説明

自動車用ル−フレ−ル

【課題】脚とル−フレ−ル本体とを確実かつ強固に接続し、接続の信頼性を図るとともに、接着剤の硬化過程におけるル−フレ−ルの養生スペ−スのコンパクト化を図れ、しかも脚とル−フレ−ル本体との接合部の体裁を維持し、接続強度の低下を防止するとともに、前記接続作業の能率向上を図れる、自動車用ル−フレ−ルを提供する。
【解決手段】ル−フパネルに取り付け可能な一対の脚2,3と、該脚の間に架設可能なル−フレ−ル本体1とを備える。 前記脚の接続端部2a,3aを前記ル−フレ−ル本体の端部に嵌合する。 前記接続端部と前記ル−フレ−ル本体の端部とを、接着剤を介して接続した自動車用ル−フレ−ルであること。 前記接続端部周面に複数の凸部15,25を設ける。 前記凸部を前記ル−フレ−ル本体内部に圧入可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脚とル−フレ−ル本体とを確実かつ強固に接続し、接続の信頼性を図るとともに、接着剤の硬化過程におけるル−フレ−ルの養生スペ−スのコンパクト化を図れ、しかも脚とル−フレ−ル本体との接合部の体裁を維持し、接続強度の低下を防止するとともに、前記接続作業の能率向上を図れる、自動車用ル−フレ−ルに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ル−フレ−ルの脚とル−フレ−ル本体との接続手段として、ボルト・ナットやビスを使用する代わりに、脚の一端部に接着剤を塗布し、これをル−フレ−ル本体の端部に嵌合して、接続したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記接着剤として、脚とル−フレ−ル本体との接合部に作用する荷重や振動を吸収し、それらの負担を軽減させるために、硬化後に適宜な柔軟性と可撓性を奏する、例えば反応性ホットメルトのような接着剤が使用され、この種の接着剤は、硬化過程で水分と反応して接着力を増強することが知られている。
【0004】
したがって、前記接着剤の硬化過程では、脚とル−フレ−ル本体との接続部を無負荷状態に養生させて置く必要があり、そのために硬化過程のル−フレ−ル本体を横置きに並べて養生させていた。
しかし、ル−フレ−ルは比較的長尺で大きなスペ−スを占有するため、前記養生スペ−スを確保することが難しいという問題があった。
【0005】
このため、硬化過程のル−フレ−ルを、しばしば縦置きに宙吊り状態で並べて養生させる方法が採られていた。
しかし、その場合は脚またはル−フレ−ル本体に重力が作用し、それらが移動して接合部が離間し、体裁が悪くなるとともに、それらが接着剤から剥離して接合強度が低下するという問題があった。特に、この問題は空気中の水分が低下する冬季は、所定の接着強度を得るのに時間が掛かるため、前記接続トラブルの発生が懸念されていた。
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第2587183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題を解決し、脚とル−フレ−ル本体とを確実かつ強固に接続し、接続の信頼性を図るとともに、接着剤の硬化過程におけるル−フレ−ルの養生スペ−スのコンパクト化を図れ、しかも脚とル−フレ−ル本体との接合部の体裁を維持し、接続強度の低下を防止するとともに、前記接続作業の能率向上を図れる、自動車用ル−フレ−ルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ル−フパネルに取り付け可能な一対の脚と、該脚の間に架設可能なル−フレ−ル本体とを備え、前記脚の接続端部を前記ル−フレ−ル本体の端部に嵌合し、かつこれらを接着剤を介して接続した自動車用ル−フレ−ルにおいて、前記脚の接続端部周面に複数の凸部を設け、該凸部を前記ル−フレ−ル本体内部に圧入可能にし、前記凸部を介しル−フレ−ル本体と脚を確実に接続し、接着剤の硬化前の前記接続を実現し、接着剤の硬化過程におけるル−フレ−ルの養生スペ−スのコンパクト化を図るとともに、脚とル−フレ−ル本体との接合部の体裁を維持し、その接合強度の低下を防止し、接着剤の硬化後はル−フレ−ル本体と脚とを強固に接続し、接続の信頼性を図るようにしている。
請求項2の発明は、前記脚の接続端部に通孔を形成し、該通孔をル−フレ−ル本体内部に連通可能に配置するとともに、前記脚の接続端部の隣接周面に通気口を形成し、該通気口を前記通孔に連通可能にして、水分と反応して硬化し接着力を増強する接着剤に対し、その硬化と接着力の増強を促進し、脚とル−フレ−ル本体との接続作業の能率を向上するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明は、脚の接続端部周面に複数の凸部を設け、該凸部をル−フレ−ル本体内部に圧入可能にしたから、前記凸部を介しル−フレ−ル本体と脚を確実に接続し、接着剤の硬化前の前記接続を実現し、接着剤の硬化過程におけるル−フレ−ルの養生スペ−スのコンパクト化を図れるとともに、脚とル−フレ−ル本体との接合部の体裁を維持し、かつその接合強度の低下を防止でき、接着剤の硬化後はル−フレ−ル本体と脚とを強固に接続し、接続の信頼性を図ることができる。
請求項2の発明は、前記脚の接続端部に通孔を形成し、該通孔をル−フレ−ル本体内部に連通可能に配置するとともに、前記脚の接続端部の隣接周面に通気口を形成し、該通気口を前記通孔に連通可能にしたから、水分と反応して硬化し接着力を増強する接着剤に対し、その硬化と接着力の増強を促進し、脚とル−フレ−ル本体との接続作業の能率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を対をなす一方のル−フレ−ルに適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図7において1はル−フレ−ルを構成する金属管製のル−フレ−ル本体で、対を構成する他のル−フレ−ル本体1(図示略)と共に自動車のル−フ(図示略)上を左右かつ前後方向に配置されている。
前記ル−フレ−ル本体1は、アルミニウムを押し出しまたは引き出し加工し、これを三次元方向に湾曲して成形され、その断面形状を略異形の三角形または異形の台形状に形成している。
【0011】
前記ル−フレ−ル本体1の前後端部の開口縁部に、大きな面取部(図示略)が形成され、その開口端部に合成樹脂製の前後側脚2,3の接続端部2a,3aが圧入されている。
前記前後側脚2,3の下面は、自動車のル−フパネル(図示略)に取り付け可能な湾曲面状に成形され、その所定位置にボルト挿通孔4,5が形成されている。また、前後側脚2,3の前後方向および左右方向に複数の補強ビ−ド6〜8、9〜11が突設され、該補強ビ−ド6〜8、9〜11上に前後側キャップ12,13が掛け止められている。
【0012】
前記圧入は、例えばエア−シリンダ−等のアクチェ−タを駆使した専用機(図示略)を介して行なわれ、該専用機は離間して対向配置された一対の脚ホルダ−と、前記ル−フパネル(図示略)と同一の湾曲面に形成したセット面とを有し、該セット面に前後側脚2,3の下面を密着後、接続端部2a,3aの間にル−フレ−ル本体1を挿入し、一対の脚ホルダ−をアクチェ−タを介して近接離反動させ、ル−フレ−ル本体1の両端部に前後側脚2,3を圧入可能にしている。
【0013】
前記接続端部2aはル−フレ−ル本体1の貫通穴14に嵌合可能にされ、その断面形状は貫通穴14と略同形に成形され、その上下側周面にビ−ド状の凸部15,16が軸方向に成形されている。
前記凸部15,16の断面は偏平な湾曲面状に形成され、それらの頂部を貫通穴14の内面に圧接していて、前記接続端部2aの外周と貫通穴14の内面との間に、所定温度に加温した接着剤17が充填されている。
前記接着剤17は、水分と反応して接着力を増強し、固化後は適宜な柔軟性と可撓性を有する、例えば反応性のホットメルトのような接着剤が使用される。
【0014】
前記接続端部2aの端面に通孔18〜20が開口され、これらは互いに仕切壁21,22で区画されていて、このうち中央に配置された通孔19が通気口23に連通している。
前記通気口23は、接続端部2aに隣接する前側脚2の先端部周面に開口形成され、接続端部2aに接着剤17を塗布し、これを貫通穴14に圧入後に、通気口23および通孔19を介して、空気中の水分を内側の接着剤17へ供給可能にしている。
図中、24は前側脚2の先端部周面に突設した係止凸部で、前側キャップ12の先端部内面と係合可能にされている。
【0015】
また、前記接続端部3aはル−フレ−ル本体1の貫通穴14に嵌合可能にされ、その断面形状は貫通穴14と略同形に成形され、その上下側周面にビ−ド状の凸部25,26が軸方向に成形されている。
前記凸部25,26の断面は偏平な湾曲面状に形成され、それらの頂部を貫通穴14の内面に圧接していて、前記接続端部3aの外周と貫通穴14の内面との間に接着剤27が充填されている。
【0016】
前記接続端部3aの端面中央に矩形断面の通孔28が開口され、該通孔28が通気口29に連通している。前記通気口29は、接続端部3aに隣接する後側脚3の先端部周面に開口形成され、接続端部3aに接着剤27を塗布し、これを貫通穴14に圧入後に、通気口29を介して空気中の水分を内側の接着剤27へ供給可能にしている。
【0017】
図中、30は後脚3の先端部周面に突設した係止凸部で、後側キャップ13の先端部内面と係合可能にされている。この他、図中31,32はル−フレ−ル本体1の端部側の下面に形成した透孔で、ル−フレ−ル本体1内の水抜きまたは排気孔に使用可能にしている
【0018】
なお、前述の実施形態はアルミニウム製のル−フレ−ル本体1に、適宜な弾性変形を期待できる合成樹脂製の前後側脚2,3の凸部15,25,26を嵌合し圧入しているが、例えばアルミニウム若しくは亜鉛合金ダイカスト製の前後側脚2,3に適用することも可能であり、その場合は弾性変形の低下分、凸部15,25,26の突出高さを低下する必要がある。
また、凸部15,25,26をビ−ド状に成形する他に、これを略半球状に成形して、散点状に配置することも可能である。
【0019】
このように構成した自動車用ル−フレ−ルは、前後側脚2,3に対し、その接続端部2a,3aの周面に凸部15,25,26を設けるとともに、接続端部2a,3aの端面に通孔19,28を開口し、これらを前記周面に隣接する前後側脚2,3の先端部周面に形成した通気口23,29に連通可能に形成し、ル−フレ−ル本体1には特別な構成を要しないから、既存のル−フレ−ル本体1を使用し得る。
この場合、前記凸部15,25,26や通孔19,28、通気口23,29は成形加工によって製作できるから、容易かつ均質に製作できる。
【0020】
次に、前記製作した前後側脚2,3をル−フレ−ル本体1に接続する場合は、一対の前後側脚2,3と所定長さのル−フレ−ル本体1を用意し、このうち前後側脚2,3を専用機(図示略)の脚ホルダ−に装着し、その下面を前記セット面に密着して、接続端部2a,3aを対向配置する。
この後、ル−フレ−ル本体1の両端部内面に、所定温度に加温したゲル状の接着剤17,27を適宜手段で塗布し、これを接続端部2a,3aに挿入する。
【0021】
そして、前記専用機を作動し、前記接続端部2a,3aをル−フレ−ル本体1の端部の貫通穴14に圧入する。
このようにすると、ル−フレ−ル本体1内部の空気の大半は通孔19,28を介して連通する通気口23,29から外部へ押し出され、また前記空気の一部が透孔31,32から外部へ押し出されて、ル−フレ−ル本体1の前記圧入を容易かつ速やかに行なえる。
【0022】
前記圧入は、前記凸部15,25,26が弾性変形し、その頂部が貫通穴14の内面を圧接して行なわれ、接続端部2a,3aの基部側の段部がル−フレ−ル本体1の端部に当接したところで、前記圧入を停止し、ル−フレ−ル本体1の両端部に前後側脚2,3を接続する。この状況は図3および図6のようである。
【0023】
前記圧入後のル−フレ−ル本体1の内部は、接続端部2a,3aと貫通穴14との間に接着剤17,27が充填され、該接着剤17,27が前記凸部15,25,26で区画されている。この状況は図4および図7のようである。
【0024】
この後、前記専用機を解除作動し、前後側脚2,3を接続したル−フレ−ル本体1を取り外し、これを所定の養生スペ−スに移動する。
この場合、接着剤17,27は徐々に冷却する一次硬化途中で、充分な接着強度を形成していないが、凸部15,25,26が嵌合穴14の内面に圧入して、前後側脚2,3を所定の強度で接続しているから、前後側脚2,3が周辺部と接触しても、圧入状態が変化したり接続位置が変化したりしない。それゆえ、前記接続後にル−フレ−ル本体1を速やかに取り外して移動することができる。
【0025】
したがって、従来のように接着剤17,27が一次硬化するまで、前後側脚2,3を接続後のル−フレ−ル本体1を専用機に保持させて置く必要がなく、その分専用機の使用が可能になって、ル−フレ−ルの生産性が向上する。
【0026】
しかも、ル−フレ−ル本体1は前記圧入によって、前後側脚2,3を所定強度で接続しているから、縦置き状態や宙吊り状態で養生させることができ、その分養生スペ−スのコンパクト化を図れるとともに、そのようにしても前後側脚2,3またはル−フレ−ル本体1が重力作用で移動したり、接着剤17,27から剥離することがなく、接着強度の低下や接合部の体裁の低下を防止し得る。
【0027】
前記ル−フレ−ルの養生時は、前後側キャップ12,13が取り付けられていないから、通気口23,29が大気に開口している。このため、通気口23,29から多量の空気が通孔19,28に導かれて貫通穴14へ移動し、また透孔31,32からも一部の空気が取り入れられ、これらの空気中の水分が接着剤17,27に接触かつ浸透して、接着剤17,27の硬化と接着強度の増強を促す。
【0028】
したがって、接着剤17,27が速やかに硬化し、接着強度が速やかに増強される一方、前記硬化後は適当な柔軟性と可撓性を奏し、また凸部15,25,26による圧入力と接着剤17,27の接着力によって、ル−フレ−ル本体1と前後側脚2,3とを強固に接続し得る。
【0029】
前記接着剤17,27の硬化後、前後側脚2,3に前後側キャップ12,13が取り付け、ボルト・ナットやビスを介して前後側脚2,3をル−フパネル上に取り付ければ、ル−フレ−ルの所望の利用が可能になる。
【0030】
この場合、前述のように接着剤17,27は、硬化後に適当な柔軟性と可撓性を有するから、ル−フレ−ル上の荷物の重量や振動が吸収されて前後側脚2,3に伝わり、ル−フレ−ル本体1と前後側脚2,3との接合部の負担を軽減し、接合部の変形や破損を防止する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
このように本発明の自動車用ル−フレ−ルは、脚とル−フレ−ル本体とを確実かつ強固に接続し、接続の信頼性を図れるとともに、接着剤の硬化過程におけるル−フレ−ルの養生スペ−スのコンパクト化を図れ、しかも脚とル−フレ−ル本体との接合部の体裁を維持し、接続強度の低下を防止するとともに、前記接続作業の能率向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の要部を分解して示す斜視図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す斜視図で、前側脚の接合端部を示している。
【図3】図1のA−A線に沿う断面図で、前側脚の接合端部に接着剤を介してル−フレ−ル本体を接続し、また前側脚に前側キャップを取り付けた状況を示している。
【図4】図2のB−B線に沿う拡大断面図である。
【0033】
【図5】図1の要部を拡大して示す斜視図で、後側脚の接合端部を示している。
【図6】図5のC−C線に沿う断面図で、後側脚の接合端部に接着剤を介してル−フレ−ル本体を接続し、また後側脚に後側キャップを取り付けた状況を示している。
【図7】図5のD−D線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ル−フレ−ル本体
2 脚(前側脚)
2a 接続端部
3 脚(後側脚)
3a 接続端部
15 凸部
17 接着剤
【0035】
19 通孔
23 通気口
25 凸部
26 凸部
27 接着剤
28 通孔
29 通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ル−フパネルに取り付け可能な一対の脚と、該脚の間に架設可能なル−フレ−ル本体とを備え、前記脚の接続端部を前記ル−フレ−ル本体の端部に嵌合し、かつこれらを接着剤を介して接続した自動車用ル−フレ−ルにおいて、前記脚の接続端部周面に複数の凸部を設け、該凸部を前記ル−フレ−ル本体内部に圧入可能にしたことを特徴とする自動車用ル−フレ−ル。
【請求項2】
前記脚の接続端部に通孔を形成し、該通孔をル−フレ−ル本体内部に連通可能に配置するとともに、前記脚の接続端部の隣接周面に通気口を形成し、該通気口を前記通孔に連通可能にした請求項1記載の自動車用ル−フレ−ル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−62558(P2007−62558A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251305(P2005−251305)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(592049564)理研精工株式会社 (9)
【Fターム(参考)】