説明

自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分の同定方法

【課題】自己免疫疾患の発症や進行に関与する分子を同定し、その分子メカニズムに基づいた自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分の同定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を同定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分の同定方法に関するものである。さらに、本発明は、リンパ球の幼若化抑制剤、インターロイキン2(Interleukin-2;IL-2)の産生阻害剤、腫瘍壊死因子α(Tumor necrosis factor-alpha; TNF-α)の産生阻害剤、免疫グロブリンM(Immunoglobulin M; IgM)の産生阻害剤を同定する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
自己免疫疾患は、自己に対する過剰な免疫応答によってもたらされる疾患の総称であり、例えば、関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、全身性硬化症、喘息などが含まれる。何らかの遺伝的、環境的因子が作用して自己寛容が破綻すると自己免疫疾患になると考えられているが、その詳しいメカニズムは明らかにされていない。
【0003】
多くの自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤が開発されており、例えば、特許文献1には抗リウマチ作用を示すベンズアミド化合物が開示されている。自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の開発ために簡便かつ高速な評価系が求められるが、自己免疫疾患の発症や進行に関与する分子が同定されていないこともあり、特許文献1に開示されているようなインビボ(in vivo)の評価系により化合物の評価が行われることが多い。抗リウマチ活性のインビトロ(in vitro)の評価系としてマイトジェン刺激によるT又はBリンパ球幼若化の抑制試験が行われているが、細胞の調製や培養に時間がかかる等の問題点があり、ハイスループットスクリーニング(high-throughput screening; HTS)には適していない。
【0004】
【特許文献1】特開平9−59236
【非特許文献1】Hurlimann D et al., Circulation, 106(17): 2184-7 (2002), "Anti-tumornecrosis factor-alpha treatment improves endothelial function in patients withrheumatoid arthritis."
【非特許文献2】Elliott MJ et al., Lancet, 344(8930): 1105-10 (1994), "Randomiseddouble-blind comparison of chimeric monoclonal antibody to tumour necrosisfactor alpha (cA2) versus placebo in rheumatoid arthritis."
【非特許文献3】湊長博監修「免疫学―主要疾患発症のメカニズム」(メディカルサイエンスインターナショナル)1995年発行、176-181頁
【非特許文献4】Targan SR et al., N. Engl. J. Med., 337(15): 1029-35 (1997), "Ashort-term study of chimeric monoclonal antibody cA2 to tumor necrosis factoralpha for Crohn's disease. Crohn's Disease cA2 Study Group."
【非特許文献5】Stack WA et al., Lancet, 349(9051): 521-4 (1997), "Randomisedcontrolled trial of CDP571 antibody to tumour necrosis factor-alpha in Crohn'sdisease."
【非特許文献6】湊長博監修「免疫学―主要疾患発症のメカニズム」(メディカルサイエンスインターナショナル)1995年発行、169-176頁
【非特許文献7】湊長博監修「免疫学―主要疾患発症のメカニズム」(メディカルサイエンスインターナショナル)1995年発行、248-252頁
【非特許文献8】湊長博監修「免疫学―主要疾患発症のメカニズム」(メディカルサイエンスインターナショナル)1995年発行、189-195頁
【非特許文献9】湊長博監修「免疫学―主要疾患発症のメカニズム」(メディカルサイエンスインターナショナル)1995年発行、185-186頁
【非特許文献10】Lassalle P et al., Clin. Exp. Immunol., 94(1): 105-10 (1993), "Modulationof adhesion molecule expression on endothelial cells during the late asthmaticreaction: role of macrophage-derived tumour necrosis factor-alpha."
【非特許文献11】He XW et al., J Clin Invest. 89(2): 673-680 (1992), "Selectiveinduction of rheumatoid factors by superantigens and human helper Tcells."
【非特許文献12】Simone Matuschka et al., Archives of biochemistry and biophysics.322(1): 135-142 (1995), "ATP Synthesis by Purified ATP-Synthase from BeefHeart Mitochondria after Coreconstitution with Bacteriorhodopsin."
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、自己免疫疾患の発症や進行に関与する分子を同定し、その分子メカニズムに基づいた自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分の同定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、磁性ナノビーズを用いた研究を行ったところ、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)が自己免疫疾患に関与していることを発見した。ATP合成酵素は、ミトコンドリアの内膜などに存在し、FOとF1(F1-ATPaseと称される場合もある)の2つの部位からなり、細胞内では生体膜を介したプロトンの電気化学ポテンシャルを利用してADPと無機リン酸からATPを合成している。本発明に係る抗リウマチ化合物はF1のαサブユニットに結合し、ATP合成酵素の活性を阻害することを本発明者らは見出した。さらに、ATP合成酵素阻害剤は、T及びBリンパ球の幼若化を抑制すること、炎症性サイトカインであるTNF-α及びIL-2並びにリウマトイド因子が属するIgMの産生を阻害することも見出した。
【0007】
免疫細胞の幼若化、IgM産生、TNF-α産生、IL-2産生等と自己免疫疾患との関連については、以下に述べるように様々な論文で報告されている。
(1)関節リウマチ:非特許文献1には、TNF-αが関節リウマチの発症・増悪に関与することや抗TNF-α抗体療法が関節リウマチを改善することが開示されている。非特許文献2は、抗TNF-αキメラモノクローナル抗体が関節リウマチの臨床試験において治療効果を示したことを報告している。非特許文献3は、IL-1及びTNF-αが関節リウマチにおける関節破壊に関与している証拠を報告している(特に、177頁)。また、関節リウマチにおいて高率に検出されるリウマトイド因子(rheumatoid factor)(他の自己免疫疾患の患者由来の血清においても検出される)は、リウマチの重症度と相関する。リウマトイド因子は、IgG(免疫グロブリンG)のFcフラグメントに対する自己抗体であって、主としてIgM型に属する(非特許文献11)。
(2)クローン病:非特許文献4は、抗TNF-αキメラモノクローナル抗体がクローン病の臨床試験において治療効果を示したことを報告している。非特許文献5は、TNF-αがクローン病発症に関して中心的な役割を果たしていると考えられることや、抗TNF-α抗体であるCDP571がクローン病の臨床試験において治療効果を示したことを報告している。
(3)全身性エリテマトーデス:非特許文献6は、全身性エリテマトーデスにおける広範なBリンパ球機能異常を報告している(特に、170頁)。
(4)多発性硬化症:非特許文献7は、自己反応性(MBP反応性)CD4陽性TH1細胞が細胞傷害性CD8陽性Tリンパ球やマクロファージを刺激し、TNF-α等のサイトカインを介してオリゴデンドロサイトを傷害するという多発性硬化症のメカニズムを開示している(特に、250頁)。
(5)インシュリン依存性糖尿病:非特許文献8は、自己反応性CD4陽性TH1細胞が細胞傷害性CD8陽性Tリンパ球やマクロファージを刺激し、マクロファージから産生される細胞傷害性を有するIL-1がランゲルハンス島β細胞を攻撃するというインシュリン依存性糖尿病のメカニズムを開示している(特に、191頁)。
(6)全身性硬化症:非特許文献9は、活性化マクロファージが産生するTNF-αによって血管内皮細胞が損傷し、繊維化が進行することを報告している。
(7)喘息:非特許文献10は、喘息において、マクロファージ由来のTNF-αは、血管内皮細胞に作用することでICAM−1やELAM−1の発現を増強し、好酸球や好中球の血管内皮細胞への接着に関与している可能性を示唆している。
【0008】
本発明者らは、上記知見に基づき本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[11]を提供する:
[1]ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、インターロイキン2(Interleukin-2;IL-2)の産生阻害剤の同定方法。
[2]ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、腫瘍壊死因子α(Tumornecrosis factor-alpha; TNF-α)の産生阻害剤の同定方法。
[3]ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、免疫グロブリンM(ImmunoglobulinM; IgM)の産生阻害剤の同定方法。
[4]以下の工程を含む、インターロイキン2(Interleukin-2;IL-2)の産生阻害剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
[5]以下の工程を含む、腫瘍壊死因子α(Tumor necrosis factor-alpha; TNF-α)の産生阻害剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
[6]以下の工程を含む、免疫グロブリンM(Immunoglobulin M; IgM)の産生阻害剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
[7]ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、リンパ球の幼若化抑制剤の同定方法。
[8]以下の工程を含む、リンパ球の幼若化抑制剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
[9] ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を同定する方法。
[10] 以下の工程を含む、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を同定する方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
[11] 自己免疫疾患が、関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、全身性硬化症又は喘息である、[9]又は[10]に記載の自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を同定する方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ATP合成酵素が自己免疫疾患に関与しているという新しい知見に基づくものであり、このメカニズムに基づく自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
本発明は、IL-2の産生阻害剤の同定方法、TNF-αの産生阻害剤の同定方法、IgMの産生阻害剤を同定方法、リンパ球の幼若化抑制剤の同定方法、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分の同定方法を提供する。いずれの同定方法も、ATP合成酵素の阻害を指標とすることを特徴とする。
【0012】
ATP合成酵素の阻害を指標とするとは、被験化合物によるATP合成酵素阻害の有無及び/又はその程度を同定の基準とすることを意味する。例えば、1)被験化合物がATP合成酵素を阻害する場合、及び/又は、2)被験化合物によるATP合成酵素阻害が陽性対照化合物によるATP合成酵素阻害と比較して同等又はより強い場合、被験化合物を、IL-2の産生阻害剤、TNF-αの産生阻害剤、IgMの産生阻害剤、リンパ球の幼若化抑制剤、又は、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分と同定できる。陽性対照化合物として、被験化合物とは異なる他のATP合成酵素阻害剤を例示できる。ATP合成酵素阻害剤として、例えば、Oligomycin A及びAurovertin Bが挙げられる。
【0013】
被験化合物は、特に制限されず、合成化合物でもよく、天然物抽出物中に存在する化合物であってもよい。被験化合物として、例えば、合成化合物、天然化合物、植物抽出物、動物抽出物、発酵生産物、市販の試薬、化合物ライブラリーから選抜された化合物などが挙げられる。被験化合物の分子種も特に制限されず、例えば、低分子化合物、ペプチド、蛋白質、糖、核酸を例示できる。
【0014】
ATP合成酵素の阻害として、例えば、ATP合成酵素遺伝子の発現阻害、ATP合成酵素の分解及び/又はATP合成酵素の活性阻害を例示できる。ATP合成酵素は、その名の通り、ADPと無機リン酸からATPを合成する酵素であるが、その逆反応であるATP加水分解も行う。したがって、測定するATP合成酵素の活性は、ATP合成の活性であってもATP加水分解の活性であってもよい。ATP合成酵素の活性阻害として、ATP合成酵素のATP加水分解活性阻害を好ましく例示できる。
【0015】
ATPの合成・分解反応を担っているのはF1部位であること、ATP合成酵素のF1部位のαサブユニットと結合する化合物が自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分等となる可能性が高いと考えられることから、使用するATP合成酵素はF1FOではなく、F1部位のみであってもよい。
【0016】
ATP合成酵素の由来する生物種は、例えば、ヒト、サル、マウス、ラット、ブタ、ウシ等が挙げられ、ヒトであることが好ましい。ATP合成酵素は精製された状態であってもよく、ミトコンドリア画分の状態であってもよい。ATP合成酵素の精製は、Aggeler R et al., J. Biol. Chem., 277(37): 33906-12 (2002), "Afunctionally active human F1FO ATPase can be purified byimmunocapture from heart tissue and fibroblast cell lines. Subunit structureand activity studies."及び非特許文献12等に記載されている公知の方法に従って行うことができる。ミトコンドリア画分の調製は、Mitochondria Isolation Kit(製品コード:MITO-ISO1;シグマ社製)等の市販のキットを用いて行うことができる。
【0017】
本同定方法は、ATP合成酵素の阻害を測定可能な試験系で実施される。ATP合成酵素の阻害を測定可能な試験系は、インビトロの試験系でよく、インビボの試験系でもよい。ATP合成酵素の阻害を測定可能な試験系として、例えば、ATP合成酵素遺伝子の発現阻害を測定可能な試験系、ATP合成酵素の活性阻害を測定可能な試験系を挙げることができる。
【0018】
ATP合成酵素遺伝子の発現阻害を測定可能な試験系として、例えば、ATP合成酵素遺伝子を発現する細胞の試験系を例示できる。細胞の由来生物種は特に限定されないが、好ましく哺乳動物細胞、さらに好ましくヒト由来の細胞を例示できる。細胞は、初代培養でもよく、樹立した細胞株でもよい。ATP合成酵素遺伝子を発現する細胞として、例えば、脾細胞、単球、リンパ球(Tリンパ球、Bリンパ球)、THP−1細胞及びJurkat細胞を例示できる。被験化合物存在下でこれらの細胞を培養し、培養後の該細胞の細胞溶解液に含まれるATP合成酵素遺伝子の転写産物(メッセンジャーRNA)及び/又は翻訳産物を、RT-PCR法、ノーザンブロット法、ウエスタンブロット法等により測定することによって、被験化合物によるATP合成酵素遺伝子の発現阻害の有無及び/又はその程度を確認可能である。本試験系に被験化合物を混在させる場合には、該細胞内に被験化合物を導入してもよく、該細胞の培養上清に添加してもよい。これらの導入又は添加は、該細胞の培養からATP合成酵素遺伝子の転写産物及び/又は翻訳産物の測定までの過程のいずれの時であってもよい。被験化合物が核酸の場合には、該細胞に導入することが好ましい。被験化合物が核酸の場合、自体公知の遺伝子導入方法(リン酸カルシウム法、リポフェクション法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法など)により、被験化合物を細胞に導入可能である。本試験系において、例えば、1)被験化合物存在下、ATP合成酵素遺伝子の発現量を測定し、2)1)で測定したATP合成酵素遺伝子の発現量と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素遺伝子の発現量を比較することにより、本同定方法を実施可能である。被験化合物存在下におけるATP合成酵素遺伝子の発現量が、被験化合物非存在下におけるATP合成酵素遺伝子の発現量と比較して、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、最も好ましくは50%以上低下している場合に、被験化合物はATP合成酵素を阻害すると判定できる。また、ATP合成酵素遺伝子の発現阻害を測定可能な試験系として、インビトロ転写/翻訳試験系及びインビトロ翻訳試験系を例示できる。これらの試験系を実施するための試薬が市販されている(TNT T7 Quick Coupled Transcription/Translation System等;プロメガ社製)。
【0019】
ATP合成酵素の活性阻害を測定可能な試験系として、例えば、インビトロにおけるATP合成酵素によるATP合成活性(酵素活性)を測定する試験系を例示できる。具体的には、ATP合成酵素、リン酸及びADPを含む適当な緩衝液中において、ATP合成酵素によるATP合成反応を実施する試験系である。本試験系において、例えば、1)被験化合物存在下、ATP合成酵素のATP合成活性を測定し、2)測定したATP合成活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP合成活性を比較することにより、本同定方法を実施可能である。本試験系に被験化合物を混在させる場合には、ATP合成酵素のATP合成反応の前に被験化合物を反応溶液に添加してもよく、本反応中に被験化合物を添加してもよい。本試験系において、例えば、被験化合物存在下におけるATP合成酵素のATP合成活性が、被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP合成活性と比較して、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、最も好ましくは50%以上低下している場合に、被験化合物はATP合成酵素を阻害すると判定できる。ATP合成酵素のATP合成活性の測定は、例えば、基質(リン酸及びADP)の低下や生成物(ATP)の増加を測定することにより実施可能である。ATPは、例えば、ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応系により測定可能である(非特許文献12)。
【0020】
また、ATP合成酵素の活性阻害を測定可能な試験系として、例えば、インビトロにおけるATP合成酵素によるATP加水分解活性(酵素活性)を測定する試験系を例示できる。具体的には、ATP合成酵素及びATPを含む適当な緩衝液中において、ATP合成酵素によるATPの加水分解反応を実施する試験系である。ここで用いるATP合成酵素は、ATP加水分解活性を有する限りにおいて、例えば、ATP合成酵素F1部位でもよく、ATP合成酵素F1部位とATP合成酵素FO部位又はその一部との複合体となっていてもよい。ATP加水分解活性の測定は、市販の試薬を用いて実施可能である(ATPASE ASSAY KIT (HIGH SENSITIVITY); INNOVA Biosciences社製)。本試験系において、例えば、1)被験化合物存在下、ATP合成酵素のATP加水分解活性を測定し、2)測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較することにより、本同定方法を実施可能である。本試験系に被験化合物を混在させる場合には、ATP合成酵素のATP加水分解反応の前に被験化合物を反応溶液に添加してもよく、本反応中に被験化合物を添加してもよい。本試験系において、例えば、被験化合物存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性が、被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性と比較して、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、最も好ましくは50%以上低下している場合に、被験化合物はATP合成酵素を阻害すると判定できる。ATP合成酵素のATP加水分解活性の測定は、例えば、基質であるATP及び/又は生成物である遊離リン酸を測定することにより実施可能である。
【0021】
IL-2の産生阻害剤及びTNF-αの産生阻害剤とは、それぞれ細胞に作用させた場合及び/又は動物に投与した場合に、それぞれ細胞が産生するIL-2及びTNF-αの量を、作用及び/又は投与しなかった場合に比べて低下させるものを意味する。細胞及び動物の由来・種類は特に限定されないが、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることが特に好ましい。IL-2は主にTリンパ球(CD4+及びCD8+)で産生されるため、IL-2の産生阻害剤とは好ましくはTリンパ球におけるIL-2の産生量を低下させるものを意味する。TNF-αは、単球、マクロファージ、リンパ球(Tリンパ球、Bリンパ球)、アストロサイト、線維芽細胞、好塩基球、マスト細胞、NK細胞、クッパー細胞など広範な細胞で産生され、TNF-αの産生阻害剤は、これらの細胞におけるTNF-αの産生量を低下させるものを意味し、好ましくはマクロファージ及び/又はリンパ球におけるTNF-αの産生量を低下させるものを意味する。炎症性サイトカインであるTNF-αやTリンパ球増殖に関与するIL-2は、リウマチの病態に深く関与することが報告されている。従って、IL-2の産生阻害剤及びTNF-αの産生阻害剤は、リウマチなどの自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【0022】
IgMの産生阻害剤とは、細胞に作用させた場合及び/又は動物に投与した場合に、その細胞が産生するIgMの量を、作用及び/又は投与しなかった場合に比べて低下させるものを意味する。細胞及び動物の由来・種類は特に限定されないが、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることが特に好ましい。IgMは、Bリンパ球から産生される為、IgMの産生阻害剤とは好ましくはBリンパ球から産生されるIgMの産生量を低下させるものを意味する。リウマトイド因子は主にIgMに属し、リウマチ等の自己免疫疾患の病態と関与することが報告されている。従って、IgMの産生阻害剤は、リウマチなどの自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤として有用である。
【0023】
リンパ球の幼若化抑制剤とは、細胞に作用させた場合及び/又は動物に投与した場合に、リンパ球の幼若化(感作抗原による特異的な刺激又はマイトジェンによる抗原非特異的な刺激に応答して幼若な細胞に分化増殖すること)を、作用及び/又は投与しなかった場合に比べて抑えるものを意味する。細胞及び動物の由来・種類は特に限定されないが、哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることが特に好ましい。リンパ球はTリンパ球及び/又はBリンパ球であることが好ましい。
【0024】
自己免疫疾患とは、生体の免疫系(本来は、外来抗原に対応した生体防御機構)が自己抗原にも免疫反応を起こし、その結果誘発される疾患を意味する。自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤は、哺乳動物に投与可能な自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤を含む。哺乳動物として、例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、サル、ウシなどが例示される。自己免疫疾患は、特に限定されないが、IL-2及び/又はTNF-αがその疾患の発症や増悪に関与する自己免疫疾患が好ましく、例えば、関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、全身性硬化症及び喘息が挙げられる。
【0025】
一般的に、インビトロスクリーニングのみにより医薬又はその候補化合物が見出されるとは限らない。最近では、インビトロスクリーニングで多数の検体を高速で調べることのできる自動化されたハイスル−プットスクリーニング系が導入されているが、1)ハイスル−プットスクリーニングによって選択された化合物(例えば、ヒット化合物やシード化合物と呼ばれることもある)の中から、化学修飾により活性、薬物動態、及び安全性等の資質の改善が見込める化合物(例えば、リード化合物と呼ばれることもある)が選択され、2)その選択された化合物を化学修飾した化合物について、生物活性(インビトロ、インビボ)、物性、薬物動態、及び安全性などが評価され、3)その評価に基づいて化学修飾された化合物の中から好ましい化合物がさらに選択される。4)そして、このような化学修飾、評価、及び選択が繰り返され、最終的に医薬として資質が高いと考え得る化合物が臨床試験に供与される医薬の候補化合物となる。以上の1)〜4)の過程を経て、医薬品が創製される場合もある。
【0026】
従って、例えば、ヒトに投与可能な自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の開発を最終目的とし、生物活性評価系としてATP合成酵素阻害のアッセイ系を導入した薬剤創製過程においてATP合成酵素阻害化合物を選抜する行為は、本同定方法の範囲に含まれる。例えば、ヒトに投与可能な自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の開発を最終目的とし、ATP合成酵素阻害を指標とするハイスル−プットスクリーニング系を構築し、そのスクリーニング系でヒット化合物やリード化合物をスクリーニングする行為、又は、それらの修飾化合物の中からATP合成酵素阻害化合物を選抜する行為も、本同定方法に含まれる。
【0027】
本同定方法で同定されたIL-2の産生阻害剤、TNF-αの産生阻害剤、IgMの産生阻害剤、リンパ球の幼若化抑制剤、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分は、それぞれ、適当な医薬担体と組合せて自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤として用いられる。製剤化にあたっては、その剤形に応じて適切な製剤用添加物を用いることができる。このような製剤用添加物として、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤等を用いることができる。投与経路は、全身投与であってもよく、局所投与であってもよい。投与経路は、疾患や症状に応じて選択する。例えば、静脈投与、動脈投与、皮下、皮内、又は筋肉内投与を選択することができる。必要な用量範囲は、有効成分の有効性、疾患、患者の症状、投与経路、及び担当医師の判断等によるが、一般的には、患者の体重1kgあたり0.1乃至100μg程度である。経口投与に適する製剤の例として、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、シロップ剤を挙げることができる。非経口投与に適する製剤の例として、注射剤、点滴剤、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリ−ム剤、貼付剤を例示できる。
【実施例】
【0028】
(実施例1:抗リウマチ化合物を固定した磁性ナノビーズの製造)
以下の方法に従って、下記式(1)で示される抗リウマチ化合物(特開平9−59236の実施例30に記載の化合物、以下、化合物Aと称する)を磁性ナノビーズに共有結合させることにより、抗リウマチ化合物を固定化した磁性ナノビーズを製造した。
【0029】
【化1】

【0030】
特開平9−59236に開示されている方法に従って、化合物Aを合成した。特願2004−280679に開示されている方法に従って、カルボキシル化磁性ナノビーズを製造した。特開平10−195099に開示されている方法に従って、両者を共有結合させるためのカルボキシル化スペーサーを合成し、カルボキシル化スペーサーとカルボキシル化磁性ナノビーズとを共有結合させた。なお、カルボキシル化磁性ナノビーズの代わりにスチレン−グリシジルメタクリレート重合体を用いることも可能であり、本重合体は、特開平10−195099に開示されている方法に従って製造できる。
【0031】
こうして得られたナノビーズに化合物Aを以下の方法により共有結合させた。まず、ナノビーズ(5mg)を超純水(0.5mL)とメタノール(0.5mL)で洗浄した。ナノビーズをメタノール(0.1mL)に懸濁させ、脱水ジオキサン(0.5mL)を添加してナノビーズを洗浄した。さらに、脱水ジオキサン(0.5mL)を用いてナノビーズを2回洗浄した。ナノビーズを脱水ジオキサン(0.5mL)に懸濁し、ナノビーズ懸濁液を調製した。また、化合物Aを脱水ジオキサンに溶解し、化合物A溶液(2mM及び20mM)を調製した。調製したナノビーズ懸濁液と化合物A溶液とを、以下の表1に示す組成で混合し、最終液量を1mLとした。
【0032】
【表1】

【0033】
各混合液に38.4mgの(1−エチル−[3−ジメチルアミノプロピル])カルボジイミド・塩酸塩(EDC;ナカライテスク社製)を添加し、室温で16時間撹拌し、化合物Aとナノビーズの共有結合反応を行った。反応溶液を15,000rpmで5分間遠心し、上清を除去し、残留物に0.5mLのエタノールアミン(1M、pH8.0)を添加し、ローテーターにより4℃で16時間撹拌し、マスキング反応を行った。反応溶液を15,000rpmで5分間遠心し、上清を除去し、残留物を超純水(0.5mL)で5回洗浄した後、超純水に再懸濁し、使用するまで4℃で保存した。
【0034】
こうして得られた懸濁液に含まれる化合物A固定化磁性ナノビーズ量を以下の方法に従って測定した。まず、懸濁液を遠心して得られた残留物を、定沸点塩酸(ナカライテスク社製)中、110℃で24時間加水分解し、反応液を乾固させた。乾固物をトリエチルアミン−水−エタノール混合液(容積比2:9:9)に溶解し、この溶液の吸光度(245nm)を分光光度計(DU640;ベックマン社製)で測定し、遊離した化合物Aの濃度を算出した。算出した結果、磁性ナノビーズに対して化合物Aが固定化されていることを確認した。
【0035】
(実施例2:質量分析法による化合物A固定化磁性ナノビーズに結合するタンパク質の同定)
特開平9−59236に開示されているように、化合物Aは抗リウマチ活性を示す。しかし、化合物Aがいかなる生理活性物質に作用し、抗リウマチ活性を示すのかは不明であった。そこで、実施例1で製造した化合物A固定化磁性ナノビーズを用いて、化合物Aが結合するタンパク質を精製し、同定した。
【0036】
(1)マウス脾細胞の調製
ddYマウス(雄性、10週齢;Slcより購入)の頸椎を脱臼させた後、脾臓を摘出した。摘出した脾臓を10mMリン酸塩緩衝液−0.15M NaCl(PBS;Takara社製)に懸濁し、スライドガラスを用いて単細胞懸濁液を調製した。この懸濁液をセルストレイナー(ベクトン・ディッキンソン社製)に通して、脾細胞を遠心チューブに集め、PBS(40mL)に懸濁し、この細胞懸濁液を遠心(200g、4℃、10分間)した。遠心により得られた細胞を溶血試薬(5mL、IOTest3;ベックマン・コールター社製)に懸濁して、室温で1分間放置した。この懸濁液にPBS(20mL)を添加して、再度同様の遠心処理を行い、得られた脾細胞をペレットとして洗浄した。この脾細胞ペレットをPBS(40mL)に懸濁し、セルストレイナーを通して、細胞凝集塊を除去した。この懸濁液の細胞濃度を血球計算盤で測定し、懸濁液に含まれる総細胞数を求めた。この懸濁液に再度同様の遠心処理を行った後、上清をピペットで完全に除去した。得られた脾細胞ペレットは使用するまで−80℃で保存した。
【0037】
(2)マウス脾細胞の全細胞溶解液の調製
上記(1)で得られたマウス脾細胞に対して、その容積の5倍量の細胞溶解液(CelLytic−M;シグマ社製)を加え、得られた溶液をロータリーシェーカーで30分撹拌した後、遠心(20,400g、15分間)した。上清をSlide−A−Lyzer(MWCO 3.5kDa;ピアース社製)を用いて透析バッファー(20mM HEPES、100mM NaCl、1mM CaCl、1mM MgCl、0.2mM EDTA、10%(v/v)グリセロール、0.5mM DTT、0.1%(v/v)プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ社製)、pH7.5)に対して一晩透析した。透析後の溶液を遠心(20,400g、30分間)し、その上清を全細胞溶解液(以下、WCLと略する)とした。得られたWCLは使用するまで−80℃で保存した。
【0038】
(3)化合物A固定化磁性ナノビーズに結合するタンパク質の検出及び精製
上記(2)で得られたWCL(1mg)に結合バッファー(20mM HEPES、100mM NaCl、1mM CaCl、1mM MgCl、0.2mM EDTA、10%(v/v)グリセロール、0.1%(v/v)NP−40、0.5mM DTT、0.1%(v/v)プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ社製)、pH7.5)を加え450μLとした。そこへ実施例1で得られた化合物A固定化磁性ナノビーズ(磁性ナノビーズ1mg当たり22.6nmolの化合物Aが固定されている)あるいは化合物Aを固定していない磁性ナノビーズを25、50、100又は250μg(結合バッファー50μLに懸濁)を添加し、混合し、4℃で2時間、結合反応を行った。この反応溶液を遠心(20,400g、5分間)して得たビーズを結合バッファーで3回洗浄した。ビーズに100μLのSDS−PAGE(SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)サンプルバッファー(50mM Tris、10%(v/v)グリセロール、2%(v/v)SDS、1%(v/v)β−メルカプトエタノール、0.025%(w/v)ブロモフェノールブルー、pH6.8)を添加し、100℃で5分間加熱してビーズに結合しているタンパク質を溶出した。溶出液を遠心した後、上清に300μLの冷却アセトンを添加して−80℃で30分間静置した。この溶液を遠心(20,400g、30分間)して得た沈殿物をSDS−PAGEサンプルバッファー(10μL)に溶解し、100℃で5分間加熱した。加熱後の溶液(以下、結合タンパク質電気泳動用サンプルと称する)8μLをSDS−PAGE(5−20%グラジエントゲル(DRC社製)、200V定電圧、1時間)処理した。泳動後のゲルを銀染色(2D−銀染色試薬II「第一」;第一化学薬品社製)し、タンパク質のバンドを検出した。
【0039】
電気泳動の結果を図1に示す。電気泳動のバンドのパターンは、化合物Aを固定した磁性ナノビーズと固定していない磁性ナノビーズとで似通っていたが、図1の矢印で示した約52kDaのバンドは、化合物A固定化磁性ナノビーズでのみ検出されたことから、このタンパク質は化合物A特異的に結合していることが示唆された。
【0040】
(4)質量分析による化合物A固定化磁性ナノビーズに結合するタンパク質の同定
このバンドは再現性よく検出されることが確認できたため、質量分析によりタンパク質の同定を行った。
【0041】
上記(2)で得られたWCL(1mg)に結合バッファーを加え450μLとした。そのWCL溶液を4℃、1時間のプレインキュベーション後、遠心処理(20,400g、5分間)して得られた上清に化合物A固定化磁性ナノビーズ(磁性ナノビーズ1mg当たり22.6nmolの化合物Aが固定されている)又は化合物Aを固定していない磁性ナノビーズを100μg(結合バッファー50μLに懸濁)添加し、混合し、4℃で2時間、結合反応を行った。この反応溶液を遠心(20,400g、5分間)して得たビーズを結合バッファーで3回洗浄した。ビーズに100μLのSDS−PAGEサンプルバッファーを添加し、100℃で5分間加熱してビーズに結合しているタンパク質を溶出した。溶出液を遠心した後、上清に300μLの冷却アセトンを添加して−80℃で30分間静置した。この溶液を遠心(20,400g、30分間)して得た沈殿物をSDS−PAGEサンプルバッファー(10μL)に溶解し、100℃で5分間加熱した。結合タンパク質電気泳動用サンプルをSDS−PAGE(5−20%グラジエントゲル、200V定電圧、1時間)に供した。泳動及び銀染色処理(WAKO社製キット)後、分子量が52kDaに相当するバンドを切り出した。
【0042】
切り出したゲルを脱色し、トリプシン溶液(トリスバッファー、pH8.0に溶解)を加え、35℃で20時間の消化処理を行った。消化した溶液をLC−MS/MS装置に供与して、質量分析によるタンパク質の同定を行った。質量分析に用いた分析カラムはMagicC18(Michrom BioResources社製)、溶出液はアセトニトリル(溶媒A:2%、溶媒B90%)とした。溶出液の流速を250〜300nL/分に、グラジエントを5〜95%Bとした。溶出されたペプチドを、Nanoflow−LC−ESIのQ−Tof2(MicroMass社製)によって分析し、分析により得られたペプチドのアミノ酸配列をクエリーとして、NCBI(nr)データベースに対して検索処理を行い、タンパク質を同定した。
【0043】
その結果、化合物A固定化磁性ナノビーズに結合するタンパク質として、ATP synthase, H+ transporting, mitochondrial F1 complex, alphasubunit, isoform 1(以下、ATP合成酵素サブユニットαと称する)が同定された。一方、化合物Aを固定していない磁性ナノビーズ由来の試料を泳動したレーンにおいては、ATP合成酵素サブユニットαと同分子量位置のバンドから有意のスコアでヒットするタンパク質が検出されなかった。
【0044】
(実施例3:ウエスタンブロット法による化合物A固定化磁性ナノビーズに結合するタンパク質の確認)
実施例2で用いた結合タンパク質電気泳動用サンプルを5−20%グラジエントゲルに負荷して、200Vの定電圧で1時間、SDS−PAGEを実施した。泳動後のゲルをSequi−Blot PVDF膜(バイオラッド社製)に10Vで1時間転写した後、Blockace(大日本製薬社製)で一晩ブロッキング処理した。一次抗体としてBlockace:TBS−T(10mM Tris、150mM NaCl、pH7.5、0.05% Tween20)=1:3の混合溶液で1,000倍に希釈したanti-OxPhos Complex V subunit α, monoclonal 7H10(#A21350、モレキュラープローブズ社製;抗ATP合成酵素サブユニットα抗体)を用いて室温で1時間インキュベート処理した。その後、PVDF膜をTBS−Tで洗浄した後、Blockace:TBS−T=1:3の混合溶液で1,000倍希釈した二次抗体(Anti-mouse IgG-HRP(セルシグナリング社製;#7076))を用いて室温で1時間インキュベート処理した。化学発光の基質にECL Plus western blotting detection reagents(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用い、FAS-1000Lumino Imaging Analyzer(TOYOBO社製)で化学発光を検出することにより、化合物A固定化磁性ナノビーズに結合したタンパク質を検出した。
【0045】
図2Aに化合物A固定化磁性ナノビーズに結合したタンパク質のSDS−PAGEの結果を示す。また、図2Bにウエスタンブロッティングの結果を示す。実施例2と同様に、ATP合成酵素サブユニットαは、化合物A固定化磁性ナノビーズへの結合タンパク質として検出された一方、化合物Aを固定していない磁性ナノビーズでは検出されなかったことから、ATP合成酵素サブユニットαは化合物Aに特異的に結合することが示唆された。
【0046】
(実施例4:化合物固定化磁性ナノビーズを用いた特異性の確認)
化合物A以外の3種類の化合物をそれぞれ磁性ナノビーズに固定した、化合物固定化磁性ナノビーズに対するATP合成酵素サブユニットαの結合性を調べ、ATP合成酵素サブユニットαが化合物Aに特異的に結合するか否かを確認した。
(1)化合物固定化磁性ナノビーズの製造
【0047】
使用した3種類の化合物は、下記式(2)で示される抗アレルギー化合物(以下、化合物Bと称する)及び2種類の抗糖尿病化合物(化合物C及びDと称する)である。
【0048】
【化2】

【0049】
実施例1と同様の方法に従って、化合物Bを固定化した磁性ナノビーズを製造した。具体的には、実施例1で用いたカルボキシル化磁性ビーズを、脱水ジオキサン(500μL)にて3回洗浄後、脱水ジオキサン(1mL)に懸濁した。この懸濁液にN-hydroxysuccinimide(1M、200μL;ペプチド研究所製)とEDC(38.4mg)をともに添加した後、室温で2時間インキュベーションした。その後、DMF(500μL)にて3回洗浄した磁性ビーズに化合物B溶液(DMFに溶解させたもの)を表2に示すように混合し、この混合溶液にトリエチルアミン(100mM、50μL)を添加した後、37℃で3時間ローテーターを用いて攪拌することによって、カルボキシル化磁性ビーズへの化合物Bの固定化反応を行った。
【0050】
カルボキシル化磁性ビーズに固定化された化合物Bを定量するために、攪拌後の混合溶液を遠心処理してその上清を回収した。さらに、攪拌後の混合溶液から反応後のカルボキシル化磁性ビーズを回収し、回収したビーズに1M エタノールアミン(pH8.0)500μLを添加して、4℃で一晩ローテーターを用いて攪拌した。次いで、攪拌した溶液を遠心処理して、反応後のカルボキシル化磁性ビーズを回収し、回収した反応後のカルボキシル化磁性ビーズを水に懸濁して使用時まで4℃で保存した。
【0051】
固定化化合物量の定量は以下のように行った。すなわち、上記で得た上清5μLをWaters社製HPLC(使用カラム:Symmetry C18 4.6×250mm:酢酸アンモニウム94‐20%グラジェント)にて分析し、遊離したスクシンイミドを標準品のピーク面積から作成した標準直線から定量して、ビーズに固定化した化合物量を求めた。
【0052】
化合物C及びDについても、化合物Bと同様に磁性ナノビーズに固定化した。
【0053】
【表2】

【0054】
(2)ATP合成酵素サブユニットαの化合物固定化磁性ナノビーズへの結合の有無の検討
実施例2で得られたWCL(1mg)に結合バッファーを加え450μLとした。そのWCL溶液を4℃、1時間のプレインキュベーション後、遠心処理(20,400g、5分間)して得られた上清に化合物(化合物A、B、C又はD)固定化磁性ナノビーズ(1mgビーズ当たりの化合物A、B、C及びDの固定化量は、それぞれ23.3、187、157.2及び248nmol)又は化合物を固定していない磁性ナノビーズを100μg(結合バッファー50μLに懸濁)添加し、混合し、4℃で2時間、結合反応を行った。この反応溶液を遠心(20,400g、5分間)して得たビーズを結合バッファーで3回洗浄した。ビーズに100μLのSDS−PAGEサンプルバッファーを添加し、100℃で5分間加熱してビーズに結合しているタンパク質を溶出した。溶出液を遠心した後、上清に300μLの冷却アセトンを添加して−80℃で30分間静置した。この溶液を遠心(20,400g、30分間)して得た沈殿物をSDS−PAGEサンプルバッファー(10μL)に溶解し、100℃で5分間加熱した。化合物A、B、C又はDを固定化した磁性ナノビーズを用いて得られた結合タンパク質電気泳動用サンプル(それぞれ5.0、0.62、0.74及び0.47μL)をSDS−PAGE(5−20%グラジエントゲル、200V定電圧、1時間)に供した。泳動後のゲルを銀染色処理及びウエスタンブロッティング処理(実施例3と同様の処理)した。
【0055】
4種類の化合物固定化磁性ナノビーズへのATP合成酵素サブユニットαの結合の有無を調べた結果を図3に示す。ビーズに結合する総タンパク質量は固定化された化合物によって異なっているが、ウエスタンブロット法による検出では、ATP合成酵素サブユニットα(矢印で示されるバンド)は化合物A固定化磁性ナノビーズでのみ検出され、他の化合物(化合物B、C及びD)固定化磁性ナノビーズでは検出されていなかったことから、ATP合成酵素サブユニットαは化合物Aと特異的に結合することが確認された。
【0056】
(実施例5:化合物AによるATP合成酵素活性阻害)
実施例4においてATP合成酵素サブユニットαが化合物Aに特異的に結合することが確認されたため、次に、化合物AがATP合成酵素活性を阻害するか否かを検討した。
【0057】
(1)ATP合成酵素標品としてのミトコンドリア画分の調製
ミトコンドリア画分の調製は、Mitochondria Isolation Kit(製品コード:MITO-ISO1;シグマ社製)を用い、キット付属の手順書に準じて行った。
【0058】
100nMビタミンD(Wako社製)及び10%FCS(ウシ胎児血清;Moregate社製)を含有するRPMI−1640培地(ギブコ社製)にて大量培養して得たTHP−1細胞をPBSにて2回洗浄した後に凍結保存した。この凍結保存したTHP−1細胞ペレット(300μL)に10倍量の冷却した1×抽出バッファーA(キット付属)とプロテアーゼインヒビターカクテル(終濃度1%;シグマ社製)を添加した。氷上で7mL容量のポッター型ホモジナイザーにて30ストロークのホモジナイズ後に、遠心処理(600g、5分間;本処理を遠心処理1と称する)し、上清をさらに遠心処理(11,000g、10分間;本処理を遠心処理2と称する)し、沈殿物を回収した。得られた沈殿物を再度10倍量の抽出バッファーAで懸濁し、この懸濁液を遠心処理(600g、5分間)し、その上清を遠心処理(11,000g、10分間)した。得られた沈殿物をスクロースバッファー(10mM HEPES、pH7.5、0.25M スクロース、0.1%(v/v)プロテアーゼインヒビターカクテル)に懸濁したものをミトコンドリア画分とした。
【0059】
凍結保存THP−1細胞ペレットに5倍量のCelLytic−Mを加え、この溶液をロータリーシェーカーで15分撹拌した後に、遠心処理(20,000g、15分間)して得られた上清をTHP−1細胞溶解液(THP−1 WCLと称する)とした。
【0060】
遠心処理1により得られた沈殿物に5倍量のCelLytic−Mを加え、この溶液をロータリーシェーカーで15分撹拌した後に、遠心処理(20,000g、15分間)して得られた上清をCfg(600g)pptと称する。また、遠心処理2により得られた上清をCfg(11,000g)supと称する。
【0061】
THP−1 WCL、Cfg(600g)ppt、Cfg(11,000g)sup及びミトコンドリア画分の純度を以下の方法に従って確認した。
【0062】
各画分をBradford Protein Assay Reagent(バイオラッド社製)を用いてタンパク質定量した後、タンパク質濃度が1mg/mLとなるように各画分のサンプルを調整し、サンプルをSDS−PAGEサンプルバッファーに混合し、100℃で5分間加熱した。サンプルを5−20%グラジエントゲルに負荷し(銀染色用に0.5μg、ウエスタンブロット用に5μg)、200Vの定電圧で1時間電気泳動した。泳動後のゲルを銀染色し、タンパク質のバンドを検出した。同様に泳動して得られたタンパク質をSequi−Blot PVDF膜に10Vで1時間転写した後、Blockaceで一晩ブロッキングした。ATP合成酵素サブユニットαの検出は実施例3と同じ条件で行い、チトクロムCの検出は、一次抗体にBlockace:TBS−T=1:3の混合溶液で500倍に希釈したCytochrome C(A-8)(サンタクルーズバイオテクノロジー社製;カタログ番号sc−13156)を、二次抗体にBlockace:TBS−T=1:3の混合溶液で1000倍に希釈したAnti-mouse IgG-HRP(セルシグナリング社製;♯7076)を用いて行った。
【0063】
銀染色及びウエスタンブロットによる分画状態の確認結果を図4に示す。ウエスタンブロット解析の結果、調製したミトコンドリア画分は、ミトコンドリアに存在することが知られているチトクロムCが濃縮されていること、及びATP合成酵素サブユニットαのバンドが強く検出されたことから、ATP合成酵素サブユニットαを含むミトコンドリア画分を取得できたことが確認された。このミトコンドリア画分(以下、ATP合成酵素標品と称する)を被験化合物のATP合成酵素阻害活性の測定に用いた。
【0064】
(2)化合物AによるATP合成酵素阻害活性の測定
化合物AのATP合成酵素阻害活性の測定をInnova Biosciences社のATPase assay kit (high sensitivity)を用いて、キット付属の指示書に従い実施した。
【0065】
具体的には、キットに付属の基質溶液(SB mix)及び反応停止液(Gold mix)を調製した後、96ウェルプレートに適宜希釈したATP合成酵素標品及び化合物Aをスクロースバッファーと合わせて100μLとなるように添加し、25℃、5分間プレインキュベーションを行った。その後、各ウェルに100μLのSB mixを添加し、25℃、30分間のインキュベーションにより酵素反応(ATP加水分解反応)を行い、各ウェルに50μLのGold mixを添加することにより酵素反応を停止させた。その2分後に20μLの安定化剤を加え、25℃、30分間インキュベートした後、630nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダー(Benchmark、バイオラッド社製)により測定した。測定はn=1とし、測定値はサンプル毎にブランク(基質添加前にGold mixを添加して反応を停止)をおいて各サンプル吸光度から差し引いた。基質添加時の酵素量は2μg/mL、DMSOあるいは化合物は1%(2μL)となるように添加した。
【0066】
化合物Aのほかに、ATP合成酵素の特異的な阻害剤であるOligomycin A(フルカ社製)及びAurovertin B(シグマ社製)を陽性対照として用いた。さらに、化合物B並びに他のリウマチ化合物である式(3)で示される化合物(以下、化合物Eと称する;特開平9−59236の実施例32に開示されている方法に従って合成した)及び式(5)で示される化合物(以下、化合物Gと称する;後述の実施例において合成方法を示す)についても、ATP合成酵素阻害活性の有無を検討した。
【0067】
【化3】

【0068】
【化4】

【0069】
反応溶液における化合物A、B、E及びGの終濃度が50、250又は500μMとなるように、それぞれの化合物を反応溶液に添加した。反応溶液におけるOligomycin Aの終濃度は0.001、0.01又は0.1μMとなるように、またAurovertin Bの終濃度は0.5、5又は50μMとなるように、それぞれの化合物を反応溶液に添加した。
【0070】
各化合物がATP加水分解阻害活性を有するか否かを検討した結果を図5に示す。Oligomycin A及びAurovertin Bは、ATP合成酵素を阻害した。化合物A、G及びEについても同様にATP合成酵素阻害活性が認められ、阻害強度はG、A、Eの順に強かった。一方、化合物Bには、ATP合成酵素阻害活性はほとんど認められなかった。
【0071】
(実施例6:抗リウマチ化合物によるマイトジェン刺激マウス脾細胞幼若化抑制活性)
以上の実施例の結果から、抗リウマチ化合物はATP合成酵素サブユニットαに結合し、ATP合成酵素を阻害することにより、抗リウマチ活性を示すものと考えられた。
【0072】
ある化合物が抗リウマチ活性を有するか否かを確認する実験として、マイトジェン(コンカナバリンA(Con A)、リポ多糖(LPS))刺激によるT又はBリンパ球幼若化の抑制試験が広く行われている。
【0073】
そこで化合物A及びE並びに他のリウマチ化合物である式(4)で示される化合物(以下、化合物Fと称する;後述の方法により合成)について、マウス脾細胞の幼若化抑制活性の有無を検討した。
【0074】
【化5】

【0075】
ddYマウス2匹(10週齢、雄性;Slcより購入)の脾臓を摘出し、ペニシリン・ストレプトマイシン溶液(ギブコ社製)にて無菌処理後に、スライドガラスを用いて単細胞として10%FCSを含有するRPMI−1640培地(以下、RPMI−10と称する)にて脾細胞懸濁液を調製した。この懸濁液を遠心処理(4℃、200g、10分間)して得た細胞ペレットに2mLのIOTest3溶液を加えて室温で1分間放置して溶血した。この溶液に8mLのRPMI−10を添加して再度同様の遠心処理をして得た細胞を10mLのRPMI−10にて2回洗浄して得た細胞ペレットをRPMI−10(10mL)に再懸濁した。血球計算盤を用いて細胞濃度を測定し、5×10個/mLの脾細胞懸濁液を調製した。
【0076】
4%DMSO含有RPMI−10にて段階希釈して調製した抗リウマチ化合物溶液(化合物A、E及びF)50μLを96ウェルプレートに添加し(n=3)、これにRPMI−10に溶解したConA(終濃度1μg/mL;シグマ社製)又はLPS(終濃度100μg/mL;カルビオケム社製)50μL、脾細胞懸濁液100μLを添加、混合して、5%CO下、37℃にてインキュベーションした。
【0077】
3日後にCell Counting Kit-8(WST−8;同仁化学研究所社製)を各ウェルに10μL添加して、添加時と1日後に吸光度(450−595nm)をマイクロプレートリーダーで測定することにより、幼若化を評価した。結果を図6に示す。図6から明らかなように、すべての化合物は、ConA及びLPS刺激によるT及びBリンパ球の幼若化を顕著に抑制することが判明した。
【0078】
(実施例7:ATP合成酵素阻害剤によるマイトジェン刺激マウス脾細胞幼若化抑制活性)
特異的なATP合成阻害剤として周知のOligomycin A及びAurovertin Bについて、抗リウマチ活性を示すか否かを検討するため、実施例6と同様に、両化合物の脾細胞幼若化抑制活性の有無について検討した。
【0079】
ddYマウス2匹(12週齢、雄性)から得た脾臓を実施例6と同様に処理して、1×10個/mLの脾細胞懸濁液を調製した。4%DMSO含有RPMI−10に溶解したOligomycin A及びAurovertin Bを50μL、RPMI−10に溶解したConA(終濃度1μg/mL)又はLPS(終濃度100μg/mL)50μL、細胞懸濁液100μLを、それぞれ96ウェルプレートに添加、混合して、5%CO下、37℃にて3日間インキュベーションした。WST−8を各ウェルに10μL添加して、添加時と5時間後に吸光度(450−595nm)をマイクロプレートリーダーで測定することにより、幼若化を評価した。結果を図7に示す。図7から明らかなように、Oligomycin A及びAurovertin Bは、ConA及びLPS刺激によるT及びBリンパ球の幼若化を顕著に抑制することが判明した。
【0080】
(実施例8:ATP合成酵素阻害剤によるマウス脾細胞のサイトカイン産生阻害)
炎症性サイトカインであるTNF−αやTリンパ球増殖に関与するIL−2は、リウマチの病態に深く関与することが報告されている。そこで、ATP合成酵素の特異的な阻害剤であるOligomycin A及びAurovertin Bが、これらサイトカインの産生を阻害するか否かについて検討した。
【0081】
(1)ATP合成酵素阻害剤によるマウス脾細胞のIL−2産生阻害
実施例6と同様に、ddYマウスから脾細胞を調製し、5×10個/mLとなるようにRPMI−10に懸濁させた。マイトジェンとしてConA(終濃度1μg/mL)を使用した。Oligomycin A及びAurovertin Bを4%DMSO/RPMI−10にて段階希釈して被験溶液を作製した。Oligomycin A又はAurovertin Bを50μL、脾細胞懸濁液100μL及びConA50μLを96ウェルプレートに添加し、5%CO下、37℃にて1日培養した。培養後にConA添加及び非添加のプレートから、培養上清を150μL回収した。培養終了の4時間前にWST−8を各ウェルに10μLずつ添加し、添加時と上清回収時に吸光度(450−595nm)をマイクロプレートリーダーで測定した。回収した培養上清のIL−2濃度をELISAキット(R&D社製)にてキット付属のプロトコール通りに行い定量した。結果を図8Aに示す。図8Aから明らかなように、Oligomycin A及びAurovertin Bは、ConA刺激によるマウス脾細胞のIL−2産生を抑制することが確認された。
【0082】
(2)ATP合成酵素阻害剤によるTHP−1細胞のTNF−α産生阻害
1.0×10個/mLとなるようにRPMI−10に懸濁したTHP−1細胞を2個のT75フラスコ(浮遊用;Sumilon;住友ベークライト社製)に50mLずつ入れ、ビタミンD(1mg/mL メタノール溶液;和光純薬社製)を2μL添加し、5%CO下、37℃にて培養した。4日後に培養液75mLを遠心して得たTHP−1細胞を新しいRPMI−10(37.5mL)に懸濁し、ビタミンD溶液を1.54μL添加し、T75フラスコに入れて、5%CO下、37℃にて培養した。1日後に細胞を回収して、1.5×10個/mLとなるようにRPMI−10/25mM HEPESに懸濁した。400μMのATP合成酵素阻害剤(Oligomycin A又はAurovertin B)のDMSO溶液をRPMI−10/25mM HEPESにて10倍に希釈した。RPMI−10にてATP合成酵素阻害剤を段階希釈して被験溶液を作製し、96ウェルプレートに50μLずつ添加した(n=3)。陰性対照には4%DMSO/RPMI−10を用いた。4μg/mLとなるように4%DMSO/RPMI−10/25mM HEPESで希釈したLPSを50μLずつ添加した。その後、THP−1細胞懸濁液を100μL添加して、5%CO下、37℃にて4時間培養した。培養開始時にWST−8を各ウェルに10μLずつ添加し、添加時と培養終了時に吸光度(450−595nm)をマイクロプレートリーダーで測定した。回収した培養上清のTNF−αの濃度をOptiEIA(BD Biosciences社製)を用いてキット付属のプロトコール通りに測定した。なお、酵素基質はSubstrate Reagent Pack(R&D社製)を使用した。結果を図8Bに示す。図8Bから明らかなように、Oligomycin A及びAurovertin Bは、LPS刺激によるTHP−1細胞のTNF−α産生を抑制することが確認された。
【0083】
(実施例9:抗リウマチ化合物によるIgM産生抑制)
実施例6と同様に、ddYマウスから脾細胞を調製し、5×10個/mLとなるようにRPMI−10に懸濁させた。マイトジェンとしてLPS(終濃度100μg/mL;カルビオケム社製)を使用した。Oligomycin A、Aurovertin B、化合物A、化合物E、化合物F又は化合物Gを50μL、脾細胞懸濁液100μL及びLPS50μLを96ウェルプレートに添加し、5%CO下、37℃にて培養した。3日後,96ウェルプレートから、培養上清150μLを回収した。培養上清のIgM濃度をIgM mouse Quantitation kit EIAキット(Bethyl社製)にて添付プロトコール通りに行って定量した。なお、培養上清試料はPBS‐0.05%Tween20にて4、8、16、32、64、128倍希釈して、100μL/ウェルで用いた。
【0084】
結果を図9に示す。被験化合物全て(Oligomycin A、Aurovertin B、化合物A、化合物E、化合物F及び化合物G)が、マウス脾細胞のIgM産生を抑制した。リウマトイド因子である自己抗体の多くがIgMに属する。従って、実施例9の結果に基づき、ATP合成酵素阻害化合物は、Bリンパ球から自己抗体の産生を抑制することによっても、リウマチ等の自己免疫疾患の予防及び/又は治療効果を示すものと考えられる。
【0085】
(化合物Bの合成)
【0086】
【化6】

【0087】
(1)3-ヒドロキシ-4-メトキシシンナモイルアントラニル酸 メチルエステル (3) の合成
3-ヒドロキシ-4-メトキシ桂皮酸(化合物1, 5.83 g, 30.0 mmol)を塩化チオニル(SOCl2,50 mL)に溶解し、N,N-ジメチルホルムアミド(20 μL)を加えて1時間加熱還流した。反応液を濃縮後、残渣にアントラニル酸(化合物2, 5.44 g, 36.0 mmol)、トリエチルアミン(6.26 mL)及びテトラヒドロフラン(100 mL)を加え、4時間加熱還流した。反応混合物を氷水400 mLに注ぎ、クロロホルム(500mL)にて抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。残渣クロロホルム−ヘキサンより再結晶し、標記化合物3(6.81 g, 69.3%)を単黄色結晶性粉末として得た。
MS (ESI) m/z:328 (M+H)+
1H-NMR (CDCl3) δ:3.94 (3H, s), 3.96 (3H, s), 5.64 (1H, s), 6.48 (1H, d, J=15.63Hz),6.86 (1H, d, J=8.30Hz), 7.06-7.11 (1H, m), 7.16-7.21 (2H, m), 7.27 (1H, s),7.56-7.60 (1H, m), 7.69 (1H, d, J=15.63Hz), 8.06 (1H, dd, J=8.06Hz, 1.47Hz),8.87 (1H, d, J=8.59Hz), 11.29 (1H, s).
【0088】
(2)3-[3-(t-ブトキシカルボニルアミノ)プロピル]-4-メトキシシンナモイルアントラニル酸メチルエステル (5) の合成
化合物3(4.09 g, 12.5 mmol)、N-(3-ヒドロキシプロピル)カルバミン酸 t-ブチルエステル(化合物2, 2.41 g, 13.8 mmol)及びトリフェニルホスフィン(3.61 g, 13.8mmol)をテトラヒドロフラン(60 mL)に溶解し、0℃にてアゾジカルボン酸 ジエチルエステル(2.95 mL, 18.7 mmol)を加え、室温にて3時間攪拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル = 2:1)に付し、標記化合物5(5.05 g, 83.4%)を単黄色結晶性粉末として得た。
MS (ESI) m/z:485 (M+H)+
1H-NMR (CDCl3) δ:1.47 (9H, s),2.02-2.08 (2H, m), 3.30-3.41 (2H, m), 3.92 (3H, s), 3.96(3H, s), 4.17 (2H, t, J=5.86Hz), 5.64 (1H, s), 6.47 (1H, d, J=15.38Hz), 6.86(1H, d, J=8.30Hz), 7.08-7.12 (1H, m), 7.21 (1H, d, J=1.95Hz), 7.27 (1H, s),7.55-7.60 (1H, m), 7.66 (1H, d, J=15.63Hz), 8.04-8.07 (1H, m), 8.87 (1H, d,J=8.55Hz), 11.32 (1H, s).
【0089】
(3)3-[3-(t-ブトキシカルボニルアミノ)プロピル]-4-メトキシシンナモイルアントラニル酸 (6) の合成
化合物5(2.42 g, 4.99 mmol)をテトラヒドロフラン(40 mL)に溶解し、0.25N水酸化ナトリウム水溶液(40 mL)を加えて室温にて12時間攪拌した。反応液を氷冷した希塩酸(pH 3, 300 mL)に注ぎ込み、析出した粘調な沈殿物をクロロホルムに溶解後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去して得られた残渣をクロロホルム−ヘキサンより再結晶し、標記化合物6(1.87 g, 79.6%)を無色結晶性粉末として得た。
MS (ESI) m/z:471 (M+H)+
1H-NMR (DMSO-d6) δ:1.37 (9H, s), 1.84-1.90 (2H, m), 2.96-3.02 (2H, m), 3.50 (3H, s),4.14 (2H, t, J=5.86Hz), 6.76 (1H, d, J=15.38Hz), 7.03 (1H, d, J=8.30Hz), 7.14 (1H,t, J=7.32Hz), 7.24 (1H, dd, J=8.30Hz, 1.71Hz), 7.35 (1H, d, J=1.95Hz), 7.54 (1H,d, J=15.63Hz), 7.58-7.62 (1H, m), 8.00 (1H, dd, J=8.06Hz, 1.71Hz), 8.61 (1H,dd, J=8.55Hz, 0.98Hz), 11.29 (1H, s).
【0090】
(4)化合物B(N-(3-アミノプロピルオキシ)-4-メトキシシンナモイルアントラニル酸 (7))の合成
化合物6(2.32 g, 1.30 mmol)をジクロロメタン(45 mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(5 mL)を加えて室温にて1時間攪拌した。反応液を濃縮し、得られた残渣をクロロホルム−ヘキサンより結晶化し、標記化合物7のトリフルオロ酢酸塩(2.30 g, quant.)を単黄色結晶性粉末として得た。
MS (ESI) m/z:371 (M+H)+
1H-NMR (DMSO-d6) δ:1.99-2.06 (2H, m), 3.07-3.12 (2H, m), 3.80 (3H, s), 4.04 (2H, t,J=6.10Hz), 6.75 (1H, d, J=15.63Hz), 6.84-6.86 (1H, m), 6.99 (1H, d, J=8.30Hz),7.13-7.18 (1H, m), 7.29 (1H, dd, J=7.45Hz, 1.71Hz), 7.38 (1H, d, J=1.95Hz),7.56 (1H, d, J=15.63Hz), 7.59-7.61 (1H, m), 7.99-8.02 (1H, m), 8.62 (1H, d,J=8.30Hz), 11.29 (1H, s).
【0091】
(化合物F及び化合物Gの合成)
【0092】
【化7】

【0093】
(1)t-ブチル {3-[4-(3-{[(4-クロロフェニル)アミノ]カルボニル}-2-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イル]プロピル}カルバメート (2) の合成
特開平09-59236に記載された方法に従って調製したN-(4-クロロフェニル)-2-ニトロ-3-ピペラジン-1-イルベンズアミド (1) 541 mg (1.5 mmol), N-Boc-3-ブロモプロピルアミン 357 mg (1.5 mmol) 及び炭酸カリウム 318 mg (2.3 mmol) のDMF懸濁液 (10 ml) を室温で2時間、50℃で2時間撹拌した。反応液に水を加え析出結晶を濾取後、これをクロロホルムに溶かし硫酸マグネシウム(無水)で脱水した後に濃縮した。この残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付しCHCl3:MeOH=10:1留分を濃縮することにより標記化合物 (2) を479 mg (収率 62%) 得た。
1H-NMR (CDCl3) δ: 1.44 (9H, s), 1.63-1.71 (2H, m), 2.46 (2H, t, J = 6.7 Hz),2.54-2.58 (4H, m), 3.02-3.06 (4H, m), 3.16-3.23 (2H, m), 5.26-5.32 (1H, m),7.31 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.39 (2H, d, J = 7.8 Hz), 7.49-7.54 (3H, m), 7.77(1H, s).
ESI-MS: m/z518 (M+H)+.
【0094】
(2)化合物G(3-[4-(3-アミノプロピル)ピペラジン-1-イル]-N-(4-クロロフェニル)-2-ニトロベンズアミド (3))の合成
t-ブチル {3-[4-(3-{[(4-クロロフェニル)アミノ]カルボニル}-2-ニトロフェニル)ピペラジン-1-イル]プロピル}カルバメート (2) 466 mg (0.9 mmol) をジクロロメタン (5 ml) に溶解し、トリフルオロ酢酸 5mlを加えた後、室温で1時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣に1 mol/l 塩酸-エタノール溶液を5 ml加え濃縮した。析出結晶を濾取し乾燥することにより標記化合物G(3) を370 mg (収率 81%) 得た。
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 2.02-2.12 (2H, m), 2.87-2.96 (2H, m), 2.98-3.10 (2H, m), 3.24-3.55(8H, m), 7.41 (2H, dt, J = 9.5, 2.5 Hz), 7.66-7.77 (5H, m), 8.17 (3H, br s),10.91 (1H, s), 11.48 (1H, br s).
Anal. Calcdfor C20H24N5O3Cl 2HCl, H2O:C, 47.21; H, 5.55; N, 13.76. Found: C, 46.73; H, 5.74; N, 13.26.
ESI-MS: m/z418 (M+H)+.
【0095】
(3)化合物F(3-[4-(3-アセチルアミノプロピル)ピペラジン-1-イル]-N-(4-クロロフェニル)-2-ニトロベンズアミド (4))の合成
3-[4-(3-アミノプロピル)ピペラジン-1-イル]-N-(4-クロロフェニル)-2-ニトロベンズアミド (3) 10 mg (0.02 mmol), トリエチルアミン (30 μl)をジクロロメタン (0.2 ml)に溶解し、アセチルクロリド (10 μl)を加えて一晩攪拌した。反応液を濃縮し、高速液体クロマトグラフィーで精製し、標記化合物F (4)を6.5 mg (71 %) 得た。
ESI-MS: m/z 460(M+H)+.
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例2の電気泳動の結果を表す写真である。Cは化合物Aを固定していない磁性ナノビーズを表し、Aは化合物A固定磁性ナノビーズを表す。矢印は、化合物Aに特異的に結合する約52kDaのタンパク質のバンドを表す。
【図2】実施例3の電気泳動及びウエスタンブロットの結果を表す写真である。Aは電気泳動の結果を表し、Bはウエスタンブロットの結果を表す。矢印は、化合物Aに特異的に結合するATP合成酵素サブユニットαのバンドを表す。
【図3】実施例4の電気泳動及びウエスタンブロットの結果を表す写真である。
【図4】実施例5の各画分の純度確認のための電気泳動及びウエスタンブロットの結果を表す写真である。
【図5】実施例5の各化合物のATP合成酵素阻害活性を表すグラフである。縦軸は630nmにおけるΔ吸光度を、横軸は化合物の種類及び濃度を表す。
【図6】実施例6の抗リウマチ化合物による幼若化抑制活性を表すグラフである。AはConAで刺激したときの結果を、BはLPSで刺激したときの結果を表す。
【図7】実施例7のATP合成酵素阻害剤による幼若化抑制活性を表すグラフである。AはConAで刺激したときの結果を、BはLPSで刺激したときの結果を表す。
【図8】実施例8のATP合成酵素阻害剤によるサイトカイン産生阻害活性を表すグラフである。AはConA刺激によるIL-2産生を阻害する結果を、BはLPS刺激によるTNF-α産生を阻害する結果を表す。
【図9】実施例9の抗リウマチ化合物又はATP合成酵素阻害剤によるIgM産生阻害活性を表すグラフである。Aは化合物A、E、F及びGによるATP合成酵素阻害の結果を、BはATP合成酵素阻害剤によるATP合成酵素阻害の結果をそれぞれ示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、インターロイキン2(Interleukin-2;IL-2)の産生阻害剤の同定方法。
【請求項2】
ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、腫瘍壊死因子α(Tumornecrosis factor-alpha; TNF-α)の産生阻害剤の同定方法。
【請求項3】
ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、免疫グロブリンM(ImmunoglobulinM; IgM)の産生阻害剤の同定方法。
【請求項4】
以下の工程を含む、インターロイキン2(Interleukin-2;IL-2)の産生阻害剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
【請求項5】
以下の工程を含む、腫瘍壊死因子α(Tumor necrosis factor-alpha; TNF-α)の産生阻害剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
【請求項6】
以下の工程を含む、免疫グロブリンM(Immunoglobulin M; IgM)の産生阻害剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
【請求項7】
ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、リンパ球の幼若化抑制剤の同定方法。
【請求項8】
以下の工程を含む、リンパ球の幼若化抑制剤の同定方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
【請求項9】
ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)の阻害を指標とする、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を同定する方法。
【請求項10】
以下の工程を含む、自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を同定する方法;
(1) 被験化合物存在下、ATP合成酵素(FOF1-ATP synthase)のATP加水分解活性を測定する工程、及び、
(2) (1)で測定したATP加水分解活性と被験化合物非存在下におけるATP合成酵素のATP加水分解活性を比較する工程。
【請求項11】
自己免疫疾患が、関節リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、インシュリン依存性糖尿病、全身性硬化症又は喘息である、請求項9又は10に記載の自己免疫疾患の予防及び/又は治療剤の有効成分を同定する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−228808(P2007−228808A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50851(P2006−50851)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成15年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「健康安心プログラム/ナノ微粒子利用スクリーニングプロジェクト」委託研究、産業活力再生特別措置法30条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】