説明

自動車用ドアスピーカ装置

【目的】 自動車用ドアスピーカ装置において、ボデーを利用してスピーカに十分なエンクロージャ容量を与えるようにする。
【構成】 背後にスピーカボックス12を備えたスピーカ本体11をドアインナパネル1aに取付ける。スピーカボックス12のドアヒンジ側の側面に開口部を形成すると共に、この開口部に連通する開口部13aをドア側面パネルに形成し、カウルサイドパネル20に、ドア閉鎖時に開口部13aに連通する開口部21を設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スピーカボックス付のスピーカ本体を車室内に向けてドア内に収納した自動車用ドアスピーカ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種のドアスピーカ装置においてスピーカ本体をドアインナパネルに取付けた場合、ドアインナパネルのサービスホールをカバーするビニールカバーがスピーカの背圧により共振し、スピーカ前後の音が干渉して低域特性を劣化させたり、ドアトリムを背圧で共振させて音に歪を与える問題がある。
【0003】このような現象を回避するには、スピーカ本体にスピーカボックスを取付ければ良いが、ドア内に十分な容積を取ることができず、したがって低音を補うためにボデーのアッパバックに低域専用のスピーカを設けることも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような離れた2スピーカ方式では音像定位上好ましくなく、製造コスト上も問題がある。
【0005】本発明は、このような点に鑑みて、ボデーを利用してスピーカに実質上十分なエンクロージャ容量を与えることのできる冒頭に述べた類の自動車用ドアスピーカ装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、この目的を達成するために、背後にスピーカボックスを備えたスピーカ本体をドアインナパネルに取付けてドア内に収納した自動車用ドアスピーカ装置において、スピーカボックスのドアヒンジ側の側面に開口部を形成すると共に、ドア側面パネルにスピーカボックスの開口部に連通する開口部を形成し、この開口部に対面するカウルサイドパネルに、ドア側面パネルの開口部にドア閉鎖時に連通する開口部を設けたことを特徴とする。
【0007】
【作用】ドアを閉鎖すると、スピーカボックス内の空間部が、その開口部、ドア側面パネル及びカウルサイドパネルの開口部を通してカウルサイド内の空間部に連通して、十分なエンクロージャ容量が付加される。
【0008】
【実施例】本発明の一実施例によるドアスピーカ装置を図1乃至図3を基に説明する。10はドアスピーカ装置であり、自動車の前側のドア1のドアインナパネル1aの車室内側に4隅をねじ止めされたスピーカ本体11の背後に、スピーカボックス12が取付けられている。このスピーカボックスの大きさは、ドアインナパネル1a及びドアアウタパネル1c間のドア空間部3においてガラス2を背後で昇降させ得る程度に設定されている。スピーカボックス12のドアヒンジ側の側面12aには、側端に開口部13aを備え、かつ低域を減衰させない程度の断面積の楕円状筒部13が突設されている。
【0009】開口部13aに対面するドアインナパネル1aのドア側面パネル1bには、開口部13aに連通する同一形状の開口部9が形成されている。この開口部にはグリル14が嵌込まれると共に、その周縁にはリング状のシールリング15が装着されている。カウルサイド20における開口部9に対面するカウルサイドパネル20aには、同一形状の開口部21が形成されており、グリル22が嵌込まれると共に、その周縁にはリング状のシールリング23が装着されている。
【0010】ドア閉鎖時には双方のシールリング15、23(図3)が密着して、スピーカボックス12をカウルサイド20の内部空間に、開口部13a、9、21を通して確実に連通させる。これにより、スピーカボックス12の容積がカウルサイド20の容積分だけ増加し、実質上十分なエンクロージャが得られる。したがって、低音域の劣化が回避されると共に、スピーカ本体11の周囲に位置したドアトリム4及び周辺のビニールカバーは、背圧に露らされることがなく、共振現象が回避される。
【0011】前述の実施例において、双方の開口部9、21には、異物の侵入を防止するために、グリル14、22に加えて音響波を減衰させない布等を張付けることも考えられる。シールリング15、23は、場合によっては一方を廃止できる。
【0012】さらに別の実施例として、図1で点線で示すように、カウルサイド20内の空間部にロッカ7内の空間部を連通させるように、カウルサイド20の底面パネル及びロッカ7の上面パネルに同一形状で互に重なる開口部28を設けることが考えられる。これにより、ロッカ7の内部空間もスピーカボックス12のエンクロージャとして利用することが可能となる。特に、カウルサイド20の上部に穴があるために隔壁25を設ける場合、その空間部容積の減少を補償することができる。
【0013】
【発明の効果】請求項1の発明によれば、低域専用のスピーカを別途に用意しなくても、ドア閉鎖時にスピーカボックス内の空間部がカウル内の空間部に連通することにより、実質上スピーカボックスのエンクロージャ容量が拡大され、スピーカの低域音響特性の劣化が防止される。スピーカボックス式を前提にするために、ドア内に背圧も生じず、ドアトリム及びビニールカバー等の周辺部品を共振させることも無くなる。
【0014】請求項2の発明によれば、シールリングを介してドア及びカウルサイドの開口部間が確実に気密になり、音漏れ或は周辺部分の共振の可能性も無くすことができ、音響特性の劣化が確実に防止される。
【0015】請求項3の発明によれば、カウルサイド内の空間部も利用可能となり、その容積の拡大又はその容積の利用が制限される場合の補償が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例によるドアスピーカ装置部分の斜視図である。
【図2】同ドアスピーカ装置の縦断面図である。
【図3】同スピーカボックス及び対面するカウルサイド部分の横断面図である。
【符号の説明】
1 ドア
1a ドアインナパネル
7 ロッカ
9、13a、21、28 開口部
11 スピーカ本体
12 スピーカボックス
15、23 シールリング
20 カウルサイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】 背後にスピーカボックスを備えたスピーカ本体をドアインナパネルに取付けてドア内に収納した自動車用ドアスピーカ装置において、スピーカボックスのドアヒンジ側の側面に開口部を形成すると共に、ドア側面パネルに前記開口部に連通する開口部を形成し、この開口部に対面するカウルサイドパネルに、前記ドア側面パネルの前記開口部にドア閉鎖時に連通する開口部を設けたことを特徴とする自動車用ドアスピーカ装置。
【請求項2】 ドア側面パネル及びカウルサイドパネルの少なくとも一方の開口部周縁に気密用のシールリングを装着したことを特徴とする請求項1の自動車用ドアスピーカ装置。
【請求項3】 カウルサイド内の空間部にロッカ内の空間部を連通させるように、前記カウルサイドの底面パネル及び前記ロッカの上面パネルに、互に重なる開口部を設けたことを特徴とする請求項1の自動車用ドアスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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