説明

自動車燃料タンク

【解決手段】 本発明は一体には成型されていない少なくとも1つの給油孔部4を有する熱可塑性樹脂の自動車燃料タンク1に関し、該給油孔部4は当該燃料タンク1に液密に接続され、該給油孔部4は当該燃料タンク1に設けられた開口部5に挿入され、該開口部5内で燃料タンク1についての周縁部外側に密閉手段11により密閉される。径方向に作用する密閉と共に前記給油孔部4はタンク壁2に対して軸方向に挟持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一体には成型されていない少なくとも1つの給油孔部(filler neck)を有する熱可塑性樹脂の自動車燃料タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂の自動車燃料タンクは、比較的に複雑な外郭をもった仮想的にはどのような望む形状にも形成できることで、金属製タンクと比べても利点を有する。このようなタンクは、外的な機構的影響、例えば衝突の事象は一般的にはプラスチックタンクの継続的な変形には至らないことから、比較的に丈夫である。さらに、このような自動車燃料タンクは、自動車における仮想的にはどのような設置状況にも対応できる。プラスチック製の知られたワンピース若しくは単一部品の燃料タンクの場合、給油孔部と空気導入出ラインは少なくとも部分的には1つの部材で成型される。このようなタンクを押し出しブロー成形で形成する際、単純に1つ若しくはそれ以上の平行な管をタンクに成型することは比較的率直になされるものである。給油孔部に加えて、1つの工程で、例えば 気泡ユニット等で空気導出ラインを成型することも可能である。
【0003】
自動車の充填利用できる空間は、常にこのようなタンクを自動車に搭載させるものとはならない。特に、もし燃料タンクの給油口が比較的にタンクの内部から遠くに配設された場合では、取り付け部品を単純化するために、一体に成型される給油孔部はしばしば省かれてしまう。燃料タンクが自動車に嵌合したときのみ、給油孔部が燃料タンクに接続される。通常、比較的に大きな接続取り付け部品がこの目的のために燃料タンクに配され、前記取り付け部品上に弾性接続素子が挟みこむようにされる。この接続素子は、例えば、クリップを使用して燃料タンクに気密若しくは液密に固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような接続は、液体の炭化水素が不可抗力的に放出されたときなどの衝撃に誘因される力の影響により外れてしまうことがある。燃料タンクには一体となって接続していない給油孔部は、この点において利点があるとはならない。さらに給油孔部と燃料タンクの間の後から形成された連結を密閉することは問題が多発する。燃料タンクに設けられる接続取り付け具や固着するように設置される給油孔部へ、しばしば弾性的なホースは挟持される。液体は、特にエタノールを含む燃料との関係で、問題とされる。この場合、エタノールを含有する燃料の高い蒸気圧のおかげで、接続点での完全な密閉を確かなものとすることが或る状況下ではできないでいる。
【0005】
それ故、本発明の目的は一体には成型されていない少なくとも1つの給油孔部を有する熱可塑性樹脂の自動車燃料タンクを提供することであり、該自動車燃料タンクは前述の不利益をもたらさず、特に高蒸気圧の燃料について潜在的な放出経路を最小限に止めるように給油孔部を接続させることを可能とさせる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従い、一体には成型されていない少なくとも1つの給油孔部を有する熱可塑性樹脂の自動車燃料タンクによって目的が達成され、該給油孔部は当該燃料タンクに液密に接続され、該給油孔部は当該燃料タンクに設けられた開口部に挿入され、該開口部内で前記給油孔周縁部外側に密閉手段により密閉される。
【0007】
本発明による給油孔部が燃料タンク内に導入され、該燃料タンク若しくはそこに配されたインサートに関して径方向で密閉され、その密閉が燃料タンクの内側に非常に大きく配設されるという効果を有することに本発明は集約される。このような方法で、給油孔部の接続領域での燃料タンクからの液体若しくは気体状の炭化水素の移動は確実に防止される。
【0008】
給油孔部は利便性良くタンク壁に径方向に挟持される。給油孔部の密閉と固定が互いに機能上分離されることは特に有益であり、特に効果的な密閉を確実なものとする。
【0009】
これに対して、給油孔部と燃料タンクの既知の接続の場合、密閉と固定の機能的な分離はなく、或る状況では給油孔部にかかる力にシールが耐える必要が生じて、漏れへとつながる。本発明によれば、密閉手段は完全に取り付けのための力とは独立しており、密閉機能は、機械的な力に接することによっても弱まることはない。
【0010】
本発明による燃料タンクの1つの変形例においては、給油孔部は少なくとも周縁フランジ状のカラーを当該燃料タンクの壁に接続する領域に有し、前記カラーはユニオン継手によってタンクの壁に対して径方向に固定される。
【0011】
本発明による燃料タンクの更なる利便な変形例においては、タンク壁の開口部は接続インサートを有し、該接続インサートは前記タンク壁に溶着され、燃料タンクの径方向内側で前記給油孔部が該接続インサートに関して密閉する。
【0012】
該燃料タンク内に突出する領域において、接続インサートは少なくとも部分的には、液体若しくは気体の炭化水素の存在下で膨張することのない材料から構成しても良い。このようにすることで、接続インサートの形状は安定を保ち、耐性の高い密閉を確実なものとする。
【0013】
燃料タンク内に突出する領域において、例えば、前記接続インサートは、液体若しくは炭化水素ガスに耐性を有する材料からなる周縁バンドを具備することができる。例えばPOM(polyoxymethylene)、PA(polyamide)、或いはABS(acrylonitrile butadiene styrene)のようなプラスチックがこの目的に適合する。このようなバンドとしては、非膨張プラスチックや金属のどちらかで形成しても良い。
【0014】
本発明による燃料タンクの1つの代替的な変形例においては、前記開口部は前記タンク壁の内側或いは外側への突出部の中に設けられる。内側或いは外側への突出部は、液体若しくは気体の炭化水素の存在下で膨張することのない材料からなるバンド若しくはリングによって周回される。
【0015】
前記タンク壁と前記給油孔部は利便性良く少なくとも1層の液体若しくは炭化水素ガスに対するバリアー層を備えた熱可塑性樹脂の多層共押出構造からなる。
【0016】
本発明は図面に描かれ例示的な複数の実施形態を参照しながら以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1a】接続領域に挿入した給油孔部と燃料タンクの壁の断面を示す。
【図1b】接続領域に挿入した給油孔部と燃料タンクの壁の断面を示す。
【図2】本発明の第2の例示的な実施形態の図1aおよび図1bに対応した図を示す。
【図3】本発明の第3の例示的な実施形態の図である。
【図4】本発明の第4の例示的な実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の燃料タンク1は6層若しくは7層の共押出としての熱可塑性樹脂からの既知の方法によるブロー成形により形成される。簡単のため、燃料タンク1の全部は示していない。図には、タンク壁2のみ示している。押出ブロー成形された燃料タンク1の正確な層構造も示していない。図面は単に液体若しくは気体の炭化水素に対するバリアー層3を示している。
【0019】
燃料タンクは例えばチューブ押出物からの押出ブロー成形される。代替的に、未だ熱いうちに巻き取り状若しくは板状の押出物を成型しても良い。最後に、本発明の燃料タンクは熱成形により板状の半完成した製品から得られるようにしても良い。
【0020】
同様に熱可塑性述からなる給油孔部4を配設するために、タンク壁2は開口部5を有し、開口部は例えば円形の孔を切削することで得られる。
【0021】
給油孔部4はその端部だけ示され、燃料タンク1に接続される。
【0022】
本発明の第1の例示的な実施形態においては、接続インサート6はタンク壁2の開口部5の内部に挿入される。この接続インサート6は同様に押出ブロー成形により形成される。好適な例示的な実施形態においては、接続インサート6はブロー成形時に生ずる廃材パリソンから圧縮成形で形成される。接続インサート6の層構造はそれ故にタンク壁2のものと対応したものとなる。
【0023】
接続インサート6には周縁フランジ7が配され、該周縁フランジ7は開口部5の周囲に配されるタンク壁2のカラー8に溶着される。これは接続インサート6のバリヤー層3と他方タンク壁2のバリヤー層3が互いに垂直に延長されるようになされる。
【0024】
接続インサート6は、タンクの内部9に一端が突出するものとされ、給油孔部4の、そこで密閉される端部に配設される。接続インサート6に囲まれた端部で、給油孔部4は1つ若しくはそれ以上の周縁溝10を備え、それぞれの周縁溝10はオーリング(O-ring)シール11を収容する。
【0025】
給油孔部4は同様に周縁カラー12を燃料タンク1に接続される領域で有しており、該周縁カラー12はストッパーとしての接続インサート6のフランジ7に対して係止される。接続インサート6のフランジ7の下には、螺子リング13が配設され、該螺子リング13は単体若しくは多数体構造からなり、ユニオンナット14と相互に作用する。ユニオンナット14は給油孔部4の周縁カラー12に上に係合する。ユニオンナット14は内側螺子部を有し、螺子リング13と相互作用する。ユニオンナット14は、フランジ7の下側に係止され、給油孔部4をタンク壁2に対して(給油孔部の長手軸について)径方向に挟持させることを可能とする。
【0026】
図1aは1つだけのオーリングシール11を備えた給油孔部の変形例を示し、図1bは2つのオーリングシール11が軸方向に並んで配設される給油孔部4の変形例を示す。
【0027】
上述のように、接続インサート6は、液体若しくは気体の炭化水素の存在下で膨張しうる熱可塑性樹脂からなることから、非膨張性の材料からなる周縁バンド15を具備する。このバンド15は、例えば、金属若しくは非膨張性の樹脂からなる。これは給油孔部4が長手軸についての横方向への伸長することを防止し、オーリングシール11によってもたらされる密閉を常に確実なものとさせる。
【0028】
図2および図3に示す例示的な実施形態においては、図1に描かれた例示的な実施形態の部品と機能的に対応する部品については同じ参照番号を付与している。
【0029】
図2は燃料タンク1の変形例を示し、その中でタンク壁2は外側突出部15を有する。図1a、1bに示した例示的な実施形態のように、タンク壁2からの外側突出部15内で給油孔部4は開口部5内でオーリングシール11によって密閉される。外側突出部15の外側周縁には、螺子リング13が同様に配され、外側突出部15の溝内に配される。番号14で指定されるユニオンナットは、その内側螺子部で螺子リング13と相互に作用し、該ユニオンナット14によって給油孔部4は径方向に固定され、該ユニオンナット14は給油孔部4の周縁カラー8の周囲に係合する。外側突出部15は、ユニオンナット14が周囲に係合する形状を変えないようにする。
【0030】
図3に示す例示的な実施形態においては、タンク壁2の内側突出部16内に開口部5が形成される。或いは、図3に示される構成は実質的に図2に示される構成に対応するが、螺子リング13はタンク壁2に溶着される。
【0031】
タンクの内部9にクランピングリング17によって内側突出部16が囲まれ、クランピングリング17は内側突出部16が、炭化水素の作用のおかげで膨張する結果、径方向に伸長することを防止する。
【0032】
さらに、図3に示す例示的な実施形態においては、給油孔部4は小径の突出部18を具備し、該突出部18は周縁ベベル段差19を形成する。給油孔部4が肩部20に対して段差19により係止されるように、内側突出部16の周縁肩部20に対して段差19が設けられる。
【0033】
本発明による燃料タンク1のさらなる変形例が図4に示される。タンク壁2の開口部5は、周縁フランジ型リング21の形状を有し、フランジ状リング21の底部22は、フランジ状リング21の厚みが開口部5から外方向に(径方向に)減るように、外側に向かってベベル状とされたタンク壁2に面する。
【0034】
給油孔部4のカラー12は、フランジ状リング21の外径に応じた外径を有する。カラー12の上部23は同様に傾斜され、フランジ状リング21とその上に置かれる給油孔部4のカラー12が一緒に合わされたときに断面で台形状を形成するように、径の外側方向に斜面をなす。給油孔部4はクランピングリング24によってフランジ状リング21上に支持され、クランピングリング24は断面台形の周縁溝25を有し、該周縁溝25はフランジ状リング21の底部22とカラー12の上部23に亘って係合する。クランピングリング24は1部品もしくは実は2部品の構成とすることができる。溝25の深さと外形は周縁方向の挟持がフランジ状リング21とカラー12の間に表面圧力を与え、さらに部品の軸方向の挟持もされるような次元とされる。
【0035】
上述の例示的な実施形態のように、密閉は例えばオーリングシール11から得られ、該オーリングシール11は給油孔部4の周縁溝10に埋め込まれる。
【符号の説明】
【0036】
1 燃料タンク
2 タンク壁
3 バリヤー層
4 給油孔部
5 開口部
6 接続インサート
7 フランジ
8 カラー
9 タンクの内部
10 溝
11 オーリングシール
12 カラー
13 螺子リング
14 ユニオンナット
15 外側突出部
16 内側突出部
17 クランピングリング
18 突出部
19 段差
20 肩部
21 フランジ状リング
22 フランジ状リングの底部
23 カラーの上部
24 クランピングリング
25 溝
【図1A−1B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一体には成型されていない少なくとも1つの給油孔部を有する熱可塑性樹脂の自動車燃料タンクであって、前記給油孔部は当該燃料タンクに液密に接続され、前記給油孔部は、当該燃料タンクに設けられた開口部に挿入され、該開口部内で前記給油孔周縁部外側に密閉手段により密閉されることを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項2】
請求項1記載の自動車燃料タンクであって、前記給油孔部はタンク壁に対して径方向で挟持することを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項3】
請求項1または2記載の自動車燃料タンクであって、前記給油孔部の密閉と固着は機能的に別個であることを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の自動車燃料タンクであって、前記給油孔部は、少なくとも周縁フランジ状のカラーを当該燃料タンクの壁に接続する領域に有し、前記カラーはユニオン継手によってタンクの壁に対して径方向に固定されることを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の自動車燃料タンクであって、前記タンク壁の開口部は接続インサートを有し、該接続インサートは前記タンク壁に溶着され、燃料タンクの径方向内側で前記給油孔部が該接続インサートに関して密閉することを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項6】
請求項5記載の自動車燃料タンクであって、当該燃料タンク内に突出する領域において前記接続インサートは少なくとも部分的には、液体若しくは気体の炭化水素の存在下で膨張することのない材料からなることを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項7】
請求項5記載の自動車燃料タンクであって、当該燃料タンク内に突出する領域において前記接続インサートは、液体若しくは炭化水素ガスに耐性を有する材料からなる周縁バンドを具備することを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の自動車燃料タンクであって、前記開口部は前記タンク壁の内側或いは外側への突出部の中に設けられることを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項9】
請求項8記載の自動車燃料タンクであって、前記タンク壁の内側或いは外側への突出部は、液体若しくは気体の炭化水素の存在下で膨張することのない材料からなるバンド若しくはリングによって周回されることを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1つに記載の自動車燃料タンクであって、前記タンク壁と前記給油孔部は少なくとも1層の液体若しくは炭化水素ガスに対するバリア層を備えた熱可塑性樹脂の多層共押出構造からなることを特徴とする自動車燃料タンク。
【請求項11】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の自動車燃料タンクであって、燃料タンクに接続する領域において、前記前記給油孔部は周縁カラーを有し、該周縁カラーはクランプリングによって当該燃料タンクのフランジ型リングに固定されることを特徴とする自動車燃料タンク。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−529820(P2011−529820A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521445(P2011−521445)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004348
【国際公開番号】WO2010/015295
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(510169365)コーテックス テクストロン ジーエムビーエイチ アンド シーオー ケージー (12)
【Fターム(参考)】