説明

自動貫入試験機および延長用ロッドの取付け方法

【課題】延長用ロッドの継ぎ足しにおいて、これを適正にチャックユニットに取付けることができる自動貫入試験機および延長用ロッドの取付け方法を提供する。
【解決手段】昇降動作可能な昇降台に設けられたチャックユニットに保持されている貫入ロッド4に延長用ロッドを連結し、既にチャックユニットに保持されている貫入ロッド4に設けられた係止部4cとチャックユニットとの係合を解除し、当該貫入ロッド4の後端に延長用ロッドを連結して前記昇降台を昇降動作させた後、駆動源部24の正転駆動に伴ってチャックユニットを正回転させることにより延長用ロッドの係止部に係合手段22を合致させ、合致後、一時的にチャックユニットが逆回転する方向に駆動源部24を逆転駆動させて延長用ロッドの取付けを完了とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫入ロッドに延長用ロッドを順次継ぎ足して所定深度毎に地盤の硬軟から土質判定を行う自動貫入試験機および延長用ロッドの取付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動貫入試験に装着された貫入ロッドに延長用ロッドを取付ける方法としては、特許文献1に示すものがある。この取付け方法は、昇降動作可能な昇降台に設けられたチャックユニットに保持されている貫入ロッドに延長用ロッドを連結し、既にチャックユニットに保持されている貫入ロッドに設けられた係止部とチャックユニットとの係合を解除し、当該貫入ロッドの後端に延長用ロッドを連結して前記昇降台を昇降動作させた後、駆動源部の正転駆動に伴ってチャックユニットを正回転させることにより延長用ロッドの係止部に係合手段を合致させて取付けを完了とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−214426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、チャックユニットを正回転させるだけで延長用ロッドの取付けを完了とする方法では、強く係合し過ぎてしまうため、この状態で貫入ロッドを貫入させると、延長用ロッドの係合部にかかる負荷が大きく、損傷を引き起こす問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の自動貫入試験機は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、昇降可能に設けられた昇降台と、この昇降台に回転可能に配置されるチャックユニットと、このチャックユニットを正回転または逆回転させるよう正転または逆転駆動する駆動源部と、前記チャックユニットに保持される貫入ロッドと、この貫入ロッドを所定深度貫入させる毎に当該貫入ロッドに継ぎ足される延長用ロッドとを備える自動貫入試験機であって、前記貫入ロッドおよび延長用ロッドが係止部を有する一方、前記チャックユニットが当該貫入ロッドおよび延長用ロッドを挿通可能に構成され、ここに挿通する貫入ロッドおよび延長用ロッドの係止部に係合可能な係合手段を有して成り、延長用ロッドを継ぎ足す場合には、既にチャックユニットに保持されている貫入ロッドの係止部と、チャックユニットの係合手段との係合を解除する一方、当該貫入ロッドの後端に延長用ロッドを連結して前記昇降台を昇降動作させた後、駆動源部の正転駆動に伴ってチャックユニットを正回転させることにより延長用ロッドの係止部に係合手段が合致するよう構成されるとともに、合致後、一時的にチャックユニットが逆回転する方向に駆動源部を逆転駆動させて延長用ロッドの取付けを完了とする構成である。
【0006】
また、本発明の延長用ロッドの取付け方法は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、昇降動作可能な昇降台に設けられたチャックユニットに保持されている貫入ロッドに延長用ロッドを連結し、既にチャックユニットに保持されている貫入ロッドに設けられた係止部とチャックユニットとの係合を解除し、当該貫入ロッドの後端に延長用ロッドを連結して前記昇降台を昇降動作させた後、駆動源部の正転駆動に伴ってチャックユニットを正回転させることにより延長用ロッドの係止部に係合手段を合致させ、合致後、一時的にチャックユニットが逆回転する方向に駆動源部を逆転駆動させて延長用ロッドの取付けを完了とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、チャックユニットを正回転させて、延長用ロッドの係止部に係合手段を合致させて係合した後、一時的にチャックユニットが逆回転する方向に駆動源部を逆転駆動させて延長用ロッドの取付けを完了とするものである。これにより、正回転だけでは、強く係合し過ぎた係止部と係合手段とが逆回転により解放される。そのため、適正な係合状態となり、損傷等の問題を引き起こすことが皆無となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の自動貫入試験機の斜視図である。
【図2】本発明の自動貫入試験機の側面図である。
【図3】図2のA−A線拡大断面図である。
【図4】本発明の自動貫入試験機のチャックユニットを示す拡大断面図である。
【図5】本発明の自動貫入試験機のチャックユニットの動作説明図であり、(a)は貫入ロッドの係合を解除した状態、(b)は延長用ロッドを保持した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は自動貫入試験機であり、スェーデン式サウンディング試験を自動で行うものである。その構成としては、支柱2に沿って昇降可能な昇降台3を有しており、この昇降台3には、所定重量の錘3aと、貫入ロッド4および、図5に示す延長用ロッド5を回転可能に保持するチャックユニット6と、昇降台3を昇降動作するための昇降ユニット7とが載荷されている。そして、昇降台3は、図2に示すように、支柱2に沿って垂直に配された案内チェーン2aに沿って回転するスプロケット8が案内チェーン2aに沿って回転することで昇降するように構成されている。この昇降台3および昇降台3に載荷された総重量により、前記貫入ロッド4には1KNの荷重が負荷できるように構成されている。
【0010】
前記昇降ユニット7においては、図3に示すように、前記昇降用モータ9の正逆転可能な駆動軸9aには、駆動歯車10、中間歯車11および伝達歯車12が当該昇降用モータ9の駆動に伴い回転自在に設けられている。そして、これら歯車列および一方向クラッチ13を介して伝達軸14が連結されている。具体的には、前記伝達歯車12は、円柱を成し、その周面に外歯を備える構成である。そして、この伝達歯車12の内部には、一方向クラッチ13が当該伝達歯車12と一体に回転するよう圧入されるとともに、伝達軸14に回転自在に支持されている。この一方向クラッチ13の作用によって、スプロケット8には、昇降台3を上昇させる方向にのみ昇降用モータ9の駆動が伝達される。一方、下降時には一方向クラッチ13がスプロケット8の伝達軸14に対して空転する方向に駆動し、このためスプロケット8の伝達軸14は一方向クラッチ11の回転数以下の範囲内で回転自在となって、案内チェーン2aに沿って回転して昇降台3を自重により支柱2に沿って下降させる。
【0011】
また、前記昇降ユニット7の伝達軸14の先端には、ロータリエンコーダ15が設けてあり、スプロケット8の回転に伴うパルス信号を出力できるように構成されている。そして、制御装置16が当該ロータリエンコーダ15の発するパルス信号を処理し、貫入ロッド4の貫入量、貫入速度等を求めるとともに、昇降台3が所定の高さまで上昇あるいは下降するよう昇降用モータ9に指令信号を発するように構成されている。
【0012】
前記チャックユニット6は、図4あるいは図5に示すように、貫入ロッド4および延長用ロッド5が挿通可能な中空のチャック軸17と、このチャック軸17とマシンキー(図示せず)を介して固定され、当該チャック軸17に沿って往復移動可能、かつ常時チャック軸端側へばね18により付勢されたスリーブ19と、このスリーブ19のチャック軸端側への移動を規制するスリーブ押さえ20とを備えている。また、前記チャック軸17の先端付近には、その外周から内周へ貫通する貫通穴21が円周方向に3箇所穿設されており、この貫通穴21にはそれぞれ、係合手段の一例である鋼球22が動作可能に収納されている。さらに、スリーブ19においては、その内径がチャック軸17の外径とほぼ同一に形成されてチャック軸17の外周と摺動するように構成されている。一方、スリーブ19の先端近傍においては、その内周面がチャック軸17の外径よりも大きく形成されており、すなわち、段付き状に形成されている。この構成により、図5(a)に示すように、ばね18の付勢に逆らってスリーブ19を下方に押下げると、鋼球22が貫通穴21から抜け落ちない程度に動作することができる。
【0013】
前記チャックユニット6のチャック軸17には、その下端にはスプロケット23が取付けられており、一方昇降台3に載荷されているチャック用モータ24の駆動軸24aにもスプロケット25が取付られている。そして、これらスプロケット23,25にはチェーン26が巻き掛けてあり、チャック用モータ24の駆動に伴ってチャック軸17が回転するように構成されている。なお、チャック用モータ24側のスプロケット25は、ワンウェイクラッチ27を介して駆動軸24aに取付けられている。そのため、貫入ロッド4を回転貫入させる方向(以下、この方向を正回転とする。)へチャック用モータ24を正転駆動すると、駆動軸24aとスプロケット25とは一体に回転してチャック軸17を正回転させる。一方、チャック用モータ24を逆転駆動すると、当該スプロケット25へは駆動が伝達されずに空転してチャック軸17が回転しないよう構成されている。
【0014】
前述の構成により、チャックユニット6には、貫入ロッド4が回転可能に保持される。この貫入ロッド4は、先端にスクリューポイント4aを備える棒状部材である。また、この貫入ロッドの後端には雄ねじ部4bが一体成形されており、詳細を後述する延長用ロッド5の雌ねじ部5aと螺合結合可能に構成されている。さらに、この貫入ロッド4の上部外周面を3等分するようにして係止溝4cが3箇所に削設されており、前記チャック軸17の貫通穴21に収納されている鋼球22が当該係止溝4cに嵌合可能に構成されている。
【0015】
一方、前記貫入ロッドの後端に連結される延長用ロッド5は、図5(a)に示すように、先端に雌ねじ部5aを備えており、前記貫入ロッド4の雄ねじ部4bと連結可能に構成されている。また、後端には雄ねじ部5bが形成されており、この雄ねじ部5bに次の延長用ロッドを連結することにより、貫入ロッド4を延長可能に構成されている。さらに、延長用ロッド5の上部外周面にも、貫入ロッド4の係止溝4cと同じ構成の係止溝5cが削設されている。この構成により、貫入ロッド4に延長用ロッド5を継ぎ足す場合には、最後端の延長用ロッド5の係止溝5cに鋼球22を嵌合させて保持するように構成されいてる。
【0016】
以下、延長用ロッドの取付け動作を説明する。試験開始時、チャック軸17には、貫入ロッド4のみが保持されており、延長用ロッド5は連結されていない。この状態で、昇降台3を下降させて所定深度まで貫入ロッド4を貫入させる。そして、貫入ロッド3の長さ分の貫入が完了すると、続いて延長用ロッド5の継ぎ足しを行う。まず、貫入ロッド4の後端に延長用ロッド5を連結する。続いて、図5(a)に示すように、スリーブ19を押下げて鋼球22と係止溝4cの嵌合を解いてチャック軸17と貫入ロッド4の係合を解く。スリーブ19が押下げられた状態で、当該スリーブ19を円周方向に逆回転させることにより鋼球22およびチャック軸17も追従して回転させる。このとき、鋼球22の位置は、貫入ロッド4の係止溝4cと係止溝4cの間、すなわち係止溝4cが削設されていない周面であり、鋼球22がこの位置となるようスリーブ19を回転させる。したがって、スリーブ19はばね18の付勢に逆らって押下げられた状態である。なお、この場合、スリーブ19を回転させる方向は、ワンウェイクラッチ27のクラッ力チが作用しない方向であり、すなわち逆回転であって手動で容易に回転させることができる。
【0017】
貫入ロッド4とチャック軸17の係合解除作業が終了すると、図5(b)に示すように、貫入ロッド4を地中に貫入した状態で、チャック軸17の鋼球22が延長用ロッド5の係止溝に嵌合可能な位置まで、昇降台3を上昇させる。ここに昇降台3が到達すると、自動でチャック用モータ24が正転駆動してチャック軸17が正回転する。これに伴い鋼球22が延長用ロッド5の係止溝5cに合致嵌合すると、スリーブ19がばね18の付勢によって押上げられる。これを図1に示す近接センサ28が検知することにより、チャック用モータ24へ駆動停止信号が発せられ、延長用ロッド5の取付けが一時完了する。しかしながら、スリーブ19が押上げられてから回転が停止するまでには、若干のタイムラグが発生する。そのため、スリーブ19が回転し過ぎて鋼球22が係止溝5cに強く係合し過ぎてしまう。これに鑑みて、正転駆動終了後、チャック用モータ24が一時的に逆転駆動することにより、強く係合し過ぎた鋼球22と係止溝5cとが解放され、適正な係合状態となる。ただし、前記ワンウェイクラッチ27の作用により、チャック用モータ24を逆転駆動させても実際にスリーブ19が逆回転することはない。したがって、厳密には、強く係合し過ぎた鋼球22と係止溝5cとが解放される要因としては、ワンウェイクラッチ27およびスプロケット23,25のバックララッシ分が逆回転するだけである。なお、本発明においおては、ワンウェイクラッチ27を取り外し、当該バックラッシ分以上にスリーブ19が逆回転するよう構成してもよい。
【0018】
本発明の自動貫入試験機1および延長用ロッドの取付け方法によれば、上記発明が解決しようとする課題の他、スリーブ19が予期せぬ場面で押下げられて開放してしまう問題を解決することができる。具体的には、適正な係合状態で延長用ロッド5が取付けられて貫入ロッド4を貫入させた場合、係止溝5c内部上端にある鋼球は、昇降台3の下降に伴って係止溝5cに沿って転がり、下端に到達する。一方、鋼球22と係止溝5cが強く係合し過ぎた状態で貫入ロッド4を貫入させた場合、係止溝5cの内部上端にある鋼球22は、強く係合し過ぎているため、昇降台3を下降させたところで、係止溝5cに沿って円滑に転がらない。それどころか、スリーブ19の内周面に強く接しているため、昇降台3の下降に伴って鋼球22がスリーブ19を押下げてしまい、鋼球22と延長用ロッド5との嵌合が解かれてしまう危険がある。そこで、前述したように、一時的にスリーブ19を逆回転させる動作により、延長用ロッド5と鋼球22が適正な係合状態となり、スリーブが押下げられ、ロッド4,5が抜けてしまう問題が発生しなくなる。
【符号の説明】
【0019】
1 自動貫入試験機
2 支柱
2a 案内チェーン
3 昇降台
3a 錘
4 貫入ロッド
4a スクリューポイント
4b 雄ねじ部
4c 係止溝
5 延長用ロッド
5a 雌ねじ部
5b 雄ねじ部
5c 係止溝
6 チャックユニット
7 昇降ユニット
8 スプロケット
9 昇降用モータ
9a 駆動軸
10 駆動歯車
11 中間歯車
12 伝達歯車
13 一方向クラッチ
14 伝達軸
15 ロータリエンコーダ
16 制御装置
17 チャック軸
18 ばね
19 スリーブ
20 スリーブ押さえ
21 貫通穴
22 鋼球
23 スプロケット
24 チャック用モータ
24a 駆動軸
25 スプロケット
26 チェーン
27 ワンウェイクラッチ
28 近接センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能に設けられた昇降台と、この昇降台に回転可能に配置されるチャックユニットと、このチャックユニットを正回転または逆回転させるよう正転または逆転駆動する駆動源部と、前記チャックユニットに保持される貫入ロッドと、この貫入ロッドを所定深度貫入させる毎に当該貫入ロッドに継ぎ足される延長用ロッドとを備える自動貫入試験機であって、
前記貫入ロッドおよび延長用ロッドが係止部を有する一方、前記チャックユニットが当該貫入ロッドおよび延長用ロッドを挿通可能に構成され、ここに挿通する貫入ロッドおよび延長用ロッドの係止部に係合可能な係合手段を有して成り、
延長用ロッドを継ぎ足す場合には、既にチャックユニットに保持されている貫入ロッドの係止部と、チャックユニットの係合手段との係合を解除する一方、当該貫入ロッドの後端に延長用ロッドを連結して前記昇降台を昇降動作させた後、駆動源部の正転駆動に伴ってチャックユニットを正回転させることにより延長用ロッドの係止部に係合手段が合致するよう構成されるとともに、合致後、一時的にチャックユニットが逆回転する方向に駆動源部を逆転駆動させて延長用ロッドの取付けを完了とする構成であることを特徴とする自動貫入試験機。
【請求項2】
昇降動作可能な昇降台に設けられたチャックユニットに保持されている貫入ロッドに延長用ロッドを連結し、
既にチャックユニットに保持されている貫入ロッドに設けられた係止部とチャックユニットとの係合を解除し、
当該貫入ロッドの後端に延長用ロッドを連結して前記昇降台を昇降動作させた後、
駆動源部の正転駆動に伴ってチャックユニットを正回転させることにより延長用ロッドの係止部に係合手段を合致させ、
合致後、一時的にチャックユニットが逆回転する方向に駆動源部を逆転駆動させて延長用ロッドの取付けを完了とすることを特徴とする延長用ロッドの取付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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