説明

自動車用オーナメント

【課題】上下逆様の誤組付けを回避するとともに、余分な位置決め孔、或いは位置決め用ボスを不要とする自動車用オーナメントを提供すること。
【解決手段】貨物用自動車(100)のキャブ(20)に取り付けられている自動車用オーナメントにおいて、キャブ(20)正面に取り付けるために4つのクリップ(61〜64)を有しており、該4つのクリップ(61〜64)は水平方向の中心線(7)の上下方向に間隔を隔てて且つ水平方向の中心線(7)について線対称な垂直方向位置に2対配置されており、4つのクリップ(61〜64)はオーナメント(1)の周方向について概略等間隔に配置されており、上方の1対のクリップ(61,62)の中心点間の距離(L1+L2)と下方の1対のクリップ(63,64)の中心間の距離(L3+L4)とは相違している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用オーナメントの特に取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、自動車の先端部近傍、具体的にはフロントリッドやボンネット先端上部にはその自動車を製造した会社のトップマークとしてのエンブレムが取り付けられている。
【0003】
エンブレムには当然上下がある。しかし、エンブレムのデザインによっては、上下対称に近いもの、或いはエンブレムの中心点回りに点対称に近いものもある。
その様に上下が対称に近いが、上下で微妙にデザインが異なる場合で、本来の上下位置を逆に取り付けられてしまうようなことがあれば、エンブレムが製造会社の顔を表しているので大変由々しき事態である。
【0004】
そのような問題を回避する方法として、例えば、エンブレムの所定の位置にエンブレム自身の取付面よりも突出する様にボスを形成し、取り付けられる車体側には、それに対応する位置にボスを挿通させる孔を開け、その孔にエンブレムのボスを挿通させることで、正規の姿勢でエンブレムを取り付ける方法もある。
しかしその方法では、車体側に余分な孔を開けることとなり作業工数も増えてコストを押し上げてしまうこととなる。
【0005】
その他の従来技術としては、例えば、自動車のラジエータグリルに設けられたエンブレム取付用台座にエンブレムを取り付ける技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0006】
しかし、当該技術はエンブレムのガタ付きの防止を目的とするものであり、上述した問題点を解消するものではない。
【特許文献1】特開2001−301540号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、上下逆様の誤組付けを回避するとともに、余分な位置決め孔、或いは位置決め用ボスを不要とする自動車用オーナメントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動車用エンブレムは、貨物用自動車(100)のキャブ(20)に取り付けられている自動車用オーナメント(1)において、キャブ(20)正面に取り付けるために4つのクリップ(61〜64)を有しており、該4つのクリップ(61〜64)は水平方向の中心線(7)の上下方向に間隔を隔てて且つ水平方向の中心線(7)について線対称な垂直方向位置に2対配置されており、4つのクリップ(61〜64)はオーナメント(1)の周方向について概略等間隔に配置されており、上方の1対のクリップ(61,62)の中心点間の距離(L1+L2)と下方の1対のクリップ(63,64)の中心間の距離(L3+L4)とは相違していることを特徴としている(請求項1)。
【0009】
上方の1対のクリップ(61,62)の中心点間の距離(L1+L2)と、下方の1対のクリップ(63,64)の中心点間の距離(L3+L4)との相違量は、オーナメントを上下逆に取り付けた場合に、前記4つのクリップがキャブパネルに形成されたクリップ受入箇所に嵌合出来なくなる量である様に設定されている(請求項2)。
【0010】
上方の1対のクリップ(61,62)の中心点間の距離(L1+L2)と、下方の1対のクリップ(63,64)の中心点間の距離(L3+L4)との相違量は、キャブ(20)正面に取り付けた後にオーナメント(1)がガタつかない量であるように設定されている(請求項3)。
【発明の効果】
【0011】
上述の本発明の自動車用オーナメント(1)によれば、キャブ正面に取り付けるために4つのクリップ(61〜64)を有しており、該4つのクリップ(61〜64)は水平方向の中心線(7)の上下方向に間隔を隔てて且つ水平方向の中心線(7)について線対称な垂直方向位置に2対(61と62及び63と64)配置されており、4つのクリップ(61〜64)はオーナメント(1)の周方向について概略等間隔に配置されており、上方の1対のクリップ(61,62)の中心点間の距離(L1+L2)と下方の1対のクリップ(63,64)の中心間の距離(L3+L4)とは相違する様に構成されており、その相違量は、オーナメント(1)を上下逆に取り付けた場合に、前記4つのクリップ(61〜64)がキャブパネルに形成されたクリップ受入箇所に嵌合出来なくなる様に設定されているので、上下逆様の誤組付けは回避出来る。
【0012】
オーナメント(1)には位置決め用ボスは形成されていないので、キャブパネルには、余分な位置決め孔を設ける必要もなく、工数の増加及びそれに伴うコスト上昇を回避出来る。
【0013】
上方の1対のクリップ(61,62)の中心点間の距離(L1+L2)と、下方の1対のクリップ(63,64)の中心点間の距離(L3+L4)との相違量は、キャブ(20)正面に取り付けた後にオーナメント(1)がガタつかない量であるように設定されているため、取付後のガタツキは発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
先ず、図1、図2及び図5を参照して、本発明の実施形態の第1実施例を説明する。
【0016】
図1に正面図をして示した第1実施例のオーナメント1は、図5に示すように、例えば、キャブオーバ型トラック100のキャブ20前面のフロントグリル30の桟部40の略中央に取り付けられる。
【0017】
オーナメント1は、図1において、輪郭が楕円で、外縁リブ2とその外縁リブと間隔を置いて楕円を成す内側リブ3と所謂「キャラクタライン」であるデザイン模様4とそれ以外の薄肉の板状部5と、前記外縁リブ2と内側リブ3との間の領域23に配置された4本のクリップ6(図2での符号)とから構成されている。
【0018】
なお、図2ではクリップを符号6として示しているが、図1では、各クリップの位置関係を特定するために第1のクリップ61、第2のクリップ62、第3のクリップ63、第4のクリップ64と異なる符号を付している。
【0019】
ここで、各クリップ61〜64の位置を特定するために、仮想の水平方向の中心線を7、仮想の垂直方向の中心線を8とする。
【0020】
対を成す第1のクリップ61及び第2のクリップ62の夫々の中心点はともに水平方向の中心線7から上方に距離H1隔たった場所に位置している。
【0021】
また、第1のクリップ61の中心点と第2のクリップ62の中心点とは垂直方向の中心線8から左右に夫々距離L1、L2隔たった場所に位置している。
そしてL1とL2の値は同じである。即ち、第1の実施例においては、第1のクリップ61と第2のクリップ62とは垂直方向の中心線8に対して、左右対称の位置にある。
【0022】
一方、対を成す第3のクリップ63及び第4のクリップ64の夫々の中心点はともに水平方向の中心線7から下方に距離H2隔たった場所に位置している。
【0023】
また、第3のクリップ63の中心点と第4のクリップ64の中心点とは垂直方向の中心線8から左右に夫々距離L3、L4隔たった場所に位置している。
そしてL3とL4の値は同じである。即ち、第1の実施例においては、第3のクリップ63と第4のクリップ64とは垂直方向の中心線8に対して、左右対称の位置にある。
【0024】
ここで、前記H1の値とこのH2の値とは同じである。
即ち、対を成す第1のクリップ61及び第2のクリップ62は対を成す第3のクリップ63及び第4のクリップ64と水平方向の中心線7に対して、同じ距離だけ離れている。
【0025】
第1のクリップ61と第2のクリップ62の中心間距離、即ち前記L1とL2の和の値は、第3のクリップ63と第4のクリップ64の中心間距離、即ち前記L3とL4の和の値と僅かに相違する様に構成されている。
図示の例では、第1のクリップ61と第2のクリップ62の中心間距離(L1+L2)の方が、第3のクリップ63と第4のクリップ64の中心間距離(L3+L4)よりも長い例であるが、これとは反対に、1のクリップ61と第2のクリップ62の中心間距離(L1+L2)を、第3のクリップ63と第4のクリップ64の中心間距離(L3+L4)よりも短く設定してもよい。
【0026】
ここで、僅かな相違量としては、オーナメント1を逆様にキャブに取り付けようとした場合に、前記4つのクリップ61〜64がキャブ正面に形成された図示しないクリップ受入孔に勘合できなくなる限界の量である。
【0027】
ここで僅かな相違量としては、オーナメント1をキャブに取り付けた後に、オーナメントがガタつかない限界の量である。
【0028】
数値の例としては、例えば、L1+L2の値とL3+L4の値の差は4mm程度であることが好ましい。
【0029】
図2は、鋼製、或いは樹脂製のクリップ6が樹脂製のオーナメント1本体に一体に埋め込まれて形成された断面を示している。クリップ6は軸部6aと先端部6bと抜け止め部材6cとで構成され、例えば、先端部6bが図示しないキャブパネルに穿孔された受入孔に押込まれて挿通した後、先端部6bが径方向に拡張して、パネルからの逸脱が防止されるように構成されている。
【0030】
次に第1の実施例に対する変形例を説明する。
【0031】
図1の第1の実施例は、上方の1対のクリップの中心間距離と下方1対のクリップの中心間距離は、異なってはいるが、垂直方向の中心線8に対しては対称の位置(左右対称の位置)であった。
【0032】
それに対して、変形例では、上方の1対のクリップ、即ち第1のクリップ61と第2のクリップ62とは左右対称であるが、下方の1対のクリップ、即ち第3のクリップ63と第4のクリップ64は左右対称の位置にはない。
【0033】
第4のクリップ64は、水平方向の中心線7に対して、第2のクリップ62と上下対称の位置にある。一方、第3のクリップ63の左右方向位置は、図示の例では、第1のクリップ61の位置に対して、僅かに垂直方向の中心線8寄りに設けた実施例である。
【0034】
尚、第3のクリップ63の左右方向位置を、第1のクリップ61の位置に対して、僅かに垂直方向の中心線8から離隔する方向に設けることも出来る。
【0035】
更に、下方の1対のクリップ、即ち第3のクリップ63と第4のクリップ64とを左右対称とし、第2のクリップ62を水平方向の中心線7に対して、第4のクリップ64と上下対称の位置とし、一方、第1のクリップ61の左右方向位置を、第3のクリップ63の位置に対して、僅かに垂直方向の中心線8寄り、或いは中心線から離隔する位置に設けることも可能である。
【0036】
前記外縁リブ2と内側リブ3との間の領域23に配置された4本のクリップ61〜64において、隣り合うクリップ間の距離(ピッチ)は均等に近づけることが好ましい。
【0037】
係る構成の実施形態のオーナメント1によれば、上下逆様の誤組付けを回避出来る。
【0038】
オーナメント1には位置決め用ボスは形成されていないので、キャブパネルには、余分な位置決め孔を設ける必要もなく、工数の増加及びそれに伴うコスト上昇を回避出来る。
【0039】
前記外縁リブ2と内側リブとの間の領域に配置された4本のクリップ61〜64において、隣り合うクリップ間の距離(ピッチ)は均等に近づける様に構成することによって、オーナメント1をキャブパネルに取り付けた際に変形や、それに伴うガタツキを生じることは無い。
【0040】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態の一実施例を示した正面図。
【図2】本発明の実施形態のクリップ位置での断面を示した部分断面図。
【図3】本発明の実施形態の変形例を示した正面図。
【図4】本発明の実施形態のオーナメントを装着したキャブオーバ側トラックの前面図。
【符号の説明】
【0042】
1・・・オーナメント
2・・・外縁部
3・・・内側のリブ
4・・・デザイン模様
5・・・薄肉の板状部
6・・・垂直方向の中心線
6・・・クリップ
6a・・・クリップ軸部
6b・・・クリップ先端部
6c・・・クリップ抜け防止部材
7・・・水平方向の中心線
8・・・垂直方向の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物用自動車のキャブに取り付けられている自動車用オーナメントにおいて、キャブ正面に取り付けるために4つのクリップを有しており、該4つのクリップは水平方向の中心線の上下方向に間隔を隔てて且つ水平方向の中心線について線対称な垂直方向位置に2対配置されており、4つのクリップはオーナメントの周方向について概略等間隔に配置されており、上方の1対のクリップの中心点間の距離と下方の1対のクリップの中心間の距離とは相違していることを特徴とする自動車用オーナメント。
【請求項2】
上方の1対のクリップの中心点間の距離と、下方の1対のクリップの中心点間の距離との相違量は、オーナメントを上下逆に取り付けた場合に、前記4つのクリップがキャブパネルに形成されたクリップ受入箇所に嵌合出来なくなる量である様に設定されている請求項1の自動車用オーナメント。
【請求項3】
上方の1対のクリップの中心点間の距離と、下方の1対のクリップの中心点間の距離との相違量は、キャブ正面に取り付けた後にオーナメントがガタつかない量であるように設定されている請求項1、2の何れかの自動車用オーナメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−130954(P2006−130954A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−319061(P2004−319061)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】