説明

自動販売機

【課題】利用者が硬貨返却部から硬貨を受け取る際に、硬貨を取りこぼすことなく確実に受け取ることのできる自動販売機を提供すること。
【解決手段】本発明の自動販売機1は、コインメカニズム15から払い出される硬貨の枚数が予め設定された設定値を超える場合に、1回の払い出し枚数が設定値を超えないように複数回に分けて硬貨を払い出すようコインメカニズム15を制御する硬貨払出制御部30を備える。硬貨払出制御部30は、前記複数回の各回において、コインメカニズム15の硬貨払出口15aから硬貨返却部11までの間に硬貨が存在しないと判定した場合に、コインメカニズム15から硬貨を払い出すよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コインメカニズムから払い出された硬貨を利用者が受け取るための硬貨返却部を備えた自動販売機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動販売機内に設置されるコインメカニズム(硬貨処理装置)から払い出された釣銭等の硬貨は、外扉の前面に設けられた受皿状の硬貨返却部に送り出される構造になっている。利用者が釣銭を受け取る際には、返却口から手指を受皿上に差し入れて、受皿に載っている硬貨を手前に掻き寄せてつかみ取るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−76529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、硬貨返却部に返却される硬貨の枚数が多いと、利用者が硬貨返却部から硬貨を受け取る際に硬貨をつかみ損ねて硬貨を取りこぼしてしまうおそれがあるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、利用者が硬貨返却部から硬貨を受け取る際に、硬貨を取りこぼすことなく確実に受け取ることのできる自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る自動販売機は、コインメカニズムから払い出された硬貨を利用者が受け取るための硬貨返却部を備えた自動販売機において、前記コインメカニズムから払い出される硬貨の枚数が予め設定された設定値を超える場合に、1回の払い出し枚数が前記設定値を超えないように複数回に分けて硬貨を払い出すよう前記コインメカニズムを制御する硬貨払出制御部を備え、前記硬貨払出制御部は、前記複数回の各回において、前記コインメカニズムの硬貨払出口から前記硬貨返却部までの間に硬貨が存在しないと判定した場合に、前記コインメカニズムから硬貨を払い出すことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る自動販売機は、上記請求項1において、前記硬貨払出制御部は、前記複数回の各回において、硬貨の払い出し枚数が前記設定値を超えている場合に、前記設定値枚数の硬貨を払い出す一方、硬貨の払い出し枚数が前記設定値を超えていない場合には、残りの硬貨をすべて払い出すことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項3に係る自動販売機は、上記請求項1又は2において、前記硬貨返却部は、底部が開口した筒型状を成すとともに、前記コインメカニズムと連通する払出位置と、前記コインメカニズムとの間が遮断される非払出位置との間で移動可能に外扉前面に配設され、前記コインメカニズムから硬貨が払い出された場合に前記硬貨返却部を前記払出位置に移動させることにより、前記開口から硬貨を送り出すことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項4に係る自動販売機は、上記請求項3において、前記硬貨返却部が非払出位置に位置することを検知する検知手段を備え、前記硬貨払出制御部は、前記検知手段によって前記硬貨返却部が非払出位置に位置することが検知された場合に、前記コインメカニズムの硬貨払出口から前記硬貨返却部までの間に硬貨が存在しないと判定し前記コインメカニズムから硬貨を払い出すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動販売機では、1回に払い出す硬貨の枚数を、利用者が片手で握ることのできる程度の枚数(例えば3〜5枚)に予め設定し、コインメカニズムから払い出される硬貨の枚数がこの設定値を超える場合に、1回の払い出し枚数が設定値を超えないように複数回に分けて硬貨を払い出す硬貨払出制御部を備えた構成としている。硬貨払出制御部は、硬貨を払い出す各回において、コインメカニズムの硬貨払出口から硬貨返却部までの間に硬貨が存在しないと判定した場合にコインメカニズムから硬貨を払い出すように制御する。上記のように構成したことで、釣銭の枚数が多い場合であっても、利用者は各回ごとに片手で容易に硬貨を握ることができるようになるため、従来のように硬貨をつかみ損ねて硬貨を取りこぼすといった事態を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1に係る自動販売機の正面図である。
【図2】図2は、図1に示した自動販売機の内部構造を示す斜視図である。
【図3】図3は、図1に示した硬貨返却部を側方から見た縦断面図であり、硬貨の払い出しを説明するための図である。
【図4】図4は、図1に示した硬貨返却部を側方から見た縦断面図であり、硬貨の払い出しを説明するための図である。
【図5】図5は、硬貨払出制御部が実行する硬貨の払い出し処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】図6は、硬貨払出制御部が実行する硬貨の払い出し処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】図7は、実施の形態2に係る自動販売機の正面図である。
【図8】図8は、図7に示した硬貨返却部を側方から見た縦断面図であり、硬貨の払い出しを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る自動販売機の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る自動販売機の正面図、図2は図1に示した自動販売機の内部構造を示す斜視図である。図1に例示する自動販売機1は、複数種類の缶入り飲料、ペットボトル入り飲料等の商品を販売するためのものであり、本体キャビネット2及び外扉3を備えている。本体キャビネット2は、複数の鋼板を組み合わせることによって構成したものであり、前面が開口した直方体形状を有している。
【0014】
本体キャビネット2の内部には、商品収納庫17が設けてある。商品収納庫17は、飲料缶やペットボトルを所望の温度に維持した状態で収容するためのもので、上方部には、コラム状のラック18が複数配設してある。各ラック18は、上部の商品投入口18aから投入された商品を収納し、最下部の商品を1つずつ切り出して搬出する。各ラック18の下側には、ラック18から搬出された商品を商品収納庫17の前方に搬出するシュータ19が設けてある。この商品収納庫17は、商品投入口18aが上下に分割された断熱性の内扉5aで開閉され、その下部が断熱性の内扉5aで開閉される。
【0015】
外扉3は、図2に示すように本体キャビネット2の一側縁部に支承され、本体キャビネット2の前面開口を閉塞するものである。外扉3の前面には、透明な電照板4が嵌め込んであり、この電照板4と、外扉3の内側面に設けた断熱性の中扉5bとによって展示室6を画成している。展示室6には、自動販売機1が販売する商品の商品見本7が展示してあり、電照板4には、商品見本と対応するように関連づけた選択ボタン8が配設してある。販売する商品の価格を超える貨幣が投入された場合には、選択ボタン8の押下が有効となる。
【0016】
外扉3における展示室6の近傍には、硬貨投入口10、硬貨返却部11、紙幣挿入口12、表示器13、返却レバー14等が配設してある。
【0017】
硬貨投入口10は、外扉3の背面側に配設したコインメカニズム(硬貨処理装置)15と連通し、硬貨を受け入れる部分である。コインメカニズム15は、硬貨投入口10から投入された硬貨の真偽と金種を識別し、金種ごとに収容するものであり、硬貨投入口10から投入された硬貨は、コインメカニズム15によって真偽と金種とを識別した後、金種ごとに収容され、識別できなかった硬貨は硬貨返却部11から利用者に返却される。また、コインメカニズム15は、利用者によって商品価格以上の貨幣が硬貨投入口10あるいは紙幣挿入口12から投入された後、商品が選択された場合に、投入金額から商品価格を減算し、残金を釣銭として払い出す。
【0018】
硬貨返却部11は、釣銭、あるいは、コインメカニズム15が識別できなかった硬貨を利用者に返却する返却口25を備えた部位であり、硬貨投入口10の下方に配設してある。この硬貨返却部11の詳細な構成については後述する。
【0019】
紙幣挿入口12は、外扉3の背面側に配設したビルバリデータ(紙幣識別装置)16と連通し、紙幣を受け入れる部分である。ビルバリデータ16は、紙幣挿入口12から挿入された紙幣を識別し、正規の紙幣と識別した場合に紙幣を内部に収容する一方、正規の紙幣でないと識別した場合に紙幣挿入口12から自動販売機1の外部に返却するものである。表示器13は、硬貨投入口10からコインメカニズム15に受け入れた硬貨や、紙幣挿入口12からビルバリデータ16に受け入れた紙幣の合計金額等を表示するものである。返却レバー14は、販売中止命令を入力する部分である。返却レバー14によって販売中止命令が入力された場合、受け入れた貨幣を返却する。
【0020】
図3及び図4は、図1に示した硬貨返却部11を側方から見た縦断面図である。以下、硬貨返却部11について詳しく説明する。硬貨返却部11は、図3に示すように、外筒部21、内筒部22及び弾性体23とを備えて構成してある。
【0021】
外筒部21は、底部が開口した円筒又は角筒等の筒状に形成されたものであり、外扉3の前面3aとの間に所定の間隔をあけた状態で、外扉3の前面3aに取付けられている。外筒部21の周面において、外扉3の前面3aと対向する所定の部位には貫通孔が形成されており、この貫通孔には、上述したコインメカニズム15から払い出される硬貨を硬貨返却部11に導くコインシュータ26の出口26bが接続されている。
【0022】
内筒部22は、硬貨の中でもっとも直径の大きい500円硬貨よりも大きい内径を有した筒状部材であり、その底部は開口し、利用者が硬貨を受け取るための返却口25が形成されている。この内筒部22は、外筒部21の内部に上下動可能に配設され、その周面には、硬貨を通過させるのに十分な大きさを有した貫通孔24が形成されている。この貫通孔24は、内筒部22が上動したときに外筒部21の貫通孔(すなわちコインシュータ26の出口26b)と重なる位置に形成されている。
【0023】
弾性体23は、外筒部21の上部内壁面と内筒部22の上部外壁面との間に介挿されるばね部材である。図3に示すように、内筒部22は、その下方部分が外筒部21の底部開口から外部に突出する態様で、弾性体23によって外筒部21に対して支持されている。
【0024】
図3に示す状態では、内筒部22は、弾性体23の弾性力により最下部位置に保持されている。この状態において、内筒部22の周面に形成された貫通孔24は、コインシュータ26の出口26bよりも下方に位置しており、コインシュータ26の出口26bは、内筒部22の周面によって塞がれている。すなわち、硬貨返却部11とコインメカニズム15(コインシュータ26)との間が遮断された状態である。したがって、コインメカニズム15からコインシュータ26に払い出された硬貨Cは、硬貨返却部11の内筒部22には払い出されない。以下では、図3に示される内筒部22の位置を「非払出位置」とよぶ。
【0025】
一方、図4に示すように、利用者が手のひらで内筒部22の底部を押し上げると、弾性体23の弾性力に抗して内筒部22が外筒部21に押し込まれる。このとき、内筒部22の貫通孔24がコインシュータ26の出口26bと合致したところで内筒部22が止まるように、図示しないストッパが設けられている。すなわち、図4に示した状態では、硬貨返却部11はコインメカニズム15(コインシュータ26)と連通した状態となる。その結果、コインメカニズム15からコインシュータ26に払い出された硬貨Cは、貫通孔24から内筒部22に払い出され、内筒部22を押し上げている利用者の手のひらに落ちる。以下では、図4に示される内筒部22の位置を「払出位置」とよぶ。
【0026】
利用者が返却口25から硬貨を受け取った後、返却口25から手を離すと、弾性体23が内筒部22の押し上げ方向と反対方向に復帰することで、内筒部22は図3に示す「非払出位置」に戻る。
【0027】
上述したコインメカニズム15は、以下に説明する硬貨払出制御部30によって、硬貨返却部11に払い出される硬貨の枚数が制御される。硬貨払出制御部30は、コインメカニズム15から払い出される硬貨の枚数が予め設定された設定値Nを超える場合に、1回の払い出し枚数がこの設定値Nを超えないように複数回に分けて硬貨を払い出すようコインメカニズム15を制御する。ここで、設定値Nは、利用者が片手で容易に握ることのできる程度の枚数(例えば3枚〜5枚程度)であり、自動販売機の作業者によって予め入力・設定される。
【0028】
ここで、設定値Nを5枚に設定した場合における硬貨の払い出しの一例について説明する。1回の払い出し枚数Mは設定値の5枚を超えない枚数である。たとえば、コインメカニズム15から払い出す硬貨の枚数が合計12枚である場合には、1回目に5枚、2回目に5枚、3回目に2枚を払い出す。このように、払い出す硬貨を分割して小出しに返却することで、利用者は、各回の払い出しの際に片手で容易に硬貨を握ることができ、かつ、一目で硬貨の枚数を認識することができる。
【0029】
また、コインメカニズム15から払い出す釣銭額が390円の場合、払い出す硬貨は100円玉3枚、50円玉1枚、10円玉4枚の計8枚であるから、1回目に5枚、2回目に3枚を払い出す。さらに、釣銭390円を金額の大きい硬貨から払い出すように設定した場合には、1回目に100円玉3枚、50円玉1枚、10円玉1枚の計5枚を払い出し、2回目に10円玉3枚を払い出す。このように、金額の大きい硬貨から払い出すように設定するか、あるいは、硬貨の種類別に払い出すように設定した場合、数種類の硬貨をランダムに払い出す場合と比べて、各回の払い出しでそれぞれいくら返却されたかを利用者が把握しやすくなる。
【0030】
ここで、1回目に払い出された硬貨がコインシュータ26に残っている状態で2回目の硬貨の払い出しが行われると、2回分の硬貨が返却口25に払い出されることとなり、利用者が硬貨を握りきれずに取りこぼしてしまうおそれがある。このような事態を防止するため、硬貨払出制御部30は、上述した複数回の払い出しの各回において、コインシュータ26に硬貨が存在しないと判定した場合にのみ、コインメカニズム15に硬貨の払出命令を送信する。すなわち、各回においてコインシュータ26に硬貨が存在すると判定した場合には、コインメカニズム15に硬貨の払出命令を送信しない。
【0031】
硬貨払出制御部30は、内筒部22の位置(払出位置/非払出位置)を検出する位置検出手段40の検出結果に基づいて、コインシュータ26に硬貨が存在するか否かを判定する。位置検出手段40は、例えば図3に示すように、外扉3の前面3a側に設けられる部材40aと、この部材40aに対向して設けられる内筒部22側の部材40bとから構成され、外扉3側の部材40aに対する内筒部22側の部材40bの位置を検出するものである。この位置検出手段40は、内筒部22がいったん払出位置に達した後、非払出位置に戻るという動きが行われたこと(すなわち利用者が手のひらで内筒部22を押し上げて硬貨を受け取ったこと)を検出する。
【0032】
以下、位置検出手段40の検出について具体例を挙げて説明する。なお、以下の例では、設定値Nを5枚とし、コインメカニズム15から払い出す硬貨の枚数を9枚とする。
【0033】
販売待機状態において、硬貨返却部11の内筒部22は非払出位置に位置している。利用者によって商品価格以上の貨幣が投入され、商品が選択されると、ラック18から当該商品が搬出される。コインメカニズム15は、投入金額から商品価格を減算して釣銭額を算出し、1回目の5枚の硬貨をコインシュータ26に払い出す。このとき、表示器13に「1回目の釣銭返却で硬貨を5枚払い出す」旨の表示を行うことで、利用者に対して釣銭の受け取りを促す。利用者が硬貨返却部11の返却口25に手のひらをあてて、内筒部22を払出位置まで押し上げると、コインシュータ26と内筒部22とが連通し、コインシュータ26から内筒部22に5枚の硬貨が払い出され、利用者の手のひらに落ちる。利用者が5枚の硬貨を握り、返却口25から手を離すと、弾性体23の弾性力で内筒部22が下方に移動する。内筒部22が非払出位置に戻ると、硬貨返却部11とコインシュータ26との間は遮断される。
【0034】
位置検出手段40は、上記の間に、内筒部22がいったん払出位置に達した後に非払出位置に戻るという動きが行われたことを検出する。位置検出手段40によってコインシュータ26に硬貨が残存していないことが検出された後、コインメカニズム15から2回目の4枚の硬貨を払い出すとともに、表示器13に「2回目の釣銭返却で硬貨を4枚払い出す」旨の表示を行うことで、利用者に対して再び釣銭の受け取りを促す。利用者が再び硬貨返却部11の返却口25に手のひらをあてて、内筒部22を払出位置まで押し上げると、コインシュータ26と内筒部22とが連通し、コインシュータ26から内筒部22に4枚の硬貨が払い出され、利用者の手のひらに落ちる。利用者が4枚の硬貨を握り、返却口25から手を離すと、弾性体23の弾性力で内筒部22が非払出位置に戻り、釣銭の返却が完了する。このとき、表示器13には「釣銭返却が終了した」旨の表示を行う。
【0035】
次に、図5及び図6は、硬貨払出制御部30が実行する硬貨の払い出し処理の流れを示すフローチャートである。以下、図5及び図6を参照しながら、硬貨払出制御部30の制御の一例について具体的に説明する。以下では、設定値Nを5枚に設定する。
【0036】
利用者によって販売する商品の価格を超える貨幣が投入された後、商品が選択されると、コインメカニズム15は、投入された金額から商品価格を減算し、釣銭額を硬貨払出制御部30に送信する。硬貨払出制御部30は、上述した位置検出手段40からの検出信号に基づき、硬貨の払い出しが可能な状態であるか否か、すなわち、コインシュータ26に硬貨が存在するか否かを判定する。硬貨払出制御部30は、コインシュータ26に硬貨が存在しないと判定した場合に(ステップS01:Yes)、払い出し枚数Mを計算する(SUB1)。
【0037】
払い出し枚数Mの計算は図6に示す手順で行われる。まず、払い出すべき硬貨の枚数Pが設定値Nよりも大きい場合には(ステップS02:Yes)、1回目の払い出し枚数Mを設定値N枚とし(ステップS03)、払い出すべき硬貨の枚数Pから今回の払い出し枚数Mを減算する(ステップS04)。例えば、払い出すべき硬貨の枚数Pが9枚の場合には、1回目の払い出し枚数Mを5枚とする。一方、払い出すべき硬貨の枚数Pが設定値Nよりも小さい場合には(ステップS02:No)、払い出し枚数MをP枚とし(ステップS05)、払い出すべき硬貨の枚数Pから今回の払い出し枚数Mを減算する(ステップS04)。例えば、払い出すべき硬貨の枚数Pが3枚の場合には、1回目の払い出し枚数を3枚とする。
【0038】
次いで、硬貨払出制御部30は、コインメカニズム15に対してM枚の硬貨を払い出す旨の制御信号を送信する(ステップS06)。コインメカニズム15は、硬貨払出制御部30からの制御信号を受信すると、1回目の硬貨の払出しを行う。コインメカニズム15から払い出されたM枚の硬貨は、図3に示すようにコインシュータ26に供給される。ここで、利用者によって硬貨返却部11における内筒部22の押上げ操作がなされると、図4に示すように、内筒部22とコインシュータ26とが連通状態となり、M枚の硬貨は内筒部22に送り出され、利用者の手のひらに落ち、回収される。
【0039】
1回目の払い出しが行われた後、硬貨払出制御部30は、ステップS04で算出した残りの硬貨枚数Pが0であるか否かを判定する(ステップS07)。残りの硬貨枚数Pが0でない場合には(ステップS07:No)、ステップS01に戻り、硬貨の払い出しが可能な状態であるか否かを再度判定する。例えば、残りの硬貨枚数Pが4枚(9−5=4)である場合には、2回目の払い出しを行うべく、コインシュータ26に1回目の硬貨が残存しているか否かを判定する。硬貨払出制御部30は、1回目に払い出した硬貨がコインシュータ26に残存していないと判定した場合に(ステップS01:Yes)、2回目の払出枚数Mを計算する(SUB1)。以下、1回目と同様の処理を繰り返す。
【0040】
一方、ステップS07において、ステップS04で算出した残りの硬貨枚数Pが0である場合には(ステップS07:Yes)、払い出し処理を終了する。
【0041】
以上説明したように、実施の形態1に係る自動販売機は、1回に払い出す硬貨の枚数を、利用者が片手で握ることのできる程度の枚数(例えば3〜5枚)に予め設定し、コインメカニズム15から払い出される硬貨の枚数がこの設定値を超える場合に、1回の払い出し枚数が設定値を超えないように複数回に分けて硬貨を払い出す硬貨払出制御部30を備えた構成としている。硬貨払出制御部30は、硬貨を払い出す各回において、コインシュータ26に硬貨が存在しないと判定した場合にコインメカニズム15から硬貨を払い出すように制御する。上記のように構成したことで、釣銭の硬貨枚数が多い場合であっても、利用者は各回ごとに片手で容易に硬貨を握ることができるようになるため、従来のように硬貨をつかみ損ねて硬貨を取りこぼすといった事態を防止することができる。
【0042】
また、本実施の形態に係る自動販売機における硬貨返却部11の内筒部22は、その底部に返却口25を有し、コインメカニズム15と連通する払出位置と、コインメカニズム15との間が遮断される非払出位置との間で上下動可能に外扉前面に配設された構成を有している。利用者が硬貨を受け取る際には、手のひらで返却口25を押し上げ、内筒部22を払出位置まで上動させることで、コインシュータ26から払い出された硬貨を手のひらに落下させる。硬貨返却部11を上記構成とすることで、従来の受皿式の硬貨返却部と比較して硬貨を握りやすくなり、硬貨の取りこぼしを確実に防止することができる。
【0043】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2の自動販売機について説明する。なお、実施の形態1の自動販売機と同一の構成については同一の符号を使用し、説明を省略する。
【0044】
図7は、本発明の実施の形態2に係る自動販売機1の正面図、図8は、図7に示した自動販売機1における硬貨返却部11を側方から見た縦断面図である。実施の形態2に係る自動販売機1は、硬貨返却部11の構成と、位置検出手段40に替えて硬貨検出手段50を設けた点以外は、上記実施の形態1と同じ構成を有している。
【0045】
実施の形態2における硬貨返却部11は、図8に示すように、外扉3の前面3aに形成された返却口3bの内部に配設されたものであり、コインシュータ26から供給される硬貨を受ける受皿部27aと、返却口3b上部の支軸28aに支持され、返却口3bを閉塞するフラッパ28とを備えた一般的な構成を有している。図8に示すように、受皿部27aの側方から上方に延在する態様で側壁部27bが設けられ、この側壁部27bに形成された貫通孔29がコインシュータ26の出口26bに接続された構成となっている。
【0046】
コインメカニズム15の硬貨払出口15aから払い出された硬貨は、コインシュータ26に導かれ、硬貨返却部11の受皿部27aに払い出される。受皿部27aに払い出された硬貨Cを取り出す際には、フラッパ28を図8に示す状態から返却口3bの内部方向に押し開き、手指を受皿部27aに差し入れて、受皿部27aに載っている硬貨Cをつかみ取る。
【0047】
実施の形態におけるコインメカニズム15も、実施の形態1と同様に、硬貨払出制御部30によって硬貨返却部11に払い出される硬貨の枚数が制御される。払い出しの制御方法は実施の形態1と同じである。すなわち、硬貨払出制御部30は、コインメカニズム15から払い出される硬貨の枚数が予め設定された設定値Nを超える場合に、1回の払い出し枚数がこの設定値Nを超えないように複数回に分けて硬貨を払い出すようコインメカニズム15を制御する。設定値Nは、利用者が片手で容易に握ることのできる程度の枚数(例えば3枚〜5枚程度)であり、自動販売機の作業者によって予め入力・設定される。
【0048】
実施の形態2の自動販売機1では、1回目に払い出された硬貨が受皿部27aに残っている状態で2回目の硬貨の払い出しが行われると、2回分の硬貨が受皿部27aに溜まってしまい、利用者が硬貨を握りきれずに取りこぼしてしまうおそれがある。このような事態を防止するため、硬貨払出制御部30は、上述した複数回の払い出しの各回において、受皿部27aに硬貨が存在しないと判定した場合にのみ、コインメカニズム15に硬貨の払出命令を送信する。すなわち、各回において受皿部27aに硬貨が存在すると判定した場合には、コインメカニズム15に硬貨の払出命令を送信しない。
【0049】
硬貨払出制御部30は、受皿部27a上の硬貨の有無を検出する硬貨検出手段50の検出結果に基づいて、受皿部27aに硬貨が存在するか否かを判定する。硬貨検出手段50は、例えば図8に示すように、受皿部27aの底部に設けられる重量センサで構成され、受皿部27a上の物体の重量を検出するものである。この硬貨検出手段50は、受皿部27a上の物体の重量変化を検出する。
【0050】
以下、硬貨検出手段50の検出について具体例を挙げて説明する。なお、以下の例では、設定値Nを5枚とし、コインメカニズム15から払い出す硬貨の枚数を9枚とする。
【0051】
利用者によって商品価格以上の貨幣が投入され、商品が選択されると、ラック18から当該商品が搬出される。コインメカニズム15は、投入金額から商品価格を減算して釣銭額を算出し、1回目の5枚の硬貨をコインシュータ26を通じて受皿部27aに払い出す。このとき、表示器13に「1回目の釣銭返却で硬貨を5枚払い出す」旨の表示を行うことで、利用者に対して釣銭の受け取りを促す。利用者は、硬貨返却部11の返却口3bからフラッパ28を押し開いて5枚の硬貨をつかみ取る。
【0052】
硬貨検出手段40は、上記の間に、受皿部27a上の物体の重量がいったん増えた後、重量がゼロに変化することを検出する。硬貨検出手段40によって受皿部27a上に硬貨が残存していないことが検出された後、コインメカニズム15から2回目の4枚の硬貨を払い出すとともに、表示器13に「2回目の釣銭返却で硬貨を4枚払い出す」旨の表示を行うことで、利用者に対して再び釣銭の受け取りを促す。利用者が再び受皿部27aからフラッパ28を押し開いて4枚の硬貨をつかみ取ることで、釣銭の返却が完了する。このとき、表示器13には「釣銭返却が終了した」旨の表示を行う。
【0053】
次に、実施の形態2の硬貨払出制御部30が実行する硬貨の払い出し処理の流れをフローチャートを参照して説明する。ここで、実施の形態2の硬貨払出制御部30が実行する硬貨の払い出し処理は、実施の形態1と同じであるため、フローチャートについては実施の形態1と同じ図5及び図6を用いて説明する。なお、以下では、設定値Nを5枚に設定する。
【0054】
利用者によって販売する商品の価格を超える貨幣が投入された後、商品が選択されると、コインメカニズム15は、投入された金額から商品価格を減算し、釣銭額を硬貨払出制御部30に送信する。硬貨払出制御部30は、上述した硬貨検出手段50からの検出信号に基づき、硬貨の払い出しが可能な状態であるか否か、すなわち、受皿部27aに硬貨が存在するか否かを判定する。硬貨払出制御部30は、受皿部27aに硬貨が存在しないと判定した場合に(ステップS01:Yes)、払い出し枚数Mを計算する(SUB1)。
【0055】
払い出し枚数Mの計算は図6に示す手順で行われる。まず、払い出すべき硬貨の枚数Pが設定値Nよりも大きい場合には(ステップS02:Yes)、1回目の払い出し枚数Mを設定値N枚とし(ステップS03)、払い出すべき硬貨の枚数Pから今回の払い出し枚数Mを減算する(ステップS04)。例えば、払い出すべき硬貨の枚数Pが9枚の場合には、1回目の払い出し枚数Mを5枚とする。一方、払い出すべき硬貨の枚数Pが設定値Nよりも小さい場合には(ステップS02:No)、払い出し枚数MをP枚とし(ステップS05)、払い出すべき硬貨の枚数Pから今回の払い出し枚数Mを減算する(ステップS04)。例えば、払い出すべき硬貨の枚数Pが3枚の場合には、1回目の払い出し枚数を3枚とする。
【0056】
次いで、硬貨払出制御部30は、コインメカニズム15に対してM枚の硬貨を払い出す旨の制御信号を送信する(ステップS06)。コインメカニズム15は、硬貨払出制御部30からの制御信号を受信すると、1回目の硬貨の払出しを行う。コインメカニズム15から払い出されたM枚の硬貨は、図8に示すようにコインシュータ26を通じて受皿部27aに供給される。利用者は、受皿部27a上の硬貨をつかみ取る。
【0057】
1回目の払い出しが行われた後、硬貨払出制御部30は、ステップS04で算出した残りの硬貨枚数Pが0であるか否かを判定する(ステップS07)。残りの硬貨枚数Pが0でない場合には(ステップS07:No)、ステップS01に戻り、硬貨の払い出しが可能な状態であるか否かを再度判定する。例えば、残りの硬貨枚数Pが4枚(9−5=4)である場合には、2回目の払い出しを行うべく、受皿部27aに1回目の硬貨が残存しているか否かを判定する。硬貨払出制御部30は、硬貨検出手段50の検出結果に基づき、1回目に払い出した硬貨が受皿部27aに残存していないと判定した場合に(ステップS01:Yes)、2回目の払出枚数Mを計算する(SUB1)。以下、1回目と同様の処理を繰り返す。
【0058】
一方、ステップS07において、ステップS04で算出した残りの硬貨枚数Pが0である場合には(ステップS07:Yes)、払い出し処理を終了する。
【0059】
以上説明したように、実施の形態2に係る自動販売機は、実施の形態1と同様に、1回に払い出す硬貨の枚数を、利用者が片手で握ることのできる程度の枚数(例えば3〜5枚)に予め設定し、コインメカニズム15から払い出される硬貨の枚数がこの設定値を超える場合に、1回の払い出し枚数が設定値を超えないように複数回に分けて硬貨を払い出す硬貨払出制御部30を備えた構成としている。硬貨払出制御部30は、硬貨を払い出す各回において、受皿部27aに硬貨が存在しないと判定した場合にコインメカニズム15から硬貨を払い出すように制御する。上記のように構成したことで、釣銭の硬貨枚数が多い場合であっても、利用者は各回ごとに片手で容易に硬貨をつかみ取ることができるようになるため、従来のように硬貨をつかみ損ねて硬貨を取りこぼすといった事態を防止することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る自動販売機における硬貨返却部11は、一般的な受皿構造を有したものであるため、従来の自動販売機の構成を変更することなく、低コストで上述した硬貨の払い出し制御を行うことができる。
【0061】
なお、上記実施の形態2では、硬貨検出手段50として重量センサを適用したが、これに限定されるものではない。例えば、受皿部27aの上下に投光素子と受光素子からなる光センサを配置し、受光素子への光が遮断されることによって使用者の手の動きを検出する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 自動販売機
2 本体キャビネット
3 外扉
4 電照板
5a 中扉
5b 内扉
6 展示室
7 商品見本
8 選択ボタン
10 硬貨投入口
11 硬貨返却部
12 紙幣挿入口
13 表示器
14 返却レバー
15 コインメカニズム
15a 硬貨払出口
16 ビルバリデータ
17 商品収納庫
18 ラック
19 シュータ
21 外筒部
22 内筒部
23 弾性体
24 貫通孔
25 返却口
26 コインシュータ
26a コインシュータの入口
26b コインシュータの出口
27a 受皿部
27b 側壁部
28 フラッパ
28a 支軸
29 貫通孔
30 硬貨払出制御部
40 位置検出手段
50 硬貨検出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインメカニズムから払い出された硬貨を利用者が受け取るための硬貨返却部を備えた自動販売機において、
前記コインメカニズムから払い出される硬貨の枚数が予め設定された設定値を超える場合に、1回の払い出し枚数が前記設定値を超えないように複数回に分けて硬貨を払い出すよう前記コインメカニズムを制御する硬貨払出制御部を備え、
前記硬貨払出制御部は、
前記複数回の各回において、前記コインメカニズムの硬貨払出口から前記硬貨返却部までの間に硬貨が存在しないと判定した場合に、前記コインメカニズムから硬貨を払い出すことを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
前記硬貨払出制御部は、
前記複数回の各回において、硬貨の払い出し枚数が前記設定値を超えている場合に、前記設定値枚数の硬貨を払い出す一方、硬貨の払い出し枚数が前記設定値を超えていない場合には、残りの硬貨をすべて払い出すことを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
前記硬貨返却部は、底部が開口した筒型状を成すとともに、前記コインメカニズムと連通する払出位置と、前記コインメカニズムとの間が遮断される非払出位置との間で移動可能に外扉前面に配設され、
前記コインメカニズムから硬貨が払い出された場合に前記硬貨返却部を前記払出位置に移動させることにより、前記開口から硬貨を送り出すことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動販売機。
【請求項4】
前記硬貨返却部が非払出位置に位置することを検知する検知手段を備え、
前記硬貨払出制御部は、
前記検知手段によって前記硬貨返却部が非払出位置に位置することが検知された場合に、前記コインメカニズムの硬貨払出口から前記硬貨返却部までの間に硬貨が存在しないと判定し前記コインメカニズムから硬貨を払い出すことを特徴とする請求項3に記載の自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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