説明

自己シール特性が改良されたマルチ管腔血管グラフト

本発明は、埋設可能なグラフト(2)を提供するものであって、第1外壁表面(8)と第1内壁表面(6)とを有するとともに、血液に接触する第1管腔(10)を形成している、第1チューブ状ボディ(4)と;第2外壁表面(20)と第2内壁表面(18)とを有している第2チューブ状ボディ(16)と;を具備している。第2チューブ状ボディは、第1チューブ状ボディの周縁回りに配置され、さらに、第1チューブ状ボディとの間にスペースを形成しており、さらに、第1チューブ状ボディに対して少なくとも1つのリブ(12)を介して連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、埋設可能なプロテーゼに関するものである。より詳細には、本発明は、一体的なマルチ管腔構造を有した埋設可能なグラフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
埋設可能なグラフトは、損傷した血管の治療に際して、一般に使用されている。そのようなデバイスの1つは、損傷した組織あるいは機能障害を起こした組織を交換し得るよう構成された合成血管グラフトである。そのような損傷あるいは機能障害は、例えば、血栓症や動脈瘤や閉塞によって損傷を受けたような動脈または静脈から発生し得るものである。グラフトは、血液を流し得る人工的血管を提供する。
【0003】
天然の血管は、多くの場合、腎不全の治療時に損傷を受ける。例えば、透析を使用して腎不全の患者を治療する場合、200ml/分以上という量の血液を患者から連続的に取り出し得るよう、血管に即座にアクセスし得る必要がある。透析が有効であるためには、1週間あたりにつき2回以上の治療を規則的なスケジュール上で繰り返さなければならない。各治療ごとに、静脈に対して、比較的大きな穴の針を使用して、アクセスがなされる。経皮的なアクセスが繰り返されることの結果として、静脈は、しばしば、穿孔領域に沿って圧潰されるか、あるいは、動脈瘤が形成されたり、漏洩を起こしたり、あるいは、血餅によって充填されたり、する。血餅は、肺塞栓症の深刻なリスクを引き起こし得る。その結果、人工透析においては、人工的グラフトを、患者自身の静脈の代替物として使用し、問題点を回避することが試みられた。
【0004】
したがって、血管プロテーゼの1つのますます有効な応用は、動脈と静脈の間のバイパス分流器としての使用である。動脈と静脈の間に外科的に配置されたグラフト(AVフィステル)は、透析患者において、通常的に使用される。このバイパスまたはフィステルは、血液透析治療のために必要とされた場合には、複数回の針アクセスを可能とするのに特に有効である。
【0005】
グラフトは、例えば織物や成形ポリマーといったような様々な材料から形成することができる。血管グラフトは、多くの場合、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)チューブから、特に、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)チューブから、形成される。PTFEを延伸または膨張することによってチューブを形成する場合、材料は、小さなフィブリルによって相互連結されたノードという、独自の微小構造から構成される。フィブリルによって隔離されたノードどうしの間のスペースは、ノード間距離(internodal distance,IND)として定義される。例えば温度や膨張速度や延伸速度といったようなePTFEチューブの製造条件を変更することにより、ノードどうしの間のスペースや、フィブリルの数や、フィブリルの直径、を変えることができる。延伸PTFEは、優れた生体適合性性と小さなトロンボゲン形成性とをという望ましい特性を示すことにより、埋設可能なプロテーゼとして、特に適切である。
【0006】
高温かつ高速で延伸されて膨張された延伸PTFE製品は、構造においてより均質である。INDが、より短く、ePTFEチューブ内に、多くのフィブリルがある。その結果、製品は、低温および/または低速で形成されたものと比較して、より強い。加えて、多孔性が、低減されている。製造条件を変更することによって、多くの場合、所望の多孔性や強度やフレキシブルさを有した最終製品を得ることができる。
【0007】
グラフト技術の目標は、代替すべき血管の天然の機能を、できるだけ厳密に、模擬することである。このためには、引裂や他の機械的損傷に対する耐性が十分に大きく、かつ、血液流通および血圧の自然的変動を受容し得るよう十分にフレキシブルかつソフトであり、かつ、プロテーゼを血管内に固定してプロテーゼを生体内において一体化させ得るため治癒が増強されていて適切な組織内方成長を可能とし得るよう十分に多孔性であるような、グラフト材料およびグラフト構造を見出す必要がある。
【0008】
ePTFEの内部構造は、多くの観点において望ましい。ePTFE内に形成されたフィブリルの直径は、血管プロテーゼに関して既に使用されている織物のファイバーの直径よりも、はるかに小さい。比較的大きなINDを有した延伸PTFEチューブは、また、PTFEよりも大きな多孔性を有している。これらの特性は、細胞の内方成長のためのより良好な基体を形成し、フレキシブルさを改良し、さらに、グラフトに大きなソフトさを付与する。その結果、ePTFEから形成されたプロテーゼは、代替すべき血管の天然的機能を、より厳密に近似することができる。したがって、ePTFE製グラフトにおいては、現在利用可能な他の材料から形成されたプロテーゼと比較して、また、非延伸のPTFEから形成されたプロテーゼと比較して、トロンボゲン形成性を低減させ得ること、内膜過形成の発生率を低減し得ること、さらに、細胞の内方成長を改良し得ること、を期待することができる。
【0009】
現在のグラフト材料およびグラフト構成では、天然の血管の模擬に関して所望の結果を完全に得ることができず、また、現在利用可能なePTFE製グラフトを使用した場合にも欠点が残されている。例えば、INDが大きくて多孔性が大きく内方成長が改良されている場合には、チューブの埋設時に使用される縫糸を保持し得ることにより、チューブの放射状の径方向引っ張り強度が低減される。そのような微孔性チューブは、軸方向引裂強度が小さい傾向がある。その結果、小さな引裂が、チューブの長手方向に沿って伝搬してしまう。したがって、最適の多孔性およびフレキシブルさと、最適の強度と、の間には、トレードオフの関係がある。
【0010】
グラフトのためにePTFEを使用することの通常的な構造的制限に加えて、血液透析のためのアクセス分流路として埋設可能なePTFE製血管グラフトを使用することにおいては、追加的な欠点がある。特に、埋設時に形成された縫合穴の自然的な閉塞を誘発することが困難である。その結果、PTFEグラフトは、外科手術後に最低でも14日間経過するまでは、血液を流通させるためには一般に使用されない。このような時間経過は、保護的な組織内方成長を形成し、これにより、縫合穴から血液が漏れることを防止するために、必要とされる。この時間経過の前にグラフトを使用すれば、グラフトを囲む血腫や偽動脈瘤や可能なグラフト閉塞といったような併発症が起こるであろう。したがって、グラフトの完全性を維持するためには、縫合穴が治癒するまで、PTFE製血管グラフトを通して血液を流すことができない。しかしながら、透析患者を治療するに際してこの時間経過分だけ待つことは、血液内における毒素の蓄積をもたらして望ましくなく、付随する問題点を引き起こす。
【0011】
血液透析のために使用されるグラフトに関連した他の問題は、グラフトを繰返し的に穿孔することによって、グラフトの完全性が悪影響を受け、いくつかの場合によっては、大きな規模での引裂を引き起こし、多くの場合、血腫を引き起こす。その場合には、少量の血液が針入射ポイントから漏洩する。ePTFE製血管グラフトの多くの構成が、これら問題点を解決するために開発された。
【0012】
例えば、米国特許第4,619,641号明細書には、2つの部材からなる同軸的な2つの管腔を有した動静脈グラフトが開示されている。このグラフトは、内側チューブ上に配置された外側チューブを備えている。内側チューブと外側チューブとの間のスペースは、自己シール性接着剤によって充填されている。自己シール性接着剤は、グラフトの穿孔によって血腫が引き起こされることを防止するのを補助する。この構成の欠点は、両チューブ間のスペースを接着剤によって完全に充填することが、フレキシブルさとソフトさとを制限していることである。
【0013】
ePTFE製チューブの径方向の引っ張り強度および軸方向の引裂強度を増大させる試みにおいては、米国特許第4,743,480号明細書には、押出プロセスを変更する方法が開示されており、これにより、ノードとフィブリルとからなるマトリクス中において、フィブリルの向きを変更することができる。
【0014】
米国特許第6,053,939号明細書には、グラフト化の後にヘパリンを放出するような単一層ePTFE製グラフトが開示されている。ノードとフィブリルとの間のスペースは、チューブの内表面を親水性とするように、化学的に処理されている。その後、組織誘起物質および抗血栓形成薬剤(例えば、ヘパリン)が、チューブおよびポアの親水性内表面に対して共有結合的に結合される。結果的に、大きな開通比率と、低減されたトロンボゲン形成性と、が得られる。この技術を使用することによって、増大した開通性が得られるけれども、透析のために使用する前には、安全のため、遅延期間が、なおも必要とされる。加えて、透析時には、グラフトの繰返し的な穿孔によって血腫が引き起こされるというリスクがなおも存在する。
【0015】
米国特許第5,192,310号明細書には、第1管腔とこの第1管腔に対して側壁を共有する少なくとも1つの第2管腔とを有している血管プロテーゼが開示されている。第2管腔は、自己シール性の非生分解性の生体適合性のポリマーが充填されている。しかしながら、このグラフトは、従来の押出方法を使用して形成することが困難である。このグラフトは、非従来的な方法を使用して、すなわち、押出プロセスと射出成形プロセスとの組合せを使用して、形成される。その結果、このグラフトの製造は、非一様なものとして形成されるものと考えられ、ノードとフィブリルとからなるパターンが不規則的であるものと考えられる。この不規則な構成は、焼結ステップ時に問題となる。すなわち、焼結ステップ時には、微小構造ないにおいて、フラクチャーや他の不整合部分が溶融してしまう。したがって、開示されたグラフト製造方法は、信頼性が低く、かつ、コスト高であり、かつ、欠陥製品を形成しそうである、ように思われる。
【0016】
したがって、望ましい多孔性と、縫合穴のところにおける引裂耐性と、針による繰返し的なアクセスによって引き起こされる穿孔を通しての血液流通に対する耐性と、を備えているようなグラフトが要望されている。
【特許文献1】米国特許第4,619,641号明細書
【特許文献2】米国特許第4,743,480号明細書
【特許文献3】米国特許第6,053,939号明細書
【特許文献4】米国特許第5,192,310号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの利点は、十分な多孔性とフレキシブルさと強度とを備えており、そのため、針の繰返し的アクセスを必要とする手順において使用し得るとともに、自己シール能力を備えているような、血管グラフトを提供することである。
【0018】
本発明の他の利点は、本発明による血管グラフトが、グラフトの完全性に悪影響をもたらすことなく、埋設後において短い経過時間でもって使用可能とされていることである。
【0019】
本発明のさらに他の利点は、本発明による血管グラフトが、容易にかつ信頼性高く製造し得ることである。
【0020】
本発明の他の利点は、本発明による血管グラフトが、優秀な模擬能力と優秀な解放特性とを提供し得ることである。
【0021】
本発明の他の利点は、薬剤搬送機能を有した自己シール型グラフトを提供し得ることである。
【0022】
要約すれば、本発明は、埋設可能なグラフトを提供するものであって、第1外壁表面と第1内壁表面とを有するとともに、血液に接触する第1管腔を形成している、第1チューブ状ボディと;第2外壁表面と第2内壁表面とを有している第2チューブ状ボディと;を具備している。第2チューブ状ボディは、第1チューブ状ボディの周縁回りに配置され、さらに、第1チューブ状ボディとの間にスペースを形成しており、さらに、第1チューブ状ボディに対して少なくとも1つのリブを介して連結されている。
【0023】
本発明は、また、埋設可能なグラフトであって、第1外壁表面と第1内壁表面とを有するとともに、血液に接触する第1管腔を形成し、さらに、ePTFEから形成された、第1チューブ状ボディと;第2外壁表面と第2内壁表面とを有するとともに、第1チューブ状ボディの周縁回りに配置され、さらに、第1チューブ状ボディとの間にスペースを形成し、さらに、ePTFEから形成された、第2チューブ状ボディと;を具備しているグラフトを提供する。第1チューブ状ボディと第2チューブ状ボディとは、少なくとも1つのリブを介して連結されており、リブは、複数の第2管腔を形成している。自己シールポリマー材料を、複数の第2管腔の少なくとも1つ内に配置することができる。
【0024】
本発明は、また、自己シール型のePTFE製グラフトの形成方法を提供する。この方法においては、(1)PTFEペーストから、第1管腔と、周縁に配置されかつ血液に対して非接触のものとされた少なくとも1つの第2管腔と、を有したチューブ状形状へと、PTFE構造を予成形し、(2)血液非接触第2管腔を開放状態に維持し得るようなスペーサデバイスを有したダイを使用することによって、PTFE構造予成形体を押し出し、これにより、マルチ管腔チューブを形成する。
【0025】
加えて、埋設可能なグラフトを提供するものであって、第1外壁表面と第1内壁表面とを有するとともに、血液に接触する管腔を形成している、第1の血液接触部材と;第2外壁表面と第2内壁表面とを有している第2の血液非接触部材と;を具備している。血液非接触部材は、血液接触部材の周縁回りにおいて少なくとも部分的に非同心的に配置され、これにより、血液接触部材との間に少なくとも1つの血液非接触管腔を形成している。第1外壁と第2内壁との少なくとも一部が、グラフトの長手方向に沿って接触部分を形成しており、両部材が、接触部分に沿ってラミネートされている。
【0026】
さらに、本発明は、また、グラフトを形成するための方法を提供するものであって、この方法においては、(1)PTFEペーストから、第1内壁表面と第1外壁表面とを有しなおかつ第1血液接触管腔を形成する第1チューブ状部材を押し出し、(2)PTFEペーストから、第2内壁表面と第2外壁表面とを有した第2チューブ状部材を押し出し、(3)この第2チューブ状部材を、グラフトの長手方向に沿って第1チューブ状部材の周囲に非同心的に配置し、この場合、第1外壁の一部と第2内壁の一部とを、互いに接触させ、(4)接触した部分どうしをラミネートする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、添付図面を参照しつつ、以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。添付図面においては、同様の部材には同じ符号が付されている。
【0028】
本発明によるプロテーゼは、第1チューブ状構造と第2チューブ状構造との間の複数の第2管腔を有している埋設可能な自己シール型のチューブ状構造を備えている。望ましくは、プロテーゼは、優れた生体適合性性を示す押し出されたPTFEあるいは他の同様の材料から形成される。
【0029】
本発明においては、第1チューブ状ボディは、血液接触管腔を形成する。第2チューブ状構造は、第1チューブ状ボディの外壁のところにおいて、第1チューブ状構造回りにおいて第1チューブ状構造に対して一体化される。第2チューブ状ボディの内壁の一部と、第1チューブ状ボディの外壁の一部とは、これらチューブ状ボディ間において、少なくとも1つの第2管腔を形成している。第2管腔は、非生分解性の自己シール性の弾性材料を備えることができる。付加的には、薬理学的にあるいは生理学的に活性な薬剤を、グラフト内に供給することができ、患者に対して搬送することができる。
【0030】
本発明の有利な見地においては、デバイスは、患者の動脈システムまたは静脈システム内へと埋設される血管プロテーゼとされ、血流は、第1管腔によって確立することができる。
【0031】
さて、図1には、本発明によるマルチ管腔グラフトが示されている。グラフトは、符号2によって全体的に示された長尺チューブ状構造であって、内壁表面6と外壁表面8とを有した第1チューブ状ボディ4を備えている。内壁表面6は、血液接触用の第1管腔10を形成している。第1チューブ状ボディ4は、複数のリブ12を備えており、各リブ12は、径方向頂点14を有している。内壁表面18と外壁表面20とを有した第2チューブ状ボディ16が、第1チューブ状ボディ4の周縁回りに配置されている。リブ12の頂点14は、第2チューブ状ボディ16の内壁表面18の一部に対して接触しておりかつ一体化されている。第1チューブ状ボディ4の外壁8と第2チューブ状ボディ16の内壁18とは、リブ12どうし間においては、複数の第2管腔22を形成している。これら第2管腔22は、血液とは接触しない。第2管腔22の数には、何らの制限はない。
【0032】
図1は、4つの第2管腔を示しているけれども、グラフト内に存在する第2管腔の数には、何らの制限はない。同様に、第2管腔の形状に関しても、何らの制限はない。しかしながら、第2管腔としては、狭い横断面積が好ましい。それは、グラフトの横断面サイズを、代替すべき天然の血管をできるだけ近似したものとして、維持し得るからである。リブは、管腔どうしを隔離するに際して薄いものとすることができる、あるいは、構造的支持機能をももたらし得るよう比較的厚いすることができる。第1チューブ状ボディおよび第2チューブ状ボディを形成する材料の相対的な厚さは、互いに変更することができる。加えて、リブおよび第2管腔のサイズおよび形状は、互いに同じものとも、また、互いに異なるものとも、することができる。
【0033】
さて、図2には、本発明によるマルチ管腔グラフトの代替可能な実施形態が示されている。先の実施形態の場合と同様に、グラフト2は、内壁表面6と外壁表面8とを有した第1チューブ状ボディ4を備えている。内壁表面6は、血液接触用の第1管腔10を形成する。内壁表面18と外壁表面20とを有した第2チューブ状ボディ16が、第1チューブ状ボディ4の周縁回りに配置されている。この実施形態においては、第1チューブ状ボディ4は、第2チューブ状ボディ16の内部において、少なくとも部分的に非同心的に配置されている。これにより、第1チューブ状ボディ4の外壁表面8の一部と、第2チューブ状ボディ16の内壁表面18の一部とが、互いに接触しており、例えば接着剤46の使用によって、互いに一体化されている。互いに接触していない壁部分どうしは、第2管腔22を形成している。この実施形態においては、実質的に三日月形の単一の第2管腔22が存在している。
【0034】
本発明の他の見地においては、グラフトには、第3管腔を有した管腔の複数の層が設けられる。この見地においては、グラフトは、第1管腔に対するアクセスが、第2管腔および第3管腔の少なくとも1つを通して行い得るように、構成することができる。
【0035】
さて、図3には、本発明によるマルチ管腔グラフトの他の代替可能な実施形態が示されている。グラフトの構造は、図1の実施形態に関して上述したものと同様である。この実施形態においては、4つの第2管腔22が、第1管腔10の周縁回りにおいて同心的に配置されている。加えて、第3チューブ状ボディ24が、内壁表面26と外壁表面28とを有するものとして、設けられている。第3チューブ状ボディ24は、第2チューブ状ボディ16の周縁回りにおいて部分的に非同心的に配置されている。これにより、第3チューブ状ボディ24の内壁表面26の一部は、第2チューブ状ボディ16の外壁表面20の一部に対して接触しているとともに、第2チューブ状ボディ16の外壁表面20の一部に対して接着剤46によって一体化されている。互いに接触していない壁部分どうしが、第3管腔30を形成している。この実施形態においては、第2管腔22は、第1管腔10と第3管腔30との中間に位置している。
【0036】
本発明のこの特別の見地においては、皮膚またはアクセスポイントに対して最も接近している第3管腔は、自己シール性の材料を備えている。一方、血液が流通している第1管腔に対してより接近している第2管腔は、自己シール材料、および/または、生理学的にまたは薬理学的に活性な薬剤を備えることができる。
【0037】
複数のリブによって互いに連結されている血液接触用チューブ状ボディおよびチューブ状ボディの構成は、任意の適切な組合せでもって使用し得ることは、理解されるであろう。したがって、チューブ状ボディどうしは、リブによる連結によって全体的に、あるいは、非同心的な壁表面接触によって全体的に、あるいは、それらの任意の組合せによって、連結することができる。
【0038】
1つの有利な見地においては、第1管腔は、内部を通して血液を流通させ得るよう、十分に大きな内径(ID)を有している。このことは、第1管腔のIDが、用途に依存するものの、典型的には約3mm〜約24mmであることを意味している。
【0039】
本発明のチューブ状構造は、微小多孔性構造を形成し得るような任意の適切な生体適合性材料から形成することができる。適切な材料はには、ポリイミド、シリコーン、ポリウレタン、ポリウレタンエーテル、ポリウレタンエステル、ポリウレタン尿素、および、これらの混合物およびコポリマーがある。望ましい材料には、ポリエチレンテレフタレート(ダクロン(登録商標)という商標名のポリエステル)や、例えばマンドレルによって紡績されたポリウレタンといったような他の合成ポリエステルファイバや、シリコーン製弾性ファイバー、がある。この目的にために有効であるような特に望ましいポリマー材料には、フッ素系ポリマーがあり、例えば、延伸されたあるいは延伸されていないポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がある。複数のチューブ状ボディのうちの少なくとも1つは、望ましくは、PTFEから形成され、より望ましくは、少なくとも第1チューブ状ボディが、ePTFEから形成される。
【0040】
本発明の1つの有利な見地においては、グラフトの管腔およびリブを形成する材料は、およそ1μm〜200μmというノード間距離を有している。さらに有利には、ノード間距離は、およそ10μm〜100μmとされる。
【0041】
1つの有利な見地においては、本発明によるあるグラフトは、縫合ポイントにおいて所望の多孔性と径方向引っ張り強度と引裂耐性とを有したPTFEを使用して形成される。有利には、少なくとも第1チューブ状ボディは、約40μm以上というノード間距離(IND)を有しているePTFEから形成される。この範囲のINDを有したグラフトは、一般に、より大きなポアが内部血液接触表面に沿って内膜層の形成を促進することにより、より長期にわたっての開通性を示す。約40μm未満というINDを有したチューブは、より小さな治癒特性を示すものの、優れた径方向引っ張り強度と縫合保持強度とを示し、本発明の範囲内に属するものである。
【0042】
本発明における内側チューブ状ボディおよび外側チューブ状ボディは、様々な方法によって形成することができる。例えば、ラム押出といったような押出プロセスや;溶媒キャストやフィルムキャストといったようなポリマーキャスト技術や;ブロー成形や射出成形や回転造形といったような成形技術や;ポリマー材料に関して有効であるような他の熱成形技術を使用することができ、使用される材料のタイプおよび所望の薄膜特性に応じて最も良好に機能するものが選択される。
【0043】
多孔性のPTFEチューブを一般的に製造する1つの方法は、例えば、米国特許第3,953,566号明細書や、米国特許第3,962,153号明細書や、米国特許第4,973,609号明細書、に開示されている。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。一般に、PTFEチューブは、4つのステップでもって形成することができる。すなわち、PTFEペーストの準備ステップと、チューブの押出ステップと、チューブの膨張ステップと、チューブの焼結ステップと、によって形成することができる。要約すれば、ePTFEペーストの分散は、例えばF-104,F-103 Virgin PTFE Fine Powder(Dakin America, Orangeburg, NY)といったような微細なバージンのPTFE製粉末に対して、例えば無臭のミネラルスピリットあるいはナフサといったようなつまりIsopar(登録商標)(Exxon Chemical Co., Houston, TX)といったような液体潤滑剤を混合し、これにより、PTFEペーストを形成する。これにより、所望の粘度を有したペーストを得ることができる。PTFEペーストは、チューブ状押出ダイを通過させるか、あるいは、マンドレル上にコーティングし、これにより、チューブ状物品を形成する。次に、湿潤状態の押出物品を乾燥させ、これにより、室温において、あるいは、潤滑剤の乾燥温度近傍の温度において、潤滑剤を蒸発させる。PTFE樹脂またはPTFEペーストを形成して乾燥させた後に、所望のチューブ形状を形成しつつ、膨張や延伸を行うことができる。延伸とは、形成された樹脂の引き伸ばしを意味しており、膨張とは、長手方向軸に対して直交する向きに、形成された樹脂を拡径させることを意味している。延伸/膨張ステップは、327℃未満の温度において、典型的には、250〜326℃という温度範囲において、少なくとも2:1という延伸比率でもって、行われる。最後に、チューブ状押出物品は、約350〜370℃という温度でもって加熱することによって、焼結される。これにより、ポリマーが、アモルファス状態でロックされる。
【0044】
チューブ状ボディは、チューブ状ボディを形成する特定の材料に応じて、様々な方法でもって、リブ頂点のところにおいてまた壁表面接触ポイントのところにおいて、一体化を形成することができる。一般に、図1〜図4において明瞭に示すように、第1チューブ状ボディ4および第2チューブ状ボディ16は、それらの接触ポイントのところにおいて、互いにラミネートされる。多くの技術を使用して、第1チューブ状ボディ4と第2チューブ状ボディ16とをラミネートすなわち結合することができる。当該技術分野において公知であるような熱硬化技術や接着溶接技術や一様な力を印加する技術や他の結合技術を使用することによって、接触ポイントのところにおいて、すなわち、リブ12の頂点14のところにおいてあるいは接触壁表面8,18のところにおいて、チューブ状ボディ4,16を結合すなわち固定することができる。これら結合技術の各々においては、接触ポイントを一体化することが想定される。
【0045】
これに代えて、押出プロセスの最中に、チューブ状ボディどうしを一体化させることができる。この場合、望ましくは、グラフトのためのマンドレルやダイやモールドは、均等な分散をもたらすとともに、所望形状へとPTFEペーストを形成し得るように、構成される。これにより、グラフトの全体にわたってノードおよびフィブリルからなる構造が一様となっているようなグラフトを形成することができる。
【0046】
本発明の1つの見地においては、1つまたは複数のリブを備えている本発明によるチューブ状構造は、最終的なグラフトの形状を有した予成形PTFE構造を押出成形することによって、延伸したPTFEから形成することができる。押出は、ダイを使用しておりなわれ、ダイは、所望数のリブを形成し得るような適切な数のスペーサを有している。図6は、図1に図示されたグラフトに対応したような、例示としてのダイ44を示す斜視図である。ダイ44は、当該技術分野において周知であって利用可能であるような材料から製造することができる。中空シリンダ(図示せず)の形態とされたダイモールドが、ダイの周囲に配置され、物品は、ダイを通過することによって、グラフトを形成する。
【0047】
ePTFEから形成されたグラフトにおいては、延伸速度および延伸比率が、予測可能な態様で最終製品の多孔性に影響を与える。これにより、指定された多孔性を有したプロテーゼデバイスを形成することができる。延伸速度とは、樹脂を延伸する際の毎秒あたりの延伸パーセントを意味しており、延伸比率とは、延伸樹脂の最終長さと延伸樹脂の初期長さとの間の関係を意味している。例えば、押出PTFEチューブは、2対1という延伸比率でもって、かつ、60という延伸速度でもって、延伸され、これにより、およそ40という多孔性が得られる。この多孔性は、無単位の物理量であって、米国材料試験協会(ASTM)の特別技術刊行物No.898に基づいて決定される。例えば、2:1〜6:1という延伸比率かつ60パーセント/秒という延伸速度においては、約40〜約90という多孔性が得られる。この延伸比率において、140パーセント/秒という延伸速度であると、約60〜約85という多孔性が得られる。最後に、この同じ延伸比率において、900パーセント/秒という延伸速度の場合には、約65〜約85という多孔性が得られる。
【0048】
ノード間距離および多孔性に加えて、PTFEのノードおよびフィブリルからなるネットワークという幾何形状を、延伸時および膨張時に制御することができる。一軸延伸の場合には、すなわち、押出方向に沿った形成PTFE樹脂の延伸の場合には、ノードが延伸され、これにより、各ノードのより長軸が、延伸方向に対して垂直を向くものとされる。したがって、フィブリルは、延伸方向に対して平行となる。二軸延伸においては、この状況に加えて、PTFE樹脂が径方向にも延伸され、これにより、複合した多孔性を有したプロテーゼデバイスを形成することができる。一軸延伸の場合と同様に、径方向の延伸速度および延伸比率は、プロテーゼデバイスにおいて得られる多孔性に影響を与える。
【0049】
本発明の特に有利な見地においては、ePTFEのノードおよびフィブリルからなるネットワークという幾何形状は、延伸方向に対して垂直に配向したノードを備えている。特に好ましい見地においては、ノードは、延伸方向に対して一様に垂直に配向している。
【0050】
本発明の他の見地においては、1つまたは複数の第2管腔は、望ましくは、非生分解性ポリマー材料を備えている。非生分解性ポリマー材料は、穿孔サイトをシールし得るよう針によって穿孔された後に自己圧縮する。この材料は、本発明のグラフトにおいて、自己シール機能をもたらす。望ましくは、自己シール材料は、生体適合性である。
【0051】
様々な材料を、本発明における自己シール性ポリマー材料として、使用することができる。様々な態様で自己シール材料として使用し得るいくつかの材料には、限定するものではないけれども、熱可塑性弾性体、ある種のシリコーン、シリコーンゴム、合成ゴム、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、および、様々なフッ素系ポリマー、といったようなポリマーやコポリマーがある。フッ素系ポリマーには、限定するものではないけれども、PTFE、ePTFE、FEP(フッ素で処理されたエチレンプロピレンコポリマー)、および、PFA(polyfluorinated alkanoate)、がある。
【0052】
さらに、グラフトの外面あるいは第2管腔の外面は、例えばフッ素ゴムやシリコーンゴムやウレタンゴムやアクリルゴムやあるいは天然ゴムといったような弾性材料によってコーティングすることができる。これにより、自己シール機能をもたらすことができる。フッ素ゴム材料には、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーや、フッ化ビニリデンとクロロトリフルオロエチレンとのコポリマーや、テトラフルオロエチレンとプロピレンとのコポリマー、がある。
【0053】
好ましくは、自己シール性のポリマー材料は、架橋される。例えば、フッ素ゴムは、酸受容体と架橋剤と、望まれれば架橋前にフィラーと、混合することができる。酸受容体の例には、酸化マグネシウムや、酸化カルシウム、がある。架橋剤の例には、脂肪族のポリアミン派生物や、有機過酸化物や、イソシアン酸塩、がある。典型的な合成組成物は、100重量部分というフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーと、15重量部分という酸化マグネシウムと、0.5〜3重量部分という脂肪族ポリアミン派生物と、を備えている。好ましくは、材料は、生体内での劣化を防止し得るよう、架橋状態とされる。
【0054】
自己シール材料は、第1および第2チューブ状ボディの少なくとも一方の表面に対して層を付着することにより、グラフト内へと導入することができる。付着は、機械的な手段や、化学的な手段(接着剤の使用)や、熱接着や、あるいは、これらの組合せによって引き起こすことができる。特に熱可塑性エラストマーといったようないくつかのポリマーは、加熱することによって、ePTFE製チューブ状構造に対しての付着をもたらし得るに十分な程度に粘着性のものとなる。
【0055】
使用時には、自己シール成分は、穿孔方向に力を作用させることにより機能することができる。自己シール材料が、第1チューブ状ボディと第2チューブ状ボディとの双方に対して付着される場合、一方また双方の層が、穿孔サイトをシールする。
【0056】
また、自己シール材料として、流動可能なポリマー材料を備えることも、本発明の範囲内である。ここでは、流動可能という用語は、変形または穿孔によって形成された空隙部分を充填するようなアモルファス材料を意味している。
【0057】
また、様々な流動可能ポリマー層を、第2管腔と第3管腔との一方または双方内において使用することができ、これにより、自己シール型のグラフトを提供することができる。流動可能なポリマー層は、アモルファス的特性を有することによって、グラフトをシールする。すなわち、グラフトの穿孔後に開いたまま残された任意のスペースを充填することができる。流動可能ポリマー層は、開放状態のスペースを単に充填することができる。あるいは、流動可能ポリマー層は、穿孔された第2管腔内へと付加的に侵入することができ、これにより、チューブ状ボディの穿孔によって残されたすべての空隙部分を充填することができる。
【0058】
本発明において自己シールポリマー材料として使用可能であるような流動可能ポリマーの例には、未硬化のポリマーや、部分的に硬化されたポリマー、がある。ポリマーは、多くの活性化手段によって硬化することができる。活性化手段は、グラフトの穿孔後に硬化を引き起こし、これにより、ポリマーの硬化によってシールをもたらす。そのような流動可能層のための材料の例には、限定するものではないけれども、例えば天然ゴムや合成ゴムといったような未硬化のエラストマーや、例えばアラビアゴムといったような天然ゴム、がある。流動可能層において特に有効な材料には、未硬化のブチルゴムとして公知であるような、未架橋のポリイソブチレンがある。
【0059】
本発明内において使用し得る他の流動可能ポリマー層には、ゲルがある。ゲルは、一般に、ポリマーの懸濁液またはエマルジョンであり、液体状態と固体状態との間の中間的な特性を有している。ヒドロゲルも、また、本発明において使用可能である。ヒドロゲルとは、溶解することなく水内で膨潤するようなポリマー材料を意味しており、その構造内に大量の水を保持することができる。本発明において使用されるゲルおよびヒドロゲルは、生分解性のものとも、また、非生分解性のものとも、することができる。それらは、また、ゲル内に懸濁されたポリマービーズとすることができ、グラフトにシールをもたらすことができる。本発明において使用し得るゲルのいくつかの例には、限定するものではないけれども、シリコーンゲル、アラビアゴム、および、低分子量エチレンと酢酸ビニルとからなるポリマー、がある。
【0060】
適切なゲルとしては、さらに、天然材料から形成されたヒドロゲルがあり、限定するものではないけれども、ゼラチン、コラーゲン、アルブミン、カゼイン、アルギン、カルボキシメチルセルロース、カラギーナン、フルセララン、アガロース、ガール、イナゴマメゴム、アラビアゴム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシアルキルメチルセルロース、ペクチン、部分的に脱アセチル化されたキトサン、アミロースとアミロペクチンとを含むスターチやその派生物、キサンタン、ポリリシン、ヒアルロン酸、および、これらの派生物や塩類混合物、がある。
【0061】
有利な見地においては、生理学的なあるいは薬理学的に活性な薬剤を、本発明によるグラフトに対してコーティングしたり他の方法で組み込んだりすることができる。任意の薬剤あるいはバイオ治療薬剤を、本発明によるグラフトの管腔表面上にコーティングしたりあるいは管腔内に組み込んだりすることができる。適切な薬剤またはバイオ治療薬剤の例には、限定するものではないけれども、耐トロンボゲン形成薬剤や、抗生物質や、抗腫瘍薬剤や、細胞周期制限薬剤や、これらの同族体や派生物やフラグメントや薬理学的塩類や、これらの組合せ、がある。
【0062】
有効な耐トロンボゲン形成薬剤には、例えば、ヘパリンや、ヘパリン硫酸塩や、ヒルジンや、コンドロイチン硫酸塩や、デルマタン硫酸塩や、ケラチン硫酸塩や、ウロキナーゼとストレプトキナーゼとを含む細胞溶解剤や、これらの同族体や類似物やフラグメントや派生物や薬理学的塩類がある。
【0063】
有効な抗生物質には、例えば、ペニシリンや、セファロスポリンや、バンコマイシンや、アミノグリコシドや、キノロンや、ポリミクシンや、エリスロマイシンや、テトラサイクリンや、クロラムフェニコールや、クリンダマイシンや、リンコマイシンや、スルホンアミドや、それらの同族体や類似品やフラグメントや薬理学的塩類や、これらの組合せ、がある。
【0064】
有効な抗腫瘍薬剤には、例えば、パクリタクセルや、デセタクセルや、メクロレタミンを含むアルキル化剤や、クロラムブチルや、シクロフォスファミドや、メルファランや、イフォスファミドや、メトトレキサートと6−メルカプトプリンと5−フルオロウラシルとシタラビンとを含む代謝拮抗剤や、ビンブラスチンとビンクリスチンとエトポシドとを含むプラントアルカロイドや、ドクソルビシンとダウノマイシンとブレオマイシンとマイトマイシンとを含む抗生物質や、カルムスチンとロムスチンとを含むニトロスレアスや、シスプラチンを含む無機イオンや、インターフェロンを含む生物学的応答調節物質や、アスパラギナーゼを含む酵素や、タモキシフェンとフルタミドとを含むホルモンや、これのそれらの同族体や類似物やフラグメントや派生物や薬理学的塩類や、これらの組合せ、がある。
【0065】
有効な抗ウイルス薬剤には、例えば、アマンタジンや、リムアマンタジンや、リバビリンや、イドクルリジンや、ビダラジンや、トリフリジンや、アシクロビルや、ガンシクロビルや、ジドブジンや、フォスカーネットや、インターフェロンや、これらの同族体や類似物やフラグメントや派生物や薬理学的塩類や、これらの組合せ、がある。
【0066】
薬剤は、様々な方法で供給することができる。例えば、薬剤が結合した官能基を含有したモノマーを使用してグラフトを形成することができる。グラフトは、適切なバッファー内において、薬剤の混合物に対してディップコーティングすることができる。薬剤を官能基と反応させた後に、グラフトを、乾燥させることができる。この方法は、例えば、米国特許第6,358,557号明細書に開示されている。これに代えて、グラフト材料の多孔性を使用することにより、多孔性の内部に治療薬剤を保持することができる。治療薬剤は、グラフトに対して、圧力下において治療薬剤溶液を添加することによって、添加することができる。また、1つまたは複数の第2管腔に対しておよびチューブ状ボディの壁表面の穿孔部分に対して、ゲルを含有している治療薬剤を添加することができ、これにより、第1管腔内へとゲルをゆっくりと供給することができる、あるいは、経時的にグラフトの外面に対して供給することができる。
【0067】
さて、図4には、本発明によるマルチ管腔グラフト2が示されている。グラフト2は、複数の第2管腔22の1つ内に、自己シールポリマー材料32を備えている。他の第2管腔22は、静脈的に患者を治療するための第1薬剤34を備えている。グラフトは、さらに、第2管腔22と第2チューブ状ボディ16との間に配置された第2ポア38を備えている。他の薬剤40は、第2ポア38を介して、患者に供給することができる。自己シールポリマー材料と薬剤とが、個別の管腔内に存在しているけれども、単一の管腔内に1つまたは複数の薬剤と自己シールポリマー材料とを存在させることも可能であることは、理解されるであろう。例えば、自己シールゲルによって充填されている管腔に関し、第2管腔のうちの、第1管腔表面に対して隣接している表面を、溶解可能な徐放性薬剤によってコーティングすることができる。徐放性薬剤は、血液流内に流入することができる。その一方で、自己シールゲルは、その機能を行う。薬剤の徐放性は、必ずしも、薬剤搬送用のポア構造に依存しない。薬剤は、第2管腔の非接触表面に浸透させておくことができる。
【0068】
本発明の他の見地においては、グラフトは、グラフトの1つまたは複数の外面上にまたは内面上に、例えば織物層またはスリーブといったような支持部材を備えている。この目的に際して適切な織物には、例えば、ポリエステルあるいはポリエチレンテレフタレート(DACRON(登録商標))といったような生体適合性ニット材料がある。さて、図5には、マルチ管腔グラフト2をカバーしている織物スリーブ42が示されている。織物スリーブ42は、インプラントに対して付加的な強度をもたらすように機能する、および/または、縫合穴に対して耐性を付与するように機能する。
【0069】
本発明によるグラフトは、有利には、例えば、自己シール型のグラフトデバイスを埋設する際に使用することができる。これにより、必要としている患者内において動静脈(AV)経路の一部を代替または補強することができる。この方法においては、外科医あるいは他の資格者は、本発明によるグラフトを導入するための所望領域を、外科的に露出する。例えば、所望領域は、患者の動静脈システム内における閉塞箇所あるいは脆弱箇所とすることができる、あるいは、透析患者のAVバイパスのためのサイトとすることができる。患者の血液流の中断を行い、デバイスを外科的に埋設し、所定場所において縫合するかあるいは他の固定を行う。これにより、第1管腔を通しての血液流通が確立される。グラフトを所定位置に配置した後に、第2管腔を通して、套管や静脈内ニードル等を使用して、血液流に対してアクセスすることができる。套管またはニードルがを引き抜いた時には、第2管腔上の自己シール弾性材料が、ニードルによって形成された穿孔に対しての血液のアクセスを阻止し、これにより、血液がアクセス領域から漏洩することを防止することができる。
【0070】
本発明によるグラフトは、特に、透析患者のためのAVバイパスとして使用するのに適している。グラフトは、縫合穴のところにおける漏洩に対して耐性を有している。なぜなら、縫合穴の多くが、自己シール材料を備えている第2管腔を介して形成されるからである。これにより、縫合穴からの漏洩を防止する経過時間を待つ必要なしに、インプラントの使用を可能とする。さらに、大きな針穴のニードルがデバイスに対して繰返し的にアクセスされた場合であってさえも、インプラントは、第1管腔からの血液漏出に対して耐性を有している。追加的に、グラフトに対して薬剤搬送という見地が組み込まれた場合には、傷害部位において適切な治療薬剤を使用することができ、速くかつ信頼性高い治癒を促進することができる。
【0071】
本発明は、本発明の精神および範囲を逸脱することなく、他の態様で実施することができる。したがって、上記実施形態は、単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲に示されており、上記実施形態に対する変形を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明による埋設可能グラフトを示す斜視図である。
【図2】本発明の代替可能な実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態を示す斜視図であって、第3管腔を備えている。
【図4】本発明の他の実施形態を示す斜視図であって、本発明に基づき、自己シール性の弾性材料と、複数の薬剤と、第2管腔内の薬剤搬送ポアと、を備えている。
【図5】本発明の他の実施形態を示す斜視図であって、本発明に基づき、グラフトの外周回りに織物材料を備えている。
【図6】図1に示すグラフトを形成するために使用されるダイを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0073】
2 マルチ管腔グラフト
4 第1チューブ状ボディ
6 内壁表面
8 外壁表面
10 第1管腔
12 リブ
16 第2チューブ状ボディ
18 内壁表面
20 外壁表面
22 第2管腔
24 第3チューブ状ボディ
30 第3管腔
32 自己シールポリマー材料
34 第1薬剤
38 第2ポア
40 他の薬剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋設可能なグラフトであって、
第1外壁表面と第1内壁表面とを有するとともに、血液に接触する第1管腔を形成している、第1チューブ状ボディと;
第2外壁表面と第2内壁表面とを有するとともに、前記第1チューブ状ボディの周縁回りに配置され、さらに、前記第1チューブ状ボディとの間にスペースを形成しており、さらに、前記第1チューブ状ボディに対して少なくとも1つのリブを介して連結されている、第2チューブ状ボディと;
を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項2】
請求項1記載のグラフトにおいて、
前記両チューブ状ボディの少なくとも一方が、フッ素系ポリマー、ポリイミド、シリコーン、ポリウレタン、ポリウレタンエーテル、ポリウレタンエステル、ポリウレタン尿素、および、これらの混合物およびコポリマーのいずれかから形成されていることを特徴とするグラフト。
【請求項3】
請求項1記載のグラフトにおいて、
前記両チューブ状ボディの少なくとも一方が、延伸PTFEから形成されていることを特徴とするグラフト。
【請求項4】
請求項3記載のグラフトにおいて、
前記グラフトが、前記グラフトの全体にわたって、実質的に一様な間隔とされかつ実質的に一様な向きとされたノードとフィブリルとからなるePTFE構造を備えていることを特徴とするグラフト。
【請求項5】
請求項1記載のグラフトにおいて、
さらに、前記スペース内に、自己シールポリマー材料を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項6】
請求項5記載のグラフトにおいて、
前記自己シールポリマー材料が、弾性ポリマーと弾性コポリマーとからなるグループの中から選択されたものとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項7】
請求項5記載のグラフトにおいて、
前記自己シールポリマー材料が、シリコーンゴムとポリウレタンとポリエーテルとからなるグループの中から選択されたものとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項8】
請求項7記載のグラフトにおいて、
前記自己シールポリマー材料が、流動可能な層を備えていることを特徴とするグラフト。
【請求項9】
請求項8記載のグラフトにおいて、
前記自己シールポリマー材料が、ゲルを備えていることを特徴とするグラフト。
【請求項10】
請求項9記載のグラフトにおいて、
前記ゲルが、シリコーンゲル、アラビアゴム、および、低分子量エチレンと酢酸ビニルとからなるポリマー、からなるグループの中から選択されたものとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項11】
請求項9記載のグラフトにおいて、
前記流動可能な層が、未硬化ポリマーを備えていることを特徴とするグラフト。
【請求項12】
請求項9記載のグラフトにおいて、
前記流動可能な層が、少なくとも部分的に硬化されたポリマーを備えていることを特徴とするグラフト。
【請求項13】
請求項9記載のグラフトにおいて、
前記流動可能な層が、未架橋のポリイソブチレンとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項14】
請求項1記載のグラフトにおいて、
前記第1外壁表面と前記第2内壁表面と前記リブとが、複数の第2管腔を形成していることを特徴とするグラフト。
【請求項15】
請求項14記載のグラフトにおいて、
さらに、前記複数の第2管腔の少なくとも1つ内に、自己シールポリマー材料を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項16】
請求項15記載のグラフトにおいて、
2〜5個のリブによって前記複数の第2管腔が形成されていることを特徴とするグラフト。
【請求項17】
請求項15記載のグラフトにおいて、
さらに、前記第1管腔と前記複数の第2管腔との少なくとも一方の表面内にまたは表面上に、少なくとも1つの薬剤が存在していることを特徴とするグラフト。
【請求項18】
請求項17記載のグラフトにおいて、
前記薬剤が、キャリア内に存在し、
前記自己シールポリマー材料が、前記複数の第2管腔との少なくとも1つ内に存在し、
前記薬剤が、前記少なくとも1つの第2管腔とは異なる少なくとも1つの前記第2管腔内に存在していることを特徴とするグラフト。
【請求項19】
請求項15記載のグラフトにおいて、
さらに、前記第1管腔に対して前記薬剤を搬送するための薬剤搬送手段を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項20】
請求項19記載のグラフトにおいて、
前記薬剤搬送手段が、前記第1チューブ状ボディの一部内に形成された複数のポアを備え、
前記第1チューブ状ボディの前記一部が、薬剤を含有した前記第2管腔を形成していることを特徴とするグラフト。
【請求項21】
請求項20記載のグラフトにおいて、
前記薬剤が、抗凝血剤と、抗生物質と、耐トロンボゲン形成薬剤と、抗炎症剤と、麻酔剤と、抗凝固剤と、血管細胞成長促進剤と、血管細胞成長阻害剤と、コレステロール低下剤と、からなるグループの中から選択されたものとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項22】
請求項18記載のグラフトにおいて、
さらに、前記薬剤を前記グラフトの外部空間へと供給するための薬剤搬送手段を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項23】
請求項22記載のグラフトにおいて、
前記薬剤搬送手段が、前記第2チューブ状ボディの一部内に形成された複数のポアを備え、
前記第2チューブ状ボディの前記一部が、薬剤を含有した前記第2管腔を形成していることを特徴とするグラフト。
【請求項24】
請求項23記載のグラフトにおいて、
前記薬剤が、抗凝血剤と、抗生物質と、耐トロンボゲン形成薬剤と、抗炎症剤と、麻酔剤と、抗凝固剤と、血管細胞成長促進剤と、血管細胞成長阻害剤と、コレステロール低下剤と、からなるグループの中から選択されたものとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項25】
請求項1記載のグラフトにおいて、
さらに、前記第1内壁表面と前記第2外壁表面との少なくとも一方上に配置された支持材料を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項26】
請求項25記載のグラフトにおいて、
前記支持材料が、弾性材料と織物とからなるグループの中から選択されたものとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項27】
請求項26記載のグラフトにおいて、
前記支持材料が、織物とされ、
さらに、前記グラフトに対して前記織物を結合させるための結合剤を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項28】
請求項27記載のグラフトにおいて、
前記織物が、ポリエチレンテレフタレートとされていることを特徴とするグラフト。
【請求項29】
請求項1記載のグラフトにおいて、
さらに、第3内壁表面と第3外壁表面とを有した第3チューブ状ボディを具備し、
この第3チューブ状ボディが、前記第2チューブ状ボディの周縁回りに配置されていて、前記第2チューブ状ボディとの間にスペースを形成しており、
前記第2チューブ状ボディと前記第3チューブ状ボディとが、少なくとも1つの第2リブを介して連結されていることを特徴とするグラフト。
【請求項30】
埋設可能なグラフトであって、
第1外壁表面と第1内壁表面とを有するとともに、血液に接触する第1管腔を形成し、さらに、ePTFEから形成された、第1チューブ状ボディと;
第2外壁表面と第2内壁表面とを有するとともに、前記第1チューブ状ボディの周縁回りに配置され、さらに、前記第1チューブ状ボディとの間にスペースを形成しており、さらに、前記第1チューブ状ボディに対して少なくとも1つのリブを介して連結され、これにより、複数の第2管腔を形成し、さらに、ePTFEから形成された、第2チューブ状ボディと;
前記複数の第2管腔の少なくとも1つ内に配置された自己シールポリマー材料と;
を具備していることを特徴とするグラフト。
【請求項31】
埋設可能なグラフトの形成方法であって、
前記グラフトが、
第1外壁表面と第1内壁表面とを有するとともに、血液に接触する第1管腔を形成している、第1チューブ状ボディと;
第2外壁表面と第2内壁表面とを有するとともに、前記第1チューブ状ボディの周縁回りに配置され、さらに、前記第1チューブ状ボディとの間にスペースを形成しており、さらに、前記第1チューブ状ボディに対して少なくとも1つのリブを介して連結され、これにより、少なくとも1つの第2管腔を形成している、第2チューブ状ボディと;
を具備している場合に、
この方法においては、
PTFEペーストから、前記第1管腔と前記第2管腔とを有したチューブ状形状へと、PTFE構造を予成形し;
前記第2管腔を開放状態に維持し得るようなスペーサデバイスを有したダイを備えたモールドを使用することによって、前記PTFE構造予成形体を押し出し、これにより、マルチ管腔チューブを形成する;
ことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、
前記予成形ステップにおいては、前記押出ステップに先立って、前記モールド内において前記ペーストを圧縮することを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、
さらに、前記マルチ管腔チューブを、その長手方向軸に沿って膨張させることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項33記載の方法において、
さらに、前記マルチ管腔チューブを焼結し、これにより、前記グラフトを形成することを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項31記載の方法において、
血液に対して接触しない前記管腔の少なくとも1つに対して、自己シールポリマー材料を追加することを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項35記載の方法において、
さらに、前記第1チューブ状ボディの少なくとも一部を処理し、これにより、前記グラフトの内部に対して薬剤を供給し得る薬剤搬送システムを形成することを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、
前記薬剤搬送システムが形成された前記第1チューブ状ボディの前記少なくとも一部に対して、治療薬剤を追加することを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項37記載の方法において、
前記治療薬剤を、抗生物質と、耐トロンボゲン形成薬剤と、抗炎症剤と、麻酔剤と、抗凝血剤と、血管細胞成長促進剤と、血管細胞成長阻害剤と、コレステロール低下剤と、からなるグループの中から選択されたものとすることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項35記載の方法において、
さらに、前記第1チューブ状ボディの少なくとも一部を穴開けし、これにより、前記グラフトの外部と1つまたは複数の前記第2管腔の内部とを連通させる複数の第1ポアを形成し、
前記第1ポアを、前記自己シールポリマー材料を含有している前記第2管腔には、形成しないことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項36記載の方法において、
前記第1ポアが形成された1つまたは複数の前記第2管腔に対して、治療薬剤を追加することを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項40記載の方法において、
前記治療薬剤を、抗生物質と、耐トロンボゲン形成薬剤と、抗炎症剤と、麻酔剤と、抗凝血剤と、血管細胞成長促進剤と、血管細胞成長阻害剤と、コレステロール低下剤と、からなるグループの中から選択されたものとすることを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項35記載の方法において、
さらに、前記第2チューブ状ボディの少なくとも一部を処理し、これにより、前記グラフトの外部に対して薬剤を供給し得る薬剤搬送システムを形成することを特徴とする方法。
【請求項43】
請求項36記載の方法において、
前記薬剤搬送システムが形成された前記第wチューブ状ボディの前記少なくとも一部に対して、治療薬剤を追加することを特徴とする方法。
【請求項44】
請求項43記載の方法において、
前記治療薬剤を、抗生物質と、耐トロンボゲン形成薬剤と、抗炎症剤と、麻酔剤と、抗凝血剤と、血管細胞成長促進剤と、血管細胞成長阻害剤と、コレステロール低下剤と、からなるグループの中から選択されたものとすることを特徴とする方法。
【請求項45】
請求項31記載の方法において、
さらに、前記第2チューブ状ボディの一部を穴開けし、これにより、前記グラフトの前記第1管腔と1つまたは複数の前記第2管腔とを連通させる複数の第2ポアを形成し、
前記第2ポアを、前記自己シールポリマー材料を含有している前記第2管腔には、形成しないことを特徴とする方法。
【請求項46】
請求項45記載の方法において、
さらに、前記第2ポアが形成された1つまたは複数の前記第2管腔に対して、治療薬剤を追加することを特徴とする方法。
【請求項47】
請求項46記載の方法において、
前記治療薬剤を、抗生物質と、耐トロンボゲン形成薬剤と、抗炎症剤と、麻酔剤と、抗凝血剤と、血管細胞成長促進剤と、血管細胞成長阻害剤と、コレステロール低下剤と、からなるグループの中から選択されたものとすることを特徴とする方法。
【請求項48】
請求項31記載の方法において、
さらに、前記グラフトに対して織物カバーを形成することを特徴とする方法。
【請求項49】
請求項48記載の方法において、
さらに、前記グラフトに対する前記織物カバーの前記形成ステップの後にあるいはこの形成ステップと同時に、前記グラフト上に前記織物カバーを付着させることを特徴とする方法。
【請求項50】
埋設可能なグラフトであって、
第1外壁表面と第1内壁表面とを有するとともに、血液に接触する管腔を形成している、第1の血液接触部材と;
第2外壁表面と第2内壁表面とを有するとともに、前記血液接触部材の周縁回りにおいて少なくとも部分的に非同心的に配置され、これにより、前記血液接触部材との間に少なくとも1つの血液非接触管腔を形成している、第2の血液非接触部材と;
を具備し、
前記第1外壁と前記第2内壁との少なくとも一部が、前記グラフトの長手方向に沿って接触部分を形成しており、前記両部材が、前記接触部分に沿ってラミネートされていることを特徴とするグラフト。
【請求項51】
請求項50に記載されたグラフトを形成するための方法であって、
PTFEペーストから、第1内壁表面と第1外壁表面とを有しなおかつ第1血液接触管腔を形成する第1チューブ状部材を押し出し;
PTFEペーストから、第2内壁表面と第2外壁表面とを有した第2チューブ状部材を押し出し;
この第2チューブ状部材を、前記グラフトの長手方向に沿って前記第1チューブ状部材の周囲に非同心的に配置し、この場合、前記第1外壁の一部と前記第2内壁の一部とを、互いに接触させ;
前記接触した部分どうしをラミネートする;
ことを特徴とする方法。
【請求項52】
請求項51記載の方法において、
前記ラミネートステップにおいては、熱硬化と、接着溶接と、前記グラフトに対する一様な力の印加と、のいずれかを行うことを特徴とする方法。
【請求項53】
埋設可能なグラフトであって、
外側壁と内側壁とを有するとともに、前記内側壁が、第1の血液接触管腔を形成しているような、第1チューブ状ボディと;
このチューブ状ボディの前記内側壁と前記外側壁との間に配置されているとともに、前記血液接触管腔に対して長手方向において位置合わせされた、少なくとも2つの血液非接触管腔と;
を具備していることを特徴とするグラフト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−511282(P2006−511282A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564688(P2004−564688)
【出願日】平成15年8月19日(2003.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/025930
【国際公開番号】WO2004/060209
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(300056576)ボストン・サイエンティフィック・リミテッド (3)
【Fターム(参考)】