説明

自然灯火を再現する照明装置及び自然灯火の再現方法

【課題】 和蝋燭のような独特の照明特性を有する自然の灯火であっても、より本物に近い再現性で再現できる照明装置を提供する。
【解決手段】 自然の灯火の明るさとゆらぎを再現する照明装置において、再現対象となる灯火の色度と同一又は類似の色度を実現する複数の発光体21,22,23と、前記発光体の各々に一定の周波数を与える定則周波数発生手段3と、前記灯火の波長ごとの放射エネルギの変化を予め測定することによって得られた放射エネルギ変化データを記憶する記憶部5と、この記憶部に記憶された前記放射エネルギ変化データに基づき、大きな放射エネルギ変化に対応する少なくとも一つの発光色の発光体を指定し、この発光体に付与される周波数を所定の可視周波数に切り換え、かつ、所定の時間間隔及び持続時間で明暗を繰り返させる変則周波数発生手段4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蝋燭や焚き火といった自然の灯火の明るさとゆらぎを高い再現性で再現できる照明装置及び再現方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の自然の灯火は、人々に安らぎと癒しを与える効果があることから、近年注目されている。
例えば、特許文献1,2には、蝋燭のようにゆらぎ動作をする照明装置が提案されている。これら文献に記載されている照明装置は、光源の光量を蝋燭の炎がゆらぐように変化させるもので、いずれも予め光量の変動データを記憶したメモリを備え、そのメモリから読み出したデータに基づいて光源を駆動制御するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2968483号公報
【特許文献2】特許第3402013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自然の灯火と同等の安らぎと癒しの効果を人工の照明装置から得るには、当該照明装置の照明の明るさとゆらきが自然の灯火に限りなく近いものである必要がある。このことは、室内に置いた観葉植物が偽物であることが判明した瞬間から、その癒しの心理的効果が半減するという、日常よくある経験からも明らかである。しかし、上記文献に記載の照明装置は、ゆらぎを再現することで実際の蝋燭に近い灯りを再現できるものの、自然の灯りには未だほど遠いものである。特に、和蝋燭のように独特の照明特性を持つ自然の灯火については、上記文献に記載の技術では再現することが困難であるという問題がある。
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、和蝋燭のような独特の照明特性を有する自然の灯火であっても、高い再現性で再現できる照明装置及び再現方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者が鋭意研究を行った結果、自然の灯火をより本物らしく再現するには、自然の灯火の色度と同一又は類似の色度を実現する複数の発光体を組み合わせ、かつ、照明特性に影響を与える少なくとも一部の発光色の発光体について発光の周波数を変化させればよいことに想到した。
このことは、たとえば、次のような観察結果により裏付けられる。蝋燭の炎を注意深く観察すると、各部位の温度に応じて発光色も異なる、つまり、分光放射エネルギの空間分布に特定のパターンが存在することがわかる。すなわち、炎の周辺部は、温度が低いため赤く(光の波長が長く)、中央部は温度が高いため青く(波長が短く)、中間部は温度が中程度であるため黄色く(波長が中程度に)見える。さらに、それぞれの部位ごとにゆらぎの速さ、すなわち、周波数も異なる。つまり、本物の蝋燭の炎は、放射エネルギ強度と分光放射エネルギ分布の両方が絶えず変化している。
さらに、観察により、蝋燭は、上記のような継続した定常の変化に加え、時折、ゆっくりしたゆらぎを生じることがわかる。このゆらぎは、10Hz程度を中心とした、7Hzから13Hz程度の周波数を有する。また、このゆらぎは、燃焼に伴う対流などにより生じる内因性のものであり、既往の技術が模擬しているような、風によって生じる外因性のものではない。以上のゆらぎの要素の全てを忠実に再現して初めて本物の灯りと見間違えるほど再現性の高い照明装置が再現できる。
具体的に請求項1に記載の発明は、自然の灯火の明るさとゆらぎを再現する照明装置において、再現対象となる灯火の色度と同一又は類似の色度を実現する複数の発光体と、前記発光体の各々に一定の周波数を与える定則周波数発生手段と、前記灯火の波長ごとの放射エネルギの変化を予め測定することによって得られた放射エネルギ変化データを記憶する記憶部と、この記憶部に記憶された前記放射エネルギ変化データに基づき、大きな放射エネルギ変化に対応する少なくとも一つの発光色の発光体を指定し、この発光体に付与される周波数を所定の可視周波数に切り換え、かつ、所定の時間間隔及び持続時間で明暗を繰り返させる変則周波数発生手段とを有する構成としてある。
この場合、請求項2に記載するように、前記変則周波数発生手段は、放射エネルギ変化データに基づいて予め設定された可視周波数の範囲内,所定の時間間隔の範囲内及び所定の持続時間の範囲内で、前記可視周波数,前記時間間隔及び前記持続時間を変化させるようにしてもよい。
【0006】
本発明の好適な実施形態として、和蝋燭の灯りの再現が挙げられる。前記灯火が和蝋燭の場合、和蝋燭の炎の色度は、例えば、赤系,青系又は緑系及び黄系又は橙系の発光色の組み合わせで再現することができる。そのことから、請求項3に記載するように、このような三色〜五色の発光色を有する発光体を準備する。 さらに、和蝋燭を観察することで得られた放射エネルギ変化データ(灯りの周波数の変化,放射熱量の変化,光度の変化,変化の周期及び変化の持続時間を含むデータ)に基づき、前記変則周波数発生手段によって、少なくとも前記赤系の発光体の少なくとも一部について周波数を切り換える処理を行うようにするとよい。この場合、周波数の切り換えを行う時間間隔は、請求項4に記載するように30秒〜50秒の範囲を中心(コア)とする10秒〜90秒の範囲内とし、前記周波数は前記周波数が7Hz〜13Hzとするとよい。
なお、請求項5に記載するように、和蝋燭の灯火を再現しようとする場合は、前記定則周波数発生手段は、少なくとも一つの発光色の発光体の少なくとも一部に対して、7Hz〜13Hzの周波数を発生させるようにしてもよい。この定則周波数の範囲は、今回、和蝋燭の観察により、和蝋燭を特徴づける周波数帯域として見出して特定するものである。
なお、複数の発光体で灯火を再現する場合は、請求項6に記載するように、複数の前記発光体を、前記灯火の分光放射エネルギの空間分布に対応させて配置するとよい。
【0007】
また、本発明の方法は、請求項7に記載するように、自然の灯火の明るさとゆらぎを、発光体を用いて再現する再現方法において、再現対象となる灯火の色度と同一又は類似の色度を実現する複数の発光体を選択するとともに、大きな放射エネルギ変化に対応する少なくとも一つの発光色の発光体を指定し、当該所定の発光体における放射エネルギ変化の時間間隔,持続時間及び周波数を選択する工程と、複数の前記発光体を、複数の前記発光体を、前記灯火の分光放射エネルギの空間分布に対応させて配置する工程と、前記発光体の各々に一定の周波数を与える工程と、前記所定の発光体について、前記時間間隔で前記所定の発光色の周波数を所定の可視周波数に切り換え、前記持続時間の間明暗を繰り変えさせる工程とを有する方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、蝋燭や焚き火といった自然の灯火について、再現性の高い照明装置を得ることができる。また、放射エネルギ変化データに基づく範囲内で周波数や時間間隔、変化の持続時間を不規則に変化させることで、より自然の灯火に近い照明装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は、本発明の照明装置の一実施形態にかかり、その全体構成を説明するブロック図である。
[装置構成]
照明装置1は、異なる発光色を有する複数種類(この実施形態では三種類)の発光体21,22,23と、この発光体21,22,23に供給される電源に一定の周波数(Hz)(一秒間の変化の回数(cycle/sec))を付与する定則周波数発生部3と、この定則周波数発生部3から付与された周波数を所定の可視周波数に切り換える処理を行う変則周波数発生部4と、この変則周波数発生部4によって切り換えられた周波数を、予め指定された発光体21,22,23のいずれかに付与する切換部6と、予め計測された灯火の放射エネルギ変化データ等が記憶された記憶部5とから概略構成される。
【0010】
発光体21,22,23としては、それ自体が異なる発光色で発光するLEDを用いることができ、その組み合わせによって灯火の色度を実現できる複数種類(この実施形態では三種類)の発光色のものを準備する。準備する発光体21,22,23のそれぞれの数は、一つであってもよいが、複数個ずつとしてその配置を工夫することで、灯火の再現性を高くすることができる。
【0011】
図1(b)に、照明装置1における発光体21,22,23の配置例を示す。
発光色の異なる発光体21,22,23は、再現しようとする灯火の灯りに可能な限り近づくように配置するのが好ましい。
図1(b)に示す例は、和蝋燭の灯火を再現しようとするもので、和蝋燭の炎の形に合わせて、後述する三つの発光色(赤系、橙系、青系)の発光体21,22,23を配置している。この例では、赤系の発光体21を炎の外縁から上方にかけて配置し、青系の発光体23を和蝋燭の芯周辺に相当する部分に配置する。橙系の発光体22は、発光体21と発光体23との間に配置する。また、青系の発光体23の一部を、橙系の発光体22の一部に割り込ませる形で配置し、橙系の発光体22の一部を、赤系の発光体21の一部に割り込ませる形で配置する。このようにすることで、実際の和蝋燭の分光放射エネルギの空間分布にきわめて近い構成ができる。
【0012】
上記構成の照明装置1では、三種類の発光体21,22,23のそれぞれに、定則周波数発生部3で発生させられた一定の周波数が割り当てられる。各々の発光体21,22,23について、発光体21,22,23のそれぞれの数が複数の場合は、一部について異なる周波数を割り付けるようにしてもよい。なお、定則周波数発生部3で発生させられる周波数には、周波数が0のもの及び∞のものが含まれる。また、定則周波数発生部3で発生させられる周波数の大きさは特に限定されず、明暗の変化が人の目で認識できるもの及び認識できないものの双方を含む。
【0013】
変則周波数発生部4は、発光体21,22,23のうち、記憶部5に記憶されたデータに基づいて指定された発光体(例えば発光体21)について、定則周波数発生部3で割り当てられた周波数を可視周波数(1Hz〜15Hz程度、好ましくは7Hz〜13Hz程度)に切り換える処理を行う。当該発光体(例えば発光体21)が複数個設けられている場合において可視周波数への切り換えは、前記発光体の全部であってもよいしその一部であってもよい。また、切り換えの処理は、記憶部5に予め設定された時間間隔で、かつ、記憶部5に予め設定された持続時間行われる。周波数が切り換えられた発光体(例えば発光体21)では、記憶部5により指定された周波数で前記持続時間の間明暗を繰り返すが、この明暗は、ON/OFFの繰り返しであってもよいし、明度の高低の繰り返しであってもよい。
【0014】
切換部6は、定則周波数発生部3で発生させられた周波数及び変則周波数発生部4で切り換えられた周波数が、記憶部5によって指定された発光体21,22,23のそれぞれに送信されるように、回路の切換を行う。
【0015】
図2は、定則周波数発生部3及び変則周波数発生部4の作用を説明するためのグラフである。
図2(a)に示すように、定則周波数発生部3では、発光体21,22,23のそれぞれについて、一定の周波数を発生させて割り付ける。発生させる周波数は、単一の周波数からなる直線状のものであってもよいし、周期の異なる複数の周波数を組み合わせてなる波状のもの(図2(a)中一点鎖線で示す)であってもよい。
【0016】
図2(b)に示すように、変則周波数発生部4では、記憶部5によって指定された一つ又は複数の発光体(例えば発光体21)について、定則周波数発生部3で割り付けられた周波数を可視周波数に切り換える処理を行う。この処理は、記憶部5によって指定された時間間隔t2,t4,t6・・・及び持続時間t1,t3,t5・・・で行われる。なお、時間間隔t2,t4,t6・・・及び持続時間t1,t3,t5・・・は、同一(t2=t4=t6=・・・,t1=t3=t5=・・・)であってもよいし、記憶部5に記憶された各々の許容時間の範囲内で異なるものとしてもよい。
また、変則周波数発生部4で発生させる可視周波数は、前記したように好ましくは7Hz〜13Hzの範囲内であるが、時間間隔t2,t4,t6ごとの可視周波数は、この範囲内で同一の大きさのものとしてもよいし、異なる大きさのものとしてもよい。さらに、発生させる可視周波数は、矩形形のものであってもよいが、図2(b)に示すような山形のものとするのが好ましい。
【0017】
[放射エネルギ変化データ]
定則周波数発生部3により発生させられる周波数、変則周波数発生部4で発生させられる周波数,発生のタイミング及び持続時間,対象となる発光体等を決定する放射エネルギ変化データは、再現対象となる自然の灯火を観測することで作成することができる。なお、放射エネルギとしては、例えば光度や放射熱を挙げることができる。
そして、灯火の観測によって、灯火の色度と同一又は類似の色度を実現できる複数種類の発光色を決定するとともに、灯火の波長ごとの放射エネルギ変化の大きさ、変化前後の周波数、放射エネルギ変化が発生するタイミング(時間間隔)と変化の持続時間等のデータを収集する。
灯火の波長ごとの放射エネルギ変化やその周波数、時間間隔等のデータは、所定の波長(発光色に密接に関係する)の光とその光の放射エネルギ及び周波数を計測することで得ることができる。また、灯火の色度は、先に計測した灯火の分光放射エネルギ分布から判断することができる。
【0018】
[実施例1]
以下、和蝋燭を例に挙げて、本発明の具体的な実施例を説明する。
本発明の発明者は、KONICA MINOLTA:Illuminance
meter T-10Mを使用して和蝋燭の光度の測定を行い、National
Instruments:NI cDAQ-9172、同社 NI 9215を使用して放射エネルギ変化のデータを収集した。また、CyberNet:MatLab上のFFT関数を用いて解析を行った。
その結果、和蝋燭の灯火の色度は、炎の最も内側に位置する青系又は緑系と、炎の最も外側に位置する赤系と、その中間に位置する黄系又は橙系の概ね三つ〜五つの発光色の組み合わせで実現することができた。そこで、この実施例では、発光体21,22,23として、赤系、橙系、青系の三種類の発光色に合わせて三種類の発光体21,22,23を準備し、発光体21として赤系のものを,発光体22として橙系のものを,発光体23として青系のものを用いるものとした。
【0019】
図3図4、および、図5は、灯火の一例である和蝋燭の灯りを再現するための光度変化データの一例にかかり、図3は、和蝋燭のスペクトル(縦軸)と周波数(横軸(対数))との関係を示すグラフ、図4は、つぎに述べる変則状態で現れる、和蝋燭特有のゆらぎについて、スペクトル(縦軸)と周波数(横軸(線形))の関係を示すグラフ、図5は、和蝋燭の各発光色における光度(縦軸)と周波数(横軸)との関係を示すグラフである。
図3のグラフから、和蝋燭では、10Hz前後のところに大きな光度変化があることがわかる。この周波数は、定則の状態でも現れているが、変則状態において顕著になる。
【0020】
芯の近傍に位置する青系の炎は安定した燃焼であり、周波数と光度変化との間に関連はあまり認められない。中間に位置する黄系又は橙系の炎は、青系の安定性と低周波領域において赤系に類似する性質の両方を有している。
一方、赤系では、10Hz前後の周波数帯において大きな光度の変化が見られる。
このことから、和蝋燭においては、10Hz前後における赤系の周波数の変化に特徴があることがわかる。
【0021】
また、和蝋燭では、その大きさにもよるが、灯明として用いられる一般的な大きさのもので、10Hz前後の周波数の変化がおおよそ数十秒間隔、具体的には、30秒〜50秒の範囲を中心(コア)とする10秒〜90秒の範囲内の間隔で、数秒間(4秒〜5秒程度)持続される。
以上の結果から和蝋燭についての光度変化データを作成し、以下の表1のような条件とともに記憶部5に記憶させる。
【0022】
【表1】

【0023】
この実施例における定則周波数発生部3及び変則周波数発生部4の作用を以下に説明する。
定則周波数発生部3では、上記表1のデータに基づいて、発光体21,22,23のそれぞれに付与する周波数を発生させる。上記のデータによれば、赤系の発光体21には20Hzの周波数、橙系の発光体22には30Hzの周波数、青系の発光体23には85Hzの周波数を割り当てる。
【0024】
この実施例では、変則周波数発生部4で周波数を切り換えるのは赤系の発光体21のみで、周波数を20Hzから10Hzに切り換える。切り換え後の周波数における発光体21の明暗を示すエネルギの変化率は、概ねMAX/MIN=2.25(内訳:MAX/AVE=1.49,MIN/AVE=0.66)前後である。
また、切り換えを行う時間間隔(図2の時間t2,t4,t6・・・に相当する時間間隔)は、30秒〜50秒の範囲内でランダムに発生させたもので、10Hzの可視周波数の持続時間(図2の持続時間t1,t3,t5・・・に相当する持続時間)は、4秒〜5秒の範囲でランダムに発生させたものである。
【0025】
切換部6は、上記の光度変化データに従い、通常状態においては、定則周波数発生部3からのそれぞれの周波数が発光体21,発光体22及び発光体23に送信されるようにする。また、変則周波数発生部4によって可視周波数への切り換えが行われたときは、回路を切り換えて変則周波数発生部4によって切り換えられた可視周波数を発光体21に送信されるようにする。
【0026】
[実施例2]
この実施例2では、定則周波数発生部3は、赤系の発光体21に対して1〜2Hzの周波数に15Hzの周波数を加えた混合周波数を割り当て、橙系の発光体22に対して1〜2Hzの周波数に30Hzの周波数を加えた混合周波数(第一の周波数)と85Hzの周波数(第二の周波数)の二種類の周波数を割り当てる。また、青系の発光体23に対しては120Hzの周波数を割り当てる。
【0027】
変則周波数発生部4では、実施例1と同じ時間間隔及び同じ持続時間で、赤系の発光体21の全部、及び第一の周波数を割り当てた橙系の発光体22の全部に対して、10Hzに切り換えた周波数を割り当て、第二の周波数を割り当てた橙系の発光体22に対して、10Hzの倍数周期の周波数を割り当てる。これは、図4に示す、和蝋燭の変則条件のゆらぎを模擬するものである。
このようにすることで、より実際の和蝋燭に近い照明を再現することができる。
【0028】
[実施例3]
この実施例3では、定則周波数発生部3は、複数設けられた赤系の発光体21の一部に対して7Hz〜13Hzの周波数を割り当てるとともに、残りの発光体21に対して1〜2Hzの周波数に15Hzの周波数を加えた混合周波数を割り当てる。橙系の発光体22及び青系の発光体23に対しては、先の実施例2と同じ周波数を割り当てる。また、変則周波数発生部4による変則の条件は、先の実施例2と同じとした。
この実施例では、赤系の発光体21の一部に常時7Hz〜13Hzの周波数を割り当てることで、さらに実際の和蝋燭に近い照明を再現することができる。
【0029】
本発明の好適な実施形態及び実施例について説明したが、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではない。
例えば、上記の説明では灯火の明かりの再現を主目的としたが、放射エネルギ変化として放射熱の変化をデータ化するとともに照明装置にヒータ等の熱源を組み込み、前記データに基づいて前記ヒータの制御を行うことで、放射熱についても高度な再現が可能になる。
また、上記の説明で発光体はそれ自体が異なる発光色で発光するLEDを用いるものとしたが、LEDと同様に波長選択性のある光源(たとえば、有機ELや蛍光ランプ)を用いることもできるし、電球など広い波長範囲に分光放射エネルギが分布する光源に色素や着色フィルムをかけることで異なる発光色を再現する発光体を用いることもできる。
さらに、上記の説明では、発光体21,発光体22又は発光体23のそれぞれは、赤系(発光体21)、黄系又は橙系(発光体22)、青系又は緑系(発光体23)といった単色の発光体で構成されているものとして説明したが、異なる発光色で発光する複数の発光体を組み合わせて、発光体21,発光体22又は発光体23を構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、自然の灯火であれば和蝋燭に限らず洋蝋燭、行灯、焚き火その他の灯火の灯りの再現にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)は、本発明の照明装置の一実施形態にかかり、その全体構成を説明するブロック図、(b)は発光体の配置例を説明する平面図である。
【図2】定則周波数発生部3及び変則周波数発生部4の機能を説明するためのグラフである。
【図3】灯火としての和蝋燭の明かりを再現するための放射エネルギ変化データの一例にかかり、和蝋燭のスペクトル(縦軸)と周波数(横軸)の関係を示すグラフである。
【図4】灯火としての和蝋燭の明かりを再現するための放射エネルギ変化データの一例にかかり、特に、変則の状態での和蝋燭のスペクトル(縦軸)と周波数(横軸)の関係を取り出して示すグラフである。
【図5】灯火としての和蝋燭の明かりを再現するための放射エネルギ変化データの一例にかかり、各色のスペクトル(縦軸)と周波数(横軸)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
1 照明装置
21,22,23 発光体
3 定則周波数発生部
4 変則周波数発生部
5 記憶部
6 切換部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然の灯火の明るさとゆらぎを再現する照明装置において、
再現対象となる灯火の色度と同一又は類似の色度を実現する複数の発光体と、
前記発光体の各々に一定の周波数を与える定則周波数発生手段と、
前記灯火の波長ごとの放射エネルギの変化を予め測定することによって得られた放射エネルギ変化データを記憶する記憶部と、
この記憶部に記憶された前記放射エネルギ変化データに基づき、大きな放射エネルギ変化に対応する少なくとも一つの発光色の発光体を指定し、この発光体に付与される周波数を所定の可視周波数に切り換え、かつ、所定の時間間隔及び持続時間で明暗を繰り返させる変則周波数発生手段と、
を有することを特徴とする自然灯火を再現する照明装置。
【請求項2】
前記変則周波数発生手段は、放射エネルギ変化データに基づいて予め設定された可視周波数の範囲内,所定の時間間隔の範囲内及び所定の持続時間の範囲内で、前記可視周波数,前記時間間隔及び前記持続時間を変化させることを特徴とする請求項1に記載の自然灯火を再現する照明装置。
【請求項3】
前記灯火が和蝋燭で、赤系,青系又は緑系及び黄系又は橙系の発光色の発光体を有し、前記変則周波数発生手段は、前記和蝋燭の放射エネルギ変化データに基づき、少なくとも前記赤系の発光体の少なくとも一部について周波数を切り換えることを特徴とする請求項1又は2に記載の自然灯火を再現する照明装置。
【請求項4】
前記時間間隔が30秒〜50秒の範囲を中心とする10秒〜90秒の範囲内で、前記周波数が7Hz〜13Hzであることを特徴とする請求項3に記載の自然灯火を再現する照明装置。
【請求項5】
前記定則周波数発生手段は、少なくとも一つの発光色の発光体の少なくとも一部に対して、7Hz〜13Hzの周波数を発生させることを特徴とする請求項3又は4に記載の自然灯火を再現する照明装置。
【請求項6】
複数の前記発光体を、前記灯火の分光放射エネルギの空間分布に対応させて配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の自然灯火を再現する照明装置。
【請求項7】
自然の灯火の明るさとゆらぎを、発光体を用いて再現する再現方法において、
再現対象となる灯火の色度と同一又は類似の色度を実現する複数の発光体を選択するとともに、大きな放射エネルギ変化に対応する少なくとも一つの発光色の発光体を指定し、当該所定の発光体における放射エネルギ変化の時間間隔,持続時間及び周波数を選択する工程と、
複数の前記発光体を、前記灯火の分光放射エネルギの空間分布に対応させて配置する工程と、
前記発光体の各々に一定の周波数を与える工程と、
前記所定の発光体について、前記時間間隔で前記所定の発光色の周波数を所定の可視周波数に切り換え、前記持続時間の間明暗を繰り変えさせる工程と、
を有することを特徴とする自然灯火の再現方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−48955(P2011−48955A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194700(P2009−194700)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(504145320)国立大学法人福井大学 (287)
【Fターム(参考)】