説明

自動販売機

【課題】電気的な構成を用いずに構成の簡略化及びコンパクト化を図った自動販売機を提供する。
【解決手段】本体1の上部に商品収納部2が配置されると共に、硬貨投入口3に投入された硬貨の通路となる垂直案内路11a及び水平案内路11bが形成された硬貨案内路11を有する移動板13が配置されている。移動板13と供給板16とが一体に連結され、押込部材4にはリンク部材19が斜めに取り付けられ、ピン20を介して硬貨押出部材21に係合している。押込部材4を押下すると押込部材4及びリンク部材19が下降し、同時に、ピン20がリンク部材19の下降に従って硬貨押出部材21が水平案内路11bを右方向に硬貨を押しながら移動する。最終的には硬貨10が前方に配設された硬貨案内爪22によって落下し、同時に商品30を供給板16の一端の凹部161によって落下させて排出口5から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の硬貨を投入することにより商品を提供する自動販売機に関し、さらに詳しくは、例えば、一つずつ小分けされたコーヒー、紅茶、緑茶などのポッドを機械的な構成動作によって、且つ、手動操作によって提供することができる簡略化及びコンパクト化を図った自動販売機に関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒーを入れるスタイルの一つにポッドの利用がある。ポッドとは1杯分のコーヒーの粉を特定の形状の容器に充填したもので、一般的には中央が膨らんだ円盤状のものが知られている。このポッドでコーヒーを飲む場合、ポッドを専用の抽出機に装着して抽出する。このようなポッドを提供する自動販売機(ポッド販売機)及びこれに対応するコーヒー抽出機は、例えば、福利厚生を目的として会社の食堂、休憩コーナ等に設置しておくことにより従業員等の利用者がワンコインでポッドを購入し、これをコーヒー抽出機に入れて抽出することで気楽にコーヒーを楽しむことができる。尚、このようなポッド供給装置及び抽出機は、会社以外の場所、例えば飲食店、各種の店舗や施設、駅、その他においても利用できることはいうまでもない。
【0003】
ところで、コーヒーの自動販売機としては、例えば、特許文献1に示されるようなコーヒー販売機のように、モータやマイクロコンピュータを搭載することによって容易に自動化を図ることができる。このコーヒー販売機は、挽いたコーヒーが収納されてハウジングに出し入れ可能な収納容器、この収納容器から排出した挽いたコーヒーとお湯とを混合するチヤンバー、該チヤンバーからのコーヒーをフィルタペーパを通してカップに供給するカップステーション等を備え、これらはモータやマイクロコンピュータによって駆動及び制御する構成になっている。
【0004】
一方、硬貨を投入し、購入者がレバー等の操作を行うことによって商品を提供する自動販売機としては、例えば、特許文献2に示すようなカプセルに玩具等を収容したカプセル入り玩具の自動販売機が知られている。特許文献2のカプセル入玩具用自動販売機のコイン投入装置は、ケース、回転シャフト、コイン収容回転盤及び揺動部材を備えており、コイン収容回転盤には第一収容部と第二収容部と回転阻止用突起とが形成され、揺動部材には、第一段部と第二段部とが設けられ、小径コインは第一収容部に収まり、第一段部に摺接しながら揺動部材を所定量揺動させ回転阻止用突起が揺動部材に当接しないよう構成し、大径コインは第二収容部に収まり、第二段部に摺接しながら揺動部材を所定量揺動させ回転阻止用突起が揺動部材に当接しないよう構成することにより二種類のコインに対応できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−087137号公報
【特許文献2】特開2006−244210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、清涼飲料やコーヒーの自動販売機は装置全体が大型であるため、給湯室のような狭いスペースに気軽に設置することは困難である。また、動作に電力を必要とするためその分のコストもかかる。そのため、卓上型のコーヒー抽出器を設置しておき、ユーザが1杯分のポッドを別途購入することによって卓上型のコーヒー抽出器でコーヒーを入れるようにすることが簡便であるが、ポッドの提供のための自動販売機もなるべく場所を取らず、簡単な構成であって電力等を用いない構成のものが最適である。
【0007】
そこで、本発明は、かかる問題点に鑑みなされたもので、電力等を利用することなく、純機械式な構成にして装置の簡略化及びコンパクト化を可能にした自動販売機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、商品を複数収納する商品収納部と、予め定めた所定価額の硬貨の直径よりも僅かに長い開口を備えた硬貨投入口と、第一の弾性部材によって上方側に向かって付勢され、利用者の押圧操作によって下方側に移動可能に形成された押込部材と、押込部材に所定の角度を有して連結され、内部に空間が形成されたたリンク部材と、硬貨投入口から投入された硬貨を案内する垂直案内路及び当該垂直案内路の下方側から水平方向に伸びる硬貨の直径よりも僅かに小さい幅の水平案内路を備えた略L字状の硬貨案内路が形成されると共に、水平案内路側とは反対側に硬貨押出部材が配置された移動板であって、硬貨押出部材はリンク部材に形成された空間部に沿って移動可能なピンを介して係止され、押込部材を押し込むことによりリンクを介して水平案内路内を硬貨押出部材が水平移動することによって押し出された硬貨が水平案内路の上部側の角部に当接したのち水平移動を開始する移動板と、移動板を押込部材による移動方向とは反対方向に付勢する第二の弾性部材と、移動板と一体に連結されて移動板と連動して水平移動可能に形成され、移動板の移動に伴って水平移動することにより商品収納部の最下部にあって掛止状態にある商品を落下させて取出口へ導く供給板とを備えて構成されていることを特徴とする自動販売機を提供する。
【0009】
上記課題を解決するために請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の自動販売機において、移動板の移動によって供給板が商品を押して落下させる位置に到着したタイミングで投入された硬貨を水平案内路の外へ排除して予め定めた所定価額の硬貨を硬貨収納部へ案内する硬貨案内爪を備えていることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するために請求項3に記載の本発明は、請求項2に記載の自動販売機において、予め定めた所定価額の硬貨の直径よりも小さい直径の硬貨が投入された場合には当該硬貨を水平案内路に向かって移動させて硬貨収納部とは異なる方向へ案内し、返却口から排出するようにしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するために請求項4に記載の本発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の自動販売機において、硬貨押出部材は、水平案内路に沿って配設されたガイドリンクに案内されながら移動するようにしたことを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するために請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の自動販売機において、供給板は、商品の外径に対応した半円状の凹部が商品収納部側に設けられ、当該供給板の水平移動の最終段階で凹部に掛止されている商品を押し込んで落下させることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するために請求項6に記載の本発明は、請求項1から5のいずれか1項に記載の自動販売機において、商品収納部は中空状の筒状体によって形成され、内部に販売する商品を上下方向に重ねた状態で収容し、硬貨が硬貨案内爪によって水平案内路の外へ排除されるタイミングで最下部の商品が落下して排出口へ排出されると移動板が第二の弾性部材による付勢によって元に位置に戻るのに伴い供給板も元に位置に戻り、商品収納部の最下部に位置する商品が掛止状態となってスタンバイするようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る自動販売機によれば、電気で動く機構を用いず、純機械式にすることができるため、構成の簡略化及びコンパクト化を図ることができるという効果がある。従って、僅かなスペースでも設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る自動販売機の好ましい一実施形態の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る自動販売機の本体内の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動販売機の硬貨投入前の状態を示す正面断面図である。
【図4】本発明に係る自動販売機の硬貨投入直後の状態を示す正面断面図である。
【図5】本発明に係る自動販売機の押込部材押下開始段階の状態を示す正面断面図である。
【図6】本発明に係る自動販売機の押込部材押下最終段階の状態を示す正面断面図である。
【図7】(a)〜(c)は供給板の形状及びセットから排出までの動作を示す斜視図である。
【図8】(a)〜(c)は主要部の動作状態を示す斜視図及び平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[自動販売機の構成]
以下、本発明に係る自動販売機について、好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る自動販売機の一実施形態を示す斜視図、図2は本発明に係る自動販売機の本体内の構成を示す斜視図である。そして、図3〜図6は自動販売機の一連の動作過程における断面図である。尚、本実施形態では、販売する商品として1杯分のコーヒーを収容した円盤状の「ポッド」を例にして説明するが、商品は「ポッド」に限るものではなく種々の商品に適用することが可能である。
【0017】
図1に示すように、自動販売機100は、概略として、中空状の箱型をした本体1と、この本体1の上面に立設配置された商品収納筒(商品収納部)2と、本体1の上面に設けられて予め定められた価額の硬貨10を投入するための硬貨投入口3と、本体1の上面に設けられ、硬貨10を投入した利用者の押下操作によって1つのポッド30を排出口5から排出させるための棒状の押込部材4と、本体1の側面に設けられて押込部材4の押下操作に応じて1つのポッド30を排出する排出口5とを備えて構成されている。尚、自動販売機100には排出口5から排出されたポッド30を保持するための図示しないトレイ等が配設されており、排出されたポッド30を利用者が取り出し易いように形成されている。また、図示及び詳しい説明は省略するが、商品収納筒2内にポッド30が存在しない“売り切れ”の場合には硬貨投入口3を閉塞する機構若しくは硬貨投入口3に投入された硬貨10を返却する機構を備えている。
【0018】
商品収納筒2は、中空状の筒状体によって形成されており、商品収納筒2は収容するポッド30,30の直径よりも僅かに大きな内径とされ、その内部に販売する商品であるポッド30,30が上下方向に複数重ねた状態で収納できるようになっている。
【0019】
硬貨投入口3は、ポッド30を販売するために予め定められた所定の価格(以下、「指定の価額」という)に対応する硬貨10(本実施形態では100円硬貨)のみが使用できるように形成されている。すなわち、硬貨投入口3の開口長さ及び幅は100円硬貨の直径及び厚さとほぼ同じサイズかそれよりも僅かに大きく形成されており、直径が100円硬貨よりも大きい10円及び500円硬貨は硬貨投入口3に投入できないようにすることによって本体1内に投入されることを排除し、直径が100円硬貨より小さい1円、5円及び50円硬貨は硬貨投入口3に投入可能ではあるものの後述する返却機構により押込部材4を操作してもポッド30は排出されず、本体1の外に返却されるようになっている。尚、外国の硬貨の場合には各国の硬貨のサイズの実情に合わせて硬貨投入口3のサイズを適宜に調整すればよい。
【0020】
図2に示すように、本体1の内部には、概略として、押込部材4を下方側から上方側に向かって付勢する第一のコイルバネ17と、押込部材4に所定の角度を有して連結され、内部に空間が形成されたたリンク部材19と、硬貨投入口3の下側に硬貨投入口3から投入された硬貨10を案内する垂直案内路11a及び垂直案内路11aの下方側から水平方向に伸びる硬貨10の直径よりも僅かに小さい幅の水平案内路11bを備えた略L字状の硬貨案内路11が形成されると共に全体として水平方向へ移動可能な移動板13と、移動板13と一体に連結されて移動板13の水平移動と連動して移動可能に配置された供給板16と、押込部材4の押し込みによりリンク部材19を介して水平案内路11bに向かって水平移動して硬貨10を押し込む硬貨押出部材21と、移動板13の移動に伴って移動してきた硬貨10の右側端を図3の手前方向へ押し出す傾斜面220を有した長板状の硬貨案内爪22と、硬貨押出部材21の移動をガイドするガイドリンク23とが設置されている。尚、押込部材4を付勢する第一のコイルバネ17の下方側は本体1の底面に設置された支持部材18に支持されており、押込部材4は、利用者が指で押込部材4の上面を押し下げることにより第一のコイルバネ17の付勢力に抗して下降し、利用者が指を押込部材4の上面から離せば元の位置に復帰するようになっている。
【0021】
移動板13は、本体1の上面側に平面状に配置された供給板16の一方側の側縁に対して図示しないL字型金具等によって直角に、且つ、一体に連結するようにして取り付けられており、後述するように硬貨押出部材21によって押し出された硬貨10を介して本体1の側面に取り付けたガイドネジ12,12にガイドされるようにして水平移動(図3における右方向へ移動)可能とされている。また、移動板13は支持ネジ15a,15bによって固定端(右端)側が本体1に支持された第二のコイルバネ14a,14bによって移動方向とは反対方向(図3における左側方向)に付勢されている。
【0022】
移動板13に形成された硬貨案内路11の垂直案内路11aは、硬貨投入口3と同様に、硬貨10の直径及び厚みと同じかそれよりやや大きく形成されており硬貨10の落下を可能にしている。一方、硬貨案内路11の水平案内路11bの幅サイズは硬貨10の直径よりもやや小さく形成されているため、硬貨押出部材21によって押し出された硬貨10は水平案内路11bの上部角部に当接して水平案内路11b内への進入ができないようになっている。尚、指定の価額とは異なる硬貨であって硬貨10よりも直径の小さい硬貨が投入された場合には水平案内路11bの上部角部に当接することなく水平案内路11b内を通過するようになっている。
【0023】
リンク部材19は、上端側が押込部材4に連結固定されると共に、下端側が斜め下方向に傾斜して伸びるように形成された板状の部材であり、押込部材4と一体となって上下動するように形成されている。また、リンク部材19の表面には長手方向に沿って長溝状の開口190が設けられており、開口190内に嵌入されたピン20によって水平案内路11b側とは反対側に位置するようにして配置された硬貨押出部材21を移動可能に支持している。
【0024】
硬貨押出部材21は、押込部材4と一体となって上下動するリンク部材19によって垂直案内路11aの下部に落下した硬貨10を水平案内路11b側に押し出す部材である。硬貨押出部材21は、硬貨10を安定的に押し出すことができるように硬貨10の側面形状に合致した凹部210を有し、凹部210は硬貨10の周面に対して線状に接触して支持するようになっている。そして、押込部材4が押し下げられるとそれと連動してリンク部材19が下降を始め、リンク部材19の下降によって開口190内に嵌入されたピン20の位置が次第に水平案内路11b側に移動することになるので硬貨押出部材21は水平案内路11bに向かって水平移動する。これにより硬貨10が水平案内路11bに向かって押し出されるようになっている。そして、硬貨押出部材21によって水平案内路11b側へ押し出された硬貨10は水平案内路11bの上部側の角部に当接することになるが、さらに押込部材4が押し込むと硬貨押出部材21が水平案内路11bの上部側の角部に当接した状態の硬貨10を押し込むことになるので今度は移動板13全体がガイドリンク23にガイドされながら水平移動(図3の右方向)を始める。
【0025】
水平案内路11bの前方側には硬貨案内爪22が配置されている。硬貨案内爪22は、先端が斜めに折り曲げ加工された傾斜面220を備えた板状部材であり、硬貨押出部材21によって押し出されて水平移動してきた硬貨10を傾斜面220によって硬貨押出部材21から傾斜面220の傾斜方向に案内して落下させる。傾斜面220の傾斜方向には図示しない硬貨収納部が設けられており落下した硬貨10が貯えられるようになっている。一方、指定の価額とは異なる硬貨であって硬貨10よりも直径の小さい硬貨の場合には硬貨案内爪22の傾斜面220に案内されることなく水平案内路11b内を通過してそのまま落下して図示しない硬貨収納部とは異なる場所に落下する。そして、指定の価額とは異なる硬貨であって硬貨10よりも直径の小さい硬貨は本体1に設けられた図示しない返却口から返却されるようになっている。尚、硬貨案内爪22は図示しないネジ部材によって本体1に取り付けられており、取り付け位置を適宜調整することで指定の価額の硬貨10的確に分別することができる。
【0026】
硬貨押出部材21から硬貨10が落下すると硬貨10による水平案内路11bの上部角部との当接状態が解消されるので第二のコイルバネ14a,14bの付勢力によって移動板13は元の位置(図3における左側)に戻ることになる。
【0027】
図7(a)〜(c)は供給板16の形状を示す斜視図である。図7(a)はポッド30が位置決め(セット)されていないときの供給板16の形状を示し、商品収納筒2側の下端部に設けられた凹部160に商品収納筒2の最下段の1枚のポッド30が図7(b)に示すようにセットされる。ポッド30はコーヒーの粉末が詰まった中央部がやや膨らんだ円盤状の本体部30aとその周囲に張り出している鍔30bを有している。図7(a)に示すように、本体1の天板面1aにはポッド30の直径よりもやや大きな円弧に形成された凹部1bが形成されると共に、供給板16の先端部にも同様の凹部161が形成されている。そして、初期状態では天板面1aの凹部1bの位置よりも供給板16の凹部161の方が僅かに後方側(図7(a)における左側)にズレた状態で位置している。これによりポッド30は天板面1aの凹部1bと供給板16の凹部161によって形成された段部に鍔部30bが掛止されて安定な状態にセットされる。そして、上述した移動板13の移動と連動して供給板16が水平移動することにより図7(c)に示すように、供給板16は図示の右方向へ移動する過程で供給板16の凹部161がポッド30の鍔30bを押し込み、凹部1bと凹部161とが合致すると、ポッド30を図示しない落下口へ落下させる。これにより、ポッド30は排出口5から排出される。そして、このポッド30の落下のタイミングと硬貨案内爪22による硬貨押出部材21からの硬貨10の落下のタイミングとがほぼ同時に行われるようになっており、ポッド30が落下して第二のコイルバネ14a,14bの付勢力によって移動板13は元の位置(図3における左側)に戻ると次のポッド30が天板面1aの凹部1bと供給板16の凹部161によって形成された段部に鍔部30bが掛止されてセットされることになる。
【0028】
[自動販売機の動作]
次に、図3〜図6及び図8(a),(b),(c)を参照し、上述した自動販売機100の動作について説明する。まず、利用者は図1及び図3に示すように、硬貨10を硬貨投入口3に投入する。すると、硬貨10は垂直案内路11a内を落下し、図4に示すように落下位置で静止する。次に、利用者が押込部材4を指で押し下げると、図5に示すように、押込部材4の下降に連動してリンク部材19がその傾斜角度を保持したままで下降を開始する。リンク部材19が下降する過程でリンク部材19によって、ピン20が図4の状態から右方向に移動する。ピン20が右方向へ動き始めると、ピン20が取り付けられている硬貨押出部材21も右方向へ移動し始め、これに伴って硬貨10が図5及び図8(b)に示すように右方向へ移動する。そして、硬貨10が図5に示す位置まで移動すると、硬貨10の直径の方が水平案内路11bの高さより大きいため、硬貨10は水平案内路11bの上部角部に当接して図5の位置から先に進めなくなる。
【0029】
しかし、移動板13が水平移動可能に構成されているので、利用者が押込部材4をさらに押し下げると硬貨10を介して移動板13全体を図5の右方向へ移動させる。そして、移動板13が右方向へ移動すると移動板13に固定されている供給板16も連動して右方向へ移動する。押込部材4の押し込み下降が最終段階に到達すると、硬貨10の右側端が硬貨案内爪22の先端(傾斜面220)に到達し、硬貨10は硬貨案内爪22の傾斜面220に沿うようにして厚み方向(図6の手前方向)に先端側から徐々に押し出されるように回動し(図6及び図8(c)参照)、ついには水平案内路11bの外へ落下し図示しない硬貨収納部に納められる。
【0030】
一方、硬貨10が水平案内路11bから落下するタイミングで供給板16の凹部161がポッド30を押し込み、図7(b)の状態から図7(c)に示すように、凹部1bと凹部161とが合致すると、ポッド30を図示しない落下口へ落下させる。これにより、ポッド30は排出口5から排出される。また、硬貨10と水平案内路11bの上部端面との当接が解除されるので押込部材4は第一のコイルバネ17の付勢力によって図6の上方向に押し上げられ、同時にリンク部材19が上昇することによってピン20が図示の左方向に押し戻されることによって硬貨押出部材21が左方向に移動し、さらに移動板13及び供給板16も図7に示す左側へ移動し、押込部材4、リンク部材19、ピン20及び硬貨押出部材21の各部材が初期状態に戻される。このとき、次のポッド30が天板面1aの凹部1bと供給板16の凹部161によって形成された段部に鍔部30bが掛止されてセットされる。
【0031】
ところで、硬貨10を硬貨投入口3に投入しないで押込部材4を押し下げた場合には、押込部材4、リンク部材19、ピン20及び硬貨押出部材21の各部材が上述したような運動を行う。しかし、硬貨10が存在しないために移動板13が右方向に押されず、供給板16も移動しない。そのため、押込部材4は途中まで下降するが、それより下には下降しない。従って供給板16も移動しないのでポッド30は落下せず、ポッド30は排出口5から排出されない。
【0032】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る自動販売機によれば、その全てを機械的な構成にすることができるため、構成の簡略化が図れると共に低価格化が図れるという効果がある。
【0033】
また、ポッド30を排出する機構は、予め設定した価額の硬貨(本実施形態では100円硬貨)でしかが動作しないため、極めて簡単な構成によって不正使用を防止することができるという効果がある。
【0034】
また、硬貨投入後のポッド30の供給開始を押込部材4にし、この押込部材4にリンク部材19を固定しているため、硬貨10を移動させるための駆動源にモータ等を必要としないので、構成の簡略化及びコンパクト化を図ることができるという効果がある。
【0035】
また、移動板13の硬貨案内路11は、指定された価額の硬貨より小さい径の硬貨を排除する機構を有し、且つ、垂直案内路11aが指定された価額の硬貨が通過可能な断面形状を有するとともに水平案内路11bは指定された価額の硬貨が垂直案内路11aより硬貨案内爪22側へ進入できない断面形状を有しているので、不正使用を排除できるという効果がある。
【0036】
また、硬貨押出部材21は移動板13の硬貨案内路11に沿って配設された硬貨押出部材ガイドリンク23にガイドされて移動するので安定に移動し、移動過程で硬貨10が詰まることがないという効果がある。
【0037】
また、供給板16は、ポッド30の外径に対応した円弧状の凹部1b,161を商品収納筒2の下部に設け、供給板16の水平移動によってポッド30を押し込んで移動させて投下口へ導くようにしたので、簡単な構成によって供給系を構成することができるという効果がある。
【0038】
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。例えば、押込部材4は押す動作ではなく、引いたり回転させたりするレバー式であってもよい。同様に、リンク部材19は垂直方向に代えて水平方向に配置するとともにピン20を上側等に配置し、押込部材4の移動をリンク部材19の水平移動に変換すればよい。
【0039】
また、本発明に係る自動販売機は、商品の価格が1枚の硬貨に対応するのであれば、ポッド30を販売する以外の目的の装置、例えば、日用雑貨品、玩具、パン、嗜好品等(包装箱等の有無を問わないが凹部160に係止できる形状の必要がある)、更には缶(または紙パック)ジュース、缶詰等の各種の商品を販売するための装置の全般に採用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 本体
1a 天板面
2 商品収納筒
3 硬貨投入口
4 押込部材
5 排出口
10 硬貨
11 硬貨案内路
11a 垂直案内路
11b 水平案内路
12 ガイドネジ
13 移動板
14a,14b 第二のコイルバネ
15a,15b 支持ネジ
16 供給板
17 第一のコイルバネ
18 支持部材
19 リンク部材
20 ピン
21 硬貨押出部材
22 硬貨案内爪
23 ガイドリンク
30 ポッド
30a 本体部
30b 鍔
100 自動販売機
161 凹部
190 開口
210 凹部
220 傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を複数収納する商品収納部と、
予め定めた所定価額の硬貨の直径よりも僅かに長い開口を備えた硬貨投入口と、
第一の弾性部材によって上方側に向かって付勢され、利用者の押圧操作によって下方側に移動可能に形成された押込部材と、
前記押込部材に所定の角度を有して連結され、内部に空間が形成されたたリンク部材と、
前記硬貨投入口から投入された硬貨を案内する垂直案内路及び当該垂直案内路の下方側から水平方向に伸びる前記硬貨の直径よりも僅かに小さい幅の水平案内路を備えた略L字状の硬貨案内路が形成されると共に、前記水平案内路側とは反対側に硬貨押出部材が配置された移動板であって、前記硬貨押出部材は前記リンク部材に形成された前記空間部に沿って移動可能なピンを介して係止され、前記押込部材を押し込むことにより前記リンクを介して前記水平案内路に向かって前記硬貨押出部材が水平移動することによって押し出された前記硬貨が前記水平案内路の上部側の角部に当接したのち水平移動を開始する移動板と、
前記移動板を前記押込部材による移動方向とは反対方向に付勢する第二の弾性部材と、
前記移動板と一体に連結されて前記移動板と連動して水平移動可能に形成され、前記移動板の移動に伴って水平移動することにより前記商品収納部の最下部にあって掛止状態にある商品を落下させて取出口へ導く供給板と、
を備えて構成されていることを特徴とする自動販売機。
【請求項2】
請求項1に記載の自動販売機において、
前記移動板の移動によって前記供給板が前記商品を押して落下させる位置に到着したタイミングで投入された前記硬貨を前記水平案内路の外へ排除して予め定めた所定価額の硬貨を硬貨収納部へ案内する硬貨案内爪を備えていることを特徴とする自動販売機。
【請求項3】
請求項2に記載の自動販売機において、
予め定めた所定価額の硬貨の直径よりも小さい直径の硬貨が投入された場合には当該硬貨を前記水平案内路に向かって移動させて前記硬貨収納部とは異なる方向へ案内し、返却口から排出するようにしたことを特徴とする自動販売機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の自動販売機において、
前記硬貨押出部材は、前記水平案内路に沿って配設されたガイドリンクに案内されながら移動するようにしたことを特徴とする自動販売機。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動販売機において、
前記供給板は、前記商品の外径に対応した半円状の凹部が前記商品収納部側に設けられ、当該供給板の水平移動の最終段階で前記凹部に掛止されている商品を押し込んで落下させることを特徴とする自動販売機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の自動販売機において、
前記商品収納部は中空状の筒状体によって形成され、内部に販売する商品を上下方向に重ねた状態で収容し、前記硬貨が前記硬貨案内爪によって前記水平案内路の外へ排除されるタイミングで最下部の商品が落下して排出口へ排出されると前記移動板が前記第二の弾性部材による付勢によって元に位置に戻るのに伴い前記供給板も元に位置に戻り、前記商品収納部の最下部に位置する商品が掛止状態となってスタンバイするようにしたことを特徴とする自動販売機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−109433(P2013−109433A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252236(P2011−252236)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000202062)早川産機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】