説明

自己潤滑式転輪アセンブリおよび同アセンブリを使用する機械

掘削機やトラクタなどの履帯式機械(500)用の転輪アセンブリ(10)は、流体用開口のない外側面(15)および流体のない内側面(18)を含む。転輪(10)は、固体潤滑剤を担持する基材など、潤滑性を有する基材を含む自己潤滑ブッシュ(30a、30b)を備え、この固体潤滑剤により、転輪(10)は、定期的な保守を必要とする液体潤滑なしで済ますことが可能になる。ブッシュ(30a、30b)は、細片がブッシュ(30a、30b)とシャフト(40)との間の隙間(65a、65b)に浸入するのを防止し、さらに、ブッシュの固体潤滑剤が漏れ出るのを防止するために封止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、履帯式機械用の転輪アセンブリの分野に関し、より具体的には、自己潤滑式転輪アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
掘削機およびトラクタなどの履帯式機械で使用される転輪には、履帯式機械が頻繁に稼働する状況に起因する、きわめて高いレベルまたは応力および摩耗が生じる。丘陵地形および岩の多い地形などの過酷な条件での動作中に、転輪は、より損傷を受けやすい。その結果として、そのような転輪では、比較的高い整備コスト、短い摩耗寿命、およびそれらの動作に関連する他の多くの問題に悩まされている。そのような問題の1つは、転輪を十分に潤滑された状態に絶えず保つ必要があることから生じる。困難な地形の下で履帯式機械を動かすことにより、転輪のベアリングアセンブリから転輪の他の領域に潤滑流体が漏れることがしばしばある。この結果として、漏れを修理する、または転輪アセンブリ全体を取り換えるための整備コストが高くなる。従来の転輪構造に関連する他の問題には、部品点数の多いアセンブリの組み立て、複雑な製造工程、および組立時の液体潤滑剤の取り扱いなどが挙げられる。
【0003】
(特許文献1)は、液体潤滑式の転輪アセンブリの構造の例を説明している。横方向に離間した一対の端部キャップがシャフトを受け入れ、円筒状の内壁および端部壁によって画定される止まり穴内にシャフトを支持する働きをする。ベアリングアセンブリは穴内に取り付けられて、端部キャップとシャフトとの間に挟まれており、内壁によって固定支持されたスリーブタイプの円筒状ブッシュと、端部壁に固定されたディスクタイプのスラストワッシャとを含む。端部壁内に形成された、垂直方向に延びるチャネルは、開口からローラアセンブリに導入できるオイルなどの液体潤滑剤を収容する。この特許は、ブッシュおよびスラストワッシャの使用を教示するが、過酷な動作条件の下などで起こりやすい潤滑流体の漏れを防止するという長年の課題に対処できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,773,393号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、転輪アセンブリは、第1の内壁面によって画定される第1の円筒状内部穴を含む第1のカラーを有する。第2のカラーは、第2の内壁面によって画定される第2の円筒状内部穴を含む。第1の自己潤滑ブッシュは、第1の内部ベアリング面と、第1のカラーの第1の内壁面と接する外側面とを有する。第2の自己潤滑ブッシュは、第2の内部ベアリング面と、第2のカラーの第2の内壁面と接する外側面とを有する。シャフトは、第1の内部ベアリング面が受ける第1の端部と、第2の内部ベアリング面が受ける第2の端部とを有する。シャフトは、第1および第2のカラーに対して回転する。
【0006】
別の態様では、履帯式機械は、第1のバーと、ローラ受け入れギャップだけ第1のバーから離れた第2のバーとを有する転輪フレームと、複数の転輪アセンブリとを含む。複数の転輪アセンブリのそれぞれは、転輪フレームの第1のバーに固定して取り付けられた第1のカラーを含む。第1のカラーは、第1の内壁面によって画定される第1の円筒状内部穴を含む。第2のカラーは、第2の内壁面によって画定される第2の円筒状内部穴を含む。第2のカラーは、第1のカラーの反対側で転輪フレームの第2のバーに固定して取り付けられる。第1の自己潤滑ブッシュは、第1の内部ベアリング面と、第1のカラーの第1の内壁面と接する外側面とを有する。第2の自己潤滑ブッシュは、第2の内部ベアリング面と、第2のカラーの第2の内壁面と接する外側面とを有する。シャフトは、第1の内部ベアリング面が受ける第1の端部と、第2の内部ベアリング面が受ける第2の端部とを有する。シャフトは、第1のバーと第2のバーとの間で第1および第2のカラーに対して回転する。
【0007】
別の態様では、転輪アセンブリを組み立てる方法は、第1の自己潤滑ブッシュを第1のカラーの第1の円筒状内部穴に圧入し、第2の自己潤滑ブッシュを第2のカラーの第2の円筒状内部穴に圧入する各ステップを含む。シャフトの第1の端部は、第1の自己潤滑ブッシュの第1の内部ベアリング面に接するように、第1のカラーの第1の円筒状内部穴に挿入される。シャフトの第2の端部は、第2の自己潤滑ブッシュの第2の内部ベアリング面に接するように、第2のカラーの第2の円筒状内部穴に挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本開示による履帯式機械の側面図である。
【図2】図1に示す履帯式機械の走行フレームアセンブリの反転させた斜視図である。
【図3】図1に示す機械の転輪の正面断面図である。
【図4】図3に示す転輪の分解部分断面図である。
【図5】本開示の別の実施形態による転輪の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および図2を参照すると、履帯式機械500は無限軌道520を含み、この無限軌道は、転輪フレームアセンブリ550と、無限軌道520の長さに沿って離間した複数の転輪アセンブリ10とを備える。転輪フレームアセンブリ550は、第1のバー81と、各転輪アセンブリ10の大きさによって決まるローラ受けギャップ83だけ、第1のバー81から離れた第2のバー82とを含む。
【0010】
さらに図3および図4を参照すると、転輪アセンブリ10は、第1のカラー20aおよび第2のカラー20bを含む。第1のカラー20aは、第1の外側面21aと、第1の円筒状内部穴25aを画定する第1の内壁面23aとを有する。同様に、第2のカラー20bは、第2の外側面21bと、第2の円筒状内部穴25bを画定する第2の内壁面23bとを有する。第1のカラー20aおよび第2のカラー20bの両方はまた、それらのそれぞれの外側面21a、22b内に画定された少なくとも1つのボルト穴22を有することができる。第1のカラー20aは、第1のカラー20a内に画定されたボルト穴22を貫通するボルトなどの一般的な取付手段を使用して、転輪フレームアセンブリ550の第1のバー81に取り付けることができる。同様に、第2のカラー20bは、第1のカラー20aを第1のバー81に取り付けるのに使用される取付手段と同様な取付手段によって、転輪フレームアセンブリ550の第2のバー82に取り付けることができる。
【0011】
転輪アセンブリ10は、第1の自己潤滑ブッシュ30aを含み、この第1の自己潤滑ブッシュは、第1のカラー20aの第1の円筒状内部穴25aによって受け入れられる。転輪アセンブリ10はまた、第2の自己潤滑ブッシュ30bを含み、この第2の自己潤滑ブッシュは、第2のカラー20bの第2の円筒状内部穴25bによって受け入れられる。第1の自己潤滑ブッシュ30aおよび第2の自己潤滑ブッシュ30bは、それぞれ第1の円筒状内部穴25aおよび第2の円筒状内部穴25bに密着して嵌合することができ、圧入するか、または密着して嵌合させることができる他の同様な方法を採用することにより、穴25a、25bに挿入することができる。第1の自己潤滑ブッシュ30aは、第1の内部ベアリング面32aと、第1のカラー20aの第1の内壁面23aに接することができる第1の外側面34aとを有する。
【0012】
同様に、第2の自己潤滑ブッシュ30bは、第2の内部ベアリング面32bと、第2のカラー20bの第2の内壁面23bに接することができる第2の外側面34bとを有する。第1の内壁面23aおよび第2の内壁面23bは、それぞれ、第1のカラー20aおよび第2のカラー20bに対する第1の自己潤滑ブッシュ30aおよび第2の自己潤滑ブッシュ30bの回転運動を妨げるために、刻み目を付けることができる。図示した実施形態では、自己潤滑ブッシュ30a、30bは、第1のカラー20aおよび第2のカラー20bの内壁面23a、23bが刻み目を付けられた後、それらのそれぞれの円筒状内部穴25a、25bに圧入される。
【0013】
本開示では、自己潤滑ブッシュとは、外部の液体潤滑剤を必要としない任意の回転負荷支持部材を意味する。自己潤滑ブッシュのいくつかの例として、ポリマー系潤滑ブッシュ、エポキシ系潤滑ブッシュ、ペレット(Pellet)潤滑ブッシュ、固体(低摩擦)潤滑ブッシュ、および黒鉛系潤滑ブッシュを挙げることができ、これらの自己潤滑ブッシュは、GGB Bearing Technology、RCB Bearing、およびLubron Bearing Systemsなどのベアリング製造業者で入手可能である。第1の自己潤滑ブッシュ30a、および第2の自己潤滑ブッシュ30bは、それらのそれぞれの内部ベアリング面32a、32bに潤滑性を付与するために、固体潤滑剤を担持する基材を含むことができる。
【0014】
図1、図2、図3、および図4に示す転輪アセンブリの例示的な実施形態では、シャフト40は、第1のカラー20aおよび第2のカラー20bによってそれぞれ受け入れられる第1の端部42aおよび第2の端部42bを有する。シャフト40の第1の端部42aおよび第2の端部42bは、自己潤滑ブッシュ30a、30bの第1の内部ベアリング面32aおよび第2の内部ベアリング面32bに接することができる。一実施形態では、シャフト40の第1の端部42aと、自己潤滑ブッシュ30aの第1の内部ベアリング面32aとの間に隙間65aがあるので、シャフト40は、自己潤滑ブッシュ30aに対して回転することができる。シャフト40の第2の端部42bと、自己潤滑ブッシュ30bの第2の内部ベアリング面32bとの間に隙間65bがある。隙間65a、65bは非常に小さいので、示した図ではその隙間を見分けることができない。しかし、当業者には、その隙間が、シャフト端部42a、42bがそれらのそれぞれの自己潤滑ブッシュ30a、30bに対して回転するのを可能にするのに十分に大きいと分かるであろう。
【0015】
図示した実施形態では、シャフト40は、シャフト40の第1の端部42aに隣接する第1のリム部分43a、およびシャフト40の第2の端部42bに隣接する第2のリム部分43bを含む。リム43a、43bは、シャフト40が無限軌道を回転させることができる限りは、第1のリム部分43aおよび第2のリム部分43bの直径と比較して直径が小さいもの、ならびに突出した中央フランジを有する別のものを含む様々な外形を有することができるシャフト部分47によって隔てられている。
【0016】
本開示の例示的な実施形態では、シャフト40は硬く、中実の内部空間を含み、成形、または鋳造もしくは旋盤加工などの他の同様の方法により製造することができる。中実シャフトは、中空シャフトより強くすることができ、より容易にかつより迅速に製造できるので、一部の用途では好ましいことがある。本開示の趣旨の範囲に含まれる別の実施形態では、シャフトは中空とすることができ、シャフト40の軸45に沿って延びる円筒穴を含むこともできる。本開示の1つの例示的な実施形態では、シャフトの中空部は、シャフトの半体間の対合面全体がアセンブリの強度を高め、採石、鉱業、または林業用途での衝撃負荷に対してアセンブリをより頑強にするように、縮小されるか、またはなくなる。したがって、本開示では説明されないシャフトの代替の構造も本開示の趣旨の範囲内であるのは変わらない。
【0017】
封止材を使用して、自己潤滑ブッシュからの任意の固体潤滑剤が、自己潤滑ブッシュ30aとシャフト40の第1の端部42aとの間、および自己潤滑ブッシュ30bとシャフト40の第2の端部42bとの間のそれぞれの隙間65a、65bから漏れ出るのを抑制し、さらに、細片が隙間65a、65bに入るのを抑制することができる。一実施形態では、第1の封止材55aを、第1のカラー20aとシャフト40の第1のリム部分42aとの間に、シャフト軸45に沿って配置して、隙間65aを封止することができる。第2の封止材55bを、第2のカラー20bとシャフト40の第2のリム部分42bとの間に、シャフト軸45に沿って配置して、隙間65bを封止することができる。第1の封止材55aおよび第2の封止材55bは、メカニカルシール、デュオコーンシール(duo cone seal)、またはカセットシールなどの様々な封止材から選択することができる。一実施形態では、封止材55a、55bは、それぞれ第1のシャフト端部42aおよび第2のシャフト端部42bのそれぞれに置かれる第1の部材と、それぞれ第1のカラー20aおよび第2のカラー20bのそれぞれに置かれる第2の部材とを含むことができ、2つの部材は、それぞれ第1のシャフト端部42aおよび第2のシャフト端部42bと、カラー20a、20bとに固定して置かれることにより、互いに対して回転する。さらに、封止材55a、55bは、潤滑状態を維持するために液体潤滑剤を使用するか、または自己潤滑材料で作製することができる。
【0018】
転輪アセンブリ10は、シャフト40の第1のリム部分43aと第1のカラー20aとの間の第1の間隔60aと、シャフト40の第2のリム部分43bと第2のカラー20bとの間の第2の間隔60bとを画定する。間隔60a、60bは、転輪アセンブリ10が配置された機械が、過酷な条件で動いているときに、シャフト40またはシャフト40のリム部分43a、43bがカラー20a、20bにこすれるのを防止する。
【0019】
間隔60a、60bの大きさは、細片または他の粒子が転輪アセンブリ10に浸入できるほど大きくしてはならない。したがって、間隔60a、60bは、シャフト40が撓んでいるときに、過酷な条件下であっても、シャフト40がカラー20a、20bに対して自由に回転でき、さらに、細片の全部ではないが、一部が転輪アセンブリ10に浸入するのを防ぐ大きさとすることができる。本開示の他の実施形態では、シャフトが突出リムなしで作製されるので、すなわち、カラーがシャフトと接触する危険性が最小限なので、間隔を維持する必要がないことがある。第1の間隔60aは、第1のカラー20aをシャフト40の第1のリム部分43aから第1の間隔距離だけ隔てることで設けることができる。同様に、第2の間隔60bは、第2のカラー20bをシャフト40の第2のリム部分43bから第2の間隔距離だけ隔てることで設けることができる。
【0020】
当業者は、任意の細片が転輪アセンブリ10に浸入するのを阻止するために、間隔60aに、またはこれのまわりに配置することができる、ラビリンスシールまたはVリングシールなどの封止材の使用を考えつくことができる。
【0021】
摩耗材料が、カラー20a、20bに対するシャフト40の回転運動を妨げる恐れがあるので、転輪アセンブリ10はまた、カラー20a、20bの内壁面23a、23b、およびシャフト端部42a、42bの摩耗を軽減する第1のスラストワッシャ36aおよび第2のスラストワッシャ36bを含むことができる。本開示の好ましい実施形態では、第1のスラストワッシャ36aは、第1のカラー20aの第1の内壁面23aとシャフト40の第1の端部42aとの間に挿入されている。第2のスラストワッシャ36bは、第2のカラー20bの第2の内壁面23bとシャフト40の第2の端部42bとの間に挿入されている。スラストワッシャ36a、36bは、カラー20a、20bに貼り付けてよいし、また貼り付けなくてもよい。さらに、スラストワッシャ36a、26bは、自己潤滑ブッシュに使用したのと同じ、または同様の材料で作製することができる。当業者には、スラストワッシャ36a、36bの使用がオプションであり、シャフトおよびカラーの表面の損傷を防止するのに好ましいことがあると分かるであろう。
【0022】
転輪アセンブリ10は、無開口の外側面15および無流体の内部空間18を有することができる。転輪アセンブリ10の外側面15は、シャフトの外側面およびカラーの外側面を含む、転輪アセンブリの全外側面によって画定される。無開口の外側面とは、転輪アセンブリに液体潤滑剤を追加するのに使用できる開口をもたない転輪の外側面を意味する。転輪アセンブリ10の内部空間18は、もしあるならばシャフトの内部、および自己潤滑ブッシュの内部の任意空間を含む、転輪アセンブリ内に閉じ込められた全内部空間によって画定される。無流体の内部空間とは、流体潤滑剤の全くない、転輪アセンブリの内部空間を意味する。図3に示した例示的な実施形態では、シャフト40は中実片から作製され、シャフト40の内部空間18は中空ではない。
【0023】
ここで図5を参照すると、本開示の別の例示的な実施形態が示されている。転輪アセンブリ110は、図1、図2、図3、および図4に示した転輪アセンブリ10と類似しているが、シャフト構成が異なる。図4に示した例示的な実施形態では、シャフト140は、シャフト連結部144で、摩擦溶接または他の同様の固定方法によって互いに固定された、2つの同一のシャフト半体141a、141bを含む。当業者ならば、シャフトが異なる形状、外形で提供されてよく、異なる態様で構築されてもよいと分かるであろう。例えば、シャフト140は、1つまたは複数の部片が中実または中空でもよい2部片以上からなる単一部品として作製することができる。当業者には、シャフト140が、旋盤加工または他の同様の方法により、正確な寸法に合わされた1つの中実片でできていてもよいと分かるであろう。本開示の範囲は、本開示の中に記載された実施形態に限定されるべきではなくて、本開示の範囲には、本開示の趣旨に包含される、無限軌道を動かす代替のシャフト構造を有する他の実施形態が含まれるべきである。
【0024】
図5に示した例示的な実施形態では、シャフト140は、リムではなくて、中央ガイドフランジ147を有する。中央ガイドフランジ147は製造工程を簡単にし、過酷な用途でのシャフト損傷の危険性を小さくすることができる。シャフト140は中空であり、内部空間118を含む。シャフト140の外側面115は、流体が転輪アセンブリに浸入することができる開口がないので無開口である。さらに、内部空間118は、空間118内に液体潤滑剤がないので無流体である。図示した実施形態では、内部空間は、内部空間空洞が圧力でつぶれないようにするための、ブラケットなどの内部支持構造体52を有する。第1の封止材155aは、第1のカラー20aと第1のシャフト半体141aとの間に置かれ、第2の封止材155bは、第2のカラー20bと第2のシャフト半体141bとの間に置かれており、両方の封止材155a、155bは、シャフト軸145に沿って置かれている。封止材155a、155bは、メカニカルシール、カセットシールであってよいし、または細片がシャフトと自己潤滑ブッシュとの間の隙間に入るのを防止し、さらに、固体潤滑剤が隙間65a、65bから出るのを防止する封止材の組み合わせを含んでもよい。図示した実施形態はまた、封止材170a、170bを含むことができる。これらの封止材は、任意の細片が、カラー20a、20bとシャフト140との間に配置された間隔160a、160bから転輪に入るのを防ぐ、Vリングシールなどのラビリンスシールとすることができる。第1の間隔封止材170aは、シャフト140と第1のカラー20aとの間に置かれ、第2の間隔封止材170bは、シャフトと第2のカラー20bとの間に配置されている。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本開示は、転輪アセンブリを使用する任意の履帯式機械に適用可能である。本開示また、ほとんどのタイプの転輪、キャリアローラ、アイドラ、掘削機、無限軌道ローダ、または車台を備えた任意のシステムに適用することができる。本開示は、過酷な条件で動作するときに、転輪アセンブリで発生しやすい潤滑流体の漏れという長年にわたる問題を解決することを目的とする。
【0026】
例えば、第1および第2のカラーは、第1および第2のカラーのそれぞれのボルト穴を貫通するボルトによって、それぞれ第1および第2のバーに取り付く。履帯式機械が動いている間、転輪アセンブリのシャフトは、第1および第2のカラーに対して回転することができる。シャフトの第1および第2の端部は、第1および第2の自己潤滑ブッシュのそれぞれの内部ベアリング面にこすれながら、第1および第2の自己潤滑ブッシュ内で回転する。自己潤滑ブッシュは、それらのそれぞれのカラーの円筒状内部穴内に密着して嵌合するので、第1および第2のカラーに対してほとんど回転できないか、または全く回転できない。好ましい実施形態では、自己潤滑ブッシュとカラーとの間の相対回転は、第1および第2の内壁面が刻み目を付けられるためにさらに抑制される。それでも、自己潤滑ブッシュとそれらのそれぞれのカラーとの間の相対回転を可能にする、または促進さえもする変形版も本開示の意図された範囲内である。
【0027】
同一のシャフト半体を有する転輪アセンブリを製造することも本開示の意図された範囲内である。たとえ製造工程により2つの半体間の若干の精度のばらつきが出ることがあっても、それは、2つのシャフト半体が同様に機能する本開示の趣旨の範囲内である。したがって、転輪アセンブリの半分の部分におけるシャフトの一端と1つブッシュとの相互作用について記載するとき、その記載は、シャフトの他端と他方のブッシュとの相互作用に同様に当てはまるということが当業者には分かるであろう。
【0028】
シャフトが、第1の自己潤滑ブッシュの第1の内部ベアリング面に対して回転するときに、第1の内部ベアリング面は、潤滑剤をシャフトの第1の端部に接触させ、それによって、シャフトの第1の端部と、自己潤滑ブッシュの第1の内部ベアリング面との間の領域を潤滑しながら、固体潤滑剤を担持する基材を摩耗させる。封止材は、潤滑剤が転輪アセンブリの他の部分に漏れ出るのを妨げるので、摩耗してブッシュの内部ベアリング面から離脱した基材は、シャフトの第1の端部と第1の自己潤滑ブッシュとの間の隙間内に残る。また、封止材は、任意の細片浸入物がシャフトと自己潤滑ブッシュとの間の隙間に入るのを妨げる。封止材は、シャフトの端部、または自己潤滑ブッシュ、またはカラー、またはシャフトと軸潤滑ブッシュとカラーとの任意の組み合わせ上に置くことができる。
【0029】
使用される封止材のタイプ、および封止材を転輪アセンブリ内で組み立てる方法は、標準的な所定の技術および知識に包含されると当業者には分かるであろう。さらに、封止材は、オイルまたはグリースなどの何らかの外部潤滑剤を必要としてもよいし、あるいは自己潤滑ブッシュで使用したもののような自己潤滑材料で作製されてもよい。封止材を潤滑するのに潤滑剤を使用するのは、本開示の意図された範囲に包含される。一実施形態では、シャフトは、第1の間隔および第2の間隔だけ、それぞれ第1および第2のカラーから隔てられてもよい。第1および第2の間隔は、シャフトが、動作中の任意の時点でカラーのいずれかと接触するのを回避するのに十分な大きさとすることができる。これにより、転輪アセンブリの外面およびカラーの摩耗に起因するあらゆる損傷を軽減することができる。
【0030】
本開示は、流体潤滑剤を何ら含まず、動作中の転輪アセンブリから流体潤滑剤が漏れるという問題を解決できる転輪アセンブリの実施形態を含む。例示的な実施形態では、転輪アセンブリは、転輪アセンブリを潤滑するための潤滑開口を含んではならず、転輪アセンブリの内部に流体潤滑剤を有してはならない。本開示から得ることができる利益は、潤滑漏れ問題に対する解決策を見つけることに限定されるものではない。それどころか、本開示は、部品点数を減らし、製造工程をより単純にすることができる転輪アセンブリ構造を提供する。一実施形態では、アセンブリに必要なのは、5つの異なる部品および総数で9つの部品(2つのカラー、2つのブッシュ、2つのベアリング、2つの封止材、およびシャフト)だけである。さらに、外部潤滑を必要としないために、その構造は、一般的には潤滑開口の栓が緩むか、または転輪アセンブリの損傷を通じてかのいずれかによる流体の漏れの危険性を軽減するので、構造は、より耐久性があり、信頼性があるものになり得る。さらに、転輪の構造により、潤滑開口を有する必要をなくすことができ、これにより、開口および潤滑剤用容量チャンバを内蔵する構造の製造にまつわるコストを不要にすることができる。本開示の一実施形態では、転輪アセンブリは、2つの同じ半体で作製できるので、そのような転輪構造の製造は、これまでの転輪アセンブリ構造よりも、コスト的に安く、あまり複雑でなく、かつ頑強なものにすることができる。自己潤滑ブッシュは、こぼれた液体潤滑剤を処理する必要なく、転輪アセンブリから容易に取り出し、交換することができるので、転輪アセンブリでの自己潤滑ブッシュの保守は、液体潤滑剤のある転輪アセンブリを保守するよりも容易に行うことができる。
【0031】
ラビリンスシールは、封止材を通り抜ける進行路を、小石や泥などの細片にとって困難なものにすることができることから有効であり得る。ラビリンスシールは、カラーまたはシャフトに取り付けることができ、様々な異なる封止材を使用することができる。当業者には、転輪アセンブリでの封止材の使用および組み立てが、ありふれた技術とみなされると分かる。本開示の範囲は、本明細書に記載した実施形態に限定されるものではなくて、その範囲には、本開示の趣旨を形成する特徴を含む他の実施形態が含まれる。例えば、複合型として液体オイル潤滑剤および自己潤滑ブッシュを有する転輪アセンブリは、やはり本開示の意図された範囲に包含される転輪アセンブリの一実施形態である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の内壁面(23a)によって画定される第1の円筒状内部穴(25a)を含む第1のカラー(20a)と、
第2の内壁面(23b)によって画定される第2の円筒状内部穴(25b)を含む第2のカラー(20b)と、
第1の内部ベアリング面(32a)および第1の外側面(34b)を有し、第1の外側面(34b)が、第1のカラー(20a)の第1の内壁面(23a)と接する第1の自己潤滑ブッシュ(30a)と、
第2の内部ベアリング面(32b)および第2の外側面(34b)を有し、第2の外側面(34b)が、第2のカラー(20b)の第2の内壁面(23b)と接する第2の自己潤滑ブッシュ(30b)と、
2つの端部を有し、第1の端部(42a)が第1の内部ベアリング面(32a)によって受け入れられ、第2の端部(42b)が第2の内部ベアリング面(32b)によって受け入れられるシャフト(40)であって、第1のカラー(20a)および第2のカラー(20b)に対して回転可能なシャフト(40)と、
を含む転輪アセンブリ(10)。
【請求項2】
第1の自己潤滑ブッシュ(30a)および第2の自己潤滑ブッシュ(30b)は、固体潤滑剤を担持する基材を含む、請求項1に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項3】
無開口の外側面(15)および無流体の内部空間(18)を含む、請求項1または2に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項4】
シャフト(40)は中実である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項5】
第1のカラー(20a)を走行フレーム(550)に取り付けるために、少なくとも1つのボルト穴(22)が、第1のカラー(20a)の第1の外側面(21a)に画定され、
第2のカラー(20b)を走行フレーム(550)に取り付けるために、少なくとも1つのボルト穴(22)が、第2のカラー(20b)の第2の外側面(21b)にあり、および
第1のカラー(20a)の第1の内壁面(23a)および第2のカラー(20b)の第2の内壁面(23b)は、それぞれ第1のカラー(20a)と第1の自己潤滑ブッシュ(30a)との間、および第2のカラー(20b)と第2の自己潤滑ブッシュ(30b)との間の相対回転を妨げるために刻み目を付けられる、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項6】
シャフト(40)の軸(45)に沿って、第1の自己潤滑ブッシュ(30a)とシャフト(40)との間に配置された第1の封止材(55a)、およびシャフト(40)の軸(45)に沿って、第2の自己潤滑ブッシュ(30b)とシャフト(40)との間に配置された第2の封止材(55b)と、
シャフト(40)の第1の端部(42a)と第1のカラー(20a)との間の第1のスラストワッシャ(36a)、およびシャフト(40)の第2の端部(42b)と第2のカラー(20b)との間の第2のスラストワッシャ(36b)と、
をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項7】
シャフト(40)は、シャフト部分(47)によって隔てられた第1のリム部分(43a)および第2のリム部分(43b)を含み、
第1のカラー(20a)は、シャフト(40)の第1のリム部分(43a)からの第1の間隔(60a)を有し、第2のカラー(20b)は、シャフト(40)の第2のリム部分(43b)からの第2の間隔(60b)を有する、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項8】
第1の封止材(55a)は、第1の自己潤滑ブッシュ(30a)と第1のリム部分(43a)との間に配置され、第2の封止材(55b)は、第2の自己潤滑ブッシュ(30b)と第2のリム部分(43b)との間に配置される、請求項7に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項9】
第1のカラー(20a)とシャフト(40)の第1の端部(42a)との間に配置された第1のスラストワッシャ(36a)と、
第2のカラー(20b)とシャフト(40)の第2の端部(42b)との間に配置された第2のスラストワッシャ(36b)と、
第1のカラー(20a)の第1の外側面(21a)内に画定される、第1のカラー(20a)を走行フレーム(550)に取り付けるための少なくとも1つのボルト穴(22)と、
第2のカラー(20b)の第2の外側面(21b)上にある、第2のカラー(20b)を走行フレーム(550)に取り付けるための少なくとも1つのボルト穴(22)と、
をさらに含み、
第1のカラー(20a)の第1の内壁面(23a)および第2のカラー(20b)の第2の内壁面(23b)は、第1のカラー(20a)と第1の自己潤滑ブッシュ(30a)との間、および第2のカラー(20b)と第2の自己潤滑ブッシュ(30b)との間の相対回転を妨げるためにそれぞれ刻み目を付けられ、
第1の自己潤滑ブッシュ(30a)および第2の自己潤滑ブッシュ(30b)は、固体潤滑剤を担持する基材を備える、請求項8に記載の転輪アセンブリ(10)。
【請求項10】
転輪アセンブリ(10)を組み立てる方法であって、
第1の自己潤滑ブッシュ(30a)を第1のカラー(20a)の第1の円筒状内部穴(25a)に圧入するステップと、
第2の自己潤滑ブッシュ(30b)を第2のカラー(20b)の第2の円筒状内部穴(25b)に圧入するステップと、
シャフト(40)の第1の端部(42a)を、第1の自己潤滑ブッシュ(30a)の第1の内部ベアリング面(32a)に接触するように、第1のカラー(20a)の第1の円筒状内部穴(25a)に挿入するステップと、
シャフト(40)の第2の端部(42b)を、第2の自己潤滑ブッシュ(30b)の第2の内部ベアリング面(32b)に接触するように、第2のカラー(20b)の第2の円筒状内部穴(25b)に挿入するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
圧入するステップは、
第1の自己潤滑ブッシュ(30a)を第1の円筒状内部穴(25a)に圧入するステップの前に、第1のカラー(20a)の第1の内壁面(23a)に刻み目を付けるステップと、
第2の自己潤滑ブッシュ(30b)を第2の円筒状内部穴(25b)に圧入するステップの前に、第2のカラー(20b)の第2の内壁面(23b)に刻み目を付けるステップと、
を含む、請求項10に記載の転輪アセンブリ(10)を組み立てる方法。
【請求項12】
挿入するステップは、
シャフト(40)と第1の自己潤滑ブッシュ(30a)との間の第1の隙間(65a)を封止するステップと、
シャフト(40)と第2の自己潤滑ブッシュ(30b)との間の第2の隙間(65b)を封止するステップと、
を含む、請求項10または11に記載の転輪アセンブリ(10)を組み立てる方法。
【請求項13】
中実シャフト(40)を形成するステップをさらに含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の転輪アセンブリ(10)を組み立てる方法。
【請求項14】
第1のスラストワッシャ(36a)を第1のカラー(20a)の第1の円筒状内部穴(25a)に挿入することと、
第2のスラストワッシャ(36b)を第2のカラー(20b)の第2の円筒状内部穴(25b)に挿入することと、
シャフト(40)と第1の自己潤滑ブッシュ(30a)との間の第1の隙間(65a)を封止することと、
シャフト(40)と第2の自己潤滑ブッシュ(30b)との間の第2の隙間(65b)を封止することと、
をさらに含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の転輪アセンブリ(10)を組み立てる方法。
【請求項15】
シャフト(40)の第1の端部(42a)を第1の円筒状内部穴(25a)に挿入するステップは、第1のカラー(20a)とシャフト(40)の第1のリム部分(43a)との間に第1の間隔(60a)を設けることを含み、
シャフト(40)の第2の端部(42b)を第2の円筒状内部穴(25b)に挿入するステップは、シャフト(40)と第2のカラー(20b)の第2のリム部分(43a)との間に第2の間隔(60b)を設けることを含む、
請求項10〜14のいずれか一項に記載の転輪アセンブリ(10)を組み立てる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−527973(P2011−527973A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518792(P2011−518792)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2009/049827
【国際公開番号】WO2010/008972
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(391020193)キャタピラー インコーポレイテッド (296)
【氏名又は名称原語表記】CATERPILLAR INCORPORATED