自動車用ワイヤハーネスの製造方法および自動車用ワイヤハーネス
【課題】樹脂成形品からなるプロテクタに替えて、水硬性テープを外装材として用いることによりワイヤハーネスを小径化する。
【解決手段】複数本の電線wを集束した電線群Wに水硬性テープ11が巻き付けられ、該水硬性テープ11に水を吸収させて硬化させ、該水硬性テープ11により前記電線群Wを方向規制すると共に保護しており、前記電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11の外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接される平面部11aを設けている。
【解決手段】複数本の電線wを集束した電線群Wに水硬性テープ11が巻き付けられ、該水硬性テープ11に水を吸収させて硬化させ、該水硬性テープ11により前記電線群Wを方向規制すると共に保護しており、前記電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11の外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接される平面部11aを設けている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ワイヤハーネス方法および自動車用ワイヤハーネスに関し、詳しくは、ワイヤハーネスの外装材として樹脂成形品からなるプロテクタを不要とし、ワイヤハーネスを小径化するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される各種の電装品の配線に用いられるワイヤハーネスを保護及び方向規制するために、ワイヤハーネスを収容する樹脂成形品からなるプロテクタが設けられている。
前記プロテクタはワイヤハーネスを収容する本体と、該本体の開口を閉鎖する蓋とを備え、該本体と蓋とはロック結合により結合して、ワイヤハーネスを貫通させる筒状体としている。
本出願人は、この種のプロテクタを特開2006−25515号公報(特許文献1)等において提供している。
【0003】
しかしながら、図11に示すように、複数本の電線wをテープTを巻きつけて集束したワイヤハーネスW/Hにさらに樹脂成形品からなるプロテクタ1を外装すると、ワイヤハーネスのプロテクタ外装部分が大径化してしまい、自動車の狭小なスペースに配索できない問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−25515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、樹脂成形品からなるプロテクタに替えて、水硬性テープを外装材として用いることによりワイヤハーネスを小径化することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、第1の発明として、電線群の外周に集束用兼保護用の水硬性テープを巻き付け、その後、
前記水硬性テープに水を含浸させた後に前記テープ巻付部分を金型のキャビティに挿入して所要形状に硬化し、あるいは、前記テープ巻付部分を金型のキャビテイ内に挿入した状態で水を含浸させた後に水を含浸させて型締し、所要形状に硬化させていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネスの製造方法を提供している。
【0007】
前記水硬性テープは、水を吸収させると硬化するものであれば良いが、例えば、編成したガラス繊維またはポリエステル繊維にポリウレタン樹脂を含浸させたもの等が好適に用いられる。
また、水硬性テープの一面に粘着層を設けておくと、該水硬性テープで電線群を巻き付ける際に、該水硬性テープの巻き付け領域の電線群を予め粘着テープを巻き付けて集束しておく必要がなく、作業工数および部品点数を削減できる。
【0008】
前記のように、硬化前の水硬性テープは可撓性を有するため、細幅なテープ状として電線群の外周に螺旋巻きしても良いし、シート状として電線群に軸直角方向から巻き付けてもよい。
前記水硬化性テープを巻き付けた部分を金型のキャビテイ内に挿入し、水を吸収させた水硬化性テープをキャビテイの型面に沿って所要形状に硬化させる。このように、電線群に巻き付けた水硬化性テープを所要形状に硬化させることで、電線群に外装する前記樹脂成形品のプロテクタと同等の機能、即ち、電線群の配索方向を規制するガイド機能および電線群に対する保護機能を付与している。
【0009】
前記電線群に水を吸収させた後に金型のキャビテイ内に挿入しても良いが、金型内に水供給通路を設けておき、金型にテープ巻付け部分を収容してから水硬性テープに水をかけると、所要箇所にのみ水を確実にかけることができる。かつ、金型に収容するまでは水硬性テープに水を吸収させていないため、金型に収容する前に水硬性テープが硬化してしまうのを防止することができる。
【0010】
前記のように、本発明のワイヤハーネス製造方法によれば、樹脂成形品からなるプロテクタにワイヤハーネスの電線群を挿通して外装するのではなく、ワイヤハーネスの電線群に水硬化性テープを巻き付け、該水硬化性テープに水を吸収させて金型により所要形状に硬化させて、プロテクタと同等な外装材としている。この硬化させた水硬化性テープは電線群の外周に隙間なく密着させることができ、樹脂成形品からなるプロテクタを外装した場合と比較してワイヤハーネスの外形を肥大化させない。また、ワイヤハーネスの配索経路が狭い場合には、該狭い経路にも配置できる大きさに金型を設計しておくことで、ワイヤハーネスの配索を可能とすることができる。
【0011】
第2の発明として、電線群のプロテクタとして、該電線群の外周に巻き付けられた水硬性テープが用いられ、該水硬性テープは前記電線群の配索方向を規制する形状に硬化されており、かつ、該水硬性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接させる平面部が設けられていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネスを提供している。
該自動車用ワイヤハーネスは、前記第1の発明の製造方法により最も簡単に製造することができるが、他の方法で製造可能であれば、製造方法は限定されない。
【0012】
前記構成によれば、電線群に巻き付けた水硬性テープに水を吸収させて、水硬性テープを十分に硬化させているため、該水硬性テープによりワイヤハーネスの配索方向を規制できると共に、該ワイヤハーネスを外部干渉材から保護することができる。これにより、従来例で挙げた樹脂成形品からなるプロテクタが不要となり、薄肉のテープ材からなる水硬性テープを巻き付けているだけであるため、ワイヤハーネスを小径化することができる。
また、電線群に巻き付けた水硬性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接される平面部を設けているため、該平面部を車体パネルに沿わせて配索することにより、ワイヤハーネスを安定した状態で配索することができる。
【0013】
前記水硬性テープの外周面の対向する両側に平面部を設けて、前記電線群の軸直角方向の断面形状を偏平形状とし、自動車の狭小なスペースに配索可能としていることが好ましい。
前記構成によれば、ワイヤハーネスの断面形状を配索スペースに合わせた形状として、水硬性テープで断面形状を保持しているため、ワイヤハーネスを小径化するだけでなく、ワイヤハーネスの断面形状を配索しやすい形状にして、ワイヤハーネスの配索をより容易にすることができる。
【0014】
前記水硬性テープは、前記電線群の直線部、屈曲部あるいは分岐部に巻き付けられていることが好ましい。
電線群の屈曲部や分岐部は特に方向規制が重要であるため、従来は樹脂成形品からなるプロテクタが多く使用されているが、前記水硬性テープにより屈曲部や分岐部の経路規制も容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
前述したように、本発明によれば、電線群に巻き付けた水硬性テープに水を吸収させて、水硬性テープを硬化させているため、該水硬性テープによりワイヤハーネスの配索方向を規制できると共に、該ワイヤハーネスを外部干渉材から保護することができる。これにより、樹脂成形品からなるプロテクタが不要となり、ワイヤハーネスを小径化することができる。
また、電線群に巻き付けた水硬性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接される平面部を設けているため、該平面部を車体パネルに沿わせて配索することにより、ワイヤハーネスを安定した状態で配索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態の自動車用ワイヤハーネスW/Hは、車両フロアの側部のロッカー部に直線状に配索されるものである。
【0017】
前記ワイヤハーネスW/Hは、複数本の電線wに粘着層を備えた結束用のテープ(図示せず)を粗巻きして集束した電線群Wからなり、該電線群Wの所要箇所に、編んだガラス繊維にポリウレタン樹脂を含浸させた水硬性テープ11がハーフラップ巻で巻き付けられている。
前記水硬性テープ11は水を吸収させて硬化させており、図1に示すように、電線群Wを直線状に方向規制すると共に外周を保護している。また、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11の外周面の一部に車体パネルに当接される平面部11aを設けている。
【0018】
前記ワイヤハーネスW/Hを車両に配索する際には、図2(A)に示すように、水硬性テープ11の平面部11aを車体パネルPに当接させて沿わせて配索している。
また、ワイヤハーネスW/Hの車体固定位置では、図2(B)に示すように、クランプ20の基板部20aを水硬性テープ11の平面部11aに沿わせてテープ(T)巻き固定し、基板部20aから突出する車体係止部20bを車体パネルPの貫通穴Paの周縁に係止させて固定している。
なお、水硬性テープ11を巻き付けた部位でワイヤハーネスW/Hを車体へ固定しない場合には、水硬性テープ11の平面部11a全体を車体パネルPに当接させている。
【0019】
前記ワイヤハーネスW/Hを製造する金型は下型40と上型41とからなり、下型40のキャビテイ40aは、平坦面からなる平面部形成部40bと電線群Wの外周に沿う円弧部40cからなる。
【0020】
次に、前記ワイヤハーネスW/Hの製造方向について説明する。
まず、複数本の電線wに結束用のテープを粗巻きして電線群Wを形成する。
次いで、図3(A)に示すように、電線群Wの所要箇所に硬化していない水硬性テープ11をハーフラップ巻で巻き付ける。
次いで、図3(B)に示すように、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に噴霧器により水30をかけ、水硬性テープ11が硬化する前に下型40のキャビテイ40aに電線群Wの水硬性テープ11を巻き付けた部位を収容する。
次いで、下型40に上型41を型締めすると、収容された電線群Wが平面部形成部40bに押し付けられて平面部11aが形成され、この状態で電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11を硬化させる。
最後に、金型よりワイヤハーネスW/Hを取り出す。
【0021】
前記構成によれば、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に水を吸収させて、水硬性テープ11を硬化させているため、該水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの配索方向を規制できると共に、該ワイヤハーネスW/Hを外部干渉材から保護することができる。これにより、樹脂成形品からなるプロテクタをワイヤハーネスW/Hに外装する必要がなくなり、薄肉のテープ材からなる水硬性テープ11を巻き付けているだけであるため、ワイヤハーネスW/Hを小径化することができる。
また、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11の外周面に車体パネルPに当接させる平面部11aを設けているため、該平面部11aを車体パネルPに沿わせて配索することにより、ワイヤハーネスW/Hを安定した状態で配索することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、水硬性テープ11を巻き付けた部位の軸線方向全長に亙って平面部11aを設けているが、図4に示すように、軸線方向の一部に平面部11aを設け、平面部11aを設けない部位は全周円弧面としてもよい。
また、図5に示すように、水硬性テープ11の一面に粘着層12を設け、該粘着層12が内周側となるように電線群Wに巻き付けてもよい。これにより、水硬性テープ11を巻き付ける前に行う電線群Wを結束するためのテープ巻きを不要とすることができる。
【0023】
図6及び図7に、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、水硬性テープ11を巻き付けた部位の軸直角方向の断面形状を第1実施形態と相違させており、水硬性テープ11の外周面の対向する両側に平面部11aを設けて、ワイヤハーネスW/Hの軸直角方向の断面形状を偏平形状としている。前記両側の平面部11aを、近接配置された車体パネルPに当接させ、車体パネルPで挟まれた狭小なスペースSにワイヤハーネスW/Hを配索している。
前記ワイヤハーネスW/Hを製造する金型の下型40のキャビテイ40aは、図7に示すように、対向する平面部形成部40bと該平面部形成部40b間に連続する円弧部40cとからなる。
【0024】
前記構成によれば、ワイヤハーネスW/Hの外形を硬化した水硬性テープ11により自動車の配索スペースに合わせた形状に保持でき、ワイヤハーネスW/Hを狭小なスペースSにも容易に配索することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0025】
図8に、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態では、電線群Wの直線部分ではなく、屈曲部分に水硬性テープ11を巻き付けて、硬化した水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの屈曲状態を保持している。前記水平部11aは屈曲外周側に設け、外周側で水平部11aを車体パネルPに当接させて配索している。
このように、ワイヤハーネスW/Hの屈曲部においても水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの屈曲形状を保持して容易に配索することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
図9に、本発明の第4実施形態を示す。
本実施形態では、電線群Wの分岐部に水硬性テープ11を巻き付けており、幹線W/H−1の分岐線W/H−2引き出し側と反対側に平面部11aを設け、車体パネルPに当接させて配索している。
このように、ワイヤハーネスW/Hの分岐部においても水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの分岐形状を保持して容易に配索することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図10に、本発明の第5実施形態を示す。
本実施形態では、ワイヤハーネスW/Hの製造方法を前記実施形態と相違させており、電線群Wを下型40のキャビテイ40aに収容してから電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に水をかけ硬化させている。
【0028】
本実施形態で用いる下型40は、外面からキャビテイ40aまで貫通する流通路40dを設けており、該流通路40dに水を導入するための配管45を接続している。
【0029】
次に、本実施形態のワイヤハーネスW/Hの製造方法について説明する。
まず、電線群Wの所要箇所に水硬性テープ11を巻き付け、この巻付部分を水をかけずに下型40のキャビテイ40aに収容する。
次いで、下型40に上型41を型締めして電線群Wを所要形状とした後、配管45及び流通路40dを通して水をキャビテイ40a内に導入し、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に水をかけ吸収させて硬化させる。
最後に、金型よりワイヤハーネスW/Hを取り出す。
【0030】
前記構成によれば、下型40のキャビテイ40aに電線群Wを収容してから水をかけているため、必要な箇所にのみ水を確実にかけることができ、かつ、下型40のキャビテイ40aに収容するまでは水硬性テープ11に水を吸収させていないため、金型に収容する前に水硬性テープ11が硬化してしまうのを防止することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態のワイヤハーネスを示し、(A)は斜視図、(B)はA−A線断面図である。
【図2】(A)はワイヤハーネスを車体パネルに沿わせて配索した状態を示す断面図、(B)はワイヤハーネスの車体固定部を示す断面図である。
【図3】(A)〜(C)はワイヤハーネスの製造方法を示す図面である。
【図4】第1実施形態の変形例を示す図面である。
【図5】第1実施形態の他の変形例を示す図面である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す図面である。
【図7】第2実施形態のワイヤハーネスを製造するための金型を示す図面である。
【図8】本発明の第3実施形態を示す図面である。
【図9】本発明の第4実施形態を示す図面である。
【図10】本発明の第5実施形態を示す図面である。
【図11】従来の問題点を示す図面である。
【符号の説明】
【0032】
11 水硬性テープ
11a平面部
20 クランプ
30 水
40 下型
40a キャビテイ
40b 平面部形成部
40c 円弧部
41 上型
P 車体パネル
S 狭小なスペース
w 電線
W 電線群
W/H ワイヤハーネス
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ワイヤハーネス方法および自動車用ワイヤハーネスに関し、詳しくは、ワイヤハーネスの外装材として樹脂成形品からなるプロテクタを不要とし、ワイヤハーネスを小径化するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車に搭載される各種の電装品の配線に用いられるワイヤハーネスを保護及び方向規制するために、ワイヤハーネスを収容する樹脂成形品からなるプロテクタが設けられている。
前記プロテクタはワイヤハーネスを収容する本体と、該本体の開口を閉鎖する蓋とを備え、該本体と蓋とはロック結合により結合して、ワイヤハーネスを貫通させる筒状体としている。
本出願人は、この種のプロテクタを特開2006−25515号公報(特許文献1)等において提供している。
【0003】
しかしながら、図11に示すように、複数本の電線wをテープTを巻きつけて集束したワイヤハーネスW/Hにさらに樹脂成形品からなるプロテクタ1を外装すると、ワイヤハーネスのプロテクタ外装部分が大径化してしまい、自動車の狭小なスペースに配索できない問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−25515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、樹脂成形品からなるプロテクタに替えて、水硬性テープを外装材として用いることによりワイヤハーネスを小径化することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、第1の発明として、電線群の外周に集束用兼保護用の水硬性テープを巻き付け、その後、
前記水硬性テープに水を含浸させた後に前記テープ巻付部分を金型のキャビティに挿入して所要形状に硬化し、あるいは、前記テープ巻付部分を金型のキャビテイ内に挿入した状態で水を含浸させた後に水を含浸させて型締し、所要形状に硬化させていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネスの製造方法を提供している。
【0007】
前記水硬性テープは、水を吸収させると硬化するものであれば良いが、例えば、編成したガラス繊維またはポリエステル繊維にポリウレタン樹脂を含浸させたもの等が好適に用いられる。
また、水硬性テープの一面に粘着層を設けておくと、該水硬性テープで電線群を巻き付ける際に、該水硬性テープの巻き付け領域の電線群を予め粘着テープを巻き付けて集束しておく必要がなく、作業工数および部品点数を削減できる。
【0008】
前記のように、硬化前の水硬性テープは可撓性を有するため、細幅なテープ状として電線群の外周に螺旋巻きしても良いし、シート状として電線群に軸直角方向から巻き付けてもよい。
前記水硬化性テープを巻き付けた部分を金型のキャビテイ内に挿入し、水を吸収させた水硬化性テープをキャビテイの型面に沿って所要形状に硬化させる。このように、電線群に巻き付けた水硬化性テープを所要形状に硬化させることで、電線群に外装する前記樹脂成形品のプロテクタと同等の機能、即ち、電線群の配索方向を規制するガイド機能および電線群に対する保護機能を付与している。
【0009】
前記電線群に水を吸収させた後に金型のキャビテイ内に挿入しても良いが、金型内に水供給通路を設けておき、金型にテープ巻付け部分を収容してから水硬性テープに水をかけると、所要箇所にのみ水を確実にかけることができる。かつ、金型に収容するまでは水硬性テープに水を吸収させていないため、金型に収容する前に水硬性テープが硬化してしまうのを防止することができる。
【0010】
前記のように、本発明のワイヤハーネス製造方法によれば、樹脂成形品からなるプロテクタにワイヤハーネスの電線群を挿通して外装するのではなく、ワイヤハーネスの電線群に水硬化性テープを巻き付け、該水硬化性テープに水を吸収させて金型により所要形状に硬化させて、プロテクタと同等な外装材としている。この硬化させた水硬化性テープは電線群の外周に隙間なく密着させることができ、樹脂成形品からなるプロテクタを外装した場合と比較してワイヤハーネスの外形を肥大化させない。また、ワイヤハーネスの配索経路が狭い場合には、該狭い経路にも配置できる大きさに金型を設計しておくことで、ワイヤハーネスの配索を可能とすることができる。
【0011】
第2の発明として、電線群のプロテクタとして、該電線群の外周に巻き付けられた水硬性テープが用いられ、該水硬性テープは前記電線群の配索方向を規制する形状に硬化されており、かつ、該水硬性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接させる平面部が設けられていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネスを提供している。
該自動車用ワイヤハーネスは、前記第1の発明の製造方法により最も簡単に製造することができるが、他の方法で製造可能であれば、製造方法は限定されない。
【0012】
前記構成によれば、電線群に巻き付けた水硬性テープに水を吸収させて、水硬性テープを十分に硬化させているため、該水硬性テープによりワイヤハーネスの配索方向を規制できると共に、該ワイヤハーネスを外部干渉材から保護することができる。これにより、従来例で挙げた樹脂成形品からなるプロテクタが不要となり、薄肉のテープ材からなる水硬性テープを巻き付けているだけであるため、ワイヤハーネスを小径化することができる。
また、電線群に巻き付けた水硬性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接される平面部を設けているため、該平面部を車体パネルに沿わせて配索することにより、ワイヤハーネスを安定した状態で配索することができる。
【0013】
前記水硬性テープの外周面の対向する両側に平面部を設けて、前記電線群の軸直角方向の断面形状を偏平形状とし、自動車の狭小なスペースに配索可能としていることが好ましい。
前記構成によれば、ワイヤハーネスの断面形状を配索スペースに合わせた形状として、水硬性テープで断面形状を保持しているため、ワイヤハーネスを小径化するだけでなく、ワイヤハーネスの断面形状を配索しやすい形状にして、ワイヤハーネスの配索をより容易にすることができる。
【0014】
前記水硬性テープは、前記電線群の直線部、屈曲部あるいは分岐部に巻き付けられていることが好ましい。
電線群の屈曲部や分岐部は特に方向規制が重要であるため、従来は樹脂成形品からなるプロテクタが多く使用されているが、前記水硬性テープにより屈曲部や分岐部の経路規制も容易にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
前述したように、本発明によれば、電線群に巻き付けた水硬性テープに水を吸収させて、水硬性テープを硬化させているため、該水硬性テープによりワイヤハーネスの配索方向を規制できると共に、該ワイヤハーネスを外部干渉材から保護することができる。これにより、樹脂成形品からなるプロテクタが不要となり、ワイヤハーネスを小径化することができる。
また、電線群に巻き付けた水硬性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接される平面部を設けているため、該平面部を車体パネルに沿わせて配索することにより、ワイヤハーネスを安定した状態で配索することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図3に、本発明の第1実施形態を示す。
本実施形態の自動車用ワイヤハーネスW/Hは、車両フロアの側部のロッカー部に直線状に配索されるものである。
【0017】
前記ワイヤハーネスW/Hは、複数本の電線wに粘着層を備えた結束用のテープ(図示せず)を粗巻きして集束した電線群Wからなり、該電線群Wの所要箇所に、編んだガラス繊維にポリウレタン樹脂を含浸させた水硬性テープ11がハーフラップ巻で巻き付けられている。
前記水硬性テープ11は水を吸収させて硬化させており、図1に示すように、電線群Wを直線状に方向規制すると共に外周を保護している。また、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11の外周面の一部に車体パネルに当接される平面部11aを設けている。
【0018】
前記ワイヤハーネスW/Hを車両に配索する際には、図2(A)に示すように、水硬性テープ11の平面部11aを車体パネルPに当接させて沿わせて配索している。
また、ワイヤハーネスW/Hの車体固定位置では、図2(B)に示すように、クランプ20の基板部20aを水硬性テープ11の平面部11aに沿わせてテープ(T)巻き固定し、基板部20aから突出する車体係止部20bを車体パネルPの貫通穴Paの周縁に係止させて固定している。
なお、水硬性テープ11を巻き付けた部位でワイヤハーネスW/Hを車体へ固定しない場合には、水硬性テープ11の平面部11a全体を車体パネルPに当接させている。
【0019】
前記ワイヤハーネスW/Hを製造する金型は下型40と上型41とからなり、下型40のキャビテイ40aは、平坦面からなる平面部形成部40bと電線群Wの外周に沿う円弧部40cからなる。
【0020】
次に、前記ワイヤハーネスW/Hの製造方向について説明する。
まず、複数本の電線wに結束用のテープを粗巻きして電線群Wを形成する。
次いで、図3(A)に示すように、電線群Wの所要箇所に硬化していない水硬性テープ11をハーフラップ巻で巻き付ける。
次いで、図3(B)に示すように、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に噴霧器により水30をかけ、水硬性テープ11が硬化する前に下型40のキャビテイ40aに電線群Wの水硬性テープ11を巻き付けた部位を収容する。
次いで、下型40に上型41を型締めすると、収容された電線群Wが平面部形成部40bに押し付けられて平面部11aが形成され、この状態で電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11を硬化させる。
最後に、金型よりワイヤハーネスW/Hを取り出す。
【0021】
前記構成によれば、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に水を吸収させて、水硬性テープ11を硬化させているため、該水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの配索方向を規制できると共に、該ワイヤハーネスW/Hを外部干渉材から保護することができる。これにより、樹脂成形品からなるプロテクタをワイヤハーネスW/Hに外装する必要がなくなり、薄肉のテープ材からなる水硬性テープ11を巻き付けているだけであるため、ワイヤハーネスW/Hを小径化することができる。
また、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11の外周面に車体パネルPに当接させる平面部11aを設けているため、該平面部11aを車体パネルPに沿わせて配索することにより、ワイヤハーネスW/Hを安定した状態で配索することができる。
【0022】
なお、本実施形態では、水硬性テープ11を巻き付けた部位の軸線方向全長に亙って平面部11aを設けているが、図4に示すように、軸線方向の一部に平面部11aを設け、平面部11aを設けない部位は全周円弧面としてもよい。
また、図5に示すように、水硬性テープ11の一面に粘着層12を設け、該粘着層12が内周側となるように電線群Wに巻き付けてもよい。これにより、水硬性テープ11を巻き付ける前に行う電線群Wを結束するためのテープ巻きを不要とすることができる。
【0023】
図6及び図7に、本発明の第2実施形態を示す。
本実施形態では、水硬性テープ11を巻き付けた部位の軸直角方向の断面形状を第1実施形態と相違させており、水硬性テープ11の外周面の対向する両側に平面部11aを設けて、ワイヤハーネスW/Hの軸直角方向の断面形状を偏平形状としている。前記両側の平面部11aを、近接配置された車体パネルPに当接させ、車体パネルPで挟まれた狭小なスペースSにワイヤハーネスW/Hを配索している。
前記ワイヤハーネスW/Hを製造する金型の下型40のキャビテイ40aは、図7に示すように、対向する平面部形成部40bと該平面部形成部40b間に連続する円弧部40cとからなる。
【0024】
前記構成によれば、ワイヤハーネスW/Hの外形を硬化した水硬性テープ11により自動車の配索スペースに合わせた形状に保持でき、ワイヤハーネスW/Hを狭小なスペースSにも容易に配索することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0025】
図8に、本発明の第3実施形態を示す。
本実施形態では、電線群Wの直線部分ではなく、屈曲部分に水硬性テープ11を巻き付けて、硬化した水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの屈曲状態を保持している。前記水平部11aは屈曲外周側に設け、外周側で水平部11aを車体パネルPに当接させて配索している。
このように、ワイヤハーネスW/Hの屈曲部においても水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの屈曲形状を保持して容易に配索することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0026】
図9に、本発明の第4実施形態を示す。
本実施形態では、電線群Wの分岐部に水硬性テープ11を巻き付けており、幹線W/H−1の分岐線W/H−2引き出し側と反対側に平面部11aを設け、車体パネルPに当接させて配索している。
このように、ワイヤハーネスW/Hの分岐部においても水硬性テープ11によりワイヤハーネスW/Hの分岐形状を保持して容易に配索することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0027】
図10に、本発明の第5実施形態を示す。
本実施形態では、ワイヤハーネスW/Hの製造方法を前記実施形態と相違させており、電線群Wを下型40のキャビテイ40aに収容してから電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に水をかけ硬化させている。
【0028】
本実施形態で用いる下型40は、外面からキャビテイ40aまで貫通する流通路40dを設けており、該流通路40dに水を導入するための配管45を接続している。
【0029】
次に、本実施形態のワイヤハーネスW/Hの製造方法について説明する。
まず、電線群Wの所要箇所に水硬性テープ11を巻き付け、この巻付部分を水をかけずに下型40のキャビテイ40aに収容する。
次いで、下型40に上型41を型締めして電線群Wを所要形状とした後、配管45及び流通路40dを通して水をキャビテイ40a内に導入し、電線群Wに巻き付けた水硬性テープ11に水をかけ吸収させて硬化させる。
最後に、金型よりワイヤハーネスW/Hを取り出す。
【0030】
前記構成によれば、下型40のキャビテイ40aに電線群Wを収容してから水をかけているため、必要な箇所にのみ水を確実にかけることができ、かつ、下型40のキャビテイ40aに収容するまでは水硬性テープ11に水を吸収させていないため、金型に収容する前に水硬性テープ11が硬化してしまうのを防止することができる。
なお、他の構成及び作用効果は第1実施形態と同様のため、同一の符号を付して説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態のワイヤハーネスを示し、(A)は斜視図、(B)はA−A線断面図である。
【図2】(A)はワイヤハーネスを車体パネルに沿わせて配索した状態を示す断面図、(B)はワイヤハーネスの車体固定部を示す断面図である。
【図3】(A)〜(C)はワイヤハーネスの製造方法を示す図面である。
【図4】第1実施形態の変形例を示す図面である。
【図5】第1実施形態の他の変形例を示す図面である。
【図6】本発明の第2実施形態を示す図面である。
【図7】第2実施形態のワイヤハーネスを製造するための金型を示す図面である。
【図8】本発明の第3実施形態を示す図面である。
【図9】本発明の第4実施形態を示す図面である。
【図10】本発明の第5実施形態を示す図面である。
【図11】従来の問題点を示す図面である。
【符号の説明】
【0032】
11 水硬性テープ
11a平面部
20 クランプ
30 水
40 下型
40a キャビテイ
40b 平面部形成部
40c 円弧部
41 上型
P 車体パネル
S 狭小なスペース
w 電線
W 電線群
W/H ワイヤハーネス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線群の外周に集束用兼保護用の水硬性テープを巻き付け、その後、
前記水硬性テープに水を吸収させた後に前記テープ巻付部分を金型のキャビティに挿入して所要形状に硬化し、あるいは、前記テープ巻付部分を金型のキャビテイ内に挿入した状態で水を吸収させて、所要形状に硬化させていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項2】
電線群のプロテクタとして、該電線群の外周に巻き付けられた水硬性テープが用いられ、該水硬性テープは前記電線群の配索方向を規制する形状に硬化されており、かつ、該水硬化性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接させる平面部が設けられていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネス。
【請求項3】
前記水硬性テープの平面部が対向する両外面に設けられ、前記電線群の軸直角方向の断面形状は偏平形状され、自動車内の狭小なスペースに配索可能とされている請求項2に記載の自動車用ワイヤハーネス。
【請求項4】
前記水硬性テープは、前記電線群の直線部、屈曲部あるいは分岐部に巻き付けられている請求項2または請求項3に記載の自動車用ワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法で製造された請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用ワイヤハーネス。
【請求項1】
電線群の外周に集束用兼保護用の水硬性テープを巻き付け、その後、
前記水硬性テープに水を吸収させた後に前記テープ巻付部分を金型のキャビティに挿入して所要形状に硬化し、あるいは、前記テープ巻付部分を金型のキャビテイ内に挿入した状態で水を吸収させて、所要形状に硬化させていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項2】
電線群のプロテクタとして、該電線群の外周に巻き付けられた水硬性テープが用いられ、該水硬性テープは前記電線群の配索方向を規制する形状に硬化されており、かつ、該水硬化性テープの外周面の少なくとも一部に車体パネルに当接させる平面部が設けられていることを特徴とする自動車用ワイヤハーネス。
【請求項3】
前記水硬性テープの平面部が対向する両外面に設けられ、前記電線群の軸直角方向の断面形状は偏平形状され、自動車内の狭小なスペースに配索可能とされている請求項2に記載の自動車用ワイヤハーネス。
【請求項4】
前記水硬性テープは、前記電線群の直線部、屈曲部あるいは分岐部に巻き付けられている請求項2または請求項3に記載の自動車用ワイヤハーネス。
【請求項5】
請求項1に記載の製造方法で製造された請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の自動車用ワイヤハーネス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−226587(P2008−226587A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−61753(P2007−61753)
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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