自動車製造工場への鋼板供給システム
【課題】自動車製造工場のブランク工程におけるコイルの保管や、鋼板の巻き戻し作業、巻き戻したコイルの保管管理等を減少させることができる自動車製造工場への鋼板供給システムを提供する。
【解決手段】自動車製造工場と鋼板を供給する製鉄所との間に、コイルセンター6を設ける。コイルセンター6には、アンコイラー8、ピンチロール9、カッター10、測長機11、リコイラ12ーを直結したコイル分割ライン7及びコイル倉庫を設ける。製鉄所から出荷される大型コイルをコイルセンター6のコイル分割ライン7で鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に出荷する。
【解決手段】自動車製造工場と鋼板を供給する製鉄所との間に、コイルセンター6を設ける。コイルセンター6には、アンコイラー8、ピンチロール9、カッター10、測長機11、リコイラ12ーを直結したコイル分割ライン7及びコイル倉庫を設ける。製鉄所から出荷される大型コイルをコイルセンター6のコイル分割ライン7で鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に出荷する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所から自動車製造工場への鋼板供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車製造工場では、製鉄所からコイルの形状で納入された鋼板をアンコイラーにより巻き解しながらブランク工程で所定サイズに切断してブランクを製造し、次いでこのブランクをプレス工程でプレス成形し、プレス成形品を溶接工程において所望形状に溶接して自動車ボディやその他の部品を製造している。(特許文献1)
【0003】
このような自動車製造工程においては、毎日の生産計画台数を元に、最終工程から逐次前工程にその時に必要な量を要求して行くいわゆる「かんばん方式」が採用されている。従って、自動車製造工程の最初の工程であるブランク工程も、その次工程であるプレス工程からその時に必要な量をその都度要求されている。
【0004】
一方製鉄所では、自動車製造工場の月間生産計画に基づいて不足を生じないように計画的に材料コイルを製造し、その最終工程においてコイル分割を行い、重量を調節した分割コイルとして出荷している。このときのコイル分割数は、分割されたコイルの重量が受け入れ側の許容重量範囲に入るように決定している。そして分割後のコイル重量の総和が月間使用重量と一致するように出荷コイル数を調整している。このため、個々のコイル重量は自動車製造工場における毎日のプレス工程からの要求量と一致しないのが常である。
【0005】
このため、自動車製造工場のブランク工程では、ライン停止を避けるためにプレス工程からの要求量を上回る量のコイルを常に保有せざるを得ず、必要量のブランクを製造したのちは、アンコイラーを逆転させて鋼板の巻き戻しを行い、巻き戻したコイルを次の加工が開始されるまでコイル置き場に保管している。このようにして、ブランク工程ではそれ以降の工程における「かんばん方式」を成立させている。
【0006】
ところが、巻き戻し作業中はブランクラインを停止せざるを得ないので生産能力がダウンすること、巻き戻しを迅速に行う設備がブランクライン毎に必要となり、設備費用がかかること、巻き戻したコイルの保管場所が必要で余分のスペースを占有すること、部品ごとに鋼板の種類は様々であるから、巻き戻したコイルの管理が煩雑となって管理コストがかさむこと、巻き戻しできない短い端材が発生すると廃棄処分せざるを得ないために歩留まりロスが発生し、また端材処理中はラインが停止するので生産能力がダウンすることなどの多くの問題があった。
【特許文献1】特開2003−311349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、自動車製造工場のブランク工程における過剰のコイルの保管や、鋼板の巻き戻し作業、巻き戻したコイルの保管管理等を減少させることができるとともに、端材の廃棄ロスをなくし、しかも「かんばん方式」による生産を円滑に行わせることが可能な自動車製造工場への鋼板供給システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、ブランク工程、プレス工程、溶接工程を備えた自動車製造工場と、この自動車製造工場に鋼板を供給する製鉄所との間に設置されたコイルセンターに、アンコイラー、ピンチロール、カッター、測長機、リコイラーを直結したコイル分割ライン及びコイル倉庫を設け、製鉄所から出荷されるコイルを前記ブランク工程における鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に出荷することを特徴とするものである。
【0009】
なお請求項2のように、コイル倉庫は平置き式の製品ヤードと、リコイルされた小型の残材コイルと製品コイルを保管する立体倉庫とからなるものであることが好ましい。また請求項3のように、コイルセンターは製鉄所から出荷されるコイルを受け取る材料ヤードと、製品ヤードとの間にコイル分割ラインを配置したものであることことが好ましい。
【0010】
また請求項4のように、コイル分割ラインがピンチロールとカッターとの間に溶接機を備えたものであり、残材コイルの端部を他のコイルと接続可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動車製造工場への鋼板供給システムによれば、自動車製造工場と製鉄所との間に設置されたコイルセンターにおいて、製鉄所から出荷されるコイルを自動車製造工場のブランク工程における鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に供給する。このため従来のように、自動車製造工場のブランク工程で過剰のコイルを保有する必要がなくなり、ブランク工程で残材が発生することもなくなるので、巻き戻し作業や巻き戻しコイルの保管が不要となる。従って、各ブランクラインに巻き戻しを迅速に行う設備を設置する必要もなくなる。
【0012】
またコイルセンターでは残材をリコイラーにてリコイルして残材コイルとし、コイル倉庫に保管して次回の出荷時に別のコイルと組み合せて必要重量として使用することができるので、残材を廃棄処分する無駄がなくなる。特に請求項4の発明によれば、残材コイルの端部を他のコイルと接続して単一コイルとして出荷することができる。さらにコイルセンターは大型コイルに対応できるので、製鉄所の最終工程において受け入れ側の許容重量範囲に入るように大型コイルを分割する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1において1は「かんばん方式」による生産を行っている自動車製造工場であり、ブランク工程2、プレス工程3、溶接工程4を備えている。コイルの形状で納入された鋼板はアンコイラーにより巻き解され、ブランク工程2で所定サイズに切断してブランクを製造し、このブランクをプレス工程3でプレス成形し、溶接工程4において所望形状に溶接している。
【0014】
矢印で示すように、毎日の生産計画に基づいて後工程から前工程にかんばんによる加工要求が行われ、前工程は加工した材料をその要求通りに後工程に供給する。従ってブランク工程2にはプレス工程3から必要なブランク数とその必要時間の要求があり、ブランク工程2はそのブランクを生産するために必要な鋼板を製鉄所5から入手しなければならない。
【0015】
前記したように、従来は製鉄所5から鋼板コイルが自動車製造工場1に直送されていたのであるが、本発明では製鉄所5と自動車製造工場1との間にコイルセンター6を設置し、製鉄所5から出荷された大型コイルをこのコイルセンター6において必要な大きさ(重量)に分割したうえ、需要に合わせ必要な量を必要な時間に自動車製造工場1に供給する。
【0016】
コイルセンター6には、コイル分割ライン7が設けられている。図2に示すように、コイル分割ライン7は製鉄所5から出荷された大型コイルに対応できるアンコイラー8の後段に、ピンチロール9、カッター10、測長機11、リコイラー12を直結したラインである。
【0017】
アンコイラー8とピンチロール9はコイルCから鋼板を払い出す装置であり、回転方向を逆転させることによって巻き戻しも可能な機能を持たせてある。カッター10と測長機11はアンコイラー8から払い出された鋼板の長さを測定しながら、所定長さの位置で切断する装置である。またリコイラー12は払い出された鋼板を巻き取る装置である。なおアンコイラー8には大型コイルを搬送してくるための親台車13と、巻き戻されたコイルを取り出すための子台車14とを設けてある。このほか、鋼板の耳切りを行うトリム装置や、鋼板を幅方向に条切りできるコイル分割装置などを設けておくことが好ましい。
【0018】
これらの各装置を直列に配置したコイル分割ライン7により、製鉄所5から出荷された大型コイルを自動車製造工場1のブランク工程2からの要求に合わせた量(長さ・重量)に分割し、小型コイルとすることができる。分割されたコイルは毎日1回、あるいは毎日数回に分けて、必要な量を必要な時間にコイルセンター6から自動車製造工場1に出荷される。自動車製造工場1への鋼板供給を支障なく行うためには、コイルセンター6は自動車製造工場1から近距離に位置することが好ましい。
【0019】
すなわち、本発明はコイルセンター6から自動車製造工場1へコイルを供給するに際し、必要な量は当然ながら必要な時間にコイルを供給するものであり、時間の概念を取り入れた鋼板供給システムである。従って、コイルセンター6から自動車製造工場1へ供給されるコイルの仮置き時間が少なく、きわめて有利なものである。
【0020】
このように大型コイルをコイル分割ライン7により必要長さに分割すると、カッター10で切断された残材が発生するため、これをリコイラー12にてリコイルして残材コイルとする。このためコイルセンター6は、コイル分割ライン7のほかに小型の残材コイルを保管するコイル倉庫を持つ必要がある。図3はコイルセンター6のレイアウトの一例を示す図であり、製鉄所5から出荷された大型コイルを受け入れる材料ヤード15と、製品ヤード16との間にコイル分割ライン7を設置するとともに、製品ヤード16の側方に小型の残材コイルと製品コイル用の立体倉庫17を設けてある。製品ヤード16は中型あるいは大型のコイルやその他の製品を平置きするスペースであり、立体倉庫17は小型コイル専用の保管スペースである。
【0021】
コイル分割ライン7の出側には立体倉庫17のコイル受取口18が設けられており、リコイルされた残材コイルが立体倉庫17に送り込まれる。また各製品ヤード16に一箇所以上のコイル払出口19が設けられており、立体倉庫17に保管されているコイルを払いだせるようになっている。なお20は入荷や出荷のための車両ピット、21はコイルを扱うための材料クレーンである。
【0022】
このようなコイルセンター6は、製鉄所5から出荷されるコイルをブランク工程2における鋼板需要に合わせて分割し、自動車製造工場1に出荷することができるのみならず、材料ヤード15や立体倉庫17などのコイル倉庫で巻き戻され、あるいはリコイルされた残材コイルを保管することができる。この残材コイルは次回の出荷要求があるまで保管され、次回の出荷要求量が残材コイル量を超える場合には、新たなコイルと組み合せて必要重量として出荷される。図4はその様子を示したもので、Aで生じた残材コイルと、Bの別コイルのトップから採取した不足分とを組み合せ、2つのコイルで要求量に対応できるようにしてセットにして自動車製造工場1に出荷する。
【0023】
残材コイルは鋼種、板厚、板幅、長さ(重量)がそれぞれ異なるために自動車製造工場1ではその管理は容易ではなく、少量の場合には端材として廃棄処分されることも多かったが、コイルセンター6では小型の残材コイルもコンピュータ管理された立体倉庫17を用いて容易に管理することが可能となり、廃棄処分を極小とすることができるので無駄がなくなる。
【0024】
なお、自動車製造工場1では上記のように要求量が複数コイルになることを嫌い、単一コイルとしての納品を要求する場合がある。この場合には、図5に示すようにコイル分割ライン7のピンチロール9とカッター10との間に溶接機22を設置し、残材コイルの終端部を他のコイルの始端部と溶接してリコイラー12で巻取り、単一のコイルとして出荷する。この場合には溶接部にマーキングを施し、自動車製造工場1のブランク工程2においてその部分をリジェクトして不良品の発生を防止することが好ましい。
【0025】
以上に説明した本発明の利点を要約すると次の通りである。
1.自動車製造工場1のブランク工程2で必要な量の鋼板を、コイルセンター6から必要な時間に供給することができ、自動車製造工場1で余分なコイルの在庫を持つ必要がなくなる。
2.自動車製造工場1では残材が発生しないので、ブランク工程2における巻き戻しが不要となり、ライン能力を向上させることができる。
3.従って自動車製造工場1の各ブランク工程2に巻き戻し装置を設ける必要がなくなる。
4.自動車製造工場1では巻き戻されたコイルの保管場所や、保管管理が不要となる。
5.自動車製造工場1における端材の廃棄処分量が激減し、歩留まりロスや機損が無くなる。
6.製鉄所では大型コイルのままで出荷することができ、最終工程におけるコイルの分割処理を要しない。
7.コイルセンターでは残材コイルを管理して次回の出荷時に新しいコイルと組み合せることが可能となり、資源の無駄を解消することができる。
8.このようにして自動車製造工場1における「かんばん方式」を、製鉄所からの鋼材調達工程まで拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】コイル分割ラインの説明図である。
【図3】加工センターのレイアウト図である。
【図4】残材コイルを新たなコイルと組み合せて必要重量として出荷する場合の説明図である。
【図5】コイル分割ラインの変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 自動車製造工場
2 ブランク工程
3 プレス工程
4 溶接工程
5 製鉄所
6 コイルセンター
7 コイル分割ライン
8 アンコイラー
9 ピンチロール
10 カッター
11 測長機
12 リコイラー
13 親台車
14 子台車
15 材料ヤード
16 製品ヤード
17 立体倉庫
18 コイル受取口
19 コイル払出口
20 車両ピット
21 材料クレーン
22 溶接機
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄所から自動車製造工場への鋼板供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車製造工場では、製鉄所からコイルの形状で納入された鋼板をアンコイラーにより巻き解しながらブランク工程で所定サイズに切断してブランクを製造し、次いでこのブランクをプレス工程でプレス成形し、プレス成形品を溶接工程において所望形状に溶接して自動車ボディやその他の部品を製造している。(特許文献1)
【0003】
このような自動車製造工程においては、毎日の生産計画台数を元に、最終工程から逐次前工程にその時に必要な量を要求して行くいわゆる「かんばん方式」が採用されている。従って、自動車製造工程の最初の工程であるブランク工程も、その次工程であるプレス工程からその時に必要な量をその都度要求されている。
【0004】
一方製鉄所では、自動車製造工場の月間生産計画に基づいて不足を生じないように計画的に材料コイルを製造し、その最終工程においてコイル分割を行い、重量を調節した分割コイルとして出荷している。このときのコイル分割数は、分割されたコイルの重量が受け入れ側の許容重量範囲に入るように決定している。そして分割後のコイル重量の総和が月間使用重量と一致するように出荷コイル数を調整している。このため、個々のコイル重量は自動車製造工場における毎日のプレス工程からの要求量と一致しないのが常である。
【0005】
このため、自動車製造工場のブランク工程では、ライン停止を避けるためにプレス工程からの要求量を上回る量のコイルを常に保有せざるを得ず、必要量のブランクを製造したのちは、アンコイラーを逆転させて鋼板の巻き戻しを行い、巻き戻したコイルを次の加工が開始されるまでコイル置き場に保管している。このようにして、ブランク工程ではそれ以降の工程における「かんばん方式」を成立させている。
【0006】
ところが、巻き戻し作業中はブランクラインを停止せざるを得ないので生産能力がダウンすること、巻き戻しを迅速に行う設備がブランクライン毎に必要となり、設備費用がかかること、巻き戻したコイルの保管場所が必要で余分のスペースを占有すること、部品ごとに鋼板の種類は様々であるから、巻き戻したコイルの管理が煩雑となって管理コストがかさむこと、巻き戻しできない短い端材が発生すると廃棄処分せざるを得ないために歩留まりロスが発生し、また端材処理中はラインが停止するので生産能力がダウンすることなどの多くの問題があった。
【特許文献1】特開2003−311349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した従来の問題点を解決し、自動車製造工場のブランク工程における過剰のコイルの保管や、鋼板の巻き戻し作業、巻き戻したコイルの保管管理等を減少させることができるとともに、端材の廃棄ロスをなくし、しかも「かんばん方式」による生産を円滑に行わせることが可能な自動車製造工場への鋼板供給システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、ブランク工程、プレス工程、溶接工程を備えた自動車製造工場と、この自動車製造工場に鋼板を供給する製鉄所との間に設置されたコイルセンターに、アンコイラー、ピンチロール、カッター、測長機、リコイラーを直結したコイル分割ライン及びコイル倉庫を設け、製鉄所から出荷されるコイルを前記ブランク工程における鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に出荷することを特徴とするものである。
【0009】
なお請求項2のように、コイル倉庫は平置き式の製品ヤードと、リコイルされた小型の残材コイルと製品コイルを保管する立体倉庫とからなるものであることが好ましい。また請求項3のように、コイルセンターは製鉄所から出荷されるコイルを受け取る材料ヤードと、製品ヤードとの間にコイル分割ラインを配置したものであることことが好ましい。
【0010】
また請求項4のように、コイル分割ラインがピンチロールとカッターとの間に溶接機を備えたものであり、残材コイルの端部を他のコイルと接続可能とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動車製造工場への鋼板供給システムによれば、自動車製造工場と製鉄所との間に設置されたコイルセンターにおいて、製鉄所から出荷されるコイルを自動車製造工場のブランク工程における鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に供給する。このため従来のように、自動車製造工場のブランク工程で過剰のコイルを保有する必要がなくなり、ブランク工程で残材が発生することもなくなるので、巻き戻し作業や巻き戻しコイルの保管が不要となる。従って、各ブランクラインに巻き戻しを迅速に行う設備を設置する必要もなくなる。
【0012】
またコイルセンターでは残材をリコイラーにてリコイルして残材コイルとし、コイル倉庫に保管して次回の出荷時に別のコイルと組み合せて必要重量として使用することができるので、残材を廃棄処分する無駄がなくなる。特に請求項4の発明によれば、残材コイルの端部を他のコイルと接続して単一コイルとして出荷することができる。さらにコイルセンターは大型コイルに対応できるので、製鉄所の最終工程において受け入れ側の許容重量範囲に入るように大型コイルを分割する必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1において1は「かんばん方式」による生産を行っている自動車製造工場であり、ブランク工程2、プレス工程3、溶接工程4を備えている。コイルの形状で納入された鋼板はアンコイラーにより巻き解され、ブランク工程2で所定サイズに切断してブランクを製造し、このブランクをプレス工程3でプレス成形し、溶接工程4において所望形状に溶接している。
【0014】
矢印で示すように、毎日の生産計画に基づいて後工程から前工程にかんばんによる加工要求が行われ、前工程は加工した材料をその要求通りに後工程に供給する。従ってブランク工程2にはプレス工程3から必要なブランク数とその必要時間の要求があり、ブランク工程2はそのブランクを生産するために必要な鋼板を製鉄所5から入手しなければならない。
【0015】
前記したように、従来は製鉄所5から鋼板コイルが自動車製造工場1に直送されていたのであるが、本発明では製鉄所5と自動車製造工場1との間にコイルセンター6を設置し、製鉄所5から出荷された大型コイルをこのコイルセンター6において必要な大きさ(重量)に分割したうえ、需要に合わせ必要な量を必要な時間に自動車製造工場1に供給する。
【0016】
コイルセンター6には、コイル分割ライン7が設けられている。図2に示すように、コイル分割ライン7は製鉄所5から出荷された大型コイルに対応できるアンコイラー8の後段に、ピンチロール9、カッター10、測長機11、リコイラー12を直結したラインである。
【0017】
アンコイラー8とピンチロール9はコイルCから鋼板を払い出す装置であり、回転方向を逆転させることによって巻き戻しも可能な機能を持たせてある。カッター10と測長機11はアンコイラー8から払い出された鋼板の長さを測定しながら、所定長さの位置で切断する装置である。またリコイラー12は払い出された鋼板を巻き取る装置である。なおアンコイラー8には大型コイルを搬送してくるための親台車13と、巻き戻されたコイルを取り出すための子台車14とを設けてある。このほか、鋼板の耳切りを行うトリム装置や、鋼板を幅方向に条切りできるコイル分割装置などを設けておくことが好ましい。
【0018】
これらの各装置を直列に配置したコイル分割ライン7により、製鉄所5から出荷された大型コイルを自動車製造工場1のブランク工程2からの要求に合わせた量(長さ・重量)に分割し、小型コイルとすることができる。分割されたコイルは毎日1回、あるいは毎日数回に分けて、必要な量を必要な時間にコイルセンター6から自動車製造工場1に出荷される。自動車製造工場1への鋼板供給を支障なく行うためには、コイルセンター6は自動車製造工場1から近距離に位置することが好ましい。
【0019】
すなわち、本発明はコイルセンター6から自動車製造工場1へコイルを供給するに際し、必要な量は当然ながら必要な時間にコイルを供給するものであり、時間の概念を取り入れた鋼板供給システムである。従って、コイルセンター6から自動車製造工場1へ供給されるコイルの仮置き時間が少なく、きわめて有利なものである。
【0020】
このように大型コイルをコイル分割ライン7により必要長さに分割すると、カッター10で切断された残材が発生するため、これをリコイラー12にてリコイルして残材コイルとする。このためコイルセンター6は、コイル分割ライン7のほかに小型の残材コイルを保管するコイル倉庫を持つ必要がある。図3はコイルセンター6のレイアウトの一例を示す図であり、製鉄所5から出荷された大型コイルを受け入れる材料ヤード15と、製品ヤード16との間にコイル分割ライン7を設置するとともに、製品ヤード16の側方に小型の残材コイルと製品コイル用の立体倉庫17を設けてある。製品ヤード16は中型あるいは大型のコイルやその他の製品を平置きするスペースであり、立体倉庫17は小型コイル専用の保管スペースである。
【0021】
コイル分割ライン7の出側には立体倉庫17のコイル受取口18が設けられており、リコイルされた残材コイルが立体倉庫17に送り込まれる。また各製品ヤード16に一箇所以上のコイル払出口19が設けられており、立体倉庫17に保管されているコイルを払いだせるようになっている。なお20は入荷や出荷のための車両ピット、21はコイルを扱うための材料クレーンである。
【0022】
このようなコイルセンター6は、製鉄所5から出荷されるコイルをブランク工程2における鋼板需要に合わせて分割し、自動車製造工場1に出荷することができるのみならず、材料ヤード15や立体倉庫17などのコイル倉庫で巻き戻され、あるいはリコイルされた残材コイルを保管することができる。この残材コイルは次回の出荷要求があるまで保管され、次回の出荷要求量が残材コイル量を超える場合には、新たなコイルと組み合せて必要重量として出荷される。図4はその様子を示したもので、Aで生じた残材コイルと、Bの別コイルのトップから採取した不足分とを組み合せ、2つのコイルで要求量に対応できるようにしてセットにして自動車製造工場1に出荷する。
【0023】
残材コイルは鋼種、板厚、板幅、長さ(重量)がそれぞれ異なるために自動車製造工場1ではその管理は容易ではなく、少量の場合には端材として廃棄処分されることも多かったが、コイルセンター6では小型の残材コイルもコンピュータ管理された立体倉庫17を用いて容易に管理することが可能となり、廃棄処分を極小とすることができるので無駄がなくなる。
【0024】
なお、自動車製造工場1では上記のように要求量が複数コイルになることを嫌い、単一コイルとしての納品を要求する場合がある。この場合には、図5に示すようにコイル分割ライン7のピンチロール9とカッター10との間に溶接機22を設置し、残材コイルの終端部を他のコイルの始端部と溶接してリコイラー12で巻取り、単一のコイルとして出荷する。この場合には溶接部にマーキングを施し、自動車製造工場1のブランク工程2においてその部分をリジェクトして不良品の発生を防止することが好ましい。
【0025】
以上に説明した本発明の利点を要約すると次の通りである。
1.自動車製造工場1のブランク工程2で必要な量の鋼板を、コイルセンター6から必要な時間に供給することができ、自動車製造工場1で余分なコイルの在庫を持つ必要がなくなる。
2.自動車製造工場1では残材が発生しないので、ブランク工程2における巻き戻しが不要となり、ライン能力を向上させることができる。
3.従って自動車製造工場1の各ブランク工程2に巻き戻し装置を設ける必要がなくなる。
4.自動車製造工場1では巻き戻されたコイルの保管場所や、保管管理が不要となる。
5.自動車製造工場1における端材の廃棄処分量が激減し、歩留まりロスや機損が無くなる。
6.製鉄所では大型コイルのままで出荷することができ、最終工程におけるコイルの分割処理を要しない。
7.コイルセンターでは残材コイルを管理して次回の出荷時に新しいコイルと組み合せることが可能となり、資源の無駄を解消することができる。
8.このようにして自動車製造工場1における「かんばん方式」を、製鉄所からの鋼材調達工程まで拡張することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】コイル分割ラインの説明図である。
【図3】加工センターのレイアウト図である。
【図4】残材コイルを新たなコイルと組み合せて必要重量として出荷する場合の説明図である。
【図5】コイル分割ラインの変形例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 自動車製造工場
2 ブランク工程
3 プレス工程
4 溶接工程
5 製鉄所
6 コイルセンター
7 コイル分割ライン
8 アンコイラー
9 ピンチロール
10 カッター
11 測長機
12 リコイラー
13 親台車
14 子台車
15 材料ヤード
16 製品ヤード
17 立体倉庫
18 コイル受取口
19 コイル払出口
20 車両ピット
21 材料クレーン
22 溶接機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク工程、プレス工程、溶接工程を備えた自動車製造工場と、この自動車製造工場に鋼板を供給する製鉄所との間に設置されたコイルセンターに、アンコイラー、ピンチロール、カッター、測長機、リコイラーを直結したコイル分割ライン及びコイル倉庫を設け、製鉄所から出荷されるコイルを前記ブランク工程における鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に出荷することを特徴とする自動車製造工場への鋼板供給システム。
【請求項2】
コイル倉庫は平置き式の製品ヤードと、リコイルされた小型の残材コイルと製品コイルを保管する立体倉庫とからなるものであることを特徴とする請求項1記載の自動車製造工場への鋼板供給システム。
【請求項3】
コイルセンターは製鉄所から出荷されるコイルを受け取る材料ヤードと、製品ヤードとの間にコイル分割ラインを配置したものであることを特徴とする請求項2記載の自動車製造工場への鋼板供給システム。
【請求項4】
コイル分割ラインがピンチロールとカッターとの間に溶接機を備えたものであり、残材コイルの端部を他のコイルと接続可能としたことを特徴とする請求項1記載の自動車製造工場への鋼板供給システム。
【請求項1】
ブランク工程、プレス工程、溶接工程を備えた自動車製造工場と、この自動車製造工場に鋼板を供給する製鉄所との間に設置されたコイルセンターに、アンコイラー、ピンチロール、カッター、測長機、リコイラーを直結したコイル分割ライン及びコイル倉庫を設け、製鉄所から出荷されるコイルを前記ブランク工程における鋼板需要に合わせて分割し、必要な量を必要な時間に自動車製造工場に出荷することを特徴とする自動車製造工場への鋼板供給システム。
【請求項2】
コイル倉庫は平置き式の製品ヤードと、リコイルされた小型の残材コイルと製品コイルを保管する立体倉庫とからなるものであることを特徴とする請求項1記載の自動車製造工場への鋼板供給システム。
【請求項3】
コイルセンターは製鉄所から出荷されるコイルを受け取る材料ヤードと、製品ヤードとの間にコイル分割ラインを配置したものであることを特徴とする請求項2記載の自動車製造工場への鋼板供給システム。
【請求項4】
コイル分割ラインがピンチロールとカッターとの間に溶接機を備えたものであり、残材コイルの端部を他のコイルと接続可能としたことを特徴とする請求項1記載の自動車製造工場への鋼板供給システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2009−51586(P2009−51586A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−217962(P2007−217962)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(503473976)浜松鋼板加工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【出願人】(503473976)浜松鋼板加工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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