説明

自動販売機

【課題】顧客が所有する人体通信端末に記憶された電子マネーの決済を人体通信を利用して行なう自動販売機において、利用者の操作が簡単であって、誤って決済することを防止する自動販売機を提供する。
【解決手段】複数の商品選択ボタンに夫々設けられた人体通信用の送受信アンテナと、
前記電子マネーの決済処理を実行する決済手段と、
前記複数の送受信アンテナの内の1つを前記決済手段に通信可能に接続する通信接続手段とを具え、
前記商品選択ボタンが押された時、該押された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナと前記決済手段とを前記通信接続手段により接続し、
予め定められた所定時間内に、再び同じ商品選択ボタンが押された時、前記決済手段により前記押された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナを介して前記人体通信端末と通信して前記電子マネーの決済を行う自動販売機とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
顧客が所有する人体通信端末に記憶された電子マネーの決済を人体通信を利用して行なう自動販売機であって、特に信頼性の高い決済処理を可能とする自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人体を介してデータを伝送する人体通信が提案されている。この人体通信の方式には、送信機側の発信によって人体などの伝送媒体に電界を誘起させ、この電界の変動に信号を載せることで情報を送信し、電界の変化を受信機で検知することで情報を受信する電界方式と、人体に微弱電流を流して通信する電流方式がある。
【0003】
また、このような人体通信を処理する人体通信モジュールを搭載した小型の端末に電子マネーを記憶して自動販売機の利用者(顧客)が所持し、自動販売機にも人体通信を処理する人体通信モジュールを搭載すると共に、自動販売機の商品選択ボタンに人体通信の送受信の為のアンテナを設け、顧客が商品選択ボタンと触れた時に、利用者の所持する小型の端末と人体を介して通信することで決済する自動販売機が提案されている。(例えば特許文献1(段落0042乃至0045および図6と図7)参照)
このような自動販売機は、電子マネー記憶媒体を自動販売機に搭載されたカードR/Wへかざす事無く商品を購入できるから、顧客にとって自動販売機の決済が簡単である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−173913
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された人体通信によって電子決済をする自動販売機では、人体通信をする端末を所持する利用者が、自動販売機の商品選択ボタンに誤って触ってしまった場合でも決済してしまう虞がある。
【0006】
本発明は上述した問題に鑑み、簡単な操作で商品の購入が可能であって、なおかつ人体通信端末を所持する自動販売機の利用者(顧客)の意に反した決済を防止できる自動販売機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の問題を解決する為に、本発明の自動販売機は、
顧客が所有する人体通信端末に記憶された電子マネーの決済を人体通信を利用して行なう自動販売機において、
前記自動販売機は、複数の商品選択ボタンに夫々設けられた人体通信用の送受信アンテナと、
前記電子マネーの決済処理を実行する決済手段と、
前記複数の送受信アンテナの内の1つを前記決済手段に通信可能に接続する通信接続手段とを具え、
前記商品選択ボタンが押された時、該押された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナと前記決済手段とを前記通信接続手段により接続し、
予め定められた所定時間内に、再び同じ商品選択ボタンが押された時、前記決済手段により前記押された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナを介して前記人体通信端末と通信して前記電子マネーの決済を行う自動販売機とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の自動販売機によれば、人体通信端末を所有した顧客に商品選択ボタンを押されたことを検知してから、所定の時間内に再び同じ商品選択ボタンが押されたこと検知した時に、顧客が所持する人体通信端末と通信して電子マネーの決済処理を実行するから、人体通信端末を所有した顧客が間違って商品選択ボタンに触れてしまっただけでは決済しない。従って、人体通信端末を所持する利用者の意に反して決済されることを防止でき、信頼性の高い決済をすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の1実施例に係る自動販売機に搭載される人体通信のための商品選択ボタンを説明する為の概略構成図。
【図2】本発明の1実施例に係る自動販売機の構成を説明する為のブロック図
【図3】本発明の1実施例に係る人体通信端末の構成を説明するためのブロック図
【図4】本発明の1実施例に係る自動販売機50の主制御部51の商品販売処理を説明する為のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0011】
図1は、本発明の1実施例に係る自動販売機の商品選択スイッチを説明する為の概略構成図である。
図1の1aは、後述する本実施例に係る自動販売機50に設けられた複数の商品選択ボタン1a〜1cの内の1つである商品選択ボタン1aの図である。なお、複数の商品選択ボタン1a〜1cは、全て同じ構造である。
【0012】
図1に示すように、商品選択ボタン1aには、該商品選択ボタン1aを押下されたことを検知する為のスイッチ2aを具える。このスイッチ2aは、線4aよって、後述する自動販売機50の主制御51に接続されており、商品選択ボタンが押下されると押下を示す信号(押下信号)を後述する自動販売機50の主制御部51へ伝える。
【0013】
また、商品選択ボタン1aの指が触れる部分には、人体通信によって情報を送受信する送受信アンテナ3aが設けられている。この送受信アンテナ3aは、後述する自動販売機50に搭載された人体通信決済装置30(決済手段)と通信線5aにより接続されており、この人体通信決済装置30からの電気信号に応じて生体に電界を誘起させて情報を送信するとともに、後述する顧客が所有する人体通信端末100から人体を介して伝達される電界を、電気信号へと変換して人体通信決済装置30へと送信するものである。
なお、送受信アンテナ3aは、導電性を有する部材等で構成されており、送受信アンテナを保護する為の樹脂のカバー6aで覆われている。
【0014】
次に、本実施例に係る自動販売機について、図2を用いて説明する。図2は本実施例に係る自動販売機の構成を説明する為のブロック図である。
自動販売機50の各商品選択ボタン1a,1b,1cには、それぞれスイッチ2a,2b,2cが設けられており、各スイッチ2a,2b,2cは、それぞれ信号線4a,4b,4cによって、自動販売機50の主制御部51と接続されている。各商品選択ボタン1a,1b,1cが押下されるとスイッチ2a,2b,2cによって主制御部51へ押下信号が伝えられる。
【0015】
また、商品選択ボタン部1a,1b,1cには、送受信アンテナ3a、3b、3cがそれぞれ設けられている。この送受信アンテナ3a、3b、3c人体通信決済装置30と通信線5a、5b、5cによって接続されている。
【0016】
また、通信線5a、5b、5cは途中に通信接続手段54(マルチプレクサ回路)が配置されている。また、通信接続手段54は、自動販売機50の主制御部51と制御線52によって接続されている。通信接続手段54は、主制御部51の指令に応じて送受信アンテナ3a、3b、3cの内の1つと人体通信決済装置30とを電気的に接続、あるいは切断するものである。従って、人体通信決済装置30は、通接続手段54によって接続された送受信アンテナを介して通信が可能となる。
【0017】
人体通信決済装置30は、電子マネーの決済処理を実行する装置であって、制御部31と人体通信モジュール20を具えている。
【0018】
人体通信モジュール20は、人体通信処理部22とI/O回路21を有する。人体通信モジュール20は、送受信アンテナ3a〜3cから送られてくる電気信号を人体通信処理部22で増幅、雑音除去などの信号処理および波形整形等の処理をし、さらにI/O回路21を介して制御部31へと出力する。また、制御部31からの送信データをI/O回路21を介して受け取ると、この送信データを送受信アンテナ3a〜3cに送るものである。
【0019】
人体通信決済装置30の制御部31は、自動販売機50の主制御部51から代金の金額を含む決済処理コマンドを受けると後述する自動販売機の利用者が所有する人体通信端末100に記憶された電子マネーの決済処理を実行する。
人体通信決済装置30による電子マネーの決済処理を具体的に説明すると、
自動販売機50の主制御部51から代金の金額を含む決済処理コマンドを受けると、人体通信決済装置30は、人体通信装端末100が記憶する電子マネーの残金を読み出して、自動販売機50の主制御部51から送られて来た代金と比較し、人体通信端末100に決済可能な残金の有無を確認する。そして決済が可能の時には、決済処理を実行して決済完了を示す信号を自動販売機50の主制御部51へと送信する。また代金の支払が不可能な場合には、決済不可能を示す信号を自動販売機50の主制御部51へ送信する。
【0020】
次に、上述した本実施例に係る自動販売機50に対して電子マネーによる代金の支払をする為に利用者が所持する人体通信端末100について説明する。
図3は、本実施例の人体通信端末100の構成を説明するためのブロック図である。
人体通信端末100は、メモリ106に電子マネーを記憶し、この電子マネーを人体通信によって人体を介して自動販売機へ支払う端末である。
【0021】
人体通信端末100は、生体に誘起されて伝達されてくる電界を受信するとともに、生体に電界を誘起させて生体に情報を伝達する(通信する)送受信アンテナ101と、メモリ106に記憶された電子マネーの減算(支払)や加算(電子マネーのチャージ)の処理する制御回路105と、送受信アンテナ101と制御回路105の間に接続され送受信アンテナ101が受信した電界通信による情報を制御回路105側で受信可能な信号へ変換するとともに、制御回路105から送られて来た信号を送受信アンテナ101を介して人体通信するように処理する人体通信モジュール102から構成されている。
【0022】
さらに人体通信モジュール102を具体的に説明すると、人体通信モジュール102は、該送受信アンテナ101から送られてくる電気信号を人体通信処理部103で、増幅、雑音除去などの信号処理および波形整形等の処理をしさらにI/O回路104を介して制御回路105へと出力する。また、制御回路105からの送信データをI/O回路104を介して受け取ると、この送信データを送受信アンテナ101に送るものである。
【0023】
このように構成された人体通信端末100は、自動販売機50の商品選択ボタン1a〜1cに設けられた送受信アンテナ3a〜3cを介して人体通信決済装置30と通信し、人体通信装置30の主制御部31からの指令に応じて代金支払を実行する。
【0024】
次に、自動販売機50の主制御部51の商品販売処理を、図4のフローを参照して説明する。
自動販売機50の主制御51は、商品選択ボタン1a〜1cのどれか1つが押下されるまでは、各送受信アンテナ3a〜3cと人体通信決済装置30との接続を切った状態にあり、人体通信による送信も受信も出来ない状態で待機している。
【0025】
ここで、商品選択ボタン1a〜1cのどれか1つが押下されると、押された商品選択ボタンからの押下信号が主制御部51に送られてくる。(ステップ1でyes)
これにより主制御部51がこの押下信号により商品選択ボタンが押されたことを検知し、図示しないメモリに押下された商品選択ボタンを記憶する。(ステップ2)
【0026】
さらに、主制御部51は、通信接続手段54(マルチプレクサ回路)に対して指示し、押下された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナを、人体通信決済装置30へ通信可能に接続させる。(ステップ3)
【0027】
次に、主制御部51は、最初に商品選択ボタンが押されてから、所定の時間の間に、再び同じ商品選択ボタンが押されるまでの時間を測定するモニタタイマを起動する。本実施例ではモニタタイマは4秒間とする。(ステップ4)
尚、ステップ2,3,4の処理順序は、異なっていても構わない。
【0028】
ここで、同じ商品選択ボタンが所定の時間内に押されたことを検知すると(おなじ商品選択ボタンからの押下信号を受けると)、(ステップ5でYes)押された商品選択ボタンに対応する商品の代金の決済処理コマンドを人体通信決済装置30へ送る。(ステップ6)
【0029】
人体通信決済装置30が決済処理を実行し、主制御部51が人体通信端末100から代金を受領した旨の信号を受領すると決済を完了し(ステップ7でYes)、通信接続手段54によって接続している通信線を電気的に切断して人体通信を終了し(ステップ8)、押下された商品選択ボタンに対応する商品を放出し(ステップ9)、販売処理を終了する。
【0030】
なお、ステップ5において、所定の時間(4秒)が経過しても、同じ商品選択ボタンが押されなかった場合(ステップ10でYes)は、メモリに記憶した商品選択ボタンの番号をクリアにし(ステップ11)、接続している通信線を電気的に切断し(ステップ12)、決済処理を終了する。
【0031】
以上説明したように、本発明の実施例に係る自動販売機50は、人体通信端末100を所有した顧客が指で商品選択ボタン1a〜1cを2回押下することで、決済処理を実行し、商品を放出する。従って顧客が自動販売機で商品を購入する時の操作が簡単である。
【0032】
さらに、人体通信端末を所有した顧客が間違って商品選択ボタンに触れてしまっただけでは決済しない。従って人体通信端末を所持する利用者の意に反して決済されることを防止でき、信頼性の高い決済をすることが出来る。
【0033】
また、自動販売機50は、1回目に商品選択ボタンを押下されたことを検知した時、その押下された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナとの通信を接続して、接続された送受信アンテナとだけ通信するようにしたから、商品販売処理をしていない時(待機状態)において、通信コマンドを送出することや、受信待ちうけ状態とする必要が無く、人体通信モジュールの消費電力を抑えることが出来る。
【0034】
なお、上記の実施例において、本発明の決済手段は、電子決済処理を実行する制御部31と人体通信モジュール20とを一体に備えた人体通信決済装置30として説明してきたたが、本発明に係る決済手段はこの構成に限定されるものではなく、制御部31の決済処理を実行する制御部と前記人体通信ジュールとを独立して自動販売機内に配置する構成や、決済処理を自動販売機の主制御50が実行する構成としても良い。
【0035】
また、上記の実施例においては、人体通信端末および自動販売機の人体通信決済装置に搭載された人体通信モジュール及び送受信アンテナは、電界通信方式によって通信するものとして説明してきたが、本発明は電界通信方式に限定されるものではなく、電流方式も含む。電流方式の場合には、人体通信モジュール及び送受信アンテナを電流方式とすると共に、商品選択ボタンのカバー6a〜6cを介さずに、直接送受信アンテナと人体が接触する商品選択ボタンの構成とすればよい。
【符号の説明】
【0036】
1a、1b、1c 商品選択ボタン
2a、2b、2c スイッチ
3a、3b、3c 送受信アンテナ
6a カバー
20 人体通信モジュール
21 I/O回路
22 人体通信処理部
30 人体通信決済装置
31 制御部
50 自動販売機
51 主制御部
54 通信接続手段(マルチプレクサ回路)
100 人体通信端末
101 送受信アンテナ
102 人体通信モジュール
103 人体通信処理部
104 I/O回路
105 制御部
106 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客が所有する人体通信端末に記憶された電子マネーの決済を人体通信を利用して行なう自動販売機において、
前記自動販売機は、複数の商品選択ボタンに夫々設けられた人体通信用の送受信アンテナと、
前記電子マネーの決済処理を実行する決済手段と、
前記複数の送受信アンテナの内の1つを前記決済手段に通信可能に接続する通信接続手段とを具え、
前記商品選択ボタンが押された時、該押された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナと前記決済手段とを前記通信接続手段により接続し、
予め定められた所定時間内に、再び同じ商品選択ボタンが押された時、前記決済手段により前記押された商品選択ボタンに設けられた送受信アンテナを介して前記人体通信端末と通信して前記電子マネーの決済を行うことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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