説明

自己封止ユニット、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】 フィルターの有効面積の経時的変化を抑制した自己封止ユニット、これを用い
た液体噴射特性の優れた液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】自己封止ユニット10は、液体が流通する液体流路が形成されると共に、前
記液体流路は、フィルターが設置されたフィルター室と、前記液体流路を開放又は閉鎖す
る弁体が設けられた圧力室とを備える自己封止ユニット本体と、前記液体流路を封止し、
かつ、前記圧力室に作用する負圧に基づいて前記圧力室側に変位し、この変位を前記弁体
に伝達することにより前記弁体を移動させて開放させるフィルムとを備えた自己封止ユニ
ットであって、前記液体流路は、前記自己封止ユニットの盤面に平行となるように設けら
れたフィルターが設置されたフィルター設置部51と、該設置されたフィルターの外側に
設けられ、気泡が滞留する気泡室部52とからなるフィルター室33を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己封止ユニット、液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴射ヘッドの代表例として、例えば圧電素子の変位により圧力発生室内のインクに
作用する圧力を利用してノズル開口からインク滴を吐出するインク噴射ヘッドが知られて
いる。従来技術に係るインク噴射ヘッドでは、インクが充填されたインクカートリッジ等
の液体源から供給されたインクを圧電素子や発熱素子等の圧力発生手段を駆動させること
によりノズルから吐出させている。例えば、インクカートリッジにインク供給針を挿入す
ることでインク供給針の導入孔からインクカートリッジ内のインクを液体噴射ヘッドの共
通の液体室であるリザーバーに導入している。
【0003】
この種のインク噴射ヘッドの中には、インクカートリッジ等の液体供給源からインク噴
射ヘッドにインクを供給する流路の途中に設けた自己封止ユニットと組み合わせてインク
噴射ヘッドユニットを構成したものもある(特許文献1参照)。かかるインク噴射ヘッド
ユニットの自己封止ユニットは、ノズル開口からインク滴が吐出されることによりリザー
バーの内部が負圧になったとき弁体を開いてインクカートリッジからのインクをインク噴
射ヘッドのリザーバーに供給する。
【0004】
このような自己封止ユニットでは、流路の一部にフィルターが設けられ、インク中の異
物や気泡をフィルターで除去することができるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−184202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このフィルターにトラップされた気泡が集まってより大きな気泡となってし
まい、フィルターを閉塞してしまうことで、フィルターの有効面積が経時的に変化してし
まうという問題がある。このようにフィルターの有効面積が、クリーニング後次回クリー
ニングとが実行されるまでの間に経時的に変化すると、これを用いた液体噴射装置の液体
噴射特性も経時的に変化してしまい、所望の液体噴射特性を得ることができない場合が考
えられる。
【0007】
なお、このような問題は、インク噴射ヘッドユニットに限らず、インク以外の液体を噴
射する液体噴射ヘッドユニット、及び液体噴射装置においても同様に存在する。
【0008】
本発明は、上記従来技術に鑑み、クリーニング後次回クリーニングが実行されるまでの
間のフィルターの有効面積の経時的変化を抑制することができる自己封止ユニット、これ
を用いた液体噴射特性の優れた液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供すること
を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自己封止ユニットは、液体が流通する液体流路が形成されると共に、前記液体
流路は、フィルターが設置されたフィルター室と、前記液体流路を開放又は閉鎖する弁体
が設けられた圧力室とを備える自己封止ユニット本体と、前記液体流路を封止し、かつ、
前記圧力室に作用する負圧に基づいて前記圧力室側に変位し、この変位を前記弁体に伝達
することにより前記弁体を移動させて開放させるフィルムとを備えた自己封止ユニットで
あって、前記液体流路は、前記自己封止ユニットの盤面に平行となるように設けられたフ
ィルターが設置されたフィルター設置部と、該設置されたフィルターの外側に設けられ、
気泡が滞留する気泡室部とからなるフィルター室を備えたことを特徴とする。
本発明の自己封止ユニットでは、気泡が滞留する気泡室部を設けたことで、気泡室部に
気泡が滞留して、フィルターの有効領域を気泡が閉塞しないので、クリーニング後次回ク
リーニングが実行されるまでの間のフィルターの有効面積の経時的変化を抑制することが
できる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態としては、前記フィルターが、前記液体流路の前記圧力室の
上流側に設けられた上流側フィルターであることが挙げられる。
【0011】
前記フィルター室には、前記自己封止ユニットが設置された場合の鉛直方向上方に、前
記気泡室部が設けられていることが好ましい。前記自己封止ユニットが設置された場合の
鉛直方向上方に、前記気泡室部が設けられていることで、気泡が滞留しやすい。
【0012】
前記フィルター室には、前記フィルター設置部と前記気泡室部との境界に、前記フィル
ムに向かって突出した突起が設けられていることが好ましい。突起が設けられていること
で、フィルターを設置する際に位置決めが容易であり、かつ、気泡を気泡室部内に収まる
ように規制することが可能である。
【0013】
本発明の液体噴射ヘッドユニットは、前記した自己封止ユニット、及び、液体を噴射す
るノズル開口と、該ノズル開口に連通すると共に、前記自己封止ユニットの液体流路と連
通する流路内の圧力発生室に圧力変化を生じさせて、前記ノズル開口から液体を噴射させ
る圧力発生手段とを備えた液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする。フィルターを有効
に用いることができる自己封止ユニットを用いることで、液体噴射ヘッドユニットは、所
望の液体噴射特性を得ることができる。
【0014】
本発明の液体噴射装置は、前記した液体噴射ヘッドユニットを備えたことを特徴とする
。前記した液体噴射ヘッドユニットを備えることで、本発明の液体噴射装置は、所望の液
体噴射特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】インクジェット式記録装置の概略構成図である。
【図2】自己封止ユニット及びヘッドの正面図である。
【図3】自己封止ユニットの外観図である。
【図4】図2の平面図である。
【図5】図2中のV−V線矢視図である。
【図6】図5のフィルター設置部分の(a)一部拡大正面図(b)断面図である。
【図7】(a)本実施形態(b)従来形態のフィルター室の一部拡大正面図である。
【図8】図5の圧力室部分の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1には本発明の一実施形態例に係るインク噴射ヘッドを備えたインクジェット式記録
装置の概略構成、図2にはインク噴射ヘッドの主要部の正面視、図3には自己封止ユニッ
トの外観、図4には図2の平面視、図5には図2中のV−V線矢視を示してある。
【0017】
図1に基づいてインクジェット式記録装置を説明する。同図に示すように、液体噴射装
置としてのインクジェット式記録装置1は液体噴射ヘッドとしてのインクジェット式記録
ヘッド(以下、ヘッドという)4を有している。ヘッド4は、インクカートリッジ2が搭
載されるキャリッジ3に固定されている。キャリッジ3は上部に開放する箱型をなし、記
録紙Sと対面する面(下面)に記録ヘッド4のノズル面が露呈するよう取り付けられると
共に、インクカートリッジ2が収容されるようになっている。そして、このインクカート
リッジ2からのインクが図示しない自己封止ユニットを介してヘッド4に供給される。
【0018】
キャリッジ3はタイミングベルト5を介してステッピングモーター6に接続され、記録
紙Sの紙幅方向(主走査方向)に往復移動するようになっている。これにより、キャリッ
ジ3を移動させながら記録紙Sの上面にインク滴を吐出させて記録紙Sに画像や文字をド
ットマトリックスにより印刷するようになっている。
【0019】
図示のヘッド4には、インクカートリッジ2からインクをヘッド4に供給するための流
路が形成された流路形成部材を兼用する自己封止ユニット(図1には図示せず)が備えら
れている。なお、図1の例では、キャリッジ3に液体源としてのインクカートリッジ2が
収容される例を挙げて説明したが、インクカートリッジ2がキャリッジ3とは別の場所に
収容され、供給管を介してインクがヘッド4の流路形成部材に圧送される構成のインクジ
ェット式記録装置であっても本発明を適用することが可能である。
【0020】
次に、図2に基づいてヘッド4を説明する。ヘッド4の上部には、詳しくは後述する自
己封止ユニット10が設けられ、また、ヘッド4の下部には、ノズルプレート8が設けら
れている。ヘッド4には、図示しないヘッド流路が形成されており、ヘッド流路は、イン
クを貯留するリザーバー室と、圧力発生手段により圧力が発生する圧力発生室とを備え、
圧力発生室は、ヘッド4の下部にノズルプレート8に形成されたノズル開口に連通してい
る。自己封止ユニット10からのインクがヘッド流路に供給されてヘッド流路に満たされ
て圧電素子等の圧力発生手段により圧力を発生させることにより圧力発生室内のインクが
ノズル開口からインク滴を吐出するようになっている。液体噴射ヘッドユニット9は、こ
のヘッド4と自己封止ユニット10とからなる。そして、自己封止ユニット10にはイン
クカートリッジ2からインクが供給されるようになっている。例えば、供給管やインク供
給針を介してインクカートリッジ2から自己封止ユニット10にインクが供給される。
【0021】
図2〜図6に基づいて自己封止ユニット10を具体的に説明する。これらの図に示すよ
うに、自己封止ユニット10は矩形状の盤面を有する直方体ブロック形状とされ、樹脂製
(例えばポリプロピレン、ポリエチレンやポリエチレンテフタレート等)のフィルム20
を樹脂製の本体21の両方の盤面に熱溶着して封止することで各盤面に盤面インク流路1
1が形成されている。即ち、本体21の各盤面には、盤面インク流路11が壁面部12に
より画成され形成されている。盤面インク流路11は、後述するように互いに対称であり
、それぞれ主流路24を有する。主流路24は、入口部25から出口部26に向けて(イ
ンクの流れ方向に向けて)幅広状態とされ(幅広部)、出口部26には第一のフィルター
27が備えられている。第一のフィルター27は、幅広状態の出口部26を包含する面積
で盤面の広い部分に配され、大面積が確保されている。第一のフィルター27では、主に
、後述する弁体35を流通したインクに含まれる異物がトラップされる。
【0022】
第一のフィルター27はインクの流れ方向に沿った面(盤面と平行な面)を有し、主流
路24を流通したインクは盤面の外側から第一のフィルター27を通って本体21の内側
の下部に送られ、2つの排出孔28からヘッド4(図2参照)に送られる。主流路24に
送られたインクは、狭い流路から広い流路に広がって(出口部の幅方向に広がって)端部
の排出孔28からヘッド4(図2参照)の一つのリザーバー室に送られる。つまり、それ
ぞれの主流路24に対して一つのリザーバー室につながる2つの排出孔28が設けられ、
一つの自己封止ユニット10には4つの排出孔28が設けられている(図4参照)。
【0023】
自己封止ユニット10の上部の端部にはインク導入孔31がそれぞれ設けられ、インク
導入孔31にはインクカートリッジ2からインクがそれぞれ供給される。一方(図4中左
側)のインク導入孔31に供給されたインクは、インク流路(液体流路)30を経由して
図2に示した主流路24の入口部25に送られ、他方(図4中右側)のインク導入孔31
に供給されたインクは、インク流路30を経由して図2の紙面の裏側に設けられた主流路
24の入口部25に送られる。即ち、本実施形態の自己封止ユニット10においては、対
称な二つのインク流路30が設けられている。
【0024】
インク導入孔31につながるインク流路30は、図4中矢印Aで示すように、一方(図
4中左側)のインク導入孔31に供給されたインクが、図4、図5中上側に流通した後下
側に向かい、フィルター室33に設けられた第二のフィルター(上流側フィルター)32
を流通して図2に示した圧力室34に送られるように形成されている。また、インク流路
30は、図4中矢印Bで示すように、他方(図4中右側)のインク導入孔31に供給され
たインクが、図4、図5中下側に流通した後、図2に示したフィルター室33に設けられ
た第二のフィルター32を流通して図4、図5中上側に向かい、図2の紙面の裏側に存在
する圧力室34に送られるように形成されている。第二のフィルター32は盤面と平行な
面を有し、第一のフィルター27と平行な状態で配されている。図6に示すように、フィ
ルター室33は、本実施形態では、第二のフィルター32が設置されたフィルター設置部
51と、フィルター設置部51の上方に設けられた気泡室部52とからなる。
【0025】
フィルター室33について、以下図6及び図7を用いて詳細に説明する。フィルター室
33の下方側には、第二のフィルター32が設置されたフィルター設置部51が設けられ
ている。具体的には、第二のフィルター32は、その外周部がフィルター室33の底面に
設けられた固定用壁面部53に固定され設置されている。この第二のフィルター32を固
定する固定用壁面部53により区画される空間、即ち、第二のフィルター32に対向する
空間が、フィルター設置部51である。なお、第二のフィルター32は、この固定用壁面
部53により固定された部分より内側が有効に用いることができる有効領域であり、この
有効領域の面積を有効面積という。例えば、この有効領域が気泡により閉塞されると、フ
ィルターの有効面積が減少するものである。
【0026】
また、フィルター室33には、フィルター室33内の気泡を滞留させるために気泡室部
52が設けられている。この気泡室部52は、フィルター設置部51の第二のフィルター
32の面方向の上方側に設けられている。言い換えれば、気泡室部52は、第二のフィル
ター32が対向しておらず、露出した圧力室34の底面と対向している空間である。
【0027】
このように気泡室部52に気泡が滞留し、第二のフィルター32に気泡が接触しないの
で、本実施形態においては、クリーニングを実施する間隔において第二のフィルター32
の有効面積が経時的に変化しない。即ち、気泡室部52は、クリーニングを実施する間に
フィルター室33内に滞留する気泡の量を見積もって設計されている。フィルター室33
に溜まった気泡は、定期的な気泡排出のためのクリーニングによって吸引されて小さくな
るので、気泡室部52よりも気泡Bが大きくなるようなことはない。
【0028】
図7を用いて具体的に説明すると、従来の自己封止ユニット10Xにおいては、例えば
、図7(b)に示すように、フィルター室33Xの底面部全面に第二のフィルター32X
が設けてあり、気泡BXが第二のフィルター32Xにトラップされフィルター室33Xの
上方で集まって成長する。これにより、経時的に第二のフィルター32Xの有効面積が小
さくなってしまう。言い換えると、第二のフィルター32Xは、気泡BXが常に上方に残
存していることから、有効領域内に、常に有効に利用することができない領域を持つこと
になっていた。
【0029】
しかしながら、本実施形態においては、図7(a)に示すように、第二のフィルター3
2にトラップされた気泡Bは、フィルター設置部51の上方の気泡室部52に成長しなが
ら滞留する。本実施形態では、第二のフィルター32が設置されたフィルター設置部51
の上方に、気泡Bが滞留する気泡室部52を設けてこの気泡室部52に気泡を滞留させて
いるので、気泡Bにより第二のフィルター32が閉塞されることがなく、第二のフィルタ
ー32の有効面積が、クリーニング後次回クリーニングが実行されるまでの間に経時的に
変更されない。
【0030】
ここで、本実施形態では、フィルター室33を拡張して気泡室部52を新たに設けるの
ではなく、フィルター室33の気泡が溜まる上部に予め第二のフィルター32を設けずに
気泡室部52としている。このように有効領域の外側に気泡室部52を設けることで、第
二のフィルター32が気泡により閉塞されないようにして経時的に第二のフィルター32
の有効面積が小さくなってしまうことを防止している。かつ、このようにもともと気泡が
滞留しやすい場所には第二のフィルター32を設けないことで、コストを削減することが
できる。また、本実施形態ではフィルター室33を拡張しないので、フィルター室33上
に設けられたフィルム20について設計変更する必要がなく、簡易に有効面積の経時的な
減少を抑制することができる。
【0031】
なお、第二のフィルター32の有効面積が経時的に減少すると、液体噴射装置の液体噴
射特性が経時的に劣化してしまうこととなるので問題であるが、本実施形態のように有効
面積が変化しない場合には、有効面積自体を小さく設定したとしても問題とはならない。
【0032】
また、本実施形態においては、フィルター室33の気泡室部52には、フィルター設置
部51との境界部に、突起54が設けられている。突起54は、気泡室部52の底面に、
フィルム20に向かって突出して設けられている。突起54は、断面視において第二のフ
ィルター32よりも高くなるように、かつ、フィルム20には触れないように設けられて
いる。この突起54を設けることで、第二のフィルター32を設置する場合に位置決めを
行うことができると共に、気泡Bがフィルター室33内に滞留した場合に、気泡Bが下方
に、即ち第二のフィルター32側に行かないように気泡Bを規制することができる。
【0033】
このように、本実施形態においては、フィルター室33に気泡室部52を設けることで
、フィルターの有効面積が経時的に変化することを防止している。
【0034】
図2〜図5に戻る。第二のフィルター32と圧力室34との間のインク流路30には弁
体35がそれぞれ設けられ、ヘッド4(図2参照)のリザーバー室の圧力が低下した際に
、即ち、インクが吐出されて主流路24側の圧力が相対的に低下した際に弁体35がイン
クの流通を許容するように作動する。
【0035】
すなわち、所定の圧力でインクがインク導入孔31から供給される状態にある場合に、
ヘッド4(図2参照)のリザーバー室にインクが貯留されている際、弁体35は閉状態に
され、インクの吐出により後流側の圧力が低下すると、これに伴い発生する負圧力により
弁体35が開状態にされてインクが供給される。
【0036】
ここで、弁体35について図8を用いて説明する。弁体35は、軸部40と、軸部40
の一端側に軸部40と一体となって形成された円板部41とからなり、軸部40が、圧力
室34に形成された貫通孔42に挿通されている。円板部41の貫通孔42側には、貫通
孔42の周囲に亘って第一凸部43が貫通孔42側に向かって凸となるように設けられて
いる。円板部41の背面(第二のフィルター32側)には、第一バネ44の一端が接続さ
れており、第一バネ44の他端は、バネ座45に接続されている。バネ座45は、フィル
ター室33の底面部を構成しており、バネ座45には、インクの流通する流通孔46が形
成されている。このような第一バネ44は、バネ座45がフィルター室33に固定されて
いることから、弁体35をフィルム20側に付勢する。この場合には、第一凸部43と圧
力室34の底面とにより、弁体35が閉状態となる。また、圧力室34には、正面視にお
いて円形状の受圧板47が設けられている。受圧板47の圧力室34の底面部側には、第
二バネ48の一端が接続されており、第二バネ48の他端は、圧力室34の底面の、貫通
孔42の周囲に設けられた第二凸部49の周囲に接続されている。このような第二バネ4
8は、受圧板47をフィルム20側に付勢する。本実施形態では、受圧板47は、フィル
ム20が圧力室34側に変位した場合にフィルム20と同時に圧力室34側に変位するも
のであり、受圧板47が第二バネ48の付勢力に抗して変位することで弁体35に当接し
て弁体35を移動させる。
【0037】
フィルム20は、圧力室34内に負圧が作用すると、即ち、インクの吐出により後流側
の圧力が低下して圧力室34内の圧力が自己封止ユニットの外気圧よりも低い圧力になる
と、圧力室34側に変位し、この変位を弁体35に伝達する。このことにより弁体35に
作用する第一バネ44の付勢力に抗し、受圧板47を介して弁体35を移動させることに
よりインク流路30と圧力室34との間を開状態とする。また、弁体35及び受圧板47
は圧力室34の中心から偏心させて配設してある。
【0038】
また、本実施形態の自己封止ユニット10の主流路24にはインクの搬送方向(図2中
上下方向)に延びる段差部としての棚部36が形成されている。棚部36は主流路24の
端部(幅広部の両側端部)に形成され、深さが浅くされた状態になっている。主流路24
の端部に棚部36を設けたことにより、主流路24に気泡が混入した際に、入口部25寄
りの狭い流路に気泡が浮遊して深さが浅くされた棚部36に気泡が侵入することが阻止さ
れる。このため、主流路24に気泡が混入しても、インクは棚部36を流通してヘッド4
(図2参照)に供給される。
【0039】
上述した実施形態においては、第二のフィルター32を小さくして気泡室部52を設け
たが、これに限定されない。例えば、フィルター室33をさらに上方に拡張して設けて、
第二のフィルター32は従来と同一の大きさとして、拡張した部分にフィルター室33を
設けてもよい。
【0040】
上述した実施形態においては、第二のフィルター32の最外周部を固定するように固定
用壁面部53を設けたが、これに限定されない。例えば、インク流路30のフィルター室
33における開口の周囲に固定用壁面部53を設けて第二のフィルター32を固定しても
よい。この場合においても、この固定された部分よりも外側に気泡室部52を設ければよ
い。
【0041】
また、本実施形態においては、気泡室部52には第二のフィルター32を設けなかった
が、気泡室部52には、第二のフィルター32が設けてあってもよい。即ち、気泡室部5
2は、少なくとも第二のフィルター32の固定用壁面部53により固定された領域の外側
であればよい。この範囲に気泡室部52が設けてあることで、第二のフィルター32の有
効面積が経時的に減少することが抑制できるからである。
【0042】
上述した実施形態においては、気泡室部52をフィルター室33の上方に設けたが、こ
れに限定されない。気泡が溜まりやすい位置、即ち自己封止ユニットの設置時において床
面とは逆側に気泡室部52を設ければよく、例えば、自己封止ユニットが上下逆に設置さ
れるような場合には、気泡室部52を下方に設ければよい。
【0043】
また、本実施形態では、気泡室部52の底面が、フィルター室33の底面と同一平面に
なるように設けられているが、これに限定されない。例えば、より多くの気泡を集めるた
めに、気泡室部52の底面を、フィルター室33の底面よりも深くなるように設けても良
い。
【0044】
上述した実施形態においては、フィルム20と受圧板47とが固着されているものを示
したが、これに限定されない。フィルム20と受圧板47とが固着されていなくてもよい

【0045】
さらに、上述した実施形態においては、液体噴射ヘッドの一例としてインクジェット式
記録ヘッドを挙げて説明したが、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたもので
あり、インク以外の液体を噴射する液体噴射ヘッドにも勿論適用することができる。その
他の液体噴射ヘッドとしては、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種の
記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド
、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電
極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等が挙げられ
る。
【符号の説明】
【0046】
1 インクジェット式記録装置、 2 インクカートリッジ、 4 記録ヘッド、 1
0 自己封止ユニット、 20 フィルム、 21 本体、 24 主流路、 25 入
口部、 26 出口部、 27 第一のフィルター、 28 排出孔、 30 インク流
路、 31 インク導入孔、 32 第二のフィルター、 33 フィルター室、 34
圧力室、 35 弁体、 47 受圧板、 52 気泡室部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流通する液体流路が形成されると共に、前記液体流路は、フィルターが設置され
たフィルター室と、前記液体流路を開放又は閉鎖する弁体が設けられた圧力室とを備える
自己封止ユニット本体と、
前記液体流路を封止し、かつ、前記圧力室に作用する負圧に基づいて前記圧力室側に変
位し、この変位を前記弁体に伝達することにより前記弁体を移動させて開放させるフィル
ムとを備えた自己封止ユニットであって、
前記液体流路は、前記自己封止ユニットの盤面に平行となるように設けられたフィルタ
ーが設置されたフィルター設置部と、該設置されたフィルターの外側に設けられ、気泡が
滞留する気泡室部とからなるフィルター室を備えたことを特徴とする自己封止ユニット。
【請求項2】
前記フィルターが、前記液体流路の前記圧力室の上流側に設けられた上流側フィルター
であることを特徴とする請求項1記載の自己封止ユニット。
【請求項3】
前記フィルター室には、前記自己封止ユニットが設置された場合の鉛直方向上方に、前
記気泡室部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の自己封止ユニット

【請求項4】
前記フィルター室には、前記フィルター設置部と前記気泡室部との境界に、前記フィル
ムに向かって突出した突起が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一
項に記載の自己封止ユニット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の自己封止ユニット、
及び、液体を噴射するノズル開口と、該ノズル開口に連通すると共に、前記自己封止ユニ
ットの液体流路と連通する流路内の圧力発生室に圧力変化を生じさせて、前記ノズル開口
から液体を噴射させる圧力発生手段とを備えた液体噴射ヘッドを備えたことを特徴とする
液体噴射ヘッドユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の液体噴射ヘッドユニットを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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