説明

自在締結工具、及びこれを用いた締結装置

【課題】ソケット復帰用のコイルスプリングの長寿命化が可能な、ねじ、ボルト等の締結部材を締め付ける自在締結工具を提供する。
【解決手段】ソケット部40と、保持部材41と、前記ソケット部40と保持部材41と連結するユニバーサルジョイント部42とを備える自在締結工具4であって、ソケット部40の後端面403に当接する押圧面91を有し、保持部材41の外周面に移動可能に設けた押し部材9と、押し部材9の内面と保持部材41の外周面との間に設けられ、押し部材9をソケット部40の後端面に押圧するコイルばね10と、保持部材41の外周面に設けられ、コイルばね10の他方側への移動を阻止するばね受け11とを備え、ソケット部40の後端面の外周面が、押し部材9の押圧面91の内周部より径方向外側に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ、ボルト等の締結部材を締め付ける自在締結工具、及びこれを用いた締結装置に係り、更に詳しくは、締結部材の締付不良を生じることなく、締結部材を傾斜した方向から締結することができる自在締結工具、及びこれを用いた締結装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ねじ、ボルト等の締結部材を傾斜した方向から締結することができるねじ締め装置として、特開2002−036131号公報(特許文献1)に記載のものがある。このねじ締め装置は、駆動軸の太径部先端に、ユニバーサルジョイントを介して、ねじを保持するソケットを揺動自在に連結し、ソケットの基端面と駆動軸の太径部先端寄り位置に設けたスプリング受けとの間に、ソケットの軸心が駆動軸の軸心と一致する方向に付勢するコイルスプリングを介装している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−036131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のねじ締め装置においては、ねじを保持するソケットと駆動軸の先端とを、ユニバーサルジョイントを介して連結し、ソケットの基端面と駆動軸の先端寄り位置との間に、コイルスプリングを介装して、ソケットをコイルスプリングに抗して駆動軸に対して揺動可能であるとともに、コイルスプリングによる復元力によって、ソケットの軸心が駆動軸の軸心と一致することができるので、ねじの締め付け作業の効率が向上する。
【0005】
この種のねじ締め装置においては、ソケットを駆動軸に対して揺動させた場合、ソケットの基端面と駆動軸の先端寄り位置との間に介装したコイルスプリングは、その径の半分が圧縮され、締結終了後は、その復元力でソケットを駆動軸の軸心と一致するように移動させるため、ソケットを安定して復帰させるためには、コイルスプリングのばね定数を高めることになり、コイルスプリングを大型化せざるを得ないという憾みがある。
【0006】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的とするところは、ソケット復帰用のコイルスプリングの長寿命化が可能で、ソケットの傾斜角度を大きく取ることができる、ねじ、ボルト等の締結部材を締め付ける自在締結工具、及びこれを用いた締結装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、第1の発明は、ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部を前記保持部材に対して傾動可能に連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、前記保持部材の外周面に設けられ、前記コイルばねの他方側への移動を阻止するばね受けとを備え、前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置していることを特徴とするものである。
【0008】
また、第2の発明は、ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部を前記保持部材に対して傾動可能に連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、前記保持部材の外周面に移動可能に設けられ、前記コイルばねの他方端が当接するばね受けと、前記保持部材の外周面にねじ込まれ、前記ばね受けを移動調整可能とするナットとを備え、前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置していることを特徴とするものである。
【0009】
更に、第3の発明は、ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部を前記保持部材に対して傾動可能に連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、前記保持部材の外周面に設けられ、前記コイルばねの他方側への移動を阻止するばね受けと、前記保持部材の外周面にねじ込まれ、前記ソケット部の傾動角動を設定するための前記押し部材の端面との間隔を調整可能とするナットとを備え、前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置していることを特徴とするものである。
【0010】
また、第4の発明は、ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部と保持部材と連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、前記保持部材の外周面に設けられ、前記コイルばねの他方側への移動を阻止するばね受けと、前記ソケット部の後部内周面に形成したテーパ面と、前記保持部材の外周面に設けられ、前記ソケット部のテーパ面に当接する環状の突起部とを備え、前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置していることを特徴とするものである。
【0011】
更に、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかに記載の自在締結工具を、回転機に連結して構成したことを特徴とする締結装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ソケット復帰用のコイルスプリングの長寿命化が可能となるので、ねじ、ボルト等の締結部材を締め付ける自在締結工具、及びこれを用いた締結装置が長寿命化し、締結部材の締結作業における効率が更に向上する。また、ソケットの傾斜角度を大きく取ることができるので、締結部材の被締付部材への締結品質の確保、及び作業効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の自在締結工具の第1の実施の形態、及びこれを用いた締結装置の一実施の形態を示す側面図である。
【図2】本発明の自在締結工具の第1の実施の形態を示す縦断側面である。
【図3】図2に示す本発明の自在締結工具の第1の実施の形態の傾動動作を説明する縦断側面である。
【図4】本発明の自在締結工具の第1の実施の形態、及びこれを用いた締結装置の一実施の形態による締結動作を示す側面図である。
【図5】本発明の自在締結工具の第2の実施の形態を示す縦断側面である。
【図6】図5に示す本発明の自在締結工具の第2の実施の形態、及びこれを用いた締結装置による締結動作の他の実施の形態を示す側面図である。
【図7】本発明の自在締結工具の第3の実施の形態を示す縦断側面である。
【図8】本発明の自在締結工具の第4の実施の形態を示す縦断側面である。
【図9】図8に示す本発明の自在締結工具の第4の実施の形態の傾動動作を説明する縦断側面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の自在締結工具、及びこれを用いた締結装置の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0015】
図1乃至図3は、本発明の自在締結工具の第1の実施の形態、及びこれを用いた締結装置の一実施の形態を示すもので、図1は本発明の自在締結工具の第1の実施の形態、及びこれを用いた締結装置の一実施の形態を示す側面図、図2は本発明の自在締結工具の第1の実施の形態を示す縦断側面、図3及び図4は図2に示す本発明の自在締結工具の第1の実施の形態の傾動動作を説明する縦断側面である。
【0016】
図1において、1は車体、2は車体1の締結する被締付部材、3は被締付部材2を車体1に固定する締結部材で、この例ではボルトを示し、ボルト3は車体1に設けたねじ孔1Aにねじ込まれる。
【0017】
4は締結部材3をねじ込む自在締結工具で、この自在締結工具4の詳細は後述するが、自在締結工具4の後端には、ピン5によって継手部材6の一端が連結されている。継手部材6の他端には電動回転機7の四角柱状の回転軸8が着脱可能に連結されて、締結装置を構成している。
【0018】
次に、前述した自在締結工具4の詳細な構成を、図2及び図3を用いて説明する。
図2及び図3において、図1に示す符号と同符号のものは、同一部分であるので、その詳細な説明は省略する。自在締結工具4は、先端に位置するソケット部40と、電動回転機7側に位置する保持部材41と、この保持部材41とソケット部40とを連結するユニバーサルジョイント部42とを備えている。
【0019】
ソケット部40は、その先端部にボルト3の頭部3Aが挿入される六角形状のボルト保持穴401が設けられている。また、ソケット部40の後部側には、ユニバーサルジョイント部42を収納する空間を形成するための筒状部402が設けられている。
【0020】
ソケット部40の後部側における筒状部402内に収納されるユニバーサルジョイント部42は、保持部材41の先端部に回転可能に設けた第1のクロスピン421と、第1のクロスピン421に直交し貫通して設けられ、保持部材41の先端部の孔411を通して、先端がソケット部40の筒状部402に固定された第2のクロスピン422とで構成されている。
【0021】
保持部材41の先端部には、保持部材41の外周面に沿って移動する筒状の押し部材9が設けられている。この押し部材9におけるソケット部40側端部には、ソケット部40の筒状部402の後端面403に当接する押圧面91が形成されている。押し部材9における押圧面91とソケット部40の筒状部402の後端面403との径方向の位置関係は、ソケット部40の後端面403の外周面が、押し部材9の押圧面91の内周部より径方向外側に位置するように設定されている。
【0022】
換言するならば、押し部材9の押圧面91の径方向面積は、ソケット部40の傾斜角度を確実に維持するために、ソケット部40の後端面403の径方向面積よりも大きく形成されている。具体的には、ソケット部40と押し部材9の外形を同一とした場合、押し部材9の押圧面91の内径は、ソケット部40の後端面403の内径よりも小さく形成されている。このように構成することにより、ソケット部40が大きく傾動した場合にも、ソケット部40の後端面403の外周面が、押し部材9の押圧面91の内周部より外れることがない。このため、作業終了後、ソケット部40は、保持部材41の軸線と一致するように、復帰し保持される。
【0023】
また、押し部材9の後端部側内部には、コイルばね収納用の円周溝92が形成されている。円周溝92はその内周面と保持部材41の外周面とにより、後述するコイルばね10の収納空間を画成する。この収納空間内に収納されたコイルばね10の一方端は、円周溝92の底面に当接している。コイルばね10の他方端は、保持部材41の外周面に設けたばね受け11の一方側の端面に当接している。ばね受け11の他方側の端面は、保持部材41の外周面に設けたストッパリング12によって、保持部材41の後方端側への移動が阻止されている。
【0024】
コイルばね10は、ソケット部40をその軸線が保持部材41の軸線に一致するような復元力を発揮する機能を有するとともに、図3に示すように、ソケット部40を保持部材41の先端で傾動させた場合の傾動角度θを設定する機能を有している。ソケット部40の傾動角度θは、図3に示すように、コイルばね10のたわみ量が最大、即ち、コイルばね10が密着した長さAによって設定される。
【0025】
次に、上述した本発明の自在締結工具の第1の実施の形態、及びこれを用いた締結装置の一実施の形態の動作を、図1乃至図4を用いて説明する。
まず、自在締結工具4を電動回転機7の回転軸8に組み付けて、締結装置を構成した後、図1に示すように、ソケット部40の六角形状のボルト保持穴401に、ボルト3の頭部3Aを嵌め込む。この状態で、被締付部材2を車体1のねじ孔1Aにあてがった後、締結装置全体を移動して、ボルト3の先端を被締付部材2を通して車体1のねじ孔1Aに導入する。
【0026】
この状態で、電動回転機7を駆動すると、電動回転機7の回転が、継手部材6を介して自在締結工具4に伝達されるので、ボルト3は、図4に示すように、ボルト3の先端が車体1のねじ孔1Aにねじ込まれる。この際、ソケット部40は、ジョイント部42によってボルト3の軸線が車体1のねじ孔1Aの軸線と一致するように傾動するので、ボルト3は車体1のねじ孔1Aにねじ込まれて、被締付部材2を車体1に固定することができる。
【0027】
上述した締結動作により、保持部材41の軸線が車体1のねじ孔1Aの軸線に対して角度を形成している場合にも、ボルト3に対して締結装置を構成する電動回転機7の支持角度を合わせる必要がないので、ボルトの締結作業を効率的に行うことができる。
【0028】
なお、上述したソケット部40が角度をもって傾動した場合、ソケット部40における筒状部402の後端面403の一部分が、押し部材9の押圧面91の一部分に押し付け力を作用させる。これにより、押し部材9はコイルばね10を圧縮させながら保持部材41の他方端側に移動する。
【0029】
ボルト3の締結作業が終了したのち、締結装置を、締結されたボルト3から抜き取ると、コイルばね10はその復元力によって押し部材9をソケット部40側に移動するので、押し部材9は、その押圧面91がソケット部40における筒状部402の端面に押し付け力を与える。このため、ソケット部40は、図2に示すように、保持部材41の軸線と一致するように、保持される。
【0030】
上述したように、本発明の自在締結工具の第1の実施の形態によれば、締結装置の位置に対して、ボルト締結位置がずれていても、ボルト3を所定のねじ孔にねじ込むことが可能であり、また、締結装置の支持姿勢も楽になるので、締結作業の疲労度も軽減することができる。例えば、自動車等の組立ラインにおいて、コンベアによって一定速度で移送されてくる車体に、部品をボルトなどで取り付ける締結作業に有効である。
【0031】
また、ソケット部40がユニバーサルジョイント部42を介して傾動しても、コイルばね10は、そのばね軸方向にたわみ、たわみ方向の力だけが作用し、コイルばね10の全体は、曲がることがないので、コイルばね10の寿命が長くなり、自在締結工具の信頼性が向上する。更に、コイルばね10は、押し部材9の内面と保持部材41の外周面との間に内装し、むき出し状態にならないので、コイルばね10間への異物の嵌り込みがなくなり、コイルばね10の不作動、破損等の不具合も解消することができる。
【0032】
更に、ボルト3の先端と車体1のねじ孔1Aとのねじ込みの不具合によって生じる焼き付きが低減され、締結品質を確保することができる。これに伴い、不良ボルトの発生も抑えることができるので、費用軽減を図ることができるとともに、ねじ込み不良後の修正作業も不要になる等の利点がある。
【0033】
また、ソケット部40の後端面403の外周面が、押し部材9の押圧面91の内周部より径方向外側に位置しているので、ソケット部40が大きく傾動した場合にも、ソケット部40の後端面403の外周面が、押し部材9の押圧面91の内周部より外れることがない。このため、作業終了後、ソケット部40は、保持部材41の軸線と一致するように、復帰し保持される。
【実施例2】
【0034】
図5及び図6は、本発明の自在締結工具の第2の実施の形態、及びこれを用いた締結装置の他の実施の形態を示すもので、図5は本発明の自在締結工具の第2の実施の形態を示す縦断側面、図6は図5に示す本発明の自在締結工具の第2の実施の形態、及びこれを用いた締結装置による締結動作の他の実施の形態を示す側面図である。
図5及び図6において、図1乃至図4に示す符号と同符号のものは、同一部分または相当する部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0035】
この実施の形態は、ソケット部40の傾動角度を変更可能にするために、保持部材41における押し部材9の近傍の外周面に、ねじ412を形成し、ねじ412に、ばね受け11の端面に当接するばね受け保持用のナット413、及び緩み止め用のナット414をねじ込み構成したものである。
【0036】
この実施の形態によれば、前述した実施の形態と同様な効果を得ることができる。また、ばね受け保持用のナット413のねじ込み量により、ばね受け11の移動量を調整して、コイルばね10の縮み量を換えることができるので、ソケット部40の傾動角度を、図6に示すように所定の傾動角度θ2に変更することができる。
【実施例3】
【0037】
図7は、本発明の自在締結工具の第3の実施の形態を示す縦断側面で、図7において、図1乃至図6に示す符号と同符号のものは、同一部分または相当する部分であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態は、ソケット部40の傾動角度を変更可能にするために、保持部材41における押し部材9の近傍の外周面に、ねじ412を形成し、ねじ412に、押し部材9の端面に当接する環状突起部415を有する傾動角設定用のナット416、及び緩み止め用のナット414をねじ込み構成したものである。
【0038】
この実施の形態によれば、前述した実施の形態と同様な効果を得ることができる。また、傾動角設定用のナット416のねじ込み量により、傾動角設定用のナット416の環状突起部415と押し部材9の端面との間隔Bを調整して、ソケット部40の傾動角度を所定の傾動角度θ2に変更することができる。これにより、コイルばね10は密着することがなくなり、コイルばね10の耐久寿命を延ばすことができる。
【実施例4】
【0039】
図8は、本発明の自在締結工具の第4の実施の形態を示す縦断側面、図9は、図8に示す本発明の自在締結工具の第4の実施の形態の傾動動作を説明する縦断側面である。これらの図において、図1乃至図7に示す符号と同符号のものは、同一部分または相当する部分であるので、その詳細な説明は省略する。
この実施の形態は、ソケット部40の傾動角度を大きくすることができるようにするために、ソケット部40における筒状部402の後部の内面にテーパ面404を形成し、保持部材41におけるユニバーサルジョイント部42側の外周面に、ソケット部40における筒状部402のテーパ面404に当接する環状の突起部417を設けたものである。
【0040】
この実施の形態においては、ソケット部40が傾動した場合、ソケット部40における筒状部402の後部の内面のテーパ面404の一部分が、保持部材41におけるユニバーサルジョイント部42側の外周面に設けた環状の突起部417の外周面に部分的に当接するので、ソケット部40は、保持部材41の軸線に対し傾動角度θを維持するように位置決めされる。この状態において、コイルばね10は密着状態にならないので、コイルばね10の耐久寿命を延ばすことができる。
【0041】
また、ソケット40の後端部403の外周面が、押し部材9の押圧面91の内周部より径方向外側に位置しているので、ソケット部40が大きく傾動した場合にも、ソケット部40の後端部403の外周面が、押し部材9の押圧面91の内周部により外れることがない。この場合、コイルばね10は、押し部材9を介してソケット部40を保持部材41の軸線と一致するように、復帰させる機能を有している。
【0042】
この実施の形態によれば、前述した実施の形態と同様な効果を得ることができる。また、締結部材をほぼ一定の角度から車体1のねじ孔1Aに締結する作業に有効である。
【0043】
この実施の形態において、環状の突起部417の突出量及び筒状部402の後部の内面におけるテーパ面403の角度を変えることにより、ソケット部40の傾動角度を更に大きく設定することができる。
【0044】
なお、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、ソケット部40に、六角形状のボルト保持穴401を設けた例を示したが、他の形状でも良く、また、ねじ締め用のものすることも可能である。
【0045】
また、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、ソケット部40の筒状部402の後端面403を、平面に形成したが、円弧面に形成することも可能である。この構成によれば、押し部材9に対するソケット部40の傾動動作が滑らかになるとともに、ソケット部40の筒状部402の後端面403が当接する押し部材9の押圧面91の摩滅を軽減することができる。
【0046】
更に、上述した第1乃至第4の実施の形態においては、自在締結工具4の回転駆動源として、電動回転機7を用いた例を示したが、空気作動式のもの、また、手動式のラチェットレンチ等を用いることも可能である。
【0047】
また、上述した第1及び第4の実施の形態においては、ばね受け11の移動を阻止するために、ストッパリング12を用いたが、C型のリングを用いることも可能である。
【0048】
また、上述した実施の形態においては、ユニバーサルジョイント部42として、クロスピン形式を用いたが、1ピン形式の場合にも、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 車体
2 被締付部材
3 締結部材(ボルト)
4 自在締結工具
6 継手部材
7 電動回転機
9 押し部材
10 コイルばね
11 ばね受け
40 ソケット部
41 保持部材
42 ユニバーサルジョイント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部を前記保持部材に対して傾動可能に連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、
前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、
前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、
前記保持部材の外周面に設けられ、前記コイルばねの他方側への移動を阻止するばね受けとを備え、
前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置している
ことを特徴とする自在締結工具。
【請求項2】
ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部を前記保持部材に対して傾動可能に連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、
前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、
前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、
前記保持部材の外周面に移動可能に設けられ、前記コイルばねの他方端が当接するばね受けと、
前記保持部材の外周面にねじ込まれ、前記ばね受けを移動調整可能とするナットとを備え、
前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置している
ことを特徴とする自在締結工具。
【請求項3】
ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部を前記保持部材に対して傾動可能に連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、
前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、
前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、
前記保持部材の外周面に設けられ、前記コイルばねの他方側への移動を阻止するばね受けと、
前記保持部材の外周面にねじ込まれ、前記ソケット部の傾動角動を設定するための前記押し部材の端面との間隔を調整可能とするナットとを備え、
前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置している
ことを特徴とする自在締結工具。
【請求項4】
ソケット部と、保持部材と、前記ソケット部と保持部材と連結するユニバーサルジョイント部とを備える自在締結工具であって、
前記ソケット部の後端面に当接する押圧面を有し、前記保持部材の外周面に移動可能に設けた押し部材と、
前記押し部材の内面と前記保持部材の外周面との間に設けられ、前記押し部材を前記ソケット部の後端面に押圧するコイルばねと、
前記保持部材の外周面に設けられ、前記コイルばねの他方側への移動を阻止するばね受けと、
前記ソケット部の後部内周面に形成したテーパ面と、
前記保持部材の外周面に設けられ、前記ソケット部のテーパ面に当接する環状の突起部とを備え、
前記ソケット部の後端面の外周面が、前記押し部材の前記押圧面の内周部より径方向外側に位置している
ことを特徴とする自在締結工具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の自在締結工具を、回転機に連結して構成したことを特徴とする締結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30337(P2012−30337A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173673(P2010−173673)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(591171677)株式会社メイドー (10)
【出願人】(394026611)水戸工機株式会社 (5)
【出願人】(591055975)水戸工業株式会社 (11)