説明

自己修復材料

【課題】簡便かつ低コストに製造でき、優れた自己修復性を持つ結晶性自己修復材料と、これを利用した結晶性自己修復性構造体を提供する。
【解決手段】高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した結晶性高分子架橋体であって、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、高分子架橋構造による材料形状の保持作用とダングリング鎖による自己修復作用とが両立する臨界近傍ゲルの特性を示す自己修復材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に傷が発生しても加熱することで自然に治癒する自己修復材料に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した結晶性の高分子架橋体であって材料形状の保持作用と傷の自己修復作用とが両立する結晶性自己修復材料と、この結晶性自己修復材料の製造方法と、結晶性自己修復材料が基材上に固定化された結晶性自己修復性構造体とに関する。
【背景技術】
【0003】
生体材料を模倣したインテリジェントマテリアルの開発はあらゆる分野で強く望まれている。特に、傷が発生しても自然に治癒し元の状態に戻る自己修復材料は、従来の人工構造物にはない特性であり、その開発が強く望まれている。自己修復材料の応用としては、宇宙空間や体内など修復作業が困難な場所に用いられる材料などの各種材料の表皮材などが対象となる。
【0004】
従来、自己修復材料としては、特定のプラスチック材料に、化学反応剤を包含したマイクロカプセルや中空フィラーを混合し、傷の発生と同時にマイクロカプセルや中空フィラーが破壊して内部の化学反応剤がプラスチック中に広がることによって傷部分の修復を行うと言う方法による自己修復材料が、例えば下記の非特許文献1〜非特許文献4で提案されている。
【0005】
【非特許文献1】R. P. Wool, “Polymer Interfaces, structure and strength”, p.473, Hanser, 1995.
【非特許文献2】S. R. White, N. R. Sottos, P. H. Geubelle, J. S. Moore,M. R. Kessler, S. R. Sriram, E. N. Brown,S. Viswanathan, Nature,vol.409, pp.794-797, (2001).
【非特許文献3】E. N. Brown, S. R. White, N. R. Sottos,S. White, J. Mater. Sci.,vol.39, pp.1703-1710 (2004).
【非特許文献4】J. W. C. Pang, I. P. Bond,Composites Sci. Technol., vol.65, pp.1791-1799 (2005). 又、ポリフェニレンエーテルやポリカーボネートに着目し、分解劣化後に再び反応を生じせしめる触媒などを混合することにより自己修復を行う手法が、例えば下記の非特許文献5で提案されている。非特許文献5の手法は要するに、特定の種類の高分子化合物において、化学反応を利用して高分子の主鎖を再結合させる方法である。
【0006】
【非特許文献5】K. Takeda, M. Tanahashi, H. Unno, Sci. Technol. Adv. Materials, vol.4,pp.435-444, (2003). 更に、非晶性高分子に生じた傷の修復を、ガラス転移温度以上に昇温することにより行う方法が、例えば下記の非特許文献6で提案され、又、特定の溶媒に浸漬して傷を修復する方法が、例えば下記の非特許文献7で提案されている。
【0007】
【非特許文献6】R. P. Wool., "Polymer Interface; Structure and Strength”, Chap.12, Hanser Gardener, Cincinnati, 1994.
【非特許文献7】C. B. Lin, S. Lee, K. S. Liu, Polym.Eng. Sci., vol.30,pp.1399-1406 (1990).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非特許文献1〜非特許文献4の方法では、マイクロカプセルや中空フィラーへ化学物質を包含させる必要があり、かつ、それをプラスチック中に分散させねばならないため、コストパフォーマンスに劣ると共に技術的にも困難である。更に、材料の同一部分に生じた傷を繰り返し修復することは期待できないと考えられる。
【0009】
更に非特許文献1〜非特許文献5の方法はいずれも、適用対象が特定の高分子化合物に限定されてしまうと言う問題があった。
【0010】
次に、非特許文献6、7の方法では自己修復作用が自律的に発現する訳ではなく、傷が生じた材料をガラス転移温度以上に昇温し、あるいは特定の溶媒に浸漬する必要があるため、現実的には応用が困難であった。加えて、非特許文献6の方法は、要するに直鎖高分子鎖の拡散を利用して自己修復を行うため、実用的な自己修復速度の実現と、材料の流動化(自己修復材料の変形あるいは形状崩壊)とがストレートに直結してしまうと言う実用面での致命的な問題がある。
【0011】
このような従来技術の種々の問題点から、1)製造プロセスがコストパフォーマンスに優れ技術的に簡便で、2)適用対象が本質的に高分子化合物の種類によって制約されず、3)自己修復作用が材料の同一部分においても繰り返し起こり、4)自己修復作用が加熱するのみで形状崩壊等を伴わずに発現する、5)ゴムよりも十分に高い弾性率を示す、等の利点を持つ自己修復材料の提供が望まれていた。本発明は、このような自己修復材料を提供することを、解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した結晶性の高分子架橋体であって、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、高分子架橋構造による材料形状の保持作用とダングリング鎖による自己修復作用とが両立する臨界点近傍のゲルの特性を示し、さらには、結晶性を示すことからゴムよりも十分に高い弾性率を示す、自己修復材料である。
【0013】
第1発明の自己修復材料においては、材料形状の保持作用と自己修復作用とが両立する。本願明細書では、このような特性を持つ高分子架橋体を「臨界点近傍のゲル」と呼ぶ。材料形状の保持作用は、上記の高分子架橋構造によるものである。一方、傷に対する自己修復作用は、ダングリング鎖によるものである。ダングリング鎖とは、周知のように、「片末端が架橋体と繋がっており、他の末端が架橋体と繋がっていない部分鎖」を言う。
【0014】
ダングリング鎖による自己修復作用のメカニズムは、自己修復材料が傷を受けた場合、高分子架橋体の分子内及び分子間でダングリング鎖が相互に侵入し、絡み合いにより凝集力を形成すると言うトポロジー相互作用による。従って、自己修復に要する時間は温度が高いと短くなる。但し、昇温により自己修復作用が促進されても、ダングリング鎖の結合量と高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されている限り、材料形状の保持作用と自己修復作用とがバランス良く両立する。この点が、前記した非特許文献6の場合とは決定的に異なる。
【0015】
従来の自己修復材料においては、高分子架橋体についての臨界近傍ゲルの概念が開示されたことはなく、ましてや、臨界点近傍のゲルの成立を規定する「ダングリング鎖の結合量」や「架橋点間分子量」に関する特異的領域の存在が開示又は示唆されたこともない。
【0016】
第1発明の自己修復材料は、後述するように、簡便かつコストパフォーマンスに優れるプロセスにより製造することができる。又、結晶性を示す高分子架橋体である限りにおいて、その適用対象が高分子化合物の種類によって制約されない。次に、自己修復作用は上記のトポロジー相互作用に基づくため、材料の同一部分においても繰り返し起こる。更に、自己修復作用が加温するのみで形状崩壊等を伴わずに発現すると共に、使用温度においては結晶性を示すためにゴムよりも十分に高い弾性率を示す。これにより、第1発明の自己修復材料は、前記した本発明の課題を解決することができる。
【0017】
図1に第1発明の自己修復材料を模式的に示す。図1(a)においては、上記した結晶性高分子架橋体1の単分子が、官能基を備えた固定点2の化学反応によって基材3に固定化される様子を示すが、結晶性高分子架橋体1に関して、その架橋構造と、多数のダングリング鎖4とを視覚的に示している。ただし、結晶に関する考慮は行っていない。図1(b)は、高分子架橋体1の複数の分子が固定点2において基材3に対して密に固定化され、コーティング層5を形成している様子を示す。但し、図1は自己修復材料の模式的な図示に過ぎず、結晶性高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量や、結晶性高分子架橋構造の架橋点間分子量についての特異的領域を具体的に例示又は規定するものではない。
【0018】
第1発明の結晶性自己修復材料において、ダングリング鎖の結合量及び架橋点間分子量に関する「特異的領域」は、高分子の種類、その高分子を形成する単量体化合物の種類、高分子架橋構造の内容等に依存して多様であるため、これらの特異的領域を数値を以て一律に規定することは困難もしくは不可能である。しかし、第2発明において後述するように、自己修復材料の物性等の面から、臨界点近傍のゲルを規定する特異的領域を定義することは可能である。
【0019】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る結晶性自己修復材料が下記(a)〜(d)の内の1以上の条件を満たすものである、自己修復材料である。
(a)動的粘弾性の測定で、結晶融点よりも20°C高い温度における損失正接が、10Hzにおいて0.6〜10.0の範囲内である。
(b)動的粘弾性の測定で、結晶融点よりも10°C高い温度における貯蔵弾性率(E10)と80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)の比(E10/E80)が、10Hzにおいて2〜100の範囲内である。
(c)ゲル分率が30%を超える。
(d)動的粘弾性の測定で、使用温度における貯蔵弾性率が10Hzにおいて5×10Pa以上
【0020】
第2発明は、第1発明に係る結晶性自己修復材料における臨界点近傍のゲルとしての特異的領域を、材料物性等の面から規定したものである。
【0021】
詳しくは後述するが、(a)の条件において、結晶融点よりも20°C高い温度における損失正接が大きいことは、ダングリング鎖が多いことを表す。(b)の条件において、「E10/E80」が大きいこと、即ち、結晶融点よりも高い温度における貯蔵弾性率の低下が大きいことも、ダングリング鎖が多いことを表す。(c)の条件においてゲル分率とは、〔[乾燥後の重量]/[浸漬前の重量]×100(%)〕を意味するが、ゲル分率が30%未満であることは、両末端が架橋体に繋がっていないゾル分が多いことを意味し、この場合、加温時に形状保持性が損なわれやすくなることが多い。(d)の条件において動的粘弾性の測定で、使用温度における貯蔵弾性率が10Hzにおいて5×10Pa以上であることは、ゴムよりも十分に高い弾性率を示すことを意味し、硬度の高い自己修復材料が得られる。
【0022】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る高分子架橋体が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、飽和型ゴム、不飽和型ゴムの1種又は2種以上、又はそれの他種樹脂/ゴムとのブレンド材料からなる、自己修復材料である。
【0023】
前記したように、自己修復材料を構成する高分子架橋体の樹脂種は本質的に限定されないが、第3発明に列挙するものを好ましく例示することができる。自己修復材料の弾性率は、主に高分子架橋体の結晶化度によって決定し、ゴムから一般的な結晶性高分子の弾性率までの値で制御することが可能である。
【0024】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明の構成は、必要な場合には触媒を利用して、下記(1)〜(3)に規定するように、一定の第1化合物及び第2化合物を、あるいは一定の第1化合物〜第3化合物を所定の反応比で混合して反応させることにより、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料を製造する、自己修復材料の製造方法である。
【0025】
(1)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比(反応に関わる官能基のモル数の比を言う。以下同じ。)で0.3〜0.7として混合して反応させる。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
【0026】
(2)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物と、官能基Aを1分子中に2個持つ第3化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.4〜0.8として混合して反応させる。但し、第1化合物に由来する官能基Aのモル数が、官能基Aの全モル数の25%以上を占める。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
【0027】
(3)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に3個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.1〜0.6として混合して反応させる。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
【0028】
上記の第4発明によって、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料を簡便かつ低コストで製造する方法が提供される。

また、上記の第4発明では、溶媒中で反応を生じさせることも可能である。反応終了後、溶媒を乾燥することで、目的の組成物を得ることが可能になる。

【0029】
以上のように、「臨界点近傍のゲル」である第1発明の自己修復材料は、前記したようにこれを規定する特異的領域を構造面から数値を以て一律に規定することは困難もしくは不可能であるが、第2発明のように材料物性等の面から規定することも可能である一方、第4発明のように製造条件を以て規定することもできる。
【0030】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明の構成は、前記第4発明に係る自己修復材料の製造方法の(1)において第1化合物が1分子中に官能基Aとしてイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物であり、前記第2化合物が1分子中に水酸基を2個以上有する結晶性のポリマーポリオールであり、製造される自己修復材料がポリウレタン樹脂である場合において、イソシアネート基/水酸基の反応比で0.3〜0.7として第1化合物と第2化合物とを混合して反応させる、自己修復材料の製造方法である。
【0031】
第5発明によって、上記第4発明の自己修復材料の製造方法の内、ポリウレタン樹脂における特に好ましい実施形態の一例が提供される。分子量2000のポリエステルジオールとジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体からポリウレタンを製造する場合、イソシアネート基/水酸基の反応比としては0.50又はその近傍の値であることが、とりわけ好ましい。
【0032】
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明の構成は、第1発明〜第3発明のいずれかに係る自己修復材料が基材上に固定化されている、自己修復性構造体である。ここに、「固定化」の形態は限定されないが、その代表的な形態として、自己修復材料を構成する高分子架橋体の分子鎖が、1ケ所又は複数ケ所において基材と化学結合している形態を挙げることができる。
【0033】
第1発明〜第3発明に係る結晶性自己修復材料の利用形態は限定されないが、第6発明のように自己修復材料が基材上に固定化された自己修復性構造体としての利用形態が特に有用である。
【0034】
基材は、高分子架橋体を固定化できる手段を備えたものであれば、その種類を特段に限定されないが、例えば高分子系の材料からなる基材が好ましく用いられる。基材表面の反応性官能基を増やす目的で、基材の表面にコロナ放電等の表面処理を行うことも好ましい。なお、自己修復材料を構成する高分子架橋体の厚みは0.01mm〜10mmの範囲内であることが好ましい。
【0035】
高分子架橋体の厚みが0.01mm未満では、受けた傷が自己修復性のない基材にまで到達し易いと言う不具合がある。高分子架橋体の厚みが10mmを超えると、基材の力学的性質が大きく損なわれると共に、自己修復材料の無駄使いとなり易い。

【発明の効果】
【0036】
本発明の結晶性自己修復材料は、1)製造プロセスがコストパフォーマンスに優れ技術的に簡便で、2)適用対象が本質的に高分子化合物の種類によって制約されず、3)自己修復作用が材料の同一部分においても繰り返し起こり、4)自己修復作用が加温するのみで形状崩壊等を伴わずに発現する、5)ゴムよりも十分に高い弾性率を示す、等の優れた利点を持つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0038】
〔自己修復材料〕
本発明に係る結晶性自己修復材料は、高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した結晶性高分子架橋体である。そして、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、臨界近傍ゲルの特性を示すものである。ここに、臨界点近傍のゲルの特性とは、結晶融点以上において材料形状の保持作用と自己修復作用とが両立することを言う。
【0039】
本発明に係る結晶性自己修復材料は、その物性面等から、下記(a)〜(d)の内の1以上の条件を満たすものである、として規定することもできる。
(a)動的粘弾性の測定で結晶融点よりも20°C高い温度における損失正接が、0.6〜10.0の範囲内である。
(b)動的粘弾性の測定で結晶融点よりも10°C高い温度における貯蔵弾性率(E10)と80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)の比(E10/E80)が、2〜100の範囲内である。
(c)ゲル分率が30%を超える。
(d)動的粘弾性の測定で、使用温度における貯蔵弾性率が10Hzにおいて5×10Pa以上
【0040】
上記の(a)〜(d)の各条件を更に詳しく説明すると、次の通りである。
【0041】
自己修復材料に用いられる結晶性高分子架橋体は、結晶融点よりも20°C高い温度における損失正接が0.6〜10.0の範囲内、より好ましくは0.65〜5.0の範囲内、更に好ましくは0.7〜3.0の範囲内である。この温度における損失正接が0.6未満では自己修復性を示さず、10.0を超えると形状を保つことが困難である。また、結晶融点よりも50°C高い温度における損失正接が0.5〜10.0の範囲内にあると自己修復性はさらに優れたものになる。
【0042】
なお、本発明における結晶融点とは、動的粘弾性の測定で引張損失弾性率が急激に低下する温度であるが、本発明では便宜的に、周波数10Hzにおいて引張貯蔵弾性率が1×10Paとなる温度として定義する。引張貯蔵弾性率は市販の強制振動型動的粘弾性測定装置によって簡便に測定することが可能である。
【0043】
本発明の結晶性自己修復材料で用いられる高分子架橋体は、結晶融点よりも10°C高い温度における貯蔵弾性率(E10)と、80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)との比「E10/E80」が2〜100の範囲内、より好ましくは2〜80の範囲内である。E10/E80が2未満では自己修復性を示さず、100を超えると形状を保つことが困難である。
【0044】
結晶融点よりも高い温度における貯蔵弾性率の低下が大きいことは、ダングリング鎖が多いことを意味する。ダングリング鎖は前記した働きにより傷に対する修復性を示す。但し、貯蔵弾性率の低下があまりに大きい場合には、弾性率の温度依存性が激しくなりすぎて、実用上の問題を生じる恐れがある。
【0045】
本発明の自己修復材料で用いられる結晶性高分子架橋体は、ゲル分率〔[乾燥後の重量]/[浸漬前の重量]×100(%)〕が30%、より好ましくは50%、更に好ましくは80%を超えることが望ましい。ゲル分率が30%未満では、加温時に形状保持性を損なう恐れがある。
【0046】
結晶性高分子架橋体のゲル分率が少ないことは、両末端が架橋体に繋がっていないゾル分が増加することを意味する。ゾル分は流動性を示すため、材料としての使用が困難になる。
【0047】
本発明の結晶性自己修復材料で用いられる結晶性高分子架橋体は、動的粘弾性の測定で、使用温度における貯蔵弾性率が10Hzにおいて5×10Pa以上、好ましくは1×10Pa以上であり、これによって表面硬度が高く、弾性率の高い材料が得られる。
結晶性高分子架橋体の結晶化度には、特に限定はなく、硬度の高い材料では高い結晶化度、硬度の低い材料では低結晶化度に設定することが好ましい。ただし、表面粘着を大幅に低減するためには、結晶化度が10%以上であることが望ましい。結晶化度は、完全結晶の融解熱量が既知の場合には熱量測定(結晶化度=試料の融解熱量/完全結晶の融解熱量)から、完全結晶および非晶の密度が既知の場合には密度測定(結晶化度=(試料の密度−非晶の密度)/(結晶の密度−非晶の密度))から、または、広角X線回折測定(結晶化度=(結晶ピーク面積の総和)/(結晶ピーク面積の総和+非晶ピークの面積))から求められる。
【0048】
さらに本発明の結晶性自己修復材料で用いられる結晶性高分子架橋体は、結晶融点が30°C以上であることが望ましく、これによって室温でも高い弾性率の材料が得られることになる。
【0049】
本発明の結晶性自己修復材料における自己修復挙動は、結晶融点以上で活発となるダングリング鎖が関与したからみ合い相互作用に起因するものである。からみ合い相互作用の形成は結晶融点以上で激しくなることから、自己修復性を生じせしめる場合には、材料を結晶融点よりも高い温度で放置する必要がある。その後、使用温度に冷却することで再び結晶化が生じて、高い弾性率を示すことになる。結晶融点よりも高い温度に至らす方法は任意であり、特に限定を受けない。例えば、オーブンの中で放置する、アイロンがけを行う、お湯の中に浸すなどの方法が挙げられる。
【0050】
結晶性自己修復材料の樹脂種は、高分子架橋体を形成可能である限りにおいて限定されないが、反応の制御が容易であることから、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、飽和型ゴム、不飽和型ゴムの1種又は2種以上から構成されていることが好ましい。又、これらの自己修復材料と、自己修復材料ではない他種材料(樹脂/ゴム)とのブレンド材料も使用可能な場合がある。
【0051】
〔自己修復材料の製造方法〕
本発明の結晶性自己修復材料は前記第4発明の方法によって製造することができる。即ち、必要な場合には触媒を利用して、下記(1)〜(3)に規定するように、一定の第1化合物及び第2化合物を、あるいは一定の第1化合物〜第3化合物を所定の反応比(反応に関わる官能基のモル数の比を言う。以下同じ。)で混合して反応させることにより、上記の自己修復材料を製造する方法である。
【0052】
(1)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.3〜0.7として混合して反応させる。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
【0053】
(2)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物と、官能基Aを1分子中に2個持つ第3化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.4〜0.8として混合して反応させる。但し、第1化合物に由来する官能基Aのモル数が、官能基Aの全モル数の25%以上を占める。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
【0054】
(3)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に3個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.1〜0.6として混合して反応させる。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
【0055】
この方法において、第1化合物〜第3化合物はいわゆるモノマーを意味する。官能基A/官能基Bの組み合わせとしては、イソシアネート基/水酸基、イソシアネート基/アミノ基、カルボキシル基/アミノ基、カルボキシル基/水酸基、カルボキシル基/グリシジル基、カルボキシル基/オキサゾリン基、無水マレイン酸/オキサゾリン基、無水マレイン酸/アミノ基、グリシジル基/オキサゾリン基、イソシアネート基/オキサゾリン基等が例示される。「必要な場合に使用する触媒」は、第1化合物〜第3化合物の重合反応系においてそれぞれ周知であるものを適宜に選択して使用すれば良い。例えばポリウレタンの重合系においてはジブチル錫ジラウレート等が汎用され、ポリエステルの重合系においてはチタン化合物が汎用されている。
【0056】
結晶性自己修復材料の製造方法上の有利さの面からは、特に、ポリウレタン系樹脂は取り扱いが容易であることから好ましい。とりわけ、第5発明において前記したように、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物と、1分子中に水酸基を2つ以上有する結晶性のポリマーポリオールから得られるポリウレタン系樹脂は、原材料の毒性も低く、取り扱いに優れるために好ましい。特に、エチレングリコールやブチレングリコールとアジピン酸との重縮合によって得られる結晶性ポリエステルポリオールは、コストパフォーマンスにも優れることが知られている。
【0057】
3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネ−ト化合物としては、例えば2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート、m−及びp−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニレン−2,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスフェニレン4,4’−ジイソアネート、m−及びp−キシレンジイソアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネートの3量体、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、リジンエステルトリイソシアネート、4−イソシアネートメチル−1,8−オクタメチルジイソシアネート等のトリイソシアネート類もしくはポリフェニルメタンポリイソシアネート等の多官能イソシアネート類が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用される。
【0058】
また、上記のジイソシアネート類を併用することも可能である。ただしこの場合、全イソシアネートのNCO基モル数に対するトリイソシアネートのNCO基モル数は0.25以上とすることが望ましい。0.25未満では、架橋密度の不足により形状保持をできないことがある。
【0059】
1分子中に水酸基を2つ以上有するポリマーポリオールとしては、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ひまし油系ポリオール、ケン化EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)などのポリオレフィン系ポリオール、セルロースおよびセルロース誘導体などが挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。ただし、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有するポリイソシアネート化合物と反応させる場合、多くのポリイソシアネート化合物は非晶性であることから、ポリマーポリオールが結晶性を示す必要がある。
【0060】
また、用いるイソシアネ−ト化合物のNCO基と水酸基のモル比は、ポリマーポリオールの水酸基が2つである場合、0.3〜0.7の範囲内、より好ましくは0.4〜0.6の範囲内である。このモル比が0.3未満ではイソシアネートにトリイソシアネートのみを用いても架橋密度の不足により形状を保持できない恐れがあり、0.7を超えると自己修復性を示さない恐れがある。
【0061】
〔自己修復性構造体〕
本発明の結晶性自己修復性構造体は、上記いずれかの自己修復材料が基材上に固定化されたものである。この場合の自己修復材料は、例えば基材の表皮として好ましく用いることができる。
【0062】
結晶性自己修復性構造体の基材の種類は、自己修復材料を構成する高分子架橋体を、化学結合等により固定化できる手段を有するものであれば、特に限定されない。高分子架橋体を化学結合により固定化する場合には、化学結合を生じる官能基を有することが必要であり、高分子系材料の基材が好ましく用いられる。高分子系材料の基材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、セルロースおよびセルロース誘導体、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、各種ゴムなどが好んで用いられる。
【0063】
また、表面の反応性官能基を増やす目的で、上記のプラスチックおよびゴム基材の表面にコロナ放電処理を行ったもの、さらには、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂の表面にコロナ放電処理を行ったものを用いることも可能である。
【0064】
結晶性自己修復性構造体においては、結晶性高分子架橋体の厚みが0.01mm〜10mmの範囲内であることが好ましい。結晶性高分子架橋体の厚みが0.01mm未満では、表面に受けた傷が、自己修復性を示さない基材にまで到達してしまう恐れがある。また、結晶性高分子架橋体の厚みが10mmを超えると、基材の力学的性質が大きく損なわれると共に、材料の無駄使いとなりコストパフォーマンスに劣る恐れが強い。
【0065】
基材と化学結合させる前の結晶性高分子架橋体、又は基材と高分子架橋体を化学結合させた結晶性自己修復性構造体を、一旦、過剰の有機溶媒に浸し、高分子架橋体中に含まれているゾル成分を溶媒中に溶け込ませることも可能である。有機溶媒で処理することにより、形状保持性を高めることが可能になる。
【0066】
本発明の結晶性自己修復性材料は、例えば、表面傷を嫌う高級品の表皮材などに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例及び比較例を説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例及び比較例によって制約されない。
【0068】
〔実施例及び比較例における測定〕
1)貯蔵弾性率、損失正接の測定
高分子架橋体及び基材の貯蔵弾性率、損失正接は、強制振動型動的粘弾性測定装置(UBM社製、E4000)を用いて線形領域で行った。測定周波数は10Hzとし、昇温速度2°C/分、正弦波を与えて引張モードで測定を実施した。ガラス転移温度は、ガラス―ゴム転移領域において損失弾性率が極大を示す温度とした。また、結晶融点は貯蔵弾性率が1×10Paとなる温度とした。結晶融点よりも20°C高い温度と50°C高い温度の損失正接(tanδ)、結晶融点よりも10°C高い温度と80°C高い温度の貯蔵弾性率の比〔E(10)/E(80)〕、結晶融点、ガラス転移温度、室温における貯蔵弾性率をそれぞれ求めた。
【0069】
2)ゲル分率、膨潤度の測定
予め重量を測定した高分子架橋体を過剰のアセトンに浸漬し、24時間室温にて放置した。その後、真空乾燥機にて溶媒を除去して乾燥重量を測定した。[乾燥後の重量]/[浸漬前の重量]×100(%)をゲル分率として求めた。
【0070】
3)結晶化度の測定
広角X線回折装置(リガク)を用いて2θが8°から32°まで、1°/分のスキャン速度で回折ピークの測定を実施した。測定温度は室温とし、管電流40mA、管電圧40Vにて実施した。得られたピークを市販のソフトによりピーク分離し、複数の結晶ピークとひとつの非晶ピークに分割した。結晶ピークの面積の総和を(結晶ピークの面積の総和+非晶ピークの面積)で除した値を結晶化度とした。
【0071】
4)自己修復性の評価
高分子架橋体を30mm×10mmに切り出し、室温においてかみそりを用いて中心部から完全に破断した。その後、140℃のアイロンを5秒間あてて、切断面を溶かしてくっつけた。試料の表裏を反転し、同様の操作を実施した後、庫内温度−20℃の冷凍庫に入れて1日放置した。目視にて傷の修復の程度を確認したのち、切断部を折り曲げて修復状況を調べた。
【0072】
5)形状保持性の評価
高分子架橋体を30mm×10mmに切り出し、140℃のオーブンの中で1時間放置し、試験片の状態を目視にて観察した。
【0073】
〔実施例1〕
エチレングリコールとアジピン酸からなる結晶性ポリエステルジオール(日本ポリウレタン(株)製、商品名ニッポラン4040、数平均分子量2000)とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(日本ポリウレタン(株)製、商品名コロネートHX)を[NCO]/[OH]の反応比で0.50として混合し、更に触媒としてジブチル錫ジラウレート100ppmを混合した。室温にて真空乾燥機で脱泡した後、ポリテトラフルオロエチレンの上に流し、150°Cにて8分間加熱してウレタン反応を行い、目的の試料を得た。
架橋体の厚みは0.7mmとした。得られた試料を用いて自己修復性および各種物性測定を実施した。
【0074】
〔比較例1〕
非晶性のポリマーポリオール(日本ポリウレタン(株)製、商品名ニッポラン152、数平均分子量2000)を用いた以外は実施例1と全く同じ方法で試料を得、各種測定を実施した。
【0075】
〔比較例2〕
ポリマーポリオール(日本ポリウレタン(株)製、商品名ニッポラン4040、数平均分子量2000)とヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(日本ポリウレタン(株)製、商品名コロネートHX)を[NCO]/[OH]の反応比で0.80として混合した以外は実施例1と全く同じ方法で試料を得、各種測定を実施した。
【0076】
〔実施例1及び比較例1、2の評価結果〕
上記した実施例1及び比較例1、2の各種測定の評価結果を、下記の表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
実施例1に係る架橋体(本発明の自己修復材料)に対して与えた傷の自己修復の様子を、図2〜図4の写真によって示す。図2が切れ目(完全な切断状態)を与えた状態であり、図3、4が140℃のアイロンを5秒間あてた後の切れ目が完全に自己修復された状態を示す。

【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明により、従来技術に比較して種々の利点を持つ結晶性自己修復材料と、これを利用した自己修復性構造体を簡便かつ低コストに製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の自己修復材料の構造を模式的に示す図である。
【0081】
【図2】本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の様子を示す写真である。
【0082】
【図3】本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の様子を示す写真である。
【0083】
【図4】本発明の実施例に係る自己修復材料の修復性評価の様子を示す写真である。
【符号の説明】
【0084】
1 高分子架橋体
2 固定点
3 基材
4 ダングリング鎖
5 コーティング層



【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子架橋構造に対して多数のダングリング鎖が結合した結晶性の高分子架橋体であって、結晶融点以上においては、高分子架橋構造に対するダングリング鎖の結合量と、高分子架橋構造の架橋点間分子量とが一定の特異的領域内に調整されることにより、材料形状の保持作用と自己修復作用とが両立する臨界点近傍のゲルの特性を示し、結晶融点以下で使用することを特徴とする結晶性自己修復材料。
【請求項2】
前記自己修復材料が下記(a)〜(d)の内の1以上の条件を満たすものであることを特徴とする請求項1に記載の自己修復材料。
(a)動的粘弾性の測定で、結晶融点よりも20°C高い温度における損失正接が、10Hzにおいて0.6〜10.0の範囲内である。
(b)動的粘弾性の測定で、結晶融点よりも10°C高い温度における貯蔵弾性率(E10)と80°C高い温度における貯蔵弾性率(E80)の比(E10/E80)が、10Hzにおいて2〜100の範囲内である。
(c)ゲル分率が30%を超える。
(d)動的粘弾性の測定で、使用温度における貯蔵弾性率が10Hzにおいて5×10Pa以上
【請求項3】
前記高分子架橋体が、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、飽和型ゴム、不飽和型ゴムの1種又は2種以上、又はそれの他種樹脂/ゴムとのブレンド材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自己修復材料。
【請求項4】
必要な場合には触媒を利用して、下記(1)〜(3)に規定するように、一定の第1化合物及び第2化合物を、あるいは一定の第1化合物〜第3化合物を所定の反応比で混合して反応させることにより、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の自己修復材料を製造することを特徴とする自己修復材料の製造方法。
(1)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.3〜0.7として混合して反応させる。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
(2)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に2個以上持つ第2化合物と、官能基Aを1分子中に2個持つ第3化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.4〜0.8として混合して反応させる。但し、第1化合物に由来する官能基Aのモル数が、官能基Aの全モル数の25%以上を占める。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
(3)官能基Aを1分子中に3個以上持つ第1化合物と、官能基Aに特異的に結合する官能基Bを1分子中に3個以上持つ第2化合物とを、官能基A/官能基Bの反応比で0.1〜0.6として混合して反応させる。なお、第1化合物および/または第2化合物は結晶性を示す。
【請求項5】
前記(1)において第1化合物が1分子中に官能基Aとしてイソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物であり、前記第2化合物が1分子中に水酸基を2個以上有する結晶性ポリマーポリオールであり、製造される自己修復材料がポリウレタン樹脂である場合において、イソシアネート基/水酸基の反応比で0.3〜0.7として第1化合物と第2化合物とを混合して反応させることを特徴とする請求項4に記載の自己修復材料の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の自己修復材料が基材上に固定化されていることを特徴とする自己修復性構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−239722(P2008−239722A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80410(P2007−80410)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(304024430)国立大学法人北陸先端科学技術大学院大学 (169)
【Fターム(参考)】