説明

自己給電式検出デバイス

【課題】外部電圧源を必要としない自己給電式検出デバイスを提供する。
【解決手段】電導性ポリマーを含む第一の電極(110)と、第二の電極(120)と、電解質(130)とを含む、自己給電式検出デバイス(100)であって、その自己給電式検出デバイスは、前記第一および第二の電極(110、120)および前記電解質(130)が、検知されるべき状況が出現すると電気化学的電池として作動し、自己給電式検出デバイス(100)が少なくとも一つの動作を実施するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、検出器(sensor)または制御放出デバイス(controlled release device)のために使用することが可能な自己給電式検出デバイス(self−powered sensing device)に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の電気化学をベースとする検出または制御放出技術では、外部電源を採用している。このことは、検出要素として本来的に電導性のポリマーを使用している、電気化学的検出/制御放出系についてもあてはまる。
【0003】
本来的に電導性のポリマー(ICP)は、「本質的に電導性のポリマー」または「本来的に導電性のポリマー」とも呼ばれるが、それらは、導電性があり、それらが酸化または還元されたときに、化学的、物理的および/または機械的に顕著な転移を示すポリマーのタイプに属する。ポリピロール、ポリアニリン、およびポリチオフェンのようなICPで観察されるこの酸化還元性能は、たとえば検出および監視技術における応用に用途を見出している。
【0004】
検出器用途としては、溶液または大気中の化学種の環境的および産業的な監視のための化学的検出器、医学的診断のための生物学的検出器、および人間の動きを監視するための機械的検出器などが挙げられる。制御放出用途としては、たとえば医薬品または発育因子のような生物活性分子の放出が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/157967号明細書
【特許文献2】米国特許第4662996号明細書
【特許文献3】米国特許第4609600号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明者らの見るところでは、既存のICP検出器/制御放出デバイスに伴う限界は、ポリマーの内部で必要とされる酸化還元反応を起こさせるためには、外部電圧源を必要としている点にある。外部電圧源は、固定することか(たとえば、主接続(mains connection))、または定期的に交換するか、のいずれかを必要とする。そのために、その検出器が大きくなりすぎて、ある種の用途、たとえば人間の動きの検出や、遠隔検出用途、特に自律型の状況(UAV、すなわち無人自律型車両)においては、満足のいくレベルで使用することができない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記少なくともいずれか1つの課題を解決する自己給電式デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一の広い態様においては、電導性ポリマーを含む第一の電極、第二の電極、および電解質、を含む自己給電式検出デバイスが開示されるが、その自己給電式検出デバイスは、検知されるべき状況が出現すると、前記第一および第二の電極および前記電解質が電気化学的電池として動作し、少なくともその第一の電極が検出インジケータとして機能するように構成されている。
【0009】
実施態様に依存して、その第一の電極が、各種異なった方法、たとえば、色や形状が変化したり、あるいはたとえば色素のような成分を放出したりすることによって、検出インジケータとして機能してもよい。
【0010】
第二の広い態様においては、電導性ポリマーを含む第一の電極、第二の電極、および電解質、を含む自己給電式検出デバイスが開示されるが、その自己給電式検出デバイスは、検知されるべき状況が出現すると、前記第一および第二の電極および前記電解質が電気化学的電池として動作し、その第一の電極が化学成分を放出するかまたは産出するように構成されている。
【0011】
実施態様に依存して、その検出デバイスが、ある状況が出現したことを知らせる検出器として、あるいは、ある化学成分を放出することによって、その状況が出現したことに対して応答する(すなわち、その状況を検出する)制御放出デバイスとして、作用してもよい。
【0012】
実施態様に依存して、その放出される化学成分は、たとえば、色素であっても、医薬薬剤であってもよい。
【0013】
第三の広い態様においては、第一の電極、第二の電極、および電解質、を含む自己給電式検出デバイスが開示されるが、ここで、その第一の電極、第二の電極、または電解質の内の少なくとも一つが、電導性ポリマーを含み、その自己給電式検出デバイスが、検知されるべき状況が出現すると、前記第一および第二の電極ならびに前記電解質が、電気化学的電池として作動して、その電池が負荷を駆動するに充分な電流を発生させるように構成されている。
【0014】
実施態様に依存して、その負荷は、その状況が出現したことを示すかまたは登録するための、光線、ブザー、データロガー、またはその他適切な回路であってよい。
【0015】
したがって、本明細書の開示は、より広い意味合いにおいては、第一および第二の電極を含む自己給電式検出デバイスであると考えることができ、その自己給電式検出デバイスは、前記第一および第二の電極ならびに電解質が、検知されるべき状況が出現すると、電気化学的電池として作動し、その電池の作動によって、前記検出デバイスが少なくとも一つの動作を実施するように構成されている。
【0016】
一つの実施態様においては、前記動作が、少なくとも前記第一の電極における変化を起こさせてもよい。
【0017】
さらにまた実施態様に依存するが、その検出デバイスが、検出器または制御放出デバイスとして動作してもよい。
【0018】
一つの実施態様においては、前記動作が、化学成分、たとえば色素または医薬薬剤の放出を行わせてもよい。
【0019】
一つの実施態様においては、前記動作が、ある負荷、たとえばその状況が出現したことを示すかまたは登録するための、光線、ブザー、またはその他適切な回路を駆動してもよい。
【0020】
一つの実施態様においては、その動作が、前記の状況が出現したことを知らせる。
【0021】
一つの実施態様においては、前記第一および第二の電極の少なくとも一つが、少なくとも部分的に導電性ポリマーから形成されていて、その酸化または還元によって、化学成分を放出するかまたは産出して、前記状況が出現したことを知らせる。いくつかの実施態様においては、第一および第二の電極の両方が、導電性ポリマーで形成されている。
【0022】
たとえば、電極が変色するか、色素を放出してもよい。
【0023】
ある状況が出現したことによってその電池を作動させるような、各種のそれらに代わる構成を使用してもよい。たとえば、ある状況が出現したときに電解質が相転移を起こすように構成したり、電極の一方または両方が相互に対して移動し、そのような状況が出現した時に、その電池を形成している回路が完結されたり、あるいは、生物学的電解質を添加することによって電池が完結したりするようにデバイスを構成することが可能である。
【0024】
いくつかの実施態様においては、電流の大きさが検知される状況に比例するが、いくつかの場合においては、ある閾値を超えていることを知らせることの方がより適切となることもある。
【0025】
いくつかの実施態様においては、その検知される状況が、電導性ポリマーに転移を起こさせて充分な電流の流れを誘導するような各種の現象であってもよい。たとえば、その変数としては、温度、物理的接触もしくは歪み、または特定の化学物質の有無などが挙げられる。
【0026】
導電性ポリマー物質は、ポリアセチレン(PAc)、ポリピロール(PPy)、ポリチオフェン(PTh)、ポリアニリン(PAn)、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(N−置換ピロール)のホモポリマーまたはコポリマーを含む群から選択するのが好ましいが、これらに限定される訳ではない。
【0027】
導電性ポリマー物質が、エレクトロクロミックな性質を有していてもよく、その場合、そのポリマー物質の色は、その物質の中を流れる電流の存在および/または強度に依存する。好適なエレクトロクロミック導電性ポリマー物質は、アルコキシ置換のポリチオフェン、たとえばポリ(3,4−エチレンジオキシ−チオフェン)系の物質である。
【0028】
導電性ポリマー物質としては、1種または複数のドーパント(たとえば、Cl、BF、ClO)、または官能性ドーパント、または分子錯化剤もしくは生体分子(たとえば、酵素/抗体)として機能することが可能なドーパント、または色素として機能するドーパントなどが挙げられる。
【0029】
その電解質は、水性、有機性、固体電解質、イオン性液体および/または高分子電解質であってよい。
【0030】
そのような例としては、高分子電解質たとえばPAMPS、およびそれらの各種コポリマーたとえばPAMPS−PAAM(たとえば、NiPAAM−AMPS感熱性高分子電解質)などが挙げられる。
【0031】
いくつかの実施態様においては、その検出デバイスに出力メカニズムが含まれていて、その検出器から外部デバイスへと電流を送るようになっていてもよい。そのような外部デバイスとしては、データロガー(たとえば、アイ−ボタン(I−button))またはラウドスピーカなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】感熱性電気化学的電池を示す概略図である。
【図2】a〜fは、例示された実施態様における色素の放出を示す図である。
【図3】経時的な色素放出を示すグラフである。
【図4】色素が膜に放出される検出デバイスの概略図である。
【図5】ピエゾエレクトロクロミック電池の概略図である。
【図6】タンパー検出構成の概略図である。
【図7】曲げインジケータの概略図である。
【図8】生物学的電解質の存在を検出するための検出デバイスの概略図である。
【図9】動きによって事象を知らせる検出デバイスの概略図である。
【図10】色素放出効率の時間に対するグラフである。
【図11】色素放出プロセスの間の作用電極PPy−PRのAg/AgCl基準電極に対する電位の変化を示すグラフである。
【図12】融解している電解質の中を流れる電流を示すグラフである。
【図13】色素放出プロセスの間の刺激電流を示すグラフである。
【図14】イオン性液体EMIDCAのUV−可視スペクトルである。
【図15】色素放出の際の、PRを含むイオン性液体EMIDCAのUV−可視スペクトルである。
【図16】EMIDCA中PPy−PRのサイクリックボルタンモグラムである。
【図17】2層ポリマー(EMIDCA中PPy/PSSを用いてコーティングしたPPy−PR)のサイクリックボルタンモグラムである。
【図18】ガルバニ電池中における、時間の関数としての色素PRを含むEMIDCAの溶液の吸光度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
その好ましい実施態様では、自己給電式検出デバイスを提供する。そのようなデバイスは、第一および第二の電極を有していて、電気化学的電池が形成されるようになっている。自己給電式検出デバイスは、電極および電解質物質、ならびに電池の構成を適切に選択して、その第一および第二の電極ならびに電解質が、検知されるべき状況が出現すると電気化学的電池として作動して、その電池の作動が検出デバイスを調節して、少なくとも一つの動作を実行するように構成されている。
【0034】
好ましい実施態様に従って得られる検出デバイスは、三つの主なカテゴリーに分類される。検出デバイスの他のカテゴリーが存在すること、ならびにその三つの主なカテゴリーの間には幾分かの重なり合いがあるということは、当業者のよく認識するところであろう。
【0035】
第一のカテゴリーは、電極の内の少なくとも一つが電導性ポリマーを含み、それが検出インジケータとして機能するものである。その第一の電極が、各種異なった方法、たとえば、色や形状が変化したり、あるいはたとえば色素のような化学的成分を放出したりすることによって、検出インジケータとして機能してもよい。すなわち、電気化学的電池における第一の電極が関与することによって、自己給電式検出デバイスによって監視されている状況が出現したことが知らされることになる。
【0036】
自己給電式検出デバイスの第二のカテゴリーは、ある程度まで第一のカテゴリーと重なり合う。これは、電導性ポリマーが化学成分を放出するかまたは産出するカテゴリーである。放出される化学成分は、たとえば、色素、生体分子、または医薬薬剤などであってよい。
【0037】
したがって、その検出デバイスが、監視されている状況が出現したことをかならずしも知らせる必要はなく、その状況が出現したことに対して、たとえば医薬薬剤を放出することによって応答してもよい。したがって、その検出デバイスは検出器として機能してある状況の出現を知らせるか、あるいは、状況の検出に応答する制御放出デバイスとして機能することができる。
【0038】
第三の広いカテゴリーにおいては、第一の電極、第二の電極、および電解質の内の少なくとも一つが電導性ポリマーを含み、その検出デバイスが、ある状況の出現に従って負荷を駆動するように構成されている。負荷の態様は、光線または、ブザー、またはその状況が出現したことを知らせるか、あるいはその状況が出現したことを登録するための他の回路(たとえばデータロガー、アイボタン(iButton(www.ibutton.com参照))であってよい。
【0039】
すなわち、検知されるべき状況が存在すると、導電性ポリマー物質が酸化還元転移を行って、その状況が原因となって充分な電流を発生させて検出器に電力供給を行うように、その電池を構成することができる。
【0040】
したがって、上述のことから、検出の報知は、本質的に電気的、視覚的、聴覚的なものとすることが可能であることは理解されるであろう。
【0041】
いくつかの実施態様においては、その検知される状況が、電導性ポリマーに転移を起こさせて、充分な電流の流れを誘導するような各種の現象であってもよい。たとえば、その変数としては、温度、物理的接触もしくは歪み、または特定の化学物質の有無などが挙げられる。
【0042】
いくつかの実施態様においては、電流の大きさが検知される状況に比例するが、いくつかの場合においては、ある閾値を超えていることを知らせることの方が、より適切となることもある。
【0043】
それぞれの実施態様が自己給電式検出デバイスを与えるが、それらは、外部電圧源を使用する代わりに、電導性ポリマーの酸化/還元性能を利用して電気化学的電池として作動する。
【0044】
ほとんどの用途においては、電極の一方または両方が、電導性ポリマー物質、もしくは他の物質と混合した電導性ポリマーから作られているか、または導電性ポリマーが、電極を形成するか、もしくは電極基材(本明細書においては、一括して電導性ポリマー電極と呼ぶ)の上にコーティングされた物質の1層または複数の層の一つである。電導性ポリマーのカソードを使用しないのならば、電導性ポリマーのアノードがその状況に応答しなければならない。その一例としては、ポリターチオフェンの酸化が挙げられよう。
【0045】
その電極が電導性ポリマー電極ではない場合には、電極が適切であるかどうかは、その電極が、カソードとして、アノードとして、またはその両方として機能することが要求されているかどうかに依存するであろう。電極がアノードとして機能する場合には、好適な電極物質としては、亜鉛、マグネシウム、銅、白金、金、パラジウム、リチウム、リチウム/アルミニウム合金、鉛、鉄、カドミウム、イリジウム、グラファイト性炭素、ステンレス鋼、水銀が挙げられる。それらの物質と他の金属または電導性ポリマーとの混合物または合金もまた適している。カソードに使用するのに適した物質の例としては、無機の酸化物、ハロゲン化物および硫化物、たとえば、金属酸化物の酸化鉛、酸化マンガン、酸化銀、酸化水銀、酸化銅、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化ニッケルなどが挙げられるが、それらは、適切な原子価状態にあるのがよく、したがって、水酸化物、硫化物たとえば硫化鉄、塩化物たとえば塩化銀、塩化チエリル、リチウム系のカソードのような他の対イオンを含んでいてもよく、さらにそれらのそれぞれが、炭素のような他の成分を含んでいてもよい。
【0046】
その電気化学的電池は、2電極または3電極の電池であってよい。基準電極の一例が、Ag/AgCl電極である。
【0047】
<導電性ポリマー>
導電性ポリマーは、非局在化電子と電荷を有する不飽和ポリマーをベースとしている。それらは、カチオン性であってもアニオン性であってもよく、対イオンと会合している。
【0048】
導電性ポリマー物質は、ポリアセチレン(PAc)、ポリピロール(PPy)、ポリチオフェン(PTh)、ポリアニリン(PAn)、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(N−置換ピロール)を含む群から選択するのが好ましいが、これらに限定される訳ではない。
【0049】
したがって、そのポリマーが、ポリピロールもしくは誘導体、ポリチオフェンもしくは誘導体、フェニルメルカプタンもしくは誘導体、ポリカルバゾールもしくは誘導体、ポリインドールもしくは誘導体、ポリアニリンもしくは誘導体、またはそれらの組合せ(コポリマーを含む)の主鎖を有しているのがよい。その主鎖は、N−置換アニリンおよびピロールの場合のように、置換基を用いて置換されていてもよい。
【0050】
上述のように呼ばれる導電性ポリマーのタイプ、たとえばポリピロールには、そのベースポリマー構造の誘導体が含まれる。ポリピロールの場合、ポリピロールのタイプには、ポリピロール主鎖を有し、その主鎖の上に各種の官能基を有する、各種のポリマーが含まれる。存在していてもよい官能基は以下のものから選択することができる。例えば、スルホネート、カルボキシレート、ホスホネート、ナイトレート、アルコキシ(たとえばメトキシ、ならびに環形成性アルコキシ基たとえば、アルキレンジオキシ基、たとえばエチレンジオキシ基)、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアリールオキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、ジベンジルアミノ、アシル、アルケニルアシル、アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクルアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、カルボアルコキシ、カルボアリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、ベンジルチオ、およびアシルチオ、ならびにそれらの基の各種組合せ等である。上に列記したものの中で好適な炭化水素基は、長さが10以下の炭素原子であるのが好ましく、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。アルキル、アルケニルなどの用語は、当業者に知られる標準的な意味合いを有している。
【0051】
導電性ポリマー物質が、エレクトロクロミックな性質を有していてもよく、その場合、そのポリマー物質の色は、その物質の中を流れる電流の存在および/または強度に依存する。好適なエレクトロクロミック導電性ポリマー物質は、アルコキシ置換のポリチオフェン、たとえばポリ(3,4−エチレンジオキシ−チオフェン)系の物質である。
【0052】
<ドーパント>
ドーパントは、それらのポリマーと会合している各種の対イオンであってよく、そのようなものとしてはたとえば、クロリド、ドデシルベンゼンスルホネート塩、ペルクロレート、テトラフルオロボレート、スルフェート、p−トルエンスルホネート、ナフタレンスルホネート、メチルスルホネート、クロロメチルスルホネート、オキサレート、スルホサリチレート、フルオロメチルスルホネート、または、各種その他のスルホネートベースのアニオンが挙げられる。官能性ドーパントを使用してもよいが、そのようなものとしてはたとえば、色素、生体分子、または(放出されるべき)医薬薬剤などのイオン形が挙げられる。
【0053】
アニオン性、カチオン性、さらには中性の生体分子、たとえば抗体、酵素、医薬品、発育因子、または抗生物質を放出させることができる。医薬薬剤の例としては、スルホサリチル酸、デキサメタサノ、ハプロキセン、およびニコシドが挙げられる。
【0054】
色素の例としては、スルホローダミンB(アニオン性)、パテントブルーVF(アニオン性)、ナフトールブルーブラック(アニオン性)、エリオグラウシン(アニオン性)、フェノールレッド、およびブリリアントグリーン(カチオン性)が挙げられる。
【0055】
<電解質>
その電解質は、水性、有機性、固体、イオン性液体および/または高分子電解質であってよい。電解質は、電池の正および負の電極の間で、イオン輸送メカニズムを与えるいかなる媒体であってもよい。使用可能な一般的な電解質としては、アルカリたとえば水酸化カリウム、塩化物たとえば塩化アンモニウムおよび塩化亜鉛、酸たとえば硫酸、さらにはイオン性液体、およびポリマー電解質(たとえばリチウムのようなイオンの存在下または非存在下)が挙げられる。そのような例としては、高分子電解質たとえばPAMPS、およびそれらの各種コポリマーたとえばPAMPS−PAAM(たとえば、NiPAAM−AMPS感熱性高分子電解質)などが挙げられる。
【0056】
当業者のよく認識するところであるが、検出デバイスでは上述の物質を適切に組み合わせて使用するであろう。
【実施例】
【0057】
<実施例1>
感熱性エレクトロクロミック電池100のための電池の構成を図1に図式的に示している。この例においては、電極110、120のいずれか一方または両方の色を、酸化(アノード110)または還元(カソード120)によって変化させることができる。この電池は、異なった温度になると相転移を起こす(したがって、導電性が顕著に増加する)、電解質130(たとえば、NiPaam−AMPsまたはイオン性液体)を使用することによって、感熱性が与えられている。NiPaam−AMPsの場合、その高分子電解質が、異なった温度で電池から崩壊し、それに伴って、イオン導電性が低下する。具体的には、相転移温度では、その高分子電解質の電解質溶媒(水)中への溶解度が低下する。相転移温度は、ポリマー電解質の組成を変化させて(xおよびyを変化させることにより)、20〜65±1℃の範囲で正確に調節することができる。xは一般に50〜99.5の間であり、yは50〜0.5の間である。
【0058】
【化1】

【0059】
イオン性液体の場合においては、融点(固体−液体)転移は、組成によって決まる。
【0060】
「イオン性液体」という用語は通常、低融点(100℃まで)を有する有機塩を指すのに使用されるが、そのため、それらの多くは室温で液体である。検出器によって検知されるべき温度で固体から液体への相転移を有するイオン性液体を特別に選択することによって、そのイオン性液体は、その相転移温度よりも高い温度でガルバニ電池を成立させる。
【0061】
電解質(ポリマーまたはイオン性液体)が相転移するにつれて、陽極と陰極の反応のためのE゜値が適切であれば、アノードが酸化され、カソードが還元されて、ガルバニ電池が成立するであろう。これによって、インジケータ電極の一方または両方で、直接的な色の変化を起こさせることができる。本発明のまた別な形態においては、以下に示す式0に従ってポリマー電極が電解質溶液の中に色素分子を放出し、明瞭で非可逆性の着色を与える。
【0062】
【化2】

【0063】
たとえば、Zn電極(0/1m SDS/Zn)を、ドーパント分子(下記の式1の色素)としてのポリマー−フェノールレッド含有ポリピロールにカップリングさせる。電解質(NaCl(aq))が凍結されている場合には、電流は流れない。電解質が融解すると、以下の式に従って電流が流れる。
【0064】
Zn → Zn2+ + 2e
PPy(色素) → PPy゜+色素(放出)
式1
【0065】
図2a〜2fに見られるように、色素分子が溶液中に放出されるが、ここには、不活性(図2a)、1分(図2b)、2分(図2c)、5分(図2d)、8分(図2e)、および10分(図2f)における電池を示している。図2の実施例においては、一つの電極が亜鉛電極であり、第二の電極がフェノールレッド色素をドープさせたポリピロールであって、その色素が導電性ポリマーの還元によって放出される。図3に見られるように、ガルバニ電池がカップリングされると、時間に対して吸光度が増大している。図4に示したような、スタンドアロン膜構成もまた使用することができる。
【0066】
図4においては、電極410、420が、膜支持体に搭載されている。電解質が融解すると、電池が作動し、色素が電解質の中に放出され、膜430の中に色が現れる。
【0067】
<実施例1のさらなる詳細>
分子ドーパントとしてフェノールレッドナトリウム塩色素を選択した。電気化学的成長の間に、ポリピロールマトリックスの中に、対アニオンとしてフェノールレッドを組み入れた。このポリマーを負の電位で刺激すると、そのドーパントであるフェノールレッドが追い出されて、溶液の中に移行し、その溶液が赤色の着色をするので、肉眼で容易に観察することができる。
【0068】
この実験においては、フェノールレッド(PR)色素を、ドーパントとしてポリピロールの中に組み入れた。このポリマーは、0.1Mのピロールと5mMのフェノールレッドナトリウム塩とを含むミリQ水からステンレス鋼金網または金コーティングした石英結晶の上に、0.5mA・cm−2の電流密度で定電流的に電気合成した。フェノールレッドナトリウム塩(アルドリッチ(Aldrich))は納品されてものをそのまま使用し、ピロール(メルク(Merck))はフレッシュに蒸留した。その溶液は、使用前に窒素を用いてパージした。ポリピロールの電気合成の際に消費された電荷は、1.0C・cm−2であった。ステンレス鋼金網は対電極として使用され、基準電極はAg/AgClであった(3MのNaCl)。析出させた後に、脱イオンHOを用いてそのポリマーコーティングされた電極を完全に洗い流し、次いでアセトニトリルに10分間浸漬させて、そのポリマーマトリックスからHOを抽出させた。重合させたままのそのポリマーコーティングされた電極を、空気中48時間乾燥させてから使用した。
【0069】
そのガルバニ電池系では、作用電極としてステンレス鋼金網上のPPy−PR(1.2cm)、対電極としてZn電極(6cm)、そして0.1Mドデシル硫酸ナトリウム(SDS)電解質(ミリQ水中0.1MのSDS)を採用した。
【0070】
このガルバニ電池は、放出の手順が始まる前には、初期電圧1.20Vを発生した。この電池において、Znを酸化させて、Zn2+として溶液中に移行させたが、それに対してPPy−PRが還元されて、その溶液の中にPR−を放出した。このようにして、外部電源を必要とすることなく、色素放出を達成することができる。559nmの主帯域極大値(primary band maximum)における吸光度の強さから計算した色素放出効率をその濃度と合わせて、時間に対してプロットした(図10)。第一の段階における色素放出速度は速く、ほんの740秒の間に、アニオンPR−の55%がポリマーマトリックスから追い出された。溶液の中に移行したPR−の比率は、最初の量に比較して、60分間で67%であったが、これは、−800mVでの定電位法によって達成される70分間で62.7%という値に近い。
【0071】
この色素放出プロセスの間の作用電極PPy−PRの電位の変化を、Ag/AgCl基準電極に対して記録して、図11(曲線a)に示した。このプロセスの間に消費された電荷の量が時間の経過と共に蓄積されたが、それもまた、図11(曲線b)に示した。ポリマーが還元されると、電位が急速に低下し、次いで明らかに平坦部分が現れ、次いで再度電位が低下していることが明瞭に観察されるが、このことは、異種の反応プロセスが含まれていることを示唆している。−0.77Vに平坦部分が現れるということは、この還元プロセスの間では、そのポリマーの構造が影響を受けない、あるいは大きな変化をしないということを示している。それは小さなNa+が挿入されたためであると考えられる。大きなアニオンがポリマーマトリックスから追い出されると、そのポリマー構造が変化して電位が再び低下するようになった。それらの結果から、2種のタイプの酸化還元反応、すなわちカチオンの挿入とアニオンの排除とが放電の過程で起きていることが判るが、これは、定電位実験においても同様に観察される。
【0072】
室温で融解させることが可能な凍結された電解質を有するガルバニ電池中での、この色素放出プロセスのさらに詳しいことが、図12に示されている。電解質を凍結させると、予想されるとおり、系には電流は流れなかった。しかしながら、温度が上昇し、電解質が融解するにつれて、酸化還元反応が開始され、PR−色素の放出を伴いながら、電流が発生した。6000秒後には電流値が極大に達し、その後は、ガルバニ電池中でPPy−PRが消費されるにつれて、低下した。
【0073】
実施例1の一つの用途は、停電のために冷凍庫が解凍されることを監視することである。そのような解凍は、点検の前に電力が回復し、再凍結が起きると気づかれないままとなる可能性がある。実施例1の電池を組み入れた検出器は、電解質が再凍結されたとしても、色素放出のため色の変化を示すであろう。
【0074】
<実施例2>
この実施例においては、ピエゾエレクトロクロミック電池(図5)が提供される。この電池には、電極510間のセパレータとして適切な電解質を含む、フレキシブルで応力に従順な膜530が含まれる。充分に大きい力を加えて、dを小さくし、それによって電極の間の抵抗を充分に低下させると、そのガルバニ電池がカップリングされて、色素が放出されるようになる。したがって、この電池はショックの検出器として作動する。
【0075】
<実施例3>
この実施例においては、包装におけるタンパー検出法が与えられる(図6)。膜を通して針640を挿入することによって、回路が完結され、この場合もまた、ガルバニ電池が起動して、インジケータとしての色素が放出される。
【0076】
<実施例4>
この実施例においては、図7に示したように、曲げインジケータが提供される。歪みまたは曲げをかけると、電解質730のイオン導電性、またはアノード/カソード710、720の導電性が増大する。いずれの場合も、電流の増加を導く。この電流を記録したり、外部負荷を駆動させたりするのに使用することができる。
【0077】
<実施例5>
この実施例においては、生物学的電解質の存在を検出するための構成が提供される(図8)。休止状態の構成では、電極810と820の間には電解質がまったく存在しない。尿(生物学的電解質)を加えるか、電極の間で検出を行うと、電池が完結される。このガルバニ電池が「カップリング」することによって、色素放出が開始され、電流が発生し、それを警報のための音響放出に電力供給するために使用することができる。
【0078】
<実施例6>
この例を使用して、動きによって事象を知らせることができる。図9に示した構成は、監視される事象が出現すると、動きをもたらすガルバニ電池の形態になり、その電池が電気化学的電池として作動する。その動きの程度を利用して事象の信号を出すが、それは、電解質の融解によってもよい。たとえば、ポリピロールはアニオン/カチオンが排除されると収縮し、次いで再度組み入れられると膨張する。このことは、酸化還元反応がイオンの排除/インターカレーションを含むようなすべての電導性ポリマーに対して、同様に適用される。
【0079】
<実施例7>
この実施例においては、電解質としてのイオン性液体を含む自己給電式制御放出系が、電導性ポリマーと亜鉛アノードとのガルバニックカップリングを介して達成される。採用された電導性ポリマーは、分子色素フェノールレッド(PR)をドープさせたポリピロールであった。イオン性液体EMIDCA中に浸漬させた後でポリマーマトリックスからの色素の自己放出を調節するために、PPy/PSSの薄膜をPPy/PRの主層の上に電着させた。
【0080】
実施例1の場合に使用した水性電解質の場合に比較して、イオン性液体を採用したときの利点は、イオン性液体が蒸発しにくく、電解質中で支持体の塩SDSを必要としない点にある。さらに、実施例1の電解質の凝固点が約ゼロであって、そのために0℃より低い温度での実用性に限界があるのに対して、イオン性液体は各種異なった凝固点を有することができる。
【0081】
イオン性液体は、広い温度範囲での液体性、高いイオン導電性、大きな電気化学的ウィンドウ、優れた熱的および電気化学的安定性、ならびに蒸発が無視できることなどの利点を有している。このことによって、イオン性液体が、このタイプの系には極めて好適な電解質となっている。好適なイオン性液体は以下の要件を満たしている。1)色素放出プロセスの際に生成するカチオンまたはイオンは、このイオン性液体中に溶解できなければならない(そうでないと、電気化学的反応が終結する)、2)イオン性液体の粘度が低くなければならないが、これは、カチオンまたはアニオンのイオンの拡散に有利で、そのために電気化学的反応が促進される。
【0082】
本願発明者らは、以前、電解質として親水性イオン性液体トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウムジシアニド(P6,6,6,14DCA)の検討を行ない、その結果は、色素のPRがポリマーマトリックスから放出されるために、有望ではあったが、ただし、その放出プロセスが遅い、あるいは、その電気化学的反応速度が遅かった。このことは、恐らくは、このイオン性液体の粘度が高く、カチオンおよびアニオンの拡散が制限されたためであろう。このことを基礎として、本願発明者らは、N−エチル−N−メチルピロリニウムジシアナミド(EMI・DCA)を選択したが、それは、P6,6,6,14DCAと同じ塩のタイプのイオン性液体であるが、粘度がさらに低かったためである。
【0083】
EMI・DCAは、マックファーレン(McFarlane)ら(D.R.マックファーレン(D.R.McFarlane)、S.A.フォーサイス(S.A.Forsyth)、J.ゴールディング(J.Golding)、およびG.B.ディーキャン(G.G.Deacan)、グリーン・ケミストリー(Green Chemistry)、2002、4、444〜448)によって公刊された文献の方法に少し修正を加えることによって調製した。第一のステップにおいて、ヨウ化エチルの代わりに臭化エチルを使用したが、その理由は、いずれのアルキルハロゲン化物もほぼ同じ反応性を有してはいるが、さらにヨウ化物の酸化還元電位が、臭化物の約半分であるからである。
【0084】
実施例1の場合と同様に、この実験においては、フェノールレッド(PR)色素を、ドーパントとしてポリピロールの中に組み入れた。このポリマーは、0.1Mのピロールおよび5mMのフェノールレッドナトリウム塩を含むミリQ水からステンレス鋼金網の上に、電流密度0.5mA・cm−2で定電流的に電気重合させたが、1.0C・cm−2の電荷が消費された。フェノールレッドナトリウム塩(アルドリッチ(Aldrich))は納品されたものをそのまま使用し、ピロール(メルク(Merck))はフレッシュに蒸留した。その溶液は、使用前に窒素を用いてパージした。析出させた後に、脱イオンHOを用いてそのポリマーコーティングされた電極を完全に洗い流し、次いでアセトニトリルに10分間浸漬させて、そのポリマーマトリックスからHOを抽出させた。重合させたままのその電極を空気中48時間乾燥させてから使用した。
【0085】
乾燥させた主層のPPy−PRの上に、もう一つの薄層膜のPPy−PSSを電着させることによって、2層ポリマーを合成した。PPy−PSSは、0.16Mのピロールおよび0.2Mのポリスチレン(PSS)を含むHO:アセトニトリル(3:1)の溶液から、定電流的に電気重合させた。0.50mA・cm−2の電流密度を印加し、電着プロセスの間に0.15C・cm−2の電荷が消費された。析出させた後に、脱イオンHOを用いてそのポリマーコーティングされた電極を完全に洗い流し、次いでアセトニトリルに10分間浸漬させて、そのポリマーマトリックスからHOを抽出させた。重合させたままのその電極を空気中48時間乾燥させてから使用した。
【0086】
その色素放出プロセスを、まずガルバニ電池で検討した。ガルバニ電池は、ポリマー電極PPy−PR(PPy−PSSコーティングなし)および対電極Znと、電解質としてのイオン性液体EMIDCAとからなっていた。この電池は1.20Vの電圧を発生した。この電池においては、この電池を短絡接続させて、その電気化学的反応を刺激すると、式2に見られるようにして、Znが酸化されて、Zn2+として溶液の中に移行され、それに対して、PPy−PRが還元されて溶液の中にPRの放出を生じた。このようにして、外部電源を必要とすることなく、色素放出を達成することができる。
【0087】
【化3】

【0088】
色素放出プロセスの際に、ポリマーとZn電極との間に発生する刺激電流を図13に示した。このクロノポテンショグラムでは、初期にスパイク電流が現れ、それに続けて急激な電流低下があるが、これは、その段階でこのガルバニ電池で高いエネルギーが発生したことを示している。次いで、最終的な段階では、電流がほぼ一定となった。
【0089】
色素放出プロセスをモニターするために、UV−可視スペクトルを用いた。イオン性液体EMIDCAの吸光度を、波長帯200〜1100nmの間で測定し、そのUV−可視スペクトルを図14に示した。極めて鋭い帯域が約310nmのところに現れた。EMIDCAからの効果を省くために、300nm〜1100nmの間の波長帯を選択して、色素放出プロセスの間にポリマーマトリックスから電解質の中へと放出された色素アニオンPRのUV−可視スペクトルについて検討した。図15に見られるように、最初の36分間の間、主帯域が412nmに現れ、黄色が観察されたことが判る。反応が進行し、排除された色素PRが蓄積してくると、580nmの帯域が現れ、それが結局は主帯域となり、赤色が観察された。水溶液中では、微量のアニオンPRでは黄色を示し、PRの量が増えると色が赤色に変化するが、このことを用いても、イオン性液体EMIDCA中における色素放出プロセスの間の色の変化を説明することができる。主帯域が412nmから580nmへと変化したが、これはおそらく、EMIDCAの中に拡散して溶解したPRのために、電解質のpHが高くなったということで説明することができる。
【0090】
色素放出プロセスの間の、帯域580および412nmにおける色素PRを含む電解質の吸光度を検討し、図15に経過時間の関数として示した。色素プロセスが進行するにつれて、580nmにおける吸光度が増大していることが、明らかに認められる。しかしながら、帯域412nmにおける吸光度は、わずかに増加した後で減少するプロセスを示したが、このことは、吸光度の帯域が580nmにシフトしたことによって説明することができる。この結果は、反応の進行に伴ってその主帯域が412nmから580nmへと変化した、図15におけるUV−可視スペクトルからの結果とも一致する。
【0091】
サイクリックボルタンメトリーを用いて、−0.80〜0.80Vの電位範囲における、イオン性液体EMIDCA中のPPy−PR電極の固有の酸化還元反応を検討した。複雑で/不安定、そして非可逆性のサイクリックボルタンモグラムを図16に示した。サイクル数が増えるにつれて、酸化ピーク位置がシフトし、新しいピークが出現したことは、このプロセスの間に二つ以上の反応が起きたことを示している。サイクル数が増えるにつれて還元電流が低下するが、これは、色素アニオンPRが排除されたためであって、このプロセスが非可逆的であったということに注目すべきである。
【0092】
先にも述べたように、電解質の中への色素の自己放出は、そのポリマー電極(PPy−PSSコーティングなし)をEMIDCAの中に30分を超えて浸漬したときに見出され、その後では淡黄色が観察された。
【0093】
先にも述べたように、ポリマーマトリックスからイオン性液体EMIDCAの中への色素の自己放出を調節するために、先にも述べたように、保護用のPPy/PSSの薄層を主層のPPy/PRの上に電着させて、2層電導性ポリマーを合成した。そのポリマーをイオン性液体の中に4時間浸漬させた後でも、色素放出がまったく観察されなかったが、この結果は、電導性ポリマーPPy/PSSの層を用いてPPy−PRをコーティングした後では、色素の自己放出が改良されたということを示している。
【0094】
その2層ポリマーの電気化学的性質について、−0.80V〜0.80Vの範囲のサイクリックボルタンメトリーによって検討して、それらの結果を図17に示した。一つだけの酸化ピークが現れ、図16においてPPy−PRについて示した−0.30V〜−0.20Vでのピークが消失したことが明らかに判るが、このことは、ポリマーPPy/PSSコーティングのために、PPy−PRの酸化プロセスが抑制されたということを示している。この2層ポリマーでは、ポリマーPPy−PRに対して同様の還元プロセスも見出された。したがって、色素イオンPRが、この2層ポリマーから放出されることは依然として可能であり、このポリマーを制御放出プロセスに適用することができる。CVサイクルの回数が増えると共に酸化および還元のピーク電流が増大するが、このことは、活性化プロセスがこの2層ポリマー膜に対して起きたことを示しているということにも注目されたい。
【0095】
この2層ポリマーマトリックスからの色素アニオンPRの放出について、対電極としてZnを有するガルバニ電池において検討した。電池を短絡接続させた後に色素が放出され、観察されたということは、図17のサイクリックボルタンモグラムの場合と一致する。580nmの帯域における吸光度を、色素放出プロセスの際の経過時間の関数として記録し、図18に示した。溶液の吸光度、または放出された色素の量が、時間の経過とともに増大するということが明らかに認められる。したがって、そのコーティング層が色素の自己放出を抑制していたが、一方ではEMIDCAの中への色素の効果的な放出を改良していた。
【0096】
この実施例においては、PPy−PSSの外側層が、バリアーとして機能していて、色素の自発的な排出/放出を防止している。色素放出層に対して、別な電導性ポリマー(異なったEo値を有する)の下側層を使用して、その放出挙動を変化させることも可能であることについても注目されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一および第二の電極を含む自己給電式検出デバイスであって、
前記自己給電式検出デバイスが、前記第一および第二の電極ならびに電解質が、検知されるべき状況が出現すると、電気化学的電池として作動し、前記電池の作動によって、前記検出デバイスが少なくとも一つの動作を実施するように構成されている、自己給電式検出デバイス。
【請求項2】
前記動作が、少なくとも第一の電極における変化を起こさせることである、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項3】
前記検出デバイスが、検出器として動作する、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項4】
前記検出デバイスが、制御放出デバイスとして動作する、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項5】
前記動作が、化学成分の放出を起こさせることである、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項6】
前記動作が、負荷を駆動させることである、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項7】
前記動作が、前記状況が出現したことを知らせる、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項8】
前記第一および第二の電極の少なくとも一つが、少なくとも部分的に少なくとも1種の導電性ポリマーから形成されており、その酸化または還元によって、化学成分を放出するか産出して、前記状況が出現したことを知らせる、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項9】
前記第一および第二の電極の両方が、導電性ポリマーで形成されている、請求項8に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項10】
前記検出デバイスが、ある状況が出現したときに、前記電解質が相転移を起こすように構成されている、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項11】
前記電解質が凍結されていて、それが解凍されると、前記状況が出現したことを知らせる、請求項10に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項12】
前記検出デバイスが、前記状況が出現すると、電極の一方または両方が相互に対して動いて、それによって前記電池を形成する回路が完結されるように構成されている、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項13】
前記検出デバイスが、生物学的電解質が添加されると前記電池が完結されるように構成されている、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項14】
前記検知されるべき状況が、前記電導性ポリマーに転移を起こさせ、それが、検知されるべき状況が存在していることを知らせるに充分な電流の流れを引き起こす、請求項8に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項15】
前記検知されるべき状況が、温度、物理的接触、歪み、または特定の化学物質の存在または非存在の少なくとも一つである、請求項14に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項16】
導電性ポリマー物質が、ポリアセチレン(PAc)、ポリピロール(PPy)、ポリチオフェン(PTh)、ポリアニリン(PAn)、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、ポリ(N−置換アニリン)、ポリ(N−置換ピロール)のホモポリマーまたはコポリマーを含む群からのものである、請求項8に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項17】
前記導電性ポリマー物質が、エレクトロクロミック性を有する、請求項8に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項18】
前記エレクトロクロミック導電性ポリマー物質が、アルコキシ置換ポリチオフェンである、請求項17に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項19】
前記導電性ポリマー物質が、1種または複数のドーパントを含む、請求項8に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項20】
前記電解質が、水性電解質、有機電解質、固体電解質、高分子電解質、およびイオン性液体を含む電解質の群から選択される、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。
【請求項21】
前記検出デバイスが、電流を前記検出器から外部デバイスの方向へと向かわせる、出力メカニズムを含む、請求項1に記載の自己給電式検出デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−7747(P2013−7747A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153182(P2012−153182)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2008−553578(P2008−553578)の分割
【原出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(508238299)ユニバーシティ オブ ウォロンゴング (2)
【Fターム(参考)】