説明

自動車の重心の連続計算

【課題】自動車の重心を計算するシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】1つの方法は、x軸、y軸、およびz軸に沿った自動車の第1、第2、および第3の加速度を判定するステップと、x軸、y軸、およびz軸に沿った自動車の第1、第2、および第3の角速度を判定するステップと、自動車に作用する合力を判定するステップと、自動車の見積質量を判定するステップとを含む。本方法は、第1の加速度、第2の加速度、第3の加速度、第1の角速度、第2の角速度、第3の角速度、自動車に作用する合力、および見積質量に基づいて、自動車の重心を計算するステップをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明の実施形態は、自動車の重心を計算するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]電子安定性制御(「ESC」)システムなどの多くの自動車制御システムには、自動車の前方軸または後方軸(x座標系において定義される)に対する重心(「CoG」)の位置が使用される。多くの制御システムは、CoGに関して一定の値を使用する。多くの制御システムは、さらに、自動車に含まれるどんな負荷も自動車全体に対称に(例えば、y座標系にわたって)分布することを前提とする。しかし、自動車のCoGの実位置は、自動車内の現在の負荷分布に応じて変化する(例えば、実位置は、自動車の胴体に負荷が掛かっているか否かに依存する可能性がある)。したがって、不正確なCoGの使用は、ESCおよび他の自動車システムに、追加のアルゴリズムまたは高価なコントローラパラメータアプリケーションを使用して補償しなければならない影響を及ぼす、不正確な目標ヨーレートをもたらす可能性がある。
【0003】
[0003]自動車のCoGの現在の座標の使用は、制御アルゴリズムを簡略化し、不正確なCoGを補償する追加のアプリケーションの必要性を低減または除去することができる。それに加えて、現在の座標の使用は、モデルベースの妥当性および横滑角の見積量などの、自動車運動に関する、多くの異なるモデルベースのアルゴリズムの精度および有効範囲を改善することができる。さらに、CoGのz座標に関する情報は、いつ自動車の負荷分布がより高い転倒リスクをもたらすかを判定するのに使用することができる。この状態が判定されると、様々なコントローラをより高い感度モードに切り替えることができる。CoGのz座標は、自動車運動に影響を及ぼす、トレーラまたは屋根上の荷台からの負荷と同様に、特定の負荷状態を判定するのに使用することもできる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
[0004]本発明の実施形態は、自動車のCoGの座標を連続的に計算するための方法およびシステムを提供する。これらの方法およびシステムは、CoGを計算するのに、自動車の3つの角速度(ω,ω,ω)、自動車の3つの加速度(a,a,a)、および自動車本体と自動車車輪との間の変位に関する追加情報を使用する。CoG計算は、さらに、始動(または静止)時の総自動車質量に基づく。CoGは、自動車が運転されるとき、自動車に作用する合力に基づいて連続的に計算され、質量および力は、自動車本体と車輪との間の変位および各車輪懸架装置の運動学に基づいて判定される。これらの方法およびシステムは、自動車転倒をもたらす可能性がある負荷分布を有する自動車を判定するのに使用することができる、CoGのz座標に関する情報をさらに提供する。それに加えて、これらの方法およびシステムは、CoGの計算を簡略化する。
【0005】
[0005]一構成では、本発明は、複数の車輪を有する自動車の重心を計算するシステムを提供する。本システムは、加速度モジュール、角度モジュール、力モジュール、質量モジュール、および計算モジュールを含む。加速度モジュールは、x軸に沿った自動車の第1の加速度、y軸に沿った自動車の第2の加速度、およびz軸に沿った自動車の第3の加速度を判定するように構成される。角度モジュールは、x軸に沿った自動車の第1の角速度、y軸に沿った自動車の第2の角速度、およびz軸に沿った自動車の第3の角速度を判定するように構成される。力モジュールは、自動車に作用する合力を判定するように構成される。質量モジュールは、自動車の見積質量を判定するように構成される。計算モジュールは、x軸に沿った自動車の第1の加速度、y軸に沿った自動車の第2の加速度、z軸に沿った自動車の第3の加速度、x軸に沿った自動車の第1の角速度、y軸に沿った自動車の第2の角速度、z軸に沿った自動車の第3の角速度、自動車に作用する合力、および自動車の見積質量に基づいて、自動車の重心を判定するように構成される。さらに、本システムは、重心に基づいて、自動車の制御を修正するように構成された自動車制御モジュールを含むことができる。
【0006】
[0006]別の構成では、本発明は、複数の車輪を有する自動車の重心を計算する方法を提供する。本方法は、x軸に沿った自動車の第1の加速度、y軸に沿った自動車の第2の加速度、およびz軸に沿った自動車の第3の加速度を判定するステップと、x軸に沿った自動車の第1の角速度、y軸に沿った自動車の第2の角速度、およびz軸に沿った自動車の第3の角速度を判定するステップと、自動車に作用する合力を判定するステップと、自動車の見積質量を判定するステップとを含む。本方法は、x軸に沿った自動車の第1の加速度、y軸に沿った自動車の第2の加速度、z軸に沿った自動車の第3の加速度、x軸に沿った自動車の第1の角速度、y軸に沿った自動車の第2の角速度、z軸に沿った自動車の第3の角速度、自動車に作用する合力、および自動車の見積質量に基づいて、自動車の重心を計算するステップをさらに含む。さらに、本方法は、少なくとも1つの自動車制御モジュールに重心を出力するステップと、自動車制御モジュールにより、重心に基づいて自動車の制御を修正するステップとを含むことができる。
【0007】
[0007]本発明の他の態様は、詳細な説明および添付の図面を検討することにより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】[0008]自動車を示す図である。
【図2】[0009]図1の自動車の重心を判定するための制御ユニットを模式的に示す図である。
【図3】[0010]図2の制御ユニット内に含まれるコンピュータ読取可能媒体を模式的に示す図である。
【図4】[0011]図2の制御ユニットを使用して自動車の重心を計算する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[0012]本発明の任意の実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その用途において、以下の説明に述べ、または以下の図面に示す構成要素の構成および配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態を可能にし、様々な方法で実施または実行することができる。
【0010】
[0013]図1は、自動車10を示す。自動車10は、複数の車輪12a、12b、12c、および12d、自動車本体13、ならびに制御システムまたはユニット14を含む。いくつかの実施形態では、制御ユニット14は、自動車10の様々な構成要素を監視および制御するための様々なセンサおよび/またはモジュールを含む、中央またはドメイン制御ユニットを含む。制御ユニット14は、自動車10内に含まれる他のシステムおよび構成要素と、コントローラエリアネットワーク(「CAN」)バスまたは他のタイプの通信チャネルを通して通信することができる。
【0011】
[0014]以下により詳細に説明するように、制御ユニット14は、自動車10の加速度および角速度、自動車車輪と自動車本体との間の変位、ならびに自動車の質量などの、自動車10の現在の状態に基づいて、自動車10の重心(「CoG」)を判定する。いくつかの実施形態では、制御ユニット14は、自動車10内の制御ユニット14の物理的位置により規定される座標系に沿って自動車の加速度および角速度を判定する。図1に示すように、制御ユニット14は、x軸、y軸、およびz軸を含む座標系の原点を表す測定点を規定する。制御ユニット14は、各軸に沿って、自動車の加速度(a,a,a)および角速度(ω,ω,ω)を判定する。さらに図1に示すように、制御ユニット14は、自動車本体13と自動車車輪のそれぞれとの間の変位(rFR,rRR,rRL,rFL)も判定するが、ここで「FR」は「前方右」を表し、「RR」は「後方右」を表し、「RL」は「後方左」を表し、「FL」は「前方左」を表す。制御ユニット14は、CoGの座標を判定するのに、自動車の加速度、角速度、車輪変位、および質量を使用する。図1に示すように、いくつかの実施形態では、制御ユニット14は、制御ユニット14の物理的位置により規定される座標系に基づいて、CoGの座標を判定し、座標が座標系の測定点または原点(0,0,0)からの変位(rCP)を規定するようにする。
【0012】
[0015]図2は、制御ユニット14をさらに詳細に模式的に示す。図2に示すように、制御ユニット14は、少なくとも1つのプロセッサ20、コンピュータ読取可能媒体22、および入力/出力インタフェース24を含む。プロセッサ20、コンピュータ読取可能媒体22、および入力/出力インタフェース24は、システムバスなどの1つまたは複数の結線26により接続される。図2には、たった1つのプロセッサ20、コンピュータ読取可能媒体22、および入力/出力インタフェース24が示されているが、制御ユニット14は、複数のプロセッサ20、コンピュータ読取可能媒体モジュール22、および/または入力/出力インタフェース24を含むことができることを理解されたい。
【0013】
[0016]プロセッサ20は、コンピュータ読取可能媒体22に格納された命令を検索および実行し、データをコンピュータ読取可能媒体22に格納する。コンピュータ読取可能媒体22は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはその組合せを含む。コンピュータ読取可能媒体22は、一時的でないコンピュータ読取可能媒体も含む。入力/出力インタフェース24は、制御ユニット14の外部からデータを受け取り、制御ユニット14の外部にデータを出力する。例えば、図2に示すように、入力/出力インタフェース24は、電子安定性制御(「ESC」)モジュール28などの1つまたは複数の自動車制御モジュールと通信することができる。ESCモジュール28は、自動車10の現在の運転パラメータおよび状態を検知し、自動車10を安定に維持するのに自動車10の制御を修正する。ESCモジュール28は、図2には、制御ユニット14の外部の構成要素として示すが、いくつかの実施形態では、ESCモジュール28は、制御ユニット14内に含まれる。入力/出力インタフェース24は、自動車10の内部の他の構成要素(例えば、CANを通して)および自動車10の外部の他の構成要素と通信することもできる。例えば、入力/出力インタフェース24は、ローカルエリアネットワークまたはインターネットなどのネットワークを通して制御ユニット14が情報を送り、受け取ることを可能にする、イーサネットカードまたは無線ネットワークカードなどのネットワークインタフェースを含むことができる。
【0014】
[0017]コンピュータ読取可能媒体22に格納される命令は、プロセッサ20により実行されるとき、特定の機能を実行するように構成される様々なモジュールを含む。図3は、本発明の一実施形態による、コンピュータ読取可能媒体22を模式的に示す。図3に示すように、コンピュータ読取可能媒体22は、加速度モジュール30、角度モジュール32、力モジュール34、質量モジュール36、および計算モジュール38を含む。加速度モジュール30は、1つまたは複数の方向の自動車10の加速度を判定する。例えば、加速度モジュール30は、自動車10内の制御ユニット14の物理的位置により規定されるx軸、y軸、およびz軸に沿った自動車10の加速度(a,a,a)を判定する。したがって、加速度モジュール30は、それが自動車の加速度を判定することを可能にする、自動車10の様々な状態を測定する1つまたは複数のセンサ(例えば、加速度センサ、慣性センサなど)からデータを受け取る。加速度モジュール30は、各軸に沿った自動車10の加速度を判定するのに受け取ったデータを処理する。受け取ったデータの処理は、そのデータを他のセンサからのデータもしくはコンピュータ読取可能媒体22内に格納されたデータと組み合わせ、および/またはそれらを比較すること、受け取ったデータをフィルタリングすること、受け取ったデータをオフセット補償すること、あるいはそれらの組合せを含むことができる。
【0015】
[0018]角度モジュール32は、1つまたは複数の方向の自動車10の加速度を判定する。例えば、角度モジュール32は、自動車10内の制御ユニット14の位置により規定されるx軸、y軸、およびz軸に沿った自動車10の角速度(ω)を判定する。したがって、角度モジュール32は、それが自動車の角速度を判定することを可能にする、自動車10の様々な状態を測定する1つまたは複数のセンサ(例えば、回転センサ、慣性センサなど)からデータを受け取る。角度モジュール32は、各軸に沿った自動車10の角速度を判定するのに、センサから受け取ったデータを処理する。受け取ったデータの処理は、そのデータを他のセンサからのデータもしくはコンピュータ読取可能媒体22内に格納されたデータと組み合わせ、および/またはそれらを比較すること、受け取ったデータをフィルタリングすること、受け取ったデータをオフセット補償すること、あるいはそれらの組合せを含むことができる。
【0016】
[0019]力モジュール34は、自動車10に作用する合力を判定する。例えば、力モジュール34は、自動車10に作用する合力を判定するのに、自動車車輪の自動車本体13からの変位、各車輪懸架装置の運動学、および自動車の重力を使用する。したがって、力モジュール34は、それが自動車10に作用する合力を判定することを可能にする、自動車10の様々な状態を測定する1つまたは複数のセンサからデータを受け取る。力モジュール34は、自動車10に作用する合力(またはその見積量)を判定するのに、センサから受け取ったデータを処理する。
【0017】
[0020]質量モジュール36は、自動車10内に含まれるどんな負荷も含む、自動車10の総質量を判定する。いくつかの実施形態では、質量モジュール36は、自動車10が最初に始動されるとき(すなわち、点火サイクルの開始時)、自動車10の総質量を判定する。他の実施形態では、質量モジュール36は、自動車10が動作している間、連続的に、または所定の間隔で自動車の総質量を判定する。自動車の質量を判定するのに、質量モジュール36は、自動車10に作用する重力および垂直力を使用する。したがって、質量モジュール36は、それが自動車質量を判定することを可能にする、自動車10の様々な状態を測定する1つまたは複数のセンサからデータを受け取る。質量モジュール36は、自動車の総質量(またはその見積量)を判定するのに、センサから受け取ったデータを処理する。いくつかの実施形態では、質量モジュール36は、この質量見積量をコンピュータ読取可能媒体22にさらに格納し、この質量見積量を自動車のCoGの複数の計算に使用することを可能にする。
【0018】
[0021]加速度モジュール30、角度モジュール32、力モジュール34、および質量モジュール36にデータを提供するセンサは、制御ユニット14内に含まれ、または自動車10内の他の場所に配置することができることを理解されたい。センサが制御ユニット14の外部に配置されるとき、センサは、CANバスまたは別のタイプの結線を通して制御ユニット14にデータを送ることができる。
【0019】
[0022]計算モジュール38は、加速度モジュール30、角度モジュール32、力モジュール34、および質量モジュール36から(またはコンピュータ読取可能媒体22から)データを受け取り、自動車のCoGを判定する。上述のように、いくつかの実施形態では、計算モジュール38は、制御ユニット14の物理的位置により規定される座標系に基づいて、CoGを座標として出力し、座標が座標系の原点(0,0,0)からの変位(rCP)を規定するようにする。計算済CoGは、CoGの変化に基づいて自動車の制御を修正するのに、ESCなどの様々な自動車制御システムにより使用することができる。いくつかの実施形態では、計算モジュール38は、自動車10の点火サイクルの始動時にCoGを判定し、自動車が動作している間、再び少なくとも1回CoGを判定する。計算モジュール38は、所定の間隔で、または連続的にCoGを判定することができる。
【0020】
[0023]図4は、制御ユニット14を使用して自動車10の重心を計算する方法を示すフローチャートである。図4に示すように、各自動車車輪の変位(r,i=[FR,FL,RR,RL])は、力モジュール34により実行される、力見積機能部に(40において)提供される。力見積機能部の出力は、自動車10に作用する合力の3つの成分を含むベクトル(FTotal)である。力見積機能部は、自動車10がその通常の運転範囲では剛体として振る舞うことを前提とし、力見積機能部では、自動車本体13と自動車車輪のそれぞれとの間の変位(r)、および各車輪懸架装置の運動学が既知である。したがって、力見積機能部は、力を懸架装置の方向(L)に変換するのに、力変換行列(T)を計算する。
【0021】
[0024]具体的には、力
【数1】

は、以下の方程式により表される。
【0022】
[0025]
【数2】

【0023】
[0026]ここで、変数cは弾性係数を表し、変数dは減衰係数を表す。次いで、力見積機能部は、以下の方程式を使用して、その力を座標系Lで表される力に変換するが、座標系Lは現在の自動車位置の接線方向の平面を含む。
【0024】
[0027]
【数3】

【0025】
[0028]以下の方程式によりもたらされる、各車輪上のこの力と重力との合計は、自動車に作用する合力
【数4】

をもたらす。
【0026】
[0029]
【数5】

【0027】
[0030]したがって、方程式(1)から(3)に示すように、力モジュール34は、自動車車輪のそれぞれと自動車本体との間の変位を判定し、各車輪と自動車本体との間の変位を各車輪に作用する力に変換し、車輪に作用する合力を判定するのに各車輪に作用する力を合計し、複数の車輪に作用する合力と自動車10に作用する重力とを加算することにより、自動車10に作用する合力を判定する。
【0028】
[0031]あるいは、懸架力は、以下の方程式を使用して非線形関数により計算することができる。
【0029】
[0032]
【数6】

【0030】
[0033]これらのモデル使用法(すなわち、線形または非線形)の1つの選択は、自動車懸架要素の緩衝器またはバネに使用可能なデータに応じて決定することができる。上述のように、力見積機能部の出力は、自動車10に作用する合力の3つの成分を含むベクトル(FTotal)により表される力見積量である。
【0031】
[0034]図4に示すように、力見積量(FTotal)は、質量モジュール36により実行される質量見積機能部に(42において)提供される。質量見積機能部の出力は、自動車10内に含まれるどんな負荷も含む、自動車10の総質量の値を表す質量見積量(m)である。上述のように、いくつかの実施形態では、質量見積機能部は、各点火サイクルの開始時にのみ実行される。自動車10が最初に始動されるとき、質量見積機能部は、静止時に自動車10に作用する力が重力および垂直力のみであることを前提とする。質量見積機能部は、自動車10が以下の方程式で表される平衡状態であることも前提とする。
【0032】
[0035]
【数7】

【0033】
[0036]さらに、質量見積機能部は、平衡状態では車輪の変位(r)が変わらないことを前提としている。したがって、上述の方程式(2)は、以下の関係をもたらす。
【0034】
[0037]
【数8】

【0035】
[0038]したがって、方程式(5)および(6)は、自動車質量を計算するのに、以下に述べる関係をもたらす。
【0036】
[0039]
【数9】

【0037】
[0040]図4に示すように、質量見積機能部により判定される質量見積量(m)は、計算モジュール38により実行される計算機能部に(44において)提供される。計算機能部も、力見積機能部により判定された力見積量(FTotal)を受け取る。さらに、計算機能部は、加速度モジュール30により判定された加速度値(a,a,a)、および角度モジュール32より判定された角度値(ω,ω,ω)を受け取る。上述のように、加速度値および/または角度値は、オフセット補償され、フィルタリングすることができる。
【0038】
[0041]力見積量および質量見積量を使用してCoG(rCP)の座標を計算するのに、計算機能部は、剛体の運動微分方程式から誘導された以下の方程式を使用する。
【0039】
[0042]
【数10】

【0040】
[0043]測定点(「CU」)(すなわち、制御ユニット14の物理的位置により規定された座標系の原点)とCoGとの間の本体固定座標系Lに表される座標のベクトルは、以下の方程式により表される。
【0041】
[0044]
【数11】

【0042】
[0045]したがって、角速度の交代行列は、以下の方程式によりもたらされる。
【0043】
[0046]
【数12】

【0044】
[0047]同様に、角加速度の交代行列は、以下の方程式によりもたらされる。
【0045】
[0048]
【数13】

【0046】
[0049]したがって、変数mが総自動車質量を表し、ベクトルFTotalが自動車に作用する合力(例えば、自動車固定座標系で表される)を表すことにすれば、以下の方程式は、自動車固定座標系Lで表される並進ベクトル、すなわち測定点(「CU」)における自動車の重力補償加速度を表す。
【0047】
[0050]
【数14】

【0048】
[0051]上述のように、現在のCoGの座標が得られると、これらCoGの座標は、ESCなどの1つまたは複数の自動車制御システムの動作を修正するのに使用することができる。例えば、現在のCoGは、制御システムをより感度が良いモードなどの異なるモードに切り替え、または特定の制御システムを切るのに使用することができる。CoGは、自動車制御をより十分で安全にするのに、負荷が自動車全体にどのように分布しているかを判定するのに使用することもできる。CoGは、後に使用し、および/または他のCoG情報もしくは非CoG情報と結びつけるのにコンピュータ読取可能媒体22または他の媒体に格納することもできる。この追跡情報は、自動車制御をさらに修正し、またはより適応性がある自動車制御を設計するのに使用することができる。
【0049】
[0052]本発明の様々な特徴および利点は、以下の特許請求の範囲に述べる。
【符号の説明】
【0050】
10 自動車
12a、12b、12c、12d 車輪
13 自動車本体
14 制御ユニット
20 プロセッサ
22 コンピュータ読取可能媒体
24 入力/出力インタフェース
26 結線
28 電子安定性制御モジュール
30 加速度モジュール
32 角度モジュール
34 力モジュール
36 質量モジュール
38 計算モジュール
40 力見積機能部
42 質量見積機能部
44 計算機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車輪を有する自動車の重心を計算するシステムにおいて、
x軸に沿った前記自動車の第1の加速度、y軸に沿った前記自動車の第2の加速度、およびz軸に沿った前記自動車の第3の加速度を判定するように構成された加速度モジュールと、
前記x軸に沿った前記自動車の第1の角速度、前記y軸に沿った前記自動車の第2の角速度、および前記z軸に沿った前記自動車の第3の角速度を判定するように構成された角度モジュールと、
前記自動車に作用する合力を判定するように構成された力モジュールと、
前記自動車の見積質量を判定するように構成された質量モジュールと、
x軸に沿った前記自動車の前記第1の加速度、y軸に沿った前記自動車の前記第2の加速度、z軸に沿った前記自動車の前記第3の加速度、前記x軸に沿った前記自動車の前記第1の角速度、前記y軸に沿った前記自動車の前記第2の角速度、前記z軸に沿った前記自動車の前記第3の角速度、前記自動車に作用する前記合力、および前記自動車の前記見積質量に基づいて、前記自動車の重心を判定するように構成された計算モジュールと
を含む、システム。
【請求項2】
前記重心に基づいて、前記自動車の制御を修正するように構成された、自動車制御モジュールをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記自動車制御モジュールは、電子安定性制御モジュールを含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記計算モジュールは、点火サイクルの始動時、および前記自動車が動作している間に少なくとも1回、前記自動車の前記重心を判定するようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記質量モジュールは、前記自動車が静止しているとき、前記自動車の前記見積質量を判定するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記質量モジュールは、点火サイクルの始動時に、前記自動車の前記見積質量を判定するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記力モジュールは、前記複数の車輪のそれぞれの間の変位を判定し、前記複数の車輪のそれぞれの間の前記変位を前記複数の各車輪に作用する力に変換し、前記複数の車輪に作用する合力を判定するのに前記複数の車輪のそれぞれに作用する前記力を合計し、前記複数の車輪に作用する前記合力と前記自動車に作用する重力とを加算することにより、前記自動車に作用する前記合力を判定するようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記x軸、y軸、およびz軸は、前記自動車に含まれたドメイン制御ユニットの位置に基づいて規定される、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記加速度モジュールは、前記自動車の前記第1、第2、および第3の加速度のそれぞれをオフセット補償し、それらをフィルタリングするようにさらに構成され、前記角度モジュールは、前記自動車の前記第1、第2、および第3の角速度のそれぞれをオフセット補償し、それらをフィルタリングするようにさらに構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
複数の車輪を有する自動車の重心を計算する方法であって、
x軸に沿った前記自動車の第1の加速度、y軸に沿った前記自動車の第2の加速度、およびz軸に沿った前記自動車の第3の加速度を判定するステップと、
前記x軸に沿った前記自動車の第1の角速度、前記y軸に沿った前記自動車の第2の角速度、および前記z軸に沿った前記自動車の第3の角速度を判定するステップと、
前記自動車に作用する合力を判定するステップと、
前記自動車の見積質量を判定するステップと、
x軸に沿った前記自動車の前記第1の加速度、y軸に沿った前記自動車の前記第2の加速度、z軸に沿った前記自動車の前記第3の加速度、前記x軸に沿った前記自動車の前記第1の角速度、前記y軸に沿った前記自動車の前記第2の角速度、前記z軸に沿った前記自動車の前記第3の角速度、前記自動車に作用する前記合力、および前記自動車の前記見積質量に基づいて、前記自動車の重心を計算するステップと
を含む、方法。
【請求項11】
少なくとも1つの自動車制御モジュールに前記重心を出力するステップと、前記自動車制御モジュールにより、前記重心に基づいて前記自動車の制御を修正するステップとをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記重心に基づいて前記自動車の制御を修正する前記ステップは、電子安定性制御モジュールにより前記自動車の制御を修正するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記自動車の前記重心を計算する前記ステップは、点火サイクルの始動時および前記自動車が動作している間に少なくとも1回、前記自動車の前記重心を計算するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記自動車の前記見積質量を判定する前記ステップは、前記自動車が静止しているときに前記自動車の前記見積質量を判定するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記自動車に作用する合力を判定する前記ステップは、前記複数の車輪のそれぞれの間の変位を判定するステップと、前記複数の車輪のそれぞれの間の前記変位を前記複数の各車輪に作用する力に変換するステップと、前記複数の車輪に作用する合力を判定するのに前記複数の車輪のそれぞれに作用する前記力を合計するステップと、前記複数の車輪に作用する前記合力と前記自動車に作用する重力とを加算するステップとを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記自動車の前記第1、第2、および第3の加速度を判定する前記ステップは、前記自動車に含まれた制御ユニットの位置に基づいて、前記x軸、y軸、およびz軸を規定するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記自動車の前記第1、第2、および第3の角速度を判定する前記ステップは、前記自動車に含まれた制御ユニットの位置に基づいて、前記x軸、y軸、およびz軸を規定するステップを含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−229011(P2012−229011A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−87247(P2012−87247)
【出願日】平成24年4月6日(2012.4.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.イーサネット
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】