説明

自動車用シートパッド成形用金型の製造方法及び自動車用シートパッドの製造方法

【課題】製造が迅速かつ容易に行え、コスト的にも優れる自動車用シートパッド成形用金型の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、上面が開放された略矩形箱型の下型と、該下型の開口を覆うように配置される上型とで構成される自動車用シートパッド成形用金型の製造方法であって、上記下型の側壁内面の少なくとも一部にアンダーカット部を有する場合に、該シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成し、該金型パーツデータに基づいて、各金型パーツを個別に作製した後、得られた各金型パーツを接合して目的金型とすることを特徴とする自動車用シートパッド成形用金型の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟質ポリウレタンフォーム等の合成樹脂からなる自動車用シートパッド成形用金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質ポリウレタンフォーム等の合成樹脂からなる発泡成形品は、自動車用シート、マットレス、椅子などのクッション用途をはじめ極めて幅広い分野で用いられている。このような中で、近年では消費者のニーズも多様なものとなり、このニーズに迅速かつ細やかに対応することが重要となってきている。それに伴って製品形状も多種多様で複雑なものとなり、更にその改良やモデルチェンジ等も頻繁に行われることから、製品寿命が短くなりつつある。そのため、製品の開発期間が長くなり過ぎた場合には、多大な開発コストがかかる上、製品の市場投入の機会を逸してしまうこともある。
【0003】
上記の合成樹脂発泡成形品を効率よく得るには、通常、内部に製品形状のキャビティ(成形空間部)が形成された金型を用い、該キャビティ内に発泡材料を注型し、発泡・硬化させる方法を採ることが多い。ここで、上記金型は合成樹脂発泡成形品を製造する上で要となるものであり、この金型の開発及び製造は、製品開発にかかる期間及びコストに大きく影響する。上述したように、製品のモデルチェンジのスパンが短くなってきていることから、金型の開発コストを削減すると共に、改良や形状変更等を容易にして、多様なニーズにいち早く対応できるよう開発期間を短縮するための方策が求められている。特に、自動車用シートパッド用成形金型は、大型で、かつその内面に切削加工が困難なアンダーカットとなる凹面形状(成形品では凸面形状になる部分。以下、「アンダーカット部」と表記する。)を有する複雑な形状のものが多い上、モデルチェンジも頻繁に行われるため、短期間かつ低コストで製造することがより重要である。
【0004】
このような中で、特開2002−301723号公報(特許文献1)には、自動車用のシートパッド用金型の製造コストや工期の改善を目的として、発泡成形品の3次元CADデータを有効利用して、全面にわたって一定の厚みを持つ発泡成形用金型の製造を容易に効率よく製造できる製造方法が開示されている。ここでは、該金型にアンダーカット部を有する場合でも、上記NC加工データ上で、そのアンダーカット部を切削するために分割ラインを設定し、鋳型を分割して作製することにより製造工程の効率化を図っている。しかしながら、この発泡成形用金型は、鋳型を分割して作製した場合でも各パーツを作製後に組み合わせて鋳型とし、この鋳型を用いて一体的に鋳造される。そのため、成形品のモデルチェンジ等に伴う形状変更や、肉盛り等の補修では対応できないような大きな補修等が必要となった場合は、金型全体を鋳造しなおす必要があることから無駄が多く、必ずしも効率が良いとはいえない。
【0005】
また、簡易的な成形型の製造方法として、製造しようとする成形型の設計データに基づき、金型データを極薄い厚みの複数の層に分割して、該データに基づいて削り出した基材を積層して、一体化した金型を作製する技術が開示されている(特開2002−321226号公報:特許文献2)。しかしながら、ここで作製される成形金型は、基材として紙を用いて簡易的に作製した試作用の成形型であるため、耐久性等が不十分であり、本生産用の金型に実質的に使用し得ないものであり、上記課題を解決し得るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−301723号公報
【特許文献2】特開2002−321226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、製造が迅速かつ容易に行え、コスト的にも優れる自動車用シートパッド成形用金型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、少なくとも、上面が開放された略矩形箱型の下型と、該下型の開口を覆うように配置される上型とで構成される自動車用シートパッド成形用金型の製造方法であって、上記下型の側壁内面の少なくとも一部にアンダーカット部を有する場合に、該シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成し、該金型パーツデータに基づいて、各金型パーツを個別に作製した後、得られた各金型パーツを接合して目的金型とすることを特徴とする自動車用シートパッド成形用金型の製造方法を提供する。
【0009】
即ち、本発明にかかる自動車用シートパッド成形用金型の製造方法は、上記構成金型の作製段階において、内面の少なくとも一部にアンダーカット部を有する下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各パーツのデータを作成し、この各パーツのデータを基にして、各金型パーツを個別に作製した後、得られた各金型パーツを接合し、一体化することにより自動車用シートパッド成形用金型を製造する方法である。
【0010】
本発明の製造方法を採用することにより、成形品が複雑な形状であっても、単純な形状となるように複数パーツに分割して作製することにより、各パーツの作製が容易なものとなり、更には各パーツの作製を並行して行うことができるため、効率よく作製することができ、金型の作製時間を短くすることができる。
【0011】
この場合、本発明は、好適な実施態様として、下記鋳造法による方法、下記直接切削加工法による方法、及びこれらの鋳造法と直接切削加工法とを組み合わせた方法で、上記各パーツのデータから各金型パーツを作製する上記構成自動車用シートパッド成形用金型の製造方法を提供する。
【0012】
即ち、鋳造法を用いる実施態様として、自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する金型データ作成工程と、該金型パーツデータに基づいて各パーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて親型母材を自動加工機で切削加工して各パーツの親型をそれぞれ作製する親型作製工程と、該親型作製工程で得られた各パーツの親型を用いて、これらの親型が反転した成形面を有するそれぞれの捨て型を作製する捨型作製工程と、該捨型作製工程で得られた各パーツの捨て型に溶融した金属材料を鋳込み、各金型パーツをそれぞれ作製する金型鋳造工程とを順次実施して各金型パーツを個別に作製する上記本発明の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法を提供する。
【0013】
また、直接切削加工法を用いる実施態様として、自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する金型データ作成工程と、該金型パーツデータに基づいて各パーツの加工データをそれぞれ作成し、該加工データに基づいて金型母材を自動加工機で切削加工して各金型パーツをそれぞれ作製する金型切削工程とを実施して各金型パーツを個別に作製する上記本発明の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法を提供する。
【0014】
更に、鋳造法と直接切削加工法とを組み合わせて用いる実施態様として、自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する金型データ作成工程と、該金型パーツデータに基づいて上記複数のパーツのうちの一部のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて親型母材を自動加工機で切削加工して上記一部のパーツの親型を作製する親型作製工程と、該親型作製工程で得られた親型を用いて、これらの親型が反転した成形面を有する捨て型を作製する捨型作製工程と、該捨型作製工程で得られた捨て型に溶融した金属材料を鋳込み、金型パーツを作製する金型鋳造工程とを順次実施して、上記複数のパーツのうちの一部の金型パーツを作製し、その一方で、上記金型パーツデータに基づいて上記複数のパーツのうちの他のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて金型母材を自動加工機で切削加工して金型パーツを作製する金型切削工程を実施して、上記複数のパーツのうちの他の金型パーツを作製することにより、上記複数のパーツの全てを個別に作製する上記本発明の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法を提供する。
【0015】
上記鋳造法を用いて各金型パーツを作製する製造方法では、各金型パーツを作製する際、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各パーツのデータを作成し、この各パーツのデータを基にして、自動加工機で親型母材を切削加工して各金型パーツの親型を個別に作製した後、捨型作製工程、金型鋳造工程を経て個別に作製することにより、長時間を要する親型の切削加工を複数の自動加工機で並行して行うことができる。そのため、効率よく加工することができ、金型の作製時間を短くすることができる。また、成形品がアンダーカット処理の必要な複雑な形状であっても、単純な形状に分割した各々の金型パーツを個別に加工するため、特に親型母材の切削加工において、5軸加工のような高度な加工技術を必要とせず容易に加工することができる。
【0016】
また、上記直接切削加工法を用いて各金型パーツを作製する方法では、各金型パーツの作製に必要な最低限の大きさの金型母材を用意すればよく、材料を効率よく使用することができる。これに対し、複数パーツに分割しない従来方法では、目的金型の外形寸法程度の大きさの金型母材を用意し、この金型母材を成形品の形状に大きく切削しなければならないため、加工に長時間を要する上、該金型母材の使用効率も著しく悪くなる。また、本発明の方法によれば、長時間を要する金型の切削加工を複数の自動加工機で並行して行うこともできるため、効率よく加工することができ、目的金型の作製時間を短くすることができる。更には、目的金型がアンダーカット部を有する複雑な形状であっても、単純な形状に分割した各々の金型パーツを個別に加工するため、5軸加工のような高度な加工技術を必要とせず容易に加工することができる。
【0017】
更に、鋳造法と直接切削加工法とを組み合わせて各金型パーツを作製する方法では、各金型パーツを作製する際に、該パーツ毎に鋳造と切削加工とから最適な加工方法を選択することにより、更に効率的に自動車用シートパッド成形用金型を製造することができる。
【0018】
そして、金型の補修や製品形状の小変更等で、金型の作製が再度必要となった場合には、該当箇所の金型パーツのみを作製し交換すればよいため、補修や形状変更を容易に行うことができ、メンテナンス性等に優れる。また、形状変更した場合には、変更のない他の金型パーツも、新規形状の成形金型として再利用することができるので、金型の製造コスト及びランニングコストにも優れるものである。
【0019】
ここで、複数の金型パーツを目的金型に組み上げた際に、接合面からの樹脂漏れが懸念される場合には、締結部材によって各金型パーツを相互に締結することにより、各金型パーツの接合面を強固に密着させ、該接合面から樹脂が漏れるのを防止することができる。また、接合面にズレが生じた場合には、金型内面(キャビティ)に不都合な段差を生じて製品表面にその段差が現れ外観不良となるおそれがあるが、このような接合面のズレが懸念される場合には、各金型パーツの接合面にピンやボスとこれらの嵌合凹部などからなる位置決め部を設ければよく、上記接合面にズレを生じることなく精度よく接合することができる。
【0020】
従って、金型に発泡材料を注型して発泡硬化させることにより、自動車用シートパッドを製造する場合に、上記本発明の製造方法により得られた金型を用いることにより、高精度な製品を効率よく安価に製造することができるものである。
【発明の効果】
【0021】
このように、本発明の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法によれば、自動車用シートパッド成形用金型を効率よく製造することができるため、この金型を用いて自動車用シートパッドを製造することにより、製品の開発コストを削減することができ、また、形状変更や補修の際には、該当する金型パーツ毎の修正及び交換が可能なので、メンテナンス性及びランニングコストに優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の製造方法の概略を示すフロー図である。
【図2】本発明の別の製造方法の概略を示すフロー図である。
【図3】(A)は、本発明の製造方法を用いて製造した自動車用シートパッド成形用金型(下型)の組み上げ前の状態を示す概略上面図である。(B)は、側壁1bのB−B線に沿った概略断面図である。
【図4】同金型を組み上げた状態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて、本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0024】
図1は、本発明の製造方法の一実施例の概略を示すフロー図である。この製造方法は、自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各パーツのデータを作成(金型データ作成工程)した後、該データに基づいて各々のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて親型母材をNC等の自動加工機で切削加工して親型を作製する(親型作製工程)。次いで、得られた親型を用いて各金型パーツ毎に、該親型が反転した成形面を有する捨て型を作製する捨型作製工程、及び、該捨型作製工程で得られた捨て型に溶融した金属材料を鋳込む金型鋳造工程を順次実施して、各金型パーツ(鋳型)を個別に作製し、最後に全ての金型パーツを接合し、目的金型とするものである。なお、特に図示していないが、上記上型は、上記下型とは別個に作製されるものであり、通常は公知の方法で作製されるものである。
【0025】
まず、金型データ作成工程では、3次元CADにより作成した自動車用シートパッドの設計データを基に、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する。この際、上記金型パーツのデータを作成する方法は、特に制限されるものでなく、図1に示したように、公知の3次元CADを用いて、自動車用シートパッドの設計データから各金型パーツのデータを直接作成してもよいし、自動車用シートパッドの設計データから、成形品全体の金型データ(目的金型のデータ)を作成した後、この金型データを基に目的金型を分割した形状を有する各パーツのデータを作成してもよい。また、図1では、自動車用シートパッドの設計データを基にa〜e(底壁と4面の側壁)の計5個の金型パーツのデータを直接作成した例を示したが、該金型パーツのデータ作成数(分割数)や分割方法は、上記下型の底壁と各側壁とが分割され、切削加工や組み立て等の後工程を容易かつ確実に行うことができれば特に制限されるものではなく、底壁から分割した側壁を更に加工しやすい形状や大きさに分割する等、成形品の形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0026】
親型作製工程では、まず、上記金型データ作成工程で得られたa〜eの各金型パーツのデータに基づいて、NC等の自動加工機用の加工データを作成する。次いで、この加工データを自動加工機に入力し、入力されたデータに基づいて親型母材を切削加工することにより、上記金型パーツの親型a〜eを作製する。ここでは、3台の自動加工機1〜3を使用し、金型パーツaを自動加工機1で、金型パーツb及びcを自動加工機2で、金型パーツd及びeを自動加工機3で作製した例を示した。この工程では、1台の自動加工機で各金型パーツの親型を順次作製してもよいが、上記のように必要に応じて複数の自動加工機を使用することにより、上記親型の切削加工を並行して行うことができ、作製期間を短縮することができる。更に作製期間を短縮したい場合は、自動加工機の使用台数を増やせばよい。なお、上記親型母材は、公知の材料から適宜選択して用いることができ、本発明では、硬質ウレタンフォームやケミカルウッド(木型)等を好適に用いることができる。
【0027】
捨型作製工程では、上記親型作製工程で得られた親型a〜eを用いて公知の方法により、該親型が反転した成形面を有する捨て型a〜eを個別に作製する。なお、この捨て型a〜eとしては、通常、鋳物砂等を用いて砂型が作製されるが、前記の砂以外にも石膏等を用いて捨て型を作製することもでき、これらは必要に応じて適宜選択すればよい。捨て型として砂型を作製する場合は、例えば、所定の大きさの外枠内に親型を配置し、その中に鋳物砂を詰め込み、結合剤にて固めた後、親型を取り除くことにより作製する方法等を採用することができる。なお、鋳物砂を詰め込む際、上記外枠内を減圧状態にしたり、振動を与えること等も任意である。
【0028】
金型鋳造工程では、上記捨型作製工程で得られた捨て型a〜eに溶融した金属材料を鋳込み、各金型パーツを並行して個別に鋳造する。なお、鋳造方法としては、通常の方法を採用し得る。また、上記金属材料としては、公知の材料から適宜選択して用いることができ、本発明では、アルミニウム合金等を好適に用いることができる。
【0029】
このようにして得られた金型パーツ(鋳型)a〜eを、接合することによりひとつの金型とすることができる。各金型パーツの接合方法は、接合面が確実に密着し、該接合面から金型内部(キャビティ)に注型された発泡材料が漏れ出ることがないようにできれば特に制限されず、例えば、各金型パーツa〜eにボルト等の締結部材を取り付ける締結部を設け、これらの締結部材により締結可能とすればよい。
【0030】
また、各金型パーツを組み合わせる際、接合面にズレを生じると、キャビティに不都合な段差を生じ、成形品の外観不良の原因となるおそれがあるが、各金型パーツの接合面に位置決めピンやボスとこれらの嵌合凹部を設けることにより、各金型パーツを接合した際に、キャビティに不都合な段差を生じないよう精度よく組み上げることができる。
【0031】
図2は、本発明の製造方法の別の実施例の概略を示すフロー図である。この製造方法は、上記図1と同様に、自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各パーツのデータを作成する(金型データ作成工程)。次いで、該データに基づいて各々のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて金型母材をNC等の自動加工機で直接切削加工する金型切削工程を実施して、各金型パーツ(切削品)a〜eを個別に作製し、最後に得られた全ての金型パーツを接合し、目的金型とするものである。
【0032】
まず、金型データ作成工程は、上記図1での説明と同様であるため、ここでは説明を省略する。
金型切削工程では、まず、上記金型データ作成工程で得られたa〜eの各金型パーツのデータに基づいて、NC等の自動加工機用の加工データを作成する。次いで、この加工データを自動加工機に入力し、入力されたデータに基づいて金型母材を直接切削加工する(直接切削加工法)ことにより、金型パーツ(切削品)a〜eを作製する。ここでは、3台の自動加工機1〜3を使用し、金型パーツaを自動加工機1で、金型パーツb及びcを自動加工機2で、金型パーツd及びeを自動加工機3で作製した例を示した。この工程では、1台の自動加工機で各金型パーツを順次作製してもよいが、上記のように必要に応じて複数の自動加工機を使用することにより、各金型パーツの切削加工を並行して行うことができ、作製期間を短縮することができる。更に作製期間を短縮したい場合は、上記図1と同様、自動加工機の使用台数を増やせばよい。なお、上記金型母材は、公知の材料から適宜選択して用いることができ、本発明では、アルミニウム合金等を好適に用いることができる。
【0033】
このようにして得られた金型パーツ(切削品)a〜eは、上記図1に示した方法と同様に接合することにより、ひとつの金型とすることができる。なお、各金型パーツの接合方法や位置決め手段等についても上記図1に示した方法と同様であり、金型パーツの接合面を確実に密着させ、かつキャビティに不都合な段差を生じることなく精度よく組み上げることができるので、成形時における発泡材料の接合面からの漏れや、キャビティの不都合な段差に起因する外観不良などが発生することがない。
【0034】
また、特に図示していないが、本発明の製造方法では、金型パーツの形状等により、鋳造により作製する方法(鋳造法)と、切削加工により作製する方法(直接切削加工法)とを組み合わせて各金型パーツを作製することもできる。例えば、金型パーツa〜cを図1の製造フローに従って鋳造法により作製し、金型パーツd及びeを図2の製造フローに従って直接切削加工法により作製することができる。このように、各金型パーツを作製する際に、金型パーツ毎に鋳造と切削加工とから最適な加工方法を選択することにより、更に効率的に自動車用シートパッド成形用金型を製造することができる。なお、作製した各金型パーツの接合方法や位置決め手段等についても上記図1及び図2に示した方法と同様であり、各金型パーツの接合面を確実に密着させ、かつキャビティに不都合な段差を生じることなく精度よく組み上げることができるので、成形時における発泡材料の接合面からの漏れや、キャビティの不都合な段差に起因する外観不良などが発生することがない。
【0035】
図3は、本発明の製造方法に従って製造した自動車用シートパッド成形用金型の一例を示すものであり、図3(A)は該成形金型(下型)1の組み上げ前の状態を示したものである。この下型1は、上面が開放された略矩形箱型の金型であり、材料の使用効率及び加工性の観点から、底壁1a、左右側壁1b,1c、前後側壁1d,1eの金型パーツに5分割されており、特に左右側壁1b,1c内面にはアンダーカット部を有している。また、図3(B)には上記側壁1bのアンダーカット部Uの形状を示すため、B−B線に沿った概略断面図を示した。なお、上記側壁1cの断面形状は特に図示していないが、上記側壁1bを反転した形状を有している。
【0036】
上記金型パーツ1a〜1eは、上記図1(鋳造法)又は図2(直接切削加工法)のフロー図に従って作製しても、鋳造法と直接切削加工法とを組み合わせて作製してもよい。
なお、特に図示していないが、本例の自動車用シートパッド成形用金型は、上面が開放された略矩形箱型の下型1と、この下型1の開口を覆うように配置される上型とで構成されるものである。ここでは、該上型は形状が比較的単純で特に分割を必要としないため、通常の製造工程により製造することができるものである。
【0037】
図4には、上記図3で示した金型パーツ1a〜1eを接合し、自動車用シートパッド成形用金型(下型)として組み上げた状態を示した。この際、各金型パーツ1a〜1eには、締結部11としてボルト穴があけられており、各金型パーツ1a〜1eをボルト(締結部材)12により締結することにより、接合面を確実に密着させることができ、発泡材料を金型内部に注型し発泡させても接合面から樹脂が漏れ出すことがない。
【0038】
また、特に図示していないが、各金型パーツ1a〜1eの接合面には、位置決めピンやボスとこれらの嵌合凹部が設けられており、各金型パーツ1a〜1eを接合した際に、接合面に不都合な段差を生じないよう精度よく組み上げることができ、成形品の外観不良の発生を防止できるようになっている。
【0039】
このように、本発明の製造方法を用いることにより、成形品が複雑な形状であっても、単純な形状となるように複数パーツに分割して作製することにより、最も時間を要する親型母材或いは金型母材の切削加工において、各パーツの加工を容易なものとすることができ、更には複数の自動加工機で並行して行うことができるため、自動車用シートパッド成形用金型を効率よく製造することが可能となる。これにより、製品の開発コストの削減に寄与することができ、また、形状変更や補修の際には、該当する金型パーツ毎の修正及び交換が可能なので、メンテナンス性及びランニングコストにも優れたものとすることができる。
【0040】
本発明の製造方法により得られた成形金型を用いて自動車用シートパッドを製造する場合には、キャビティ内に発泡材料を注型し、発泡・硬化させる公知の方法を用いればよく、これにより自動車用シートパッドを効率よく安価に得ることができる。
【0041】
本発明の製造方法により得られた自動車用シートパッド成形用金型の一例として、該成形金型の下型のみを分割した例を示したが、形状等により必要であれば上型を分割して作製することも任意である。また、金型パーツの分割数や各金型パーツへの分割方法等も、成形品の形状等に応じて適宜変更することができ、更にはその他の構成についても、中子型を追加で設ける等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して差し支えない。
【符号の説明】
【0042】
1 自動車用シートパッド成形用金型(下型)
1a 金型パーツ(底壁)
1b、1c 金型パーツ(左右側壁)
1d、1e 金型パーツ(前後側壁)
11 締結部(ボルト穴)
12 締結部材(ボルト)
U アンダーカット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、上面が開放された略矩形箱型の下型と、該下型の開口を覆うように配置される上型とで構成される自動車用シートパッド成形用金型の製造方法であって、
上記下型の側壁内面の少なくとも一部にアンダーカット部を有する場合に、
該シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成し、該金型パーツデータに基づいて、各金型パーツを個別に作製した後、得られた各金型パーツを接合して目的金型とすることを特徴とする自動車用シートパッド成形用金型の製造方法。
【請求項2】
自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する金型データ作成工程と、
該金型パーツデータに基づいて各パーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて親型母材を自動加工機で切削加工して各パーツの親型をそれぞれ作製する親型作製工程と、
該親型作製工程で得られた各パーツの親型を用いて、これらの親型が反転した成形面を有するそれぞれの捨て型を作製する捨型作製工程と、
該捨型作製工程で得られた各パーツの捨て型に溶融した金属材料を鋳込み、各金型パーツをそれぞれ作製する金型鋳造工程とを順次実施して各金型パーツを個別に作製する請求項1記載の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法。
【請求項3】
自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する金型データ作成工程と、
該金型パーツデータに基づいて各パーツの加工データをそれぞれ作成し、該加工データに基づいて金型母材を自動加工機で切削加工して各金型パーツをそれぞれ作製する金型切削工程とを実施して各金型パーツを個別に作製する請求項1記載の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法。
【請求項4】
自動車用シートパッドの設計データに基づいて、上記下型を3次元CADで底壁と各側壁とに分割した各金型パーツのデータを作成する金型データ作成工程と、
該金型パーツデータに基づいて上記複数のパーツのうちの一部のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて親型母材を自動加工機で切削加工して上記一部のパーツの親型を作製する親型作製工程と、
該親型作製工程で得られた親型を用いて、これらの親型が反転した成形面を有する捨て型を作製する捨型作製工程と、
該捨型作製工程で得られた捨て型に溶融した金属材料を鋳込み、金型パーツを作製する金型鋳造工程とを順次実施して、上記複数のパーツのうちの一部の金型パーツを作製し、その一方で、
上記金型パーツデータに基づいて上記複数のパーツのうちの他のパーツの加工データを作成し、該加工データに基づいて金型母材を自動加工機で切削加工して金型パーツを作製する金型切削工程を実施して、上記複数のパーツのうちの他の金型パーツを作製することにより、上記複数のパーツの全てを個別に作製する請求項1記載の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法。
【請求項5】
上記金型パーツが締結部材を取り付け可能とする締結部を有し、各金型パーツが該締結部材によって相互に着脱可能に締結される請求項1〜4のいずれか1項に記載の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法。
【請求項6】
上記金型パーツが位置決め部を有し、各金型パーツが相互に精度よく接合されるように構成した請求項1〜5のいずれか1項に記載の自動車用シートパッド成形用金型の製造方法。
【請求項7】
金型に発泡材料を注型して発泡硬化させることにより、自動車用シートパッドを製造する場合に、上記金型として請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により得られた金型を用いることを特徴とする自動車用シートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−192579(P2012−192579A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57432(P2011−57432)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】