説明

自動製パン器

【課題】焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供する。
【解決手段】自動製パン器1は、パン原料が投入されるパン容器70を本体10内に受け入れてパンの製造工程を実行可能である。自動製パン器1は、本体10内に設けられるモータ50、60と、パン容器70に取り付けられて、モータ50、60の駆動によって回転される回転軸72と、パン容器70内で回転軸72に被せられる筒状部材81と、を備える。回転軸72は、第1の直径を有する第1直径部D1と、第1直径部D1に挟まれるように設けられるとともに前記第1の直径より小さな第2の直径を有する第2直径部D2とを含み、回転軸72の筒状部材81が被せられる部分には、少なくとも2つの第1直径部D1と、少なくとも1つの第2直径部D2と、が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動製パン器に関し、特に穀物粒を出発原料としてパンを製造するのに好適な自動製パン器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用の自動製パン器を用いてパンの製造が行われる場合、パン原料として、小麦や米などの穀物を製粉した粉(小麦粉、米粉等)や、そのような製粉した粉に各種の補助原料が混ぜられたミックス粉が必要とされた。しかしながら、一般家庭においては、米粒に代表されるように、粉の形態ではなく粒の形態で穀物が所持されることがある。このために、自動製パン器が穀物粒から直接パンを製造する仕組みを有すれば、非常に便利である。このようなことを念頭において、本出願人らは、穀物粒を出発原料としてパンを製造するパンの製造方法を開発している(特許文献1参照)。
【0003】
このパンの製造方法では、まず、穀物粒と液体とが混合され、この混合物の中で粉砕ブレードが回転されて穀物粒が粉砕される(粉砕工程)。そして、粉砕工程を経て得られたペースト状の粉砕粉を含むパン原料が、混練ブレードを用いてパン生地に練り上げられる(練り工程)。その後、練り上げられたパン生地を発酵させる発酵工程が行われ、続いてパンを焼き上げる焼成工程が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−35476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人らは、上述した穀物粒を出発原料としてパンを製造する方法を実行可能な、新しい仕組みを備えた自動製パン器の開発を行ってきた。この中で、本出願人らは、例えば、粉砕ブレードと混練ブレードとの使い分けが可能な1つのブレードユニットを、パン容器に設けられる回転軸に着脱自在に取り付ける構成の自動製パン器の提案を行っている(特願2010−040564号)。この構成では、ブレードユニットが備えるユニット用シャフト(筒状部材)がパン容器の回転軸に被せられることによって、ブレードユニットはパン容器に取り付けられる。
【0006】
ところで、上述のブレードユニットを備える自動製パン器では、ユニット用シャフトと回転軸(パン容器に備えられる)との間にできる隙間に、パン原料(この表現には、パン生地が含まれる)が入り込むことがあった。そして、この隙間にパン原料が入った状態でパンの焼き上げ(焼成工程)が行われると、隙間に存在するパン原料の焼き付きが原因となって、ブレードユニットが回転軸に固着してしまうことがあった。その結果、パン容器からのパンの取り出しが上手くできない場合があった。
【0007】
なお、ここでは、ブレードユニットが混練ブレード及び粉砕ブレードを備える場合の問題について述べた。しかし、このような問題は、ブレードユニットに粉砕ブレードが備えられない自動製パン器(小麦粉や米粉等の穀物粉からのみ、パンを製造できるもの)においても生じることがあるものと考えられる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供することである。また、本発明の他の目的は、穀物粒からパンを焼き上げられる便利な仕組みを備え、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の自動製パン器は、パン原料が投入されるパン容器を本体内に受け入れてパンの製造工程を実行可能な自動製パン器であって、前記本体内に設けられるモータと、前記パン容器に取り付けられて、前記モータの駆動によって回転される回転軸と、前記パン容器内で前記回転軸に被せられる筒状部材と、を備え、前記回転軸は、第1の直径を有する第1直径部と、前記第1直径部に挟まれるように設けられるとともに前記第1の直径より小さな第2の直径を有する第2直径部とを含み、前記回転軸の前記筒状部材が被せられる部分には、少なくとも2つの前記第1直径部と、少なくとも1つの前記第2直径部と、が含まれる構成(第1の構成)となっている。
【0010】
本構成によれば、回転軸の筒状部材が被せられる部分は、一定の径で形成されるのではなく、部分的に径が細くなる部分を有する構成となっている。本構成では、回転軸は、ぐらつきを抑制して筒状部材を支持できるとともに、パン原料が筒状部材の内部に這い上がることも抑制できる。このパン原料の這い上がりの抑制により、焼成工程において筒状部材が回転軸に固着することを低減可能である。すなわち、本構成によれば、出来上がったパンのパン容器からの取り出しをスムーズに行えることが期待できる。
【0011】
上記第1の構成の自動製パン器において、前記回転軸の前記筒状部材が被せられる側の先端部は、前記第1直径部となっている構成(第2の構成)とするのが好ましい。これにより、回転軸によって支えられる筒状部材がぐらつくことを効果的に抑制可能である。
【0012】
上記第1又は第2の構成の自動製パン器において、前記回転軸の側面には、前記筒状部材に形成される係合溝に係合する係合突起が設けられ、前記係合突起は、前記第1直径部に形成されている構成(第3の構成)とするのが好ましい。本構成によれば、回転時に大きな力が加わる係合突起が損傷する可能性を低減可能である。
【0013】
上記第1から第3のいずれかの構成の自動製パン器において、前記回転軸は、前記パン容器の底部を貫通するように設けられ、前記筒状部材は、前記回転軸に被せられた状態で前記パン容器の底面に近い側となる端部に、先端に向けて先細りとなる先細り先端部を有し、前記先細り先端部は、少なくとも先端側が他部材によって覆われることなく外部に露出している構成(第4の構成)とするのが好ましい。本構成によれば、回転軸が回転される場合に、筒状部材の先細り先端部が、周囲にあるパン原料を外側に押しやることを期待できる。このために、筒状部材の内部にパン原料が入り込むことを抑制可能である。
【0014】
上記第1から第4のいずれかの構成の自動製パン器において、前記筒状部材は、前記パン容器内で穀物粒を粉砕するために使用される粉砕ブレードと、前記パン容器内でパン生地を練り上げるために使用される混練ブレードとを備えるブレードユニットに含まれる部材である構成(第5の構成)としてもよい。本構成によれば、穀物粒を出発原料としてパンを製造することができる自動製パン器において、パン容器からのパンの取り出しを容易に行え、便利である。
【0015】
上記第5の構成の自動製パン器において、前記ブレードユニットには、前記粉砕ブレードを覆うカバーと、前記回転軸と前記カバーとの連結状態を切り替えるクラッチと、が更に含まれ、前記筒状部材は、前記回転軸とともに回転するように設けられ、前記粉砕ブレードは、前記筒状部材に相対回転不能に取り付けられて前記回転軸とともに回転し、前記カバーは、前記筒状部材に相対回転可能に取り付けられ、前記混練ブレードは、前記カバーの外面に相対回転可能に取り付けられて、パン生地を練り上げる際の姿勢である折り畳み姿勢と、前記パン容器の内壁に当接する姿勢である開き姿勢との2姿勢をとり得るようになっており、前記回転軸が一方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記折り畳み姿勢となって前記クラッチが前記回転軸と前記カバーとを連結し、前記カバー及び前記混練ブレードは前記回転軸とともに回転し、前記回転軸が前記一方向と逆方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記開き姿勢になって前記クラッチが前記回転軸と前記カバーとの連結を切り離し、前記カバー及び前記混練ブレードは回転停止状態となる構成としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供できる。また、本発明によると、穀物粒からパンを焼き上げられる便利な仕組みを備え、焼き上がったパンをパン容器から取り出しやすい自動製パン器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の自動製パン器の外観構成を示す概略斜視図
【図2】本実施形態の自動製パン器の本体内部の構成を説明するための模式図
【図3】本実施形態の自動製パン器における、パン容器が収容された焼成室及びその周辺の構成を模式的に示した図
【図4】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す概略斜視図
【図5】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの構成を示す図
【図6】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットを下から見た場合の概略平面図
【図7】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットの動作を説明するための図で、ブレードユニットが取り付けられたパン容器を上から見た場合の図
【図8】本実施形態の自動製パン器が備えるブレードユニットに含まれるユニット用シャフトの構成を示す図
【図9】本実施形態の自動製パン器が備えるユニット用シャフトの作用を説明するための図
【図10】本実施形態の自動製パン器が備えるブレード回転軸とユニット用シャフトとの関係を説明するための概略断面図
【図11】本実施形態の自動製パン器が備えるブレード回転軸の変形例を説明するための図
【図12】本実施形態の自動製パン器におけるブレードユニットの変形例を説明するための図
【図13】本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図
【図14】本実施形態の自動製パン器によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の自動製パン器の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本明細書に登場する具体的な数値(例えば時間、温度等)はあくまでも例示であり、それらは本発明の内容を限定するものではない。
(自動製パン器の構成)
図1は、本実施形態の自動製パン器1の外観構成を示す概略斜視図で、図1(a)は蓋30が閉じられた状態、図1(b)は蓋30が開かれた状態を示している。図1に示すように、自動製パン器1は、パン容器70を収容可能な焼成室40を備える本体10と、本体10に回動可能に取り付けられて焼成室40を開閉する蓋30と、が備えられている。
【0019】
本体10には、閉じられた蓋30と並ぶように操作部20が設けられている。この操作部20は、操作キー群と、時間、操作キー群によって設定された内容、エラー等を表示する表示部(例えば液晶表示パネル等)と、によって構成されている。操作キー群には、例えば、スタートキー、取り消しキー、タイマーキー、予約キー、パンの製造コース(製パンコース)を選択するための選択キー等が含まれる。
【0020】
本体10内部に設けられる焼成室40は平面視略矩形の箱形状の部屋であり、焼成室40の側壁及び底壁は例えば板金で構成される。この焼成室40には、焼成室40に収容されたパン容器70内の原料や生地を加熱できるように、加熱手段が設けられている。自動製パン器1では、加熱手段としてはシーズヒータ42(後述の図3参照)が用いられている。このシーズヒータ42は、焼成室40の内側壁に沿うように略額縁状に配置され、焼成室40に収容されたパン容器70を包囲する。
【0021】
蓋30には、焼成室40内を覗けるように、例えば耐熱ガラスからなる覗き窓31が設けられている。また、蓋30の内面側には、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入するために使用される自動投入容器32が着脱自在に取り付けられるようになっている。なお、図1(b)においては、自動投入容器32の容器蓋322は開かれている。
【0022】
図2は、本実施形態の自動製パン器1の本体10内部の構成を説明するための模式図である。図2は、自動製パン器1を上側から見た場合が想定されており、図の下側が自動製パン器1の前面(正面)側、図の上側が背面側である。図2における破線は、実線で示す部材によって隠されて本来は見えないものであることを示している。
【0023】
図2に示すように、自動製パン器1には、焼成室40の右横に低速・高トルクタイプの混練モータ50が固定配置され、焼成室40の後ろ側に高速回転タイプの粉砕モータ60が固定配置されている。混練モータ50及び粉砕モータ60はいずれも竪軸である。なお、混練モータ50及び粉砕モータ60は本発明のモータの実施形態である。
【0024】
混練モータ50の上面から突出する出力軸51は、複数のプーリ、複数の回転軸、及び複数のベルトを含む第1の動力伝達部MT1によって、焼成室40の下部側に設けられる原動軸11に動力伝達可能に連結されている。ただし、第1の動力伝達部MT1にはクラッチC1(本実施形態では噛み合いクラッチが使用されている)が含まれ、このクラッチC1によって、出力軸51の回転動力を伝達する動力伝達状態と、出力軸51の回転動力を伝達不能な動力遮断状態との切り替えが可能になっている。また、第1の動力伝達部MT1は、混練モータ50の回転動力をトルクアップして原動軸11に伝達するように設けられている。
【0025】
粉砕モータ60の下面から突出する出力軸61は、複数のプーリ及び1本のベルトを含む第2の動力伝達部MT2によって、焼成室40の下部側に設けられる原動軸11に動力伝達可能に連結されている。なお、第2の動力伝達部MT2は、クラッチを有さず、粉砕モータ60の出力軸61と原動軸11とを常時動力伝達可能に連結している。ただし、第2の動力伝達部MT2にも、動力伝達状態を切り替えるクラッチが含まれるようにしてもよい。
【0026】
次に、焼成室40に出し入れ自在に設けられるパン容器70について説明する。パン容器70は、パン原料が投入されるとともにパン焼き型として使用される容器である。図3は、本実施形態の自動製パン器1における、パン容器70が収容された焼成室40及びその周辺の構成を模式的に示した図である。図3は、自動製パン器1を前面(正面)側から見た場合の構成を想定したものであり、焼成室40及びパン容器70の構成は概ね断面図で示されている。
【0027】
例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなるパン容器70は、図3に示すようにバケツのような形状をしており、その水平断面は四隅を丸めた矩形である。パン容器70の開口部側縁に設けられる鍔部70aには、図示しない手提げ用のハンドルが取り付けられている。パン容器70の底部には、詳細は後述するブレードユニット80の一部を収容する平面視略円形状の凹部71が形成されている。
【0028】
パン容器70の底部中心には、垂直方向に延びるブレード回転軸72(本発明の回転軸の一例)がシール対策を施された状態で回転可能に支持されている。このブレード回転軸72の下端(パン容器70の底部から外部側に突き出ている)には、容器側接続部72aが固定されている。また、パン容器70の底部外面側には、ブレード回転軸72のパン容器70の底部から外部側に突き出た部分を取り囲むように、筒状の台座73が設けられている。
【0029】
図3に示すように、焼成室40の底壁40aの略中心にあたる箇所には、パン容器70を支持するパン容器支持部14(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が固定されている。このパン容器支持部14は、焼成室40の底壁40aから窪むように形成され、その窪みの形状は上から見た場合に略円形となっている。このパン容器支持部14の中心には、上述の原動軸11が底壁40aに対して略垂直となるように支持されている。原動軸11の上端には、本体側接続部11aが固定されている。
【0030】
パン容器70は、台座73がパン容器支持部14に受け入れられた状態で焼成室40内に収容される。パン容器70の台座73がパン容器支持部14に受け入れられた状態においては、ブレード回転軸72の下端に設けられる容器側接続部72aと、原動軸11の上端に固定される本体側接続部11aとの連結が得られる。これにより、ブレード回転軸72は原動軸11から回転動力を伝えられるようになる。すなわち、本体側接続部11aと容器側接続部72aとはカップリングを構成する。
【0031】
ブレード回転軸72のパン容器70内部に突出する部分には、その上からブレードユニット80が着脱自在に取り付けられるようになっている。このブレードユニット80の構成について、図4から図7を参照しながら説明する。
【0032】
なお、図4は、本実施形態の自動製パン器1が備えるブレードユニット80の構成を示す概略斜視図で、図4(a)は斜め上方から見た図、図4(b)は斜め下方から見た図である。図5は、本実施形態の自動製パン器1が備えるブレードユニット80の構成を示す図で、図5(a)は概略側面図、図5(b)は図5(a)のA−A位置における概略断面図である。図6は、本実施形態の自動製パン器1が備えるブレードユニット80を下から見た場合の概略平面図で、図6(a)は混練ブレード84が折り畳み姿勢にある場合の図、図6(b)は混練ブレード84が開き姿勢にある場合の図である。図6においては、後述のガード85が取り外された状態を示している。図7は、本実施形態の自動製パン器1が備えるブレードユニット80の動作を説明するための図で、ブレードユニット80が取り付けられたパン容器70を上から見た場合の図である。図7(a)は混練ブレード84が折り畳み姿勢にある場合の図、図7(b)は混練ブレード84が開き姿勢にある場合の図である。
【0033】
ブレードユニット80は、大きくは、パン容器70内でブレード回転軸72に被せられるユニット用シャフト81と、ユニット用シャフト81に相対回転不能に取り付けられる粉砕ブレード82と、ユニット用シャフト81に相対回転可能且つ粉砕ブレード82を上から覆うように取り付けられる平面視略円形のドーム状カバー83と、ドーム状カバー83に相対回転可能に取り付けられる混練ブレード84と、ドーム状カバー83に取り付けられ、粉砕ブレード82を下から覆うガード85と、を備える構成となっている。
【0034】
ブレードユニット80がブレード回転軸72に取り付けられた状態において、粉砕ブレード82は、パン容器70の凹部71底面より少し上の箇所に位置する。また、ブレードユニット80がブレード回転軸72に取り付けられた状態において、粉砕ブレード82、ドーム状カバー83、及び、ガード85は凹部71に収容される(例えば図3参照)。より正確には、ドーム状カバー83は、その一部が凹部71から突出している。
【0035】
なお、ユニット用シャフト81は本発明の筒状部材の一例である。また、ドーム状カバーは本発明のカバーの一例である。
【0036】
ここで、図8も参照しながら、ユニット用シャフト81の構成について説明する。なお、図8は、本実施形態の自動製パン器1が備えるブレードユニット80に含まれるユニット用シャフト81の構成を示す図で、図8(a)はユニット用シャフト81を下方から見た場合の斜視図、図8(b)はユニット用シャフト81の側面図及び断面図(B−B断面)、図8(c)は図8(b)の観察位置から180°回転した位置から見たユニット用シャフト81の側面図及び断面図(C−C断面)である。
【0037】
図5(b)及び図8に示すように、ユニット用シャフト81は、例えばステンレス鋼板等の金属によって形成される外形略円柱状の部材であり、一方端(下端)に開口が設けられ、その内部は中空となっている。すなわち、ユニット用シャフト81は、下端からブレード回転軸72を挿入できるように、挿入孔81bが形成された構成となっている。なお、ユニット用シャフト81の下端は、ユニット用シャフト81がブレード回転軸72に被せられた状態で、パン容器70の底面(凹部71の底面)に近い側となる一端に該当する。
【0038】
ユニット用シャフト81の側面下部には、ユニット用シャフト81の回転中心を挟んで対称配置される一対の平坦面が形成されている。この平坦面は、粉砕ブレード82等をユニット用シャフト81に対して相対回転不能に取り付けるために設けられている。また、この一対の平坦面が設けられる部分のそれぞれには、側壁を切り欠いて得られる一対の溝部81a(対称配置される)が形成されている。ブレード回転軸72の側面から突出する一対の係合ピン721(図5(b)参照)が、この溝部81aに係合することによって、ユニット用シャフト81はブレード回転軸72に相対回転不能に取り付けられた状態になる。なお、一対の係合ピン721は対称配置となっている。また、溝部81は本発明の係合溝の一例である。また、係合ピン721は本発明の係合突起の一例である。
【0039】
図5(b)及び図8に示すように、ユニット用シャフト81の内部側の上面中央部には凹部81cが形成されている。この凹部81cは、ブレード回転軸72の上端面(略円形状)の中央部に設けられる凸部722(図5(b)参照)に係合するように設けられたものである。これら凹部81c及び凸部722の存在により、ユニット用シャフト81は、その中心がブレード回転軸72の中心に合わせられた状態で、容易にブレード回転軸72に取り付けられる。このために、ブレードユニット80は、ブレード回転軸72が回転された場合に、不要なガタツキを発生し難い。
【0040】
図8に示すように、ユニット用シャフト81の下端部には、ユニット用シャフト81の回転中心を挟んで対称配置となるように、第1の頂部811aと第2の頂部811bとが形成されている。これら2つの頂部811a、811bは、各々、一対の溝部81aが設けられる位置に対して略90°回転した位置に存在する。また、これら2つの頂部811a、811bは、いずれも傾斜部(傾斜面)812a、812bによって一対の溝部81aのそれぞれと繋がるように形成されている。
【0041】
第1の頂部811aは、2つの第1の傾斜部(傾斜面)812aが交わる部分(交線)となっている。また、第2の頂部811bは、2つの第2の傾斜部812bを接続する狭小の平坦部(平坦面)となっている。そして、第1の頂部811aと第2の頂部811bとは、ユニット用シャフト81を側面視した場合に段差Lを有する構造となっている(図8(b)参照)。
【0042】
このように構成されるユニット用シャフト81の作用について、図9を参照しながら説明する。なお、図9は、本実施形態の自動製パン器1が備えるユニット用シャフト81の作用を説明するための図で、図9(a)は本実施形態のユニット用シャフト81に関する図、図9(b)は本実施形態のユニット用シャフト81の作用を理解し易くするために示した比較図である。まず、比較例として、下端部が平坦な構成(平坦面)となっているユニット用シャフト81´の場合(図9(b)参照)について説明する。
【0043】
ブレードユニット80をパン容器70内のブレード回転軸72に取り付けるべく、ユニット用シャフト81´がブレード回転軸72に被せられる際に、ユニット用シャフト81´の溝部81a´とブレード回転軸72の係合ピン721の位置がずれる場合がある。この場合、ユニット用シャフト81´の下端面と係合ピン721とが当接し、ブレードユニット80の取り付けは不十分な状態となる。
【0044】
ユーザがブレードユニット80の取り付けが不十分であることに気付けば、ユーザはユニット用シャフト81´を回転させる。そして、これにより、係合ピン721が切り欠き部81a´に嵌り込んだ正規の取り付け状態が得られる。しかし、ユーザが、ブレードユニット80の取り付けが不十分であることに気付かないことも起こり得る。特に、ブレードユニット80がドーム状カバー83を有するために目視確認しづらく、このような事態が起きやすい。
【0045】
図9(b)に示す構成では、ユニット用シャフト81´が係合ピン721の上に載った状態は、ある程度、安定した状態である。このため、ブレードユニット80の取り付けが不完全なまま、ブレードユニット80の取り付け作業が完了されてしまう場合がある。そして、このように取り付け作業が完了すると、モータ50、60の駆動によって故障が発生したり、振動等によってブレードユニット80が落下してパン容器70内の原料が飛散したりするといった好ましくない事態が発生する場合がある。
【0046】
これに対し、本実施形態の構成(図9(a))では、最初に、ユニット用シャフト81の溝部81aとブレード回転軸72の係合ピン721の位置がずれた状態であっても、ユニット用シャフト81が自動的に回転して、溝部81aと係合ピン721の係合が得られるようになっている。
【0047】
図9(a)においては、ユニット用シャフト81の第1の頂部811aが係合ピン721に当接した状態を示している。このような状態でユーザがブレードユニット80を離すと、第1の頂部811aと第2の頂部811bとが段差構造を有しているために、ユニット用シャフト81は傾く。この傾き動作が契機となって、ユニット用シャフト81の傾斜面812a、812bが係合ピン721と当接した状態となり、ユニット用シャフト81は回転を開始する。この回転により、溝部81aの位置が係合ピン721の位置に至り、係合ピン721が溝部81aに嵌り込んだ正規の取り付け状態が得られる。
【0048】
なお、ユニット用シャフト81がブレード回転軸72に被せられる際において、溝部81aと係合ピン721との位置がずれた状態は、図9(a)に示す状態に限られない。しかし、図9(a)とは異なる位置ずれが発生した場合には、係合ピン721が最初から傾斜部(傾斜面)812a、812bに載った状態となるために、この場合も、ユニット用シャフト81が回転を開始する。その結果、係合ピン721が溝部81aに嵌り込んだ正規の取り付け状態が得られる。
【0049】
穀物粒粉砕用の粉砕ブレード82は、例えばステンレス鋼板を加工することによって形成される。この粉砕ブレード82は、中心部分に設けられる開口部(図示せず)がユニット用シャフト72の下部側が嵌め込まれる形で、ユニット用シャフト81に相対回転不能に取り付けられる。粉砕ブレード82の下部側においては、抜け止め用のストッパー部材86がユニット用シャフト81に嵌め込まれる(例えば図5(b)、図6参照)。このために、粉砕ブレード82がユニット用シャフト81から脱落することはない。
【0050】
粉砕ブレード82を囲んで覆い隠すように配置されるドーム状カバー83は、例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなり、その内面側には、ベアリング87を収容する凹状の収容部831(図5(b)参照)が形成されている。換言すると、この収容部831を形成するために、ドーム状カバー83は、それを外面から見た場合に、中央部に略円柱状の凸部83aが形成された構成となっている。
【0051】
ベアリング87は、その外輪が収容部831の側壁に固定されるように、収容部831に圧入されている。このベアリング87の内輪には、ユニット用シャフト81が相対回転不能に取り付けられている。このベアリング87の介在により、ドーム状カバー83は、ユニット用シャフト81に相対回転可能に取り付けられることになる。
【0052】
なお、ベアリング87の上下には、抜け止めリング88a、88bが配置される。また、ベアリング87の下部側には、外部から異物(例えば穀物粒の粉砕時に用いられる液体や粉砕により得られたペースト状物等)が入り込まないように、シール材89が配置されている。シール材89は、その下側に配置されるシールカバー90を用いて固定されている。
【0053】
ドーム状カバー83の外面には、凸部83aに隣接する箇所に垂直方向に延びるように配置される支軸91(図6参照)を用いて、平面形状「く」の字形の混練ブレード84(例えばアルミニウム合金のダイキャスト成型品からなる)が取り付けられている。混練ブレード84は、支軸91に相対回転不能に取り付けられており、ドーム状カバー83に相対回転可能に取り付けられる支軸91と動きを共にする。換言すると、混練ブレード84は、ドーム状カバー83に対して相対回転可能に取り付けられた構成となっている。
【0054】
混練ブレード84は、支軸91と共に支軸91の軸線周りに、一定の範囲内だけ回転可能となっている。図4、図5、図6(a)及び図7(a)に示す折り畳み姿勢は、混練ブレード84が回転可能な範囲の一端にある場合に該当する。また、図6(b)及び図7(b)に示す開き姿勢は、混練ブレード84が回転可能な範囲の他端にある場合に該当する。
【0055】
なお、混練ブレード84の先端側近傍の一方面には、緩衝材92が取り付けられている。緩衝材92は、混練ブレード84の先端から僅かに突出するように設けられている(例えば図6参照)。この緩衝材92は、混練ブレード84と、パン容器70の内壁とが接触して傷が付くこと等を防止する目的で設けられている。
【0056】
また、ドーム状カバー83の外面に、混練ブレード84に並ぶように補完混練ブレード93(例えばドーム状カバー83と一体的に設けられる)が固定配置されている。混練ブレード84が折り畳み姿勢となっている場合には、例えば図4や図5に示すように補完混練ブレード93は混練ブレード84に整列し、あたかも「く」の字形状の混練ブレード84のサイズが大型化したようになる。この補完混練ブレード93により、混練効率を高められる。
【0057】
ユニット用シャフト81には、図5(b)に示すように、粉砕ブレード82とシールカバー90との間にカバー用クラッチ94を構成する第1係合体941が相対回転不能に取り付けられている。この第1係合体941は、ストッパー部材86によって、粉砕ブレード82と共にユニット用シャフト81からの脱落が防止されている。また、混練ブレード84が取り付けられる支軸91の下部側には、カバー用クラッチ94を構成する第2係合体942が相対回転不能に取り付けられている(図6参照)。
【0058】
第1係合体941と第2係合体942とで構成されるカバー用クラッチ94は、ブレード回転軸72の回転動力をドーム状カバー83に伝達するか否かを切り替える機能を有する。このカバー用クラッチ94は本発明のクラッチの一例である。
【0059】
混練ブレード84が折り畳み姿勢にある場合(例えば図6(a)、図7(a)の状態)、第2係合体942の係合部942aは第1係合体941の係合部941a(本実施形態では2つあるが1つでもよい)の回転軌道に干渉する角度となる(図6(a)の破線参照)。このため、ブレード回転軸72と共にユニット用シャフト81が一方向(図6(a)において反時計方向回転)に回転すると、第1係合体941と第2係合体942とは係合する。すなわち、混練ブレード84が折り畳み姿勢にある場合には、ブレード回転軸72とドーム状カバー83とを連結して、ブレード回転軸72の回転動力をドーム状カバー83に伝達することが可能になる。なお、混練ブレード84が折り畳み姿勢にある場合には、混練ブレード84の回転を規制するストッパーの働きにより、第2係合体942は時計方向(図6(a)を想定した表現である)に回転しない。
【0060】
一方、混練ブレード84が開き姿勢にある場合(例えば図6(b)、図7(b)の状態)、第2係合体942の係合部942aは第1係合体941の係合部941aの回転軌道から逸脱した角度となる(図6(b)の破線参照)。このために、ブレード回転軸72が回転しても、第1係合体941と第2係合体942は係合しない。すなわち、混練ブレード84が開き姿勢にある場合には、ブレード回転軸72とドーム状カバー83との連結が切り離され、ブレード回転軸72の回転動力はドーム状カバー83に伝達されない。
【0061】
ドーム状カバー83には、カバー内空間とカバー外空間を連通する窓83b(本実施形態では4つ)が形成される。窓83bは粉砕ブレード82に並ぶ高さか、それよりも上の位置に配置される。また、ドーム状カバー83内面には、各窓83bに対応して計4個のリブ83cが形成されている(図6参照)。各リブ83cはドーム状カバー83の中心近傍から外周の環状壁まで半径方向に対して斜めに延び、4個合わさって一種の巴形状を構成する。また、各リブ83cは、それに向かって押し寄せるパン原料に対面する側が凸となるように湾曲している。
【0062】
また、ドーム状カバー83の下面には、ガード85が着脱可能に取り付けられるようになっている。このガード85は、ドーム状カバー83の下面を覆って粉砕ブレード82にユーザの指が接近するのを阻止する。ガード85は、例えば耐熱性を有するエンジニアリングプラスチックによって形成され、例えばPPS(ポリフェニレンサルファイド)等の成型品とできる。
【0063】
なお、図4(b)に示すように、ガード85の中心には、ユニット用シャフト81に固定されるストッパー部材86を通すリング状のハブ851がある。また、ガード85の周縁には、ハブ851と同心円状に設けられたリング状のリム852がある。ハブ851とリム852とは複数のスポーク853で連結される。複数のスポーク853は所定の間隔を置いて配置され、スポーク853同士の間が、粉砕ブレード82によって粉砕される穀物粒を通す開口部854となる。
【0064】
ここで、ブレード回転軸72と、ブレード回転軸72に被せられるユニット用シャフト81との関係について図10を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の自動製パン器1が備えるブレード回転軸72とユニット用シャフト81との関係を説明するための概略断面図で、図10(a)は本実施形態の構成を示す図、図10(b)は本実施形態の構成を理解し易くするために示した比較図である。
【0065】
図10(a)に示すように、ブレード回転軸72は、ユニット用シャフト81の内径と略同一(正確には若干小さい)となる第1の直径を有する第1直径部D1と、第1の直径より小さな第2の直径を有する第2直径部D2と、を有する。本実施形態では、2つの第1直径部D1と、第1直径部D1に挟まれるように設けられる2つの第2直径部D2とが、ユニット用シャフト81が被せられる部分に含まれている。
【0066】
ブレード回転軸72の先端部72b(ユニット用シャフト81が被せられる側の先端部)は、幅広の第1直径部D1となっている。これは、ブレード回転軸81によって支えられるユニット用シャフト81がぐらつくことを抑制することを狙ったものである。また、ユニット用シャフト81の溝部81aと係合する係合突起721は、ブレード回転軸72の先端部72bとともに第2直径部D2を挟む第1直径部D1に設けられている。係合突起721を第2直径部D2ではなく、第2直径部D2より太い第1直径部D1に設けることで、ブレード回転軸72の回転中に係合突起721が破損する可能性を抑制可能である。
【0067】
本実施形態のように、ブレード回転軸72のユニット用シャフト81が被せられる部分に、部分的に径が細くなる構造を採用した場合、図10(b)に示すような構造に比べて次のような利点がある。なお、図10(b)に示す構造では、少なくともユニット用シャフト81が被せられる部分において、ブレード回転軸72´の直径は一定であり、その径は、ユニット用シャフト81の内径と略同一(正確には若干小さい)である。
【0068】
図10(b)に示す構造では、いわゆる毛細管現象によって、パン原料(例えば粉砕工程終了後に得られる穀物粒のペースト状の粉砕粉等)がユニット用シャフト81内部で這い上がり易い。そして、このようにユニット用シャフト81の内部にパン原料が這い上がってしまうと、この原料が焼成工程時に焼き付いてしまう。この場合、ブレード回転軸72´とユニット用シャフト81との間で固着が生じ、通常、ブレードユニット80とともにパン容器70からの取り出されるパンの取り出しが難しくなる。一方、本実施形態の構成では、上述の毛細管現象によるパン原料の這い上がりを抑制できる。このために、焼成工程後におけるパンの取り出しがスムーズに行われることが期待できる。
【0069】
なお、上述の毛細現象によるパン原料の這い上がりを抑制するために、ユニット用シャフト81が被せられる部分において、ブレード回転軸72´の直径を単に細くすることも考えられる。しかし、この場合には、ブレード回転軸72´によるユニット用シャフト81の支持が不十分となる。この点、本実施形態の構成では、ユニット用シャフト81の内径と略同一の直径を有する第1直径部D1を、ユニット用シャフト81が被せられる部分に2つ設ける構成としている。このために、ブレード回転軸72は、ユニット用シャフト81がぐらつくのを抑制して、ユニット用シャフト81の支持を行える。
【0070】
また、以上に示したブレード回転軸72の構成は本発明の一例にすぎず、ブレード回転軸72の構成は種々の変形が可能である。すなわち、ブレード回転軸72の構成は、例えば図11に示すような変形例の構成としてもよい。図11(a)に示す第1変形例では、ブレード回転軸72は、ユニット用シャフト81が被せられる部分に、2つの第1直径部D1と、1つの第2直径部D2とが設けられる構成となっている。2つの第1直径部D1のうちの一方は、ブレード回転軸72の先端部72bである。また、係合突起721は、2つの第1直径部D1に挟まれる第2直径部D2に設けられている。
【0071】
図11(b)に示す第2変形例では、ブレード回転軸72は、ユニット用シャフト81が被せられる部分に、3つの第1直径部D1と、3つの第2直径部D2とが設けられる構成となっている。3つの第1直径部D1の1つは、ブレード回転軸72の先端部72bである。また、係合突起721は第2直径部D2に設けられている。
【0072】
ブレード回転軸72の構成としては、ユニット用シャフト81が被せられる部分に、少なくとも2つの第1直径部D1と、少なくとも1つの第2直径部D2(第1直径部D1に挟まれる)とが設けられる構成であればよく、その他の変形例の採用も勿論可能である。
【0073】
ところで、以上に示した実施形態では、ユニット用シャフト81のパン容器70の底面に近い側となる端部(下端部)が、抜け止め用のストッパー部材86内に収まった構成となっている(例えば図4(b)や図5(b)参照)。この点、図12に示すように、ユニット用シャフト81の第1の頂部811aと第1の傾斜部812aとによって形成される先細り先端部Nの一部(或いは全部)が、パン容器70の底面に向かう方向にストッパー部材86から突出する構成としてもよい。なお、ストッパー部材86は本発明の他部材の一例である。
【0074】
このように先細り先端部Nの一部(或いは全部)がストッパー部材86から突出して外部に露出された構成とすると、ブレード回転軸72が回転された場合に、ユニット用シャフト81が、その外側にパン原料を押しやる効果を発揮する。このために、図12に示すような構成を採用することで、ユニット用シャフト81内部にパン原料が入り込むことを抑えて、焼成工程後におけるパン容器70からのパンの取り出しがスムーズに行えることが期待できる。
【0075】
なお、図12に示す構成では、第1の頂部811a側のみがストッパー部材86から突出する構成としているが、第2の頂部811b側もストッパー部材86から突出する構成としてもよい。
【0076】
図13は、本実施形態の自動製パン器の構成を示すブロック図である。図13に示すように、自動製パン器1における制御動作は制御装置110によって行われる。制御装置110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、I/O(input/output)回路部等からなるマイクロコンピュータ(マイコン)によって構成される。この制御装置110は、焼成室40の熱の影響を受け難い位置に配置するのが好ましい。また、制御装置110には、時間計測機能が備えられており、パンの製造工程における時間的な制御が可能となっている。
【0077】
制御装置110には、上述の操作部20と、温度センサ21と、混練モータ駆動部111と、粉砕モータ駆動部112と、ヒータ駆動部113と、クラッチ切替部114と、自動投入駆動部115と、が電気的に接続されている。温度センサ21は、焼成室40の温度を検出するための温度センサであり、例えば焼成室40の側壁等に取り付けられる。
【0078】
混練モータ駆動部111は、制御装置110からの指令の下で混練モータ50の駆動を制御する。また、粉砕モータ駆動部112は、制御装置110からの指令の下で粉砕モータ60の駆動を制御する。ヒータ駆動部113は、制御装置110からの指令の下でシーズヒータ42の加熱動作を制御する。
【0079】
クラッチ切替部114は、制御装置110からの指令の下で、第1の動力伝達部MT1に含まれるクラッチC1(図2参照)の動力伝達状態の切り替えを行うクラッチ用ソレノイドの駆動を制御する。また、自動投入駆動部115は、パンの製造工程の途中で一部のパン原料を自動投入する際に駆動する自動投入用ソレノイドの駆動を制御する。自動投入ソレノイドの駆動によって、自動投入容器32の容器蓋322(図1参照)が閉じられた状態を維持するロック機構323の解除が行われる。
【0080】
制御装置110は、操作部20からの入力信号に基づいてROM等に格納されたパンの製造コース(製パンコース)に係るプログラムを読み出す。そして、制御装置110は、混練モータ駆動部111を介して混練モータ50による混練ブレード84の回転制御、粉砕モータ駆動部112を介して粉砕モータ60による粉砕ブレード82の回転制御、ヒータ駆動部113を介してシーズヒータ42による加熱動作の制御を行いながら、自動製パン器1にパンの製造工程を実行させる。
(自動製パン器による製パン動作)
次に、以上のように構成される自動製パン器1でパンを製造する場合の動作について説明する。自動製パン器1は、米粒(穀物粒の一例)を出発原料に用いてパンを製造できるとともに、小麦粉(穀物粉の一例)を出発原料に用いてパンを製造することも可能に設けられている。ただし、ここでは、米粒を出発原料に用いる場合を例に製パン動作を説明する。
【0081】
ユーザは、パン容器70のブレード回転軸72にユニット用シャフト81を被せることによって、ブレードユニット80をブレード回転軸72に取り付ける。この際、上述したユニット用シャフト81の構成の工夫(例えば図8及び図9参照)により、ブレードユニット80の取り付けが不十分となる可能性は低い。また、上述のように、ブレードユニット80がガード85を備える構成であるために、この作業時にユーザの指が粉砕ブレード82に触れることがなく、ユーザは安全に作業を行える。ブレードユニット80の取り付け作業後に、ユーザは、米粒、水、調味料(例えば食塩、砂糖、ショートニング等)をそれぞれ所定量ずつ計量してパン容器70に入れる。
【0082】
また、ユーザは、パンの製造途中で自動投入される一部のパン原料を計量して自動投入容器32(図1参照)の容器本体321に収納する。ユーザは、収納すべきパン原料を容器本体321に収納したら、ロック機構323を用いて、容器蓋322によって容器本体321の開口が閉じられた閉状態を維持するようにする。
【0083】
なお、自動投入容器32に収納されるパン原料としては、例えば、グルテンとドライイーストが挙げられる。グルテンの代わりに、例えば小麦粉、上新粉、増粘剤(グアガム等)等が自動投入容器32に収納されるようにしてもよい。また、グルテン、小麦粉、増粘剤、上新粉等は用いずに、例えばドライイーストのみが自動投入容器32に収納されるようにしてもよい。更に、場合によっては、例えば食塩、砂糖、ショートニングといった調味料についてもパンの製造工程の途中で自動投入すべく、例えばグルテン、ドライイーストと共に、これらの原料を自動投入容器32に収納するようにしてもよい。この場合には、パン容器70に予め投入しておくパン原料は米粒及び水(単なる水の代わりに、例えばだし汁のような味成分を有する液体、果汁やアルコールを含有する液体等でもよい)となる。
【0084】
上述の準備が完了したら、ユーザは、パン容器70を焼成室40に入れ、更に、自動投入容器32を蓋30の所定位置(図1参照)に嵌め込む。そして、ユーザは蓋30を閉じ、操作部20によって米粒からパンを製造するための製パンコース(米粒用製パンコース)を選択する。ユーザが、米粒用製パンコースの選択後、操作部20に含まれるスタートキーを押すと、制御装置110による制御の下、パンの製造動作が開始される。
【0085】
図14は、本実施形態の自動製パン器1によって実行される米粒用製パンコースの流れを示す模式図である。図14に示すように、米粒用製パンコースにおいては、浸漬工程と、粉砕工程と、休止工程と、練り(捏ね)工程と、発酵工程と、焼成工程と、がこの順番で順次に実行される。
【0086】
米粒用製パンコースでは、まず、制御装置110の指令によって浸漬工程が開始される。浸漬工程では、パン容器70に予め投入されたパン原料が静置状態とされ、この静置状態が予め定められた所定時間(例えば30〜60分程度)維持される。この浸漬工程は、米粒に水を含ませることによって、その後に行われる粉砕工程において、米粒を芯まで粉砕しやすくすることを狙う工程である。
【0087】
なお、米粒の吸水速度は水の温度によって変動し、水温が高いと吸水速度が高まり、水温が低いと吸水速度が低下する傾向がある。このため、浸漬時間を短時間とするために、浸漬工程は、シーズヒータ42に通電して焼成室40の温度を高めた状態(例えば50℃程度)で行うようにしてもよい。
【0088】
上記所定時間が経過すると、制御装置110の指令によって、浸漬工程が終了され、米粒を粉砕する粉砕工程が開始される。この粉砕工程では、米粒と水とが含まれる混合物の中で粉砕ブレード82が高速回転(例えば7000〜8000rpm)される。この粉砕工程では、制御装置110は、粉砕モータ60を制御してブレード回転軸72を逆方向回転(図6では時計方向回転、図7では反時計方向回転)させる。ブレード回転軸72の逆方向回転により、粉砕ブレード82の刃部分(切削刃)が回転方向前方となるために、この逆方向回転により粉砕機能が得られる。
【0089】
なお、粉砕モータ60を用いて粉砕ブレード82を回転させる場合、制御装置110は、クラッチ切替部114を制御してクラッチC1(図2参照)が動力遮断を行うようにする。これにより、粉砕モータ60に大きな負荷が加わって粉砕モータ60が破損するといった事態を避けられる。粉砕ブレード82の回転を開始するにあたっては、最初低速で回転させ、その後、高速回転させるのが好ましい。
【0090】
粉砕ブレード82を回転させるために、ブレード回転軸72が逆方向回転された場合、ドーム状カバー83もパン容器70内の米粒と水を含む混合物の流れによって逆方向回転しようとするが、次のような動作によってドーム状カバー83の逆方向回転は阻止(停止)される。
【0091】
ブレード回転軸72が逆方向回転された時点で混練ブレード84が折り畳み姿勢(図7(a)に示す姿勢)であった場合、カバー用クラッチ94の第1係合体941の係合部941aが第2係合体942の係合部942aと接触し、混練ブレード84は開き姿勢(図7(b)に示す姿勢)となる方向に回転される。また、混練ブレード84は、ドーム状カバー83の逆方向回転(図7において反時計方向回転)に伴ってパン容器70内の混合物から抵抗を受け、これによっても開き姿勢となる方向に回転される。
【0092】
混練ブレード84が開き姿勢になると、第2係合体942aが第1係合体941aの回転軌道(図6の破線参照)から逸脱する。このために、カバー用クラッチ94は、ブレード回転軸72とドーム状カバー83との連結を切り離す。また、開き姿勢になった混練ブレード84は、図7(b)に示すように、その一部(正確には、先端側に設けられる緩衝材92)がパン容器70の内側壁(詳細には粉砕効率を向上するためにパン容器70の内壁に設けられた畝状の凸部70b)に当接するために、ドーム状カバー83の回転は阻止(停止)される。
【0093】
粉砕工程における米粒の粉砕は、先に行われた浸漬工程によって米粒に水が浸み込んだ状態で実行されるために、米粒を芯まで容易に粉砕することができる。粉砕工程における粉砕ブレード82の回転は本実施形態では間欠回転とされる。この間欠回転は、例えば30秒回転して5分間停止するというサイクルで行われ、このサイクルが10回繰り返される。粉砕ブレード82の回転は連続回転としてもよいが、例えばパン容器70内の原料温度が高くなり過ぎることを防止する等の目的のために、間欠回転とするのが好ましい。
【0094】
粉砕工程においては、米粒の粉砕が回転停止したドーム状カバー83内で行われるから、米粒がパン容器70の外に飛び散る可能性が低い。また、回転停止状態にあるガード85の開口部854からドーム状カバー83内に入る米粒は、静止したスポーク853と回転する粉砕ブレード82との間でせん断されるので、効率良く粉砕が行える。また、ドーム状カバー83に設けられるリブ83cによって、米粒と水とが含まれる混合物の流動(粉砕ブレード82の回転と同方向の流動である)が適度に抑制されるので、効率良く粉砕が行える。
【0095】
また、粉砕された米粒と水とを含む混合物は、ドーム状カバー83のリブ83cによって窓83bの方向に誘導されて、窓83bからドーム状カバー83の外に排出される。ドーム状カバー83のリブ83cは、それに向かって押し寄せる混合物に対向する側が凸となるように湾曲しているので、混合物はリブ83cの表面に滞留しにくく、スムーズに窓83bの方へ流れていく。更に、ドーム状カバー83内部から混合物が排出されるのと入れ替わりに、凹部71の上の空間に存在していた混合物が凹部71に入り、凹部71からガード85の開口部854を通ってドーム状カバー83内に入いる。このような循環をさせつつ粉砕ブレード82による粉砕が行われるので、効率良く粉砕が行える。
【0096】
粉砕工程が終了すると、制御装置110の指令によって休止工程が実行される。この休止工程は、粉砕工程によって上昇したパン容器70内の内容物の温度を下げる冷却期間として設けられている。温度を下げるのは、次に行われる練り工程が、イーストが活発に働く温度(例えば30℃前後)で実行されるようにするためである。本実施形態では、休止工程は所定時間(例えば30〜60分程度)とされている。
【0097】
休止工程が終了すると、制御装置110の指令によって練り工程が開始される。練り工程の開始にあたって、制御装置110はクラッチ切替部114を制御して、クラッチC1(図2参照)が動力伝達を行うようにする。そして、制御装置110は混練モータ50を制御してブレード回転軸72を正方向回転(図6では反時計方向回転、図7では時計方向回転)させる。なお、粉砕工程と練り工程とではブレード回転軸72の回転方向は逆である。
【0098】
ブレード回転軸72を正方向回転させると、粉砕ブレード82も正方向に回転する。この場合、粉砕ブレード82は刃部分(切削刃)が回転方向後方となって回転し、粉砕機能を発揮しない。粉砕ブレード82の回転により、粉砕ブレード82の周囲のパン原料が正方向(図7では時計方向)に流動する。それにつられてドーム状カバー83が正方向に動くと、混練ブレード84は流動していないパン原料から抵抗を受けて、開き姿勢(図7(b)参照)から折り畳み姿勢(図7(a)参照)へと角度を変えて行く。これにより、第2係合体942の係合部942aが、第1係合体941の係合部941aの回転軌道(図6の破線参照)に干渉する角度となる。そして、カバー用クラッチ94がブレード回転軸72とドーム状カバー83とを連結し、ドーム状カバー83はブレード回転軸72によって本格的に駆動される態勢に入る。ドーム状カバー83と折り畳み姿勢になった混練ブレード84とは、ブレード回転軸72とともに正方向回転する。
【0099】
なお、以上に説明したカバー用クラッチ94の連結を確実に行うために、練り工程初期におけるブレード回転軸72の回転は、間欠回転或いは低速回転とするのが好ましい。また、上述のように、混練ブレード84が折り畳み姿勢になると、混練ブレード84の延長上に補完混練ブレード93が並ぶために、混練ブレード84があたかも大型化したかのようになって、パン原料は力強く押される。このため、生地の練り上げをしっかり行える。
【0100】
混練ブレード84(この用語は、折り畳み姿勢においては、補完混練ブレード93を含む表現として用いる。以下同様。)の回転は、練り工程の初期においては非常にゆっくりとされ、段階的に速度が速められるように制御装置110によって制御される。混練ブレード84の回転が非常にゆっくりである練り工程の初期段階において、制御装置110は自動投入駆動部115を制御して、自動投入容器32のロック機構323によるロック状態を解除させる。これにより、容器蓋322が重力によって回動し、例えばグルテン、ドライイースといったパン原料がパン容器70内に自動投入される。
【0101】
また、本実施形態では、自動投入容器32に収納されるパン原料を、混練ブレード84が回転している状態で投入することにしているが、これに限定されず、混練ブレード84が停止している状態で投入してもよい。ただし、本実施形態のように、混練ブレード84が回転している状態でパン原料を投入するようにした方が、パン原料を均一に分散することができるので好ましい。
【0102】
自動投入容器32に収納されたパン原料がパン容器70に投入された後は、混練ブレード84の回転によって、パン原料は所定の弾力を有する一つにつながった生地(dough)に練り上げられていく。混練ブレード84が生地を振り回してパン容器70の内壁にたたきつけることにより、混練に「捏ね」の要素が加わることになる。混練ブレード84の回転時にはドーム状カバー83も回転する。ドーム状カバー83が回転すると、ドーム状カバー83に形成されるリブ83cも回転するために、ドーム状カバー83内のパン原料は速やかに窓83bから排出され、混練ブレード84が混練しているパン原料の塊(生地)に同化する。
【0103】
なお、練り工程においては、ドーム状カバー83と共にガード85も正方向に回転する。ガード85のスポーク853は、正方向回転時、ガード85の中心側が先行しガード85の外周側が後続する形状とされている。このために、ガード85は、正方向に回転することにより、ドーム状カバー83内外のパン原料(パン生地)をスポーク853で外側に押しやる。これにより、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0104】
また、ガード85の外周に設けられる柱855は、ガード85が正方向に回転するときに回転方向前面となる面855a(図4参照)が、上向きに傾斜する構成となっている。このために、混練時、ドーム状カバー83の周囲のパン原料(パン生地)が柱855の回転方向前面855aで上方に跳ね上げられる。跳ね上げられたパン原料は、上方のパン原料の塊(生地)に同化するために、パンを焼き上げた後に廃棄分となる原料の割合を減らすことができる。
【0105】
自動製パン器1においては、練り工程の時間は、所望の弾力を有するパン生地が得られる時間として実験的に求められた所定の時間(例えば10分程度)を採用する構成としている。なお、具材(例えばレーズン、ナッツ、チーズ等)入りのパンを焼く場合には、この練り工程の途中で具材が投入されるようにすればよい。
【0106】
練り工程が終了すると、制御装置110の指令によって発酵工程が開始される。この発酵工程では、制御装置110はシーズヒータ42を制御して、焼成室40の温度を、発酵が進む温度(例えば38℃)に維持する。そして、発酵が進む環境下で所定の時間(例えば30〜60分程度)放置される。
【0107】
なお、場合によっては、この発酵工程の途中で、混練ブレード84を回転してガス抜きや生地を丸める処理を行うようにしても構わない。
【0108】
発酵工程が終了すると、制御装置110の指令によって焼成工程が開始される。制御装置110はシーズヒータ42を制御して、焼成室40の温度を、パン焼きを行うのに適した温度(例えば120〜130℃程度)まで上昇させる。そして、制御装置110は、焼成環境下で所定の時間(例えば50分程度)パンを焼くように制御する。焼成工程の終了については、例えば操作部20の液晶表示パネルにおける表示や報知音等によってユーザに知らされる。ユーザは、製パン完了を検知すると、蓋30を開けてパン容器70を取り出して、パンの製造を完了させる。
【0109】
なお、パン容器70内のパンは、例えば、パン容器70の開口を斜め下に向けることで取り出すことができる。そして、このパンの取り出しと同時に、ブレード回転軸72に取り付けられたブレードユニット80もパン容器70から取り出される。上述のように、本実施形態の自動製パン器1では、ブレード回転軸72の形状の工夫(図10(a)参照)により、ブレード回転軸72とユニット用シャフト81とが固着する可能性が低くなっている。このために、スムーズなパンの取り出しが期待できる。また、ブレードユニット80の構成として、上述した、ユニット用シャフト81の先細り先端部Nがストッパー部材86から突出する構成(図12参照)を採用することで、ブレード回転軸72とユニット用シャフト81とが固着する可能性を更に低くできる。そして、これにより、ユーザは、更にスムーズなパンの取り出しを期待できる。
【0110】
また、ガード85の存在により、このパンの取り出し作業時にユーザは粉砕ブレード82に触れることがなく、ユーザは安全にパンの取り出し作業を行える。また、パンの底には、ブレードユニット80の混練ブレード84及び補完混練ブレード93(パン容器70の凹部71から上側に突き出ている)の焼き跡が残る。しかし、ドーム状カバー83とガード85が凹部71の中に収容される構成であるために、それらがパンの底に大きな焼き跡を残すようなことは抑制される。
(その他)
以上に示した自動製パン器の実施形態は本発明の例示にすぎず、本発明が適用される自動製パン器の構成は、以上に示した実施形態に限定されるものではない。
【0111】
例えば、以上に示した実施形態では、自動製パン器1が米粒を出発原料としてパンを製造する場合を示した。しかし、これに限らず、例えば小麦、大麦、粟、稗、蕎麦、とうもろこし、大豆等の米粒以外の穀物粒が出発原料として用いられる場合にも、本発明は適用可能である。
【0112】
また、以上に示した米粒用製パンコースの製造フローは例示であり、米粒用製パンコースは他の製造フローとしてもよい。一例を挙げると、粉砕工程後の休止工程は省いてもよい。
【0113】
また、以上に示した実施形態では、粉砕工程と練り工程とで別々のモータを使用する構成とした。しかし、本発明の適用範囲はこの構成に限定されず、粉砕工程と練り工程とで同一のモータが使用される場合にも本発明は適用可能である。
【0114】
また、以上に示した実施形態では、自動製パン器1が粉砕ブレード82を備える構成とした。しかし、本発明は、パン容器70に設けられるブレード回転軸72に筒状部材が被せられる構成の自動製パン器に対して広く適用可能である。例えば、粉砕ブレードが備えられない従来型の自動製パン器(小麦粉や米粉等の穀物粉からのみ、パンを製造できるもの)にも本発明は適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は、例えば家庭用の自動製パン器に好適である。
【符号の説明】
【0116】
1 自動製パン器
10 本体
50 混練モータ
60 粉砕モータ
70 パン容器
72 ブレード回転軸
72b ブレード回転軸の先端部
80 ブレードユニット
81 ユニット用シャフト(筒状部材)
81a 溝部(係合溝)
82 粉砕ブレード
83 ドーム状カバー(カバー)
84 混練ブレード
86 ストッパー部材(他部材)
94 カバー用クラッチ(クラッチ)
721 係合ピン(係合突起)
D1 第1直径部
D2 第2直径部
N 先細り先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パン原料が投入されるパン容器を本体内に受け入れてパンの製造工程を実行可能な自動製パン器であって、
前記本体内に設けられるモータと、
前記パン容器に取り付けられて、前記モータの駆動によって回転される回転軸と、
前記パン容器内で前記回転軸に被せられる筒状部材と、
を備え、
前記回転軸は、第1の直径を有する第1直径部と、前記第1直径部に挟まれるように設けられるとともに前記第1の直径より小さな第2の直径を有する第2直径部とを含み、
前記回転軸の前記筒状部材が被せられる部分には、少なくとも2つの前記第1直径部と、少なくとも1つの前記第2直径部と、が含まれる、自動製パン器。
【請求項2】
前記回転軸の前記筒状部材が被せられる側の先端部は、前記第1直径部となっている、請求項1に記載の自動製パン器。
【請求項3】
前記回転軸の側面には、前記筒状部材に形成される係合溝に係合する係合突起が設けられ、
前記係合突起は、前記第1直径部に形成されている、請求項1又は2に記載の自動製パン器。
【請求項4】
前記回転軸は、前記パン容器の底部を貫通するように設けられ、
前記筒状部材は、前記回転軸に被せられた状態で前記パン容器の底面に近い側となる端部に、先端に向けて先細りとなる先細り先端部を有し、
前記先細り先端部は、少なくとも先端側が他部材によって覆われることなく外部に露出している、請求項1から3のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項5】
前記筒状部材は、前記パン容器内で穀物粒を粉砕するために使用される粉砕ブレードと、前記パン容器内でパン生地を練り上げるために使用される混練ブレードとを備えるブレードユニットに含まれる部材である、請求項1から4のいずれかに記載の自動製パン器。
【請求項6】
前記ブレードユニットには、前記粉砕ブレードを覆うカバーと、前記回転軸と前記カバーとの連結状態を切り替えるクラッチと、が更に含まれ、
前記筒状部材は、前記回転軸とともに回転するように設けられ、
前記粉砕ブレードは、前記筒状部材に相対回転不能に取り付けられて前記回転軸とともに回転し、
前記カバーは、前記筒状部材に相対回転可能に取り付けられ、
前記混練ブレードは、前記カバーの外面に相対回転可能に取り付けられて、パン生地を練り上げる際の姿勢である折り畳み姿勢と、前記パン容器の内壁に当接する姿勢である開き姿勢との2姿勢をとり得るようになっており、
前記回転軸が一方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記折り畳み姿勢となって前記クラッチが前記回転軸と前記カバーとを連結し、前記カバー及び前記混練ブレードは前記回転軸とともに回転し、
前記回転軸が前記一方向と逆方向に回転する場合に、前記混練ブレードが前記開き姿勢になって前記クラッチが前記回転軸と前記カバーとの連結を切り離し、前記カバー及び前記混練ブレードは回転停止状態となる、請求項5に記載の自動製パン器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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