説明

自動販売機及びその制御方法

【課題】商品の表示位置をユーザに合わせて変更することが可能な自動販売機及びその制御方法を提供する。
【解決手段】ユーザの操作に基づいて商品をユーザに自動的に販売する自動販売機100は、複数の取り出し口101と、ユーザの瞳の位置を検出する瞳検出手段として機能する顔認識手段105及び瞳抽出手段106、取り出し口101のいずれに商品表示を行うかを判断する取り出し口選択制御手段107、を備える。取り出し口101は、ユーザが選択可能な商品を表示する表示手段、及び、ユーザが選択した商品をユーザに提供する商品提供手段が一体化している。取り出し口選択制御手段107は、検出した瞳の位置に対応する取り出し口101の表示手段に、商品表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動販売機及びその制御方法に関し、特に、商品表示位置を変更可能な自動販売機及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景となる技術としては、ユーザの操作に基づいて商品をユーザに自動的に販売する自動販売機の技術と、「デジタルサイネージ」と呼ばれる電子広告に関する技術がある。デジタルサイネージの技術分野においては、ディスプレイにカメラを装備し、ディスプレイに電子広告を表示し、これを見る人物をカメラで撮像して分析し、広告の効果を測定する技術がある。
【0003】
ドライブスルー形式で商品を販売する自動販売機の技術分野においては、本願出願前に公知となった文献の中では、特許文献1−4がある。特許文献1には、段落0005,0013等を参照すると、高さ補正台を用いて従来ある自動販売機をそのままドライブスルー形式に対応させること、また、サイド道路を設けることで安全でスムーズな購入を可能とすること、が記載されている。
【0004】
特許文献2には、自動販売機を操作部と商品ストック部に分けることで、ドライブスルー型の自動販売システムを構築することが記載されている。また、特許文献3には、ドライブスルーにおいては一方向に通行している自動車のみ商品の購入が楽であり、反対方向の車両は不便であるという問題を解決するために通行帯を別に設けることが記載されている。
【0005】
特許文献4には、ICカード等の記録媒体を自動販売機に接近させ、記録媒体に記録されているユーザの属性情報を読み取って、読み取った属性情報に対応付けられた重み計数を用いて表示する商品の優先順位を決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−310516号公報
【特許文献2】特開2004−013892号公報
【特許文献3】特開2005−301344号公報
【特許文献4】特開2008−234331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の自動販売機は、歩行者の標準的な身長に合わせて商品の表示を行う表示部や金銭の授受を行う操作部を配置しているため、車両に乗ったままで商品を注文し、対価を支払い、商品を受け取るドライブスルー形式にそのまま用いるには不都合があった。乗用車やトラック、バスなど、多様な座面高の車両がドライブスルーを利用する可能性があるためである。この問題を解決するために上記特許文献1−3に記載の関連技術が種々考案されている。
【0008】
しかしながら、上記関連技術においては、以下のような問題点がある。
特許文献1には、多車種に対応させるために高さ補正用設置台をいくつも準備する必要があるということと、同じ商品を販売する自動販売機を、車種毎に準備する必要があり、広いスペースが必要になるという課題がある。
【0009】
特許文献2には、自販機スタンドの高さを購入者自ら調整する必要があるため、労力のムダになるということと、上部に商品を運ぶためのベルトコンベアーを設けるため、車高の高さに制限が出てくるという課題がある。
【0010】
特許文献3では、特許文献1のように高さ補正用設置台は設けていないが、大型車両用自販機と中・小型車両用自販機の2種類を準備する必要があり、同様に広いスペースが必要になる。
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、商品の表示位置をユーザに合わせて変更することが可能な自動販売機及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の態様として、ユーザの操作に基づいて商品をユーザに自動的に販売する自動販売機であって、複数の取り出し口と、ユーザの瞳の位置を検出する瞳検出手段と、前記取り出し口のいずれに商品表示を行うかを判断する制御手段と、を備え、前記取り出し口は、ユーザが選択可能な商品を表示する表示手段、及び、ユーザが選択した商品をユーザに提供する商品提供手段が一体化しており、前記制御手段は、前記瞳検出手段が検出した瞳の位置に対応する前記取り出し口の前記表示手段に、商品表示を行うことを判断することを特徴とする、自動販売機を提供するものである。
【0013】
また、上記目的を達成するために、本発明は、第2の態様として、ユーザが選択可能な商品を表示する表示手段、及び、ユーザが選択した商品をユーザに提供する商品提供手段が一体化した取り出し口を複数備え、ユーザの操作に基づいて商品をユーザに自動的に販売する自動販売機の制御方法であって、ユーザの瞳の位置を検出するステップと、検出した瞳の位置に対応する前記取り出し口の前記表示手段に、商品表示を行うステップを含むことを特徴とする、自動販売機の制御方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、商品の表示位置をユーザに合わせて変更することが可能な自動販売機及びその制御方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を実施するための形態の装置の外観を示す図である。
【図2】図1の自動販売機100の機能構成を示すブロック図である。
【図3】図1の取り出し口101の構成を示す図である。
【図4】瞳検出後の取り出し口101の状態を示す図である。
【図5】商品決定時の取り出し口101の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る自動販売機100の外観を示す図である。図示のように、自動販売機100は、前面に複数の取り出し口101と、カメラ102を備える。カメラ102は、購入予定者が自動販売機100の近傍に来た時に地面から自動販売機100の高さまで撮影できる広角なカメラを用いるとよい。また、自動販売機100は、購入予定者(車両を含む)が自動販売機100に近づいたことを検知する人感センサ110と、自動販売機100の状態や購入予定者へのメッセージなどを表示する自動販売機据付表示機構111とを備える。自動販売機据付表示機構111としては、例えば電光掲示板等の表示装置が利用できる。自動販売機据付表示機構111は、通常時はニュースを流しており、販売動作時には自動販売機100の状態や購入予定者へのメッセージなどを表示する。
【0018】
なお、図示の自動販売機100は、説明のための一例であって、本発明を限定するものではない。例えば、自動販売機100は、上下4段、左右3列にわたって複数の取り出し口101を備える構成であるが、本発明はこれに限定されない。
【0019】
図2に、自動販売機100の機能構成を示す。図示のように、自動販売機100は、図1に示した構成の他に、内部に自動販売機構部103と、コントローラ104を備える。自動販売機構部103は、内部に商品保管庫、金庫、商品搬送部等を備え、取り出し口101を介した購入者の操作に応じて、複数の取り出し口101の各々に、商品を運ぶ機能を有する。
【0020】
コントローラ104は、例えばASIC(特定用途向けIC)等を用いて、ソフトウェアプログラムによって実現される。コントローラ104は、自動販売機100の全体の制御を行い、顔認識手段105、瞳抽出手段106、取り出し口選択制御手段107を有する。
【0021】
顔認識手段105は、カメラ102からの入力に基づいて購入者の顔認識を行う。瞳抽出手段106は、顔認識手段105の認識結果に基づいて、認識した顔から瞳の位置を抽出する。顔認識手段105と瞳抽出手段106により、購入者の瞳の空間的な位置が得られる。得られた瞳の空間的な位置は、取り出し口選択制御手段107に入力される。取り出し口選択制御手段107は、入力された購入者の瞳の空間的な位置に対応する取り出し口101を選び出し、購入者が商品の選択や購入操作をできるように制御する。
【0022】
顔認識手段105と瞳抽出手段106による購入者の瞳の空間的な位置の割り出し(以下、「瞳検出」という)は、例えば、次のように行うとよい。第1に、自動販売機100に据え付けのカメラ102(図1に示した例では3個。ここで、カメラは、適切な位置に購入予定者が来た時に地面から自動販売機の高さまで撮影できる広角なカメラを用いるとよい。)の初期位置(地面からの高さ)は固定とし、メモリ(不図示)に記憶しておく。
【0023】
第2に、購入予定者が自動販売機100の前に来たときに、適切な位置(例えば自動販売機から30cm)まで来るようにセンサーなどを用いて誘導する。第3に、購入予定者が適切な位置に来た場合、顔認識手段105と瞳抽出手段106により、カメラ102で撮影した映像を上下4分割し、検出した瞳がどの位置に属するかを割り出す。ここで、上下4分割するのは図1に示す例が上下4段にわたって取り出し口101が並んでいるものであるからであって、n段にわたって並んでいる場合は上下n分割する。
本実施形態では、以上のような手順で所望の瞳検出を行う。
【0024】
また、顔認識手段105は、顔認識の際に、認識した顔の人物の性別や年代など、当該人物の属性情報を推定する。自動販売機100を図示しない外部サーバと接続し、外部サーバに顔認識の結果得られた特徴量を問い合わせて人物の属性情報を推定する構成としてもよい。
【0025】
次に、本実施形態に係る取り出し口101の構成について説明する。図3に、本実施形態に係る取り出し口101の構成を示す。図3において、(a)は取り出し口101を前面から見た外観図、(b)は横面から見た図である。
【0026】
図示のように、取り出し口101は、タッチパネル付き液晶108とカバー部材109とを有し、タッチパネル付き液晶108とカバー部材109は一体化された構成である。タッチパネル付き液晶108は、広告情報や商品表示等を行う表示手段と、購入者(購入予定者)の操作入力を受け付ける操作手段の両者の機能を備える。また、図3(b)中、タッチパネル付き液晶108は、A点を中心に矢印方向にチルトする。
【0027】
一方、カバー部材109は、B点を中心に矢印方向にチルトする。カバー部材109は、外部からの物理的作用からタッチパネル付き液晶108を保護する機能と、購入者が商品を選択ないし購入した際に商品を提供する商品提供部材としての機能を備える。カバー部材109は、外部からタッチパネル付き液晶108の表示内容を視認できるように透過性のあるものが好ましい。
【0028】
取り出し口101は、自動販売100の動作に対応して状態が変化する。取り出し口選択制御手段107が、購入予定者の瞳検出後、検出された瞳の位置に対応する取り出し口101を選び出した場合、選び出された取り出し口101は、カバー部材109をチルトし、タッチパネル付き液晶108を、購入予定者がタッチパネル付き液晶108を用いて操作可能な状態にする。図4に、取り出し口101のカバーが外された状態を示す。
【0029】
また、購入予定者による操作により購入商品が決定すると、タッチパネル付き液晶108がチルトして、自動販売機構部103の一部である商品受け部1031が商品をカバー部材109に搬送可能な状態にする。図5に、商品決定時の取り出し口101の状態を示す。
【0030】
次に、上記構成を有する本実施形態に係る自動販売機100の動作について、以下で説明する。以下では、購入予定者が車に乗って自動販売機100を利用するケースを用いて説明する。
【0031】
まず、自動販売機100に車(購入予定者)が近づいてくることを自動販売機100内の人感センサ110が感知する。ここで、自動販売機据付表示機構111が「いらっしゃいませ」と表示する。また、車(購入予定者)が自動販売機100の近く(例えば30cm程度)まで来るように音声などで誘導する。
【0032】
次に、車(購入予定者)が適切な位置で止まったら瞳検出を行う。瞳検出結果に応じて、取り出し口選択制御手段107が、検出できた瞳の座標位置により適切な取り出し口101を決定する。なお、その際、複数の瞳が検出できた場合には各検出瞳の座標に合った取り出し口101を決定する。
【0033】
コントローラ104は、選択した取り出し口101のカバー部材109を開き、タッチパネル付液晶108に瞳検出時に用いた顔認識により抽出した推定性別・年代別人気商品一覧を表示する。その際、同じ商品について全体の液晶にも表示する。
【0034】
複数の瞳を検出したため、複数の取り出し口が存在する場合には、各取り出し口101のタッチパネル付き液晶108にもそれぞれの顔認識により抽出した推定性別・年代別人気商品一覧を表示する。ただし、全体の液晶への商品一覧表示については、最初に検出した瞳の人について行う。なお、取り出し口への商品一覧表示時に「購入しない」表示も行うことで、瞳検出されたが購入する意思の無い人向けの対応を行う。
【0035】
取り出し口101のカバー部材109が開いている状態の時は、自動販売機据付表示機構111が「購入中」と表示する。購入予定者が商品選択をした場合、自動販売機構部103によって商品が搬送される。搬送の態様は、例えば、後方の商品保管庫から選択された商品が落下し、前方の商品受け部1031まで転がり、商品受け部1031が、商品購入操作が行われた取り出し口101まで商品を搬送するというものであってよい。取り出し口101まで商品受け部1031が移動する際、該当タッチパネル付液晶108が図5に示したように動くことによって、硬貨投入口などが購入予定者の位置まで移動できる。
【0036】
購入予定者が硬貨投入口に購入金額を入れ、清算が完了すると、該当タッチパネル付液晶108が垂直にもどり、商品受け部1031が下方に移動する。その後、商品受け部1031の受けトレー内ストッパーが外れ、商品がカバー部材109まで転がる。販売が完了すると、自動販売機据付表示機構111は、「ありがとうございました」と表示する。
【0037】
上述したように、本実施形態に係る自動販売機100においては、購入予定者の瞳の空間的位置を検出し、商品表示を行う位置を、検出した瞳位置にもっとも近い位置に変更することを可能にしている。
【0038】
また、本実施形態に係る自動販売機100は、割り出した位置を基準として、人気商品から商品表示を行う。ここで、人気商品の割り出しには、瞳検出時に用いた顔認識により抽出した推定性別・年代を用いる。そのため、購入予定者の属性に適合した適切な商品を販売することが可能になり、商品の購入意欲を増大させることが可能になる。
【0039】
また、本実施形態においては、取り出し口を購入予定者の瞳の位置に合わせて上下することができるために、例えば、自動車に乗車したままでも不便さを感じさせることなく商品の購入を可能にする。
【符号の説明】
【0040】
100 自動販売機
101 取り出し口
102 カメラ
103 自動販売機構部
1031 商品受け部
104 コントローラ
105 顔認識手段
106 瞳抽出手段
107 取り出し口選択制御手段
108 タッチパネル付き液晶
109 カバー部材
110 人感センサ
111 自動販売機据付表示機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの瞳の位置に対応する取り出し口の表示手段に、ユーザ選択できるように商品表示を行うことを特徴とする、自動販売機。
【請求項2】
ユーザの操作に基づいて商品をユーザに自動的に販売する自動販売機であって、
複数の取り出し口と、
ユーザの瞳の位置を検出する瞳検出手段と、
前記取り出し口のいずれに商品表示を行うかを判断する制御手段と、を備え、
前記取り出し口は、ユーザが選択可能な商品を表示する表示手段、及び、ユーザが選択した商品をユーザに提供する商品提供手段が一体化しており、
前記制御手段は、前記瞳検出手段が検出した瞳の位置に対応する前記取り出し口の前記表示手段に、商品表示を行うことを判断することを特徴とする、自動販売機。
【請求項3】
前記取り出し口は、ユーザによる操作を受け付ける操作手段が前記表示手段と一体化していることを特徴とする、請求項2記載の自動販売機。
【請求項4】
ユーザの顔認識を行う顔認識手段を備え、
前記制御手段は、前記顔認識手段による認識結果に基づいて、ユーザの属性を判断し、前記表示手段に、判断した前記属性に対応する商品表示を行うことを特徴とする、請求項2又は3記載の自動販売機。
【請求項5】
ユーザが選択可能な商品を表示する表示手段、及び、ユーザが選択した商品をユーザに提供する商品提供手段が一体化した取り出し口を複数備え、
ユーザの操作に基づいて商品をユーザに自動的に販売する自動販売機の制御方法であって、
ユーザの瞳の位置を検出するステップと、
検出した瞳の位置に対応する前記取り出し口の前記表示手段に、商品表示を行うステップを含むことを特徴とする、自動販売機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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