説明

自動釣りシステム、自動釣りプログラム、およびその記録媒体

【課題】 魚釣りに必要な各処理を全て自動化することにより、従来よりも魚釣り作業を効率良く行え、また魚釣りの初心者でも容易に釣果を上げることができる自動釣りシステムを提供する。
【解決手段】 電動リール1と、釣竿の先端部に取り付けられて釣竿の撓り量を検出する撓り検出センサ5、各種の釣り条件を設定する設定器18、電動リール1の駆動量を検出するリール回転検出器4、撓り検出センサ5の検出出力、リール回転検出器4の検出出力、設定器18により設定された各種の釣り条件に基づいて、針移動処理、アタリ監視処理、アワセ処理、およびカカリ判定処理の一連のシーケンスを実行させるコントローラ22と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚を自動的に釣ることができる自動釣りシステム、自動釣りプログラム、およびその記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣りの初心者でも容易に釣果を上げることができるようにするために、従来技術では、釣竿の先端に加速度センサを設けて釣り糸の振動を検出し、この加速度センサの検出出力が予め設定した閾値以上になったときにはアタリ(魚信)があったと判断してその旨を外部に報知するようにした装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の従来技術では、釣竿の先端に反射ミラーを取り付ける一方、電動リール側に光センサを設け、釣竿が上下動して反射ミラーからの反射光を光センサが検出したときにアタリがあったものと判断して電動リールを起動して釣り糸を巻き上げるようにした装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平10−4835号公報
【特許文献2】特開2006−262737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1,2のいずれの従来技術も、魚釣りを全自動化したものではなく、効率良く釣果を上げることが難しい。
【0005】
すなわち、特許文献1,2記載の装置は、いずれもアタリの有無を検出することができるものの、アタリ検出後に少し釣り針を上げてアワセをすることまでは行わない。このため、実際に魚が餌に食いつかせるようにするのに効率が悪く、また、実際に魚が餌を食い込んで釣り針に掛かったか否かまでは判定することができない。
【0006】
このため、前者の特許文献1記載の装置では、アタリが検出されときには釣り人はアワセをする必要があるので、釣り始めたときには一時も目を離すことができない。また、後者の特許文献2記載の装置では、アタリがあったときには一律に釣り糸を巻き上げるようにしているので、単にアタリがあっただけで実際には魚が釣り針にかかっていないにもかかわらず釣り糸を巻き上げてしまうといった不都合を生じる。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、魚釣りを行う際に実際に必要となる釣り針の移動、アタリ監視、アワセ、カカリ判定の各処理を全て自動化することにより、魚釣りの初心者でも容易かつ確実に釣果を上げることができ、また、従来よりも魚釣り作業を効率良く行えてその労力を削減することが可能な自動釣りシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1記載に係る自動釣りシステムは、釣り糸の送り出しおよび巻き上げ駆動を行う電動リールと、釣竿の先端部に取り付けられて釣竿の撓り(しなり)量を検出する撓り検出センサと、各種の釣り条件を設定する設定器と、前記電動リールの駆動量を検出するリール回転検出器と、前記撓り検出センサの検出出力、前記リール回転検出器の検出出力、および前記設定器により設定された各種の釣り条件に基づいて、前記電動リールの駆動量を制御して釣り針を所定深さまで移動させる針移動処理、魚信の有無を監視するアタリ監視処理、釣り糸を一定量だけ巻き上げるアワセ処理、および魚が釣り針に掛かったか否かを判定するカカリ判定処理の一連のシーケンスを実行させるコントローラと、を備えることを特徴としている。
【0009】
また、請求項2記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項1記載の発明の構成において、前記撓り検出センサは、歪ゲージが可撓性を有する取付基板に一体的に固定されるとともに、前記取付基板が釣竿に対して当該釣竿の撓りに応じて相対的に変位可能に取り付けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項1記載の発明の構成において、前記撓り検出センサは、歪ゲージが可撓性を有する取付基板に一体的に固定される一方、釣竿の長手方向に沿って前後一対の支柱が立設され、これらの支柱に前記取付基板が固定されていることを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項1記載の発明の構成において、前記コントローラは、前記針移動処理として、前記撓り検出センサにより検出される釣竿の撓りが、釣竿に重りを付けていない無負荷状態において予め登録された初期値に到達した時点で電動リールの駆動を停止させる底移動処理を実行することを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項1記載の発明の構成において、前記コントローラは、前記針移動処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定期間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出されない状態になるまでは前記電動リールの再起動を停止する竿先安定待ち処理を実行するものであることを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項5記載の発明の構成において、前記コントローラは、前記アタリ監視処理として、前記竿先安定待ち処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定時間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出された場合にはアタリがあるものと判定することを特徴としている。
【0014】
請求項7記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項6記載の発明の構成において、魚が釣れたことを外部に報知する報知器を備え、前記コントローラは、前記カカリ判定処理として、前記アワセ処理および前記竿先安定待ち処理が順次実行された後に、再度前記アタリ監視処理を実行し、このアタリ監視処理においてアタリが発生している場合に魚が釣り針に掛かったと判定して前記報知器を起動して外部にその旨を報知するものであることを特徴としている。
【0015】
請求項8記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項1または請求項7記載の発明の構成において、前記コントローラは、前記カカリ判定処理によりカカリが判定されない場合には、前記リール回転検出器で検出される現在の釣り針の深度から一定距離だけ移動させた深度を新たな目標深度として設定して前記目標深度移動処理に移行する自動タナ取り処理を実行することを特徴としている。
【0016】
請求項9記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項1または請求項7記載の発明の構成において、釣り開始に応じて餌替え時期が設定される自動餌替タイマを備え、前記コントローラは、この自動餌替タイマがタイムアップした場合、または前記カカリ判定処理によりカカリが判定された場合には、前記電動リールを起動して釣り糸を強制的に巻き上げる自動巻上処理を実行するものであることを特徴としている。
【0017】
請求項10記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項9記載の発明の構成において、前記コントローラは、前記自動巻上処理において、前記撓り検出センサの検出出力に基づく竿先の撓り量の大きさに応じて前記電動リールの巻き上げ速度を可変するものであることを特徴としている。
【0018】
請求項11記載の発明に係る自動釣りシステムは、請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の発明の構成において、前記釣竿の振動量を検出する振動計を備え、前記コントローラは、この振動計で検出される振動量が予め設定された基準値を越える場合には、外乱の影響が大きいものと判断して前記一連のシーケンスの途中で割り込みをかけて誤判定防止用の振動検知フラグをオンにする割込処理を実行することを特徴としている。
【0019】
請求項12記載の発明に係る自動釣りプログラムは、釣竿の先端部に取り付けられて釣竿の撓り量を検出する撓り検出センサの検出出力、電動リールの駆動量を検出するリール回転検出器の検出出力、および設定器により設定された各種の釣り条件に基づいて、前記電動リールの駆動量を制御して釣り針を所定深さまで移動させる針移動処理を実行するステップと、前記針移動処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定期間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出されない状態になるまでは前記電動リールの再起動を停止する竿先安定待ち処理を実行するステップと、竿先安定待ち処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定時間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出された場合にはアタリがあるものと判定するアタリ監視処理を実行するステップと、前記アタリ監視処理でアタリがあったと判断された場合に釣り糸を一定量だけ巻き上げるアワセ処理を実行するステップと、前記アワセ処理および前記竿先安定待ち処理が順次実行された後に、再度前記アタリ監視処理を実行し、このアタリ監視処理においてアタリが発生している場合に魚が釣り針に掛かったと判定するカカリ判定処理を実行するステップと、前記カカリ判定処理によりカカリが判定された場合には、前記電動リールを起動して釣り糸を強制的に巻き上げる自動巻上処理を実行するステップと、を順次実行させるものである。
【0020】
請求項13記載の発明に係る自動釣りプログラムは、請求項12記載の自動釣りプログラムにおいて、さらに前記カカリ判定処理によりカカリが判定されない場合には、前記リール回転検出器で検出される現在の釣り針の深度から一定距離だけ移動させた深度を新たな目標深度として設定して前記目標深度移動処理に移行する自動タナ取り処理を実行するステップを含むことを特徴としている。
【0021】
請求項14記載の発明に係るコンピュータ読み取り可能な記録媒体は、請求項12または請求項13に記載のプログラムが記録されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1記載の本発明によれば、魚釣りを行う際に実際に必要となる釣り針の移動、アタリ監視、アワセ、カカリ判定の各処理を全て自動化して行うことができるので、魚釣りの初心者でも容易かつ確実に釣果を上げることができ、また、従来よりも魚釣り作業を効率良く行えてその労力を削減することが可能となる。
【0023】
特に、請求項2記載の発明のように釣竿へ撓り検出センサを取り付けた構成とした場合には、釣竿の撓りに応じて取付基板も円滑に撓るので歪ゲージによって釣竿の撓り量を確実に検出できるとともに、釣竿の撓りによる歪みが過剰に取付基板に加わって撓り検出センサが破損するなどの不具合発生を防止することができる。
【0024】
また、請求項3記載の発明のように釣竿へ撓り検出センサを取り付けた構成とした場合には、釣竿が比較的剛性のもので撓りが少ない場合でも、取付基板を支持する支柱の長さと支柱間の距離とによって撓りが増幅されることになり、釣竿の撓り量を確実に検出ことができる。
【0025】
請求項4記載の発明の底移動処理を実行させれば、水底に釣り針が到達したことを確実に検出して容易に底釣りを行うことができる。
【0026】
請求項5記載の発明の竿先安定待ち処理を実行させれば、針移動処理やアワセ処理の実行後に竿先が確実に安定した状態になった否かを見極めることができるので、アタリ監視処理やカカリ判定処理などに移行する際の船の揺れ等の外乱要因の影響を予め排除することができ、アタリ監視処理やカカリ判定処理の結果をより一層確実なものとすることができる。
【0027】
請求項6記載の発明のアタリ監視処理を実行させれば、船の揺れ等の外乱要因を予め排除してアタリの有無を確実に検出することができる。
【0028】
請求項7記載の発明のカカリ判定処理を実行させれば、魚が釣り針に掛かったことを確実に判定することができるため、実際には魚が掛かっていないのに釣り糸を巻き上げてしまうといった不具合を防止することができる。
【0029】
請求項8記載の発明の自動タナ取り処理を実行させれば、自動的に魚の泳層に合致するように仕掛けを合わせることができるため、どのような泳層に魚がいる場合でも確実に釣果を得ることができる。
【0030】
請求項9記載の発明の自動巻上処理を実行させれば、餌替え時期に到達した時点、あるいはカカリが判定された場合には自動的に釣り糸が巻き上げられるので、手動で巻き上げ作業をする手間を省くことができる。
【0031】
請求項10記載の発明のように、自動巻上処理の実行時において、撓り検出センサの検出出力に基づく竿先の撓り量の大きさに応じて電動リールの巻き上げ速度を可変しているので、釣り糸を不意に切ってしまうといった不具合発生を極力防止することができる。
【0032】
請求項11記載の発明の割込処理を実行させれば、波風のような大きな外乱が釣竿に加わった場合には、振動検知フラグがオンされるため、誤ってアタリが有ったと判定されたり、誤ってカカリがあったと判定されるなどの誤判定の発生を一層確実に防止することができる。
【0033】
請求項12記載の発明の自動釣りプログラムを備えれば、このプログラムをコンピュータにインストールすることにより容易に自動釣り作業を実施することが可能となる。特に、請求項13記載の発明のように、請求項12記載のプログラムに加えてさらに自動棚取り処理を実行するステップを含ませれば利便性が更に高くなる。
【0034】
請求項14記載の発明のように、請求項12または請求項13に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することで、このプログラムを市場に容易に拡販することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
図1は本発明の実施の形態における自動釣りシステムの制御系のブロック図である。
【0037】
この自動釣りシステムにおいて、電動リール1は、釣り糸の送り出しおよび巻き上げ駆動を行うもので、リール駆動用のモータ22と、このモータ2をコントローラの制御によって駆動するモータドライバ3とを備えている。なお、この実施の形態では、釣竿は浮きがついていないものを前提としており、また電動リール1の駆動速度は、低速(速度1)〜高速(速度10)までの10段階にわたって切り替えられるようになっている。
【0038】
リール回転検出器4は、電動リール1の駆動量を検出するもので、例えば、ロータリエンコーダ等で構成される。
【0039】
撓り検出センサ5は、釣竿の撓り量を検出するもので、釣竿の先端部に取り付けられている。そして、撓り検出センサ5の検出出力は、ブリッジ回路7および演算増幅器8を介して後述のコントローラ22に取り込まれるようになっている。
【0040】
振動計9は、波風等の外乱に起因して釣竿に生じる大きな振動量を検出するもので、例えば加速度センサや傾斜センサ等を適用することができる。この振動計9は、例えば釣竿の基端部側の電動リール1の近傍に取り付けられている。
【0041】
報知器11は、魚が釣れたことを外部に報知するもので、本例ではメロディ音を発生するサウンド回路12とスピーカ13とからなる。
【0042】
押しボタンスイッチは、自動釣り処理開始用のボタン14、釣り糸の送り出し用のボタン15、および釣り糸の巻き上げ用のボタン16を含む。
【0043】
設定器18は、各種の釣り条件を設定するもので、底釣りを設定する底モード、水底と水面との間の中間泳層での仕掛けを設定する中層モード、魚の泳層に合致するように仕掛けを合わせるタナ取りモード、振動計9の検出出力を有効にする振動検知モード、一定時間経過後に餌替えをするための自動餌替モード、釣り糸を自動巻き上げする自動巻上モードといった各種モードの設定や、筏釣りや海釣り等の釣り場所や釣りの対象となる魚種などのデータが予め設定できるようになっている。なお、ここでは、上記の底モードと中層モードのいずれを設定した場合にも、これらのモードに対してさらにタナ取りモードを設定することが可能である。
【0044】
表示器19は、魚信が得られた場合のアタリや、魚が釣り針に掛かったカカリがあった場合に点灯するLEDや、設定器18で設定されてた内容などを画像表示する液晶パネル等を備えている。
【0045】
メモリ21は、コントローラ22の制御用のプログラムが予めインストールされるEEPROMや、設定器18で設定されたデータや撓り検出センサ5やリール回転検出器4からの検出出力を一時的に記憶するRAM等を備えている。
【0046】
コントローラ22は、例えばマイクロコンピュータで構成され、メモリ21に予めインストールされた所定のプログラムに従い、撓り検出センサ5の検出出力、リール回転検出器4の検出出力、および設定器18により設定された各種の釣り条件に基づいて、電動リール1の駆動量を制御して釣り針を所定深さまで移動させる針移動処理、魚信の有無を監視するアタリ監視処理、釣り糸を一定量だけ巻き上げるアワセ処理、および魚が釣り針に掛かったか否かを判定するカカリ判定処理の一連のシーケンスを実行するものである。そして、このコントローラ22には、時限処理を行うための内部タイマ23を備えている。
【0047】
通信器24は、この自動釣りシステムで得られる釣り情報をアンテナ25から、例えば、ブルートゥースなどのアドホックネットワークを経由して携帯電話やパーソナルコンピュータ等の端末に送信するものである。また、設定器18の代わりに外部端末を使用して設定値を受信するものである。
【0048】
前述の撓り検出センサ5は、釣竿の剛性の大小に応じて、例えば図2に示すような構成を採用することができる。
【0049】
図2(a)に示すように、釣竿Rの剛性が比較的低くて撓り易い場合、撓り検出センサ5としては、例えば、歪ゲージ51を合成樹脂などの可撓性を有する取付基板52に一体的に固定し、この取付基板52の長手方向の一端側を釣竿Rに固定された一方の筒状のスリーブ53に嵌着し、取付基板52の他端側を釣竿Rに固定された他方の筒状のスリーブ54内に遊嵌された状態で挿通する。これにより、この撓り検出センサ5は、釣竿Rの撓りに応じて釣竿Rの長手方向に沿って相対的に変位可能となる。
【0050】
図2(a)に示した構成とすれば、釣竿Rの撓りに応じて取付基板52も円滑に撓むので歪ゲージ51で釣竿Rの撓り量を確実に検出できる。しかも、取付基板52が剛体であると、釣竿Rの撓りによる歪みが取付基板52に過剰に加わって撓り検出センサ5が破損するなどの不具合が発生する恐れがあるが、ここでは釣竿Rの撓りに応じて取付基板52も円滑に撓むのでそのような恐れはない。なお、図2(a)に示す構成に代えて、取付基板52と釣竿Rとの間にゴムや接着剤等の弾性体を介在させて取付基板52を釣竿Rに固定した構成を採用することもできる。
【0051】
一方、図2(b)に示すように、釣竿Rの剛性が比較的高くて撓り難い場合、撓り検出センサ5としては、例えば、歪ゲージ51が可撓性を有するアーチ形の取付基板55に一体的に固定する一方、釣竿Rの長手方向に沿って前後一対の支柱56,57を立設し、これらの支柱56,57に取付基板55を固定する。
【0052】
図2(b)に示した構成とすれば、釣竿Rが比較的剛性が高くて撓りが少ない場合でも、取付基板55を支持する支柱56,57の長さと支柱56,57間の距離とによって撓りが増幅されることになり、釣竿Rの撓り量を確実に検出することができる。
【0053】
なお、竿先の撓り量は上記の歪ゲージ55に限らず、応力計を用いることもできる。
【0054】
次に、上記構成を備えた自動釣りシステムのコントローラ22による自動釣り制御動作について、図3ないし図17に示すフローチャートおよび説明図を参照して説明する。なお、以下において各フローチャートの説明における符号Sは各処理ステップを意味する。
【0055】
ここでは、まず、自動釣り動作を行う場合の全体の概要について、図3に示すフローチャートに従って説明し、続いて、図3に示したフローチャートの一部の処理ステップの内容についてさらに詳細に説明する。
【0056】
自動釣り動作を開始するに当たって、まず初期設定行う(S300)。この初期設定では、設定器18によって底釣りを設定する底モード、水底と水面との間の中間泳層で仕掛けを設定する中層モード、魚の泳層に合致するように仕掛けを合わせるタナ取りモード、振動計9の検出出力を有効にする振動検知モード、一定時間経過後に餌替えをするための自動餌替モード、釣り糸を自動巻き上げする自動巻上モードといった各種モードを必要に応じて予め設定し、さらに筏釣りや海釣り等の釣り場所や釣りの対象となる魚種などのデータを予め設定入力する。また、中層モードを設定する場合には、この中層モードにおける目標深度を予め設入力定する。なお、ここでは振動検知モードが予め設定されているものとする。
【0057】
また、コントローラ22は、釣竿に餌や重りの付いていない無負荷状態において撓り検出センサ5で得られる撓り量を初期値としてメモリ21に記憶し、また、深度変数の初期値を零に設定する。ここに、深度変数とは、リール回転検出器4で検出される電動リール1の駆動量に基づいて釣り針の深度位置を割り出したときの値である。
【0058】
次に、自動釣り処理開始用のボタン14がオンされると、これに応じてコントローラ22は、内部タイマ23に含まれる自動餌替タイマT11(例えば15分)をセットし(S301)、後述のS311に対処するためにアタリを示すLEDを消灯した後(S302)、設定器18で予め設定されているモードが底釣りを設定する底モードか否かを判定する(S303)。
【0059】
底モードの場合には釣り針をオモリとともに水底に到達させる底移動処理を実行する(S304)。一 方、底モードでない場合には、中層モードであるから、中間泳層となる目標深度まで釣り針を移動する目標深度移動処理を実行する(S305)。
【0060】
次いで、上記のS304またはS305における移動による振動が収まるまで待機するために竿先安定待ち処理を実行する(S306)。続いて、振動計9の検出出力が基準値以上になったか否かを判断するための振動検知フラグをオフにした後(S307)、タアリ(魚信)があるかどうかを一定時間にわたって監視するアタリ監視処理を行う(S308)。
【0061】
そして、このS308におけるアタリ監視処理においてアタリが検出されたか否か(アタリ検出フラグがオンであるか否か)を判定し(S309)、アタリが検出されているときには、次いで振動検知フラグがオンになっているか否かを判定する(S310)。振動検知フラグがオンしているときにはアタリ監視処理の期間中に波風等の外乱の影響によりアタリ誤検知の可能性が大きいので、処理をキャンセルしてS302に戻る。
【0062】
また、S310で振動検知フラグがオフであれば、アタリ監視処理実行中の外乱の影響が小さいと判断できるので、表示器19のアタリLEDを点灯し(S311)、続いてアタリが得られたときの現在の深度変数を目標深度として設定する(S312)。なお、このS312の処理はタナ取りモードが設定されている場合に役立つ。次に、釣り糸を一定量だけ巻き上げて魚の口に釣り針を仕掛けるアワセ処理に移行する(S313)。
【0063】
一方、S309でアタリが検出できなかったと判定された場合には、魚の泳層に仕掛けを合わせるタナ取りモードが予め設定されているか否かを判定する(S314)。そして、タナ取りモードが設定されていない場合にはS307に戻る。このようにS307、S308、S309、S314を繰り返すことでその期間は結果的にアタリを待つことになる。また、S314でタナ取りモードが設定されている場合には、上記のアワセ処理に移行する(S313)。
【0064】
このアワセ処理を実行した後は、魚が釣り針に掛かったか否かを判定するカカリ判定処理に移行する。
【0065】
このカカリ判定処理では、まず、前述のS306と同様、アワセによる振動が収まって安定した状態になるまで待機する竿先安定待ち処理を実行し(S315)、続いて、振動検知フラグをオフに設定した後(S316)、前述のS308と同様、アタリ監視処理を実行する(S317)。次いで、振動検知フラグがオンになっているか否かを判定する(S318)。振動検知フラグがオンしているときにはアタリ監視処理の期間中に波風等の外乱の影響によりアタリ誤検知の可能性が大きいので、処理をキャンセルしてS302に戻る。
【0066】
一方、S318で振動検知フラグがオフであれば、アタリ監視処理の実行期間中の外乱の影響が小さいと判断できるので、アタリ監視処理においてアタリが検出されたか否か(アタリ検出フラグがオンか否か)を判定する(S319)。したがって、上記のS315〜S319がカカリ判定処理に該当する。
【0067】
S319でアタリが検出されていると判定されたときには、魚が釣り糸に掛かって釣れたことを釣り人に知らせるために表示器19のLEDを点灯し(S320)、さらにサウンド回路12を起動してスピーカ13からメロディ音を出力する(S321)。次に、自動巻上モードが設定されているか否かを判定し(S322)、自動巻上モードが事前に設定されていたならば、電動リール1を起動して釣り糸を強制的に巻き上げる自動巻上処理を実行し(S323)、この処理を終了する。なお、自動巻上モードが設定されていない場合には、釣り人は釣り糸の巻き上げ用のボタン16を操作して釣り糸を巻き上げることができる。
【0068】
一方、S319でアタリが検出できなかったと判定された場合には、S301で事前に設定された自動餌替タイマがタイムアップしたか否かを判定し(S324)、自動餌替タイマがタイムアップしたときには、前述のS321〜323の処理を実行する。このため、自動巻上モードが事前に設定されていたならば、自動餌替タイマがタイムアップしたときにも釣り糸が強制的に巻き上げられることになる。
【0069】
また、S324で自動餌替タイマT11がタイムアップしていなければ、続いて、予めタナ取りモードが設定されているか否かを判定する(S325)。このとき、タナ取りモードが設定されていなければ、S302に戻る。また、予めタナ取りモードが設定されている場合には、現時点における目標深度に一定距離だけ加算あるいは減算した深度を新たな目標深度として設定した後(S326)、S302に戻る。
【0070】
このように、この実施の形態の自動釣り処理では、図4に示すように、魚釣りを行う際に実際に必要となる釣り針の移動、アタリ監視、アワセ、カカリ判定、巻き上げの各処理を全て自動化して行うことができるので、魚釣りの初心者でも容易かつ確実に釣果を上げることができ、また、従来よりも魚釣り作業を効率良く行えてその労力を削減することが可能となる。
【0071】
さらに、この自動釣り処理において、底モードあるいは中層モードに加えて事前にタナ取りモードが設定されている場合、魚が釣れないときにはS302〜S326を繰り返すことで、現在の釣り針の目標深度から一定距離だけ移動させた深度を新たな目標深度として設定されるとともに(S326参照)、その目標深度に移動するので(S305参照)、図5に示すような自動タナ取り処理を実行することができる。そして、この自動タナ取り処理を実行させれば、自動的に魚の泳層に合致するように仕掛けを合わせることができるため、どのような泳層に魚がいる場合でも確実に釣果を得ることができる。
【0072】
また、底モードあるいは中層モードが単に設定されているだけで、タナ取りモードが設定されていない場合において、魚が釣れないときにはS313のアワセ処理で釣り針が一定量だけ引き上げられた後に、S302に戻った後、S304の底移動処理またはS305の目標深度移動処理が行われるため、釣り針を上下動させるいわゆるシャリク動作が行われる。
【0073】
図6は、コントローラ22が一定周期(例えば10ms周期)ごとに、釣竿の撓り量のサンプリング、および釣り針の深度位置を割り出す深度変数を求めるタイマイベント処理を示すフローチャートである。なお、上記の図3に示した各処理で使用する撓り量や、現在の深度変数の値は、この図6の処理で得られるデータが利用される。
【0074】
図6において、まず、コントローラ22は、一定のサンプリング周期(例えば10ms周期)ごとに撓り検出センサ5で得られる最新のデータの1個分を読み込んでメモリ21に格納し(S601)、その取り込んだ最新のデータと過去のデータとを含む複数個(例えば計20個分)のデータの平均値を撓り量として求め、この移動平均としての撓り量を現在の撓り量としてその都度メモリ21に登録する(S602)。さらに、こうして求めた移動平均としての撓り量の過去の一定量のデータ(本例では、3秒間に相当する300個分のデータ)を履歴データとしてメモリ21に保持する(S603)。
【0075】
このように、S602で一定のサンプリング周期で得られた移動平均の撓り量を現在の撓り量として用いることでノイズの影響を除くことができる。また、S603で過去の一定量のデータを履歴データとして保持することで竿先安定待ち処理の竿先安定判定や、アタリ監視処理の判定精度を高める上で役立つ。この点については後述する。
【0076】
次に、コントローラ22は、リール回転検出器4の検出出力が変化しているか否かを判定し(S604)、リール回転検出器4の検出出力が変化しているときには、その変化が増加側かどうかを判定する(S605)。リール回転検出器4の検出出力が増加しているときには、深度変数を加算する(S606)。S605で逆にリール回転検出器4の検出出力が減少しているときには、深度変数を減算する(S607)。
【0077】
次に、図3に示した自動釣り処理の一部の処理内容についてさらに詳細に説明する
【0078】
図7は、図3のS304における底移動処理の詳細を示すフローチャートである。
【0079】
この底移動処理では、電動リール1のモータ2を比較的高速(例えば速度7)で駆動して釣り糸を送り出し(S701)、次に、戻り値が水底に到達したことを示す“底”か否かを判定する(S702)。
【0080】
釣り糸を送り出した当初は戻り値は“底”ではないので、次に、撓り検出センサ5の検出出力に基づいて、竿先の撓りが無負荷状態(初期値)であるか否かを判定する(S703)。このとき、無負荷状態でなければ、図8(a)に示すように、未だオモリは水底まで到達していないと考えられるので、S702に戻ってモータ2をそのままの速度で駆動する。
【0081】
S703で竿先の撓りが無負荷状態である場合、モータ2を一定時間(例えば4秒間)停止させた後(S704)、再度、竿先の撓りが無負荷状態であるか否かを判定する(S705)。その理由は、釣り糸のオモリが沈む速度以上に釣り糸の送り出し速度が速い場合、図8(b)に示すように、オモリが水底に到達していないにもかかわらず、釣り糸が弛んで竿先が無負荷状態になるので、このような事態を回避するためである。
【0082】
そして、モータ2を一定時間停止させた後のS705の判断で無負荷状態でなれば、図8(c)に示すように、未だ水底に到達していないものと考えられるので、モータ2の速度を一段遅く設定して(S706)、S702に戻る。一方、S705でモータ2停止後も無負荷状態が継続しているならば、図8(d)に示すように、オモリが水底に到達したと考えられるので、戻り値を“底”に設定し(S707)、S702に戻る。
【0083】
そして、S702で戻り値が“底となれば、モータ2を停止する(S708)。このとき、釣り糸が余分に送り出された可能性があるので、モータ2を低速度(例えば速度3)にして釣り糸を巻き上げ(S709)、無負荷状態でなくなった時点で釣り糸が弛みなく張られたものと判断して(S710)、モータ2を停止する(S711)。
【0084】
このように、底移動処理を実行させれば、水底にオモリが釣り針とともに到達したことを確実に検出して容易に底釣りを行うことができる。
【0085】
図9は図3のS305における目標深度移動処理の詳細を示すフローチャートである。
【0086】
この目標深度移動処理では、電動リール1のモータ2を比較的高速(例えば速度7)で駆動して釣り糸を送り出し(S901)、次に、リール回転検出器4の検出出力に基づいて得られる現在の深度変数が目標深度に到達したか否かを判定する(S902)。
【0087】
釣り糸を送り出した当初は深度変数は目標深度に一致しないので、次に、電動リール1が釣り糸の送り出し方向に回転しているか否かを判定する(S903)。釣り糸が巻き上げ方向であれば、S902に戻る。一方、電動リール1が釣り糸の送り出し方向に回転している場合、撓り検出センサ5の検出出力に基づいて竿先の撓りが無負荷状態(初期値)であるか否かを判定する(S904)。このとき、無負荷状態でなければ、図10(a)に示すように、未だ釣り針が目標深度まで到達していないと考えられるので、S902に戻ってモータ2をそのままの速度で駆動する。
【0088】
S904で竿先の撓りが無負荷状態である場合、モータ2を一定時間(例えば4秒間)停止させた後(S905)、再度、竿先の撓りが無負荷状態であるか否かを判定する(S906)。その理由は、底移動処理の場合と同様、釣り糸のオモリが沈む速度以上に釣り糸の送り出し速度が速い場合、図10(b)に示すように、オモリが水底に到達していないにもかかわらず、釣り糸が弛んで竿先が無負荷状態になるので、このような事態を回避するためである。
【0089】
そして、モータ2を一定時間(例えば4秒間)停止させた後のS906で無負荷状態でなれば、モータ2の速度を一段遅く設定して(S907)、S902に戻る。一方、S906の判断で、モータ2停止後も無負荷状態が継続しているならば、いわゆる糸フケにより釣り糸が弛んでいる可能性が高いので、現在の深度変数を再度目標深度として設定し(S908)、S902に戻る。
【0090】
そして、S902で深度変数が目標深度に到達したならば、釣り糸が余分に送り出された恐れがあるので、モータ2の回転方向を反転して低速度(例えば速度3)で駆動し(S909)、再度目標深度に到達したならば(S910)、モータ2を停止する(S911)。
【0091】
このように、目標深度移動処理を実行させれば、水底と水面との間の中間の泳層に釣り針が到達したことを確実に検出して容易に中層泳層の釣りを行うことができる。
【0092】
図11は図3のS306における竿先安定待ち処理の詳細を示すフローチャートである。
【0093】
この竿先安定待ち処理では、内部タイマ23に一定時間T3(例えば5秒)をセットした後(S1101)、竿先が安定しているか否かを判定する(S1102)。そして、竿先が安定が安定していなければ、一定時間T3が経過したか否かを判定し(S1103)、一定時間T3が経過していなければS1102に戻る。また、S1102で竿先が安定していると判定された場合、あるいはS1103で一定時間T3が経過したときには、竿先安定化後の現在の撓り量をアタリの有無を判定する際の基準値となるアタリ判定基準値としてメモリ21に登録する(S1104)。
【0094】
ここに、上記のS1102において竿先が安定しているか否かの判定は、予め設定器18において設定した釣り場所の状況に応じて、図12に示すような処理が行われる。
【0095】
例えば、筏釣りのように外乱の発生が一時的な場合には、図12(a)に示すように、一定期間Tの撓り量の履歴データ(図6のS603によりメモリ21に登録されている3秒間の履歴データ)について、最大値と最小値を抽出し、その差分Δ1を基準値Δ0と比較する。そして、差分Δ1が基準値Δ0よりも小さい場合には竿先が安定したと判定する。
【0096】
また、海釣りや船釣りのように揺れの影響によって外乱が常時発生しているような場合には、図12(b)に示すように、一定期間Tの撓り量の履歴データ(図6のS603によりメモリ21に登録されている3秒間の履歴データ)について、下方向への撓り開始と終了の2点を抽出し、両点を結んで得られる撓り量の変化量とその間の時間とから撓り量の変化速度θ4,θ5,θ6,…をそれぞれ算出する。そして、これらの変化速度を基準速度θ3と比較する。そして、変化速度θ4,θ5,θ6,…が基準速度θ3よりも小さい場合(図示の場合はθ3とθ6)の発生頻度が基準頻度(例えば2回)よりも少ないときに竿先が安定したと判定する。
【0097】
さらに、磯釣りや岸壁釣りなどのように外乱の影響が少ない場合には、一定時間(例えば3秒)が経過した時点で一律に竿先が安定したと判定する。
【0098】
このように、竿先安定待ち処理を実行させれば、針移動処理やアワセ処理の実行後に竿先が確実に安定した状態になった否かを見極めることができるので、アタリ監視処理やカカリ判定処理などに移行する際の船の揺れ等の外乱の影響を予め排除することができ、アタリ監視処理やカカリ判定処理の結果をより一層確実なものとすることができる。
【0099】
図13は図3のS308およびS317におけるアタリ監視処理の詳細を示すフローチャートである。
【0100】
このアタリ監視処理では、内部タイマ23に一定時間T4(例えば5秒)をセットした後(S1301)、アタリがあるか否かを判定する(S1302)。そして、アタリがなければ、一定時間T4が経過したか否かを判定し(S1303)、一定時間T4が経過していなければS1302に戻る。また、S1302でアタリがあると判定された場合、タナ取りモードが予め設定されているときにはこのタナ取りモードを解除した後(S1304)、アタリ検出フラグをオンする(S1305)。一方、S1303でアタリが無い状態で一定時間T4が経過した場合には、アタリ検出フラグをオフにする(S1306)。
【0101】
ここに、上記のS1302においてアタリがあるか否かの判定は、予め設定器18において設定した釣り場所の状況に応じて、図14に示すような処理が行われる。
【0102】
例えば、筏釣りのように外乱の発生が一時的な場合には、図14(a)に示すように、一定期間Tの撓り量の履歴データ(図6のS603によりメモリ21に登録されている3秒間の履歴データ)について、最大値と最小値を抽出し、その差分Δ2を基準値Δ0と比較する。そして、差分Δ2が基準値Δ0を越えている場合にはアタリがあると判定する。
【0103】
また、海釣りや船釣りのように揺れの影響によって外乱が常時発生しているような場合には、図14(b)に示すように、一定期間Tの撓り量の履歴データ(図6のS603によりメモリ21に登録されている3秒間の履歴データ)について、下方向への撓り開始と終了の2点を抽出し、両点を結んで得られる撓り量の変化量とその間の時間とから撓り量の変化速度θ7,θ8,θ9,…をそれぞれ算出する。そして、これらの変化速度を基準速度θ3と比較する。そして、変化速度θ4,θ5,θ6,…が基準速度θ3よりも大きい場合(図示の場合はθ8とθ9)の発生頻度が基準頻度(例えば2回)よりも多いときにアタリがあると判定する。
【0104】
さらに、磯釣りや岸壁釣りなどのように外乱の影響が少ない場合には、図14(c)に示すように、現在のアタリ判定基準値(図11のS1104で既に得られている)を中心にして一定の検出レンジΔ3を設定し、この検出レンジΔ3を越えた撓り量の発生頻度が基準頻度(例えば2回)よりも多いときにアタリがあると判定する。
【0105】
このようにしてアタリ監視処理を実行させれば、船の揺れ等の外乱要因を予め排除してアタリの有無を確実に検出することができる。
【0106】
図15は図3のS313におけるアワセ処理の詳細を示すフローチャートである。
【0107】
このアワセ処理では、魚種によって餌の食べ方が異なるので、設定器18で予め設定された魚種に応じてアタリ検出から所定時間だけアタリ動作を待機した後(S1501)、電動リール1のモータ2を魚種に適合した速度で1秒間だけ巻き上げた後(S1502)、ブレーキをかけて(S1503)、モータ2を停止させる(S1504)。
【0108】
図16は図3のS323における自動巻上処理の詳細を示すフローチャートである。
【0109】
この自動巻上処理では、電動リール1のモータ2を最初は中速程度(例えば速度5)で駆動して釣り糸を巻き上げ(S1601)、次に、上部検知か(つまり十分に釣り糸が巻き上げられたか)否かを判定する(S1602)。この場合、例えばリール回転検出器4で得られる深度変数が零になったときに上部検知ありと判定する。
【0110】
上部検知でなければ、次に撓り検出センサ5の検出出力に基づいて釣竿の撓り量が大きいかどうかを判定する(S1603)。釣竿の撓り量が非常に大きい場合には、大きな魚が掛かったか、水中の異物に釣り針が引っ掛かった可能性があり、このまま巻き上げを継続すると、釣り糸が切れてしまう恐れがある。そこで、この場合、コントローラ22はサウンド回路12を起動してスピーカ13からメロディ音を出力して警告するとともに(S1604)、モータ2の駆動を停止する(S1605)。
【0111】
一方、S1603で釣竿の撓り量が比較的大きい場合には、糸切れやバラシが生じないように安全を考慮してモータ2を低速(例えば速度3)に設定して釣り糸を巻き上げて、S1602に戻る。さらに、S1603で釣竿の撓り量が比較的小さい場合には、モータ2を中速(例えば速度5)にしたまま釣り糸を巻き上げて、S1602に戻る。
【0112】
そして、S1602で上部検知となれば、釣り糸が十分に巻き上げられて、幾分オーバーランした可能性があるので、モータ2を中速で逆転駆動し(S1609)、僅かな時間(本例では0.5秒)だけ経過した後(S1610)、モータ2を停止する(S1605)。
【0113】
このように、自動巻上処理を実行することで、カカリが判定された場合には自動的に釣り糸が巻き上げられるので、手動で巻き上げ作業をする手間を省くことができる。特に、この自動巻上処理の実行時において、撓り検出センサ5の検出出力に基づく竿先の撓り量の大きさに応じて電動リール1の巻き上げ速度を可変しているので、釣り糸を切ってしまうといった不具合発生を極力防ぐことができる。
【0114】
図17は、振動計9の検出出力に基づく割込処理の内容を示すフローチャートである。
【0115】
図3に示したフローチャートの各処理の途中で、振動計9の検出出力が予め設定された基準値以上のレベルとなった場合(S1701)、コントローラ22は割り込みをかけて振動検知フラグをオンにする(S1702)。
【0116】
この割込処理を実行させれば、波風のような大きな外乱が釣竿に加わった場合に誤ってアタリが有ったと判定されたり、誤ってカカリがあったと判定されるなどの誤判定の発生を一層確実に防止することができる。
【0117】
また、本発明の自動釣りプログラムを備えれば、このプログラムをコンピュータにインストールすることにより容易に自動釣り作業を実施することが可能となる。さらに、これらのプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供することで、このプログラムを市場に容易に拡販することができる。上記の場合のプログラムのコンピュータへのインストールは、記録媒体からでもよく、あるいはインターネットを介してダウンロードすることによっても可能である。
【0118】
なお、上記の実施の形態では設定器18によって初期設定を行っているが通信器24とネットワークを 介して初期データを入手するようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施の形態における自動釣りシステムの制御系のブロック図である。
【図2】同システムで使用する撓り検出センサを釣竿に取り付けた場合の構成を示す側面図である。
【図3】同システムのコントローラによる自動釣り制御動作の全体を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートに従って行われる釣りの制御動作の説明図である。
【図5】図3のフローチャートに従って行われるタナ取り処理の説明図である。
【図6】コントローラが一定周期ごとに、釣竿の撓り量のサンプリング、および釣り針の深度位置を割り出す深度変数を求めるタイマイベント処理を示すフローチャートである。
【図7】底移動処理の詳細を示すフローチャートである。
【図8】図7の底移動処理における釣り糸の状態を示す説明図である。
【図9】目標深度移動処理の詳細を示すフローチャートである。
【図10】図9の目標深度移動処理における釣り糸の状態を示す説明図である。
【図11】竿先安定待ち処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】図11の竿先安定待ち処理における竿先安定の判定手法の説明図である。
【図13】アタリ監視処理の詳細を示すフローチャートである。
【図14】図13のアタリ監視処理におけるアタリの判定手法の説明図である。
【図15】アワセ処理の詳細を示すフローチャートである。
【図16】自動巻上処理の詳細を示すフローチャートである。
【図17】振動計の検出出力に基づく割込処理の内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0120】
1 電動リール
4 リール回転検出器
5 撓り検出センサ
9 振動計
11 報知器
18 設定器
19 表示器
21 メモリ
22 コントローラ
R 釣竿
51 歪ゲージ
52 取付基板
56 支柱
57 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸の送り出しおよび巻き上げ駆動を行う電動リールと、
釣竿の先端部に取り付けられて釣竿の撓り量を検出する撓り検出センサと、
各種の釣り条件を設定する設定器と、
前記電動リールの駆動量を検出するリール回転検出器と、
前記撓り検出センサの検出出力、前記リール回転検出器の検出出力、および前記設定器により設定された各種の釣り条件に基づいて、前記電動リールの駆動量を制御して釣り針を所定深さまで移動させる針移動処理、魚信の有無を監視するアタリ監視処理、釣り糸を一定量だけ巻き上げるアワセ処理、および魚が釣り針に掛かったか否かを判定するカカリ判定処理の一連のシーケンスを実行させるコントローラと、
を備えることを特徴とする自動釣りシステム。
【請求項2】
前記撓り検出センサは、歪ゲージが可撓性を有する取付基板に一体的に固定されるとともに、前記取付基板が釣竿に対して当該釣竿の撓りに応じて相対的に変位可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の自動釣りシステム。
【請求項3】
前記撓り検出センサは、歪ゲージが可撓性を有する取付基板に一体的に固定される一方、釣竿の長手方向に沿って前後一対の支柱が立設され、これらの支柱に前記取付基板が固定されていることを特徴とする請求項1記載の自動釣りシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記針移動処理として、前記撓り検出センサにより検出される釣竿の撓りが、釣竿に重りを付けていない無負荷状態において予め登録された初期値に到達した時点で電動リールの駆動を停止させる底移動処理を実行することを特徴とする請求項1記載の自動釣りシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、前記針移動処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定期間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出されない状態になるまでは前記電動リールの再起動を停止する竿先安定待ち処理を実行するものであることを特徴とする請求項1記載の自動釣りシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、前記アタリ監視処理として、前記竿先安定待ち処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定時間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出された場合にはアタリがあるものと判定することを特徴とする請求項5記載の自動釣りシステム。
【請求項7】
魚が釣れたことを外部に報知する報知器を備え、前記コントローラは、前記カカリ判定処理として、前記アワセ処理および前記竿先安定待ち処理が順次実行された後に、再度前記アタリ監視処理を実行し、このアタリ監視処理においてアタリが発生している場合に魚が釣り針に掛かったと判定して前記報知器を起動して外部にその旨を報知するものであることを特徴とする請求項6記載の自動釣りシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記カカリ判定処理によりカカリが判定されない場合には、前記リール回転検出器で検出される現在の釣り針の深度から一定距離だけ移動させた深度を新たな目標深度として設定して前記目標深度移動処理に移行する自動タナ取り処理を実行することを特徴とする請求項1または請求項7記載の自動釣りシステム。
【請求項9】
釣り開始に応じて餌替え時期が設定される自動餌替タイマを備え、前記コントローラは、この自動餌替タイマがタイムアップした場合、または前記カカリ判定処理によりカカリが判定された場合には、前記電動リールを起動して釣り糸を強制的に巻き上げる自動巻上処理を実行するものであることを特徴とする請求項1または請求項7記載の自動釣りシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記自動巻上処理において、前記撓り検出センサの検出出力に基づく竿先の撓り量の大きさに応じて前記電動リールの巻き上げ速度を可変するものであることを特徴とする請求項9記載の自動釣りシステム。
【請求項11】
前記釣竿の振動量を検出する振動計を備え、前記コントローラは、この振動計で検出される振動量が予め設定された基準値を越える場合には、外乱の影響が大きいものと判断して前記一連のシーケンスの途中で割り込みをかけて誤判定防止用の振動検知フラグをオンにする割込処理を実行するものであることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の自動釣りシステム。
【請求項12】
釣竿の先端部に取り付けられて釣竿の撓り量を検出する撓り検出センサの検出出力、電動リールの駆動量を検出するリール回転検出器の検出出力、および設定器により設定された各種の釣り条件に基づいて、前記電動リールの駆動量を制御して釣り針を所定深さまで移動させる針移動処理を実行するステップと、
前記針移動処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定期間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出されない状態になるまでは前記電動リールの再起動を停止する竿先安定待ち処理を実行するステップと、
竿先安定待ち処理の実行後に前記撓り検出センサの検出出力を監視し、一定時間内に予め設定された閾値以上の撓りまたは撓り速度が検出された場合にはアタリがあるものと判定するアタリ監視処理を実行するステップと、
前記アタリ監視処理でアタリがあったと判断された場合に釣り糸を一定量だけ巻き上げるアワセ処理を実行するステップと、
前記アワセ処理および前記竿先安定待ち処理が順次実行された後に、再度前記アタリ監視処理を実行し、このアタリ監視処理においてアタリが発生している場合に魚が釣り針に掛かったと判定するカカリ判定処理を実行するステップと、
前記カカリ判定処理によりカカリが判定された場合には、前記電動リールを起動して釣り糸を強制的に巻き上げる自動巻上処理を実行するステップと、
を順次実行させる自動釣りプログラム。
【請求項13】
請求項12記載の自動釣りプログラムにおいて、さらに前記カカリ判定処理によりカカリが判定されない場合には、前記リール回転検出器で検出される現在の釣り針の深度から一定距離だけ移動させた深度を新たな目標深度として設定して前記目標深度移動処理に移行する自動タナ取り処理を実行するステップを含むことを特徴とする自動釣りプログラム。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−237137(P2008−237137A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84072(P2007−84072)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(507101196)
【Fターム(参考)】