説明

自動販売機

【課題】誘導加熱式の缶商品加熱装置を搭載した自動販売機に関し、多品種の缶に対応して安定的に加温することができる自動販売機を提供することを目的とする。
【解決手段】缶表面温度を検知する複数の温度検知手段110、120を備え、いずれか一方の平均温度が、特定された缶表面温度になったとき若しくは超えたとき、誘導加熱装置100の加熱を停止することで、キャップ付きボトル缶等の非対称形状の缶商品18においても最適温度に加温することが可能になり、多品種の缶に対応して中身飲料温度を最適温度に加温することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動販売機内に誘導加熱式の缶商品加熱装置を搭載し、販売された缶商品を急速加熱する誘導加熱式の缶商品加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動販売機で、缶商品を誘導加熱式の加熱装置で急速加熱してホット商品とするようにしたものが例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
図23は特許文献1に記載された従来例の外観図である。図24は缶表面温度と中身飲料の温度との関係を示す図である。
【0004】
図に示すように、缶商品10は内部に中身飲料5が充填されている。この缶商品10が、同レベルに平行かつ水平に支持された1対のローラ2と平行なローラ3により押圧されることで、缶10は水平姿勢のまま回転する。ローラ2はモータ4に接続されて、回転駆動することにより、缶10は水平姿勢のまま回転する。またローラ2の下方で缶50の下部を囲むように加熱コイル1が配置され、インバータ6に接続されている。さらに缶商品50の上方には温度センサ7が配置され、缶表面温度を測定する。
【0005】
缶表面温度の測定について説明する。
【0006】
缶商品10の加熱制御において通電開始後、温度センサ7により所定時間、缶商品温度をサンプリングし、サンプリングごとに表面温度の上昇度を求め、缶表面温度が限界値以上になったら、前回に求めた温度上昇度により、目標温度に達する時間を予測し、時間制御によって加熱を行う。
【0007】
上記動作により、中身温度を予測して加熱制御を行うので、特にインバータの場合、この間停止させずに運転させれば加熱時間を短縮することができる。
【特許文献1】特開2000−11247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の缶商品の誘導加熱装置の構成では、缶商品10を倒置姿勢で加熱コイル1上に載置し、商品10を回転させて加熱する場合に、限界温度を超えると前回までの温度上昇度から中身飲料温度が目標温度に到達する時間を予測し、その時間だけ通電を行い、加熱することになる。
【0009】
上記従来例の場合、缶表面温度の上昇度が減少するために、中身飲料温度を予測できないとして加熱時間制御としたが、缶に使用されている鉄板材料の厚みや缶商品の外形形状、缶商品の長手方向高さと誘導加熱コイルとの位置関係、または誘導加熱コイルに通電される電力のバラツキなどによって、缶表面温度の上昇度が増大する場合もあり、加熱を時間制御で行った場合、缶表面温度が上昇して、缶商品の焦げや外装シートの変形、内部に塗装された樹脂が飲料内に溶け出すなど、缶材料の劣化や中身飲料の品質に影響を与えるという問題点があった。
【0010】
また、近年、販売が増えているキャップ付きボトル缶等の上下非対称形状の缶商品に対しても安定的に加熱する必要性が求められている。
【0011】
以上のように、誘導加熱機能を備えた付加価値の高い自動販売機を実現するに当たって、加熱品質を一層安定的に高めることができる効率のよい自動販売機が望まれていた。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、缶商品の大小あるいは形状に関わらず、信頼性の高い均一な加熱を効率よく行える缶商品の誘導加熱装置を備えた自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来の課題を解決するために、本発明の自動販売機は、缶商品を電磁誘導加熱方式によって加熱する缶商品の誘導加熱装置を備えた自動販売機において、前記誘導加熱装置に、所定時間の間に複数回、前記缶商品の缶表面温度を検知する複数の温度検知手段を備え、前記温度検知手段で測定された前記缶表面温度の平均温度を算出し、前記平均温度から前記缶商品の缶表面温度の温度上昇度を算出することで、加熱開始時の缶表面温度として推定する仮想缶表面温度を測定し、設定された中身飲料温度の最適温度と加熱開始時の中身飲料温度との温度差を算出することで、中身飲料温度が最適温度になったときの缶表面温度を前記仮想缶表面温度に前記温度差を加えた値として特定し、前記複数の温度検知手段のうちいずれか一方の前記平均温度が、特定された前記缶表面温度になったとき若しくは超えたとき、前記誘導加熱装置の加熱を停止するものである。
【0014】
これによって、商品の缶材料の劣化や中身飲料の品質に影響を与えることを防止することができ、また缶表面温度上昇度から想定された仮想缶表面温度により中身飲料温度との相関を算出するので、中身飲料温度を最適温度に加温することができる誘導加熱機能を備えた自動販売機を提供することができるとともに、キャップ付きボトル缶等の非対称形状の缶商品においても最適温度に加温することが可能になり、加温時の缶商品の向きが異なっても仕上温度のバラツキを削減することができ、結果的に多品種の缶に対応して安定的に加温することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の自動販売機は、中身飲料温度が最適温度になるまでの缶表面温度を複数の温度検出手段で測定して加熱制御を行うので、缶商品の信頼性を維持し、中身商品の加熱品質を確保できるとともに、キャップ付きボトル缶等の非対称形状の缶商品においても最適温度に加温することが可能になり、多品種の缶に対応して中身飲料温度を最適温度に加温することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
請求項1に記載の発明は、缶商品を電磁誘導加熱方式によって加熱する缶商品の誘導加熱装置を備えた自動販売機において、前記誘導加熱装置に、所定時間の間に複数回、前記缶商品の缶表面温度を検知する複数の温度検知手段を備え、前記温度検知手段で測定された前記缶表面温度の平均温度を算出し、前記平均温度から前記缶商品の缶表面温度の温度上昇度を算出することで、加熱開始時の缶表面温度として推定する仮想缶表面温度を測定し、設定された中身飲料温度の最適温度と加熱開始時の中身飲料温度との温度差を算出することで、中身飲料温度が最適温度になったときの缶表面温度を前記仮想缶表面温度に前記温度差を加えた値として特定し、前記複数の温度検知手段のうちいずれか一方の前記平均温度が、特定された前記缶表面温度になったとき若しくは超えたとき、前記誘導加熱装置の加熱を停止するものである。
【0017】
これにより、商品の缶材料の劣化や中身飲料の品質に影響を与えることを防止することができ、また缶表面温度上昇度から想定された仮想缶表面温度により中身飲料温度との相関を算出するので、中身飲料温度を最適温度に加温することができる誘導加熱機能を備えた自動販売機を提供することができるとともに、キャップ付きボトル缶等の非対称形状の缶商品においても最適温度に加温することが可能になり、加温時の缶商品の向きが異なっても仕上温度のバラツキを削減することができ、結果的に多品種の缶に対応して安定的に加温することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、缶表面温度の平均値が、あらかじめ設定された限界温度になったとき若しくは超えたときは、加熱運転を停止するものである。
【0019】
これにより、缶表面温度の温度上昇度が増大して限界温度を超えた場合に、強制的に加熱を停止するので、缶商品の劣化を阻止し、中身飲料の品質を確保することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、缶商品の缶表面温度を検知する温度検知手段は温度補正可能であり、自動販売機の搬出や価格等を制御する制御手段で温度補正可能としたものである。
【0021】
これにより、温度検知手段の温度バラツキを自動販売機毎に個々に調整が可能となり、缶商品の適温加熱精度を向上させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、温度検知手段は非接触式温度検知手段であり、渦巻き状の誘導加熱コイルを内蔵した商品受台に併設配置したものである。
【0023】
これにより、商品受台に受容された缶商品の誘導加熱コイルの中心部に対応する部分は温度バラツキが大きいが、複数の非接触式温度検知手段を併設配置することで、同一方向から商品の上下方向の2点での測定が可能となり、温度検知バラツキを低減し、安定した平均温度を算出できるとともに、非接触温度検知手段の測定温度範囲を小さくできるので、検知精度を高めることができるので、缶商品の適温制御と非接触温度検知手段の測定精度を高めることができる。
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、従来例または先に示した実施の形態と同一構成については同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1を示す自動販売機の正面図である。図2は同実施の形態の自動販売機の縦断面図である。図3は同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の斜視図である。図4は同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の正面図である。図5は図4の矢視Aの側面図である。図6は図4の矢視Aの側面図である。図7は図4のB−B線の断面図である。図8は図4の矢視Cの平面図である。図9は同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の搬出機構を示す図である。図10は同実施の形態の缶表面温度と中身温度との関係を示す図である。
【0026】
図において、自動販売機本体11内には複数の商品収納室11aが区画構成されて種々の缶商品18がそれぞれ収納されている。自動販売機本体11の前面開口部には外扉12が配置されている。外扉12の上部に商品サンプル展示室13、その下方に商品の広告などを掲示する広告パネル室14と金銭投入部15が横並びに備えられ、外扉12の下部には選択された商品18を排出する商品取出口16が備えられている。そして商品取出口16と隣り合わせに缶商品の誘導加熱装置17が設置され商品収納室11aの下部から商品18を受け入れるように関連づけられている。そして、誘導加熱装置17の商品排出側は商品取出口16と連通し、缶商品の誘導加熱装置17で加熱された飲料等の流動性内容物に代表される缶商品18は商品取出口15から取り出せるように形成されている。
【0027】
また、誘導加熱装置17の高さ方向の配置位置に関しては、特に商品取出口16よりも下方の位置に配置されるように構成されている。すなわち、上から順に商品収納室11aの商品を排出する下端部、商品取出口16の商品の落下する底部、誘導加熱装置17の商品が載置される下端部、という高さ方向の配置関係となっている。
【0028】
以下に誘導加熱装置17による加熱構造について説明する。
【0029】
誘導加熱装置17は、缶商品18を倒置姿勢に受容保持する断面略円弧状(以下、樋状という)の商品受台19と、商品受台19の裏面に巻装した誘導加熱コイル20と、商品受台19の近傍にあり、下方から缶商品18の周面に当接する回転手段としての下部ローラ21と、下部ローラ21の下方に下部ローラ駆動モータ22が設置され、下部ローラ21と下部ローラ駆動モータ22がベルト23によって連結されて下部ローラ21を回転駆
動させる構成となっている。
【0030】
誘導加熱コイル20と下部ローラ21とは所定の間隔Lをおいて離間した位置に配置されており、誘導加熱コイル20の配置されている領域内に下部ローラ21が埋め込まれて存在するものではない。
【0031】
また、誘導加熱コイル20の形状は上記のような断面略円弧状や樋状に限るものではなく、缶商品18を倒置姿勢に受容保持して適切な加熱を行えるような形状であればよい。
【0032】
商品受台19は樹脂などの非磁性材で形成され、商品受台19の周縁部には裏面に向かってフランジ部19aを形成し商品受台19の裏面には、このフランジ部19aに囲まれた空間部19bを形成している。誘導加熱コイル20はこの空間部19bに形成されている。商品受台19は誘導加熱装置17を形成する外枠24にビス等で固定されている。
【0033】
なお、商品受台19を形成する材料は、缶商品18の回転動作と接触摺動することになるので、樹脂の場合であると、例えば低摩擦,低摩耗の特性を有する高密度ポリエチレン等の樹脂で形成することが好ましい。
【0034】
誘導加熱装置17は外枠24で周囲を覆って形成されている。具体的には商品受台19の背面を固定する背面壁24a、商品受台19の下面を固定する底壁24b、商品受台19の両端側で誘導加熱装置17の両側壁を形成する側壁24c、24d、背面壁24aに対応する前面壁24eで覆われている。具体的には図のように外枠24の背面壁24aと底壁24bに商品受台19の裏側を固定できるように設置され、商品受台19の上部が背面壁24aに沿うように配置し、商品受台19の下部が底壁24bに載置するように設置されている。
【0035】
また下部ローラ21は内部に金属性の軸21aと、軸21aの外側に延長して樹脂製のローラ部材21bを備え、ローラ部材21bには軸21a方向に延長してゴム部材21cで覆われている。ゴム部材21cの表面には細かな溝を形成していてもよい。
【0036】
また下部ローラ21の両端は軸21aによって誘導加熱装置17の側壁24cと側壁24dに軸支され、軸21aの一端側と下部ローラ駆動モータ22には滑車25を備え、ベルト23を介して連結されている。
【0037】
上記のように、誘導加熱装置17は外枠24の上部に誘導加熱コイル20を備えた樋状の商品受台19を背面壁24aと底壁24bに立て掛けるように固定し、商品受台19の下端縁19c近傍に下部ローラ21が備えられ、外枠24の底壁24bの下部は側壁24c、24dと前面壁24eに周囲を覆われ、内部に下部ローラ駆動モータ22と誘導加熱コイル20の発熱による熱を強制排熱するための排熱ファン26が設置され、前面壁24eには排熱ファン26に対応する部分に排熱孔27が形成されている。
【0038】
また背面壁24aには上部にも孔28を備え、この孔28は誘導加熱コイル20に対応する部分に形成されている。また少なくとも背面壁24aはアルミ製板で形成されている。
【0039】
次に、自動販売機本体11内における誘導加熱装置17の配置構成について述べると、高さ方向の配置関係は上述のとおり、誘導加熱装置17の缶商品18が載置される下端部は商品取出口16の底部よりも下方に位置し、概ね誘導加熱装置17は商品取出口16の下方に通常存在する外扉12の空間スペースを活用して配置できるようにしている。
【0040】
商品取出口16は、商品購入者の取り出し性を高めて腰を屈める負担を軽減するために通常、外扉12の最下部にレイアウトせず、それよりも上部の適所に配置構成されるために、通常、商品取出口16の下方にいわゆるデッドスペースとなる空間が存在するものである。
【0041】
そして、このデッドスペースとなる空間内をほぼ活用して配置される誘導加熱装置17は、缶商品18の排出側が上向きとなるような傾斜姿勢で配置される。したがって、誘導加熱装置17内から商品取出口16内に缶商品18を排出するためには缶商品18の自重に抗して移動させる排出機構を別途必要としている。
【0042】
以上のように構成された誘導加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0043】
誘導加熱装置17の商品受台19に上部から缶商品18が倒置姿勢で投入されると、下部ローラ21は下部ローラ駆動モータ22の駆動により滑車25に引っ掛けたベルト23を介して軸21aを回転させ、軸21aに圧入されたローラ部材21bを同時に回転させて回転駆動している。
【0044】
また、図5のように下部ローラ駆動モータ22は下部ローラ21が反時計回りに回転するように回転することで缶商品18を回転させるとともに誘導加熱コイル20に高周波電流を通電して缶商品18を誘導加熱する。そして所定時間の加熱が経過すると誘導加熱コイル20への給電、下部ローラ駆動モータ22を停止する。
【0045】
下部ローラ21回転時、ゴム部材21cが缶商品18に当接しているので缶商品18はグリップが効いて空回りすることなく回転することができ、局部加熱することなく適温に加熱することができる。また缶商品18の下部が誘導加熱コイル20と下部ローラ21に挟まれており、図4のように、下部ローラ21が反時計回りに回転するので缶商品18は時計回りに回転し、図5のように商品受台19が設置されているので缶商品18は商品受台17から飛び出すことはない。なお、缶商品18の空回りが避けられるならばゴム部材21cに代わる部材やゴム部材21cなしで可能な材料で下部ローラ21を形成してもよい。
【0046】
また商品受台19は倒置姿勢の缶商品18より長く形成されている。これに伴って下部ローラ21も少なくとも商品受台19の長さ以上に長く備えられているので、缶商品18が商品受台17上のどこに倒置して設置しても、缶商品18を固定することなく回転させることができ局部加熱を防ぐことができる。つまり、缶商品18の長さに関わらず安定した加熱が行える。一方、商品受台19の上方は開放して缶商品18を規制する部材を有さず、回転により商品受台19との下部接触面で均一加熱が可能であるため、商品の外径の大小にも左右されず加熱が行える。すなわち缶商品18の大小に関わらず安定した加熱品質を提供できるものである。
【0047】
なお、回転手段としての下部ローラ21は商品受台19の長さ以上に軸方向長さが長いことが好ましいが、これより短い形態であっても、実質的な缶商品18との当接面が下部ローラ21の軸方向に十分確保できて安定した回転が行えるものであれば差し支えない。
【0048】
限定されるものではないが、目安として受け入れが想定される缶商品18の全長よりも下部ローラ21の接触面の長さが長ければ、想定される缶商品18の全長に対する商品受台19の長手方向の寸法設計の合理的範囲より、缶商品18の商品受台19への受け入れ時に軸方向に位置ずれしても実質的には缶商品18の全長方向の大部分を下部ローラ21の接触面で受けることになり、安定した回転動作に大きな支障は生じない。
【0049】
また、ゴム部材21cに細かな溝が形成されていれば、さらに缶商品の空回りを低減し、回転駆動させることができる。
【0050】
また缶商品18の加熱時、誘導加熱コイル20は発熱し背面壁24aにも熱が伝熱される。背面壁24aはアルミ製板であるので、鉄板よりは熱伝導率が低く伝熱を低減することができるが、十分ではないので、排熱ファン26によって、背面壁24aの孔28から外部の空気を取り入れ、底壁24bに形成した底孔29に連通させて、排熱孔27から外部へ排熱し、背面壁24aの異常な加熱を防止することができる。また下部ローラ駆動モータ22の発熱も排熱ファン26によって低減することができるので、モータの信頼性を確保することができる。
【0051】
一方、図4のように誘導加熱装置17の商品受台19の上部に姿勢制御部材30が形成され、商品受台19の幅方向(長さ方向)に移動自在に形成してもよい。姿勢制御部材30は商品受台19の上部に形成した上部ローラ31に移動自在に挿入されている。上部ローラ31は軸として金属性の軸31aと、軸31aの外側に幅方向に延長して樹脂製のローラ部材31bで形成されている。ローラ部材31bには軸31a方向に溝31cが形成されている。
【0052】
上部ローラ31は商品受台19の上部で背面壁24a側に商品受台19の幅方向に延在して形成され、姿勢制御部材30は樹脂製であり缶商品に接触しても傷つきがないようにしており、前面壁24e側に向かって水平に延びている。
【0053】
上部ローラ31の回転駆動は上部ローラ駆動モータ32の駆動によって行われる。上部ローラ駆動モータ32は商品受台19の下方に備えた下部ローラ駆動モータ22と横並びに配置している。そして上部ローラ31と上部ローラ駆動モータ32はベルト33を介して連結されている。
【0054】
以上のように構成された誘導加熱装置の姿勢制御機構について、以下その動作、作用を説明する。
【0055】
誘導加熱装置17の上方から缶商品18が投入される。このとき倒置姿勢で商品受台19にセットされれば良いが、商品受台19に缶商品18が立ち姿勢で投入される場合がある。このまま加熱すると、商品受台19との接触部のみが局部加熱を起こし商品が破損したり適温に加熱されないおそれがある。
【0056】
したがって、まず姿勢制御部材30は初期位置である商品受台19の端部に位置し、缶商品18が誘導加熱装置17に投入されると、缶商品18の姿勢状態にかかわらず上部ローラ駆動モータ32を駆動させ、上部ローラ31が回転駆動し、姿勢制御部材30が商品受台19の端部から他方の端部へ溝31cに沿って移動する。そして端部まで移動すると、上部ローラ駆動モータ32を逆回転させ、上部ローラ31を逆回転させて姿勢制御部材30を初期位置まで戻す。そして初期位置まで戻ってきたことを確認した後、加熱動作を行う。
【0057】
これによって缶商品18が商品受台19上に立ち姿勢であれば、姿勢制御部材30の移動動作によって缶商品18を商品受台19上に倒すことができ、立ち姿勢による局部加熱を防ぐことができる。姿勢制御部材30は缶商品18が立ち姿勢にある場合、缶商品18の中間よりも上部に当たるように配置されているので、商品が立ったまま商品受台19上を引きずられることを防ぐことができる。
【0058】
また姿勢制御部材30は商品受台19を幅方向に往復移動させるので、缶商品19が倒れず初期位置に姿勢制御部材30が戻ってこないと判断すると、加熱動作を行わないので缶商品18の局部加熱や破損を防ぐことが出来る。
【0059】
上記以外に姿勢制御部材30を往復移動させず、片側移動によって制御し、次の加熱動作を判断してもよい。この場合、缶商品18投入から加熱動作を行うまでの時間を短縮でき、利用者への待ち時間を低減することができる。
【0060】
次に、誘導加熱装置17による缶商品の搬出機構について説明する。
【0061】
搬出機構の直接的な動作は、搬出部材33によって商品受台19で加熱された後の缶商品18を缶の長手方向に滑らせて外部へ押し出すものである。搬出部材33は樹脂製材料で形成され缶商品18に接触しても傷つきがないようにしており、搬出部材33の端部には溝を有した挿入孔33aを備え、下部ローラ21を挿入している。下部ローラ21も溝34を軸方向に向かって延在して形成し、溝34と溝34の間の缶商品18に当接する一連の当接部35が軸方向に向かって延在し、当接部35にはゴム部材36で表面を覆われている。
【0062】
下部ローラ駆動モータ22にベルト33を介して連結される下部ローラ21の一端部分には溝34やゴム部材36が形成されていない搬出部材33を待機させる待機部分37を形成している。待機部分37は下部ローラ21を構成するローラ部材21bと一体成形されており、待機部分37の外径はローラ部材21bの外径より小さく形成されている。また待機部分37にはバネ部材38が挿入されローラ部材21bの端部に固定されている。
【0063】
また、誘導加熱装置17の商品受台19の端部には開口部39が形成され、開口部39を開閉する上下方向に移動可能な開閉部材40が形成されている。図8は図4の矢視Cの図である。開閉部材40は背面壁24aと前面壁24eに上下方向に形成されたレール41に沿って上下方向に移動可能である。
【0064】
開閉部材40は樹脂製であり、略中央部に上下方向に開口した開口部40aを備え、開口部40aには開閉部材駆動モータ42とラックピニオン式に移動するように歯40bが形成されている。
【0065】
開閉部材駆動モータ42は上部ローラ駆動モータ32や下部ローラ駆動モータ22と同じ空間部に配置されている。
【0066】
以上のように構成された誘導加熱装置の搬出機構について、以下その動作、作用を説明する。
【0067】
誘導加熱装置17の上方から缶商品18が投入され、缶商品18の姿勢制御機構による動作後、加熱動作が行われ、適温に加熱した後、商品受台19から缶商品18を外部へ搬出する搬出機構による動作が行われる。
【0068】
加熱動作時、下部ローラ21が回転することで当接部35が缶商品18に当接して缶商品18を回転(自転)させるとともに誘導加熱コイル20に高周波電流を通電して缶商品18を誘導加熱する。これによって一連の当接部35が缶商品18に当接するので缶商品18を自転させることができる。
【0069】
またこの時、搬出部材33は下部ローラ21の回転により挿入孔33内に形成された溝34との関係によって、初期位置である待機部分37側に移動するように構成されており、搬出部材33は溝34や当接部35から離脱して待機部分37に誘導される。搬出部材33は待機部分37内でスリップ(空回り)しながら維持される。下部ローラ21の回転によって、さらに側壁24c側へ移動しようとする搬出部材33はバネ部材38によって商品受台19側に付勢されるので側壁24cにかかる荷重を低減することができる。またこのバネ部材38を備えることによって、搬出部材33の破損を防止できる。
【0070】
そして加熱動作が終了し、下部ローラ21が停止すると、次に缶商品18の搬出動作を行う。このとき、下部ローラ駆動モータ22に逆通電し、下部ローラ21は加熱時の逆回転を行う。これによって搬出部材33は下部ローラ21の待機部分37から溝34に沿って移動し倒置姿勢の缶商品18に当接し倒置姿勢のまま商品受台19上を押して行くことで滑らせて外部へ搬出する。
【0071】
搬出部材33は商品受台19の端部まで移動すると、下部ローラ21を加熱時と同じ方向に回転させて、搬出部材33を初期位置である待機位置37に移動させる。
【0072】
よって加熱後の缶商品18を自動的に外部へ搬出することができるので利用者は誘導加熱装置17内に手を入れて取り出す必要がなく安全を確保することができる。また商品搬出後、搬出部材33を待機位置37に戻すことで、商品がユニット内に詰っているかどうかを制御することができ、所定時間の間に待機位置37に戻らない場合は商品詰まりとして異常判断することができる。
【0073】
次に、誘導加熱装置17内に缶商品18が投入される前の待機時は、開閉部材40は開口部40aを閉じて商品受台19に触れられず、異物等が侵入することがないようにしている。また、缶商品18の投入時に誘導加熱装置17外に缶商品の一部が誤って飛び出すことも防止するほか、加熱中の装置内空間を開放せず加熱効率を高める役割もある。
【0074】
缶商品18が投入されると、姿勢制御機構により倒置姿勢に維持され、加熱動作によって商品を加熱し、その後下部ローラ21を駆動させて搬出部材33を初期位置から移動開始させると同時に、開閉部材駆動モータ42を駆動させて開閉部材40をレール41に沿って開いて適温に加熱した缶商品18を搬出する。開閉部材40は開閉部材駆動モータ42の駆動により上下方向に形成した歯40bとラックピニオン式により下方へ移動して開口部39を開いて商品受台19から商品を搬出する。
【0075】
このとき、開口部39には搬出部材33が移動しており、開口部39を搬出部材33で塞ぐことになり、缶商品18の搬出時に開口部39から内部に手や異物を挿入されるのを防ぐことができる。
【0076】
そして搬出部材33が初期位置方向へ移動する前に、先に開閉部材駆動モータ42を駆動させ開閉部材40で開口部39を閉じて、その後搬出部材33を初期位置に戻すことで一連の動作の中で、商品受台19内に手や異物が入るのを阻止することができる。また安全性を確保できる。
【0077】
また、同じ空間内に駆動モータを配置し、排熱ファン26を備えて排熱しているので駆動モータの発熱によるモータの信頼性低下を阻止することができる。
【0078】
そして、上述した誘導加熱装置17と商品取出口16の高さ方向の配置関係により、缶商品18を誘導加熱装置17外に排出する排出機構は、斜め上方に向けて傾斜設置された誘導加熱装置17に設けられる商品受台19の面上を商品18の長手方向に斜め上方に摺動させて移動させるように構成さている。すなわち、搬出機構の搬出部材33は斜め上方に缶商品18を押し上げながら移動し、最後には開口部39より商品取出口16内に缶商品18を落下排出させることができる。
【0079】
したがって、このような構成をとることにより、誘導加熱装置17を商品取出口16に対して相対的に下方となるように配置しても缶商品18の排出は支障なく可能であり、これにより、通常の自動販売機ではデッドスペースとなっている商品取出口16の下方空間を有効に活用して誘導加熱装置17を備えることができる。このため、従来技術のように商品収納室11aに利用する有効な庫内スペースを割いて誘導加熱装置17を設ける必要がなく、庫内スペースを商品収納室11aに最大限有効活用できる。
【0080】
さらに、誘導加熱装置17は外扉12側の商品取出口16の下方空間に収容するものであるため、現状一般的に使用される自動販売機の商品収納室11aを含めた庫内側の構成や商品取出口16を含む外扉12の構成をほとんど変更せずに、新たに、誘導加熱装置17を備えて商品の急速加熱機能を有する付加価値の高い自動販売機を実現できるメリットがある。
【0081】
なお、本実施の形態においては、誘導加熱コイル20と回転手段である下部ローラ21とは所定の間隔Lをおいて離間した位置に配置されている構成のものを前提に説明したが、姿勢制御機構や搬出機構は、いずれもその機構そのものに特有の作用効果を有するものであるので、誘導加熱コイル20と回転手段である下部ローラ21の配置関係については、所定の離間関係にあるものでなくても構わず、誘導加熱コイル20の領域と回転手段である下部ローラ21の配設位置が重なり合うものでも組み合わせ構成が可能であり特有の効果を期待することができる。
【0082】
次に、缶商品18の温度を検知する温度検知手段である非接触式温度検知手段43について説明する。
【0083】
図4のように、前面壁24eに非接触式温度検知手段43を設置するホルダー44をビス等で固定する。ホルダー44内には非接触式温度検知手段43(例えば赤外線センサー)が保持されている。
【0084】
非接触式温度検知手段43は商品受台19の長手方向(幅方向)の略中間部で、下部ローラ21近傍に配置されている。缶商品は下部ローラ21に当接配置するので缶外径の大小にかかわらず缶商品と非接触式温度検知手段43との距離はほぼ一定に保つことが出来る。したがって商品受台19のどの位置に缶商品18が倒置されても缶商品と一定の距離が保てるように配置することができる。
【0085】
以上のように構成された誘導加熱装置の缶商品18の検知手段について、以下その動作、作用を説明する。
【0086】
商品受台19に倒置姿勢に維持された缶商品18は下部ローラ21の回転により自転を行う。そして缶商品18は非接触式温度検知手段43によってその表面が所定温度になったことを検知したときに誘導加熱コイル20への給電を停止し、回転駆動も停止される。したがって非接触式温度検知手段43を下部ローラ21近傍で商品受台19の長手方向の略中間部に設置することで、缶商品の外径大小にかかわらず適温に加熱することができる。
【0087】
次に、温度検知手段43の測定温度に基づいて、加熱を制御する場合について説明する。
【0088】
誘導加熱装置17による加熱対象の缶商品18が商品選択ボタン(図示しない)の押圧操作によって、商品収納室11a内に約30℃程度の中身飲料が劣化しない温度に保温されている缶商品18が商品受台19に搬送され、商品姿勢制御部材30を動作させて缶商品18を商品受台19上に強制的に倒置姿勢に受容させる。この商品姿勢制御部材30の動作中は、誘導加熱コイル20には通電されず、加熱待ち時間としている。
【0089】
また、この加熱待ち時間は誘導加熱コイル20のコイル温度を下げるための安全保護としてでもあり、この間に温度検知手段43で加熱前の缶商品18の缶表面温度を測定する。
【0090】
この加熱待ち時間中の缶商品18の缶表面温度は、約30℃で、中身飲料温度とほぼ同一温度である。そして、商品姿勢制御部材30の動作が初期位置に戻って終了すると、誘導加熱コイル20に通電し、同時に缶商品18を下部ローラ21によって回転させる。
【0091】
図10のように、加熱を開始すると缶商品18の缶表面温度は約60℃に急上昇し、その後、温度上昇度は小さくなって、ほぼ温度上昇度は等しく維持される。温度検知手段43によって測定すると、実際には測定誤差が生じ、測定温度にバラツキが生じる。このように缶表面温度の測定に測定誤差が含まれる中で、中身飲料温度を適温(例えば約55℃)に加熱するために、直接測定される缶表面温度Taと中身飲料温度Tbとの相関を算出して適温に制御する必要がある。
【0092】
そこで、誘導加熱装置17の運転により、缶商品18の缶表面温度と中身飲料温度との相関を検証するために、実験すると図10のようになる。上述したように、温度測定には測定誤差が生じるため、0.1秒ごとに測定された缶表面温度データを10秒間隔で平均温度を算出、いわゆる最小二乗法による算出により、缶表面温度の温度上昇度を表し、また中身飲料温度も同様に算出して中身飲料温度の温度上昇度を表すと図のようになることがわかる。
【0093】
この検証実験により、加熱開始から約5秒後には、缶表面温度の上昇度はほぼ一定になり、また中身飲料温度の温度上昇度と缶表面温度の温度上昇度は、ほぼ同じ上昇度になる。
【0094】
実際の缶商品18の販売においては、中身飲料温度を直接検知することはできないので、上記の検証実験より、缶表面温度と中身飲料温度との温度上昇度が加熱開始後、約5秒後以降はほぼ一定になることから、缶表面温度の測定のみによって中身飲料温度を特定することができる。
【0095】
そして図10より、缶表面温度の加熱開始時点t0での仮想缶表面温度T0を算出し、目標設定値となる中身飲料温度(例えば55℃)と加熱前の中身飲料温度(例えば30℃)との温度差(上昇必要温度)を仮想缶表面温度T0に加えた目標缶表面温度が、缶中身飲料温度が目標温度55℃になったときの缶商品18の表面温度となり、温度検知手段43で検知した値が目標缶表面温度になったとき、誘導加熱コイル20の通電を停止する。
【0096】
缶表面温度と中身飲料温度との関係は、缶の種類だけでなく、缶商品のへこみなどの外形形状、缶を構成する鉄板材料の板厚の違いや誘導加熱コイルに通電される電圧バラツキにより、温度上昇度が途中から増大する傾向になるので、温度検知手段43によって缶表面温度を検知することで誘導加熱コイル20の通電を停止し加熱制御することで、缶表面を焦がしたり、缶内部に塗装された樹脂が溶け出して中身飲料に混じるなどの品質劣化を阻止することができる。
【0097】
また、温度検知手段43による缶表面温度の検知温度の平均値が、あらかじめ設定された限界温度(例えば缶表面温度70℃)になったとき、若しくは限界温度を超えた時は、誘導加熱コイル20への通電を停止して、缶商品18を搬出部材33によって商品取出口16へ搬出するように制御されている。この場合、加熱温度の異常が発生したとして、缶商品18を搬出せず、誘導加熱装置17内に保持してもよい。
【0098】
これによって利用者が缶商品18に触れてやけどするのを防止することができる。
【0099】
この動作により、缶商品18および中身飲料の加熱品質を維持し、利用者が搬出された缶商品18を手にとってもヤケドをしないように温度管理を行うことができる。また加熱される商品ごとに、缶表面温度と中身飲料温度との相関を求め、仮想缶表面温度を算出して、上記のように目標缶表面温度を設定するので、加熱する商品ごとに適温加熱を実現することができる。
【0100】
また加熱途中で缶表面温度の温度上昇度が低減して、目標缶表面温度に到達しない場合は、誘導加熱コイル20に通電開始からカウント開始されているタイマーによる時間制御が優先されて、設定された時間が経過後、通電を停止する。この場合、缶表面温度が異常に高温加熱されている可能性があり、商品取出口16へ商品の搬送は行われず、誘導加熱装置17内で保持した状態を維持する。
【0101】
これによって、利用者が缶商品18に触れてやけどをするのを防止し、返却レバーの操作で商品代金を返却するようにしている。
【0102】
この場合、異常があったと判断し、次回の誘導加熱装置17による販売を停止する販売停止表示を行い、対応する商品選択ボタン(図示しない)の操作を無効とする。
【0103】
これによって誘導加熱装置17の異常を自動販売機管理者に知らせることができ、販売促進の低下を抑制することができる。
【0104】
また温度検知手段43は自動販売機ごとに温度補正可能であり、自動販売機の搬出や価格等を制御する制御手段のデータを変更することで温度補正可能としたことにより、温度検知手段の温度バラツキを自動販売機毎に個々に調整が可能となり、缶商品の適温加熱制御の精度を高めることができる。
【0105】
(実施の形態2)
図11は、本発明の実施の形態2の自動販売機の斜視図である。図12は、同実施の形態の自動販売機における外扉の裏面斜視図である。図13は、同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の斜視図である。図14は、同実施の形態の自動販売機における誘導加熱装置の要部斜視図である。図15は、同実施の形態の自動販売機における誘導加熱装置の要部斜視図である。図16は、同実施の形態の自動販売機における誘導加熱装置の正面要部断面図である。図17は、図16の要部拡大図である。図18は、同実施の形態の風路構成図である。図19は、同実施の形態の要部斜視図である。図20は、同実施の形態のコイルケース内の構成図である。図21は、同実施の形態の缶表面温度と中身温度との関係を示す図である。図22は、同実施の形態の演算時間を変える場合の缶表面温度と中身温度との関係を示す概念図である。
【0106】
自動販売機本体11や外扉12に対する誘導加熱装置100の配置関係は実施の形態1と同様であり、省略する。
【0107】
また、誘導加熱装置100の高さ方向の配置位置に関しては、実施の形態1と同様であり、商品誘導加熱制御部502の高さ方向に配置位置に関しては、商品取出口16の下方の位置に配置されている。また、誘導加熱装置100の左右方向の配置位置に関しては、硬貨を回収するコイン回収箱503と商品取出口16との間に構成されている。
【0108】
図11において、自動販売機本体11の前面開口部には外扉12が配置されている。外扉12の構成について説明する。
【0109】
外扉12の上部には商品サンプル展示室13、その下方に商品の広告などを掲示する広告パネル室14と金銭投入部15が横並びに備えられ、外扉12の下部には選択された商品18を排出する商品取出口16が備えられている。そして外扉12の裏面側に商品取出口16と隣り合わせに缶商品の誘導加熱装置100が設置され、実施の形態1と同様に商品収納室11aの下部から商品18を受け入れるように関連づけられている。そして、誘導加熱装置100の商品排出側は商品取出口16と連通し、缶商品の誘導加熱装置100で加熱された飲料等の流動性内容物に代表される缶商品18は商品取出口16から取り出せるように形成されている。
【0110】
誘導加熱装置100は図12のように缶商品の長手方向の受容状態は斜め配置で、商品取出口16側が他側よりも上方になる状態で維持されて、誘導加熱装置100内で加熱運転される。
【0111】
商品サンプル展示室13内は、上部に冷却専用の商品サンプル展示部13a、下部に誘導加熱装置100によって加熱可能な商品サンプル展示部13bが上下に区画板800によって区画形成され展示されている。商品サンプル展示部13aは従来と同様のサンプル構成であり、1つの商品サンプルに対応して1つの商品選択ボタン801が構成されている。
【0112】
また商品サンプル展示部13bには、展示されている商品サンプル802の商品が、誘導加熱方式により加熱されるため、通常よりしばらく時間がかかる旨等の表示部803が区画板800に掲載されている。
【0113】
そして商品サンプル802の下方には、1つの商品サンプル802に対応した商品選択ボタン804a,804bの2つの商品選択ボタンが構成されている。具体的には商品選択ボタン804aは販売温度の設定が約55℃の高温設定で「あつめ」表示され、商品選択ボタン804bは販売温度の設定が約50℃の低温設定で「ぬるめ」表示されて構成されている。
【0114】
また商品サンプル展示部13bの商品サンプル802は、商品サンプル展示部13aの商品サンプルとは異なって、平面的なカード状に構成された商品サンプル802であり、利用者に商品サンプル展示部13bの商品が、商品サンプル展示部13aの商品とは異なり、誘導加熱方式による加熱であることをアピールできるように構成されている。
【0115】
誘導加熱装置100には後述する第1温度検知手段である非接触式温度検知手段A(以下、温度検知手段Aという)110と第2温度検知手段である非接触式温度検知手段B(以下、温度検知手段Bという)120が商品受台101において並列配置され、温度検知手段A110と温度検知手段B120によって、缶商品18の表面温度を検知して、中身飲料温度を推定し、温度検知手段A110または温度検知手段B120のいずれかが、推定された中身飲料温度が販売設定温度になった時の缶表面温度が特定された温度になったときに、温度検知手段A110または温度検知手段B120からの信号が後述する商品誘導加熱制御部502に入力され、誘導加熱コイル102への通電を停止する。
【0116】
次に缶商品18の販売、加熱動作を説明する。
【0117】
利用者が、商品選択ボタン804aを押して、ホット商品を「あつめ」指定すると、後述する自動販売機全体を制御する主制御部501によって缶商品18の搬出を行い、誘導加熱装置100へ搬送される。そして主制御部501から商品誘導加熱制御部502へ、選択された「あつめ」の55℃の設定温度情報が入力され、誘導加熱装置100へ通電されて、実施の形態1と同様の後述する姿勢制御部材200を動作させて、缶商品18の受容状態が倒置姿勢であるかどうかを確認し、姿勢制御部材200が初期位置に戻ったことを検知して、誘導加熱コイル102へ通電を行い、加熱動作を開始する。そして温度検知手段A110と温度検知手段B120によって缶商品18の温度を検知し、設定温度になれば、誘導加熱コイル102への通電を停止し、加熱動作を停止する。
【0118】
したがって、利用者は商品選択ボタン804aの操作のみを行うだけで、好みの温度に缶商品18を設定できるので、商品選択ボタン804aの操作から加熱動作までの時間を短縮することができ、利用者を不要に待たせることを防止することができ、利用者の操作性も簡素化できる。また、誘導加熱コイル102への通電は、姿勢制御部材200が初期位置に戻って、缶商品18が正規の状態に保持されたことを確認後に、開始されるので、缶商品18に対して安定した加熱を行うことができる。
【0119】
姿勢制御部材200が初期位置に戻ったことを検知できない場合は、商品が倒置姿勢に受容されていないか、若しくは搬出通路内で商品詰まりが発生したとして、誘導加熱コイル102への通電は行わず、加熱動作を停止する。そして商品サンプル展示部13aの商品選択ボタンを点灯させて、別の商品の販売に切り替える。この時、商品サンプル展示部13bに対応する商品の選択操作ができないように売切れ表示等を行うことで、利用者への販売促進を行うことができる。また、この場合、返却レバー操作によって代金を返却するようにしてもよい。
【0120】
また商品サンプル展示室13aは冷却専用の商品としたが、従来どおりにヒータ等で加温できる商品群があってもよく、誘導加熱方式による加温ができない場合に、商品サンプル展示部13a側でヒータ加温による商品を選択することができる。
【0121】
次に、誘導加熱装置100による加熱構造について説明する。
【0122】
誘導加熱装置100は、缶商品18を倒置姿勢に受容保持する断面略面取り形状の商品受台101と、商品受台101の裏面に巻装した誘導加熱コイル102と、商品受台101の近傍にあり、下方から缶商品18の周面に当接する回転手段としての下部ローラ103と、下部ローラ103の下方に下部ローラ駆動モータ111が設置され、下部ローラ103と下部ローラ駆動モータがベルト(図示しない)によって連結され、下部ローラ103を回転駆動させる構成となっている。
【0123】
誘導加熱コイル102と下部ローラ103とは実施の形態1と同様に所定の間隔Lをおいて離間した位置に配置されており、誘導加熱コイル102の配置している領域内に下部ローラ103が埋め込まれているものではない。
【0124】
また、商品受台101や誘導加熱コイル102の形状は上記のように断面略面取り形状や樋状に限るものではなく、缶商品18を倒置姿勢で受容保持して適切な加熱が行える形状であればよい。
【0125】
商品受台101は表面が樹脂などの非磁性材で形成され、缶商品18が接触して回転する部分には図14のように略矩形状の強化ガラス板500がはめ込まれている。缶商品18が商品受台101に接触摺動するので、商品受台101面の削れや摩耗に優れたセラミックやガラスで形成されることが望ましい。特に上部の商品収納室11aから商品受台101に商品が落下してくるので、強化ガラス板500で構成するのが望ましい。
【0126】
また商品受台101は上記のように樹脂製のコイルケース101aで構成され、缶商品と当接する部分は、コイルケース101aに略矩形状に凹溝115を形成し、凹溝115に強化ガラス板500がはめ込まれて構成され、コイルケース101aの後方に誘導加熱コイル102が固定され、複数の略矩形状の磁性材料のフェライト104がコイルケース101aの裏蓋となるコイルケース本体101b内に固定配置され、商品受台101を構成している。コイルケース本体101bには誘導加熱コイル102の温度を検出するコイルサーミスタ105が配置されている。
【0127】
またコイルケース101a裏面に熱伝導シート116を貼付することで、誘導加熱コイル102の熱伝導率を高め、誘導加熱コイル102のコイル発熱温度を低減することができ、缶商品の加熱効率を高めることができると共に、誘導加熱コイル102の発熱による信頼性低下を阻止することができる。
【0128】
また、缶商品が上部の搬出部から商品受台101に搬送されたときの落下衝撃を熱伝導シート116が吸収するので、商品受台101の損傷を低減することができる。
【0129】
誘導加熱装置100は外枠106で周囲を覆って形成されており、誘導加熱装置100の上部に上記のような商品加熱部100a、下部に下部ローラ103を駆動する下部ローラ駆動モータ111等が収納された駆動部100bが形成されている。
【0130】
また下部ローラ103は両端を外枠106に構成された受け部107に支持されている。下部ローラ103の内部には、一端側のみに金属製の軸部103aと、軸部103aの内側に延長して樹脂製のローラ部材103bを備え、他端側はローラ部材103bが軸となって、受け部107に支持されている。このためローラ部材103bの両端部は同形状を構成しておらず、軸部103aを外枠106に残して、ローラ部材103bのみが着脱自在に構成されている。
【0131】
ローラ部材103bは樹脂製の芯部材108と商品に直接接触して商品自身に回転力を与えるゴム部材103cとで構成され、ゴム部材103cは芯部材108に形成されたネジ切り部108c間にらせん状に構成されている。
【0132】
またゴム部材103cはローラ部材103bの軸部103a方向に延長して芯部材108の外周面にらせん状に一体に構成されて、芯部材108は表面から中心方向に向かって複数の穴部103dが軸方向に延長して形成され、芯部材108の中心付近で隣合う穴部103dが連通するように別の連結穴部103eが形成され、芯部材108の内部で複数の穴部103dが連結穴部103eによって軸方向に連通する。
【0133】
そして芯部材108の軸方向にゴム部材103cを2色成形することで、穴部103d、連結穴部103e内にゴム部材103cが充填されるので、ローラ部材103bの回転駆動によって芯部材108表面からゴム部材103cのズレや剥がれが起きるのを低減でき、缶商品18の回転動作を正常に行うことができる。
【0134】
またゴム部材103cが缶商品との摺動により磨耗や劣化による損傷等が起これば、片方の受け部107からローラ部材103bを外し、他方に構成された軸部103aからローラ部材103bを引き抜くことができ、新しいローラ部材103bと交換することができる。
【0135】
また図17で、芯部材108のゴム部材103cがらせん状に構成される部分は、芯部材108の突部108aよりも一段下がった溝部108bとなって構成されており、溝部108b内にゴム部材103cが形成されている。したがって芯部材108の軸方向にらせん状に構成されたゴム部材103cの側部の一部が突部108aに覆われて形成されることになる。
【0136】
次に、自動販売機本体11内における誘導加熱装置100の配置構成について述べると、高さ方向の配置関係は上述のとおり、誘導加熱装置100の缶商品18が載置される下端部は商品取出口16の底部よりも下方に位置し、概ね誘導加熱装置100は商品取出口16の下方に通常存在する外扉12の空間スペースを活用して配置できるようにしている。
【0137】
商品取出口16は、商品購入者の取り出し性を高めて腰を屈める負担を軽減するために通常、外扉12の最下部にレイアウトせず、それよりも上部の適所に配置構成されるために、通常、商品取出口16の下方にいわゆるデッドスペースとなる空間が存在するものである。
【0138】
そして、このデッドスペースとなる空間内をほぼ活用して配置される誘導加熱装置100は、缶商品18の排出側が上向きとなるような傾斜姿勢で配置される。したがって、誘導加熱装置100内から商品取出口16内に缶商品18を排出するためには缶商品18の自重に抗して移動させる排出機構を別途必要としている。
【0139】
また商品誘導加熱制御部502も商品取出口16の下方にいわゆるデッドスペースとなる空間内を活用して配置され、また誘導加熱装置100の近傍に配置されるので、高電圧部間の距離を短く構成でき、安全性を高めることができる。
【0140】
以上のように構成された誘導加熱装置100について、以下その動作、作用を説明する。
【0141】
誘導加熱装置100の商品受台101に上部から缶商品18が倒置姿勢で投入されると、下部ローラ103は下部ローラ駆動モータ111によって実施の形態1のようにベルトを介して回転駆動している。
【0142】
利用者が自動販売機の外扉に構成されたホット商品を選択する商品選択ボタンを操作すると、この操作信号を、自動販売機11の外扉12裏面にあって商品取出口16の上部に備えた自動販売機11全体の主制御部501が受け、主制御部501とは独立配置し、商品取出口16の下方に配置した商品誘導加熱制御部502に送信されて、誘導加熱コイル102に高周波電流を通電し、缶商品18を自転回転させる下部ローラ103を回転駆動させる。そして自動販売機本体11内に商品が劣化しない約35℃程度にプレヒートされた商品が搬出手段(図示しない)から搬出されて商品受台101に倒置姿勢で投入され、缶商品18を誘導加熱する。そして後述する温度検知手段A110と温度検知手段B120で適温検知し、誘導加熱コイル102への給電、下部ローラ103を停止する。
【0143】
下部ローラ103は回転時、ゴム部材103cが缶商品18に当接しているので缶商品18は商品受台101上で空回りすることなく回転でき、局部過熱することなく適温加熱できる。またゴム部材103cはローラ部材103bを構成する芯部材108内部に形成した穴部103dや連結穴部103eにも充填されて、らせん状に構成されているので、熱による劣化や缶商品18の衝撃やこすれによるゴム部材103cの下部ローラ103に対するズレや剥がれを防止することができ、強度をアップし、また缶商品の空回りを低減し、局部過熱を防止できる。
【0144】
上記のようなズレや剥がれ、商品落下衝撃による変形や破損、経年劣化等で下部ローラ103を交換する場合は、受け部107を取り外すことで、下部ローラ103の一側が外れ、そして下部ローラ103のローラ部材103bを軸方向に引き抜くことで、他側の受け部107に軸部103aを残した状態でローラ部材103bを取り外すことができる。そして新しいローラ部材103bを軸部103aに挿入することで、交換が容易に可能となり、作業性を高めることができ、缶商品の適温加熱品質の信頼性を高めることができる。
【0145】
また、缶商品18の回転により商品受台101の磨耗を低減または抑制するために、樹脂で成形されて商品受台101の商品と当接する部分となるところに強化ガラス板500をはめ込んでいる。実施例では商品受台101となるコイルケース101aの商品当接面に略矩形状の強化ガラス板500を嵌めこんでいる。
【0146】
また商品受台101と下部ローラ103とは、実施の形態1と同様に、所定間隔Lをおいて離間した位置に配置され、誘導加熱コイル102の配置されている領域内に下部ローラ103が埋め込まれて存在するものではない。
【0147】
また、商品受台101を構成するコイルケース101aの裏蓋となるコイルケース本体101b内に配置される複数の略矩形状の第1のフェライト104は左右両側に間隔をおいて上下3段に並べて配置している。そして楕円形状に複数回略同心円状に巻かれた誘導加熱コイル102が、これら第1のフェライト104の上部に配置して、誘導加熱コイル102の略中心部となる中央空間部102aが、左右両側に配置した第1のフェライト104の中央空間部104aに対応配置し、誘導加熱コイル102の中央空間部102aから第1のフェライト104の中央空間部104aに亘って矩形状の第2のフェライト114を第1のフェライト104に対して略鉛直方向に挿入して配置することで、発生する磁束を商品側へ放出でき、缶の温度上昇度の効率をアップすることができる。また缶側に磁束もフェライト104に集中するようになり、商品への入力効率がアップし、商品の加熱効率を向上することができる。
【0148】
誘導加熱コイル102は、商品受台101の形状に沿って断面略面取り形状に構成されており、商品受台101に缶商品が接触する平面部分(強化ガラス板500)に対応する平面部102bと折り曲げ部102cで構成されている。上下両端の折り曲げ部102cは、それぞれ略鉛直方向、略水平方向に延在して構成され、これに対応して商品受台101も構成されているので、上方から落下してくるか缶商品を受入れやすく、缶商品が折り曲げ部102cに対応する商品受台101の部分に当っても商品受台101内に受容保持できるので、缶商品のない状態で加熱動作するのを阻止することができる。
【0149】
第2のフェライト114は誘導加熱コイル102よりも、コイルケース101a面に向かって突出させると、さらに磁束を缶側へ放出でき、缶商品の加熱効率をさらに高めることができる。
【0150】
次に誘導加熱装置100の商品受台101の上部に備えた姿勢制御部材200については、実施の形態1と同様であり、構成や動作、作用は省略する。また姿勢制御部材200を動作させる上部ローラ201の構成は、実施の形態1と同様であり省略する。
【0151】
次に誘導加熱装置100による缶商品の搬出機構について説明する。
【0152】
搬出機構の動作は、搬出部材300によって行われ、実施の形態1と同様の動作で商品を搬出するものであり、具体的には省略する。搬出部材300は上記で説明した下部ローラ103の回転駆動によって下部ローラ103の軸方向に移動自在に構成されている。
【0153】
また、図15で外枠106には、待機位置にある搬出部材300を下部ローラ103の回転駆動に連動するように押出すプッシャー手段301が構成されている。プッシャー手段301は上部ローラ201と下部ローラ103の長手方向の側部に位置しており、プッシャー手段301は、一端が姿勢制御部材200に、他端が搬出部材300に係合し、搬出部材300側には弾性部材302が備えられている。プッシャー手段301は板状部材で形成されていて、略中央部には回転軸部300aが形成され、姿勢制御部材200または搬出部材300が当接することで、回転軸部300aを中心にプッシャー手段301が回転可能に構成されている。
【0154】
誘導加熱装置100は商品受台101の商品排出側が上方になるように傾斜配置しており、プッシャー手段301は商品受台101の下方側に構成されている。また商品受台101の傾斜配置に伴って上部ローラ201、下部ローラ103とも平行して傾斜配置で構成されているため、外力を受けない場合、プッシャー手段301の弾性部材302が配置される下端側は下部ローラ103から離れる方向で維持されている。
【0155】
またはプッシャー手段301は回転軸部300aにより重心が上部側の姿勢制御部材200側になるように構成され、弾性部材302が下部ローラ103から遠ざかる方向に維持されているようにしてもよい。
【0156】
以上のように構成された搬出機構について、以下その動作、作用を説明する。
【0157】
缶商品が姿勢制御部材200の動作によって商品受台101上に倒置姿勢に維持された後、加熱動作が行われ、適温加熱した後、搬出部材300によって商品は商品受台101から外部へ搬出される動作が行われる。
【0158】
加熱動作時、下部ローラ103が回転してゴム部材103cが缶商品に当接して、缶商品を自転させ、このとき、誘導加熱コイル102に高周波電流を通電して、缶商品18を誘導加熱する。
【0159】
また下部ローラ103が回転中、搬出部材300は下部ローラ103のネジ切り部108cが構成されていない部分でスリップ(空回り)しながら待機し、移動しないように維持されている。このとき、プッシャー手段301の弾性部材302は搬出部材300に当接しないように離れた位置で保持されている。加熱中、上部ローラ201は回転を停止しており、姿勢制御部材200は待機位置で停止した状態で維持されている。姿勢制御部材200の待機位置はプッシャー手段301の一端側の係合部に当接しない位置に停止している。
【0160】
そして加熱動作が終了し、下部ローラ103が停止すると、次に缶商品の搬出動作を行う。このとき、下部ローラ駆動モータ111に逆通電した下部ローラ103を逆回転させる。また上部ローラ201を回転駆動させて、上部ローラ201を回転させ、姿勢制御部材200がプッシャー手段301の一端部を押し圧するまで駆動させる。これによって、プッシャー手段301が回転軸部300aを中心に回転し、他端側に構成された弾性部材302が搬出部材300に接触し、弾性力によって搬出部材300を下部ローラ103の軸方向に押出す。
【0161】
これによって搬出部材300はスリップ状態を解除し、ネジ切り部108cとかみ合って下部ローラ103の回転により缶商品を外部へ搬出することができる。
【0162】
したがって加熱中、搬出部材300は弾性部材302から、わずかな外力も受けないので、ネジ切り部108cの端面との接触によるカタカタ音などの異音が発生することがなく、スムーズに下部ローラ103を回転させることができる。
【0163】
搬出部材300は商品受台101の端部まで移動すると、下部ローラ103を加熱時と同じ方向に回転させて搬出部材300を初期位置である待機位置に移動させる。
【0164】
よって缶商品を自動的に外部へ搬出することができるので、利用者は誘導加熱装置100内に手を入れて取出す必要がなく、安全の確保ができる。また搬出部材300を待機位置に戻すことで、誘導加熱装置100内に商品が詰まっているかを制御することができる。
【0165】
特に、誘導加熱装置100が駆動されない間でも、定期的に搬出部材300を所定区間往復移動させて、搬出部材300が商品受台101の端部まで移動しない場合、または待機位置まで戻ってこない場合は内部に異物があると、異常判断し、誘導加熱装置100で加熱処理を行う商品の商品選択ボタンを売り切れ状態にして、売れないように対応することで、誘導加熱装置100の安全性を確保することができる。
【0166】
また、誘導加熱装置100の商品受台101の端部には商品取出口16に連通する開口部504が形成され、開口部504を開閉する上下方向に移動可能な開閉部材505が形成されている。開閉部材505の構造、動作および作用は実施の形態1と同様である。
【0167】
次に、誘導加熱コイル102を冷却する冷却風路構成について説明する。
【0168】
図18のように商品加熱部100aの下方に駆動モータ等を収納する駆動部100bが構成されている。
【0169】
駆動部100bには送風ファン400が収納されており、送風ファン400から商品加熱部100aに向かって空気を送風するダクト401が構成されている。送風ファン400は多翼ファンやターボファンと言われる軸に対して直角に、遠心方向に空気が流れる遠心型送風機であり、ダクト401は送風ファン400の吐出口と商品加熱部100aの開口部402を連結して構成されている。
【0170】
そして、開口部402は商品受台101を構成する樹脂製のコイルケース101a内に連通するように風路構成され、具体的には、誘導加熱コイル102と第1フェライト104の間を空気が流れるように空間部403が形成され風路を構成している。すなわち、誘導加熱コイルの下方から上方に向けて空気を流す風路が構成されている。
【0171】
また駆動部100b内の送風ファン400と下部ローラ駆動モータ111、上部ローラ駆動モータ112との位置関係は、送風ファン400の吸込み口400aの近傍に下部ローラ駆動モータ111と上部ローラ駆動モータ112が配置されている。
【0172】
以上のように構成された冷却風路について、以下その動作、作用を説明する。
【0173】
送風ファン400の運転により、駆動部100b内の空気を吸い込み、ダクト401を介してコイルケース101a内に空気を強制送風し、誘導加熱コイル102と第1フェライト104の間に空気を導くことで、特に誘導加熱コイル102を冷却し、その結果、商品受台101表面の冷却を行うことができ、また誘導加熱コイル102と第1フェライト104の間に風路を設けることで、誘導加熱コイル102と商品受台101との間隙を近接できるので、コイル温度上昇を低減でき、缶商品18の加温効率を高めることができる。
【0174】
また、誘導加熱コイル102の表面を覆う被膜を絶縁温度(約160℃)以下に保つことができ、誘導加熱コイル102を冷却することができ、また商品受台101の表面温度も低くできるので、誘導加熱コイル102の破壊を抑制し、誘導加熱装置100によるホット商品の連続加熱が可能となり連続販売が可能となる。したがって、販売促進に寄与する。
【0175】
送風ファン400は、少なくとも加熱中は連続運転で制御されているが、誘導加熱装置100が運転されていない時でも、常時連続運転することで、突然、誘導加熱装置100による加熱運転が行われた場合でも、常に誘導加熱コイル102の安全性を維持することができる。
【0176】
そしてコイルケース101aの上部背面で外枠106に形成された排気孔113から空気を外部へ排気することで、熱交換効率を高め誘導加熱コイル102の加温効率を高めることができる。
【0177】
また、外扉12の裏面に誘導加熱装置100を固定するベース部600が形成され、外枠106がベース部600にビス等で固定されて構成されている。このため外扉12と誘導加熱装置100の間にはベース部600の奥行き高さ分だけスペース部601を確保することができる。ベース部600には上下方向に形成された連通孔600aが複数形成されている。
【0178】
これによって、排気孔113から吐出した空気は外扉12と誘導加熱装置100の間に形成されたスペース部601内を通り、さらにベース部600に形成された連通孔600aを通って誘導加熱装置100の上部へ排出するように構成されているので、誘導加熱コイル102から発生する熱を効率よく排気することができ、特に誘導加熱装置100による加熱運転が、ほぼ連続的に行われる連続加熱販売の場合、商品受台101が高温状態のまま商品の加熱運転するのを抑制し、誘導加熱コイル102と商品受台101の温度がさらに上昇するのを防止することができる。
【0179】
これによって誘導加熱コイル102が絶縁被覆温度を超えて安全装置が働き、このため加温を途中で停止してしまうなどの安全性や加温品質の劣化を防止することができ、誘導加熱装置100による商品の連続販売を実現することができる。
【0180】
安全性を確保することができ、また誘導加熱装置100の連続運転による、ホット商品の連続販売が可能となる。
【0181】
また、送風ファン400により、下部ローラ駆動モータ111と上部ローラ駆動モータ112で発生する熱を効率よく排除することができ、駆動部100b内が高温になるのを防止することができ、駆動部の信頼性を確保することができる。
【0182】
また、送風ファン400による風路構成をコイルケース101a内のみに構成したが、一部の空気がコイルケース101aの上面、すなわち商品受台101面に送風されるように風路を設けてもよく、これにより商品受台101面の温度を低下させるとともに、商品受台101面にゴミやほこり等が付着するのを防止することができる。具体的な風路構成として、ダクト401を途中で分岐させて、商品受台101と下部ローラ103間に設けられた隙間寸法Lの部分から空気が吹き出すように構成すればよい。
【0183】
次に、缶商品18の温度を検知する温度検知手段A110および温度検知手段B120について説明する。
【0184】
まず、温度検知手段A110(例えば赤外線センサー)は、商品受台101の長手方向(幅方向)の略中間部から下方にずらして、下部ローラ103近傍に配置されている。缶商品は下部ローラ103に当接配置するので缶外径の大小にかかわらず缶商品と温度検知手段A110との距離をほぼ一定に保つことができる。
【0185】
また、温度検知手段A110を商品受台101の長手方向の略中間部から下方にずらして配置することで、缶表面温度の測定精度を向上させることができる。
【0186】
これは、缶商品に対する誘導加熱コイル102の位置関係で、缶商品の長手方向の中央部付近は商品受台101に対する誘導加熱コイル102の配置構成上、渦巻き状に形成された誘導加熱コイル102のほぼ中央部に位置するため、最も温度が高くなりやすく、また検知温度のバラツキが大きいため、缶商品の長手方向で、中心位置から相対的に端へずらせるほどバラツキが小さくなる傾向がある。
【0187】
したがって、缶商品の中央部ほど缶表面温度の変化率が大きいので、幅広い温度範囲を精度よく検知できる温度検知手段が必要になる。しかしながら、缶商品を適温に検知して加熱を制御できるように温度検知手段の精度を高めるためには、測定温度範囲を狭くした温度検知手段を用いて精度を高める必要があり、測定位置を缶商品の中央部からずらした位置、すなわち誘導加熱コイル102の端部に対応する位置となる商品受台101の長手方向の下部近傍に温度検知手段A110を配置することで缶表面温度の測定精度を向上することができ、過熱によるやけど等の安全性を高め、またぬるめ商品による品質の低下を阻止することができる。
【0188】
また実施の形態1と同様に、仮想缶表面温度を算出して、中身飲料温度が最適温度になるまでの缶表面温度を温度検出手段A110で測定して加熱制御を行うので、缶商品の信頼性を維持し、中身商品の加熱品質を確保できるとともに、中身飲料温度を最適温度に加温することができる。
【0189】
次に、缶商品18の温度を検知する温度検知手段B120について説明する。
【0190】
温度検知手段B120(例えば赤外線センサー)は、温度検知手段A110の横方向(開閉部材505側)に隣接して、商品受台101の長手方向(幅方向)の略中間部から上方にずらして、下部ローラ103近傍に配置されている。缶商品は下部ローラ103に当接配置するので缶外径の大小にかかわらず缶商品と温度検知手段B120との距離をほぼ一定に保つことができる。
【0191】
また、温度検知手段A110と温度検知手段B120とを共に、略中間部から位置をずらすことで、缶表面温度の測定精度を向上させることができる。なお、温度検知手段A110と温度検知手段B120とを、誘導加熱コイル102の中央部を基点に対称な配置にしても良い。
【0192】
上記構成により、図21のように、缶商品18は温度検知手段A110と温度検知手段B120の2つの温度検知手段によって缶商品18の異なる部分の温度を検知し加熱制御されており、加熱開始と共に温度検知手段A110と温度検知手段B120とが同時に温度算出を行い、逸早く目標缶表面温度へ到達した方の温度検知手段(110か120)にて誘導加熱コイル102の通電を停止する。
【0193】
したがって、例えば商品受台101へキャップ付きボトル缶のキャップ側が温度検知手段A110の近傍になる向きの姿勢で載置されたとき、温度検知手段A110では主に温度上昇し難いキャップ部の赤外線しか検出できないため他の缶に比べると仕上温度が高目になる傾向にあったが、併設配置した温度検知手段B120が逸早く目標缶表面温度へ到達して制御することにより、最適温度に加温することが可能になり、結果的に多品種の缶に対して仕上温度のバラツキを削減することができる。
【0194】
また、従来アルミ缶排除検知はIH加熱開始後t秒で初期温度から+ΔT℃上昇しない場合としており、加熱開始初期の立上り不安定なt秒の時点では温度上昇し難い正常加熱(キャップ付きボトル缶のキャップが温度検知手段A110の近傍になる向きの姿勢で載置されたとき)の場合でも誤検知する可能性があったが、温度検知手段B120が制御することでt秒よりも後の安定した加熱時間帯で検知することが可能になり誤検知を防止することができ、確実にアルミ缶を検知して排出することができる。
【0195】
また、図22に示すように、特に加熱開始時の中身飲料温度が低いときに加熱途上で缶表面温度がリニアに上昇しない場合があり、缶表面温度データの平均温度を10秒間隔(一定時間)で算出すると実際の缶表面温度の上昇推移と目標缶表面温度との間に発生する齟齬が仕上温度のバラツキに大きく影響を及ぼしていたが、温度検知手段A110と温度検知手段B120で0.1秒ごとに測定された缶表面温度データの平均温度を算出するとき、加熱開始時の中身飲料温度により、測定時間の時間幅を、加熱開始時の中身飲料温度が低いほど測定時間を長く(例えば最大20秒)して缶表面温度の平均温度を算出することにより、特に初期温度が低いときは最小二乗法の算出データ数が増えるため加熱途上における缶表面温度の上昇変動による影響を受け難くなり、実際の缶表面温度の上昇推移と目標缶表面温度との間に発生する齟齬が小さくなる結果、仕上温度のバラツキを削減することができる。
【0196】
また、初期温度が低いときは必然的に加熱時間が長くなるが測定時間の時間幅を従来よりも後に遅らせることで、より安定した缶表面温度の上昇推移による最小二乗法の算出データの標準偏差が小さくなり、さらなる仕上温度のバラツキ削減に寄与することができる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
以上のように本発明にかかる缶商品の誘導加熱装置は、缶商品の大小に関わらず品質の安定した均一加熱を効率よく行うことができ、自動販売機や携帯用缶加熱装置として広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0198】
【図1】本発明の実施の形態1を示す缶商品の誘導加熱装置を備えた自動販売機の正面図
【図2】同実施の形態の自動販売機の縦断面図
【図3】同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の斜視図
【図4】同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の正面図
【図5】図4の矢視Aの側面図
【図6】図4の矢視Aの側面図
【図7】図4のB−B線の断面図
【図8】図4の矢視Cの平面図
【図9】同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の搬出機構を示す図
【図10】同実施の形態の缶表面温度と中身温度との関係を示す図
【図11】本発明の実施の形態2の自動販売機の斜視図
【図12】同実施の形態の自動販売機における外扉の裏面斜視図
【図13】同実施の形態の自動販売機における缶商品の誘導加熱装置の斜視図
【図14】同実施の形態の自動販売機における誘導加熱装置の要部斜視図
【図15】同実施の形態の自動販売機における誘導加熱装置の要部斜視図
【図16】同実施の形態の自動販売機における誘導加熱装置の正面要部断面図
【図17】図16の要部拡大図
【図18】同実施の形態の風路構成図
【図19】同実施の形態の要部斜視図
【図20】同実施の形態のコイルケース内の構成図
【図21】同実施の形態の缶表面温度と中身温度との関係を示す図
【図22】同実施の形態の演算時間を変える場合の缶表面温度と中身温度との関係を示す概念図
【図23】従来の外観図
【図24】缶表面温度と中身飲料の温度との関係を示す図
【符号の説明】
【0199】
11 自動販売機本体
11a 商品収納室
12 外扉(扉)
17 誘導加熱装置
18 缶商品
19 商品受台
20 誘導加熱コイル
21 下部ローラ(回転手段)
22 下部ローラ駆動モータ
30 商品姿勢制御部材
31 上部ローラ
33 搬出部材(搬出機構)
40 開閉部材
43 非接触式温度検知手段(温度検知手段)
100 誘導加熱装置
101 商品受台
102 誘導加熱コイル
110 非接触式温度検知手段A
120 非接触式温度検知手段B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶商品を電磁誘導加熱方式によって加熱する缶商品の誘導加熱装置を備えた自動販売機において、前記誘導加熱装置に、所定時間の間に複数回、前記缶商品の缶表面温度を検知する複数の温度検知手段を備え、前記温度検知手段で測定された前記缶表面温度の平均温度を算出し、前記平均温度から前記缶商品の缶表面温度の温度上昇度を算出することで、加熱開始時の缶表面温度として推定する仮想缶表面温度を測定し、設定された中身飲料温度の最適温度と加熱開始時の中身飲料温度との温度差を算出することで、中身飲料温度が最適温度になったときの缶表面温度を前記仮想缶表面温度に前記温度差を加えた値として特定し、前記複数の温度検知手段のうちいずれか一方の前記平均温度が、特定された前記缶表面温度になったとき若しくは超えたとき、前記誘導加熱装置の加熱を停止することを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
缶表面温度の平均値が、あらかじめ設定された限界温度になったとき若しくは超えたときは、加熱運転を停止することを特徴とする請求項1に記載の自動販売機。
【請求項3】
缶商品の缶表面温度を検知する温度検知手段は温度補正可能であり、自動販売機の搬出や価格等を制御する制御手段で温度補正可能としたことを特徴とする請求項1または2に記載の自動販売機。
【請求項4】
温度検知手段は非接触式温度検知手段であり、渦巻き状の誘導加熱コイルを内蔵した商品受台に併設配置したことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の自動販売機。

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2010−72781(P2010−72781A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237391(P2008−237391)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】