説明

自動車における芳香装置

【課題】 芳香材から放出される香りの強さを調整可能として、各乗員がその好みに合わせて上記香りを実感できるようにし、かつ、調整が容易にできるようにする。
【解決手段】 車室8のいずれかの部位に、香りを放出する芳香材25を設ける。芳香材25の近傍にランプ27を設置し、このランプ27の照射光29を車室8の乗員により視認可能にする。車室8を形成する車体部材23を車室8側から覆うと共に芳香材25が取り付けられる化粧パネル24を設ける。車体部材23と化粧パネル24との間の空間26にランプ27を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内に香りを放出可能とする自動車における芳香装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記自動車における芳香装置には、従来、下記特許文献1,2に示されるものがある。これら公報のものによれば、自動車における芳香装置は、車室のいずれかの部位に、香りを放出可能とする芳香材が設置されている。そして、この芳香材が車室内に香りを徐々に放出することによって、車室における乗員がその香りを実感することにより、居住性が高められるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−114378号公報
【特許文献2】特開2000−62511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の技術では、芳香材は単に車室に設置されているだけのため、この芳香材から放出される香りの強さはほぼ一定に保たれる。
【0005】
しかし、乗員には、それぞれに好みがあるため、ある乗員にとっては、上記香りを十分には実感できないという問題点がみられた。
【0006】
そこで、例えば、上記芳香材を加熱して、放出される香りの強さが乗員の好みに合致するよう、上記香りの強さを調整することが考えられる。しかし、香りは視認が困難なものであるため、上記調整は容易にはできないという問題点もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、芳香材から放出される香りの強さを調整可能として、各乗員がその好みに合わせて上記香りを実感できるようにし、かつ、上記調整が容易にできるようにすることである。
【0008】
請求項1の発明は、車室8のいずれかの部位に、香りを放出する芳香材25を設けた自動車における芳香装置において、
上記芳香材25の近傍にランプ27を設置し、このランプ27の照射光29を車室8の乗員により視認可能にしたものである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明に加えて、上記車室8を形成する車体部材23を車室8側から覆うと共に上記芳香材25が取り付けられる化粧パネル24を設け、上記車体部材23と化粧パネル24との間の空間26に上記ランプ27を設置したものである。
【0010】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0011】
本発明による効果は、次の如くである。
【0012】
請求項1の発明は、車室のいずれかの部位に、香りを放出する芳香材を設けた自動車における芳香装置において、
上記芳香材の近傍にランプを設置し、このランプの照射光を車室の乗員により視認可能にしている。
【0013】
このため、乗員が香りを実感しようとするときには、上記ランプを点灯させ、その照射光の熱により、上記芳香材から香りを積極的に放出させるようにすればよい。そして、上記ランプの点灯期間などを調整すれば、上記香りの強さが調整可能とされて、各乗員はその好みに合わせて上記香りを実感できる。
【0014】
また、上記したように、ランプの照射光は車室の乗員により視認可能とされている。
【0015】
ここで、上記芳香材から香りが放出されているか否かの判断を直接の視認によりすることは困難である。しかし、この判断は、上記ランプの照射光の有無などを視認することによって容易にできる。よって、実感しようとする香りの強さを調整しようとする場合、この香りの調整は、上記ランプの照射光の視認によって容易にできる。
【0016】
請求項2の発明は、上記車室を形成する車体部材を車室側から覆うと共に上記芳香材が取り付けられる化粧パネルを設け、上記車体部材と化粧パネルとの間の空間に上記ランプを設置している。
【0017】
このため、上記車室からランプが直接見えることは、上記化粧パネルにより抑制され、よって、車室の見栄えが良好なままに保たれる。
【0018】
また、上記車室から見た化粧パネルの面積は大きくできる。このため、単位量の上記芳香材から放出される香りは、わずかであるとしても、上記化粧パネルに多くの芳香材を取り付けることができる。よって、この芳香材から十分の香りを放出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の自動車における芳香装置に関し、芳香材から放出される香りの強さを調整可能として、各乗員がその好みに合わせて上記香りを実感できるようにし、かつ、上記調整が容易にできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための最良の形態は、次の如くである。
【0020】
即ち、車室のいずれかの部位に、香りを放出する芳香材を設ける。この芳香材の近傍にランプを設置し、このランプの照射光を車室の乗員により視認可能にする。
【実施例】
【0021】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0022】
図において、符号1は自動車で、矢印Frは、この自動車1の進行方向の前方を示している。
【0023】
自動車1の車体2は、この車体2前部の骨格部材をなして縦方向に延びる左右一対のフロントピラー3と、これらフロントピラー3の上端部に支持されるルーフ4と、上記左右フロントピラー3の下部同士の間に架設されるダッシュパネル5と、上記左右フロントピラー3、ルーフ4の前縁部、およびダッシュパネル5の上縁部で囲まれた部分に設けられるフロントウィンド6と、上記各フロントピラー3の後側に設けられるサイドドア7とを備えている。そして、上記各部材3−7で囲まれた空間が車室8とされている。
【0024】
上記ダッシュパネル5の上部には、樹脂製のインスツルメントパネル9が取り付けられ、このインスツルメントパネル9は、上記車室8の前端部に配置されている。上記インスツルメントパネル9は、図示しないが、ランプを常備したメータ表示盤を備えており、このメータ表示盤は、車室8の前部における運転者などの乗員の顔の前下方で、この顔の近くに位置している。
【0025】
上記フロントピラー3は板金製で、アウタパネル10とインナパネル11とを互いに接合させた閉断面構造とされている。上記フロントウィンド6は、上記左右フロントピラー3、ルーフ4の前縁部、およびダッシュパネル5の上縁部で囲まれたウィンド開口13を閉じるよう設けられるウィンドガラス14と、上記ウィンド開口13の開口縁に取り付けられ、このウィンド開口13の開口縁とウィンドガラス14の外縁部との間をシールするゴム製のウェザーストリップ15とを備えている。
【0026】
上記サイドドア7は、上記フロントピラー3の後側に形成されたドア開口17を開閉可能に閉じるドア本体18と、上記ドア開口17の開口縁に取り付けられ、このドア開口17の開口縁とドア本体18の外縁部との間をシールするゴム製の他のウェザーストリップ19とを備えている。
【0027】
上記車室8に香りを放出可能とする芳香装置22が設けられている。この芳香装置22は、上記車室8を形成した車体部材23である上記フロントピラー3を車室8側から全体的に覆う化粧パネル24と、この化粧パネル24に取り付けられて香りを放出する芳香材25と、上記フロントピラー3と化粧パネル24との間の空間26に配置されて、上記フロントピラー3に着脱可能に取り付けられるランプ27と、このランプ27への電力の供給をオン、オフ可能とするスイッチ28とを備えている。
【0028】
上記化粧パネル24は不図示の取付具により、上記フロントピラー3に着脱可能に取り付けられている。また、上記化粧パネル24の断面形状は、車室8に向かって凸形状の円弧形状とされ、その各端部はそれぞれ上記各ウェザーストリップ15,19に圧接させられて、その各圧接部はシールされている。また、上記化粧パネル24は厚さが薄くされて、半透明とされている。
【0029】
上記芳香材25は、香りを放出する合成油もしくは天然油である。この芳香材25は樹脂材料と混合されてペレットとされ、このペレットにより、上記化粧パネル24が射出成形されている。上記芳香材25は化粧パネル24の内部に均一に分散され、この化粧パネル24の樹脂材を通して車室8に香りを放出する。
【0030】
上記芳香材25の香りの種類は、例えば、桃、レモン、ヒノキ等の香りである。これら種々の香りを放出する複数の化粧パネル24が自動車1に準備される。そして、これら化粧パネル24のうちから、乗員の所望の香りの者が選択されて、上記フロントピラー3に着脱可能に取り付けられる。
【0031】
上記化粧パネル24に取り付けられた芳香材25の近傍に上記ランプ27が設置されている。また、上記車室8における運転手など乗員の操作範囲に上記スイッチ28が設置されている。このスイッチ28は、例えば、上記インスツルメントパネル9に設置される。上記スイッチ28へのオン、オフ操作により、上記ランプ27が点灯、消灯される。このランプ27は、光源としてタングステンのフィラメントを備えている。
【0032】
上記構成によれば、乗員が香りを実感しようとするときには、上記スイッチ28を操作してランプ27を点灯させ、その照射光29の熱により、上記芳香材25から香りを積極的に放出させるようにすればよい。そして、上記スイッチ28の点灯期間や、光度(低、中、高)を調整し、つまり、加熱の状態を調整すれば、放出される香りの量が調整されることにより、その強さが調整可能とされる。よって、各乗員はその好みに合わせて上記香りを実感できる。
【0033】
また、上記ランプ27の照射光29は、上記化粧パネル24を透過することにより、車室8の乗員により視認可能とされている。
【0034】
ここで、上記芳香材25から香りが放出されているか否かの判断を直接の視認によりすることは困難である。しかし、この判断は、上記ランプ27の照射光29の有無や、光度を視認することによって容易にできる。よって、実感しようとする香りの強さを調整しようとする場合、この香りの調整は、上記ランプ27の照射光29の視認によって容易にできる。
【0035】
また、前記したように、車室8を形成する車体部材23を車室8側から覆うと共に上記芳香材25が取り付けられる化粧パネル24を設け、上記車体部材23と化粧パネル24との間の空間26に上記ランプ27を設置している。
【0036】
このため、上記車室8からランプ27が直接見えることは、半透明とされた上記化粧パネル24により、より確実に抑制され、よって、車室8の見栄えが良好なままに保たれる。
【0037】
また、上記車室8から見た化粧パネル24の面積は大きくできる。このため、単位量の上記芳香材25から放出される香りは、わずかであるとしても、上記化粧パネル24に多くの芳香材25を取り付けることができる。よって、この芳香材25から十分の香りを放出させることができる。
【0038】
また、上記したように、化粧パネル24は半透明とされており、上記ランプ27の照射光29は、光が分散させられながら上記化粧パネル24を透過して車室8に達することとされている。
【0039】
このため、上記化粧パネル24を透過した照射光29により、上記化粧パネル24やランプ27の周りを間接照明でき、これは、乗員にとって、リラクゼーション効果を生じさせるものであって好ましい。また、上記したように、化粧パネル24を透過した照射光29により、この照射光29が化粧パネル24の車室8側の面にほのかに映し出されることによるイルミネーション効果も生じる。
【0040】
なお、図1中、二点鎖線で示すように、上記化粧パネル24に代えて、もしくは、この化粧パネル24と共に他の化粧パネル31を設け、この化粧パネル31に芳香材25を取り付けてもよい。この化粧パネル31は、上記ランプ27の周りで、上記フロントピラー3の車室8側の面に近接配置される。ここで、上記両化粧パネル24,31を共に設ける場合には、上記化粧パネル24に通気孔32が形成される。上記各化粧パネル24,31から上記空間26に放出された香りは、上記通気孔32を通って、車室8に放出される。
【0041】
なお、以上は図示の例によるが、上記芳香材25は、ランプを常備した前記メータ表示盤に取り付けてもよい。このメータ表示盤は乗員の顔の近くに位置しているため、この乗員は、上記芳香材25からの香りをより確実に実感できる。また、上記芳香材25は、上記ドア本体18の車室8側の面に取り付けられる不図示のドアランプの近傍に設けてもよい。また、上記芳香材25をサンバイザーやインナミラーに取り付け、これらの内部にランプ27を設けてもよい。
【0042】
また、上記化粧パネル24への芳香材25の取り付けは、この芳香材25を上記化粧パネル24へ塗布するものであってもよく、上記芳香材25の含有フィルムを上記化粧パネル24に貼着させてもよい。また、上記化粧パネル24のうち、ランプ27の照射光29が照射する部分のみに芳香材25を取り付けてもよい。
【0043】
また、上記化粧パネル24は透明体であってもよく、また、多孔質にすることにより半透明としてもよい。また、上記化粧パネル24の厚さを大きくするなどして不透明体とし、この化粧パネル24の外縁部のほぼ全体と車体部材23との間にランプ27の照射光29が漏れる隙間を形成してもよい。このようにすれば、化粧パネル24の周囲から全体的に漏れる照射光29により、上記化粧パネル24の周りを間接照明できる。
【0044】
また、上記ランプ27は単数であってもよく、複数であってもよい。この場合、複数のランプ27のうち、いずれかのランプ27を選択的に点灯可能とし、これにより、香りの強さを調整するようにしてもよい。また、照射光29に1/fゆらぎをを設けてもよい。
【0045】
更に、上記ランプ27にタイマーを設けて、点灯と消灯とを定期的に繰り返すようにしてもよい。このようにすれば、香りに対し乗員の嗅覚が慣れてしまうということが防止される。よって、香りに対する一定の実感が長期にわたり持続可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図2の1−1線矢視断面図である。
【図2】車室の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 自動車
2 車体
3 フロントピラー
8 車室
22 芳香装置
23 車体部材
24 化粧パネル
25 芳香材
26 空間
27 ランプ
28 スイッチ
29 照射光
31 化粧パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室のいずれかの部位に、香りを放出する芳香材を設けた自動車における芳香装置において、
上記芳香材の近傍にランプを設置し、このランプの照射光を車室の乗員により視認可能にしたことを特徴とする自動車における芳香装置。
【請求項2】
上記車室を形成する車体部材を車室側から覆うと共に上記芳香材が取り付けられる化粧パネルを設け、上記車体部材と化粧パネルとの間の空間に上記ランプを設置したことを特徴とする請求項1に記載の自動車における芳香装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−273210(P2006−273210A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97822(P2005−97822)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【出願人】(000185617)小島プレス工業株式会社 (515)
【Fターム(参考)】