説明

自動車用フロアマット

【課題】 柔軟性に優れるフロアマットを提供すること。
【解決手段】 本発明の自動車用フロアマットは、表皮層と裏材層を有するとともに、表皮層から裏材層へ貫通する貫通穴を有するベースマットが、貫通穴を表皮層側から被覆するヒールパット材と、貫通穴を裏材層側から被覆するパッチ材とによって、前記貫通穴が塞がれている自動車用フロアマットであり、前記自動車用フロアマットのヒールパット材存在箇所における曲げ強度が0.5N/cm以下である。貫通穴は踵移動領域に相当する領域に配置しているのが好ましい。また、ヒールパット材は貫通穴よりも大きいのが好ましい。更に、パッチ材として、フロアとの摩擦抵抗の大きい材料を選択するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用フロアマットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車内においては、靴などに付着した土、砂、泥、或いは砂利などが自動車内のフロアに付着して、フロアが汚れるのを防止するために、フロアマットが敷かれている。
【0003】
このフロアマットとして、カーペットなどの表皮材と、この表皮材を支持する裏材からなるものが知られている。この表皮材は長年の使用により毛倒れ、摩耗等が発生し、著しく外観を損ねるため、表皮材上にヒールパット材を接着し、表皮材を保護することが行われてきた(特許文献1)。しかしながら、ヒールパット材として耐摩耗性に優れる加硫ゴムや熱可塑性エラストマーなどの比較的硬いヒールパット材を表皮材に接着すると、このヒールパット材を接着した箇所は接着していない箇所と比較して、硬くなる傾向が強かった。一方で、近年、ヒールパット材が接着していることによってフロアマットが硬くなる結果、アクセルペダルに引っ掛かりやすいという危険性が指摘されていた。
【0004】
【特許文献1】特開平11−28145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、柔軟性に優れるフロアマットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1にかかる発明は、「表皮層と裏材層を有するとともに、表皮層から裏材層へ貫通する貫通穴を有するベースマットが、貫通穴を表皮層側から被覆するヒールパット材と、貫通穴を裏材層側から被覆するパッチ材とによって、前記貫通穴が塞がれている自動車用フロアマットであり、前記自動車用フロアマットのヒールパット材存在箇所における曲げ強度が0.5N/cm以下であることを特徴とする、自動車用フロアマット。」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、貫通穴を塞ぐようにヒールパット材とパッチ材とが配置しており、従来のようにヒールパット材を表皮材上に接着した場合と比較して、表皮材の分だけ硬くならず、ヒールパット材存在箇所における曲げ強度が0.5N/cm以下という、柔軟性に優れる自動車用フロアマットである。
【0008】
また、運転中にはヒールパット材を介してパッチ材に踏力が作用するが、パッチ材として、フロアとの摩擦抵抗の大きい材料を選択することにより、滑りにくい自動車用フロアマットとすることができる。
【0009】
更に、貫通穴が踵移動領域に相当する領域に配置している場合、踵は主としてヒールパット材に当接するため、表皮材の保護性に優れている。
【0010】
更に、貫通穴よりも大きいヒールパット材で貫通穴を塞いでいると、土、砂、泥、或いは砂利などが貫通穴へ進入しないため、清掃しやすい自動車用フロアマットである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ベースマットの表皮層側からの模式的上視図
【図2】ヒールパット材が配置している状態を示す、自動車用フロアマットの表皮層側からの模式的上視図
【図3】図2におけるC線での模式的断面図
【図4】曲げ強度の評価に用いた試験片の上視図
【図5】曲げ強度の試験方法の概念図
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の自動車用フロアマット(以下、単に「フロアマット」ということがある)は、表皮層と裏材層を有するとともに、表皮層から裏材層へ貫通する貫通穴を有するベースマットを有する。表皮層はフロアマットを敷設した場合に、目で見ることのできる層であり、装飾性に優れているため、搭乗者に対して快適なドライブを提供することができる。この表皮層は特に限定するものではないが、例えば、タフテッドカーペット、ニードルパンチカーペット、緞通、フックカーペット、ウィルトンカーペット、アキスミンスターカーペットなどを挙げることができる。なお、これら表皮層を構成するパイル、繊維等の構成素材は特に限定するものではないが、例えば、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、或いはポリ乳酸などのバイオマス利用の素材を使用することができる。
【0013】
本発明のフロアマットは表皮層に加えて、フロアマットの耐久性や防滑性を付与できるように、裏材層を有する。このような裏材層としては、例えば、(イ)不織布のフロアとの当接面に樹脂突起を部分的に設けたもの、(ロ)不織布のフロアとの当接面側に火炎を照射して、繊維を溶融固化させ、樹脂塊を形成したもの、(ハ)発泡体のフロアとの当接面側に凹凸を形成したもの、(ニ)不織布のフロアとの当接面に粘着剤を塗布したもの、等を挙げることができる。
【0014】
なお、本発明のフロアマットは表皮層と裏材層以外の層を有することもできる。例えば、裏材層と表皮層の間に不織布層や発泡体層を設けることによって、機能(例えば、吸音性能)を付与又は高めることができる。
【0015】
本発明のベースマットは表皮層と裏材層とを有するものであるが、表皮層から裏材層へ貫通する貫通穴を有する。この貫通穴はどこに配置していても良いが、踵移動領域に相当する領域に配置していると、踵は後述の貫通穴を被覆するヒールパット材に当接し、表皮層が踵によって踏み潰されないため、表皮層の保護性に優れている。なお、貫通穴の大きさは踵移動領域に相当する大きさであるのが好ましい。また、貫通穴は1つである必要はなく、2つ以上存在していても良い。更に、貫通穴の形状は特に限定するものではないが、例えば、正方形、長方形、円形、楕円形、多角形であることができる。
【0016】
本発明における「貫通穴」は表皮層と裏材層とが取り除かれた部分を意味し、表皮層及び裏材層によって取り囲まれて輪郭が形成されている必要はなく、表皮層及び裏材層によって取り囲まれていなくても良い。例えば、表皮層及び裏材層によって形成された外周縁からの切れ込みによって、表皮層及び裏材層が切り落とされて取り除かれた部分は、本発明における貫通穴に相当する。
【0017】
このような貫通穴は表皮層と裏材層とを積層一体化した後に、トムソン刃、スエーデン鋼製刃等によって打ち抜いて形成することができるし、表皮層の貫通穴と裏材層の貫通穴とが一致するようにそれぞれを打ち抜いた後に積層一体化して形成することもできる。後者の場合、表皮層の貫通穴と裏材層の貫通穴の大きさ、形状が一致していなくても良い。しかしながら、本発明においては、柔軟性に優れているように、表皮層の貫通穴と裏材層の貫通穴の大きさ、形状が一致しているのが好ましい。
【0018】
なお、「踵移動領域」は運転操作中に踵が移動する領域である。この踵移動領域について、ベースマットの表皮層側からの模式的上視図である図1をもとに説明すると、図1のベースマットはオートマチック車の場合であり、アクセルペダルのおよそ右端を通り、自動車の長さ方向Lと平行な直線(Lr)、ブレーキペダルのおよそ左端を通り、自動車の長さ方向Lと平行な直線(Ll)、アクセルペダルがオルガン式の場合にはその支点を通り、自動車の幅方向Wと平行な直線(Lf)であり、アクセルペダルが吊り下げ式の場合には、アクセルペダルをべた踏みした時のアクセルペダル面の延長面とフロアマットとの交差点を通り、自動車の幅方向Wと平行な直線(Lf)、及び前記直線Lfと平行かつ300mm離れた直線(Lb)によって囲まれた領域である。
【0019】
また、マニュアル車の場合、図示していないが、オートマチック車の場合と同様に、アクセルペダルのおよそ右端を通り、自動車の長さ方向Lと平行な直線(Lr)、クラッチペダルのおよそ左端を通り、自動車の長さ方向Lと平行な直線(Ll)、アクセルペダルがオルガン式の場合にはその支点を通り、自動車の幅方向Wと平行な直線(Lf)であり、アクセルペダルが吊り下げ式の場合には、アクセルペダルをべた踏みした時のアクセルペダル面の延長面とフロアマットとの交差点を通り、自動車の幅方向Wと平行な直線(Lf)、及び前記直線Lfと平行かつ300mm離れた直線(Lb)によって囲まれた領域である。
【0020】
本発明のフロアマットは上述のような貫通穴を有するベースマットが、貫通穴を表皮層側から被覆するヒールパット材と、貫通穴を裏材層側から被覆するパッチ材とによって、貫通穴が塞がれたものである。このように、ヒールパッド材とパッチ材とで貫通穴を塞いだとしても、従来のようにヒールパット材を表皮材上に接着した場合と比較して、表皮材の分だけ硬くならないため、柔軟性に優れるフロアマットである。そのため、フロアマットに対して面方向(特に自動車の前方方向)に力が加わったとしても、屈曲できる柔軟性を有するため、アクセルペダルやブレーキペダルに引っ掛かりにくいものである。
【0021】
ヒールパット材は貫通穴を表皮層側から被覆するものであり、踵等によって踏まれても容易には損傷しない耐久性を有するものである。このようなヒールパット材として、例えば、熱可塑性エラストマー、加硫ゴム、好ましくはバッキング(例えば、ポリエチレン樹脂で)されたナイロンパイル等をタフトしたカーペットを挙げることができる。なお、複数の貫通穴を被覆する場合には、貫通穴ごとにヒールパット材で被覆しても良いし、貫通穴の数よりも少ないヒールパット材で被覆しても良い。複数のヒールパット材で被覆する場合、ヒールパット材毎に材質が異なっていても良い。
【0022】
なお、ヒールパット材は貫通穴よりも大きい大きさであり、ヒールパット材により完全に貫通穴を塞いでいると、土、砂、泥、或いは砂利などが貫通穴へ進入せず、清掃しやすいフロアマットであるため、好適である。このようにヒールパット材が貫通穴よりも大きい場合、ヒールパット材は高周波ウェルダー又は超音波ウェルダーによりベースマットの表皮層と接着することができるが、この場合、貫通穴の外周縁とヒールパット材の外周縁との距離は5mm以上、40mm以下であるのが好ましい。5mm未満であると、接着強度が低くなる、接着時に位置がずれる、などの問題が生じやすく、40mmを超えると、表皮層とヒールパット材との重なりが多く、貫通穴を有することによる柔軟性を得にくいためである。より好ましくは10〜20mmである。なお、ヒールパット材が貫通穴よりも大きい場合、ヒールパット材は貫通穴と相似形であっても、相似形でなくても良い。
【0023】
パッチ材は貫通穴を裏材層側から被覆するものであり、また、貫通穴が踵移動領域に位置している場合には、運転中に、ヒールパット材を介して踏力が作用する。このようなパッチ材として、例えば、裏材層と同様の材料から構成することができる。つまり、(イ)不織布のフロアとの当接面に樹脂突起を部分的に設けたもの、(ロ)不織布のフロアとの当接面側に火炎を照射して、繊維を溶融固化させ、樹脂塊を形成したもの、(ハ)発泡体のフロアとの当接面側に凹凸を形成したもの、(ニ)不織布のフロアとの当接面に粘着剤を塗布したもの、等を挙げることができる。
【0024】
なお、前述の通り、運転中にはヒールパット材を介してパッチ材に踏力が作用するため、パッチ材として、フロアとの摩擦抵抗の大きい材料を選択し、フロアマットが滑りにくくするのが好ましい。このようなパッチ材として、(ホ)加硫ゴムや熱可塑性エラストマーのフロアとの当接面に突起を部分的に設けたもの、(へ)カットパイルのタフテッドカーペット、(ト)起毛した織物をシャーリング等の手段を用いてカットしたもの、(チ)織物、不織布、エラストマーに植毛したもの、等を挙げることができる。
【0025】
なお、複数の貫通穴を被覆する場合には、貫通穴ごとにパッチ材で被覆しても良いし、貫通穴の数よりも少ないパッチ材で被覆しても良い。複数のパッチ材で被覆する場合、パッチ材毎に材質が異なっていても良い。更に、複数のヒールパット材で被覆する場合、パッチ材は複数のパッチ材と1対1対応している必要はない。
【0026】
なお、パッチ材は貫通穴よりも大きい大きさであり、パッチ材により完全に貫通穴を塞いでいると、土、砂、泥、或いは砂利などが貫通穴へ進入せず、清掃しやすいフロアマットであるため、好適である。このようにパッチ材が貫通穴よりも大きい場合、パッチ材は高周波ウェルダー又は超音波ウェルダーによりベースマットの裏材層と接着することができるが、この場合、貫通穴の外周縁とパッチ材の外周縁との距離は5mm以上、40mm以下であるのが好ましい。5mm未満であると、接着強度が低くなる、接着時に位置がずれる、などの問題が生じやすく、40mmを超えると、裏材層とパッチ材との重なりが多く、貫通穴を有することによる柔軟性を得にくいためである。より好ましくは10〜20mmである。なお、貫通穴よりも大きい場合、パッチ材は貫通穴と相似形であっても、相似形でなくても良い。また、ヒールパット材による貫通穴の被覆とパッチ材による貫通穴の被覆とを同時に行うと、製造工程上、好適である。
【0027】
本発明のフロアマットについて、ヒールパットが配置している状態を示す、表皮層側からの模式的上視図である図2、及び図2におけるC線における模式的断面図である図3をもとに簡単に説明する。
【0028】
図2、図3のフロアマットFMは表皮層SLと裏材層BLとが積層一体化されているとともに、長方形状の踵移動領域HAに相当する領域に、表皮層SLから裏材層BLへ貫通する長方形状の貫通穴THを有するベースマットBMが、貫通穴THよりも大きい長方形状のヒールパット材HP、及び貫通穴THよりも大きい長方形状のパッチ材Pによって、貫通穴THが完全に被覆された状態にある。なお、ヒールパット材HPは表皮層SL側から被覆し、パッチ材Pは裏材層BL側から被覆し、ヒールパット材HPは表皮層SLと、パッチ材Pは裏材層BLと、それぞれ融着Wしている。図3から明らかなように、当然のことながら、貫通穴THの部分には表皮層SLが存在せず、貫通穴部分以外の部分の表皮層SLと裏材層BLの2層と同様に、貫通穴TH部分はヒールパット材HPとパッチ材Pの2層から構成されているため、ヒールパット材HPを有するにもかかわらず、フロアマット全体において、優れた柔軟性を有するものである。また、ヒールパット材HPは、貫通穴THが踵移動領域HAに相当する領域に配置しており、表皮層SLには踵がほとんど作用しないため、表皮層SLの保護性に優れている。更に、貫通穴THよりも大きいヒールパット材HP及びパッチ材Pで貫通穴THを塞いでいるため、土、砂、泥、或いは砂利などが貫通穴THへ進入せず、清掃しやすいフロアマットである。なお、パッチ材Pがフロアとの摩擦抵抗の大きい材料からなると、ヒールパット材HPからパッチ材Pに対して踏力が作用した際に、フロアマットFMがより滑りにくいものである。
【0029】
具体的には、本発明のフロアマットはヒールパット材存在箇所における曲げ強度が0.5N/cm以下と、柔軟性に優れるため、フロアマットに対して面方向(特に自動車の前方方向FD)に力が加わったとしても、屈曲でき、アクセルペダルやブレーキペダルに引っ掛かりにくいものである。この曲げ強度が小さければ小さい程、柔軟性に優れていることを意味するため、0.4N/cm以下であるのが好ましく、0.3N/cm以下であるのがより好ましく、0.25N/cm以下であるのが更に好ましい。なお、本発明のヒールパット材存在箇所における曲げ強度は、実施例の欄に記載の方法により得られる値をいう。
【0030】
本発明のフロアマットは、例えば、次のような手順で製造することができる。まず、常法によりタフテッドカーペット等の表皮層を構成する表皮材、及び裏材層を構成する裏材を製造した後、表皮材と裏材とを積層一体化して前駆ベースマットを形成する。なお、積層一体化方法としては、例えば、ホットメルト樹脂で融着する方法、機械発泡させたスチレンブタジエンゴム(SBR)系、天然ゴム系などのラテックスにより接着する方法、スチレン系エラストマーなどのエラストマーをエクストルーダーにより、溶融した状態で表皮材と裏材との間に供給し、必要であれば加圧して接着する方法、などを挙げることができる。
【0031】
次いで、前駆ベースマットの所望位置(通常、踵移動領域)に相当する領域を打ち抜いて貫通穴を形成し、ベースマットを形成する。なお、ベースマットはフロアマットと同じ外形に周縁が裁断されていることもできる。このように、ベースマットがフロアマットと同じ外形を有する場合、貫通穴の形成と同時に前駆ベースマットの周縁を裁断することができるし、前駆ベースマットに貫通穴を形成した後に前駆ベースマットの周縁を裁断することができるし、前駆ベースマットの周縁を裁断した後に貫通穴を形成することもできる。
【0032】
なお、表皮材と裏材とを積層した後に貫通穴を形成するのではなく、表皮材、裏材のそれぞれに貫通穴を形成した後に積層一体化してベースマットとすることもできる。
【0033】
一方で、常法によりヒールパット材及びパッチ材を製造し、ベースマットの貫通穴を被覆できる形、大きさにそれぞれ成形する。ヒールパット材とパッチ材の形、大きさは異なっていても良いが、同じであると、溶着によりベースマットと一体化する場合、溶着時の圧力が一定になり、仕上りがきれいになるため好適である。
【0034】
その後、ヒールパット材とパッチ材とでベースマットの貫通穴を挟んで塞ぐように配置し、ヒールパット材とパッチ材をベースマットと一体化した後、周縁を所望形状に成形して、本発明のフロアマットを製造することができる。ヒールパット材及びパッチ材の一体化は、例えば、高周波ウェルダー、超音波ウェルダーにより実施することができる。なお、既にベースマットの周縁が所望外形を有する場合には、ヒールパット材とパッチ材をベースマットと一体化するだけで本発明のフロアマットとすることができる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
(表皮層)
ポリエステル繊維製一次基布(目付:110g/m)に、ポリプロピレン製カットパイルをゲージ1/8、ステッチ11.3の密度でタフトした後、スチレン−ブタジエンゴムでバッキングした、タフテッドカーペット(=表皮層、パイル目付:700g/m、バッキング量:240g/m)を用意した。
【0037】
(裏材層)
繊度17dtexのポリエステル繊維、繊度6.6dtexのポリエステル繊維、繊度3.3dtexのポリエステル繊維、及び繊度4.4dtexの芯鞘型融着繊維(芯成分:ポリエチレンテレフタレート、鞘成分:低融点ポリエステル)からなる繊維ウェブを、ニードルを使用して絡合した後、針深度を上げたニードルを使用して繊維を突出させ、片表面に繊維が突出したニードルパンチ不織布を製造した。
【0038】
次に、温度150〜160℃で熱処理することにより芯鞘型融着繊維の鞘成分で融着させ、続いて、突出した繊維をガス毛焼き機により直炎で熱処理して、樹脂魂を有する毛焼き不織布(=裏材層、目付:300g/m)を製造した。
【0039】
(ベースマット)
上記表皮層と裏材層をスチレンブタジエンゴム系ホットメルト接着剤(350g/m)で接着した後、外周縁を図1に示すような凸形状に裁断して前駆マットを形成した。その後、前駆ベースマットの踵移動領域に相当する領域に自動車の長さ方向Lに68mm、自動車の幅方向Wに150mmの1つの長方形の貫通穴をスエーデン鋼裁断刃により打ち抜いて形成し、ベースマットを作製した。なお、ベースマットの寸法は図1におけるa=約190mm、b=h=約120mm、c=約120mm、d=f=約430mm、e=約430mm、g=約120mmとした。また、このベースマットにおける踵移動領域HAは、図1におけるg辺と平行、かつg辺から自動車の後方方向RDに30mmだけ離間した直線Lf、f辺と平行、かつf辺から自動車の前方方向に対して左側方向に105mmだけ離間した直線Lr、直線Lrと平行、かつ直線Lrから自動車の前方方向に対して自動車の左側方向に150mmだけ離間した直線Ll、及び直線Lfと平行、かつ直線Lfから自動車の後方方向RDに68mmだけ離間した直線Lbとによって囲まれた、自動車の長さ方向Lに68mm、自動車の幅方向Wに150mmの長方形状の領域であった。
【0040】
(ヒールパッド材)
ポリエステル繊維製一次基布(目付:120g/m)に、ナイロン製パイルをゲージ1/10、ステッチ10.0の密度でタフトした後、スチレン−ブタジエンゴムでバッキングした、タフテッドカーペット(パイル目付:610g/m、バッキング量:150g/m)を用意した。そして、このバッキング側に対して、更にポリエチレン樹脂でバッキング(量:270g/m)し、前駆ヒールパッドを形成した。次いで、前駆ヒールパッドを大略長方形状に裁断し、ヒールパット材(短辺の長さ:112mm、長辺の長さ:192mm、R7に角丸め)を作製した。
【0041】
(パッチ材)
上記裏材層と同様にして作製した毛焼き不織布(目付:300g/m)を、大略長方形状に裁断し、パッチ材(短辺の長さ:112mm、長辺の長さ:192mm、R7に角丸め)を作製した。
【0042】
(マット)
前記ベースマットの貫通穴を完全に被覆するように、かつ貫通穴の中心とヒールパット材の中心が一致するように、前記ヒールパット材を表皮材側に積層するとともに、長方形状のポリアミド製ホットメルトウェブシート(目付:30g/m、登録商標:ダイナック、品番:LNS0030、呉羽テック製、短辺の長さ:112mm、長辺の長さ:192mm、R7に角丸め)、及び前記パッチ材が、ベースマットの貫通穴を完全に被覆するように、かつ貫通穴の中心、ホットメルトウェブシートの中心、及びパッチ材の中心が一致するように、裏材側にホットメルトウェブシート、パッチ材の順に積層した後、高周波ウェルダーにより、ヒールパット材の周縁部においては、表皮材とヒールパット材とをポリエチレン樹脂により融着させ、パッチ材の周縁部においては裏材とパッチ材とをホットメルトウェブシートにより融着させ、ヒールパット材とパッチ材の中央部においては、ヒールパット材とパッチ材とをヒールパット材のポリエチレン樹脂及びホットメルトウェブシートにより融着一体化して、本発明のフロアマットを製造した。なお、ヒールパット材に用いたタフテッドカーペット及びパッチ材は生産方向が自動車の長さ方向Lと平行であるように積層した。
【0043】
(比較例1)
実施例1と同様にして作製した前駆マットに貫通穴を形成せず、踵移動領域に実施例1と同じヒールパット材を積層した後、高周波ウェルダーにより、ヒールパット材の周縁部及び中央部を融着させて、フロアマットを製造した。なお、ヒールパット材に用いたタフテッドカーペット及びパッチ材は生産方向が自動車の長さ方向Lと平行であるように積層した。
【0044】
(比較例2)
パッチ材として、タイプAデュロメータ(JIS K 6253)を用いて測定した硬度が80のスチレンブタジエンゴムシート(目付:4000g/m)を使用したこと以外は実施例1と同様にしてマットを製造した。
【0045】
(ヒールパット材存在箇所における曲げ強度の評価)
実施例1及び比較例1〜2のマットから、図4に試験片の上視図を示すように、ヒールパット材HPの外周縁に沿って長方形状に切断した。その後、長辺を二等分する直線と、一方の長辺から10mm離間した長辺と平行な直線との交点を中心とする直径10mmの貫通穴Hl、又は短辺を二等分する直線と、一方の短辺から10mm離間した短辺と平行な直線との交点を中心とする直径10mmの貫通穴Hwを形成し、それぞれ試験片Sとした。
【0046】
次いで、図5に概念図を示すように、前記試験片Sの貫通穴Hl又は貫通穴Hwから75mmだけ離間した地点よりも離れた領域に、両端に穴を開けた冶具Jを載置するとともに、冶具の穴を介してネジNで試験片Sを固定した状態で、前記試験片Sの貫通穴Hl又は貫通穴Hwに、引張強度試験機Tのチャックに取り付けたフックFを挿入し、試験片Sに対して直角方向Uに、500mm/min.の速度で引張り、チャックを30mmだけ上昇させた際の最大点強度を測定した。この最大点強度の測定を、貫通穴Hl又は貫通穴Hwのそれぞれに対して5回ずつ行い、その算術平均値を算出し、平均最大点強度とした。そして、この平均最大点強度を測定幅で除して、ヒールパット材存在箇所における曲げ強度を算出した。この結果は表1に示す通りであった。
【0047】
【表1】

【0048】
以上の実施例1と比較例1との比較から、貫通穴が存在することによって、曲げ強度が弱く、屈曲しやすいものであった。また、実施例1と比較例2との比較から、ヒールパット材及び/又はパッチ材として比較的柔軟なものを使用しないと、貫通穴が存在していたとしても、曲げ強度が高く、屈曲しにくいものであった。
【符号の説明】
【0049】
BM ベースマット
HA 踵移動領域
FD 自動車の前方方向
RD 自動車の後方方向
L 自動車の長さ方向
W 自動車の幅方向
Lf、Ll、Lb、Lr 踵移動領域を示す直線
FM フロアマット
HP ヒールパット材
P パッチ材
TH 貫通穴
SL 表皮層
BL 裏材層
W 融着
a〜h マットの周縁の長さ
Hl、Hw 貫通穴
S 試験片
T 引張強度試験機
U 試験片に対する直角方向
J 冶具
N ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮層と裏材層を有するとともに、表皮層から裏材層へ貫通する貫通穴を有するベースマットが、貫通穴を表皮層側から被覆するヒールパット材と、貫通穴を裏材層側から被覆するパッチ材とによって、前記貫通穴が塞がれている自動車用フロアマットであり、前記自動車用フロアマットのヒールパット材存在箇所における曲げ強度が0.5N/cm以下であることを特徴とする、自動車用フロアマット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−245976(P2011−245976A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121054(P2010−121054)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000229542)日本バイリーン株式会社 (378)
【Fターム(参考)】