説明

自動製氷装置

【課題】 本発明は、冷凍室の庫内温度,送風の影響があっても電子制御基板を用いた制御を行うことなくサーモスタットの動作点に関係なく任意にヒータへの通電停止を行うことを目的とする。
【解決手段】
製氷皿,氷排出機構,氷剥離用ヒータ,所定温度で動作するサーモスタット,貯氷量検出機構を有し、家庭用冷凍冷蔵庫等の冷凍室に設置される自動製氷装置において、排氷レバー1回転で製排氷を行う場合に、氷排出機構の動作に連動して氷剥離用ヒータの作動を停止させるスイッチ機構を有する構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍庫内に備えられ所定のシーケンスに従って注水・製氷・排氷の動作を繰り返し実行する自動製氷装置に関し、特に排氷動作の改良に係わるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍室を備える家庭用冷凍冷蔵庫に搭載されている自動製氷装置では、冷凍室に設置された自動製氷装置の製氷皿上部より水を注水し、注水された水を製氷皿内の各氷枠に均等に行きわたらせ、周囲温度により冷却して製氷し、製氷後に製氷皿外部に設置されたヒータ等発熱器具により製氷皿を加熱して氷表面を溶かした後、排氷装置により掻き出して排氷を行う方式が一般的である。この様な自動製氷装置は、以下の特許文献にも示されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されている自動製氷装置では、サーモスタットスイッチ動作、モータ回転と電気的接点の動作の連動により排氷バーの1回転動作とヒータへの通停電を制御し、製排氷を実現させている。またこのほかにも特許文献2に電子制御方式の自動製氷装置が開示されている。この方式では、温度検出のためにサーモスタットではなく、サーミスタを使用して連続的に温度検出可能な構成とし、自動製氷装置に内蔵された制御基板と基板内に構成されたマイコンへのプログラムにより適宜動作開始温度を設定可能にし、冷凍冷蔵庫内の温度変化に対応した設定が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4756165号明細書
【特許文献2】米国特許第6574974号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の自動製氷装置では、サーモスタットの作動する温度によりモータ回転やヒータへの通電開始およびヒータへの通電停止が規制され、冷凍室内の温度,庫内冷却のための送風により冷凍冷蔵庫の機種に合わせサーモスタット動作温度の綿密な設定が必要となる問題がある。また電子制御方式では、装置内に制御基板、内蔵プログラム作製などの構成が追加されるため、構成が複雑となり、部品数が増え、価格上昇となる不都合がある。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点に留意して成されたものであり、冷凍室の庫内温度,送風の影響があっても電子制御基板を用いた制御を行うことなくサーモスタットの動作点に関係なく任意にヒータへの通電停止を行うことが可能な自動製氷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の自動製氷装置においては、注水され製氷を行う製氷皿,前記製氷皿で製氷された氷の氷排出機構,前記製氷皿にて製氷された氷の表面を溶融させる氷剥離用ヒータ,製氷皿の温度を検出し所定温度で動作するサーモスタット,貯氷箱内の貯氷量検出機構を有し、前記氷排出機構の動作に連動して氷剥離用ヒータの作動を停止させるスイッチ機構を有する構造としたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動製氷装置にあっては、氷排出機構の動作に連動して氷剥離用ヒータの作動を停止させるスイッチ機構を有するため、サーモスタットの動作点に関係なく任意にヒータへの通電停止を選択することができ、従来のようなサーモスタット動作温度の綿密な設定を行う必要がなく、また電子制御方式では、内蔵プログラム作製などの作業を行う必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態による自動製氷装置の斜視図である。
【図2】図1の自動製氷装置の電気結線図である。
【図3】図1の自動製氷装置の動作タイミング図である。
【図4】本発明の自動製氷装置の動作フロー図である。
【図5】本発明の他の実施形態による自動製氷装置の電気結線図である。
【図6】図5の自動製氷装置の動作タイミング図である。
【図7】従来例の自動製氷装置の電気結線図である。
【図8】図7の従来の排氷バー2回転型自動製氷装置の動作タイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,本発明による自動製氷装置の実施例を、図面を用いて説明する。図1は本発明の自動製氷装置の斜視図であり、複数の氷室用氷枠が配列された製氷皿1,各氷枠における氷を掻き出す排氷爪を連結した氷排出機構を構成する排氷レバー2,排氷レバー2を回転駆動する駆動モータやカム機構,各種スイッチ類等が収納されたハウジング3,製氷皿底面に設置された氷剥離用ヒータ,排氷された氷を収容する氷貯蔵タンクの貯氷量を検出する貯氷量検出機構としてのフィラーアーム4等で構成されている。カム機構を構成するカム軸は駆動モータにより回転され、このカム軸に排氷レバー2が連結されている。
【0011】
図2はこのような構成の自動製氷装置の動作制御のための内部結線を示す。AC115/230Vの電源に対し、温度ヒューズ10を介して駆動モータ12及びホールドスイッチ14(NO端子側)が接続され、モータ12及びホールドスイッチ14(NC側)に並列にヒータ16が接続されると共に、ホールドスイッチ14のNC端子とNO端子の間に、ウォータスイッチ18及びウォータバルブ20の直列回路と、サーモスタット22,サーモスタットスイッチ24及びフィラーアームスイッチ26の直列回路とがそれぞれ接続され、フィラーアームスイッチ26のNC端子がホールドスイッチ14のコモン端子に接続されている。なお、ウォータバルブ20は自動製氷装置外であって冷蔵庫に設置されている。この結線図の動作は、図3に示すタイミング図のようになっている。
【0012】
図7は従来の自動製氷装置の結線図であり、その動作が図8に示すようになっている。従来構成のサーモスタット22とフィラーアームスイッチ26との間に、ヒータ通電遮断スイッチ機構としてサーモスタットスイッチ24を挿入した構成が本実施形態の特徴である。
【0013】
ここで、図7に示す従来の自動製氷装置の動作について説明する。
まず、製氷皿に水が貯留されている状態では、サーモスタット22はオフであるため、モータ12は回転せず、製氷状態を待つ。この状態では、フィラーアーム4は図1に示すように、氷検知位置に保持されている。
【0014】
製氷皿の水が氷になると、この温度を検知したサーモスタット22はオンとなり、排氷モードの動作開始となり、サーモスタット22とフィラーアームスイッチ26とを介してモータ12への通電が開始され、モータ軸に連動した図外のカム軸が回転し始める。同時に、ヒータ16への通電も開始され、製氷皿1を加熱し始め、氷の離氷を促進する。カム軸が回転し始めて直ぐに、ホールドスイッチ14が作動し、モータ12はホールドスイッチ14を介して通電が継続される。
その直後、カム軸の作用によりフィラーアーム4が排氷に支障のない位置(製氷皿の下側)に移動すると共に、機構によりフィラーアームスイッチ26が作動する(NCオンとなる)。
【0015】
カム軸に連結された排氷レバー2の排氷爪が氷面に当接すると、氷を掻き出すよう押圧し、排氷レバー2により氷が可動状態になると、カム軸が回転を継続し、氷を製氷皿から掻き出す。この位置の前後で、カム軸のカム面の作用によりフィラーアームスイッチ26がNOオンとなり、さらにフィラーアーム4が氷検知位置に回動する(戻る)。
カム軸が1回転近く迄回転すると、ウォータスイッチ18がオン(NCオン)となるが、サーモスタット22がオンのままであるため、ウォータバルブ20には電流が流れず、注水されることはない。
【0016】
カム軸が360度回転した際、ホールドスイッチ14は一端オフとなるが、このときはサーモスタット22がオンとなっているため、モータ12はサーモスタット22を通じて通電が継続され、回転を継続する。その後、ホールドスイッチ14が切り換わってモータ12への通電が継続され、フィラーアーム4が戻り位置に回動し、フィラーアームスイッチ26がNCオンとなる。
さらに、カム軸の回転により製氷皿1から掻き出された氷は排氷爪により製氷皿の側面から放出され、下方の氷貯蔵タンクに収容される。その後、フィラーアームスイッチ26がNOオンになると共に、フィラーアーム4が氷検知位置に回動操作される。
【0017】
氷が完全に製氷皿1から取り除かれた後においても、サーモスタット22はオン状態となっているため、ヒータ16への通電は継続され、製氷皿1は所定の温度まで上昇する。この温度を検出したサーモスタット22はオフとなる。さらにカム軸の回転が継続し、ウォータスイッチ18がNCオンになると、サーモスタット22がオフになるため、ウォータバルブ20への通電が開始され、一定時間のバルブの開により製氷皿に注水が行われる。注水が完了する時間になるとウォータスイッチ18がNO側に切り換わり、その直後、ホールドスイッチ14がオフとなり、モータの回転は停止し、再び製氷待ち状態となる。
【0018】
上記のように、従来では、駆動モータ12によりカム軸を2回転させて排氷モードと注水モードとを行わせていたが、本実施形態の場合、サーモスタット22とフィラーアームスイッチ26との間にヒータ通電遮断スイッチ機構を構成する常閉スイッチであるサーモスタットスイッチ24を挿入することで、1回転動作で排氷モードと注水モードとを形成するようになっている。
【0019】
すなわち、図4の動作フロー図に示すように、製氷皿1への注水後、製氷皿1が所定温度まで冷却されて製氷が開始され、所定時間経過して製氷完了したと判断されると、上述と同様に、サーモスタット22が動作し、常閉のサーモスタットスイッチ24等を通して閉回路が構成され、駆動モータ12の回転動作が行われると同時に、ヒータ16への通電動作が始まる。その後、排氷レバー2が一定角度、例えば約90度回転した後に、機構リンクされたカム(図示せず)によりサーモスタットスイッチ10が開となり、ヒータ16の通電回路を遮断する。これによりヒータ16への通電が停止される。但しモータ12はホールドスイッチ14を通して通電が継続されるため、回転を続ける。
【0020】
製氷皿1の温度はヒータ16からの余熱により上昇を続け、所定温度に達した後、サーモスタット22がオフとなり、その接続が遮断される。その後もモータ12は回転を続け、排氷レバー2が原点手前の所定の位置に来たときにウォータスイッチ18がオンとなり、ウォータバルブ20への接続が行われ、注水信号が送出され、所定時間注水バルブ20への通電により製氷皿1に注水が行われ、完了後再び遮断され、排氷レバー2が排氷開始から1回転後の原点に戻り、一連の動作が完了し、停止する。
【0021】
図5及び図6は、本発明による他の実施形態の自動製氷装置を示したものであり、図5は結線図、図6はその動作を示すタイミング図である。この実施形態では、前記ヒータ通電遮断スイッチ機構(サーモスタットスイッチ10)の代替として、サーモスタット22’内部に任意に接点解除可能なサーモスタット復帰機能を持つ構成としたものである。
【0022】
そして、製氷動作が完了してサーモスタット22’がオンになると、上述したように、モータ12及びヒータ16への通電が開始され、排氷モードとなり、排氷レバー2が例えば約90度回転した際、カム機構によりサーモスタット22’の復帰スイッチが作動し、サーモスタット22’自身が強制的にオフ操作される。従って、この機構によりサーモスタット22’の通電遮断と同時に、ヒータ16への通電遮断が同時に行える。
【0023】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0024】
1 製氷皿
2 排氷レバー
4 フィラーアーム
12 駆動モータ
16 ヒータ
22 サーモスタット
24 サーモスタットスイッチ
22’サーモスタット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
注水された水を貯留し製氷を行う製氷皿,前記製氷皿で製氷された氷の氷排出機構,前記製氷皿にて製氷された氷の表面を溶融させる氷剥離用ヒータ,製氷皿の温度を検出し所定温度で動作するサーモスタット,貯氷箱内の貯氷量検出機構とを有し,冷凍室内に設置される自動製氷装置において、
前記氷排出機構の動作に連動して、氷剥離用ヒータの作動を停止させるスイッチ機構を有することを特徴とする自動製氷装置。
【請求項2】
前記スイッチ機構によるヒータ動作停止として、サーモスタット通電動作解除機構を使用することを特徴とする請求項1に記載の自動製氷装置。
【請求項3】
前記スイッチ機構は、前記サーモスタットに直列に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の自動製氷装置。
【請求項4】
前記スイッチ機構は、前記サーモスタットに内蔵された復帰スイッチで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動製氷装置。
【請求項5】
モータ、及び該モータにより動作し前記氷排出機構及び前記貯氷量検出機構を操作するカム機構を備え、前記スイッチ機構の動作が前記カム機構により行われることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の自動製氷装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−237519(P2012−237519A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107703(P2011−107703)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000228730)日本電産サーボ株式会社 (276)
【Fターム(参考)】