説明

自動車エンジンのLPG燃料供給装置

【課題】エンジンルーム内の燃料経路の加熱によるLPGの温度上昇を抑えて燃料供給圧力を低めに設定可能とすることにより、燃料ポンプの負担並びに燃費の向上等を図る。
【解決手段】燃料分配器4の外壁を燃料ホース3の接続口31を含む2つの開口71,72を有する二重壁として第1の空隙7を形成し、開口71に外管81の基端が接続されて燃料ホース3との間に第2の空隙8を形成するとともにもう一方の開口72には先端部に車体2の前部21に開口させた空気取入口101を形成した空気導入管10を接続し、空気取入口101から導入させた外気を燃料分配器4の外壁71,72との間に形成した第1の空隙7およびこの第1の空隙7に連通する燃料ポンプの外管との間に形成される第2の空隙8へと送り、燃料ホース3の周囲に配置した外管81の先端に形成した第2の空隙8に連通する空気排出口111から排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジンのLPG燃料供給装置、殊に、車体に搭載した燃料タンクに貯留したLPG燃料を液相のままの状態でエンジンに供給するLPG燃料供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、火花点火式の自動車エンジンにLPGを供給するシステムとして、ボンベのLPGをベーパライザで減圧ガス化し混合器で吸入空気流に吸引させる代りに、減圧ガス化することなく液状のまま燃料噴射弁で吸入空気流に噴射させることが提案されている。
【0003】
ところで、燃料噴射弁を用いたLPG燃料供給装置においては、特開昭59−82556号公報、特開昭59−108855号公報に開示されているようにボンベの内圧をほぼそのまま噴射圧力とすると熱的影響を受けたとき容易にガス化して圧力を極度に変動させ燃料噴射弁による計量が著しく不正確になるので、実願昭60−21997号(実開昭61−138860号)のマイクロフイルム、実願昭60−177417号(実開昭62−87162号)のマイクロフイルム、特開昭63−16160号公報、特開昭63−16161号公報、特開昭63−16162号公報、特開昭63−18172号公報に開示されているようにボンベのLPGを燃料ポンプで更に加圧しガス化しにくい状態としたうえで圧力調整器で所定圧力に調整し噴射圧力とすることが考えられている。
【0004】
このようなLPG燃料供給装置においてLPGは沸点がガソリンに比べて低く、噴射圧を走行中のエンジンの熱などによって蒸発しないような圧力に設定する必要があり、特に、噴射に伴う余剰燃料を環流しない所謂リターンレスシステムのLPG燃料供給装置においては、エンジンに近接して配置される燃料レール内を移動するLPG流量が噴射に伴う余剰燃料を環流する所謂リターンシステムに比べて少ないことから経路内のLPGの温度が高くなる傾向にある。
【0005】
そのため、リターンレスシステムのLPG燃料供給装置においてLPGの気化を防止するためにはリターンシステムのLPG燃料供給装置に比べて燃料供給圧力を高めに設定する必要があり、燃料ポンプの負荷が増して、消費電力が増大するばかりか燃料ポンプの耐久性が悪化し、エンジンの燃費も悪化する原因となる。
【特許文献1】特開昭59−82556号公報
【特許文献2】特開昭59−108855号公報
【特許文献3】実願昭60−21997号(実開昭61−138860号)のマイクロフイルム
【特許文献4】実願昭60−177417号(実開昭62−87162号)のマイクロフイルム
【特許文献5】特開昭63−16160号公報
【特許文献6】特開昭63−16161号公報
【特許文献7】特開昭63−16162号公報
【特許文献8】特開昭63−18172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ボンベのLPGを燃料ポンプで更に加圧し圧力調整器で所定圧力に調整して燃料噴射弁より吸気管に噴射させるLPG燃料供給装置において、燃料経路(特にエンジンルーム内の燃料経路)のエンジンの加熱によるLPGの温度上昇を抑えて燃料供給圧力を低めに設定可能とすることにより、燃料ポンプの負担並びにエンジン(車両)の燃費の向上等を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明は、車体に搭載した燃料タンクに貯留したLPG燃料を電動式の燃料ポンプにより加圧することで所定圧力に調整して燃料ホースによりエンジンルーム内のエンジンに配置した燃料噴射弁を有する燃料分配器に送り前記燃料噴射弁からエンジン内に噴射させる自動車エンジンのLPG燃料供給装置において、前記燃料分配器の外壁を少なくとも前記燃料ホースの接続口を含む2つの開口を有する二重壁として第1の空隙を形成し、前記第1の空隙における燃料ホースの接続口を含む開口に前記燃料ホースのエンジンルームに配置された部分の周囲に配置した外管の基端が接続されて前記燃料ホースとの間に第2の空隙を形成するとともに前記もう一方の開口には先端部にエンジンルームを貫通して車体前部に開口させた空気取入口を形成した空気導入管が接続されており、前記空気取入口から導入させた外気を燃料分配器の外壁との間に形成した第1の空隙およびこの第1の空隙に連通する燃料ポンプの外管との間に形成される第2の空隙へと送り、前記燃料ホースの周囲に配置した外管の先端に形成した前記第2の空隙に連通する空気排出口から排出することにより、前記燃料分配器および燃料ホース内に供給されるLPG燃料を冷却することによりエンジンルーム内の環境温度によるLPG燃料の気化を防止することとした。
【0008】
また、本発明において、前記燃料ホースの周囲に配置した外管の先端に形成した前記第2の空隙に連通する空気排出口に電動空気排出器を付設することにより、更に、強制的に冷却することができ、特に、低速走行時や停車時など外気を空気取入口から導入させにくい場合には、電動空気排出器により燃料ホースの周囲に配置した外管に強制的に外気を導入して冷却する。この際、前記電動空気排出器が前記燃料分配器に付設した燃料温度センサーからの信号により駆動制御されることにより自動的に電動空気排出器を稼働して効率のよい運転をすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、エンジンルーム内に配設される燃料供給経路内におけるLPGについてのエンジンの加熱による温度上昇が抑えられることで、燃料供給圧力を低めに設定可能とすることにより、燃料ポンプの負担並びに車両の燃費の向上等を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態について、以下に図面を用いながら詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明である自動車エンジンのLPG燃料供給装置についてのエンジンルーム1内における部分箇所についての概略を示すものであり、車体2に搭載した燃料タンク(図示せず)に貯留したLPG燃料を電動式の燃料ポンプ(図示せず)により加圧することで所定圧力に加圧調整して燃料ホース3によりエンジンルーム1内の燃料分配器(燃料レール)4に送り複数の燃料噴射弁6からエンジン5内に噴射させる従来周知のリターンレスシステムである。
【0012】
そして、前記燃料分配器4の外壁を少なくとも前記燃料ホース3の接続口31と先端とに2つの開口71,72を有して二重壁として間に第1の空隙7を形成し、この第1の空隙7における燃料ホース3の接続口31を含む開口71に燃料ホース3におけるエンジンルーム1内に配置される部分の周囲に配置した外管81が接続されて燃料ホース3との間に第2の空隙8が形成されている。
【0013】
また、前記前記燃料分配器4における、もう一方の開口72には先端部にエンジンルーム1を貫通して車体2の前部21に開口させた空気取入口101を形成した空気導入管10が接続されている。
【0014】
更に、エンジンルーム1内の前記燃料ホース3の周囲に配置した外管8の先端付近には空気排出口111をエンジンルーム1外へと露出させた電動空気排出器(電動ブロウ)11が設置されており、この電動空気排出器11の吸込口112に前記前記燃料ホース3の周囲に配置した外管81の先端が連通状態で気密に接続されている。
【0015】
更にまた、本実施の形態では、前記燃料分配器4の内壁に燃料温度センサ13が配置されているとともにこの燃料温度センサ13からのセンサ信号が前記車体2に搭載されているエンジン4の前記燃料噴射弁6等を駆動制御する役務を兼ねる電子制御装置(ECU)14に送られて、この電子制御装置(ECU)14からの制御信号により稼働する構成である。
【0016】
次に本実施の形態における使用について説明すると、エンジンキー(図示せず)がオン操作されてエンジンが始動すると、前記電動空気排出器11の電源回路(図示せず)に電源が印可されるとともに前記電子制御装置(ECU)14が作動して前記燃料分配器4の内壁に配置した温度センサ13から送信される燃料分配器4の内壁の温度(即ち燃料分配器4内のLPGの温度)信号を受信する。
【0017】
そして、例えば車両が一定時間停車した状態にあり、エンジン5の温度も高くなく前記温度センサ13からの温度信号が予め定めた所定の温度以下の場合には燃料分配器4内のLPG温度が高くなく、そのままの状態で気化する心配がないので電子制御装置(ECU)14から電動空気排出器11へ作動させるための駆動信号を送信する必要がなく、電動空気排出器11も停止した状態にある。
【0018】
次に、車両の走行に伴ってエンジン5の運転が始まると、エンジン5の燃焼に伴ってエンジンルーム1内の温度が次第に上昇するようになり、エンジンルーム1内の燃料分配器4や燃料ホース3などの燃料経路が高温にさらされることになる。
【0019】
このとき、本実施の形態において車両が走行している場合には、車体2の前面21に設けられた空気取入口101から外気が走行風として導入され、空気導入管10から燃料分配器4の外壁との間に形成した第1の空隙7およびこの第1の空隙7に連通する燃料ホース3の外管81との間に形成される第2の空隙8へと送られて電動空気排出器11の空気排出口111から排出される。
【0020】
このとき、前記第1の空隙7および第2の空隙8を通過する外気はエンジンルーム1内の雰囲気温度よりも低いことから前記第1の空隙7および第2の空隙8において燃料分配器4および燃料ホース3とこれらに内挿されているLPGとの間で熱交換が行われ、LPGの温度上昇が抑制される。従って、エンジンルーム1内の雰囲気温度が上昇しても燃料分配器4および燃料ホース3内のLPGの圧力を必要以上に上げなくても気化する心配がない。
【0021】
また、エンジン1の運転時に車両が走行しておらず、或いは低速で長時間の走行が続いている場合には、空気取入口101からの外気の導入が困難となり燃料分配器4および燃料ホース3内のLPGの温度が上昇することになるが、本実施の形態では燃料分配器4に設置した燃料温度センサ13によりLPGの温度が検知されて電子制御装置(ECU)14に送信され、予め設定した温度を超えた時に電子制御装置(ECU)14から電動空気排出器11へ作動信号が送信されて電動空気排出器11が作動し、その吸い込みにより車体2の前面21に設けられた空気取入口101から外気が導入されて、空気導入管10から燃料分配器4の外壁との間に形成した第1の空隙7およびこの第1の空隙7を連通する燃料ホース3の外管81との間に形成される第2の空隙8へと送られて電動空気排出器11の空気排出口111から排出されて前記第1の空隙7および第2の空隙8において燃料分配器4および燃料ホース3とこれらに内挿されているLPGとの間で熱交換が行われ、LPGの温度上昇が抑制される。
【0022】
尚、前記燃料温度センサ13と電子制御装置(ECU)14とによる電動空気排出器11の作動制御は常時行われ、エンジンルーム1内のLPGの温度が予め所定した温度を超えたときだけ電動空気排出器11を作動させればよく、きわめて経済的である。
【0023】
このように本実施の形態では車両の走行状態を問わずにエンジンルーム1内に配置される燃料分配器4および燃料ホース3内におけるLPGの温度を外気を使って燃料供給圧力を低めに設定可能とすることにより、燃料ポンプの負担並びに車両の燃費の向上等を図ることができ、特に車両が走行状態にあるときには電動空気排出器11を作動させる必要もなくこの点においても無駄なエネルギーを必要とせず燃費の向上を図ることにもなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態を示す概略説明図。
【符号の説明】
【0025】
1 エンジンルーム、2 車体、3 燃料ホース、4 燃料分配器、5 エンジン、6 燃料噴射弁、7 第1の空隙、8 第2の空隙、10 空気導入管、13 燃料温度センサ、31 接続口、71,72 開口、81 外管、101 空気取入口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に搭載した燃料タンクに貯留したLPG燃料を電動式の燃料ポンプにより加圧することで所定圧力に調整して燃料ホースによりエンジンルーム内のエンジンに配置した燃料噴射弁を有する燃料分配器に送り前記燃料噴射弁からエンジン内に噴射させる自動車エンジンのLPG燃料供給装置において、前記燃料分配器の外壁を少なくとも前記燃料ホースの接続口を含む2つの開口を有する二重壁として第1の空隙を形成し、前記第1の空隙における燃料ホースの接続口を含む開口に前記燃料ホースのエンジンルームに配置された部分の周囲に配置した外管の基端が接続されて前記燃料ホースとの間に第2の空隙を形成するとともに前記もう一方の開口には先端部にエンジンルームを貫通して車体前部に開口させた空気取入口を形成した空気導入管が接続されており、前記空気取入口から導入させた外気を燃料分配器の外壁との間に形成した第1の空隙およびこの第1の空隙に連通する燃料ポンプの外管との間に形成される第2の空隙へと送り、前記燃料ホースの周囲に配置した外管の先端に形成した前記第2の空隙に連通する空気排出口から排出することにより、前記燃料分配器および燃料ホース内に供給されるLPG燃料を冷却することによりエンジンルーム内の環境温度によるLPG燃料の気化を防止することを特徴とする自動車エンジンのLPG燃料供給装置。
【請求項2】
前記燃料ホースの周囲に配置した外管の先端に形成した前記第2の空隙に連通する空気排出口に電動式の空気排出器が付設されていることを特徴とする請求項1記載の自動車エンジンのLPG燃料供給装置。
【請求項3】
前記電動式の空気排出器が前記燃料分配器に付設した燃料温度センサからの信号により駆動制御されることを特徴とする請求項2記載の自動車エンジンのLPG燃料供給装置。


【図1】
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【公開番号】特開2010−138707(P2010−138707A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313119(P2008−313119)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(000153122)株式会社ニッキ (296)