説明

自動車内装用表皮材料

【課題】 強度及び柔軟性を維持しつつ、ブリードを抑制することができる自動車内装用表皮材料を提供する。
【解決手段】 自動車内装用表皮材料は、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーにトリメリット酸エステルを配合し、ポリマーアロイ化してなる材料により形成される。各成分の配合量は下記の数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値が0を越え20以下となるように設定される。
【数1】


但し、TOAEはトリメリット酸エステル、PVCはポリ塩化ビニル樹脂及びTPUは熱可塑性ポリウレタンエラストマーを表し、各成分の配合量はこれら3成分の合計量を100質量%としたときの値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のドアの内張り材等を構成する表皮を得るための材料として用いられる自動車内装用表皮材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車内装用表皮を形成する場合には、その材料として軟質塩化ビニル樹脂のパウダーを用い、パウダースラッシュ成形法により行われている(例えば、特許文献1を参照)。軟質塩化ビニル樹脂にはジオクチルフタレート(DOP)等の可塑剤が配合されていることから、柔軟性に富み、触感が良く、成形時における脱型性が良好で、低コストであるという利点がある。しかし、最近では自動車内装用表皮に求められる性能が厳しくなり、現状の軟質塩化ビニル樹脂では引張強度や伸び率が低く、さらに高い物性が求められている。加えて、軟質塩化ビニル樹脂に配合される可塑剤のDOPがシックハウス症候群の原因物質になると指摘されている。そのような問題点を解決するため、軟質塩化ビニル樹脂に代えて熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)が用いられるようになってきている(例えば、特許文献2を参照)。さらに、TPUの存在下に塩化ビニル単量体等を重合して得られるグラフト共重合体も知られている(例えば、特許文献3を参照)。
【特許文献1】特開平5−279485号公報(第2頁及び第3頁)
【特許文献2】特開2001−40056号公報(第2頁及び第3頁)
【特許文献3】特公昭60−30688号公報(第1頁及び第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、特許文献2に記載されているような熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、軟質塩化ビニル樹脂に比べると硬いことから、触感が悪く、成形時における脱型性も悪いという問題があった。また、特許文献3に記載されているグラフト共重合体は、製造条件が煩雑であるうえに、柔軟性、硬さ等の調整が容易ではなく、実用には適していなかった。
【0004】
そこで、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーとを、DOP以外の液状可塑剤としてトリメリット酸エステルを用いてポリマーアロイ化してなる材料を用いることが考えられる。その場合、液状可塑剤であるトリメリット酸エステルの配合量が少ないと柔軟性が十分に発現されない傾向を示し、配合量が多いと得られるポリマーアロイ化材料の表面からトリメリット酸エステルが染み出す(ブリード)傾向を示す。従って、自動車内装用表皮材料として硬度、引張強度、伸び等の機械的物性を維持し、ブリードを抑制することが課題となる。
【0005】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、機械的物性を維持しつつ、ブリードを抑制することができる自動車内装用表皮材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の自動車内装用表皮材料は、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーにトリメリット酸エステルを配合し、ポリマーアロイ化してなる材料により形成され、前記各成分の配合量は下記の数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値が0を越え20以下となるように設定されることを特徴とするものである。
【0007】
【数2】

但し、TOAEはトリメリット酸エステル、PVCはポリ塩化ビニル樹脂及びTPUは熱可塑性ポリウレタンエラストマーを表し、各成分の配合量はこれら3成分の合計量を100質量%としたときの値である。
【0008】
請求項2に記載の発明の自動車内装用表皮材料は、請求項1に係る発明において、前記ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びトリメリット酸エステルの合計量を100質量%としたとき、ポリ塩化ビニル樹脂の配合量が15〜65質量%、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量が5〜80質量%及びトリメリット酸エステルの配合量が3〜40質量%であることを特徴とするものである。
【0009】
請求項3に記載の発明の自動車内装用表皮材料は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記ブリード指標値が3〜15であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
請求項1に記載の発明の自動車内装用表皮材料は、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーにトリメリット酸エステルを配合し、ポリマーアロイ化してなる材料により形成されるものである。そして、各成分の配合量は前記の数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値が0を越え20以下となるように設定される。この数式(1)は、トリメリット酸エステルがポリ塩化ビニル樹脂に溶け易い傾向を示し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにはポリ塩化ビニル樹脂に比べて溶け難い傾向を示す点、トリメリット酸エステルの配合量が適正である点及び各成分がバランス良く配合される点等に基づいて定められている。このため、所望するポリマーアロイ化材料の物性に応じ、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーとの配合量を想定し、前記の数式(1)でブリード指標値を算出し、それが0を越え20以下になるようにトリメリット酸エステルの配合量が定められる。このブリード指標値が0を越え20以下になることにより、トリメリット酸エステルのブリードが抑えられる。従って、自動車内装用表皮材料の硬度、引張強度、伸び等の機械的物性を維持しつつ、ブリードを抑制することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明の自動車内装用表皮材料では、ポリ塩化ビニル樹脂の配合量が15〜65質量%、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量が5〜80質量%及びトリメリット酸エステルの配合量が3〜40質量%に設定されている。即ち、ポリ塩化ビニル樹脂の配合量と熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量とが双方の成分の特性を発揮するために適切な範囲に設定され、かつトリメリット酸エステルがブリードしない範囲で配合される。従って、請求項1に係る発明の効果に加え、強度及び柔軟性をバランス良く発揮させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明の自動車内装用表皮材料では、前記ブリード指標値が3〜15に設定されていることから、請求項1又は請求項2に係る発明の効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の自動車内装用表皮材料は、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーにトリメリット酸エステル(液状可塑剤)を配合し、ポリマーアロイ化してなる材料により形成される。
【0014】
ポリ塩化ビニル樹脂は、自動車内装用表皮材料として従来から用いられているものが使用可能である。そのようなポリ塩化ビニル樹脂は、塩化ビニル単量体に必要によりこれと共重合可能な単量体、例えばエチレン、プロピレン、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、アクリロニトリル等を加えて重合又は共重合することによって得られる。重合方法としては、懸濁重合法、乳化重合法等が採用される。
【0015】
得られるポリ塩化ビニル樹脂の平均重合度は1000〜3000程度であり、平均粒子径は通常3μm以下である。平均重合度が1000未満の場合には、一旦加熱を受けた場合に粉体の流動特性や成形品の外観を損なうおそれがある。一方、平均重合度が3000を越える場合には、ポリ塩化ビニル樹脂の粘性が高くなって加工性が著しく低下して好ましくない。また、平均粒子径が3μmを越えると粉体の流動特性が悪くなるため、好ましくない。
【0016】
次に、熱可塑性ポリウレタンエラストマーは、ポリマーポリオールより形成されるソフトセグメントと、ウレタン基(ウレタン結合)より形成されるハードセグメントとから構成されている。例えば、1,4−ブタンジオールとアジピン酸との縮合により両末端にヒドロキシル基を有するアジペート型ポリエステルポリオールと、短鎖ジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)との重付加反応(ウレタン化反応)により生成される熱可塑性ポリウレタンエラストマー等が挙げられる。
【0017】
ポリオールとしては、縮重合型ポリエステルポリオールのほか、ε−カプロラクトン等の環状エステルの開環重合により得られるポリエステルポリオール、環状エーテルの開環重合により得られるポリエーテルポリオール、及びこれらの共重合により得られるポリエーテルエステルポリオール等が用いられる。こられのポリオールに1,4−ブタンジオール等を併用することもできる。ポリオールの数平均分子量は、通常500〜10000であり、500〜4000であることが好ましい。この数平均分子量が500未満の場合には、ソフトセグメントが少なくなり、相対的にハードセグメントが多くなって熱可塑性ポリウレタンエラストマーが硬くなり、感触が悪くなる傾向を示す。一方、数平均分子量が10000を越える場合には、ソフトセグメントが多くなり、相対的にハードセグメントが少なくなって結晶性が低下し、溶融時の粘度変化が小さくなり、成形性が悪化する傾向を示す。
【0018】
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、水添MDI、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等が用いられる。これらのポリイソシアネートのうち、分子構造が対称性を有するHDI、MDI及び水添MDI等が好ましい。また、両末端にイソシアネート基を有するイソシアネート末端プレポリマーを用いることにより、ハードセグメントの水素結合力を高めたり、結晶相を成長させたりすることができる。
【0019】
ポリオール中のヒドロキシル基(OH基)の当量に対するポリイソシアネートのイソシアネート基(NCO基)の当量の比(NCO基/OH基)は、0.95〜1.05であることが好ましい。この比が0.95未満のときには、スラッシュ成形時における成形性は向上するが、得られる表皮材の耐薬品性等の物性が低下する。一方、1.05を越えるときには、アロファネート結合、ビューレット結合等によって架橋度が高くなり過ぎ、成形性が低下する。
【0020】
熱可塑性ポリウレタンエラストマーの原料としては、上記のポリオール及びポリイソシアネートのほかにその他の添加剤を配合することができる。そのような添加剤としては、例えばタルク、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤が挙げられる。無機充填剤を配合することにより、エラストマーの剛性を高めたり、粉末化する場合の粉砕性を向上させることができる。また、その他の添加剤として、樹脂又はゴムを配合することもできる。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂等が挙げられる。ゴムとしては、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合ゴム(SEBS)等が用いられる。
【0021】
次に、液状可塑剤としてのトリメリット酸エステルは、トリメリット酸(1,2,4−ベンゼントリカルボン酸)のエステルであり、通常トリメリット酸のトリアルキルエステルで、そのアルキル基の炭素数が4〜11の化合物をいう。トリメリット酸エステルとして具体的には、トリメリット酸トリブチル、トリメリット酸トリオクチル、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル(TOTM)、トリメリット酸トリイソデシル等が挙げられる。これらのトリメリット酸エステルのうち、トリメリット酸トリ−2−エチルヘキシルが最も代表的である。トリメリット酸エステルは、沸点が高く、常温では液状であり、ポリ塩化ビニル樹脂及び熱可塑性ポリウレタンエラストマーと相溶してポリマーアロイ化してなる材料に可塑性を付与するものである。また、トリメリット酸エステルは、耐熱性、耐寒性、耐溶剤性、耐油性等に優れている。
【0022】
前記ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びトリメリット酸エステルの配合量は、次のような範囲に設定することが好ましい。即ち、それら3成分の合計量を100質量%としたとき、ポリ塩化ビニル樹脂の配合量が15〜65質量%、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量が5〜80質量%及びトリメリット酸エステルの配合量が3〜40質量%であることが好ましい。
【0023】
ポリ塩化ビニル樹脂の配合量が15質量%未満の場合にはポリマーアロイ化材料の硬度を十分に下げることができず、また成形時における脱型性が低下し、65質量%を越える場合にはポリマーアロイ化材料について引張強度等の強度が低下し、伸び率も低下する。熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量が5質量%未満の場合にはポリマーアロイ化材料の強度が落ちる傾向を示し、80質量%を越える場合にはポリマーアロイ化材料が硬くなって触感が低下したり、成形時における脱型性が悪くなったりする。トリメリット酸エステルの配合量が3質量%未満のときにはポリマーアロイ化材料に十分な可塑性が付与されず、40質量%を越えるときにはポリマーアロイ化材料に対する可塑化が過度に行われ、柔軟性が大きくなって強度等の物性が不足する。
【0024】
ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びトリメリット酸エステルの配合量は、液状可塑剤であるトリメリット酸エステルがブリードすることを抑制するために次の数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値が0を越え20以下、好ましくは3〜15となるように設定される。
【0025】
【数3】

但し、TOAEはトリメリット酸エステル、PVCはポリ塩化ビニル樹脂及びTPUは熱可塑性ポリウレタンエラストマーを表し、各成分の配合量はこれら3成分の合計量を100質量%としたときの値である。
【0026】
この数式(1)は、トリメリット酸エステルがポリ塩化ビニル樹脂に溶け易い傾向を示し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーにはポリ塩化ビニル樹脂に比べて溶け難い傾向を示す点、トリメリット酸エステルの配合量が適正である点及び各成分がバランス良く配合される点等の観点に基づいて実験的に定められている。
【0027】
ブリード指標値が20を越えると、トリメリット酸エステルがポリマーアロイ化材料中に存在しきれず、表面に染み出し、自動車内装用表皮材料として不適当となる。このブリード指標値は小さいほどトリメリット酸エステルがブリードしにくくなるが、ポリマーアロイ化材料の可塑性、強度等の物性が低下するため、3〜15の範囲が好ましい。ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びトリメリット酸エステルの各成分の配合量を決定するに当たっては次のような順序で行うことが望ましい。即ち、ポリマーアロイ化材料の物性を想定してポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーとのおよその配合割合を決め、次いで前記数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値でトリメリット酸エステルがブリードしないようにトリメリット酸エステルの配合量を決定することが望ましい。
【0028】
上記のようにして配合量が決定されたポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びトリメリット酸エステルの混合物を溶融、混練してポリマーアロイ化を図ることによりポリマーアロイ化材料、即ち自動車内装用表皮材料が得られる。溶融、混練は通常150〜180℃程度に加熱されることにより行われる。この自動車内装用表皮材料は、粉末状等の形状に賦形される。そして、粉末状の自動車内装用表皮材料を用い、例えばパウダースラッシュ成形法により成形することにより、自動車内装用表皮を有する自動車内装品が製造される。パウダースラッシュ成形法は、自動車内装用表皮材料の粉末(パウダー)を加熱した金型に内に投入し、金型を回転させることにより、金型の内表面に付着したパウダーを溶融させ、その後冷却して表皮を成形する方法である。或いは、前記自動車内装用表皮材料を一旦粉末にすることなく、そのまま成形して表皮を得るようにすることもできる。成形方法としては、射出成形法、押出成形法等も採用される。
【0029】
さて、自動車内装用表皮材料を調製する場合には、ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びトリメリット酸エステルを溶融、混合することにより得られる。自動車内装用表皮材料は通常粉末状に成形される。このとき、前記3成分の配合量は、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーとの物性が相乗的に発現されるように、かつブリード指標値が0を越え20以下になるように決定される。前記ブリード指標値を算出する数式(1)は、ポリ塩化ビニル樹脂の配合量が多い場合でも、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量が多い場合でも、自動車内装用表皮材料から得られる表皮の表面にトリメリット酸エステルがブリードしないように実験結果に基づいて定められている。
【0030】
そして、自動車内装用表皮を製造する際には、前記粉末状の自動車内装用表皮材料を用い、パウダースラッシュ成形法により所定形状に成形される。成形された表皮は、十分な硬度、引張強度、伸び等を有すると共に、表皮の表面へのトリメリット酸エステルのブリードが抑えられる。
【0031】
以上の実施形態によって発揮される効果について、以下にまとめて記載する。
・ 実施形態における自動車内装用表皮材料は、ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーにトリメリット酸エステルを配合し、ポリマーアロイ化してなる材料により形成され、前記各成分の配合量は前記数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値が0を越え20以下となるように設定される。従って、ポリマーアロイ化材料の硬度、引張強度、伸び等の機械的物性を維持しつつ、トリメリット酸エステルのブリードを抑制することができる。
【0032】
・ また、ポリ塩化ビニル樹脂の配合量を15〜65質量%、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量を5〜80質量%及びトリメリット酸エステルの配合量を3〜40質量%に設定することにより、ポリマーアロイ化材料の機械的物性をバランス良く発揮させることができる。
【0033】
・ さらに、前記ブリード指標値を3〜15に設定することにより、トリメリット酸エステルのブリード抑制効果を向上させることができる。
【実施例】
【0034】
以下に、実施例及び比較例を挙げ、前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜7及び比較例1〜6)
自動車内装用表皮材料の原料として、ポリ塩化ビニル樹脂〔住友化学工業(株)製、スミリット、平均分子量約1000〕、熱可塑性ポリウレタンエラストマー〔ディーアイシーバイエルポリマー(株)製、デスモパン〕及びトリメリット酸エステルを表1に示す量だけ配合した。表1において、ポリ塩化ビニル樹脂をPVC、熱可塑性ポリウレタンをTPU、トリメリット酸エステルをTOTMで表した。前記混合物を押出装置に供給し、160〜170℃に加熱して溶融混練し、ポリマーアロイ化した。
【0035】
そして、ポリマーアロイ化した材料について、その表面からのトリメリット酸エステルのブリードの有無を目視にて観察し、ブリードが全く認められない場合を◎、ブリードが殆ど認められず、良好である場合を○、ブリードが認められ、不良である場合を×として評価した。その結果を表1に示した。
(比較例7及び8)
比較例7は従来例を示し、トリメリット酸エステルが37.5質量%配合されたポリ塩化ビニル樹脂を用い、比較例8も従来例を示し、熱可塑性ポリウレタンエラストマーのみを用いた。
【0036】
そして、実施例3、4及び比較例1、2並びに比較例7、8で得られた材料について、硬度(JIS A硬度)、引張強度(MPa)及び伸び率(%)を次の方法で測定し、それらの結果を表2に示した。
【0037】
硬度(JIS A硬度): JIS K6301に準じて測定した。
引張強度(MPa): JIS K6400に準じて測定した。
伸び率(%): JIS K6400に準じて測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

表1に示したように、実施例1〜7ではいずれも前記数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値が0を越え20以下であることから、トリメリット酸エステルについてブリードの発生は認められなかった。特に、実施例1〜3及び実施例6、7ではブリード指標値が3〜15の範囲にあることから、ブリードの発生は全く認められなかった。また、表2に示したように、実施例3及び4について、硬度、引張強度及び伸び率はいずれも良好な値を示した。
【0040】
これに対して、表1に示したように、比較例1〜6では上記のブリード指標値が20を越えていることから、全てブリードの発生が認められた。また、表2に示したように、比較例1及び2については、硬度が高い傾向を示した。さらに、比較例7のトリメリット酸エステルを含むポリ塩化ビニル樹脂の場合には、引張強度及び伸び率が低過ぎる結果を示し、比較例8の熱可塑性ポリウレタンエラストマーの場合には、硬度が高過ぎる結果を示した。
【0041】
尚、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 自動車内装用表皮材料には、例えば耐水性を向上させるためにポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、エチレン−α−オレフィン共重合ゴム、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合ゴム等のゴム等を配合することも可能である。
【0042】
・ リン酸エステル等の従来の可塑剤を、トリメリット酸エステルと共に配合することもできる。
・ 実施形態の自動車内装用表皮材料をグローブボックス、ピラーガーニッシュ、インストルメントパネル等の表皮を形成するための材料として用いることができる。
【0043】
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記トリメリット酸エステルは、トリメリット酸のトリアルキルエステルで、そのアルキル基の炭素数が4〜11の化合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車内装用表皮材料。このように構成した場合、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果を確実に発揮させることができる。
【0044】
・ パウダースラッシュ成形用として用いられることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車内装用表皮材料。このように構成した場合、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、自動車内装用表皮を容易に成形することができる。
【0045】
・ 前記ポリマーアロイ化は加熱溶融により行われ、その後粉末化されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の自動車内装用表皮材料。このように構成した場合、請求項1から請求項3のいずれかに係る発明の効果に加え、自動車内装用表皮材料をパウダースラッシュ成形用として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル樹脂と熱可塑性ポリウレタンエラストマーにトリメリット酸エステルを配合し、ポリマーアロイ化してなる材料により形成され、前記各成分の配合量は下記の数式(1)に基づいて算出されるブリード指標値が0を越え20以下となるように設定されることを特徴とする自動車内装用表皮材料。
【数1】

但し、TOAEはトリメリット酸エステル、PVCはポリ塩化ビニル樹脂及びTPUは熱可塑性ポリウレタンエラストマーを表し、各成分の配合量はこれら3成分の合計量を100質量%としたときの値である。
【請求項2】
前記ポリ塩化ビニル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー及びトリメリット酸エステルの合計量を100質量%としたとき、ポリ塩化ビニル樹脂の配合量が15〜65質量%、熱可塑性ポリウレタンエラストマーの配合量が5〜80質量%及びトリメリット酸エステルの配合量が3〜40質量%であることを特徴とする請求項1に記載の自動車内装用表皮材料。
【請求項3】
前記ブリード指標値が3〜15であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車内装用表皮材料。

【公開番号】特開2006−124509(P2006−124509A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314651(P2004−314651)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】