説明

自己捲縮性複合繊維及びその製造方法

【課題】伸縮性、捲縮発現性及び紡糸性に優れた複合繊維、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレート(C−PBT)とを含むサイドバイサイド型複合ポリエステル繊維を提供する。但し、PTTとC−PBTとの重量比は30:70〜70:30の範囲であり、PTTの固有粘度(IVPTT)はC−PBTの固有粘度(IVC−PBT)以上であり、PTTとC−PBTの固有粘度は以下の関係(1)〜(3):(1)1.20dL/g≧IVPTT≧0.84dL/g;(2)0.84dL/g≧IVC−PBT≧0.55dL/g;(3)0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0dL/gを満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレートと、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレートとからなる自己捲縮性複合繊維、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自己捲縮性複合繊維は、ほとんどが固有粘度の異なる2種のポリマーを含むサイドバイサイド型複合繊維のタイプである。この2種のポリマー間の収縮の差が複合繊維の自己捲縮性を引き起こす。自己捲縮性を生じるための必要条件としては、必要な潜在捲縮性を生じる、2種のポリマー間の収縮及び弾性率の差が挙げられる。収縮の差の他に、この2種の構成要素は、相互の接着性が非常に良好でなければならない。しかし、異種のポリマーを使用する必要はない。何故なら、2種のポリマー間の配向、結晶性又は相対粘度の差もまた、収縮の差の原因となりうるからである。しかしながら、一般的には、同一材料の間の収縮の差は小さく、高伸縮性のための高収縮差の必要条件を満足させることはできない。
【0003】
しかし、紡糸口金から2種の溶融ポリマーを押し出すことによってサイドバイサイド型複合繊維を溶融紡糸する場合、この2種のポリマーの固有粘度の差が大きすぎると、紡糸するに連れてフィラメントは曲がってしまう。曲がりが大きくなると、フィラメントは紡糸口金の下面に付着して破断し、紡糸の運転がうまく行えなくなる。
【0004】
米国特許第3,671,379号公報は、サイドバイサイド構成の少なくとも2種のポリマーを含む複合繊維を開示している。前記米国特許は、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(PTT/PET)、ポリテトラメチレンテレフタレート/ポリエチレンテレフタレート(PBT/PET)、ポリトリメチレンテレフタレート/ポリトランスシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PTT/PCHT)を含む様々な材料を利用して、捲縮性複合繊維を製造することを記載している。
【0005】
特開平04−308271号公報は、固有粘度が異なる2種のポリエチレンテレフタレートからなるサイドバイサイド型複合繊維を開示している。特開平05−295634号公報は、高収縮性のポリエチレンテレフタレートからなるサイドバイサイド型複合繊維を開示している。上記特許の複合繊維は、確かにある程度の伸縮性を得ることができる。しかし、こうした複合繊維の伸縮性はこの複合繊維から作られた織物では不十分であり、伸縮性織物の要求性能を満足することができない。上記のサイドバイサイド型複合繊維は、織物によって負わされる拘束荷重下での捲縮発現性が低い。
【0006】
特開平11−189923号公報には、ポリトリメチレンテレフタレートと固有粘度の低いポリエチレンテレフタレートを用いることによって、サイドバイサイド型複合繊維を製造する方法が開示されている。特開2002−30527号公報には、固有粘度の高いポリトリメチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートを用いることによって、サイドバイサイド型捲縮複合繊維を製造する方法が開示されている。上記特許の方法は、固有粘度が高すぎるポリマーを使用している。ポリマーの溶融粘度が高すぎると流れ性が悪くなり紡糸の運転が難しくなる。
【0007】
したがって、本発明は、高捲縮性及び高捲縮率を有し、上記の欠点を克服したサイドバイサイド型複合繊維を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、伸縮性、捲縮発現性及び紡糸性に優れた複合繊維、及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレート(C−PBT)を含むサイドバイサイド型複合ポリエステル繊維を提供する。但し、PTTとC−PBTとの重量比は30:70〜70:30の範囲であり、PTTの固有粘度(IVPTT)はC−PBTの固有粘度(IVC−PBT)以上であり、PTTとC−PBTの固有粘度は以下の関係(1)〜(3):
(1)1.20dL/g≧IVPTT≧0.84dL/g
(2)0.84dL/g≧IVC−PBT≧0.55dL/g
(3)0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0dL/g
を満足する。
【0010】
こうして得られた複合繊維の捲縮率は40%を超えるものである。PTTとC−PBTの固有粘度の差は、好ましくは≧0.15dL/gであり、より好ましくは≧0.25dL/gである。
【0011】
本発明はまた、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレート(C−PBT)を、紡糸口金からサイドバイサイド型複合繊維に溶融紡糸するステップを含む、サイドバイサイド型複合繊維の製造方法も提供する。但し、PTTとC−PBTとの重量比は30:70〜70:30の範囲であり、PTTの固有粘度(IVPTT)はC−PBTの固有粘度(IVC−PBT)以上であり、PTTとC−PBTの固有粘度は以下の関係(1)〜(3):
(1)1.20dL/g≧IVPTT≧0.84dL/g
(2)0.84dL/g≧IVC−PBT≧0.55dL/g
(3)0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0dL/g
を満足する。
【0012】
PTTとC−PBTの固有粘度の差は、好ましくは≧0.15dL/gであり、より好ましくは≧0.25dL/gである。
【0013】
PTTとC−PBTの溶融流は、紡糸口金のオリフィス又はキャピラリーを出た後に集束することが好ましい。これにより、複合フィラメントの曲がりが低減し、安定した紡糸運転が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のサイドバイサイド型複合繊維は、捲縮率≧40%、優れた伸縮性、捲縮発現性及び紡糸性を有するなどの利点を有する。この複合繊維は、PTT及びPBT材料の弾性、並びに熱収縮後の繊維構成要素の長さの差によって引き起こされる捲縮の二重の効果によって、特に織物の拘束荷重下で、優れた伸縮性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の複合繊維は、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレート(C−PBT)を含む。但し、PTTは主としてテレフタル酸とプロピレングリコールの反復単位を含み、C−PBTは主としてテレフタル酸とブチレングリコールの反復単位を含む。
【0016】
必要に応じてPTT又はC−PBTに様々な添加剤を含有させることができる。これらの添加剤としては、艶消剤、熱安定剤、脱泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、難燃剤、導電剤及び顔料などが挙げられる。
【0017】
C−PBTは変性ポリマー、即ち、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレートである。本発明者は、PBTの固有粘度が0.55dL/g未満であると、PBTの溶融粘度が低すぎて、エステルペレットの造粒及び紡糸の安定性が不良になることを見出した。本発明者は、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムをPBTに添加すると、エステルペレットの固有粘度が0.55dL/gと低く保持され、かつ溶融粘度が上昇するので、エステルペレットの造粒の問題が解決され、紡糸運転の安定性が得られることを見出した。しかし、PBTに添加する1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムの量が2モル%を超えると、紡糸装置で使用される口金パック上にゲルが著しく蓄積する傾向になり、これが、紡糸の運転を悪くし、口金パックの寿命を低下させ、製造コストを上昇させるおそれがある。さらに、製造される複合繊維の強度及び捲縮率がどちらも低下する。本発明では、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するC−PBTを使用して、エステルペレットの造粒に関する問題を解決し、安定な溶融紡糸プロセスを維持する。そして、本発明で得られる複合繊維は、所望の強度、高い捲縮発現性及び捲縮率も有する。
【0018】
本発明によれば、PTTの固有粘度(IVPTT)及びC−PBTの固有粘度(IVC−PBT)は、以下の関係(1)〜(3):
(1)1.20dL/g≧IVPTT≧0.84dL/g
(2)0.84dL/g≧IVC−PBT≧0.55dL/g
(3)0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0dL/g
を満足する。
【0019】
PTTの固有粘度はC−PBTの固有粘度以上であり、PTTとC−PBTの固有粘度の差(ΔIV)は、好ましくは≧0dL/g、より好ましくは≧0.15dL/g、特に好ましくは≧0.25dL/gである。ΔIV≧0.65dL/gの場合は、紡糸口金を出る溶融フィラメントの曲がりが著しくなり、紡糸運転の安定性が悪くなる。
【0020】
ΔIVが複合繊維の捲縮率(CI)を上昇させる。ΔIV≧0dL/gの場合は、三次元捲縮と高い捲縮率が得られる。ΔIV≧0.15dL/gの場合は、優れた三次元捲縮が得られる。ΔIV≧0.25dL/gの場合は、捲縮率はさらに良くなる。PTTの固有粘度がC−PBTの固有粘度より低いと、捲縮率が低下し、弾性が悪くなる。
【0021】
PTTの固有粘度が0.84dL/gより低いと、捲縮率が悪くなる。PTTの固有粘度が1.2dL/gより高いと、捲縮率は安定するが、流動性が低下し、紡糸の運転が難しくなる。
【0022】
PBTの固有粘度が0.55dL/gより低いと、造粒に問題が出てくる。即ち、エステルペレットの製造が困難になる。そして、溶融粘度が低下する傾向になる。これにより紡糸の運転が困難になる。本発明によれば、エステルペレットの造粒に関する問題を解決し、紡糸の運転を安定させるために、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムをPBTに添加する。C−PBTの固有粘度が0.84dL/gより高いと、複合繊維の捲縮率が悪くなる。
【0023】
本発明では、PTTとC−PBTとの重量比が30:70〜70:30の範囲にあると、優れた三次元捲縮複合繊維を得ることができる。PTTとC−PBTとの重量比が40:60〜60:40の範囲にあると、より優れた三次元捲縮複合繊維を得ることができる。PTTとC−PBTとの重量比が45:55〜55:45の範囲にあると、最も優れた三次元捲縮複合繊維を得ることができる。
【0024】
本発明者は、2種の溶融ポリマーが紡糸口金オリフィス(キャピラリー)内で集束すると、押し出されたフィラメントがオリフィスを出た後に著しい曲がりを生じ、紡糸の運転が困難になることを見出した。本発明によれば、2種のポリマーは、別々の紡糸口金オリフィスを通って流れ、オリフィスを出た後に集束する。これにより、押し出されたフィラメントの曲がりが少なく、紡糸の運転が安定化する。紡糸口金は、湿気の放出及び蒸散のために、押し出されたフィラメントが、外面の長さ方向に少なくとも1つの溝を持つことができるように構成することができる。
【0025】
図1は、本発明で使用される溶融紡糸装置を示す概略図である。PTTとC−PBTは、溶融紡糸機の紡糸口金(1)のオリフィスを出た後に集束して、複数のサイドバイサイド型溶融フィラメント(2)を形成する。溶融フィラメント(2)は、急冷装置(3)からの冷却ガスによって冷却され、仕上げ剤付与装置(4)を介して仕上げ剤が塗布され、引取りローラー(5、6)の周りを通り、巻取り装置(7)によって紡糸パッケージ(8)に巻き取られる。
【0026】
本発明で使用される紡糸口金(1)を図5に示す。紡糸口金オリフィスの直径は0.2mmであり、一対のオリフィスの中心間距離は1mmであり、かつ一対のオリフィスの各オリフィスは、垂直方向対して角度θが約10°〜30°傾斜している。本発明者は、従来の設計では、2種の溶融ポリマーが紡糸口金を出る前にオリフィス内で集束するために、紡糸口金を出た後で溶融フィラメントが著しく曲がり、紡糸の運転が困難になることを見出した。本発明では、2種の溶融ポリマーは、別々の紡糸口金オリフィスを通って流れ、オリフィスを出た後に集束する。したがって、複合フィラメントの曲がりはわずかであり、紡糸の運転は安定である。紡糸口金は、湿気の放出及び蒸散のために、押し出されたフィラメントが、外面の長さ方向に少なくとも1つの溝を持つことができるように構成することができる。
【0027】
図2は、本発明で使用される繊維延伸装置を示す概略図である。図1の紡糸パッケージ(8)から巻出される複合繊維(81)は、一対の駆動ローラー(9)を通って、延伸ローラー(10)によって延伸され、加熱プレート(11)によってセットされ、冷却ローラー(12)によって冷却され、交絡装置(13)によって交絡され、巻取り装置(14)によって糸管(15)に巻き取られる。
【0028】
本発明によれば、固有粘度の異なるPTTとC−PBTを溶融紡糸装置で溶融し、計量ポンプを使用してそれぞれ定量供給し、紡糸口金を出た後に集束して、サイドバイサイド型複合繊維を形成する。紡糸口金を出た後に2種の繊維構成要素を集束することによって、複合フィラメントの曲がりを減少させることができるだけでなく、紡糸運転の安定性を改善することもできる。紡糸温度は、通常、240℃〜270℃の範囲である。紡糸されたフィラメントは、冷却され、仕上げ剤がその上に塗布され、2500〜4500m/分の速度で巻き取られる。本発明の一実施形態によれば、紡糸されている繊維を、延伸装置を介して熱延伸プロセスにかけて所望の特性を得る。
【0029】
延伸倍率は適当に選択される。より優れた捲縮性を生じるには、延伸後の残留伸びが15〜40%であることが好ましい。残留伸びが低すぎると、複合フィラメントは破断しやすく、プロセス運転上の問題を引き起こす。
【0030】
本発明の複合繊維は、仮より法又は直接紡糸/延伸法を用いて製造することもできる。
【0031】
図6は、本発明の複合繊維の断面を示す走査型電子顕微鏡写真であり、複合繊維は24本のサイドバイサイド型複合フィラメントを含んでいる。
【0032】
本発明の利点としては以下を挙げることができる。本発明の複合繊維の捲縮率は40%を超えることができ、これは市販の製品の捲縮率よりはるかに高い。本発明の複合繊維の捲縮率の外観の耐久性は、市販の製品の耐久性より優れている。本発明の複合繊維からなる編物及び織物は、伸縮性と弾性が優れている。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0034】
捲縮率(CI):
複合繊維の各試料は、0.06g/デニールの荷重(即ち、試料のデニール数×0.06g)をかけてつり下げ、100℃の沸騰水のバスに15分間沈めた。次いで試料を水から取り出して室温まで冷却した。次いで0.06g/デニールの荷重を取り除き、0.02g/デニールの荷重と交換した。そして、試料の長さを測定し「L」と記録した。0.02g/デニールの荷重を除去し、4g/デニールの荷重と交換した。そして、試料の長さを測定し「L」と記録した。捲縮率(CI)は以下のようにして算出される。
CI(%)=[(L−L)/L]×100
【0035】
紡糸運転:
紡糸性は、24時間以内のフィラメント破断数を数えた後、以下の尺度に基づいて等級付けした。
◎:フィラメント破断0〜2個、非常に優れている
○:フィラメント破断3〜4個、優れている
×:フィラメント破断5個以上、不良
【0036】
捲縮の外観:
捲縮の外観は、1センチ当たりの繊維の回転数を数えた後、以下の尺度に基づいて等級付けした。
◎:15回転以上/cm、非常に優れている
○:10〜15回転/cm、優れている
×:5〜10回転/cm、不良
【0037】
偏向角:
溶融ポリマーが紡糸口金を出る角度(即ち、溶融ポリマーとオリフィス中心線の間の角度)を測定した。
◎:約0°〜5°の間、非常に優れた紡糸
×:45°を超える、悪い紡糸、フィラメントが紡糸口金表面に付着
【0038】
実施例1〜6、比較例1〜6
固有粘度が異なるPTTとC−PBTを、図1に示した装置を使用して、重量比50:50でサイドバイサイド型構成で共押出した。C−PBTは、1モル%の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有していた。紡糸口金は24対のオリフィスを有し、押出温度は260℃である。フィラメントは、順次、冷却され、仕上げ剤を塗布され、3000m/分の速度でパッケージに巻き取られる。図2の装置を使用することによって、パッケージのフィラメントは引き取られ、延伸倍率1.6及び温度80℃で熱延伸法にかけられて、100/24の(即ち、100デニール及び24本の単一フィラメントを有する)繊維を形成する。この複合繊維の捲縮率、捲縮の外観及び紡糸性を表1に示した。
【表1】

【0039】
比較例7〜9
PTTとPBTの固有粘度は異なる。PBTは固有粘度の低い通常のポリマーであり、1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウム(DMS)を含有していない。その他の条件及び調製方法は、実施例1〜6のものと同一である。PBTの造粒、捲縮の外観及び紡糸性を表2に示した。
【表2】

【0040】
実施例7〜10、比較例10〜12
PTTとC−PBTの固有粘度は、それぞれ0.90dL/g及び0.55dL/gであり、延伸倍率は1.6〜1.8である。その他の条件及び調製方法は実施例1〜6のものと同一である。C−PBT中の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウム(DMS)の量、C−PBTのエステルペレットの造粒、及び得られた複合繊維の捲縮の外観を表3に示した。
【表3】

【0041】
実施例11
図3の直接紡糸/延伸装置を使用して、24対のオリフィスを有する紡糸口金から温度260℃で繊維を押し出した。PTTとC−PBTの固有粘度は、それぞれ0.90dL/g及び0.55dL/gである。C−PBTは、1モル%の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有していた。PTTとC−PBTの重量比は50:50である。図3を参照すると、溶融ポリマーは、紡糸口金(1)のオリフィスを出た後に集束してサイドバイサイド型溶融フィラメント(2)を形成する。溶融フィラメント(2)は、急冷装置(3)からの冷却ガスによって冷却され、仕上げ剤付与装置(4)によって仕上げ剤を塗布され、40〜80℃に加熱された引取りローラー(27)と、延伸倍率1.5で温度100〜160℃の延伸/セッティングローラー(28)とを通り、交絡装置(29)によって交絡され、速度4500m/分で巻取り装置(30)によってチーズパッケージ(31)に巻き取られて、75/24の(即ち、75デニール及び24本の単一フィラメントを有する)複合繊維を形成する。この複合繊維の外観は優れた三次元捲縮を示し、この繊維の捲縮率は45%である。
【0042】
実施例12
図1の紡糸装置を使用して、24対のオリフィスを有する紡糸口金から紡糸温度260℃で複合繊維を押し出す。PTTとC−PBTの固有粘度は、それぞれ0.90dL/g及び0.55dL/gである。C−PBTは、1モル%の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有していた。PTTとC−PBTの重量比は50:50である。紡糸されたフィラメントは、冷却され、その上に仕上げ剤が塗布され、3000m/分で図1に示したパッケージ(8)に巻き取られる。図4の仮より装置を用いて、パッケージ(8)から巻出された複合繊維(81)は、第1ローラー(16)、第1加熱プレート(17)、第2ローラー(18)、仮より装置(19)、第3ローラー(20)、交絡装置(21)、第2加熱プレート(22)、第4ローラー(23)、仕上げ剤供給系(24)によって順次加工され、巻取り装置(25)によって加工糸のパッケージ(26)に巻き取られる。この実施例では、仮よりプロセスを円心倍率1.6で行って、75/24の(即ち、75デニール及び24本の単一フィラメントを有する)捲縮複合繊維が得られる。こうした複合繊維の外観は優れた三次元捲縮を示し、捲縮率は65%である。
【0043】
実施例13、比較例13
図1の溶融紡糸装置を用いて、24対のオリフィスを有する紡糸口金から温度260℃で溶融ポリマーを押し出すことによって複合繊維を得て、これを3000m/分で巻き取った。PTTとC−PBTの固有粘度は、それぞれ0.90dL/g及び0.55dL/gである。C−PBTは、1モル%の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有していた。PTTとC−PBTの重量比は50:50である。2つの異なる設計の紡糸口金を使用した。1つの設計では、溶融ポリマーは紡糸口金のオリフィスを出た後に集束し、もう1つの設計では、溶融ポリマーは紡糸口金のオリフィス内で集束する。前記2つの紡糸口金設計の紡糸条件を表4に示した。
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明のサイドバイサイド型複合繊維は、捲縮率≧40%、優れた伸縮性、捲縮発現性及び紡糸性を有するなどの利点を有する。この複合繊維は、PTT及びPBT材料の弾性、並びに熱収縮後の繊維構成要素の長さの差によって引き起こされる捲縮の二重の効果によって、特に織物の拘束荷重下で、優れた伸縮性を有する。
【0045】
上記の実施形態は、例示のみを目的として記載されたものである。添付の特許請求の範囲の範囲内に入るこれらの実施形態に様々な修正を加えることができることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の製品の製造に有用な溶融紡糸装置を示す概略図である。
【図2】本発明の製品の製造に有用な繊維延伸装置を示す概略図である。
【図3】本発明の製品の製造に有用な直接紡糸/延伸装置を示す概略図である。
【図4】本発明の製品の製造に有用な仮より加工装置を示す概略図である。
【図5】本発明で使用される紡糸口金の断面を示す概略図である。
【図6】本発明の複合繊維の断面を示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0047】
1 紡糸口金
2 複合フィラメント(繊維)
3 急冷装置
4 仕上げ剤付与装置
5 ローラー
6 ローラー
7 巻取り装置
8 パッケージ
9 駆動ローラー
10 延伸ローラー
11 加熱プレート
12 冷却ローラー
13 交絡装置
14 巻取り装置
15 管
16 第1ローラー
17 第1加熱プレート
18 第2ローラー
19 仮より装置
20 第3ローラー
21 交絡装置
22 第2加熱プレート
23 第4ローラー
24 仕上げ剤供給系
25 巻取り装置
26 加工糸のパッケージ
27 引取りローラー
28 延伸/セッティングローラー
29 交絡装置
30 巻取り装置
31 パッケージ
81 複合繊維

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押し出されてサイドバイサイド型構成に一緒に紡糸された、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレート(C−PBT)とを含む2種の異なるポリマーを含み、PTTとC−PBTの重量比が30:70〜70:30の範囲であり、PTTの固有粘度(IVPTT)とC−PBTの固有粘度(IVC−PBT)が以下の関係(1)〜(3):
(1)1.20dL/g≧IVPTT≧0.84dL/g
(2)0.84dL/g≧IVC−PBT≧0.55dL/g
(3)0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0dL/g
を満足する、サイドバイサイド型複合ポリエステル繊維。
【請求項2】
PTTとC−PBTの重量比が40:60〜60:40の範囲である、請求項1に記載の複合ポリエステル繊維。
【請求項3】
PTTとC−PBTの重量比が45:55〜55:45の範囲である、請求項1に記載の複合ポリエステル繊維。
【請求項4】
0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0.15dL/gである、請求項1に記載の複合ポリエステル繊維。
【請求項5】
0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0.25dL/gである、請求項1に記載の複合ポリエステル繊維。
【請求項6】
前記複合ポリエステル繊維の捲縮率が40%を超える、請求項1に記載の複合ポリエステル繊維。
【請求項7】
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)と、2モル%以下の1,3,5−ジメチルイソフタレートスルホン酸ナトリウムを含有するポリブチレンテレフタレート(C−PBT)とを、紡糸口金から溶融紡糸してサイドバイサイド型複合繊維を形成するステップを含み、PTTとC−PBTとの重量比が30:70〜70:30の範囲であり、PTTの固有粘度(IVPTT)とC−PBTの固有粘度(IVC−PBT)が以下の関係(1)〜(3):
(1)1.20dL/g≧IVPTT≧0.84dL/g
(2)0.84dL/g≧IVC−PBT≧0.55dL/g
(3)0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0dL/g
を満足する、複合繊維の製造方法。
【請求項8】
PTTとC−PBTが、前記紡糸口金の別々のオリフィスを通って流れ、前記紡糸口金の前記オリフィスを出た後に集束する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
PTTとC−PBTの重量比が40:60〜60:40の範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
PTTとC−PBTの重量比が45:55〜55:45の範囲である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0.15dL/gである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
0.65dL/g≧IVPTT−IVC−PBT≧0.25dL/gである、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記複合ポリエステル繊維の捲縮率が40%を超える、請求項7に記載の方法。
【請求項14】
紡糸速度が2500〜3500m/分である、請求項7に記載の方法。
【請求項15】
延伸倍率1.5〜1.7及び延伸温度50°〜70℃で前記複合繊維を延伸するステップをさらに含む、請求項7又は請求項14に記載の方法。
【請求項16】
延伸倍率1.4〜1.6で前記複合繊維を延伸かつ仮よりするステップをさらに含む、請求項7又は請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記溶融紡糸が、紡糸速度3500〜4500m/分、延伸温度50°〜70℃及び延伸倍率1.4〜1.7で、直接紡糸/延伸法によって行われる、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−144165(P2006−144165A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2004−335413(P2004−335413)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(504003293)シンコン シンセティック ファイバーズ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】