自己免疫状態の予防および治療のための組成物および方法
T細胞の抗原特異性に従ってT細胞を選択的に減少させるかまたは増大させる工程を含む方法を開示する。従って、本発明は、自己抗原を認識する病原性T細胞、例えば、β細胞特異的T細胞を減少させるかまたは除去するために使用することができる。このように、本発明は、IDDMなどの自己免疫疾患を予防、治療、または改善するために使用することができる。さらに、本発明は、抗病原性T細胞などの所望のT細胞を増大させ、自己免疫疾患を予防、治療、および/または改善するために使用することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府は、NIHからの助成金5R01 DK064850-03に従って本発明において権利を所有する。
【0002】
本願は、2007年3月7日に出願された米国特許仮出願第60/893,530号の優先権を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
I.発明の分野
本発明は、免疫学および医学に関する組成物および方法を具体化する。特に、本発明は、自己免疫状態、特に糖尿病の診断および治療のための診断学および治療学に関する。
【背景技術】
【0004】
II.背景
抗原予防接種は、自己免疫におけるT細胞寛容の誘導のために使用され得る。溶液状態の自己抗原性タンパク質またはペプチドの投与は、自己免疫疾患の実験モデルにおいて自己免疫の開始および/または進行を鈍らせることができる(Wraithら, 1989;MetzlerおよびWraith, 1993;LiuおよびWraith, 1995;AndertonおよびWraith, 1998;Karinら, 1994)。しかし、同様の戦略を使用してのヒトにおける限定的な臨床試験は、ほとんどすべて失敗した(Weiner, 1993;Trenthamら, 1993;McKownら, 1999;Pozzilliら, 2000;Group, D.P.T.-T.D.S. 2002;Kapposら, 2000;Bielekovaら, 2000)。これは、治療の選択および条件を導く原理が十分に規定されておらず、結果として、ヒトへの適用に不適切であることを示唆している。
【0005】
自然発生的な器官特異的自己免疫障害は、確率的でかつしばしば予測不能な順序で自然に発生する複数の抗原中の多数のエピトープに対する複雑な応答から生じる。この複雑性は、同一エピトープを認識するリンパ球クローンが、その強度が病原性ポテンシャルと相関する広範囲のアビディティで抗原/主要組織適合複合体(MHC)分子にかみ合うという事実によって度を増す(Amraniら, 2000;Santamaria, 2001;Liblauら, 2002)。従って、自己免疫の予防についての免疫化戦略の結果は、自己抗原、用量、治療の周期性ならびに投与の経路および形態の選択によって影響される可能性が高い。
【0006】
マウスにおける1型糖尿病(T1D)は、自己反応性CD8+ T細胞と関連している。非肥満糖尿病(NOD)マウスは、自己抗原の増大するリストを認識するT細胞による膵β細胞の選択的破壊から生じる、ヒトT1Dに非常によく似た形態のT1Dを生じさせる(LiebermanおよびDiLorenzo, 2003)。T1Dの開始はCD4+細胞の寄与を明らかに必要とするが、T1DはCD8+ T細胞依存性であるという説得力のある証拠が存在する(Santamaria, 2001;Liblauら, 2002)。NODマウス中における膵島関連CD8+細胞の有意なフラクションが、「8.3-TCR様」と呼ばれる、CDR3-不変Vα17-Jα42+ TCRを使用することが発見された(Santamariaら, 1995;Verdaguerら, 1996;Verdaguerら, 1997;DiLorenzoら, 1998)。MHC分子Kd(Andersonら, 1999)との関連においてミモトープNRP-A7(コンビナトリアルペプチドライブラリーを使用して規定された)を認識する、これらの細胞は、既に初期NOD膵島CD8+浸潤物の有意な成分であり(DiLorenzoら, 1998;Andersonら, 1999;Amraniら, 2001)、糖尿病誘発性であり(Verdaguerら, 1996;Verdaguerら, 1997)、未知の機能のタンパク質である(Ardenら, 1999;Martinら, 2001)、膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)(Liebermanら, 2003)由来のペプチドを標的化する。このペプチド(NRP-A7に類似する、IGRP206-214)を認識するCD8+細胞は、循環中において異常に高頻度に存在する(>1/200 CD8+細胞)(Liebermanら, 2003;Trudeauら, 2003)。特に、NODマウスにおける膵島炎の糖尿病への進行は、循環IGRP206-214反応性CD8+プールの周期的増大(Trudeauら, 2003)、その膵島関連相当物のアビディティ成熟(Amraniら, 2000)を常に伴う。最近になって、NODマウス中の膵島関連CD8+細胞は複数のIGRPエピトープを認識することが示され、このことは、IGRPが、少なくともマウスT1Dにおいて、CD8+細胞についての主要な自己抗原であることを示している(Hanら, 2005)。NOD膵島関連CD8+細胞、特に、疾患過程の初期に見られるものは、インスリンエピトープも認識する(Ins B15-23(Wongら, 1999))。
【0007】
関連研究によって、あるHLAクラスI対立遺伝子(即ち、HLA-A*0201)が、ヒトT1Dに対する感受性を与えることが示唆された(Fennessyら, 1994;Honeymanら, 1995;Taitら, 1995;Nejentsevら, 1997;Nakanishiら, 1999;Roblesら, 2002)。病理学研究によって、新たに診断された患者の膵島炎病巣は、ほとんど(HLAクラスI拘束された)CD8+ T細胞からなることが示され(Bottazzoら, 1985;AtkinsonおよびMaclaren, 1990;CastanoおよびEisenbarth, 1990;Hanninenら, 1992;Itohら, 1993;Somozaら, 1994;AtkinsonおよびMaclaren, 1994;Moriwakiら, 1999;Imagawaら, 2001)、これらはまた、膵臓の同種同系移植片(一卵性双生児由来)または同種異系移植片(血縁ドナー由来)での移植によって治療された患者においても主な細胞集団である(Sibleyら, 1985;Santamariaら, 1992)。
【0008】
インスリンは、ヒトT1DおよびマウスT1Dの両方において、抗体およびCD4+応答の重要な標的である(Wongら, 1999;Palmerら, 1983;ChentoufiおよびPolychronakos, 2002;Toma ら, 2005;Nakayamaら, 2005;Kentら, 2005)。ヒトインスリンB鎖エピトープhInsB10-18は、膵島移植レシピエント(Pinkseら, 2005)および自然発生疾患の経過(Tomaら, 2005)の両方において、HLA-A*0201によって、自己反応性CD8+細胞へ提示される。さらに、4つのさらなるペプチドがマウスプレプロインスリン1または2から同定され、これらは、HLA-A*0201との関連においてHLA-A*0201トランスジェニックマウス由来の膵島関連CD8+ T細胞によって認識される。
【0009】
T1D感受性座、IDDM7(2q31)(PociotおよびMcDermott, 2002; Owerbach, 2000)に重なる遺伝子(染色体2q28-32に配置される(Martinら, 2001))によってコードされる、IGRPもまた、ヒトT1Dに潜在的に関連するβ細胞自己抗原として最近同定された(Takakiら, 2006)。ヒトIGRPの2つのHLA-A*0201結合性エピトープ(hIGRP228-236およびhIGRP265-273)は、HLA-A*0201導入遺伝子を発現するマウスMHCクラスI欠損NODマウス由来の膵島関連CD8+ 細胞によって認識される(Takakiら, 2006)。特に、これらの「ヒト化」HLA-A*0201-トランスジェニックマウスの膵島関連CD8+ T細胞は、HLA-A*0201陽性ヒト膵島に対して細胞傷害性であった(Takakiら, 2006)。
【0010】
NODマウスにおけるT1Dは、低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞の増大によって予防され得る。可溶性ペプチドの投与(アジュバント無し)は、抗原特異的T細胞寛容を誘導する有効な方法である(Aicheleら, 1994;Toesら, 1996)。可溶性NRP-A7による前糖尿病NODマウスの治療が、ペプチド/MHCについて最も高い親和性を有するTCRを発現するクロノタイプの選択的除去によってIGRP206-214反応性CD8+サブセットのアビディティの成熟を鈍らせることが以前に示された(Amraniら, 2000)。これらの観察により、「低アビディティ」(および潜在的に抗糖尿病誘発性)クローンによる「高アビディティクロノタイプニッチ」(NRP-A7治療によって空にされる)の占領を促進することによっても、NRP-A7の抗T1D活性が媒介されるという可能性が高められた。この仮説を試験するために、IGRP206-214反応性CD8+ T細胞について部分、完全、または超アゴニスト活性を有する改変ペプチドリガンド(APL)を同定し、広い用量範囲にわたってそれらの抗T1D活性を比較した。
【0011】
中用量の中間親和性APL(NRP-A7)または高用量の低親和性APL(NRP-I4)での長期治療は、T1Dからの防護をもたらした。これは、除去されたそれらの高アビディティIGRP206-214反応性CD8+細胞を犠牲にしての低アビディティIGRP206-214反応性CD8+細胞の局所的蓄積と関連した。予想外なことに、高用量の高親和性APL(NRP-V7)または天然リガンド(IGRP206-214)での長期治療は、最低限の防護しかもたらさなかった。驚くことに、これらのマウスの膵島は、IGRP206-214反応性CD8+細胞をほとんど含有せず、しかし、他のIGRPエピトープを認識するCD8+細胞の増加された集団を含有した。このため、本発明者らは、自己免疫におけるペプチド療法は、それが非病原性低アビディティクローン(Hanら, 2005)による標的器官リンパ球ニッチの占領を促進する場合、最も有効であり得ると結論付けた;数学的モデル化によって支持される予測(Mareeら, 2006)。残念ながら、この結論は、狭い範囲のAPL用量およびアビディティ(標的TCRについて)内においてのみ生じ、このことは、ペプチド療法は、T1Dを予防または治癒するのに適していないことを示唆している。
【0012】
従って、糖尿病、ならびに他の自己免疫障害の治療のためのさらなる組成物および関連する方法についての必要性が存在している。
【発明の概要】
【0013】
IGRPの場合がそうであるように、ペプチドは、1用量当たり数ミリグラムのペプチドを必要とすることから、ペプチドで患者を治療することは困難である。粒子上での抗原/MHC複合体の送達、例えば、ペプチド/MHC/粒子複合体(共刺激分子無し)の送達が企図された。これらの複合体は、ペプチド単独よりもより免疫寛容原性であることがわかる。
【0014】
本願の局面および態様は、自己免疫の治療における新規のパラダイムの発見を含む。従来、ワクチンは、病原体または癌に対する防護をもたらすことができるT細胞を増大させるため、または自己免疫を引き起こし得るT細胞を除去するために使用されてきた。本発明の局面は、いずれもT細胞の抗原特異性に従う、抗自己免疫特性を有する自己反応性CD8+細胞の増大と病原性(自己免疫)特性を有する自己反応性CD8+細胞の除去とを同時に選択的に誘導する新規のタイプの「ワクチン」に関する。抗自己免疫性の自己反応性CD8+ T細胞(抗病原性CD8+細胞)は、組織特異的(標的組織への自然発生的な動員において)であるが抗原非特異的である様式(例えば、他の自己反応性T細胞反応を局所的に抑制する)で、自己反応性T細胞応答を抑制する。結果として、このタイプのワクチンでの治療は、全身性免疫抑制を引き起こすことなく、T1Dを予防および/または改善し得、かつ高血糖NODマウスにおいて正常血糖を回復させ得るかまたは血糖値を低下させ得る。この戦略は、他のT細胞媒介自己免疫疾患の治療に適用可能であり得、膵島移植の際のT1D再発を予防することができる場合がある。
【0015】
本発明のある態様は、T細胞の抗原特異性に従って、T細胞を選択的に減少させるかまたは増大させる方法に関する。従って、本発明は、自己抗原を認識するT細胞、例えばβ細胞特異的T細胞を減少させるかまたは除去するために使用され得る。このように、本発明は、自己免疫疾患、例えばIDDMを予防、治療、または改善するために使用され得る。さらに、本発明は、所望のT細胞、例えば、腫瘍抗原を認識するT細胞を増大させ、これらのT細胞によって攻撃される疾患を予防、治療および/または改善するために使用され得る。
【0016】
本発明の態様は、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに十分な量の抗原/MHC/粒子複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫障害を診断、予防、または治療する方法に関する。支持体に結合したMHCまたはMHC様分子との関連における場合、抗原には、T細胞の活性またはT細胞集団を調節し得る、ペプチド、核酸、糖質、脂質、または他の分子もしくは化合物の全部または一部が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の態様は、抗原−MHC複合体に結合したマイクロ粒子またはナノ粒子を含む免疫寛容原性粒子を含む。抗原−MHC複合体は、粒子に直接またはリンカーを介して結合してもよい。マイクロ粒子またはナノ粒子は、種々の層を含み得、これらは、複数の成分(例えば、抗原−MHC複合体により容易に結合することができる他の分子のカバーリングまたはシェル(例えば、ストレプトアビジンまたはアビジン、または、ナノ粒子に部分を付着させるために使用される他の公知の分子)を備える金属コア)を含んでもよい。ある局面において、マイクロ粒子またはナノ粒子は、セレン化カドミウム、チタン、二酸化チタン、スズ、酸化スズ、ケイ素、二酸化ケイ素 鉄、酸化鉄(III)、銀、ニッケル、金、銅、アルミニウム、鋼、コバルト−クロム合金、チタン合金、ブラッシュ石、リン酸三カルシウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ダイヤモンド、ポリスチレン、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリエチレンからなる群より選択される材料を含む。さらなる局面において、マイクロ粒子またはナノ粒子は、金属性または磁化可能な(magentizable)または超常磁性粒子である。金属ナノ粒子は、Au、Pt、Pd、Cu、Ag、Co、Fe、Ni、Mn、Sm、Nd、Pr、Gd、Ti、Zr、Si、およびIn前駆体、それらの二元合金、それらの三元合金、ならびにそれらの金属間化合物から形成され得る。米国特許第7,332,586号、第7,326,399号、第7,326,399号、第7,060,121号、第6,929,675号、第6,846,474号、第6,712,997号、第6,688,494号を参照のこと;これらは、マイクロ粒子またはナノ粒子の製造に関する組成物および方法の考察について、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0018】
本発明のある局面は、一般的に抗原と呼ばれる、抗原応答または免疫応答を刺激または誘導するポリペプチド、ペプチド、核酸、糖質、脂質、および他の分子の、セグメント、フラグメント、またはエピトープを含む抗原性組成物に関する方法および組成物を含む。特定の局面において、抗原は、自己反応性抗原および/またはその複合体であるか、これらに由来するか、またはこれらの模倣物である。
【0019】
ペプチド抗原には、
ならびに、参照により全体が本明細書に組み入れられる米国公開公報20050202032に開示されるペプチドおよびタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
ある局面において、T1Dの治療用のペプチド抗原は、
またはそれらの組み合わせである。
【0021】
なおさらなる局面において、多発性硬化症(MS)と関連するペプチド抗原を使用することができ、これらには、
またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0022】
ある局面において、抗原−MHC複合体は、マイクロ粒子またはナノ粒子に架橋され得る。マイクロ粒子またはナノ粒子を抗原−MHC複合体に結合する1つの非限定的な方法は、(a)抗原−MHC複合体と架橋剤とを反応させ、それによって抗原−MHC−架橋剤複合体を形成する工程;ならびに(b)マイクロ粒子またはナノ粒子を工程(a)の複合体と反応させる工程を含む。一態様において、前記方法は、工程(b)を行う前に工程(a)の複合体を濃縮する工程を含む。別の態様において、架橋剤は、ヘテロ二官能性架橋剤を含む。なお別の態様において、架橋剤は、DOTA-マレイミド(4-マレイミドブチルアミドベンジル-DOTA)、SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン-)、スルホ-LC-SMPT(スルホスクシンイミジル-6-(α-メチル-α-(2-ピリジルチオ)トルアミド)ヘキサノエート、Traut試薬(2-イミノチオラン-HCl)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。複合体をマイクロ粒子またはナノ粒子に結合する考察については、米国特許公開公報20070059775;米国特許第4,671,958号、第4,659,839号、第4,414,148号、第4,699,784号;第4,680,338号;第4,569,789号;第4,589,071号;第7186814号および第5543391号、欧州特許出願番号188,256を参照のこと。
【0023】
自己免疫障害には、真性糖尿病(diabetes melitus)、移植拒絶、多発性硬化症、早発性卵巣機能不全、強皮症(scleroderm)、シェーグレン病、狼瘡、白斑(vilelego)、脱毛症(禿頭症)、多腺性機能不全、グレーヴズ病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎(polymyosititis)、天疱瘡、クローン病、結腸炎(colititis)、自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、心筋炎(myocardititis)、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患、ブドウ膜炎(uveititis)、悪性貧血、副甲状腺機能低下症、および/または関節リウマチが含まれてもよいが、これらに限定されない。ある局面において、抗原/MHC/粒子複合体のペプチド成分は、治療によって探索、調節、または鈍化される自己免疫応答に含まれる、自己抗原もしくは自己抗原エピトープ、またはそれらの模倣物に由来するかまたはそれらから設計される。特定の局面において、自己抗原は、ペプチド、糖質、または脂質である。ある局面において、自己抗原は、対象の特定の細胞、例えば、膵β細胞によって発現されるタンパク質、糖質、または脂質の、フラグメント、エピトープ、またはペプチドであり、IGRP、インスリン、GADまたはIA-2タンパク質のフラグメントを含むが、これらに限定されない。種々のこのようなタンパク質またはエピトープが、種々の自己免疫状態について同定された。自己抗原は、膵島周辺の(peri-islet)シュワン細胞などの第2の内分泌要素または神経分泌(neurocrine)要素に由来する、ペプチド、糖質、脂質などであってもよい。
【0024】
本発明のなおさらなる局面において、抗原/MHC/粒子複合体のMHC成分は、古典的または非古典的なMHCクラスIまたはMHCクラスIIポリペプチド成分である。MHCクラスI成分は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G分子の全部または一部、特に、HLA-A*0201 MHCクラスI分子などの、HLA-A分子の全部または一部を含み得る。非古典的MHCクラスI成分は、CD1様分子を含み得る。MHCクラスII成分は、HLA-DR、HLA-DQ、またはHLA-DPの全部または一部を含んでもよい。ある局面において、抗原/MHC複合体は、支持体に共有的または非共有的に結合または付着される(抗原/MHC/粒子複合体)。支持体は、典型的に、マイクロ粒子またはナノ粒子である。特に、該粒子は、金属、例えば、鉄または酸化鉄を含む。本発明のペプチドは、支持体に化学的に結合され得、特に、化学リンカーまたはペプチドリンカーを介して結合され得る。CDl分子は、非古典的MHC分子の例である。非古典的MHC分子は、非多形性であり、種間で保存されており、かつ、狭くて深い疎水性のリガンド結合ポケットを有することを特徴とする。これらの結合ポケットは、ナチュラルキラーT(NKT)細胞に糖脂質およびリン脂質を提示することができる。NKT細胞は、NK細胞マーカーおよび半不変なT細胞受容体(TCR)を共発現する独特なリンパ球集団を示す。それらは、広範囲の疾患と関連する免疫応答の調節に関与する。
【0025】
ある態様において、治療によって増大するT細胞は、疾患過程によってプレ活性化(pre-activate)されており、かつ記憶表現型を有する。一局面において、T細胞は、低アビディティで標的エピトープを認識する自己反応性前駆体から生じる。アビディティは、テトラマー結合アッセイなどによって測定することができる。さらなる局面において、抗原/MHC/粒子複合体は、関心対象の自己免疫疾患の臨床症状の発症の前、後、または前および後の両方に、投与される。なおさらなる局面において、本方法は、治療の前および/または後に、自己免疫状態の生物学的パラメータ、例えば、対象の血糖値を評価することを含む工程を含んでもよい。本発明の方法はまた、任意の自己反応性免疫応答の評価を含む、対象の自己免疫状態を評価する工程を含んでもよい。ある局面において、T細胞は、CD4+もしくはCD8+ T細胞またはNK T(NKT)細胞である。
【0026】
本発明のさらなる態様は、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞の増大を刺激するのに十分な量の抗原/MHC/粒子複合体を投与する工程を含む、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞を増大させる方法を含む。ある局面において、T細胞は、CD8+もしくはCD4+ T細胞またはNKT細胞である。
【0027】
なおさらなる態様において、本発明は、細胞または細胞を含む組織の破壊を阻害するのに十分な量の抗原/MHC/粒子複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫応答、特に病原性自己免疫応答から、対象の細胞、例えば膵島細胞を防護するための方法を含み、ここで、前記抗原またはそれが由来する抗原性分子が、細胞と関連する自己抗原に由来する。
【0028】
なおさらなる態様において、本発明は、活動性の自己免疫の指標として、非病原性または抗病原性のCD8+またはCD4+ T細胞応答の、治療により誘導される増大を評価する工程を含む、自己免疫を診断するための方法を含む。
【0029】
本発明の態様は、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに、または、移植された組織または器官によって発現される同種異系抗原または自己抗原を認識する非病原性または抗病原性の細胞の増大を誘導するのに十分な量の、支持体に機能的に結合された抗原−MHC複合体(即ち、抗原/MHC/粒子複合体)を対象へ投与する工程によって、同種異系免疫応答または自己免疫応答による移植組織の拒絶を予防、改善、または治療するための方法を含んでもよい。
【0030】
本発明の態様は、細胞死または細胞死滅を妨げることによって哺乳動物中において所定のタイプの機能細胞、例えば膵島細胞の数を増加させるまたは維持する方法を提供する。ある態様において、この方法は、内因性の細胞および/または組織の再生が望まれる自己免疫疾患を治療するために使用される。このような自己免疫疾患には、真性糖尿病、多発性硬化症、早発性卵巣機能不全、強皮症、シェーグレン病、狼瘡、白斑(vitelego)、脱毛症(禿頭症)、多腺性機能不全、グレーヴズ病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎、天疱瘡、クローン病、結腸炎、自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、心筋炎、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患、ブドウ膜炎、悪性貧血、副甲状腺機能低下症、関節リウマチなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明の一局面は、免疫系を再教育しつつ既存の自己免疫を除去するための新規の二部治療アプローチを提供する。
【0031】
抗原/MHC/粒子複合体とは、ペプチド、糖質、脂質、または、抗原性分子またはタンパク質の他の抗原性セグメント、フラグメント、またはエピトープ(即ち、自己ペプチドまたは自己抗原)を、ある表面上、例えばマイクロ粒子上またはナノ粒子上における提示を指す。「抗原」とは、本明細書において使用される場合、対象における免疫応答、または非病原性細胞の増大を誘導し得る分子の全部、一部、フラグメント、またはセグメントを指す。
【0032】
ある局面において、抗原/MHC/粒子複合体は、免疫応答、例えば、抗体応答を誘導するために、アジュバントと共に投与される必要はない。特定の態様において、抗原/MHC/粒子組成物は、アジュバントの使用を減らしてまたはアジュバントを使用せずに抗体を産生するために、周知のポリクローナル抗体技術およびモノクローナル抗体技術と併用して使用することができる。
【0033】
「死滅させること」または「死滅させる」とは、アポトーシスまたは壊死により細胞死を引き起こすことを意味する。アポトーシスまたは壊死は、任意の細胞死経路によって媒介され得る。
【0034】
「自己免疫細胞」には、例えば、その自己免疫細胞が由来する生物に対して活性を有する、成体脾細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、および骨髄起源の細胞、例えば、哺乳動物の欠陥のある抗原提示細胞(defective antigen presenting cell)が含まれる。
【0035】
「模倣物」とは、リガンドに実質的に類似している、所定のリガンドまたはペプチドのアナログである。「実質的に類似」とは、模倣物が、リガンドの分子量の約50%未満、約40%未満、約30%未満、または約20%未満を合計で占める1つまたは複数の官能基または修飾を有することを除いて、アナログがリガンドと類似の結合プロフィールを有することを意味する。
【0036】
「有効量」とは、意図される目的、例えば、T細胞活性またはT細胞集団の調節を達成するために十分な量である。本明細書において詳細に記載されるように、有効量、または投薬量は、目的および抗原に依存し、本開示に従って決定され得る。
【0037】
「自己反応性T細胞」とは、そのT細胞を含有するのと同一の個体によって産生および含有される分子である「自己抗原」を認識するT細胞である。
【0038】
「病原性T細胞」とは、そのT細胞を含有する対象にとって有害なT細胞である。一方、非病原性T細胞は、対象に実質的に有害ではなく、抗病原性T細胞は、病原性T細胞の害を、減少、改善、阻害、または無効化する。
【0039】
「阻害」、「減少」もしくは「予防」という用語、またはこれらの用語の任意の変形は、本特許請求の範囲および/または本明細書において使用される場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な低下または完全な阻害を含む。
【0040】
「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と併用して使用される場合、「1つ」を意味する場合があるが、それはまた、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味と一致する。
【0041】
本願の全体にわたって、「約」という用語は、値が、その値を測定するために用いられる装置または方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0042】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明記されている場合または選択肢が相互に排他的である場合を除いて、「および/または」を意味するために使用され、しかし、本開示は、選択肢のみならびに「および/または」を指す定義を支持している。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(および含むの任意の形態、例えば「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(および有するの任意の形態、例えば「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(および含むの任意の形態、例えば「含む(includes)」および「含む(include)」)または「含有する(containing)」(および含有するの任意の形態、例えば「含有する(contains)」および「含有する(contain)」)という用語は、包含的または非限定的であり、追加の、記載されていない要素または方法工程を除外しない。
【0044】
本発明の他の目的、特徴および利点は、下記の詳細な説明から明らかとなる。しかし、本発明の趣旨および範囲内での種々の変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるので、詳細な説明および具体例は、本発明の特定の態様を示しているが、例示のためにのみ与えられることが理解されるべきである。
【0045】
添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによって、より十分に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】固体に結合されたペプチド/MHC複合体の免疫寛容原性特性。8.3-NODマウスへの固体に結合されたペプチド/MHC複合体の静脈内注射は、T細胞の除去を誘導し(図1A)、除去されなかった抗原活性化された(図1B)CD8+ T細胞を、エクスビボでの抗原刺激に対して低応答性にする(図1C)。
【図2】若年のNODマウスにおけるNRP-V7/Kd-npの全身投与により、糖尿病からの防護が生じた。NODマウスに、4、6および8週齢で、およびその後32週齢まで3週毎に、7.5 mgのNRP-V7/Kd npを静脈内注射した。NRP-V7/Kd np処置した動物(n=21)の85%が、32週齢時に糖尿病でないままであり、これに対して、対照-np処置(n=25)および未処置群(n=65)においては、それぞれ、36%および23%であった。
【図3】全身投与の24時間内の放射標識ペプチド/MHCコーティングナノ粒子の生体内分布。
【図4】NRP-V7/Kd-npおよびビオチン化np処置NODマウス対未処置NODマウス(それぞれ、n=5、5、および10)における血清サイトカインレベル。10週齢のNOD雌に、5週間、1週当たり2用量の各npを注射した。最後の注射の6時間後に血清を回収し、Luminexビーズアレイ技術を使用する20-プレックスサイトカイン分析に供した。
【図5】若年のNODマウスにおけるNRP-V7/Kd-npの全身投与により、四量体陽性CD8+ T細胞の増大が生じた。図5A:NRP-V7/Kd-np処置は、対照-np処置動物と比べて(血液および膵島それぞれについてn=4および21)、末梢血(n=4)および膵島浸潤物(n=11)においてCD8+ T細胞集団内でNRP-V7/Kd 四量体+細胞を増大させた。図5B:膵島における増大した四量体+ T細胞は、低アビディティでペプチド/MHCに結合する。対照動物におけるKd=4.42±0.87 nMに対して、NRP-V7/Kd-np処置動物においてKd=10.21±1.65 nM(それぞれ、n=5および12)。図5Cおよび図5D:NRP-V7/Kd npの防護効果は、用量依存性(図5C)であり、末梢血におけるNRP-V7/Kd四量体+ 細胞の増大の程度に対応する(図5D)。動物に、同一の注射スケジュールに従って(上述の通り)、全部(1注射当たり7.5μg)、1/5(1注射当たり1.5μg)、または1/20(1注射当たり0.375μg)用量のnpを注射した(それぞれ、n=21、12、および13)。図5E:NRP-V7/Kd四量体+ CD8+ T細胞の増大は、注射の回数に依存する(n=10)。10週齢のNOD雌に、1週当たり2回の注射で、10回全部用量のNRP-V7/Kd-npを注射した。4回および10回の注射後、前記動物から採血し、血液中のNRP-V7/Kd四量体+ 細胞のパーセンテージを測定した。
【図6】コグネイトCD8+ T細胞によるペプチド/MHCコーティングされたnpの特異的取り込み。図6Aおよび図6B:17.4α/8.3β-NOD(図6A)または17.6α/8.3β-NOD(図6B)マウスを、NRP-V7/Kd-npの10回全部用量の等価物の単回注射で処置するかまたは処置せずに、20時間後に屠殺した。脾臓CD8+、CD4+、CD11c+、およびCD11b+、ならびにB220+細胞を、np結合されたFITCフルオロフォアのMFIに基づいて、np結合について評価した(各株についてn=1)。図6C:NODマウスを、10週齢で開始して、5週間、毎週2回全部用量のNRP-V7/Kd-npで処置するかまたは処置せずに、最後のnp注射の20時間後に屠殺した。脾臓CD8+、CD4+、CD11c+、およびCD11b+細胞を、np結合されたFITCフルオロフォアのMFIに基づいて、np結合について評価した(n=2)。蛍光標識された細胞の小さなピークは、専らCD8+ T細胞サブセットにおいて現れることに注意のこと。
【図7】若年のNODマウスにおけるDMK138-146/Db-npの全身投与は、DMK138-146反応性CD8+ T細胞の選択的増大を生じさせ、糖尿病からの防護をもたらした。図7A:図5におけるのと同一のスケジュールに従ってDMK138-146/Db-npで処置されたNODマウスは、対照動物(n=3)に比べて、末梢血(n=11)および膵島浸潤物(n=13)においてDMK138-146/Db四量体+ CD8+ T細胞の増大を示す。図7B:DMK138-146/Db-np処置動物の72%が、32週齢時に糖尿病でないままであった(n=18)。図7Cおよび図7D:四量体+ CD8+細胞の増大は抗原特異的である。DMK138-146/Db-np処置は、NRP-V7/Kd四量体+ 細胞を増大させず(血液:n=4および11;膵島:n=21および11)(図7C)、NRP-V7/Kd-np処置は、DMK138-146/Db四量体+ 細胞を増大させない(血液:n=3および4;膵島:n=3および2)(図7D)。図7E:ナノ粒子処置マウスにおける末梢血CD8+ T細胞の代表的なFACSプロフィール。マウスに、4週齢で開始して、2〜3週毎に1回、ナノ粒子の静脈内注射を1回受けさせた。これらの試料は、処置の終了時のマウス由来である(約32週齢)。
【図8】NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbでコーティングされたナノ粒子での処置それぞれにおける、膵島に対しての、IGRP206-214またはDMK138-146反応性CD8+ T細胞の動員の増強。マウスに、4週齢で開始して、2〜3週毎に1回、ナノ粒子の静脈内注射を1回受けさせた。これらの試料は、処置の終了時のマウス由来である(約32週齢)。膵島関連CD8+ T細胞を、IGRP206-214、DMK138-146、またはインスリン-L(INS-L)パルスされた(pulsed)抗原提示細胞に応答してのIFN-γ産生についてアッセイした。INS-Lを対照として使用した(NRP-V7/Kd-np処置 n=8、DMK138-146/Db-np処置 n=5、対照-np処置 IGRPおよびINS-L特異的応答についてはn=8、DMK特異的応答についてはn=3)。
【図9】NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置は、糖尿病発症時に提供されると、高血糖を逆転させる。図9A:np処置を受ける急性糖尿病NODマウスの生存。10.5 mMの血糖に達するかまたはこれを超える動物を、前記動物が一貫して正常血糖と考えられる(連続4週間、10.5 mM閾値下に血糖値が維持される)まで、週2回、TUM/Kd-np(n=9)、NRP-V7/Kd-np(n=11)、またはDMK138-146/Db-np(n=11)で静脈内処置する。図9B〜図9D:NRP-V7/Kd-np(図9B)、DMK138-146/Db-np(図9C)およびTUM/Kd-np(図9D)で処置した個々の動物の血糖曲線。図9E:処置レジメンの期間にわたって計算された各処置群の平均血糖値。図9F:連続5日間、抗CD3 Mab(クローン2C11)20μg/日で処置された個々の動物の血糖曲線。
【図10】処置中止の結果。図10A:np処置の中止後の種々の時点での末梢血中における四量体+ 細胞の蓄積および減少。NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置動物は両方とも、処置中止後、末梢において、それらのそれぞれの四量体+ CD8+ T細胞集団の漸進的な喪失を示した。図10B:処置中止後の治癒NODマウスにおける糖尿病再発。処置が中止された動物を、少なくとも50週齢まで、糖尿病についてモニタリングした。図10C:処置中止後の、NRP-V7/Kd-np処置されて治癒した個々の動物の血糖曲線。図10D:処置中止後の、DMK138-146/Db-np処置されて治癒した個々の動物の血糖曲線。
【図11】治癒したマウスにおける耐糖能。図11A:50週齢の未処置対照と比較しての、急性糖尿病が治癒した動物のIPGTT(上部:IPGTTグルコース曲線;下部:曲線下面積分析;糖尿病未処置n=7;非糖尿病未処置n=5;NRP-V7/Kd-np処置n=4;DMK138-146/Db-np処置n=5)。図11B:NRP-V7/Kd-np処置マウス対糖尿病および非糖尿病未処置対照の食後血清インスリンレベル(それぞれ、n=7、9、および7)。図11C:NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置マウス対糖尿病および非糖尿病未処置対照のIPGTT血清インスリンレベル(n 4、7、および5)。図11D:50週齢でのNRP-V7/Kd-np処置(n=5)および未処置(n=6)動物の体重。
【図12】ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、高アビディティおよび低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞を有効に「識別する」ことができる。種々のTCRトランスフェクタントを、5分間または30分間、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズと共にインキュベートし、抗CD8 mAbで染色した。ヒストグラムは、ビーズと共にインキュベーションした後に、示されている時間でCD8キャップを形成した細胞のパーセンテージを示す。
【図13】低親和性自己反応性17.6α/8.3β CD8+ T細胞は抗糖尿病誘発性である。図13A:17.6α/8.3β-NOD(n=95)対17.4α/8.3β-NODマウス(n=598)における糖尿病の頻度。図13B:Tgマウスにおける膵島炎スコア(17.6α/8.3β- NODについてn=6、17.4α/8.3β-NODについてn=3)。図13C:NOD(n=56)対LCMV-NOD(n=10)における糖尿病の頻度。
【図14】17.6α/8.3β TCRの発生生物学。図14A:Tgマウスにおける17.6α/8.3β TCR対17.4α/8.3β TCRの発生生物学。上パネルは、脾細胞の代表的なCD4対CD8ドットプロットである。下パネルは、NRP-V7/Kd四量体でのCD8+ T細胞染色の比較である。図14B:RAG-2-/-Tgマウスにおける17.6α/8.3β対17.4α/8.3β TCRの発生生物学。上パネルは、脾細胞の代表的なCD4対CD8ドットプロットである。下パネルは、NRP-V7/Kd四量体でのCD8+ T細胞染色の比較である。
【図15】17.6α/8.3β-NOD.RAG-2-/-(n=13)対17.4α/8.3β-NOD.RAG-2-/-マウス(n=106)における糖尿病の頻度。
【図16】TCRα-/-Tgマウスにおける17.6α/8.3β対17.4α/8.3β TCRの発生生物学。図16A:上パネルは、脾細胞の代表的なCD4対CD8ドットプロットである。下パネルは、NRP-V7/Kd四量体でのCD8+ T細胞染色の比較である。図16B:17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-(n=14)対17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス(n=28)における糖尿病の頻度。ドットプロットFACSパネル中の値は、各四分円内の細胞のパーセンテージに対応し、ヒストグラム中の値は、陽性に染色された細胞のパーセンテージに対応する(平均値±SE)。
【図17】17.6α/8.3β CD8+ T細胞は、調節機能を有する記憶T細胞へ自然に分化する。図17A:17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-対17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓CD8+ T細胞の代表的なFACSプロフィール。図17B:TCRα-/-Tgマウスの脾臓(17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=12、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=9)、PLN(17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=9、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=6)およびBM(17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=4、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=3)内のCD44hi CD122+ CD8+ T細胞のパーセンテージ(平均値±SE)。マウスは9〜18週齢であった。図17C:NRP-V7/Kd四量体対抗CD122 Abで染色された17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓CD8+ T細胞の代表的なFACSプロフィール。値は5つの異なる実験の平均値±SEである。図17D:17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブ対記憶脾臓CD8+ T細胞の表現型分析。データは各マーカーについての少なくとも2つの実験を代表する。図17E:TCRα-/-Tgマウス由来のCD8+CD4-胸腺細胞対CD8+脾細胞におけるCD122染色の比較。データは4つの実験を代表する。図17F:TCRα-/-Tgマウス由来の脾臓CD8+ T細胞によるBrdU取り込み。図17G:上パネル:サイトカインIL-2およびIL-15(両方とも100 ng/ml)に応答してのTgマウス由来の脾臓CD8+ T細胞の増殖の代表的なFACSプロフィール。下パネル:異なる濃度のIL-2およびIL-15に応答しての17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブ対記憶CD8+ T細胞の倍増大。データは少なくとも3つの実験を代表する。図17H:24および48時間後の1μg/ml NRP-A7パルスされたDCに応答しての17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブおよび記憶CD8+ T細胞に対する17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓ナイーブCD8+ T細胞によるIFN-γの産生。図17I:6時間後の1μg/ml NRP-A7パルスされたDCに応答しての17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブおよび記憶CD8+ T細胞に対する17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓ナイーブCD8+ T細胞からの細胞内IFN-γ染色。図17J:種々の時点での1μg/ml NRP-A7パルスされたDCに応答してのIL-2の産生および増殖。図17Hおよび図17Jにおけるデータは4つの実験を代表し、図17Iにおけるデータは3つの実験を代表する。
【図18】CFSE標識された17.4α/8.3β CD8+ T細胞の増殖。17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブ対記憶CD8+ T細胞(上パネル)または17.4α/8.3β-NOD対LCMV-NODマウス由来のナイーブCD8+ T細胞(下パネル)の存在下でのNRP-A7パルスされたDCに応答してのCFSE標識された17.4α/8.3β CD8+ T細胞の増殖。データは少なくとも5つの実験を代表する。
【図19】記憶17.6α/8.3β CD8+ T細胞は抗原パルスされたAPCを死滅させる。図19A:NRP-A7およびTUMパルスされたBM DCに対する、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の新たに単離されたナイーブCD8+ T細胞対17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブおよび記憶CD8+ T細胞のインビトロ細胞傷害性。データは3つの実験を代表する。精製BM DCに、1μg/ml NRP-A7またはTUMをパルスし、[51Cr]-クロム酸ナトリウムで標識した。エフェクター:標的比=8:1(40000エフェクター:5000標的細胞)。上澄みを8時間後に採取した。図19B:インビボ細胞傷害性アッセイ:NRP-A7パルスされた(CFSElo)もしくはTUMパルスされた(CFSEhi)B細胞(上パネル)または新たに単離された脾臓およびLN DC(下パネル)を1:1の比でTgホスト中へ注射した。B細胞または新鮮なDC(脾臓およびLN由来)を、抗B220または抗CD11c MACSビーズを使用して単離し、2時間10μg/mlのペプチドをパルスし、洗浄し、37℃にて3分間CFSEで標識し(TUM:3μM CFSE、NRP-A7:0.3μM CFSE)、3回洗浄し、各集団由来の4〜5×106細胞を前記ホストへ注射した。18時間後、マウスを屠殺し、脾細胞をFACS分析した。
【図20】NRP-V7/Kd-npまたはDMK138-146/Db-npが増大した四量体+ CD8+細胞は抑制活性を有する。図20A:増大したNRP-V7/Kd四量体+ CD8+ 細胞は、高レベルのCD44を発現し;これらのサブセットはまたCD122を発現する(対照対NRP-V7/Kd-npについてn=7および4)。図20B:増大した四量体+細胞は、抗原刺激に応答してIL-2ではなくIFNγを分泌する。NRP-V7/Kd四量体陽性CD8+脾細胞および陰性CD8+脾細胞を分類し、20,000個の分類された細胞を、1μg/mL NRP-V7ペプチドの存在下で、10000個のBM由来樹状細胞と共に培養した。培養上澄みを24時間で回収し、24〜48時間の[3H]チミジン取り込みを測定した。図20C:np増大したNRP-V7/KdまたはDMK138-146/Db四量体+ CD8+ T細胞による17.4α/8.3β-CD8+ T細胞増殖のインビトロ抑制。NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Db四量体+または- CD8+ T細胞をFACSによって分類し、プレートに結合された抗CD3 MAbであらかじめ活性化したか、または一晩、直接、NRP-V7もしくはNRP-V7/DMK138-146ペプチドパルスされたBMDCと共に培養した。CFSE標識された17.4α/8.3β-CD8+レポーターT細胞を、サプレッサー1対レポーター1の比で前記共培養物へ添加し、CFSE希釈物を48時間後に評価した。3つの実験の代表的なプロフィールを示す。図20D:図20Cに示されるインビトロ抑制実験の概要。
【図21】ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は既存の低アビディティ記憶T細胞を増大させる。図21A:TUM/Kd-npは、TUM/Kd四量体+細胞を増大させない(n=7および9、脾臓中)。図21B:NRP-V7/Kd-npは、糖尿病耐性B10.H-2g7マウスの脾臓、膵リンパ節、骨髄、および末梢血中においてNRP-V7/Kd四量体+細胞を増大させない。10週齢のH-2g7マウスに、連続5週間、全部用量のNRP-V7/Kd-npを週2回注射し、四量体+細胞の頻度を測定した(NRP-V7/Kd-np処置n=4、対照n=5)。図21C:np処置によるNRP-V7/Kd四量体+細胞の増大は、糖尿病発症時で最も効果的である。ここで、4週齢(n=9)、10週齢(n=10)、または糖尿病発症(n=3)時で開始して、10回全部用量のNRP-V7/Kd-npを受容した動物の末梢血中における四量体+細胞のパーセンテージを比較する。
【図22】NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置の防護効果は、既存の低アビディティ四量体+ CD8+ T細胞の増大を必要とする。図22A:NOD.IGRPK209A/F213AKI/KI構築物の概略図。図22B:2つの異なるNOD.IGRPK209A/F213AKI/KIマウスにおける各IGRPエピトープに対する膵島関連CD8+ T細胞によるIFNγ応答。図22C:脾臓、骨髄、膵リンパ節、および末梢血におけるNRP-V7/Kd-np処置NOD.IGRPK209A/F213AKI/KIマウス(n=8)におけるNRP-V7/Kd四量体+ CD8+ 細胞の増大の欠如。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
現在までの観察(Hanら, 2005)により、自己免疫において有効であるためには、ペプチド療法は、多数のエピトープ特異性を標的化しなければならないことが示唆されている。本発明者らは、IGRP単独の場合、1用量当たり数ミリグラムのペプチドを必要とするため、ペプチドでこれを達成することはきわめて非実用的であると考えた。ペプチドは、固定されたAPC上のMHC分子に結合されると遥かにより免疫寛容原性(即ち、より少ない量で)となるので(Millerら, 1979)、粒子上での抗原/MHC複合体、例えばペプチド/MHC複合体(補助刺激分子無し)の全身送達は、ペプチド単独よりもより免疫寛容原性であり得ると考えた。この考えは、膵島炎症を画像化するために最初に考案された試薬の利用可能性から発展した。本発明者らは、循環8.3様CD8+ T細胞に磁気共鳴(MR)イメージングに敏感なプローブを特異的に送達しようとした(NRP-V7/Kd複合体でコーティングされた酸化鉄ナノ粒子)(Mooreら, 2004)。特に、本発明者らは、複数のT細胞特異性を、T1Dが現れるのに必要な閾値未満に同時に除去することを誘導するための方法として、いくつかの異なる抗原/MHC複合体でこれらの粒子をコーティングすることを考えた。寛容誘導のためにこれらのナノ粒子を使用することの1つの特徴は、それらのプロトタイプがMRI研究についてのヒトにおける使用に承認されたことであった。
【0048】
本発明者らは、抗原/MHC複合体でコーティングされたナノ粒子(抗原/MHC/粒子複合体)が、驚くべきことに、効率的に一貫してかつ非常に低い用量で(ペプチド約0.6μgに対応)低アビディティ自己反応性CD8+細胞のタイプを増大させ、これにより、APL治療マウスにおいてT1Dからの防護がもたらされることを見出した(Hanら, 2005;Mareeら, 2006)。別の驚くべき観察は、これらのナノ粒子が、自己反応性記憶CD8+ T細胞の既存のプールを増大させる(即ち、それらは、記憶T細胞を新たに誘導しない)ようであることであった。これらの既存のプールは、主として(排他的でないにしても)低アビディティ(非病原性/抗病原性)自己反応性CD8+クロノタイプから構成されている。恐らく、しかし本発明をいかなる特定の理論にも限定しないが、内因性標的β細胞自己抗原への慢性曝露において活性化誘導細胞死を経るため、これらのT細胞の高アビディティ相当物(病原性活性を有する)は、記憶細胞としてインビボで生き延びない。別の予想外の観察は、これらの粒子は、有効となるために自己反応性CD8+ T細胞の一般的な集団を標的化する必要がないということである。同様の結果が、サブドミナントなペプチド/MHC複合体でコーティングされたナノ粒子で得られた。さらに、この技術は、所定のアビディティのAPLの設計を必要とせず(ペプチドでの場合とは異なり)、従って、任意の標的抗原またはペプチド/MHC標的を適応させる可能性を有する。この技術の種々の特質の1つは、それが、臨床試験においていくらかの見込みを示した非抗原特異的アプローチである抗CD3 mAb治療で得られたものと比べて、少なくとも同等の、そうでなければよりよい割合で、新たに診断されたT1Dを有するNODマウスにおいて正常血糖を回復させ得ることである(Heroldら, 2002;Keymeulenら, 2005)。
【0049】
本発明者らは、酸化鉄粒子に結合された状態で送達されると、効率的に、一貫して、かつ非常に低い用量で(ペプチド約0.6μgに対応)、自己免疫状態に対する防護をもたらすあるタイプのCD8+細胞を増大させる、自己抗原/MHC複合体を製造した。本発明の組成物は、自己反応性記憶CD8+ T細胞の既存のプールを増大させるために使用され得る(即ち、それらは、新たに記憶T細胞を誘導することができないと考えられる)。これらの既存のプールは、主として(排他的でないにしても)、低アビディティ(非病原性/抗病原性)自己反応性CD8+クロノタイプから構成されている。これらのT細胞の高アビディティ相当物(病原性活性を有する)は、記憶細胞としてインビボで生き延びず、主として、ナイーブT細胞として存在する。ナイーブT細胞は、補助刺激の非存在下で自己抗原/MHC/粒子複合体にかみ合うと細胞死を経る。従って、本発明は、ナイーブ病原性T細胞を除去し、かつ、抗糖尿病誘発性記憶T細胞を増大させる。記載の組成物は、有効となるために自己反応性CD8+ T細胞の一般的な集団を標的化する必要がない。ある態様において、本組成物および方法は、自己反応性T細胞寛容を誘導するために使用され得る。
【0050】
I.薬学的組成物および投与
本発明は、自己反応性状態を予防または改善するための方法を含む。従って、本発明は、種々の態様における使用のための「ワクチン」または免疫系改変物質を企図する。ワクチンとしての使用に好適であると提案される組成物は、自己反応性タンパク質およびそれらのフラグメントを含む自己反応性分子から作製され得る。本発明は、自己反応性抗原、例えば、ポリペプチド、ペプチド、糖質、脂質、または他の分子もしくは分子フラグメントに対する、およびこのような自己免疫応答によって引き起こされる状態または疾患を生じさせることに対する、免疫応答を誘導または改変するために使用され得る組成物を含む。
【0051】
本発明の組成物は、通常、注射によって、例えば、静脈内、皮下または筋内に、非経口投与され得る。他の投与様式に好適であるさらなる製剤には、経口製剤が含まれる。経口製剤は、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、通常使用される賦形剤を含む。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤または散剤の形態をとり、約10%〜約95%の有効成分、好ましくは約25%〜約70%を含有する。
【0052】
典型的に、本発明の組成物は、剤形に適合する様式で、治療的に有効でありかつ免疫改良性であるような量で、投与される。投与される量は、治療される対象に依存する。投与されるために必要とされる有効成分の正確な量は、医師の判断に依存する。しかし、好適な投薬量範囲は、1投与当たり抗原/MHC/粒子複合体10〜数百ナノグラムまたはマイクログラムのオーダーのものである。初回投与およびブースターについての好適なレジメンもまた、可変であるが、初回投与およびそれに続く追加投与で典型的に表される。
【0053】
投与の様式は、広範囲に変化し得る。ワクチンの投与についての従来の方法のいずれもが、適用可能である。これらは、固体の生理学的に許容される基剤に乗せたまたは生理学的に許容されるディスパージョンに入れた経口投与、注射などによる非経口投与を含むと考えられる。抗原/MHC/粒子複合体の投薬量は、投与経路に依存し、対象の大きさおよび健康状態に応じて変化する。
【0054】
多くの場合において、ペプチド/MHC/粒子複合体の複数回投与、約、最大で約、または少なくとも、約3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上を有することが望ましい。投与は、通常、2日〜12週間間隔、より通常では1〜2週間間隔の範囲に及ぶ。0.5〜5年、通常2年の間隔での周期的なブースターが、免疫系の状態を維持するために望ましい。投与の過程に続いて、自己反応性免疫応答およびT細胞活性についての分析が行われ得る。
【0055】
A.併用療法
本発明の組成物および関連する方法、特に、抗原/MHC/粒子複合体の投与はまた、従来の療法の適用と組み合わせて使用され得る。これらには、免疫抑制または調節療法または治療の適用が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
一局面において、抗原/MHC/粒子複合体は、サイトカイン治療と併用して使用されることが考えられる。または、抗原/MHC/粒子複合体投与は、数分〜数週間の範囲に及ぶ間隔で他の治療に先行するかまたは続いてもよい。他の薬剤および/または抗原/MHC/粒子複合体が別々に投与される態様において、一般的に、各送達と送達の間に有意な時間が過ぎないことが確実にされ、その結果、薬剤および抗原/MHC/粒子複合体は、対象に対して有利に組み合わされた効果を依然として生じることができる。このような場合、互いに約12〜24時間以内、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に、両方の様式を投与し得ることが考えられる。ある状況において、投与についての期間を有意に延長することが望ましい場合があるが、それぞれの投与と投与の間に、数日間(2、3、4、5、6または7)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する。
【0057】
例えば、抗原/MHC/粒子複合体投与が「A」であり、追加の薬剤が「B」である、種々の組み合わせを採用することができる。
【0058】
患者/対象への本発明のペプチド−MHC複合体組成物の投与は、もしあれば、毒性を考慮して、このような化合物の投与についての一般的なプロトコルに従う。必要に応じて治療サイクルが繰り返されることが期待される。種々の標準的な療法、例えば、水分補給が、記載の療法と組み合わせて適用され得ることも企図される。
【0059】
B.薬学的組成物
ある態様において、薬学的組成物が対象へ投与される。本発明の異なる局面は、対象へ有効量の抗原/MHC/粒子複合体組成物を投与することを含む。さらに、このような組成物は、免疫系の改変物質と組み合わせて投与され得る。このような組成物は、一般的に、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散される。
【0060】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物、またはヒトに投与した場合に、有害な、アレルギー性の、または他の不都合な反応を生じさせない分子実体および組成物を指す。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質についてのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。従来の媒体または薬剤が有効成分と不適合性である場合を除いて、免疫原性および治療組成物におけるその使用が企図される。
【0061】
本発明の活性化合物は、非経口投与用に製剤化され得、例えば、静脈内、筋内、皮下、または腹腔内経路を介しての注射用に製剤化され得る。対象の免疫状態を改変する抗原/MHC/粒子複合体を含有する水性組成物の作製は、本開示を考慮して当業者に公知である。典型的に、このような組成物は、注射可能物質として、液剤または懸濁剤として作製することができ;注射前の液体の添加によって液剤または懸濁剤を調製するための使用に好適な固体形態を作製することもでき;調製物は乳化することもできる。
【0062】
注射可能な使用に好適な薬学的形態には、無菌水性液剤またはディスパージョン;ゴマ油、落花生油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;および無菌注射可能液剤またはディスパージョンの即時調製用の無菌散剤が含まれる。全ての場合において、形態は、無菌でなければならず、容易に注射され得る程度に流動性でなければならない。それはまた、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。
【0063】
組成物は、中性または塩形態へ製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)などが挙げられ、これらは、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導され得る。
【0064】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、ディスパージョンの場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらされ得る。
【0065】
無菌注射可能液剤は、上記に列挙される種々の他の成分と共に好適な溶媒中に必要量の活性化合物を混合し、必要に応じて、続いて濾過滅菌を行うことによって作製される。一般的に、ディスパージョンは、基本の分散媒体と上記に列挙されるものからの必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクル中へ種々の滅菌された有効成分を混合することによって作製される。無菌注射可能液剤の調製用の無菌散剤の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、この場合、予め滅菌濾過された溶液から、有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。
【0066】
本発明に従う組成物の投与は、典型的に、任意の通常の経路を介する。これには、同所性、皮内、皮下、筋内、腹腔内、鼻腔内、または静脈内注射が含まれるが、これらに限定されない。ある態様において、ワクチン組成物は、吸入されてもよい(例えば、米国特許第6,651,655号;これは、参照により具体的に組み入れられる)。
【0067】
治療または予防組成物の有効量は、意図される目標に基づいて決定される。「単位用量」または「投薬量」という用語は、対象における使用に好適な物理的に分離された単位を指し、各単位は、その投与、即ち、好適な経路およびレジメンに関連して上記で考察した所望の応答を生じるように計算された所定量の組成物を含有する。治療の回数および単位用量の両方に従う、投与される量は、所望の結果および/または防護に依存する。組成物の正確な量はまた、医師の判断に依存し、各個体に特有である。用量に影響を与える因子には、対象の身体および臨床状態、投与経路、治療の意図される目標(治癒に対する症状の緩和)、ならびに特定の組成物の効力、安定性、および毒性が含まれる。製剤化されると、液剤は、剤形に適合する様式で、治療的にまたは予防的に有効であるような量で、投与される。製剤は、種々の投薬形態で、例えば上述の注射可能な液剤のタイプで、容易に投与される。
【0068】
C.インビトロまたはエクスビボ投与
本明細書において使用される場合、インビトロ投与という用語は、培養細胞を含むがこれに限定されない、対象から取り出されたまたは対象の外部の細胞において行われる操作を指す。エクスビボ投与という用語は、インビトロで操作され、続いて対象へ投与される細胞を指す。インビボ投与という用語は、投与を含む、対象内で行われる全ての操作を含む。
【0069】
本発明のある局面において、組成物は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボのいずれかで投与され得る。あるインビトロ態様において、自己T細胞が、本発明の組成物と共にインキュベートされる。次いで、細胞は、インビトロ分析のために、またはエクスビボ投与のために使用され得る。
【0070】
II.MHC複合体
本発明の古典的および非古典的MHC分子によって提示されるペプチド、糖質、脂質または他の分子を含むが、これらに限定されない、抗原性種に由来するセグメント、フラグメントおよび他の分子を含む、抗原は、典型的に、MHC分子またはその誘導体へ複合体化されるかまたは機能的に結合される。Tリンパ球による抗原認識は、主要組織適合複合体(MHC)に拘束される。所定のTリンパ球は、抗原が特定のMHC分子に結合している場合にのみ抗原を認識する。一般的に、Tリンパ球は、自己MHC分子の存在下においてのみ刺激され、抗原は、自己MHC分子に結合した抗原のフラグメントとして認識される。MHC拘束は、認識される抗原によって、およびその抗原性フラグメントに結合するMHC分子によって、Tリンパ球特異性を規定する。特定の局面において、ある特定の抗原は、ある特定のMHC分子またはそれに由来するポリペプチドと対形成される。
【0071】
「機能的に結合された」または「コーティングされた」という用語は、本明細書において使用される場合、個々のポリペプチド(例えば、MHC)および抗原性(例えば、ペプチド)成分が結合され、活性複合体を形成し、その後、標的部位、例えば免疫細胞に結合する状況を指す。これは、個々のポリペプチド複合体成分が合成されるかまたは組換え発現され、続いて単離され、インビトロで結合して複合体が形成され、その後、対象へ投与される状況;キメラまたは融合ポリペプチド(即ち、複合体の各々の別個のタンパク質成分が、単一のポリペプチド鎖中に含有されている)が、インタクトな複合体として、合成されるかまたは組換え発現される状況を含む。典型的に、ポリペプチド複合体がマイクロ粒子に添加され、約、少なくとも約、または多くとも約0.1、0.5、1、10、100、500、1000またはそれ以上:1、より典型的には0.1:1〜50:1の、分子数:粒子数の比を有する、吸着または結合されたポリペプチド複合体を有するマイクロ粒子が生じる。マイクロ粒子のポリペプチド含有量は、標準的な技術を使用して測定され得る。
【0072】
A.MHC分子
細胞内抗原および細胞外抗原は、認識および適切な応答の両方に関して、免疫系に対し全く異なる抗原投与を提示する。T細胞への抗原の提示は、2つの異なるクラスの分子、MHCクラスI(MHC-I)およびMHCクラスII(MHC-II)によって媒介され、これらは、異なる抗原プロセッシング経路を使用する。細胞内抗原由来のペプチドは、事実上全ての細胞上において発現されるMHCクラスI分子によってCD8+ T細胞へ提示され、一方、細胞外抗原由来のペプチドは、MHC-II分子によってCD4+ T細胞へ提示される。しかし、この二分法にはある例外がある。いくつかの研究によって、エンドサイトーシスされた粒状または可溶性タンパク質から作製されたペプチドが、マクロファージならびに樹状細胞においてMHC-I分子上に提示されることが示された。本発明のある態様において、自己抗原由来の特定のペプチドが、好適なMHCクラスIまたはIIポリペプチドのとの関連において、ペプチド/MHC/粒子複合体において、同定および提示される。ある局面において、対象の遺伝的性質が、MHCポリペプチドが特定の患者および特定のペプチドセットについて使用されるかどうかを決定するために評価され得る。
【0073】
非古典的MHC分子もまた、本発明のMHC複合体における使用について企図される。非古典的MHC分子は、非多形性であり、種間で保存されており、狭くて深い疎水性のリガンド結合性結合ポケットを有する。これらの結合ポケットは、ナチュラルキラーT(NKT)細胞へ糖脂質およびリン脂質を提示することができる。NKT細胞は、NK細胞マーカーおよび半不変T細胞受容体(TCR)を共発現する独特なリンパ球集団を示す。それらは、広範囲の疾患と関連する免疫応答の調節に関与する。
【0074】
B.抗原性成分
本発明のある局面は、一般的に抗原と呼ばれる、抗原応答を刺激または誘導するポリペプチド、ペプチド、核酸、糖質、脂質、および他の分子の、セグメント、フラグメント、またはエピトープを含む抗原性組成物に関する方法および組成物を含む。特に、自己免疫応答を介して細胞の破壊へ導く、自己抗原、または、このような自己抗原の抗原性セグメントもしくはフラグメントが、本明細書に記載されるMHC/粒子複合体を作製することにおいて、同定および使用され得る。このような自己抗原は、膵島、または膵島細胞を支持する細胞において提示され得る。本発明の態様は、特定の生理学的機能を行う特定の細胞または細胞セットに対する免疫応答の調節のための組成物および方法を含む。
【0075】
1.ペプチド成分およびタンパク様組成物
本発明のポリペプチドおよびペプチドは、種々のアミノ酸の欠失、挿入、および/または置換によって修飾され得る。特定の態様において、修飾されたポリペプチドおよび/またはペプチドは、対象において免疫応答を調節することができる。本明細書において使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む分子を指す。ある態様において、タンパク質またはペプチドの野生型が使用されるが、本発明の多くの態様において、修飾されたタンパク質またはポリペプチドが、ペプチド/MHC/粒子複合体を作製するために使用される。ペプチド/MHC/粒子複合体は、免疫応答を引き起こすためおよび/または免疫系のT細胞集団を改変する(即ち、免疫系を再教育する)ために使用され得る。上記に記載される用語は、本明細書において交換可能に使用され得る。「修飾されたタンパク質」または「修飾されたポリペプチド」または「修飾されたペプチド」とは、その化学構造、特にそのアミノ酸配列が、野生型タンパク質またはポリペプチドと比べて変更されているタンパク質またはポリペプチドを指す。ある態様において、修飾されたタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、少なくとも1つの修飾された活性または機能を有する(タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、複数の活性および機能を有し得ることを認識すること)。具体的には、MHC/粒子複合体との関連における場合、修飾されたタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、1つの活性または機能について変更されているが、他の点においては野生型の活性または機能、例えば、免疫系の他の細胞と相互作用する能力または免疫原性を保持している場合があることが、考えられる。
【0076】
本発明のペプチドは、任意の自己反応性ペプチドを含む。自己反応性ペプチドには、
ならびに、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国公開公報20050202032に開示されるペプチドおよびタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。自己反応性ペプチドとしてまたは対照ペプチドとして本発明と併用して使用され得る他のペプチドには、INS-I9(LYLVCGERI(配列番号11))、TUM(KYQAVTTTL(配列番号12))、およびG6Pase(KYCLITIFL(配列番号13))が含まれるが、これらに限定されない。ある局面において、1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のペプチドが使用され得る。本発明と併用して使用され得るペプチドの例にはまた、表1に提供されるものが含まれる。これらのペプチドは、特定の粒子/MHC分子と結合し得、または、複数のペプチドが、共通の粒子および1つまたは複数のMHC分子と結合し得る。これらのペプチドの組み合わせの投与は、複数のペプチドを結合させた粒子の集団を投与すること、および/または、各々が特定のペプチドを結合させた複数の粒子集団、または、1、2、3、4、5、6個、もしくはそれ以上のペプチドを1、2、3、4、5、6個、もしくはそれ以上の粒子に結合させた粒子を含む粒子の組み合わせを投与することを含む。
【0077】
(表1A)T1DについてのHLAクラスI拘束性エピトープ
GAD65:65kDaグルタミン酸デカルボキシラーゼ、GFAP:グリア線維酸性タンパク質、IA-2:インスリノーマ関連抗原2、ppIAPP:膵島アミロイドポリペプチド前駆体タンパク質、IGRP:膵島特異的グルコース 6−ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質
【0078】
(表1B)MSについてのHLAクラスI拘束性エピトープ
MBP:ミエリン塩基性タンパク質、MAG:ミエリン関連糖タンパク質、MOG:ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質、PLP:プロテオリピドタンパク質
【0079】
ある態様において、関心対象のタンパク質またはペプチドの任意の複合体、および特に、MHC/ペプチド融合を含む、タンパク質またはポリペプチド(野生型または修飾型)のサイズは、非限定的に、
個またはそれ以上のアミノ分子を含み得、それにはそこから誘導可能な任意の範囲または値が含まれ得る。ある局面において、誘導体を含む5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の連続アミノ酸、および自己抗原のフラグメント、例えば、本明細書において開示および参照されるアミノ酸配列が、抗原として使用され得る。ポリペプチドは、それらの対応の野生型形態よりもそれらをより短くする切断によって突然変異され得るだけでなく、それらは、特定の機能(例えば、タンパク質複合体としての提示について、増強された免疫原性についてなど)を有する異種タンパク質配列を融合または結合させることによっても変更され得ることが企図される。
【0080】
本明細書において使用される場合、「アミノ分子」とは、任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体、または当該技術分野において公知のアミノ酸模倣物を指す。ある態様において、タンパク様分子の残基は、非アミノ分子がアミノ分子残基の配列を中断することなく、連続的である。他の態様において、前記配列は、1つまたは複数の非アミノ分子部分を含み得る。特定の態様において、タンパク様分子の残基の配列は、1つまたは複数の非アミノ分子部分によって中断され得る。
【0081】
従って、「タンパク様組成物」という用語は、天然に合成されるタンパク質中の20個の共通アミノ酸の少なくとも1つ、または修飾されたもしくは通常でないアミノ酸を少なくとも1つ含む、アミノ分子配列を包含する。
【0082】
タンパク様組成物は、以下を含む、当業者に公知の任意の技術によって作製され得る:(i)標準的な分子生物学技術によるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現、(ii)天然源からのタンパク様化合物の単離、または(iii)タンパク様物質の化学合成。種々の遺伝子についてのヌクレオチドならびにタンパク質、ポリペプチド、およびペプチド配列が、以前に開示されており、公認のコンピュータ化されたデータベースにおいて見出すことができる。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology InformationのGenBankおよびGenPeptデータベースである(World Wide Web上においてncbi.nlm.nih.gov/で)。これらの遺伝子についてのコード領域の全部または一部が、本明細書に開示されるかまたは当業者に公知であるような技術を使用して増殖および/または発現され得る。
【0083】
これらの組成物の自己抗原性エピトープおよび他のポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、置換、挿入、または欠失変異体であり得る。本発明のポリペプチドにおける修飾は、野生型と比べて、
個またはそれ以上の、ペプチドまたはポリペプチドの非連続または連続アミノ酸に影響を与え得る。自己免疫応答、特に病理学的自己免疫応答を生じさせるペプチドまたはポリペプチドが、本発明の方法における使用について企図される。
【0084】
欠失変異体は、典型的に、天然または野生型アミノ酸配列の1つまたは複数の残基を欠いている。個々の残基が欠失され得、または多数の連続アミノ酸が欠失され得る。終止コドンが、切断されたタンパク質を作製するためにコード核酸配列へ(置換または挿入によって)導入され得る。挿入突然変異体は、典型的に、ポリペプチドにおける非末端点での物質の付加を含む。これは、1つまたは複数の残基の挿入を含み得る。融合タンパク質と呼ばれる、末端付加物もまた、作製され得る。
【0085】
置換変異体は、典型的に、タンパク質内の1つまたは複数の部位の1つのアミノ酸を別のアミノ酸で交換することを含み、他の機能または特性の喪失を伴ってまたは伴わずに、ポリペプチドの1つまたは複数の特性を調節するように設計され得る。置換は、保存的であり得、即ち、1つのアミノ酸が類似の形状および電荷のアミノ酸で置換される。保存的置換は当該技術分野において周知であり、例えば、以下の変更を含む:アラニンをセリンへ;アルギニンをリジンへ;アスパラギンをグルタミンまたはヒスチジンへ;アスパルテートをグルタメートへ;システインをセリンへ;グルタミンをアスパラギンへ;グルタメートをアスパルテートへ;グリシンをプロリンへ;ヒスチジンをアスパラギンまたはグルタミンへ;イソロイシンをロイシンまたはバリンへ;ロイシンをバリンまたはイソロイシンへ;リジンをアルギニンへ;メチオニンをロイシンまたはイソロイシンへ;フェニルアラニンをチロシン、ロイシンまたはメチオニンへ;セリンをトレオニンへ;トレオニンをセリンへ;トリプトファンをチロシンへ;チロシンをトリプトファンまたはフェニルアラニンへ;およびバリンをイソロイシンまたはロイシンへ。または、置換は、非保存的であり得、その結果、ポリペプチドまたはペプチドの機能または活性、例えば、細胞受容体についてのアビディティまたは親和性が影響を受ける。非保存的変更は、典型的に、化学的に非類似であるもので残基を置換することを含む;例えば、極性または帯電アミノ酸の代わりに非極性または帯電していないアミノ酸;逆もまた同様。
【0086】
本発明のタンパク質は、組換え体であり得、またはインビトロで合成され得る。または、組換えタンパク質が、細菌または他の宿主細胞から単離され得る。
【0087】
「機能的に等価のコドン」という用語は、例えば、アルギニンまたはセリンについての6個のコドンのように、同一のアミノ酸をコードするコドンを指すために本明細書において使用され、さらに、生物学的に等価のアミノ酸をコードするコドンも指す(下記の表2を参照のこと)。
【0088】
(表2)コドン表
【0089】
生物学的タンパク質活性(例えば、免疫原性)の維持を含む上述の基準を配列が満たす限り、アミノ酸配列および核酸配列は、追加の残基、例えば、それぞれ、追加のN-もしくはC-末端アミノ酸配列または5'もしくは3'核酸配列を含み得、なお依然として本質的に、本明細書に開示される配列の1つにおいて記載される通りであり得ることも理解される。末端配列の付加は、特に、核酸配列へ適用され、それは、例えば、コード領域の5'または3'部分のいずれかにフランキングする種々の非コード配列を含み得る。
【0090】
本発明の組成物において、1 ml当たり約0.001 mg〜約10 mgの総タンパク質が存在することが考えられる。従って、組成物中のタンパク質の濃度は、約、少なくとも約、または多くとも約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、50、100μg/mlまたはmg/mlまたはそれ以上(またはそこにおいて誘導可能な任意の範囲)であり得る。この中で、約、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%が、ペプチド/MHC/粒子複合体であり得る。
【0091】
本発明は、自己免疫応答と関連する疾患または状態の進展に対して診断、治療または予防療法を行うためにペプチド/MHC/粒子複合体の投与を企図する。
【0092】
さらに、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号(Hopp)には、一次アミノ酸配列からのエピトープの親水性に基づく同定および作製が教示されている。Hoppに開示される方法によって、当業者は、アミノ酸配列内から可能性のあるエピトープを同定しそれらの免疫原性を確認することができる。多数の科学刊行物もまた、アミノ酸配列の分析からの、二次構造の予想およびエピトープの同定に向けられてきた(Chou & Fasman, 1974a,b; 1978a,b; 1979)。これらのいずれもが、米国特許第4,554,101号におけるHoppの教示を補うために、必要に応じて、使用され得る。
【0093】
2.他の抗原性成分
ペプチド以外の分子が、MHC分子との複合体において抗原または抗原性フラグメントとして使用され得、このような分子には、糖質、脂質、小分子などが含まれるが、これらに限定されない。糖質は、種々の細胞の外部表面の主成分である。ある特定の糖質は、種々の段階の分化の特徴を示し、非常にしばしば、これらの糖質は特異的抗体によって認識される。別個の糖質の発現は、特定の細胞型に限定され得る。子宮内膜および血清抗原に対する自己抗体応答は、子宮内膜症の一般的な特徴であることが示されている。糖質エピトープについて特異的である、2-Heremans Schmidt糖タンパク質および炭酸脱水酵素を含む、多数の以前同定された抗原に対する子宮内膜症における血清自己抗体応答が記載されている(Yeamanら, 2002)。
【0094】
C.支持体/粒子
ある局面において、抗原/MHC複合体は、支持体に機能的に結合される。支持体は粒子の形態であり得る。粒子は、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノ粒子、ナノスフェア、またはリポソームとして様々に公知の、可変寸法の構造を有し得る。抗原/MHC複合体を含有するこのような微粒子製剤は、粒子と複合体との共有結合または非共有結合によって形成され得る。
【0095】
「粒子」、「マイクロ粒子」、「ビーズ」、「マイクロスフェア」、および本明細書における文法的等価物によって、対象に投与可能な小さな分離した粒子が意味される。ある態様において、粒子は、形状が実質的に球形である。「実質的に球形」という用語は、本明細書において使用される場合、粒子の形状が、約10%を超えて球体から逸脱しないことを意味する。本発明の種々の公知の抗原またはペプチド複合体は、粒子へ適用され得る。
【0096】
粒子は、典型的に、実質的に球形のコアと任意で1つまたは複数の層とからなる。コアは、サイズおよび組成が異なり得る。コアに加えて、粒子は、関心対象の適用に好適な機能性を提供するために1つまたは複数の層を有し得る。存在する場合、層の厚みは、特定の適用の必要性に依存して変化し得る。例えば、層は、有用な光学特性を与え得る。
【0097】
層はまた、化学的または生物学的機能性を与え得、本明細書において化学活性または生物活性層と呼ばれ、これらの機能性のために、層は、典型的に、約0.001マイクロメートル(1ナノメートル)〜約10マイクロメートルまたはそれ以上(所望の粒径に依存する)の厚みの範囲に及び得、これらの層は、典型的に、粒子の外部表面上に適用される。
【0098】
コアおよび層の組成は異なり得る。粒子またはコアについて好適な材料には、ポリマー、セラミックス、ガラス、鉱物などが含まれるが、これらに限定されない。例としては、標準および特殊ガラス、シリカ、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、フルオロポリマー、シリコーン、セルロース、ケイ素、金属(例えば、鉄、金、銀)、鉱物(例えば、ルビー)、ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子、コロイド粒子、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、および磁性材料、例えば、酸化鉄)、ならびにそれらのコンポジットが挙げられるが、これらに限定されない。コアは、所望の特性に依存して、均一な組成のもの、または、2つまたはそれ以上のクラスの材料のコンポジットであり得る。ある局面において、金属ナノ粒子が使用される。これらの金属粒子またはナノ粒子は、Au、Pt、Pd、Cu、Ag、Co、Fe、Ni、Mn、Sm、Nd、Pr、Gd、Ti、Zr、Si、およびIn、前駆体、それらの二元合金、それらの三元合金ならびにそれらの金属間化合物から形成され得る。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,712,997号を参照のこと。
【0099】
前述したように、粒子は、コアに加えて、1つまたは複数の層を含み得る。マイクロ粒子に層を含める目的は、多様であり得る。または、粒子の表面は、直接、官能化され得る。層は、化学結合または結合部位についての化学官能性を付与するために好適な表面を提供し得る。
【0100】
層は、当業者に公知の種々の様式でマイクロ粒子上に作製され得る。例としては、Iler (1979);BrinkerおよびScherer (1990)において記載されるようなゾル−ゲル化学技術が挙げられる。粒子上に層を作製するさらなるアプローチには、PartchおよびBrown (1998);Pekareket al. (1994);Hanprasopwattana (1996);Davies (1998);ならびにそれらの中の参考文献に記載されるような表面化学およびカプセル化技術が含まれる。蒸着技術もまた使用され得る;例えばGolmanおよびShinohara (2000);ならびに米国特許第6,387,498号を参照のこと。さらに他のアプローチには、Sukhorukovら (1998);Carusoら (1998);Carusoら (1999);米国特許第6,103,379号およびそれらにおいて引用される参考文献に記載されるような多層自己集合技術が含まれる。
【0101】
粒子は、米国特許第4,589,330号または第4,818,542号において教示されるように、非水相とポリマーおよび抗原/MHC複合体を含有する水相とを接触させ、その後、非水相を蒸発させ、水相からの粒子の凝集を生じさせることによって形成され得る。このような作製に好ましいポリマーは、ゼラチン(gleatin) 寒天、デンプン、アラビノガラクタン、アルブミン、コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(ε-カプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(2-ヒドロキシエチルDL-アスパルトアミド)、ポリ(エステルウレア)、ポリ(L-フェニルアラニン/エチレングリコール/1,6-ジイソシアナトヘキサン)およびポリ(メタクリル酸メチル)からなる群より選択される天然または合成コポリマーまたはポリマーである。特に好ましいポリマーは、ポリエステル、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(ε-カプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-乳酸)、およびポリ(ε-カプロラクトン-CO-グリコール酸である。ポリマーを溶解するために有用な溶媒には、水、ヘキサフルオロイソプロパノール、メチレンクロリド、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンゼン、またはヘキサフルオロアセトンセスキ水和物が含まれる。
【0102】
「マイクロ粒子」という用語は、本明細書において使用される場合、直径約10 nm〜約150μm、より好ましくは直径約200 nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500 nm〜約10μmの粒子を指す。好ましくは、マイクロ粒子は、注射針および毛細管を塞ぐことなく非経口または経粘膜投与を可能にする直径のものである。マイクロ粒子サイズは、当該技術分野において周知の技術、例えば、光子相関分光法、レーザー回折法および/または走査電子顕微鏡法によって容易に測定される。「粒子」という用語はまた、本明細書に規定されるマイクロ粒子を示すために使用され得る。タンパク質送達システムの概観については、Banga, Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, Pa., 1995を参照のこと。微粒子系には、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が含まれる。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルは、一般的に、それぞれ、ナノ粒子、ナノスフェア、およびナノカプセルと呼ばれる。マイクロ粒子は、典型的に、直径約100μmであり、皮下または筋内投与される(Kreuter, 1994;Tice & Tabibi, 1992を参照のこと)。
【0103】
D.抗原−MHC複合体とマイクロ粒子またはナノ粒子との結合
抗原−MHC複合体に支持体または粒子を結合するために、以下の技術が適用され得る。
【0104】
結合は、支持体または粒子を化学的に修飾することによって作製され得、これは、表面上における「官能基」の作製を典型的に含み、該官能基は、抗原−MHC複合体に結合することができ、かつ/または表面または粒子の任意で化学的に修飾された表面と共有または非共有結合されたいわゆる「連結性分子」とを連結し、続いて、得られた粒子と抗原−MHC複合体とを反応させることができる。
【0105】
「連結性分子」という用語は、支持体または粒子と連結することができ、かつ、抗原−MHC複合体へ連結することができる物質を意味する。
【0106】
上記で使用される「官能基」という用語は、共有結合を形成する反応性化学基に限定されず、しかしまた、抗原−MHC複合体とのイオン相互作用結合または水素結合へ導く化学基も含む。さらに、表面の修飾は、時折、エチレングリコールなどのより小さな連結性分子と粒子表面との反応を必要とするため、表面で作製された「官能基」と「官能基」を有する連結性分子との厳密な区別は可能でないことに注意されるべきである。
【0107】
官能基またはそれらを有する連結性分子は、アミノ基、炭酸基、チオール、チオエテール、ジスルフィド、グアニジノ、ヒドロキシル基、アミン基、ビシナルジオール、アルデヒド、α−ハロアセチル基、水銀オルガニル、エステル基、酸ハロゲン化物、酸チオエステル、酸無水物、イソシアナート、イソチオシアナート、スルホン酸ハロゲン化物、イミドエステル、ジアゾアセテート、ジアゾニウム塩、1,2-ジケトン、ホスホン酸、リン酸エステル、スルホン酸、アゾリド、イミダゾール、インドール、N-マレイミド、α-β-不飽和カルボニル化合物、アリールハロゲニドまたはそれらの誘導体より選択され得る。
【0108】
高分子量を有する他の連結性分子についての非限定的な例は、核酸分子、ポリマー、コポリマー、重合性結合剤、シリカ、タンパク質、および支持体または粒子に関して逆の極性を有する表面を有する鎖状分子である。核酸は、連結性分子に関して相補的な配列を介して、それら自体が核酸分子を含有する親和性分子への連結を提供し得る。
【0109】
重合性結合剤についての例としては、ジアセチレン、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、アクリレート、アクリルアミド、ビニル化合物、スチレン、シリコーン酸化物、酸化ホウ素、リン酸化物、ボレート、ピロール、ポリピロール、およびホスフェートが挙げられ得る。
【0110】
支持体または粒子の表面は、例えば、官能性反応基を有するホスホン酸誘導体の結合によって、化学的に修飾され得る。これらのホスホン酸またはホスホン酸エステル誘導体の1例は、「Mannich-Moedritzer」反応に従って合成され得るイミノ-ビス(メチレンホスホノ)炭酸である。この結合反応は、作製プロセスから直接得られるかまたは前処理(例えば、臭化トリメチルシリルを用いる)後の支持体または粒子で行われ得る。第1のケースにおいて、ホスホン酸(phophonic acid)(エステル)誘導体は、例えば、表面に依然として結合している反応媒体の成分を置換し得る。この置換は、より高温で増強され得る。他方では、臭化トリメチルシリルは、アルキル基含有リンベースの錯化剤を脱アルキルし、それによってホスホン酸(エステル)誘導体についての新たな結合部位を作製すると考えられる。ホスホン酸(エステル)誘導体、またはそこに結合した連結性分子は、上述のものと同一の官能基を示し得る。支持体または粒子の表面処理のさらなる例は、エチレングリコールなどのジオール中における加熱を含む。この処理は、合成がジオール中で既に進行している場合、冗長であり得ることに注意されるべきである。これらの状況下で、直接得られた合成生成物は、必要な官能基を示す可能性が高い。しかし、この処理は、NまたはP含有錯化剤中において製造された支持体または粒子に適用可能である。このような支持体または粒子がエチレングリコールでの後処理へ供されると、表面に依然として結合している反応媒体の成分(例えば、錯化剤)は、ジオールによって置換され得、かつ/または脱アルキル化され得る。
【0111】
第2の官能基を有する第一級アミン誘導体によって、粒子表面に依然として結合しているN含有錯化剤を置換することも可能である。支持体または粒子の表面はまた、シリカでコーティングされ得る。シリカはトリエトキシシランまたはクロロシランなどの有機リンカーと容易に反応するので、シリカは、有機分子の比較的単純な化学結合を可能にする。粒子表面はまた、ホモポリマーまたはコポリマーによってコーティングされ得る。重合性結合剤についての例は、N-(3-アミノプロピル)-3-メルカプトベンズアミジン、3-(トリメトキシシリル)プロピルヒドラジド、および3-トリメトキシシリル)プロピルマレイミドである。重合性結合剤の他の非限定的な例は、本明細書中に記載される。これらの結合剤は、コーティングとして作製されるコポリマーのタイプに依存して、単独でまたは組み合わせて使用され得る。
【0112】
遷移金属酸化物化合物を含有する支持体または粒子と共に使用され得る別の表面改変技術は、対応のオキシクロリドへの塩素ガスまたは有機塩素化剤による遷移金属酸化物化合物の変換である。これらのオキシクロリドは、生体分子においてしばしば見られるヒドロキシまたはアミノ基などの求核剤と反応することができる。この技術は、例えばリジン側鎖のアミノ基を介して、タンパク質との直接結合を作製することを可能にする。オキシクロリドでの表面改変後のタンパク質との結合はまた、マレイミドプロピオン酸ヒドラジドなどの二官能性リンカーを使用して行われ得る。
【0113】
非共有結合技術について、支持体または粒子表面のそれとは逆の極性または電荷を有する鎖型分子が特に好適である。コア/シェルナノ粒子へ非共有結合され得る連結性分子についての例は、アニオン性、カチオン性、もしくは双性イオン性界面活性剤、酸性もしくは塩基性タンパク質、ポリアミン、ポリアミド、ポリスルホン、またはポリカルボン酸を含む。支持体または粒子と官能性反応基を有する両親媒性試薬との間の疎水性相互作用は、必要な連結を生じさせ得る。特に、互いに架橋され得る、リン脂質または誘導体化多糖などの、両親媒性の性質を有する鎖型分子が有用である。表面上でのこれらの分子の吸収は、共インキュベーションによって達成され得る。親和性分子と支持体または粒子との結合はまた、非共有性の自己組織化結合に基づき得る。その1例は、連結性分子としてのビオチンとアビジンもしくはストレプトアビジン(strepdavidin)結合分子とでの単純な検出プローブを含む。
【0114】
生体分子への官能基の結合反応についてのプロトコルは、文献において、例えば、「Bioconjugate Techniques」(Greg T. Hermanson, Academic Press 1996)において見られ得る。生体分子(例えば、MHC分子またはその誘導体)は、酸化、ハロゲン化、アルキル化、アシル化、付加、置換、またはアミド化などの有機化学の標準的手順に従って、共有結合または非共有結合によって、連結性分子に結合し得る。共有結合または非共有結合された連結性分子を結合するためのこれらの方法は、支持体または粒子への連結性分子の結合の前またはその後に適用され得る。さらに、インキュベーションによって、対応して前処理された支持体(substrte)または粒子への分子の直接結合を行う(例えば、臭化トリメチルシリルによって)ことが可能であり、これらは、この前処理に起因して修飾された表面(例えば、より高い電荷または極性表面)を示す。
【0115】
E.タンパク質の製造
本発明は、本発明の種々の態様における使用のためのポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質を記載する。例えば、特異的ペプチドおよびそれらの複合体は、免疫応答を誘発または調節するそれらの能力について分析される。特定の態様において、本発明のペプチドまたはタンパク質の全部または一部はまた、従来の技術に従って溶液中においてまたは固体支持体上において合成され得る。種々の自動合成装置が市販されており、公知のプロトコルに従って使用され得る。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、StewartおよびYoung (1984);Tamら (1983);Merrifield (1986);ならびにBaranyおよびMerrifield (1979)を参照のこと。または、組換えDNA技術が使用され得、その場合、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列が、発現ベクター中へ挿入され、好適な宿主細胞中へ形質転換またはトランスフェクションされ、発現に好適な条件下で培養される。
【0116】
本発明の一態様は、タンパク質の産生のための、微生物を含む細胞への遺伝子導入の使用を含む。関心対象のタンパク質についての遺伝子は、好適な宿主細胞中へ導入され、続いて、好適な条件下で細胞培養が行われ得る。事実上あらゆるポリペプチドをコードする核酸が使用され得る。組換え発現ベクターの作製、およびそこに含まれるエレメントは、当業者に公知であり、ここで簡単に考察される。哺乳動物宿主細胞株の例としては、VeroおよびHeLa細胞、他のBおよびT細胞株、例えば、CEM、721.221、H9、Jurkat、Raji、ならびにチャイニーズハムスター卵巣細胞株、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RINおよびMDCK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、挿入された配列の発現を調節するか、または所望の様式で遺伝子産物を修飾および処理する、宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、切断)は、タンパク質の機能について重要であり得る。種々の宿主細胞が、タンパク質の翻訳後処理および修飾について特徴的かつ特異的な機序を有する。発現された外来タンパク質の正確な修飾および処理を確実にするために、好適な細胞株または宿主系が選択され得る。
【0117】
tk細胞、hgprt細胞、またはaprt細胞それぞれの中の、HSVチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含むが、これらに限定されない、多数の選択システムが使用され得る。また、代謝拮抗物質耐性が選択の基礎として使用され得る:トリメトプリムおよびメトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr;ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt;アミノ配糖体G418に対する耐性を与えるneo;ならびにヒグロマイシンに対する耐性を与えるhygro。
【0118】
F.核酸
本発明は、本発明のタンパク質、ポリペプチド、ペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを含み得る。自己抗原および自己抗原を提示するためのMHC分子についての核酸配列が含まれ、ペプチド/MHC複合体を作製するために使用され得る。
【0119】
本願において使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、全ゲノム核酸を含まずに単離されたかまたは組換えである核酸分子を指す。「ポリヌクレオチド」という用語内には、オリゴヌクレオチド(長さ100残基以下の核酸)、組換えベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなどが含まれる。ポリヌクレオチドは、ある局面において、それらの天然の遺伝子またはタンパク質コード配列から実質的に離れて単離された、調節配列を含む。ポリヌクレオチドは、RNA、DNA、それらのアナログ、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0120】
この点において、「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、または「核酸」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする核酸を指すために使用される(適切な転写、翻訳後修飾、または限局化に必要とされる任意の配列を含む)。当業者に理解されるように、この用語は、ゲノム配列、発現カセット、cDNA配列、およびより小さな操作された核酸セグメントを包含し、これらは、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、および突然変異体を発現するか、またはこれらを発現するように適合され得る。ポリペプチドの全部または一部をコードする核酸は、以下の長さのこのようなポリペプチドの全部または一部をコードする連続核酸配列を含み得る:10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1095、1100、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、9000、10000、またはそれ以上のヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基対。所定の種由来の特定のポリペプチドが、僅かに相違する核酸配列を有するが、それにもかかわらず、同一または実質的に類似したタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする天然変異を含む核酸によって、コードされ得ることも企図される。
【0121】
特定の態様において、本発明は、自己抗原および/またはMHC分子をコードする核酸配列を組み込んでいる組換えベクターならびに単離された核酸セグメントに関する。「組換え」という用語は、ポリペプチドまたは特定のポリペプチドの名称と併用して使用され得、これは、一般的に、インビトロで操作された核酸分子またはこのような分子の複製生成物であるものから作製されたポリペプチドを指す。
【0122】
本発明において使用される核酸セグメントは、そのコード配列の長さにかかわらず、他の核酸配列、例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコードセグメントなどと組み合わされ得、その結果、それらの全長はかなり変化し得る。従って、ほとんどあらゆる長さの核酸フラグメントが使用され得、全長は、好ましくは、意図される組換え核酸プロトコルにおける作製および使用の容易さによって制限されることが企図される。ある場合、核酸配列は、例えば、ポリペプチドの精製、輸送、分泌、翻訳後修飾を可能にするために、またはターゲッティングもしくは効能などの治療的利益のために、追加の異種コード配列と共にポリペプチド配列をコードし得る。タグまたは他の異種ポリペプチドが、修飾ポリペプチドをコードする配列へ付加され得、ここで、「異種」は、修飾ポリペプチドと同一でないポリペプチドを指す。
【0123】
III.診断方法および治療方法
A.免疫応答およびアッセイ
上記で考察されたように、本発明は、自己抗原に対する対象における免疫応答を喚起または改変することに関する。一態様において、得られる免疫応答または状態は、自己免疫応答に関連する疾患または症状を有するか、有すると疑われるか、または発症する危険性がある対象を防護または治療し得る。
【0124】
1.イムノアッセイ
本発明は、免疫応答がペプチド/MHC/粒子複合体によって存在、誘導、喚起、または改変されるかどうかおよびどの程度であるかを評価するための血清学的アッセイの実施を含む。実施され得る多くのタイプのイムノアッセイが存在する。本発明によって包含されるイムノアッセイには、米国特許第4,367,110号(二重モノクローナル抗体サンドイッチアッセイ)および米国特許第4,452,901号(ウエスタンブロット)に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。他のアッセイには、インビトロおよびインビボの両方での、免疫細胞化学および標識リガンドの免疫沈降が含まれる。
【0125】
循環抗原特異的CD8+ T細胞の数を定量するための1つの方法は、テトラマーアッセイである。このアッセイにおいて、特異的エピトープが、蛍光標識されたMHCクラスI分子の合成四量体形態に結合する。CD8+ T細胞はクラスI分子に結合した短いペプチドの形態の抗原を認識するので、適切なT細胞受容体を有する細胞が、標識された四量体に結合し、フローサイトメトリーによって定量され得る。この方法はELISPOTアッセイよりも時間を要しないが、テトラマーアッセイは結合のみを測定し、機能を測定しない。特定の抗原に結合する細胞が全て、必ずしも活性化されるとは限らない。しかし、ELISPOTアッセイ、テトラマーアッセイ、および細胞傷害性アッセイの相関関係が実証された(Goulderら, 2000)。
【0126】
イムノアッセイは、一般的に、結合アッセイである。ある好ましいイムノアッセイは、当該技術分野において公知である、種々のタイプの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、またはビーズに基づくアッセイ、例えば、Luminex(登録商標)技術である。組織切片を使用する免疫組織化学的検出もまた特に有用である。
【0127】
ELISAの1例において、抗体または抗原が、選択された表面、例えば、カラム支持体、ディップスティック、またはポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェルに固定化される。次いで、所望の抗原または抗体を含有すると疑われる試験組成物、例えば、臨床試料が、ウェルに添加される。結合し、洗浄し、非特異的に結合された免疫複合体を除去した後、結合された抗原または抗体が検出され得る。検出は、一般的に、検出可能な標識へ連結されている、所望の抗原または抗体に特異的な、別の抗体の添加によって達成される。このタイプのELISAは、「サンドイッチELISA」として公知である。検出はまた、所望の抗原に特異的な二次抗体の添加、続いて、該二次抗体について結合親和性を有する三次抗体の添加によって達成され得、該三次抗体は検出可能な標識に連結されている。ELISA技術におけるバリエーションは、当業者に公知である。
【0128】
競合ELISAもまた可能であり、ここで、試験試料は、既知量の標識された抗原または抗体と結合について競合する。未知の試料中の反応性種の量は、コーティングされたウェルとの共インキュベーションの前または間に、該試料と既知の標識された種とを混合することによって測定される。試料中の反応性種の存在は、ウェルへの結合に利用可能な標識された種の量を低下させるように作用し、従って最終的なシグナルを減少させる。
【0129】
使用されるフォーマットにかかわらず、ELISAは、共通のある特徴、例えば、コーティング、インキュベーションまたは結合、非特異的に結合された種を除去するための洗浄、および結合された免疫複合体の検出を有する。
【0130】
抗原または抗体はまた、プレート、ビーズ、ディップスティック、膜、またはカラムマトリクスの形態のような、固体支持体に連結され得、分析される試料が、固定化された抗原または抗体に適用される。プレートを抗原または抗体のいずれかでコーティングする際に、一般的に、プレートのウェルは、一晩または特定の期間の間、抗原または抗体の溶液と共にインキュベートされる。次いで、プレートのウェルを洗浄し、不完全に吸着された物質を除去する。次いで、ウェルの残っている利用可能な表面が、試験抗血清に関して抗原的に中性である非特異的タンパク質で「コーティング」される。これらには、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、および粉乳の溶液が含まれる。コーティングは、固定性表面上における非特異的吸着部位の遮断を可能にし、従って、該表面上への抗血清の非特異的結合によって引き起こされるバックグラウンドを減少させる。
【0131】
ELISAにおいて、直接的な手段よりも二次または三次検出手段を使用することがより一般的である。従って、ウェルに抗原または抗体を結合し、バックグラウンドを低下させるために非反応性物質でコーティングし、結合していない物質を除去するために洗浄した後、固定性表面を、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするのに有効な条件下で、試験される臨床試料または生物学的試料と接触させる。次いで、免疫複合体の検出は、標識された二次結合性リガンドもしくは抗体、または、標識された三次抗体もしくは三次結合性リガンドと併用しての二次結合性リガンドもしくは抗体を必要とする。
【0132】
B.自己免疫応答または自己免疫状態のアッセイ
自己免疫状態を治療または予防するためのタンパク質、ポリペプチド、および/またはペプチドの使用に加えて、本発明は、特定の自己反応性細胞集団または自己反応性状態の存在を診断するための自己抗原または自己免疫状態の存在の検出を含む、種々の様式でのこれらのポリペプチド、タンパク質、および/またはペプチドの使用を企図する。本発明に従って、自己反応性の有無を検出する方法は、個体から、例えば個体の血液、唾液、組織、骨、筋肉、軟骨または皮膚から、試料を得る工程を含む。試料の単離に続いて、本発明のポリペプチド、タンパク質、および/またはペプチドを使用する診断アッセイが、自己反応性の存在を検出するために行われ得、このような試料中における測定についてのこのようなアッセイ技術は、当業者に周知であり、テトラマーアッセイ、イムノアッセイ、ウエスタンブロット分析、および/またはELISAアッセイなどの方法を含む。
【0133】
本明細書において使用される場合、「免疫応答」またはその等価物「免疫学的応答」という語句は、自己抗原または自己抗原の関連エピトープに向けられた(抗原特異的T細胞またはそれらの分泌物によって媒介される)細胞の展開を指す。細胞性免疫応答は、クラスIまたはクラスII MHC分子と連携してポリペプチドエピトープを提示し、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞および/またはCD8+細胞傷害性T細胞を活性化することによって誘発される。前記応答はまた、他の成分の活性化を含み得る。
【0134】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的について、「エピトープ」および「抗原決定基」という用語は、交換可能に使用され、B細胞および/またはT細胞が応答または認識する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並べられる非連続アミノ酸または連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的に、変性溶媒への曝露において保持され、一方、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的に、変性溶媒での処理において失われる。エピトープは、典型的に、特有の空間的コンフォメーションで、少なくとも3個、より通常は、少なくとも5個または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的コンフォメーションを測定する方法には、例えば、x線結晶学および二次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols (1996)を参照のこと。T細胞は、CD8細胞については約9個のアミノ酸、CD4細胞については約13〜15個のアミノ酸の連続エピトープを認識する。エピトープを認識するT細胞は、エピトープに対する応答における抗原刺激されたT細胞による3Hチミジン取り込み(Burkeら, 1994)によって、抗原依存性細胞死滅(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、Tiggesら, 1996)によって、またはサイトカイン分泌によって測定されるような、抗原依存性増殖を測定するインビトロアッセイによって同定され得る。細胞性免疫学的応答の存在は、増殖アッセイ(CD4+ T細胞)またはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイによって測定され得る。
【0135】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、交換可能に使用され、動物またはレシピエントの免疫応答の一部として機能するいくつかの種類の構造的に関連するタンパク質のいずれをも指し、これらのタンパク質には、IgG、IgD、IgE、IgA、IgMおよび関連タンパク質が含まれる。
【0136】
任意で、自己抗原または好ましくは自己抗原のエピトープは、MHCおよびMHC関連タンパク質などの他のタンパク質に化学的に結合され得るか、またはこれらとの融合タンパク質として発現され得る。
【0137】
本明細書において使用される場合、「免疫原性因子」または「免疫原」または「抗原」という用語は、交換可能に使用され、単独で、アジュバントと併用して、またはディスプレイビヒクル上に提示された状態で、レシピエントへの投与時にそれ自体に対する免疫学的応答を誘導することができる分子を記述する。
【0138】
C.治療方法
本発明の方法は、1つまたは複数の自己抗原によって引き起こされる疾患または状態についての治療を含む。本発明の免疫原性ポリペプチドは、自己免疫状態または疾患を有するか、有すると疑われるか、または発症する危険性がある人において免疫応答を誘導または改変するために与えられ得る。自己反応性について検査で陽性となったかまたはこのような状態または関連状態を発症する危険性があるとみなされる個体に関して、方法が使用され得る。
【0139】
IV.診断および治療の標的
本発明の態様は、多数の免疫介在性疾患または自己免疫疾患、例えば、糖尿病、移植片拒絶などを治療または改善するために使用され得る。「自己免疫疾患」には、個体自身の組織または器官から生じこれらに向けられた疾患または障害、またはそれらの症状発現、またはそれらから生じる状態が含まれる。一態様において、それは、正常な体組織および抗原と反応性であるT細胞による産生から生じるか、これによって悪化する状態を指す。自己免疫疾患または障害の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:関節炎(関節リウマチ、例えば、急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風もしくは痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、急性免疫学的関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎、II型コラーゲン誘導関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、および若年発症関節リウマチ、変形性関節症、進行性慢性関節炎(arthritis chronica progrediente)、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎(polyarthritis chronica primaria)、反応性関節炎、および強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば、尋常性乾癬(plaque psoriasis)、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪の乾癬、アトピー、例えば、アトピー性疾患、例えば、枯草熱およびヨブ症候群、皮膚炎、例えば、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、じんま疹、例えば、慢性アレルギー性じんま疹および慢性特発性じんま疹、例えば、慢性自己免疫性じんま疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば、全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば、脊椎−眼(spino-optical)MS、原発性進行性MS(PPMS)、および再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、大腸炎、例えば、潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ状大腸炎(colitis polyposa)、壊死性全腸炎、および全層性大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば、成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液障害、リウマチ性脊椎炎、リウマチ性滑膜炎、遺伝性血管浮腫、髄膜炎におけるような脳神経損傷、妊娠性ヘルペス、妊娠性類天疱瘡、陰嚢掻痒(pruritis scroti)、自己免疫性早発性卵巣機能不全、自己免疫状態に起因する突発性聴覚消失、IgE媒介性疾患、例えば、アナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセン脳炎ならびに辺縁および/または脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例えば、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、または自己免疫性ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有するまたは有さない糸球体腎炎(GN)、例えば、慢性または急性糸球体腎炎、例えば、原発性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜又は膜性増殖性GN(MPGN)、および急速進行性GN、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌腺不全症、亀頭炎、例えば、形質細胞亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑(eythema multiform)、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、前悪性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー状態および応答、アレルギー反応、湿疹、例えば、アレルギー性またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、および小胞状掌蹠(vesicular palmoplantar)湿疹、喘息、例えば、喘息気管支炎(asthma bronchiale)、気管支喘息および自己免疫性喘息、T細胞の浸潤を伴う状態および慢性炎症応答、妊娠中の胎児A-B-O血液型などの外来抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、狼瘡、例えば、ループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス、円板状ループスエリテマトーデス、脱毛症ループス、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えば、皮膚SLE、または亜急性皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)、および播種性紅斑性狼瘡、若年発症(I型)真正糖尿病、例えば、小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、および成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)。以下も考えられる:サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫応答、肉芽腫症、例えば、リンパ腫様肉芽腫症、ヴェーゲナー肉芽腫症、顆粒球減少症、脈管炎、例えば、脈管炎、大型脈管炎(リウマチ性多発性筋痛および巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中型脈管炎(川崎病および結節性多発性動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発性動脈炎、免疫脈管炎(immunovasculitis)CNS脈管炎、皮膚脈管炎、過敏性脈管炎、壊死性脈管炎、例えば、全身性壊死性脈管炎、およびANCA関連脈管炎、例えば、チャーグ−ストラウス脈管炎または症候群(CSS)およびANCA関連小型脈管炎、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームズ陽性貧血、ダイアモンドブラックファン貧血、溶血性貧血、または免疫性溶血性貧血、例えば、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、アジソン病、免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、多臓器損傷症候群、例えば、敗血症、外傷または出血に続発するもの、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レーノー症候群、シェーグレン症候群、スティーヴンズ−ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば、水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、天疱瘡粘膜類天疱瘡(pemphigus mucusmembrane pemphigoid)、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多発性内分泌腺症、ライター病または症候群、熱傷、子癇前症、免疫複合体障害、例えば、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、多発性神経障害、慢性神経障害、例えば、IgM多発性神経障害またはIgM媒介性神経障害、自己免疫性または免疫介在性血小板減少症、例えば、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、例えば、慢性または急性ITP、強膜炎、例えば、特発性角膜強膜炎、上強膜炎、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば、自己免疫性精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性内分泌疾患、例えば、甲状腺炎、例えば、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、または亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーヴズ病、多腺性症候群、例えば、自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、新生物随伴症候群、例えば、神経学的新生物随伴症候群、例えば、ランバート−イートン筋無力症症候群またはイートン−ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えば、アレルギー性脳脊髄炎または脳脊髄炎アレルギア(allergica)および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば、胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、眼球クローヌスまたはオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパシー、多巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞性肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ球性間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植片)vs NSIP、ギラン−バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚病、急性熱性好中球性皮膚症、角層下膿疱性皮膚炎、一過性棘融解性皮膚症、肝硬変、例えば、原発性胆汁性肝硬変および肺性肝硬変(pneumonocirrhosis)、自己免疫性腸症症候群、セリアックまたはコエリアック(Coeliac)病、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性(amylotrophic)側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリグ病)、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性聴覚消失、多発性軟骨炎、例えば、難治性または再発または再発性多発性軟骨炎、肺胞タンパク症、コーガン症候群/非梅毒性角膜実質炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、酒さ性自己免疫、帯状疱疹関連疼痛、アミロイドーシス、非癌性リンパ球増加症、原発性リンパ球増加症、例えば、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば、良性モノクローナル高ガンマグロブリン血症および意義不明のモノクローナル高ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、MGUS)、末梢性ニューロパシー、新生物随伴症候群、チャネル病、例えば、てんかん、片頭痛、不整脈、筋肉障害、難聴、盲、周期性四肢麻痺、およびCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシー、巣状もしくは分節状または巣状分節状糸球体硬化(症)(FSGS)、内分泌性眼障害、ぶどう膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓障害、線維筋痛症、多発性内分泌腺不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期痴呆、脱髄疾患、例えば、自己免疫性脱髄疾患および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、ドレスラー症候群、円形脱毛症(alopecia greata)、全脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レーノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、例えば、抗精子抗体による男性および女性の自己免疫性不妊症、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群、鳥飼育者肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えば、アレルギー性肺胞炎および線維化肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、らい病、マラリア、寄生虫性疾患、例えば、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、キャプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑(erythema elevatum et diutinum)、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症(flariasis)、毛様体炎、例えば、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎(heterochronic cyclitis)、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、またはフックス毛様体炎、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウイルス感染症、セプシス、内毒素血症、膵臓炎、甲状腺中毒症(thyroxicosis)、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染症、エプスタイン−バーウイルス感染症、ムンプス、エヴァンズ症候群、自己免疫性性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎(chorioiditis)、巨細胞性多発筋痛(gianT cell polymyalgia)、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化ネフロパシー、良性家族性および虚血−再灌流障害、移植器官再灌流、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、アスペルニオゲニーズ(asperniogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュプュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎(endophthalmia phacoanaphylac
tica)、アレルギー性腸炎(enteritis allergica)、らい性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱(febris rheumatica)、ハマン−リッチ病、感音難聴(sensoneural hearing loss)、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性腺機能低下症、回腸炎レジオナリス(regionalis)、白血球減少症、単核細胞増加症感染(mononucleosis infectiosa)、横移動脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感神経眼炎(ophthalmia symphatica)、精巣炎肉芽腫症、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルヴァン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、非悪性胸腺腫、白斑、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う状態、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋症、例えば、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性または非化膿性副鼻腔炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨または蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば、好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症−筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム、または好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹(seronegative spondyloarthritides)、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット−アルドリッチ症候群、毛細毛細血管拡張性運動失調候群(ataxia telangiectasia syndrome)、血管拡張症、膠原病と関係する自己免疫障害、リウマチ、神経病学的疾患、リンパ節炎、血圧応答の低下、血管機能不全、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、および脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、虚血性再灌流障害、心筋または他の組織の再灌流障害、リンパ腫気管気管支炎、炎症性皮膚病、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎、多臓器不全、水疱性疾患、腎皮質壊死、急性化膿性髄膜炎または他の中枢神経系炎症障害、眼および軌道(ocular and orbital)炎症障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導性毒性、ナルコレプシー、急性の重篤な炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、ならびに、子宮内膜症。
【0140】
V.実施例
下記の実施例は、本発明の種々の態様を例示する目的のために提供され、決して本発明を限定する意図はない。当業者は、本発明は、目標を行いかつ記載の目的および利益、ならびにここに固有の目標、目的および利益を得るように十分に適合されることを容易に認識する。本発明の実施例、およびここに記載の方法は、目下、好ましい態様を代表し、例示的であって、本発明の範囲に対する限定として意図されない。特許請求の範囲によって定義される本発明の精神内に包含されるその中における変更および他の使用は、当業者に予想される。
【0141】
実施例1
ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子での処置によるT1Dの防護
NRP-V7/Kd単量体でコーティングされた超常磁性ナノ粒子での処置による糖尿病の防護。NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子がインビボで免疫寛容原性であるかどうかを調査するために、8.3-TCRトランスジェニックNODマウス(以下において8.3-NODまたはVα17.4+ TCR-TGマウスとも呼ばれる)を、少量の粒子の数回の静脈内注射で処置した(3日毎に1回、0.6 μgのNRP-V7を含む5μl)。これらのマウスのトランスジェニック高アビディティIGRP206-214反応性脾臓CD8+ T細胞プールは、3用量で有意に枯渇した(脾臓CD8:CD4比は約4から約1へ低下した)(図1A)。除去されなかった僅かなCD8+ T細胞が、CD44発現を評価することによって測定される活性前のサインを示し(図1B)、インビトロでの抗原性刺激に対して低応答性であり、このことは、それらが処置によってアネルギー化されたことを示唆している(図1C)。
【0142】
「多重化」の有効性を研究するために、常磁性ビーズ(ここで「ビーズ」、「ナノ粒子」、または「np」と呼ばれる)を6つの異なるペプチド/MHC単量体でコーティングした。野生型NODマウスの群を、これらのビーズのプール、対照ペプチド(TUM)/Kdでコーティングされたビーズ、またはNRP-V7/Kdでコーティングされたビーズで処置した(NRP-V7と同様に、NRP-V7/Kdでコーティングされたビーズは、糖尿病からの防護をもたらすことなく(Hanら, 2005)、全IGRP206-214反応性プールを除去すると予想された)。驚くべきことに、コーティングされていないビーズ、アビジン-ビオチン-コーティングされたビーズ(ここで、「ビオチン-np」と呼ばれる)、TUM/KdコーティングされたビーズまたはNRP-V7ペプチド単独(Hanら 2005)で処置したマウスとは異なり、NRP-V7/Kdコーティングビーズで処置された(2〜3週に1回)NODマウスは、T1Dから非常に防護された(図2)。
【0143】
NRP-V7/Kd単量体でコーティングされた超常磁性ナノ粒子での処置による低アビディティクロノタイプの全身的増大。放射能標識されたビーズを使用する研究によって、単回注射の24時間内のそれらの組織分布は、それらの小さなサイズから予想されるように、調べた全ての年齢で、全身的であったことが示された(図3)。処置したマウスの血清中のいくつかのサイトカインおよびケモカインのレベルの測定によって、np処置は、「サイトカインストーム」(即ち、NRP-V7反応性CD8+ T細胞を含む、多様な免疫細胞タイプの刺激から生じる増加された血清濃度のサイトカイン)を誘導しなかったことがさらに示された(図4)。
【0144】
しかし、最も興味深いことには、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズで処置されたマウスは、対照ナノ粒子で治療された年齢を適合させた非糖尿病動物と比較して、追跡期間の終わりに(32週)、循環および膵島内NRP-V7/Kd四量体+ CD8+細胞のプールを有意に増加させた(図5A)。特に、NRP-V7/Kdナノ粒子処置マウスの膵島内CD8+ T細胞は、対照マウスの膵島において見られたものよりも有意に低いアビディティ(より高いKd)で、NRP-V7/Kd四量体に結合し、このことは、ナノ粒子処置は、それらの病原性高アビディティ相当物を犠牲にしての非病原性低アビディティクロノタイプの増大を促進したことを示唆している(図5B)。より低い用量で処置されたマウスは、糖尿病からの防護がはるかに少なく(図5C)、膵島および脾臓においてより少ないパーセンテージの四量体+ CD8+ T細胞を有した(図5D、データは示さず)ことから、これらの効果は用量依存性であった。さらに、10連続用量のナノ粒子を受容したマウス(10週齢で開始し2回/週)は、4用量のみを受容したもの(これも10週齢で開始;図5E)よりも有意に高いパーセンテージの循環四量体+ CD8+ T細胞を有したことから、各用量の効果は累積的であると考えられる。
【0145】
上記の結果は、NRP-V7/K/Kdコーティングされたnpは、NRP-V7反応性CD8+ T細胞によって(それらのTCRを介して)特異的に認識され取り込まれたことを示唆した。これを調べるために、本発明者らは、トランスジェニックNRP-V7反応性TCRを発現するNODマウスの種々の脾細胞亜集団におけるならびに野生型の非トランスジェニックNODマウスにおける緑色蛍光(ペプチド-MHC np複合体のアビジン分子に結合した)の存在を評価した。NRP-V7/Kd np注射の24〜40時間内で、緑色蛍光は、TCRトランスジェニックマウスのCD8+ T細胞サブセットにおいて(図6A)、および、遥かにより少ない程度で、非トランスジェニックマウスのCD8+ T細胞サブセットにおいて(図6B)、検出され得ただけであった。緑色蛍光の検出可能な蓄積は、いずれのタイプのマウスの脾臓CD4+ T、B、CD11b+、またはCD11c+細胞サブセットにおいても検出され得なかった(図6Aおよび6B)。
【0146】
サブドミナントな自己抗原性ペプチド/MHC(DMK138-146/Db)複合体でコーティングされた超常磁性ナノ粒子の抗糖尿病誘発性特性。本発明者らは、上記の治療手段の防護効果がNRP-V7反応性CD8+ T細胞(NODマウスにおける一般的な自己反応性T細胞サブセット)の特有性であるかどうか、または他のよりドミナントでない自己抗原性特異性に適用可能な現象であるかどうかを調べた。このために、Dbによって提示されかつ糖尿病誘発性自己反応性CD8+ T細胞の遥かにより少ないプールによって標的化される別の自己抗原に由来するペプチド(筋緊張性ジストロフィーキナーゼ;DMKの残基138-146;ここで、「DMK138-146/Db」と呼ばれる)(Liebermanら, 2004)でコーティングされたビーズで、マウスを処置した。NRP-V7/Kd複合体でコーティングされたナノ粒子でそうであったように、DMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子でのNODマウスの処置は、循環、脾臓および膵島内DMK138-146/Db反応性CD8+ T細胞の有意な増大を引き起こし(図7A)、糖尿病からの有意な防護をもたらした(図7B)。DMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子は、NRP-V7反応性CD8+ T細胞を増大させず(図7C)、NRP-V7/Kdがコーティングされたナノ粒子は、DMK138-146/Db反応性T細胞を増大させなかった(図7D)ことから、インビボでのT細胞増大は抗原特異的である。図7Eは、代表的なFACS染色プロフィールを示す。
【0147】
NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスにおける膵島に対しての他のIGRP-自己反応性CD8+ T細胞特異性の動員の阻害。次に、本発明者らは、APL処置動物においてそうであったように(Hanら, 2005)、ナノ粒子増大した低アビディティNRP-V7および/またはDMK138-146/Db反応性CD8+ T細胞の動員が、膵島に対する他のβ細胞自己反応性T細胞特異性の動員を阻害するかどうかを調べた。これを、対照、NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの膵島関連CD8+ T細胞の応答性を、一団の76個の異なるIGRPエピトープならびにDMK138-146に対して比較することによって行った。予想されるように、それらが増加された頻度のNRP-V7またはDMK138-146/Db反応性クロノタイプを含有した場合、NRP-V7/KdコーティングされたおよびDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの膵島関連CD8+ T細胞は、対照マウスから単離されたものよりも、それぞれ、NRP-V7およびDMK138-146に対する応答において有意により多くのIFN-γを産生した(図8)。特に、対照ナノ粒子で処置されたマウス由来のものと比べた場合、NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの膵島関連CD8+ T細胞による有意なIFN-γ応答を誘発することができるエピトープの数は有意に減少し、このことは、動員および/または蓄積の阻害を示唆している(表3)。
【0148】
(表3)対照ナノ粒子またはNRP-V7/KdもしくはDMK138-146/Db単量体でコーティングされたナノ粒子処置されたマウスにおける一団のIGRPエピトープに対する膵島関連CD8+ T細胞の反応性。
マウスに、4週齢から開始して、2〜3週毎に1回、ナノ粒子の1静脈内注射を受容させた。これらの試料は、処置の終了時でのマウス由来である(約32週齢)。膵島関連CD8+ T細胞を、ペプチドパルスされた抗原提示細胞に応答してのIFN-g産生についてアッセイし、陽性(>50 pg/ml)および陰性応答(<50 pg/ml)の数をカウントした。
【0149】
NRP-V7/KdおよびDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子は、新たに糖尿病のNODマウスにおいて高い割合の糖尿病寛解を誘導する。前糖尿病段階の間の処置の有効性は、新たに診断された糖尿病マウスにおいて正常血糖を回復させるナノ粒子療法の能力に対する研究を促進した。マウスの群を、血糖値について週に2回モニタリングし、≧10.5 mM血糖で高血糖性と見なした。TUM/Kdコーティングされたナノ粒子を受容するマウスまたはNRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子を受容するマウスへ(毎週2回注射)、マウスをランダムに分けた。β細胞ストレスを減少させかつβ細胞再生を促進するために、半単位の皮下インスリンもまた、毎日1回、糖尿を示すマウスへ提供した。マウスのさらなる群にDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子を受容させた。異なる研究において可変パーセンテージの動物において安定な寛解を誘導することが示された、モノクローナル抗CD3抗体(5日間20μg/d)での処置を、陽性対照として使用した。図9Aおよび9Bに示されるように、NRP-V7/Kdコーティングされた粒子で処置した11匹のマウスうち9匹が処置の5〜12週内に正常血糖となった。治癒しなかった2匹のマウスは、それらの血糖値が>18 mM/lであったときに処置の最初の用量を受容した2匹だけであり、このことは、有効性は、限界量の残存β細胞の存在を必要とし得ることを示唆している。同様に、DMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置した11匹のマウスのうち8匹が正常血糖となり(図9Aおよび9C)、他の3匹は、長期間20 mMに達しない血糖の振動するレベルを示した(図9C)。対照的に、対照TUM/Kdコーティングされたナノ粒子を受容した9匹のマウスのうち1匹のみが明らかな高血糖へ進行しなかった(図9Aおよび9D)。図9Eは、ナノ粒子の各注射後のマウスの各グループにおける血糖の平均値を比較する。図9Fは、急性糖尿病マウスにおいてこれも正常血糖を回復させることができると以前に示された非抗原特異的免疫療法戦略である、抗CD3 mAbでの処置の結果を示しており(陽性対照グループ);6匹のマウスのうち4匹が正常血糖となった。まとめると、これらの結果は、抗原特異的ナノ粒子療法アプローチの有効性が、マウスおよび最近になってヒト糖尿病患者において成功した非抗原特異的アプローチ(Keymeulenら, 2005;Heroldら, 2002)のそれに匹敵することを示唆している。
【0150】
前糖尿病動物において見られたように、糖尿病マウスおいて処置の効果が長続きするかどうかを調べるために、処置を、正常血糖の連続4週後に中止し、糖尿病再発についてマウスを追跡した。循環四量体陽性プールのサイズに対する処置の効果を、処置中止、4週間後、および再発性高血糖時で評価した。予想通りに、処置停止の4週間後、循環四量体反応性T細胞プールのサイズが減少し(図10A)、恐らくはその結果として、治癒された糖尿病マウスの約30〜45%が、4〜14週後に、再発性高血糖を発症した(図10Bおよび10C)。これは、内因性自己抗原(即ち、前糖尿病動物における)によるまたはナノ粒子のブースター注射(即ち、激しく減少されたβ細胞質量を有する糖尿病動物における)による、増大した低アビディティ自己反応性T細胞プールの再活性化が、長期防護のために必要とされ得ることを示唆した。同様の結果が、DMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスにおいて得られた(図10A、10B、および10D)。
【0151】
治癒マウス対糖尿病および非糖尿病未処置マウスにおける腹腔内ブドウ糖負荷試験(IPGTT)によって、前者は、非糖尿病未処置動物によって示されるものとほぼ同一でありかつ糖尿病のマウスに対応するものよりも有意により良い耐糖能曲線を有することが確認された(図11A)。さらに、治癒動物は、非糖尿病未処置マウスにおいて見られたものに統計的に匹敵し、かつ糖尿病未処置動物に対応するものよりも有意に高い食後血清インスリンレベルを有した(図11B)。これらのデータと一致して、NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置マウスのIPGTT血清インスリンレベルは、非糖尿病マウスのものと類似し、糖尿病未処置動物のものよりも有意に良かった(図11C)。治癒動物は、年齢を適合させた非糖尿病未処置マウスのそれと比べて、50週齢で正常な体重を有した(高血糖の逆転後>25週)(図11D)。
【0152】
ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、高アビディティおよび低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞を効果的に「識別する」ことができる。大抵のIGRP206-214反応性CD8+細胞は、CDR3不変Vα17-Jα42鎖を使用するが、異種VDJβ鎖を使用しない。糖尿病発症の間のこのT細胞サブセットの「アビディティ成熟」は、3つの異なるVα17エレメントの使用の変化に関連する。これらの3つの異なるVαエレメントはリガンド結合アビディティで相違している(Vα17.5>Vα17.4>Vα17.6)ことが、単一TCRβ鎖との関連において3つの異なるCDR3不変Vα17-Jα42鎖を発現するTCRαβトランスフェクタントの研究において確認された(Hanら, 2005)。ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子が、異なるアビディティを有するリガンド認識T細胞を実際に差別的に標的化し得るかどうかを調べるために、これらのトランスフェクタント上のCD8分子の「キャッピング」を誘導するNRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子の能力を評価した。60%超のVα17.5+細胞、しかし20%未満のVα17.4+またはVα17.6+細胞が、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズと5分間の共インキュベーションによってキャップを形成させた。30分以内に、キャップを有するVα17.4+細胞のパーセンテージは、Vα17.5+細胞について見られたものに近づいたが、この数は、Vα17.6+細胞については20%未満のままであった(図12)。これらの結果は、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズは、高アビディティおよび低アビディティT細胞を実際に識別し得ることを実証しており、これらのナノ粒子がナイーブな高アビディティクロノタイプを優先的に除去することについての説明を提供している。しかし、それらは、これらの粒子が低アビディティクロノタイプを増大させる理由を、特に、(ナノ粒子上のペプチド/MHCによる)補助刺激の非存在下でのTCR連結はまた低アビディティクロノタイプを増大させるのではなく除去すると予想されると見なされる場合、説明していない。
【0153】
低親和性Vα17.6/8.3β TCRを発現するCD8+細胞は抗糖尿病誘発性である。低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞がインビボで抗糖尿病誘発性特性を有するかどうかを調べるために、低親和性IGRP206-214反応性Vα17.6/8.3β TCRを、NODマウスにおいて遺伝子導入により発現させた(本明細書において「Vα17.6+」と呼ばれる;これは、8.3-TCR(Vα17.4+)よりも約10倍低い親和性を有する;TeytonおよびSantamaria、未公開データ)。このTCRは、CD8+細胞の正の選択を促進するが、8.3-TCR(Vα17.4+)よりも明らかにより少なく促進することが示された(Han ら, 2005)。結果として、Vα17.6+ TCR-TGマウスは、Vα17.4+ TCR-TGマウスよりも少ないNRP-V7四量体反応性CD8+胸腺細胞および脾細胞を含有する。さらに、Vα17.6+ TCR-TGマウス由来の四量体+(高および低)CD8+細胞は、インビトロでのペプチド刺激時に、Vα17.4+ TCR-TGマウスに由来するものよりも少ないIFN-γ(およびIL-2)を分泌し、リガンドについてのそれらの低アビディティと適合な、NRP-V7パルスされたRMA-SKd標的の非効率的なキラーである(Hanら, 2005;データは示さず)。最も重要なことには、これらのマウスは、糖尿病(70匹の雌のうち2匹のみがT1Dを発症した)および膵島炎からほぼ完全に防護される[それぞれ、Vα17.6+対Vα17.4+ TCR-TGマウスにおいて、<0.4対>3のスコア(最大値4のうち)(P<0.012)](図13Aおよび図13B)。
【0154】
これは、LCMVエピトープを認識する無関係の非自己反応性TCRを発現するNODマウス(LCMV TCR-TG NODマウス)において生じるものと全く対照的である。Serrezeら (2001)によって以前報告され、本明細書における使用によって確認されたように、これらのマウスは、野生型NODマウスと本質的に同様にT1Dを発症し、膵島へ内因性IGRP206-214反応性CD8+細胞を動員する(Vα17.6+ TCR-TGマウスの膵島においては完全に存在しない)(図13C)。従って、Vα17.4+およびLCMV TCR(それぞれ、糖尿病誘発活性型および中性)とは異なり、Vα17.6+ TCRは、抗糖尿病誘発性特性を有すると考えられる。
【0155】
これらのVα17.6+ TCR-TGマウスの大抵のTG T細胞は四量体に弱く結合するかまたは全く結合しないという事実にもかかわらず、胸腺を出て行く細胞のフラクションは、見かけ上高いアビディティで(即ち、高mfiで)四量体に結合する(図14A)。本発明者らは、これらのマウスの四量体-low(lo)および四量体-陰性CD8+ T細胞は、TG TCRを発現するCD4+CD8+胸腺細胞から生じるが、内因性TCR(即ち、TCRα鎖)において正の選択を経るのではないかと考えた。他方で、四量体-hi細胞は、TG TCRαβ鎖のみを発現するCD4+CD8+胸腺細胞から生じ、ペプチド/MHCについてのそれらの低い親和性のために、それらが通常よりも高いレベルのTG TCRを発現する場合、正の選択のみを経る可能性がある。この解釈は、RAG-2-/-バックグラウンドにおいてVα17.6+ TCRを発現するマウスにおいて、成熟細胞のみが、高アビディティで四量体に結合するという観察によって支持される(図14B)。重要なことに、これら2タイプのRAG-2-/- TCR-TGマウスは、同様の発生率で糖尿病を発症する(図15)。従って、本発明者らは、RAG-2+ Vα17.6 TCR-TGマウスにおいて成熟する四量体-loおよび四量体- CD8+ T細胞は、それらの四量体-hi相当物(これは、RAG-/-TCR-TGマウスにおいて糖尿病を引き起こす)の糖尿病誘発性ポテンシャルを阻害するのではないかと考える。これらの結果は、内因性(即ち、非トランスジェニック)TCRα鎖の発現を動員する内因性TCR-Cα欠損を有するVα17.6 TCR-TGマウスの株において再現された(図16Aおよび16B)。
【0156】
Vα17.6+(しかしVα17.4+ではない)TCR-TGマウスは、免疫抑制性活性を有する記憶CD8+細胞のプールを自然に生じる。Vα17.6+ TCR-TGマウスおよびTCR-Cα欠損Vα17.6 TCR-TGマウスの種々のリンパ系器官中に含有される四量体陽性CD8+ T細胞の細胞蛍光測定研究によって、脾臓、リンパ節、および、特に、記憶T細胞の公知のリザーバである骨髄における、Vα17.4+ TCR-TG マウスと比べてのCD44hiおよびCD44hiCD122+ CD8+細胞の拡張されたプールの存在が明らかとなった(図17Aおよび17B)。重要なことには、これは、CD122+細胞を含有しない四量体-highサブセットにおいてではなく、主に四量体-lowにおいて生じる(図17C)。これらの細胞は、セントラルおよびエフェクター記憶リンパ球の両方において示されるマーカーを発現し(図17D)、胸腺ではなく末梢リンパ系器官において主として見られ、このことは、末梢起源を示唆している(図17E)。さらに、BrdU取り込みアッセイは、それらがインビボで増殖することを示唆した(図17F)。精製された脾臓 Vα17.6+(しかしVα17.4+ではない)TCR-TG CD8+ 細胞は、APCおよび抗原の非存在下においてIL-2またはIL-15に応答して激しく増殖することから、機能的において、これらの記憶様細胞は、明らかに「記憶」T細胞として振る舞う(図17G)。さらに、それらは、インビトロにおける抗原での刺激でIFN-γを迅速に産生する(図17Hおよび17I)。しかし、それらは、インビトロでの抗原刺激でインターロイキン-2を増殖も産生もしない(図17J)。この機能的プロフィールは、調節性(抑制性)CD4+CD25+ T細胞サブセットのそれと非常に似ている。総合すると、これらのデータは、Vα17.6+(しかしVα17.4+ではない)TCR-TG CD8+細胞は、抗原の非存在下であってさえ、恒常性のキュー(cue)に応答して無期限に生存することが恐らく可能である、(1つまたは複数の抗原遭遇時に)長寿命記憶T細胞となる増加した能力を有することを示唆している。
【0157】
これらの観察によって、本発明者らは、そうでなければβ細胞を死滅させることができない、これらの低アビディティ記憶T細胞の優れた恒常性「適合性」は、それらの抗糖尿病誘発性活性に(即ち、それらのより高いアビディティ、しかし大抵はナイーブ、β細胞キラークロノタイプに優る競合的利点を与えることによって、および/またはそれらの活性を阻害することによって)寄与するのではないかと考えるようになった。後者を評価するために、精製CD122+およびCD122-Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞の能力を、Vα17.4+ TCR-TG NODマウス由来のCFSE標識された脾臓CD8+ T細胞の増殖を阻害するそれらの能力について評価した。図18に示されるように、CD122+(しかしCD122-ではない)Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞は、それらのより高いアビディティのナイーブT細胞相当物の増殖をほぼ完全に阻害した。
【0158】
Vα17.6+ TCR-TG NODマウス中における低アビディティ記憶(CD122+)自己反応性CD8+ T細胞の自然に増大したプールは抗糖尿病誘発性であるという考えに一致して、NRP-V7パルスされたDC、CD40に対するアゴニスト性mAb、または4-1BBに対するアゴニスト性mAb(CD8+ T細胞活性化/生存を増強するため)でのVα17.6+およびVα17.4+ TCR-TGマウスの全身(静脈内)処置は、Vα17.4+ TCR-TG NODマウスにおいて糖尿病の迅速な発症を誘導したが、Vα17.6+ TCR-TGマウスにおいて疾患を誘発することができなかった(表4)。
【0159】
(表4)記憶T細胞の発達および増大を促進する処置は、17.4a/8.3b-TG NODマウスにおいて糖尿病の急性発症を促進するが、17.6a/8.3b-TG NODマウスにおいては促進しない。
3〜4日間隔で抗CD40 mAbまたは抗4-1BB mAb 100μgの腹腔内3回注射
100μg/ml NRP-V7がパルスされた106 LPS活性化骨髄由来DCの2回注射
最後の注射後少なくとも8週間、糖尿病についてマウスを追跡した
【0160】
コグネイトおよび非コグネイト糖尿病誘発性T細胞応答(即ち、これらの抑制性T細胞の標的自己抗原性ペプチド−IGRP206-214−ではない自己抗原性ペプチドに対して向けられる)を抑制するCD122+ Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞の能力から、本発明者らは、それらは、抗原提示細胞(APC)を標的化することによって抑制活性を発揮し得るのではないかと考えるようになった。ペプチドパルスされたDCを標的細胞として、CD122+またはCD122- Vα17.6+およびCD122- Vα17.4+ TCR-TG CD8+ T細胞をエフェクターとして使用する細胞傷害性(51クロム放出)アッセイによって、後者ではなく前者が、NRP-V7パルスされたDCをインビトロで特異的に溶解させることができることが示された(図19A)。本発明者らは、これはインビボでも真実であることを確認した。NRP-V7パルスされたおよびTUMパルスされた同数のB細胞(それぞれ、低および高濃度の色素CFSEで標識)を、Vα17.6+ TCR-TGおよびVα17.4+ TCR-TGマウスへ注入し、1日後に前記ホストを屠殺し、どの細胞が移植で生き延びたかを調べた。図19Bに示されるように、ここで、NRP-V7パルスされたB細胞は、Vα17.4+ TCR-TGマウスにおいてのみ生き延び、陰性対照ペプチドTUMでパルスされたB細胞は、両方のTCR-TG株において生き延びた。B細胞ではなくDCをAPCとして使用した場合、事実上同一の結果が得られた(図19B)。これらのデータは、低アビディティCD122+ Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞は、自己抗原を負荷されたAPCを死滅させることによって、コグネイトおよび非コグネイト糖尿病誘発性T細胞応答を抑制することを示唆している。
【0161】
NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子は、野生型NODマウスにおいて低アビディティ(四量体-中間)記憶自己反応性CD8+細胞の増大を誘導する。Vα17.6+ TCR-TG NODマウスにおける上記の観察は、ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子で処置されたNODマウスにおいて見られたものと非常に似ている:高アビディティクロノタイプの消滅、ならびに低アビディティCD8+ T細胞の増大および動員、膵島への他のIGRPエピトープ反応性特異性の動員の阻害、ならびに糖尿病からの防護。
【0162】
野生型NODマウスにおけるビーズで増大されたCD8+ T細胞が長寿命低アビディティ記憶T細胞であるかどうかを評価するために、本発明者らは、NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの脾臓および骨髄中に含有されるNRP-V7/Kd 四量体-陽性CD8+ T細胞中における記憶マーカー(CD44およびCD122)の存在を分析した。これらのマウスの脾臓および骨髄中に含有された四量体-陽性細胞の増大した集団は、特に骨髄中に、増加したパーセンテージのCD44hiおよびCD44hiCD122+ CD8+ T細胞を含有し(図20A)、このことは、NRP-V7/Kdナノ粒子処置が四量体+ CD44hiおよび四量体+ CD44hiCD122+ T細胞プールのサイズを増加させることを確認する。
【0163】
機能に関して、NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子でのインビボ療法によって増大する記憶様T細胞は、Vα17.6+ TCR-TGマウスにおいて自然に蓄積する記憶CD122+ Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞と同様に振る舞う:それらは、IL-2を産生することも増殖することもなく、しかしインビトロでの抗原刺激に応答して高レベルのIFN-γを産生する(図20B)。最も重要なことには、抗CD3 mAbおよびIL-2での活性化に際して、これらの記憶様T細胞は、インビトロで、CFSE標識されたレスポンダーVα17.4+ TCR-TG CD8+ T細胞の増殖を有効に抑制した(図20C)。CFSE標識されたレスポンダーVα17.4+ TCR-TG CD8+ T細胞はまた、DMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子での処置によって増大した記憶様T細胞の存在下において増殖しなかったことから、抑制は、単にペプチドについての競合に起因するものではない(図20D)。
【0164】
ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、既存の低アビディティ記憶T細胞を増大させる。複数の観察により、ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は新たに記憶T細胞を生じさせず、しかし記憶T細胞の既存のプールを増大させることが示唆されている:(i)TUM/Kdコーティングされたナノ粒子でのNODマウスの処置は、TUM反応性CD8+ T細胞(NODマウスにおいて発現されない、腫瘍特異的抗原を認識する;図21A)の全身における増大を誘導しなかった;(ii)NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子での、糖尿病も膵島炎も発症していないB10.H2g7マウスの処置は、調べた全てのリンパ系器官においてNRP-V7/Kd四量体+ CD8+ T細胞サブセットの有意な増大を誘導しなかった(図21B);(iii)ナノ粒子処置NODマウスにおける四量体反応性CD8+ T細胞の全身における増大は、前糖尿病段階においてよりも糖尿病発症時に開始した場合に、有意により有効であった(図21C);ならびに(iv)補助刺激の非存在下ではTCR連結時にアポトーシスを受ける傾向にある、ナイーブCD8+ T細胞とは異なり、記憶CD8+ T細胞は、増殖について補助刺激とは無関係である。
【0165】
上記の仮説を正式に調べるために、本発明者らは、IGRP206-214/Kdコーティングされたナノ粒子が、IGRP206-214の2つのTCR接触残基がアラニンで置換されている(K209AおよびF213A)IGRPの突然変異体形態を発現する遺伝子標的化NOD株においてIGRP206-214/Kd反応性CD8+ T細胞を増大させ得るかどうかを求めた(図22A)。標的化された対立遺伝子(本明細書においてFLEX1またはNOD.IGRPK209A/F213AKI/KIと呼ばれる)を、スピードコンジェニックアプローチを使用して(129から)NODバックグラウンド上へ戻し交配し、全てのIdd座でのNOD対立遺伝子についてのホモ接合性を確実にした。これらの遺伝子標的化マウスにおいて成熟CD8+ T細胞はインビボでIGRP206-214へ曝露されないので、これらのマウスは、記憶IGRP206-214/Kd反応性CD8+ T細胞を自然に生じることができない。これらのマウスは糖尿病および膵島炎の両方を発症する(示さず)という事実にもかかわらず、それらの膵島関連CD8+ T細胞は、IGRPにおけるエピトープを認識し、しかし、IGRP206-214反応性CD8+クロノタイプを完全に欠いている。最も重要なことには、最適用量のIGRP206-214/Kdコーティングされた粒子で処置されたFLEX1-ホモ接合NODマウスは、それらのリンパ系器官中においてIGRP206-214/Kd反応性CD8+ T細胞の増大したプールを含有しなかった(図22B)。これらのデータは、ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、抑制特性を有する記憶T細胞の既存のプールを増大させ、記憶T細胞を新たに生じることができないという正式な証拠を提供している。
【0166】
低アビディティクロノタイプ(即ち、Vα17.6+ TCR-TGマウスにおける)は、糖尿病発症の間、それらの高アビディティ相当物(即ち、Vα17.4+ TCR-TGマウスにおける)よりも記憶T細胞子孫を生じさせることにおいてより有効であるようであるため、ペプチド/MHCコーティングされた粒子は、ナイーブ高アビディティクロノタイプの除去と既存の低アビディティ記憶クロノタイプの少ないプールの増大とを誘導することによって働くと結論付けられた。
【0167】
実施例2
ヒト1型糖尿病関連ペプチド/HLA複合体でコーティングされた酸化鉄ナノ粒子の正常血糖を回復する能力の試験
提案される研究に利用可能な、HLA導入遺伝子を発現する「ヒト化」マウスおよびペプチド/HLA複合体。上述したように、インスリンおよびIGRP由来のペプチドは、野生型NODマウスにおいてCD8+ T細胞の主要な標的である。糖尿病発症の間にこれら2つの自己抗原由来のペプチドを提示したヒトMHC分子(ヒト白血球抗原、HLA)の評価を、「ヒト化」HLA-トランスジェニックNODマウスにおいて調べている。研究は、最初、ある人種集団のほぼ50%によって発現されるMHC分子である、HLAA*0201に焦点を合わせた。この研究には、NOD.β2mnull.HHDと呼ばれる株を使用し、これは、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子を欠いており、キメラ単鎖構築物HHDを発現する(Pascoloら, 1997)。この構築物は、ヒトHLA-A*0201のα1およびα2ドメインに共有結合されたヒトβ2m、ならびにマウスH-2Dbのα3、膜貫通、および細胞質ドメインをコードする。前記株はHLA-A*0201のみを発現し、内因性マウスクラスI MHC分子を発現しないが、それは、糖尿病感受性であり、雌の55%が30週齢までに罹患する(Takakiら, 2006)。HLA-A*0201に結合するヒトIGRPの2つのエピトープ(hIGRP228-236およびhIGRP265-273)は、これらのマウスの膵島関連CD8+ T細胞によって認識され、NOD.β2mnull.HHDマウスの膵島から単離されたCD8+ T細胞は、ヒトHLA-A*0201陽性膵島に対して細胞傷害性である(Takakiら, 2006)。ペプチド/HLA-A*0201四量体を、これらのペプチドのうちの1つを使用して作製した。マウスCD8分子によるこれらの四量体の結合を促進するために、HLA-A*0201複合体のα3(CD8結合性)ドメインを、マウスH-2Kb分子のドメインで置換した。これらの研究からの結果によって、ヒトT1Dに潜在的に関連するHLA-A*0201拘束T細胞およびβ細胞自己抗原の同定のためのこれらのマウスの有用性が確立された(Takakiら, 2006)。現在の開示に基づいて、T1D患者由来のHLA-A*0201拘束T細胞によって標的化されるヒトペプチドが同定され得る。さらに、本発明者らは、HLA-A*1101、HLA-B*0702、またはHLA-Cw*0304を発現するNODマウスを作製した。これらのマウスもまた、それらとNOD.β2mnull.hβ2m株(Hamilton-Williamsら, 2001)とを交配することによって、ヒトβ2mによって置換されたマウスβ2mを有する。3つのHLA導入遺伝子は全て十分に発現し、HLA-トランスジェニック株の3つは全て糖尿病感受性である。まとめると、これらの「ヒト化」動物由来のHLAは、4つの異なるHLAスーパータイプ、それぞれ、HLA-A2、HLA-A3、HLA-B7、およびHLA-C1を代表する(Sidneyら, 1996;Doytchinovaら, 2004)。HLA-A*1101、HLA-B*0702、またはHLA-Cw*0304対立遺伝子の遺伝子頻度は、調査された人種集団に依存して、それぞれ、23%、11%、または10%ほどであり得る(Caoら, 2001)。集団の範囲は、4つのスーパータイプの全てが標的化される場合、検討される人種集団に依存して、90%を超え得る(Sidneyら, 1996;Doytchinovaら, 2004;Caoら, 2001)。この検討は、ヒトへのこれらの研究の置き換えに関して有意である。これらの動物ならびに前述したNOD.β2mnull.HHD株は、さらなる研究に利用可能である。
【0168】
この実施例において、本発明者らは、野生型NODマウスにおけるこれらの観察を「ヒト化」HLA-トランスジェニックNODマウスに置き換える方法についての設計を提案する。目的は、ヒトT1Dに関連する自己反応性CD8+ T細胞のプールを標的化するいくつかの異なるペプチド/HLA複合体でコーティングされたナノ粒子での処置が、糖尿病からマウスを防護し得、それらの新たに診断された相当物において正常血糖を回復し得るかどうかを調べることである。本発明者らは、それぞれ、一般的なおよび一般的でない自己反応性CD8+ T細胞特異性によって標的化されるエピトープを提示するH-2KdまたはH-2Dd分子がコーティングされた少量のナノ粒子でのNODマウスの反復処置が、野生型NODマウスにおいてT1D発症を予防することができ、かつ、新たに診断された糖尿病のNODマウスにおいて正常血糖を回復させることができる、低アビディティ記憶自己反応性CD8+ T細胞のペプチド特異的増大を誘導することを示した。ここで、本発明者らは、ヒトT1Dにおける使用のために、T1D関連のペプチド/HLA組み合わせを同定するための置き換えアプローチを示す。具体的には、本発明者らは、種々のT1D関連の自己抗原性ペプチド/HLA-A*0201複合体でコーティングされたナノ粒子は、糖尿病からの防護をもたらし、NOD.β2mnull.HHDマウス(HLA-A*0201を発現する)におけるT1Dを治癒すると考える。当業者は、他の組成物および方法を含むための、膵島関連CD8+ T細胞への「ヒト化」HLA-トランスジェニックマウスにおいて他のHLA分子によって提示されたインスリンおよび/またはIGRPエピトープで使用されるものと同様の組成物および方法を使用して、他の自己免疫疾患に関連する他のエピトープでの使用について本開示を使用することができる。当業者は、最大治療利益をもたらす最小限の処置条件およびペプチド/HLA複合体のタイプ、ならびに、異なる人種集団における可能な限り多くの個人をカバーするさらなるペプチド/HLA組み合わせの同定および治療的成功のための低アビディティ記憶CD8+ T細胞の治療前の存在についての要件を同定することができる。
【0169】
ナノ粒子合成。ナノ粒子は、本質的には以前に記載されたように(Mooreら, 2004)、しかしビオチン化ペプチド/HLA-A*0201単量体を使用して、合成され、物理的および化学的レベルで特徴付けられる。複合体のMHC分子は、ヒトβ2ミクログロブリンおよびヒトHLA-A*0201のキメラ形態から構成され、ここで、そのα1およびα2ドメインはマウスH-2Kbのα3ドメインに融合されている(マウスCD8分子による認識を促進するため)。自己抗原性ペプチドとしていくつかの異なるインスリンおよびIGRP誘導体(例えば、hInsB10-18、hIGRP228-236およびhIGRP265-273)を使用し、これらは、HLA-A*0201との関連において膵島関連CD8+ T細胞によって認識されることが示された。ビオチン化ペプチド/HLA-A*0201単量体を、アビジン1モル当たりビオチン4モルのモル比で添加する。ビオチン化タンパク質を、穏やかに撹拌しながら(10 rpm)4℃で24時間にわたって複数にわけて添加する(1アビジン当たりビオチン約0.4モル)。得られるプローブを磁気分離カラム(Milteny Biotec)において精製する。HLA-A*0201分子と複合体化された無関係のHLA-A*0201結合性ペプチドからなる単量体を、陰性対照プローブの合成のために使用する。ナノ粒子サイズ、緩和能(1 mM当たりの緩和率の変化)、ビオチン結合部位数、ならびに鉄およびタンパク質含有量を測定する。
【0170】
ナノ粒子の投与。10〜15匹の雌性NOD.β2mnulI.HHDマウスの群を、上記の種々のペプチド/HLA複合体の各々または陰性対照ペプチド(インフルエンザ)/HLA複合体でコーティングされたナノ粒子で処置する(0.01、0.05、0.1、0.5および1μgペプチド等価物、4〜30週齢から3週毎に1用量、または連続5週にわたって10週齢で開始して2用量/週)。抗原特異的CD8+ T細胞の末梢での増大は、抗CD8 mAbおよびペプチド/MHC四量体で血液単核細胞を染色することによって実証される(処置開始前および治療中止時)。高血糖の発症時または研究の終了時にマウスを屠殺する。種々のリンパ系器官(脾臓、リンパ節)、骨髄(記憶T細胞の公知のリザーバ)、肝臓、肺および膵島におけるセントラルおよび/またはエフェクター記憶(CD69-、CD44hi、CD62LhiまたはCD62Llo、CD122+、Ly6C+)四量体+ CD8+ T細胞の存在について、マルチカラーフローサイトメトリーによって、個々のマウスを研究する。四量体結合アビディティを、記載されるように(Hanら, 2005;Amraniら, 2000)測定する。本発明者らは、処置が、低アビディティセントラルおよびエフェクター記憶四量体+ CD8+細胞の全身的増大ならびに骨髄、膵リンパ節(PLN)および膵島におけるこれらのT細胞の優先的な(しかし排他的でない)蓄積を誘導すると考える。
【0171】
ペプチド/MHC複合体の複数用量の投与。別の研究において、マウスの群を、他の研究において治療効果を示す全ての複合体について類似であると本発明者らが考える、有効用量の1、2、3または4回注射で処置する(4、7、10および13週で)。防護は、1または2以上の用量を必要とする(保護的閾値を超えて低アビディティ記憶T細胞プールを増大させるため)こと、ならびに増大した記憶四量体+ CD8+T細胞集団は循環から次第に消滅し、骨髄、PLNおよび膵島中に蓄積することが予想される。
【0172】
高血糖の発症時でのペプチド/MHC複合体の投与。マウスを、より攻撃的なナノ粒子処置プロトコル(5週間、週2回、1〜5 μgペプチド等価物)で高血糖(>10.5 mM/l)の発症時に処置する。陰性対照および陽性対照に、それぞれ、無関係のペプチド/HLA複合体または抗CD3 mAb(5日間、20μgの毎日の静脈内注射(Haller, 2005))でコーティングされたナノ粒子を受容させる。処置の開始直後にマウスから採血し、循環中の四量体陽性CD8+ T細胞のベースラインパーセンテージを評価する。処置が中止される少なくとも4週間、血糖値が<10 mM/lで安定化する場合、T1Dの逆転が考えられる。マウスから再び採血し、循環四量体陽性CD8+ T細胞の有意に増大したプールの存在を確認する。前記動物を少なくともさらに8〜12週間追跡し、安定な寛解を確認する。観察期間の終了時にマウスを屠殺し、種々のリンパ系および非リンパ系器官における記憶四量体陽性CD8+ T細胞の増大したプールの長期持続を確立する。膵臓組織をまた組織学的分析のために採取する。長期寛解は、単核細胞浸潤を欠いている多数の小さな膵島の存在と関連すると予想される。即ち、処置が保護的記憶T細胞による炎症膵島の占領を促進すると予想される前糖尿病マウスにおける状況とは異なり、糖尿病マウスにおける処置は、膵島(恐らく、新生の膵島は、炎症ポテンシャルを欠いている)においてではなく、膵リンパ節(記憶T細胞の他のリザーバに加えて)における保護的記憶T細胞の蓄積を促進すると予想される。
【0173】
ペプチド/HLAコーティングされた粒子は、ナイーブ高アビディティクロノタイプの除去を誘導することによって働く。本発明者らは、T1D進行の間、低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞は、(少数で)記憶細胞として蓄積する傾向があり、ペプチド/HLAコーティングされた粒子は、ナイーブ高アビディティクロノタイプの除去(補助刺激なしでのTCR誘発に起因)および既存の低アビディティ記憶クロノタイプの少ないプールの増大(補助刺激独立性)を誘導することによって働くと考える。部分的に、これは、無関係のペプチド(腫瘍抗原性、(TUM/H-2Kd)複合体)でのマウスの処置が、バックグラウンドを超えるTUM/Kd四量体反応性CD8+ T細胞の末梢での増大を誘導しなかったという観察(上記参照)に由来する。次いで、これらの低アビディティ記憶自己反応性CD8+細胞は、刺激供給源(即ち、DC上の抗原/MHC、サイトカインなど)について競合することによって、それらのナイーブ高アビディティ(恐らく、より適切でない)相当物の活性化を阻害する。実際、記憶T細胞が恒常性のキュー(即ち、IL-15)についてナイーブT細胞と有効に競合し得る他のシステムにおける証拠が存在する(Tanら, 2002)。PLNにおいて自己抗原が負荷されたDCと安定に接触させることによって、これらの一般的な低アビディティ記憶クロノタイプはまた、他の自己反応性T細胞特異性の活性化を阻害する。
【0174】
ペプチド/HLAコーティングされたナノ粒子のT細胞の増大(および抗糖尿病誘発性活性)の出現は、β細胞中における内因性標的自己抗原の発現を必要とする。内因性標的自己抗原の発現は、ナノ粒子処置によって続いて増大する低アビディティ記憶自己反応性CD8+ T細胞プールの形成を誘導する刺激の供給源であると考えられる。IGRP欠損をNOD.β2mnull.HHDマウスへ導入する。これらのマウスを、hIGRP228-236(mIGRP228-236と交差反応性)およびhIGRP265-273(mIGRP265-273と同一)/HLA-A*0201コーティングされたナノ粒子(Takakiら, 2006)で処置する。コンディショナルIGRP対立遺伝子を有する2つのESクローンが本発明者らに利用可能であり、生殖細胞コンピテントキメラを作製する前に、現在、Creの一過性トランスフェクションによるネオマイシンカセットの除去を受けている。標的化された対立遺伝子を、スピードコンジェニックアプローチを使用して(129株から)NOD.β2mnull.HHDマウスへ戻し交配し、全てのIdd座でのNOD対立遺伝子についてのホモ接合性を確実にする。得られるNOD.β2mnull.IGRPnull.HHDマウスを、2つのIGRP/HLA複合体でコーティングされた最適量のナノ粒子で処置する。本発明者らは、前記処置は、対応のhIGRPペプチド/HLA反応性CD8+細胞の増大/動員を誘導しないと考える。
【0175】
IGRP発現が糖尿病発達に重要でなく(ラットがそれを発現しないので、IGRP発現の欠如は致命的でないことが公知である)、マウスが糖尿病を自然に生じさせる場合、ナノ粒子処置がT1Dからマウスを防護しないことも予想される(記憶IGRP反応性CD8+ T細胞が存在しない)。対照的に、マウスはインスリンを発現し続けることから、HLA-A*0201とインスリンエピトープとの複合体でコーティングされた粒子での処置は、対応の記憶T細胞プールの増大を誘導し、防護的である。
【0176】
ここで試験されるナノ粒子タイプが、全てのマウスにおいて有意なT細胞増大を誘導しないことがあり得る。これは、対応のT細胞集団が、処置開始前にインビボでプライミングを以前受けたかどうかに恐らく依存する。いくつかの異なるナノ粒子タイプの組み合わせで処置したマウスのさらなる群を研究することが有用/必要であり得る。明らかに、本発明者らの予想に反して、ナノ粒子処置が、低アビディティ記憶T細胞プールの新たな形成を誘導し得ることが考えられ得る。しかし、この場合、これらの細胞は、処置されたNOD.β2mnull.IGRPnull.HHDマウスにおいてDC上の内因性IGRP/HLA-A*0201複合体にかみ合うことができないことから、本発明者らは、これらの細胞は保護的ではないと考える。
【0177】
hIGRP発現マウス。本発明者らは、ラットインスリンプロモータ駆動ヒトIGRP導入遺伝子を発現するマウスのいくつかの株を作製し、リアルタイムRT-PCRによって、これらの株の各々における該ヒト導入遺伝子の発現レベルを、内因性mIGRPコーディング座のそれと比較した。導入遺伝子の発現レベルは株ごとに非常に可変であったが、発現レベルは、個々の株内の異なる個体間で一貫していた。これらの株のうちの1つ(#1114)において、hIGRPの発現レベルは、mIGRPのものと等しかった。
【0178】
本発明者らは、このRIP-hIGRP導入遺伝子を、NOD.β2mnull.IGRPnull.HHDマウス、およびhβ2m/HLA-A*1101、HLA-B*0702、もしくはHLA-Cw*0304-トランスジェニックNOD.β2mnull.IGRPnullマウスへ導入し、これらの4つの異なるHLA対立遺伝子との関連においてCD8+ T細胞応答の標的であるhIGRPにおけるさらなるエピトープを同定する。これらのマウスの膵島関連CD8+ T細胞を、HLA-A*0201、HLA-A*1101、HLA-B*0702およびHLA-Cw*0304結合性hIGRPペプチドのライブラリに対して、反応性についてスクリーニングする。
【0179】
次いで、対応のペプチド/HLA複合体コーティングされたナノ粒子を、対応のhβ2m/HLA-A*1101、HLA-B*0702、もしくはHLA-Cw*0304-トランスジェニックNOD.β2mnull.IGRPnullマウスにおいて、抗糖尿病誘発性効能について試験する。この課題の全体的な目的は、可能な限り多くの患者を治療するために使用することができるペプチド/HLA組み合わせのレパートリーについて増大させることである。
【0180】
参考文献
下記の参考文献は、それらが本明細書に記載されるものに補足的な例示的な手順的または他の詳細を提供する程度に、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【技術分野】
【0001】
米国政府は、NIHからの助成金5R01 DK064850-03に従って本発明において権利を所有する。
【0002】
本願は、2007年3月7日に出願された米国特許仮出願第60/893,530号の優先権を主張し、これは、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0003】
I.発明の分野
本発明は、免疫学および医学に関する組成物および方法を具体化する。特に、本発明は、自己免疫状態、特に糖尿病の診断および治療のための診断学および治療学に関する。
【背景技術】
【0004】
II.背景
抗原予防接種は、自己免疫におけるT細胞寛容の誘導のために使用され得る。溶液状態の自己抗原性タンパク質またはペプチドの投与は、自己免疫疾患の実験モデルにおいて自己免疫の開始および/または進行を鈍らせることができる(Wraithら, 1989;MetzlerおよびWraith, 1993;LiuおよびWraith, 1995;AndertonおよびWraith, 1998;Karinら, 1994)。しかし、同様の戦略を使用してのヒトにおける限定的な臨床試験は、ほとんどすべて失敗した(Weiner, 1993;Trenthamら, 1993;McKownら, 1999;Pozzilliら, 2000;Group, D.P.T.-T.D.S. 2002;Kapposら, 2000;Bielekovaら, 2000)。これは、治療の選択および条件を導く原理が十分に規定されておらず、結果として、ヒトへの適用に不適切であることを示唆している。
【0005】
自然発生的な器官特異的自己免疫障害は、確率的でかつしばしば予測不能な順序で自然に発生する複数の抗原中の多数のエピトープに対する複雑な応答から生じる。この複雑性は、同一エピトープを認識するリンパ球クローンが、その強度が病原性ポテンシャルと相関する広範囲のアビディティで抗原/主要組織適合複合体(MHC)分子にかみ合うという事実によって度を増す(Amraniら, 2000;Santamaria, 2001;Liblauら, 2002)。従って、自己免疫の予防についての免疫化戦略の結果は、自己抗原、用量、治療の周期性ならびに投与の経路および形態の選択によって影響される可能性が高い。
【0006】
マウスにおける1型糖尿病(T1D)は、自己反応性CD8+ T細胞と関連している。非肥満糖尿病(NOD)マウスは、自己抗原の増大するリストを認識するT細胞による膵β細胞の選択的破壊から生じる、ヒトT1Dに非常によく似た形態のT1Dを生じさせる(LiebermanおよびDiLorenzo, 2003)。T1Dの開始はCD4+細胞の寄与を明らかに必要とするが、T1DはCD8+ T細胞依存性であるという説得力のある証拠が存在する(Santamaria, 2001;Liblauら, 2002)。NODマウス中における膵島関連CD8+細胞の有意なフラクションが、「8.3-TCR様」と呼ばれる、CDR3-不変Vα17-Jα42+ TCRを使用することが発見された(Santamariaら, 1995;Verdaguerら, 1996;Verdaguerら, 1997;DiLorenzoら, 1998)。MHC分子Kd(Andersonら, 1999)との関連においてミモトープNRP-A7(コンビナトリアルペプチドライブラリーを使用して規定された)を認識する、これらの細胞は、既に初期NOD膵島CD8+浸潤物の有意な成分であり(DiLorenzoら, 1998;Andersonら, 1999;Amraniら, 2001)、糖尿病誘発性であり(Verdaguerら, 1996;Verdaguerら, 1997)、未知の機能のタンパク質である(Ardenら, 1999;Martinら, 2001)、膵島特異的グルコース−6−ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質(IGRP)(Liebermanら, 2003)由来のペプチドを標的化する。このペプチド(NRP-A7に類似する、IGRP206-214)を認識するCD8+細胞は、循環中において異常に高頻度に存在する(>1/200 CD8+細胞)(Liebermanら, 2003;Trudeauら, 2003)。特に、NODマウスにおける膵島炎の糖尿病への進行は、循環IGRP206-214反応性CD8+プールの周期的増大(Trudeauら, 2003)、その膵島関連相当物のアビディティ成熟(Amraniら, 2000)を常に伴う。最近になって、NODマウス中の膵島関連CD8+細胞は複数のIGRPエピトープを認識することが示され、このことは、IGRPが、少なくともマウスT1Dにおいて、CD8+細胞についての主要な自己抗原であることを示している(Hanら, 2005)。NOD膵島関連CD8+細胞、特に、疾患過程の初期に見られるものは、インスリンエピトープも認識する(Ins B15-23(Wongら, 1999))。
【0007】
関連研究によって、あるHLAクラスI対立遺伝子(即ち、HLA-A*0201)が、ヒトT1Dに対する感受性を与えることが示唆された(Fennessyら, 1994;Honeymanら, 1995;Taitら, 1995;Nejentsevら, 1997;Nakanishiら, 1999;Roblesら, 2002)。病理学研究によって、新たに診断された患者の膵島炎病巣は、ほとんど(HLAクラスI拘束された)CD8+ T細胞からなることが示され(Bottazzoら, 1985;AtkinsonおよびMaclaren, 1990;CastanoおよびEisenbarth, 1990;Hanninenら, 1992;Itohら, 1993;Somozaら, 1994;AtkinsonおよびMaclaren, 1994;Moriwakiら, 1999;Imagawaら, 2001)、これらはまた、膵臓の同種同系移植片(一卵性双生児由来)または同種異系移植片(血縁ドナー由来)での移植によって治療された患者においても主な細胞集団である(Sibleyら, 1985;Santamariaら, 1992)。
【0008】
インスリンは、ヒトT1DおよびマウスT1Dの両方において、抗体およびCD4+応答の重要な標的である(Wongら, 1999;Palmerら, 1983;ChentoufiおよびPolychronakos, 2002;Toma ら, 2005;Nakayamaら, 2005;Kentら, 2005)。ヒトインスリンB鎖エピトープhInsB10-18は、膵島移植レシピエント(Pinkseら, 2005)および自然発生疾患の経過(Tomaら, 2005)の両方において、HLA-A*0201によって、自己反応性CD8+細胞へ提示される。さらに、4つのさらなるペプチドがマウスプレプロインスリン1または2から同定され、これらは、HLA-A*0201との関連においてHLA-A*0201トランスジェニックマウス由来の膵島関連CD8+ T細胞によって認識される。
【0009】
T1D感受性座、IDDM7(2q31)(PociotおよびMcDermott, 2002; Owerbach, 2000)に重なる遺伝子(染色体2q28-32に配置される(Martinら, 2001))によってコードされる、IGRPもまた、ヒトT1Dに潜在的に関連するβ細胞自己抗原として最近同定された(Takakiら, 2006)。ヒトIGRPの2つのHLA-A*0201結合性エピトープ(hIGRP228-236およびhIGRP265-273)は、HLA-A*0201導入遺伝子を発現するマウスMHCクラスI欠損NODマウス由来の膵島関連CD8+ 細胞によって認識される(Takakiら, 2006)。特に、これらの「ヒト化」HLA-A*0201-トランスジェニックマウスの膵島関連CD8+ T細胞は、HLA-A*0201陽性ヒト膵島に対して細胞傷害性であった(Takakiら, 2006)。
【0010】
NODマウスにおけるT1Dは、低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞の増大によって予防され得る。可溶性ペプチドの投与(アジュバント無し)は、抗原特異的T細胞寛容を誘導する有効な方法である(Aicheleら, 1994;Toesら, 1996)。可溶性NRP-A7による前糖尿病NODマウスの治療が、ペプチド/MHCについて最も高い親和性を有するTCRを発現するクロノタイプの選択的除去によってIGRP206-214反応性CD8+サブセットのアビディティの成熟を鈍らせることが以前に示された(Amraniら, 2000)。これらの観察により、「低アビディティ」(および潜在的に抗糖尿病誘発性)クローンによる「高アビディティクロノタイプニッチ」(NRP-A7治療によって空にされる)の占領を促進することによっても、NRP-A7の抗T1D活性が媒介されるという可能性が高められた。この仮説を試験するために、IGRP206-214反応性CD8+ T細胞について部分、完全、または超アゴニスト活性を有する改変ペプチドリガンド(APL)を同定し、広い用量範囲にわたってそれらの抗T1D活性を比較した。
【0011】
中用量の中間親和性APL(NRP-A7)または高用量の低親和性APL(NRP-I4)での長期治療は、T1Dからの防護をもたらした。これは、除去されたそれらの高アビディティIGRP206-214反応性CD8+細胞を犠牲にしての低アビディティIGRP206-214反応性CD8+細胞の局所的蓄積と関連した。予想外なことに、高用量の高親和性APL(NRP-V7)または天然リガンド(IGRP206-214)での長期治療は、最低限の防護しかもたらさなかった。驚くことに、これらのマウスの膵島は、IGRP206-214反応性CD8+細胞をほとんど含有せず、しかし、他のIGRPエピトープを認識するCD8+細胞の増加された集団を含有した。このため、本発明者らは、自己免疫におけるペプチド療法は、それが非病原性低アビディティクローン(Hanら, 2005)による標的器官リンパ球ニッチの占領を促進する場合、最も有効であり得ると結論付けた;数学的モデル化によって支持される予測(Mareeら, 2006)。残念ながら、この結論は、狭い範囲のAPL用量およびアビディティ(標的TCRについて)内においてのみ生じ、このことは、ペプチド療法は、T1Dを予防または治癒するのに適していないことを示唆している。
【0012】
従って、糖尿病、ならびに他の自己免疫障害の治療のためのさらなる組成物および関連する方法についての必要性が存在している。
【発明の概要】
【0013】
IGRPの場合がそうであるように、ペプチドは、1用量当たり数ミリグラムのペプチドを必要とすることから、ペプチドで患者を治療することは困難である。粒子上での抗原/MHC複合体の送達、例えば、ペプチド/MHC/粒子複合体(共刺激分子無し)の送達が企図された。これらの複合体は、ペプチド単独よりもより免疫寛容原性であることがわかる。
【0014】
本願の局面および態様は、自己免疫の治療における新規のパラダイムの発見を含む。従来、ワクチンは、病原体または癌に対する防護をもたらすことができるT細胞を増大させるため、または自己免疫を引き起こし得るT細胞を除去するために使用されてきた。本発明の局面は、いずれもT細胞の抗原特異性に従う、抗自己免疫特性を有する自己反応性CD8+細胞の増大と病原性(自己免疫)特性を有する自己反応性CD8+細胞の除去とを同時に選択的に誘導する新規のタイプの「ワクチン」に関する。抗自己免疫性の自己反応性CD8+ T細胞(抗病原性CD8+細胞)は、組織特異的(標的組織への自然発生的な動員において)であるが抗原非特異的である様式(例えば、他の自己反応性T細胞反応を局所的に抑制する)で、自己反応性T細胞応答を抑制する。結果として、このタイプのワクチンでの治療は、全身性免疫抑制を引き起こすことなく、T1Dを予防および/または改善し得、かつ高血糖NODマウスにおいて正常血糖を回復させ得るかまたは血糖値を低下させ得る。この戦略は、他のT細胞媒介自己免疫疾患の治療に適用可能であり得、膵島移植の際のT1D再発を予防することができる場合がある。
【0015】
本発明のある態様は、T細胞の抗原特異性に従って、T細胞を選択的に減少させるかまたは増大させる方法に関する。従って、本発明は、自己抗原を認識するT細胞、例えばβ細胞特異的T細胞を減少させるかまたは除去するために使用され得る。このように、本発明は、自己免疫疾患、例えばIDDMを予防、治療、または改善するために使用され得る。さらに、本発明は、所望のT細胞、例えば、腫瘍抗原を認識するT細胞を増大させ、これらのT細胞によって攻撃される疾患を予防、治療および/または改善するために使用され得る。
【0016】
本発明の態様は、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに十分な量の抗原/MHC/粒子複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫障害を診断、予防、または治療する方法に関する。支持体に結合したMHCまたはMHC様分子との関連における場合、抗原には、T細胞の活性またはT細胞集団を調節し得る、ペプチド、核酸、糖質、脂質、または他の分子もしくは化合物の全部または一部が含まれるが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の態様は、抗原−MHC複合体に結合したマイクロ粒子またはナノ粒子を含む免疫寛容原性粒子を含む。抗原−MHC複合体は、粒子に直接またはリンカーを介して結合してもよい。マイクロ粒子またはナノ粒子は、種々の層を含み得、これらは、複数の成分(例えば、抗原−MHC複合体により容易に結合することができる他の分子のカバーリングまたはシェル(例えば、ストレプトアビジンまたはアビジン、または、ナノ粒子に部分を付着させるために使用される他の公知の分子)を備える金属コア)を含んでもよい。ある局面において、マイクロ粒子またはナノ粒子は、セレン化カドミウム、チタン、二酸化チタン、スズ、酸化スズ、ケイ素、二酸化ケイ素 鉄、酸化鉄(III)、銀、ニッケル、金、銅、アルミニウム、鋼、コバルト−クロム合金、チタン合金、ブラッシュ石、リン酸三カルシウム、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ダイヤモンド、ポリスチレン、シリコーンゴム、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエーテル、およびポリエチレンからなる群より選択される材料を含む。さらなる局面において、マイクロ粒子またはナノ粒子は、金属性または磁化可能な(magentizable)または超常磁性粒子である。金属ナノ粒子は、Au、Pt、Pd、Cu、Ag、Co、Fe、Ni、Mn、Sm、Nd、Pr、Gd、Ti、Zr、Si、およびIn前駆体、それらの二元合金、それらの三元合金、ならびにそれらの金属間化合物から形成され得る。米国特許第7,332,586号、第7,326,399号、第7,326,399号、第7,060,121号、第6,929,675号、第6,846,474号、第6,712,997号、第6,688,494号を参照のこと;これらは、マイクロ粒子またはナノ粒子の製造に関する組成物および方法の考察について、参照によりそれらの全体が本明細書に組み入れられる。
【0018】
本発明のある局面は、一般的に抗原と呼ばれる、抗原応答または免疫応答を刺激または誘導するポリペプチド、ペプチド、核酸、糖質、脂質、および他の分子の、セグメント、フラグメント、またはエピトープを含む抗原性組成物に関する方法および組成物を含む。特定の局面において、抗原は、自己反応性抗原および/またはその複合体であるか、これらに由来するか、またはこれらの模倣物である。
【0019】
ペプチド抗原には、
ならびに、参照により全体が本明細書に組み入れられる米国公開公報20050202032に開示されるペプチドおよびタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
ある局面において、T1Dの治療用のペプチド抗原は、
またはそれらの組み合わせである。
【0021】
なおさらなる局面において、多発性硬化症(MS)と関連するペプチド抗原を使用することができ、これらには、
またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0022】
ある局面において、抗原−MHC複合体は、マイクロ粒子またはナノ粒子に架橋され得る。マイクロ粒子またはナノ粒子を抗原−MHC複合体に結合する1つの非限定的な方法は、(a)抗原−MHC複合体と架橋剤とを反応させ、それによって抗原−MHC−架橋剤複合体を形成する工程;ならびに(b)マイクロ粒子またはナノ粒子を工程(a)の複合体と反応させる工程を含む。一態様において、前記方法は、工程(b)を行う前に工程(a)の複合体を濃縮する工程を含む。別の態様において、架橋剤は、ヘテロ二官能性架橋剤を含む。なお別の態様において、架橋剤は、DOTA-マレイミド(4-マレイミドブチルアミドベンジル-DOTA)、SMPT(4-スクシンイミジルオキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン-)、スルホ-LC-SMPT(スルホスクシンイミジル-6-(α-メチル-α-(2-ピリジルチオ)トルアミド)ヘキサノエート、Traut試薬(2-イミノチオラン-HCl)、またはそれらの任意の組み合わせを含む。複合体をマイクロ粒子またはナノ粒子に結合する考察については、米国特許公開公報20070059775;米国特許第4,671,958号、第4,659,839号、第4,414,148号、第4,699,784号;第4,680,338号;第4,569,789号;第4,589,071号;第7186814号および第5543391号、欧州特許出願番号188,256を参照のこと。
【0023】
自己免疫障害には、真性糖尿病(diabetes melitus)、移植拒絶、多発性硬化症、早発性卵巣機能不全、強皮症(scleroderm)、シェーグレン病、狼瘡、白斑(vilelego)、脱毛症(禿頭症)、多腺性機能不全、グレーヴズ病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎(polymyosititis)、天疱瘡、クローン病、結腸炎(colititis)、自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、心筋炎(myocardititis)、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患、ブドウ膜炎(uveititis)、悪性貧血、副甲状腺機能低下症、および/または関節リウマチが含まれてもよいが、これらに限定されない。ある局面において、抗原/MHC/粒子複合体のペプチド成分は、治療によって探索、調節、または鈍化される自己免疫応答に含まれる、自己抗原もしくは自己抗原エピトープ、またはそれらの模倣物に由来するかまたはそれらから設計される。特定の局面において、自己抗原は、ペプチド、糖質、または脂質である。ある局面において、自己抗原は、対象の特定の細胞、例えば、膵β細胞によって発現されるタンパク質、糖質、または脂質の、フラグメント、エピトープ、またはペプチドであり、IGRP、インスリン、GADまたはIA-2タンパク質のフラグメントを含むが、これらに限定されない。種々のこのようなタンパク質またはエピトープが、種々の自己免疫状態について同定された。自己抗原は、膵島周辺の(peri-islet)シュワン細胞などの第2の内分泌要素または神経分泌(neurocrine)要素に由来する、ペプチド、糖質、脂質などであってもよい。
【0024】
本発明のなおさらなる局面において、抗原/MHC/粒子複合体のMHC成分は、古典的または非古典的なMHCクラスIまたはMHCクラスIIポリペプチド成分である。MHCクラスI成分は、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G分子の全部または一部、特に、HLA-A*0201 MHCクラスI分子などの、HLA-A分子の全部または一部を含み得る。非古典的MHCクラスI成分は、CD1様分子を含み得る。MHCクラスII成分は、HLA-DR、HLA-DQ、またはHLA-DPの全部または一部を含んでもよい。ある局面において、抗原/MHC複合体は、支持体に共有的または非共有的に結合または付着される(抗原/MHC/粒子複合体)。支持体は、典型的に、マイクロ粒子またはナノ粒子である。特に、該粒子は、金属、例えば、鉄または酸化鉄を含む。本発明のペプチドは、支持体に化学的に結合され得、特に、化学リンカーまたはペプチドリンカーを介して結合され得る。CDl分子は、非古典的MHC分子の例である。非古典的MHC分子は、非多形性であり、種間で保存されており、かつ、狭くて深い疎水性のリガンド結合ポケットを有することを特徴とする。これらの結合ポケットは、ナチュラルキラーT(NKT)細胞に糖脂質およびリン脂質を提示することができる。NKT細胞は、NK細胞マーカーおよび半不変なT細胞受容体(TCR)を共発現する独特なリンパ球集団を示す。それらは、広範囲の疾患と関連する免疫応答の調節に関与する。
【0025】
ある態様において、治療によって増大するT細胞は、疾患過程によってプレ活性化(pre-activate)されており、かつ記憶表現型を有する。一局面において、T細胞は、低アビディティで標的エピトープを認識する自己反応性前駆体から生じる。アビディティは、テトラマー結合アッセイなどによって測定することができる。さらなる局面において、抗原/MHC/粒子複合体は、関心対象の自己免疫疾患の臨床症状の発症の前、後、または前および後の両方に、投与される。なおさらなる局面において、本方法は、治療の前および/または後に、自己免疫状態の生物学的パラメータ、例えば、対象の血糖値を評価することを含む工程を含んでもよい。本発明の方法はまた、任意の自己反応性免疫応答の評価を含む、対象の自己免疫状態を評価する工程を含んでもよい。ある局面において、T細胞は、CD4+もしくはCD8+ T細胞またはNK T(NKT)細胞である。
【0026】
本発明のさらなる態様は、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞の増大を刺激するのに十分な量の抗原/MHC/粒子複合体を投与する工程を含む、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞を増大させる方法を含む。ある局面において、T細胞は、CD8+もしくはCD4+ T細胞またはNKT細胞である。
【0027】
なおさらなる態様において、本発明は、細胞または細胞を含む組織の破壊を阻害するのに十分な量の抗原/MHC/粒子複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫応答、特に病原性自己免疫応答から、対象の細胞、例えば膵島細胞を防護するための方法を含み、ここで、前記抗原またはそれが由来する抗原性分子が、細胞と関連する自己抗原に由来する。
【0028】
なおさらなる態様において、本発明は、活動性の自己免疫の指標として、非病原性または抗病原性のCD8+またはCD4+ T細胞応答の、治療により誘導される増大を評価する工程を含む、自己免疫を診断するための方法を含む。
【0029】
本発明の態様は、非病原性または抗病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに、または、移植された組織または器官によって発現される同種異系抗原または自己抗原を認識する非病原性または抗病原性の細胞の増大を誘導するのに十分な量の、支持体に機能的に結合された抗原−MHC複合体(即ち、抗原/MHC/粒子複合体)を対象へ投与する工程によって、同種異系免疫応答または自己免疫応答による移植組織の拒絶を予防、改善、または治療するための方法を含んでもよい。
【0030】
本発明の態様は、細胞死または細胞死滅を妨げることによって哺乳動物中において所定のタイプの機能細胞、例えば膵島細胞の数を増加させるまたは維持する方法を提供する。ある態様において、この方法は、内因性の細胞および/または組織の再生が望まれる自己免疫疾患を治療するために使用される。このような自己免疫疾患には、真性糖尿病、多発性硬化症、早発性卵巣機能不全、強皮症、シェーグレン病、狼瘡、白斑(vitelego)、脱毛症(禿頭症)、多腺性機能不全、グレーヴズ病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎、天疱瘡、クローン病、結腸炎、自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、心筋炎、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患、ブドウ膜炎、悪性貧血、副甲状腺機能低下症、関節リウマチなどが含まれるが、これらに限定されない。本発明の一局面は、免疫系を再教育しつつ既存の自己免疫を除去するための新規の二部治療アプローチを提供する。
【0031】
抗原/MHC/粒子複合体とは、ペプチド、糖質、脂質、または、抗原性分子またはタンパク質の他の抗原性セグメント、フラグメント、またはエピトープ(即ち、自己ペプチドまたは自己抗原)を、ある表面上、例えばマイクロ粒子上またはナノ粒子上における提示を指す。「抗原」とは、本明細書において使用される場合、対象における免疫応答、または非病原性細胞の増大を誘導し得る分子の全部、一部、フラグメント、またはセグメントを指す。
【0032】
ある局面において、抗原/MHC/粒子複合体は、免疫応答、例えば、抗体応答を誘導するために、アジュバントと共に投与される必要はない。特定の態様において、抗原/MHC/粒子組成物は、アジュバントの使用を減らしてまたはアジュバントを使用せずに抗体を産生するために、周知のポリクローナル抗体技術およびモノクローナル抗体技術と併用して使用することができる。
【0033】
「死滅させること」または「死滅させる」とは、アポトーシスまたは壊死により細胞死を引き起こすことを意味する。アポトーシスまたは壊死は、任意の細胞死経路によって媒介され得る。
【0034】
「自己免疫細胞」には、例えば、その自己免疫細胞が由来する生物に対して活性を有する、成体脾細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、および骨髄起源の細胞、例えば、哺乳動物の欠陥のある抗原提示細胞(defective antigen presenting cell)が含まれる。
【0035】
「模倣物」とは、リガンドに実質的に類似している、所定のリガンドまたはペプチドのアナログである。「実質的に類似」とは、模倣物が、リガンドの分子量の約50%未満、約40%未満、約30%未満、または約20%未満を合計で占める1つまたは複数の官能基または修飾を有することを除いて、アナログがリガンドと類似の結合プロフィールを有することを意味する。
【0036】
「有効量」とは、意図される目的、例えば、T細胞活性またはT細胞集団の調節を達成するために十分な量である。本明細書において詳細に記載されるように、有効量、または投薬量は、目的および抗原に依存し、本開示に従って決定され得る。
【0037】
「自己反応性T細胞」とは、そのT細胞を含有するのと同一の個体によって産生および含有される分子である「自己抗原」を認識するT細胞である。
【0038】
「病原性T細胞」とは、そのT細胞を含有する対象にとって有害なT細胞である。一方、非病原性T細胞は、対象に実質的に有害ではなく、抗病原性T細胞は、病原性T細胞の害を、減少、改善、阻害、または無効化する。
【0039】
「阻害」、「減少」もしくは「予防」という用語、またはこれらの用語の任意の変形は、本特許請求の範囲および/または本明細書において使用される場合、所望の結果を達成するための任意の測定可能な低下または完全な阻害を含む。
【0040】
「1つの(a)」または「1つの(an)」という用語の使用は、特許請求の範囲および/または明細書において「含む」という用語と併用して使用される場合、「1つ」を意味する場合があるが、それはまた、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味と一致する。
【0041】
本願の全体にわたって、「約」という用語は、値が、その値を測定するために用いられる装置または方法についての誤差の標準偏差を含むことを示すために使用される。
【0042】
特許請求の範囲における「または」という用語の使用は、選択肢のみを指すように明記されている場合または選択肢が相互に排他的である場合を除いて、「および/または」を意味するために使用され、しかし、本開示は、選択肢のみならびに「および/または」を指す定義を支持している。
【0043】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「含む(comprising)」(および含むの任意の形態、例えば「含む(comprise)」および「含む(comprises)」)、「有する(having)」(および有するの任意の形態、例えば「有する(have)」および「有する(has)」)、「含む(including)」(および含むの任意の形態、例えば「含む(includes)」および「含む(include)」)または「含有する(containing)」(および含有するの任意の形態、例えば「含有する(contains)」および「含有する(contain)」)という用語は、包含的または非限定的であり、追加の、記載されていない要素または方法工程を除外しない。
【0044】
本発明の他の目的、特徴および利点は、下記の詳細な説明から明らかとなる。しかし、本発明の趣旨および範囲内での種々の変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかとなるので、詳細な説明および具体例は、本発明の特定の態様を示しているが、例示のためにのみ与えられることが理解されるべきである。
【0045】
添付の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明のある局面をさらに実証するために含まれる。本発明は、本明細書に示される特定の態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによって、より十分に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】固体に結合されたペプチド/MHC複合体の免疫寛容原性特性。8.3-NODマウスへの固体に結合されたペプチド/MHC複合体の静脈内注射は、T細胞の除去を誘導し(図1A)、除去されなかった抗原活性化された(図1B)CD8+ T細胞を、エクスビボでの抗原刺激に対して低応答性にする(図1C)。
【図2】若年のNODマウスにおけるNRP-V7/Kd-npの全身投与により、糖尿病からの防護が生じた。NODマウスに、4、6および8週齢で、およびその後32週齢まで3週毎に、7.5 mgのNRP-V7/Kd npを静脈内注射した。NRP-V7/Kd np処置した動物(n=21)の85%が、32週齢時に糖尿病でないままであり、これに対して、対照-np処置(n=25)および未処置群(n=65)においては、それぞれ、36%および23%であった。
【図3】全身投与の24時間内の放射標識ペプチド/MHCコーティングナノ粒子の生体内分布。
【図4】NRP-V7/Kd-npおよびビオチン化np処置NODマウス対未処置NODマウス(それぞれ、n=5、5、および10)における血清サイトカインレベル。10週齢のNOD雌に、5週間、1週当たり2用量の各npを注射した。最後の注射の6時間後に血清を回収し、Luminexビーズアレイ技術を使用する20-プレックスサイトカイン分析に供した。
【図5】若年のNODマウスにおけるNRP-V7/Kd-npの全身投与により、四量体陽性CD8+ T細胞の増大が生じた。図5A:NRP-V7/Kd-np処置は、対照-np処置動物と比べて(血液および膵島それぞれについてn=4および21)、末梢血(n=4)および膵島浸潤物(n=11)においてCD8+ T細胞集団内でNRP-V7/Kd 四量体+細胞を増大させた。図5B:膵島における増大した四量体+ T細胞は、低アビディティでペプチド/MHCに結合する。対照動物におけるKd=4.42±0.87 nMに対して、NRP-V7/Kd-np処置動物においてKd=10.21±1.65 nM(それぞれ、n=5および12)。図5Cおよび図5D:NRP-V7/Kd npの防護効果は、用量依存性(図5C)であり、末梢血におけるNRP-V7/Kd四量体+ 細胞の増大の程度に対応する(図5D)。動物に、同一の注射スケジュールに従って(上述の通り)、全部(1注射当たり7.5μg)、1/5(1注射当たり1.5μg)、または1/20(1注射当たり0.375μg)用量のnpを注射した(それぞれ、n=21、12、および13)。図5E:NRP-V7/Kd四量体+ CD8+ T細胞の増大は、注射の回数に依存する(n=10)。10週齢のNOD雌に、1週当たり2回の注射で、10回全部用量のNRP-V7/Kd-npを注射した。4回および10回の注射後、前記動物から採血し、血液中のNRP-V7/Kd四量体+ 細胞のパーセンテージを測定した。
【図6】コグネイトCD8+ T細胞によるペプチド/MHCコーティングされたnpの特異的取り込み。図6Aおよび図6B:17.4α/8.3β-NOD(図6A)または17.6α/8.3β-NOD(図6B)マウスを、NRP-V7/Kd-npの10回全部用量の等価物の単回注射で処置するかまたは処置せずに、20時間後に屠殺した。脾臓CD8+、CD4+、CD11c+、およびCD11b+、ならびにB220+細胞を、np結合されたFITCフルオロフォアのMFIに基づいて、np結合について評価した(各株についてn=1)。図6C:NODマウスを、10週齢で開始して、5週間、毎週2回全部用量のNRP-V7/Kd-npで処置するかまたは処置せずに、最後のnp注射の20時間後に屠殺した。脾臓CD8+、CD4+、CD11c+、およびCD11b+細胞を、np結合されたFITCフルオロフォアのMFIに基づいて、np結合について評価した(n=2)。蛍光標識された細胞の小さなピークは、専らCD8+ T細胞サブセットにおいて現れることに注意のこと。
【図7】若年のNODマウスにおけるDMK138-146/Db-npの全身投与は、DMK138-146反応性CD8+ T細胞の選択的増大を生じさせ、糖尿病からの防護をもたらした。図7A:図5におけるのと同一のスケジュールに従ってDMK138-146/Db-npで処置されたNODマウスは、対照動物(n=3)に比べて、末梢血(n=11)および膵島浸潤物(n=13)においてDMK138-146/Db四量体+ CD8+ T細胞の増大を示す。図7B:DMK138-146/Db-np処置動物の72%が、32週齢時に糖尿病でないままであった(n=18)。図7Cおよび図7D:四量体+ CD8+細胞の増大は抗原特異的である。DMK138-146/Db-np処置は、NRP-V7/Kd四量体+ 細胞を増大させず(血液:n=4および11;膵島:n=21および11)(図7C)、NRP-V7/Kd-np処置は、DMK138-146/Db四量体+ 細胞を増大させない(血液:n=3および4;膵島:n=3および2)(図7D)。図7E:ナノ粒子処置マウスにおける末梢血CD8+ T細胞の代表的なFACSプロフィール。マウスに、4週齢で開始して、2〜3週毎に1回、ナノ粒子の静脈内注射を1回受けさせた。これらの試料は、処置の終了時のマウス由来である(約32週齢)。
【図8】NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbでコーティングされたナノ粒子での処置それぞれにおける、膵島に対しての、IGRP206-214またはDMK138-146反応性CD8+ T細胞の動員の増強。マウスに、4週齢で開始して、2〜3週毎に1回、ナノ粒子の静脈内注射を1回受けさせた。これらの試料は、処置の終了時のマウス由来である(約32週齢)。膵島関連CD8+ T細胞を、IGRP206-214、DMK138-146、またはインスリン-L(INS-L)パルスされた(pulsed)抗原提示細胞に応答してのIFN-γ産生についてアッセイした。INS-Lを対照として使用した(NRP-V7/Kd-np処置 n=8、DMK138-146/Db-np処置 n=5、対照-np処置 IGRPおよびINS-L特異的応答についてはn=8、DMK特異的応答についてはn=3)。
【図9】NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置は、糖尿病発症時に提供されると、高血糖を逆転させる。図9A:np処置を受ける急性糖尿病NODマウスの生存。10.5 mMの血糖に達するかまたはこれを超える動物を、前記動物が一貫して正常血糖と考えられる(連続4週間、10.5 mM閾値下に血糖値が維持される)まで、週2回、TUM/Kd-np(n=9)、NRP-V7/Kd-np(n=11)、またはDMK138-146/Db-np(n=11)で静脈内処置する。図9B〜図9D:NRP-V7/Kd-np(図9B)、DMK138-146/Db-np(図9C)およびTUM/Kd-np(図9D)で処置した個々の動物の血糖曲線。図9E:処置レジメンの期間にわたって計算された各処置群の平均血糖値。図9F:連続5日間、抗CD3 Mab(クローン2C11)20μg/日で処置された個々の動物の血糖曲線。
【図10】処置中止の結果。図10A:np処置の中止後の種々の時点での末梢血中における四量体+ 細胞の蓄積および減少。NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置動物は両方とも、処置中止後、末梢において、それらのそれぞれの四量体+ CD8+ T細胞集団の漸進的な喪失を示した。図10B:処置中止後の治癒NODマウスにおける糖尿病再発。処置が中止された動物を、少なくとも50週齢まで、糖尿病についてモニタリングした。図10C:処置中止後の、NRP-V7/Kd-np処置されて治癒した個々の動物の血糖曲線。図10D:処置中止後の、DMK138-146/Db-np処置されて治癒した個々の動物の血糖曲線。
【図11】治癒したマウスにおける耐糖能。図11A:50週齢の未処置対照と比較しての、急性糖尿病が治癒した動物のIPGTT(上部:IPGTTグルコース曲線;下部:曲線下面積分析;糖尿病未処置n=7;非糖尿病未処置n=5;NRP-V7/Kd-np処置n=4;DMK138-146/Db-np処置n=5)。図11B:NRP-V7/Kd-np処置マウス対糖尿病および非糖尿病未処置対照の食後血清インスリンレベル(それぞれ、n=7、9、および7)。図11C:NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置マウス対糖尿病および非糖尿病未処置対照のIPGTT血清インスリンレベル(n 4、7、および5)。図11D:50週齢でのNRP-V7/Kd-np処置(n=5)および未処置(n=6)動物の体重。
【図12】ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、高アビディティおよび低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞を有効に「識別する」ことができる。種々のTCRトランスフェクタントを、5分間または30分間、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズと共にインキュベートし、抗CD8 mAbで染色した。ヒストグラムは、ビーズと共にインキュベーションした後に、示されている時間でCD8キャップを形成した細胞のパーセンテージを示す。
【図13】低親和性自己反応性17.6α/8.3β CD8+ T細胞は抗糖尿病誘発性である。図13A:17.6α/8.3β-NOD(n=95)対17.4α/8.3β-NODマウス(n=598)における糖尿病の頻度。図13B:Tgマウスにおける膵島炎スコア(17.6α/8.3β- NODについてn=6、17.4α/8.3β-NODについてn=3)。図13C:NOD(n=56)対LCMV-NOD(n=10)における糖尿病の頻度。
【図14】17.6α/8.3β TCRの発生生物学。図14A:Tgマウスにおける17.6α/8.3β TCR対17.4α/8.3β TCRの発生生物学。上パネルは、脾細胞の代表的なCD4対CD8ドットプロットである。下パネルは、NRP-V7/Kd四量体でのCD8+ T細胞染色の比較である。図14B:RAG-2-/-Tgマウスにおける17.6α/8.3β対17.4α/8.3β TCRの発生生物学。上パネルは、脾細胞の代表的なCD4対CD8ドットプロットである。下パネルは、NRP-V7/Kd四量体でのCD8+ T細胞染色の比較である。
【図15】17.6α/8.3β-NOD.RAG-2-/-(n=13)対17.4α/8.3β-NOD.RAG-2-/-マウス(n=106)における糖尿病の頻度。
【図16】TCRα-/-Tgマウスにおける17.6α/8.3β対17.4α/8.3β TCRの発生生物学。図16A:上パネルは、脾細胞の代表的なCD4対CD8ドットプロットである。下パネルは、NRP-V7/Kd四量体でのCD8+ T細胞染色の比較である。図16B:17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-(n=14)対17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス(n=28)における糖尿病の頻度。ドットプロットFACSパネル中の値は、各四分円内の細胞のパーセンテージに対応し、ヒストグラム中の値は、陽性に染色された細胞のパーセンテージに対応する(平均値±SE)。
【図17】17.6α/8.3β CD8+ T細胞は、調節機能を有する記憶T細胞へ自然に分化する。図17A:17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-対17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓CD8+ T細胞の代表的なFACSプロフィール。図17B:TCRα-/-Tgマウスの脾臓(17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=12、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=9)、PLN(17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=9、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=6)およびBM(17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=4、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-についてn=3)内のCD44hi CD122+ CD8+ T細胞のパーセンテージ(平均値±SE)。マウスは9〜18週齢であった。図17C:NRP-V7/Kd四量体対抗CD122 Abで染色された17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓CD8+ T細胞の代表的なFACSプロフィール。値は5つの異なる実験の平均値±SEである。図17D:17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブ対記憶脾臓CD8+ T細胞の表現型分析。データは各マーカーについての少なくとも2つの実験を代表する。図17E:TCRα-/-Tgマウス由来のCD8+CD4-胸腺細胞対CD8+脾細胞におけるCD122染色の比較。データは4つの実験を代表する。図17F:TCRα-/-Tgマウス由来の脾臓CD8+ T細胞によるBrdU取り込み。図17G:上パネル:サイトカインIL-2およびIL-15(両方とも100 ng/ml)に応答してのTgマウス由来の脾臓CD8+ T細胞の増殖の代表的なFACSプロフィール。下パネル:異なる濃度のIL-2およびIL-15に応答しての17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブ対記憶CD8+ T細胞の倍増大。データは少なくとも3つの実験を代表する。図17H:24および48時間後の1μg/ml NRP-A7パルスされたDCに応答しての17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブおよび記憶CD8+ T細胞に対する17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓ナイーブCD8+ T細胞によるIFN-γの産生。図17I:6時間後の1μg/ml NRP-A7パルスされたDCに応答しての17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブおよび記憶CD8+ T細胞に対する17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の脾臓ナイーブCD8+ T細胞からの細胞内IFN-γ染色。図17J:種々の時点での1μg/ml NRP-A7パルスされたDCに応答してのIL-2の産生および増殖。図17Hおよび図17Jにおけるデータは4つの実験を代表し、図17Iにおけるデータは3つの実験を代表する。
【図18】CFSE標識された17.4α/8.3β CD8+ T細胞の増殖。17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブ対記憶CD8+ T細胞(上パネル)または17.4α/8.3β-NOD対LCMV-NODマウス由来のナイーブCD8+ T細胞(下パネル)の存在下でのNRP-A7パルスされたDCに応答してのCFSE標識された17.4α/8.3β CD8+ T細胞の増殖。データは少なくとも5つの実験を代表する。
【図19】記憶17.6α/8.3β CD8+ T細胞は抗原パルスされたAPCを死滅させる。図19A:NRP-A7およびTUMパルスされたBM DCに対する、17.4α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来の新たに単離されたナイーブCD8+ T細胞対17.6α/8.3β-NOD.TCRα-/-マウス由来のナイーブおよび記憶CD8+ T細胞のインビトロ細胞傷害性。データは3つの実験を代表する。精製BM DCに、1μg/ml NRP-A7またはTUMをパルスし、[51Cr]-クロム酸ナトリウムで標識した。エフェクター:標的比=8:1(40000エフェクター:5000標的細胞)。上澄みを8時間後に採取した。図19B:インビボ細胞傷害性アッセイ:NRP-A7パルスされた(CFSElo)もしくはTUMパルスされた(CFSEhi)B細胞(上パネル)または新たに単離された脾臓およびLN DC(下パネル)を1:1の比でTgホスト中へ注射した。B細胞または新鮮なDC(脾臓およびLN由来)を、抗B220または抗CD11c MACSビーズを使用して単離し、2時間10μg/mlのペプチドをパルスし、洗浄し、37℃にて3分間CFSEで標識し(TUM:3μM CFSE、NRP-A7:0.3μM CFSE)、3回洗浄し、各集団由来の4〜5×106細胞を前記ホストへ注射した。18時間後、マウスを屠殺し、脾細胞をFACS分析した。
【図20】NRP-V7/Kd-npまたはDMK138-146/Db-npが増大した四量体+ CD8+細胞は抑制活性を有する。図20A:増大したNRP-V7/Kd四量体+ CD8+ 細胞は、高レベルのCD44を発現し;これらのサブセットはまたCD122を発現する(対照対NRP-V7/Kd-npについてn=7および4)。図20B:増大した四量体+細胞は、抗原刺激に応答してIL-2ではなくIFNγを分泌する。NRP-V7/Kd四量体陽性CD8+脾細胞および陰性CD8+脾細胞を分類し、20,000個の分類された細胞を、1μg/mL NRP-V7ペプチドの存在下で、10000個のBM由来樹状細胞と共に培養した。培養上澄みを24時間で回収し、24〜48時間の[3H]チミジン取り込みを測定した。図20C:np増大したNRP-V7/KdまたはDMK138-146/Db四量体+ CD8+ T細胞による17.4α/8.3β-CD8+ T細胞増殖のインビトロ抑制。NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Db四量体+または- CD8+ T細胞をFACSによって分類し、プレートに結合された抗CD3 MAbであらかじめ活性化したか、または一晩、直接、NRP-V7もしくはNRP-V7/DMK138-146ペプチドパルスされたBMDCと共に培養した。CFSE標識された17.4α/8.3β-CD8+レポーターT細胞を、サプレッサー1対レポーター1の比で前記共培養物へ添加し、CFSE希釈物を48時間後に評価した。3つの実験の代表的なプロフィールを示す。図20D:図20Cに示されるインビトロ抑制実験の概要。
【図21】ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は既存の低アビディティ記憶T細胞を増大させる。図21A:TUM/Kd-npは、TUM/Kd四量体+細胞を増大させない(n=7および9、脾臓中)。図21B:NRP-V7/Kd-npは、糖尿病耐性B10.H-2g7マウスの脾臓、膵リンパ節、骨髄、および末梢血中においてNRP-V7/Kd四量体+細胞を増大させない。10週齢のH-2g7マウスに、連続5週間、全部用量のNRP-V7/Kd-npを週2回注射し、四量体+細胞の頻度を測定した(NRP-V7/Kd-np処置n=4、対照n=5)。図21C:np処置によるNRP-V7/Kd四量体+細胞の増大は、糖尿病発症時で最も効果的である。ここで、4週齢(n=9)、10週齢(n=10)、または糖尿病発症(n=3)時で開始して、10回全部用量のNRP-V7/Kd-npを受容した動物の末梢血中における四量体+細胞のパーセンテージを比較する。
【図22】NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置の防護効果は、既存の低アビディティ四量体+ CD8+ T細胞の増大を必要とする。図22A:NOD.IGRPK209A/F213AKI/KI構築物の概略図。図22B:2つの異なるNOD.IGRPK209A/F213AKI/KIマウスにおける各IGRPエピトープに対する膵島関連CD8+ T細胞によるIFNγ応答。図22C:脾臓、骨髄、膵リンパ節、および末梢血におけるNRP-V7/Kd-np処置NOD.IGRPK209A/F213AKI/KIマウス(n=8)におけるNRP-V7/Kd四量体+ CD8+ 細胞の増大の欠如。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
現在までの観察(Hanら, 2005)により、自己免疫において有効であるためには、ペプチド療法は、多数のエピトープ特異性を標的化しなければならないことが示唆されている。本発明者らは、IGRP単独の場合、1用量当たり数ミリグラムのペプチドを必要とするため、ペプチドでこれを達成することはきわめて非実用的であると考えた。ペプチドは、固定されたAPC上のMHC分子に結合されると遥かにより免疫寛容原性(即ち、より少ない量で)となるので(Millerら, 1979)、粒子上での抗原/MHC複合体、例えばペプチド/MHC複合体(補助刺激分子無し)の全身送達は、ペプチド単独よりもより免疫寛容原性であり得ると考えた。この考えは、膵島炎症を画像化するために最初に考案された試薬の利用可能性から発展した。本発明者らは、循環8.3様CD8+ T細胞に磁気共鳴(MR)イメージングに敏感なプローブを特異的に送達しようとした(NRP-V7/Kd複合体でコーティングされた酸化鉄ナノ粒子)(Mooreら, 2004)。特に、本発明者らは、複数のT細胞特異性を、T1Dが現れるのに必要な閾値未満に同時に除去することを誘導するための方法として、いくつかの異なる抗原/MHC複合体でこれらの粒子をコーティングすることを考えた。寛容誘導のためにこれらのナノ粒子を使用することの1つの特徴は、それらのプロトタイプがMRI研究についてのヒトにおける使用に承認されたことであった。
【0048】
本発明者らは、抗原/MHC複合体でコーティングされたナノ粒子(抗原/MHC/粒子複合体)が、驚くべきことに、効率的に一貫してかつ非常に低い用量で(ペプチド約0.6μgに対応)低アビディティ自己反応性CD8+細胞のタイプを増大させ、これにより、APL治療マウスにおいてT1Dからの防護がもたらされることを見出した(Hanら, 2005;Mareeら, 2006)。別の驚くべき観察は、これらのナノ粒子が、自己反応性記憶CD8+ T細胞の既存のプールを増大させる(即ち、それらは、記憶T細胞を新たに誘導しない)ようであることであった。これらの既存のプールは、主として(排他的でないにしても)低アビディティ(非病原性/抗病原性)自己反応性CD8+クロノタイプから構成されている。恐らく、しかし本発明をいかなる特定の理論にも限定しないが、内因性標的β細胞自己抗原への慢性曝露において活性化誘導細胞死を経るため、これらのT細胞の高アビディティ相当物(病原性活性を有する)は、記憶細胞としてインビボで生き延びない。別の予想外の観察は、これらの粒子は、有効となるために自己反応性CD8+ T細胞の一般的な集団を標的化する必要がないということである。同様の結果が、サブドミナントなペプチド/MHC複合体でコーティングされたナノ粒子で得られた。さらに、この技術は、所定のアビディティのAPLの設計を必要とせず(ペプチドでの場合とは異なり)、従って、任意の標的抗原またはペプチド/MHC標的を適応させる可能性を有する。この技術の種々の特質の1つは、それが、臨床試験においていくらかの見込みを示した非抗原特異的アプローチである抗CD3 mAb治療で得られたものと比べて、少なくとも同等の、そうでなければよりよい割合で、新たに診断されたT1Dを有するNODマウスにおいて正常血糖を回復させ得ることである(Heroldら, 2002;Keymeulenら, 2005)。
【0049】
本発明者らは、酸化鉄粒子に結合された状態で送達されると、効率的に、一貫して、かつ非常に低い用量で(ペプチド約0.6μgに対応)、自己免疫状態に対する防護をもたらすあるタイプのCD8+細胞を増大させる、自己抗原/MHC複合体を製造した。本発明の組成物は、自己反応性記憶CD8+ T細胞の既存のプールを増大させるために使用され得る(即ち、それらは、新たに記憶T細胞を誘導することができないと考えられる)。これらの既存のプールは、主として(排他的でないにしても)、低アビディティ(非病原性/抗病原性)自己反応性CD8+クロノタイプから構成されている。これらのT細胞の高アビディティ相当物(病原性活性を有する)は、記憶細胞としてインビボで生き延びず、主として、ナイーブT細胞として存在する。ナイーブT細胞は、補助刺激の非存在下で自己抗原/MHC/粒子複合体にかみ合うと細胞死を経る。従って、本発明は、ナイーブ病原性T細胞を除去し、かつ、抗糖尿病誘発性記憶T細胞を増大させる。記載の組成物は、有効となるために自己反応性CD8+ T細胞の一般的な集団を標的化する必要がない。ある態様において、本組成物および方法は、自己反応性T細胞寛容を誘導するために使用され得る。
【0050】
I.薬学的組成物および投与
本発明は、自己反応性状態を予防または改善するための方法を含む。従って、本発明は、種々の態様における使用のための「ワクチン」または免疫系改変物質を企図する。ワクチンとしての使用に好適であると提案される組成物は、自己反応性タンパク質およびそれらのフラグメントを含む自己反応性分子から作製され得る。本発明は、自己反応性抗原、例えば、ポリペプチド、ペプチド、糖質、脂質、または他の分子もしくは分子フラグメントに対する、およびこのような自己免疫応答によって引き起こされる状態または疾患を生じさせることに対する、免疫応答を誘導または改変するために使用され得る組成物を含む。
【0051】
本発明の組成物は、通常、注射によって、例えば、静脈内、皮下または筋内に、非経口投与され得る。他の投与様式に好適であるさらなる製剤には、経口製剤が含まれる。経口製剤は、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの、通常使用される賦形剤を含む。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤または散剤の形態をとり、約10%〜約95%の有効成分、好ましくは約25%〜約70%を含有する。
【0052】
典型的に、本発明の組成物は、剤形に適合する様式で、治療的に有効でありかつ免疫改良性であるような量で、投与される。投与される量は、治療される対象に依存する。投与されるために必要とされる有効成分の正確な量は、医師の判断に依存する。しかし、好適な投薬量範囲は、1投与当たり抗原/MHC/粒子複合体10〜数百ナノグラムまたはマイクログラムのオーダーのものである。初回投与およびブースターについての好適なレジメンもまた、可変であるが、初回投与およびそれに続く追加投与で典型的に表される。
【0053】
投与の様式は、広範囲に変化し得る。ワクチンの投与についての従来の方法のいずれもが、適用可能である。これらは、固体の生理学的に許容される基剤に乗せたまたは生理学的に許容されるディスパージョンに入れた経口投与、注射などによる非経口投与を含むと考えられる。抗原/MHC/粒子複合体の投薬量は、投与経路に依存し、対象の大きさおよび健康状態に応じて変化する。
【0054】
多くの場合において、ペプチド/MHC/粒子複合体の複数回投与、約、最大で約、または少なくとも、約3、4、5、6、7、8、9、10回またはそれ以上を有することが望ましい。投与は、通常、2日〜12週間間隔、より通常では1〜2週間間隔の範囲に及ぶ。0.5〜5年、通常2年の間隔での周期的なブースターが、免疫系の状態を維持するために望ましい。投与の過程に続いて、自己反応性免疫応答およびT細胞活性についての分析が行われ得る。
【0055】
A.併用療法
本発明の組成物および関連する方法、特に、抗原/MHC/粒子複合体の投与はまた、従来の療法の適用と組み合わせて使用され得る。これらには、免疫抑制または調節療法または治療の適用が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
一局面において、抗原/MHC/粒子複合体は、サイトカイン治療と併用して使用されることが考えられる。または、抗原/MHC/粒子複合体投与は、数分〜数週間の範囲に及ぶ間隔で他の治療に先行するかまたは続いてもよい。他の薬剤および/または抗原/MHC/粒子複合体が別々に投与される態様において、一般的に、各送達と送達の間に有意な時間が過ぎないことが確実にされ、その結果、薬剤および抗原/MHC/粒子複合体は、対象に対して有利に組み合わされた効果を依然として生じることができる。このような場合、互いに約12〜24時間以内、より好ましくは互いに約6〜12時間以内に、両方の様式を投与し得ることが考えられる。ある状況において、投与についての期間を有意に延長することが望ましい場合があるが、それぞれの投与と投与の間に、数日間(2、3、4、5、6または7)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7または8)が経過する。
【0057】
例えば、抗原/MHC/粒子複合体投与が「A」であり、追加の薬剤が「B」である、種々の組み合わせを採用することができる。
【0058】
患者/対象への本発明のペプチド−MHC複合体組成物の投与は、もしあれば、毒性を考慮して、このような化合物の投与についての一般的なプロトコルに従う。必要に応じて治療サイクルが繰り返されることが期待される。種々の標準的な療法、例えば、水分補給が、記載の療法と組み合わせて適用され得ることも企図される。
【0059】
B.薬学的組成物
ある態様において、薬学的組成物が対象へ投与される。本発明の異なる局面は、対象へ有効量の抗原/MHC/粒子複合体組成物を投与することを含む。さらに、このような組成物は、免疫系の改変物質と組み合わせて投与され得る。このような組成物は、一般的に、薬学的に許容される担体または水性媒体に溶解または分散される。
【0060】
「薬学的に許容される」または「薬理学的に許容される」という語句は、動物、またはヒトに投与した場合に、有害な、アレルギー性の、または他の不都合な反応を生じさせない分子実体および組成物を指す。本明細書において使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、あらゆる溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的活性物質についてのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において周知である。従来の媒体または薬剤が有効成分と不適合性である場合を除いて、免疫原性および治療組成物におけるその使用が企図される。
【0061】
本発明の活性化合物は、非経口投与用に製剤化され得、例えば、静脈内、筋内、皮下、または腹腔内経路を介しての注射用に製剤化され得る。対象の免疫状態を改変する抗原/MHC/粒子複合体を含有する水性組成物の作製は、本開示を考慮して当業者に公知である。典型的に、このような組成物は、注射可能物質として、液剤または懸濁剤として作製することができ;注射前の液体の添加によって液剤または懸濁剤を調製するための使用に好適な固体形態を作製することもでき;調製物は乳化することもできる。
【0062】
注射可能な使用に好適な薬学的形態には、無菌水性液剤またはディスパージョン;ゴマ油、落花生油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;および無菌注射可能液剤またはディスパージョンの即時調製用の無菌散剤が含まれる。全ての場合において、形態は、無菌でなければならず、容易に注射され得る程度に流動性でなければならない。それはまた、製造および貯蔵の条件下で安定であるべきであり、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に抗して保存されなければならない。
【0063】
組成物は、中性または塩形態へ製剤化され得る。薬学的に許容される塩としては、酸付加塩(タンパク質の遊離アミノ基と共に形成される)などが挙げられ、これらは、例えば、塩酸またはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩はまた、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から誘導され得る。
【0064】
担体はまた、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、ディスパージョンの場合は必要とされる粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、種々の抗細菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば、糖類または塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射可能組成物の持続性吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによってもたらされ得る。
【0065】
無菌注射可能液剤は、上記に列挙される種々の他の成分と共に好適な溶媒中に必要量の活性化合物を混合し、必要に応じて、続いて濾過滅菌を行うことによって作製される。一般的に、ディスパージョンは、基本の分散媒体と上記に列挙されるものからの必要とされる他の成分とを含有する無菌ビヒクル中へ種々の滅菌された有効成分を混合することによって作製される。無菌注射可能液剤の調製用の無菌散剤の場合、好ましい製造方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術であり、この場合、予め滅菌濾過された溶液から、有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を生じる。
【0066】
本発明に従う組成物の投与は、典型的に、任意の通常の経路を介する。これには、同所性、皮内、皮下、筋内、腹腔内、鼻腔内、または静脈内注射が含まれるが、これらに限定されない。ある態様において、ワクチン組成物は、吸入されてもよい(例えば、米国特許第6,651,655号;これは、参照により具体的に組み入れられる)。
【0067】
治療または予防組成物の有効量は、意図される目標に基づいて決定される。「単位用量」または「投薬量」という用語は、対象における使用に好適な物理的に分離された単位を指し、各単位は、その投与、即ち、好適な経路およびレジメンに関連して上記で考察した所望の応答を生じるように計算された所定量の組成物を含有する。治療の回数および単位用量の両方に従う、投与される量は、所望の結果および/または防護に依存する。組成物の正確な量はまた、医師の判断に依存し、各個体に特有である。用量に影響を与える因子には、対象の身体および臨床状態、投与経路、治療の意図される目標(治癒に対する症状の緩和)、ならびに特定の組成物の効力、安定性、および毒性が含まれる。製剤化されると、液剤は、剤形に適合する様式で、治療的にまたは予防的に有効であるような量で、投与される。製剤は、種々の投薬形態で、例えば上述の注射可能な液剤のタイプで、容易に投与される。
【0068】
C.インビトロまたはエクスビボ投与
本明細書において使用される場合、インビトロ投与という用語は、培養細胞を含むがこれに限定されない、対象から取り出されたまたは対象の外部の細胞において行われる操作を指す。エクスビボ投与という用語は、インビトロで操作され、続いて対象へ投与される細胞を指す。インビボ投与という用語は、投与を含む、対象内で行われる全ての操作を含む。
【0069】
本発明のある局面において、組成物は、インビトロ、エクスビボ、またはインビボのいずれかで投与され得る。あるインビトロ態様において、自己T細胞が、本発明の組成物と共にインキュベートされる。次いで、細胞は、インビトロ分析のために、またはエクスビボ投与のために使用され得る。
【0070】
II.MHC複合体
本発明の古典的および非古典的MHC分子によって提示されるペプチド、糖質、脂質または他の分子を含むが、これらに限定されない、抗原性種に由来するセグメント、フラグメントおよび他の分子を含む、抗原は、典型的に、MHC分子またはその誘導体へ複合体化されるかまたは機能的に結合される。Tリンパ球による抗原認識は、主要組織適合複合体(MHC)に拘束される。所定のTリンパ球は、抗原が特定のMHC分子に結合している場合にのみ抗原を認識する。一般的に、Tリンパ球は、自己MHC分子の存在下においてのみ刺激され、抗原は、自己MHC分子に結合した抗原のフラグメントとして認識される。MHC拘束は、認識される抗原によって、およびその抗原性フラグメントに結合するMHC分子によって、Tリンパ球特異性を規定する。特定の局面において、ある特定の抗原は、ある特定のMHC分子またはそれに由来するポリペプチドと対形成される。
【0071】
「機能的に結合された」または「コーティングされた」という用語は、本明細書において使用される場合、個々のポリペプチド(例えば、MHC)および抗原性(例えば、ペプチド)成分が結合され、活性複合体を形成し、その後、標的部位、例えば免疫細胞に結合する状況を指す。これは、個々のポリペプチド複合体成分が合成されるかまたは組換え発現され、続いて単離され、インビトロで結合して複合体が形成され、その後、対象へ投与される状況;キメラまたは融合ポリペプチド(即ち、複合体の各々の別個のタンパク質成分が、単一のポリペプチド鎖中に含有されている)が、インタクトな複合体として、合成されるかまたは組換え発現される状況を含む。典型的に、ポリペプチド複合体がマイクロ粒子に添加され、約、少なくとも約、または多くとも約0.1、0.5、1、10、100、500、1000またはそれ以上:1、より典型的には0.1:1〜50:1の、分子数:粒子数の比を有する、吸着または結合されたポリペプチド複合体を有するマイクロ粒子が生じる。マイクロ粒子のポリペプチド含有量は、標準的な技術を使用して測定され得る。
【0072】
A.MHC分子
細胞内抗原および細胞外抗原は、認識および適切な応答の両方に関して、免疫系に対し全く異なる抗原投与を提示する。T細胞への抗原の提示は、2つの異なるクラスの分子、MHCクラスI(MHC-I)およびMHCクラスII(MHC-II)によって媒介され、これらは、異なる抗原プロセッシング経路を使用する。細胞内抗原由来のペプチドは、事実上全ての細胞上において発現されるMHCクラスI分子によってCD8+ T細胞へ提示され、一方、細胞外抗原由来のペプチドは、MHC-II分子によってCD4+ T細胞へ提示される。しかし、この二分法にはある例外がある。いくつかの研究によって、エンドサイトーシスされた粒状または可溶性タンパク質から作製されたペプチドが、マクロファージならびに樹状細胞においてMHC-I分子上に提示されることが示された。本発明のある態様において、自己抗原由来の特定のペプチドが、好適なMHCクラスIまたはIIポリペプチドのとの関連において、ペプチド/MHC/粒子複合体において、同定および提示される。ある局面において、対象の遺伝的性質が、MHCポリペプチドが特定の患者および特定のペプチドセットについて使用されるかどうかを決定するために評価され得る。
【0073】
非古典的MHC分子もまた、本発明のMHC複合体における使用について企図される。非古典的MHC分子は、非多形性であり、種間で保存されており、狭くて深い疎水性のリガンド結合性結合ポケットを有する。これらの結合ポケットは、ナチュラルキラーT(NKT)細胞へ糖脂質およびリン脂質を提示することができる。NKT細胞は、NK細胞マーカーおよび半不変T細胞受容体(TCR)を共発現する独特なリンパ球集団を示す。それらは、広範囲の疾患と関連する免疫応答の調節に関与する。
【0074】
B.抗原性成分
本発明のある局面は、一般的に抗原と呼ばれる、抗原応答を刺激または誘導するポリペプチド、ペプチド、核酸、糖質、脂質、および他の分子の、セグメント、フラグメント、またはエピトープを含む抗原性組成物に関する方法および組成物を含む。特に、自己免疫応答を介して細胞の破壊へ導く、自己抗原、または、このような自己抗原の抗原性セグメントもしくはフラグメントが、本明細書に記載されるMHC/粒子複合体を作製することにおいて、同定および使用され得る。このような自己抗原は、膵島、または膵島細胞を支持する細胞において提示され得る。本発明の態様は、特定の生理学的機能を行う特定の細胞または細胞セットに対する免疫応答の調節のための組成物および方法を含む。
【0075】
1.ペプチド成分およびタンパク様組成物
本発明のポリペプチドおよびペプチドは、種々のアミノ酸の欠失、挿入、および/または置換によって修飾され得る。特定の態様において、修飾されたポリペプチドおよび/またはペプチドは、対象において免疫応答を調節することができる。本明細書において使用される場合、「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ペプチド」は、少なくとも5つのアミノ酸残基を含む分子を指す。ある態様において、タンパク質またはペプチドの野生型が使用されるが、本発明の多くの態様において、修飾されたタンパク質またはポリペプチドが、ペプチド/MHC/粒子複合体を作製するために使用される。ペプチド/MHC/粒子複合体は、免疫応答を引き起こすためおよび/または免疫系のT細胞集団を改変する(即ち、免疫系を再教育する)ために使用され得る。上記に記載される用語は、本明細書において交換可能に使用され得る。「修飾されたタンパク質」または「修飾されたポリペプチド」または「修飾されたペプチド」とは、その化学構造、特にそのアミノ酸配列が、野生型タンパク質またはポリペプチドと比べて変更されているタンパク質またはポリペプチドを指す。ある態様において、修飾されたタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、少なくとも1つの修飾された活性または機能を有する(タンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、複数の活性および機能を有し得ることを認識すること)。具体的には、MHC/粒子複合体との関連における場合、修飾されたタンパク質またはポリペプチドまたはペプチドは、1つの活性または機能について変更されているが、他の点においては野生型の活性または機能、例えば、免疫系の他の細胞と相互作用する能力または免疫原性を保持している場合があることが、考えられる。
【0076】
本発明のペプチドは、任意の自己反応性ペプチドを含む。自己反応性ペプチドには、
ならびに、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる米国公開公報20050202032に開示されるペプチドおよびタンパク質が含まれるが、これらに限定されない。自己反応性ペプチドとしてまたは対照ペプチドとして本発明と併用して使用され得る他のペプチドには、INS-I9(LYLVCGERI(配列番号11))、TUM(KYQAVTTTL(配列番号12))、およびG6Pase(KYCLITIFL(配列番号13))が含まれるが、これらに限定されない。ある局面において、1、2、3、4、5、6個またはそれ以上のペプチドが使用され得る。本発明と併用して使用され得るペプチドの例にはまた、表1に提供されるものが含まれる。これらのペプチドは、特定の粒子/MHC分子と結合し得、または、複数のペプチドが、共通の粒子および1つまたは複数のMHC分子と結合し得る。これらのペプチドの組み合わせの投与は、複数のペプチドを結合させた粒子の集団を投与すること、および/または、各々が特定のペプチドを結合させた複数の粒子集団、または、1、2、3、4、5、6個、もしくはそれ以上のペプチドを1、2、3、4、5、6個、もしくはそれ以上の粒子に結合させた粒子を含む粒子の組み合わせを投与することを含む。
【0077】
(表1A)T1DについてのHLAクラスI拘束性エピトープ
GAD65:65kDaグルタミン酸デカルボキシラーゼ、GFAP:グリア線維酸性タンパク質、IA-2:インスリノーマ関連抗原2、ppIAPP:膵島アミロイドポリペプチド前駆体タンパク質、IGRP:膵島特異的グルコース 6−ホスファターゼ触媒サブユニット関連タンパク質
【0078】
(表1B)MSについてのHLAクラスI拘束性エピトープ
MBP:ミエリン塩基性タンパク質、MAG:ミエリン関連糖タンパク質、MOG:ミエリン乏突起膠細胞糖タンパク質、PLP:プロテオリピドタンパク質
【0079】
ある態様において、関心対象のタンパク質またはペプチドの任意の複合体、および特に、MHC/ペプチド融合を含む、タンパク質またはポリペプチド(野生型または修飾型)のサイズは、非限定的に、
個またはそれ以上のアミノ分子を含み得、それにはそこから誘導可能な任意の範囲または値が含まれ得る。ある局面において、誘導体を含む5、6、7、8、9、10個またはそれ以上の連続アミノ酸、および自己抗原のフラグメント、例えば、本明細書において開示および参照されるアミノ酸配列が、抗原として使用され得る。ポリペプチドは、それらの対応の野生型形態よりもそれらをより短くする切断によって突然変異され得るだけでなく、それらは、特定の機能(例えば、タンパク質複合体としての提示について、増強された免疫原性についてなど)を有する異種タンパク質配列を融合または結合させることによっても変更され得ることが企図される。
【0080】
本明細書において使用される場合、「アミノ分子」とは、任意のアミノ酸、アミノ酸誘導体、または当該技術分野において公知のアミノ酸模倣物を指す。ある態様において、タンパク様分子の残基は、非アミノ分子がアミノ分子残基の配列を中断することなく、連続的である。他の態様において、前記配列は、1つまたは複数の非アミノ分子部分を含み得る。特定の態様において、タンパク様分子の残基の配列は、1つまたは複数の非アミノ分子部分によって中断され得る。
【0081】
従って、「タンパク様組成物」という用語は、天然に合成されるタンパク質中の20個の共通アミノ酸の少なくとも1つ、または修飾されたもしくは通常でないアミノ酸を少なくとも1つ含む、アミノ分子配列を包含する。
【0082】
タンパク様組成物は、以下を含む、当業者に公知の任意の技術によって作製され得る:(i)標準的な分子生物学技術によるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドの発現、(ii)天然源からのタンパク様化合物の単離、または(iii)タンパク様物質の化学合成。種々の遺伝子についてのヌクレオチドならびにタンパク質、ポリペプチド、およびペプチド配列が、以前に開示されており、公認のコンピュータ化されたデータベースにおいて見出すことができる。1つのこのようなデータベースは、National Center for Biotechnology InformationのGenBankおよびGenPeptデータベースである(World Wide Web上においてncbi.nlm.nih.gov/で)。これらの遺伝子についてのコード領域の全部または一部が、本明細書に開示されるかまたは当業者に公知であるような技術を使用して増殖および/または発現され得る。
【0083】
これらの組成物の自己抗原性エピトープおよび他のポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、置換、挿入、または欠失変異体であり得る。本発明のポリペプチドにおける修飾は、野生型と比べて、
個またはそれ以上の、ペプチドまたはポリペプチドの非連続または連続アミノ酸に影響を与え得る。自己免疫応答、特に病理学的自己免疫応答を生じさせるペプチドまたはポリペプチドが、本発明の方法における使用について企図される。
【0084】
欠失変異体は、典型的に、天然または野生型アミノ酸配列の1つまたは複数の残基を欠いている。個々の残基が欠失され得、または多数の連続アミノ酸が欠失され得る。終止コドンが、切断されたタンパク質を作製するためにコード核酸配列へ(置換または挿入によって)導入され得る。挿入突然変異体は、典型的に、ポリペプチドにおける非末端点での物質の付加を含む。これは、1つまたは複数の残基の挿入を含み得る。融合タンパク質と呼ばれる、末端付加物もまた、作製され得る。
【0085】
置換変異体は、典型的に、タンパク質内の1つまたは複数の部位の1つのアミノ酸を別のアミノ酸で交換することを含み、他の機能または特性の喪失を伴ってまたは伴わずに、ポリペプチドの1つまたは複数の特性を調節するように設計され得る。置換は、保存的であり得、即ち、1つのアミノ酸が類似の形状および電荷のアミノ酸で置換される。保存的置換は当該技術分野において周知であり、例えば、以下の変更を含む:アラニンをセリンへ;アルギニンをリジンへ;アスパラギンをグルタミンまたはヒスチジンへ;アスパルテートをグルタメートへ;システインをセリンへ;グルタミンをアスパラギンへ;グルタメートをアスパルテートへ;グリシンをプロリンへ;ヒスチジンをアスパラギンまたはグルタミンへ;イソロイシンをロイシンまたはバリンへ;ロイシンをバリンまたはイソロイシンへ;リジンをアルギニンへ;メチオニンをロイシンまたはイソロイシンへ;フェニルアラニンをチロシン、ロイシンまたはメチオニンへ;セリンをトレオニンへ;トレオニンをセリンへ;トリプトファンをチロシンへ;チロシンをトリプトファンまたはフェニルアラニンへ;およびバリンをイソロイシンまたはロイシンへ。または、置換は、非保存的であり得、その結果、ポリペプチドまたはペプチドの機能または活性、例えば、細胞受容体についてのアビディティまたは親和性が影響を受ける。非保存的変更は、典型的に、化学的に非類似であるもので残基を置換することを含む;例えば、極性または帯電アミノ酸の代わりに非極性または帯電していないアミノ酸;逆もまた同様。
【0086】
本発明のタンパク質は、組換え体であり得、またはインビトロで合成され得る。または、組換えタンパク質が、細菌または他の宿主細胞から単離され得る。
【0087】
「機能的に等価のコドン」という用語は、例えば、アルギニンまたはセリンについての6個のコドンのように、同一のアミノ酸をコードするコドンを指すために本明細書において使用され、さらに、生物学的に等価のアミノ酸をコードするコドンも指す(下記の表2を参照のこと)。
【0088】
(表2)コドン表
【0089】
生物学的タンパク質活性(例えば、免疫原性)の維持を含む上述の基準を配列が満たす限り、アミノ酸配列および核酸配列は、追加の残基、例えば、それぞれ、追加のN-もしくはC-末端アミノ酸配列または5'もしくは3'核酸配列を含み得、なお依然として本質的に、本明細書に開示される配列の1つにおいて記載される通りであり得ることも理解される。末端配列の付加は、特に、核酸配列へ適用され、それは、例えば、コード領域の5'または3'部分のいずれかにフランキングする種々の非コード配列を含み得る。
【0090】
本発明の組成物において、1 ml当たり約0.001 mg〜約10 mgの総タンパク質が存在することが考えられる。従って、組成物中のタンパク質の濃度は、約、少なくとも約、または多くとも約0.001、0.010、0.050、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、50、100μg/mlまたはmg/mlまたはそれ以上(またはそこにおいて誘導可能な任意の範囲)であり得る。この中で、約、少なくとも約、または多くとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100%が、ペプチド/MHC/粒子複合体であり得る。
【0091】
本発明は、自己免疫応答と関連する疾患または状態の進展に対して診断、治療または予防療法を行うためにペプチド/MHC/粒子複合体の投与を企図する。
【0092】
さらに、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,554,101号(Hopp)には、一次アミノ酸配列からのエピトープの親水性に基づく同定および作製が教示されている。Hoppに開示される方法によって、当業者は、アミノ酸配列内から可能性のあるエピトープを同定しそれらの免疫原性を確認することができる。多数の科学刊行物もまた、アミノ酸配列の分析からの、二次構造の予想およびエピトープの同定に向けられてきた(Chou & Fasman, 1974a,b; 1978a,b; 1979)。これらのいずれもが、米国特許第4,554,101号におけるHoppの教示を補うために、必要に応じて、使用され得る。
【0093】
2.他の抗原性成分
ペプチド以外の分子が、MHC分子との複合体において抗原または抗原性フラグメントとして使用され得、このような分子には、糖質、脂質、小分子などが含まれるが、これらに限定されない。糖質は、種々の細胞の外部表面の主成分である。ある特定の糖質は、種々の段階の分化の特徴を示し、非常にしばしば、これらの糖質は特異的抗体によって認識される。別個の糖質の発現は、特定の細胞型に限定され得る。子宮内膜および血清抗原に対する自己抗体応答は、子宮内膜症の一般的な特徴であることが示されている。糖質エピトープについて特異的である、2-Heremans Schmidt糖タンパク質および炭酸脱水酵素を含む、多数の以前同定された抗原に対する子宮内膜症における血清自己抗体応答が記載されている(Yeamanら, 2002)。
【0094】
C.支持体/粒子
ある局面において、抗原/MHC複合体は、支持体に機能的に結合される。支持体は粒子の形態であり得る。粒子は、マイクロスフェア、マイクロ粒子、ナノ粒子、ナノスフェア、またはリポソームとして様々に公知の、可変寸法の構造を有し得る。抗原/MHC複合体を含有するこのような微粒子製剤は、粒子と複合体との共有結合または非共有結合によって形成され得る。
【0095】
「粒子」、「マイクロ粒子」、「ビーズ」、「マイクロスフェア」、および本明細書における文法的等価物によって、対象に投与可能な小さな分離した粒子が意味される。ある態様において、粒子は、形状が実質的に球形である。「実質的に球形」という用語は、本明細書において使用される場合、粒子の形状が、約10%を超えて球体から逸脱しないことを意味する。本発明の種々の公知の抗原またはペプチド複合体は、粒子へ適用され得る。
【0096】
粒子は、典型的に、実質的に球形のコアと任意で1つまたは複数の層とからなる。コアは、サイズおよび組成が異なり得る。コアに加えて、粒子は、関心対象の適用に好適な機能性を提供するために1つまたは複数の層を有し得る。存在する場合、層の厚みは、特定の適用の必要性に依存して変化し得る。例えば、層は、有用な光学特性を与え得る。
【0097】
層はまた、化学的または生物学的機能性を与え得、本明細書において化学活性または生物活性層と呼ばれ、これらの機能性のために、層は、典型的に、約0.001マイクロメートル(1ナノメートル)〜約10マイクロメートルまたはそれ以上(所望の粒径に依存する)の厚みの範囲に及び得、これらの層は、典型的に、粒子の外部表面上に適用される。
【0098】
コアおよび層の組成は異なり得る。粒子またはコアについて好適な材料には、ポリマー、セラミックス、ガラス、鉱物などが含まれるが、これらに限定されない。例としては、標準および特殊ガラス、シリカ、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、アクリルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、フルオロポリマー、シリコーン、セルロース、ケイ素、金属(例えば、鉄、金、銀)、鉱物(例えば、ルビー)、ナノ粒子(例えば、金ナノ粒子、コロイド粒子、金属酸化物、金属硫化物、金属セレン化物、および磁性材料、例えば、酸化鉄)、ならびにそれらのコンポジットが挙げられるが、これらに限定されない。コアは、所望の特性に依存して、均一な組成のもの、または、2つまたはそれ以上のクラスの材料のコンポジットであり得る。ある局面において、金属ナノ粒子が使用される。これらの金属粒子またはナノ粒子は、Au、Pt、Pd、Cu、Ag、Co、Fe、Ni、Mn、Sm、Nd、Pr、Gd、Ti、Zr、Si、およびIn、前駆体、それらの二元合金、それらの三元合金ならびにそれらの金属間化合物から形成され得る。参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、米国特許第6,712,997号を参照のこと。
【0099】
前述したように、粒子は、コアに加えて、1つまたは複数の層を含み得る。マイクロ粒子に層を含める目的は、多様であり得る。または、粒子の表面は、直接、官能化され得る。層は、化学結合または結合部位についての化学官能性を付与するために好適な表面を提供し得る。
【0100】
層は、当業者に公知の種々の様式でマイクロ粒子上に作製され得る。例としては、Iler (1979);BrinkerおよびScherer (1990)において記載されるようなゾル−ゲル化学技術が挙げられる。粒子上に層を作製するさらなるアプローチには、PartchおよびBrown (1998);Pekareket al. (1994);Hanprasopwattana (1996);Davies (1998);ならびにそれらの中の参考文献に記載されるような表面化学およびカプセル化技術が含まれる。蒸着技術もまた使用され得る;例えばGolmanおよびShinohara (2000);ならびに米国特許第6,387,498号を参照のこと。さらに他のアプローチには、Sukhorukovら (1998);Carusoら (1998);Carusoら (1999);米国特許第6,103,379号およびそれらにおいて引用される参考文献に記載されるような多層自己集合技術が含まれる。
【0101】
粒子は、米国特許第4,589,330号または第4,818,542号において教示されるように、非水相とポリマーおよび抗原/MHC複合体を含有する水相とを接触させ、その後、非水相を蒸発させ、水相からの粒子の凝集を生じさせることによって形成され得る。このような作製に好ましいポリマーは、ゼラチン(gleatin) 寒天、デンプン、アラビノガラクタン、アルブミン、コラーゲン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(ε-カプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-乳酸)、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-グリコール酸)、ポリ(β-ヒドロキシ酪酸)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレン、ポリ(アルキル-2-シアノアクリレート)、ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)、ポリ(2-ヒドロキシエチルDL-アスパルトアミド)、ポリ(エステルウレア)、ポリ(L-フェニルアラニン/エチレングリコール/1,6-ジイソシアナトヘキサン)およびポリ(メタクリル酸メチル)からなる群より選択される天然または合成コポリマーまたはポリマーである。特に好ましいポリマーは、ポリエステル、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、グリコリド-L(-)ラクチドポリ(ε-カプロラクトン、ポリ(ε-カプロラクトン-CO-乳酸)、およびポリ(ε-カプロラクトン-CO-グリコール酸である。ポリマーを溶解するために有用な溶媒には、水、ヘキサフルオロイソプロパノール、メチレンクロリド、テトラヒドロフラン、ヘキサン、ベンゼン、またはヘキサフルオロアセトンセスキ水和物が含まれる。
【0102】
「マイクロ粒子」という用語は、本明細書において使用される場合、直径約10 nm〜約150μm、より好ましくは直径約200 nm〜約30μm、最も好ましくは直径約500 nm〜約10μmの粒子を指す。好ましくは、マイクロ粒子は、注射針および毛細管を塞ぐことなく非経口または経粘膜投与を可能にする直径のものである。マイクロ粒子サイズは、当該技術分野において周知の技術、例えば、光子相関分光法、レーザー回折法および/または走査電子顕微鏡法によって容易に測定される。「粒子」という用語はまた、本明細書に規定されるマイクロ粒子を示すために使用され得る。タンパク質送達システムの概観については、Banga, Therapeutic Peptides and Proteins: Formulation, Processing, and Delivery Systems, Technomic Publishing Company, Inc., Lancaster, Pa., 1995を参照のこと。微粒子系には、マイクロスフェア、マイクロ粒子、マイクロカプセル、ナノカプセル、ナノスフェア、およびナノ粒子が含まれる。約1μmより小さい粒子、マイクロスフェア、およびマイクロカプセルは、一般的に、それぞれ、ナノ粒子、ナノスフェア、およびナノカプセルと呼ばれる。マイクロ粒子は、典型的に、直径約100μmであり、皮下または筋内投与される(Kreuter, 1994;Tice & Tabibi, 1992を参照のこと)。
【0103】
D.抗原−MHC複合体とマイクロ粒子またはナノ粒子との結合
抗原−MHC複合体に支持体または粒子を結合するために、以下の技術が適用され得る。
【0104】
結合は、支持体または粒子を化学的に修飾することによって作製され得、これは、表面上における「官能基」の作製を典型的に含み、該官能基は、抗原−MHC複合体に結合することができ、かつ/または表面または粒子の任意で化学的に修飾された表面と共有または非共有結合されたいわゆる「連結性分子」とを連結し、続いて、得られた粒子と抗原−MHC複合体とを反応させることができる。
【0105】
「連結性分子」という用語は、支持体または粒子と連結することができ、かつ、抗原−MHC複合体へ連結することができる物質を意味する。
【0106】
上記で使用される「官能基」という用語は、共有結合を形成する反応性化学基に限定されず、しかしまた、抗原−MHC複合体とのイオン相互作用結合または水素結合へ導く化学基も含む。さらに、表面の修飾は、時折、エチレングリコールなどのより小さな連結性分子と粒子表面との反応を必要とするため、表面で作製された「官能基」と「官能基」を有する連結性分子との厳密な区別は可能でないことに注意されるべきである。
【0107】
官能基またはそれらを有する連結性分子は、アミノ基、炭酸基、チオール、チオエテール、ジスルフィド、グアニジノ、ヒドロキシル基、アミン基、ビシナルジオール、アルデヒド、α−ハロアセチル基、水銀オルガニル、エステル基、酸ハロゲン化物、酸チオエステル、酸無水物、イソシアナート、イソチオシアナート、スルホン酸ハロゲン化物、イミドエステル、ジアゾアセテート、ジアゾニウム塩、1,2-ジケトン、ホスホン酸、リン酸エステル、スルホン酸、アゾリド、イミダゾール、インドール、N-マレイミド、α-β-不飽和カルボニル化合物、アリールハロゲニドまたはそれらの誘導体より選択され得る。
【0108】
高分子量を有する他の連結性分子についての非限定的な例は、核酸分子、ポリマー、コポリマー、重合性結合剤、シリカ、タンパク質、および支持体または粒子に関して逆の極性を有する表面を有する鎖状分子である。核酸は、連結性分子に関して相補的な配列を介して、それら自体が核酸分子を含有する親和性分子への連結を提供し得る。
【0109】
重合性結合剤についての例としては、ジアセチレン、スチレンブタジエン、酢酸ビニル、アクリレート、アクリルアミド、ビニル化合物、スチレン、シリコーン酸化物、酸化ホウ素、リン酸化物、ボレート、ピロール、ポリピロール、およびホスフェートが挙げられ得る。
【0110】
支持体または粒子の表面は、例えば、官能性反応基を有するホスホン酸誘導体の結合によって、化学的に修飾され得る。これらのホスホン酸またはホスホン酸エステル誘導体の1例は、「Mannich-Moedritzer」反応に従って合成され得るイミノ-ビス(メチレンホスホノ)炭酸である。この結合反応は、作製プロセスから直接得られるかまたは前処理(例えば、臭化トリメチルシリルを用いる)後の支持体または粒子で行われ得る。第1のケースにおいて、ホスホン酸(phophonic acid)(エステル)誘導体は、例えば、表面に依然として結合している反応媒体の成分を置換し得る。この置換は、より高温で増強され得る。他方では、臭化トリメチルシリルは、アルキル基含有リンベースの錯化剤を脱アルキルし、それによってホスホン酸(エステル)誘導体についての新たな結合部位を作製すると考えられる。ホスホン酸(エステル)誘導体、またはそこに結合した連結性分子は、上述のものと同一の官能基を示し得る。支持体または粒子の表面処理のさらなる例は、エチレングリコールなどのジオール中における加熱を含む。この処理は、合成がジオール中で既に進行している場合、冗長であり得ることに注意されるべきである。これらの状況下で、直接得られた合成生成物は、必要な官能基を示す可能性が高い。しかし、この処理は、NまたはP含有錯化剤中において製造された支持体または粒子に適用可能である。このような支持体または粒子がエチレングリコールでの後処理へ供されると、表面に依然として結合している反応媒体の成分(例えば、錯化剤)は、ジオールによって置換され得、かつ/または脱アルキル化され得る。
【0111】
第2の官能基を有する第一級アミン誘導体によって、粒子表面に依然として結合しているN含有錯化剤を置換することも可能である。支持体または粒子の表面はまた、シリカでコーティングされ得る。シリカはトリエトキシシランまたはクロロシランなどの有機リンカーと容易に反応するので、シリカは、有機分子の比較的単純な化学結合を可能にする。粒子表面はまた、ホモポリマーまたはコポリマーによってコーティングされ得る。重合性結合剤についての例は、N-(3-アミノプロピル)-3-メルカプトベンズアミジン、3-(トリメトキシシリル)プロピルヒドラジド、および3-トリメトキシシリル)プロピルマレイミドである。重合性結合剤の他の非限定的な例は、本明細書中に記載される。これらの結合剤は、コーティングとして作製されるコポリマーのタイプに依存して、単独でまたは組み合わせて使用され得る。
【0112】
遷移金属酸化物化合物を含有する支持体または粒子と共に使用され得る別の表面改変技術は、対応のオキシクロリドへの塩素ガスまたは有機塩素化剤による遷移金属酸化物化合物の変換である。これらのオキシクロリドは、生体分子においてしばしば見られるヒドロキシまたはアミノ基などの求核剤と反応することができる。この技術は、例えばリジン側鎖のアミノ基を介して、タンパク質との直接結合を作製することを可能にする。オキシクロリドでの表面改変後のタンパク質との結合はまた、マレイミドプロピオン酸ヒドラジドなどの二官能性リンカーを使用して行われ得る。
【0113】
非共有結合技術について、支持体または粒子表面のそれとは逆の極性または電荷を有する鎖型分子が特に好適である。コア/シェルナノ粒子へ非共有結合され得る連結性分子についての例は、アニオン性、カチオン性、もしくは双性イオン性界面活性剤、酸性もしくは塩基性タンパク質、ポリアミン、ポリアミド、ポリスルホン、またはポリカルボン酸を含む。支持体または粒子と官能性反応基を有する両親媒性試薬との間の疎水性相互作用は、必要な連結を生じさせ得る。特に、互いに架橋され得る、リン脂質または誘導体化多糖などの、両親媒性の性質を有する鎖型分子が有用である。表面上でのこれらの分子の吸収は、共インキュベーションによって達成され得る。親和性分子と支持体または粒子との結合はまた、非共有性の自己組織化結合に基づき得る。その1例は、連結性分子としてのビオチンとアビジンもしくはストレプトアビジン(strepdavidin)結合分子とでの単純な検出プローブを含む。
【0114】
生体分子への官能基の結合反応についてのプロトコルは、文献において、例えば、「Bioconjugate Techniques」(Greg T. Hermanson, Academic Press 1996)において見られ得る。生体分子(例えば、MHC分子またはその誘導体)は、酸化、ハロゲン化、アルキル化、アシル化、付加、置換、またはアミド化などの有機化学の標準的手順に従って、共有結合または非共有結合によって、連結性分子に結合し得る。共有結合または非共有結合された連結性分子を結合するためのこれらの方法は、支持体または粒子への連結性分子の結合の前またはその後に適用され得る。さらに、インキュベーションによって、対応して前処理された支持体(substrte)または粒子への分子の直接結合を行う(例えば、臭化トリメチルシリルによって)ことが可能であり、これらは、この前処理に起因して修飾された表面(例えば、より高い電荷または極性表面)を示す。
【0115】
E.タンパク質の製造
本発明は、本発明の種々の態様における使用のためのポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質を記載する。例えば、特異的ペプチドおよびそれらの複合体は、免疫応答を誘発または調節するそれらの能力について分析される。特定の態様において、本発明のペプチドまたはタンパク質の全部または一部はまた、従来の技術に従って溶液中においてまたは固体支持体上において合成され得る。種々の自動合成装置が市販されており、公知のプロトコルに従って使用され得る。例えば、参照により本明細書に組み入れられる、StewartおよびYoung (1984);Tamら (1983);Merrifield (1986);ならびにBaranyおよびMerrifield (1979)を参照のこと。または、組換えDNA技術が使用され得、その場合、本発明のペプチドをコードするヌクレオチド配列が、発現ベクター中へ挿入され、好適な宿主細胞中へ形質転換またはトランスフェクションされ、発現に好適な条件下で培養される。
【0116】
本発明の一態様は、タンパク質の産生のための、微生物を含む細胞への遺伝子導入の使用を含む。関心対象のタンパク質についての遺伝子は、好適な宿主細胞中へ導入され、続いて、好適な条件下で細胞培養が行われ得る。事実上あらゆるポリペプチドをコードする核酸が使用され得る。組換え発現ベクターの作製、およびそこに含まれるエレメントは、当業者に公知であり、ここで簡単に考察される。哺乳動物宿主細胞株の例としては、VeroおよびHeLa細胞、他のBおよびT細胞株、例えば、CEM、721.221、H9、Jurkat、Raji、ならびにチャイニーズハムスター卵巣細胞株、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RINおよびMDCK細胞が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、挿入された配列の発現を調節するか、または所望の様式で遺伝子産物を修飾および処理する、宿主細胞株が選択され得る。タンパク質産物のこのような修飾(例えば、グリコシル化)および処理(例えば、切断)は、タンパク質の機能について重要であり得る。種々の宿主細胞が、タンパク質の翻訳後処理および修飾について特徴的かつ特異的な機序を有する。発現された外来タンパク質の正確な修飾および処理を確実にするために、好適な細胞株または宿主系が選択され得る。
【0117】
tk細胞、hgprt細胞、またはaprt細胞それぞれの中の、HSVチミジンキナーゼ、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ、およびアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を含むが、これらに限定されない、多数の選択システムが使用され得る。また、代謝拮抗物質耐性が選択の基礎として使用され得る:トリメトプリムおよびメトトレキサートに対する耐性を与えるdhfr;ミコフェノール酸に対する耐性を与えるgpt;アミノ配糖体G418に対する耐性を与えるneo;ならびにヒグロマイシンに対する耐性を与えるhygro。
【0118】
F.核酸
本発明は、本発明のタンパク質、ポリペプチド、ペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドを含み得る。自己抗原および自己抗原を提示するためのMHC分子についての核酸配列が含まれ、ペプチド/MHC複合体を作製するために使用され得る。
【0119】
本願において使用される場合、「ポリヌクレオチド」という用語は、全ゲノム核酸を含まずに単離されたかまたは組換えである核酸分子を指す。「ポリヌクレオチド」という用語内には、オリゴヌクレオチド(長さ100残基以下の核酸)、組換えベクター、例えば、プラスミド、コスミド、ファージ、ウイルスなどが含まれる。ポリヌクレオチドは、ある局面において、それらの天然の遺伝子またはタンパク質コード配列から実質的に離れて単離された、調節配列を含む。ポリヌクレオチドは、RNA、DNA、それらのアナログ、またはそれらの組み合わせであり得る。
【0120】
この点において、「遺伝子」、「ポリヌクレオチド」、または「核酸」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドをコードする核酸を指すために使用される(適切な転写、翻訳後修飾、または限局化に必要とされる任意の配列を含む)。当業者に理解されるように、この用語は、ゲノム配列、発現カセット、cDNA配列、およびより小さな操作された核酸セグメントを包含し、これらは、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、および突然変異体を発現するか、またはこれらを発現するように適合され得る。ポリペプチドの全部または一部をコードする核酸は、以下の長さのこのようなポリペプチドの全部または一部をコードする連続核酸配列を含み得る:10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390、400、410、420、430、440、441、450、460、470、480、490、500、510、520、530、540、550、560、570、580、590、600、610、620、630、640、650、660、670、680、690、700、710、720、730、740、750、760、770、780、790、800、810、820、830、840、850、860、870、880、890、900、910、920、930、940、950、960、970、980、990、1000、1010、1020、1030、1040、1050、1060、1070、1080、1090、1095、1100、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、9000、10000、またはそれ以上のヌクレオチド、ヌクレオシド、または塩基対。所定の種由来の特定のポリペプチドが、僅かに相違する核酸配列を有するが、それにもかかわらず、同一または実質的に類似したタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする天然変異を含む核酸によって、コードされ得ることも企図される。
【0121】
特定の態様において、本発明は、自己抗原および/またはMHC分子をコードする核酸配列を組み込んでいる組換えベクターならびに単離された核酸セグメントに関する。「組換え」という用語は、ポリペプチドまたは特定のポリペプチドの名称と併用して使用され得、これは、一般的に、インビトロで操作された核酸分子またはこのような分子の複製生成物であるものから作製されたポリペプチドを指す。
【0122】
本発明において使用される核酸セグメントは、そのコード配列の長さにかかわらず、他の核酸配列、例えば、プロモーター、ポリアデニル化シグナル、追加の制限酵素部位、多重クローニング部位、他のコードセグメントなどと組み合わされ得、その結果、それらの全長はかなり変化し得る。従って、ほとんどあらゆる長さの核酸フラグメントが使用され得、全長は、好ましくは、意図される組換え核酸プロトコルにおける作製および使用の容易さによって制限されることが企図される。ある場合、核酸配列は、例えば、ポリペプチドの精製、輸送、分泌、翻訳後修飾を可能にするために、またはターゲッティングもしくは効能などの治療的利益のために、追加の異種コード配列と共にポリペプチド配列をコードし得る。タグまたは他の異種ポリペプチドが、修飾ポリペプチドをコードする配列へ付加され得、ここで、「異種」は、修飾ポリペプチドと同一でないポリペプチドを指す。
【0123】
III.診断方法および治療方法
A.免疫応答およびアッセイ
上記で考察されたように、本発明は、自己抗原に対する対象における免疫応答を喚起または改変することに関する。一態様において、得られる免疫応答または状態は、自己免疫応答に関連する疾患または症状を有するか、有すると疑われるか、または発症する危険性がある対象を防護または治療し得る。
【0124】
1.イムノアッセイ
本発明は、免疫応答がペプチド/MHC/粒子複合体によって存在、誘導、喚起、または改変されるかどうかおよびどの程度であるかを評価するための血清学的アッセイの実施を含む。実施され得る多くのタイプのイムノアッセイが存在する。本発明によって包含されるイムノアッセイには、米国特許第4,367,110号(二重モノクローナル抗体サンドイッチアッセイ)および米国特許第4,452,901号(ウエスタンブロット)に記載されるものが含まれるが、これらに限定されない。他のアッセイには、インビトロおよびインビボの両方での、免疫細胞化学および標識リガンドの免疫沈降が含まれる。
【0125】
循環抗原特異的CD8+ T細胞の数を定量するための1つの方法は、テトラマーアッセイである。このアッセイにおいて、特異的エピトープが、蛍光標識されたMHCクラスI分子の合成四量体形態に結合する。CD8+ T細胞はクラスI分子に結合した短いペプチドの形態の抗原を認識するので、適切なT細胞受容体を有する細胞が、標識された四量体に結合し、フローサイトメトリーによって定量され得る。この方法はELISPOTアッセイよりも時間を要しないが、テトラマーアッセイは結合のみを測定し、機能を測定しない。特定の抗原に結合する細胞が全て、必ずしも活性化されるとは限らない。しかし、ELISPOTアッセイ、テトラマーアッセイ、および細胞傷害性アッセイの相関関係が実証された(Goulderら, 2000)。
【0126】
イムノアッセイは、一般的に、結合アッセイである。ある好ましいイムノアッセイは、当該技術分野において公知である、種々のタイプの酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)、またはビーズに基づくアッセイ、例えば、Luminex(登録商標)技術である。組織切片を使用する免疫組織化学的検出もまた特に有用である。
【0127】
ELISAの1例において、抗体または抗原が、選択された表面、例えば、カラム支持体、ディップスティック、またはポリスチレンマイクロタイタープレート中のウェルに固定化される。次いで、所望の抗原または抗体を含有すると疑われる試験組成物、例えば、臨床試料が、ウェルに添加される。結合し、洗浄し、非特異的に結合された免疫複合体を除去した後、結合された抗原または抗体が検出され得る。検出は、一般的に、検出可能な標識へ連結されている、所望の抗原または抗体に特異的な、別の抗体の添加によって達成される。このタイプのELISAは、「サンドイッチELISA」として公知である。検出はまた、所望の抗原に特異的な二次抗体の添加、続いて、該二次抗体について結合親和性を有する三次抗体の添加によって達成され得、該三次抗体は検出可能な標識に連結されている。ELISA技術におけるバリエーションは、当業者に公知である。
【0128】
競合ELISAもまた可能であり、ここで、試験試料は、既知量の標識された抗原または抗体と結合について競合する。未知の試料中の反応性種の量は、コーティングされたウェルとの共インキュベーションの前または間に、該試料と既知の標識された種とを混合することによって測定される。試料中の反応性種の存在は、ウェルへの結合に利用可能な標識された種の量を低下させるように作用し、従って最終的なシグナルを減少させる。
【0129】
使用されるフォーマットにかかわらず、ELISAは、共通のある特徴、例えば、コーティング、インキュベーションまたは結合、非特異的に結合された種を除去するための洗浄、および結合された免疫複合体の検出を有する。
【0130】
抗原または抗体はまた、プレート、ビーズ、ディップスティック、膜、またはカラムマトリクスの形態のような、固体支持体に連結され得、分析される試料が、固定化された抗原または抗体に適用される。プレートを抗原または抗体のいずれかでコーティングする際に、一般的に、プレートのウェルは、一晩または特定の期間の間、抗原または抗体の溶液と共にインキュベートされる。次いで、プレートのウェルを洗浄し、不完全に吸着された物質を除去する。次いで、ウェルの残っている利用可能な表面が、試験抗血清に関して抗原的に中性である非特異的タンパク質で「コーティング」される。これらには、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、および粉乳の溶液が含まれる。コーティングは、固定性表面上における非特異的吸着部位の遮断を可能にし、従って、該表面上への抗血清の非特異的結合によって引き起こされるバックグラウンドを減少させる。
【0131】
ELISAにおいて、直接的な手段よりも二次または三次検出手段を使用することがより一般的である。従って、ウェルに抗原または抗体を結合し、バックグラウンドを低下させるために非反応性物質でコーティングし、結合していない物質を除去するために洗浄した後、固定性表面を、免疫複合体(抗原/抗体)形成を可能にするのに有効な条件下で、試験される臨床試料または生物学的試料と接触させる。次いで、免疫複合体の検出は、標識された二次結合性リガンドもしくは抗体、または、標識された三次抗体もしくは三次結合性リガンドと併用しての二次結合性リガンドもしくは抗体を必要とする。
【0132】
B.自己免疫応答または自己免疫状態のアッセイ
自己免疫状態を治療または予防するためのタンパク質、ポリペプチド、および/またはペプチドの使用に加えて、本発明は、特定の自己反応性細胞集団または自己反応性状態の存在を診断するための自己抗原または自己免疫状態の存在の検出を含む、種々の様式でのこれらのポリペプチド、タンパク質、および/またはペプチドの使用を企図する。本発明に従って、自己反応性の有無を検出する方法は、個体から、例えば個体の血液、唾液、組織、骨、筋肉、軟骨または皮膚から、試料を得る工程を含む。試料の単離に続いて、本発明のポリペプチド、タンパク質、および/またはペプチドを使用する診断アッセイが、自己反応性の存在を検出するために行われ得、このような試料中における測定についてのこのようなアッセイ技術は、当業者に周知であり、テトラマーアッセイ、イムノアッセイ、ウエスタンブロット分析、および/またはELISAアッセイなどの方法を含む。
【0133】
本明細書において使用される場合、「免疫応答」またはその等価物「免疫学的応答」という語句は、自己抗原または自己抗原の関連エピトープに向けられた(抗原特異的T細胞またはそれらの分泌物によって媒介される)細胞の展開を指す。細胞性免疫応答は、クラスIまたはクラスII MHC分子と連携してポリペプチドエピトープを提示し、抗原特異的CD4+Tヘルパー細胞および/またはCD8+細胞傷害性T細胞を活性化することによって誘発される。前記応答はまた、他の成分の活性化を含み得る。
【0134】
本明細書および添付の特許請求の範囲の目的について、「エピトープ」および「抗原決定基」という用語は、交換可能に使用され、B細胞および/またはT細胞が応答または認識する抗原上の部位を指す。B細胞エピトープは、タンパク質の三次折り畳みによって並べられる非連続アミノ酸または連続アミノ酸の両方から形成され得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的に、変性溶媒への曝露において保持され、一方、三次折り畳みによって形成されたエピトープは、典型的に、変性溶媒での処理において失われる。エピトープは、典型的に、特有の空間的コンフォメーションで、少なくとも3個、より通常は、少なくとも5個または8〜10個のアミノ酸を含む。エピトープの空間的コンフォメーションを測定する方法には、例えば、x線結晶学および二次元核磁気共鳴が含まれる。例えば、Epitope Mapping Protocols (1996)を参照のこと。T細胞は、CD8細胞については約9個のアミノ酸、CD4細胞については約13〜15個のアミノ酸の連続エピトープを認識する。エピトープを認識するT細胞は、エピトープに対する応答における抗原刺激されたT細胞による3Hチミジン取り込み(Burkeら, 1994)によって、抗原依存性細胞死滅(細胞傷害性Tリンパ球アッセイ、Tiggesら, 1996)によって、またはサイトカイン分泌によって測定されるような、抗原依存性増殖を測定するインビトロアッセイによって同定され得る。細胞性免疫学的応答の存在は、増殖アッセイ(CD4+ T細胞)またはCTL(細胞傷害性Tリンパ球)アッセイによって測定され得る。
【0135】
本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、「抗体」または「免疫グロブリン」という用語は、交換可能に使用され、動物またはレシピエントの免疫応答の一部として機能するいくつかの種類の構造的に関連するタンパク質のいずれをも指し、これらのタンパク質には、IgG、IgD、IgE、IgA、IgMおよび関連タンパク質が含まれる。
【0136】
任意で、自己抗原または好ましくは自己抗原のエピトープは、MHCおよびMHC関連タンパク質などの他のタンパク質に化学的に結合され得るか、またはこれらとの融合タンパク質として発現され得る。
【0137】
本明細書において使用される場合、「免疫原性因子」または「免疫原」または「抗原」という用語は、交換可能に使用され、単独で、アジュバントと併用して、またはディスプレイビヒクル上に提示された状態で、レシピエントへの投与時にそれ自体に対する免疫学的応答を誘導することができる分子を記述する。
【0138】
C.治療方法
本発明の方法は、1つまたは複数の自己抗原によって引き起こされる疾患または状態についての治療を含む。本発明の免疫原性ポリペプチドは、自己免疫状態または疾患を有するか、有すると疑われるか、または発症する危険性がある人において免疫応答を誘導または改変するために与えられ得る。自己反応性について検査で陽性となったかまたはこのような状態または関連状態を発症する危険性があるとみなされる個体に関して、方法が使用され得る。
【0139】
IV.診断および治療の標的
本発明の態様は、多数の免疫介在性疾患または自己免疫疾患、例えば、糖尿病、移植片拒絶などを治療または改善するために使用され得る。「自己免疫疾患」には、個体自身の組織または器官から生じこれらに向けられた疾患または障害、またはそれらの症状発現、またはそれらから生じる状態が含まれる。一態様において、それは、正常な体組織および抗原と反応性であるT細胞による産生から生じるか、これによって悪化する状態を指す。自己免疫疾患または障害の例には、以下が含まれるが、これらに限定されない:関節炎(関節リウマチ、例えば、急性関節炎、慢性関節リウマチ、痛風もしくは痛風性関節炎、急性痛風性関節炎、急性免疫学的関節炎、慢性炎症性関節炎、変形性関節炎、II型コラーゲン誘導関節炎、感染性関節炎、ライム関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、および若年発症関節リウマチ、変形性関節症、進行性慢性関節炎(arthritis chronica progrediente)、変形性関節炎、原発性慢性多発性関節炎(polyarthritis chronica primaria)、反応性関節炎、および強直性脊椎炎)、炎症性過剰増殖性皮膚疾患、乾癬、例えば、尋常性乾癬(plaque psoriasis)、滴状乾癬、膿疱性乾癬、および爪の乾癬、アトピー、例えば、アトピー性疾患、例えば、枯草熱およびヨブ症候群、皮膚炎、例えば、接触皮膚炎、慢性接触皮膚炎、剥脱性皮膚炎、アレルギー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、疱疹状皮膚炎、貨幣状皮膚炎、脂漏性皮膚炎、非特異的皮膚炎、一次刺激性接触皮膚炎、およびアトピー性皮膚炎、x連鎖性高IgM症候群、アレルギー性眼内炎症性疾患、じんま疹、例えば、慢性アレルギー性じんま疹および慢性特発性じんま疹、例えば、慢性自己免疫性じんま疹、筋炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、若年性皮膚筋炎、中毒性表皮壊死症、強皮症(全身性強皮症を含む)、硬化症、例えば、全身性硬化症、多発性硬化症(MS)、例えば、脊椎−眼(spino-optical)MS、原発性進行性MS(PPMS)、および再発性寛解MS(RRMS)、進行性全身性硬化症、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化症、播種性硬化症、失調性硬化症、視神経脊髄炎(NMO)、炎症性腸疾患(IBD)(例えばクローン病、自己免疫媒介性胃腸疾患、大腸炎、例えば、潰瘍性大腸炎、大腸性潰瘍、顕微鏡的大腸炎、コラーゲン蓄積大腸炎、ポリープ状大腸炎(colitis polyposa)、壊死性全腸炎、および全層性大腸炎、および自己免疫性炎症性腸疾患)、腸炎、壊疽性膿皮症、結節性紅斑、原発性硬化性胆管炎、呼吸窮迫症候群、例えば、成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、髄膜炎、葡萄膜の全部または一部の炎症、虹彩炎、脈絡膜炎、自己免疫性血液障害、リウマチ性脊椎炎、リウマチ性滑膜炎、遺伝性血管浮腫、髄膜炎におけるような脳神経損傷、妊娠性ヘルペス、妊娠性類天疱瘡、陰嚢掻痒(pruritis scroti)、自己免疫性早発性卵巣機能不全、自己免疫状態に起因する突発性聴覚消失、IgE媒介性疾患、例えば、アナフィラキシーならびにアレルギー性およびアトピー性鼻炎、脳炎、例えばラスマッセン脳炎ならびに辺縁および/または脳幹脳炎、ブドウ膜炎、例えば、前部ブドウ膜炎、急性前ブドウ膜炎、肉芽腫性ブドウ膜炎、非肉芽腫性ブドウ膜炎、水晶体抗原性ブドウ膜炎、後部ブドウ膜炎、または自己免疫性ブドウ膜炎、ネフローゼ症候群を有するまたは有さない糸球体腎炎(GN)、例えば、慢性または急性糸球体腎炎、例えば、原発性GN、免疫介在性GN、膜性GN(膜性腎症)、特発性膜性GNまたは特発性膜性腎症、I型およびII型を含む膜又は膜性増殖性GN(MPGN)、および急速進行性GN、増殖性腎炎、自己免疫性多腺性内分泌腺不全症、亀頭炎、例えば、形質細胞亀頭炎、亀頭包皮炎、遠心性環状紅斑、色素異常性固定性紅斑、多形性紅斑(eythema multiform)、環状肉芽腫、光沢苔癬、硬化性萎縮性苔癬、慢性単純性苔癬、棘状苔癬、扁平苔癬、葉状魚鱗癬、表皮剥離性角質増殖症、前悪性角化症、壊疽性膿皮症、アレルギー状態および応答、アレルギー反応、湿疹、例えば、アレルギー性またはアトピー性湿疹、皮脂欠乏性湿疹、異汗性湿疹、および小胞状掌蹠(vesicular palmoplantar)湿疹、喘息、例えば、喘息気管支炎(asthma bronchiale)、気管支喘息および自己免疫性喘息、T細胞の浸潤を伴う状態および慢性炎症応答、妊娠中の胎児A-B-O血液型などの外来抗原に対する免疫反応、慢性肺炎症性疾患、自己免疫性心筋炎、白血球接着不全症、狼瘡、例えば、ループス腎炎、ループス脳炎、小児ループス、非腎性ループス、腎外ループス、円板状ループス、円板状ループスエリテマトーデス、脱毛症ループス、全身性エリテマトーデス(SLE)、例えば、皮膚SLE、または亜急性皮膚SLE、新生児期ループス症候群(NLE)、および播種性紅斑性狼瘡、若年発症(I型)真正糖尿病、例えば、小児インシュリン依存性真正糖尿病(IDDM)、および成人発症型真正糖尿病(II型糖尿病)。以下も考えられる:サイトカインおよびTリンパ球によって媒介される急性および遅延型過敏症に関連する免疫応答、肉芽腫症、例えば、リンパ腫様肉芽腫症、ヴェーゲナー肉芽腫症、顆粒球減少症、脈管炎、例えば、脈管炎、大型脈管炎(リウマチ性多発性筋痛および巨細胞(高安)動脈炎を含む)、中型脈管炎(川崎病および結節性多発性動脈炎/結節性動脈周囲炎を含む)、顕微鏡的多発性動脈炎、免疫脈管炎(immunovasculitis)CNS脈管炎、皮膚脈管炎、過敏性脈管炎、壊死性脈管炎、例えば、全身性壊死性脈管炎、およびANCA関連脈管炎、例えば、チャーグ−ストラウス脈管炎または症候群(CSS)およびANCA関連小型脈管炎、側頭動脈炎、再生不良性貧血、自己免疫性再生不良性貧血、クームズ陽性貧血、ダイアモンドブラックファン貧血、溶血性貧血、または免疫性溶血性貧血、例えば、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、アジソン病、免疫性好中球減少症、汎血球減少症、白血球減少症、白血球漏出を伴う疾患、CNS炎症性障害、アルツハイマー病、パーキンソン病、多臓器損傷症候群、例えば、敗血症、外傷または出血に続発するもの、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜病、抗リン脂質抗体症候群、アレルギー性神経炎、ベーチェット病/症候群、キャッスルマン症候群、グッドパスチャー症候群、レーノー症候群、シェーグレン症候群、スティーヴンズ−ジョンソン症候群、類天疱瘡、例えば、水疱性類天疱瘡および皮膚類天疱瘡、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、天疱瘡粘膜類天疱瘡(pemphigus mucusmembrane pemphigoid)、および紅斑性天疱瘡を含む)、自己免疫性多発性内分泌腺症、ライター病または症候群、熱傷、子癇前症、免疫複合体障害、例えば、免疫複合体腎炎、抗体媒介性腎炎、多発性神経障害、慢性神経障害、例えば、IgM多発性神経障害またはIgM媒介性神経障害、自己免疫性または免疫介在性血小板減少症、例えば、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、例えば、慢性または急性ITP、強膜炎、例えば、特発性角膜強膜炎、上強膜炎、精巣および卵巣の自己免疫疾患、例えば、自己免疫性精巣炎および卵巣炎、原発性甲状腺機能低下症、副甲状腺機能低下症、自己免疫性内分泌疾患、例えば、甲状腺炎、例えば、自己免疫性甲状腺炎、橋本病、慢性甲状腺炎(橋本甲状腺炎)、または亜急性甲状腺炎、自己免疫性甲状腺疾患、特発性甲状腺機能低下症、グレーヴズ病、多腺性症候群、例えば、自己免疫性多腺性症候群(または多腺性内分泌障害症候群)、新生物随伴症候群、例えば、神経学的新生物随伴症候群、例えば、ランバート−イートン筋無力症症候群またはイートン−ランバート症候群、スティッフマンまたはスティッフパーソン症候群、脳脊髄炎、例えば、アレルギー性脳脊髄炎または脳脊髄炎アレルギア(allergica)および実験的アレルギー性脳脊髄炎(EAE)、重症筋無力症、例えば、胸腺腫関連重症筋無力症、小脳変性症、神経性筋強直症、眼球クローヌスまたはオプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(OMS)、および感覚性ニューロパシー、多巣性運動神経障害、シーハン症候群、自己免疫性肝炎、慢性肝炎、ルポイド肝炎、巨細胞性肝炎、慢性活動性肝炎または自己免疫性慢性活動性肝炎、リンパ球性間質性肺炎(LIP)、閉塞性細気管支炎(非移植片)vs NSIP、ギラン−バレー症候群、ベルガー病(IgA腎症)、特発性IgA腎症、線状IgA皮膚病、急性熱性好中球性皮膚症、角層下膿疱性皮膚炎、一過性棘融解性皮膚症、肝硬変、例えば、原発性胆汁性肝硬変および肺性肝硬変(pneumonocirrhosis)、自己免疫性腸症症候群、セリアックまたはコエリアック(Coeliac)病、セリアックスプルー(グルテン性腸症)、難治性スプルー、特発性スプルー、クリオグロブリン血症、筋萎縮性(amylotrophic)側索硬化症(ALS;ルー・ゲーリグ病)、冠状動脈疾患、自己免疫性耳疾患、例えば、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性聴覚消失、多発性軟骨炎、例えば、難治性または再発または再発性多発性軟骨炎、肺胞タンパク症、コーガン症候群/非梅毒性角膜実質炎、ベル麻痺、スウィート病/症候群、酒さ性自己免疫、帯状疱疹関連疼痛、アミロイドーシス、非癌性リンパ球増加症、原発性リンパ球増加症、例えば、モノクローナルB細胞リンパ球増加症(例えば、良性モノクローナル高ガンマグロブリン血症および意義不明のモノクローナル高ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance)、MGUS)、末梢性ニューロパシー、新生物随伴症候群、チャネル病、例えば、てんかん、片頭痛、不整脈、筋肉障害、難聴、盲、周期性四肢麻痺、およびCNSのチャネル病、自閉症、炎症性ミオパシー、巣状もしくは分節状または巣状分節状糸球体硬化(症)(FSGS)、内分泌性眼障害、ぶどう膜網膜炎、脈絡網膜炎、自己免疫性肝臓障害、線維筋痛症、多発性内分泌腺不全、シュミット症候群、副腎炎、胃萎縮症、初老期痴呆、脱髄疾患、例えば、自己免疫性脱髄疾患および慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、ドレスラー症候群、円形脱毛症(alopecia greata)、全脱毛症、CREST症候群(石灰沈着症、レーノー現象、食道運動障害、強指症、および毛細血管拡張症)、例えば、抗精子抗体による男性および女性の自己免疫性不妊症、混合結合組織病、シャーガス病、リウマチ熱、反復流産、農夫肺、多形性紅斑、心術後症候群、クッシング症候群、鳥飼育者肺、アレルギー性肉芽腫性血管炎、良性リンパ球性血管炎、アルポート症候群、肺胞炎、例えば、アレルギー性肺胞炎および線維化肺胞炎、間質性肺疾患、輸血反応、らい病、マラリア、寄生虫性疾患、例えば、リーシュマニア症、キパノソミアシス(kypanosomiasis)、住血吸虫症、回虫症、アスペルギルス症、サンプター症候群、キャプラン症候群、デング熱、心内膜炎、心内膜心筋線維症びまん性間質性肺線維症、間質性肺線維症、肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、眼内炎、持久性隆起性紅斑(erythema elevatum et diutinum)、胎児赤芽球症、好酸球性筋膜炎(eosinophilic faciitis)、シャルマン症候群、フェルティ症候群、フィラリア症(flariasis)、毛様体炎、例えば、慢性毛様体炎、異時性毛様体炎(heterochronic cyclitis)、虹彩毛様体炎(急性または慢性)、またはフックス毛様体炎、ヘーノホ−シェーンライン紫斑病、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、SCID、後天性免疫不全症候群(AIDS)、エコーウイルス感染症、セプシス、内毒素血症、膵臓炎、甲状腺中毒症(thyroxicosis)、パルボウイルス感染症、風疹ウイルス感染症、予防接種後症候群、先天性風疹感染症、エプスタイン−バーウイルス感染症、ムンプス、エヴァンズ症候群、自己免疫性性腺機能不全、シドナム舞踏病、連鎖球菌感染後腎炎、閉塞性血栓性血管炎(thromboangitis ubiterans)、甲状腺中毒症、脊髄癆、脈絡膜炎(chorioiditis)、巨細胞性多発筋痛(gianT cell polymyalgia)、慢性過敏性肺炎、乾性角結膜炎、流行性角結膜炎、特発性腎炎症候群、微小変化ネフロパシー、良性家族性および虚血−再灌流障害、移植器官再灌流、網膜自己免疫、関節炎症、気管支炎、慢性閉塞性気道/肺疾患、珪肺症、アフタ、アフタ性口内炎、動脈硬化性障害、アスペルニオゲニーズ(asperniogenese)、自己免疫性溶血、ベック病、クリオグロブリン血症、デュプュイトラン拘縮、水晶体過敏性眼内炎(endophthalmia phacoanaphylac
tica)、アレルギー性腸炎(enteritis allergica)、らい性結節性紅斑、特発性顔面神経麻痺、慢性疲労症候群、リウマチ熱(febris rheumatica)、ハマン−リッチ病、感音難聴(sensoneural hearing loss)、血色素尿症発作(haemoglobinuria paroxysmatica)、性腺機能低下症、回腸炎レジオナリス(regionalis)、白血球減少症、単核細胞増加症感染(mononucleosis infectiosa)、横移動脊髄炎、原発性特発性粘液水腫、ネフローゼ、交感神経眼炎(ophthalmia symphatica)、精巣炎肉芽腫症、膵炎、急性多発性神経根炎、壊疽性膿皮症、ケルヴァン甲状腺炎、後天性脾臓萎縮、非悪性胸腺腫、白斑、毒素性ショック症候群、食中毒、T細胞の浸潤を伴う状態、白血球接着不全症、サイトカインおよびTリンパ球に媒介される急性及び遅発性過敏症関連免疫応答、白血球血管外遊出を伴う疾患、多器官損傷症候群、抗原−抗体複合体媒介性疾患、抗糸球体基底膜疾患、アレルギー性神経炎、自己免疫多腺性内分泌障害、卵巣炎、原発性粘液水腫、自己免疫萎縮性胃炎、交感性眼炎、リウマチ性疾患、混合性結合組織病、ネフローゼ症候群、膵島炎、多内分泌性不全、自己免疫性多腺性症候群I型、成人発症型特発性副甲状腺機能低下症(AOIH)、心筋症、例えば、拡張型心筋症、後天性表皮水疱症(EBA)、ヘモクロマトーシス、心筋炎、ネフローゼ症候群、原発性硬化性胆管炎、化膿性または非化膿性副鼻腔炎、急性または慢性副鼻腔炎、篩骨、正面、上顎骨または蝶形骨副鼻腔炎、好酸球性関連疾患、例えば、好酸球増加症、肺浸潤好酸球増加症、好酸球増加症−筋肉痛症候群、レフラー症候群、慢性好酸性肺炎、熱帯肺好酸球増加症、気管支肺炎アスペルギルス症、アスペルギローム、または好酸球性を含有する肉芽腫、アナフィラキシー、血清陰性脊椎関節炎疹(seronegative spondyloarthritides)、多内分泌性自己免疫性疾患、硬化性胆管炎、強膜、上強膜、慢性皮膚粘膜カンジダ症、ブラットン症候群、乳児期の一過性低ガンマグロブリン血症、ウィスコット−アルドリッチ症候群、毛細毛細血管拡張性運動失調候群(ataxia telangiectasia syndrome)、血管拡張症、膠原病と関係する自己免疫障害、リウマチ、神経病学的疾患、リンパ節炎、血圧応答の低下、血管機能不全、組織損傷、心血管乏血、痛覚過敏、腎虚血、脳虚血、および脈管化を伴う疾患、アレルギー性過敏症疾患、糸球体腎炎、再灌流障害、虚血性再灌流障害、心筋または他の組織の再灌流障害、リンパ腫気管気管支炎、炎症性皮膚病、急性炎症性成分を有する皮膚病、急性化膿性髄膜炎、多臓器不全、水疱性疾患、腎皮質壊死、急性化膿性髄膜炎または他の中枢神経系炎症障害、眼および軌道(ocular and orbital)炎症障害、顆粒球輸血関連症候群、サイトカイン誘導性毒性、ナルコレプシー、急性の重篤な炎症、慢性難治性炎症、腎盂炎、動脈内過形成、消化性潰瘍、弁膜炎、ならびに、子宮内膜症。
【0140】
V.実施例
下記の実施例は、本発明の種々の態様を例示する目的のために提供され、決して本発明を限定する意図はない。当業者は、本発明は、目標を行いかつ記載の目的および利益、ならびにここに固有の目標、目的および利益を得るように十分に適合されることを容易に認識する。本発明の実施例、およびここに記載の方法は、目下、好ましい態様を代表し、例示的であって、本発明の範囲に対する限定として意図されない。特許請求の範囲によって定義される本発明の精神内に包含されるその中における変更および他の使用は、当業者に予想される。
【0141】
実施例1
ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子での処置によるT1Dの防護
NRP-V7/Kd単量体でコーティングされた超常磁性ナノ粒子での処置による糖尿病の防護。NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子がインビボで免疫寛容原性であるかどうかを調査するために、8.3-TCRトランスジェニックNODマウス(以下において8.3-NODまたはVα17.4+ TCR-TGマウスとも呼ばれる)を、少量の粒子の数回の静脈内注射で処置した(3日毎に1回、0.6 μgのNRP-V7を含む5μl)。これらのマウスのトランスジェニック高アビディティIGRP206-214反応性脾臓CD8+ T細胞プールは、3用量で有意に枯渇した(脾臓CD8:CD4比は約4から約1へ低下した)(図1A)。除去されなかった僅かなCD8+ T細胞が、CD44発現を評価することによって測定される活性前のサインを示し(図1B)、インビトロでの抗原性刺激に対して低応答性であり、このことは、それらが処置によってアネルギー化されたことを示唆している(図1C)。
【0142】
「多重化」の有効性を研究するために、常磁性ビーズ(ここで「ビーズ」、「ナノ粒子」、または「np」と呼ばれる)を6つの異なるペプチド/MHC単量体でコーティングした。野生型NODマウスの群を、これらのビーズのプール、対照ペプチド(TUM)/Kdでコーティングされたビーズ、またはNRP-V7/Kdでコーティングされたビーズで処置した(NRP-V7と同様に、NRP-V7/Kdでコーティングされたビーズは、糖尿病からの防護をもたらすことなく(Hanら, 2005)、全IGRP206-214反応性プールを除去すると予想された)。驚くべきことに、コーティングされていないビーズ、アビジン-ビオチン-コーティングされたビーズ(ここで、「ビオチン-np」と呼ばれる)、TUM/KdコーティングされたビーズまたはNRP-V7ペプチド単独(Hanら 2005)で処置したマウスとは異なり、NRP-V7/Kdコーティングビーズで処置された(2〜3週に1回)NODマウスは、T1Dから非常に防護された(図2)。
【0143】
NRP-V7/Kd単量体でコーティングされた超常磁性ナノ粒子での処置による低アビディティクロノタイプの全身的増大。放射能標識されたビーズを使用する研究によって、単回注射の24時間内のそれらの組織分布は、それらの小さなサイズから予想されるように、調べた全ての年齢で、全身的であったことが示された(図3)。処置したマウスの血清中のいくつかのサイトカインおよびケモカインのレベルの測定によって、np処置は、「サイトカインストーム」(即ち、NRP-V7反応性CD8+ T細胞を含む、多様な免疫細胞タイプの刺激から生じる増加された血清濃度のサイトカイン)を誘導しなかったことがさらに示された(図4)。
【0144】
しかし、最も興味深いことには、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズで処置されたマウスは、対照ナノ粒子で治療された年齢を適合させた非糖尿病動物と比較して、追跡期間の終わりに(32週)、循環および膵島内NRP-V7/Kd四量体+ CD8+細胞のプールを有意に増加させた(図5A)。特に、NRP-V7/Kdナノ粒子処置マウスの膵島内CD8+ T細胞は、対照マウスの膵島において見られたものよりも有意に低いアビディティ(より高いKd)で、NRP-V7/Kd四量体に結合し、このことは、ナノ粒子処置は、それらの病原性高アビディティ相当物を犠牲にしての非病原性低アビディティクロノタイプの増大を促進したことを示唆している(図5B)。より低い用量で処置されたマウスは、糖尿病からの防護がはるかに少なく(図5C)、膵島および脾臓においてより少ないパーセンテージの四量体+ CD8+ T細胞を有した(図5D、データは示さず)ことから、これらの効果は用量依存性であった。さらに、10連続用量のナノ粒子を受容したマウス(10週齢で開始し2回/週)は、4用量のみを受容したもの(これも10週齢で開始;図5E)よりも有意に高いパーセンテージの循環四量体+ CD8+ T細胞を有したことから、各用量の効果は累積的であると考えられる。
【0145】
上記の結果は、NRP-V7/K/Kdコーティングされたnpは、NRP-V7反応性CD8+ T細胞によって(それらのTCRを介して)特異的に認識され取り込まれたことを示唆した。これを調べるために、本発明者らは、トランスジェニックNRP-V7反応性TCRを発現するNODマウスの種々の脾細胞亜集団におけるならびに野生型の非トランスジェニックNODマウスにおける緑色蛍光(ペプチド-MHC np複合体のアビジン分子に結合した)の存在を評価した。NRP-V7/Kd np注射の24〜40時間内で、緑色蛍光は、TCRトランスジェニックマウスのCD8+ T細胞サブセットにおいて(図6A)、および、遥かにより少ない程度で、非トランスジェニックマウスのCD8+ T細胞サブセットにおいて(図6B)、検出され得ただけであった。緑色蛍光の検出可能な蓄積は、いずれのタイプのマウスの脾臓CD4+ T、B、CD11b+、またはCD11c+細胞サブセットにおいても検出され得なかった(図6Aおよび6B)。
【0146】
サブドミナントな自己抗原性ペプチド/MHC(DMK138-146/Db)複合体でコーティングされた超常磁性ナノ粒子の抗糖尿病誘発性特性。本発明者らは、上記の治療手段の防護効果がNRP-V7反応性CD8+ T細胞(NODマウスにおける一般的な自己反応性T細胞サブセット)の特有性であるかどうか、または他のよりドミナントでない自己抗原性特異性に適用可能な現象であるかどうかを調べた。このために、Dbによって提示されかつ糖尿病誘発性自己反応性CD8+ T細胞の遥かにより少ないプールによって標的化される別の自己抗原に由来するペプチド(筋緊張性ジストロフィーキナーゼ;DMKの残基138-146;ここで、「DMK138-146/Db」と呼ばれる)(Liebermanら, 2004)でコーティングされたビーズで、マウスを処置した。NRP-V7/Kd複合体でコーティングされたナノ粒子でそうであったように、DMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子でのNODマウスの処置は、循環、脾臓および膵島内DMK138-146/Db反応性CD8+ T細胞の有意な増大を引き起こし(図7A)、糖尿病からの有意な防護をもたらした(図7B)。DMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子は、NRP-V7反応性CD8+ T細胞を増大させず(図7C)、NRP-V7/Kdがコーティングされたナノ粒子は、DMK138-146/Db反応性T細胞を増大させなかった(図7D)ことから、インビボでのT細胞増大は抗原特異的である。図7Eは、代表的なFACS染色プロフィールを示す。
【0147】
NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスにおける膵島に対しての他のIGRP-自己反応性CD8+ T細胞特異性の動員の阻害。次に、本発明者らは、APL処置動物においてそうであったように(Hanら, 2005)、ナノ粒子増大した低アビディティNRP-V7および/またはDMK138-146/Db反応性CD8+ T細胞の動員が、膵島に対する他のβ細胞自己反応性T細胞特異性の動員を阻害するかどうかを調べた。これを、対照、NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbがコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの膵島関連CD8+ T細胞の応答性を、一団の76個の異なるIGRPエピトープならびにDMK138-146に対して比較することによって行った。予想されるように、それらが増加された頻度のNRP-V7またはDMK138-146/Db反応性クロノタイプを含有した場合、NRP-V7/KdコーティングされたおよびDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの膵島関連CD8+ T細胞は、対照マウスから単離されたものよりも、それぞれ、NRP-V7およびDMK138-146に対する応答において有意により多くのIFN-γを産生した(図8)。特に、対照ナノ粒子で処置されたマウス由来のものと比べた場合、NRP-V7/KdまたはDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの膵島関連CD8+ T細胞による有意なIFN-γ応答を誘発することができるエピトープの数は有意に減少し、このことは、動員および/または蓄積の阻害を示唆している(表3)。
【0148】
(表3)対照ナノ粒子またはNRP-V7/KdもしくはDMK138-146/Db単量体でコーティングされたナノ粒子処置されたマウスにおける一団のIGRPエピトープに対する膵島関連CD8+ T細胞の反応性。
マウスに、4週齢から開始して、2〜3週毎に1回、ナノ粒子の1静脈内注射を受容させた。これらの試料は、処置の終了時でのマウス由来である(約32週齢)。膵島関連CD8+ T細胞を、ペプチドパルスされた抗原提示細胞に応答してのIFN-g産生についてアッセイし、陽性(>50 pg/ml)および陰性応答(<50 pg/ml)の数をカウントした。
【0149】
NRP-V7/KdおよびDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子は、新たに糖尿病のNODマウスにおいて高い割合の糖尿病寛解を誘導する。前糖尿病段階の間の処置の有効性は、新たに診断された糖尿病マウスにおいて正常血糖を回復させるナノ粒子療法の能力に対する研究を促進した。マウスの群を、血糖値について週に2回モニタリングし、≧10.5 mM血糖で高血糖性と見なした。TUM/Kdコーティングされたナノ粒子を受容するマウスまたはNRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子を受容するマウスへ(毎週2回注射)、マウスをランダムに分けた。β細胞ストレスを減少させかつβ細胞再生を促進するために、半単位の皮下インスリンもまた、毎日1回、糖尿を示すマウスへ提供した。マウスのさらなる群にDMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子を受容させた。異なる研究において可変パーセンテージの動物において安定な寛解を誘導することが示された、モノクローナル抗CD3抗体(5日間20μg/d)での処置を、陽性対照として使用した。図9Aおよび9Bに示されるように、NRP-V7/Kdコーティングされた粒子で処置した11匹のマウスうち9匹が処置の5〜12週内に正常血糖となった。治癒しなかった2匹のマウスは、それらの血糖値が>18 mM/lであったときに処置の最初の用量を受容した2匹だけであり、このことは、有効性は、限界量の残存β細胞の存在を必要とし得ることを示唆している。同様に、DMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置した11匹のマウスのうち8匹が正常血糖となり(図9Aおよび9C)、他の3匹は、長期間20 mMに達しない血糖の振動するレベルを示した(図9C)。対照的に、対照TUM/Kdコーティングされたナノ粒子を受容した9匹のマウスのうち1匹のみが明らかな高血糖へ進行しなかった(図9Aおよび9D)。図9Eは、ナノ粒子の各注射後のマウスの各グループにおける血糖の平均値を比較する。図9Fは、急性糖尿病マウスにおいてこれも正常血糖を回復させることができると以前に示された非抗原特異的免疫療法戦略である、抗CD3 mAbでの処置の結果を示しており(陽性対照グループ);6匹のマウスのうち4匹が正常血糖となった。まとめると、これらの結果は、抗原特異的ナノ粒子療法アプローチの有効性が、マウスおよび最近になってヒト糖尿病患者において成功した非抗原特異的アプローチ(Keymeulenら, 2005;Heroldら, 2002)のそれに匹敵することを示唆している。
【0150】
前糖尿病動物において見られたように、糖尿病マウスおいて処置の効果が長続きするかどうかを調べるために、処置を、正常血糖の連続4週後に中止し、糖尿病再発についてマウスを追跡した。循環四量体陽性プールのサイズに対する処置の効果を、処置中止、4週間後、および再発性高血糖時で評価した。予想通りに、処置停止の4週間後、循環四量体反応性T細胞プールのサイズが減少し(図10A)、恐らくはその結果として、治癒された糖尿病マウスの約30〜45%が、4〜14週後に、再発性高血糖を発症した(図10Bおよび10C)。これは、内因性自己抗原(即ち、前糖尿病動物における)によるまたはナノ粒子のブースター注射(即ち、激しく減少されたβ細胞質量を有する糖尿病動物における)による、増大した低アビディティ自己反応性T細胞プールの再活性化が、長期防護のために必要とされ得ることを示唆した。同様の結果が、DMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスにおいて得られた(図10A、10B、および10D)。
【0151】
治癒マウス対糖尿病および非糖尿病未処置マウスにおける腹腔内ブドウ糖負荷試験(IPGTT)によって、前者は、非糖尿病未処置動物によって示されるものとほぼ同一でありかつ糖尿病のマウスに対応するものよりも有意により良い耐糖能曲線を有することが確認された(図11A)。さらに、治癒動物は、非糖尿病未処置マウスにおいて見られたものに統計的に匹敵し、かつ糖尿病未処置動物に対応するものよりも有意に高い食後血清インスリンレベルを有した(図11B)。これらのデータと一致して、NRP-V7/Kd-npおよびDMK138-146/Db-np処置マウスのIPGTT血清インスリンレベルは、非糖尿病マウスのものと類似し、糖尿病未処置動物のものよりも有意に良かった(図11C)。治癒動物は、年齢を適合させた非糖尿病未処置マウスのそれと比べて、50週齢で正常な体重を有した(高血糖の逆転後>25週)(図11D)。
【0152】
ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、高アビディティおよび低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞を効果的に「識別する」ことができる。大抵のIGRP206-214反応性CD8+細胞は、CDR3不変Vα17-Jα42鎖を使用するが、異種VDJβ鎖を使用しない。糖尿病発症の間のこのT細胞サブセットの「アビディティ成熟」は、3つの異なるVα17エレメントの使用の変化に関連する。これらの3つの異なるVαエレメントはリガンド結合アビディティで相違している(Vα17.5>Vα17.4>Vα17.6)ことが、単一TCRβ鎖との関連において3つの異なるCDR3不変Vα17-Jα42鎖を発現するTCRαβトランスフェクタントの研究において確認された(Hanら, 2005)。ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子が、異なるアビディティを有するリガンド認識T細胞を実際に差別的に標的化し得るかどうかを調べるために、これらのトランスフェクタント上のCD8分子の「キャッピング」を誘導するNRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子の能力を評価した。60%超のVα17.5+細胞、しかし20%未満のVα17.4+またはVα17.6+細胞が、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズと5分間の共インキュベーションによってキャップを形成させた。30分以内に、キャップを有するVα17.4+細胞のパーセンテージは、Vα17.5+細胞について見られたものに近づいたが、この数は、Vα17.6+細胞については20%未満のままであった(図12)。これらの結果は、NRP-V7/Kdコーティングされたビーズは、高アビディティおよび低アビディティT細胞を実際に識別し得ることを実証しており、これらのナノ粒子がナイーブな高アビディティクロノタイプを優先的に除去することについての説明を提供している。しかし、それらは、これらの粒子が低アビディティクロノタイプを増大させる理由を、特に、(ナノ粒子上のペプチド/MHCによる)補助刺激の非存在下でのTCR連結はまた低アビディティクロノタイプを増大させるのではなく除去すると予想されると見なされる場合、説明していない。
【0153】
低親和性Vα17.6/8.3β TCRを発現するCD8+細胞は抗糖尿病誘発性である。低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞がインビボで抗糖尿病誘発性特性を有するかどうかを調べるために、低親和性IGRP206-214反応性Vα17.6/8.3β TCRを、NODマウスにおいて遺伝子導入により発現させた(本明細書において「Vα17.6+」と呼ばれる;これは、8.3-TCR(Vα17.4+)よりも約10倍低い親和性を有する;TeytonおよびSantamaria、未公開データ)。このTCRは、CD8+細胞の正の選択を促進するが、8.3-TCR(Vα17.4+)よりも明らかにより少なく促進することが示された(Han ら, 2005)。結果として、Vα17.6+ TCR-TGマウスは、Vα17.4+ TCR-TGマウスよりも少ないNRP-V7四量体反応性CD8+胸腺細胞および脾細胞を含有する。さらに、Vα17.6+ TCR-TGマウス由来の四量体+(高および低)CD8+細胞は、インビトロでのペプチド刺激時に、Vα17.4+ TCR-TGマウスに由来するものよりも少ないIFN-γ(およびIL-2)を分泌し、リガンドについてのそれらの低アビディティと適合な、NRP-V7パルスされたRMA-SKd標的の非効率的なキラーである(Hanら, 2005;データは示さず)。最も重要なことには、これらのマウスは、糖尿病(70匹の雌のうち2匹のみがT1Dを発症した)および膵島炎からほぼ完全に防護される[それぞれ、Vα17.6+対Vα17.4+ TCR-TGマウスにおいて、<0.4対>3のスコア(最大値4のうち)(P<0.012)](図13Aおよび図13B)。
【0154】
これは、LCMVエピトープを認識する無関係の非自己反応性TCRを発現するNODマウス(LCMV TCR-TG NODマウス)において生じるものと全く対照的である。Serrezeら (2001)によって以前報告され、本明細書における使用によって確認されたように、これらのマウスは、野生型NODマウスと本質的に同様にT1Dを発症し、膵島へ内因性IGRP206-214反応性CD8+細胞を動員する(Vα17.6+ TCR-TGマウスの膵島においては完全に存在しない)(図13C)。従って、Vα17.4+およびLCMV TCR(それぞれ、糖尿病誘発活性型および中性)とは異なり、Vα17.6+ TCRは、抗糖尿病誘発性特性を有すると考えられる。
【0155】
これらのVα17.6+ TCR-TGマウスの大抵のTG T細胞は四量体に弱く結合するかまたは全く結合しないという事実にもかかわらず、胸腺を出て行く細胞のフラクションは、見かけ上高いアビディティで(即ち、高mfiで)四量体に結合する(図14A)。本発明者らは、これらのマウスの四量体-low(lo)および四量体-陰性CD8+ T細胞は、TG TCRを発現するCD4+CD8+胸腺細胞から生じるが、内因性TCR(即ち、TCRα鎖)において正の選択を経るのではないかと考えた。他方で、四量体-hi細胞は、TG TCRαβ鎖のみを発現するCD4+CD8+胸腺細胞から生じ、ペプチド/MHCについてのそれらの低い親和性のために、それらが通常よりも高いレベルのTG TCRを発現する場合、正の選択のみを経る可能性がある。この解釈は、RAG-2-/-バックグラウンドにおいてVα17.6+ TCRを発現するマウスにおいて、成熟細胞のみが、高アビディティで四量体に結合するという観察によって支持される(図14B)。重要なことに、これら2タイプのRAG-2-/- TCR-TGマウスは、同様の発生率で糖尿病を発症する(図15)。従って、本発明者らは、RAG-2+ Vα17.6 TCR-TGマウスにおいて成熟する四量体-loおよび四量体- CD8+ T細胞は、それらの四量体-hi相当物(これは、RAG-/-TCR-TGマウスにおいて糖尿病を引き起こす)の糖尿病誘発性ポテンシャルを阻害するのではないかと考える。これらの結果は、内因性(即ち、非トランスジェニック)TCRα鎖の発現を動員する内因性TCR-Cα欠損を有するVα17.6 TCR-TGマウスの株において再現された(図16Aおよび16B)。
【0156】
Vα17.6+(しかしVα17.4+ではない)TCR-TGマウスは、免疫抑制性活性を有する記憶CD8+細胞のプールを自然に生じる。Vα17.6+ TCR-TGマウスおよびTCR-Cα欠損Vα17.6 TCR-TGマウスの種々のリンパ系器官中に含有される四量体陽性CD8+ T細胞の細胞蛍光測定研究によって、脾臓、リンパ節、および、特に、記憶T細胞の公知のリザーバである骨髄における、Vα17.4+ TCR-TG マウスと比べてのCD44hiおよびCD44hiCD122+ CD8+細胞の拡張されたプールの存在が明らかとなった(図17Aおよび17B)。重要なことには、これは、CD122+細胞を含有しない四量体-highサブセットにおいてではなく、主に四量体-lowにおいて生じる(図17C)。これらの細胞は、セントラルおよびエフェクター記憶リンパ球の両方において示されるマーカーを発現し(図17D)、胸腺ではなく末梢リンパ系器官において主として見られ、このことは、末梢起源を示唆している(図17E)。さらに、BrdU取り込みアッセイは、それらがインビボで増殖することを示唆した(図17F)。精製された脾臓 Vα17.6+(しかしVα17.4+ではない)TCR-TG CD8+ 細胞は、APCおよび抗原の非存在下においてIL-2またはIL-15に応答して激しく増殖することから、機能的において、これらの記憶様細胞は、明らかに「記憶」T細胞として振る舞う(図17G)。さらに、それらは、インビトロにおける抗原での刺激でIFN-γを迅速に産生する(図17Hおよび17I)。しかし、それらは、インビトロでの抗原刺激でインターロイキン-2を増殖も産生もしない(図17J)。この機能的プロフィールは、調節性(抑制性)CD4+CD25+ T細胞サブセットのそれと非常に似ている。総合すると、これらのデータは、Vα17.6+(しかしVα17.4+ではない)TCR-TG CD8+細胞は、抗原の非存在下であってさえ、恒常性のキュー(cue)に応答して無期限に生存することが恐らく可能である、(1つまたは複数の抗原遭遇時に)長寿命記憶T細胞となる増加した能力を有することを示唆している。
【0157】
これらの観察によって、本発明者らは、そうでなければβ細胞を死滅させることができない、これらの低アビディティ記憶T細胞の優れた恒常性「適合性」は、それらの抗糖尿病誘発性活性に(即ち、それらのより高いアビディティ、しかし大抵はナイーブ、β細胞キラークロノタイプに優る競合的利点を与えることによって、および/またはそれらの活性を阻害することによって)寄与するのではないかと考えるようになった。後者を評価するために、精製CD122+およびCD122-Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞の能力を、Vα17.4+ TCR-TG NODマウス由来のCFSE標識された脾臓CD8+ T細胞の増殖を阻害するそれらの能力について評価した。図18に示されるように、CD122+(しかしCD122-ではない)Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞は、それらのより高いアビディティのナイーブT細胞相当物の増殖をほぼ完全に阻害した。
【0158】
Vα17.6+ TCR-TG NODマウス中における低アビディティ記憶(CD122+)自己反応性CD8+ T細胞の自然に増大したプールは抗糖尿病誘発性であるという考えに一致して、NRP-V7パルスされたDC、CD40に対するアゴニスト性mAb、または4-1BBに対するアゴニスト性mAb(CD8+ T細胞活性化/生存を増強するため)でのVα17.6+およびVα17.4+ TCR-TGマウスの全身(静脈内)処置は、Vα17.4+ TCR-TG NODマウスにおいて糖尿病の迅速な発症を誘導したが、Vα17.6+ TCR-TGマウスにおいて疾患を誘発することができなかった(表4)。
【0159】
(表4)記憶T細胞の発達および増大を促進する処置は、17.4a/8.3b-TG NODマウスにおいて糖尿病の急性発症を促進するが、17.6a/8.3b-TG NODマウスにおいては促進しない。
3〜4日間隔で抗CD40 mAbまたは抗4-1BB mAb 100μgの腹腔内3回注射
100μg/ml NRP-V7がパルスされた106 LPS活性化骨髄由来DCの2回注射
最後の注射後少なくとも8週間、糖尿病についてマウスを追跡した
【0160】
コグネイトおよび非コグネイト糖尿病誘発性T細胞応答(即ち、これらの抑制性T細胞の標的自己抗原性ペプチド−IGRP206-214−ではない自己抗原性ペプチドに対して向けられる)を抑制するCD122+ Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞の能力から、本発明者らは、それらは、抗原提示細胞(APC)を標的化することによって抑制活性を発揮し得るのではないかと考えるようになった。ペプチドパルスされたDCを標的細胞として、CD122+またはCD122- Vα17.6+およびCD122- Vα17.4+ TCR-TG CD8+ T細胞をエフェクターとして使用する細胞傷害性(51クロム放出)アッセイによって、後者ではなく前者が、NRP-V7パルスされたDCをインビトロで特異的に溶解させることができることが示された(図19A)。本発明者らは、これはインビボでも真実であることを確認した。NRP-V7パルスされたおよびTUMパルスされた同数のB細胞(それぞれ、低および高濃度の色素CFSEで標識)を、Vα17.6+ TCR-TGおよびVα17.4+ TCR-TGマウスへ注入し、1日後に前記ホストを屠殺し、どの細胞が移植で生き延びたかを調べた。図19Bに示されるように、ここで、NRP-V7パルスされたB細胞は、Vα17.4+ TCR-TGマウスにおいてのみ生き延び、陰性対照ペプチドTUMでパルスされたB細胞は、両方のTCR-TG株において生き延びた。B細胞ではなくDCをAPCとして使用した場合、事実上同一の結果が得られた(図19B)。これらのデータは、低アビディティCD122+ Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞は、自己抗原を負荷されたAPCを死滅させることによって、コグネイトおよび非コグネイト糖尿病誘発性T細胞応答を抑制することを示唆している。
【0161】
NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子は、野生型NODマウスにおいて低アビディティ(四量体-中間)記憶自己反応性CD8+細胞の増大を誘導する。Vα17.6+ TCR-TG NODマウスにおける上記の観察は、ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子で処置されたNODマウスにおいて見られたものと非常に似ている:高アビディティクロノタイプの消滅、ならびに低アビディティCD8+ T細胞の増大および動員、膵島への他のIGRPエピトープ反応性特異性の動員の阻害、ならびに糖尿病からの防護。
【0162】
野生型NODマウスにおけるビーズで増大されたCD8+ T細胞が長寿命低アビディティ記憶T細胞であるかどうかを評価するために、本発明者らは、NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子で処置されたマウスの脾臓および骨髄中に含有されるNRP-V7/Kd 四量体-陽性CD8+ T細胞中における記憶マーカー(CD44およびCD122)の存在を分析した。これらのマウスの脾臓および骨髄中に含有された四量体-陽性細胞の増大した集団は、特に骨髄中に、増加したパーセンテージのCD44hiおよびCD44hiCD122+ CD8+ T細胞を含有し(図20A)、このことは、NRP-V7/Kdナノ粒子処置が四量体+ CD44hiおよび四量体+ CD44hiCD122+ T細胞プールのサイズを増加させることを確認する。
【0163】
機能に関して、NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子でのインビボ療法によって増大する記憶様T細胞は、Vα17.6+ TCR-TGマウスにおいて自然に蓄積する記憶CD122+ Vα17.6+ TCR-TG CD8+ T細胞と同様に振る舞う:それらは、IL-2を産生することも増殖することもなく、しかしインビトロでの抗原刺激に応答して高レベルのIFN-γを産生する(図20B)。最も重要なことには、抗CD3 mAbおよびIL-2での活性化に際して、これらの記憶様T細胞は、インビトロで、CFSE標識されたレスポンダーVα17.4+ TCR-TG CD8+ T細胞の増殖を有効に抑制した(図20C)。CFSE標識されたレスポンダーVα17.4+ TCR-TG CD8+ T細胞はまた、DMK138-146/Dbコーティングされたナノ粒子での処置によって増大した記憶様T細胞の存在下において増殖しなかったことから、抑制は、単にペプチドについての競合に起因するものではない(図20D)。
【0164】
ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、既存の低アビディティ記憶T細胞を増大させる。複数の観察により、ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は新たに記憶T細胞を生じさせず、しかし記憶T細胞の既存のプールを増大させることが示唆されている:(i)TUM/Kdコーティングされたナノ粒子でのNODマウスの処置は、TUM反応性CD8+ T細胞(NODマウスにおいて発現されない、腫瘍特異的抗原を認識する;図21A)の全身における増大を誘導しなかった;(ii)NRP-V7/Kdコーティングされたナノ粒子での、糖尿病も膵島炎も発症していないB10.H2g7マウスの処置は、調べた全てのリンパ系器官においてNRP-V7/Kd四量体+ CD8+ T細胞サブセットの有意な増大を誘導しなかった(図21B);(iii)ナノ粒子処置NODマウスにおける四量体反応性CD8+ T細胞の全身における増大は、前糖尿病段階においてよりも糖尿病発症時に開始した場合に、有意により有効であった(図21C);ならびに(iv)補助刺激の非存在下ではTCR連結時にアポトーシスを受ける傾向にある、ナイーブCD8+ T細胞とは異なり、記憶CD8+ T細胞は、増殖について補助刺激とは無関係である。
【0165】
上記の仮説を正式に調べるために、本発明者らは、IGRP206-214/Kdコーティングされたナノ粒子が、IGRP206-214の2つのTCR接触残基がアラニンで置換されている(K209AおよびF213A)IGRPの突然変異体形態を発現する遺伝子標的化NOD株においてIGRP206-214/Kd反応性CD8+ T細胞を増大させ得るかどうかを求めた(図22A)。標的化された対立遺伝子(本明細書においてFLEX1またはNOD.IGRPK209A/F213AKI/KIと呼ばれる)を、スピードコンジェニックアプローチを使用して(129から)NODバックグラウンド上へ戻し交配し、全てのIdd座でのNOD対立遺伝子についてのホモ接合性を確実にした。これらの遺伝子標的化マウスにおいて成熟CD8+ T細胞はインビボでIGRP206-214へ曝露されないので、これらのマウスは、記憶IGRP206-214/Kd反応性CD8+ T細胞を自然に生じることができない。これらのマウスは糖尿病および膵島炎の両方を発症する(示さず)という事実にもかかわらず、それらの膵島関連CD8+ T細胞は、IGRPにおけるエピトープを認識し、しかし、IGRP206-214反応性CD8+クロノタイプを完全に欠いている。最も重要なことには、最適用量のIGRP206-214/Kdコーティングされた粒子で処置されたFLEX1-ホモ接合NODマウスは、それらのリンパ系器官中においてIGRP206-214/Kd反応性CD8+ T細胞の増大したプールを含有しなかった(図22B)。これらのデータは、ペプチド/MHCコーティングされたナノ粒子は、抑制特性を有する記憶T細胞の既存のプールを増大させ、記憶T細胞を新たに生じることができないという正式な証拠を提供している。
【0166】
低アビディティクロノタイプ(即ち、Vα17.6+ TCR-TGマウスにおける)は、糖尿病発症の間、それらの高アビディティ相当物(即ち、Vα17.4+ TCR-TGマウスにおける)よりも記憶T細胞子孫を生じさせることにおいてより有効であるようであるため、ペプチド/MHCコーティングされた粒子は、ナイーブ高アビディティクロノタイプの除去と既存の低アビディティ記憶クロノタイプの少ないプールの増大とを誘導することによって働くと結論付けられた。
【0167】
実施例2
ヒト1型糖尿病関連ペプチド/HLA複合体でコーティングされた酸化鉄ナノ粒子の正常血糖を回復する能力の試験
提案される研究に利用可能な、HLA導入遺伝子を発現する「ヒト化」マウスおよびペプチド/HLA複合体。上述したように、インスリンおよびIGRP由来のペプチドは、野生型NODマウスにおいてCD8+ T細胞の主要な標的である。糖尿病発症の間にこれら2つの自己抗原由来のペプチドを提示したヒトMHC分子(ヒト白血球抗原、HLA)の評価を、「ヒト化」HLA-トランスジェニックNODマウスにおいて調べている。研究は、最初、ある人種集団のほぼ50%によって発現されるMHC分子である、HLAA*0201に焦点を合わせた。この研究には、NOD.β2mnull.HHDと呼ばれる株を使用し、これは、マウスβ2ミクログロブリン遺伝子を欠いており、キメラ単鎖構築物HHDを発現する(Pascoloら, 1997)。この構築物は、ヒトHLA-A*0201のα1およびα2ドメインに共有結合されたヒトβ2m、ならびにマウスH-2Dbのα3、膜貫通、および細胞質ドメインをコードする。前記株はHLA-A*0201のみを発現し、内因性マウスクラスI MHC分子を発現しないが、それは、糖尿病感受性であり、雌の55%が30週齢までに罹患する(Takakiら, 2006)。HLA-A*0201に結合するヒトIGRPの2つのエピトープ(hIGRP228-236およびhIGRP265-273)は、これらのマウスの膵島関連CD8+ T細胞によって認識され、NOD.β2mnull.HHDマウスの膵島から単離されたCD8+ T細胞は、ヒトHLA-A*0201陽性膵島に対して細胞傷害性である(Takakiら, 2006)。ペプチド/HLA-A*0201四量体を、これらのペプチドのうちの1つを使用して作製した。マウスCD8分子によるこれらの四量体の結合を促進するために、HLA-A*0201複合体のα3(CD8結合性)ドメインを、マウスH-2Kb分子のドメインで置換した。これらの研究からの結果によって、ヒトT1Dに潜在的に関連するHLA-A*0201拘束T細胞およびβ細胞自己抗原の同定のためのこれらのマウスの有用性が確立された(Takakiら, 2006)。現在の開示に基づいて、T1D患者由来のHLA-A*0201拘束T細胞によって標的化されるヒトペプチドが同定され得る。さらに、本発明者らは、HLA-A*1101、HLA-B*0702、またはHLA-Cw*0304を発現するNODマウスを作製した。これらのマウスもまた、それらとNOD.β2mnull.hβ2m株(Hamilton-Williamsら, 2001)とを交配することによって、ヒトβ2mによって置換されたマウスβ2mを有する。3つのHLA導入遺伝子は全て十分に発現し、HLA-トランスジェニック株の3つは全て糖尿病感受性である。まとめると、これらの「ヒト化」動物由来のHLAは、4つの異なるHLAスーパータイプ、それぞれ、HLA-A2、HLA-A3、HLA-B7、およびHLA-C1を代表する(Sidneyら, 1996;Doytchinovaら, 2004)。HLA-A*1101、HLA-B*0702、またはHLA-Cw*0304対立遺伝子の遺伝子頻度は、調査された人種集団に依存して、それぞれ、23%、11%、または10%ほどであり得る(Caoら, 2001)。集団の範囲は、4つのスーパータイプの全てが標的化される場合、検討される人種集団に依存して、90%を超え得る(Sidneyら, 1996;Doytchinovaら, 2004;Caoら, 2001)。この検討は、ヒトへのこれらの研究の置き換えに関して有意である。これらの動物ならびに前述したNOD.β2mnull.HHD株は、さらなる研究に利用可能である。
【0168】
この実施例において、本発明者らは、野生型NODマウスにおけるこれらの観察を「ヒト化」HLA-トランスジェニックNODマウスに置き換える方法についての設計を提案する。目的は、ヒトT1Dに関連する自己反応性CD8+ T細胞のプールを標的化するいくつかの異なるペプチド/HLA複合体でコーティングされたナノ粒子での処置が、糖尿病からマウスを防護し得、それらの新たに診断された相当物において正常血糖を回復し得るかどうかを調べることである。本発明者らは、それぞれ、一般的なおよび一般的でない自己反応性CD8+ T細胞特異性によって標的化されるエピトープを提示するH-2KdまたはH-2Dd分子がコーティングされた少量のナノ粒子でのNODマウスの反復処置が、野生型NODマウスにおいてT1D発症を予防することができ、かつ、新たに診断された糖尿病のNODマウスにおいて正常血糖を回復させることができる、低アビディティ記憶自己反応性CD8+ T細胞のペプチド特異的増大を誘導することを示した。ここで、本発明者らは、ヒトT1Dにおける使用のために、T1D関連のペプチド/HLA組み合わせを同定するための置き換えアプローチを示す。具体的には、本発明者らは、種々のT1D関連の自己抗原性ペプチド/HLA-A*0201複合体でコーティングされたナノ粒子は、糖尿病からの防護をもたらし、NOD.β2mnull.HHDマウス(HLA-A*0201を発現する)におけるT1Dを治癒すると考える。当業者は、他の組成物および方法を含むための、膵島関連CD8+ T細胞への「ヒト化」HLA-トランスジェニックマウスにおいて他のHLA分子によって提示されたインスリンおよび/またはIGRPエピトープで使用されるものと同様の組成物および方法を使用して、他の自己免疫疾患に関連する他のエピトープでの使用について本開示を使用することができる。当業者は、最大治療利益をもたらす最小限の処置条件およびペプチド/HLA複合体のタイプ、ならびに、異なる人種集団における可能な限り多くの個人をカバーするさらなるペプチド/HLA組み合わせの同定および治療的成功のための低アビディティ記憶CD8+ T細胞の治療前の存在についての要件を同定することができる。
【0169】
ナノ粒子合成。ナノ粒子は、本質的には以前に記載されたように(Mooreら, 2004)、しかしビオチン化ペプチド/HLA-A*0201単量体を使用して、合成され、物理的および化学的レベルで特徴付けられる。複合体のMHC分子は、ヒトβ2ミクログロブリンおよびヒトHLA-A*0201のキメラ形態から構成され、ここで、そのα1およびα2ドメインはマウスH-2Kbのα3ドメインに融合されている(マウスCD8分子による認識を促進するため)。自己抗原性ペプチドとしていくつかの異なるインスリンおよびIGRP誘導体(例えば、hInsB10-18、hIGRP228-236およびhIGRP265-273)を使用し、これらは、HLA-A*0201との関連において膵島関連CD8+ T細胞によって認識されることが示された。ビオチン化ペプチド/HLA-A*0201単量体を、アビジン1モル当たりビオチン4モルのモル比で添加する。ビオチン化タンパク質を、穏やかに撹拌しながら(10 rpm)4℃で24時間にわたって複数にわけて添加する(1アビジン当たりビオチン約0.4モル)。得られるプローブを磁気分離カラム(Milteny Biotec)において精製する。HLA-A*0201分子と複合体化された無関係のHLA-A*0201結合性ペプチドからなる単量体を、陰性対照プローブの合成のために使用する。ナノ粒子サイズ、緩和能(1 mM当たりの緩和率の変化)、ビオチン結合部位数、ならびに鉄およびタンパク質含有量を測定する。
【0170】
ナノ粒子の投与。10〜15匹の雌性NOD.β2mnulI.HHDマウスの群を、上記の種々のペプチド/HLA複合体の各々または陰性対照ペプチド(インフルエンザ)/HLA複合体でコーティングされたナノ粒子で処置する(0.01、0.05、0.1、0.5および1μgペプチド等価物、4〜30週齢から3週毎に1用量、または連続5週にわたって10週齢で開始して2用量/週)。抗原特異的CD8+ T細胞の末梢での増大は、抗CD8 mAbおよびペプチド/MHC四量体で血液単核細胞を染色することによって実証される(処置開始前および治療中止時)。高血糖の発症時または研究の終了時にマウスを屠殺する。種々のリンパ系器官(脾臓、リンパ節)、骨髄(記憶T細胞の公知のリザーバ)、肝臓、肺および膵島におけるセントラルおよび/またはエフェクター記憶(CD69-、CD44hi、CD62LhiまたはCD62Llo、CD122+、Ly6C+)四量体+ CD8+ T細胞の存在について、マルチカラーフローサイトメトリーによって、個々のマウスを研究する。四量体結合アビディティを、記載されるように(Hanら, 2005;Amraniら, 2000)測定する。本発明者らは、処置が、低アビディティセントラルおよびエフェクター記憶四量体+ CD8+細胞の全身的増大ならびに骨髄、膵リンパ節(PLN)および膵島におけるこれらのT細胞の優先的な(しかし排他的でない)蓄積を誘導すると考える。
【0171】
ペプチド/MHC複合体の複数用量の投与。別の研究において、マウスの群を、他の研究において治療効果を示す全ての複合体について類似であると本発明者らが考える、有効用量の1、2、3または4回注射で処置する(4、7、10および13週で)。防護は、1または2以上の用量を必要とする(保護的閾値を超えて低アビディティ記憶T細胞プールを増大させるため)こと、ならびに増大した記憶四量体+ CD8+T細胞集団は循環から次第に消滅し、骨髄、PLNおよび膵島中に蓄積することが予想される。
【0172】
高血糖の発症時でのペプチド/MHC複合体の投与。マウスを、より攻撃的なナノ粒子処置プロトコル(5週間、週2回、1〜5 μgペプチド等価物)で高血糖(>10.5 mM/l)の発症時に処置する。陰性対照および陽性対照に、それぞれ、無関係のペプチド/HLA複合体または抗CD3 mAb(5日間、20μgの毎日の静脈内注射(Haller, 2005))でコーティングされたナノ粒子を受容させる。処置の開始直後にマウスから採血し、循環中の四量体陽性CD8+ T細胞のベースラインパーセンテージを評価する。処置が中止される少なくとも4週間、血糖値が<10 mM/lで安定化する場合、T1Dの逆転が考えられる。マウスから再び採血し、循環四量体陽性CD8+ T細胞の有意に増大したプールの存在を確認する。前記動物を少なくともさらに8〜12週間追跡し、安定な寛解を確認する。観察期間の終了時にマウスを屠殺し、種々のリンパ系および非リンパ系器官における記憶四量体陽性CD8+ T細胞の増大したプールの長期持続を確立する。膵臓組織をまた組織学的分析のために採取する。長期寛解は、単核細胞浸潤を欠いている多数の小さな膵島の存在と関連すると予想される。即ち、処置が保護的記憶T細胞による炎症膵島の占領を促進すると予想される前糖尿病マウスにおける状況とは異なり、糖尿病マウスにおける処置は、膵島(恐らく、新生の膵島は、炎症ポテンシャルを欠いている)においてではなく、膵リンパ節(記憶T細胞の他のリザーバに加えて)における保護的記憶T細胞の蓄積を促進すると予想される。
【0173】
ペプチド/HLAコーティングされた粒子は、ナイーブ高アビディティクロノタイプの除去を誘導することによって働く。本発明者らは、T1D進行の間、低アビディティ自己反応性CD8+ T細胞は、(少数で)記憶細胞として蓄積する傾向があり、ペプチド/HLAコーティングされた粒子は、ナイーブ高アビディティクロノタイプの除去(補助刺激なしでのTCR誘発に起因)および既存の低アビディティ記憶クロノタイプの少ないプールの増大(補助刺激独立性)を誘導することによって働くと考える。部分的に、これは、無関係のペプチド(腫瘍抗原性、(TUM/H-2Kd)複合体)でのマウスの処置が、バックグラウンドを超えるTUM/Kd四量体反応性CD8+ T細胞の末梢での増大を誘導しなかったという観察(上記参照)に由来する。次いで、これらの低アビディティ記憶自己反応性CD8+細胞は、刺激供給源(即ち、DC上の抗原/MHC、サイトカインなど)について競合することによって、それらのナイーブ高アビディティ(恐らく、より適切でない)相当物の活性化を阻害する。実際、記憶T細胞が恒常性のキュー(即ち、IL-15)についてナイーブT細胞と有効に競合し得る他のシステムにおける証拠が存在する(Tanら, 2002)。PLNにおいて自己抗原が負荷されたDCと安定に接触させることによって、これらの一般的な低アビディティ記憶クロノタイプはまた、他の自己反応性T細胞特異性の活性化を阻害する。
【0174】
ペプチド/HLAコーティングされたナノ粒子のT細胞の増大(および抗糖尿病誘発性活性)の出現は、β細胞中における内因性標的自己抗原の発現を必要とする。内因性標的自己抗原の発現は、ナノ粒子処置によって続いて増大する低アビディティ記憶自己反応性CD8+ T細胞プールの形成を誘導する刺激の供給源であると考えられる。IGRP欠損をNOD.β2mnull.HHDマウスへ導入する。これらのマウスを、hIGRP228-236(mIGRP228-236と交差反応性)およびhIGRP265-273(mIGRP265-273と同一)/HLA-A*0201コーティングされたナノ粒子(Takakiら, 2006)で処置する。コンディショナルIGRP対立遺伝子を有する2つのESクローンが本発明者らに利用可能であり、生殖細胞コンピテントキメラを作製する前に、現在、Creの一過性トランスフェクションによるネオマイシンカセットの除去を受けている。標的化された対立遺伝子を、スピードコンジェニックアプローチを使用して(129株から)NOD.β2mnull.HHDマウスへ戻し交配し、全てのIdd座でのNOD対立遺伝子についてのホモ接合性を確実にする。得られるNOD.β2mnull.IGRPnull.HHDマウスを、2つのIGRP/HLA複合体でコーティングされた最適量のナノ粒子で処置する。本発明者らは、前記処置は、対応のhIGRPペプチド/HLA反応性CD8+細胞の増大/動員を誘導しないと考える。
【0175】
IGRP発現が糖尿病発達に重要でなく(ラットがそれを発現しないので、IGRP発現の欠如は致命的でないことが公知である)、マウスが糖尿病を自然に生じさせる場合、ナノ粒子処置がT1Dからマウスを防護しないことも予想される(記憶IGRP反応性CD8+ T細胞が存在しない)。対照的に、マウスはインスリンを発現し続けることから、HLA-A*0201とインスリンエピトープとの複合体でコーティングされた粒子での処置は、対応の記憶T細胞プールの増大を誘導し、防護的である。
【0176】
ここで試験されるナノ粒子タイプが、全てのマウスにおいて有意なT細胞増大を誘導しないことがあり得る。これは、対応のT細胞集団が、処置開始前にインビボでプライミングを以前受けたかどうかに恐らく依存する。いくつかの異なるナノ粒子タイプの組み合わせで処置したマウスのさらなる群を研究することが有用/必要であり得る。明らかに、本発明者らの予想に反して、ナノ粒子処置が、低アビディティ記憶T細胞プールの新たな形成を誘導し得ることが考えられ得る。しかし、この場合、これらの細胞は、処置されたNOD.β2mnull.IGRPnull.HHDマウスにおいてDC上の内因性IGRP/HLA-A*0201複合体にかみ合うことができないことから、本発明者らは、これらの細胞は保護的ではないと考える。
【0177】
hIGRP発現マウス。本発明者らは、ラットインスリンプロモータ駆動ヒトIGRP導入遺伝子を発現するマウスのいくつかの株を作製し、リアルタイムRT-PCRによって、これらの株の各々における該ヒト導入遺伝子の発現レベルを、内因性mIGRPコーディング座のそれと比較した。導入遺伝子の発現レベルは株ごとに非常に可変であったが、発現レベルは、個々の株内の異なる個体間で一貫していた。これらの株のうちの1つ(#1114)において、hIGRPの発現レベルは、mIGRPのものと等しかった。
【0178】
本発明者らは、このRIP-hIGRP導入遺伝子を、NOD.β2mnull.IGRPnull.HHDマウス、およびhβ2m/HLA-A*1101、HLA-B*0702、もしくはHLA-Cw*0304-トランスジェニックNOD.β2mnull.IGRPnullマウスへ導入し、これらの4つの異なるHLA対立遺伝子との関連においてCD8+ T細胞応答の標的であるhIGRPにおけるさらなるエピトープを同定する。これらのマウスの膵島関連CD8+ T細胞を、HLA-A*0201、HLA-A*1101、HLA-B*0702およびHLA-Cw*0304結合性hIGRPペプチドのライブラリに対して、反応性についてスクリーニングする。
【0179】
次いで、対応のペプチド/HLA複合体コーティングされたナノ粒子を、対応のhβ2m/HLA-A*1101、HLA-B*0702、もしくはHLA-Cw*0304-トランスジェニックNOD.β2mnull.IGRPnullマウスにおいて、抗糖尿病誘発性効能について試験する。この課題の全体的な目的は、可能な限り多くの患者を治療するために使用することができるペプチド/HLA組み合わせのレパートリーについて増大させることである。
【0180】
参考文献
下記の参考文献は、それらが本明細書に記載されるものに補足的な例示的な手順的または他の詳細を提供する程度に、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに十分な量の、マイクロ粒子またはナノ粒子に機能的に結合した抗原−MHC複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫障害を診断、予防、または治療する方法。
【請求項2】
抗原が、ペプチド、糖質、脂質、またはそれらの組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
自己免疫障害が、真性糖尿病(diabetes melitus)、多発性硬化症、早発性卵巣機能不全、強皮症(scleroderm)、シェーグレン病、狼瘡、白斑(vilelego)、脱毛症(禿頭症)、多腺性機能不全(polyglandular failure)、グレーヴズ病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎(polymyosititis)、天疱瘡、クローン病(Chron's disease)、結腸炎(colititis)、自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、心筋炎(myocardititis)、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患、ブドウ膜炎(uveititis)、悪性貧血、副甲状腺機能低下症、または関節リウマチである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗原が、自己免疫応答に関与する自己抗原またはその模倣物に由来する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
自己抗原が、膵β細胞によって発現される抗原由来のエピトープである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
自己抗原が、IGRP、インスリン、GADまたはIA-2タンパク質である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
自己抗原が、第2の内分泌要素または神経分泌(neurocrine)要素に由来するエピトープである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
第2の内分泌要素または神経分泌要素が、膵島周辺の(peri-islet)シュワン細胞である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
MHC成分がMHCクラスI成分である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
MHCクラスI成分が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、またはCD-1分子の全部または一部を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
MHCクラスI成分が、HLA-A分子の全部または一部を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
MHCクラスI成分が、HLA-A*0201 MHCクラスI分子の全部または一部を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
MHC成分がMHCクラスII成分である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
MHCクラスII成分が、HLA-DR、HLA-DQ、またはHLA-DPの全部または一部を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
抗原−MHC複合体が、支持体に共有結合している、請求項1記載の方法。
【請求項16】
支持体が、マイクロ粒子またはナノ粒子である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
支持体が金属を含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
金属が鉄である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
抗原がMHC成分に共有結合している、請求項1記載の方法。
【請求項20】
複合体がリンカーを介して支持体に結合している、請求項19記載の方法。
【請求項21】
リンカーがペプチドリンカーである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
治療によって増大するT細胞が、疾患過程によってプレ活性化(pre-activate)されており、かつ記憶表現型を有する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
治療によって増大するT細胞が、低アビディティで標的エピトープを認識する自己反応性前駆体から生じる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
抗原−MHC複合体の投与が、自己免疫疾患の臨床症状の発症の前である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
抗原−MHC複合体の投与が、自己免疫疾患の臨床症状の発症の後である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
治療の前および後に対象の血糖値を評価する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
対象の自己免疫状態を評価する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
T細胞がCD4+またはCD8+ T細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
抗病原性の自己反応性T細胞の増大を刺激するのに十分な量の抗原−MHCクラスI複合体または抗原−MHCクラスII複合体を対象へ投与する工程を含む、非病原性の自己反応性T細胞を増大させる方法。
【請求項30】
T細胞がCD8+またはCD4+ T細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
膵島の破壊を阻害するのに十分な量の抗原−MHCクラスI複合体または抗原−MHCクラスII複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫応答から膵島を防護するための方法であって、該抗原が、膵臓細胞と関連する自己抗原に由来する、方法。
【請求項32】
自己抗原が、ポリペプチド、ペプチド、糖質、または脂質である、請求項29記載の方法。
【請求項33】
自己免疫応答が、CD8+またはCD4+ T細胞応答である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
自己抗原が膵β細胞と関連する、請求項31記載の方法。
【請求項35】
活動性の自己免疫の指標として、治療により誘導される非病原性CD8+またはCD4+ T細胞応答の増大を評価する工程を含む、自己免疫を診断するための方法。
【請求項36】
移植された組織または器官によって発現される同種異系抗原または自己抗原を認識する抗病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに十分な量の、支持体に機能的に結合した抗原−MHC複合体を、対象へ投与する工程を含む、同種異系免疫応答または自己免疫応答による移植組織の拒絶を予防、改善、または治療するための方法。
【請求項37】
移植組織が膵島である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
(a)Au、Pt、Cu、Ag、Co、Ni、Mn、Sm、Nd、Pr、Gd、Ti、Zr、Si、またはInのマイクロ粒子またはナノ粒子;および
(b)該粒子に結合した抗原−MHC複合体
を含む、免疫寛容原性粒子。
【請求項39】
金のマイクロ粒子またはナノ粒子である、請求項38記載の粒子。
【請求項40】
抗原−MHC複合体が粒子に共有結合している、請求項38記載の粒子。
【請求項41】
抗原がペプチドである、請求項38記載の粒子。
【請求項42】
抗原が、配列番号1〜10および配列番号14〜57のアミノ酸配列を有するペプチドからなる群より選択されるペプチドである、請求項41記載の粒子。
【請求項43】
MHC成分がMHCクラスI成分である、請求項38記載の粒子。
【請求項44】
MHCクラスI成分が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、またはCD-1分子の全部または一部を含む、請求項43記載の粒子。
【請求項45】
MHC成分がMHCクラスII成分である、請求項38記載の粒子。
【請求項46】
MHCクラスII成分が、HLA-DR、HLA-DQ、またはHLA-DPの全部または一部を含む、請求項45記載の粒子。
【請求項1】
非病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに十分な量の、マイクロ粒子またはナノ粒子に機能的に結合した抗原−MHC複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫障害を診断、予防、または治療する方法。
【請求項2】
抗原が、ペプチド、糖質、脂質、またはそれらの組み合わせである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
自己免疫障害が、真性糖尿病(diabetes melitus)、多発性硬化症、早発性卵巣機能不全、強皮症(scleroderm)、シェーグレン病、狼瘡、白斑(vilelego)、脱毛症(禿頭症)、多腺性機能不全(polyglandular failure)、グレーヴズ病、甲状腺機能低下症、多発性筋炎(polymyosititis)、天疱瘡、クローン病(Chron's disease)、結腸炎(colititis)、自己免疫性肝炎、下垂体機能低下症、心筋炎(myocardititis)、アジソン病、自己免疫性皮膚疾患、ブドウ膜炎(uveititis)、悪性貧血、副甲状腺機能低下症、または関節リウマチである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗原が、自己免疫応答に関与する自己抗原またはその模倣物に由来する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
自己抗原が、膵β細胞によって発現される抗原由来のエピトープである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
自己抗原が、IGRP、インスリン、GADまたはIA-2タンパク質である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
自己抗原が、第2の内分泌要素または神経分泌(neurocrine)要素に由来するエピトープである、請求項5記載の方法。
【請求項8】
第2の内分泌要素または神経分泌要素が、膵島周辺の(peri-islet)シュワン細胞である、請求項7記載の方法。
【請求項9】
MHC成分がMHCクラスI成分である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
MHCクラスI成分が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、またはCD-1分子の全部または一部を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
MHCクラスI成分が、HLA-A分子の全部または一部を含む、請求項9記載の方法。
【請求項12】
MHCクラスI成分が、HLA-A*0201 MHCクラスI分子の全部または一部を含む、請求項9記載の方法。
【請求項13】
MHC成分がMHCクラスII成分である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
MHCクラスII成分が、HLA-DR、HLA-DQ、またはHLA-DPの全部または一部を含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
抗原−MHC複合体が、支持体に共有結合している、請求項1記載の方法。
【請求項16】
支持体が、マイクロ粒子またはナノ粒子である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
支持体が金属を含む、請求項15記載の方法。
【請求項18】
金属が鉄である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
抗原がMHC成分に共有結合している、請求項1記載の方法。
【請求項20】
複合体がリンカーを介して支持体に結合している、請求項19記載の方法。
【請求項21】
リンカーがペプチドリンカーである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
治療によって増大するT細胞が、疾患過程によってプレ活性化(pre-activate)されており、かつ記憶表現型を有する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
治療によって増大するT細胞が、低アビディティで標的エピトープを認識する自己反応性前駆体から生じる、請求項22記載の方法。
【請求項24】
抗原−MHC複合体の投与が、自己免疫疾患の臨床症状の発症の前である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
抗原−MHC複合体の投与が、自己免疫疾患の臨床症状の発症の後である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
治療の前および後に対象の血糖値を評価する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
対象の自己免疫状態を評価する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
T細胞がCD4+またはCD8+ T細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項29】
抗病原性の自己反応性T細胞の増大を刺激するのに十分な量の抗原−MHCクラスI複合体または抗原−MHCクラスII複合体を対象へ投与する工程を含む、非病原性の自己反応性T細胞を増大させる方法。
【請求項30】
T細胞がCD8+またはCD4+ T細胞である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
膵島の破壊を阻害するのに十分な量の抗原−MHCクラスI複合体または抗原−MHCクラスII複合体を対象へ投与する工程を含む、自己免疫応答から膵島を防護するための方法であって、該抗原が、膵臓細胞と関連する自己抗原に由来する、方法。
【請求項32】
自己抗原が、ポリペプチド、ペプチド、糖質、または脂質である、請求項29記載の方法。
【請求項33】
自己免疫応答が、CD8+またはCD4+ T細胞応答である、請求項31記載の方法。
【請求項34】
自己抗原が膵β細胞と関連する、請求項31記載の方法。
【請求項35】
活動性の自己免疫の指標として、治療により誘導される非病原性CD8+またはCD4+ T細胞応答の増大を評価する工程を含む、自己免疫を診断するための方法。
【請求項36】
移植された組織または器官によって発現される同種異系抗原または自己抗原を認識する抗病原性の自己反応性T細胞を増大させるのに十分な量の、支持体に機能的に結合した抗原−MHC複合体を、対象へ投与する工程を含む、同種異系免疫応答または自己免疫応答による移植組織の拒絶を予防、改善、または治療するための方法。
【請求項37】
移植組織が膵島である、請求項36記載の方法。
【請求項38】
(a)Au、Pt、Cu、Ag、Co、Ni、Mn、Sm、Nd、Pr、Gd、Ti、Zr、Si、またはInのマイクロ粒子またはナノ粒子;および
(b)該粒子に結合した抗原−MHC複合体
を含む、免疫寛容原性粒子。
【請求項39】
金のマイクロ粒子またはナノ粒子である、請求項38記載の粒子。
【請求項40】
抗原−MHC複合体が粒子に共有結合している、請求項38記載の粒子。
【請求項41】
抗原がペプチドである、請求項38記載の粒子。
【請求項42】
抗原が、配列番号1〜10および配列番号14〜57のアミノ酸配列を有するペプチドからなる群より選択されるペプチドである、請求項41記載の粒子。
【請求項43】
MHC成分がMHCクラスI成分である、請求項38記載の粒子。
【請求項44】
MHCクラスI成分が、HLA-A、HLA-B、HLA-C、HLA-E、HLA-F、HLA-G、またはCD-1分子の全部または一部を含む、請求項43記載の粒子。
【請求項45】
MHC成分がMHCクラスII成分である、請求項38記載の粒子。
【請求項46】
MHCクラスII成分が、HLA-DR、HLA-DQ、またはHLA-DPの全部または一部を含む、請求項45記載の粒子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図17J】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図9E】
【図9F】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図17C】
【図17D】
【図17E】
【図17F】
【図17G】
【図17H】
【図17I】
【図17J】
【図18】
【図19】
【図20A】
【図20B】
【図20C】
【図20D】
【図21A】
【図21B】
【図21C】
【図22A】
【図22B】
【図22C】
【公表番号】特表2010−522695(P2010−522695A)
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552915(P2009−552915)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/056279
【国際公開番号】WO2008/109852
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507132329)ユーティーアイ リミテッド パートナーシップ (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/056279
【国際公開番号】WO2008/109852
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(507132329)ユーティーアイ リミテッド パートナーシップ (2)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]