自己免疫および1型糖尿病のリスクの早期予測ツールとしての生体流動の代謝体プロファイリング
本発明は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を診断する方法を提供する。本方法は、診断される小児における少なくとも1つの血清代謝体の収集物を測定する工程と、血清代謝体の収集物と、健康児からなる対照グループにおける同種の血清代謝体の収集物とを比較する工程とを含む。診断される小児と対照グループとの間における収集物の差異は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すためのバイオマーカとして使用される。本発明はまた、小児の糖尿病の発症を予防する方法にも関する。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性の早期診断方法に関するものである。さらに、本発明は、1型糖尿病の発症に対する感受性が強いと診断された小児の1型糖尿病予防方法に関するものである。
【発明の背景】
【0002】
本文では、様々な出版物およびその他の資料を、本発明の背景を説明するために引用している。特に、実施に関する詳細を補足する事例は、参考文献として加えている。
【0003】
1型糖尿病は、自己の免疫系が膵臓のランゲルハンス島のβ細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患である。破壊や損傷を受けたβ細胞は、インスリン分泌量が減少したり、インスリンが分泌できなくなったりしてしまう。
【0004】
過去10年から50年の間において、1型糖尿病は、小児の最も一般的な内分泌代謝疾患として、理由は解明されていないが多くの西欧諸国でその発生率が増加している。β細胞に特異的な自己抗体は、膵臓のランゲルハンス島におけるインスリン分泌β細胞の特定の機能障害および深刻な破壊と共に発生すると考えられている。また自己抗体の発生は、一般に1型糖尿病の発症より数ヶ月から数年前に起ると考えられている。自己免疫の未知の発生因子と不明なメカニズムによって、β細胞の機能不全が進行していて、これらは、病気自体のリスク、および各個人の遺伝的な感受性による発症までの期間の推定を妨げるだけでなく、効果的な予防法の発見も妨げている。
【発明の目的と概要】
【0005】
本発明は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性の早期診断方法を提供することを目的とする。
【0006】
特に、本発明は、臨床的な発病の数ヶ月から数年前に、望ましくは小児の血清中に自己抗体が出現する前に、小児の1型糖尿病の発症リスクを診断する方法を提供することを目的とする。本発明の目的の1つは、新生児に対する将来の1型糖尿病の発症リスクを診断する方法を提供することである。
【0007】
さらに、本発明の目的の1つは、1型糖尿病の発症に対する感受性が強いと診断された小児の1型糖尿病を予防する方法を提供することである。
【0008】
既に確立されている方法の問題点を解決するために、1994年のフィンランドで、我々は1型糖尿病の予測と予防の研究(DIPP)として、広範囲な出生群の調査1を開始した。1型糖尿病のリスクおよびHLA対立遺伝子に関連した防御反応は、両親へのインフォームドコンセントの後に、まず新生児の臍帯血中から分析した。遺伝的リスクが増大している保因者の小児に対して、いつ糖尿病に関連する自己抗体が出現するのか、またはいつ臨床的な糖尿病が発症するのか見極めるため、頻繁に検査を行った。11年半の調査期間の間、10万人以上の新生児をスクリーニングした。そのうちの450人以上に、病気のリスクが明らかに増大していることを示す、多様な自己抗体が発生していた。現在までに、調査に残ったうちの138人に臨床的な糖尿病が発症した。そして、病気の原因と予測の研究のための独特なサンプル系列が得られた。
【0009】
血清の代謝体のパターンは、少なくともいくつかの組織系の恒常性を反映している。特定の代謝体グループにおける変化は、環境や遺伝的な変更または介入2に対する組織系の反応である。メタボロミクスのプラットフォームは、高いサンプルスループット性能を有していて、応答時間に従ってすべての種類の生体物質に適用できる。また代謝表現型は、栄養状態や腸内の微生物叢3、4等のような環境的要因の影響を受けていて、例えば1型糖尿病のような複雑な病気に対する特有の関連性を有し、遺伝的要因と環境要因5の両方の影響を受けているものと考えられている。今日の、分析的で膨大な量のデータを扱い得る情報技術によって、メタボロミクスアプローチはますます有益なものとなっている。従ってメタボロミクスは、例えば、選別された生理学的な反応および病理学的な反応6、7の複雑な表現型およびバイオマーカの特性評価として、有力なツールを提供可能である。
【0010】
このように、最も広い見地から見れば、本発明は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性の早期診断方法に関するものであり、その方法は以下の工程を含む。すなわち、
i)診断される小児における少なくとも1つの血清代謝体の収集物を測定し、
ii)血清代謝体の収集物と、健康児からなる対照グループにおける同種の血清代謝体の収集物とを比較し、
iii)診断される小児と対照グループとの間における収集物の差異を、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すためのバイオマーカとして使用する。
【0011】
他の側面から見れば、本発明は、小児の1型糖尿病の発症を予防する方法に関するものであり、本発明に従って、1型糖尿病の発症に対して感受性が強いと診断された小児に対する、糖尿病の発症を防ぐ1または複数の手段から構成されている方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】メタボロミクス用のDIPP研究とサンプルの選定を示す図であり、DIPP研究を示す図である。
【図1b】9歳で発症した小児の自己抗体プロフィールである。
【図1c】調査したサンプルである。
【図1d】分析結果と本文で扱う主な問題を示す図である。
【図2】オウル市のバッチの全サンプルの2次元的なサモンマッピングを示す図であり、合計518個のサンプルを含み、うち186種の同定された脂質が変数として含まれている。4つの異なる潜在的な交絡因子のマッピングであり、(a)各個人のID、(b)性別、(c)年齢、(d)サンプルの年代、である。
【図3】DIPPによるトゥルク市のバッチから選択したエーテル結合型ホスファチジルコリン類のプロフィール。(a)GPCho(36:2e)の長期にわたるプロフィール。(b)GPCho(40:4e)の長期にわたるプロフィール。(c)1歳児のGPCho(36:2e)レベル(1歳に最も近い小児1人につき1サンプル)。(d)3歳児のGPCho(36:2e)レベル。(e)6歳児のGPCho(36:2e)レベル。
【図4】臍帯血の脂質プロフィール。(a)出生時における発症者と大多数の非発症者との間の脂質プロフィールの差異を明らかにしたスコアプロット。(b)リン脂質に属する各対象物の特性の差異。(c)発症者と未発症者とで共通なエーテル結合型ホスホコリンGPCho(36:2e)。(d)すべてのエステル結合型グリセロホスホコリンの分子種の合計として算出された総ホスホコリンレベル。
【図5】血清転換の前後6ヶ月の間隔における脂質プロフィール。(a)PLS/DA分析により検出された脂質プロフィールの変化。(b)発症者において血清転換に先がけて(すなわち、自己抗体の出現前に)上方制御され、炎症に関連することが知られているリゾホスファチジルコリン分子種LysoGPCho(18:0)。(c)発症者において血清転換の後に上方制御されるエーテル結合型ホスホエタノールアミン分子種GPEth(38:le)。
【図6】1型糖尿病の病原に関する記載の要約である。
【図7】DHAPからのコリンプラスマローゲンの合成経路である。
【図8】パネルAは、1歳半および5歳の発症者における、各1人につき1サンプルのエーテルホスファチジルコリンレベルの変化(1歳半および5歳に近い年齢も含む)である。なお、正確な脂肪酸ポジション(すなわち、sn1対sn2)、および二重結合位置は未確認である。パネルBは、発症者と非発症者のGPCho(O−18:l/16:0)収集物を示すボックスプロット(データの50%を含んでいる)である。ボックスの上部の角(ヒンジ)はデータの75パーセントを示していて、下部のヒンジは25パーセントを示している。発症者および未発症者による2つの長期にわたるプロフィールの実例も示す(パネルC)。パネルDは、血清転換の9ヶ月前および血清転換の直後における発症者と非発症者のリゾホスファチジルコリンレベルの変化を示す表(未発症者のタイムポイントは、発症者のタイムポイントとほぼ同一)である。
【図9】早期年齢における発症者と非発症者の間での、エーテルホスファチジルコリンGPCho(O−18/18:2)の差異である。パネルAは、生後315日から405日(1歳)の小児のレベル。パネルBは、生後630日から810日(2歳)の小児のレベル。パネルCは、生後1980日から2340日(6歳)の小児のレベル。なお、各年齢の1人につき1サンプルを採取し、表示された年齢に近い者も含んでいる。パネルDは、バッチ1での被験者のGPCho(O−l8:0/18:2)の長期にわたるプロフィールである。
【図10】早期年齢における発症者と未発症者の間でのエタノールアミンプラスマローゲンGPEtn(O−18:l(lZ)/20:4)の差異である。プラスマローゲンレベルは、生後315日から405日(パネルA)と、生後1980日から2340日(パネルB)のものを表示している。
【発明の詳細な説明】
【0013】
我々は、自己免疫の発生前の血清代謝体プロフィールにおける異常によって、1型糖尿病の発症に対する本質的な経路を明らかにできるという仮説を立てた。我々は11年半の間、10万人以上の新生児に対して遺伝的糖尿病のリスクをスクリーニングし、また遺伝的糖尿病のリスクを有する小児を、厳格な追跡調査のために登録して仮説を検証してきた。調査を続けている8500人以上の小児のうち、450人以上に多様な自己抗体が出現し、そして138人が1型糖尿病を発症した。我々は、47人の小児からなる出生群において、生まれてから糖尿病を発症するまでの間、3〜12ヶ月おきに採取した1039個の血清サンプルによる代謝体プロフィールと、健康で自己抗体に対して陰性な60人の小児のプロフィールとを比較した。そして我々は、臍帯血における代謝体パターンと、その後のサンプルから、発症者と自己抗体に対して陰性な小児との間における明確な差異を観測した。発症例と対照例の間においては、酸化ストレスとそれに関する炎症を防ぐ代謝体の差異が、自己抗体に陽性の小児における血清転換よりも明らかに早期に現れた。この発見は、メタボロミクスによって幼少期や幼年期に糖尿病のリスクを効果的にスクリーニングできることを意味している。また、酸化損傷と炎症の予防が不十分であることが、糖尿病の病原としての重大な役割を担っていることを示唆している。
【0014】
(好適な実施例)
バイオマーカとして利用される血清代謝体は、酸化ストレスおよび/または炎症を予防するための代謝体としてよい。本実施例では、健康な小児の対照グループと比較して、診断される小児にて減少している収集物により、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表している。
【0015】
「減少している収集物」との表現は、リスクグループの小児のバイオマーカレベルが、健康な対照グループにおける同一のバイオマーカレベルに対して80%以下であるということを意味している。しかし、一般にリスクグループにおけるレベルは、最高でも対照グループの75%、または65〜50%である。
【0016】
好適な実施例の1つとして、バイオマーカは、リン脂質類の合計とするか、1または複数のエステル結合型ホスホコリンとするか、あるいはエステル結合型ホスホコリン類の合計としてよい。これらすべての場合において、バイオマーカは新生児の時点で、例えば臍帯血分析によって測定するとよい。特に好適な実施例では、小児は新生児であって、エステル結合型ホスホコリン類の合計のレベルが対照グループの平均レベルの約80%以下であることを、1型糖尿病を発症させ得る小児の感受性を表す指標としてよい。
【0017】
他の好適な実施例では、バイオマーカは1または複数のエーテル結合型ホスホコリン、例えばGPCho(36:2e)、GPCho(38:1e)、GPCho(38:5e)、GPCho(40:4e)、CPCho(O−18:1/16:0)、CPCho(O−18:1/16:1)、CPCho(O−16:0/20:4)、CPCho(O−18:1/20:4)、CPCho(O−18:0/18:2)などとしてよい(これらに限定するものではない)。エーテル結合型ホスホコリンによれば、新生児から6歳児までの年齢の範囲で測定が可能である(好ましくは1〜2歳)。
【0018】
他の好適な実施例では、バイオマーカはGPEtn(O−18:l(lZ)/20:4)などのエタノールアミンプラスマローゲンとしてよい。このバイオマーカは新生児から6歳児までの年齢の範囲で測定が可能である。
【0019】
またさらなる実施例では、バイオマーカは、酸またはそれらの誘導体である、ケトン、またはアルコールとしてよい。限定されない例として、バイオマーカは、トリプトファン、リビトール、ペンタン二酸、グリシン、エイコサン酸、1、2、3−プロパントリカルボン酸、ミリストレイン酸、マンニトール、クレアチニン、ブタン二酸、ヘプタン酸、2−ケトグルタル酸メトキシム等からなるグループとしてよい。これらの化合物のうち、トリプトファン、リビトール、ペンタン二酸、1、2、3−プロパントリカルボン酸、クレアチニンエノール、ブタン二酸、がより好ましいと考えられている。
【0020】
血清代謝体の測定は、小児が所定の年齢になるまで追跡可能であり、その測定結果は、診断される小児と同年齢の対照グループと比較可能である。
【0021】
また、所定の血清代謝体は診断される小児から測定でき、そのレベルは対照グループの代謝体のレベルと比較可能である。すべてのまたはいくつかの代謝体は、時間が経過しても監視できる。
【0022】
前述した1または複数の血清代謝体の監視は、1型糖尿病の発症に対する遺伝的リスクの測定および/または小児における自己抗体の出現の監視と組み合わせることが可能である。
【0023】
好ましくは、1型糖尿病の発症に対する遺伝的リスクおよび/または自己抗体の出現は、病気を発症する感受性を検出する代謝体マーカに従うとよい。
【0024】
さらに好ましくは、減少したエーテル結合型ホスホコリンレベルと組み合わされた自己抗体マーカの出現を測定することにより、1型糖尿病の高いリスクを有する個人を識別するとよい。
【0025】
リスクグループであると初期の段階で1度診断されたら、小児における1型糖尿病の発症は様々な方法で予防可能である。その予防方法は、例えば、栄養摂取による介入、抗酸化療法、または小児におけるコリンプラスマローゲンの生化学合成による刺激、またはこれらを組み合わせて行うことよい。
【0026】
我々の成果に従った1型糖尿病の潜在的な予防手段は、安全であるとされている栄養摂取による介入としてよい。例えば:
‐母親へのコリンの補給。特に両親がリスク型遺伝子を保有している場合。
‐出生後の小児へのコリンの補給。特にホスホコリンレベルが低いと認められる場合。
‐小児へのコリンプラスマローゲンの補給。出生時にホスホコリンレベルが低いと認められる場合、または出生後にエーテル結合型ホスホコリンが低いと認められる場合。
【0027】
潜在的な薬物療法として、抗酸化療法は1つの選択肢である。1つの案として、本実施例により下方制御が認められた内因性の抗酸化コリンプラスマローゲンの合成を刺激することが挙げられる。その経路は図7に示す。
【0028】
以下本発明を、限定的でない実験的な例によって説明する。
【0029】
(実験例)
我々は、調査した小児(発症者)における、出生から明確な糖尿病を発症するまでに採取したサンプル系列と、自己抗体または糖尿病の徴候を示さなかった小児(未発症者)から採取したサンプル系列とを、高いスループットのメタボロミクステクノロジーを適用して解析し、比較した。対照グループの年齢、性別、出生地は、遺伝的リスクグループに合わせた。血清脂質、水溶性成分、代謝体と結合した血清アルブミンのパターンは、臍帯血と、幼少期や幼年期の間に採取したサンプルとでは異なっていた。また、1型糖尿病の予測の基礎とされている自己抗体は、完全に変化していた。酸化ストレスや炎症を予防するための因子を伴う代謝体と外挿経路の識別は、病気の発症の抑制のために非常に重要であり、糖尿病の予防のための潜在的な目標物を備えている。
【0030】
(被験者の選定)
DIPPプロジェクトはフィンランドの3つの都市で実行し、これらの都市は合わせて年間11,000人の出生率を有し、これはフィンランドでの出生数のほぼ20%に相当する。本プロジェクトは、1994年11月にトゥルク市で開始した。オウル市は1年間調査に参加し、タンペレ市は3年後に参加した。HLA−DQB1対立遺伝子*02、*0301、*0302、*0602、および*0603は分けられ、DQBl*02に陽性な男児は、さらにDQAl対立遺伝子*0201および*05に詳細に分類された。対立遺伝子に特有な溶液からPCR法により増幅された遺伝子配列は、ランタノイドキレートでラベルされたオリゴヌクレオチドプローブによりハイブリダイズされた。またそのハイブリダイゼーション産物は、時間分解蛍光測定(Victor、Wallac社、トゥルク市)で検出された。2006年6月6日までに、107,484人の新生児と、彼らの年上の兄弟がスクリーニングされ、遺伝的リスクを有する約8,000人の小児に追跡調査が続けられた。
【0031】
我々の試みには、多型性のインスリンプロモータ領域のスクリーニング解析を含めてあった。CTLA4およびPTPN22は、スクリーニング効果がわずかに良いものの、費用対効果が劣るために単純作業でのスクリーニングによる解析を強いられた。しかし我々は、選択した研究目的のためにその解析を続けた。
【0032】
研究参加者のうち、1445人は少なくとも1度は、ランゲルハンス島の細胞、インスリン、グルタミン酸脱炭酸酵素、またはIA−2タンパク質に対する自己抗体に対して陽性であった。彼らのうち516人は、複数の型の自己抗体を有していて、糖尿病の発症の可能性が増大していた。最終的に、137人の小児が追跡調査中に1型糖尿病を発症した(図1a〜図1b)。これら137人の小児の大多数に、最初の自己抗体としてIAAが、単独で、またはICAとGADAのどちらかと共に発生した(一般に、IA−2A抗体は遅れて発生する)。生まれた歳に早くも糖尿病を発症する小児もいれば、明確な糖尿病を発症しないまま、酷似した自己抗体パターンを数年間も残存させていた小児もいた(例えば図1b参照)。追跡調査の間、自己抗体の値は全体として顕著に変化したが、その値は、臨床的な糖尿病の発症の後にゆっくりと減少していった(図1b参照)。
【0033】
出生から発症(あるいはその後)までの間に3〜6ヶ月おきに収集した長期にわたる血清コレクションにより、病気の原因および潜在的な早期メカニズムに対する詳細な調査を行うことができた。自己抗体の出現と期間との関係は図1bに示す。
【0034】
1型糖尿病を発症した被験者は、HLA遺伝子型、性別、出生地と出生時期に応じて、DIPP試験から選び出された。選出された合計41人の発症者と54人の未発症者から、950サンプルを選出した(図1c)。実験とデータ解析のために、サンプルは産まれた都市に基づいて2つのバッチにさらに分けた。すなわちトゥルク市(発症者13人、非発症者26人)、オウル市(発症者28人、非発症者28人)である。
【0035】
遺伝的に定義されたDIPP参加者のメタボロミクスの調査結果と、遺伝的に定義されていないグループの小児における生後7ヶ月から思春期までの間に予め収集しておいた利用可能なサンプル系列とを比較した。そして我々は、1型糖尿病を発症したすべての6歳児を、トゥルク出生群のリスク因子介入特別プロジェクト(STRIP)8から選び出した(合計89サンプル)。彼らは、同じ調査における健康な対照グループと同じ性別の6歳児である。STRIP調査は、選抜した1062人の小児から構成され、そのうちの700人以上に対して、10歳半になるまで調査を継続した。糖尿病を発症したHLAリスク対立遺伝子の保因者の小児は、臨床的に糖尿病を発症する前に、多様な自己抗体を有していた。
【0036】
メタボロミクスデータの調査において、我々は1型糖尿病の記載の構成のうち、3つの観点による比較に特に注目した(図1d)。すなわち、長期にわたるプロフィールの全体の差異、発症者と非発症者との年齢に基づく比較、自己抗体の出現に関連した代謝体プロフィールの変化である。
【0037】
(リピドミク解析は主な交絡因子としての年齢を明らかにする)
我々は、UPLC−MSプラットフォームを使って、選び出した1039個のサンプルすべてについてリピドミク解析を実行した。データ処理は、出力された膨大な数の未確認のピークについて行った。またデータ解析は、すべてのバッチにおいて識別された186種の脂質分子にわたって行った。データ構造の探査および脂質プロフィールに影響を与える主要な交絡因子の識別は、サモンの非線形マッピング9により実行した。サンプルのマップは、高次元(例えば186)のスペースから低次元のスペースにかけての非線形のもので、サンプル間の距離のプロフィール(例えばユークリッド距離)を維持させた。主成分解析10などの一般的な線形法と比べて、サモン法は、高く相互依存した特性11からの情報の抽出、および生データからプロフィールの類似点を直接的に視覚化する能力において優れている。
【0038】
図2は、4つの潜在的な交絡因子として各個人のID、性別、年齢、サンプルの年代を表示する、オウル市のDIPPバッチのサモンマッピングの結果である。サンプルの年代と性別はいずれも、脂質プロフィールとの類似性に影響を与える主要なファクターではないことは明白であった。しかしながら、年齢のプロフィールの密集(図2c)(すなわち、早期年齢の小児の脂質プロフィール)は、後の段階でのどのプロフィールよりも、互いに相似していた。これは、年齢によって異なるが低年齢であるほど均一になる規定食と、彼らの成長に起因する代謝の顕著な変化と、両方によって生じると考えられる。興味深いことに、各個人の間における差異も検出された(図2d)。
【0039】
(発症者と未発症者の間における、自己免疫の発生前の早期年齢での血清リピドームの差異)
早期年齢での病気の予測可能性を試験するために、特定の年齢層に部分最小二乗法による判別解析12を用いた多変量解析を実行した。PLK/DAモデルは、3つのバッチの解析のために独自に開発した。
【0040】
我々は、1歳の発症者と未発症者の間に既に明確な差異があることを見つけ、そしてそれらの差異は、3つのバッチすべてにわたる同一または関連した分子種に属するものであった。また我々は、VIP解析に基づいて最も重要な脂質の分子種を選択するために、DIPPのトゥルク市のバッチに適したモデルを開発して適用した。新しいPLK/DAモデルは、選択した脂質分子種および適用する他の2つのバッチに基づいて開発した。そして我々は、このモデルが、糖尿病の徴候を正確に予測することを発見した。
【0041】
我々の結果からは、事前の遺伝的スクリーニングと組み合わせることで、後に自己抗体および1型糖尿病を発症する小児を、事前に、より正確に定義できるというリピドミクスの方策が示された。
【0042】
(発症例と対照例の間におけるプラスマローゲン分子種の一貫した差異)
血清脂質プロフィールにおいて発見された早期年齢での差異は、予測していたよりずっと早期に病気に関連した現象が起ることを示唆していた。各個人の脂質レベルの経時変化および観測した変化の一貫性を測定するため、我々は、識別した各脂質分子種の長期にわたるプロフィールを調査した。特に我々は、後に自己抗体と1型糖尿病を発症した小児は、早期年齢(すなわち、自己抗体の兆しが著しく発生する前(図3))において、多数のコリンプラスマローゲン分子種のレベルが低下していることを発見した。その差異は、後の年齢においても続いたが、病気自体の出現によるプラスマローゲンレベルへの影響は現れなかった(発症者の終点)。
【0043】
エーテル結合型リン脂質類のサブクラスであるプラスマローゲン類は、従前から酸化損傷の予防に関係していることが知られている13−15。活性酸素種(ROS)は、β細胞を破壊する重大な役割を果たすと提唱され、また、膵臓のランゲルハンス島をサイトカインにさらすと、ROSの生産が増加し、β細胞の酸化損傷を招くことが示されている16。β細胞は特に、抗酸化酵素レベルが低いので酸化損傷を受け易い17。
【0044】
抗酸化療法は、糖尿病の予防が可能な方策を提供できるとされているが18、これまでの結果からは不明瞭である19。我々の結果によれば、1型糖尿病の病原において主要な役割を果たすのは酸化損傷を防ぐ能力であり、ROSの生成自体ではないことが示唆されている。
【0045】
プラスマローゲン合成の最後の段階は、小胞体(ER)で行われていることが知られている20。生体内の実験によって、ERストレスが病気の原因について重大な役割を担っているということは、はっきりと証明された。
【0046】
(臍帯血分析は、後に糖尿病を発症する小児のホスホコリンレベルの低下を明らかにする)
早期年齢での脂質表現型における差異は、後に糖尿病を発症する小児の代謝表現型が、出生の時点で既に異なっているという可能性を高めている。そのため、我々は39人の小児の臍帯血を検査した(そのうちの15人は、その後、12歳になるまでに1型糖尿病を発症した)。しかし、トゥルク市で産まれた小児は、前述した調査結果とは異なっていた。
【0047】
多変量解析は、サンプルのグループに影響している2つの主要な因子を識別した(図4)。トリアシルグリセロールレベルの増大は、発症者と非発症者の両方に影響した。しかしながら、2つのグループから大多数のサンプルを区別する他の主要な因子は、リン脂質レベルの変化であった(図4aと図4b)。発症者の早期年齢において既に下方制御が認められているプラスマローゲン種GPCho(36:2e)は、グループ間における差異はほとんどなかった。しかしながら、エステル結合型ホスホコリンレベル(血清の中で最も豊富なリン脂質種)の合計は、発症者における出生時において既にかなり下方制御されていた(図4d)。
【0048】
(血清転換)
我々はまた、観察された脂質プロフィールの変化が自己免疫の出現と関連しているか否か検査した。そのために、我々は、血清転換の6ヶ月前の期間および血清転換の直後の脂質プロフィールを比較した。
【0049】
発症者のコリンプラスマローゲンレベルは、既に図3で示したように、自己免疫の出現によっては変化しなかった。発症者における血清転換前の主要な因子は、上方制御されたリゾホスファチジルコリンであった(図5)。リゾホスファチジルコリン(LysoPC)は炎症と関連していて21、自己免疫に先がけた炎症を引き起こすといわれている。重要なことに、LysoPCはサイトカイン生産量を高めることが示されている22。LysoPCに特有な上方制御は、短い期間に一時的にだけ表れる。
【0050】
血清転換に続く変化は、主として、エタノールアミンプラスマローゲンレベルの増大である(図5)。これは、エーテル結合型リン脂質の増大が、酸化損傷の増大に対する正常な全身反応であることを示している。
【0051】
要約すると、後に1型糖尿病を発症した小児の長期にわたる血清脂質プロフィールは、自己免疫と病気へつながる所定の現象を明らかにし(図6)、早期の病原において、リン脂質が重要な役割を担うことを提示した。
【0052】
(早期年齢での1型糖尿病の予測可能性)
観察されたリピドームの変化は、血清転換に先がけた代謝プロファイリングを利用することで、病気の予測が可能であることを提示している。分類アルゴリズムは、60%の発症者と非発症者からランダムに選出したサブセットから、拡張した脂質プロフィールに基づいて開発した。既知の長期にわたるプロフィールバリエーションおよび未知の混同ファクターへの依存に基づき、エーテルリン脂質類が潜在的バイオマーカであると考えられた。最良の病気の予測は、1歳半(範囲0.5−2.5年)において、GPCho(O−18:l/16:0)から成る分子種(テーブル1)をバイオマーカにするという、早期年齢での観察である。発症者のための分類規則は、脂質収集物の濃度は4.09μmol/L未満という要件であった。
【0053】
分類は、テスト結果が1型糖尿病と関連しないとする帰無仮説を試験することによって行った。バイアスを制御するために、テストセットとトレーニングセットは、ランダムに1000回選択された。各選択において、脂質特有の分類閾はトレーニングセットで測定し、分類精度はテストセットで評価した。二項分布は、最も観測数の少ない真の陽性(TP)、または最も観測数の多い偽の陽性(FP)、ランダム分類(TP=FP)に応じた確率により正確に計算したP−値を使用して計算した。要約した統計、中央値および各変数における80%の信頼区間が報告された。
【0054】
表1。シングルエーテルホスファチジルコリンGPCho(O−18:l/16:0)から成る分類。被験者が発症者であるか否かの分類は、エーテルホスファチジルコリン収集物が4.1μmol/L未満であるか否かによって行った(90%CI=[4.0μmol/L、4.7μmol/L])。自己抗体陽性サンプルは解析から除外した。TP、真の陽性の数;P、陽性の数(すなわち、発症者);P(TP)、真の陽性の見込み数はTPより偶然に多く;FP、偽の陽性の数;N、陰性の数(すなわち、非発症者);P(FP)、偽の陽性の見込み数はFPより偶然に少なかった。ランダムに選択された1000のテストセットとトレーニングセットに基づく、TP、FP、およびオッズ比、による90%の信頼区間は、括弧で示している。
【表1】
【0055】
(方法)
血清収集物。静脈血液サンプルは1994年〜2004年の間に小児から採取した。サンプルは、空腹時を除く様々な日時において採取した。血液サンプルは、針とBDVacutainer(登録商標)プラスチックチューブまたはVacutainerRプラス・プラスチックチューブを使用して、静脈回収によって採取した(BD VacutainerR SST?チューブは血清分離のためにスプレーコートシリコンとポリマーゲルを含んでいる)。チューブは、凝固させるために室温(RT)に30〜60分放置した。血清は、1300rcf、10分、室温での遠心分離によって分離した。血清サンプルはスモールプラスチックチューブに−80℃で保存した。
【0056】
リピドミクス。等分(10μl)した、11の脂質クラスを含む内部標準混合物と、0.05Mの塩化ナトリウム(10μl)を血清サンプル(10μl)に加え、脂質はクロロホルム/メタノール(2:1、100μl)によって抽出した。ボルテックス(2分)の後に、直立させて放置し(1時間)、遠心分離(10000RPM、3分)を行い、下層は分離し、3つの標識した標準資質を含む標準混合物(10μl)を抽出液に加えた。内部標準混合物は、エステル型脂肪酸としてヘプタン二酸(C17:0)と、以下の脂質化合物(μg/ml)を含む。
【0057】
D−エリスロ−スフィンゴシン−1−ホスフェート(9.3μg/ml;Cl7ベース、Avanti Polar Lipids)。
【0058】
l−ヘプタデカノイル−2−ヒドロキシ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(8.8μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0059】
1−モノヘプタデカノイン(rac)(9.3μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0060】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](9.6μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0061】
N−ヘプタデカノイル−D−エリスロ−スフィンゴシン(9.2μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0062】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](8.6μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0063】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(9.9μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0064】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(8.5μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0065】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(8.9μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0066】
1、2−ジヘプタデカノイン(rac)(10.2μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0067】
トリヘプタデカノイン(10.4μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0068】
(標識した標準混合液の成分)
L−α−リゾホスファチジルコリン−パルミトイル−D3(9.3μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0069】
1、2−ジパルミトイル−D6−sn−グリセロホスファチジルコリン(11.7μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0070】
トリパルミチン−1、1、1−13C3(10.0μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0071】
最初の232個のサンプル(バッチ1)の分析の際、標準混合物を構成する血清サンプル(15μl)は、クロロホルム/メタノール(2:1、100μl)による抽出の前に、トリヘプタデカノイン(0.804mg/ml;Larodan Fine Chemicals)および1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(0.304mg/ml;Larodan Fine Chemicals)を加え、また1つの標準混合物(25μl)のみを加えた。
【0072】
脂質抽出物は、Acquity Ultra Performance LC?(UPLC)と組み合わせたWaters Q−TofPremier mass spectrometerにより分析した。カラムは、50℃に保温した、1.7μmの粒子のAcquity UPLC?のBEH C18 10×50mmを使用した。2成分溶媒系には、A.水(1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH)、およびB.LC/MSグレード(Rathburn)のアセトニトリル/イソプロパノール(5:2、1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH)を用いた。グラジエントは、65%A/35%Bから開始し、6分間でBが100%に達した後、7分その状態で放置した。5分の再平衡ステップを含み、全体のランタイムは18分であった。流量は0.200ml/分であり、注入量は0.75μlであった。サンプルオーガナイザーの温度は10℃に設定した。脂質プロファイリングは、Waters Q−TofPremier mass spectrometerのESI+モードを使用して実行した。データは、m/z300−1200のマスレンジで、スキャン時間0.2secで収集した。最後のサンプルは、スキャン時間を0.02secに変更した。ソース温度は120℃に設定し、脱溶媒ガス(800L/h)として、窒素を250℃で使用した。サンプリングコーンとキャピラリーの電圧は、それぞれ39Vおよび3.2kVであった。レセルピン(50μg/L)はロック用リファレンススプレー(5μl/分;10sec scan frequency)として使用した。タンデム質量分析は選出した脂質分子種の識別のために使用した。MS/MSは、ESI+モードで、15から30Vの衝突エネルギーランプ、およびm/z150から開始するマスレンジを使用して実行した。他の条件は、上記で示す条件とした。
【0073】
メタボロミクスデータの処理と解析。データは、MZmineソフトウェアバージョン0.6023、24を使用して処理をした。代謝体は、インターナルスペクトルライブラリを使用して識別した。
【0074】
部分的最小二乗法による判別解析(PLS/DA)12、25は、このモデルを計算するために、SIMPLSアルゴリズムを用いた監督用モデリング方法として利用した26。ベネチアンブラインドクロスのバリデーション方法27およびQ2スコアは、このモデルの進展のために使用した。薬剤に特有な効果と関連した潜在的な変数に対するトップローディングが報告された。VIP(variable importance in the projection)値28は、特定のグループのクラスタリングに対して、最も重要な分子種を識別するために算出した。多変量解析は、Matlabバージョン7.2(Mathworks、Inc)およびPLSツールボックスバージョン4.0Matlabパッケージ(Eigenvector Research,Inc)を使用して実行した。
【0075】
臍帯血の中で発見された他の血清代謝体(すなわち、非リン脂質)
方法:
血清サンプルは以下の通りに調製した:血清サンプルに、400μlメタノールと、10μl 250ppmのd3−パルミチン酸(内部標準)を加えた。サンプルには、30秒間のボルテックスを行った。30分後、サンプルは3分、10000rpmで遠心分離した。上精はGCバイアルに移し、乾燥状態になるように窒素の下で蒸発させた。サンプルは、20μl MOX(45°C、60分)および20μl MSTFA(45°C、60分)によってシリル化した。サンプルには5μlの保持指標溶液(600ppmのC11、C15、C17、C21、およびC25アルカン)を加えた。
【0076】
機器:
使用した機器は、Leco Pegasus 4D GCxGC−TOF mass spectrometerとAgilent 6890N GCおよびCombi PAL autosamplerを使用した。機器パラメータは以下のようにした。
1:20の血清サンプル2μlを分割噴射。
最初のカラム:RTX−5、10mx180μmx0.20μm
2番目のカラム:BPX−50、1.10mx100μmx0.10μm
常圧35.33psigのヘリウム
【0077】
温度プログラム:
プライマリーオーブン:初温50℃、1分.−>280°C、7°C/分、5分。
セコンドリーオーブン:上記のプライマリーオーブン温度+10℃。
2次元分離時間4s。
MS測定40−700amu、100spectra/s。
【0078】
方法の特徴:
GCxGC−TOFの性能特性は3つの純粋な非抽出の基準化合物と共にテストした。すべての化合物は、10および30000ng/サンプルの間において、8つの収集物レベルに調製した。
【0079】
L−トレオニン:
リニアレンジ:7.4−2200ng
相関係数(リニアレンジにおける):0.99975
相対的な標準偏差(8個のサンプル、7440ng):7.60%
最も低い濃度の収集物7.4ngのS/N:56.6
【0080】
ラウリン酸:
リニアレンジ:10−30000ng
相関係数:0.99737
相対的な標準偏差(7個のサンプル、10100ng):2.61%
最も低い濃度の収集物10.1ngのS/N:115.3
【0081】
コレステロール:
リニアレンジ:10−30000ng
相関係数:0.99999
相対的な標準偏差(7個のサンプル、10000ng):2.89%
最も低い濃度の収集物10.0ngのS/N:62.7
【0082】
データ処理:
ChromaTofソフトウェアはサンプルのデータ処理のために使用した。自作のソフトウェアは、直線とピークが交差し合うサンプルのために使用した。ピークは、合計36サンプルのプロフィールから検出されたピークの数(最小の12ピークに設定)に基づき、またデータベース(類似インデックス閾=800)への特性の一致に基づき取り出した。
【0083】
結果:結果は、以下の表2に示す。Fold(中央値)は、1型糖尿病を発症した小児、および追跡調査中に自己抗体に対して陰性のままだった小児(未発症者)の各代謝体レベルの中央値の比率を示している。p(ウィルコクソン)は、2つのグループを比較したウィルコクソン順位和検定に基づくp値である。Fold(平均)は、1型糖尿病が進行した小児、および追跡調査中に自己抗体に対して陰性のままだった小児(未発症者)の各代謝体レベルの平均値の比率を示している。p(t−検定)は、2つのグループを比較した両側t検定に基づくp値である。
【表2】
【0084】
本発明にかかる方法は、ここにはわずかな実施例しか開示していないが、様々な実施例の形式を組み合わせることが可能であることが理解される。本発明の思想を逸脱することのない他の実施例が存在することは、当業者にとって明らかである。したがって、本文に記載された実施例は説明に役立つものの、本発明を制限するものではない。
【参考文献】
【0085】
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【発明の分野】
【0001】
本発明は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性の早期診断方法に関するものである。さらに、本発明は、1型糖尿病の発症に対する感受性が強いと診断された小児の1型糖尿病予防方法に関するものである。
【発明の背景】
【0002】
本文では、様々な出版物およびその他の資料を、本発明の背景を説明するために引用している。特に、実施に関する詳細を補足する事例は、参考文献として加えている。
【0003】
1型糖尿病は、自己の免疫系が膵臓のランゲルハンス島のβ細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患である。破壊や損傷を受けたβ細胞は、インスリン分泌量が減少したり、インスリンが分泌できなくなったりしてしまう。
【0004】
過去10年から50年の間において、1型糖尿病は、小児の最も一般的な内分泌代謝疾患として、理由は解明されていないが多くの西欧諸国でその発生率が増加している。β細胞に特異的な自己抗体は、膵臓のランゲルハンス島におけるインスリン分泌β細胞の特定の機能障害および深刻な破壊と共に発生すると考えられている。また自己抗体の発生は、一般に1型糖尿病の発症より数ヶ月から数年前に起ると考えられている。自己免疫の未知の発生因子と不明なメカニズムによって、β細胞の機能不全が進行していて、これらは、病気自体のリスク、および各個人の遺伝的な感受性による発症までの期間の推定を妨げるだけでなく、効果的な予防法の発見も妨げている。
【発明の目的と概要】
【0005】
本発明は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性の早期診断方法を提供することを目的とする。
【0006】
特に、本発明は、臨床的な発病の数ヶ月から数年前に、望ましくは小児の血清中に自己抗体が出現する前に、小児の1型糖尿病の発症リスクを診断する方法を提供することを目的とする。本発明の目的の1つは、新生児に対する将来の1型糖尿病の発症リスクを診断する方法を提供することである。
【0007】
さらに、本発明の目的の1つは、1型糖尿病の発症に対する感受性が強いと診断された小児の1型糖尿病を予防する方法を提供することである。
【0008】
既に確立されている方法の問題点を解決するために、1994年のフィンランドで、我々は1型糖尿病の予測と予防の研究(DIPP)として、広範囲な出生群の調査1を開始した。1型糖尿病のリスクおよびHLA対立遺伝子に関連した防御反応は、両親へのインフォームドコンセントの後に、まず新生児の臍帯血中から分析した。遺伝的リスクが増大している保因者の小児に対して、いつ糖尿病に関連する自己抗体が出現するのか、またはいつ臨床的な糖尿病が発症するのか見極めるため、頻繁に検査を行った。11年半の調査期間の間、10万人以上の新生児をスクリーニングした。そのうちの450人以上に、病気のリスクが明らかに増大していることを示す、多様な自己抗体が発生していた。現在までに、調査に残ったうちの138人に臨床的な糖尿病が発症した。そして、病気の原因と予測の研究のための独特なサンプル系列が得られた。
【0009】
血清の代謝体のパターンは、少なくともいくつかの組織系の恒常性を反映している。特定の代謝体グループにおける変化は、環境や遺伝的な変更または介入2に対する組織系の反応である。メタボロミクスのプラットフォームは、高いサンプルスループット性能を有していて、応答時間に従ってすべての種類の生体物質に適用できる。また代謝表現型は、栄養状態や腸内の微生物叢3、4等のような環境的要因の影響を受けていて、例えば1型糖尿病のような複雑な病気に対する特有の関連性を有し、遺伝的要因と環境要因5の両方の影響を受けているものと考えられている。今日の、分析的で膨大な量のデータを扱い得る情報技術によって、メタボロミクスアプローチはますます有益なものとなっている。従ってメタボロミクスは、例えば、選別された生理学的な反応および病理学的な反応6、7の複雑な表現型およびバイオマーカの特性評価として、有力なツールを提供可能である。
【0010】
このように、最も広い見地から見れば、本発明は、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性の早期診断方法に関するものであり、その方法は以下の工程を含む。すなわち、
i)診断される小児における少なくとも1つの血清代謝体の収集物を測定し、
ii)血清代謝体の収集物と、健康児からなる対照グループにおける同種の血清代謝体の収集物とを比較し、
iii)診断される小児と対照グループとの間における収集物の差異を、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すためのバイオマーカとして使用する。
【0011】
他の側面から見れば、本発明は、小児の1型糖尿病の発症を予防する方法に関するものであり、本発明に従って、1型糖尿病の発症に対して感受性が強いと診断された小児に対する、糖尿病の発症を防ぐ1または複数の手段から構成されている方法である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】メタボロミクス用のDIPP研究とサンプルの選定を示す図であり、DIPP研究を示す図である。
【図1b】9歳で発症した小児の自己抗体プロフィールである。
【図1c】調査したサンプルである。
【図1d】分析結果と本文で扱う主な問題を示す図である。
【図2】オウル市のバッチの全サンプルの2次元的なサモンマッピングを示す図であり、合計518個のサンプルを含み、うち186種の同定された脂質が変数として含まれている。4つの異なる潜在的な交絡因子のマッピングであり、(a)各個人のID、(b)性別、(c)年齢、(d)サンプルの年代、である。
【図3】DIPPによるトゥルク市のバッチから選択したエーテル結合型ホスファチジルコリン類のプロフィール。(a)GPCho(36:2e)の長期にわたるプロフィール。(b)GPCho(40:4e)の長期にわたるプロフィール。(c)1歳児のGPCho(36:2e)レベル(1歳に最も近い小児1人につき1サンプル)。(d)3歳児のGPCho(36:2e)レベル。(e)6歳児のGPCho(36:2e)レベル。
【図4】臍帯血の脂質プロフィール。(a)出生時における発症者と大多数の非発症者との間の脂質プロフィールの差異を明らかにしたスコアプロット。(b)リン脂質に属する各対象物の特性の差異。(c)発症者と未発症者とで共通なエーテル結合型ホスホコリンGPCho(36:2e)。(d)すべてのエステル結合型グリセロホスホコリンの分子種の合計として算出された総ホスホコリンレベル。
【図5】血清転換の前後6ヶ月の間隔における脂質プロフィール。(a)PLS/DA分析により検出された脂質プロフィールの変化。(b)発症者において血清転換に先がけて(すなわち、自己抗体の出現前に)上方制御され、炎症に関連することが知られているリゾホスファチジルコリン分子種LysoGPCho(18:0)。(c)発症者において血清転換の後に上方制御されるエーテル結合型ホスホエタノールアミン分子種GPEth(38:le)。
【図6】1型糖尿病の病原に関する記載の要約である。
【図7】DHAPからのコリンプラスマローゲンの合成経路である。
【図8】パネルAは、1歳半および5歳の発症者における、各1人につき1サンプルのエーテルホスファチジルコリンレベルの変化(1歳半および5歳に近い年齢も含む)である。なお、正確な脂肪酸ポジション(すなわち、sn1対sn2)、および二重結合位置は未確認である。パネルBは、発症者と非発症者のGPCho(O−18:l/16:0)収集物を示すボックスプロット(データの50%を含んでいる)である。ボックスの上部の角(ヒンジ)はデータの75パーセントを示していて、下部のヒンジは25パーセントを示している。発症者および未発症者による2つの長期にわたるプロフィールの実例も示す(パネルC)。パネルDは、血清転換の9ヶ月前および血清転換の直後における発症者と非発症者のリゾホスファチジルコリンレベルの変化を示す表(未発症者のタイムポイントは、発症者のタイムポイントとほぼ同一)である。
【図9】早期年齢における発症者と非発症者の間での、エーテルホスファチジルコリンGPCho(O−18/18:2)の差異である。パネルAは、生後315日から405日(1歳)の小児のレベル。パネルBは、生後630日から810日(2歳)の小児のレベル。パネルCは、生後1980日から2340日(6歳)の小児のレベル。なお、各年齢の1人につき1サンプルを採取し、表示された年齢に近い者も含んでいる。パネルDは、バッチ1での被験者のGPCho(O−l8:0/18:2)の長期にわたるプロフィールである。
【図10】早期年齢における発症者と未発症者の間でのエタノールアミンプラスマローゲンGPEtn(O−18:l(lZ)/20:4)の差異である。プラスマローゲンレベルは、生後315日から405日(パネルA)と、生後1980日から2340日(パネルB)のものを表示している。
【発明の詳細な説明】
【0013】
我々は、自己免疫の発生前の血清代謝体プロフィールにおける異常によって、1型糖尿病の発症に対する本質的な経路を明らかにできるという仮説を立てた。我々は11年半の間、10万人以上の新生児に対して遺伝的糖尿病のリスクをスクリーニングし、また遺伝的糖尿病のリスクを有する小児を、厳格な追跡調査のために登録して仮説を検証してきた。調査を続けている8500人以上の小児のうち、450人以上に多様な自己抗体が出現し、そして138人が1型糖尿病を発症した。我々は、47人の小児からなる出生群において、生まれてから糖尿病を発症するまでの間、3〜12ヶ月おきに採取した1039個の血清サンプルによる代謝体プロフィールと、健康で自己抗体に対して陰性な60人の小児のプロフィールとを比較した。そして我々は、臍帯血における代謝体パターンと、その後のサンプルから、発症者と自己抗体に対して陰性な小児との間における明確な差異を観測した。発症例と対照例の間においては、酸化ストレスとそれに関する炎症を防ぐ代謝体の差異が、自己抗体に陽性の小児における血清転換よりも明らかに早期に現れた。この発見は、メタボロミクスによって幼少期や幼年期に糖尿病のリスクを効果的にスクリーニングできることを意味している。また、酸化損傷と炎症の予防が不十分であることが、糖尿病の病原としての重大な役割を担っていることを示唆している。
【0014】
(好適な実施例)
バイオマーカとして利用される血清代謝体は、酸化ストレスおよび/または炎症を予防するための代謝体としてよい。本実施例では、健康な小児の対照グループと比較して、診断される小児にて減少している収集物により、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表している。
【0015】
「減少している収集物」との表現は、リスクグループの小児のバイオマーカレベルが、健康な対照グループにおける同一のバイオマーカレベルに対して80%以下であるということを意味している。しかし、一般にリスクグループにおけるレベルは、最高でも対照グループの75%、または65〜50%である。
【0016】
好適な実施例の1つとして、バイオマーカは、リン脂質類の合計とするか、1または複数のエステル結合型ホスホコリンとするか、あるいはエステル結合型ホスホコリン類の合計としてよい。これらすべての場合において、バイオマーカは新生児の時点で、例えば臍帯血分析によって測定するとよい。特に好適な実施例では、小児は新生児であって、エステル結合型ホスホコリン類の合計のレベルが対照グループの平均レベルの約80%以下であることを、1型糖尿病を発症させ得る小児の感受性を表す指標としてよい。
【0017】
他の好適な実施例では、バイオマーカは1または複数のエーテル結合型ホスホコリン、例えばGPCho(36:2e)、GPCho(38:1e)、GPCho(38:5e)、GPCho(40:4e)、CPCho(O−18:1/16:0)、CPCho(O−18:1/16:1)、CPCho(O−16:0/20:4)、CPCho(O−18:1/20:4)、CPCho(O−18:0/18:2)などとしてよい(これらに限定するものではない)。エーテル結合型ホスホコリンによれば、新生児から6歳児までの年齢の範囲で測定が可能である(好ましくは1〜2歳)。
【0018】
他の好適な実施例では、バイオマーカはGPEtn(O−18:l(lZ)/20:4)などのエタノールアミンプラスマローゲンとしてよい。このバイオマーカは新生児から6歳児までの年齢の範囲で測定が可能である。
【0019】
またさらなる実施例では、バイオマーカは、酸またはそれらの誘導体である、ケトン、またはアルコールとしてよい。限定されない例として、バイオマーカは、トリプトファン、リビトール、ペンタン二酸、グリシン、エイコサン酸、1、2、3−プロパントリカルボン酸、ミリストレイン酸、マンニトール、クレアチニン、ブタン二酸、ヘプタン酸、2−ケトグルタル酸メトキシム等からなるグループとしてよい。これらの化合物のうち、トリプトファン、リビトール、ペンタン二酸、1、2、3−プロパントリカルボン酸、クレアチニンエノール、ブタン二酸、がより好ましいと考えられている。
【0020】
血清代謝体の測定は、小児が所定の年齢になるまで追跡可能であり、その測定結果は、診断される小児と同年齢の対照グループと比較可能である。
【0021】
また、所定の血清代謝体は診断される小児から測定でき、そのレベルは対照グループの代謝体のレベルと比較可能である。すべてのまたはいくつかの代謝体は、時間が経過しても監視できる。
【0022】
前述した1または複数の血清代謝体の監視は、1型糖尿病の発症に対する遺伝的リスクの測定および/または小児における自己抗体の出現の監視と組み合わせることが可能である。
【0023】
好ましくは、1型糖尿病の発症に対する遺伝的リスクおよび/または自己抗体の出現は、病気を発症する感受性を検出する代謝体マーカに従うとよい。
【0024】
さらに好ましくは、減少したエーテル結合型ホスホコリンレベルと組み合わされた自己抗体マーカの出現を測定することにより、1型糖尿病の高いリスクを有する個人を識別するとよい。
【0025】
リスクグループであると初期の段階で1度診断されたら、小児における1型糖尿病の発症は様々な方法で予防可能である。その予防方法は、例えば、栄養摂取による介入、抗酸化療法、または小児におけるコリンプラスマローゲンの生化学合成による刺激、またはこれらを組み合わせて行うことよい。
【0026】
我々の成果に従った1型糖尿病の潜在的な予防手段は、安全であるとされている栄養摂取による介入としてよい。例えば:
‐母親へのコリンの補給。特に両親がリスク型遺伝子を保有している場合。
‐出生後の小児へのコリンの補給。特にホスホコリンレベルが低いと認められる場合。
‐小児へのコリンプラスマローゲンの補給。出生時にホスホコリンレベルが低いと認められる場合、または出生後にエーテル結合型ホスホコリンが低いと認められる場合。
【0027】
潜在的な薬物療法として、抗酸化療法は1つの選択肢である。1つの案として、本実施例により下方制御が認められた内因性の抗酸化コリンプラスマローゲンの合成を刺激することが挙げられる。その経路は図7に示す。
【0028】
以下本発明を、限定的でない実験的な例によって説明する。
【0029】
(実験例)
我々は、調査した小児(発症者)における、出生から明確な糖尿病を発症するまでに採取したサンプル系列と、自己抗体または糖尿病の徴候を示さなかった小児(未発症者)から採取したサンプル系列とを、高いスループットのメタボロミクステクノロジーを適用して解析し、比較した。対照グループの年齢、性別、出生地は、遺伝的リスクグループに合わせた。血清脂質、水溶性成分、代謝体と結合した血清アルブミンのパターンは、臍帯血と、幼少期や幼年期の間に採取したサンプルとでは異なっていた。また、1型糖尿病の予測の基礎とされている自己抗体は、完全に変化していた。酸化ストレスや炎症を予防するための因子を伴う代謝体と外挿経路の識別は、病気の発症の抑制のために非常に重要であり、糖尿病の予防のための潜在的な目標物を備えている。
【0030】
(被験者の選定)
DIPPプロジェクトはフィンランドの3つの都市で実行し、これらの都市は合わせて年間11,000人の出生率を有し、これはフィンランドでの出生数のほぼ20%に相当する。本プロジェクトは、1994年11月にトゥルク市で開始した。オウル市は1年間調査に参加し、タンペレ市は3年後に参加した。HLA−DQB1対立遺伝子*02、*0301、*0302、*0602、および*0603は分けられ、DQBl*02に陽性な男児は、さらにDQAl対立遺伝子*0201および*05に詳細に分類された。対立遺伝子に特有な溶液からPCR法により増幅された遺伝子配列は、ランタノイドキレートでラベルされたオリゴヌクレオチドプローブによりハイブリダイズされた。またそのハイブリダイゼーション産物は、時間分解蛍光測定(Victor、Wallac社、トゥルク市)で検出された。2006年6月6日までに、107,484人の新生児と、彼らの年上の兄弟がスクリーニングされ、遺伝的リスクを有する約8,000人の小児に追跡調査が続けられた。
【0031】
我々の試みには、多型性のインスリンプロモータ領域のスクリーニング解析を含めてあった。CTLA4およびPTPN22は、スクリーニング効果がわずかに良いものの、費用対効果が劣るために単純作業でのスクリーニングによる解析を強いられた。しかし我々は、選択した研究目的のためにその解析を続けた。
【0032】
研究参加者のうち、1445人は少なくとも1度は、ランゲルハンス島の細胞、インスリン、グルタミン酸脱炭酸酵素、またはIA−2タンパク質に対する自己抗体に対して陽性であった。彼らのうち516人は、複数の型の自己抗体を有していて、糖尿病の発症の可能性が増大していた。最終的に、137人の小児が追跡調査中に1型糖尿病を発症した(図1a〜図1b)。これら137人の小児の大多数に、最初の自己抗体としてIAAが、単独で、またはICAとGADAのどちらかと共に発生した(一般に、IA−2A抗体は遅れて発生する)。生まれた歳に早くも糖尿病を発症する小児もいれば、明確な糖尿病を発症しないまま、酷似した自己抗体パターンを数年間も残存させていた小児もいた(例えば図1b参照)。追跡調査の間、自己抗体の値は全体として顕著に変化したが、その値は、臨床的な糖尿病の発症の後にゆっくりと減少していった(図1b参照)。
【0033】
出生から発症(あるいはその後)までの間に3〜6ヶ月おきに収集した長期にわたる血清コレクションにより、病気の原因および潜在的な早期メカニズムに対する詳細な調査を行うことができた。自己抗体の出現と期間との関係は図1bに示す。
【0034】
1型糖尿病を発症した被験者は、HLA遺伝子型、性別、出生地と出生時期に応じて、DIPP試験から選び出された。選出された合計41人の発症者と54人の未発症者から、950サンプルを選出した(図1c)。実験とデータ解析のために、サンプルは産まれた都市に基づいて2つのバッチにさらに分けた。すなわちトゥルク市(発症者13人、非発症者26人)、オウル市(発症者28人、非発症者28人)である。
【0035】
遺伝的に定義されたDIPP参加者のメタボロミクスの調査結果と、遺伝的に定義されていないグループの小児における生後7ヶ月から思春期までの間に予め収集しておいた利用可能なサンプル系列とを比較した。そして我々は、1型糖尿病を発症したすべての6歳児を、トゥルク出生群のリスク因子介入特別プロジェクト(STRIP)8から選び出した(合計89サンプル)。彼らは、同じ調査における健康な対照グループと同じ性別の6歳児である。STRIP調査は、選抜した1062人の小児から構成され、そのうちの700人以上に対して、10歳半になるまで調査を継続した。糖尿病を発症したHLAリスク対立遺伝子の保因者の小児は、臨床的に糖尿病を発症する前に、多様な自己抗体を有していた。
【0036】
メタボロミクスデータの調査において、我々は1型糖尿病の記載の構成のうち、3つの観点による比較に特に注目した(図1d)。すなわち、長期にわたるプロフィールの全体の差異、発症者と非発症者との年齢に基づく比較、自己抗体の出現に関連した代謝体プロフィールの変化である。
【0037】
(リピドミク解析は主な交絡因子としての年齢を明らかにする)
我々は、UPLC−MSプラットフォームを使って、選び出した1039個のサンプルすべてについてリピドミク解析を実行した。データ処理は、出力された膨大な数の未確認のピークについて行った。またデータ解析は、すべてのバッチにおいて識別された186種の脂質分子にわたって行った。データ構造の探査および脂質プロフィールに影響を与える主要な交絡因子の識別は、サモンの非線形マッピング9により実行した。サンプルのマップは、高次元(例えば186)のスペースから低次元のスペースにかけての非線形のもので、サンプル間の距離のプロフィール(例えばユークリッド距離)を維持させた。主成分解析10などの一般的な線形法と比べて、サモン法は、高く相互依存した特性11からの情報の抽出、および生データからプロフィールの類似点を直接的に視覚化する能力において優れている。
【0038】
図2は、4つの潜在的な交絡因子として各個人のID、性別、年齢、サンプルの年代を表示する、オウル市のDIPPバッチのサモンマッピングの結果である。サンプルの年代と性別はいずれも、脂質プロフィールとの類似性に影響を与える主要なファクターではないことは明白であった。しかしながら、年齢のプロフィールの密集(図2c)(すなわち、早期年齢の小児の脂質プロフィール)は、後の段階でのどのプロフィールよりも、互いに相似していた。これは、年齢によって異なるが低年齢であるほど均一になる規定食と、彼らの成長に起因する代謝の顕著な変化と、両方によって生じると考えられる。興味深いことに、各個人の間における差異も検出された(図2d)。
【0039】
(発症者と未発症者の間における、自己免疫の発生前の早期年齢での血清リピドームの差異)
早期年齢での病気の予測可能性を試験するために、特定の年齢層に部分最小二乗法による判別解析12を用いた多変量解析を実行した。PLK/DAモデルは、3つのバッチの解析のために独自に開発した。
【0040】
我々は、1歳の発症者と未発症者の間に既に明確な差異があることを見つけ、そしてそれらの差異は、3つのバッチすべてにわたる同一または関連した分子種に属するものであった。また我々は、VIP解析に基づいて最も重要な脂質の分子種を選択するために、DIPPのトゥルク市のバッチに適したモデルを開発して適用した。新しいPLK/DAモデルは、選択した脂質分子種および適用する他の2つのバッチに基づいて開発した。そして我々は、このモデルが、糖尿病の徴候を正確に予測することを発見した。
【0041】
我々の結果からは、事前の遺伝的スクリーニングと組み合わせることで、後に自己抗体および1型糖尿病を発症する小児を、事前に、より正確に定義できるというリピドミクスの方策が示された。
【0042】
(発症例と対照例の間におけるプラスマローゲン分子種の一貫した差異)
血清脂質プロフィールにおいて発見された早期年齢での差異は、予測していたよりずっと早期に病気に関連した現象が起ることを示唆していた。各個人の脂質レベルの経時変化および観測した変化の一貫性を測定するため、我々は、識別した各脂質分子種の長期にわたるプロフィールを調査した。特に我々は、後に自己抗体と1型糖尿病を発症した小児は、早期年齢(すなわち、自己抗体の兆しが著しく発生する前(図3))において、多数のコリンプラスマローゲン分子種のレベルが低下していることを発見した。その差異は、後の年齢においても続いたが、病気自体の出現によるプラスマローゲンレベルへの影響は現れなかった(発症者の終点)。
【0043】
エーテル結合型リン脂質類のサブクラスであるプラスマローゲン類は、従前から酸化損傷の予防に関係していることが知られている13−15。活性酸素種(ROS)は、β細胞を破壊する重大な役割を果たすと提唱され、また、膵臓のランゲルハンス島をサイトカインにさらすと、ROSの生産が増加し、β細胞の酸化損傷を招くことが示されている16。β細胞は特に、抗酸化酵素レベルが低いので酸化損傷を受け易い17。
【0044】
抗酸化療法は、糖尿病の予防が可能な方策を提供できるとされているが18、これまでの結果からは不明瞭である19。我々の結果によれば、1型糖尿病の病原において主要な役割を果たすのは酸化損傷を防ぐ能力であり、ROSの生成自体ではないことが示唆されている。
【0045】
プラスマローゲン合成の最後の段階は、小胞体(ER)で行われていることが知られている20。生体内の実験によって、ERストレスが病気の原因について重大な役割を担っているということは、はっきりと証明された。
【0046】
(臍帯血分析は、後に糖尿病を発症する小児のホスホコリンレベルの低下を明らかにする)
早期年齢での脂質表現型における差異は、後に糖尿病を発症する小児の代謝表現型が、出生の時点で既に異なっているという可能性を高めている。そのため、我々は39人の小児の臍帯血を検査した(そのうちの15人は、その後、12歳になるまでに1型糖尿病を発症した)。しかし、トゥルク市で産まれた小児は、前述した調査結果とは異なっていた。
【0047】
多変量解析は、サンプルのグループに影響している2つの主要な因子を識別した(図4)。トリアシルグリセロールレベルの増大は、発症者と非発症者の両方に影響した。しかしながら、2つのグループから大多数のサンプルを区別する他の主要な因子は、リン脂質レベルの変化であった(図4aと図4b)。発症者の早期年齢において既に下方制御が認められているプラスマローゲン種GPCho(36:2e)は、グループ間における差異はほとんどなかった。しかしながら、エステル結合型ホスホコリンレベル(血清の中で最も豊富なリン脂質種)の合計は、発症者における出生時において既にかなり下方制御されていた(図4d)。
【0048】
(血清転換)
我々はまた、観察された脂質プロフィールの変化が自己免疫の出現と関連しているか否か検査した。そのために、我々は、血清転換の6ヶ月前の期間および血清転換の直後の脂質プロフィールを比較した。
【0049】
発症者のコリンプラスマローゲンレベルは、既に図3で示したように、自己免疫の出現によっては変化しなかった。発症者における血清転換前の主要な因子は、上方制御されたリゾホスファチジルコリンであった(図5)。リゾホスファチジルコリン(LysoPC)は炎症と関連していて21、自己免疫に先がけた炎症を引き起こすといわれている。重要なことに、LysoPCはサイトカイン生産量を高めることが示されている22。LysoPCに特有な上方制御は、短い期間に一時的にだけ表れる。
【0050】
血清転換に続く変化は、主として、エタノールアミンプラスマローゲンレベルの増大である(図5)。これは、エーテル結合型リン脂質の増大が、酸化損傷の増大に対する正常な全身反応であることを示している。
【0051】
要約すると、後に1型糖尿病を発症した小児の長期にわたる血清脂質プロフィールは、自己免疫と病気へつながる所定の現象を明らかにし(図6)、早期の病原において、リン脂質が重要な役割を担うことを提示した。
【0052】
(早期年齢での1型糖尿病の予測可能性)
観察されたリピドームの変化は、血清転換に先がけた代謝プロファイリングを利用することで、病気の予測が可能であることを提示している。分類アルゴリズムは、60%の発症者と非発症者からランダムに選出したサブセットから、拡張した脂質プロフィールに基づいて開発した。既知の長期にわたるプロフィールバリエーションおよび未知の混同ファクターへの依存に基づき、エーテルリン脂質類が潜在的バイオマーカであると考えられた。最良の病気の予測は、1歳半(範囲0.5−2.5年)において、GPCho(O−18:l/16:0)から成る分子種(テーブル1)をバイオマーカにするという、早期年齢での観察である。発症者のための分類規則は、脂質収集物の濃度は4.09μmol/L未満という要件であった。
【0053】
分類は、テスト結果が1型糖尿病と関連しないとする帰無仮説を試験することによって行った。バイアスを制御するために、テストセットとトレーニングセットは、ランダムに1000回選択された。各選択において、脂質特有の分類閾はトレーニングセットで測定し、分類精度はテストセットで評価した。二項分布は、最も観測数の少ない真の陽性(TP)、または最も観測数の多い偽の陽性(FP)、ランダム分類(TP=FP)に応じた確率により正確に計算したP−値を使用して計算した。要約した統計、中央値および各変数における80%の信頼区間が報告された。
【0054】
表1。シングルエーテルホスファチジルコリンGPCho(O−18:l/16:0)から成る分類。被験者が発症者であるか否かの分類は、エーテルホスファチジルコリン収集物が4.1μmol/L未満であるか否かによって行った(90%CI=[4.0μmol/L、4.7μmol/L])。自己抗体陽性サンプルは解析から除外した。TP、真の陽性の数;P、陽性の数(すなわち、発症者);P(TP)、真の陽性の見込み数はTPより偶然に多く;FP、偽の陽性の数;N、陰性の数(すなわち、非発症者);P(FP)、偽の陽性の見込み数はFPより偶然に少なかった。ランダムに選択された1000のテストセットとトレーニングセットに基づく、TP、FP、およびオッズ比、による90%の信頼区間は、括弧で示している。
【表1】
【0055】
(方法)
血清収集物。静脈血液サンプルは1994年〜2004年の間に小児から採取した。サンプルは、空腹時を除く様々な日時において採取した。血液サンプルは、針とBDVacutainer(登録商標)プラスチックチューブまたはVacutainerRプラス・プラスチックチューブを使用して、静脈回収によって採取した(BD VacutainerR SST?チューブは血清分離のためにスプレーコートシリコンとポリマーゲルを含んでいる)。チューブは、凝固させるために室温(RT)に30〜60分放置した。血清は、1300rcf、10分、室温での遠心分離によって分離した。血清サンプルはスモールプラスチックチューブに−80℃で保存した。
【0056】
リピドミクス。等分(10μl)した、11の脂質クラスを含む内部標準混合物と、0.05Mの塩化ナトリウム(10μl)を血清サンプル(10μl)に加え、脂質はクロロホルム/メタノール(2:1、100μl)によって抽出した。ボルテックス(2分)の後に、直立させて放置し(1時間)、遠心分離(10000RPM、3分)を行い、下層は分離し、3つの標識した標準資質を含む標準混合物(10μl)を抽出液に加えた。内部標準混合物は、エステル型脂肪酸としてヘプタン二酸(C17:0)と、以下の脂質化合物(μg/ml)を含む。
【0057】
D−エリスロ−スフィンゴシン−1−ホスフェート(9.3μg/ml;Cl7ベース、Avanti Polar Lipids)。
【0058】
l−ヘプタデカノイル−2−ヒドロキシ−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(8.8μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0059】
1−モノヘプタデカノイン(rac)(9.3μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0060】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](9.6μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0061】
N−ヘプタデカノイル−D−エリスロ−スフィンゴシン(9.2μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0062】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](8.6μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0063】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(9.9μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0064】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(8.5μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0065】
1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(8.9μg/ml;Avanti Polar Lipids)。
【0066】
1、2−ジヘプタデカノイン(rac)(10.2μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0067】
トリヘプタデカノイン(10.4μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0068】
(標識した標準混合液の成分)
L−α−リゾホスファチジルコリン−パルミトイル−D3(9.3μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0069】
1、2−ジパルミトイル−D6−sn−グリセロホスファチジルコリン(11.7μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0070】
トリパルミチン−1、1、1−13C3(10.0μg/ml;Larodan Fine Chemicals)。
【0071】
最初の232個のサンプル(バッチ1)の分析の際、標準混合物を構成する血清サンプル(15μl)は、クロロホルム/メタノール(2:1、100μl)による抽出の前に、トリヘプタデカノイン(0.804mg/ml;Larodan Fine Chemicals)および1、2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(0.304mg/ml;Larodan Fine Chemicals)を加え、また1つの標準混合物(25μl)のみを加えた。
【0072】
脂質抽出物は、Acquity Ultra Performance LC?(UPLC)と組み合わせたWaters Q−TofPremier mass spectrometerにより分析した。カラムは、50℃に保温した、1.7μmの粒子のAcquity UPLC?のBEH C18 10×50mmを使用した。2成分溶媒系には、A.水(1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH)、およびB.LC/MSグレード(Rathburn)のアセトニトリル/イソプロパノール(5:2、1% 1M NH4Ac、0.1% HCOOH)を用いた。グラジエントは、65%A/35%Bから開始し、6分間でBが100%に達した後、7分その状態で放置した。5分の再平衡ステップを含み、全体のランタイムは18分であった。流量は0.200ml/分であり、注入量は0.75μlであった。サンプルオーガナイザーの温度は10℃に設定した。脂質プロファイリングは、Waters Q−TofPremier mass spectrometerのESI+モードを使用して実行した。データは、m/z300−1200のマスレンジで、スキャン時間0.2secで収集した。最後のサンプルは、スキャン時間を0.02secに変更した。ソース温度は120℃に設定し、脱溶媒ガス(800L/h)として、窒素を250℃で使用した。サンプリングコーンとキャピラリーの電圧は、それぞれ39Vおよび3.2kVであった。レセルピン(50μg/L)はロック用リファレンススプレー(5μl/分;10sec scan frequency)として使用した。タンデム質量分析は選出した脂質分子種の識別のために使用した。MS/MSは、ESI+モードで、15から30Vの衝突エネルギーランプ、およびm/z150から開始するマスレンジを使用して実行した。他の条件は、上記で示す条件とした。
【0073】
メタボロミクスデータの処理と解析。データは、MZmineソフトウェアバージョン0.6023、24を使用して処理をした。代謝体は、インターナルスペクトルライブラリを使用して識別した。
【0074】
部分的最小二乗法による判別解析(PLS/DA)12、25は、このモデルを計算するために、SIMPLSアルゴリズムを用いた監督用モデリング方法として利用した26。ベネチアンブラインドクロスのバリデーション方法27およびQ2スコアは、このモデルの進展のために使用した。薬剤に特有な効果と関連した潜在的な変数に対するトップローディングが報告された。VIP(variable importance in the projection)値28は、特定のグループのクラスタリングに対して、最も重要な分子種を識別するために算出した。多変量解析は、Matlabバージョン7.2(Mathworks、Inc)およびPLSツールボックスバージョン4.0Matlabパッケージ(Eigenvector Research,Inc)を使用して実行した。
【0075】
臍帯血の中で発見された他の血清代謝体(すなわち、非リン脂質)
方法:
血清サンプルは以下の通りに調製した:血清サンプルに、400μlメタノールと、10μl 250ppmのd3−パルミチン酸(内部標準)を加えた。サンプルには、30秒間のボルテックスを行った。30分後、サンプルは3分、10000rpmで遠心分離した。上精はGCバイアルに移し、乾燥状態になるように窒素の下で蒸発させた。サンプルは、20μl MOX(45°C、60分)および20μl MSTFA(45°C、60分)によってシリル化した。サンプルには5μlの保持指標溶液(600ppmのC11、C15、C17、C21、およびC25アルカン)を加えた。
【0076】
機器:
使用した機器は、Leco Pegasus 4D GCxGC−TOF mass spectrometerとAgilent 6890N GCおよびCombi PAL autosamplerを使用した。機器パラメータは以下のようにした。
1:20の血清サンプル2μlを分割噴射。
最初のカラム:RTX−5、10mx180μmx0.20μm
2番目のカラム:BPX−50、1.10mx100μmx0.10μm
常圧35.33psigのヘリウム
【0077】
温度プログラム:
プライマリーオーブン:初温50℃、1分.−>280°C、7°C/分、5分。
セコンドリーオーブン:上記のプライマリーオーブン温度+10℃。
2次元分離時間4s。
MS測定40−700amu、100spectra/s。
【0078】
方法の特徴:
GCxGC−TOFの性能特性は3つの純粋な非抽出の基準化合物と共にテストした。すべての化合物は、10および30000ng/サンプルの間において、8つの収集物レベルに調製した。
【0079】
L−トレオニン:
リニアレンジ:7.4−2200ng
相関係数(リニアレンジにおける):0.99975
相対的な標準偏差(8個のサンプル、7440ng):7.60%
最も低い濃度の収集物7.4ngのS/N:56.6
【0080】
ラウリン酸:
リニアレンジ:10−30000ng
相関係数:0.99737
相対的な標準偏差(7個のサンプル、10100ng):2.61%
最も低い濃度の収集物10.1ngのS/N:115.3
【0081】
コレステロール:
リニアレンジ:10−30000ng
相関係数:0.99999
相対的な標準偏差(7個のサンプル、10000ng):2.89%
最も低い濃度の収集物10.0ngのS/N:62.7
【0082】
データ処理:
ChromaTofソフトウェアはサンプルのデータ処理のために使用した。自作のソフトウェアは、直線とピークが交差し合うサンプルのために使用した。ピークは、合計36サンプルのプロフィールから検出されたピークの数(最小の12ピークに設定)に基づき、またデータベース(類似インデックス閾=800)への特性の一致に基づき取り出した。
【0083】
結果:結果は、以下の表2に示す。Fold(中央値)は、1型糖尿病を発症した小児、および追跡調査中に自己抗体に対して陰性のままだった小児(未発症者)の各代謝体レベルの中央値の比率を示している。p(ウィルコクソン)は、2つのグループを比較したウィルコクソン順位和検定に基づくp値である。Fold(平均)は、1型糖尿病が進行した小児、および追跡調査中に自己抗体に対して陰性のままだった小児(未発症者)の各代謝体レベルの平均値の比率を示している。p(t−検定)は、2つのグループを比較した両側t検定に基づくp値である。
【表2】
【0084】
本発明にかかる方法は、ここにはわずかな実施例しか開示していないが、様々な実施例の形式を組み合わせることが可能であることが理解される。本発明の思想を逸脱することのない他の実施例が存在することは、当業者にとって明らかである。したがって、本文に記載された実施例は説明に役立つものの、本発明を制限するものではない。
【参考文献】
【0085】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を診断する方法であって、
i)診断される小児における少なくとも1つの血清代謝体の収集物を測定し、
ii)前記血清代謝体の収集物と、健康児からなる対照グループにおける同種の血清代謝体の収集物とを比較し、
iii)前記診断される小児と前記対照グループとの間における収集物の差異を、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すためのバイオマーカとして使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記診断される小児の年齢は、前記対照グループと同じ、またはほぼ同じ年齢であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記バイオマーカは、前記健康児からなる対照グループと比較して前記診断される小児の収集物に減少している、酸化ストレスおよび/または炎症から保護するための代謝体であり、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記バイオマーカは、リン脂質、酸またはそれらの誘導体である、ケトン、またはアルコールであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、リン脂質類の合計であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、1または複数のエステル結合型リン脂質であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、エステル結合型リン脂質類の合計であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の方法において、前記バイオマーカは、新生児から測定することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記小児は新生児であって、小児のエステル結合型リン脂質類の合計のレベルが、対照グループの平均レベルの約80%以下であるか否かにより、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、1または複数のエーテル結合型リン脂質、またはエタノールアミンプラスマローゲンであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、エーテル結合型ホスファチジルコリンは、GPCho(36:2e)、GPCho(38:le)、GPCho(38:5e)、GPCho(40:4e)、CPCho(O−18:1/16:0)、CPCho(O−18:1/16:1)、CPCho(O−16:0/20:4)、CPCho(O−18:1/20:4)、CPCho(O−18:0/18:2)からなるグループから選出され、その測定は、新生児から6歳児までの年齢の範囲で行われることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記エタノールアミンプラスマローゲンは、GPEtn(O−18:1(1Z)/20:4)であり、かつその測定は、新生児から6歳児までの年齢の範囲で行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、トリプトファン、リビトール、ペンタン二酸、グリシン、エイコサン酸、1、2、3-プロパントリカルボン酸、ミリストレイン酸、マンニトール、クレアチニン、ブタン二酸、ヘプタン酸、2−ケトグルタル酸メトキシムからなるグループから選出されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記血清代謝体の測定は、所定の年齢の小児に対して行い、
前記血清代謝体の測定結果は、前記診断される小児と同じ年齢の前記対照グループの測定結果と比較することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、所定の前記血清代謝体は、前記診断される小児のために測定され、
前記血清代謝体のレベルは、前記対照グループにおける代謝体のレベルと比較することを特徴とする請求項14に記載の診断方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記1型糖尿病の発症および/または自己免疫の出現に対する遺伝的リスクを測定することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記1型糖尿病の発症および/または前記自己免疫の出現に対する遺伝的リスクは、病気を発症する感受性を検出する代謝体マーカに従って測定することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法において、減少したエーテル結合型ホスホコリンレベルと組み合わせた自己抗体マーカの出現を測定することにより、1型糖尿病を発症する高いリスクを有する個人を識別することを特徴とする方法。
【請求項19】
小児の糖尿病の発症を予防する方法であって、1型糖尿病の発症に対して感受性が強いとして請求項1から18のいずれか1項により診断された小児に対する、1または複数の手段から構成されることを特徴とする1型糖尿病の発症を予防する方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、予防手段は、栄養摂取による介入、抗酸化療法、または小児におけるコリンプラスマローゲンの生化学合成による刺激、またはこれらを組み合わせて行うことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記栄養摂取による介入は、規定食による母親へのコリンの補給、規定食による小児へのコリンの補給または規定食による小児へのコリンプラスマローゲンの補給であることを特徴とする方法。
【請求項1】
1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を診断する方法であって、
i)診断される小児における少なくとも1つの血清代謝体の収集物を測定し、
ii)前記血清代謝体の収集物と、健康児からなる対照グループにおける同種の血清代謝体の収集物とを比較し、
iii)前記診断される小児と前記対照グループとの間における収集物の差異を、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すためのバイオマーカとして使用することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記診断される小児の年齢は、前記対照グループと同じ、またはほぼ同じ年齢であることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記バイオマーカは、前記健康児からなる対照グループと比較して前記診断される小児の収集物に減少している、酸化ストレスおよび/または炎症から保護するための代謝体であり、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記バイオマーカは、リン脂質、酸またはそれらの誘導体である、ケトン、またはアルコールであることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、リン脂質類の合計であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、1または複数のエステル結合型リン脂質であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、エステル結合型リン脂質類の合計であることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載の方法において、前記バイオマーカは、新生児から測定することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記小児は新生児であって、小児のエステル結合型リン脂質類の合計のレベルが、対照グループの平均レベルの約80%以下であるか否かにより、1型糖尿病の発症に対する小児の感受性を表すことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、1または複数のエーテル結合型リン脂質、またはエタノールアミンプラスマローゲンであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、エーテル結合型ホスファチジルコリンは、GPCho(36:2e)、GPCho(38:le)、GPCho(38:5e)、GPCho(40:4e)、CPCho(O−18:1/16:0)、CPCho(O−18:1/16:1)、CPCho(O−16:0/20:4)、CPCho(O−18:1/20:4)、CPCho(O−18:0/18:2)からなるグループから選出され、その測定は、新生児から6歳児までの年齢の範囲で行われることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法において、前記エタノールアミンプラスマローゲンは、GPEtn(O−18:1(1Z)/20:4)であり、かつその測定は、新生児から6歳児までの年齢の範囲で行われることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項4に記載の方法において、前記バイオマーカは、トリプトファン、リビトール、ペンタン二酸、グリシン、エイコサン酸、1、2、3-プロパントリカルボン酸、ミリストレイン酸、マンニトール、クレアチニン、ブタン二酸、ヘプタン酸、2−ケトグルタル酸メトキシムからなるグループから選出されることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記血清代謝体の測定は、所定の年齢の小児に対して行い、
前記血清代謝体の測定結果は、前記診断される小児と同じ年齢の前記対照グループの測定結果と比較することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法において、所定の前記血清代謝体は、前記診断される小児のために測定され、
前記血清代謝体のレベルは、前記対照グループにおける代謝体のレベルと比較することを特徴とする請求項14に記載の診断方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法において、前記1型糖尿病の発症および/または自己免疫の出現に対する遺伝的リスクを測定することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、前記1型糖尿病の発症および/または前記自己免疫の出現に対する遺伝的リスクは、病気を発症する感受性を検出する代謝体マーカに従って測定することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項10に記載の方法において、減少したエーテル結合型ホスホコリンレベルと組み合わせた自己抗体マーカの出現を測定することにより、1型糖尿病を発症する高いリスクを有する個人を識別することを特徴とする方法。
【請求項19】
小児の糖尿病の発症を予防する方法であって、1型糖尿病の発症に対して感受性が強いとして請求項1から18のいずれか1項により診断された小児に対する、1または複数の手段から構成されることを特徴とする1型糖尿病の発症を予防する方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法において、予防手段は、栄養摂取による介入、抗酸化療法、または小児におけるコリンプラスマローゲンの生化学合成による刺激、またはこれらを組み合わせて行うことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法において、前記栄養摂取による介入は、規定食による母親へのコリンの補給、規定食による小児へのコリンの補給または規定食による小児へのコリンプラスマローゲンの補給であることを特徴とする方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2010−503840(P2010−503840A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527851(P2009−527851)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/FI2007/000227
【国際公開番号】WO2008/031917
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508366950)
【氏名又は名称原語表記】ZORA BIOSCIENCES OY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【国際出願番号】PCT/FI2007/000227
【国際公開番号】WO2008/031917
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(508366950)
【氏名又は名称原語表記】ZORA BIOSCIENCES OY
【Fターム(参考)】
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