説明

自動車用フロアマット

【課題】軽量で、滑り防止性に優れ、クッション性の良い、自動車用フロアマットを提供する。
【解決手段】基布にパイルが植設されたパイル布帛からなる表面パイル層と、裏打ち層が接着樹脂層を介して接着一体化されてなる自動車用フロアマット1において、裏打ち層が不織布で構成され、不織布の重量が30〜300g/m2であり、裏打ち層の少なくとも周縁部分に、面ファスナー雄部材5が接着一体化していることにより、軽量で、滑り防止性に優れ、クッション性も良い自動車用フロアマットが可能。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内に敷いて用いられる軽量で滑り防止性に優れた自動車用フロアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より自動車内のフロアには、自動車室内が汚れるのを防止するためや、足踏み感を良好にすると共に床側からの振動が伝わらないようにすること等を目的として、フロアマットが敷設されている。このフロアマットに、足で踏む、蹴る等の外力が加わると、フロアマットは滑り移動して位置ずれを生じる。このような位置ずれを防止するものとしては、合成樹脂やゴムからなるマット裏面の裏打ち層にエンボス(凹凸)形状を付与せしめてなるフロアマットが公知である(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、前記エンボス(凹凸)形状を付与されたフロアマットを自動車室内に既設のタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットの上に置き敷きした場合、本来ならば人が踏み込むことによって、パイル内に突起物がくい込んで滑りを止める働きをする筈であったが、近年では自動車内装材の外観品位に高品位が求められ、前記のタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットが細い糸を使った高密度商品になってきたために、突起物がくい込みにくくなってきている。このため、合成樹脂製やゴムの裏材を有する自動車用フロアマットが滑りやすく、さらに自動車用フロアマット が滑りだすと、床に既設された上記タフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットとの接触部位が突起物の頂点のみとなりやすく、却って接触面積が減少するため、滑りが助長される難点がでてきた。
【0004】
また、この防滑効果を向上させるために、カットパイルやループパイルを有するカーペットの表面と、別製のピース状のフロアマットの合成樹脂やゴムからなる裏打ち層の裏面とを、面ファスナーの十分な係止力で係止させるフロアマットが開示されている(特許文献2参照)。
【0005】
ところが、これらの自動車用フロアマットにおけるマット裏面の裏打ち層を構成する合成樹脂やゴムは1mあたり1,200〜1,500gと重量が嵩む為、自動車室内に配置した場合には自動車の燃費が悪くなり、結果として環境に対して多大な負荷をかけることになる。また、使用済みのフロアマットの表面パイル層と、裏打ち層とを分離することが困難なため、焼却処分するか産業廃棄物として廃棄処分することになるが、マット裏面の裏打ち層を構成する合成樹脂やゴムを焼却処分すると有害ガスを発生させる可能性があり、また、産業廃棄物として廃棄処分する場合では処分場に限りがあり、廃棄処分できたとしても水質汚染を発生させるなど、様々な形で環境に対して多大な負荷をかけるものであった。
【特許文献1】特開平10−99183号公報
【特許文献2】特開平5−269005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述に示すように、従来の自動車用フロアマットでは、安全性のための滑り防止性が不十分で、重量を起因とする環境負荷を考慮した滑り止め効果は得られていないという問題があった。
【0007】
この発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、環境に負荷をかけることのない軽量で、敷設下地面に対する滑り防止性に優れた自動車用フロアマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0009】
[1]基布にパイルが植設されたパイル布帛からなる表面パイル層と裏打ち層が接着樹脂層を介して接着一体化されてなる自動車用フロアマットにおいて、前記裏打ち層が不織布で構成され、該不織布の重量が30〜300g/m2であり、前記裏打ち層の少なくとも周縁部分に、面ファスナー雄部材が接着一体化していることを特徴とする自動車用フロアマット。
【0010】
[2]前記面ファスナー雄部材が硬質合成樹脂で形成され、幅10〜50mmのテープ状であることを特徴とする前項1に記載の自動車用フロアマット。
【0011】
[3]前記面ファスナー雄部材が、前記裏打ち層の少なくとも周縁部分に、全周もしくは部分的に接着一体化していることを特徴とする前項1または2に記載の自動車用フロアマット。
【発明の効果】
【0012】
[1]の発明によれば、本発明の自動車用フロアマットは裏打ち層に重量のある合成樹脂やゴムに代えて、重量が30〜300g/mの軽量な不織布を使用したことにより、従来のフロアマットよりも非常に軽量な自動車用フロアマットにすることができる。自動車の燃費が悪くなることは無く、環境に対する負荷の小さい自動車用フロアマットとなる。
【0013】
また、前記裏打ち層の少なくとも周縁部分に、面ファスナー雄部材が接着一体化していることにより、自動車用フロアマットを位置決めした状態で押圧する簡単な作業で、自動車用フロアマットは位置ずれすることなく確実に敷設することができ、さらに乗車した人が踏み込むことによって、面ファスナー雄部材の先端が、予め自動車内に施設されたタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットが高密度であっても、表面にくい込んで滑りのない自動車用フロアマットとなる。また、床からの取り外しも容易で、マットの洗浄及び交換が簡単に行える。
【0014】
[2]の発明によれば、本発明の自動車用フロアマットの裏面に接着一体化された面ファスナー雄部材が硬質合成樹脂で形成されていることにより、適度な剛性及び弾性を有し、予め自動車内に施設されたタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペット表面にくい込み、さらに床に密着し滑りのない自動車用フロアマットとなる。また、本発明の自動車用フロアマットの裏面に接着一体化された面ファスナー雄部材が幅10〜50mmのテープ状であることから、十分な滑り防止性を示し、簡単な作業で取り付けが可能となる。
【0015】
[3]の発明によれば、本発明の自動車用フロアマットの裏面に接着一体化された面ファスナー雄部材が前記裏打ち層の少なくとも周縁部分に、全周もしくは部分的に接着一体化していることから、前後左右へのずれを防ぎ、端部分のめくれを防ぐことができる自動車用フロアマットとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下この発明に係わる自動車用フロアマットの一実施形態を図面を参照しつつ説明する。本実施形態の自動車用フロアマットは、予め自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの上に配置して使用する自動車用フロアマットである。図1は、本実施形態の自動車用フロアマットの一部を拡大して示す模式的断面図であり、図2は、本実施形態の自動車用フロアマットの裏面から見た斜視図である。(1)は自動車用フロアマット、(2)は表面パイル層、(3)は裏打ち層、(4)は接着樹脂層、(5)は面ファスナー雄部材である。
【0017】
本発明における表面パイル層(2)は、基布にパイル糸をタフティング等により植設したタフトカーペットを用いることが意匠的に好ましく、また、短繊維ウエブをニードルパンチにより起毛させたニードルパンチカーペットや、織カーペット、接着カーペット、編カーペット等を使用してもよい。さらに、パイルの形態も特に限定されず、カットパイル、ループパイル、カットアンドループのいずれの形態も選択することができる。
【0018】
表面パイル層(2)を構成するパイル素材としては、一般的にカーペット素材として使用しているものを用いればよく、ウール、麻、コットン等の天然繊維やポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成樹脂繊維等が挙げられる。またパイルが植設される基布はポリエステル系繊維、ポリプロピレン系繊維等の合成樹脂繊維からなる織布や不織布を用いることが好ましい。なお、必要に応じて表面パイル層(2)における繊維の脱落を防止するために、表面パイル層(2)の下面にスチレン−ブタジエンゴム等のラテックス層を設けて繊維を固定しパイル抜けを防止することができる。
【0019】
本発明における裏打ち層(3)は、自動車用フロアマット(1)の寸法安定性を確保し、自動車用フロアマット(1)にクッション性を付与する役割を果たすものであり、不織布が最適に使用される。構成する繊維としてはポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリオレフィン系繊維等の合成繊維等または羊毛、木綿等の天然繊維等を単一または複数混合したものを挙げられるが、熱による寸法変化の少ないポリエステル繊維が好ましい。不織布の種類としては、スパンボンド不織布、短繊維フェルト、ニードルパンチ不織布、ケミカルボンド不織布等が挙げられるが、寸法安定性、経済性を考慮すればスパンボンド不織布が好ましい。
【0020】
また、前記不織布は重量が30〜300g/mと軽量な裏打ち層(3)を形成している。好ましくは70〜150g/mである。裏打ち層(3)を軽量にすることにより、従来の自動車用フロアマットと比較して格段に軽量化された自動車用フロアマット(1)となり、自動車の燃費が良くなり、結果として環境に対して多大な負荷をかけることのない自動車用フロアマット(1)となる。さらに、この範囲であれば、自動車用フロアマット(1)に好適に寸法安定性及びクッション性を付与することができる。30g/mに満たないと好適な寸法安定性及びクッション性が得られず、300g/mを超えると軽量化の効果が希薄になり、経済的にも好ましくない自動車用フロアマット(1)となる。
【0021】
本発明における表面パイル層(2)と裏打ち層(3)との一体化は、Tダイ型押出し機により、表面パイル層(2)と裏打ち層(3)を構成する繊維に悪影響を及ぼさない温度で溶融する熱可塑性樹脂フィルムを、接着樹脂層(4)として表面パイル層(2)と裏打ち層(3)との間に押し出し圧着冷却により一体化する。前記熱可塑性樹脂樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられるが、焼却する場合に有害ガスの発生がなく、加工性及び経済性の面からポリエチレン樹脂が好ましい。
【0022】
前記接着樹脂層(4)の重量を80〜500g/mのフィルムで形成すれば、良好な接着性を発揮し、表面パイル層(2)と裏打ち層(3)を強力に接着一体化することができる。また、自動車用フロアマット(1)が自動車床面へフィットするための柔軟性を確保することが可能となる。さらに成膜された該フィルムにより、車内に持ち込まれた雨水や、こぼしたジュースなどの自動車の床面への透水を防ぎ、錆による自動車の性能の劣化を防ぐことができる。
【0023】
また、表面パイル層(2)と裏打ち層(3)を一体化する方法として、表面パイル層(2)と裏打ち層(3)を構成する繊維に悪影響を及ぼさない温度で溶融する熱溶融シートを、表面パイル層(2)と裏打ち層(3)の間に配置し、前記熱溶融シートのみを融着できる温度で熱処理する方法を採ることもできる。前記熱溶融シートとしては、焼却する場合に有害ガスを発生しない、ポリエチレンなどのポリオレフィン系樹脂からなるシートが好ましい。
【0024】
つぎに、所定のマット形状にプレス機等を用いて裁断を行なう。さらに、表面パイル層(2)と裏打ち層(3)とを一体化した場合、その周縁部が見苦しかったり、繊維の脱落が生じる場合があるため、オーバーロックミシンを使った、糸による縁取り加工(オーバーロック加工)によりその周縁部を覆い隠したり、布または樹脂製のテープによる縁取り加工(テープロック加工)によりその周縁部を覆い隠すのが好ましい。なお、オーバーロック加工に使用する糸はナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、或いは再生したポリエステルを使用することが好ましく、またテープロック加工に使用するテープはナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、或いは再生したポリエステル樹脂を使用することにより、環境に対して好適な自動車用フロアマット(1)となる。
【0025】
さらに、本発明の最大の特徴としてマット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面の少なくとも周縁部分に、面ファスナー雄部材(5)を接着一体化する。面ファスナーは一般的に用いられている係合治具である。パイルが鉤状の雄部材と、パイルがループ状の雌部材があり、本発明では雄部材のみを用い、予め自動車内に施設されたタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットが雌部材の作用を代行する。面ファスナーは押しつけると結合力が増すため、足などで床に押し込むような力が働くマットには好適に用いることができる。
【0026】
前記面ファスナー雄部材(5)の先端が予め自動車内に施設されたタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットにくい込むことにより、容易に所定の位置に敷設することができ、乗車した際の、足で踏む、蹴る等の外力が加えられても、滑り移動して位置ずれを生じることのない自動車用フロアマット(1)となる。さらに乗車した人が踏み込むことによって、面ファスナー雄部材の先端が、さらに予め自動車内に施設されたタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペットにくい込むことにより、強固な防滑効果を発揮する。また、床からの取り外しも容易で、マットの洗浄及び交換が簡単に行える自動車用フロアマット(1)となる。
【0027】
本発明における面ファスナー雄部材(5)の素材としては、適度な剛性及び弾性を有するナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリプロピレン系樹脂等の硬質合成樹脂が用いられる。該剛性及び弾性により、予め自動車内に施設されたタフテッドカーペット、またはニードルパンチカーペット表面にくい込み、さらに床に密着し滑りを防ぐことができる。形状としては、基材布にパイルが植設された結合布を所定の幅に裁断されたテープ状からなり、パイルの先端部を溶融し、その頂部が鉤状に成形することにより、基材布の一方の面に対してパイルが略直立状に植設されている。例えば基材布としては、床面に密着するために、弾性のあるナイロン糸で構成されるのが好ましく、またパイルは床面に効率よく、くい込むために適度な剛性を有するポリプロピレンからなるモノフィラメントが好ましい。
【0028】
本発明における面ファスナー雄部材(5)は、幅10〜50mmのテープ状であることから、マット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面に簡単な作業で接着一体化することができる。また、前記裏打ち層の裏面全面に接着一体化することなく、周縁部分に接着一体化することにより、経済的効果もあり、十分に防滑効果を発揮させることができる。10mmに満たないと防滑効果が不十分で、50mmを超えると接着作業性が悪くなり、経済的効果も失われる。
【0029】
また、本発明における前記面ファスナー雄部材(5)が、マット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面の全周もしくは部分的に接着一体化されているために、予め自動車の床に敷設されたタフテッドカーペット、ニードルパンチカーペットの材質や密度に応じて、所望の防滑効果を得るために、適宜接着する前記面ファスナー雄部材(5)の量を設定することができる。また、前記面ファスナー雄部材(5)が、マット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面の少なくとも周縁部分に、接着一体化されているために、従来のマットでよく見られる、頻繁な乗り降りの際の足で踏む、蹴る等の外力が加えられることにより生じる端部分のめくれを防ぐことができる自動車用フロアマットとなる。
【0030】
また、オーバーロック加工やテープロック加工の際に、前述の裏打ち層(3)の裏面に接着一体化された面ファスナー雄部材(5)の周縁部分片側を同時に縫いこむことにより、より強固な面ファスナー雄部材の接着一体化方法とすることができる。また面ファスナー雄部材(5)を裏打ち層(3)の裏面に、接着剤による接着一体化をせずに、オーバーロック加工やテープロック加工の際に、面ファスナー雄部材の周縁部分片側を同時に縫いこむだけで接着一体化するという生産合理化された方法を採ることもできる。
【実施例】
【0031】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)表面パイル層として、単糸繊度が40デシテックスのフィラメントで構成される繊度2400デシテックスのポリエステル糸を、タフティングカットパイル機にて、ポリエステル繊維からなる不織布(重量:100g/m)に1/10ゲージ(ヨコ密度:39本/10cm)、30ステッチ(タテ密度:30本/10cm)、パイル長8mmでタフティングをおこない、カットパイルが形成されたタフテッドカーペット(パイル重量:600g/m)を用意した。なお、カーペットの裏面にはフィラメント糸の脱落を抑制するために、乾燥質量:100g/mのスチレン−ブタジエンゴムラテックスを塗布した。また、裏打ち層として、重量:160g/mのポリエステル繊維からなる不織布を用意した。
【0033】
次いで、前記表面パイル層(ラテクックス塗布側)と裏打ち層との間に、Tダイ型押出し機より押し出したポリエチレン樹脂フィルムを供給し、このポリエチレン樹脂フィルムを介して前記表面パイル層と裏打ち層とを一体化した。このポリエチレン樹脂フィルムの塗布量は400g/mであった。次いで、この一体化物を自動車用フロアマットの大きさに裁断し、ポリエステルからなる糸でオーバーロック加工を施した。
【0034】
さらに、幅30mm、長さ200mmのテープ状のファスナー雄部材を、図2に示すように、マット形状に裁断された前記裏打ち層の周縁部分に破断的に接着一体化し自動車用フロアマットを製造した。
【0035】
(実施例2)幅30mmのテープ状のファスナー雄部材を、マット形状に裁断された前記裏打ち層の周縁部分全周に接着一体化したこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0036】
(実施例3)裏打ち層として、重量:50g/mのポリエステル繊維からなる不織布を用いたこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0037】
(実施例4)裏打ち層として、重量:280g/mのポリエステル繊維からなる不織布を用いたこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0038】
(実施例5)幅15mmのテープ状の面ファスナー雄部材を、マット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面の全周に接着一体化したこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0039】
(実施例6)幅45mmのテープ状の面ファスナー雄部材を、マット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面の全周に接着一体化したこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0040】
(比較例1)裏打ち層として、面ファスナー雄部材を接着せずに、裏面にエンボス(凹凸)形状を付与した、重量:1300g/mのPVCシートを用いたこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0041】
(比較例2)裏打ち層として、重量:15g/mのポリエステル繊維からなる不織布を用いたこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0042】
(比較例3)裏打ち層として、重量:350g/mのポリエステル繊維からなる不織布を用いたこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0043】
(比較例4)幅5mmのテープ状の面ファスナー雄部材を、マット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面の全周に接着一体化したこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0044】
(比較例5)幅70mmのテープ状の面ファスナー雄部材を、マット形状に裁断された前記裏打ち層の裏面の全周に接着一体化したこと以外は実施例1と全く同様にして自動車用フロアマットを製造した。
【0045】
上記のようにして得られた各自動車用フロアマットに対して下記評価法に基づいて軽量化効果、滑り防止性、クッション性、面ファスナー接着作業性を調べた。その結果を表に示す。
【0046】
(軽量化効果)各自動車用フロアマット(300mm×300mm)を用い、その重量を測定し、裏面にエンボス(凹凸)形状が付与されたPVCシートを裏打ち層とした従来の自動車用フロアマット(比較例1)の重量に対しての差を%で表し、軽量化効果を評価した。
【0047】
(滑り防止性)各自動車用フロアマット(100mm×140mm)のそれぞれを、自動車の床に敷設された一般的なニードルパンチカーペット上に、自動車用フロアマットの裏材とが当接するように載置した。次いで、自動車用フロアマットの表面材上に1kgの荷重を加えた状態で、自動車用フロアマットをニードルパンチ不織布の表面に対して水平方向に引張り速度100mm/分で引っ張り、自動車用フロアマットを滑らせた時の静摩擦抵抗力を測定した。この結果は表1に示す通りであった。なお、この静摩擦抵抗力は5回測定した値の平均値である。実際の自動車室内に自動車用フロアマットを配置した場合を想定し、静摩擦抵抗力25N以上を滑り防止性に優れた自動車用フロアマットと判定した。
【0048】
(クッション性)各自動車用フロアマットをJIS L1022の参考試験にある圧縮率測定方法により圧縮弾性率を測定し、70%以上を良好なッション性のある自動車用フロアマットと判定した。
【0049】
(面ファスナー接着作業性)各自動車用フロアマットにおいて、マット形状に裁断された裏打ち層の裏面の周縁部分に、面ファスナー雄部材を接着一体化する際の作業性を調べた。スムーズに位置決めができて、容易に接着できたものを「◎」とし、位置決めに時間を要し、接着させるのに手間取ったものを「×」とした。
【0050】
【表1】

【0051】
表1から明らかなように、実施例1〜5で示される本発明の自動車用フロアマットは軽量で、滑りにくく、良好なクッション性があることが判った。
【0052】
これに対し、比較例1は非常に重量のある自動車用フロアマットとなり、比較例1、4では滑り防止性が確保できず、比較例2はクッション性が乏しく、比較例3は軽量化効果が不十分で、比較例5においては良好な面ファスナー接着作業性を得ることはできなかった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態の自動車用フロアマットの一部を拡大して示す模式的断面図である。
【図2】本実施形態の自動車用フロアマットの裏面から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1………自動車用フロアマット2………表面パイル層3………裏打ち層4………接着樹脂層5………面ファスナー雄部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基布にパイルが植設されたパイル
布帛からなる表面パイル層と裏打ち層が接着樹脂層を介して接着一体化されてなる自動車用フロアマットにおいて、前記裏打ち層が不織布で構成され、該不織布の重量が30〜300g/mであり、前記裏打ち層の少なくとも周縁部分に、面ファスナー雄部材が接着一体化していることを特徴とする自動車用フロアマット。
【請求項2】
前記面ファスナー雄部材が硬質合成樹脂で形成され、幅10〜50mmのテープ状であることを特徴とする請求項1に記載の自動車用フロアマット。
【請求項3】
前記面ファスナー雄部材が、前記裏打ち層の少なくとも周縁部分に、全周もしくは部分的に接着一体化していることを特徴とする請求項1または2に記載の自動車用フロアマット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−264890(P2010−264890A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118236(P2009−118236)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(390014487)住江織物株式会社 (294)
【出願人】(501395535)原田繊維株式会社 (7)
【Fターム(参考)】