説明

自動車の組立、調節および検査のための装置

本発明は、自動車の組立、調節および試験のための装置に関する。自動車工場では、いわゆる組立ラインが使用される。組立ラインに沿って、製作しようとする自動車にコンポーネントが供給され、組み立てられ、必要な場合後続加工される。後続加工は、人間またはロボットによって行われる。車輪による製作しようとする自動車の連続的な移動は、組立ラインの終了部で、チェン式、ロープ式またはベルト式駆動装置を備えたプレートコンベヤによって行われる。プレートコンベヤは、床に埋め込まれており、この場合プレートコンベヤは自動車の左側または右側または両側の車輪を連行する。単に1つのプレートコンベヤが用いられる場合、自動車の別の側の車輪は回転する。扁平な作業室の任意の箇所で天井または床を補強することなしに設置可能であり、かつ移動可能である、自動車を組み立てるための装置を提供するために、本発明によれば、組立、調節および検査装置が、モジュール化された、移動可能で相互結合可能な複数の個々の独立コンポーネントから成っており、これらの独立コンポーネントが、1平面上で、溝を形成することまたは天井を負荷することなく設置可能になっており、組立、調節および検査装置が、組み立てようとする自動車のための搬送兼組立装置を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の組立、調節および検査のための装置に関する。
【0002】
自動車工場では、いわゆる組立ラインが使用される。組立ラインに沿って、製作しようとする自動車にコンポーネントが供給され、組み立てられ、また必要な場合後続加工される。後続加工は人間またはロボットによって行われる。製作しようとする自動車の車輪による連続的な移動は、組立ラインの終了部で、チェン式、ロープ式またはベルト式駆動装置を備えたプレートコンベヤを用いて行われるか、または送りプラットフォーム(スキレット;Skillet)上で行われるか、または搬送懸架装置に懸架して行われる。プレートコンベヤまたは送りプラットフォーム設備は床に格納することができ、この場合プレートコンベヤまたは送りプラットフォーム設備は、自動車の左側または右側または全ての車輪を連行する。単に1つのプレートコンベヤを使用する場合、自動車の別の片側の両車輪は回転する。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許第19911861号明細書から、搬送方向でみて下流側に配置された搬送路に搬送ベルトを接続する出口側の送り領域を備えた、車両−最終組立ラインのための搬送ベルトが公知であり、搬送ベルトは、微細部品のための、簡単でひいては確実に作動するスクレーパを備えているだけでなく、安全装置を形成しており、安全装置は、たとえば搬送ベルトと共に移動する作業員の足が搬送ベルトと送り領域との間に位置するようになると作動する。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19858989号明細書には、自動車の組立または搬送のための組立および/または搬送ベルトが記載されており、ここでは個別的な複数の支持エレメントが設けられており、各支持エレメントは、可動に支承されていて、かつ自動車を収容するために形成されている。無端ベルトとしてベルトが形成されるように支持エレメントが形成されていて、支持エレメントが相前後して配置されていることによって、安全性が高められて、組立コストが低減されている。
【0005】
ドイツ連邦共和国実用新案登録第20111684号明細書には、最終組立時に自動車を搬送するための装置が開示されており、ここでは自動車は、組み付けられて圧縮空気で負荷された前輪および後輪で、前輪および後輪のタイヤのための、互いに同期的に可動な搬送ベルト装置上で、それぞれ接地領域を有しており、接地領域は、検査圧で負荷されたタイヤの走行面の輪郭に少なくとも部分的に適合されている。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4442155号明細書から、自動車の最終組立または分解の経過に関する方法が記載されており、ここでは組み立てようとする自動車は、1つまたは2つの組立ステーションからその上方または下方に位置するレベルに通走したあとで、次の組立ステーションに搬送される。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4309501号明細書に由来する、自動車を最終組立するための装置では、後加工ラインに沿って、電動懸架装置路のガイドレールが延びており、ガイドレールに、トロリ(走行ウインチ)が配置されており、ここでは各トロリは、引張棒を介して、自動車を搬送するための床走行車両と接続されている。
【0008】
これら全ての公知の搬送装置は、組立作業室の天井に取り付ける必要があり、かつ/または組立作業室床に埋め込む必要がある場合、不都合なものとなっている。天井固定する場合、天井は静力学的に多くの場合懸架領域で補強する必要があり、このこともまた、組立ラインの領域で溝を設けることと同様に、時間およびコストの嵩むものである。この場合作業室内での、もしくは別の生産場所への、組立ラインのフレキシブルで短期的な切換は、不可能である。さらに既存の組立ラインでは、多くの場合搬送技術に関するシステム変更(たとえば床上式搬送装置から懸架式搬送装置へ)が生じ、これによって送りステーションが必要となる。
【0009】
さらなる問題点によれば、このような組立ラインでは、車両の懸架式の搬送は、少なくとも車両の最終検査の行われるライン終了部の手前で終了している。車両の自動搬送がライン終了部の領域の手前で終了するので、車両は、1検査スタンドから、作業員によって移動させて、別の1検査スタンドに走行させる必要があり、このことによって多くの人手をかける必要があり、さらに手間をかけて吸引する必要のある有害物質エミッションが生じる。さらにまたタイヤが車両に組み付けられていることは、たとえば回転検査スタンドに不都合である。なぜならばタイヤは回転試験スタンド上で車両検査する際に傷つく恐れがあり、したがって回転検査スタンド上で、車輪の最高速度およびタイヤの種類(たとえば冬タイヤ以外)に関して制限が存在するからである。
【0010】
したがって本発明の課題は、扁平な作業室内の任意の箇所で、天井または床に変更を加えることなく設置することができ、しかも搬送可能であるような、自動車の組立のための装置を提供することである。
【0011】
この課題を解決するための本発明の装置によれば、当該組立、調節および検査装置が、モジュール化された、移動可能で相互結合可能な複数の個々の独立コンポーネントから成っており、これらの独立コンポーネントが、1平面上で、溝を形成することまたは天井を負荷することなく設置可能になっており、当該組立、調節および検査装置が、組み立てようとする自動車のための搬送兼組立装置を備えている。
【0012】
この場合個々の独立コンポーネントは、組込式の完成した機能ユニットであり、機能ユニットは、規格化しかつ最適化されている。独立コンポーネントは、できるだけ完全な形で前組付して、予備テストして納入され、次いで標準インターフェイス(接続箇所)を介してシステム全体に接続される。このような組立装置によって、組立作業室の構造変更なしに(懸架装置の必要がなく、したがって天井の静力学な補強または懸架式の鉄骨構造設備の必要がなく、床平面では溝形成の必要がない)、短期的に組立ラインを、モジュール化して規格化された複数の独立コンポーネントから構成するこができ、もしくはそのような組立ラインを、1組立作業室から別の1組立作業室(または比較的大きな区間にわたって、たとえば1工場から別の1工場)に搬送することができる。要するに(エネルギ供給、データ伝達、照明、ハンドリング、搬送技術、作業場設備、ロジスティック、あんどん(Andon)およびぽかよけ(Poka Yoke)に関して)完全に前組付してテストされたモジュールが、短時間で1組立ラインにまとめられるか、または組立ラインが拡張もしくは分割され、それもこのために構造的な手段は必要とされない。
【0013】
このために有利には、独立コンポーネントが、比較的大きな区間(路面搬送)にわたる搬送を実現するような大きさを有している。このようにモジュール化された構造形式によって、生産の融通性は大幅に高められ、短期的に、単に連結すればよい既に前装備された独立コンポーネントから、組立ラインは、天井の静力学に関する特別な要求を課すこともしくは溝部を形成することなしに、任意の工場作業室に設置するか、もしくは(モデル変更の場合)変化させることができる。
【0014】
完全にモジュール化された、搬送技術、作業ステーション、ベルトラインエンド、ユニット組立装置、車両モジュール搬送装置および車両モジュール組込装置(ドア、コクピット、エンジン、シート、フロントエンド、車輪など)ならびに福祉設備およびロジスティックを備えた工場が提供される。これによって大きな融通性が得られる。なぜならば組立プロセスは、一貫して生産要求に基づいてフレキシブルに構成可能であり、搬送技術に関する制限(たとえばシステム変更)、溝に関する制限(たとえば車体と車台との組付(Hochzeit)の場合)ならびに建造物制限(たとえばスタティック、所要面積に関して)が排除される。このような組立ラインを実現するための所要時間も大幅に低減されている。なぜならばモジュールは既に前組立するかもしくは予備組付して納入され、鉄骨構造準備、溝計画および溝形成が不要であり、搬送技術における送りユニットが省略され(単に1つの搬送技術システム)、僅かなインターフェイスによってあまり複雑でなく、その結果短い計画時間で十分である、という理由による。あまり複雑でないので、比較的高い透明性、良好な見通しおよび良好なコミュニケーションが生じ、しかも品質に対するネガティブな作用の恐れがない。
【0015】
本発明の1実施形態によれば、個々の独立コンポーネントに延びる供給ラインを連結するための手段が設けられている。
【0016】
この連結手段は、組立ラインの形成速度をさらに高める。個々の独立コンポーネントの連結によって、同様に軸方向で延びる供給ライン(電流、圧縮空気のための)が連結される場合、このような供給ラインにおける、組立ラインに配置された個々のユニットの面倒な接続が省略され、ひいては接続エラーのリスクもしくは接続欠如のリスク、ならびに供給ラインによる事故のリスクが排除される。
【0017】
本発明による有利な実施形態によれば、搬送装置が、自動車を懸架して搬送するための装置である。
【0018】
この場合自動車を懸架して搬送するための手段が、既に独立コンポーネントに設けられているので、作業室天井に対する搬送装置の取り付けが省略される。
【0019】
本発明によれば、組立、調節および検査のための装置が、最終組立領域を備えている。
【0020】
最終組立領域では、一般的に車輪が自動車に組み付けられ、とりわけ機能検査(加速検査、切換検査、制動検査ならびに照明テストなど)が行われる。このことは本発明による組立、調節および検査のための装置の内側で行うこともできる。
【0021】
本発明に有利な実施形態では、組立、調節および検査のための装置が、車両検査スタンドを備えており、この場合自動車は車両検査スタンドに懸架して配置されており、自動車の車輪は、回転、制動およびABS検査スタンドの、車輪に側方から作用するモータ駆動式のエレメントによって回転可能であるか、もしくは制動可能である。
【0022】
このようにして自動車を懸架式に搬送する際にも、最終組立領域は、そこに設けられた機能試験を行うことができ、この場合回転検査スタンドの上述の欠点が排除される。
【0023】
本発明の1実施形態によれば、モータ駆動式のエレメントが、タイヤに作用するようになっている。
【0024】
本発明の別の1実施形態によれば、モータ駆動式のエレメントが、リムに作用するようになっている。
【0025】
モータ駆動式のエレメントは、ホイールハブに作用させることもできる。
【0026】
さらに有利には、加速過程および制動過程を自動的に実施するための手段が設けられている。
【0027】
また有利には、別の機能検査を自動的に実施するための手段が設けられている。
【0028】
これはたとえば自動車の振動検査または照明テストであってよい。
【0029】
本発明の1実施形態によれば、完成した自動車を組立作業室から懸架して搬送するための手段が設けられている。
【0030】
この場合有利には、後加工ステーションに向かう分岐路が設けられている。
【0031】
組立作業室から自動車を懸架して搬送するための手段の利点によれば、自動車は、最終組立に続いて、依然として懸架して組立作業室から設置場所に搬送することができる。これによって自動車の始動および組立作業室からの走出によるエミッションは回避され、懸架式の搬送の終了部で、完成した自動車の、規則正しく自動化可能でかつ把握可能な格納を行うことができる。場合によっては懸架式の搬送の間に、後加工ステーションに向かう分岐を行うこともでき、そこでは依然として欠陥を有している車両が後加工される。
【0032】
次に図面につき本発明の実施例を詳しく説明する。
【0033】
図1aおよび図1bから判るように、個別的な独立コンポーネント(モジュール化された作業ステーション)は、長手方向支持体1と横方向支持体2とから成る支持構造体を備えており、支持構造体に、組み立てようとする自動車のための搬送装置3と、供給ライン、たとえば電流ケーブル、データケーブル、ニューマチック供給部と、別の装置、たとえば指示板のためのロープ、トロリ(Trolleys)のためのレールと、ニューマチック装置とが配置されている。供給ライン、特にエネルギ供給部のために、2つの独立コンポーネントの間の結合箇所に、1独立コンポーネントから別の1独立コンポーネントへのエネルギ供給を保証する、迅速に作動する結合部が設けられている。このようにして1独立コンポーネントは、作業室(ホール)内で供給ラインに接続することができ、迅速に作動する結合部を介して別の独立コンポーネントに供給を行うこともでき、それもコストの嵩む全ての独立コンポーネントの個別的な接続を行う必要はない。もちろん独立コンポーネントは、それぞれ個別的に供給ラインに接続することもできる。
【0034】
さらに独立コンポーネントは、作業員連行ベルト4を備えているか、または選択的に作業台を備えている。材料は、側方で材料台車5によって供給するか、または棚6から取り出すことができる。
【0035】
図2aおよび図2bには、高さ方向アダプタ7を示しており、高さ方向アダプタ7によって、通常の構造高さを超える高さを実現することができる。このことは極めて長い管片によって実現することもできる。
【0036】
これに応じて図3aおよび図3bには、高さ方向アダプタ7と横方向アダプタ8とを備えた独立コンポーネントを示しており、横方向アダプタ8によって、通常の構造幅を超える幅を実現することができる。このステーションに組み込もうとするコクピット9は側方で供給される。
【0037】
図4には、独立コンポーネントを前後に配置した列として、本発明によるユニットを組み立てるための装置を示しており、ここでは独立ステーションは、ステーション1〜ステーション19と記載した。
【0038】
図5aおよび図5bには、懸架装置(自動車を懸架して供給する場合)における回転、制動およびABS検査スタンドを示しており、ここでは負荷ユニット10は、側方で外側から自動車の車輪に向かって移動され、タイヤ、リムまたはハブに作用しており、また車輪スタンドを変位するための手段11が設けられている。さらに各負荷ユニット10の下方に振動発生ユニット12が設けられており、振動発生ユニット12によって振動を導入することができる。
【0039】
図6には、最小構造高さを有するクロスロード(X-Road)を示した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1a】本発明による独立コンポーネントを示す横断面図である。
【図1b】図1aの側面図である。
【図2a】高さ方向アダプタを備えた本発明による独立コンポーネントをシートハンドリング領域で示す横断面図である。
【図2b】図2aの側面図である。
【図3a】コクピットハンドリングのために高さ方向アダプタと横方向アダプタとを備えた、本発明による独立コンポーネントを示す横断面図である。
【図3b】図3aの側面図である。
【図3c】図3aおよび図3bの平面図である。
【図4】本発明による、ユニットを組み立てるための装置を示す図である。
【図5a】懸架装置における回転、制動およびABS検査スタンドを示す平面図である。
【図5b】図5aの側面図である。
【図6】最小構造高さを有するクロスロードを示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 長手方向支持体、 2 横方向支持体、 3 搬送装置、 4 作業員連行ベルト、 5 材料台車、 6 棚、 7 高さ方向アダプタ、 8 横方向アダプタ、 9 コクピット、 10 負荷ユニット、 11 変位手段、 12 振動発生ユニット







【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の組立、調節および検査のための装置において、
当該組立、調節および検査装置が、モジュール化された、移動可能で相互結合可能な複数の個々の独立コンポーネントから成っており、これらの独立コンポーネントが、1平面上で、溝を形成することまたは天井を負荷することなく設置可能になっており、当該組立、調節および検査装置が、組み立てようとする自動車のための搬送兼組立装置を備えていることを特徴とする、自動車の組立、調節および試験のための装置。
【請求項2】
個々の独立コンポーネント内で延びる供給ラインを連結するための手段が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
搬送装置が、自動車を懸架して搬送するための装置である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
当該組立、調節および検査装置が、最終組立領域を備えている、請求項1または2記載の装置。
【請求項5】
当該組立、調節および検査装置が、車両検査スタンドを備えており、自動車が、車両検査スタンドに懸架して配置されるようになっており、自動車の車輪が、回転、制動およびABS検査スタンドの、車輪に側方から作用するモータ駆動式のエレメントによって、回転可能であるか、もしくは制動可能である、請求項3記載の装置。
【請求項6】
モータ駆動式のエレメントが、車輪に作用するようになっている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
モータ駆動式のエレメントが、リムに作用するようになっている、請求項5記載の装置。
【請求項8】
モータ駆動式のエレメントが、ホイールハブに作用するようになっている、請求項5記載の装置。
【請求項9】
加速過程および制動過程を自動的に行うための手段が設けられている、請求項4記載の装置。
【請求項10】
別の機能検査を自動的に行うための手段が設けられている、請求項4記載の装置。
【請求項11】
完成した自動車を組立作業室から懸架して搬送するための手段が設けられている、請求項1記載の装置。
【請求項12】
後作業ステーションに向かう分岐路が設けられている、請求項10記載の装置。
【請求項13】
請求項1から11までのいずれか1項記載の装置を形成するための、移動可能でモジュール化された個々の独立コンポーネント。

【図4】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−508863(P2006−508863A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−502297(P2005−502297)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003982
【国際公開番号】WO2004/052715
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(305002796)デュール アクチエンゲゼルシャフト (2)
【Fターム(参考)】