説明

自動車内装材の製造方法

【課題】長期耐熱性およびフォギング性に優れる自動車内装材を、反応射出成形により、生産効率よく製造することのできる自動車内装材の製造方法を提供すること。
【解決手段】自動車内装材の製造方法において、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体とを含有するイソシアネート成分と、ポリオールと、ジメチルチンジネオデカノエートと、ジブチルチンジメチルマレエートとを含有するポリオール成分とを反応射出成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のダッシュボード、ドアトリムなどの自動車内装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性ポリウレタン樹脂を反応射出成形させて成形される反応射出成形品は、長期耐熱性や耐光性に優れており、例えば、自動車のダッシュボード、ドアトリムなど、高温環境下に晒される自動車内装材として用いられている。
このような反応射出成形品の製造方法に関して、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の3量体と単量体との混合物およびチキソトロープ剤を含有するイソシアネートブレンドと、グリセリンに対してプロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドを付加重合させて調製されるポリオール、鎖エクステンダー(エチレングリコール)、架橋剤(ジエタノールアミン)、ゼオライト触媒(ケイ酸アルミニウムナトリウム)およびその他の添加剤(着色顔料など)を含有するポリオールブレンドとを、80℃や105℃に設定された金型において、反応させて成形する製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特表2005−530011
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の製造方法では、ポリイソシアネート成分として、反応性に乏しいイソホロンジイソシアネートの3量体と単量体との混合物が用いられているため、金型温度を80℃以上にする必要があり、生産効率が低いという不具合がある。
また、自動車内装材には、優れた長期耐熱性に加え、自動車の視界不良の原因となるフォギング現象の発生度合の指標であるフォギング性の低減が要求される。
【0004】
本発明の目的は、長期耐熱性およびフォギング性に優れる自動車内装材を、反応射出成形により、生産効率よく製造することのできる自動車内装材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の自動車内装材の製造方法は、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体とを含有するイソシアネート成分と、ポリオールと、ジメチルチンジネオデカノエートと、ジブチルチンジメチルマレエートとを含有するポリオール成分とを反応射出成形することを特徴としている。
【0006】
また、本発明の自動車内装材の製造方法では、ジメチルチンジネオデカノエートが、0.05〜0.4質量%含有され、ジブチルチンジメチルマレエートが、0.05〜0.6質量%含有される自動車内装材を得ることが好適である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動車内装材の製造方法によれば、長期耐熱性およびフォギング性に優れる自動車内装材を、反応射出成形により、生産効率よく製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の自動車内装材の製造方法では、イソシアネート成分とポリオール成分とを反応射出成形する。
イソシアネート成分は、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー)とを含有している。
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとしては、公知の1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンが挙げられ、そのような市販品として、例えば、三井化学ポリウレタン社製 タケネート600が挙げられる。
【0009】
ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー)としては、公知のヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー)が挙げられ、そのような市販品として、例えば、三井化学ポリウレタン社製 タケネートD170Nが挙げられる。
また、イソシアネート成分には、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよびヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー)とともに、脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香脂肪族ポリイソシアネートなどのポリイソシアネートを含有させることができる。 脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトエチル)シクロヘキサン、2,5および/または2,6−ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2,2,1]へプタン、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、イソホロンジイソシアネート、2,5および/または2,6−ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2,2,1]へプタンが挙げられる。
【0010】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0011】
これらポリイソシアネートは、単独使用または2種以上併用することができる。
イソシアネート成分において、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび必要により含有される脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香脂肪族ポリイソシアネートと、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー)との重量混合比は、例えば、90:10〜40:60であり、好ましくは、80:20〜50:50であり、さらに好ましくは、80:20〜60:40である。
そして、イソシアネート成分を調製するには、上記各成分(つまり、必須成分として、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよびヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー))を配合し、例えば、公知の攪拌機により撹拌混合し、脱気する。
【0012】
また、イソシアネート成分は、上記各成分をポリオールにより変性し、ポリイソシアネートのポリオール変性体(以下、単にポリオール変性体という場合がある。)として調製することもできる。
ポリオールとしては、例えば、後述する低分子量ポリオール、高分子量ポリオールが挙げられる。これらのうち、好ましくは、数平均分子量が100〜400の低分子量ポリオール、数平均分子量が400〜10000の高分子量ポリオールが挙げられる。
【0013】
そして、イソシアネート成分を、ポリオール変性体として調製する場合には、例えば、上記1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、必要により含有される脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー)と、ポリオールとを、ポリオールの水酸基に対する、ポリイソシアネート、必要により含有される脂環族ポリイソシアネートおよび/または芳香脂肪族ポリイソシアネート、およびヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(トリマー)のイソシアネート基のモル比(イソシアネート基/水酸基)が、例えば、2〜100、好ましくは、3〜60となる割合で配合し、例えば、70〜100℃で、1〜5時間反応させる。
【0014】
このようにして得られるポリイソシアネートのポリオール変性体は、そのイソシアネート基含量が、例えば、20質量%以上であり、好ましくは、23〜32質量%であり、さらに好ましくは、24〜30質量%である。
本発明において、ポリオール成分は、ポリオールを含有し、さらに、ウレタン化触媒として、ジメチルチンジネオデカノエートと、ジブチルチンジメチルマレエートとを含有する。
【0015】
ポリオールとしては、例えば、高分子量ポリオールが挙げられる。
高分子量ポリオールは、水酸基を1分子中に2つ以上有し、数平均分子量が、例えば、400〜10000、好ましくは、1400〜9000、さらに好ましくは、3000〜8000であり、その水酸基価が、例えば、10〜125mgKOH/g、その平均官能基数が、例えば、2〜4の化合物である。なお、ポリオール成分の数平均分子量は、ポリオール成分の水酸基価(JIS K 1557−1(2007)から求められる。)および平均官能基数から算出することができる。
【0016】
高分子量ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールは、例えば、低分子量ポリオールまたは低分子量ポリアミンを開始剤とする、アルキレンオキサイドの付加重合物である。
【0017】
アルキレンオキサイドとしては、例えば、プロピレンオキサイド、エチレンオキサイドなどが挙げられる。これらアルキレンオキサイドは、単独使用または2種類以上併用することができ、好ましくは、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとを併用する。
また、ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールを調製するための触媒としては、例えば、特許第3905638号公報に記載のホスファゼニウム化合物を触媒が挙げられる。このような触媒を用いてポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールを調製すれば、モノオール副生量が少ないポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールを得ることができる。
【0018】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60〜400未満の化合物であって、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(7〜22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4−シクロヘキサンジオール、アルカン−1,2−ジオール(C17〜20)、水素化ビスフェノールF、水素化ビスフェノールA、1,4−ジヒドロキシ−2−ブテン、p−キシリレングリコール、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソフタレート、1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、レゾルシン、ヒドロキノン、2,2´−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,6−ジメチル−1−オクテン−3,8−ジオール、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、ビスフェノールF、ビスフェノールAなどの2価アルコール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール、例えば、テトラメチロールメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、D−ソルビトール、キシリトール、D−マンニトール、D−マンニットなどの水酸基を4つ以上有する多価アルコールなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは、3価アルコールが挙げられる。
【0019】
また、低分子量ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールなどのアルカノールアミン、例えば、トリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールとして、好ましくは、その分子末端にエチレンオキサイドを共重合したポリエチレンポリプロピレンポリオールが挙げられる。ポリエチレンポリプロピレンポリオールにおいて、その分子末端の1級水酸基化率(分子末端の全水酸基に対する1級水酸基の割合)は、好ましくは、50モル%以上であり、さらに好ましくは、70モル%以上である。ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールの分子末端の1級水酸基化率が上記値以上であれば、触媒の使用量が少なくても、ポリイソシアネートとの反応完結率を向上させることができる。
【0020】
なお、ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールの数平均分子量は、好ましくは、200〜8000、さらに好ましくは、500〜6000である。
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの重合単位に上記した2価アルコールを共重合した非晶性(常温液状)ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0021】
なお、ポリテトラメチレンエーテルグリコールの数平均分子量は、好ましくは、250〜8000、さらに好ましくは、250〜6000である。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、上記した低分子量ポリオールと多塩基酸またはそのアルキルエステルとを、公知の条件下、反応させて得られる重縮合物が挙げられる。
【0022】
多塩基酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、1,1−ジメチル−1,3−ジカルボキシプロパン、3−メチル−3−エチルグルタール酸、アゼライン酸、セバチン酸、その他の脂肪族ジカルボン酸(炭素数11〜13)、スベリン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、エイコサン二酸、メチルヘキサン二酸、シトラコン酸、水添ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トルエンジカルボン酸、ダイマー酸、ヘット酸などのカルボン酸、および、それらカルボン酸から誘導される酸無水物、酸ハライド、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などが挙げられる。
【0023】
低分子量ポリオールと多塩基酸との重縮合物として、具体的には、ポリ(エチレンブチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンアジペート)ポリオール、ポリ(エチレンプロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(プロピレンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンヘキサンアジペート)ポリオール、ポリ(ブチレンアジペート)ポリオールなどのアジペート系ポリエステルポリオールやポリ(アルキレンフタレート)ポリオールが挙げられる。
【0024】
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、ひまし油ポリオール、あるいは、ひまし油ポリオールとポリプロピレングリコールとを反応させて得られるエステル結合を介した変性ひまし油ポリオールなどが挙げられる。
また、ポリエステルポリオールとして、例えば、上記した低分子量ポリオールを開始剤として、例えば、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトンなどのラクトン類を開環重合して得られる、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、さらには、それらに上記した2価アルコールを共重合したラクトン系ポリオールなどが挙げられる。
【0025】
なお、ポリエステルポリオールの数平均分子量は、好ましくは、500〜8000、さらに好ましくは、800〜6000である。
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記した2価アルコールを開始剤とするエチレンカーボネートの開環重合物や、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールや1,6−ヘキサンジオールなどの2価アルコールと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートやジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとの縮合反応により得られるポリカーボネートジオールや非晶性(常温液状)ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。
【0026】
なお、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量は、好ましくは、500〜8000、さらに好ましくは、800〜6000である。
これら高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、低粘度で流動性に優れるポリエーテルポリオールが挙げられ、さらに好ましくは、ポリオキシ(炭素数2〜3)アルキレンポリオールが挙げられ、とりわけ好ましくは、ポリエチレンポリプロピレンポリオールが挙げられる。
【0027】
また、本発明において、ポリオール成分として、高分子量ポリオールとともに、上記した低分子量ポリオールを併用することもでき、好ましくは、2価アルコールを併用し、さらに好ましくは、ブタンジオールを併用し、とりわけ好ましくは、1,4−ブタンジオールを併用する。
ポリオール成分において、ジメチルチンジネオデカノエートとしては、公知のジメチルチンジネオデカノエートが挙げられ、そのような市販品として、例えば、GEシリコーン社製 UL−28が挙げられる。
【0028】
また、ポリオール成分において、ジブチルチンジメチルマレエートとしては、公知のジブチルチンジメチルマレエートが挙げられ、そのような市販品として、例えば、日東化成社製 SCAT−4Lが挙げられる。
また、ポリオール成分には、ウレタン化触媒として、ジメチルチンジネオデカノエートおよびジブチルチンジメチルマレエートとともに、金属系触媒、アミン触媒などを含有させることができる。
【0029】
金属系触媒としては、例えば、錫系触媒、ビスマス系金属触媒などが挙げられる。
錫系触媒としては、例えば、酢酸錫、オクタン酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、スタナスオクトエート、ジブチルチンジアセテート、ジブチルチンジラウレート、ジブチルチンジメルカプチド、ジメチルチンジラウレート、ジオクチルチンジメルカプチドなどが挙げられる。
【0030】
ビスマス系触媒としては、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどが挙げられる。
また、アミン触媒としては、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロウンデセンフェノラートなどが挙げられる。
これら金属系触媒およびアミン触媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0031】
そして、後述する自動車内装材中のウレタン化触媒(ジメチルチンジネオデカノエートおよびジブチルチンジメチルマレエートを含む。)の含有量は、その総量として、例えば、0.1〜1.0質量%、好ましくは、0.2〜0.7質量%である。また、ポリオール成分に対するウレタン化触媒(ジメチルチンジネオデカノエートおよびジブチルチンジメチルマレエートを含む。)の含有割合は、ポリオール100質量部に対して、その総量として、例えば、0.29〜2.9質量部、好ましくは、0.58〜2.0質量部である。ウレタン化触媒の含有量(含有割合)が上記した範囲であれば、反応射出成形時の脱型時間を短縮することができる。
【0032】
また、ウレタン化触媒のうち、ジメチルチンジネオデカノエートの含有量は、後述する自動車内装材中、例えば、0.05〜0.4質量%、好ましくは、0.1〜0.4質量%である。また、ポリオールに対するジメチルチンジネオデカノエートの含有割合は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.14〜1.15質量部、好ましくは、0.29〜1.15質量部である。ジメチルチンジネオデカノエートの含有量(含有割合)が上記した範囲であれば、自動車内装材のフォギング性を低減することができる。
【0033】
さらに、ウレタン化触媒のうち、ジブチルチンジメチルマレエートの含有量は、後述する自動車内装材中、例えば、0.05〜0.6質量%、好ましくは、0.1〜0.6質量%である。また、ポリオールに対するジブチルチンジメチルマレエートの含有割合は、ポリオール100質量部に対して、例えば、0.14〜1.73質量部、好ましくは、0.29〜1.73質量部である。ジブチルチンジメチルマレエートの(含有量)含有割合が上記した範囲であれば、自動車内装材の長期耐熱性を向上させることができる。
【0034】
そして、ポリオール成分を調製するには、まず、上記各成分(つまり、必須成分として、ポリオール、ジメチルチンジネオデカノエートおよびジブチルチンジメチルマレエート)を配合し、例えば、公知の攪拌機により、70〜120℃、好ましくは、80〜110℃で撹拌混合する。次いで、脱気し、例えば、20〜70℃、好ましくは、20〜60℃に冷却する。これにより、ポリオール成分を調製することができる。
【0035】
そして、本発明の自動車内装材の製造方法では、別々に調製もしくは用意された上記イソシアネート成分と、上記ポリオール成分とを反応射出成形する。
自動車内装材は、公知の反応射出成形装置にて成形することができる。なお、公知の反応射出成形装置とは、例えば、イソシアネート成分を供給するための第1供給タンク(1)と、ポリオール成分を供給するための第2供給タンク(2)と、イソシアネート成分およびポリオール成分を混合し、その混合物を金型に射出するためのミキシングヘッド(3)と、自動車内装材用金型(4)とを、少なくとも備えている装置である。
【0036】
具体的には、まず、第1供給タンク(1)からイソシアネート成分を、第2供給タンク(2)からポリオール成分を、ミキシングヘッド(3)にそれぞれ供給する。このとき、イソシアネート成分の原料温度を、例えば、35〜55℃に調整しておく。一方、ポリオール成分の原料温度を、例えば、35〜55℃に調整しておく。また、混合時において、ポリオール成分の水酸基に対するイソシアネート成分のイソシアネート基のモル比を百分率で表わしたインデックス(INDEX)は、例えば、80〜120であり、好ましくは、95〜105に設定される。
【0037】
次いで、ミキシングヘッド(3)で、イソシアネート成分とポリオール成分とを攪拌混合し、自動車内装材用金型(4)に、例えば、100〜2500g/secの射出速度で射出する。また、自動車内装材用金型(4)は、予め、例えば、10〜30MPa(プレス圧)でプレスし、例えば、60〜80℃に加熱しておく。さらに、必要により、成形品の脱型性を向上すべく、自動車内装材用金型(4)の成形面に、例えば、溶剤系あるいは水系のワックスエマルジョンなどの離型剤を塗布しておく。
【0038】
そして、イソシアネート成分およびポリオール成分を自動車内装材用金型(4)に射出後、例えば、1〜3分間、自動車内装材用金型(4)内でイソシアネート成分とポリオール成分とを重合させる。その後、自動車内装材用金型(4)を常温常圧になるまで冷却減圧し、自動車内装材用金型(4)から成形品を脱型させて、自動車内装材を得る。
なお、本発明において、イソシアネート成分およびポリオール成分のいずれか一方または両方に、必要により、紫外線吸収剤、酸化防止剤、多機能安定剤、顔料などの添加剤を添加することができる。これら添加剤は、イソシアネート成分および/またはポリオール成分に予め添加する。好ましくは、ポリオール成分に添加する。
【0039】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、およびニッケルまたはコバルト錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤が挙げられる。また、紫外線吸収剤は、例えば、自動車内装材中に、例えば、0.1〜1.0質量%となる割合、好ましくは、0.3〜0.7質量%となる割合で添加する。
【0040】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系安定剤、アミン系安定剤、リン系安定剤、イオウ安定剤などが挙げられる。酸化防止剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。また、これらのうち、好ましくは、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。また、酸化防止剤は、自動車内装材中に、例えば、0.1〜1.0質量%となる割合、好ましくは、0.3〜0.7質量%となる割合で添加する。
【0041】
多機能安定剤は、例えば、紫外線吸収機能と酸化防止機能の両機能を有する安定剤であって、そのような安定剤として、具体的には、ベンゾトリアゾリル−アルキルビスフェノール化合物などが挙げられる。また、多機能安定剤は、自動車内装材中に、例えば、0.1〜1.0質量%となる割合、好ましくは、0.3〜0.7質量%となる割合で添加する。
【0042】
顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。これらは単独使用または2種類以上併用することができる。また、顔料は、自動車内装材中に、例えば、0.1〜1.0質量%となる割合、好ましくは、1.0〜7.0質量%となる割合で添加する。
さらに、イソシアネート成分および/またはポリオール成分には、その用途に応じて、鎖伸長剤、架橋剤、難燃剤、顔料分散剤(湿潤分散剤)、整泡剤、消泡剤などを添加することもできる。
【0043】
以上のようにして得られる自動車内装材は、長期耐熱性およびフォギング性に優れる。
具体的には、この自動車内装材は、長期耐熱性に関して、例えば、110℃で1000時間耐久試験を行なった後の、JIS K6301(1969)に記載の加硫ゴム試験方法に準拠して測定した硬度(耐久試験後の硬度 Shore−A)が、初期硬度(Shore−A)の85%以上であり、好ましくは、90%以上である。
【0044】
また、この自動車内装材は、フォギング性に関して、例えば、ISO6452の規格に準拠した装置を用い、試験サンプルを100℃に加熱したガラス容器にセットし、その上部開口部に40℃に温調したガラス板をセットして、20時間フォギング試験を実施した後のガラス板の霞度(HAZE)が、例えば、15以下であり、好ましくは、10以下である。
【0045】
このように、本発明の製造方法によれば、長期耐熱性およびフォギング性に優れる自動車内装材を、低温(例えば、60〜75℃)の金型で、脱型性よく成形することができる。
従って、この自動車内装材は、例えば、自動車のダッシュボード、ドアトリム、インストルメントパネルなどの自動車内装材に用いることができる。
【実施例】
【0046】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
<原料>
以下の原料を用いた。
1,3−BIC(1)
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(三井化学ポリウレタン社製 タケネート600)
HDIトリマー(2)
ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー(三井化学ポリウレタン社製 タケネートD170N)
ポリエーテルポリオール(3)
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加重合した後、エチレンオキサイドを付加重合して得られた、平均官能基数3、水酸基価24mgKOH/gのポリエーテルポリオール。
【0047】
なお、プロピレンオキサイドおよびエチレンオキサイドは、グリセリンにプロピレンオキサイド/エチレンオキサイド=86/14の重量比率で、エチレンオキサイドを分子末端に共重合した。
1,4−BD(4)
1,4−ブタンジオール(三菱化学社製 1,4−BG)
紫外線吸収剤(5)
三共ライフテック社製 サノールLS770(ヒンダードアミン系紫外線吸収剤)
酸化防止剤(6)
チバスペシャルティケミカルズ社製 IRGANOX1035(ヒンダードフェノール系酸化防止剤)
多機能安定剤(7)
城北化学工業社製 JAST−500(ベンゾトリアゾール系安定剤)
ウレタン化触媒(8)
ジメチルチンジネオデカノエート(GEシリコーン社製 UL−28)
ウレタン化触媒(9)
ジブチルチンジメチルマレエート(日東化成社製 SCAT−4L)
顔料(10)
カーボンブラック(大日精化社製)
実施例1
(A)イソシアネート成分の調製
反応器に、1,3−BIC(1)70質量部とHDIトリマー(2)30質量部とを仕込み、攪拌混合・脱気した。これにより、イソシアネート成分を得た。
(B)ポリオール成分の調製
反応器に、ポリエーテルポリオール(4)100質量部を仕込み、さらに、紫外線吸収剤(5)0.5質量部と、酸化防止剤(6)0.5質量部と、多機能安定剤(7)0.5質量部とを添加し、90℃で溶解させた。次いで、1,4−BD(4)50質量部と、ウレタン化触媒(8)0.5質量部(成形品中0.17質量%)と、ウレタン化触媒(9)1.5質量部(成形品中0.52質量%)とを添加し、攪拌混合・脱気した。そして、60℃に冷却することにより、ポリオール成分を得た。
(C)成形品の成形
(A)で得られたイソシアネート成分と、(B)で得られたポリオール成分とを、イソシアネート成分/ポリオール成分の混合比率が84.75/100で、自動車内装材用金型に固定されている2成分高圧発泡機のミキシングヘッド内で混合し、ゲートから自動車内装材用金型内に射出し、70秒後に脱型して成形品を得た。イソシアネート成分およびポリオール成分の配合比、INDEXを表1に示す。
【0048】
なお、成形条件は、以下の通りである。また、自動車内装材用金型の成形面には、予め水系ワックスエマルジョンの離型剤を塗布した。
射出速度:、400g/sec
イソシアネート成分原料温度:45℃
ポリオール成分の原料温度:45℃
金型寸法:460×380×1mm
金型温度:70℃
実施例2
ウレタン化触媒(8)を、ポリエーテルポリオール(4)100質量部に対して1.0質量部(成形品中0.35質量%)添加し、ウレタン化触媒(9)を、ポリエーテルポリオール(4)100質量部に対して1.0質量部(成形品中0.35質量%)添加した以外は、実施例1と同様の条件および操作にて、成形品を得た。イソシアネート成分およびポリオール成分の配合比、INDEXを表1に示す。
比較例1
ウレタン化触媒(8)を、ポリエーテルポリオール(4)100質量部に対して2.0質量部(成形品中0.69質量%)用い、ウレタン化触媒(9)を用いなかった以外は、実施例1と同様の条件および操作にて、成形品を得た。イソシアネート成分およびポリオール成分の配合比、INDEXを表1に示す。
比較例2
ウレタン化触媒(9)を、ポリエーテルポリオール(4)100質量部に対して2.0質量部(成形品中0.69質量%)用い、ウレタン化触媒(8)を用いなかった以外は、実施例1と同様の条件および操作にて、成形品を得た。イソシアネート成分およびポリオール成分の配合比、INDEXを表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
物性評価
各実施例および各比較例で得られた成形品(以下、各成形品と略する。)について、以下の方法で物性の評価を行なった。結果を表1に示す。
<硬度(Shore−A)>
JIS K6301(1969)に記載の加硫ゴム試験方法に準拠して、各成形品の試験サンプルの初期硬度(Shore−A)を測定した。次いで、試験サンプルに対して110℃で1000時間耐久試験を行なった後、上記と同様に硬度(Shore−A)を測定した。
<フォギング性>
ISO6452の規格に準拠した装置を用いて、成形品の試験サンプルを100℃に加熱したガラス容器にセットし、その上部開口部に40℃に温調したガラス板をセットして、20時間フォギング試験を実施した。次いで、試験後のガラス板のガラス霞度(HAZE)を、日本電色工業社製 NDH−5000を用いて測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンと、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体とを含有するイソシアネート成分と、
ポリオールと、ジメチルチンジネオデカノエートと、ジブチルチンジメチルマレエートとを含有するポリオール成分と
を反応射出成形することを特徴とする、自動車内装材の製造方法。
【請求項2】
ジメチルチンジネオデカノエートが、0.05〜0.4質量%含有され、ジブチルチンジメチルマレエートが、0.05〜0.6質量%含有される自動車内装材を得ることを特徴とする、請求項1に記載の自動車内装材の製造方法。

【公開番号】特開2009−286991(P2009−286991A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144434(P2008−144434)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】