自動車用マット
【課題】ズレ防止性に優れる自動車用マットであって、自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、スムーズな位置調節が可能な自動車用マットを提供すること。
【解決手段】多数の係止突起13を設けた樹脂バッキング12を張り付けた自動車用マットにおいて、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面には係止力がない切欠部が形成されており、該自動車用マットを自動車床面30に敷設したとき、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の係止力がない切欠部が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする。
【解決手段】多数の係止突起13を設けた樹脂バッキング12を張り付けた自動車用マットにおいて、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面には係止力がない切欠部が形成されており、該自動車用マットを自動車床面30に敷設したとき、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の係止力がない切欠部が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズレ防止機能に優れる自動車用マットに関する。詳細には、該自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、スムーズな位置調節が可能な自動車用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車床面上にはパイル糸を打ち込んだカーペットやフェルトからなるファーストカーペットが張り付けられている。このため、その上に自動車用マットを敷設した場合、自動車床面と自動車用マットとの間の摩擦力が小さいので、乗り降りの度毎に又は足を動かす毎に僅かずつズレが生じ、そのズレは結果的に大きなズレとなって、該自動車用マットが自動車床面の本来置かれるべき位置から大きく外れてしまうことがあった。
【0003】
このため、従来より、自動車床面に敷設される自動車用マットには、例えば図24及び図25に示すように、マット本体の裏面側に自動車床面上に張り付けられるファーストカーペットに入り込んでこれを係止して該マットのズレを防止する多数の係止突起3を形成した樹脂バッキング2を張り付けたものが多数提案されている(例えば特許文献1及び2)
【0004】
近年、運転席側に敷かれた自動車用マットが前方側に大きくズレて運転席のブレーキペダルの下に入り込み、ブレーキ操作ができなくなり、この結果、事故が発生したという事例が米国において発生し、大きな社会問題となった。この事件をきっかけに自動車用マットのズレが再びクローズアップされ、自動車業界をはじめ、関連する用品業界においても、自動車床面に敷設する自動車用マットのズレを確実に防止するという要求が高まっている。
【0005】
一方、例えば図24及び図25に示すように、マット本体の裏面側に多数の係止突起3を形成した樹脂バッキング2を張り付けた自動車用マットにあっては、前記係止突起3が全方向にズレ防止性を発揮するようになっているため、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットの全方向へのズレ防止性が却って邪魔になり、スムーズな位置調節ができないという不具合があった。また、自動車用マットを自動車床面に敷設する作業は、屈み込んで行うため、その位置調節は煩雑な作業でもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−175248号公報
【特許文献2】特開2000−108753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ズレ防止性に優れる自動車用マットであって、自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、スムーズな位置調節が可能な自動車用マットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、マット本体の裏側に多数の係止突起を設けた樹脂バッキングを張り付けた自動車用マットにおいて、
前記樹脂バッキングの各係止突起の周面には係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする自動車用マットをその要旨とした。
【0009】
請求項2に記載の発明にあっては、樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって係止力がない部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【0010】
請求項3に記載の発明にあっては、樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって該切欠部以外の部分に比べて係止力が小さい部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【0011】
請求項4に記載の発明は、樹脂バッキングの各係止突起の周面には複数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には係止片がない部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止片がない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【0012】
請求項5に記載の発明は、樹脂バッキングの各係止突起の周面には複数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には前記係止片に比べて高さが低い係止片が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起周面の高さが低い係止片が形成された部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動車用マットにあっては、マット本体の裏面側に取り付けた樹脂バッキングの各係止突起の周面には係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が形成されており、該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキングの各係止突起が自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んで、これを係止することで、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0014】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキングの各係止突起の周面に形成された係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットのスムーズな位置調節ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングを示す要部平面図。
【図2】図1に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図3】図1に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大斜視図。
【図4】図1に示す自動車用マットの自動車床面に敷設したときの後側から前側を見た要部拡大断面図。
【図5】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングの別例を示す要部平面図。
【図6】図5に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図7】図6に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図8】図6に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図9】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図10】図9に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図11】図9に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大斜視図。
【図12】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図13】図12に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図14】図12に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図15】図12に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図16】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図17】図16に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図18】図16に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図19】図16に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図20】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図21】図20に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図22】図20に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図23】図20に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図24】従来の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図25】図24に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の自動車用マットを図面に従ってさらに詳しく説明する。本発明の自動車用マットは、図1〜図4に示すように、マット本体11とこのマット本体11の裏面側に取り付けた樹脂バッキング12とからなる。マット本体11は、不織布、紙、布、フェルトあるいはこれらの複合物からなる基布14にパイル糸15を所定のボリュームで略U字状となるように打ち込み、抜け止めのためのプレコート16を施したものである。尚、本発明における基布14は、パイル糸15を打ち込まない基布14のみからなる形態を採ることもできる。
【0017】
また、マット本体11を構成する基布14には、例えばチタン、セリウム、亜鉛、銅といった光触媒粒子表面をフッ素系多孔質層で被覆した抗菌性防臭粒子を繊維表面に付着させた抗菌性防臭繊維を含ませたもの、あるいは従来公知の抗菌剤をバインダーと共にシートの構成繊維表面に塗布または散布して付着させたものを用いることができる。この場合、マット本体11は抗菌性を有するようになり、室内の悪臭を効率よく吸収しこれを分解または吸着除去するようになる。
【0018】
また、マット本体11を構成する基布14には、図4に示すように、導電性繊維を含んでいて静電気の空中放電機能を有する放電紙17を積層すると共に、これら放電紙17と基布14の積層物に導電性繊維を含むパイル糸15aを略U字状となるように打ち込んでなるものを用いることもできる。また、図4に示すように、基布14の裏面側に導電性繊維を含むフェルト層18を設けて静電気を引き込む容量を増大させることもできる。
【0019】
この場合、人が該自動車用マットに接触したとき、人体に帯電した静電気をパイル糸15aに含まれる導電性繊維が瞬時に自動車用マット側へと導き、自動車用マット内の放電紙17によって空中放電されるようになる。また、静電気の一部は、放電紙17を経由してパイル糸15aに含まれる導電性繊維を通じて空中放電されるようになる。
【0020】
尚、上記放電紙17及びパイル糸15aに含まれる導電性繊維としては、特に限定されず、例えば炭素繊維、金属繊維、導電性セラミック繊維などの無機繊維、合成繊維を主材とし、この繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属をメッキしたメッキ繊維、繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属を練り込んだもの、あるいは繊維成分中に導電性を有する樹脂を含ませた繊維などを用いることができる。
【0021】
樹脂バッキング12は、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの高分子、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのゴム系高分子、またはこれらを複数種混合したものによって構成されている。図面に示す樹脂バッキング12には、防音性、成形性、機械的強度に優れるSBSを用いた。
【0022】
また、図示の樹脂バッキング12は発泡成形されており、該樹脂バッキング12内には無数の気泡12aが存在している。また、樹脂バッキング12には多数の貫通孔19が貫通しているため、樹脂バッキング12内の互いに連通する微細孔12aが貫通孔19に開口し、各貫通孔19内面に微細孔12aと繋がる無数の吸音穴が形成されるようになっている。このため、樹脂バッキング12の貫通孔19に浸入してきた音は、貫通孔19内に開口している吸音穴16aを通じて、樹脂バッキング12全体に広がる無数の微細孔12aへと広がり、再び衝突を繰り返すことになり、効果的な音の減衰がなされるようになっている。
【0023】
尚、樹脂バッキング12には、必要に応じて充填剤、増粘剤、分散剤を加えることもできる。充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類等が挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ等が例示できる。
【0024】
この樹脂バッキング12の裏面には多数の係止突起13が形成されている。図1〜図4に示す形態では、バッキング層13裏面に同じく略円錐状をなし、その周面の一部が該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aによって係止力がない部分が構成されている。
【0025】
図1及び図4に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力がない切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット30内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0026】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット30上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力がない切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0027】
次に、図5〜図8に示す形態について説明する。この形態では、樹脂バッキング12の裏面に略円錐状をなす多数の係止突起13が形成されており、その周面の一部が該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aが他の部分に比べて高さが低く、その分だけ係止力が小さく構成されている。
【0028】
図5に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力が小さい切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット30内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0029】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力が小さい切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0030】
次に、図9〜図11に示す形態について説明する。この形態では、樹脂バッキング12の裏面に星形の錐状をなす多数の係止突起13が形成されており、その周面の一部が該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aによって係止力がない部分が構成されている。
【0031】
図9〜図11に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力がない切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0032】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット30上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力がない切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0033】
次に、図12〜図15に示す形態について説明する。この形態では、樹脂バッキング12の裏面に星形の錐状をなす多数の係止突起13が形成されており、その周面の一部が該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aが他の部分に比べて高さが低く、その分だけ係止力が小さく構成されている。
【0034】
図12〜図15に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力が小さい切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0035】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力が小さい切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0036】
次に、本発明の自動車用マットのさらに別の形態について説明する。図16〜図23に示す形態は、樹脂バッキング12の裏面側に多数の係止突起13を設けたものであって、各係止突起13周面に複数の係止片13bを形成したものである。図16〜図19に示す形態は、係止突起13の周面の一部に係止片13bがない部分が形成されており、該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の係止片13bがない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の係止片13bが自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0037】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13周面の係止片13bがない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0038】
図20〜図23に示す形態は、樹脂バッキング12の各係止突起13の周面には多数の係止片13bが形成されており、前記係止突起周面の一部には前記係止片13bに比べて高さが低い係止片13cが形成されており、該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキング12の各係止突起13周面の高さが低い係止片13cが形成された部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起の係止片13bが自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0039】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13周面に形成された係止力が小さい高さの低い係止片13cが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0040】
尚、本発明の自動車用マットは、図面に示した例に限定されず、例えば樹脂バッキングの係止突起が、該自動車用マットを自動車床面に敷設したときに、自動車のフロント方向及び左右方向に向かう程に高密度となるように設けることもでき、この場合、より効果的にマットのズレを防止できるようになる。
【0041】
尚、本発明は、例えば樹脂バッキングに多数の貫通孔を設けて吸音性を高めたり、また、マット本体に撥水剤、抗菌剤、防ダニ剤、防かび剤及びフタロシアニン化合物の少なくとも1種を含ませて、撥水性、抗菌性、防ダニ性及び防かび性といった性能を付与するなど、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
11・・・マット本体
12・・・樹脂バッキング
13・・・係止突起
13a・・・切欠部
13b・・・係止片
13c・・・高さの低い係止片
14・・・基布
15・・・パイル
30・・・ファーストカーペット
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズレ防止機能に優れる自動車用マットに関する。詳細には、該自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、スムーズな位置調節が可能な自動車用マットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車床面上にはパイル糸を打ち込んだカーペットやフェルトからなるファーストカーペットが張り付けられている。このため、その上に自動車用マットを敷設した場合、自動車床面と自動車用マットとの間の摩擦力が小さいので、乗り降りの度毎に又は足を動かす毎に僅かずつズレが生じ、そのズレは結果的に大きなズレとなって、該自動車用マットが自動車床面の本来置かれるべき位置から大きく外れてしまうことがあった。
【0003】
このため、従来より、自動車床面に敷設される自動車用マットには、例えば図24及び図25に示すように、マット本体の裏面側に自動車床面上に張り付けられるファーストカーペットに入り込んでこれを係止して該マットのズレを防止する多数の係止突起3を形成した樹脂バッキング2を張り付けたものが多数提案されている(例えば特許文献1及び2)
【0004】
近年、運転席側に敷かれた自動車用マットが前方側に大きくズレて運転席のブレーキペダルの下に入り込み、ブレーキ操作ができなくなり、この結果、事故が発生したという事例が米国において発生し、大きな社会問題となった。この事件をきっかけに自動車用マットのズレが再びクローズアップされ、自動車業界をはじめ、関連する用品業界においても、自動車床面に敷設する自動車用マットのズレを確実に防止するという要求が高まっている。
【0005】
一方、例えば図24及び図25に示すように、マット本体の裏面側に多数の係止突起3を形成した樹脂バッキング2を張り付けた自動車用マットにあっては、前記係止突起3が全方向にズレ防止性を発揮するようになっているため、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットの全方向へのズレ防止性が却って邪魔になり、スムーズな位置調節ができないという不具合があった。また、自動車用マットを自動車床面に敷設する作業は、屈み込んで行うため、その位置調節は煩雑な作業でもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−175248号公報
【特許文献2】特開2000−108753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、ズレ防止性に優れる自動車用マットであって、自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、スムーズな位置調節が可能な自動車用マットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、マット本体の裏側に多数の係止突起を設けた樹脂バッキングを張り付けた自動車用マットにおいて、
前記樹脂バッキングの各係止突起の周面には係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする自動車用マットをその要旨とした。
【0009】
請求項2に記載の発明にあっては、樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって係止力がない部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【0010】
請求項3に記載の発明にあっては、樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって該切欠部以外の部分に比べて係止力が小さい部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【0011】
請求項4に記載の発明は、樹脂バッキングの各係止突起の周面には複数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には係止片がない部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止片がない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【0012】
請求項5に記載の発明は、樹脂バッキングの各係止突起の周面には複数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には前記係止片に比べて高さが低い係止片が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起周面の高さが低い係止片が形成された部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マットをその要旨とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動車用マットにあっては、マット本体の裏面側に取り付けた樹脂バッキングの各係止突起の周面には係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が形成されており、該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキングの各係止突起が自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んで、これを係止することで、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0014】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキングの各係止突起の周面に形成された係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットのスムーズな位置調節ができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングを示す要部平面図。
【図2】図1に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図3】図1に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大斜視図。
【図4】図1に示す自動車用マットの自動車床面に敷設したときの後側から前側を見た要部拡大断面図。
【図5】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングの別例を示す要部平面図。
【図6】図5に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図7】図6に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図8】図6に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図9】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図10】図9に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図11】図9に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大斜視図。
【図12】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図13】図12に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図14】図12に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図15】図12に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図16】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図17】図16に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図18】図16に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図19】図16に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図20】本発明の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図21】図20に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【図22】図20に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大正面図。
【図23】図20に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大側面図。
【図24】従来の自動車用マット裏面の樹脂バッキングのさらに別の例を示す要部平面図。
【図25】図24に示す樹脂バッキングに形成された係止突起の拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の自動車用マットを図面に従ってさらに詳しく説明する。本発明の自動車用マットは、図1〜図4に示すように、マット本体11とこのマット本体11の裏面側に取り付けた樹脂バッキング12とからなる。マット本体11は、不織布、紙、布、フェルトあるいはこれらの複合物からなる基布14にパイル糸15を所定のボリュームで略U字状となるように打ち込み、抜け止めのためのプレコート16を施したものである。尚、本発明における基布14は、パイル糸15を打ち込まない基布14のみからなる形態を採ることもできる。
【0017】
また、マット本体11を構成する基布14には、例えばチタン、セリウム、亜鉛、銅といった光触媒粒子表面をフッ素系多孔質層で被覆した抗菌性防臭粒子を繊維表面に付着させた抗菌性防臭繊維を含ませたもの、あるいは従来公知の抗菌剤をバインダーと共にシートの構成繊維表面に塗布または散布して付着させたものを用いることができる。この場合、マット本体11は抗菌性を有するようになり、室内の悪臭を効率よく吸収しこれを分解または吸着除去するようになる。
【0018】
また、マット本体11を構成する基布14には、図4に示すように、導電性繊維を含んでいて静電気の空中放電機能を有する放電紙17を積層すると共に、これら放電紙17と基布14の積層物に導電性繊維を含むパイル糸15aを略U字状となるように打ち込んでなるものを用いることもできる。また、図4に示すように、基布14の裏面側に導電性繊維を含むフェルト層18を設けて静電気を引き込む容量を増大させることもできる。
【0019】
この場合、人が該自動車用マットに接触したとき、人体に帯電した静電気をパイル糸15aに含まれる導電性繊維が瞬時に自動車用マット側へと導き、自動車用マット内の放電紙17によって空中放電されるようになる。また、静電気の一部は、放電紙17を経由してパイル糸15aに含まれる導電性繊維を通じて空中放電されるようになる。
【0020】
尚、上記放電紙17及びパイル糸15aに含まれる導電性繊維としては、特に限定されず、例えば炭素繊維、金属繊維、導電性セラミック繊維などの無機繊維、合成繊維を主材とし、この繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属をメッキしたメッキ繊維、繊維表面に銅や銀、アルミニウムなどの金属を練り込んだもの、あるいは繊維成分中に導電性を有する樹脂を含ませた繊維などを用いることができる。
【0021】
樹脂バッキング12は、例えばスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの高分子、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのゴム系高分子、またはこれらを複数種混合したものによって構成されている。図面に示す樹脂バッキング12には、防音性、成形性、機械的強度に優れるSBSを用いた。
【0022】
また、図示の樹脂バッキング12は発泡成形されており、該樹脂バッキング12内には無数の気泡12aが存在している。また、樹脂バッキング12には多数の貫通孔19が貫通しているため、樹脂バッキング12内の互いに連通する微細孔12aが貫通孔19に開口し、各貫通孔19内面に微細孔12aと繋がる無数の吸音穴が形成されるようになっている。このため、樹脂バッキング12の貫通孔19に浸入してきた音は、貫通孔19内に開口している吸音穴16aを通じて、樹脂バッキング12全体に広がる無数の微細孔12aへと広がり、再び衝突を繰り返すことになり、効果的な音の減衰がなされるようになっている。
【0023】
尚、樹脂バッキング12には、必要に応じて充填剤、増粘剤、分散剤を加えることもできる。充填剤としては、例えば、ポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、タルク、水酸化アルミニウム、酸化アンチモンなどが例示できる。増粘剤としては、例えばポリアクリル酸ソーダ、カルボキシメチルセルローズ、ポリビニルアルコール、カゼイン、発酵多糖類等が挙げられるが、好ましくは低分子量のポリアクリル酸ソーダである。分散剤としては、例えばトリポリリン酸ソーダ、ヘキサメタリン酸ソーダ等が例示できる。
【0024】
この樹脂バッキング12の裏面には多数の係止突起13が形成されている。図1〜図4に示す形態では、バッキング層13裏面に同じく略円錐状をなし、その周面の一部が該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aによって係止力がない部分が構成されている。
【0025】
図1及び図4に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力がない切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット30内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0026】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット30上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力がない切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0027】
次に、図5〜図8に示す形態について説明する。この形態では、樹脂バッキング12の裏面に略円錐状をなす多数の係止突起13が形成されており、その周面の一部が該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aが他の部分に比べて高さが低く、その分だけ係止力が小さく構成されている。
【0028】
図5に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力が小さい切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット30内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0029】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力が小さい切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0030】
次に、図9〜図11に示す形態について説明する。この形態では、樹脂バッキング12の裏面に星形の錐状をなす多数の係止突起13が形成されており、その周面の一部が該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aによって係止力がない部分が構成されている。
【0031】
図9〜図11に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力がない切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0032】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット30上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力がない切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0033】
次に、図12〜図15に示す形態について説明する。この形態では、樹脂バッキング12の裏面に星形の錐状をなす多数の係止突起13が形成されており、その周面の一部が該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠かれており、この切欠部13aが他の部分に比べて高さが低く、その分だけ係止力が小さく構成されている。
【0034】
図12〜図15に示すように、樹脂バッキング12の各係止突起13は、係止力が小さい切欠部13aが後ろ方向、すなわち自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、樹脂バッキング12の各係止突起13の切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13が自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0035】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の周面に形成された係止力が小さい切欠部13aが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0036】
次に、本発明の自動車用マットのさらに別の形態について説明する。図16〜図23に示す形態は、樹脂バッキング12の裏面側に多数の係止突起13を設けたものであって、各係止突起13周面に複数の係止片13bを形成したものである。図16〜図19に示す形態は、係止突起13の周面の一部に係止片13bがない部分が形成されており、該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の係止片13bがない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13の係止片13bが自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0037】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13周面の係止片13bがない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0038】
図20〜図23に示す形態は、樹脂バッキング12の各係止突起13の周面には多数の係止片13bが形成されており、前記係止突起周面の一部には前記係止片13bに比べて高さが低い係止片13cが形成されており、該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキング12の各係止突起13周面の高さが低い係止片13cが形成された部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されている。このため、該自動車用マットを自動車床面に敷設した後、自動車の運転中に運転者または乗員によって自動車の進行方向(前方向)に荷重が加わったときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起の係止片13bが自動車床面のファーストカーペット内部に入り込んでこれを係止し、該自動車用マットのズレを確実に防止するようになっている。
【0039】
一方、この自動車用マットを自動車床面のファーストカーペット上の所定の位置に敷設しようとする場合、該自動車用マットを自動車の後ろ方向に引っ張るときには、前記樹脂バッキング12の各係止突起13周面に形成された係止力が小さい高さの低い係止片13cが自動車の後ろ方向に向かうように配されていることから、該自動車用マットは、スムーズに位置調節ができるようになっている。
【0040】
尚、本発明の自動車用マットは、図面に示した例に限定されず、例えば樹脂バッキングの係止突起が、該自動車用マットを自動車床面に敷設したときに、自動車のフロント方向及び左右方向に向かう程に高密度となるように設けることもでき、この場合、より効果的にマットのズレを防止できるようになる。
【0041】
尚、本発明は、例えば樹脂バッキングに多数の貫通孔を設けて吸音性を高めたり、また、マット本体に撥水剤、抗菌剤、防ダニ剤、防かび剤及びフタロシアニン化合物の少なくとも1種を含ませて、撥水性、抗菌性、防ダニ性及び防かび性といった性能を付与するなど、特許請求の範囲に記載した範囲で自由に変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0042】
11・・・マット本体
12・・・樹脂バッキング
13・・・係止突起
13a・・・切欠部
13b・・・係止片
13c・・・高さの低い係止片
14・・・基布
15・・・パイル
30・・・ファーストカーペット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の係止突起を設けた樹脂バッキングを張り付けた自動車用マットにおいて、
前記樹脂バッキングの各係止突起の周面には係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする自動車用マット。
【請求項2】
樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって係止力がない部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【請求項3】
樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって該切欠部以外の部分に比べて係止力が小さい部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【請求項4】
樹脂バッキングの各係止突起の周面には多数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には係止片がない部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止片がない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【請求項5】
樹脂バッキングの各係止突起の周面には多数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には前記係止片に比べて高さが低い係止片が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起周面の高さが低い係止片が形成された部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【請求項1】
多数の係止突起を設けた樹脂バッキングを張り付けた自動車用マットにおいて、
前記樹脂バッキングの各係止突起の周面には係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止力がない部分又は他の部分に比べて係止力が小さい部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする自動車用マット。
【請求項2】
樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起の頂部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって係止力がない部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【請求項3】
樹脂バッキングの各係止突起が錘状又は半円状に形成されており、前記係止突起の周面の一部を該係止突起のほぼ中央部から底部にかけて切り欠くことにより、その切欠部によって該切欠部以外の部分に比べて係止力が小さい部分を構成したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【請求項4】
樹脂バッキングの各係止突起の周面には多数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には係止片がない部分が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起の係止片がない部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【請求項5】
樹脂バッキングの各係止突起の周面には多数の係止片が形成されており、前記係止突起周面の一部には前記係止片に比べて高さが低い係止片が形成されており、
該自動車用マットを自動車床面に敷設したとき、前記樹脂バッキングの各係止突起周面の高さが低い係止片が形成された部分が自動車の後ろ方向に向かうように配されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用マット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−188078(P2012−188078A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55547(P2011−55547)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000149664)株式会社大和 (35)
【出願人】(592083993)株式会社八千代 (34)
【出願人】(592084004)株式会社祥永 (34)
【Fターム(参考)】
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