少して外乱光の影響を受ける可能性があるため好ましくない。一方、ビーム径を1000μmより大きく設定すると、受光部によりレーザ光を受光する際、上述したように包埋ブロックの表面で反射するレーザ光が多く、受光部により検出されるレーザ光の光量の微小な変化を検出できないため好ましくない。
これに対して、包埋ブロックへのZ方向の表面における中心部を通過する際のビーム径を50μm以上1000μm以下に設定することで、レーザ光の回折を抑えることができるとともに、包埋ブロック表面における反射光の検出を防ぐことができるため、投光部と受光部との間に包埋ブロックが介在した時点で即座にレーザ光が遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックの位置を検出することができる。したがって、包埋ブロックの表面位置を高精度に検出することが可能になる。
【0013】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記包埋ブロックは前記Z方向から見て矩形状に形成され、前記投光部及び前記受光部は、前記包埋ブロックを間に挟んで前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における対角線の延長線上に配置されていることを特徴としている。
包埋ブロックの表面が一様に傾斜している場合には、その頂部は角部(対角線の端部)に位置する。そこで、包埋ブロックのZ方向表面における対角線の延長線上に投光部及び受光部を配置することで、包埋ブロックの頂部を確実に検出することができる。また、包埋ブロックの表層部分における一方向(例えば、X方向)上のみならず一方向に直交する他方向(例えば、Y方向)を複合した線上のZ方向における位置を検出することができるため、包埋ブロックのZ方向の表層部分における頂部を高精度に検出することができる。したがって、包埋ブロックの位置調整を高精度に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る自動薄切装置は、一対の前記センサが、前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における一対の対角線の延長線上に配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、一対のセンサを包埋ブロックのZ方向の表面におけるそれぞれ一対の延長線上に配置することで、より確実に包埋ブロックの頂部の高さを検出することができるため、より均一な厚さの薄切片を得ることができ、高精度な面出しが可能になる。
【0015】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記受光部と前記包埋ブロックとの間には、前記受光部で受光する前記レーザ光の発散角を規制する発散角制限絞りが配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光の拡散や包埋ブロックの表面での反射によりレーザ光の発散角が拡大した場合であっても、所定の範囲のレーザ光のみを受光部へ供給することができるため、レーザ光の誤検出を確実に防止することができる。これにより、包埋ブロックのより高精度な位置検出が可能になる。
【0016】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記センサは、前記受光部が前記レーザ光を受光している状態でON状態となる一方、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して前記受光部が前記レーザ光を受光していない状態でOFF状態となり、前記移動手段は、まず、前記ステージを基準位置から、前記センサがOFF状態となる第1位置まで移動させ、次に、前記ステージを前記第1位置から、前記基準位置と前記第1位置との間で前記センサがON状態となる第2位置まで移動させ、次に、前記ステージを前記第2位置から、前記第2位置と前記第1位置との間で前記センサがOFF状態となる目標位置まで移動させ、前記第2位置から前記目標位置までの間の前記ステージの移動速度は、前記基準位置から前記第1位置までの間の前記ステージの移動速度より遅く設定されていることを特徴としている。
ところで、ビーム径を縮小することでレーザ光を遮蔽する瞬間を確実に検出するためには、ステージを比較的低速で移動させなければならない。そのため、包埋ブロックの位置調整に時間がかかる場合がある。
これに対して、本発明に係る構成によれば、まず始めにレーザ光の光路上を横切りセンサがOFF状態となる第1位置までステージを比較的高速で移動させた後、再びセンサがON状態となる第2位置までステージの位置を一旦戻す。これにより、ステージと切断刃とを基準位置より目標位置に近接させた第2位置まで比較的高速で相対移動することができる。
その後、第2位置からセンサが再びOFF状態となる目標位置に至るまでの間において、ステージを比較的低速で相対移動させる。これにより、比較的低速でステージを移動させる区間は第2位置から目標位置の間の区間となるため、基準位置から目標位置までの全区間を低速で移動させる場合に比べて、ステージを比較的低速で移動させる区間を短縮することができる。そのため、ビーム径を縮小した場合であっても包埋ブロックの位置調整を正確、かつ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る自動薄切装置によれば、投光部と包埋ブロックとの間に、投光部から出射されたレーザ光のビーム径を絞るビーム絞りを配置することで、投光部から出射されるビーム径を小さくすることができる。すなわち、投光部から出射する光にレーザ光を用いるとともに、ビーム絞りを配置してビーム径を小さくすることで、包埋ブロックの表面にはレーザ径が小さい絞られた光が通過することになる。そのため、移動手段により包埋ブロックを移動させ、投光部と受光部との間に包埋ブロックが介在した時点で即座にレーザ光が遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックの位置を検出することができる。
これにより、従来と異なり包埋ブロックに触れることなく包埋ブロックの位置を検出することができるため、生体試料が包埋された包埋剤の欠損や、破壊、生体試料の組織崩壊を防止することができる。
また、ラインセンサを用いた従来の構成に比べてビーム径が小さいので、包埋ブロックがレーザ光を横切るとほぼ同時にレーザ光を遮蔽することができる。これにより、包埋ブロックの表面において反射した反射光の受光を抑制することができるとともに、包埋ブロックのXY平面の表層部分における頂部を高精度に検出することができるため、センサによる検出誤差を小さくすることができる。
したがって、切断刃の刃先の走行面と包埋ブロックの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することができるため、切り始めから均一な厚さの薄切片を得ることができるとともに、切断刃の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(自動薄切装置)
図1は包埋ブロックを示す斜視図である。
自動薄切装置10(図2参照)は、図1に示すように、生体試料Sが包埋剤Nによって包埋された包埋ブロックBを、所定のすくい角が付いた状態で薄切(例えば、10μm程度に薄切)して包埋ブロックBの表面を平滑にするとともに、実験や観察の対象物である包埋された生体試料を表面に露出させる装置である。このように、すくい角θを付けた状態で包埋ブロックBを薄切することで、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【0019】
なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Nによってブロック状(直方体形状)に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。また、本実施形態では、包埋ブロックBが箱状に形成されたカセットK上に固定されているものとして説明する。
【0020】
図2,3は自動薄切装置の概略構成図であり、図2は側面図、図3は平面図である。
図2,3に示すように、本実施形態の自動薄切装置10は、包埋ブロックBが固定されたカセットKを水平面(XY平面)と平行に載置する載置面11を有するステージ12と、包埋ブロックBの表層部分を切削する切断刃13と、ステージ12の載置面11と直交するZ方向にステージ12を相対移動させる圧電素子等の移動手段(不図示)と、Z方向における包埋ブロックBの位置(高さ)を検出するセンサ20と、自動薄切装置10を統括的に制御する制御部(不図示)とを備えている。
【0021】
ステージ12は、制御部に制御された移動手段の作動によりZ方向に移動可能に構成されており、その上面はカセットKが載置される載置面11を構成している。この載置面11は、その面方向が水平方向(XY平面)と一致しており、包埋ブロックBを上方に向けた状態でカセットKを水平保持できるように構成されている。したがって、ステージ12の高さ(Z方向)を調整することで、切断刃13により薄切される薄切片の厚みを調整することができる。なお、図2,3に示すステージ12はZ方向における下端位置、すなわちステージ12の初期位置(基準位置)に位置している。なお、ステージ12は、Z軸回りの回転と、X軸回り及びY軸回りの傾きとが自在に調整可能とされた多軸のステージ12となっており、包埋ブロックBの姿勢を自在にコントロールして、包埋ブロックBの向きや傾き等を所望する状態に設定することが可能とされている。
【0022】
切断刃13は、一端側が刃先13aとされた長尺な磁性体の切断刃13であり、ステージ12の斜め上方において、載置面11に平行なXY平面に対して所定のすくい角が付いた状態で配置されている。具体的には、初期位置にあるステージ12に対してZ方向における上方であって、XY平面においてステージ12のX方向における側方に配置されている。また、切断刃13は、その長手方向がステージ12(包埋ブロックB)のZ方向の表面における一辺と交差する方向に延在している。
【0023】
切断刃13は、モータ等の図示しない駆動手段により、XY平面上においてX軸に対して所定の角度が付いた状態(切断刃13の短手方向に沿う方向)で往復移動可能に構成されている(図3中矢印参照)。この時、切断刃13の往復移動時において、切断刃13の刃先13aはステージ12の載置面11の面方向(XY平面)と平行に走行することになり、刃先13aの走行する面内が刃先13aの走行面となっている。つまり、刃先13aの走行面は載置面11の面方向と平行であり、刃先13の走行面に包埋ブロックBの表層が存在する場合に、載置面11上に載置された包埋ブロックBがXY平面と平行に薄切されるようになっている。この時、切断刃13の長手方向とステージ12のY方向に沿う一辺と交差する方向に延在しているため、切断時には包埋ブロックBのXY平面における角部から刃先が入り込んでいくようになっている。
【0024】
なお、上述したステージ12は、その内部に図示しない圧電素子等の移動手段が組み込まれており、電圧が印加されることで鉛直なZ方向に一定量上昇するように高さ制御されている。この際、ステージ12は、切断刃13が1往復する毎に、一定量(例えば、10μm程度)だけ上昇するように制御されている。これにより包埋ブロックBは、切断刃13の移動に伴ってZ方向上方に向けて移動して、切断刃13によって切断されるようになっている。この際、ステージ12によって高さ制御されているので、所定の厚みで表面が薄切される。なお、切断刃13の往復移動と、往復移動に同期したステージ12の上昇とによって包埋ブロックBの表層部分を次々と薄切することが可能である。なお、移動手段はモータ等で構成してもよい。
【0025】
ここで、センサ20は、Z方向において切断刃13の走行面から下方に所定間隔オフセットした状態で配置されており、XY平面に沿ってレーザ光Lを出射する投光部21と、Z方向から見てレーザ光Lの光路上において包埋ブロックBを間に挟んで配置され、投光部21から出射されたレーザ光Lを受光する受光部22とを備えている。すなわち、投光部21及び受光部22は、Z方向において切断刃13と初期位置におけるステージ12の載置面11との間に配置されるとともに、平面視において載置面11を間に挟むように配置されている。具体的には、投光部21及び受光部22は載置面11を間に挟んで、包埋ブロックBのZ方向の表面における対角線の延長線上に配置されている。
【0026】
したがって、投光部21から出射されるレーザ光Lは、包埋ブロックBのZ方向の表面における対角線上を通過するように構成されている。センサ20は、受光部22により投光部21から出射されたレーザ光Lを受光している状態でON状態となる一方、レーザ光Lが包埋ブロックBにより遮蔽され、受光部22がレーザ光Lを受光していない状態でOFF状態となって、Z方向における包埋ブロックBの表面の位置を検出するものである。なお、投光部21から出射されるレーザは、ビーム径が比較的小さく、かつ発散角の小さい赤外レーザ等からなるレーザが好適に用いられている。
【0027】
レーザ光Lの光路上における出射端側、すなわち平面視において投光部21とステージ12との間には、ビーム絞り25が配置されている。このビーム絞り25は、投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を縮小するためのものであり、レーザ光Lを遮蔽する遮蔽板25aと、投光部21から出射されるレーザ光Lが通過する微小の開口25bとで構成されている。
【0028】
ビーム絞り25では、包埋ブロックBのZ方向の表面における中心部(対角線の交点)を通過時におけるビーム径Dが50μm以上1000μm以下となるように、レーザ光Lを絞ることが好ましい。ビーム径Dが50μm未満であると、開口25bにおいてレーザ光Lの回折が広がる影響に加え、受光量が減少して外乱光の影響を受ける可能性があるため好ましくない。一方、ビーム径Dが1000μmより大きいと、受光部22によりレーザ光Lを受光する際、上述したように包埋ブロックBの表面で反射するレーザ光が多く、レーザ光Lの発散角(放射角)が拡大され、受光部22により検出されるレーザ光Lの光量の微小な変化を検出できないため好ましくない。これに対して、包埋ブロックBのZ方向の表面における中心部を通過する際のビーム径を50μm以上1000μm以下に設定することで、レーザ光Lの回折を抑えることができるとともに、包埋ブロックBの表面における反射光の検出を防ぐことができるため、投光部21と受光部22との間に包埋ブロックBが介在した時点で即座にレーザ光Lが遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックBの表面位置を検出することができる。
【0029】
一方、レーザ光Lの光路上における入射端側、すなわち平面視において受光部22とステージ12との間には、発散角制限絞り26が配置されている。この発散角制限絞り26は、投光部21から出射されたレーザ光Lを受光部22により受光する前段でレーザ光Lのビーム径を上述したビーム径と同等に絞るものである。発散角制限絞り26は、レーザ光Lを遮蔽する遮蔽板26aと、レーザ光Lが通過する微小の開口26bとで構成されている。このように、包埋ブロックBへの入射時と受光部22への受光時に上述のようなビーム径になるように調整するためには、投光部21におけるレーザの発散角、ビーム径、包埋ブロックBの中心部から投光部21及び受光部22間の距離、ビーム絞り25及び発散角制限絞り26の位置、開口25b,26bの径等のパラメータを設定することで調整することができる。
【0030】
(包埋ブロックの高さ検出方法)
次に、包埋ブロックの高さ検出方法(ステージの高さ調整方法)について説明する。図4は、包埋ブロックの高さ検出方法を示すフローチャートである。図5〜7は、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
図2,4に示すように、まずステップS1において、ステージ12の載置面11に包埋ブロックBが固定されたカセットKを載置した状態で、ステージ12の高速サーチを開始する。具体的には、制御部の指示によって移動手段を作動させステージ12を初期位置からZ方向上方に向けて高速で上昇させる。なお、ステップS1における「高速」とは、後述する低速サーチ時におけるステージ12の上昇速度よりも2倍〜5倍程度速い速度とする。
【0031】
次に、ステップS2において、センサ20がON状態であるか否かを判定する。センサ20のON状態とは、投光部21から出射されたレーザ光Lが受光部22により検出されている状態である。一方、センサ20のOFF状態とは、ステージ12が上昇して包埋ブロックBが投光部21から出射されたレーザ光Lの光路上を垂直に横切ることで、レーザ光Lを遮蔽して受光部22によりレーザ光Lを検出できない状態である。すなわち、包埋ブロックBが、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向上方へ突出したか否かを判定する。
【0032】
ステップS2における判定結果が「YES」である場合、すなわち包埋ブロックBによりレーザ光Lが遮蔽されていない場合、包埋ブロックBの表層部分が、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向における下方にあると判断する。この場合、ステージ12を引き続きZ方向に上昇させ続け、包埋ブロックBがレーザ光Lを横切るまでステップS2のフローを繰り返す。
一方、ステップS2における判定結果が「NO」の場合、すなわち図5に示すように、包埋ブロックBがレーザ光Lを横切り、レーザ光Lを遮蔽することで包埋ブロックBが、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向上方へ突出したと判断する。そして、ステップS3に進む。
【0033】
次に、ステップS3において、制御部の指示によって移動手段を停止してステージ12の高速サーチを停止させる。この時点で、包埋ブロックBはZ方向において最も高い上端位置(第2位置)にある。なお、この上端位置は、高速サーチ時において、センサ20によりOFF状態を検出してからステージ12が停止した位置であり、具体的には包埋ブロックBがレーザ光Lの通過面となるXY平面上からZ方向へ約0.5mm程度突出した位置である。
【0034】
そして、ステップS4において、制御部の指示によって移動手段を再始動させ、ステージ12を上端位置(図5参照)から再びZ方向において所定量下降させる。具体的には、図6に示すように、包埋ブロックBのレーザ光Lの通過面となるXY平面からの突出量が0.5mm程度の場合には、ステージ12を上端位置から1mm程度Z方向へ下降させる。これにより、投光部21から出射されたレーザ光Lが再び受光部22まで行き届き、センサ20が再びON状態となる。なお、この時点におけるステージ12のZ方向における位置は、初期位置(図2参照)と上端位置(図5参照)との間の下降位置(第2位置)にある。
【0035】
次に、ステップS5において、制御部の指示によってステージ12の低速サーチを開始する。具体的には、図7に示すように、移動手段を作動させて上述した下降位置(図6参照)から再びステージ12をZ方向上方に向けて移動させる。なお、低速サーチとは上述したステップS1の高速サーチにおける上昇速度の1/2〜1/5程度に抑えることが好ましい。
【0036】
次に、ステップS6において、上述したステップS2と同様に、センサがON状態であるか否かを判定する。
【0037】
ところで、面出し(粗削り)を行う前の包埋ブロックBの表層部分には凹凸や傾斜面等が存在している場合があり、包埋ブロックの表層部分における頂部を検出し難い。具体的には、図11に示すように薄切包埋ブロック100’の表層部分に傾斜面103が形成されている場合、包埋ブロック100’の表層部分に入射するレーザ光L’は、包埋ブロック100’により遮蔽されずに傾斜面103で反射する。そして、受光部102で受光されるレーザ光L’は、投光部101から直進してきたレーザ光と、傾斜面103で反射したレーザ光が受光される。その結果、投光部101から出射されたレーザ光L’の光量D1’と、センサの受光部102で受光されたレーザ光L’の光量D2と’との変化が少なく、正確な光量の変化を検出できないため、包埋ブロック100’の正確な高さを検出することができず、包埋ブロック100’を所定の位置で停止させることができない。
【0038】
ここで、図8,9は包埋ブロックとセンサとの関係を示す説明図であり、図8は包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合、図9は傾斜面を有する場合を示している。
図8に示すように、包埋ブロックBの表層部分が平坦面の場合には、ステージ12(図2参照)を上昇させていくと、センサ20の投光部21から出射されたレーザ光Lは、包埋ブロックBの表層部分に遮蔽される。これにより、受光部22によりレーザ光Lが受光部22により検出されなくなり、センサ20がOFF状態となる。
【0039】
一方、図9に示すように、包埋ブロックBの表層部分に傾斜面50が形成されている場合、ステージ12が上昇して包埋ブロックBの傾斜面50における頂部50aがレーザ光Lの光路上に差し掛かる。これにより、頂部50aによってレーザ光が遮光されていく。これに対して、傾斜面50がレーザ光Lの光路上に侵入すると、レーザ光Lが傾斜面50において反射するため、レーザ光Lの発散角が拡大される。この時、受光部22と包埋ブロックBとの間に、発散角制限絞り26が配置されているため、傾斜面50で反射したレーザ光Lは遮蔽板26aに遮蔽されて受光部22まで行き届かないようになっている。つまり、受光部22には、投光部21から直線的に進んできた発散角が小さいレーザ光Lのみが入射するように構成されている。そのため、頂部50aによりレーザ光Lが遮蔽された時点でレーザ光が遮蔽され、センサ20がOFF状態となる。
【0040】
そして、ステップS6の判定結果が「YES」の場合、すなわち包埋ブロックBによりレーザ光Lが遮蔽されていない場合、包埋ブロックBの表層部分が、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向における下方にあると判断する。この場合、ステージ12を引き続き低速で上昇させ続け、包埋ブロックBがレーザ光Lを横切るまでステップS6のフローを繰り返す。
一方、ステップS6における判定結果が「NO」の場合、すなわち包埋ブロックBがレーザ光Lを横切り、レーザ光Lを遮蔽することで包埋ブロックBの表層部分が、レーザ光Lの通過面となるXY平面上に到達したと判断する。そして、ステップS7に進む。
【0041】
そして、ステップS7において、制御部の指示によって移動手段を停止してステージ12の低速サーチを停止させる。これにより、ステージ12を目標位置で停止することができる。
最後に、ステップS8において、センサ20と切断刃13との間の隙間分だけステージ12を移動させる。つまり、上述したように切断刃13の刃先13aの走行面となるXY平面とレーザ光Lの通過面となるXY平面とはZ方向において予め所定間隔オフセットされているため、このオフセット分だけステージ12を上昇させた位置が、包埋ブロックBの切断位置となる。なお、本実施形態の切断位置は、刃先13aの走行面より30μm程度Z方向下方に設定することが好ましい。切断位置を刃先13aの走行面と一致させると、ステージ12の高さ調整に誤差が生じていた場合等に、1往復目(切り始め)に薄切される薄切片が厚くなり所望の断面とともに切断してしまう虞がある。一方、切断開始位置を刃先13aの走行面より余りにも離れた位置に設定すると、切断刃13の空振り状態が長く続いて包埋ブロックBの表層が薄切されるまでに長い時間を要する。これらに対して、切断開始位置は、刃先13aの走行面より30μm程度下方に設定することで、切断刃13が3往復程度(3回程度空振る程度)した後に包埋ブロックBの表層部分を薄切し始める。これにより、確実に包埋ブロックBの頂部50aから薄切を開始することができるとともに、切り始めにおいて薄切片の厚みを抑えた上で、切り始めまでの時間を短縮することができる。
【0042】
このように、本実施形態では、投光部21と包埋ブロックBとの間に、投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を絞るビーム絞り25を配置する構成とした。
この構成によれば、投光部21と包埋ブロックBとの間に、センサ20の投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を絞るビーム絞り25を配置することで、投光部21から出射されるビーム径を小さくすることができる。すなわち、投光部21から出射する光にレーザ光を用いるとともに、ビーム絞り25を配置してビーム径を小さくすることで、レーザ径が小さい絞られた光が包埋ブロックBの表面を通過することになる。そのため、包埋ブロックBの高さ調整時において、投光部21と受光部22との間に包埋ブロックBが介在した時点で即座にレーザ光Lが遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックBの位置を検出することができる。これにより、従来と異なり包埋ブロックBに触れることなく包埋ブロックBの位置を検出することができるため、生体試料Sが包埋された包埋剤Nの欠損や、破壊、生体試料の組織崩壊を防止することができる。
また、ラインセンサを用いた従来の構成に比べてビーム径が小さいので、包埋ブロックBがレーザ光を横切るとほぼ同時にレーザ光Lを遮蔽することができる。これにより、包埋ブロックBの表面(例えば、傾斜面50)において反射した反射光の受光を抑制することができるとともに、包埋ブロックBのXY平面の表層部分における頂部を高精度に検出することができるため、センサ20による検出誤差を小さくすることができる。
したがって、切断刃13の刃先13aの走行面と包埋ブロックBの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することができるため、切り始めから均一な厚さの薄切片を得ることができ、高精度な面出しが可能になる。また、切断刃13の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、受光部22で受光するレーザ光Lの発散角を規制する発散角制限絞り26が配置されているため、レーザ光Lの拡散や包埋ブロックBの表面(例えば、傾斜面50)での反射によりレーザ光Lの発散角が拡大した場合であっても、所定の範囲のレーザ光Lのみを受光部26へ供給することができる。そのため、レーザ光Lの誤検出を確実に防止することができる。これにより、包埋ブロックBのより高精度な位置検出が可能になる。
【0044】
ところで、包埋ブロックBの表面が一様に傾斜している場合には、その頂部50aは角部(対角線の端部)に位置する。そこで、包埋ブロックBのXY平面における対角線の延長線上に投光部21及び受光部22を配置することで、包埋ブロックBの頂部50aを確実に検出することができる。また、包埋ブロックBの表層部分における一方向(例えば、X方向)上のみならず一方向に直交する他方向(例えば、Y方向)を複合した線上のZ方向における位置を検出することができるため、包埋ブロックBのXY平面の表層部分における頂部(例えば、頂部50a)を高精度に検出することができる。したがって、包埋ブロックBの位置調整を高精度に行うことができる。
【0045】
また、ビーム径を縮小することでレーザ光を遮蔽する瞬間を確実に検出するためには、ステージと切断刃とを比較的低速で相対移動させなければならない。そのため、包埋ブロックの位置調整に時間がかかる場合がある。
これに対して、本実施形態によれば、まず始めにレーザ光Lの光路上を横切りセンサがOFF状態となる上端位置までステージ12を比較的高速(高速サーチ)で移動させた後、再びセンサがON状態となる下降位置までステージ12を一旦戻す。これにより、ステージ12と切断刃13とを初期位置より近接させた下降位置まで比較的高速で移動することができる。
その後、下降位置からセンサ20が再びOFF状態となる目標位置に至るまでの間において、ステージ12を比較的低速で移動させる。これにより、低速サーチを行う区間は下降位置から目標位置の間の区間となるため、初期位置から目標位置までの区間を低速で移動させる場合に比べて、ステージ12を比較的低速で移動させる区間を短縮することができる。そのため、ビーム径を縮小した場合であっても包埋ブロックBの位置調整を正確、かつ迅速に行うことができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、包埋ブロックを間に挟んでXY平面における1つの対角線上に投光部と受光部とからなる1組のセンサを配置する構成について説明したが、これに限らず2組のセンサを用いて包埋ブロックのXY平面におけるそれぞれ一対の対角線上に配置する構成も可能である。これにより、より確実に包埋ブロックの頂部の高さを検出することができるため、より均一な厚さの薄切片を得ることができ、高精度な面出しが可能になる。
【0047】
また、上述の実施形態では、包埋ブロックがレーザ光を横切る位置までステージを高速で上昇させて、下端位置まで戻した後にステージを低速で上昇させてステージの高さ調整を行ったが、これ限らずステージを下降させる際にステージの高さ調整を行う構成にしてもよい。つまり、レーザ光が遮蔽された上端位置からステージを低速で下降させ、再び受光部によりレーザ光の検出が開始された位置をステージの目標位置として判別することができる。
また、上述の実施形態では、主として包埋ブロックBを粗削りする場合について説明したが、包埋ブロックBを3μm〜5μmの厚みで極薄にスライスする本削りを行う場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態における自動薄切装置により包埋ブロックを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における自動薄切装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態における自動薄切装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態における包埋ブロックの位置検出方法を示すフローチャートである。
【図5】図3に相当する自動薄切装置の概略構成図であり、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図6】図3に相当する自動薄切装置の概略構成図であり、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図7】図3に相当する自動薄切装置の概略構成図であり、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図8】包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合における包埋ブロックとセンサとの関係を示す説明図である。
【図9】包埋ブロックの表層部分が傾斜面を有する場合における包埋ブロックとセンサとの関係を示す説明図である。
【図10】包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合におけるラインセンサを用いた従来の包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図11】包埋ブロックの表層部分が傾斜面を有する場合におけるラインセンサを用いた従来の包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10…自動薄切装置 11…載置面 12…ステージ 13…切断刃 20…センサ 21…投光部 22…受光部 25…ビーム絞り 26…発散角制限絞り B…包埋ブロック L…レーザ光 N…包埋剤 S…生体試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動薄切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトーム(自動薄切装置)が一般的に知られている。薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片をスライドガラス等の基板上に固定させたものである。薄切片は、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックを上述した厚さで極薄に薄切して作製されたものである。また、包埋ブロックは、人体や実験動物等から取り出されてホルマリン固定された生体試料をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンで固めてブロック状に作製したものである。
自動薄切装置により薄切片を得るためには、まず包埋ブロックを自動薄切装置のステージにセットして、切断刃により厚さが例えば10μm程度に薄切する粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面を平滑にするとともに、実験や観察の対象物である包埋された生体試料を表面に露出(以下、面出しという)させる。この粗削りを終了した後、包埋ブロックを3μm〜5μmの厚みで極薄にスライスする本削りを行い、薄切片標本となる薄切片を得る。
【0003】
ところで、上述した包埋ブロックから厚さの均一な薄切片を得るためには、はじめに上述した粗削り工程において包埋ブロックの表層部分に形成された凹凸や傾斜面等を薄切し、包埋ブロックの表面を平滑にして面出しを行う必要がある。包埋ブロックの面出しを行うには、まずステージ上にセットされた包埋カセットの表層とミクロトームの切断刃の刃先との相対位置を調整する。そして、切断刃の刃先と包埋ブロックの表層との相対位置が決定された時点で、切断刃の刃先をステージの表面に沿わせて往復移動させることで包埋ブロックの表層部分が薄切される。その後、切断刃を作動させた状態で、ステージを徐々に上昇させることで連続的に薄切が行われ、包埋ブロックの表面を平滑にして面出しを行うことができる。
【0004】
また、包埋ブロックの面出しを行う際には、包埋カセットの表層と切断刃の刃先の走行面との相対位置が重要となる。万が一、包埋カセットの表層と切断刃の刃先の走行面とがラップしすぎると、薄切される薄切片が厚くなり生体試料を所望の断面とともに切断してしまう虞がある。一方、包埋ブロックの表層と切断刃の刃先の走行面との相対位置が余りにも離れた位置から切断刃を作動させると、切断刃の空振り状態が長く続いて包埋ブロックの表層が薄切されるまでに長い時間を要するため、作業効率が悪いという問題がある。
【0005】
そこで、例えば特許文献1では、傾動可能なステージ上に包埋ブロックを載置し、ロードセルを介して支持された基準面を包埋ブロックの試料面に対して押し当てることで、包埋ブロックの試料面が基準面に対して平行な状態で保持する構成が開示されている。
また、例えば特許文献2では、受光部及び投光部を有するラインセンサを備え、受光部により受光されるレーザの光量の変化から、包埋ブロックによるレーザの遮光量を算出し、包埋ブロックの位置(高さや傾斜角度)の検出を行う構成が開示されている。
【特許文献1】特許3656005号
【特許文献2】特開2008−76251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、包埋ブロックの試料面に対して基準面を直接押し付ける構成であるため不衛生である。また、包埋ブロックに包埋された生体試料に影響が及ぶ可能性がある。具体的には、生体試料が包埋されたパラフィンの欠損や、破壊、また包埋ブロックが押し付けられることにより生体試料の組織崩壊に繋がる可能性がある。
【0007】
図10、11は上述した特許文献2のように、ラインセンサを用いた従来の包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図であり、図10は包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合、図11は傾斜面を有する場合を示している。
図10に示すように、包埋ブロック100の表層部分が平坦面の場合には、センサと包埋ブロックとの相対位置を接近させていくと、センサの投光部101から出射されたレーザ光L’は、包埋ブロック100の表層部分に一部が遮蔽される。これにより、投光部101から出射されたレーザ光L’の光量(ビーム幅)D1と、センサの受光部102で受光されたレーザ光L’の光量D2とが変化する(D1>D2)。その結果、包埋ブロック100の位置を検出することができ、包埋ブロック100と切断刃(不図示)との相対位置を調整することができる。
一方、図11に示すように、例えば包埋ブロック100’の表層部分に傾斜面103が形成されている場合、包埋ブロック100’の表層部分に入射するレーザ光L’は、包埋ブロック100’により遮蔽されずに傾斜面103で反射する。そして、受光部102では、投光部101から直進してきたレーザ光と、傾斜面103で反射したレーザ光とが受光される。その結果、投光部101から出射されたレーザ光L’の光量D1’と、センサの受光部102で受光されたレーザ光L’の光量D2’との変化が少なく、正確な光量の変化を検出できないため、包埋ブロック100’の正確な高さを検出することができず、包埋ブロック100’を所定の位置で停止させることができない。
【0008】
つまり、特許文献2の構成では、包埋ブロックの表面で反射したレーザ光も受光部で受光する虞があり、包埋ブロックにより遮蔽された正確な遮蔽量を検出することができず、実際の遮蔽量と検出された遮蔽量との間で誤差が生じるという問題がある。また、ラインセンサは比較的レーザ幅が広いため、微小な光量の変化を検出できず、包埋ブロックの高さ調整の精度が不十分である。
【0009】
そこで、本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、切断刃の刃先の走行面と包埋ブロックの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することで、良好な薄切片を取り出すことができるとともに、切断刃の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる自動薄切装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る自動薄切装置は、生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置において、前記包埋ブロックを載置するXY平面と平行な載置面を有するステージと、刃先を前記XY平面に沿って走行させ、前記包埋ブロックの表層を前記XY平面と平行に薄切する切断刃と、前記XY平面に直交するZ方向に前記ステージを移動させる移動手段と、前記Z方向における前記包埋ブロックの表面の位置を検出するセンサとを備え、前記センサは、前記XY平面に沿ってレーザ光を出射する投光部と、前記レーザ光の光路上において前記包埋ブロックを間に挟んで配置され、前記投光部から出射された前記レーザ光を受光する受光部とを備え、前記センサは、前記移動手段により前記ステージが前記Z方向に移動し、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して、前記受光部が前記レーザ光を受光しなくなったときに、前記包埋ブロックの表面の位置を検出し、前記投光部と前記包埋ブロックとの間には、前記投光部から出射された前記レーザ光のビーム径を絞るビーム絞りが配置されていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、投光部と包埋ブロックとの間に、投光部から出射されたレーザ光のビーム径を絞るビーム絞りを配置することで、投光部から出射されるビーム径を小さくすることができる。すなわち、投光部から出射する光にレーザ光を用いるとともに、ビーム絞りを配置してビーム径を小さくすることで、包埋ブロックの表面にはレーザ径が小さい絞られた光が通過することになる。そのため、移動手段により包埋ブロックを移動させ、投光部と受光部との間に包埋ブロックが介在した時点で即座にレーザ光が遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックの位置を検出することができる。
これにより、従来と異なり包埋ブロックに触れることなく包埋ブロックの位置を検出することができるため、生体試料が包埋された包埋剤の欠損や、破壊、生体試料の組織崩壊を防止することができる。
また、ラインセンサを用いた従来の構成に比べてビーム径が小さいので、包埋ブロックがレーザ光を横切るとほぼ同時にレーザ光を遮蔽することができる。これにより、包埋ブロックの表面において反射した反射光の受光を抑制することができるとともに、包埋ブロックのXY平面の表層部分における頂部を高精度に検出することができるため、センサによる検出誤差を小さくすることができる。
したがって、切断刃の刃先の走行面と包埋ブロックの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することができるため、切り始めから均一な厚さの薄切片を得ることができるとともに、切断刃の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における中心部を通過する際の前記レーザ光のビーム径は、50μm以上1000μm以下に設定されていることを特徴としている。
ビーム径を50μm未満に設定すると、ビーム絞りにおいてレーザ光の回折が広がる影響に加え、受光量が減少して外乱光の影響を受ける可能性があるため好ましくない。一方、ビーム径を1000μmより大きく設定すると、受光部によりレーザ光を受光する際、上述したように包埋ブロックの表面で反射するレーザ光が多く、受光部により検出されるレーザ光の光量の微小な変化を検出できないため好ましくない。
これに対して、包埋ブロックへのZ方向の表面における中心部を通過する際のビーム径を50μm以上1000μm以下に設定することで、レーザ光の回折を抑えることができるとともに、包埋ブロック表面における反射光の検出を防ぐことができるため、投光部と受光部との間に包埋ブロックが介在した時点で即座にレーザ光が遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックの位置を検出することができる。したがって、包埋ブロックの表面位置を高精度に検出することが可能になる。
【0013】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記包埋ブロックは前記Z方向から見て矩形状に形成され、前記投光部及び前記受光部は、前記包埋ブロックを間に挟んで前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における対角線の延長線上に配置されていることを特徴としている。
包埋ブロックの表面が一様に傾斜している場合には、その頂部は角部(対角線の端部)に位置する。そこで、包埋ブロックのZ方向表面における対角線の延長線上に投光部及び受光部を配置することで、包埋ブロックの頂部を確実に検出することができる。また、包埋ブロックの表層部分における一方向(例えば、X方向)上のみならず一方向に直交する他方向(例えば、Y方向)を複合した線上のZ方向における位置を検出することができるため、包埋ブロックのZ方向の表層部分における頂部を高精度に検出することができる。したがって、包埋ブロックの位置調整を高精度に行うことができる。
【0014】
また、本発明に係る自動薄切装置は、一対の前記センサが、前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における一対の対角線の延長線上に配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、一対のセンサを包埋ブロックのZ方向の表面におけるそれぞれ一対の延長線上に配置することで、より確実に包埋ブロックの頂部の高さを検出することができるため、より均一な厚さの薄切片を得ることができ、高精度な面出しが可能になる。
【0015】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記受光部と前記包埋ブロックとの間には、前記受光部で受光する前記レーザ光の発散角を規制する発散角制限絞りが配置されていることを特徴としている。
この構成によれば、レーザ光の拡散や包埋ブロックの表面での反射によりレーザ光の発散角が拡大した場合であっても、所定の範囲のレーザ光のみを受光部へ供給することができるため、レーザ光の誤検出を確実に防止することができる。これにより、包埋ブロックのより高精度な位置検出が可能になる。
【0016】
また、本発明に係る自動薄切装置は、前記センサは、前記受光部が前記レーザ光を受光している状態でON状態となる一方、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して前記受光部が前記レーザ光を受光していない状態でOFF状態となり、前記移動手段は、まず、前記ステージを基準位置から、前記センサがOFF状態となる第1位置まで移動させ、次に、前記ステージを前記第1位置から、前記基準位置と前記第1位置との間で前記センサがON状態となる第2位置まで移動させ、次に、前記ステージを前記第2位置から、前記第2位置と前記第1位置との間で前記センサがOFF状態となる目標位置まで移動させ、前記第2位置から前記目標位置までの間の前記ステージの移動速度は、前記基準位置から前記第1位置までの間の前記ステージの移動速度より遅く設定されていることを特徴としている。
ところで、ビーム径を縮小することでレーザ光を遮蔽する瞬間を確実に検出するためには、ステージを比較的低速で移動させなければならない。そのため、包埋ブロックの位置調整に時間がかかる場合がある。
これに対して、本発明に係る構成によれば、まず始めにレーザ光の光路上を横切りセンサがOFF状態となる第1位置までステージを比較的高速で移動させた後、再びセンサがON状態となる第2位置までステージの位置を一旦戻す。これにより、ステージと切断刃とを基準位置より目標位置に近接させた第2位置まで比較的高速で相対移動することができる。
その後、第2位置からセンサが再びOFF状態となる目標位置に至るまでの間において、ステージを比較的低速で相対移動させる。これにより、比較的低速でステージを移動させる区間は第2位置から目標位置の間の区間となるため、基準位置から目標位置までの全区間を低速で移動させる場合に比べて、ステージを比較的低速で移動させる区間を短縮することができる。そのため、ビーム径を縮小した場合であっても包埋ブロックの位置調整を正確、かつ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る自動薄切装置によれば、投光部と包埋ブロックとの間に、投光部から出射されたレーザ光のビーム径を絞るビーム絞りを配置することで、投光部から出射されるビーム径を小さくすることができる。すなわち、投光部から出射する光にレーザ光を用いるとともに、ビーム絞りを配置してビーム径を小さくすることで、包埋ブロックの表面にはレーザ径が小さい絞られた光が通過することになる。そのため、移動手段により包埋ブロックを移動させ、投光部と受光部との間に包埋ブロックが介在した時点で即座にレーザ光が遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックの位置を検出することができる。
これにより、従来と異なり包埋ブロックに触れることなく包埋ブロックの位置を検出することができるため、生体試料が包埋された包埋剤の欠損や、破壊、生体試料の組織崩壊を防止することができる。
また、ラインセンサを用いた従来の構成に比べてビーム径が小さいので、包埋ブロックがレーザ光を横切るとほぼ同時にレーザ光を遮蔽することができる。これにより、包埋ブロックの表面において反射した反射光の受光を抑制することができるとともに、包埋ブロックのXY平面の表層部分における頂部を高精度に検出することができるため、センサによる検出誤差を小さくすることができる。
したがって、切断刃の刃先の走行面と包埋ブロックの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することができるため、切り始めから均一な厚さの薄切片を得ることができるとともに、切断刃の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(自動薄切装置)
図1は包埋ブロックを示す斜視図である。
自動薄切装置10(図2参照)は、図1に示すように、生体試料Sが包埋剤Nによって包埋された包埋ブロックBを、所定のすくい角が付いた状態で薄切(例えば、10μm程度に薄切)して包埋ブロックBの表面を平滑にするとともに、実験や観察の対象物である包埋された生体試料を表面に露出させる装置である。このように、すくい角θを付けた状態で包埋ブロックBを薄切することで、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【0019】
なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Nによってブロック状(直方体形状)に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。また、本実施形態では、包埋ブロックBが箱状に形成されたカセットK上に固定されているものとして説明する。
【0020】
図2,3は自動薄切装置の概略構成図であり、図2は側面図、図3は平面図である。
図2,3に示すように、本実施形態の自動薄切装置10は、包埋ブロックBが固定されたカセットKを水平面(XY平面)と平行に載置する載置面11を有するステージ12と、包埋ブロックBの表層部分を切削する切断刃13と、ステージ12の載置面11と直交するZ方向にステージ12を相対移動させる圧電素子等の移動手段(不図示)と、Z方向における包埋ブロックBの位置(高さ)を検出するセンサ20と、自動薄切装置10を統括的に制御する制御部(不図示)とを備えている。
【0021】
ステージ12は、制御部に制御された移動手段の作動によりZ方向に移動可能に構成されており、その上面はカセットKが載置される載置面11を構成している。この載置面11は、その面方向が水平方向(XY平面)と一致しており、包埋ブロックBを上方に向けた状態でカセットKを水平保持できるように構成されている。したがって、ステージ12の高さ(Z方向)を調整することで、切断刃13により薄切される薄切片の厚みを調整することができる。なお、図2,3に示すステージ12はZ方向における下端位置、すなわちステージ12の初期位置(基準位置)に位置している。なお、ステージ12は、Z軸回りの回転と、X軸回り及びY軸回りの傾きとが自在に調整可能とされた多軸のステージ12となっており、包埋ブロックBの姿勢を自在にコントロールして、包埋ブロックBの向きや傾き等を所望する状態に設定することが可能とされている。
【0022】
切断刃13は、一端側が刃先13aとされた長尺な磁性体の切断刃13であり、ステージ12の斜め上方において、載置面11に平行なXY平面に対して所定のすくい角が付いた状態で配置されている。具体的には、初期位置にあるステージ12に対してZ方向における上方であって、XY平面においてステージ12のX方向における側方に配置されている。また、切断刃13は、その長手方向がステージ12(包埋ブロックB)のZ方向の表面における一辺と交差する方向に延在している。
【0023】
切断刃13は、モータ等の図示しない駆動手段により、XY平面上においてX軸に対して所定の角度が付いた状態(切断刃13の短手方向に沿う方向)で往復移動可能に構成されている(図3中矢印参照)。この時、切断刃13の往復移動時において、切断刃13の刃先13aはステージ12の載置面11の面方向(XY平面)と平行に走行することになり、刃先13aの走行する面内が刃先13aの走行面となっている。つまり、刃先13aの走行面は載置面11の面方向と平行であり、刃先13の走行面に包埋ブロックBの表層が存在する場合に、載置面11上に載置された包埋ブロックBがXY平面と平行に薄切されるようになっている。この時、切断刃13の長手方向とステージ12のY方向に沿う一辺と交差する方向に延在しているため、切断時には包埋ブロックBのXY平面における角部から刃先が入り込んでいくようになっている。
【0024】
なお、上述したステージ12は、その内部に図示しない圧電素子等の移動手段が組み込まれており、電圧が印加されることで鉛直なZ方向に一定量上昇するように高さ制御されている。この際、ステージ12は、切断刃13が1往復する毎に、一定量(例えば、10μm程度)だけ上昇するように制御されている。これにより包埋ブロックBは、切断刃13の移動に伴ってZ方向上方に向けて移動して、切断刃13によって切断されるようになっている。この際、ステージ12によって高さ制御されているので、所定の厚みで表面が薄切される。なお、切断刃13の往復移動と、往復移動に同期したステージ12の上昇とによって包埋ブロックBの表層部分を次々と薄切することが可能である。なお、移動手段はモータ等で構成してもよい。
【0025】
ここで、センサ20は、Z方向において切断刃13の走行面から下方に所定間隔オフセットした状態で配置されており、XY平面に沿ってレーザ光Lを出射する投光部21と、Z方向から見てレーザ光Lの光路上において包埋ブロックBを間に挟んで配置され、投光部21から出射されたレーザ光Lを受光する受光部22とを備えている。すなわち、投光部21及び受光部22は、Z方向において切断刃13と初期位置におけるステージ12の載置面11との間に配置されるとともに、平面視において載置面11を間に挟むように配置されている。具体的には、投光部21及び受光部22は載置面11を間に挟んで、包埋ブロックBのZ方向の表面における対角線の延長線上に配置されている。
【0026】
したがって、投光部21から出射されるレーザ光Lは、包埋ブロックBのZ方向の表面における対角線上を通過するように構成されている。センサ20は、受光部22により投光部21から出射されたレーザ光Lを受光している状態でON状態となる一方、レーザ光Lが包埋ブロックBにより遮蔽され、受光部22がレーザ光Lを受光していない状態でOFF状態となって、Z方向における包埋ブロックBの表面の位置を検出するものである。なお、投光部21から出射されるレーザは、ビーム径が比較的小さく、かつ発散角の小さい赤外レーザ等からなるレーザが好適に用いられている。
【0027】
レーザ光Lの光路上における出射端側、すなわち平面視において投光部21とステージ12との間には、ビーム絞り25が配置されている。このビーム絞り25は、投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を縮小するためのものであり、レーザ光Lを遮蔽する遮蔽板25aと、投光部21から出射されるレーザ光Lが通過する微小の開口25bとで構成されている。
【0028】
ビーム絞り25では、包埋ブロックBのZ方向の表面における中心部(対角線の交点)を通過時におけるビーム径Dが50μm以上1000μm以下となるように、レーザ光Lを絞ることが好ましい。ビーム径Dが50μm未満であると、開口25bにおいてレーザ光Lの回折が広がる影響に加え、受光量が減少して外乱光の影響を受ける可能性があるため好ましくない。一方、ビーム径Dが1000μmより大きいと、受光部22によりレーザ光Lを受光する際、上述したように包埋ブロックBの表面で反射するレーザ光が多く、レーザ光Lの発散角(放射角)が拡大され、受光部22により検出されるレーザ光Lの光量の微小な変化を検出できないため好ましくない。これに対して、包埋ブロックBのZ方向の表面における中心部を通過する際のビーム径を50μm以上1000μm以下に設定することで、レーザ光Lの回折を抑えることができるとともに、包埋ブロックBの表面における反射光の検出を防ぐことができるため、投光部21と受光部22との間に包埋ブロックBが介在した時点で即座にレーザ光Lが遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックBの表面位置を検出することができる。
【0029】
一方、レーザ光Lの光路上における入射端側、すなわち平面視において受光部22とステージ12との間には、発散角制限絞り26が配置されている。この発散角制限絞り26は、投光部21から出射されたレーザ光Lを受光部22により受光する前段でレーザ光Lのビーム径を上述したビーム径と同等に絞るものである。発散角制限絞り26は、レーザ光Lを遮蔽する遮蔽板26aと、レーザ光Lが通過する微小の開口26bとで構成されている。このように、包埋ブロックBへの入射時と受光部22への受光時に上述のようなビーム径になるように調整するためには、投光部21におけるレーザの発散角、ビーム径、包埋ブロックBの中心部から投光部21及び受光部22間の距離、ビーム絞り25及び発散角制限絞り26の位置、開口25b,26bの径等のパラメータを設定することで調整することができる。
【0030】
(包埋ブロックの高さ検出方法)
次に、包埋ブロックの高さ検出方法(ステージの高さ調整方法)について説明する。図4は、包埋ブロックの高さ検出方法を示すフローチャートである。図5〜7は、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
図2,4に示すように、まずステップS1において、ステージ12の載置面11に包埋ブロックBが固定されたカセットKを載置した状態で、ステージ12の高速サーチを開始する。具体的には、制御部の指示によって移動手段を作動させステージ12を初期位置からZ方向上方に向けて高速で上昇させる。なお、ステップS1における「高速」とは、後述する低速サーチ時におけるステージ12の上昇速度よりも2倍〜5倍程度速い速度とする。
【0031】
次に、ステップS2において、センサ20がON状態であるか否かを判定する。センサ20のON状態とは、投光部21から出射されたレーザ光Lが受光部22により検出されている状態である。一方、センサ20のOFF状態とは、ステージ12が上昇して包埋ブロックBが投光部21から出射されたレーザ光Lの光路上を垂直に横切ることで、レーザ光Lを遮蔽して受光部22によりレーザ光Lを検出できない状態である。すなわち、包埋ブロックBが、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向上方へ突出したか否かを判定する。
【0032】
ステップS2における判定結果が「YES」である場合、すなわち包埋ブロックBによりレーザ光Lが遮蔽されていない場合、包埋ブロックBの表層部分が、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向における下方にあると判断する。この場合、ステージ12を引き続きZ方向に上昇させ続け、包埋ブロックBがレーザ光Lを横切るまでステップS2のフローを繰り返す。
一方、ステップS2における判定結果が「NO」の場合、すなわち図5に示すように、包埋ブロックBがレーザ光Lを横切り、レーザ光Lを遮蔽することで包埋ブロックBが、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向上方へ突出したと判断する。そして、ステップS3に進む。
【0033】
次に、ステップS3において、制御部の指示によって移動手段を停止してステージ12の高速サーチを停止させる。この時点で、包埋ブロックBはZ方向において最も高い上端位置(第2位置)にある。なお、この上端位置は、高速サーチ時において、センサ20によりOFF状態を検出してからステージ12が停止した位置であり、具体的には包埋ブロックBがレーザ光Lの通過面となるXY平面上からZ方向へ約0.5mm程度突出した位置である。
【0034】
そして、ステップS4において、制御部の指示によって移動手段を再始動させ、ステージ12を上端位置(図5参照)から再びZ方向において所定量下降させる。具体的には、図6に示すように、包埋ブロックBのレーザ光Lの通過面となるXY平面からの突出量が0.5mm程度の場合には、ステージ12を上端位置から1mm程度Z方向へ下降させる。これにより、投光部21から出射されたレーザ光Lが再び受光部22まで行き届き、センサ20が再びON状態となる。なお、この時点におけるステージ12のZ方向における位置は、初期位置(図2参照)と上端位置(図5参照)との間の下降位置(第2位置)にある。
【0035】
次に、ステップS5において、制御部の指示によってステージ12の低速サーチを開始する。具体的には、図7に示すように、移動手段を作動させて上述した下降位置(図6参照)から再びステージ12をZ方向上方に向けて移動させる。なお、低速サーチとは上述したステップS1の高速サーチにおける上昇速度の1/2〜1/5程度に抑えることが好ましい。
【0036】
次に、ステップS6において、上述したステップS2と同様に、センサがON状態であるか否かを判定する。
【0037】
ところで、面出し(粗削り)を行う前の包埋ブロックBの表層部分には凹凸や傾斜面等が存在している場合があり、包埋ブロックの表層部分における頂部を検出し難い。具体的には、図11に示すように薄切包埋ブロック100’の表層部分に傾斜面103が形成されている場合、包埋ブロック100’の表層部分に入射するレーザ光L’は、包埋ブロック100’により遮蔽されずに傾斜面103で反射する。そして、受光部102で受光されるレーザ光L’は、投光部101から直進してきたレーザ光と、傾斜面103で反射したレーザ光が受光される。その結果、投光部101から出射されたレーザ光L’の光量D1’と、センサの受光部102で受光されたレーザ光L’の光量D2と’との変化が少なく、正確な光量の変化を検出できないため、包埋ブロック100’の正確な高さを検出することができず、包埋ブロック100’を所定の位置で停止させることができない。
【0038】
ここで、図8,9は包埋ブロックとセンサとの関係を示す説明図であり、図8は包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合、図9は傾斜面を有する場合を示している。
図8に示すように、包埋ブロックBの表層部分が平坦面の場合には、ステージ12(図2参照)を上昇させていくと、センサ20の投光部21から出射されたレーザ光Lは、包埋ブロックBの表層部分に遮蔽される。これにより、受光部22によりレーザ光Lが受光部22により検出されなくなり、センサ20がOFF状態となる。
【0039】
一方、図9に示すように、包埋ブロックBの表層部分に傾斜面50が形成されている場合、ステージ12が上昇して包埋ブロックBの傾斜面50における頂部50aがレーザ光Lの光路上に差し掛かる。これにより、頂部50aによってレーザ光が遮光されていく。これに対して、傾斜面50がレーザ光Lの光路上に侵入すると、レーザ光Lが傾斜面50において反射するため、レーザ光Lの発散角が拡大される。この時、受光部22と包埋ブロックBとの間に、発散角制限絞り26が配置されているため、傾斜面50で反射したレーザ光Lは遮蔽板26aに遮蔽されて受光部22まで行き届かないようになっている。つまり、受光部22には、投光部21から直線的に進んできた発散角が小さいレーザ光Lのみが入射するように構成されている。そのため、頂部50aによりレーザ光Lが遮蔽された時点でレーザ光が遮蔽され、センサ20がOFF状態となる。
【0040】
そして、ステップS6の判定結果が「YES」の場合、すなわち包埋ブロックBによりレーザ光Lが遮蔽されていない場合、包埋ブロックBの表層部分が、レーザ光Lの通過面となるXY平面上よりZ方向における下方にあると判断する。この場合、ステージ12を引き続き低速で上昇させ続け、包埋ブロックBがレーザ光Lを横切るまでステップS6のフローを繰り返す。
一方、ステップS6における判定結果が「NO」の場合、すなわち包埋ブロックBがレーザ光Lを横切り、レーザ光Lを遮蔽することで包埋ブロックBの表層部分が、レーザ光Lの通過面となるXY平面上に到達したと判断する。そして、ステップS7に進む。
【0041】
そして、ステップS7において、制御部の指示によって移動手段を停止してステージ12の低速サーチを停止させる。これにより、ステージ12を目標位置で停止することができる。
最後に、ステップS8において、センサ20と切断刃13との間の隙間分だけステージ12を移動させる。つまり、上述したように切断刃13の刃先13aの走行面となるXY平面とレーザ光Lの通過面となるXY平面とはZ方向において予め所定間隔オフセットされているため、このオフセット分だけステージ12を上昇させた位置が、包埋ブロックBの切断位置となる。なお、本実施形態の切断位置は、刃先13aの走行面より30μm程度Z方向下方に設定することが好ましい。切断位置を刃先13aの走行面と一致させると、ステージ12の高さ調整に誤差が生じていた場合等に、1往復目(切り始め)に薄切される薄切片が厚くなり所望の断面とともに切断してしまう虞がある。一方、切断開始位置を刃先13aの走行面より余りにも離れた位置に設定すると、切断刃13の空振り状態が長く続いて包埋ブロックBの表層が薄切されるまでに長い時間を要する。これらに対して、切断開始位置は、刃先13aの走行面より30μm程度下方に設定することで、切断刃13が3往復程度(3回程度空振る程度)した後に包埋ブロックBの表層部分を薄切し始める。これにより、確実に包埋ブロックBの頂部50aから薄切を開始することができるとともに、切り始めにおいて薄切片の厚みを抑えた上で、切り始めまでの時間を短縮することができる。
【0042】
このように、本実施形態では、投光部21と包埋ブロックBとの間に、投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を絞るビーム絞り25を配置する構成とした。
この構成によれば、投光部21と包埋ブロックBとの間に、センサ20の投光部21から出射されたレーザ光Lのビーム径を絞るビーム絞り25を配置することで、投光部21から出射されるビーム径を小さくすることができる。すなわち、投光部21から出射する光にレーザ光を用いるとともに、ビーム絞り25を配置してビーム径を小さくすることで、レーザ径が小さい絞られた光が包埋ブロックBの表面を通過することになる。そのため、包埋ブロックBの高さ調整時において、投光部21と受光部22との間に包埋ブロックBが介在した時点で即座にレーザ光Lが遮蔽されることになり、この時点で包埋ブロックBの位置を検出することができる。これにより、従来と異なり包埋ブロックBに触れることなく包埋ブロックBの位置を検出することができるため、生体試料Sが包埋された包埋剤Nの欠損や、破壊、生体試料の組織崩壊を防止することができる。
また、ラインセンサを用いた従来の構成に比べてビーム径が小さいので、包埋ブロックBがレーザ光を横切るとほぼ同時にレーザ光Lを遮蔽することができる。これにより、包埋ブロックBの表面(例えば、傾斜面50)において反射した反射光の受光を抑制することができるとともに、包埋ブロックBのXY平面の表層部分における頂部を高精度に検出することができるため、センサ20による検出誤差を小さくすることができる。
したがって、切断刃13の刃先13aの走行面と包埋ブロックBの表層との相対位置を正確、かつ迅速に調整することができるため、切り始めから均一な厚さの薄切片を得ることができ、高精度な面出しが可能になる。また、切断刃13の空振り時間を短縮して作業効率を向上させることができる。
【0043】
また、受光部22で受光するレーザ光Lの発散角を規制する発散角制限絞り26が配置されているため、レーザ光Lの拡散や包埋ブロックBの表面(例えば、傾斜面50)での反射によりレーザ光Lの発散角が拡大した場合であっても、所定の範囲のレーザ光Lのみを受光部26へ供給することができる。そのため、レーザ光Lの誤検出を確実に防止することができる。これにより、包埋ブロックBのより高精度な位置検出が可能になる。
【0044】
ところで、包埋ブロックBの表面が一様に傾斜している場合には、その頂部50aは角部(対角線の端部)に位置する。そこで、包埋ブロックBのXY平面における対角線の延長線上に投光部21及び受光部22を配置することで、包埋ブロックBの頂部50aを確実に検出することができる。また、包埋ブロックBの表層部分における一方向(例えば、X方向)上のみならず一方向に直交する他方向(例えば、Y方向)を複合した線上のZ方向における位置を検出することができるため、包埋ブロックBのXY平面の表層部分における頂部(例えば、頂部50a)を高精度に検出することができる。したがって、包埋ブロックBの位置調整を高精度に行うことができる。
【0045】
また、ビーム径を縮小することでレーザ光を遮蔽する瞬間を確実に検出するためには、ステージと切断刃とを比較的低速で相対移動させなければならない。そのため、包埋ブロックの位置調整に時間がかかる場合がある。
これに対して、本実施形態によれば、まず始めにレーザ光Lの光路上を横切りセンサがOFF状態となる上端位置までステージ12を比較的高速(高速サーチ)で移動させた後、再びセンサがON状態となる下降位置までステージ12を一旦戻す。これにより、ステージ12と切断刃13とを初期位置より近接させた下降位置まで比較的高速で移動することができる。
その後、下降位置からセンサ20が再びOFF状態となる目標位置に至るまでの間において、ステージ12を比較的低速で移動させる。これにより、低速サーチを行う区間は下降位置から目標位置の間の区間となるため、初期位置から目標位置までの区間を低速で移動させる場合に比べて、ステージ12を比較的低速で移動させる区間を短縮することができる。そのため、ビーム径を縮小した場合であっても包埋ブロックBの位置調整を正確、かつ迅速に行うことができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、包埋ブロックを間に挟んでXY平面における1つの対角線上に投光部と受光部とからなる1組のセンサを配置する構成について説明したが、これに限らず2組のセンサを用いて包埋ブロックのXY平面におけるそれぞれ一対の対角線上に配置する構成も可能である。これにより、より確実に包埋ブロックの頂部の高さを検出することができるため、より均一な厚さの薄切片を得ることができ、高精度な面出しが可能になる。
【0047】
また、上述の実施形態では、包埋ブロックがレーザ光を横切る位置までステージを高速で上昇させて、下端位置まで戻した後にステージを低速で上昇させてステージの高さ調整を行ったが、これ限らずステージを下降させる際にステージの高さ調整を行う構成にしてもよい。つまり、レーザ光が遮蔽された上端位置からステージを低速で下降させ、再び受光部によりレーザ光の検出が開始された位置をステージの目標位置として判別することができる。
また、上述の実施形態では、主として包埋ブロックBを粗削りする場合について説明したが、包埋ブロックBを3μm〜5μmの厚みで極薄にスライスする本削りを行う場合にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態における自動薄切装置により包埋ブロックを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における自動薄切装置の概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態における自動薄切装置の概略構成図である。
【図4】本発明の実施形態における包埋ブロックの位置検出方法を示すフローチャートである。
【図5】図3に相当する自動薄切装置の概略構成図であり、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図6】図3に相当する自動薄切装置の概略構成図であり、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図7】図3に相当する自動薄切装置の概略構成図であり、包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図8】包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合における包埋ブロックとセンサとの関係を示す説明図である。
【図9】包埋ブロックの表層部分が傾斜面を有する場合における包埋ブロックとセンサとの関係を示す説明図である。
【図10】包埋ブロックの表層部分が平坦面の場合におけるラインセンサを用いた従来の包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【図11】包埋ブロックの表層部分が傾斜面を有する場合におけるラインセンサを用いた従来の包埋ブロックの位置検出方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0049】
10…自動薄切装置 11…載置面 12…ステージ 13…切断刃 20…センサ 21…投光部 22…受光部 25…ビーム絞り 26…発散角制限絞り B…包埋ブロック L…レーザ光 N…包埋剤 S…生体試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置において、
前記包埋ブロックを載置するXY平面と平行な載置面を有するステージと、
刃先を前記XY平面に沿って走行させ、前記包埋ブロックの表層を前記XY平面と平行に薄切する切断刃と、
前記XY平面に直交するZ方向に前記ステージを移動させる移動手段と、
前記Z方向における前記包埋ブロックの表面の位置を検出するセンサとを備え、
前記センサは、前記XY平面に沿ってレーザ光を出射する投光部と、前記レーザ光の光路上において前記包埋ブロックを間に挟んで配置され、前記投光部から出射された前記レーザ光を受光する受光部とを備え、
前記センサは、前記移動手段により前記ステージが前記Z方向に移動し、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して、前記受光部が前記レーザ光を受光しなくなったときに、前記包埋ブロックの表面の位置を検出し、
前記投光部と前記包埋ブロックとの間には、前記投光部から出射された前記レーザ光のビーム径を絞るビーム絞りが配置されていることを特徴とする自動薄切装置。
【請求項2】
前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における中心部を通過する際の前記レーザ光のビーム径は、50μm以上1000μm以下に設定されていることを特徴とする請求項1記載の自動薄切装置。
【請求項3】
前記包埋ブロックは前記Z方向から見て矩形状に形成され、
前記投光部及び前記受光部は、前記包埋ブロックを間に挟んで前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における対角線の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動薄切装置。
【請求項4】
一対の前記センサが、前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における一対の対角線の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項3記載の自動薄切装置。
【請求項5】
前記受光部と前記包埋ブロックとの間には、前記受光部で受光する前記レーザ光の発散角を規制する発散角制限絞りが配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の自動薄切装置。
【請求項6】
前記センサは、前記受光部が前記レーザ光を受光している状態でON状態となる一方、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して前記受光部が前記レーザ光を受光していない状態でOFF状態となり、
前記移動手段は、
まず、前記ステージを基準位置から、前記センサがOFF状態となる第1位置まで移動させ、
次に、前記ステージを前記第1位置から、前記基準位置と前記第1位置との間で前記センサがON状態となる第2位置まで移動させ、
次に、前記ステージを前記第2位置から、前記第2位置と前記第1位置との間で前記センサがOFF状態となる目標位置まで移動させ、
前記第2位置から前記目標位置までの間の前記ステージの移動速度は、前記基準位置から前記第1位置までの間の前記ステージの移動速度より遅く設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の自動薄切装置。
【請求項1】
生体試料が包埋された包埋ブロックを薄切する自動薄切装置において、
前記包埋ブロックを載置するXY平面と平行な載置面を有するステージと、
刃先を前記XY平面に沿って走行させ、前記包埋ブロックの表層を前記XY平面と平行に薄切する切断刃と、
前記XY平面に直交するZ方向に前記ステージを移動させる移動手段と、
前記Z方向における前記包埋ブロックの表面の位置を検出するセンサとを備え、
前記センサは、前記XY平面に沿ってレーザ光を出射する投光部と、前記レーザ光の光路上において前記包埋ブロックを間に挟んで配置され、前記投光部から出射された前記レーザ光を受光する受光部とを備え、
前記センサは、前記移動手段により前記ステージが前記Z方向に移動し、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して、前記受光部が前記レーザ光を受光しなくなったときに、前記包埋ブロックの表面の位置を検出し、
前記投光部と前記包埋ブロックとの間には、前記投光部から出射された前記レーザ光のビーム径を絞るビーム絞りが配置されていることを特徴とする自動薄切装置。
【請求項2】
前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における中心部を通過する際の前記レーザ光のビーム径は、50μm以上1000μm以下に設定されていることを特徴とする請求項1記載の自動薄切装置。
【請求項3】
前記包埋ブロックは前記Z方向から見て矩形状に形成され、
前記投光部及び前記受光部は、前記包埋ブロックを間に挟んで前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における対角線の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の自動薄切装置。
【請求項4】
一対の前記センサが、前記包埋ブロックの前記Z方向の表面における一対の対角線の延長線上に配置されていることを特徴とする請求項3記載の自動薄切装置。
【請求項5】
前記受光部と前記包埋ブロックとの間には、前記受光部で受光する前記レーザ光の発散角を規制する発散角制限絞りが配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の自動薄切装置。
【請求項6】
前記センサは、前記受光部が前記レーザ光を受光している状態でON状態となる一方、前記包埋ブロックが前記レーザ光を遮蔽して前記受光部が前記レーザ光を受光していない状態でOFF状態となり、
前記移動手段は、
まず、前記ステージを基準位置から、前記センサがOFF状態となる第1位置まで移動させ、
次に、前記ステージを前記第1位置から、前記基準位置と前記第1位置との間で前記センサがON状態となる第2位置まで移動させ、
次に、前記ステージを前記第2位置から、前記第2位置と前記第1位置との間で前記センサがOFF状態となる目標位置まで移動させ、
前記第2位置から前記目標位置までの間の前記ステージの移動速度は、前記基準位置から前記第1位置までの間の前記ステージの移動速度より遅く設定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の自動薄切装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−66006(P2010−66006A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−229761(P2008−229761)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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