説明

自動車用ドアおよびワイヤハーネスの配索方法

【課題】車外側から挿入された電機部品のワイヤハーネスを容易に車室側へ配策することができる構成をもつ自動車用ドアおよびワイヤハーネスの配索方法を提供する。
【解決手段】本発明の自動車用ドアは、インナーパネル11とアウターパネル12とで区画された収容空間13に、ダクト50が保持されている。ダクト50は、両端部で開口するとともにアウターパネル12に開口するハーネス挿入口121側に位置する第一開口部51と、インナーパネル11に形成された引き出し口111側に位置する第二開口部52と、をもち、収容空間13に保持されたガラスガイド30を跨いで配設されている。本発明のワイヤハーネスの配設方法では、ハーネス421を配索するに先立ち、収容空間13にダクト50を配設する。ハーネス421は、第一開口部51に挿入され第二開口部52側へと案内されて挿通され、引き出し口111から容易に引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車外側に固定されるドアミラー等の電機部品に付属するワイヤハーネスが室内側へと配索された自動車用ドアおよびワイヤハーネスの配索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の側部に設けられた開口を開閉する自動車のドアは、その内部に様々な電機装置や電気配線が配設されている。たとえば、図7は、室内側の内装材を覆う前の自動車用のドア9において、車外側に固定されるドアミラー99のワイヤハーネス99hの配索構造を説明するための模式図である。図7は、ドア9を車室側から見た図であって、図中の矢印Fは、車体の前方を示している。ドア9は、インナーパネル91とアウターパネル92とがそれらの周縁部で溶接され、アウターパネル92とインナーパネル91とで区画された内部空間をもつ。内部空間には、ドア窓90を開閉するドアガラス95が収容されるとともにドアガラス95を昇降自在に案内するガラスガイド96が保持されている。ドアミラー99は、ドアミラー本体99bと、ドアミラー本体99bから延出するワイヤハーネス99hからなる電気配線部と、を有する。電気配線部は、ワイヤハーネス99hを、アウターパネル92に開口するハーネス挿入口98から内部空間に挿入して、インナーパネル91に形成された引き出し口97から車室側へと引き出して配索されてなる。ハーネス挿入口98は、ドアミラー本体99bが固定されて閉塞されている。
【0003】
電気配線部を配線する際には、ワイヤハーネス99hをハーネス挿入口98から挿入する。その後、ワイヤハーネス99hは、ドアガラス95の昇降の妨げにならないように、内部空間に保持されているガラスガイド96の前側を通して配索されなければならない。しかしながら、ハーネス挿入口98から挿入されたワイヤハーネス99hは、柔軟性があるため、ハーネス挿入口98から垂下する。このとき、図7のように、ハーネス挿入口98の位置が、ガラスガイド96の位置よりも車体の後方側にあると、柔軟なワイヤハーネス99hをガラスガイド96の前側に迂回させて引き出し口97へと引き出すためには、引き出し口97から手や腕を入れ込まなければならず、ハーネス挿入口98とガラスガイド96の位置によってはワイヤハーネス99hの引き出しが不可能な場合も考えられる。また、ワイヤハーネス99hを引き出す作業は、内部空間で行われる作業であり、内部の状態を目視で確認することは難しい。そのため、どのドアも同様の状態にワイヤハーネス99hを配索することは困難である。
【0004】
そこで、特許文献1では、アウターパネルとインナーパネルとの間にリンフォース(補強板)を設け、そのリンフォースにワイヤハーネスが通る通路を形成している。リンフォースは従来から自動車のフロントドアに配設されている構成であるが、特許文献1では、通路を形成するために複雑な形状に成形されたリンフォースを用いるため、フロントドアの大幅な設計変更が余儀なくされる。また、リンフォースの形状によっては、補強効果が低減する虞もある。
【特許文献1】特開2003−137041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車体の前方側部に設けられる一対のドアミラーの設置位置は、ドアミラーによって遮られる前方の視界を減少させて良好な視界を得るために、上述のように、従来よりも車体の後方側にずらした位置に設置される傾向にある。そのため、ワイヤハーネスの挿入位置がガラスガイドよりも後方にあっても効率よくワイヤハーネスを配索することができる構成の自動車用ドアおよびワイヤハーネスの配索方法が求められている。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、車外側から挿入された電機部品のワイヤハーネスを容易に車室側へ配索することができる構成をもつ自動車用ドアおよびワイヤハーネスの配索方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の自動車用ドアは、ドア窓をもちインナーパネルとアウターパネルとで区画された収容空間を有するドアハウジングと、該収容空間から出没して該ドア窓を開閉するドアガラスと、少なくとも一部が該収容空間に保持され該ドアガラスを昇降自在に案内するガラスガイドと、該アウターパネルの車外側に固定されている電機部品本体と、該電機部品本体から延出し、該アウターパネルに開口するとともに該電機部品本体が固定されて閉塞されたハーネス挿入口から該収容空間に挿入され該インナーパネルに形成された引き出し口から車室側へと引き出されたワイヤハーネスからなる電気配線部と、を有する電機部品と、を備える自動車用ドアであって、
前記収容空間には、両端部で開口するとともに前記ハーネス挿入口側に位置する第一開口部と前記引き出し口側に位置する第二開口部とをもち前記ガラスガイドを跨いで配設され、該第一開口部から該第二開口部側へと前記ワイヤハーネスが案内されて挿通されたダクトが保持されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のワイヤハーネスの配索方法は、ドア窓をもちインナーパネルとアウターパネルとで区画された収容空間を有するドアハウジングと、該収容空間から出没して該ドア窓を開閉するドアガラスと、少なくとも一部が該収容空間に保持され該ドアガラスを昇降自在に案内するガラスガイドと、を備えるとともに該アウターパネルに開口するハーネス挿入口と該インナーパネルに形成された引き出し口とを有する自動車用ドアに、電機部品本体から延出するワイヤハーネスを該ハーネス挿入口から該収容空間に挿入し該引き出し口から車室側へと引き出して配索して電気配線部を配線するワイヤハーネスの配索方法であって、
両端部で所定の方向に開口する第一開口部と第二開口部とをもつダクトを、前記インナーパネルに形成された前記引き出し口を通して該第一開口部側から前記収容空間に挿入し、該第一開口部が前記ハーネス挿入口側、該第二開口部が該引き出し口側に位置するように前記ガラスガイドを跨いで配設するダクト配設工程と、
前記ワイヤハーネスの端部を前記ハーネス挿入口から挿入するとともに前記ダクトの前記第一開口部に挿入し、該ダクトを通って前記第二開口部側に案内された該ワイヤハーネスを前記引き出し口から引き出すワイヤハーネス配索工程と、
からなることを特徴とする。
【0009】
本発明の自動車用ドアおよび本発明のワイヤハーネスの配索方法において、前記電機部品本体は、ドアミラーであるのが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の自動車用ドアは、インナーパネルとアウターパネルとで区画された収容空間に保持されているダクトを有する。ダクトは、アウターパネルに開口するハーネス挿入口側に位置する第一開口部と、インナーパネルに形成された引き出し口側に位置する第二開口部と、をもちガラスガイドを跨いで配設されている。そのため、ダクトに挿通されたワイヤハーネスは、第一開口部から第二開口部側へと挿通され、収容空間の所定の位置に配索される。
【0011】
ワイヤハーネスは、ダクト内に収められているため、収容空間に保持されている他の部品との接触が回避される。その結果、走行時にワイヤハーネスと他の部品とが接触することにより発生する騒音、また、ワイヤハーネスの表面を保護する絶縁膜の損傷や絶縁膜が損傷を受けて発生する短絡を防止することができる。
【0012】
また、本発明のワイヤハーネスの配索方法は、ワイヤハーネスを配索するに先立ち、収容空間にダクトを配設する(ダクト配設工程)。ダクト配設工程では、両端部で所定の方向に開口する第一開口部と第二開口部とをもつダクトは、第一開口部がアウターパネルに開口するハーネス挿入口側、第二開口部がインナーパネルに形成された引き出し口側、に位置するようにガラスガイドを跨いで配設される。そのため、後のワイヤハーネス配索工程では、ワイヤハーネスをダクトに挿通するだけで、ワイヤハーネスをガラスガイドの前側に迂回させて配索できるとともに、ワイヤハーネスの先端が引き出し口側に案内されて引き出し口から容易に引き出されるため、作業性が向上する。
【0013】
ダクト配設工程では、ダクトは、インナーパネルに形成された引き出し口を通して第一開口部側から収容空間に挿入される。そのため、アウターパネルに開口するハーネス挿入口は、少なくともワイヤハーネスが挿入できる大きさに開口していればよいため、車体の外観の意匠性が保持される。また、ハーネス挿入口から挿入されたワイヤハーネスがリンフォースに形成された開口(たとえば後出の「円形開口171」等)に挿通される場合にも、形成される開口をできる限り小さくすることができるため、リンフォースの強度が保たれる。
【0014】
また、本発明の自動車用ドアおよびワイヤハーネスの配索方法では、従来の自動車用ドアにダクトを設けるだけでよいため、自動車用ドアを構成するドア部品の形状やそれらの配置の大幅な変更、また、ドア組み立て手順の変更を要しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の自動車用ドアおよび本発明のワイヤハーネスの配索方法を実施するための最良の形態を図1〜図6を用いて説明する。図1および図2は、本発明の自動車用ドアの実施形態の一つを示す模式図であって、図1は車室側からの側面図、図2は車体の前方からの側面図である。図1および図2は、自動車用ドアの主要部分の拡大図となっており、本発明に関連のない部品は図示を省略する。なお、図1中の矢印Fは、車体の前方を示している。図3および図4は、図1および図2に示されるダクトの斜視図である。図5および図6は、本発明のワイヤハーネスの配索方法を説明するための自動車用ドアの主要部分の拡大図であって、図5はダクト配設工程、図6はワイヤハーネス配索工程、を説明する斜視図である。
【0016】
本発明の自動車用ドアは、インナーパネル11とアウターパネル12とで区画された収容空間13を有するドアハウジング10を備えるとともに、主として、ドアガラス20と、ガラスガイド30と、電気部品40と、を備える点においては、一般的な自動車用ドアと同様の構成を有する。
【0017】
ドアハウジング10は、ドア窓をもちインナーパネル11とアウターパネル12とで区画された収容空間13を有する。インナーパネル11には、その前方に、車室側に立ち上がる前方側部119が曲げ加工により形成されており、インナーパネル11とアウターパネル12とを重ね合わせて周縁部で固定することで、中間部分に空間が形成されている。この空間は、種々の配線や装置を収容する収容空間13である。収容空間13の上部には、インナーパネル11とアウターパネル12とが固定されずに解放した状態の間隙131を有する。
【0018】
インナーパネル11には、後に詳説するワイヤハーネス421を車室側へ引き出す引き出し口111が形成されている。引き出し口111は、収容空間13と連通する開口である。また、インナーパネル11には、引き出し口111の上方に形成された開口であって、収容空間13と連通する連通窓112を形成してもよい。連通窓112から、収容空間13の内部の状態を目視により確認することができる。アウターパネル12には、ハーネス挿入口121が開口している。ハーネス挿入口121は、収容空間13と連通する開口である。ハーネス挿入口121は、後述の電気部品本体が固定されて閉塞されるため、電機部品が固定される位置に形成される。
【0019】
ドア窓14は、収容空間13の上方に位置する。ドア窓14は、通常、収容空間13と、その上部の間隙131から延出するドアフレーム15と、により一部または全周が区画された開口であるが、ドアフレームがない構成であってもよい。
【0020】
ドアガラス20は、収容空間13から出没してドア窓14を開閉する。ドアガラス20は、収容空間13に配設された図示しない昇降手段により、収容空間13の上部の間隙131から出没する。この際、ドアガラス20は、収容空間13に保持されたガラスガイド30に昇降自在に案内される。ガラスガイド30は、少なくともその一部が収容空間に保持されていればよい。図1および図2に示すように、自動車用ドアがドアフレーム15を有する場合には、ガラスガイド30は、収容空間13に保持されるとともにその上部の間隙131からから延出し、ドアフレーム15に沿って固定される。
【0021】
電機部品40は、アウターパネル12に車外側から固定される部品であって電気的に作動するものであれば特に限定はないが、ドアミラー部品が好適である。ドアミラーは、[背景技術]や[発明が解決しようとする課題]の欄でも述べたように、従来よりも車体の後方側にずらした位置に設置される傾向があり、電気配線をガラスガイド30の前側へ迂回させて配線する必要性が生じるからである。これ以下の説明では、電機部品はドアミラー部品とする。
【0022】
電機部品40は、電機部品本体であるドアミラー41と電気配線部42とを有する。ドアミラー41は、アウターパネル12の車外側の所定の位置に固定されている。電気配線部42は、ドアミラー41から延出するワイヤハーネス421からなる。ワイヤハーネス421は、その先端にコネクタ422を有してもよい。ワイヤハーネス421は、アウターパネル12に開口するハーネス挿入口121から収容空間13に挿入され、インナーパネル11に形成された引き出し口111から車室側へと引き出されて配索されている。ハーネス挿入口121は、ドアミラー41が固定されて、閉塞されている。このとき、ドアミラー41の固定位置、すなわちハーネス挿入口121の形成位置は、収容空間13の上端部であってドア窓14の下側(ベルトライン)の前方に位置し、かつ、ガラスガイド30よりも後方に位置してもよい。ハーネス挿入口121がガラスガイド30よりも後方に位置すると、ワイヤハーネス421を配索する際に、ワイヤハーネス421をガラスガイド30の前方へ迂曲させる必要があるため、次に述べるダクト50の存在が有用である。
【0023】
本発明の自動車用ドアは、収容空間13にワイヤハーネス421が案内されて挿通されたダクト50が保持されている。図3および図4は、ダクト50の斜視図である。ダクト50は、両端部にそれぞれ開口する第一開口部51と第二開口部52とをもつ。ダクト50は、収容空間13において、第一開口部51がハーネス挿入口121側に、第二開口部52が引き出し口111側に、それぞれ位置する。この際、ダクト50は、ガラスガイド30を跨いで配設され、ワイヤハーネス421が第一開口部51から第二開口部52側へと案内されて挿通されている。
【0024】
ダクト50は、ドアハウジング10に係止して収容空間13に保持されるとよい。そのため、ダクト50の外周面の少なくとも一部にダクト係止部をもつのが好ましい。ダクト係止部は、ダクト50の外周面に一体的に突設されるとよい。具体的には、ダクト係止部は、ダクト50の外周面から突出する突出部53である。突出部53は、その先端部にボルト(図示せず)と螺合する螺子穴541をもつ金属製の螺子部材54が嵌め込まれている。突出部53の先端部は、端面が平坦になっており、ドアハウジング10の前方側部119と当接する。前方側部119には、突出部53の先端部と当接する部位にボルト挿入孔が形成されており、ボルト挿入口と螺子穴541とが同軸的に位置する。ダクト50は、両者が当接した状態でドアハウジング10の外側からボルト挿入口に挿入されるとともに螺子穴541に螺合させたボルトで締結されて、内部空間13に保持される。
【0025】
また、ダクト50は、その外周面の少なくとも一部に一体的に突設された操作部55をもつのが好ましい。操作部55は、後述の「ダクト配設工程」において、ダクトが配設される位置を調整する役割を果たす。したがって、操作部55の位置や形状は、図示されたものに限定されるものではない。
【0026】
ダクト50の内周面の断面形状は、略矩形の他、円形であってもよい。なお、内周面の断面形状は、ワイヤハーネス421の挿通方向に対して垂直方向の内周面の断面形状である。特に、コネクタ422が直方体状である場合には、ダクト50の内周面の断面形状が略矩形であれば、ダクト50の内部でコネクタ422の回転が規制される。その結果、ダクト50にワイヤハーネス421をコネクタ422側から挿入すると、ダクト50を通過する際に生じ得るワイヤハーネス421の捻れが防止される。
【0027】
また、ドアハウジング10は、収容空間13に、ダクト50を所定の位置に案内して保持する案内保持手段を有するとよい。案内保持手段としては、たとえば、ダクト50の一部を保持する保持溝や、ダクト50の少なくとも一端部を所定の位置に嵌め込むことができる保持開口などであればよい。具体的には、案内保持手段は、ワイヤハーネス421が挿通されるとともにダクト50の第一開口部51に形成された嵌合部510と嵌合する内部挿通口161であるのがよい。嵌合部510の形状に特に限定はないが、嵌合させる際に僅かに撓むことで、内部挿通口161に嵌り込む形状であるとよい。具体的には、嵌合部510は、第一開口部51の外周面から突出するとともにテーパ面をもつ4つの凸部511からなる。テーパ面は、第一開口部51の開口端側から反開口端側に向かって立ち上がって傾斜しており、凸部511の断面形状は略三角形である。さらに、凸部511から反開口端側に僅かに離れた位置に環状に突出した環状凸部512を有してもよい。また、内部挿通口161は、収容空間13の上端部に配設される平板状のリンフォース16に形成された開口であるとよい。凸部511は、板状のリンフォース16に形成された内部挿通口161に嵌合するとともに、内部挿通口161の周縁部が、複数の凸部511と環状凸部512との間に挟持されることでダクト50の上下方向の移動が規制される。
【0028】
ダクト50は、樹脂製であるのが望ましい。ダクト50は、突出部53や操作部55、凸部511、環状凸部512等とともに一体的に成形されるとよい。成形方法としては、ブロー成形が挙げられる。ダクトを構成する樹脂の種類としては、後述の「ダクト配設工程」においてダクト50が形状を保持できる程度の剛性をもつ樹脂であれば特に限定はない。たとえば、ブロー成形が可能で適度な剛性を有するポリプロピレン(PP)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が好ましい。
【0029】
本発明の自動車用ドアにおいて、電機部品40の電気配線部42は、以下に説明する本発明のワイヤハーネスの配索方法により配線される。本発明のワイヤハーネスの配索方法は、自動車用ドアにワイヤハーネス421を配索して電気配線部42を配線する方法である。
【0030】
電気配線部42は、自動車用ドアに、電機部品本体41(ドアミラー41)から延出するワイヤハーネス421を、ハーネス挿入口121から収容空間13に挿入し引き出し口111から車室側へと引き出して配索することで配線される。自動車用ドアは、主として、ドア窓14をもちインナーパネル11とアウターパネル12とで区画された収容空間13を有するドアハウジング10と、収容空間13から出没してドア窓14を開閉するドアガラス20と、少なくとも一部が収容空間13に保持されドアガラス20を昇降自在に案内するガラスガイド30と、を備えるとともにアウターパネル12に開口するハーネス挿入口121とインナーパネル11に形成された引き出し口111とを有する。ドアハウジング10、ドアガラス20およびガラスガイド30の構成については、既に詳説した通りである。
【0031】
本発明のワイヤハーネスの配設方法は、ダクト配設工程とワイヤハーネスの配設工程とからなる。
【0032】
ダクト配設工程は、ダクト50を収容空間13に配設する工程である。ダクト50は、前述のように、両端部で所定の方向に開口する第一開口部51と第二開口部52とをもつ。ダクト配設工程では、インナーパネル11に形成された引き出し口111を通して、ダクト50を第一開口部51側から収容空間13に挿入する。次に、挿入されたダクト50を、第一開口部51がハーネス挿入口121側、第二開口部52が引き出し口111側、に位置するように配設する。ダクト50は、ガラスガイド30を跨いだ状態で配設される。このとき、所定の形状に成形されたダクト50は、その形状が保持された状態で収容空間13に配設されるため、引き出し口111から挿入しても、下垂することもなく所望の位置に配設することができる。
【0033】
ここで、ドアハウジング10が案内手段を有する場合には、引き出し口111から挿入されたダクト50は案内手段により所定の位置および方向に案内される。たとえば、図5に示すように、ダクト50がその第一開口部51に嵌合部510を有する場合には、第一開口部51の先端部が内部挿通口161に案内されるとともに、嵌合部510を内部挿通口161に嵌合させて、ダクト50の配設位置を所定の位置に案内するとともに固定できる。なお、図5は、自動車用ドアの主要部分の拡大図であって、連通窓112の下方から収容空間13を臨んだ斜視図である。内部挿通口161は、収容空間13に配設された板状のリンフォース16に、第一開口部51の外周形状と略同一の寸法および形状で開口している。そのため、ダクト50の第一開口部51は、その先端部が内部挿通口161に案内される。この状態からダクト50をさらに上方に押し込むことにより、内部挿通口161の周縁部が凸部511のテーパ面を乗り越えて、凸部511と環状凸部512との間で挟持された状態で、内部挿通口161と嵌合部510とが嵌合する。
【0034】
また、ダクト配設工程は、収容空間13に配設されたダクト50をドアハウジング10に固定する工程であるのが望ましい。ダクト50の固定は、ダクト50を収容空間13の所定の位置に配置した状態で、前述のダクト係止部を介して固定すればよい。
【0035】
ダクト配設工程では、操作部55を用いて、ダクト50が配設される位置を調整するとよい。ダクト50を引き出し口111から挿入する際、ダクト50をドアハウジング10に固定する際、などには、操作部55を保持するとともに所望の位置にダクト50を移動させることで、配設作業が効率よく行える。
【0036】
ワイヤハーネス配索工程は、ワイヤハーネス421の端部をハーネス挿入口121から挿入するとともにダクト50の第一開口部51に挿入し、ダクト50を通って第二開口部52側に案内されたワイヤハーネス421を引き出し口111から引き出す工程である。ダクト50は、ダクト配設工程において所望の位置に配設されているため、ワイヤハーネス配設工程では、ワイヤハーネス421をダクト50に挿通するだけで、ワイヤハーネス421がガラスガイド30を跨いで配索される。具体的には、図6に示すように、ドアミラー41と、ドアミラー41から延出するワイヤハーネス421とを有する電機部品40を自動車用ドアの車外側に準備し、ワイヤハーネス421の先端に固定されたコネクタ422をハーネス挿入口121から挿入する。ハーネス挿入口121から挿入されたコネクタ422を、アウターパネル12と略平行に配設された板状のリンフォース17に開口する円形開口171に挿通する。次に、コネクタ422は、ダクト50の第一開口部51に挿入するとともに、リンフォース17に対して略垂直方向に延びる板状のリンフォース16に形成された内部挿通口161を通過する。コネクタ422は、ワイヤハーネス421とともにダクト50を通って第二開口部52側に案内されるため、第二開口部52から延出するワイヤハーネス421を引き出し口111から引き出すことができる。ドアミラー41は、ワイヤハーネス421が引き出し口111から引き出された後、ハーネス挿入口121を閉塞するようにアウターパネル12の車外側に固定される。
【0037】
ワイヤハーネス配設工程後の自動車用ドアは、必要な他の部品を配設し、その後、内装材で覆われる。
【0038】
なお、本発明の自動車用ドアおよび本発明のワイヤハーネスの配索方法は、上記の実施形態に限定されるものではない。本発明の自動車用ドアおよび本発明のワイヤハーネスの配索方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の自動車用ドアの一つの実施形態を示す模式図であって、車室側から見た主要部分の拡大側面図である。
【図2】本発明の自動車用ドアの一つの実施形態を示す模式図であって、車体の前方から見た主要部分の拡大側面図である。
【図3】図1および図2に示されるダクトの斜視図である。
【図4】図1および図2に示されるダクトの斜視図である。
【図5】本発明のワイヤハーネスの配索方法を説明するための自動車用ドアの主要部分の拡大図であって、ダクト配設工程を説明する斜視図である。
【図6】本発明のワイヤハーネスの配索方法を説明するための自動車用ドアの主要部分の拡大図であって、ワイヤハーネス配索工程を説明する斜視図である。
【図7】従来の自動車用ドアにおいて車外側に固定されるドアミラーのワイヤハーネスの配索構造を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0040】
10:ドアハウジング
11:インナーパネル 111:引き出し口
12:アウターパネル 121:ハーネス挿入口
13:収容空間
14:ドア窓
20:ドアガラス
30:ガラスガイド
40:電機部品
41:電機部品本体
42:電気配線部 421:ワイヤハーネス 422:コネクタ
50:ダクト
51:第一開口部 510:嵌合部
52:第二開口部
53:突出部(ダクト係止部)
55:操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア窓をもちインナーパネルとアウターパネルとで区画された収容空間を有するドアハウジングと、該収容空間から出没して該ドア窓を開閉するドアガラスと、少なくとも一部が該収容空間に保持され該ドアガラスを昇降自在に案内するガラスガイドと、該アウターパネルの車外側に固定されている電機部品本体と、該電機部品本体から延出し、該アウターパネルに開口するとともに該電機部品本体が固定されて閉塞されたハーネス挿入口から該収容空間に挿入され該インナーパネルに形成された引き出し口から車室側へと引き出されたワイヤハーネスからなる電気配線部と、を有する電機部品と、を備える自動車用ドアであって、
前記収容空間には、両端部で開口するとともに前記ハーネス挿入口側に位置する第一開口部と前記引き出し口側に位置する第二開口部とをもち前記ガラスガイドを跨いで配設され、該第一開口部から該第二開口部側へと前記ワイヤハーネスが案内されて挿通されたダクトが保持されていることを特徴とする自動車用ドア。
【請求項2】
前記電機部品本体は、ドアミラーである請求項1記載の自動車用ドア。
【請求項3】
前記ダクトは、その外周面の少なくとも一部に一体的に突設され前記ドアハウジングに係止されるダクト係止部をもつ請求項1記載の自動車用ドア。
【請求項4】
前記ダクトは、その外周面の少なくとも一部に一体的に突設された操作部をもつ請求項1記載の自動車用ドア。
【請求項5】
前記ドアハウジングは、前記収容空間に、前記ダクトを所定の位置に案内して保持する案内保持手段を有する請求項1記載の自動車用ドア。
【請求項6】
前記案内保持手段は、前記ワイヤハーネスが挿通されるとともに前記ダクトの前記第一開口部に形成された嵌合部と嵌合する内部挿通口を有する請求項5記載の自動車用ドア。
【請求項7】
前記ダクトは、前記ワイヤハーネスの挿通方向に垂直方向の内周面の断面形状が略矩形である請求項1記載の自動車用ドア。
【請求項8】
ドア窓をもちインナーパネルとアウターパネルとで区画された収容空間を有するドアハウジングと、該収容空間から出没して該ドア窓を開閉するドアガラスと、少なくとも一部が該収容空間に保持され該ドアガラスを昇降自在に案内するガラスガイドと、を備えるとともに該アウターパネルに開口するハーネス挿入口と該インナーパネルに形成された引き出し口とを有する自動車用ドアに、電機部品本体から延出するワイヤハーネスを該ハーネス挿入口から該収容空間に挿入し該引き出し口から車室側へと引き出して配索して電気配線部を配線するワイヤハーネスの配索方法であって、
両端部で所定の方向に開口する第一開口部と第二開口部とをもつダクトを、前記インナーパネルに形成された前記引き出し口を通して該第一開口部側から前記収容空間に挿入し、該第一開口部が前記ハーネス挿入口側、該第二開口部が該引き出し口側に位置するように前記ガラスガイドを跨いで配設するダクト配設工程と、
前記ワイヤハーネスの端部を前記ハーネス挿入口から挿入するとともに前記ダクトの前記第一開口部に挿入し、該ダクトを通って前記第二開口部側に案内された該ワイヤハーネスを前記引き出し口から引き出すワイヤハーネス配索工程と、
からなることを特徴とするワイヤハーネスの配索方法。
【請求項9】
前記電機部品本体は、ドアミラーである請求項8記載のワイヤハーネスの配索方法。
【請求項10】
前記ダクト配設工程は、前記収容空間に配設された前記ダクトを前記ドアハウジングに固定する工程である請求項8記載のワイヤハーネスの配索方法。
【請求項11】
前記ダクトは、その外周面に一体的に突設され、前記ダクト配設工程において、該ダクトが配設される位置を調整する操作部を有する請求項8記載のワイヤハーネスの配索方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−137496(P2008−137496A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−325753(P2006−325753)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】