説明

自動車のフロント構造

本発明は自動車のフロント構造に関し、本構造は、2つの離間したスパー(1)と、弾性緩衝ブロック(4)によって車両のシャーシに接続され、且つ2つのスパー(1)の前方端部の後方で所定の距離に亘り、スパーの下方に位置する平面内に延びるフレーム(2)と、2つのスパー(1)の下方で、これらのスパーの前方端部と前記フレーム(2)の前方端部(2a)の間に延びる衝撃保護バー(5)とを備え、前記バー(5)の後方端部と前記フレーム(2)の前方端部(2a)の間に「遊び」を有し、スパー(1)の前方端部はそれぞれ、垂直剛性要素(6)によってバー(5)のフロント部(5a)に接続されており、前記剛性垂直要素(6)の各々が、バー(5)のフロント部(5a)に加わる衝撃の影響下において、剛性垂直要素(6)を変形させることなく、前記保護バー(5)を前記フレーム(2)の方向へ一定の距離だけ変位させることができる手段によって前記保護バー(5)に接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、構造の修理に大きなコストをかける必要無く、最高16km/hの衝撃を吸収できる自動車のフロント構造に関する。
【0002】
この目的を達成するために、フロント部が図1及び2に模式的に示される構造を有する自動車が知られている。
この公知の構造は、離間した2つのスパー1と、衝撃吸収弾性ブロック4によって車両の車体3に接続されるクレードル2とを備える。クレードル2は、2つのスパー1の前方端部1aの後方で一定の距離に亘り、スパーの下方に位置する平面内に延びる。更に、弓なりの衝撃保護バー5が、2つのスパー1の下方で、これらのスパーの前方端部1aとクレードル2の前方端部2aの間に延びる。バー5の後方端部とクレードル2の前方端部2aの間にはギャップjが残る。これらのスパー1の前方端部1aはそれぞれ、当業者に「ハンガー」として知られる垂直剛性要素6によってバー5のフロント部5aに接続される。
【0003】
図1及び2に示すフロント構造は、プラスチックバンパー(図示せず)によっても保護される。
保護バー5とクレードル2の間のギャップjは約9mmであり、このギャップは、サイレントブロックとして知られる弾性ブロック4を使用した接続により、クレードル2に一定の移動性を付与している。
【0004】
矢印Fの方向に向かって構造のフロント部に衝撃が加わると、保護バー5はクレードル2に向かって移動する。衝撃が、特定の速度、例えば約16km/hの速度で生じると、垂直剛性要素6が材料の弾性限界を超えて変形する(図1の点線で示す位置を参照)ので取り替える必要が生じ、比較的コストの高い修理となってしまう。
【0005】
本発明の目的は、例えば約16km/hまでの速度での衝突に、上記垂直剛性要素を修理する必要を生じることなく耐えることができる上述の種類の車両フロント構造を提供することである。
【0006】
本発明によれば、この車両フロント構造は、前記垂直剛性要素の各々が、バーのフロントに加わる衝撃の影響下において垂直剛性要素を変形させることなくこの保護バーを前記クレードルに向かって一定の距離だけ移動させることができる手段によって前記保護バーに接続されていることを特徴とする。
上記衝撃は、車両が最高16km/hの速度で走行しているときの衝突によるショックに相当する。
【0007】
本発明の種々の実施形態の内の第1の実施形態によれば、前記手段は、前記剛性要素の各々と保護バーの間に位置する接続片であって、前記衝撃の影響下で変形する性質を持つ材料により作製される接続片から成る。
本発明の第2の実施形態によれば、前記手段は、前記衝撃の影響下で壊れる性質を持つ接続片から成る。
【0008】
本発明の第3の実施形態では、前記手段は、剛性要素の端部に、バーの隣接する表面に対する摩擦を与える接続部材から成り、この摩擦は、前記衝撃下において、前記端部と前記表面の間に相対滑動運動が可能となるように調節される。
この実施形態では、前記接続部材は、ナットと螺合するネジから成り、ナットを締める力が前記摩擦の調節を決定し、このネジは、剛性要素の端部又はバーの前記隣接表面に形成される長円形の穴に係合し、この長円形の穴の向きは、保護バーがクレードルに向かって移動する際の所望の方向に設定される。
【0009】
一変形例として、前記接続部材は、ナットと螺合するネジから成り、このネジは、バーに形成される穴に係合し、バーを形成する材料の特性が前記摩擦の調節を決定し、ネジにより、衝撃の影響下で材料がバーから引き出される。
本発明の他の特徴及び利点は、後述の説明から更に明らかになる。
【実施例】
【0010】
添付の図面は、本発明を制限しない実施例を示している。
図3〜6に示す本発明による構造は、図1及び2に示す構造とは、垂直剛性要素6の各々が、保護バー5のフロント部5aに衝撃が加わると、垂直剛性要素6を変形させることなくこの保護バー5をクレードル2に向かって一定の距離だけ移動させることができる手段によって保護バー5に接続されている点で異なっている。この衝撃は、図4及び6の矢印により記号的に示される。
前記衝撃は、例えば車両が最高16km/hの速度で走行しているときに、歩行者又は別の車両に衝突した場合のショックに相当する。
【0011】
図3の場合、前述の手段は、前記剛性要素6の各々と、バーのフロント部5aの間に配置される接続片7であって、図4に示すように前記衝撃下で変形する性質を持つ材料から作成される接続片から成る。
上記接続片は、同等に、前記衝撃下で壊れる性質を持つ接続片とすることができ、このような接続片として、破断ゾーンを有するスチールネジ、プラスチック製のネジ、又はスチールほど強度が大きくない他の何らかの材料により作製されるネジを挙げることができる。
上記の接続は、剛性要素6の端部に、バー5の隣接表面に対する摩擦を生じさせる接続部材により形成することもでき、この摩擦を調整することで、図6に示すように、衝撃下での前記端部と前記表面の間の相対滑動が可能になる。
【0012】
図5の実施例では、この接続部材はナットと螺合するネジ8から成り、ナットを締める力が前記摩擦の調整を決定する。このネジ8は、剛性要素6の端部又はバー5の隣接表面に形成される長円形の穴9(図7参照)に係合する。この長円形の穴9の向きは、保護バー5がクレードル2に向かって移動する所望の方向に設定される。
上記の対策により、前述のような衝撃の影響による剛性要素6の変形が全て防止される。このような衝撃の後に必要な修理作業は、変形したか又は壊れた接続片7の取り替えだけである。
【0013】
図5による構成の場合、必要なのは、ネジ8を緩めて保護バー5を取り付け直し、ナットをネジ8に締め直すだけである。
図8及び9に示すような構成の場合、要素6にバー5を接続するネジ8が挿通されるバー5は、衝撃の影響下で壊れる性質を持つ。バー5の材料の規格は、衝撃の力が特定のレベル、例えば16km/hを超える速度での衝突に相当するレベルを超えるまでは、材料が破裂しないように調整される。
例えば図9に示す長円形の穴10を形成する材料が破裂すると、保護バー5が、垂直剛性要素6を変形させることなく移動することができる。このような場合、バー5は衝撃を受けた後に取り替える必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】自動車の公知のフロント構造の概略的側面図である。
【図2】図1の平面II−IIでの断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態を示す、図1と同様の概略側面図である。
【図4】本構造のフロント部に加わる衝撃の影響を示す、図3と同様の概略側面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す、図3と同様の概略側面図である。
【図6】本構造のフロント部に加わる衝撃の影響を示す、図5と同様の概略側面図である。
【図7】図5及び6に示す実施形態の滑動接続部に設けられる長円形の穴の平面図である。
【図8】別の実施形態の部分側面図である。
【図9】図8による構造のバーの下面図であり、金属に形成された穴を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のフロント構造であって、離間した2つのスパー(1)と、弾性の衝撃吸収ブロック(4)によって車両の車体(3)に接続され、且つ2つのスパー(1)の前方端部(1a)の後方で一定の距離に亘り、スパーの下方に位置する平面内に延びるクレードル(2)と、2つのスパー(1)の下方で、これらのスパーの前方端部(1a)と前記クレードル(2)の前方端部(2a)の間に延びる弓なりの衝撃保護バー(5)とを備え、前記バー(5)の後方端部と前記クレードル(2)の前方端部(2a)の間にギャップ(j)が存在し、スパー(1)の前方端部(1a)はそれぞれ、垂直剛性要素(6)によってバー(5)のフロント部(5a)に接続されており、前記垂直剛性要素(6)の各々が、バー(5)のフロント部(5a)に加わる衝撃の影響下で、垂直剛性要素(6)を変形させることなく、この保護バー(5)を前記クレードル(2)に向かって特定の距離だけ移動させることができる手段によって、前記保護バー(5)に接続されていることを特徴とする、構造。
【請求項2】
前記衝撃が、車両が最高16km/hの速度で走行しているときの衝突によるショックに相当することを特徴とする、請求項1記載の構造。
【請求項3】
前記手段が、前記剛性要素(6)の各々とバー(5)の間に配置され、且つ前記衝撃の影響下で変形する性質を持つ材料により作製される接続片(7)から成ることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の構造。
【請求項4】
前記手段が、前記衝撃の影響下で壊れる性質を持つ接続片から成ることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の構造。
【請求項5】
前記手段が、剛性要素(6)の端部にバー(5)の隣接表面に対する摩擦を発生させる接続部材から成り、この摩擦を調整することで、前記衝撃下での前記端部と前記表面の間の相対的な滑動が可能になることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の構造。
【請求項6】
前記接続部材が、ナットと螺合し合うネジ(8)から成り、このナットを締める力が前記摩擦の調整を決定し、このネジ(8)は、剛性要素(6)の端部又はバー(5)の前記隣接表面に形成された長円形の穴(9)に係合し、この長円形の穴(9)の向きは、保護バー(5)がクレードル(2)に向かって移動する際の所望の方向に設定されることを特徴とする、請求項5記載の構造。
【請求項7】
前記接続部材が、ナットと螺合し合うネジ(8)から成り、このネジが、バー(5)に形成される穴に係合すること、並びに、更にバー(5)を形成する材料の特性が前記摩擦の調整を決定し、ネジ(8)により、衝撃の影響下でバー(5)から材料が引き抜かれることを特徴とする、請求項5記載の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−536755(P2008−536755A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507135(P2008−507135)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050254
【国際公開番号】WO2006/111670
【国際公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)