説明

自動車用温調システム

【課題】放熱器の小型化を実現することができる自動車用温調システムの提供。
【解決手段】自動車用温調システム10は、圧縮機80、四路切替弁81、外気と熱交換を行う外気用熱交換器82、及び、車内の空気と熱交換を行う第1熱交換器85を含む空調用冷媒回路20と、ポンプ40、電装品41を冷却する冷却器42、及び、冷却器42において熱交換が行われた流体を冷却するための放熱器45を含む電装品冷却回路30と、協調熱交換器50と、制御装置60と、を備える。協調熱交換器50は、空調用冷媒回路20を流れる冷媒と、電装品冷却回路30を流れる流体との間で熱交換を行わせるものである。制御装置60は、協調熱交換器50における熱交換量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車や電気自動車等の自動車用温調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車や電気自動車等の自動車用温調システムとしては、車内の空調を行うための空調用冷媒回路と、搭載されている電装品を冷却するための電装品冷却回路とを備えるものがある。また、空調用冷媒回路には、主として、外気と熱交換を行う外気用熱交換器や車内の空気と熱交換を行う内気用熱交換器が含まれ、電装品冷却回路には、主として、電装品から受熱した流体を冷却するための放熱器が含まれる。
【0003】
例えば、特許文献1(特開平8−258548号公報)に開示されている自動車用空気調和装置は、外気と熱交換を行う室外熱交換器や車内の空気と熱交換を行う室内熱交換器を含んでおり冷媒が循環する空調用の冷凍サイクルと、外気と熱交換を行うことで冷却液を冷却する熱交換器(放熱器)を含んでおり発熱部品である電装品を冷却するための冷却液が循環する電装品冷却用のサイクルとを備えている。また、冷凍サイクルの室外熱交換器には、冷凍サイクルを循環する冷媒の流れる流路の他に、電装品を冷却して受熱した冷却液の流れる流路が設けられている。そして、この自動車用空気調和装置では、冷房運転時には、電装品を冷却して受熱した冷却液の放熱が電装品冷却用のサイクルに含まれる熱交換器で行われるように冷却液を循環させ、暖房運転時には、電装品を冷却して受熱した冷却液の放熱が、前記熱交換器ではなく冷凍サイクルに含まれる室外熱交換器で行われるように冷却液を循環させることで、暖房運転時における電装品からの排熱を、車内の暖房に利用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の自動車用空気調和装置では、冷房運転時には、車内の空調と電装品の冷却とが空調用の冷凍サイクル及び電装品冷却用のサイクルで独立して行われるため、暖房運転時には利用されない放熱器のサイズが、冷房運転時の最大熱負荷で機能するサイズに設定されていると考えられる。一方で、このような自動車用温調システムを車に搭載するにあたり、設置可能なスペースが限られていることから、放熱器の小型化が望まれている。
【0005】
そこで、本発明の課題は、放熱器の小型化を実現することができる自動車用温調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1観点に係る自動車用温調システムは、空調用冷媒回路と、電装品冷却回路と、協調熱交換器と、調整制御装置と、を備える。空調用冷媒回路は、圧縮機と、四路切替弁と、外気用熱交換器と、内気用熱交換器と、を含む。外気用熱交換器は、外気と熱交換を行うものである。内気用熱交換器は、車内の空気と熱交換を行うものである。電装品冷却回路は、ポンプと、冷却器と、放熱器と、を含む。冷却器は、電装品を冷却するものである。放熱器は、冷却器において熱交換が行われた流体を冷却するためのものである。協調熱交換器は、空調用冷媒回路を流れる冷媒と、電装品冷却回路を流れる流体との間で熱交換を行わせるものである。調整制御装置は、協調熱交換器における熱交換量を調整する。
【0007】
ここで、電装品を冷却するために配備されている従来の電装品冷却回路では、電装品から受熱した流体の放熱が放熱器のみによって行われる場合がある。
【0008】
これに対して、本発明の第1観点に係る自動車用温調システムでは、協調熱交換器において、空調用冷媒回路を流れる冷媒と、電装品冷却回路を流れる流体との間で熱交換が行われている。このため、従来の放熱器が負担していた熱交換量の一部を、協調熱交換器に負担させることができる。
【0009】
これによって、放熱器の小型化を実現することができる。
【0010】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムは、第1観点の自動車用温調システムにおいて、空調用冷媒回路は、第1配管と、第2配管と、を含む。第1配管は、外気用熱交換器と内気用熱交換器とを接続する配管である。第2配管は、第1配管から分岐しており、第1配管を流れる冷媒を圧縮機の吸入側に流すための配管である。電装品冷却回路は、第3配管と、第4配管と、を含む。第3配管は、冷却器と、放熱器と、を接続する配管である。第4配管は、第3配管から分岐しており、第3配管を流れる流体を、ポンプの流入側に流すための配管である。協調熱交換器は、第2配管を流れる冷媒と、第4配管を流れる流体との間で熱交換を行わせる。
【0011】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムでは、空調用冷媒回路内を流れる冷媒のうち、外気用熱交換器と内気用熱交換器とを接続する第2配管を流れる冷媒が、協調熱交換器に流入する。このため、協調熱交換器には、車内の暖房時及び冷房時のいずれの場合であっても、低温の冷媒が流入することになる。したがって、冷却器において電装品から受熱した流体は、協調熱交換器において熱交換が行われることで、冷却されることになる。この結果、協調熱交換器において電装品冷却回路内を流れる流体を冷却することができる。
【0012】
本発明の第3観点に係る自動車用温調システムは、第2観点の自動車用温調システムにおいて、空調用冷媒回路は、第1調整弁を含む。第1調整弁は、第2配管に設けられており、協調熱交換器に流れる冷媒の流量を調整可能である。電装品冷却回路は、第2調整弁を含む。第2調整弁は、第4配管に設けられており、協調熱交換器に流れる流体の流量を調整可能である。調整制御装置は、第1調整弁及び第2調整弁を制御する。
【0013】
本発明の第3観点に係る自動車用温調システムでは、第1調整弁を制御することで、協調熱交換器に向かって流れる冷媒の流量を調整することができ、第2調整弁を制御することで、協調熱交換器に向かって流れる流体の流量を調整することができる。このため、この自動車用温調システムでは、第1調整弁及び第2調整弁を制御することで、協調熱交換器における熱交換量を調整することができる。
【0014】
本発明の第4観点に係る自動車用温調システムは、第1観点から第3観点のいずれかの自動車用温調システムにおいて、圧縮機は、第1圧縮機と、第2圧縮機と、を含む。第2圧縮機は、第1圧縮機と並列に設けられている。このため、第1圧縮機と第2圧縮機とを独立制御することで、自動車用温調システムにおける冷媒流量の細かな制御が可能になる。
【0015】
本発明の第5観点に係る自動車用温調システムは、第1観点から第4観点のいずれかの自動車用温調システムにおいて、空調用冷媒回路は、膨張機構と、副内気用熱交換器と、を含む。副内気用熱交換器は、膨張機構を介して内気用熱交換器と接続されており、車内の空気と熱交換を行うものである。この自動車用温調システムでは、内気用熱交換器を凝縮器として機能させ、副内気用熱交換器を蒸発器として機能させることができるため、車内の暖房時に車内の除湿を行うことができる。したがって、車内暖房時に車窓が曇るおそれを低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1観点に係る自動車用温調システムでは、放熱器の小型化を実現することができる。
【0017】
本発明の第2観点に係る自動車用温調システムでは、協調熱交換器において電装品冷却回路内を流れる流体を冷却することができる。
【0018】
本発明の第3観点に係る自動車用温調システムでは、第1調整弁及び第2調整弁を制御することで、協調熱交換器における熱交換量を調整することができる。
【0019】
本発明の第4観点に係る自動車用温調システムでは、第1圧縮機と第2圧縮機とを独立制御することで、冷媒流量の細かな制御が可能になる。
【0020】
本発明の第5観点に係る自動車用温調システムでは、車内暖房時に車窓が曇るおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動車用温調システムの概略図。
【図2】自動車用温調システムの備える制御装置の制御ブロック図。
【図3】変形例1Aに係る電装品冷却回路の概略図。
【図4】本発明の第2実施形態に係る自動車用温調システムの備える温調装置の概略図。
【図5】本発明の第3実施形態に係る自動車用温調システムの備える温調装置の概略図。
【図6】変形例3Bに係る温調装置の概略図。
【図7】変形例3Cに係る温調装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係る自動車用温調システムについて説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0023】
<第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態に係る自動車用温調システム10について説明する。
【0024】
(1)全体構成
自動車用温調システム10は、ハイブリッド車や電気自動車等のバッテリが走行用の電力源である車に用いられる温調システムであって、温調装置11と、制御装置60とを備えている。温調装置11は、車内の空調を行うための空調用冷媒回路20と、バッテリ以外の電装品41の冷却を行うための電装品冷却回路30と、空調用冷媒回路20を流れる冷媒と電装品冷却回路30を流れる流体との間で熱交換を行わせる協調熱交換器50と、を備えている。制御装置60は、温調装置11の備える各種機器を制御するための装置である。この自動車用温調システム10では、制御装置60が温調装置11の備える各種機器を制御することで、車内の空調(冷房及び暖房等)、及び、電装品41の冷却が行われる。
【0025】
(2)詳細構成
(2−1)温調装置の構成
温調装置11の備える空調用冷媒回路20は、図1に示すように、主に、圧縮機80と、四路切替弁81と、外気用熱交換器82と、空調用熱交換器87と、を含む蒸気圧縮式の冷媒回路である。また、空調用冷媒回路20は、主冷媒回路21と、主冷媒回路21から分岐しており、協調熱交換器50が接続されている空調側分岐配管22と、を有する。
【0026】
また、温調装置11の備える電装品冷却回路30は、図1に示すように、主に、ポンプ40と、冷却器42と、放熱器45と、を含む冷却回路である。また、電装品冷却回路30は、主冷却回路31と、主冷却回路31から分岐しており、協調熱交換器50が接続されている電装品側分岐配管32と、を有する。
【0027】
温調装置11の備える協調熱交換器50は、図1に示すように、空調側分岐配管22及び電装品側分岐配管32と接続されており、空調用冷媒回路20を循環する冷媒と電装品冷却回路30を循環する流体との間で熱交換を行わせる。なお、本実施形態では、電装品冷却回路30には、流体として水が循環しているものとする。
【0028】
(2−1−1)空調用冷媒回路の構成
主冷媒回路21には、図1に示すように、圧縮機80と、外気と熱交換を行う外気用熱交換器82と、空調用制御弁83と、車内を空調するための空調用熱交換器87と、が順に接続されている。
【0029】
圧縮機80は、回転数が可変なインバータ式の圧縮機であって、吸入したガス冷媒を圧縮するためのものである。
【0030】
空調用制御弁83は、外気用熱交換器82と空調用熱交換器87との間の冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁である。
【0031】
外気用熱交換器82は、外気と内部を流れる冷媒との間で熱交換を行わせるためのものである。
【0032】
空調用熱交換器87は、車内の空気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、内ファン84が空調用熱交換器87に接触する空気流れを生成することで、車内の空気と空調用熱交換器87を流れる冷媒とを熱交換させることができる。
【0033】
また、空調用熱交換器87は、図1に示すように、第1熱交換器85と、膨張機構である制御弁87aを介して第1熱交換器85に接続される第2熱交換器86と、を有する。制御弁87aは、第1熱交換器85と第2熱交換器86との間の冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁であって、その弁開度が調整されることで、第1熱交換器85及び第2熱交換器86を凝縮器或いは蒸発器として機能させたり、第1熱交換器85又は第2熱交換器86のいずれか一方を凝縮器或いは蒸発器として機能させたりすることができる。なお、本実施形態では、空調用熱交換器87が、第1熱交換器85と、膨張機構を介して第1熱交換器85に接続される第2熱交換器86と、を有しているが、空調用熱交換器の構成はこれに限定されず、例えば、1つの熱交換器(本実施形態における第1熱交換器85のみ)で構成されていてもよい。
【0034】
また、主冷媒回路21に接続されている四路切替弁81は、主冷媒回路21を流れる冷媒の流路を変更する切替機構を構成している。四路切替弁81は、圧縮機80の吐出側と外気用熱交換器82と接続し、かつ、空調用熱交換器87と圧縮機80の吸入側とを接続する第1状態(図1の実線参照)と、圧縮機80の吐出側と空調用熱交換器87とを接続し、かつ、外気用熱交換器82と圧縮機80の吸入側とを接続する第2状態(図1の破線参照)とに切り替わることで、主冷媒回路21における冷媒の循環方向が可逆に構成されている。
【0035】
空調側分岐配管22は、一端が外気用熱交換器82と空調用熱交換器87とを接続する冷媒配管23に接続されており、他端が四路切替弁81と圧縮機80の吸入部とを接続する吸入側冷媒配管24に接続されている。このため、冷媒配管23を流れる冷媒は、空調側分岐配管22を通って圧縮機80の吸入側に流れる。なお、本実施形態では、空調側分岐配管22の一端は、冷媒配管23の一部であって、空調用制御弁83と第2熱交換器86とを接続する配管23aから分岐している。
【0036】
また、空調側分岐配管22は、協調熱交換器50の上流側端部と接続されている第1冷媒配管22aと、協調熱交換器50の下流側端部と接続されている第2冷媒配管22bと、を含む。第1冷媒配管22aは、一端が配管23aに接続されており、配管23aを流れる冷媒を協調熱交換器50に流すための配管である。また、第2冷媒配管22bは、一端が吸入側冷媒配管24に接続されており、協調熱交換器50において熱交換が行われた冷媒を圧縮機80の吸入側に流すための配管である。
【0037】
さらに、第1冷媒配管22aには、協調熱交換器50に流れる冷媒の流量を調整可能な調整弁89が設けられている。
【0038】
なお、本実施形態では、車内の暖房時の暖房能力が不足している場合に、車内の空気を加熱するための熱源としてヒータ88が配設されている。ヒータ88は、各種センサの検知結果に基づいて制御装置60によって出力制御がされている。
【0039】
(2−1−2)電装品冷却回路の構成
主冷却回路31には、図1に示すように、ポンプ40と、冷却器42と、冷却器用制御弁44と、放熱器45と、が順に接続されている。
【0040】
ポンプ40は、吸入した流体(水)を冷却器42側に送り出すためのポンプ40である。ポンプ40が駆動されることで、電装品冷却回路30内を流体が循環する。なお、本実施形態では、電装品冷却回路30内を流れる流体は水であるが、例えば、電装品冷却回路30内を流体として冷媒が流れる場合には、ポンプとしては、吸い込んだ冷媒を昇圧して吐出するように構成された冷媒ポンプが採用されてもよい。
【0041】
冷却器42は、電装品41(モータやインバータ或いはコンバータ等)を冷却するための熱交換器であって、内部に流体が流れる通路を有している。冷却器42では、この通路を流れる流体と電装品41との間で熱交換が行われることで、電装品41の冷却を行う。なお、冷却器42の具体的構成は、冷却する電装品41の形状等に応じた形態に設計される。また、本実施形態における電装品41には、バッテリは含まれないものとする。
【0042】
冷却器用制御弁44は、放熱器45に流れる流体の流量の調整を行うための電動弁である。冷却器用制御弁44の弁開度が調整されることで、放熱器45に流れる流体の流量が調整される。
【0043】
放熱器45は、冷却器42において熱交換が行われた流体を冷却するためのものである。放熱器45では、外気と内部を流れる流体との間で熱交換が行われることで、流体から放熱されて流体が冷却される。なお、本実施形態の放熱器45のサイズは、外気温度が所定の温度範囲内にある中間期(例えば、春季や秋季など)において、冷却器42で電装品41から受熱した流体を、所定温度まで冷却することができる最小限のサイズに設計されている。
【0044】
電装品側分岐配管32は、一端が冷却器42と放熱器45とを接続する冷却配管33に接続されており、他端が放熱器45とポンプ40とを接続する吸入側冷却配管34に接続されている。このため、冷却配管33を流れる流体は、電装品側分岐配管32を通ってポンプ40の吸入側に流れる。なお、本実施形態では、電装品側分岐配管32の一端は、冷却器42と冷却器用制御弁44とを接続する配管33aから分岐している。
【0045】
また、電装品側分岐配管32は、協調熱交換器50の上流側端部と接続されている第1冷却配管32aと、協調熱交換器50の下流側端部と接続されている第2冷却配管32bと、を含む。第1冷却配管32aは、一端が配管33aに接続されており、冷却器42から流出した流体を協調熱交換器50に流すための配管である。また、第2冷却配管32bは、一端が吸入側冷却配管34に接続されており、協調熱交換器50において熱交換が行われた流体をポンプ40の吸入側に流すための配管である。
【0046】
さらに、第1冷却配管32aには、協調熱交換器50に流れる流体の流量を調整可能な調整弁43が設けられている。なお、本実施形態では、主冷却回路31には冷却器用制御弁44が設けられており、電装品側分岐配管32には調整弁43が設けられているが、電装品冷却回路30の構成はこれに限定されず、電装品冷却回路30において調整弁43が設けられていれば、冷却器用制御弁44が設けられていなくてもよい。
【0047】
(2−2)制御装置の構成
制御装置60は、図2に示すように、温調装置11の有する各種機器と接続されており、車内の空調及び電装品41の冷却等を行うために各種機器の動作制御を行う。より詳しくは、制御装置60は、空調用制御弁83及び制御弁87aの弁開度や内ファン84の回転数を調整する制御を行うことで空調用熱交換器87における熱交換量を制御したり、冷却器用制御弁44の弁開度を調整する制御を行うことで放熱器45における熱交換量を制御したり、調整弁43,89の弁開度を調整する制御を行うことで、協調熱交換器50における熱交換量を制御したりする。
【0048】
また、制御装置60は、車内空調として冷房が行われる通常冷房モード及び高負荷冷房モードと、車内空調として暖房が行われる暖房モードと、を実行する実行部61を有している。実行部61は、ユーザによって操作される操作スイッチ90からの指令や各種センサ(圧力センサや温度センサ等)の検知結果に基づいて各モードのいずれかを実行する。
【0049】
通常冷房モードは、操作スイッチ90によるユーザからの冷房運転指令がある場合に実行される。通常冷房モードでは、車内の冷房及び電装品41の冷却が行われるように、各種機器が制御される。
【0050】
高負荷冷房モードは、操作スイッチ90によるユーザからの冷房運転指令がある場合であって、放熱器45における冷却能力が不足していると判断された場合に実行される。高負荷冷房モードでは、車内の冷房及び電装品41の冷却が行われるように、各種機器が制御される。なお、冷却能力が不足しているか否かは、主冷却回路31の各所に設けられている温度センサの検知結果、或いは、予め設定された設定値に基づいて制御装置60において判断される。
【0051】
暖房モードは、操作スイッチ90によるユーザからの暖房運転指令がある場合に実行される。暖房モードでは、車内の暖房及び電装品41の冷却が行われるように、各種機器が制御される。
【0052】
なお、本実施形態では、各モードは、ユーザからの空調作動指令の有無に応じて実行部61によって実行されているが、これに限定されず、例えば、バッテリの電力消費の増加が抑制されるように自動的に実行されてもよい。
【0053】
(3)各モード実行時における各種機器の制御動作
次に、実行部61による各モード実行時における各種機器の制御動作について説明する。
【0054】
(3−1)通常冷房モード
通常冷房モードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられ、制御弁87aの弁開度が全開となるように調整される。そして、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の冷房能力又は除湿能力に応じて調整される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は全開となるように調整され、ポンプ40の出力は、冷却器42における冷却能力に応じて調整される。さらに、調整弁43,89の弁開度は、全閉となるように調整される。
【0055】
空調用冷媒回路20では、圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、外気用熱交換器82で外気と熱交換して、冷却され凝縮する。外気用熱交換器82から流出した高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、空調用熱交換器87に流入する。空調用熱交換器87では、流入した液冷媒が内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、液冷媒が蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0056】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出したすべての流体は、冷却器用制御弁44を介して放熱器45に流れ、放熱器45において外気と熱交換を行うことで冷却される。その後、放熱器45において冷却された流体は、ポンプ40に吸入される。
【0057】
このように空調用冷媒回路20内を冷媒が循環して外気用熱交換器82及び空調用熱交換器87において熱交換が行われることで、空調用熱交換器87において車内を冷房又は除湿することができる。また、電装品冷却回路30内を流体が循環して冷却器42及び放熱器45において熱交換が行われることで、冷却器42において電装品41を冷却することができる。さらに、通常冷房モードでは、主冷媒回路21から協調熱交換器50に向かって流れる冷媒の経路が調整弁89によって閉じられ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流れる流体の経路が調整弁43によって閉じられる。この結果、通常冷房モードでは、協調熱交換器50において熱交換が行われないため、圧縮機80動力を車内の冷房能力に応じた動力とすることができる。
【0058】
(3−2)高負荷冷房モード
高負荷通常冷房モードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられ、制御弁87aの弁開度が全開となるように調整される。そして、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の冷房能力又は除湿能力に応じて調整される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は所定開度となるように調整され、ポンプ40の出力は、最大出力となるように調整される。さらに、調整弁89の弁開度は、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができるだけの冷媒が協調熱交換器50に流れるように調整される。具体的には、調整弁89の弁開度は、協調熱交換器50の出口側の過熱度が所定値となるように制御される。一方、調整弁43の弁開度は、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができるだけの流体が協調熱交換器50に流れるように調整される。具体的には、調整弁43の弁開度は、冷却器42の出口側の流体温度が電装品41を正常な温度に保つために必要な所定温度に調整される。前記所定温度は、電装品41の負荷(高負荷の場合は、温度を下げる)によって変化させる。
【0059】
空調用冷媒回路20では、圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、外気用熱交換器82で外気と熱交換して、冷却され凝縮する。外気用熱交換器82から流出した高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、配管23aを流れて空調用熱交換器87に至り、或いは、配管23aの途中で第1冷媒配管22aに流れる。
【0060】
空調用熱交換器87に至った液冷媒は、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、液冷媒が蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0061】
一方、第1冷媒配管22aに流れた冷媒は、調整弁89を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った後に、第2冷媒配管22bを流れて吸入側冷媒配管24を流れる冷媒に合流する。
【0062】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出した流体は、配管33aを流れ、冷却器用制御弁44を介して放熱器45に至り、或いは、配管33aの途中で第1冷却配管32aに流れる。
【0063】
放熱器45に至った流体は、放熱器45において外気と熱交換を行うことで冷却された後、吸入側冷却配管34を流れてポンプ40に吸入される。
【0064】
一方、第1冷却配管32aに流れた流体は、調整弁43を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において空調側分岐配管22を流れる冷媒と熱交換を行った後に、第2冷却配管32bを流れて吸入側冷却配管34を流れる流体に合流する。
【0065】
このように空調用冷媒回路20内を冷媒が循環することで、空調用熱交換器87において車内を冷房又は除湿することができる。また、電装品冷却回路30内を流体が循環することで、冷却器42において電装品41を冷却することができる。さらに、高負荷冷房モードでは、主冷媒回路21から協調熱交換器50に向かって冷媒が流れ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流体が流れることで、協調熱交換器50において、空調側分岐配管22を流れる冷媒と電装品側分岐配管32を流れる流体との間で、すなわち、外気用熱交換器82で凝縮した低温液冷媒と電装品41から吸熱した流体との間で熱交換を行わせることができる。この結果、電装品冷却回路30内を流れる流体が冷却されるため、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができる。
【0066】
(3−3)暖房モード
暖房モードでは、四路切替弁81が第2状態に切り替えられる。また、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の暖房能力に応じて調整され、制御弁87aの弁開度は、車内の除湿能力に応じて調整される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は全閉となるように調整され、ポンプ40の出力は、冷却器42における冷却能力に応じて調整される。さらに、調整弁89の弁開度は、協調熱交換器50に所定量の冷媒が流れるように調整される。具体的には、調整弁89の弁開度は、協調熱交換器50の出口側の過熱度が所定値となるように制御される。一方、調整弁43の弁開度は、全開となるように調整される。
【0067】
空調用冷媒回路20では、圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、空調用熱交換器87の第1熱交換器85で内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、高圧ガス冷媒が凝縮するとともに空気を加熱し、車内の暖房を行う。また、第1熱交換器85から流出した高圧液冷媒は、制御弁87aで減圧され又は減圧されずに、第2熱交換器86に流入する。そして、第2熱交換器86で内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行うことで凝縮するとともに空気を加熱して車内の暖房を行い、又は、蒸発するとともに空気を冷却して車内の除湿を行う。また、第2熱交換器86から流出した液冷媒は、配管23aを流れて空調用制御弁83に至り、或いは、配管23aの途中で第1冷媒配管22aに流れる。
【0068】
空調用制御弁83に至った液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、外気用熱交換器82に流入する。外気用熱交換器82では、流入した液冷媒が、外気と熱交換を行うことで蒸発する。そして、蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0069】
一方、第1冷媒配管22aに流れた流体は、調整弁89を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った後に、第2冷媒配管22bを流れて吸入側冷媒配管24を流れる冷媒に合流する。
【0070】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出したすべての流体は、調整弁43を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において空調側分岐配管22を流れる冷媒と熱交換を行った後に、第2冷却配管32bを流れて、ポンプ40に吸入される。
【0071】
このように空調用冷媒回路20内を冷媒が循環することで、空調用熱交換器87において車内を暖房することができる。また、制御弁87aの弁開度が調整されて、第1熱交換器85が凝縮器として機能し、第2熱交換器86が蒸発器として機能する場合には、車内の暖房除湿を行うことができる。
【0072】
また、暖房モードでは、主冷媒回路21から協調熱交換器50に向かって冷媒が流れ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流体が流れることで、協調熱交換器50において、空調側分岐配管22を流れる冷媒と電装品側分岐配管32を流れる流体との間で、すなわち、空調用熱交換器87で凝縮した液冷媒と電装品41から吸熱した流体との間で熱交換を行わせることができる。この結果、電装品冷却回路30内を流れる流体が冷却されるため、放熱器45において流体が冷却されなくても電装品41を冷却することができる。さらに、暖房モードでは、協調熱交換器50において、冷却器42において電装品41からの排熱を吸入した流体と、空調用冷媒回路20内を流れる冷媒との間で熱交換が行われているため、車内の暖房に電装品41の排熱を利用することができる。この結果、空調用冷媒回路20における暖房時の効率を向上させることができる。
【0073】
なお、本実施形態では、暖房モード実行時には、冷却器用制御弁44の弁開度は全閉となるように調整されているが、これに限定されず、例えば、冷却器42の出口側の流体温度が所定値以上である場合には、放熱器45にも流体が流れるように冷却器用制御弁44の弁開度が調整されてもよい。
【0074】
(4)特徴
(4−1)
従来より、ハイブリッド車や電気自動車等の備える電装品を冷却するための電装品冷却回路が車に搭載されているものがある。そして、従来の電装品冷却回路では、電装品から受熱した流体の放熱が、放熱器のみによって行われる場合がる。
【0075】
そこで、本実施形態では、空調用冷媒回路20を循環する冷媒と、電装品冷却回路30を循環する流体と、の間で熱交換を行うことが可能な協調熱交換器50が設けられている。また、調整弁43,89の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50における熱交換の有無だけでなく、協調熱交換器50における熱交換量(熱の移動量)が変更されている。このため、従来の放熱器が負担していた熱交換量の一部を、協調熱交換器50に負担させることができる。
【0076】
これによって、協調熱交換器50において流体の冷却が行われることで、放熱器45の小型化を実現することができている。
【0077】
(4−2)
従来の自動車用温調システムには、車内暖房時に空調用冷媒回路と電装品冷却回路との間で熱交換を行うことで、電装品からの排熱を車内の暖房に利用しているものがある。一方で、従来の自動車用温調システムでは、車内の冷房時には、空調用冷媒回路と電装品冷却回路との間で熱交換が行われておらず、熱が相互に利用されていない。このような自動車用温調システムでは、電装品冷却回路の備える放熱器が、車内冷房時の最大熱負荷で機能するサイズに設計される必要がある。
【0078】
そこで、本実施形態では、高負荷冷房モード実行時では、空調側分岐配管22には、外気用熱交換器82で凝縮され空調用制御弁83で減圧された冷媒が流れる。また、暖房モード実行時では、空調側分岐配管22には、第2熱交換器86において凝縮、或いは、蒸発した冷媒が流れる。そして、空調側分岐配管22を流れる冷媒は、協調熱交換器50において、電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行う。このため、車内の冷房時及び暖房時のいずれの場合であっても、協調熱交換器50において、低温の冷媒と、電装品41から受熱した流体と、の間で熱交換を行わせることができる。この結果、協調熱交換器50において熱交換が行われることで、電装品冷却回路30内を流れる流体を冷却することができる。
【0079】
これによって、従来の放熱器と比較して、放熱器45の小型化を実現することができるため、電装品41の冷却能力を維持しつつ、放熱器45を必要最小限のサイズにすることができる。
【0080】
また、従来よりも放熱器45が小型化することで空くスペース分、外気用熱交換器82のサイズを大きくすることで、外気用熱交換器82における熱交換効率を向上させることができるため、自動車用温調システム全体の効率を向上させることができる。
【0081】
(4−3)
本実施形態では、調整弁89の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50に向かって流れる冷媒の流量が調整される。また、調整弁43の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50に向かって流れる流体の流量が調整される。このため、この自動車用温調システム10では、調整弁43,89の弁開度を調整することで、協調熱交換器50における熱交換量を調整することができている。
【0082】
また、協調熱交換器50において空調側分岐配管22を流れる冷媒に回収される冷熱量が調整されることで、電装品冷却回路30内を流れる流体の温度を、外気温度によらず、所定の温度範囲内に制御することができる。
【0083】
(4−4)
本実施形態では、空調用熱交換器87が、第1熱交換器85と、膨張機構である制御弁87aを介して第1熱交換器85に接続される第2熱交換器86と、を有している。また、制御弁87aの弁開度が調整されることで、第1熱交換器85及び第2熱交換器86を凝縮器或いは蒸発器として機能させたり、第1熱交換器85を凝縮器として機能させ第2熱交換器86を蒸発器として機能させたりすることができる。このため、この自動車用温調システム10では、第1熱交換器85が凝縮器として機能する場合、すなわち、車内の暖房時に、第2熱交換器86を蒸発器として機能させて、車内を除湿することができる。
【0084】
これによって、車内の暖房時に車窓が曇るおそれを低減することができている。
【0085】
(4−5)
電気自動車では、ガソリン車のようにエンジンの排熱を車内暖房に利用することができないため、車内暖房時の熱源としてヒータ等が利用されることが多い。
【0086】
本実施形態では、車内暖房時には、空調用冷媒回路20側は、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体から電装品41の排熱を回収することができる。これにより、暖房能力や効率を向上させることができるため、ヒータ88のサイズを小さくすることができる。
【0087】
(5)変形例
(5−1)変形例1A
上記実施形態では、電装品冷却回路30では、電装品41の冷却のみが行われている。
【0088】
これに加えて、電装品冷却回路において、走行等の電力源であるバッテリの冷却が行われてもよい。例えば、図3に示すように、電装品冷却回路130が、バッテリ170を冷却するためのバッテリ用熱交換器171を備えていてもよい。なお、本変形例の自動車用温調システムでは、電装品冷却回路130の構成として、図3に示すように、電装品冷却回路130においてポンプ40と冷却器42との間にバッテリ用熱交換器171が設けられており、バッテリ用熱交換器171を迂回するようにバイパス配管172が接続されており、バイパス配管172に流体の流量調整が可能な弁173が設けられていること以外は、上記実施形態と同様の構成である。また、図3では、上記実施形態と同様の構成の機器については、上記実施形態の機器と同様の符号を付している。
【0089】
この電装品冷却回路130では、冷却器42だけでなくバッテリ用熱交換器171が設けられていることで、電装品41の冷却に加えてバッテリ170の冷却を行うことができる。また、流体の流量調整が可能な弁173が設けられていることで、バッテリ用熱交換器171に流れる流体の流量を調整することができるため、バッテリ170の冷却温度を所定の温度に設定しやすくすることができる。したがって、この電装品冷却回路130では、バッテリ170の使用可能な温度範囲にバッテリ170を温調することができる。
【0090】
<第2実施形態>
以下に、本発明の第2実施形態に係る自動車用温調システムについて説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成の機器については、第1実施形態と同様の符号を付している。
【0091】
(1)全体構成
自動車用温調システムは、ハイブリッド車や電気自動車等のバッテリが走行用の電力源である車に用いられる温調システムであって、温調装置211と、制御装置とを備えている。温調装置211は、車内の空調を行うための空調用冷媒回路220と、バッテリ以外の電装品41の冷却を行うための電装品冷却回路30と、空調用冷媒回路220を流れる冷媒と電装品冷却回路30を流れる流体との間で熱交換を行わせる協調熱交換器50と、を備えている。制御装置は、温調装置211の備える各種機器を制御するための装置である。この自動車用温調システムでは、制御装置が温調装置211の備える各種機器を制御することで、車内の空調(冷房及び暖房等)、及び、電装品41の冷却が行われる。
【0092】
(2)詳細構成
(2−1)温調装置の構成
温調装置211の備える空調用冷媒回路220は、図4に示すように、主に、圧縮機80と、四路切替弁81と、外気用熱交換器82と、空調用熱交換器87と、を含む蒸気圧縮式の冷媒回路である。また、空調用冷媒回路220は、主冷媒回路221と、主冷媒回路221から分岐しており、第2熱交換器86が接続されている第1空調側分岐配管225と、協調熱交換器50が接続されている第2空調側分岐配管222と、を有する。
【0093】
また、温調装置211の備える電装品冷却回路30は、図4に示すように、主に、ポンプ40と、冷却器42と、放熱器45と、を含む冷却回路である。また、電装品冷却回路30は、主冷却回路31と、主冷却回路31から分岐しており、協調熱交換器50が接続されている電装品側分岐配管32と、を有する。
【0094】
温調装置211の備える協調熱交換器50は、図4に示すように、第2空調側分岐配管222及び電装品側分岐配管32と接続されており、空調用冷媒回路220を循環する冷媒と電装品冷却回路30を循環する流体との間で熱交換を行わせる。なお、本実施形態では、電装品冷却回路30には、流体として水が循環しているものとする。
【0095】
(2−1−1)空調用冷媒回路の構成
主冷媒回路221には、図4に示すように、圧縮機80と、外気と熱交換を行う外気用熱交換器82と、空調用制御弁83と、車内を空調するための空調用熱交換器87の第1熱交換器85と、が順に接続されている。なお、圧縮機80、空調用制御弁83、外気用熱交換器82、第1熱交換器85の構成は、それぞれ、第1実施形態の構成と同様であるため説明を省略する。一方で、主冷媒回路221では、図4に示すように、第1熱交換器85が、空調用制御弁83と冷媒配管223aで接続されている。
【0096】
第1空調側分岐配管225は、一端が冷媒配管223aに接続されており、他端が圧縮機80の吸入側と四路切替弁81とを接続する吸入側冷媒配管24に接続されている。また、第1空調側分岐配管225には、制御弁87a、空調用熱交換器87の第2熱交換器86の順に接続されている。
【0097】
第2熱交換器86は、第1実施形態の第2熱交換器86と同様に、車内の空気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、内ファン84が第2熱交換器86に接触する空気流れを生成することで、車内の空気と第2熱交換器86を流れる冷媒とを熱交換させることができる。制御弁87aは、第2熱交換器86に流れる冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁であって、その弁開度が調整されることで、第2熱交換器86を凝縮器或いは蒸発器として機能させることができる。
【0098】
なお、第1空調側分岐配管225は、一端が冷媒配管223aに接続されており、他端が吸入側冷媒配管24に接続されているため、第1空調側分岐配管225には、車内の暖房時及び冷房時のいずれの場合であっても、同一方向に冷媒が流れることになる。
【0099】
第2空調側分岐配管222は、一端が冷媒配管223aに接続されており、他端が吸入側冷媒配管24に接続されている。このため、冷媒配管223aを流れる冷媒は、第2空調側分岐配管222を通って圧縮機80の吸入側に流れる。
【0100】
また、第2空調側分岐配管222は、協調熱交換器50の上流側端部と接続されている第1冷媒配管222aと、協調熱交換器50の下流側端部と接続されている第2冷媒配管222bと、を含む。第1冷媒配管222aは、一端が冷媒配管223aに接続されており、冷媒配管223aを流れる冷媒を協調熱交換器50に流すための配管である。また、第2冷媒配管222bは、一端が吸入側冷媒配管24に接続されており、協調熱交換器50において熱交換が行われた冷媒を圧縮機80の吸入側に流すための配管である。なお、第2空調側分岐配管222は、一端が冷媒配管223aに接続されており、他端が吸入側冷媒配管24に接続されているため、第2空調側分岐配管222には、車内の暖房時及び冷房時のいずれの場合であっても、同一方向に冷媒が流れることになる。
【0101】
さらに、第1冷媒配管222aには、協調熱交換器50に流れる冷媒の流量を調整可能な調整弁89が設けられている。
【0102】
なお、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、車内の暖房時の暖房能力が不足している場合に、車内の空気を加熱するための熱源としてヒータ88が配設されている。
【0103】
(2−1−2)電装品冷却回路の構成
電装品冷却回路30は、上述のように、主冷却回路31と、電装品側分岐配管32と、を有する。なお、本実施形態における電装品冷却回路30の構成は、第1実施形態で説明した構成と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0104】
(2−2)制御装置の構成
制御装置は、温調装置211の有する各種機器と接続されており、車内の空調及び電装品41の冷却等を行うために各種機器の動作制御を行う。なお、本実施形態における制御装置の構成は、第1実施形態で説明した構成と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0105】
(3)各モード実行時における各種機器の制御動作
次に、実行部による各モード実行時における各種機器の制御動作について説明する。
【0106】
(3−1)通常冷房モード
通常冷房モードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられ、制御弁87aの弁開度が所定開度となるように調整される。そして、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の冷房能力又は除湿能力に応じて調整される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は全開となるように調整され、ポンプ40の出力は、冷却器42における冷却能力に応じて調整される。さらに、調整弁43,89の弁開度は、全閉となるように調整される。
【0107】
空調用冷媒回路220では、圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、外気用熱交換器82で外気と熱交換して、冷却され凝縮する。外気用熱交換器82から流出した高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、第1熱交換器85に至り、或いは、冷媒配管223aの途中で第1空調側分岐配管225に流れる。第1熱交換器85に流入した液冷媒は、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、液冷媒が蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0108】
一方、第1空調側分岐配管225に流れた液冷媒は、制御弁87aを介して第2熱交換器86に流入し、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。そして、蒸発したガス冷媒は、吸入側冷媒配管24を流れる冷媒に合流し、圧縮機80に吸入される。
【0109】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出したすべての流体は、冷却器用制御弁44を介して放熱器45に流れ、放熱器45において外気と熱交換を行うことで冷却される。その後、放熱器45において冷却された流体は、ポンプ40に吸入される。
【0110】
このように空調用冷媒回路220内を冷媒が循環して外気用熱交換器82及び空調用熱交換器87において熱交換が行われることで、空調用熱交換器87において車内を冷房又は除湿することができる。また、電装品冷却回路30内を流体が循環して冷却器42及び放熱器45において熱交換が行われることで、冷却器42において電装品41を冷却することができる。さらに、通常冷房モードでは、主冷媒回路221から協調熱交換器50に向かって流れる冷媒の経路が調整弁89によって閉じられ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流れる流体の経路が調整弁43によって閉じられる。この結果、通常冷房モードでは、協調熱交換器50において熱交換が行われないため、圧縮機80動力を車内の冷房能力に応じた動力とすることができる。
【0111】
(3−2)高負荷冷房モード
高負荷通常冷房モードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられ、制御弁87aの弁開度が所定開度となるように調整される。そして、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の冷房能力又は除湿能力に応じて調整される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は所定開度となるように調整され、ポンプ40の出力は、最大出力となるように調整される。さらに、調整弁89の弁開度は、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができるだけの冷媒が協調熱交換器50に流れるように調整される。具体的には、調整弁89の弁開度は、協調熱交換器50の出口側の過熱度が所定値となるように制御される。一方、調整弁43の弁開度は、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができるだけの流体が協調熱交換器50に流れるように調整される。具体的には、調整弁43の弁開度は、冷却器42の出口側の流体温度が電装品41を正常な温度に保つために必要な所定温度に調整される。前記所定温度は、電装品41の負荷(高負荷の場合は、温度を下げる)によって変化させる。
【0112】
空調用冷媒回路220では、圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、外気用熱交換器82で外気と熱交換して、冷却され凝縮する。外気用熱交換器82から流出した高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、冷媒配管223aを流れて第1熱交換器85に至り、又は、冷媒配管223aの途中で第2空調側分岐配管222に流れ、或いは、冷媒配管223aの途中で第1空調側分岐配管225に流れる。
【0113】
第1熱交換器85に至った冷媒は、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、液冷媒が蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0114】
一方、第1空調側分岐配管225に流れた液冷媒は、制御弁87aを介して第2熱交換器86に流入し、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。そして、蒸発したガス冷媒は、吸入側冷媒配管24を流れる冷媒に合流し、圧縮機80に吸入される。
【0115】
また、第2空調側分岐配管222に流れた冷媒は、調整弁89を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った後に、吸入側冷媒配管24を流れる冷媒に合流する。
【0116】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出した流体は、配管33aを流れ、冷却器用制御弁44を介して放熱器45に至り、或いは、配管33aの途中で第1冷却配管32aに流れる。
【0117】
放熱器45に至った流体は、放熱器45において外気と熱交換を行うことで冷却された後、吸入側冷却配管34を流れてポンプ40に吸入される。
【0118】
一方、第1冷却配管32aに流れた流体は、調整弁43を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において空調側分岐配管22を流れる冷媒と熱交換を行った後に、第2冷却配管32bを流れて吸入側冷却配管34を流れる流体に合流する。
【0119】
このように空調用冷媒回路220内を冷媒が循環することで、空調用熱交換器87において車内を冷房又は除湿することができる。また、電装品冷却回路30内を流体が循環することで、冷却器42において電装品41を冷却することができる。さらに、高負荷冷房モードでは、主冷媒回路221から協調熱交換器50に向かって冷媒が流れ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流体が流れることで、協調熱交換器50において、第2空調側分岐配管222を流れる冷媒と電装品側分岐配管32を流れる流体との間で、すなわち、外気用熱交換器82で凝縮した低温液冷媒と電装品41から吸熱した流体との間で熱交換を行わせることができる。この結果、電装品冷却回路30内を流れる流体が冷却されるため、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができる。
【0120】
(3−3)暖房モード
暖房モードでは、四路切替弁81が第2状態に切り替えられる。また、圧縮機80の回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の暖房能力に応じて調整され、制御弁87aの弁開度は、車内の除湿能力に応じて調整される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は全閉となるように調整され、ポンプ40の出力は、冷却器42における冷却能力に応じて調整される。さらに、調整弁89の弁開度は、協調熱交換器50に所定量の冷媒が流れるように調整される。具体的には、調整弁89の弁開度は、協調熱交換器50の出口側の過熱度が所定値となるように制御される。一方、調整弁43の弁開度は、全開となるように調整される。
【0121】
空調用冷媒回路220では、圧縮機80から吐出された高圧ガス冷媒は、第1熱交換器85で内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、高圧ガス冷媒が凝縮するとともに空気を加熱し、車内の暖房を行う。また、第1熱交換器85から流出した高圧液冷媒は、冷媒配管223aを流れて空調用制御弁83に至り、又は、第1空調側分岐配管225に流れ、或いは、第2空調側分岐配管222に流れる。
【0122】
空調用制御弁83に至った液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、外気用熱交換器82に流入する。外気用熱交換器82では、流入した液冷媒が、外気と熱交換を行うことで蒸発する。そして、蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して圧縮機80に吸入される。
【0123】
一方、第1空調側分岐配管225に流れた液冷媒は、制御弁87aで減圧されて、第2熱交換器86に流入する。そして、第2熱交換器86で内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行うことで蒸発するとともに空気を冷却して車内の除湿を行う。その後、第2熱交換器86で蒸発したガス冷媒は、吸入側冷媒配管24を流れる冷媒に合流し、圧縮機80に吸入される。また、第2空調側分岐配管222に流れた流体は、調整弁89を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った後に、吸入側冷媒配管24を流れる冷媒に合流する。
【0124】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出したすべての流体は、調整弁43を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において空調側分岐配管22を流れる冷媒と熱交換を行った後に、第2冷却配管32bを流れて、ポンプ40に吸入される。
【0125】
このように空調用冷媒回路220内を冷媒が循環することで、空調用熱交換器87において車内を暖房除湿することができる。また、暖房モードでは、主冷媒回路221から協調熱交換器50に向かって冷媒が流れ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流体が流れることで、協調熱交換器50において、第2空調側分岐配管222を流れる冷媒と電装品側分岐配管32を流れる流体との間で、すなわち、第1熱交換器85で凝縮した液冷媒と電装品41から吸熱した流体との間で熱交換を行わせることができる。この結果、電装品冷却回路30内を流れる流体が冷却されるため、放熱器45において流体が冷却されなくても電装品41を冷却することができる。
【0126】
また、暖房モードでは、協調熱交換器50において、冷却器42において電装品41からの排熱を吸入した流体と、空調用冷媒回路220を流れる冷媒との間で熱交換が行われているため、車内暖房に電装品41の排熱を利用することができる。この結果、空調用冷媒回路220における暖房時の効率を向上させることができる。
【0127】
なお、本実施形態では、暖房モード実行時には、冷却器用制御弁44の弁開度は全閉となるように調整されているが、これに限定されず、例えば、冷却器42の出口側の流体温度が所定値以上である場合には、放熱器45にも流体が流れるように冷却器用制御弁44の弁開度が調整されてもよい。
【0128】
(4)特徴
(4−1)
従来より、ハイブリッド車や電気自動車等の備える電装品を冷却するための電装品冷却回路が車に搭載されているものがある。そして、従来の電装品冷却回路では、電装品から受熱した流体の放熱が、放熱器のみによって行われる場合がる。
【0129】
そこで、本実施形態では、空調用冷媒回路220を循環する冷媒と、電装品冷却回路30を循環する流体と、の間で熱交換を行うことが可能な協調熱交換器50が設けられている。また、調整弁43,89の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50における熱交換の有無だけでなく、協調熱交換器50における熱交換量(熱の移動量)が変更されている。このため、従来の放熱器が負担していた熱交換量の一部を、協調熱交換器50に負担させることができる。
【0130】
これによって、協調熱交換器50において流体の冷却が行われることで、放熱器45の小型化を実現することができている。
【0131】
(4−2)
本実施形態では、高負荷冷房モード実行時では、第2空調側分岐配管222には、外気用熱交換器82で凝縮され空調用制御弁83で減圧された冷媒が流れる。また、暖房モード実行時では、第2空調側分岐配管222には、第1熱交換器85で凝縮された冷媒が流れる。そして、第2空調側分岐配管222を流れる冷媒は、協調熱交換器50において、電装品側分岐配管32を流れる流体と、熱交換を行う。このため、車内の冷房時及び暖房時のいずれの場合であっても、協調熱交換器50において、低温の冷媒と、電装品41から受熱した流体と、の間で熱交換を行わせることができる。この結果、協調熱交換器50において熱交換が行われることで、電装品冷却回路30内を流れる流体を冷却することができる。
【0132】
これによって、従来の放熱器と比較して、放熱器45の小型化を実現することができるため、電装品41の冷却能力を維持しつつ、放熱器45を必要最小限のサイズにすることができる。
【0133】
また、従来よりも放熱器45が小型化することで空くスペース分、外気用熱交換器82のサイズを大きくすることで、外気用熱交換器82における熱交換効率を向上させることができるため、自動車用温調システム全体の効率を向上させることができる。
【0134】
(4−3)
本実施形態では、調整弁89の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50に向かって流れる冷媒の流量が調整される。また、調整弁43の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50に向かって流れる流体の流量が調整される。このため、この自動車用温調システムでは、調整弁43,89の弁開度を調整することで、協調熱交換器50における熱交換量を調整することができている。
【0135】
また、協調熱交換器50において第2空調側分岐配管222を流れる冷媒に回収される冷熱量が調整されることで、電装品冷却回路30内を流れる流体の温度を、外気温度によらず、所定の温度範囲内に制御することができる。
【0136】
(4−4)
本実施形態では、空調用熱交換器87が、第1熱交換器85と、膨張機構である制御弁87aを介して第1熱交換器85に接続される第2熱交換器86と、を有している。また、制御弁87aの弁開度が調整されることで、第2熱交換器86を蒸発器として機能させることができる。このため、この自動車用温調システムでは、第1熱交換器85が凝縮器として機能する場合、すなわち、車内の暖房時に、第2熱交換器86を蒸発器として機能させて、車内を除湿することができる。
【0137】
これによって、車内の暖房時に車窓が曇るおそれを低減することができている。
【0138】
(4−5)
電気自動車では、ガソリン車のようにエンジンの排熱を車内暖房に利用することができないため、車内暖房時の熱源としてヒータ等が利用されることが多い。
【0139】
本実施形態では、車内暖房時には、空調用冷媒回路220側は、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体から電装品41の排熱を回収することができる。これにより、暖房能力や効率を向上させることができるため、ヒータ88のサイズを小さくすることができる。
【0140】
(5)変形例
(5−1)変形例2A
上記実施形態では、電装品冷却回路30では、電装品41の冷却のみが行われている。
【0141】
これに加えて、電装品冷却回路において、走行等の電力源であるバッテリの冷却が行われてもよい。例えば、電装品冷却回路が、バッテリを冷却するためのバッテリ用熱交換器を備えていてもよい。電装品冷却回路に、冷却器だけでなくバッテリ用熱交換器が設けられていることで、電装品の冷却に加えてバッテリの冷却を行うことができる。
【0142】
また、第1実施形態の変形例1Aのように、電装品冷却回路において、バッテリ用熱交換器を迂回するようにバイパス配管が設けられており、バイパス配管に流体の流量調整が可能な弁が設けられている場合には、バッテリ用熱交換器に流れる流体の流量を調整することができるため、バッテリの冷却温度を所定の温度に設定しやすくすることができる。この結果、バッテリの使用可能な温度範囲にバッテリを温調することができる。
【0143】
<第3実施形態>
以下に、本発明の第3実施形態に係る自動車用温調システムについて説明する。なお、第3実施形態では、第1実施形態と同様の構成の機器については、第1実施形態と同様の符号を付している。
【0144】
(1)全体構成
自動車用温調システムは、ハイブリッド車や電気自動車等のバッテリが走行用の電力源である車に用いられる温調システムであって、温調装置311と、制御装置とを備えている。温調装置311は、車内の空調を行うための空調用冷媒回路320と、バッテリ以外の電装品41の冷却を行うための電装品冷却回路30と、空調用冷媒回路320を流れる冷媒と電装品冷却回路30を流れる流体との間で熱交換を行わせる協調熱交換器50と、を備えている。制御装置は、温調装置311の備える各種機器を制御するための装置である。この自動車用温調システムでは、制御装置が温調装置311の備える各種機器を制御することで、車内の空調(冷房及び暖房等)、及び、電装品41の冷却が行われる。
【0145】
(2)詳細構成
(2−1)温調装置の構成
温調装置311の備える空調用冷媒回路320は、図5に示すように、主に、第1圧縮機380aと、第2圧縮機380bと、四路切替弁81と、外気用熱交換器82と、空調用熱交換器87と、を含む蒸気圧縮式の冷媒回路である。また、空調用冷媒回路320は、主冷媒回路321と、主冷媒回路321から分岐しており、第2熱交換器86及び協調熱交換器50が接続されている空調側分岐配管322と、を有する。
【0146】
また、温調装置311の備える電装品冷却回路30は、図5に示すように、主に、ポンプ40と、冷却器42と、放熱器45と、を含む冷却回路である。また、電装品冷却回路30は、主冷却回路31と、主冷却回路31から分岐しており、協調熱交換器50が接続されている電装品側分岐配管32と、を有する。
【0147】
温調装置311の備える協調熱交換器50は、図5に示すように、空調側分岐配管322及び電装品側分岐配管32と接続されており、空調用冷媒回路320を循環する冷媒と電装品冷却回路30を循環する流体との間で熱交換を行わせる。なお、本実施形態では、電装品冷却回路30には、流体として水が循環しているものとする。
【0148】
(2−1−1)空調用冷媒回路の構成
主冷媒回路321には、図5に示すように、第1圧縮機380aと、外気と熱交換を行う外気用熱交換器82と、空調用制御弁83と、車内を空調するための空調用熱交換器87の第1熱交換器85と、が順に接続されている。なお、空調用制御弁83、外気用熱交換器82の構成は、それぞれ、第1実施形態の構成と同様であるため説明を省略する。
【0149】
第1圧縮機380aは、回転数が可変なインバータ式の圧縮機であって、吸入したガス冷媒を圧縮するためのものである。また、第1圧縮機380aの吐出部から吐出された冷媒は、後述する第2圧縮機380bから吐出された冷媒と合流点を介して合流して、四路切替弁81に至るように構成されている。
【0150】
空調用熱交換器87の第1熱交換器85は、第1実施形態の第1熱交換器85と同様に、車内の空気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、内ファン84が第1熱交換器85に接触する空気流れを生成することで、車内の空気と第1熱交換器85を流れる冷媒とを熱交換させることができる。一方で、第1熱交換器85は、図5に示すように、空調用制御弁83と冷媒配管323aで接続されている。
【0151】
空調側分岐配管322は、一端が冷媒配管323aに接続されており、他端が第2圧縮機380bの吸入側に接続されている。なお、第2圧縮機380bは、第1圧縮機380aと同様に、回転数が可変なインバータ式の圧縮機であって、吸入したガス冷媒を圧縮するためのものである。また、空調側分岐配管322には、制御弁87a、空調用熱交換器87の第2熱交換器86、協調熱交換器50の順に接続されている。
【0152】
第2熱交換器86は、第1実施形態の第2熱交換器86と同様に、車内の空気を熱源として冷媒と熱交換を行うためのものであり、内ファン84が第2熱交換器86に接触する空気流れを生成することで、車内の空気と第2熱交換器86を流れる冷媒とを熱交換させることができる。制御弁87aは、第2熱交換器86及び協調熱交換器50に流れる冷媒圧力の調整や冷媒流量の調整等を行うための電動膨張弁であって、その弁開度が調整されることで、第2熱交換器86を凝縮器或いは蒸発器として機能させることができる。
【0153】
なお、空調側分岐配管322は、一端が冷媒配管323aに接続されており、他端が第2圧縮機380bの吸入側に接続されているため、空調側分岐配管322には、車内の暖房時及び冷房時のいずれの場合であっても、同一方向に冷媒が流れることになる。
【0154】
また、本実施形態では、上記第1実施形態と同様に、車内の暖房時の暖房能力が不足している場合に、車内の空気を加熱するための熱源としてヒータ88が配設されている。
【0155】
(2−1−2)電装品冷却回路の構成
電装品冷却回路30は、上述のように、主冷却回路31と、電装品側分岐配管32と、を有する。なお、本実施形態における電装品冷却回路30の構成は、第1実施形態で説明した構成と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0156】
(2−2)制御装置の構成
制御装置は、温調装置311の有する各種機器と接続されており、車内の空調及び電装品41の冷却等を行うために各種機器の動作制御を行う。より詳しくは、制御装置は、空調用制御弁83及び制御弁87aの弁開度や内ファン84の回転数を調整する制御を行うことで空調用熱交換器87における熱交換量を制御したり、冷却器用制御弁44の弁開度を調整する制御を行うことで放熱器45における熱交換量を制御したり、制御弁87aや調整弁43の弁開度を調整する制御を行うことで、協調熱交換器50における熱交換量を制御したりする。なお、制御装置は、第1圧縮機380a及び第2圧縮機380bの駆動を個別に制御することができる。
【0157】
また、制御装置は、車内空調として冷房が行われる通常冷房モード及び高負荷冷房モードと、車内空調として暖房が行われる暖房モードと、を実行する実行部を有している。なお、実行部によって実行される各モードは、上記第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0158】
(3)各モード実行時における各種機器の制御動作
次に、実行部による各モード実行時における各種機器の制御動作について説明する。
【0159】
(3−1)通常冷房モード
通常冷房モードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられ、制御弁87aの弁開度が全閉となるように調整される。そして、第1圧縮機380aの回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の冷房能力又は除湿能力に応じて調整される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は全開となるように調整され、ポンプ40の出力は、冷却器42における冷却能力に応じて調整される。さらに、調整弁43の弁開度は、全閉となるように調整される。なお、通常冷房モードでは、第2圧縮機380bは駆動されない。
【0160】
空調用冷媒回路320では、第1圧縮機380aから吐出された高圧ガス冷媒は、外気用熱交換器82で外気と熱交換して、冷却され凝縮する。外気用熱交換器82から流出した高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、第1熱交換器85に至る。第1熱交換器85に流入した液冷媒は、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、液冷媒が蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して第1圧縮機380aに吸入される。
【0161】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出したすべての流体は、冷却器用制御弁44を介して放熱器45に流れ、放熱器45において外気と熱交換を行うことで冷却される。その後、放熱器45において冷却された流体は、ポンプ40に吸入される。
【0162】
このように空調用冷媒回路320内を冷媒が循環して外気用熱交換器82及び第1熱交換器85において熱交換が行われることで、第1熱交換器85において車内を冷房又は除湿することができる。また、電装品冷却回路30内を流体が循環して冷却器42及び放熱器45において熱交換が行われることで、冷却器42において電装品41を冷却することができる。さらに、通常冷房モードでは、主冷媒回路321から協調熱交換器50に向かって流れる冷媒の経路が制御弁87aによって閉じられ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流れる流体の経路が調整弁43によって閉じられる。このように、通常冷房モードでは、協調熱交換器50において熱交換が行われないため、第2圧縮機380bを駆動させる必要がない。
【0163】
(3−2)高負荷冷房モード
高負荷通常冷房モードでは、四路切替弁81が第1状態に切り替えられる。また、制御弁87aの弁開度は、第2圧縮機380bの吸入過熱度が所定値となるように調整される、いわゆる過熱度制御が行われる。そして、第1圧縮機380aの回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の冷房能力又は除湿能力に応じて調整される。一方、第2圧縮機380bの回転数は、第2圧縮機380bの吸入圧力に応じて制御される。また、冷却器用制御弁44の弁開度は所定開度となるように調整され、ポンプ40の出力は、最大出力となるように調整される。さらに、調整弁43の弁開度は、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができるだけの流体が協調熱交換器50に流れるように調整される。具体的には、調整弁43の弁開度は、冷却器42の出口側の流体温度が電装品41を正常な温度に保つために必要な所定温度に調整される。前記所定温度は、電装品41の負荷(高負荷の場合は、温度を下げる)によって変化させる。
【0164】
空調用冷媒回路320では、第1圧縮機380aから吐出された高圧ガス冷媒は、第2圧縮機380bから吐出された高圧ガス冷媒と合流した後に、四路切替弁81を介して、外気用熱交換器82に至る。外気用熱交換器82に至った高圧ガス冷媒は、外気用熱交換器82で外気と熱交換して、冷却され凝縮する。外気用熱交換器82から流出した高圧液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、冷媒配管323aを流れて第1熱交換器85に至り、又は、冷媒配管323aの途中で空調側分岐配管322に流れる。
【0165】
第1熱交換器85に至った冷媒は、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、液冷媒が蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して第1圧縮機380aに吸入される。
【0166】
一方、空調側分岐配管322に流れた液冷媒は、制御弁87aを介して第2熱交換器86に流入し、内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、蒸発するとともに空気を冷却し、車内の冷房を行う。そして、第2熱交換器86から流出した冷媒は、協調熱交換器50に流れ、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った後に、第2圧縮機380bに吸入される。
【0167】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出した流体は、配管33aを流れ、冷却器用制御弁44を介して放熱器45に至り、或いは、配管33aの途中で第1冷却配管32aに流れる。
【0168】
放熱器45に至った流体は、放熱器45において外気と熱交換を行うことで冷却された後、吸入側冷却配管34を流れてポンプ40に吸入される。
【0169】
一方、第1冷却配管32aに流れた流体は、調整弁43を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において空調側分岐配管322を流れる冷媒と熱交換を行った後に、第2冷却配管32bを流れて吸入側冷却配管34を流れる流体に合流する。
【0170】
このように空調用冷媒回路320内を冷媒が循環することで、空調用熱交換器87において車内を冷房又は除湿することができる。また、電装品冷却回路30内を流体が循環することで、冷却器42において電装品41を冷却することができる。さらに、高負荷冷房モードでは、主冷媒回路321から協調熱交換器50に向かって冷媒が流れ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流体が流れることで、協調熱交換器50において、空調側分岐配管322を流れる冷媒と電装品側分岐配管32を流れる流体との間で、すなわち、第2熱交換器86から流出した冷媒と電装品41から吸熱した流体との間で熱交換を行わせることができる。この結果、電装品冷却回路30内を流れる流体が冷却されるため、放熱器45における冷却能力の不足分を補うことができる。
【0171】
(3−3)暖房モード
暖房モードでは、四路切替弁81が第2状態に切り替えられる。また、第1圧縮機380aの回転数及び空調用制御弁83の弁開度は、車内の暖房能力に応じて調整される。一方、第2圧縮機380bの回転数は、第2圧縮機380bの吸入圧力に応じて制御される。また、制御弁87aの弁開度は、第2圧縮機380bの吸入過熱度が所定値となるように調整される、いわゆる過熱度制御が行われる。また、冷却器用制御弁44の弁開度は全閉となるように調整され、ポンプ40の出力は、冷却器42における冷却能力に応じて調整される。また、調整弁43の弁開度は、全開となるように調整される。
【0172】
空調用冷媒回路320では、第1圧縮機380aから吐出された高圧ガス冷媒は、第2圧縮機380bから吐出された高圧ガス冷媒と合流した後に、四路切替弁81を介して、第1熱交換器85に至る。そして、第1熱交換器85に至った高圧ガス冷媒は、第1熱交換器85で内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行い、高圧ガス冷媒が凝縮するとともに空気を加熱し、車内の暖房を行う。また、第1熱交換器85から流出した高圧液冷媒は、冷媒配管323aを流れて空調用制御弁83に至り、又は、空調側分岐配管322に流れる。
【0173】
空調用制御弁83に至った液冷媒は、空調用制御弁83で減圧された後に、外気用熱交換器82に流入する。外気用熱交換器82では、流入した液冷媒が、外気と熱交換を行うことで蒸発する。そして、蒸発したガス冷媒は、四路切替弁81を介して第1圧縮機380aに吸入される。
【0174】
一方、空調側分岐配管322に流れた液冷媒は、制御弁87aで減圧されて、第2熱交換器86に流入する。そして、第2熱交換器86で内ファン84により送風される車内空気と熱交換を行うことで蒸発するとともに空気を冷却して車内の除湿を行う。その後、第2熱交換器86から流出した冷媒は、協調熱交換器50に流入し、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った後に、第2圧縮機380bに吸入される。
【0175】
また、電装品冷却回路30では、ポンプ40から流出した流体は、冷却器42において電装品41から吸熱することにより電装品41を冷却する。そして、冷却器42から流出したすべての流体は、調整弁43を介して協調熱交換器50に流入する。そして、協調熱交換器50において空調側分岐配管322を流れる冷媒と熱交換を行った後に、第2冷却配管32bを流れて、ポンプ40に吸入される。
【0176】
このように空調用冷媒回路320内を冷媒が循環することで、空調用熱交換器87において車内を暖房除湿することができる。また、暖房モードでは、主冷媒回路321から協調熱交換器50に向かって冷媒が流れ、かつ、主冷却回路31から協調熱交換器50に向かって流体が流れることで、協調熱交換器50において、空調側分岐配管322を流れる冷媒と電装品側分岐配管32を流れる流体との間で、すなわち、第2熱交換器86から流出した冷媒と、電装品41から吸熱した流体との間で熱交換を行わせることができる。この結果、電装品冷却回路30内を流れる流体が冷却されるため、放熱器45において流体が冷却されなくても電装品41を冷却することができる。
【0177】
また、暖房モードでは、協調熱交換器50において、冷却器42において電装品41からの排熱を吸入した流体と、空調用冷媒回路320を流れる冷媒との間で熱交換が行われているため、車内暖房に電装品41の排熱を利用することができる。この結果、空調用冷媒回路320における暖房時の効率を向上させることができる。
【0178】
なお、本実施形態では、暖房モード実行時には、冷却器用制御弁44の弁開度は全閉となるように調整されているが、これに限定されず、例えば、冷却器42の出口側の流体温度が所定値以上である場合には、放熱器45にも流体が流れるように冷却器用制御弁44の弁開度が調整されてもよい。
【0179】
(4)特徴
(4−1)
従来より、ハイブリッド車や電気自動車等の備える電装品を冷却するための電装品冷却回路が車に搭載されているものがある。そして、従来の電装品冷却回路では、電装品から受熱した流体の放熱が、放熱器のみによって行われる場合がる。
【0180】
そこで、本実施形態では、空調用冷媒回路320を循環する冷媒と、電装品冷却回路30を循環する流体と、の間で熱交換を行うことが可能な協調熱交換器50が設けられている。また、制御弁87a及び調整弁43の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50における熱交換の有無だけでなく、協調熱交換器50における熱交換量(熱の移動量)が変更されている。このため、従来の放熱器が負担していた熱交換量の一部を、協調熱交換器50に負担させることができる。
【0181】
これによって、協調熱交換器50において流体の冷却が行われることで、放熱器45の小型化を実現することができている。
【0182】
(4−2)
本実施形態では、高負荷冷房モード実行時、及び、暖房モード実行時に、空調側分岐配管322には、第2熱交換器86において蒸発された冷媒が流れる。そして、空調側分岐配管322を流れる冷媒は、協調熱交換器50において、電装品側分岐配管32を流れる流体と、熱交換を行う。このため、車内の冷房時及び暖房時のいずれの場合であっても、協調熱交換器50において、低温の冷媒と、電装品41から受熱した流体と、の間で熱交換を行わせることができる。この結果、協調熱交換器50において熱交換が行われることで、電装品冷却回路30内を流れる流体を冷却することができる。
【0183】
これによって、従来の放熱器と比較して、放熱器45の小型化を実現することができるため、電装品41の冷却能力を維持しつつ、放熱器45を必要最小限のサイズにすることができる。
【0184】
また、従来よりも放熱器45が小型化することで空くスペース分、外気用熱交換器82のサイズを大きくすることで、外気用熱交換器82における熱交換効率を向上させることができるため、自動車用温調システム全体の効率を向上させることができる。
【0185】
(4−3)
本実施形態では、制御弁87aの弁開度が調整されることで、協調熱交換器50に向かって流れる冷媒の流量が調整される。また、調整弁43の弁開度が調整されることで、協調熱交換器50に向かって流れる流体の流量が調整される。このため、この自動車用温調システムでは、制御弁87a及び調整弁43の弁開度を調整することで、協調熱交換器50における熱交換量を調整することができている。
【0186】
また、協調熱交換器50において空調側分岐配管322を流れる冷媒に回収される冷熱量が調整されることで、電装品冷却回路30内を流れる流体の温度を、外気温度によらず、所定の温度範囲内に制御することができる。
【0187】
(4−4)
本実施形態では、空調用熱交換器87が、第1熱交換器85と、膨張機構である制御弁87aを介して第1熱交換器85に接続される第2熱交換器86と、を有している。また、制御弁87aの弁開度が調整されることで、第2熱交換器86を蒸発器として機能させることができる。このため、この自動車用温調システムでは、第1熱交換器85が凝縮器として機能する場合、すなわち、車内の暖房時に、第2熱交換器86を蒸発器として機能させて、車内を除湿することができる。
【0188】
これによって、車内の暖房時に車窓が曇るおそれを低減することができている。
【0189】
(4−5)
電気自動車では、ガソリン車のようにエンジンの排熱を車内暖房に利用することができないため、車内暖房時の熱源としてヒータ等が利用されることが多い。
【0190】
本実施形態では、車内暖房時には、空調用冷媒回路320側は、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体から電装品41の排熱を回収することができる。これにより、暖房能力や効率を向上させることができるため、ヒータ88のサイズを小さくすることができる。
【0191】
(4−6)
本実施形態では、冷媒を圧縮する圧縮機として、第1圧縮機380aと、第1圧縮機380aと並列に設けられた第2圧縮機380bと、が含まれる。第1圧縮機380aは、主冷媒回路321に設けられており、第1圧縮機380aの吸入部は、吸入側冷媒配管によって、四路切替弁81と接続されている。また、第2圧縮機380bの吸入部は、空調側分岐配管322によって冷媒配管323aと接続されており、第2圧縮機380bには、第2熱交換器86及び協調熱交換器50で熱交換が行われた冷媒が吸入される。このため、この自動車用温調システムでは、第1圧縮機380a及び第2圧縮機380bを個別に制御することで、外気用熱交換器82、第1熱交換器85、第2熱交換器86及び協調熱交換器50に流れる冷媒の流量を細かく制御することができる。したがって、協調熱交換器50における熱交換量が調整しやすくなっている。
【0192】
(5)変形例
(5−1)変形例3A
上記実施形態では、電装品冷却回路30では、電装品41の冷却のみが行われている。
【0193】
これに加えて、電装品冷却回路において、走行等の電力源であるバッテリの冷却が行われてもよい。例えば、電装品冷却回路が、バッテリを冷却するためのバッテリ用熱交換器を備えていてもよい。電装品冷却回路に、冷却器だけでなくバッテリ用熱交換器が設けられていることで、電装品の冷却に加えてバッテリの冷却を行うことができる。
【0194】
また、第1実施形態の変形例1Aのように、電装品冷却回路において、バッテリ用熱交換器を迂回するようにバイパス配管が設けられており、バイパス配管に流体の流量調整が可能な弁が設けられている場合には、バッテリ用熱交換器に流れる流体の流量を調整することができるため、バッテリの冷却温度を所定の温度に設定しやすくすることができる。この結果、バッテリの使用可能な温度範囲にバッテリを温調することができる。
【0195】
(5−2)変形例3B
上記実施形態では、空調用冷媒回路320において、第2熱交換器86の下流側に協調熱交換器50が配置されており、第2熱交換器86で熱交換が行われた冷媒が、協調熱交換器50に流れる構成となっている。
【0196】
これに代えて、図6に示す空調用冷媒回路420のように、第1熱交換器85と空調用制御弁83とを接続する冷媒配管423aを流れる冷媒が、第2熱交換器86で熱交換されることなく協調熱交換器50に流れるような構成であってもよい。例えば、図6に示すように、空調用冷媒回路420が、主冷媒回路421から第2熱交換器86に冷媒を流すための空調側分岐配管422とは別に、主冷媒回路421から協調熱交換器50に冷媒を流すための空調側分岐配管425を有していてもよい。なお、本変形例の自動車用温調システムでは、図6に示すように、空調用冷媒回路420の構成として、協調熱交換器50に冷媒を流すための空調側分岐配管425(以下、空調側分岐配管422と区別するために、第2空調側分岐配管425という)が設けられており、空調側分岐配管422ではなく、第2空調側分岐配管425に協調熱交換器50が設けられていること以外は、上記実施形態と同様の構成である。また、図6では、上記実施形態と同様の構成の機器については、上記実施形態の機器と同様の符号を付している。
【0197】
第2空調側分岐配管425は、一端が冷媒配管423aに接続されており、他端が第1圧縮機380aの吸入側と四路切替弁81とを接続する吸入側冷媒配管424に接続されている。このため、空調用冷媒回路420において、協調熱交換器50には冷媒配管423aを流れる冷媒が流入することになり、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った冷媒は、吸入側冷媒配管424を流れる冷媒と合流して第1圧縮機380aに吸入されることになる。
【0198】
このような空調用冷媒回路420を備える自動車用温調システムであっても、空調用冷媒回路420を循環する冷媒と電装品冷却回路30を循環する流体との間で熱交換が協調熱交換器50において行われることで、従来の放熱器が負担していた熱交換量の一部を、協調熱交換器50に負担させることができる。これによって、放熱器45の小型化を実現することができている。
【0199】
(5−3)変形例3C
上記実施形態では、電装品冷却回路30には、冷却器用制御弁44及び調整弁43が設けられている。これに代えて、図7に示すように、電装品冷却回路530において、冷却器42と放熱器45とを接続する冷却配管33からの電装品側分岐配管32の分岐部分に、流体の流量調整可能な三方弁543が設けられていてもよい。
【0200】
また、図7に示すように、空調用冷媒回路520が、主冷媒回路521から第2熱交換器86に冷媒を流すための空調側分岐配管522とは別に、主冷媒回路521から協調熱交換器50に冷媒を流すための空調側分岐配管525を有していてもよい。なお、本変形例の自動車用温調システムでは、図7に示すように、電装品冷却回路530において、第3実施形態の冷却器用制御弁44及び調整弁43に代えて三方弁543が設けられており、空調用冷媒回路520において協調熱交換器50に冷媒を流すための空調側分岐配管525(以下、空調側分岐配管522と区別するために、第2空調側分岐配管525という)が設けられており、協調熱交換器50が、空調側分岐配管522ではなく第2空調側分岐配管525に設けられており、かつ、第2空調側分岐配管525に協調熱交換器50への冷媒の流量を調整可能な調整弁589が設けられていること以外は、上記実施形態と同様の構成である。また、図7では、上記実施形態と同様の構成の機器については、上記実施形態の機器と同様の符号を付している。
【0201】
ここで、第2空調側分岐配管525は、図7に示すように、一端が冷媒配管523aに接続されており、他端が、空調側分岐配管522の一部であって、第2圧縮機380bの吸入側と第2熱交換器86とを接続する配管522aに接続されている。このため、協調熱交換器50には冷媒配管523aを流れる冷媒が流入することになり、協調熱交換器50において電装品側分岐配管32を流れる流体と熱交換を行った冷媒は、配管522aを流れる冷媒と合流して、第2圧縮機380bに吸入されることになる。
【0202】
また、第2空調側分岐配管525には調整弁589が設けられているため、調整弁589が設けられていない場合と比較して、協調熱交換器50における熱交換量が調整しやすくなっている。
【0203】
このような空調用冷媒回路520を備える自動車用温調システムであっても、空調用冷媒回路520を循環する冷媒と電装品冷却回路530を循環する流体との間で熱交換が協調熱交換器50において行われることで、従来の放熱器が負担していた熱交換量の一部を、協調熱交換器50に負担させることができる。これによって、放熱器45の小型化を実現することができている。
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明は、放熱器の小型化を実現することができる自動車用温調システムに係る発明であり、ハイブリッド車や電気自動車への適用が有効である。
【符号の説明】
【0205】
10 自動車用温調システム
20 空調用冷媒回路
22 空調側分岐配管(第2配管)
23 冷媒配管(第1配管)
30 電装品冷却回路
32 電装品側分岐配管(第4配管)
33 冷却配管(第3配管)
40 ポンプ
41 電装品
42 冷却器
43 調整弁(第2調整弁)
45 放熱器
50 協調熱交換器
60 制御装置(調整制御装置)
80 圧縮機
81 四路切替弁
82 外気用熱交換器
85 第1熱交換器(内気用熱交換器)
86 第2熱交換器(副内気用熱交換器)
87a 制御弁(膨張機構)
89 調整弁(第1調整弁)
380a 第1圧縮機
380b 第2圧縮機
【先行技術文献】
【特許文献】
【0206】
【特許文献1】特開平8−258548号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(80)と、四路切替弁(81)と、外気と熱交換を行う外気用熱交換器(82)と、車内の空気と熱交換を行う内気用熱交換器(85)と、を含む空調用冷媒回路(20)と、
ポンプ(40)と、電装品(41)を冷却する冷却器(42)と、前記冷却器において熱交換が行われた流体を冷却するための放熱器(45)と、を含む電装品冷却回路(30)と、
前記空調用冷媒回路を流れる冷媒と前記電装品冷却回路を流れる流体との間で熱交換を行わせる協調熱交換器(50)と、
前記協調熱交換器における熱交換量を調整する調整制御装置(60)と、
を備える自動車用温調システム(10)。
【請求項2】
前記空調用冷媒回路は、前記外気用熱交換器と前記内気用熱交換器とを接続する第1配管(23)と、前記第1配管から分岐しており前記第1配管を流れる冷媒を前記圧縮機の吸入側に流すための第2配管(22)と、を含み、
前記電装品冷却回路は、前記冷却器と前記放熱器とを接続する第3配管(33)と、前記第3配管から分岐しており前記第3配管を流れる流体を前記ポンプの流入側に流すための第4配管(32)と、を含み、
前記協調熱交換器は、前記第2配管を流れる冷媒と前記第4配管を流れる流体との間で熱交換を行わせる、
請求項1に記載の自動車用温調システム。
【請求項3】
前記空調用冷媒回路は、前記第2配管に設けられており、前記協調熱交換器に流れる冷媒の流量を調整可能な第1調整弁(89)を含み、
前記電装品冷却回路は、前記第4配管に設けられており、前記協調熱交換器に流れる流体の流量を調整可能な第2調整弁(43)を含み、
前記調整制御装置は、前記第1調整弁及び前記第2調整弁を制御する、
請求項2に記載の自動車用温調システム。
【請求項4】
前記圧縮機は、第1圧縮機(380a)と、前記第1圧縮機と並列に設けられた第2圧縮機(380b)とを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載の自動車用温調システム。
【請求項5】
前記空調用冷媒回路は、膨張機構(87a)と、前記膨張機構を介して前記内気用熱交換器と接続されており車内の空気と熱交換を行う副内気用熱交換器(86)と、を含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動車用温調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−75628(P2013−75628A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217491(P2011−217491)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】