説明

自動車用ホイール

【課題】ボルトによる組立式の自動車用ホイールのみならず、1ピース型の自動車用ホイールであっても、その前面に光輝的なアクセントの付与による斬新な化粧効果を発揮させることができるようにする。
【解決手段】ダイヤモンド宝石の表面形状に造形したクリスタルガラス(21)を、銀膜(22)の裏引きによるミラー(M)の多数として、ホイールディスク(D)の周縁部(10)に点在分布させたミラー受け入れ凹溝(20)内へ、その表面(21a)のみの張り出し露呈する状態に嵌め付け一体化した。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は自動車用ホイールの改良に係り、殊更そのホイールディスクの前面へ光学的なアクセントを付与することによって、斬新な化粧効果を発揮させ得るように工夫したものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ホイールの化粧効果を昂める公知技術として、実開平6−47002号が提案されており、これではタイヤ支持リム(1)とホイールディスク(2)
とを締結するボルト(3)の頭部(32)に、凹陥部(33)を形成して、その内部へ軽合金製又は合成樹脂製の化粧板(4)を接着剤(43)によって嵌め付け一体化している。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
ところが、上記公知考案はあくまでもボルト(3)による化粧手段を採用しているため、図1のようなホイールディスク(2)とタイヤ支持リム(1)との2ピース型や、そのタイヤ支持リム(1)も図2のようなフロントリム(1a)とリヤーリム(1b)に2分割された3ピース型の組立式自動車用ホイールに限られてしまい、上記ホイールディスク(2)とタイヤ支持リム(1)とが連続一体に鋳造された1ピース型の自動車用ホイールについては、これを適用実施することができない。
【0004】
又、上記公知考案の自動車用ホイールは軽合金から成る関係上、そのボルト(3)の頭部(32)に形成した凹陥部(33)内へ、同じ軽合金製の化粧板(4)を嵌め付けたとしても、特別のアクセント効果をを与えることは不可能であり、更に合成樹脂製の化粧板(4)を嵌め付けたとしても、これに軽合金の地肌から極立つ別異の着色カラーが施されない限り、看者の注目を集めることは困難である。
【0005】
この点、上記化粧板(4)の表面に図柄(41)を付与したとしても、又その化粧板(4)を着色合成樹脂から成形することが考えられるとしても、その表面積がボルト(3)における頭部(32)の大きさに制限された僅小であるため、化粧効果を昂める上でも自づと限界があり、早期に色褪せを生ずるほか、光を受けて屈折・反射したり、或いは輝いたりすることもなく、その光学ミラー的又は能動的な化粧効果を発揮させることは到底不可能である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本考案はこのような課題の改良を企図しており、そのために役立つ自動車用ホイールとして、ダイヤモンド宝石の表面形状に造形したクリスタルガラスを、銀膜の裏引きによるミラーの多数として、ホイールディスクの周縁部に点在分布させたミラー受け入れ凹溝内へ、その表面のみの張り出し露呈する状態に嵌め付け一体化したことを特徴とするものである。
【0007】
【考案の実施の形態】
以下、図面に基いて本考案の具体的構成を詳述すると、図1〜3はその本考案の第1実施形態に係る3ピース型の自動車用ホイールを示しており、(D)は車軸のハブ(図示省略)に取り付けられるホイールディスクであって、その周縁部(10)の後面にはリム受け止め切欠(11)が付与されている。
【0008】
(R)はタイヤ支持リムであって、別個独立するフロントリム(12)とリヤーリム(13)との一対から成り、その両リム(12)(13)からは上記ホイールディスク(D)への取付フランジ(14)(15)が内向き一体的に張り出されている。
【0009】
そして、そのフロントリム(12)とリヤーリム(13)との両取付フランジ(14)(15)が、上記ホイールディスク(D)のリム受け止め切欠(11)
へ嵌合された上、その後側から両取付フランジ(14)(15)を貫通しつつ、ホイールディスク(D)の周縁部(10)へ螺入締結されるボルト(B)の多数によって、剛性に組立一体化されている。
【0010】
そのボルト(B)としては、特に張り出しフランジ(16)を備えたものが好ましい。(17)はボルト(B)を受け入れるために、ホイールディスク(D)
の周縁部(10)に穿設された盲状のネジ孔、(18)(19)は上記リム(12)(13)の両取付フランジ(14)(15)に貫通形成されたバカ孔である。
【0011】
上記自動車用ホイールの組立状態において、そのボルト(B)はホイール回転軸線とほぼ平行に延在しているが、これをホイールディスク(D)の前側から目視することは不可能である。尚、上記フロントリム(12)とリヤーリム(13)との何れか一方をホイールディスク(D)と連続一体に作成して、これに残る他方をボルト(B)により締結固定した2ピース型や、フロント側とリヤー側との連続一体なリム(R)を、ホイールディスク(D)とボルト(B)により締結固定した2ピース型などの組立式自動車用ホイールについても、本考案を適用実施することができる。
【0012】
(20)は上記ホイールディスク(D)の周縁部(10)に、その前面から陥没する一定の深さ(d)として点在分布された多数のミラー受け入れ凹溝であり、ここには後述のミラー(M)が嵌め付け一体化されることとなる。
【0013】
その場合、図示の実施形態では各ミラー受け入れ凹溝(20)を、上記ボルト(B)の軸線(X−X)上に配列設置しているが、そのボルト(B)の隣り合う相互間へ配設しても勿論良い。
【0014】
上記ミラー(M)は図4〜8に示すように、クリスタルガラス(21)からダイヤモンド宝石の表面形状にカット加工されたものであり、その截頭角錐型をなす表面(21a)が透明として、又フラットな裏面(21b)に銀膜(22)が裏引き状態に塗布されている。
【0015】
そして、このようなミラー(M)の裏面(21b)が上記ホイールディスク(D)の周縁部(10)に対応形成されたミラー受け入れ凹溝(20)内へ、図4の拡大図に示すように、接着剤(23)を介して嵌め付け一体化されているのである。
【0016】
そのため、そのホイールディスク(D)における周縁部(10)の前面から一定高さ(h)だけ張り出し露呈するミラー(M)の表面(21a)を透視した場合、そのミラー(M)の裏面(21b)に施された銀色が、言わば屈折・反射した光輝状態に看取される結果となり、これによって本考案の自動車用ホイールに光学的な化粧効果を与えることができる。
【0017】
この点、図示の実施形態では上記ミラー(M)の表面(21a)を截頭八角錐型にカット加工しているが、その八角形以外の角錐型に造形しても良く、その多角形に造形すればする程、光の複雑な屈折・反射作用を得ることができる。又、上記ミラー(M)とその受け入れ凹溝(20)の大きさは、自動車用ホイールの大きさなどに応じて適当に設定すれば良い。
【0018】
更に、上記ミラー(M)に裏引きする銀膜(22)はその塗布に代えて、銀箔やホットスタンプなどの手段により、そのミラー(M)の裏面(21b)に設置することも考えられる。
【0019】
次に、図9は先の図8と対応する本考案の第2実施形態を示しており、これから明白なように、上記ミラー(M)の裏面(21b)とその銀膜(22)との相互間へ、着色塗料の塗布による赤色や青色、黄金色、緑色などの希望する着色カラーを与えて、これをミラー(M)の表面(21a)から透視し得るように定めても良い。(24)はその着色カラー膜である。
【0020】
図示省略してあるが、その着色カラー膜(24)を介挿設置することに代えて、上記ミラー(M)となるクリスタルガラス(21)自身に着色カラーを与えることにより、上記と同じ効果を発揮させることも可能である。
【0021】
図10、11は先の図1、2と対応する本考案の第3実施形態として、ホイールディスク(D)とタイヤ支持リム(R)とが連続一体に鋳造された1ピース型の自動車用ホイールを示しており、そのディスク(D)における周縁部(10)
の前面に点在分布させたミラー受け入れ凹溝(20)内へ、上記ミラー(M)を嵌め付け固定している。
【0022】
これによれば、その自動車用ホイールを前側から見た場合、多数の点在分布するミラー(M)が言わば上記ボルト(B)のダミーとして、2ピース型又は3ピース型の組立式自動車用ホイールを印象づけるため、その1ピース型の自動車用ホイールに興趣変化に富む化粧効果を、容易に与えることができることとなる。
【0023】
【考案の効果】
以上のように、本考案の自動車用ホイールではその構成上、ダイヤモンド宝石の表面形状に造形したクリスタルガラス(21)を、銀膜(22)の裏引きによるミラー(M)の多数として、ホイールディスク(D)の周縁部(10)に点在分布させたミラー受け入れ凹溝(20)内へ、その表面(21a)のみの張り出し露呈する状態に嵌め付け一体化してあるため、冒頭に述べた従来技術の課題を完全に改良できる効果がある。
【0024】
即ち、本考案の上記構成によれば、ホイールディスク(D)の周縁部(10)
に点在分布する多数のミラー受け入れ凹溝(20)内へ、クリスタルガラス(21)からダイヤモンド宝石の表面形状に造形されたミラー(M)が、その表面(21a)の一定高さ(h)だけ張り出し露呈する状態として、悉く接着剤(23)により嵌め付け一体化されているため、その表面(21a)に光を受けると、裏引きされた銀膜(22)の銀色が、屈折・反射した光輝状態に看取される結果となり、自動車用ホイールの前面に光学的なアクセントの付与による斬新な化粧効果を発揮させることができ、冒頭に述べた公知考案の化粧板(4)と異なって、その色褪せを生じるおそれもなく、耐久性に優れる。
【0025】
しかも、上記ミラー(M)はそれ自体別個独立しており、ボルト(B)に嵌め付けられたものではなく、上記のようにホイールディスク(D)のミラー受け入れ凹溝(20)内へ嵌め付け使用されるようになっているため、その大きさをボルト(B)の頭部による制限を受けることなく、自由自在に設定できることは勿論、ホイールディスク(D)とタイヤ支持リム(R)との組立式自動車用ホイールのみならず、その両者の連続一体に鋳造された1ピース型の自動車用ホイールに対しても、一切の制約を受けることなく適用実施できる効果がある。
【0026】
特に、請求項2の構成を採用するならば、そのクリスタルガラス(21)の着色カラーによって、従来のメッキ処理や冒頭に述べた公知考案の化粧板(4)では到底得られない赤色や青色、緑色などの各種希望する発色の光輝状態を発揮させることができ、その興趣変化に富む優美な化粧効果を得られるのである。
【0027】
そして、このような効果は請求項3の構成を採用することにより、一層容易に達成することができ、多品種の生産に著しく有益である。
【0028】
更に、請求項4の構成を採用するならば、上記ホイールディスク(D)とタイヤ支持リム(R)との連続一体な1ピース型自動車用ホイールを、その点在分布する多数のミラー(M)によって、あたかも2ピース型や3ピース型の組立式自動車用ホイールに印象づけることができる効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る自動車用ホイールの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1の2−2線に沿う拡大断面図である。
【図3】図2の一部を抽出して示す分解斜面図である。
【図4】図2の一部を抽出して示す拡大断面図である。
【図5】ミラーを抽出して示す斜面図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】図5の正面図である。
【図8】図7の8−8線断面図である。
【図9】図8に対応する本考案の第2実施形態を示す断面図である。
【図10】図1に対応する本考案の第3実施形態を示す一部省略の正面図である。
【図11】図10の11−11線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
(10)・周縁部
(14)・取付フランジ
(15)・取付フランジ
(20)・ミラー受け入れ凹溝
(21)・クリスタルガラス
(21a)・表面
(21b)・裏面
(22)・銀膜
(24)・着色カラー膜
(B)・ボルト
(D)・ホイールディスク
(M)・ミラー
(R)・タイヤ支持リム
(X−X)・ボルトの軸線

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】ダイヤモンド宝石の表面形状に造形したクリスタルガラス(21)を、銀膜(22)の裏引きによるミラー(M)の多数として、ホイールディスク(D)の周縁部(10)に点在分布させたミラー受け入れ凹溝(20)内へ、その表面(21a)のみの張り出し露呈する状態に嵌め付け一体化したことを特徴とする自動車用ホイール。
【請求項2】ミラー(M)となるクリスタルガラス(21)に着色カラーを与えると共に、その表面(21)を截頭八角錐型にカット加工したことを特徴とする請求項1記載の自動車用ホイール。
【請求項3】クリスタルガラス(21)とこれに裏引きされた銀膜(22)との相互間へ、別個な着色カラー膜(24)を介挿設置したことを特徴とする請求項1記載の自動車用ホイール。
【請求項4】タイヤ支持リム(R)の内向き取付フランジ(14)(15)をホイールディスク(D)の周縁部(10)へ、その後側から螺入締結するボルト(B)の多数によって組立一体化すると共に、その各ボルト(B)の軸線(X−X)上か又はボルト(B)の隣り合う相互間へ、ミラー受け入れ凹溝(20)を配列設置したことを特徴とする請求項1記載の自動車用ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【登録番号】第3053301号
【登録日】平成10年(1998)8月5日
【発行日】平成10年(1998)10月27日
【考案の名称】自動車用ホイール
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平10−3021
【出願日】平成10年(1998)4月17日
【出願人】(396006804)株式会社タケチプロジェクト (2)