自然エネルギー発電の総出力の推定方法
【課題】簡便に平滑化効果を推定でき、かつその平滑化効果を利用して簡便に自然エネルギーの総出力を推定することができる方法を提供する。
【解決手段】まず、一地点の出力を周波数成分に分け、2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分ける。そして、両結果の比を周波数成分毎に取って関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておく。次に、一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、平均値に基づき、M地点の自然エネルギー発電の総出力を求める。
【解決手段】まず、一地点の出力を周波数成分に分け、2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分ける。そして、両結果の比を周波数成分毎に取って関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておく。次に、一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、平均値に基づき、M地点の自然エネルギー発電の総出力を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風力や太陽光を利用する自然エネルギー発電の対象エリア内における総出力を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力は同時同量の原則に基づき発電されている。すなわち、電力は需給が一致し、発電量と消費量とが同量となるべきである。電力の需給バランスが崩れると、周波数や電圧の変化を招き、電気機器の誤作動を引き起こすおそれが生じるためである。そこで、電力会社は各発電所を中央制御し、短い周期で発電量を調整し、需給バランスを取っている。
【0003】
一方で、近年の燃料費の高騰や環境保護意識の高まりを受けて、風力や太陽光を利用する自然エネルギー発電が注目を集めている。自然エネルギー発電は、燃料費が不要であり、また温暖化ガスを放出しないためである。特に太陽光パネルは各家庭やビルにも急速に普及し始めている。
【0004】
但し、これら自然エネルギー発電は、気象変動を要因として発電量が短期間に大きく変動する。そのため、これら自然エネルギー発電の発電機が大量に電力系統に連系された場合、大きな問題が生じる可能性がある。すなわち、自然エネルギー発電の発電量が大きく変動すると、周波数制御のために多くの調整用の発電機を準備する必要が生じてしまう。
【0005】
そこで、自然エネルギー発電の出力を可能な限り精度よく推定することが必要になる。
【0006】
この場合、調整対象は、一定のエリア全体の自然エネルギー発電の総出力であるから、この総出力を推定することが必要である。このとき、複数の地点での自然エネルギー発電の出力が合計された場合、出力変動のランダム成分が打ち消し合って平滑化効果が見られることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。従って、一定のエリア全体としての自然エネルギー発電の総出力を推定するには、この平滑化効果の程度を加味することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】村田晃伸他、「広域的に多数台導入された太陽光発電に関する出力変動幅の推定方法」、電学論B、127巻5号 pp.645−652 2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1のように学術的には平滑化効果を利用した自然エネルギー発電の総出力を推定する方法は多く報告されているが、それら推定方法が現実的な労力及びコストの観点から実用可能であるとは言い難い。
【0009】
例えば、非特許文献1では平滑化効果を自然エネルギー発電の設置点間の距離を用いて推定している。しかしながら、自然エネルギー発電の設置点間の距離を調査するのは現実的に困難である。特に、太陽光パネルの場合は、それが多数の家庭に普及することを考えると、電力会社側で太陽光パネルの設置位置や設置タイミングを把握することは現実的ではない。
【0010】
従って、現実的な労力やコストの観点から、対象エリア内における平滑化効果の簡便な推定方法、及びその平滑化効果を利用した簡便な総出力の推定方法が待望されている。
【0011】
本発明の実施形態は、上記の課題を解消するために提案されたものであり、簡便に平滑化効果を推定でき、かつその平滑化効果を利用して簡便に自然エネルギーの総出力を推定することができる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、実施形態の推定方法は、対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力の推定方法であって、2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分けた結果を一地点の出力を周波数成分に分けた結果で割ったものを関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておき、一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、前記平均値に基づき、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ならし効果関数S(f)を示すグラフである。
【図2】周波数空間の出力変動P1(f)を示すグラフである。
【図3】周波数空間の出力変動Pavr(f)を示すグラフである。
【図4】出力変動P1(f)とPavr(f)の比を取った結果を示すグラフである。
【図5】第1の実施形態に係るならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係る予め作成されたならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図7】各種の天候とその天候の影響を受けた出力波形を示すグラフである。
【図8】第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図9】各天候タイプの周波数空間の出力変動P1(f)を示すグラフである。
【図10】各天候タイプの周波数空間の出力変動Pavr(f)を示すグラフである。
【図11】天候タイプ毎のならし効果関数S(f)を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図13】実際に第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて代表点の出力を平滑化した結果を示すグラフである。
【図14】実際に第2の実施形態に係る推定方法により総出力を推定した結果を示すグラフである。
【図15】理想的な日射量に対する実際の日射量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、自然エネルギー発電の総出力の推定方法に係る各実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る推定方法では、2以上のN地点に設けられた自然エネルギー発電の出力結果からならし効果関数S(f)が予め作成され、一地点の自然エネルギー発電の出力とならし効果関数S(f)とから対象エリア内のM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力が推定される。自然エネルギー発電は、太陽光又は風力を電力に変換する発電機である。対象エリアは、天候が概ね一致する地域であり、例えば県や市単位である。
【0016】
図1は、ならし効果関数S(f)を示すグラフであり、横軸は周波数、縦軸は平滑化の度合いである。ならし効果関数S(f)は、複数の自然エネルギー発電の出力を合計した場合、個々の自然エネルギー発電の出力の変動がどの程度打ち消されるかを示しており、その打ち消された結果を平滑化の度合いとして周波数成分毎に示している。平滑化の度合いは、打ち消し前後の出力変動の比率である。出力変動が全く打ち消されない場合には、平滑化の度合いは1となり、平滑化の効果が高いほど数値は低くなる。
【0017】
複数の自然エネルギー発電の総出力の変動は、個々の自然エネルギー発電の出力変動に比べて、平滑化されることが知られている。太陽光発電の場合には、雲の移動等による出力の増減が打ち消し合って平滑化され、相対的な変動が小さくなるためと考えられている。そのため、低い周波数の出力変動は同期性が高いために平滑効果は低いが、周波数が高くなるに連れて出力変動の独立性が高まるために平滑化の度合いが強くなっていき、所定の周波数以降は出力変動が独立とみなせるために一定の平滑化の度合いとなる。ならし効果関数S(f)は、このような自然エネルギー発電において現れる周波数成分毎の平滑化の度合いを示している。
【0018】
従って、ならし効果関数S(f)は、周波数が高くなるに連れて平滑化の度合いが連続的に強くなっていく変動部分のならし効果関数S1(f)と、一定の平滑化の度合いとなる平坦部分のならし効果関数S2(f)とからなる。
【0019】
(ならし効果関数の作成方法)
このならし効果関数S(f)の作成方法を図2乃至図4に基づき説明する。図2に示すように、まず、一地点の出力を実空間から周波数空間の出力変動P1(f)に変換する。具体的には、一地点の出力をフーリエ変換して周波数成分に分ける。
【0020】
また、図3に示すように、対象エリア内のN地点の出力を時間成分のまま平均し、周波数空間の出力変動Pavr(f)に変換する。平均することで、N地点の自然エネルギー発電が合計されて平滑効果が反映され、さらにNで除されてスケールが合わせられることとなる。地点数Nは、2以上であればよいが、数が多いほど推定精度は高くなる。
【0021】
次に、図4の実線で示すように、出力変動P1(f)と出力変動Pavr(f)の比を周波数成分毎に取る。すなわち、図3に示したPavr(f)を図2に示したP1(f)で割ることにより、図4の実線の波形が得られる。比を取ることで、周波数成分毎の平滑効果の度合いが算出される。平均を元にした出力変動Pavr(f)は平滑効果が反映されており、一地点の出力変動P1(f)には平滑効果が反映されていないためである。
【0022】
次に、図4の破線で示すように、比を取った結果を関数近似する。この関数近似された結果がならし効果関数S(f)である。ここで、自然エネルギーの出力変動が完全に独立している場合、出力変動をその標準偏差で評価したとき、i番目の発電所の定格出力をPiとしたとき、定格出力で規格化された出力変動の標準偏差σTOTは、以下の数式1のように表される。
【0023】
【数1】
【0024】
そして、P1=P2=・・・Pn=P、σ1=σ2=・・・σN=σPVであれば、以下の数式2となる。
【0025】
【数2】
【0026】
従って、数式2に示されるように、N個の自然エネルギー発電の出力変動が完全に独立していれば、それらの合計の出力の規格化された標準偏差σTOTは、個々の自然エネルギー発電の出力の標準偏差σPVのNの平方根分の1となる。すなわち、N個の自然エネルギー発電の出力変動が完全に独立していれば、個々の自然エネルギー発電の出力変動に対して、N個の自然エネルギー発電の出力変動の平均は、Nの平方根分の1に低減される。
【0027】
図4に戻ると、高い周波数帯FHにおける比の値は、一定値を中心とした平坦部となっている。この高い周波数帯FHがN個の自然エネルギー発電の出力変動が完全に独立している部分であり、一定値とはNの平方根分の1である。
【0028】
そこで、関数近似では、周波数帯FHのならし効果関数S2(f)を平滑化の度合いをNの平方根分の1の定数項とする。
【0029】
また、出力変動が独立とみなすことのできない低い周波数帯FLのならし効果関数S1(f)は、周波数が高くなるにつれて比の値が1からNの平方根分の1まで連続的に変化していく回帰式として作成する。低い周波数帯FLは、例えば、移動平均がNの平方根分の1から所定値以上離れた値を有する連続周波数帯とすることで仮定することができる。本実施形態では、この仮定された領域についてS1(f)を作成する。
【0030】
S1(f)の作成においては、簡単な場合として、周波数の1次式で近似することができる。例えば、周波数をfとすると、周波数帯FLについては、
【数3】
で近似する。そして、この係数a及びbを回帰分析によって決定する。尚、図4においては周波数軸が対数表示となっているが、S1(f)を一次式で近似させた結果である。
【0031】
以上により、地点数Nについてのならし効果関数S(f)は、低い周波数帯FLのならし効果関数S1(f)、及び高い周波数帯FHのならし効果関数S2(f)として作成される。尚、この回帰分析では、低い周波数帯FLについて、一次式で近似させても、二次式で近似させてもよい。
【0032】
次に、この地点数Nについてのならし効果関数S(f)を対象エリア内の地点数Mについてのならし効果関数S(f)に換算する。まず、高い周波数帯FHにおけるならし効果関数S2(f)は、一定であり、対象エリア内の自然エネルギー発電の設置数Mの平方根分の1である。
【0033】
そして、S1(f)が適用される周波数の上限は、S1(f)とS2(f)との交点となる。そこで、数式4により、交点の周波数fxを求めて、その交点の周波数fx未満についてはS1(f)とし、交点の周波数fx以上についてはS2(f)=1/√Mとする。
【0034】
【数4】
【0035】
これにより、以下の数式5のように、ならし効果関数S(f)が作成される。尚、数式5の1分の3600×24は、1日を単位とした周波数である。
【数5】
【0036】
なお、出力変動が独立しているとみなせる周波数帯FHについては、平滑効果によって地点数Mの自然エネルギー発電の平均はMの平方根分の1に平滑化されるため、S2(f)=1/√Mとみなした。その他にも、比を取った結果に含まれているグラフ上の平坦部の実際値Rを用い、以下の数式6によってS2(f)を決定するようにしてもよい。この数式6は、地点数Nにおける平坦部のならし効果S2(f)=Rを地点数Mにおける平坦部のならし効果関数S2(f)に変換するものである。
【数6】
【0037】
(総出力の推定方法)
M地点の自然エネルギー発電の総出力の推定では、地点数Mの平均出力変動の算出と、その算出結果を元にした総出力の算出とを行う。
【0038】
すなわち、地点数Mの平均出力変動の算出では、一地点の自然エネルギー発電の出力変動を周波数成分に分けることで、出力変動P1(f)を求める。そして、数式7により、出力変動P1(f)とならし効果関数S(f)とを周波数毎に乗じることで、地点数Mの平均の出力変動Pm(f)を求める。
【0039】
【数7】
【0040】
そして、この出力変動Pm(f)を時間成分である実空間に戻し、すなわち、逆フーリエ変換を行い、その結果に対して、対象エリア内に設けられている自然エネルギー発電の設置数Mを乗じる。これにより、対象エリア内に設けられているM地点の自然エネルギー発電の総出力が推定される。
【0041】
(実施例)
以上の自然エネルギー発電の総出力の推定方法では、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、推定プログラムの命令を順番に実行するCPU、推定プログラムの実行に必要なデータ及び計算結果を記憶する記憶装置を構成要素とするコンピュータを用いて行われる。
【0042】
図5は、ならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。この動作は、推定プログラムをコンピュータに記憶させておき、順次命令を実行させていくことにより実現される。
【0043】
まず、ユーザにより、入力装置を用いてデータの入力が行われる(ステップS01)。データは、対象エリア内のN地点の自然エネルギー発電の出力を示すデータである。N地点は、対象エリア内に均等に分散していることが望ましい。出力を示すデータの範囲としては、個別の日の特殊要因や個別の地点の特殊効果を除外するために、複数の日の平均を用いることが有効である。例えば、対象エリア内に均等に分散した16地点の4日分の出力データを採取して、それらを入力装置を用いてコンピュータに入力する。
【0044】
次に、ユーザは、入力装置を用いて、採取したN地点の自然エネルギー発電の出力を示すデータから一地点を代表点として選択する(ステップS02)。代表点は、N地点の中心であることが望ましい。
【0045】
N地点の出力データの入力、及び代表点の選択が終了すると、CPUは、推定プログラムを実行することで、代表点の出力データをフーリエ変換し、周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS03)。さらに、CPUは、N地点の出力データを平均し(ステップS04)、フーリエ変換することで周波数空間の出力変動Pavr(f)を算出する(ステップS05)。
【0046】
フーリエ変換が終了すると、CPUは、出力変動P1(f)及びPavr(f)の比を取る(ステップS06)。具体的には、CPUは、周波数成分毎に出力変動P1(f)及びPavr(f)の値を取り出し、それらの比を計算し、比の値を周波数に関連づけて記憶装置に記憶させる。
【0047】
周波数毎の比の値が計算されると、CPUは、そのデータ群を回帰分析してならし効果関数S(f)を作成する(ステップS07)。具体的には、周波数毎の移動平均を求め、移動平均値とNの平方根分の1との差を算出し、差が所定値以上の移動平均に対応する周波数帯を導く。そして、この周波数帯の比の値を用いて回帰分析を行い、ならし効果関数S1(f)を算出する。さらに、S1(f)とS2(f)=1/√Mとの交点を求め、その交点の周波数fxよりも低い周波数帯を周波数帯FLとして、ならし効果関数S1(f)とを関連づけて記憶装置に記憶させ、周波数fx以上の高い周波数帯FHとならし効果関数S2(f)とを関連づけて記憶装置に記憶させる。
【0048】
図6は、予め作成されたならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。この動作は、推定プログラムをコンピュータに記憶させておき、順次命令を実行させていくことにより実現される。
【0049】
まず、ユーザにより、入力装置を用いてデータの入力が行われる(ステップS11)。入力されるデータは、一地点の自然エネルギー発電の出力である。一地点としては、対象エリア内の気象変動が反映されやすいエリア中心に位置するものが望ましい。尚、この出力データは、キーボードやマウス等の入力装置を用いてコンピュータに入力する他、自然エネルギー発電とコンピュータとをネットワークで接続し、自然エネルギー発電とコンピュータの通信によって入力されるようにしてもよい。
【0050】
データが入力されると、CPUは、推定プログラムを実行することで、一地点の自然エネルギー発電の出力をフーリエ変換して、周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS12)。
【0051】
そして、CPUは、地点数Mについてのならし効果関数S(f)を記憶装置から読み出し(ステップS13)、M地点の平均の出力変動Pm(f)を平滑化効果を加味して算出する(ステップS14)。具体的には、Pm(f)=P1(f)×S(f)を計算する。すなわち、周波数帯FLに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、その周波数fについてのS1(f)を乗じる。また、周波数帯FHに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、Mの平方根分の1を乗じる。
【0052】
M地点の平均出力変動Pm(f)を算出すると、CPUは、この出力変動Pm(f)を逆フーリエ変換することで時間成分の出力変動に変換する(ステップS15)。そして、CPUは、この時間成分で表されたM地点の平均の出力変動Pm(f)に地点数Mを乗算することで、対象エリア内のM地点の自然エネルギー発電の総出力を算出する(ステップS16)。
【0053】
(効果)
以上のように、第1の実施形態の推定方法は、対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力の推定方法であって、一地点の出力を周波数成分に分け、2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分け、両結果の比を周波数成分毎に取って関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておき、一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、前記平均値に基づき、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めるようにした。
【0054】
これにより、ならし効果関数S(f)を簡便に求めることができ、一地点の自然エネルギー発電の出力から対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力を簡単に推定することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る推定方法について説明する。太陽光発電の場合、その出力は、天候によって特徴的な出力波形を示し、出力の変動の程度も天候によって大きな影響を受ける。
【0056】
図7は、各種の天候とその天候の影響を受けた出力波形を示すグラフである。(a)に示すように、快晴の日には、短時間の雲の通過に伴い、釣鐘状の出力カーブから出力減少方向へ過渡的な出力急変が生じるドロップタイプの出力波形となる。(b)に示すように、頻繁な出力変動が見られる日もあり、くし状タイプの出力波形となる。(c)に示すように、快晴の日と雨あるいは曇りの日の中間的な日には、曇りがちな天候に短時間の晴れ間が生じて出力増加方向へ過渡的な出力急変が生じるスパイクタイプの出力波形となる。(d)に示すように、雨あるいは曇りの日には、発電出力自体が小さく、直達日射量の影響が少ないために変動自体が小さい曇り/雨タイプの出力波形となる。
【0057】
そのため、第2の実施形態に係る推定方法では、平滑効果についても天候毎に分析し、天候毎にならし効果関数S(f)を作成する。尚、天候のタイプは、曇りと雨とを分けて5種類とすることもできるし、くし状タイプとスパイクタイプを合わせて3種類とすることもできる。また、1日単位ではなく、半日単位、1時間単位で天候を分類し、それら天候毎にならし効果関数S(f)を作成することもできる。
【0058】
(実施例)
図8は、第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【0059】
まず、ユーザにより、入力装置を用いて出力データの入力が行われる(ステップS21)。また、ユーザにより、入力装置を用いて出力データに関連づけられる天候タイプが入力される(ステップS22)。
【0060】
そして、ユーザは、入力装置を用いて、採取したN地点の自然エネルギー発電の出力を示すデータから一地点を代表点として選択し(ステップS23)、CPUは、推定プログラムを実行することで、代表点の出力データをフーリエ変換し、図9に示すように、各天候タイプの周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS24)。さらに、CPUは、N地点の出力データを平均し(ステップS25)、フーリエ変換することで、図10に示すように、各天候タイプの周波数空間の出力変動Pavr(f)を算出する(ステップS26)。
【0061】
フーリエ変換が終了すると、CPUは、天候タイプ毎に出力変動P1(f)及びPavr(f)の比を取り(ステップS27)、比を取った結果を回帰分析してならし効果関数S(f)を作成し(ステップS28)、天候タイプに関連づけて記憶装置に記憶させる(ステップS29)。
【0062】
図11は、天候タイプ毎のならし効果関数S(f)を示す図である。図11(a)に示すように、天候タイプ毎に異なるならし効果関数S(f)が作成され、図11の(b)に示すように、天候タイプ毎に低い周波数帯FLに対するならし効果関数S1(f)=a×f+bの係数a及び係数bが記憶される。
【0063】
図11に示すように、くし状タイプの場合には、比較的に長周期まで平滑化効果が大きいが、曇/雨タイプでは短周期においてのみ平滑化効果が見られることが示されている。
【0064】
図12は、第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【0065】
まず、ユーザにより、入力装置を用いて代表点の出力データの入力が行われる(ステップS31)。また、ユーザにより、入力装置を用いて天候タイプが選択される(ステップS32)。代表点の出力データの入力及び天候タイプの入力が行われると、CPUは、その出力データをフーリエ変換して、周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS33)。
【0066】
そして、CPUは、選択された天候タイプに関連づけられているならし効果関数S(f)を記憶装置から読み出し(ステップS34)、M地点の平均の出力変動を平滑化効果を加味して算出する(ステップS35)。
【0067】
ここで、第1の実施形態では、周波数帯FLと周波数帯FHの境界となる周波数fxを予め算出しておき、周波数帯FLに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、その周波数fについてのS1(f)を乗じ、周波数帯FHに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、Mの平方根分の1を乗じた。
【0068】
その他にも、周波数帯FLと周波数帯FHの境界となる周波数fxは算出せずにM地点の平均の出力変動を算出することもできる。具体的には、CPUは、周波数fを順次高くしていき、周波数帯FLに対応するならし効果関数P1(f)を算出していく。そして、CPUは、このならし効果関数P1(f)の結果が、Mの平方根分の1と等しくなれば、それ以降の周波数fに対してはMの平方根分の1を関連づける。この方法によると、ならし効果関数S(f)を予め作成する手間を省くことができる。
【0069】
フローチャートに戻り、M地点の平均出力変動Pm(f)を算出すると、CPUは、この出力変動Pm(f)を逆フーリエ変換することで時間成分の出力変動に変換する(ステップS36)。そして、CPUは、この時間成分で表されたM地点の平均出力変動Pm(f)に地点数Mを乗算することで、対象エリア内のM地点の自然エネルギー発電の総出力を算出する(ステップS37)。
【0070】
図13は、実際に第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて代表点の出力を平滑化した結果を示すグラフである。本実験では、快晴の日に見られるドロップタイプの天候、頻繁な出力変動が見られるくし状タイプの天候、快晴の日と雨あるいは曇りの日の中間的な日に見られるスパイクタイプの天候、及び曇りあるいは雨の日に見られる曇り/雨タイプの天候のそれぞれについて、ならし効果関数S(f)を作成し、同一代表点の出力変動に適用した。元の出力データは、4日間の平均であり、地点数Nは16である。各グラフの左側は、代表点の出力変動率を規格化した値を示し、真ん中は、本実施形態の推定方法を用いた総出力変動率の規格化した値を示し、右側は、M地点の出力を単純に合計して変動率を規格化した値を示している。
【0071】
図13に示すように、各天候タイプにおいても、真ん中のグラフが示す変動率は、右側のグラフが示す変動率に近い値を示しており、本実施形態のならし効果関数S(f)が精度よく平滑効果を反映していることを示している。
【0072】
また、図14は、実際に第2の実施形態に係る推定方法により総出力を推定した結果を示すグラフである。本実験では、各天候について、ならし効果関数S(f)を作成し、同一代表点の出力変動からM地点の総出力を求めた。図14の上段は、代表点の出力変動を規格化した値を示し、中段は、本実施形態の推定方法を用いた総出力の規格化した値を示し、下段は、M地点の出力を単純に合計して規格化した値を示している。
【0073】
図14に示すように、本実施形態の推定方法を用いた中段の出力波形は、下段の単純合計の出力波形に非常によく似ており、本実施形態のならし効果関数S(f)の作成方法を用いると、簡便で精度のよい総出力の推定が可能となっていることがわかる。
【0074】
以上のように、第2の実施形態の推定方法は、自然エネルギー発電の出力波形を天候に応じて分類し、その分類毎に前記関数を作成する。これにより、より精度の高い総出力の推定が可能となる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る推定方法について説明する。第2の実施形態では、天候タイプを晴れや雨というように離散的に分類した。この他にも、連続値を算出して、連続値の分類により天候タイプを分類するようにしてもよい。
【0076】
そこで、本実施形態の推定方法では、数式8に示される快晴度Ksを算出し、その快晴度Ksによって天候を数値的に評価して、天候タイプを分類する。
【0077】
【数8】
【0078】
図15に示すように、この数式8は、理想的な日射量に対する日射量の比によって天候を数値化したものである。SMES(t)は、測定された水平面全天日射量の瞬間値である。SMAX(t)は、その日射量の理論的最大値、すなわち快晴時の値である。時刻T1及びT2は快晴度を算出する積分区間であるが、1時間又は1日のように、総出力を推定する時間範囲に応じて設定可能である。
【0079】
例えば、快晴度Ks=0.8〜1.0はドロップタイプに分類される快晴の日に対応させ、快晴度Ks=0.65〜0.8はくし状タイプに分類される日に対応させ、快晴度Ks=0.3〜0.65はスパイクタイプに分類される日に対応させ、快晴度Ks=0〜0.3は曇/雨タイプに分類される日に対応させる。
【0080】
また、天候と日射量と発電量とは一定の相関性を有している。従って、理論的な日射量と実際の日射量との比の代わりに、快晴時の発電量と実際の発電量との比を取って快晴度Ksとしてもよい。快晴時の発電出力は、快晴時の日射量に太陽光発電パネルの電力変換効率を乗じたり、実測値を計測したりするようにしてもよい。
【0081】
以上のように、日射量又は発電量に応じてならし効果関数S(f)を作成しておき、一地点の実際の日射量又は発電量に応じてならし効果関数S(f)を選択して、M地点の自然エネルギー発電の総出力を求めるようにした。これにより、運用者の目視に基づき天候を判断する必要はなく、ならし効果関数S(f)の選択ミスに基づく推定精度の低下を防止することができる。
【0082】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る推定方法について説明する。第1乃至3の実施形態では、各地点の自然エネルギー発電の定格出力が等しいものとして総出力を推定した。但し、実際には地点毎の定格出力は異なることが普通である。そこで、第4の実施形態では、地点数Mは、総出力の比を用いて算出する。すなわち、地点数Mは、対象エリア全体の合計出力を一地点の定格出力で除した比の値によって算出される。
【0083】
これにより、各定格出力の自然エネルギー発電が対象エリア内に混在する場合であっても精度の高い総出力の推定が可能となる。
【0084】
[その他の実施の形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、第1乃至第4の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせたものも包含される。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、風力や太陽光を利用する自然エネルギー発電の対象エリア内における総出力を推定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力は同時同量の原則に基づき発電されている。すなわち、電力は需給が一致し、発電量と消費量とが同量となるべきである。電力の需給バランスが崩れると、周波数や電圧の変化を招き、電気機器の誤作動を引き起こすおそれが生じるためである。そこで、電力会社は各発電所を中央制御し、短い周期で発電量を調整し、需給バランスを取っている。
【0003】
一方で、近年の燃料費の高騰や環境保護意識の高まりを受けて、風力や太陽光を利用する自然エネルギー発電が注目を集めている。自然エネルギー発電は、燃料費が不要であり、また温暖化ガスを放出しないためである。特に太陽光パネルは各家庭やビルにも急速に普及し始めている。
【0004】
但し、これら自然エネルギー発電は、気象変動を要因として発電量が短期間に大きく変動する。そのため、これら自然エネルギー発電の発電機が大量に電力系統に連系された場合、大きな問題が生じる可能性がある。すなわち、自然エネルギー発電の発電量が大きく変動すると、周波数制御のために多くの調整用の発電機を準備する必要が生じてしまう。
【0005】
そこで、自然エネルギー発電の出力を可能な限り精度よく推定することが必要になる。
【0006】
この場合、調整対象は、一定のエリア全体の自然エネルギー発電の総出力であるから、この総出力を推定することが必要である。このとき、複数の地点での自然エネルギー発電の出力が合計された場合、出力変動のランダム成分が打ち消し合って平滑化効果が見られることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。従って、一定のエリア全体としての自然エネルギー発電の総出力を推定するには、この平滑化効果の程度を加味することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献1】村田晃伸他、「広域的に多数台導入された太陽光発電に関する出力変動幅の推定方法」、電学論B、127巻5号 pp.645−652 2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1のように学術的には平滑化効果を利用した自然エネルギー発電の総出力を推定する方法は多く報告されているが、それら推定方法が現実的な労力及びコストの観点から実用可能であるとは言い難い。
【0009】
例えば、非特許文献1では平滑化効果を自然エネルギー発電の設置点間の距離を用いて推定している。しかしながら、自然エネルギー発電の設置点間の距離を調査するのは現実的に困難である。特に、太陽光パネルの場合は、それが多数の家庭に普及することを考えると、電力会社側で太陽光パネルの設置位置や設置タイミングを把握することは現実的ではない。
【0010】
従って、現実的な労力やコストの観点から、対象エリア内における平滑化効果の簡便な推定方法、及びその平滑化効果を利用した簡便な総出力の推定方法が待望されている。
【0011】
本発明の実施形態は、上記の課題を解消するために提案されたものであり、簡便に平滑化効果を推定でき、かつその平滑化効果を利用して簡便に自然エネルギーの総出力を推定することができる方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、実施形態の推定方法は、対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力の推定方法であって、2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分けた結果を一地点の出力を周波数成分に分けた結果で割ったものを関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておき、一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、前記平均値に基づき、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、を特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ならし効果関数S(f)を示すグラフである。
【図2】周波数空間の出力変動P1(f)を示すグラフである。
【図3】周波数空間の出力変動Pavr(f)を示すグラフである。
【図4】出力変動P1(f)とPavr(f)の比を取った結果を示すグラフである。
【図5】第1の実施形態に係るならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図6】第1の実施形態に係る予め作成されたならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図7】各種の天候とその天候の影響を受けた出力波形を示すグラフである。
【図8】第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図9】各天候タイプの周波数空間の出力変動P1(f)を示すグラフである。
【図10】各天候タイプの周波数空間の出力変動Pavr(f)を示すグラフである。
【図11】天候タイプ毎のならし効果関数S(f)を示す図である。
【図12】第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【図13】実際に第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて代表点の出力を平滑化した結果を示すグラフである。
【図14】実際に第2の実施形態に係る推定方法により総出力を推定した結果を示すグラフである。
【図15】理想的な日射量に対する実際の日射量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、自然エネルギー発電の総出力の推定方法に係る各実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る推定方法では、2以上のN地点に設けられた自然エネルギー発電の出力結果からならし効果関数S(f)が予め作成され、一地点の自然エネルギー発電の出力とならし効果関数S(f)とから対象エリア内のM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力が推定される。自然エネルギー発電は、太陽光又は風力を電力に変換する発電機である。対象エリアは、天候が概ね一致する地域であり、例えば県や市単位である。
【0016】
図1は、ならし効果関数S(f)を示すグラフであり、横軸は周波数、縦軸は平滑化の度合いである。ならし効果関数S(f)は、複数の自然エネルギー発電の出力を合計した場合、個々の自然エネルギー発電の出力の変動がどの程度打ち消されるかを示しており、その打ち消された結果を平滑化の度合いとして周波数成分毎に示している。平滑化の度合いは、打ち消し前後の出力変動の比率である。出力変動が全く打ち消されない場合には、平滑化の度合いは1となり、平滑化の効果が高いほど数値は低くなる。
【0017】
複数の自然エネルギー発電の総出力の変動は、個々の自然エネルギー発電の出力変動に比べて、平滑化されることが知られている。太陽光発電の場合には、雲の移動等による出力の増減が打ち消し合って平滑化され、相対的な変動が小さくなるためと考えられている。そのため、低い周波数の出力変動は同期性が高いために平滑効果は低いが、周波数が高くなるに連れて出力変動の独立性が高まるために平滑化の度合いが強くなっていき、所定の周波数以降は出力変動が独立とみなせるために一定の平滑化の度合いとなる。ならし効果関数S(f)は、このような自然エネルギー発電において現れる周波数成分毎の平滑化の度合いを示している。
【0018】
従って、ならし効果関数S(f)は、周波数が高くなるに連れて平滑化の度合いが連続的に強くなっていく変動部分のならし効果関数S1(f)と、一定の平滑化の度合いとなる平坦部分のならし効果関数S2(f)とからなる。
【0019】
(ならし効果関数の作成方法)
このならし効果関数S(f)の作成方法を図2乃至図4に基づき説明する。図2に示すように、まず、一地点の出力を実空間から周波数空間の出力変動P1(f)に変換する。具体的には、一地点の出力をフーリエ変換して周波数成分に分ける。
【0020】
また、図3に示すように、対象エリア内のN地点の出力を時間成分のまま平均し、周波数空間の出力変動Pavr(f)に変換する。平均することで、N地点の自然エネルギー発電が合計されて平滑効果が反映され、さらにNで除されてスケールが合わせられることとなる。地点数Nは、2以上であればよいが、数が多いほど推定精度は高くなる。
【0021】
次に、図4の実線で示すように、出力変動P1(f)と出力変動Pavr(f)の比を周波数成分毎に取る。すなわち、図3に示したPavr(f)を図2に示したP1(f)で割ることにより、図4の実線の波形が得られる。比を取ることで、周波数成分毎の平滑効果の度合いが算出される。平均を元にした出力変動Pavr(f)は平滑効果が反映されており、一地点の出力変動P1(f)には平滑効果が反映されていないためである。
【0022】
次に、図4の破線で示すように、比を取った結果を関数近似する。この関数近似された結果がならし効果関数S(f)である。ここで、自然エネルギーの出力変動が完全に独立している場合、出力変動をその標準偏差で評価したとき、i番目の発電所の定格出力をPiとしたとき、定格出力で規格化された出力変動の標準偏差σTOTは、以下の数式1のように表される。
【0023】
【数1】
【0024】
そして、P1=P2=・・・Pn=P、σ1=σ2=・・・σN=σPVであれば、以下の数式2となる。
【0025】
【数2】
【0026】
従って、数式2に示されるように、N個の自然エネルギー発電の出力変動が完全に独立していれば、それらの合計の出力の規格化された標準偏差σTOTは、個々の自然エネルギー発電の出力の標準偏差σPVのNの平方根分の1となる。すなわち、N個の自然エネルギー発電の出力変動が完全に独立していれば、個々の自然エネルギー発電の出力変動に対して、N個の自然エネルギー発電の出力変動の平均は、Nの平方根分の1に低減される。
【0027】
図4に戻ると、高い周波数帯FHにおける比の値は、一定値を中心とした平坦部となっている。この高い周波数帯FHがN個の自然エネルギー発電の出力変動が完全に独立している部分であり、一定値とはNの平方根分の1である。
【0028】
そこで、関数近似では、周波数帯FHのならし効果関数S2(f)を平滑化の度合いをNの平方根分の1の定数項とする。
【0029】
また、出力変動が独立とみなすことのできない低い周波数帯FLのならし効果関数S1(f)は、周波数が高くなるにつれて比の値が1からNの平方根分の1まで連続的に変化していく回帰式として作成する。低い周波数帯FLは、例えば、移動平均がNの平方根分の1から所定値以上離れた値を有する連続周波数帯とすることで仮定することができる。本実施形態では、この仮定された領域についてS1(f)を作成する。
【0030】
S1(f)の作成においては、簡単な場合として、周波数の1次式で近似することができる。例えば、周波数をfとすると、周波数帯FLについては、
【数3】
で近似する。そして、この係数a及びbを回帰分析によって決定する。尚、図4においては周波数軸が対数表示となっているが、S1(f)を一次式で近似させた結果である。
【0031】
以上により、地点数Nについてのならし効果関数S(f)は、低い周波数帯FLのならし効果関数S1(f)、及び高い周波数帯FHのならし効果関数S2(f)として作成される。尚、この回帰分析では、低い周波数帯FLについて、一次式で近似させても、二次式で近似させてもよい。
【0032】
次に、この地点数Nについてのならし効果関数S(f)を対象エリア内の地点数Mについてのならし効果関数S(f)に換算する。まず、高い周波数帯FHにおけるならし効果関数S2(f)は、一定であり、対象エリア内の自然エネルギー発電の設置数Mの平方根分の1である。
【0033】
そして、S1(f)が適用される周波数の上限は、S1(f)とS2(f)との交点となる。そこで、数式4により、交点の周波数fxを求めて、その交点の周波数fx未満についてはS1(f)とし、交点の周波数fx以上についてはS2(f)=1/√Mとする。
【0034】
【数4】
【0035】
これにより、以下の数式5のように、ならし効果関数S(f)が作成される。尚、数式5の1分の3600×24は、1日を単位とした周波数である。
【数5】
【0036】
なお、出力変動が独立しているとみなせる周波数帯FHについては、平滑効果によって地点数Mの自然エネルギー発電の平均はMの平方根分の1に平滑化されるため、S2(f)=1/√Mとみなした。その他にも、比を取った結果に含まれているグラフ上の平坦部の実際値Rを用い、以下の数式6によってS2(f)を決定するようにしてもよい。この数式6は、地点数Nにおける平坦部のならし効果S2(f)=Rを地点数Mにおける平坦部のならし効果関数S2(f)に変換するものである。
【数6】
【0037】
(総出力の推定方法)
M地点の自然エネルギー発電の総出力の推定では、地点数Mの平均出力変動の算出と、その算出結果を元にした総出力の算出とを行う。
【0038】
すなわち、地点数Mの平均出力変動の算出では、一地点の自然エネルギー発電の出力変動を周波数成分に分けることで、出力変動P1(f)を求める。そして、数式7により、出力変動P1(f)とならし効果関数S(f)とを周波数毎に乗じることで、地点数Mの平均の出力変動Pm(f)を求める。
【0039】
【数7】
【0040】
そして、この出力変動Pm(f)を時間成分である実空間に戻し、すなわち、逆フーリエ変換を行い、その結果に対して、対象エリア内に設けられている自然エネルギー発電の設置数Mを乗じる。これにより、対象エリア内に設けられているM地点の自然エネルギー発電の総出力が推定される。
【0041】
(実施例)
以上の自然エネルギー発電の総出力の推定方法では、キーボードやマウス等の入力装置、ディスプレイ等の出力装置、推定プログラムの命令を順番に実行するCPU、推定プログラムの実行に必要なデータ及び計算結果を記憶する記憶装置を構成要素とするコンピュータを用いて行われる。
【0042】
図5は、ならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。この動作は、推定プログラムをコンピュータに記憶させておき、順次命令を実行させていくことにより実現される。
【0043】
まず、ユーザにより、入力装置を用いてデータの入力が行われる(ステップS01)。データは、対象エリア内のN地点の自然エネルギー発電の出力を示すデータである。N地点は、対象エリア内に均等に分散していることが望ましい。出力を示すデータの範囲としては、個別の日の特殊要因や個別の地点の特殊効果を除外するために、複数の日の平均を用いることが有効である。例えば、対象エリア内に均等に分散した16地点の4日分の出力データを採取して、それらを入力装置を用いてコンピュータに入力する。
【0044】
次に、ユーザは、入力装置を用いて、採取したN地点の自然エネルギー発電の出力を示すデータから一地点を代表点として選択する(ステップS02)。代表点は、N地点の中心であることが望ましい。
【0045】
N地点の出力データの入力、及び代表点の選択が終了すると、CPUは、推定プログラムを実行することで、代表点の出力データをフーリエ変換し、周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS03)。さらに、CPUは、N地点の出力データを平均し(ステップS04)、フーリエ変換することで周波数空間の出力変動Pavr(f)を算出する(ステップS05)。
【0046】
フーリエ変換が終了すると、CPUは、出力変動P1(f)及びPavr(f)の比を取る(ステップS06)。具体的には、CPUは、周波数成分毎に出力変動P1(f)及びPavr(f)の値を取り出し、それらの比を計算し、比の値を周波数に関連づけて記憶装置に記憶させる。
【0047】
周波数毎の比の値が計算されると、CPUは、そのデータ群を回帰分析してならし効果関数S(f)を作成する(ステップS07)。具体的には、周波数毎の移動平均を求め、移動平均値とNの平方根分の1との差を算出し、差が所定値以上の移動平均に対応する周波数帯を導く。そして、この周波数帯の比の値を用いて回帰分析を行い、ならし効果関数S1(f)を算出する。さらに、S1(f)とS2(f)=1/√Mとの交点を求め、その交点の周波数fxよりも低い周波数帯を周波数帯FLとして、ならし効果関数S1(f)とを関連づけて記憶装置に記憶させ、周波数fx以上の高い周波数帯FHとならし効果関数S2(f)とを関連づけて記憶装置に記憶させる。
【0048】
図6は、予め作成されたならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。この動作は、推定プログラムをコンピュータに記憶させておき、順次命令を実行させていくことにより実現される。
【0049】
まず、ユーザにより、入力装置を用いてデータの入力が行われる(ステップS11)。入力されるデータは、一地点の自然エネルギー発電の出力である。一地点としては、対象エリア内の気象変動が反映されやすいエリア中心に位置するものが望ましい。尚、この出力データは、キーボードやマウス等の入力装置を用いてコンピュータに入力する他、自然エネルギー発電とコンピュータとをネットワークで接続し、自然エネルギー発電とコンピュータの通信によって入力されるようにしてもよい。
【0050】
データが入力されると、CPUは、推定プログラムを実行することで、一地点の自然エネルギー発電の出力をフーリエ変換して、周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS12)。
【0051】
そして、CPUは、地点数Mについてのならし効果関数S(f)を記憶装置から読み出し(ステップS13)、M地点の平均の出力変動Pm(f)を平滑化効果を加味して算出する(ステップS14)。具体的には、Pm(f)=P1(f)×S(f)を計算する。すなわち、周波数帯FLに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、その周波数fについてのS1(f)を乗じる。また、周波数帯FHに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、Mの平方根分の1を乗じる。
【0052】
M地点の平均出力変動Pm(f)を算出すると、CPUは、この出力変動Pm(f)を逆フーリエ変換することで時間成分の出力変動に変換する(ステップS15)。そして、CPUは、この時間成分で表されたM地点の平均の出力変動Pm(f)に地点数Mを乗算することで、対象エリア内のM地点の自然エネルギー発電の総出力を算出する(ステップS16)。
【0053】
(効果)
以上のように、第1の実施形態の推定方法は、対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力の推定方法であって、一地点の出力を周波数成分に分け、2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分け、両結果の比を周波数成分毎に取って関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておき、一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、前記平均値に基づき、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めるようにした。
【0054】
これにより、ならし効果関数S(f)を簡便に求めることができ、一地点の自然エネルギー発電の出力から対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力を簡単に推定することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る推定方法について説明する。太陽光発電の場合、その出力は、天候によって特徴的な出力波形を示し、出力の変動の程度も天候によって大きな影響を受ける。
【0056】
図7は、各種の天候とその天候の影響を受けた出力波形を示すグラフである。(a)に示すように、快晴の日には、短時間の雲の通過に伴い、釣鐘状の出力カーブから出力減少方向へ過渡的な出力急変が生じるドロップタイプの出力波形となる。(b)に示すように、頻繁な出力変動が見られる日もあり、くし状タイプの出力波形となる。(c)に示すように、快晴の日と雨あるいは曇りの日の中間的な日には、曇りがちな天候に短時間の晴れ間が生じて出力増加方向へ過渡的な出力急変が生じるスパイクタイプの出力波形となる。(d)に示すように、雨あるいは曇りの日には、発電出力自体が小さく、直達日射量の影響が少ないために変動自体が小さい曇り/雨タイプの出力波形となる。
【0057】
そのため、第2の実施形態に係る推定方法では、平滑効果についても天候毎に分析し、天候毎にならし効果関数S(f)を作成する。尚、天候のタイプは、曇りと雨とを分けて5種類とすることもできるし、くし状タイプとスパイクタイプを合わせて3種類とすることもできる。また、1日単位ではなく、半日単位、1時間単位で天候を分類し、それら天候毎にならし効果関数S(f)を作成することもできる。
【0058】
(実施例)
図8は、第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を作成するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【0059】
まず、ユーザにより、入力装置を用いて出力データの入力が行われる(ステップS21)。また、ユーザにより、入力装置を用いて出力データに関連づけられる天候タイプが入力される(ステップS22)。
【0060】
そして、ユーザは、入力装置を用いて、採取したN地点の自然エネルギー発電の出力を示すデータから一地点を代表点として選択し(ステップS23)、CPUは、推定プログラムを実行することで、代表点の出力データをフーリエ変換し、図9に示すように、各天候タイプの周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS24)。さらに、CPUは、N地点の出力データを平均し(ステップS25)、フーリエ変換することで、図10に示すように、各天候タイプの周波数空間の出力変動Pavr(f)を算出する(ステップS26)。
【0061】
フーリエ変換が終了すると、CPUは、天候タイプ毎に出力変動P1(f)及びPavr(f)の比を取り(ステップS27)、比を取った結果を回帰分析してならし効果関数S(f)を作成し(ステップS28)、天候タイプに関連づけて記憶装置に記憶させる(ステップS29)。
【0062】
図11は、天候タイプ毎のならし効果関数S(f)を示す図である。図11(a)に示すように、天候タイプ毎に異なるならし効果関数S(f)が作成され、図11の(b)に示すように、天候タイプ毎に低い周波数帯FLに対するならし効果関数S1(f)=a×f+bの係数a及び係数bが記憶される。
【0063】
図11に示すように、くし状タイプの場合には、比較的に長周期まで平滑化効果が大きいが、曇/雨タイプでは短周期においてのみ平滑化効果が見られることが示されている。
【0064】
図12は、第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて総出力を計算するコンピュータの動作を示すフローチャートである。
【0065】
まず、ユーザにより、入力装置を用いて代表点の出力データの入力が行われる(ステップS31)。また、ユーザにより、入力装置を用いて天候タイプが選択される(ステップS32)。代表点の出力データの入力及び天候タイプの入力が行われると、CPUは、その出力データをフーリエ変換して、周波数空間の出力変動P1(f)を算出する(ステップS33)。
【0066】
そして、CPUは、選択された天候タイプに関連づけられているならし効果関数S(f)を記憶装置から読み出し(ステップS34)、M地点の平均の出力変動を平滑化効果を加味して算出する(ステップS35)。
【0067】
ここで、第1の実施形態では、周波数帯FLと周波数帯FHの境界となる周波数fxを予め算出しておき、周波数帯FLに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、その周波数fについてのS1(f)を乗じ、周波数帯FHに対応する周波数fのP1(f)を読み出し、Mの平方根分の1を乗じた。
【0068】
その他にも、周波数帯FLと周波数帯FHの境界となる周波数fxは算出せずにM地点の平均の出力変動を算出することもできる。具体的には、CPUは、周波数fを順次高くしていき、周波数帯FLに対応するならし効果関数P1(f)を算出していく。そして、CPUは、このならし効果関数P1(f)の結果が、Mの平方根分の1と等しくなれば、それ以降の周波数fに対してはMの平方根分の1を関連づける。この方法によると、ならし効果関数S(f)を予め作成する手間を省くことができる。
【0069】
フローチャートに戻り、M地点の平均出力変動Pm(f)を算出すると、CPUは、この出力変動Pm(f)を逆フーリエ変換することで時間成分の出力変動に変換する(ステップS36)。そして、CPUは、この時間成分で表されたM地点の平均出力変動Pm(f)に地点数Mを乗算することで、対象エリア内のM地点の自然エネルギー発電の総出力を算出する(ステップS37)。
【0070】
図13は、実際に第2の実施形態に係るならし効果関数S(f)を用いて代表点の出力を平滑化した結果を示すグラフである。本実験では、快晴の日に見られるドロップタイプの天候、頻繁な出力変動が見られるくし状タイプの天候、快晴の日と雨あるいは曇りの日の中間的な日に見られるスパイクタイプの天候、及び曇りあるいは雨の日に見られる曇り/雨タイプの天候のそれぞれについて、ならし効果関数S(f)を作成し、同一代表点の出力変動に適用した。元の出力データは、4日間の平均であり、地点数Nは16である。各グラフの左側は、代表点の出力変動率を規格化した値を示し、真ん中は、本実施形態の推定方法を用いた総出力変動率の規格化した値を示し、右側は、M地点の出力を単純に合計して変動率を規格化した値を示している。
【0071】
図13に示すように、各天候タイプにおいても、真ん中のグラフが示す変動率は、右側のグラフが示す変動率に近い値を示しており、本実施形態のならし効果関数S(f)が精度よく平滑効果を反映していることを示している。
【0072】
また、図14は、実際に第2の実施形態に係る推定方法により総出力を推定した結果を示すグラフである。本実験では、各天候について、ならし効果関数S(f)を作成し、同一代表点の出力変動からM地点の総出力を求めた。図14の上段は、代表点の出力変動を規格化した値を示し、中段は、本実施形態の推定方法を用いた総出力の規格化した値を示し、下段は、M地点の出力を単純に合計して規格化した値を示している。
【0073】
図14に示すように、本実施形態の推定方法を用いた中段の出力波形は、下段の単純合計の出力波形に非常によく似ており、本実施形態のならし効果関数S(f)の作成方法を用いると、簡便で精度のよい総出力の推定が可能となっていることがわかる。
【0074】
以上のように、第2の実施形態の推定方法は、自然エネルギー発電の出力波形を天候に応じて分類し、その分類毎に前記関数を作成する。これにより、より精度の高い総出力の推定が可能となる。
【0075】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る推定方法について説明する。第2の実施形態では、天候タイプを晴れや雨というように離散的に分類した。この他にも、連続値を算出して、連続値の分類により天候タイプを分類するようにしてもよい。
【0076】
そこで、本実施形態の推定方法では、数式8に示される快晴度Ksを算出し、その快晴度Ksによって天候を数値的に評価して、天候タイプを分類する。
【0077】
【数8】
【0078】
図15に示すように、この数式8は、理想的な日射量に対する日射量の比によって天候を数値化したものである。SMES(t)は、測定された水平面全天日射量の瞬間値である。SMAX(t)は、その日射量の理論的最大値、すなわち快晴時の値である。時刻T1及びT2は快晴度を算出する積分区間であるが、1時間又は1日のように、総出力を推定する時間範囲に応じて設定可能である。
【0079】
例えば、快晴度Ks=0.8〜1.0はドロップタイプに分類される快晴の日に対応させ、快晴度Ks=0.65〜0.8はくし状タイプに分類される日に対応させ、快晴度Ks=0.3〜0.65はスパイクタイプに分類される日に対応させ、快晴度Ks=0〜0.3は曇/雨タイプに分類される日に対応させる。
【0080】
また、天候と日射量と発電量とは一定の相関性を有している。従って、理論的な日射量と実際の日射量との比の代わりに、快晴時の発電量と実際の発電量との比を取って快晴度Ksとしてもよい。快晴時の発電出力は、快晴時の日射量に太陽光発電パネルの電力変換効率を乗じたり、実測値を計測したりするようにしてもよい。
【0081】
以上のように、日射量又は発電量に応じてならし効果関数S(f)を作成しておき、一地点の実際の日射量又は発電量に応じてならし効果関数S(f)を選択して、M地点の自然エネルギー発電の総出力を求めるようにした。これにより、運用者の目視に基づき天候を判断する必要はなく、ならし効果関数S(f)の選択ミスに基づく推定精度の低下を防止することができる。
【0082】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係る推定方法について説明する。第1乃至3の実施形態では、各地点の自然エネルギー発電の定格出力が等しいものとして総出力を推定した。但し、実際には地点毎の定格出力は異なることが普通である。そこで、第4の実施形態では、地点数Mは、総出力の比を用いて算出する。すなわち、地点数Mは、対象エリア全体の合計出力を一地点の定格出力で除した比の値によって算出される。
【0083】
これにより、各定格出力の自然エネルギー発電が対象エリア内に混在する場合であっても精度の高い総出力の推定が可能となる。
【0084】
[その他の実施の形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、第1乃至第4の実施形態を全て又はいずれかを組み合わせたものも包含される。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力の推定方法であって、
2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分けた結果を一地点の出力を周波数成分に分けた結果で割ったものを関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておき、
一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、
前記平均値に基づき、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項2】
前記関数近似では、
低周波成分を1次関数で近似し、高周波成分を前記対象エリア内の地点数Mの平方根分の1とした定数項で近似すること、
を特徴とする請求項1記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項3】
前記関数近似では、
低周波成分を2次関数で近似し、高周波成分を前記対象エリア内の地点数Mの平方根分の1とした定数項で近似すること、
を特徴とする請求項1記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項4】
天候の種類に応じて前記関数を作成しておき、
一地点の天候に応じて前記関数を選択して、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項5】
日射量に応じて前記関数を作成しておき、
一地点の実際の日射量に応じて前記関数を選択して、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項6】
発電量に応じて前記関数を作成しておき、
一地点の実際の発電量に応じて前記関数を選択して、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項7】
前記Mは、前記対象エリア全体の合計出力を一地点の定格出力で除した比の値であること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項1】
対象エリアのM地点に設けられた自然エネルギー発電の総出力の推定方法であって、
2箇所以上のN地点の出力を時間成分のまま平均してから周波数成分に分けた結果を一地点の出力を周波数成分に分けた結果で割ったものを関数近似することで、平滑効果の度合いを周波数成分毎に示す関数を求めておき、
一地点の出力と前記関数とからM地点の出力の平均値を求め、
前記平均値に基づき、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項2】
前記関数近似では、
低周波成分を1次関数で近似し、高周波成分を前記対象エリア内の地点数Mの平方根分の1とした定数項で近似すること、
を特徴とする請求項1記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項3】
前記関数近似では、
低周波成分を2次関数で近似し、高周波成分を前記対象エリア内の地点数Mの平方根分の1とした定数項で近似すること、
を特徴とする請求項1記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項4】
天候の種類に応じて前記関数を作成しておき、
一地点の天候に応じて前記関数を選択して、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項5】
日射量に応じて前記関数を作成しておき、
一地点の実際の日射量に応じて前記関数を選択して、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項6】
発電量に応じて前記関数を作成しておき、
一地点の実際の発電量に応じて前記関数を選択して、M地点の前記自然エネルギー発電の総出力を求めること、
を特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【請求項7】
前記Mは、前記対象エリア全体の合計出力を一地点の定格出力で除した比の値であること、
を特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の自然エネルギー発電の総出力の推定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−74697(P2013−74697A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211196(P2011−211196)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【Fターム(参考)】
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