自発的に形成する楕円体の単層リン脂質小胞
本発明は、一般にリポソームの自発的な形成に有用な組成物および方法に関し、ここで、当該組成物は、陰イオン性の長鎖脂質を、短鎖脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくプロサポシン誘導体化ポリペプチドと組み合わせて包含する。上記リポソームは、当該リポソーム単独の投与、または付加的な治療薬と組み合わせた当該リポソームの投与によって、疾患の治療に有用であり得る。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔優先権〕
本願は、2006年10月20日出願の米国仮出願第60/862,321号(発明の名称“Spontaneously Forming Ellipsoidal Phospholipid UnilamellarVesicles”)および2007年4月27日出願の米国出願第11/741,323号に対する優先権を主張する。
【0002】
〔関連出願〕
本願は、2005年3月29日発行の米国特許第6,872,406号(発明の名称“Fusogenic Properties of Saposin C and Related Proteins and Peptides for Application to Transmembrane Drug Delivery Systems”);および米国特許出願公開第10/801,517号、米国特許出願公開第2004/022799号(発明の名称“Saposin C-DOPS: A Novel Anti-Tumor Agent”)に関連する。すべての文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は、標的化薬物送達および改善された治療学に使用されるリン脂質組成物に関する。薬学的因子がリン脂質膜内に収納され、かつ膜融合タンパク質によって送達が促進される。より詳細には、薬学的因子がリポソーム内に収納され、かつサポシン Cを用いて送達が促進される。当該サポシン Cは、上記リポソームと会合している。
【0004】
〔背景〕
リポソームは、同心の2重膜によって形成される脂質膜によって取り囲まれた水性の空洞を中央に有する、微細な小胞である。リポソームは、単層(1つの脂質2重膜のみを有する)、オリゴラメラー(oligolamellar)または多層(複数の2重膜を有する)であり得る。それらの構造によって、リポソームは、水性の内部に親水性の物質、または脂質膜に疎水性の物質のいずれかを組み込むことができる。
【0005】
薬物送達用の小胞として、リポソームは原理上、多くの利点を有している。無毒の構成要素からなり、一般的に非免疫原性であり、非刺激性であり、かつ生分解性であるだけでなく、リポソームは、非常に多種類の治療薬を封入し、保持し、輸送し、かつ放出できるので、これによって有害な副作用を低減できる。リポソームは、薬物の徐放にとっての支持体を形成すること、および特定の細胞種もしくは身体の一部に送達することができる。また、リポソームの治療的利用は、遊離した形態において毒性のある薬物の送達を包含する。
【0006】
リポソームは、リン脂質の混合物に機械的な力を加えることによって、一般的に形成される。例えば、多種多様な方法が、リポソーム組成物の調製に現在使用されている。当該方法としては、溶媒透析、フレンチプレス(French press)、押出(凍結融解を伴うかまたは伴わない)、逆相蒸発、単純な凍結融解、超音波処理、キレート透析、ホモジナイゼーション、溶媒浸出、微小乳化、自発的な形成、溶媒蒸発、フレンチプレス細胞技術、および制御下における界面活性剤透析などが挙げられる。例えば、Madden et al., Chemistry and Physics of Lipids, 1990を参照すればよい。また、リポソームは、振とうおよびボルテックスを要する種々の処理によって形成され得る。
【0007】
リポソームに関する問題点としては、コロイドの不安定性、量産化における滅菌の困難さ、および製造における単回処理ごとの変動性が挙げられる。リポソームの調製および製造は、浸出またはホモジナイゼーションの後に、有機溶媒の除去を典型的に含む。これらの処理は、リポソームの構成要素を極端な条件にさらし得る。当該極端な条件とは、例えば、脂質およびリポソームに取り込まれている他の分子を分解し得る、上昇した圧力、上昇した温度および高いせん断条件である。
【0008】
リポソームの調製は、2重膜のサイズおよび数の非常に不均一な分布をしばしば特徴とする。小規模において最適化された条件は、通常、うまく大規模化できず、かつ大規模な単回処理の調整は、取り扱いにくく非常な労力を要する。
【0009】
リポソーム応用に関する他の問題点は、コロイドの不安定性である。懸濁物におけるリポソームは、貯蔵、過熱および種々の添加物の添加によって凝集し得、かつ融合し得る。これらの安定性の問題のために、リポソームはしばしば凍結乾燥される。凍結乾燥は費用および時間がかかる。再構成によってサイズ分布がしばしば拡大し、かつ封入された物質がリポソームから漏出し得る。
【0010】
すべてではないがほとんどの公知のリポソーム懸濁物は、熱理学的に安定ではない。公知の懸濁物におけるリポソームは、そのリポソームの形成に用いられたエネルギーによって、より高いエネルギー状態に動力学的に捕捉される。エネルギーは、熱、超音波、押出、またはホモジナイゼーションとして供給され得る。あらゆる高エネルギー状態はより低い遊離エネルギーになろうとするので、公知のリポソーム調合物は、凝集、融合、沈降およびリポソーム結合物質の漏出を伴う問題に直面する。このため、これらの問題のいくつかを回避し得る熱力学的に安定なリポソーム調合物が求められている。
【0011】
このため、現在のリポソーム調合物に伴うこれらの問題に対処する新たな方法および材料を開発することが求められている。
【0012】
〔発明の要約〕
本発明は、一般的に、疾患の治療または個体に対する活性な因子の送達に有用なリポソームの集団を形成する組成物に関する。当該組成物は、a)少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質;b)少なくとも1つの短鎖リン脂質;およびc)プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを備えている。ここで、上記リポソームは、水性溶液の添加によって自発的に形成される。
【0013】
1つの実施形態において、上記陰イオン性のリン脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルイノシトール(DOPI)およびジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)からなる群から選択され得る。
【0014】
さらなる実施形態において、上記短鎖リン脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択され得る。
【0015】
上記組成物は、1モード(monomodal)、2モード(bimodal)、もしくは3モード(trimodal)の単層小胞のサイズ分布を有するリポソームの上記集団、または扁平楕円体の単層小胞と3軸楕円の単層小胞とよって構成されるリポソームの上記集団をさらに備え得る。
【0016】
さらなる実施形態において、上記組成物において上記プロサポシン誘導体化タンパク質は、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5またはこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である。
【0017】
さらに他の実施形態において、リポソームを形成する上記組成物は、DOPS、DPPC、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドが、サポシン C、H1 ペプチド、H2 ペプチド、H3 ペプチド、H4 ペプチド、H5 ペプチドもしくはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
さらに他の実施形態において、リポソームを形成する上記組成物は、DOPS、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドが、サポシン C、H1 ペプチド、H2 ペプチド、H3 ペプチド、H4 ペプチド、H5 ペプチドもしくはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
さらに他の実施形態において、リポソームを形成する上記組成物は、DOPS、DHPS、DPPC、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドが、サポシン C、H1 ペプチド、H2 ペプチド、H3 ペプチド、H4 ペプチド、H5 ペプチドもしくはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
さらに他の実施形態において、上記組成物は、薬学的に活性な因子をさらに包含する。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の1つ以上の実施形態を例証し、かつ詳細な説明と共に本発明の原理および実施を説明する役割を果たす.
図1:ヒトサポシン Cおよびその機能ドメインのアミノ酸配列.
図2:0.1%のDOPS/DPPC/DHPCのSANSデータ.
図3:0.1重量%のDOPS/DPPC/DHPCに関する改変したギニエプロット(Guinier plot).
図4:DOPS/DPPC/DHPC混合物(AおよびB)、およびH1ドープした混合物(CおよびD)、およびH2ドープした混合物の代表的なTEM画像.
図5:単層の2重膜を有する3軸楕円小胞の提唱モデル。
【0022】
〔発明の詳細な説明〕
(略語)
Sap C、サポシン C;DOPG、ジオレオイルホスファチジルグリセロール;DOPS、ジオレオイルホスファチジルセリン;PC、ホスファチジルコリン;PG、ホスファチジルグリセロール;PS、ホスファチジルセリン;DMPC、ジミリスチルホスファチジルコリン。
【0023】
(定義)
本発明の組成物および方法について記載する前に、もちろん変更し得るものとしての特定の方法論、手段および調合物に本発明が限定されてないことについて、理解されるべきである。また、本明細書において用いられる専門用語が、特定の実施形態を説明するためのものであることについて、理解されるべきである。そして当該専門用語が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ限定される本発明の範囲を制限することを意図しないことについて、理解されるべきである。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形“a”、“and”および“the”は、明確に断りがない限り、複数の対象を含む。特に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語のすべては、本発明が属する技術における当業者に通常に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されている類似または等価のあらゆる方法、手段および材料が、発明の実施または試験に使用され得るが、ここでは例示的な方法、手段および材料が説明されている。
【0025】
用語“投与された”および“投与”は、患者に対する生体適合性物質の投与を一般的に指す。生体適合性物質としては、例えば、脂質組成物および/または小胞組成物およびフラッシュ因子(flush agents)が挙げられる。したがって、“投与された”および“投与”は、例えば、脂質組成物および/または小胞組成物および/またはフラッシュ因子の血管への注入を指す。また、用語“投与された”および“投与”は、所望の領域に対する脂質組成物および/または小胞組成物および/またはフラッシュ因子の送達を指し得る。
【0026】
本明細書において使用されるとき、用語“アミノ酸”または“アミノ酸配列”は、オリゴペプチド配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、もしくはタンパク質配列、またはこれらのあらゆる断片、ならびに天然に生じる分子または合成分子を指す。ここで、“アミノ酸配列”は、天然に生じるタンパク質分子を指すために本明細書において挙げられ、“アミノ酸配列”および同様の用語は、列挙されたタンパク質分子と関連する完全に未処置のアミノ酸配列にアミノ酸配列を限定することを意図していない。
【0027】
用語“両親媒性脂質”は、親水性の“頭部”基および疎水性の“尾部”基を有し、かつ膜形成能を有する分子を意味する。
【0028】
“類似物”によって、本発明のペプチドのアミノ酸配列における、ペプチドの融合誘導特性に悪影響を与えない置換または変更を意図される。したがって、類似物は、本明細書に与えられているペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有し、かつ1つ以上のアミノ酸残基が化学的に類似のアミノ酸と保存的に置換された、ペプチドを包含し得る。保存的な置換の例としては、非極性(疎水性)残基の他の非極性残基との置換が挙げられる。非極性残基は、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンである。同様に本発明は、1つの極性(親水性)残基の(例えば、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間およびグリシンとセリンとの間)の置換が挙げられる。さらに、塩基性残基(例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸)の他の塩基性残基との置換、または1つの酸性残基(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)の他の酸性残基との置換が包含される。
【0029】
本明細書において使用されるときに、用語“陰イオン性のリン脂質膜”および“陰イオン性のリポソーム”は、脂質の構成要素を含有し、かつ生理学的pHにおいて全体的に負の電荷を有する、リン脂質膜またはリン脂質リポソームを指す。
【0030】
“陰イオン性のリン脂質”は、負の電荷を有するリン脂質(リン酸塩、硫酸塩およびグリセロールに基づく脂質が挙げられる)を意味する。
【0031】
“生物活性因子”は、本質的に治療的または診断的な用途と関連して使用される物質を指す。当該物質は、例えば、患者における疾患の有無を診断する方法、および/または患者における疾患を処置する方法において使用される。また、本明細書において使用されるときに、“生物活性因子”は、インビトロおよび/またはインビボにおいて生物学的作用を発揮できる物質を指す。生物活性因子は、無電荷であり得るか、または正または負に帯電し得る。好適な生物活性因子の例としては、診断薬、薬学的因子、薬物、合成有機分子、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ステロイドおよび遺伝学的材料(ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが挙げられる)が挙げられる。
【0032】
用語“〜(内)に含まれる”は、薬剤が外部環境から保護されるように、リン脂質膜に包まれている薬剤を指す。この用語は、“封入される”と交換可能に使用され得る。
【0033】
本明細書において使用されるとき、用語“欠失”は、1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドの非存在を生じるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列における変更を指す。
【0034】
本明細書において使用されるとき、用語“誘導”は、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の化学修飾を指す。ポリヌクレオチドの化学修飾の例としては、アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換が挙げられる。誘導ポリヌクレオチドは、天然分子の少なくとも1つの生物学的機能を保持するポリペプチドをコードする。誘導ポリペプチドは、例えば、糖鎖付加、または誘導されたポリペプチドの少なくとも1つの生物学的機能を保持するあらゆる過程によって、修飾されたポリペプチドである。
【0035】
本明細書において使用されるとき、用語“融合誘導タンパク質または融合誘導ポリペプチド”は、2つの別個の2重膜に加えられた場合に、それらを単一の膜へと融合させることができるタンパク質またはポリペプチドを指す。融合誘導タンパク質は、細胞またはモデル膜を密接な接触状態にさせ、かつそれらを融合させる。
【0036】
本明細書において使用されるとき、単語“挿入”または“付加”は、天然に生じる分子に見られる配列に対して、1つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチドの付加をそれぞれ生じるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の変化を指す。
【0037】
用語“脂質”および“リン脂質”は、交換可能に使用され、かつ脂質が水性懸濁物において示すことが知られている種々の異なる構造配列を備える脂質、リン脂質またはこれらの誘導体を含む構造を指すために使用される。これらの構造としては、これらに限定されないが、脂質2重膜小胞、ミセル、リポソーム、乳濁質、小胞、脂質リボンまたは脂質シートが挙げられる。脂質は、単独に使用され得るか、または当業者が特定の用途に所望される特性を与えること理解するあらゆる組み合わせにおいて使用され得る。さらに、脂質構造物およびリポソーム形成の技術的局面は、当業者に公知であり、かつ当該分野において通常に実施される方法のあらゆるものが、本発明にとって使用され得る。
【0038】
“脂質組成物”は、典型的に水性媒体における、脂質化合物を備える組成物を指す。例示的な脂質組成物としては、懸濁物、乳濁物および小胞化合物が挙げられる。“脂質調合物”は、生物活性因子をも備える脂質組成物を指す。
【0039】
“リポソーム”は、一般的に球状を有する、両親媒性化合物の集団または凝集体(典型的に1つ以上の同心の層(例えば、2重膜)の形態である脂質化合物が挙げられる)を指す。また、それらは本明細書において脂質小胞とも呼ばれ得る。
【0040】
用語“長鎖脂質”は、約13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24の炭素鎖長を有する脂質を指す。1つの実施形態において、鎖長は、18、19または20の鎖長から選択される。本発明と共に使用され得る脂質の例は、ウェブサイトwww.avantilipids.comにおいて入手可能である。本発明と共に使用され得る長鎖脂質の代表的な例としては、これらに限定されないが、以下の脂質:14:0 PS 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DMPS);16:0 PS 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DPPS);17:0 PS 1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0 PS 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DSPS);18:1 PS 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DOPS);18:2 PS 1,2−ジイリノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);20:4 PS 1,2−ジアラキドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);22:6 PS 1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);16:0−18: 1 PS 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(POPS);16:0−18:2 PS 1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);16:0−22:6 PS 1−パルミトイル−2−ドコサヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−18:1 PS l−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−18:2 PS 1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−20:4 PS 1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−22:6 PS 1−ステアロイル−2−ドコサヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);16:0 PC 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン[DPPC];17:0 PC 1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0 PC 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);16:1 PC (Cis) 1 ,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:1 Trans PC 1,2−ジパルミテライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:1 PC Delta6 (cis)1,2−ジペトロセリノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:2 PC (cis)1,2−ジイリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:3 PC (cis)1,2−ジイリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;20:1 PC (cis)1,2−ジエイコセノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;22:1 PC (cis) 1,2−ジエウロコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;22:0 PC 1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;24:1 PC (cis)1,2−ジネルボノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18:0 PC l−パルミトイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18: 1 PC 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18:2 PC 1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0−18:1 PC 1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0−18:2 PC 1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:1−18:0 PC 1−オレオイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:1−16:0 PC 1−オレオイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0−20:4 PC 1−ステアロイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18:1 PG 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩)(POPG);18:1 PG 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩)(DOPG);18:1 PA 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1ナトリウム塩)(DOPA);18:1 PI 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホイノシトール(アンモニウム塩);16:0’(D31)−18:1 PI 1−パルミトイル(D31)−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホイノシトール(アンモニウム塩);18:1 PE 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE);18:2 PE 1,2−ジイリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンが挙げられる。
【0041】
本明細書において使用されるとき、用語“核酸”または“核酸配列”は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはこれらの断片を指す。“核酸”は、少なくとも2つの塩基−糖−リン酸塩の組み合わせからなる糸状のものを指す(ポリヌクレオチドは、120単量体単位を超えて含有することによって、オリゴヌクレオチドと区別される)。ヌクレオチドは、核酸重合体の単量体単位である。この用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびオリゴヌクレオチドメッセンジャーRNAの形態であるリボ核酸(RNA)、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部またはウイルスに由来する遺伝学的材料を包含する。アンチセンスは、DNAおよび/またはRNAの機能を干渉するポリヌクレオチドである。核酸という用語は、少なくとも2つの塩基−糖−リン酸塩の組み合わせからなる糸状のものを指す。天然の核酸は、リン酸塩骨格を有し、人工核酸は、同じ塩基を含有するが、他の種類の骨格を含み得る。ヌクレオチドは、核酸重合体の単量体単位である。この用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を包含する。RNAは、tRNA(転移RNA)、siRNA(短鎖干渉RNA)、snRNA(核内小分子RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、およびリボザイムの形態であり得る。DNAは、プラスミドDNA、ウイルスDNA、直鎖DNA、もしくは染色体DNAまたはこれらの群の誘導体の形態であり得る。さらに、DNAおよびRNAのこれらの形態は、1本鎖、2本鎖、3本鎖または4本鎖であり得る。また、この用語は、PNA(ペプチド核酸)、siNA(短鎖干渉核酸)、ホスホロチオネート、および未処理の核酸のリン酸塩骨格の他の変異体を包含する。
【0042】
本明細書において使用されるとき、用語“ヌクレオチドから作られる薬学的因子”または“ヌクレオチドから作られる医薬品”は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたは核酸を包含する薬学的因子または医薬品を指す。
【0043】
“患者”または“対象”または“個体”は、動物(哺乳類、好ましくはヒトが挙げられる)を指す。
【0044】
本明細書において使用されるとき、“薬学的因子”または“活性因子”または“薬物”は、患者に対して好適に投与された場合に所望の治療効果を誘導可能な、あらゆる化学的もしくは生物学的な物質、化合物または組成物を指す。いくつかの薬物は、インビボにおいて薬学的活性を有する代謝物に転換される、不活性な形態の固体である。本発明の目的から、用語“薬学的因子”、“活性因子”および“薬物”は、不活性な薬物および活性な代謝物を包含する。
【0045】
用語“薬学的有効投与量、薬学的有効量、治療有効投与量または治療有効量”は、所望の生物学的結果を誘導するために十分な投与量のレベルを指す。その結果は、薬学的因子の送達、疾患もしくは生体系のあらゆる他の所望の変質の徴候、症状または原因の緩和であり得、かつ活性物の実際の量は、患者の身体的状態、処置される病気の進行などに依存する。
【0046】
本明細書において使用されるとき、用語“ペプチド類似物”は、保存的アミノ酸置換によってか、またはペプチドの生物学的活性を破壊しない位置にある1つ以上非保存的なアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸挿入によってのみ未処置のペプチドとアミノ酸配列が異なるペプチドを指す。上記保存的アミノ酸置換は、例えば、LeuのValへの置換、またはArgのLysへの置換などである。上記生物学的活性は、この場合、ペプチドの融合誘導特性である。また、本明細書において使用されるとき。ペプチド類似物は、その配列の一部またはすべてとして、1つ以上のアミノ酸類似物、アミノ酸の構造を模倣する構造、および/またはペプチドもしくは他のペプチド類似物以外の分子に見られる天然のアミノ酸を包含し得る。
【0047】
本明細書において使用されるとき、用語“プロサポシン誘導体化タンパク質およびプロサポシン誘導体化ポリペプチド”は、これらに限定されないが、天然に生じるサポシン A、B、CおよびDを包含する。この用語は、類似もしくは実質的に類似の生物学的活性を有する、合成サポシン誘導体化タンパク質および合成サポシン誘導体化ペプチドおよびペプチド類似物をさらに包含する。当該生物学的活性は、例えば、膜構造を組織化する膜相互作用、脂質と結合する膜相互作用および転写機能、脂質提示、膜再構成、膜固着などである。サポシン Cおよびそれらから誘導体されたポリペプチドは、本発明の1つの実施形態において使用され得る。この用語は、本明細書に記載されているか、および/または当該技術において公知であるH1、H2、H3、H4またはH5断片、ならびに生物学的に活性なこれらに対する等価物といった断片をさらに包含し得る。
【0048】
用語“短鎖脂質”は、4、5、6、7、8、9、10、11または12の炭素鎖長を有する脂質を指す。1つの実施形態において、炭素鎖長は6、7、8、9または10である。1つの実施形態において、炭素鎖長は6、7または8である。負に帯電した短鎖脂質の例は、ウェブサイトwww.avantilipids.comにおいて入手可能である。本発明と共に使用され得る短鎖脂質の例としては、これらに限定されないが、06:0 PS(DHPS)1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);08:0 PS 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);03:0 PC 1,2−ジプロピオニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;04:0 PC 1,2−ジブチロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;05:0 PC 1,2−ジバレロイル−sn−グリセロ− 3−ホスホコリン;06:0 PC(DHPC)1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;07:0 PC 1,2−ジヘプタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;08:0 PC 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;09:0 PC 1,2−ジノナノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;06:0 PG 1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩);08:0 PG 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩);06:0 PA 1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3 −ホスフェート(1ナトリウム塩);08:0 PA 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ− 3−ホスフェート(1ナトリウム塩);06:0 PE 1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン;08:0 PE 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンが挙げられる。
【0049】
本明細書において使用されるとき、用語“短鎖干渉核酸”、“siNA”、“短鎖干渉RNA”、“siRNA”、“短鎖干渉核酸分子”、“短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子”、または“化学修飾短鎖干渉核酸分子”は、例えば配列特異的な様式においてRNA干渉“RNAi”または遺伝子抑制を媒介することによって、遺伝子発現またはウイルス複製を阻害できるか、または下方制御できる、あらゆる核酸分子を指す。例示的な実施形態の範囲において、siNAは、自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を備える2本鎖ポリヌクレオチド分子である。ここで、アンチセンス領域は、発現の下方制御の対象である標的核酸分子におけるヌクレオチド配列、またはそれらの一部に対して相補的である分子配列を備える。そして、センス領域は、上記標的核酸配列またはそれらの一部と一致する(すなわち、実質的に同じ配列である)ヌクレオチド配列を備える。“siNA”は、例えば、短い2本鎖の核酸(または任意により長いこれら前駆体)であり、かつ標的細胞において受容できないほどに毒性である、小分子干渉核酸を意味する。本発明に範囲において有用なsiNAの長さは、ある実施形態において約21〜23bpの長さに最適化される。しかし、有用なsiNA(siRNAが挙げられる)の長さを特に限定するものではない。例えば、siNAは、前駆体の形態において、細胞に対して最初に提示され得る。上記前駆体は、siNAの最終的な形態または処理を受けた形態と実質的に異なる。siNAの最終的な形態または処理を受けた形態は、細胞に存在して、かつ標的細胞に対する送達によってか、または送達の後に遺伝子抑制活性を発揮する。siNAの前駆形態の例としては、前駆配列エレメントが挙げられる。当該前駆配列エレメントは、遺伝子抑制の媒介のために細胞内において活性なsiNAをもたらすための送達時または送達の後に、処理されるか、分解されるか、改変されるか、または切断される。このようにして、ある実施形態において、本発明の範囲内にある有用なsiNAは、前駆型の長さ(例えば、標的細胞内において活性な処理されたsiNAを生じる約100〜20塩基対、50〜100塩基対、または50塩基対未満)を有する。他の実施形態において、有用なsiNAまたはsiNAの前駆体は、約10〜49bp、15〜35bp、または約21〜30bpの長さである。
【0050】
本明細書において使用されるとき、用語“自発的に形成される”は、当該技術において公知の意味を包含することを意図される。ここで、リポソームの形成は、リン脂質の混合物に対して最小に機械的な力を加えること必要とするか、または機械的な力を加えることを必要としない。しかし、機械的な力(例えば、ボルテックスまたは混合を介して)がリポソーム組成物の形成を容易にするために適用され得ることについて理解されるべきである。
【0051】
本明細書において使用されるとき、用語“安定な”または“安定化された”は、小胞が分解(例えば、小胞構造または封入された気体または気体の前駆体の損失が挙げられる)に対して、有益な期間にわたって実質的に耐性であることを意味する。典型的に、本発明に採用される小胞は、好ましい有効期間を有しており、通常の環境条件において少なくとも2〜3週間にわたって元の構成物のうち少なくとも約90%の体積がしばしば残存する。好ましい形態において、小胞は、少なくとも約1ヶ月、好ましくは少なくとも約2ヶ月、より好ましくは少なくとも約6ヶ月、より一層好ましくは少なくとも約18ヶ月、その上さらに好ましくは約3年以下にわたって好ましく安定である。また、本明細書に記載の小胞(気体および気体の前駆体が充填された小胞)は、悪条件(例えば、通常の環境条件において受ける温度および圧力より高いか、または低い温度および圧力)においてさえ安定である。
【0052】
“小胞”は、1つ以上の内部空間を形成する1つ以上の壁または膜の存在を特徴とする球状の物体である。小胞は、例えば脂質(本明細書に記載の種々の脂質が挙げられる)、タンパク質性材料、重合体材料(天然重合体、合成重合体および半合成重合体が挙げられる)、または界面活性剤から調製され得る。好ましい小胞は、脂質から形成される壁または膜を備える小胞である。これらの好ましい小胞において、脂質は、単分子膜または2重膜の形態であり得る。そして、単分子膜または2重膜の脂質は、1つ以上の単分子膜または2重層の形成に使用され得る。2つ以上の単分子膜または2重膜の場合、単分子膜または2重膜は同心であり得る。脂質は、単層小胞(1つの単分子膜または2重膜を備える)、オリゴラメラー小胞(約2または約3つの単分子膜または2重膜を備える)または多層小胞(約3つ以上の単分子膜または2重膜を備える)の形成に使用され得る。同様に、タンパク質または重合体から調製された小胞は、1つ以上の同心の壁または膜を備え得る。タンパク質または重合体から調製された小胞の壁または膜は、実質的に安定(均一)であり得るか、またはそれらは多孔性または半孔性であり得る。本明細書に記載の小胞としては、リポソーム、ミセル、気泡、超微粒気泡、微粒子、脂質−、重合体−、タンパク質−および/または界面活性剤−被覆気泡、超微粒気泡および/または微粒子、マイクロバルーン、エーロゲル、ならびに包接体結合小胞などと通常に呼ばれる物質が挙げられる。小胞の内部空間は、液体(例えば、水性溶液が挙げられる)気体、気体の前駆体、および/または固体材料もしくは溶液材料(例えば、所望の標的リガンドおよび/または生物活性因子が挙げられる)を用いて充填され得る。
【0053】
(詳細)
本開示の対象は、単層のリン脂質小胞に一般的に関する。当該単層のリン脂質小胞は、例えば、選択されたリン脂質と水性溶液の組み合わせによって自発的に形成され得るリポソームである。小胞は、容易に形成され、安定であり、漏出がなく(すなわち、それらの内容物を放出しない)、かつ広範な大きさに及ぶ。プロサポシン誘導体化タンパク質(例えば、プロサポシン C、および/またはSap CのH1領域およびH2領域)は、リン脂質小胞に組み込まれ得る。本明細書に記載のリン脂質小胞、またはリポソームは、疾患の処置に有用である。脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ペプチドを含有するリポソームは、例えば疾患状態(例えば、がん)の処置において、付加的な薬学的因子の非存在下において治療薬として使用され得る。また、当該リポソームは、特に生物学的膜を通過する送達が有効な場合に、薬学的に活性な因子の送達および投与にさらに使用され得る。
【0054】
簡単に述べると、本発明のリポソームは、1つ以上の陰イオン性の長鎖脂質および1つ以上のプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを、通常に包含する。ここで、脂質の特定の組み合わせはリポソームの自発的な形成を可能にする。
【0055】
1つの実施形態において、リポソームは、1つ以上の陰イオン性の長鎖脂質、1つ以上の短鎖リン脂質、および1つ以上のプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドもしくはこれらの類似物もしくはこれらの誘導体から構成される。
【0056】
さらなる実施形態において、本発明のリポソームは、そのような処置を必要とする個体に対する1つ以上の薬学的因子の送達のために、1つ以上の薬学的因子をさらに備え得る。
【0057】
本明細書に記載のリポソームの製造方法は、1つ以上の乾燥リン脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドもしくはこれらの類似物もしくはこれらの誘導体を準備する工程;混合物を形成するための水性溶液を加える工程;混合物にリポソームを形成させる工程を包含する。
【0058】
代替可能な実施形態において、上記方法は、1つ以上の乾燥リン脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドもしくはこれらの類似物もしくはこれらの誘導体を準備する工程;第1の混合物を形成するために有機溶媒を加える工程;第1の混合物を凍結乾燥する工程;第2の混合物を形成するために第1の混合物に水性溶液を加える工程;第2の混合物にリポソームを形成させる工程を包含し得る。1つ以上の乾燥リン脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質および/または少なくとも1つの短鎖リン脂質を備え得る。プロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドは、サポシン CまたはH1、H2、H3、H4もしくはH5といった断片であり得る。
【0059】
本発明の他の実施形態において、タンパク質−脂質組成物のpHは、酸性である。本発明の他の実施形態において、上記組成物のpHは約6.8〜2の間である。本発明の他の実施形態において、上記組成物のpHは約5.5〜2の間である。本発明の他の実施形態において、上記組成物のpHは約5.5〜3.5の間である。
【0060】
他の実施形態において、乾燥形態のタンパク質および脂質の組成物は酸を用いて処理される。1つの実施形態において、上記酸は酸性緩衝液または有機酸である。他の実施形態において、上記酸は、タンパク質の少なくとも一部をプロトン化するに十分な程度に加えられる。ここで、上記組成物は約5.5〜約2のpHを有する。他の実施形態において、上記酸は、タンパク質を実質的にプロトン化するに十分な程度に加えられる。ここで、上記組成物は約5.5〜約2のpHを有する。
【0061】
さらなる実施形態において、タンパク質の少なくとも一部をプロトン化するに十分な程度の酸を用いて処理されている、タンパク質および脂質の乾燥粉末組成物は、それから実質的に中和される。1つの実施形態において、pHは中性のpH緩衝液を用いて中和される。1つの実施形態において、生じるリポソームの大きさを十分に制御する中性のpH緩衝液を用いて中和される。他の実施形態において、pHは、生じるリポソームの大きさを十分に制御して約200nmの平均直径を有するリポソームを提供する、中性のpH緩衝液を用いて中和される。他の実施形態において、リポソームは50〜350nmの間の平均直径を有する。他の実施形態において、リポソームは150〜250nmの間の平均直径を有する。他の実施形態において、緩衝液が上記組成物に加えられて、約5〜約14、好ましくは約7〜約14、より好ましくは約7〜約12、より一層好ましくは約7〜約10、その上さらに好ましくは約8〜約10の、最終の組成物のpHを提供する。
【0062】
本発明のリポソームおよび関連する方法は、当該リポソームが機械的な力の使用を必要としないような、水性溶液の添加によって自発的に形成され得ることを特徴とする。さらに、生じるリポソームの集団は、1年以上の程度の延長された有効期間を有する。したがって本発明のいくつかの実施形態において、当業者は、試薬および装置における低い資産投資を伴う、リポソームに基づく送達系および処理を容易に提供し得、かつ毒性試薬に対するばくろおよび当該試薬の処理に関わる費用を低減する。
【0063】
(融合誘導タンパク質または融合誘導ポリペプチド)
小さな(〜80アミノ酸の)熱安定性の糖タンパク質のファミリーであるサポシンは、スフィンゴ糖脂質の分解経路における種々のリソソーム酵素のインビボ加水分解活性にとって必須である。Grabowski, G.A., Gatt, S., and Horowitz, M. (1990) Crit. Rev. Biochem. MoI. Biol. 25, 385-414; Furst, W., and Sandhoff, K., (1992) Biochim. Biophys. Acta 1126, 1-16; Kishimoto, Y., Kiraiwa, M., and O'Brien, J.S. (1992) J. Lipid. Res. 33, 1255-1267を参照すればよい。サポシンファミリーの4つの構成要素であるA、B、CおよびDは、単一の前駆体タンパク質であるプロサポシンから、タンパク質分解的に加水分解される。Fujibayashi, S., Kao, F.T., Hones, C, Morse, H., Law, M., and Wenger, D. A. (1985) AmJ. Hum. Genet. 37, 741-748;O'Brien, J.S., Kretz, K.A., Dewji, N., Wenger, D.A., Esch, F., and Fluharty, A.L. (1988) Science 241, 1098-1101;Rorman, E.G., and Grabowski, G.A. (1989) Genomics 5, 486-492;Nakano, T., Sandhoff, K., Stumper, J., Christomanou, H., and Suzuki, K. (1989) J. Biochem. (Tokyo) 105, 152-154;Reiner, O., Dagan, O., and Horowitz, M. (1989) J.Mol.Neurosci. 1, 225-233を参照すればよい。サポシンA、B、CおよびDに関する完全なアミノ酸配列は、遺伝的機構およびプロサポシンのcDNA配列と同様に報告されている。Fujibayashi, S., Kao, F. T., Jones, C, Morse, H., Law, M., and Wenger, D. A. (1985) Am. J. Hum. Genet. 37, 741- 748;O'Brien, J. S., Kretz, K. A., Dewji, N., Wenger, D. A., Esch, E, and Fluharty, A. L. (1988) Science 241, 1098-1101;Rorman, E. G., and Grabowski, G. A. (1989) Genomics5, 486-492を参照すればよい。開始コドンに変異を有するプロサポシンの完全な欠損は、関連するリソソーム加水分解酵素の欠損と共通する、複数のスフィンゴ糖脂質の基質の蓄積を引き起こす。Schnabel, D., Schroder, M., Furst, W., Klien, A., Hurwitz, R., Zenk, T., Weber, J., Harzer, K., Paton, B.C., Poulos, A., Suzuki, K., and Sandhoff, K. (1992) J. Biol. Chem. 267, 3312-3315を参照すればよい。
【0064】
サポシンは、スフィンゴ脂質活性化タンパク質または補酵素と定義されている。サポシンA、B、CおよびDは、完全に保存された6つのシステイン残基を含めて、構造的に約50〜60%の類似性を有する(Furst, W., and Sandhoff, K., (1992) Biochim. Biophys. Acta 1126, 1-16を参照すればよい)。完全に保存された6つのシステイン残基は、配列が同定されている3つの内部ドメインジスルフィド架橋を形成する(Vaccaro, A.M., Salvioli, R., Barca, A., Tatti, M., Ciaffoni, F., Maras, B., Siciliano, R., Zappacosta, F., Amoresano, A., and Pucci, P. (1995) J. Biol. Chem. 270, 9953-9960参照すればよい)。サポシンのすべては、N末端側の半分にある保存された配列と共に1つの糖鎖付加部位を含んでいる。しかし、糖鎖付加は、これらの活性に必須ではない。Qi. X., and Grabowski, G.A. (1998) Biochemistry 37, 11544-11554;Vaccaro, A.M., Ciaffoni, F., Tatti, M., Salvioli, R., Barca, A., Tognozzi, D., and Scerch, C. (1995) J. Biol. Chem. 270, 30576-30580を参照すればよい。さらに、サポシン AはC末端側の半分に第2の糖鎖付加部位を有する。
【0065】
サポシンならびにサポシン様タンパク質およびサポシン様ドメインのすべては、溶液において“サポシンフォールド(saposin fold)”を含む。このフォールドは、3つの保存されたジスルフィド構造および種々の両親媒性ペプチドを特徴とする、複数のαらせんバンドルモチーフである。溶液におけるこの共通するサポシンフォールド構造にもかかわらず、サポシンおよびサポシン様タンパク質は、特定の加水分解酵素によるリソソームのスフィンゴ脂質(SL)およびスフィンゴ糖脂質(GSL)の分解の亢進において、種々のインビボにおける生物学的機能を有する。これらの役割のために、サポシンは、リソソームのスフィンゴ脂質およびスフィンゴ糖脂質の代謝の制御において中心的な位置を占めている。
【0066】
この機能の非存在下において、スフィンゴ糖脂質は脳に蓄積して、ゴーシェ病を引き起こす。Pampols, T.; Pineda, M.; Giros, M. L.; Ferrer, I.; Cusi, V.; Chabas, A.; Sammarti, F. X.; Vanier, M. T.; Christomanou, H. Acta Neuropatol. 1999, 97, 91-97を参照すればよい。スフィンゴ糖脂質(GSL)の蓄積から生じる他の疾患は、リソソームの酵素およびサポシン活性化因子の欠損によっても引き起こされる、異染性白質萎縮症である(Zhang, X. L.; Rafi, M. A.; DeGaIa, G.; Wenger, D. A. Proc NatlAcad Sci USA 1990, 87, 1426-1430; Schnabel, D.; Schroder, M.; Sandhoff, K. FEBS Lett1991, 284, 57-59を参照すればよい)。また、酵素活性における特定の役割だけでなく、Sap Cは、神経突起生成の活性化、ガングリオシドおよびGSLの膜間輸送、脂質抗原提示ならびに膜融合誘導の活性化を行う能力を有する。PS ULVと結合したSap Cの静脈内投与が、蛍光標識リン脂質の中枢神経系への輸送能の証明に使用されていることも注目すべきである。したがって、組み合わせたSap C−PS複合体は、神経疾患および脳疾患の処置に特異的な薬物および遺伝子の新たな送達系に自身を適合させ得る。
【0067】
本発明における使用に好適な融合誘導タンパク質および融合誘導ポリペプチドとしては、これらに限定されないが、サポシンファミリーのタンパク質(例えば、サポシン C)が挙げられる。また、サポシン Cの相同物が含まれる。ここで、当該相同物は、断片が類似または実質的に類似の生物学的活性を有するように、少なくとも80%の配列相同性、または少なくとも90%の配列相同性を有している。サポシン Cをコードする遺伝コードの変質に起因して、100%の配列相同性が本発明の実施にとって必須ではないことは、当業者によって容易に理解される。
【0068】
ペプチドまたはペプチド類似物の例としては、Ser−Asp−Val−Tyr−Cys−Glu−Val−Cys−Glu−Phe−Leu−Val−Lys−Glu−Val−Thr−Lys−Leu−Ile−Asp−Asn−Asn−Lys−Thr−Glu−Lys−Glu−Ile−Leu−Asp−Ala−Phe−Asp−Lys−Met−Cys−Ser−Lys−Leu−Pro(配列番号1);
Val−Tyr−Cys−Glu−Val−Cys−Glu−Phe−Leu−Val−Lys−Glu−Val−Thr−Lys−Leu−Ile−Asp−Asn−Asn−Lys−Thr−Glu−Lys−Glu−Ile−Leu−Asp−Ala−Phe−Asp−Lys−Met−Cys−Ser−Lys−Leu−Pro(配列番号2)、
ならびにこれらの誘導体、類似物、相同物、断片および混合物が挙げられる。
【0069】
また、以下の式:h−u−Cys−Glu−h−Cys−Glu−h−h−h−Lys−Glu−h−u−Lys−h−h−Asp−Asn−Asn−Lys−u−Glu−Lys−Glu−h−h−Asp−h−h−Asp−Lys−h−Cys−u−Lys−h−h
(ここで、hは疎水性アミノ酸(VaI、Leu、Ile、Met、Pro、Phe、およびAlaが挙げられる)であり;かつuは無電荷の極性アミノ酸(Thr、Ser、Tyr、Gly、Gln、およびAsnが挙げられる)である)のポリペプチドが含まれる。
【0070】
ヒトSap Cの機能的ドメインは、図1に示されている。6つのシステイン(太字)およびN−糖鎖付加コンセンサス配列(*)が、表されている。2つのらせん状ドメイン、H1(YCEVCEFLVKEVTKLID)およびH2(EKEILDAFDKMCSKLPK)は、それに応じて表示されている。略語MBDおよびFDは、それぞれ膜結合ドメインおよび融合誘導ドメインを意味する。融合誘導ドメインは、H1ペプチドおよびH2ペプチドを含むSap C分子のアミノ末端側の半分に位置する。Sap Cおよびその2つのらせん状ドメインペプチド(H1およびH2)の、脂質膜の不安定化および再構成に対する影響は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて試験されている。Sap Cが酸性膜を不安定化および再構成して、膜の表面により厚い“パッチ”を形成でき、最終的に2重膜の分解を導くことについて、AFMによって示されている。また、Sap Cによって生じる膜の不安定化は、曲率の高度な異常が膜の不安定化を促進することを示唆する、異常から始まる。その一方、H1またはH2のいずれも、単独では膜構造に対する有意な影響を有していない。H2は、膜の異常が存在し、かつそれから棒状構造に凝集する場合に、脂質と相互作用する傾向にある。AFMの結果は、Sap CならびにそのH1断片およびH2断片の、支持される膜に対する影響を示す。しかし、小胞の安定性および形態に対するこれらのタンパク質の潜在的な影響は分かっていない。ここで、SANSは、Sap C、H1およびH2の存在および非存在における小胞を性質決定するために使用される。この技術は、小胞の大きさ、形状および多分散性に関する中構造の情報、ならびに膜の厚さに関する微小構造の情報の両方を明らかにする。
【0071】
(リン脂質膜およびリポソームの形成)
リポソームは、同心の脂質2重膜からなる微小小胞であり、かつ本明細書において使用されるとき、球状の2重膜として配列された両親媒性脂質から構成される小さな小胞を指す。リポソームは、構造的に、数百オングストロームから数ミリメートルの大きさを有して、長い管から球状の大きさおよび形状に変動する。全体の形状に関係なく、2重膜は、薄層のそれぞれを隣り合う薄層から分ける水性層を有する密接した同心の薄層として、一般的に組織化されている。小胞の大きさは、直径が約20〜30000nmの範囲内である。標的組織に対するリポソームの特異的な送達は、上記標的組織への治療薬の送達に適したリポソームの大きさを選択することによって達成される。上記標的組織は、例えば、増殖細胞集団、新生組織、炎症性組織、および感染組織である。例えば、180nmの平均直径を有するリポソームは、固形腫瘍に集積せず、140nmの平均直径を有するリポソームは、同じ固形腫瘍の周辺部に集積し、かつ110nmの平均直径を有するリポソームは、固形腫瘍の周辺部および中心部に集積する。
【0072】
通常、リポソームは、脂質の混合物に対して機械的な力を加えることによって形成される。例えば、種々の方法がリポソーム組成物の調製に現在使用されている。当該種々の方法は、例えば、溶媒透析、フレンチプレス、押出(凍結融解を伴うかまたは伴わない)、逆相蒸発、単純な凍結融解、超音波処理、キレート透析、ホモジナイゼーション、溶媒浸出、微小乳化、自発的な形成、溶媒蒸発、溶媒透析、フレンチプレス細胞技術、および制御下における界面活性剤透析などが挙げられる。例えば、Madden et al., Chemistry and Physics of Lipids, 1990を参照すればよい。また、リポソームは、振とうまたはボルテックスを含む種々の処理によって形成され得る。しかし、リポソームが機械的な力の適用を必要とせずに自発的に形成される方法および組成物を提供できることは、付加的な設備および工程が不要であり、これによってこれらの調製に関する時間および費用を低減させるという点において有益である。本発明はこの要求に対処する。
【0073】
低い多分散性を有する単層小胞(ULV)の自発的な形成は、長鎖および短いアシル鎖を含有する3元リン脂質の状態図に見られ得る。例えば、Nieh, M-P.; Harroun, T. A.; Raghunathan; V. A., Glinka; C. J.; J. KatsarasBiophys. J. 2004, 86, 2615-2629; Egelhaaf, S. U.; Schurtenberger, P. Phys. Rev. Lett. 1999, 82, 2804-2807; Nieh, M.-P.; Raghunathan, V. A.; Kline, S. R.; Harroun, T. A.; Huang, C-Y.; Pencer, J.; Katsaras, J. Langmuir2005, 21, 6656-6661を参照すればよい。UVLは、温度を上昇させること(Lesieur, P.; Kiselev, M. A.; Barsukov, L. L; Lombardo, D. J. Appl. Cryst. 2000, 33, 623-627; Nieh, M.-P.; Harroun, T. A.; Raghunathan, V. A.; Glinka, C. J.; Katsaras, J. Phys. Rev. Lett. 2003, 91, 158105を参照すればよい)、または2重膜の円盤状のミセルを希釈すること(V. A., Glinka; C. J.; J. Katsaras Biophys. J. 2004, 86, 2615-2629を参照すればよい)のいずれかによって形成される。ここで、短鎖脂質は、2重膜の円盤の高い曲率の周縁に集まって、その端部のエネルギーを最小にする。円盤状の2重膜のミセルからULVへの転移は、長鎖脂質のゲル−液状結晶に対応する温度(主転移温度)において生じる。当該転移は、長鎖脂質と短鎖脂質との間の上昇した混和性レベルが円盤状の端部から短鎖脂質を分散させることを意味する。円盤状の端部からの短鎖脂質の分散が、線張力を増加させ、かつ剛性の係数を減少させる。この一連の現象は、単分散したULVの形成を生じる。Fromherz, P. Chem. Phys. Lett. 1983, 94, 259-266を参照すればよい。これらのULVは、延長された期間(すなわち、数週間)にわたって安定である(Nieh, M.-P.; Harroun, T. A.; Raghunathan, V. A.; Glinka, C. J.; Katsaras, J. Phys. Rev. Lett. 2003, 91, 158105を参照すればよい)。よって、これらのULVは、このため薬物担体として良好な候補物と考えられる。
【0074】
(リポソームを自発的に形成する組成物および方法)
リポソーム形成の1つの方法は、長鎖脂質および短鎖脂質の使用に関する。ここで、両方の脂質の種は、少量の酸性の長鎖脂質(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))を用いてドープされた2飽和の両性イオンリン脂質である。本開示において、リポソームの自発的な形成の1つの実施形態に係る形態が記載されている。この実施形態において、リポソームの自発的な形成に使用される脂質の混合物は、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジヘキサノイルホスファチジルコリン(それぞれDPPCおよびDHPC)、ならびに酸性の長鎖脂質であるジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)を包含する。しかし、本発明の範囲内における好適な他の実施形態に到達するために、種々の変更および置換がこの組み合わせに対してなされ得ることは、当業者にとって容易に理解される。この混合物は、少なくとも1つのプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドまたはこれらの変異体もしくは類似物をさらに含む。
【0075】
自発的に形成されるリポソームは、以下の工程:1)乾燥脂質および少なくとも1つのプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドの混合物を準備する工程;2)上記混合物に水性溶液を加える工程;3)上記混合物にリポソームを形成させる工程の実施によってなされ得る。ここで、上記リポソームは、安定であり、かつ当該リポソームの形成のために機械的な力を加える必要がない。1つの実施形態において、上記脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質を包含する。1つの実施形態において、上記脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖脂質および少なくとも1つの短鎖リン脂質を包含する。プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドは、サポシン C(配列番号2)、H1(配列番号3)、H2(配列番号4)、H3(配列番号5)、H4(配列番号6)、H5(配列番号7)およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。プロサポシンは配列番号1に表されている。プロサポシン誘導体化タンパク質は、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5およびこれらの混合物の、類似物または誘導体をさらに包含する。
【0076】
水性溶液は、生理学的に適合可能なあらゆる溶液であり得る。さらに、当該溶液は、リポソームが自発的に形成するように、脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドの可溶化能を有する。水性溶液の非限定的な例としては、例えば、水、脱イオン水、生理食塩水、およびリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。水性溶液を加えた状態におけるタンパク質および脂質の総モル濃度は、約300μMまたは約400μMまたは約500μMまたは約1000μM以下である。水性溶液のpHは、約7.4または約7.0〜7.6、または約6.8〜7.8である。
【0077】
水性溶液の添加後に、脂質およびタンパク質の混合物は、自発的にリポソームを形成する。しかし、リポソームの形成を早めるかまたはそうでなければ容易にするために、上記混合物がボルテックスされ得るか、または混合され得ることについて、当業者は容易に理解する。
【0078】
代替可能な実施形態において、上記方法は、1つ以上の乾燥脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを準備する工程;第1の混合物の形成のために有機溶媒を加える工程;第1の混合物を凍結乾燥する工程;第2の混合物を形成するために第1の混合物に水性溶液を加える工程;第2の混合物にリポソームを形成させる工程を包含し得る。1つ以上の上記乾燥脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質および/または少なくとも1つの短鎖リン脂質を包含し得る。プロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドは、サポシン CまたはH1、H2、H3、H4もしくはH5といった断片であり得る。この実施形態において、有機溶媒は、あらゆる好適な有機溶媒(例えば、t−ブタノール(好ましくは)、イソプロパノール、1−プロパノールエタノール、エチルエーテル、メタノール、またはDMSO)であり得る。有機溶媒は、凍結乾燥の前における最終的な第1の混合物の約80〜90%または約70〜95%または約50〜95%を構成する。第1の混合物は、リポソームを形成するために使用される水性溶液の添加までに、数ヶ月または数年にわたって保存され得る。
【0079】
双性イオン脂質のみではなくて、DOPSといった負に帯電した長鎖脂質の使用は、サポシン Cもしくはその断片(例えば、H1ペプチドおよびH2ペプチド)と酸性脂質の凝集体との間の相互作用を最適化すると考えられる。そして、負に帯電した長鎖脂質の使用は、リポソームの自発的な形成にとって特異に適合され、疾患の処置用のリポソームを形成する新規かつ有用な方法を提供する。代替可能な実施形態において、負に帯電した長鎖脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジル−グリセロール(DOPG)、1,2−ジオレオイル−ホスファチジルイノシトール(DOPI)および1,2−ジオレオイル−ホスファチジン酸(DOPA)、またはこれらの組み合わせから選択され得る。本発明の負に帯電した長鎖脂質は、約14〜約24の炭素、または約18〜約20の炭素の長さの炭素鎖を有する、あらゆる長鎖リン脂質であり得る。脂質の網羅的なリストは、www.avantilipids.comにおいて入手可能である。当業者は、これらの脂質が本発明において使用され得ることを十分に理解する。長鎖脂質および短鎖脂質のあらゆる組み合わせが使用され得ると同時に、いくつかの組み合わせはより安定なリポソームを生じる。例えば、本発明を限定することを意図しないが、以下のものは、リポソームが形成される組成物の選択肢の指針となり得る。約20〜約24の炭素の長さの長鎖が使用される場合に、約6〜約8の長さを有する短鎖脂質は、リポソームの安定性を向上させるために使用され得る。約14〜約18の長さの長鎖が使用される場合に、約6〜約7の長さを有する短鎖脂質は、リポソームの安定性を向上させるために使用され得る。脂質のこれらの組み合わせがより安定なリポソームを生じるが、他の組み合わせは、首尾よく使用され得、かつ否定されることを意図されない。
【0080】
安定なULV形成にとっての可能性は、本発明に記載のような短鎖脂質および長鎖脂質の添加を介してさらに最大化される。短鎖脂質は、当業者によって理解されるようなあらゆる好適な短鎖脂質であり得る。1つの実施形態において、例えば、短鎖脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)といった無電荷の短鎖ホスファチジルコリン脂質である。また、短鎖脂質は、DHPSといった短鎖ホスファチジルセリン脂質であり得る。本明細書に記載のような短鎖脂質の添加に伴って、形成されるリポソームの集団は、一般的に単分散している。短鎖脂質なしでは、上記集団は、多分散しており、生じるリポソームの大きさおよび形状に変動を有する。短鎖リン脂質の添加の結果として、単分散した集団を得ることが可能であり、生じる調製物の薬物動態および生体利用効率の制御能を向上させる。
【0081】
1つの特定の実施形態において、サポシン−Cリポソームを合成するために使用される脂質混合物は、負に帯電した脂質ジオレオイルホスファチジル−セリン(DOPS)を包含する。ここで、無電荷の長鎖脂質ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)および無電荷の短鎖脂質ジヘキサノイルホスファチジルコリン(DHPC)の少量が加えられる。この特定の実施形態において、[DOPS]:[DPPC]のモル比は、([DPPC]+[DOPS])/[DHPC]=約4という条件において、1:1〜10:1の範囲内である。代替可能な実施形態において、DHPCはDHPSに置き換えられるか、DHPSと組み合わせられる。
【0082】
電荷および長さが一致する当該技術において公知のあらゆる脂質が、使用され得る。サポシン Cの少量を用いてドープされた脂質のこの組成物を含有するサンプルは、不安定化しない。しかし、高濃度のサポシン Cを伴うと、大きな凝集体がこの系に使用する溶液から沈殿し得る。これは膜の不安定化を意味する。DOPS/DPPC/DHPCサンプルは24ヶ月にわたって安定である。つまり、無電荷の長鎖脂質および短鎖脂質の添加が、凝集体の安定性を増強することを示している。しかし、長鎖脂質および短鎖脂質のあらゆる組み合わせが、本明細書に記載のような発明にしたがって使用され得る。表1は、本発明の方法の実施に使用され得る長鎖脂質および短鎖脂質の非限定的な例を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
さらに、脂質鎖における飽和炭化水素の存在または非存在は、リポソームの安定性に影響を与える。例えば、約18以上の鎖長を有する脂質が使用され、リン脂質は飽和化または不飽和化、好ましくは不飽和化され得る。約14〜約16の炭素を有する脂質といったより短い長鎖脂質に関して、脂質は不飽和化され得るが、飽和脂質の利用によって本発明の性能が向上される。
【0085】
脂質の比率の非限定的な例は以下の通りである。組成物における選択された負のリン脂質に対する選択された無電荷のリン脂質のモル比は、約1対10(約10%の無電荷のリン脂質)、または約1対5(約20%の無電荷のリン脂質)、または約1対1(約50%の無電荷のリン脂質)である。組成物における選択された短鎖脂質に対する選択された長鎖脂質のモル比は、約4対1(約20%の短鎖)であり得、かつ約10対1(10%の短鎖)〜約3対1(約33%の短鎖)であり得る。
【0086】
1つの実施形態における長鎖対短鎖の比率の一例は、[無電荷の長鎖脂質]+[酸性の長鎖脂質]/[無電荷の短鎖脂質]または[陰イオン性の短鎖脂質]=約4である。他の例としての1つの実施形態において、混合物におけるDOPS対DPPCのモル比は、([DPPC]+[DOPS])/DHPC=約4という条件において、約10〜8対1、または約7〜6対1、または約5〜3対1または約1〜2対1である。他の実施形態において、[無電荷の長鎖脂質]+[酸性の長鎖脂質]/[無電荷の短鎖脂質または陰イオン性の短鎖脂質]は、約2〜約10または約3〜約8または約4〜約7であり得る。本発明における使用に適した脂質は、当該技術に公知のあらゆる脂質、またはwww.avantilipids.comにおいて提供されるようなあらゆる脂質から選択され得る。
【0087】
本発明のリポソームは、1つ以上の薬学的因子および/または造影剤をさらに備え得る。1つ以上の薬学的因子および/または造影剤は、水性の内部もしくは2重膜の間に捕捉されているか、または2重膜内にある疎水性分子を捕捉することによって捕捉されている。種々の技術が、選択された宿主組織に対して封入された薬物を標的化し、かつ感受性組織から離すためのリポソームを使用することに採用され得る。これらの技術としては、リポソームの大きさ、それらの正味の表面電荷、およびそれらの投与経路を操作することが挙げられる。
【0088】
また、本発明のリポソームは、受動輸送経路によって送達され得る。リポソームの受動輸送は、種々の投与経路(例えば、静脈内、皮下、筋肉内および局所)の利用に関する。いずれの経路もリポソームの局在に差異を生じる。
【0089】
また、本発明のリポソームは、血液脳関門を越える治療薬または造影剤の送達に理想的である。本発明は、治療薬を含有するリポソームがCNSにこれらの薬剤を送達するために使用され得る方法に関する。ここで、薬剤は、上述の脂質およびサポシン C、プロサポシンもしくはサポシンの変異体を包含するリポソーム内に含まれている。治療薬を含有するリポソームは、当該技術において一般的に容認される方法を用いて、IV注入、IM注入、経鼻送達、またはあらゆる他の経血管薬物送達法を介して投与され得る。
【0090】
理論によって限定されることを意図せずに、サポシン媒介膜融合がどのように生じるかについての1つの考え得る機序は、タンパク質構造変化を介するものである。プロサポシン誘導体化タンパク質に属するサポシン Aおよびサポシン Cは、高度なアミノ酸同一性/類似性を示す。両方のタンパク質は、両親媒性のらせん状バンドルモチーフに折りたたまれることが計算的に予測されている。サポシンフォールドは、一般的に、5つの両親媒性αらせんを有する通常の超2次構造である。5つの両親媒性αらせんは、単一の球状ドメインに折りたたまれ、かつ両方のタンパク質に共通している。1つの実施形態において、折りたたみは、アミノ末端における中心に位置するらせんに沿っている。らせん2および3は一方の側からくるまれ、かつらせん4および5は他方の側からくるまれている。このフォールドが、膜相互作用にとっての接合点を提供し得る。
【0091】
サポシン媒介の陰イオン性のリン脂質膜との膜融合に関する機序は、2段階からなる過程であると考えられる。第1の段階において、正に帯電したアミノ酸(塩基の形態)であるサポシンのリジン(Lys)およびアルギニン(Arg)と、負に帯電したリン脂質膜との間の静電相互作用が、これらの2つの種の間に結合を生じる(図1を参照すればよい)。第2の段階において、2つの隣接するサポシンタンパク質のらせんの間における分子内疎水性相互作用が、2つの膜を、膜の融合を生じさせるために十分密接に近接した状態にする(図2を参照すればよい)。
【0092】
このため、本発明によれば、サポシン、特にサポシン Cの脂質との結合は、約5.5以下のpH範囲を一般的に必要とする。これは、膜とサポシン Cの最初の結合が、サポシン Cの正に帯電した塩基性アミノ酸残基の陰イオン性膜との静電相互作用を介して生じるからである。このため、静電相互作用を多くもたらすために、それらのプロトン化形態にある塩基性アミノ酸を有することが非常に好ましい。これは、脂質混合物とプロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを混合する前に、プロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドに対する酸性溶液の添加によって達成され得る。
【0093】
代替可能に、サポシンファミリーのタンパク質から誘導される、関連融合タンパク質および関連融合ペプチドは、この低pH範囲の制限を有しないものがあり得る。このため、他の膜融合タンパク質および膜融合ペプチドのpH範囲は、生理学的pH(約7のpH)〜より低いpHの範囲にあり得る。
【0094】
(DOPS/DPPC/DHPCリポソームの構造解析)
粉末の形態のDOPS(負に帯電した長鎖脂質)、DPPC(無電荷の長鎖脂質)およびDHPC(無電荷の短鎖脂質)(Avanti Polar Lipids、アラバスター、ALから入手可能である)は、さらに精製することなく使用される。DLS測定に関して、[DOPS]:[DPPC]のモル比は、すべてのサンプルに関して([DPPC]+[DOPS])/[DHPC]=4の条件において、1:1〜10:1の範囲内である。乾燥脂質混合物は、ろ過した超純水(Millipore EASYpure UV)に、10質量%の総脂質濃度において溶解され、かつボルテックスおよび4〜50℃の温度循環によって混合される。
【0095】
タンパク質を含有するリポソームの調製に関して、Sap Cは、IPTG誘導化pET系を用いたE. coilにおいて過剰発現され、かつHisタグタンパク質は、ニッケルカラムから溶出された。透析の後に、HPLCクロマトグラフィーによって以下のようにさらに精製された。C4逆相カラムが10分間に渡って0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を用いて平衡化された。それから、タンパク質は、0.1%TFAのアセトニトリル溶液の直線勾配(0〜100%)において60分に渡って以上溶出された。タンパク質の主要なピークが回収され、かつ凍結乾燥された。同時にタンパク質濃度が上述のように測定された。H1ペプチド(YCEVCEFLVKEVTKLID)およびH2ペプチド(EKEILDAFDKMCSKLPK)は、SynPep株式会社(カリフォルニア、USA)によって合成され、かつ1.5mg/mLの濃度においてD2Oに溶解された。[DOPS]/[DPPC]=10および([DPPC]+[DOPS])/DHPC=4の条件を有する0.1質量%の脂質溶液は、それから体積比12:1の2つのペプチド溶液(1.5mg/mL)、および1:1の体積比を有するSap C溶液に加えられた。これによって、膜の不安定化を誘導するために必要とされるSap Cの濃度よりも高い、62.5μMの最終ペプチド(またはSap C)濃度になった([脂質]/[ペプチド]のモル比=22/1)。また、6.25μMのSap C([脂質]/[Sap C]=220/1)のみを含有するサンプルが、比較のために調製された。
【0096】
Sap C−ULV複合体の構築において、DOPS/DPPC/DHPC ULV系に対する組成物の影響は、Sap C−膜相互作用の研究に好適な系として特徴づけされた。特に、この脂質混合物の凝集体の形態は、動的光散乱(DLS)、透過型電子顕微鏡(TEM)およびSANS測定を介して、決定された。それから、SANSは、これらのULVに対するH1、H2およびSap Cの影響を特徴付けるために使用された。
【0097】
ペプチドの非存在下における凝集体に関して、DLSおよびTEMの結果によって、200nm以下および500nm未満のオーダーの直径を有するULVの2モードの集合が存在することが確かめられる。これは、扁平な小胞および3軸楕円の殻に関する、形態要素の組み合わせを用いたSANSデータによく一致する。SANSデータは、Sap Cが高濃度(62.5μM)においてULVの凝集を促進する一方において、低濃度(6.25μM)においてULV構造が乱されないことを明らかにする。H1およびH2の両方は膜厚のわずかな減少を誘導する。H1ペプチドは、ULVの大きさまたはそれらのサイズ分布の変動を示さない。その一方で、H2ペプチドは、存在する2つのULV凝集体の間における平衡状態を変動させる。定性的に、これらの結果は以前のAFMの発見と一致する。
【0098】
生じるリポソームの構造および安定性を決定するために、はじめにホモジナイズした10質量%の溶液が5、2、1、0.5、0.1質量%のサンプルに、漸次的に希釈される。DLS測定の前に、0.1質量%のストック脂質サンプルが、5、50および200倍に希釈され、かつN4+粒子測定器(Coulter、Miami、FL)を用いて分析される。この方法を用いて、系の希釈が粒子のサイズに影響しないことが確認された。SANS実験に関して、同じサンプル調製手順が[DOPS]/[DPPC]=10のサンプルに適用された。サンプル調製手順は、0.5質量%の総脂質濃度を有するサンプルを得るために、H2Oの代わりにD2O(99.99%、Chalk River Laboratory、Shalk River、ON)が使用された点を除いて同じである。それから、0.5質量%のサンプルは、酸性緩衝液を用いて、0.1および0.05質量%の混合物にさらに希釈された。上記酸性緩衝液は、同じ体積の0.1Nの酢酸ナトリウム(NaAc)および0.1Nの酢酸(HAc)から構成される。生じた溶液は、D2Oにおいて4.78±0.02のpHを有し、かつD2Oを用いた12倍希釈の間、安定であった。
【0099】
SANS実験は、米国標準技術局(NIST)中性子研究センター(NCNR、Gaithersburg、Maryland、USA)に設置されている30m NG7 SANS機器において実施された。8.09オングストロームの波長(λ)の中性子、中性子屈折光学および長いサンプル−検出器間の距離(SDD=15.3m)を用いることによって、最も低い散乱ベクトル[q=4π/λ・sin(θ/2)、ここでθは散乱角である]に達した。また、2つの他のSDD(5mおよび1m)が使用された。他の2つのSDDを使用することによって、3つのすべてのSDDに関して、0.002〜0.35オングストロームの範囲内の組み合わせたqを包含する。未加工の2次元データ検出器のバックグラウンド、細胞なしの散乱およびサンプル透過について補正された。それから、補正されデータは、光線の中心について環状に平均化されて、通常の1次元データを生じた。それから、これらのデータは、公知の入射光線放射束を用いて、絶対強度スケール(absolute intensity scale)に関して見積もられた。非干渉性のプラトーが、10〜20高いqのデータ点の強度を平均化すること、および低減したデータを引くことによって決定された。
【0100】
ULVの大きさは、N4+サブミクロン粒子粒径分析器(Coulter、Miami、FL)を用いた、陽子相関分光分析23、24によって決定された。大きな粒子が、20〜800nmの間の粒径を有して多分散した状態において見られた。ANOVA分析は、統計学的有意性および標準偏差を表すエラーバーを決定するために使用された。
【0101】
TEM画像は、80kVの加速電圧において運転させたヒタチTEM(H−7600、日立、日本)を用いて撮影された。各サンプルの液滴は、支持フォルムバール膜(support formvar film)に覆われたニッケル網(200目、30〜75nmの範囲の厚さ、Electron Microscopy Science、PA)上に載せられた。網は、TEM分析の前に2時間室温において、ろ紙上に置かれた。バックグラウンドが高倍率において最適化されると同時に、所望の領域が低倍率(50〜1000倍)に設定された。単一の小胞は、最大50000万倍において観察され得た。TEM顕微鏡写真は、適切な画像収集ソフトウェアを有する、デュアルAMT CCDカメラ(2k×2k、16ビット)を用いて撮影された。
【0102】
Sap Cが、酸性条件下の負に帯電した不飽和脂質(すなわち、DOPS)の存在下においてのみ機能するので23、この系は、主にDOPSならびに少量のDPPCおよびDHPCから構成される。種々の[DOPS]/[DPPC]モル比のサンプル(表1)のDLSの結果は、[DOPS]/[DPPC]=10のサンプルのみが2モードのサイズ分布を示す一方において、残りのサンプルが少なくとも3つの集団を含有することを示している。この理由から、[DOPS]/[DPPC]=10のサンプルのみが、これらのULVの構造に対するSap C、H1およびH2の影響をさらに調べるために使用された。また、DLSのデータは、DOPS/DPPC/DHPCサンプルの構造が12ヶ月に渡って安定であることを示している(表2)。これは、DPPCおよびDHPCの添加が、DOPSを超音波処理することと比べて、これらの凝集体の安定性を劇的に増強するという証拠であり、かつこれらが実用され得る可能性を提供する。
【0103】
DLSの結果から予測されるようなULVの見かけの大きさ、または流体力学的半径は、ULVが球状であるという仮定に基づいていることを留意すべきである。長球の小胞または扁平な小胞に関する文献29に詳細が論じられているように、小胞の軸率の正確な決定には、DLSおよび静的光散乱(SLS)のそれぞれによる、小胞の流体力学的半径および回転の半径の測定が必要である。楕円小胞に関して、見かけの流体力学的半径は、扁平な小胞または長球の小胞のそれぞれについてのULVの大きさまたは表面積を、多少(<10%)の過小評価または過大評価される。
【0104】
【表2】
【0105】
図2は、0.1質量%の脂質混合物([DOPS]/[DPPC]=10)、ならびに酢酸D2O緩衝液における、H1およびH2をドープした脂質混合物のSANSデータを示している。低濃度(6.25μM)のSap Cは、ULVの大きさまたはそれらの膜構造の乱れを示さない(非ドープの混合物と同様である)。高濃度(62.5μM)のSap Cの場合には、Sap C添加の脂質系は、溶液から沈殿する(SANSに受け容れられない)大きな凝集体を形成する。この観察はSap Cが膜を不安定化する23というこれまでの研究と一致する。このため、われわれは、小胞の構造に対するH1およびH2の影響にのみ焦点を絞っている。0.1%のDOPS/DPPC/DHPC(△)、H1をドープした混合物(□)、およびH2をドープした混合物(○)のSANSデータが、図2に示されている。実線はデータに対する最良適合を表している。矢印によって指し示されている2つの広いピークは、系にある相関長の結果である。点線および長点の線のそれぞれは、0.1%の非ドープ系を適合させるために使用された、3軸楕円殻モデルおよび扁平殻モデルの結果である。図2に示されているSap C非ドープのサンプルの散乱曲線は、それらが2つの広いピークを含むという通常の特徴を共有している。0.01オングストローム−1未満のqおよび0.03オングストローム−1未満のqの間に中心を有する2つの広いピークは、系に2つの相関長が存在することを示している。また、これらのピークの由来をより理解するために、0.05質量%の単一の脂質混合物が試験された。0.05質量%のサンプルのSANSデータは、0.1質量%のサンプルデータと重ねるために縮小され得る。これによって、2つの広いピークが凝集体の形態に固有のものであり、かつ粒子間の相互作用の結果ではないことを示している。
【0106】
q>0.06オングストローム−1について、3つ1組のデータの間において強度の違いは見られない。改変したギニエプロットの分析30(クラツキ−ポロッドプロットとしても知られる)は、3つのサンプルのすべてに適用された。ここで、ln(I・q2)は、5×10−3〜2.5×10−2オングストローム−2の範囲にあるq2の条件における直線関係を有する。これは層状構造の存在を示している。図3は、0.1質量%のDOPS/DPPC/DHPC混合物(○)、H1をドープした系(△)、およびH2をドープした系(□)に関する改変したギニエプロットを示している。線はデータの最良適合を表している。それから、2重膜の厚さは、ルート12を掛けた傾斜の平方根から得られる。最良適合の結果は、非ドープの混合物が最も厚い(37.7±0.7オングストローム)2重膜を形成する一方において、H1をドープした2重膜およびH2をドープした2重膜がわずかに薄い(それぞれ35.8±0.8、36.2±0.6オングストローム)ことを示している。
【0107】
q≦0.06オングストローム−1について、H1をドープした系の散乱曲線は、H2をドープした散乱曲線と比べて、非ドープの脂質混合物の散乱曲線と類似している。つまり、これは、H1ペプチドを用いた膜のドープによって凝集体の形態に有意な変化が起こらないことを示している。また、この観察は以前のAFMの報告と一致している。当該報告において、H1は、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルセリン(POPS)に対して影響しないことが見出された。H2をドープしたサンプルのSANSデータの場合には、単一の脂質混合物のSANSデータとの定性的な差が、qの低い領域(q<0.003オングストローム−1)の傾斜、ならびに2つのピークの幅および強度に観察された。
【0108】
3つのサンプルのすべてのTEM画像が得られ、かつ形態の2つの集団を有する粒子が観察された。図4は、DOPS/DPPC/DHPC混合物(AおよびB)、およびH1をドープした混合物(CおよびD)、およびH2をドープした混合物の代表的なTEM画像を示している。3軸楕円の小胞(すなわち、A、CおよびE)は、すべてが同様の大きさ(150〜200nm×600〜800nmの投影断面積)である。このとき、3軸楕円の小胞は、約10〜150nmの投影半径を有する扁平小胞である。これらの容積は、層状3軸楕円小胞に関する以下の数学モデルに従って、SANSデータの最良適合の結果と一致する。
【0109】
3軸楕円の単層小胞に関するモデルは、3つの主軸、acore、bcoreおよびccore(acore≦bcore≦ccore)に沿った異なる中心長を有する楕円殻として表される。軸、ashell、bshellおよびcshellに沿った殻の長さは、それぞれ(acore+l)、(bcore+l)および(ccore+l)と定義される(ここでlは2重膜の厚さである)。この近似は、2重膜の通常の傾向に従って、ULV全体に渡って一定の2重膜の厚さを仮定していないことに留意すべきである。したがって、考えられるすべての方向に渡って平均化された3軸楕円殻に関する形成因子Ptriax(q)は、
【0110】
【数1】
【0111】
【数2】
として表され得る。ここで、j1は、1次楕円ベッセル関数であり、
【0112】
【数3】
であり、uiは、
【0113】
【数4】
と定義され(iはshellまたはcoreを表す)、かつVtotalおよびVcoreのそれぞれは、楕円体の全容積および中心部の容積である。ρD2Oおよびρlipidは、D2Oおよび脂質の散乱長密度を意味する。
【0114】
扁平な楕円体小胞に関して、形成因子Poblate(q)は、ccore=bcoreにすることによって得ることができる。したがって、uiは、
【0115】
【数5】
になる。さらに、シュルツ関数f(a)は、以下の式
【0116】
【数6】
(ここで、<a>はaの平均である)に示されるような短軸(すなわち、acore)の分布を説明するために使用される。pは、ρ/<a>と定義される多分散度である。ここで、ρはaの標準偏差である。pとして適当な値は、0〜1の範囲内である45。ガンマ関数Γ(1/p2)は、シュルツ関数の積分を標準化するために使用される。等式A−3は、
【0117】
【数7】
となって等式A−1内に入れられる。
【0118】
次に、相互作用しない小胞(扁平な楕円体および3軸楕円体)にとっての総散乱強度は、
【0119】
【数8】
と記載され得る。ここで、ΦlipおよびΦoblateのそれぞれは、溶液における脂質および扁平殻の総量の体積分率である。適合手法は、IGORプログラミングコードに記載されている。IGORプログラミングコードは、NIST SANSグループによって開発されたデータ分析パッケージから修正されている。
【0120】
3軸楕円体の単層2重膜小胞にとっての提唱モデルが図5に示されている。親水性領域(頭部基)および疎水性領域(炭化水素尾部)が示されている。扁平小胞の場合には、bはcと等しい。
【0121】
1つの形態は、150〜200nm以下の半径を有する、環状の2次元投影を有する。一方において、他の形態は、それぞれ600〜800nmの長さの長軸および100〜200nmの長さの短軸を有する、引き伸ばされた楕円投影を有する。この結果はDLSデータと一致する。しかし、2モード分布は、投影に対して直交する軸に沿った粒子の厚さに依存して、球状の楕円体小胞の混合物、または扁平な3軸楕円体小胞の混合物のいずれかであり得る。前者(球状の楕円体小胞の混合物)は、われわれのSANSデータと適合しない。われわれは、SANSの結果と適合する扁平な3軸楕円体小胞殻を包含するモデルを作り出している(上述した3軸の2重膜単層小胞に関する数学モデルを参照すればよい)。扁平な形態は、2つの等しい主軸および1つの多分散の副軸を有する(図4のB、D、F)。一方において、3軸楕円体の形態は、長さが異なる3つの軸を有する(図4のA、C、E)。このモデルは、8つの適合要素を必要とする。8つの要素とは、すなわち、3軸楕円体の小胞に関する3つの軸、扁平な殻に関する2つの軸、扁平な形態に関する短軸の多分散性、2重膜の厚さおよび3軸対扁平の集団の比率である。しかし、TEMおよびDLS測定、ならびにクラツキ−ポロッド分析からの結果は、2重膜の厚さ、ならびに扁平な殻の場合の2つの主軸の長さおよび3軸楕円の殻にとっての2つの長軸の長さが、われわれにとって制限される。これによって、短軸の長さ、扁平殻の短軸の多分散性、および3軸対辺鄙の集団比率を、自由な要素として残せる。最良適合の結果は、扁平楕円体および3軸楕円体が40±5オングストロームの厚さを有することを示している。これは、改変したギニエプロットから得られた結果よりもわずかに大きい。3軸楕円体の最も短い軸および扁平な形態の副軸のそれぞれは、250±20オングストロームおよび100±10オングストロームである。これらの特性は、SANSデータにおける広い(0.01オングストローム以下および0.03オングストローム以下)ピークを生じる。さらに、扁平な形態の主軸の長さ(150nm以下)および楕円体の形態の2つの長軸の長さ(200nm以下および500nm以下)に関する最良適合は、図4に示されるTEMの結果と一致する。扁平楕円体の集団の割合は、H2をドープした混合物の場合に40±10%以下であり、一方、非添加またはH1をドープした混合物に関して60±10%以下であることが分かった。3軸楕円体小胞の集団が大きいことを示す第1のピークのより高い強度がH2をドープした系に見られることは、最良適合の結果と一致する。このため、H2ペプチドが3軸楕円体の小胞の形成に好ましいと考えられる。要約すると、3つの手法のすべては、2つの形態(すなわち、3軸楕円体および扁平楕円体)の存在を指し示している。
【0122】
Sap CおよびSap C断片(H1およびH2)を用いたULV系の形成に使用されるDPPC/DHPC/DOPS混合物は、意外なことに予測しなかった脂質混合物の挙動を示した。われわれの当初の予測は、われわれの以前の実験結果3に基づいて、単分散した球状のULVの形成にとって好適な条件を見つけることであった。しかし、上述したように、われわれは、DPPC/DHPC/DOPSがULVを形成すると同時に、DLSによって調べられた混合物のサイズ分布が多モードであることを見出している。2モードに分散したULVの場合に、われわれは、各集団が非球状の形態および狭いサイズ分布を有することを見出している。この観察は、われわれにこのULV形成に関する機序がDMPC/DHPC/DMPG混合物に生じる機序とは異なるという推測を導く。
【0123】
以前の研究において、われわれは、低い多分散性のULVの形成が、ミセル(2胞性)の形態を2重膜にした低い温度からこの系を加熱することが必要なことを見出した。ULVの大きさは、2つの胞の大きさに依存することが見出された。さらに、ULVの大きさは、周辺の線張力、2重膜の曲げ剛性および2つの胞の融合の割合といった因子によっておそらく改変された。さらに、DMPC/DHPC/DMPGの2つの胞→ULVの転移は、23℃以下において生じる、DMPCのゲル→液晶の転移と密接な関連していた。DPPC/DHPC/DOPSが類似の挙動を示した場合には、2胞性の形態が−11℃付近またはそれ以下において見られるだろう。−11℃はDOPSの脂肪酸鎖が融解転移を受ける温度である。高温においてDMPC/DHPC/DMPG混合物が広いサイズ分布を有するULVの形成を生じるので3、われわれは、ここでのULVの形成機序が以前に調べられた機序とは異なると推論する。
【0124】
これまでの技術は、希釈によって、かつ集団的な膜の変動の結果として、単一のDOPSの層状の重なりが、多分散したULVの形成を完全に許容することを示唆している。これは、2モードの集団のリポソームを形成するための利用とは関係なく示唆されている。したがって、単一のDOPSの懸濁によってULVも形成できるが、われわれは、ここで生じる形成の機序としてはこれを捨てることができる。われわれは、観察された非球状のULVが、ULVの高い曲率の領域を占めている無電荷の短鎖DHPCを有することによって、安定化されていると同時に、長鎖DPPCが安定な2重膜に必要とされる剛性を提供することを推測している。
【0125】
本開示は、2モードのULVサイズ分布が観察されるが、個々の集団の多分散性がかなり小さいという、上述の予期されなかった発見を示している。当該発見は、これらの2つの集団が、材料を自由に変更し得る平衡状態、最小のエネルギー状態を示すことであり得るか、または個々のULVがこれらの2つの形態の間において転換可能な流体力学的構造であることであり得る。形態が自由に転移するという考えは、これまでに論理的に予測されており、かつこれまでの実験的観察と類似でもあり得る。ここで、遊離した長球の小胞は扁平な小胞に、そして逆に場合も同じく転移する29、35、36。
【0126】
また、楕円体のULVの形態は、予想外であるが、膜の側方における異質性の結果であり得る。飽和および不飽和の脂質を含有する3成分の混合物が側方に偏りを示し得ることは、最近SANSによって示されている37。さらに、ゲル→液晶の転移を経て上昇する温度に応じて、巨大なULVにおける複合化された球状−多角形−楕円体の転移が見出されている38。外見上、多角形の形状(図4のB)は、おそらく2つの相の間における側方の相の分離から生じた。ここで、DOPSおよびDHPC脂質はLα相であると同時に、DPPCはゲル相である。さらに、異なる炭化水素鎖の長さを有する脂質の異なる種に起因して、各ドメインは、楕円の軸のそれぞれの長さを決めることに寄与し得る。われわれが知る限り、単一のリン脂質の系または単一の脂質の混合物に由来する多分散した3軸楕円体の小胞は、これまで報告されていないが、アクチンの重合体化によって誘導される扁平な形状または不規則な形状をした小胞に転移する球状の小胞の例がある。われわれは、その結果が膜内における側方への分離に起因すると推測する。
【0127】
高いqのデータに対する最良適合は、2重膜の厚さが38〜40オングストロームの間にあるという結果を生じる。楕円殻モデルが、主軸に沿った一定の2重膜の厚さ、および2重膜の全体に渡って均一な散乱長密度を仮定しているので、2重膜の厚さに関する値は、より詳細なモデルから得られる値よりもわずかに大きいと予想され得る。改変したギニエプロットは、H1をドープしたULVおよびH2をドープしたULVと比較して、非ドープのULVがより厚い2重膜を有することを示している。これは、H1およびH2が2重膜に対する薄膜化の影響を有するが、それらが2重膜を不安定化することを証明する。WangらはH1およびH2がSap C誘導膜融合を阻害できることを報告している。これは、それらがSap Cと同じようにDOPS部位におそらく結合し、このようにしてSap Cの膜との相互作用を弱める。また、これらの結果は、H1が膜融合の阻害においてH2よりも有効であることを示した。これは、H1が2重膜の薄膜化に対するより大きな影響を有することと一致している。
【0128】
以前のAFMの研究は、H2が膜に対してパッチを形成したことを示している。これは、2重膜欠損の領域を構成する棒状構造であると推測された。SANSデータは、非ドープのULVおよびH1をドープしたULVと比べて、集団が、H2の添加によって扁平なULVから3軸のULVへと粒子形態を変化させることを示している。短鎖DHPCは膜に欠陥を作り出すことが知られているので、脂質混合物は、3軸楕円体ULVの好ましい形成を導く、H2の会合にとって好適な環境を提供し得る。
【0129】
SANS、TEMおよびDLSの利用を介して、DOPS/DPPC/DHPCの混合物によって仮定される種々の形態が特徴付けられた。2つの低い多分散性の形態、すなわち扁平なULVおよび3軸楕円体のULVが観察される。ここで、ULV形成の機序は、これまでに報告されている機序とは異なると考えられる。また、当該機序は、低い多分散性のULVが、ゲル→液晶の転移を受ける長鎖脂質の非存在下においてさえ形成され得ることを証明している。SANSの結果は、以前のAFMデータと一致して、H1およびH2が2重膜の形態を不安定化しないことを示している。しかし、H1は2重膜の薄膜化により大きな影響を有することを示している。さらに、H2ペプチドの添加は、扁平楕円体の小胞に対する3軸楕円体の小胞の比率を増加させる。これは、おそらく、種々の脂質構成要素の混和性の変化に起因する。一方、Sap Cの添加は、膜を不安定化し、かつ大きな凝集体の溶液からの沈殿を生じる。
【0130】
リポソーム小胞が種々の治療学にとって有効な担体であることが、さらなる証拠によって示唆される。しかし、疾患の処置および商業的な実現性における特定の系の有効性が、第1に重要である。本開示において、ホスファチジルセリン含有ULVが自発的に形成することを示し、高い安定性を有し、かつ低い多分散性を有することが証明される。記載されている手順は、Sap C結合ULVの大規模化した産業的製造に好適であり、Sap C−PS ULVの開発に有用である。Sap C−PS ULVは、それから治療薬のインビボ輸送に関して試験され得る。
【0131】
本発明の長鎖脂質は、約14〜約24の炭素を有する長さの炭素鎖、または約18〜約20の炭素を有する長さの炭素鎖を有する、あらゆる長鎖脂質であり得る。脂質の網羅的なリストは、www.avantilipids.comにおいてにおいて入手可能である。当業者は、これらの脂質が本発明に使用され得ることを十分に理解する。長鎖脂質および短鎖脂質のあらゆる組み合わせが使用され得ると同時に、いくつかの組み合わせがより安定なリポソームを生じる。例えば、本発明を限定することを意図しないが、以下のものが、リポソームが形成される組成物の選択肢を導き得る。リポソームの安定性を向上させるために、約20〜約24の炭素の長さを有する長鎖脂質が使用され、約6〜約8の長さを有する短鎖脂質が使用される。リポソームの安定性を向上させるために、約14〜約18の長さを有する長鎖が使用され、約6〜約7の長さを有する短鎖脂質が使用される。脂質のこれらの組み合わせがより安定なリポソームを生じる。一方において、他の組み合わせが首尾よく使用され得、かつこれらが否定されることを意図しない。表2は、より安定なリポソームを生成するために使用され得るリン脂質の組み合わせの例を説明する。しかし、これらの例は、リン脂質の他の組み合わせが本発明と共に使用され得ないことを意味しない。
【0132】
【表3】
【0133】
さらに、リポソームの安定性は、脂質鎖における飽和炭化水素の存在または非存在に影響を受ける。例えば、約18以上の鎖長を有する脂質が使用され、リン脂質は、飽和または不飽和、好ましくは不飽和であり得る。約14〜約16の炭素を有する長鎖脂質といったより短い長鎖脂質に関して、脂質は不飽和であり得るが、飽和脂質の使用によって、本発明の向上した性質が生じる。
【0134】
(付加的な試薬)
また、上述の生物適合性の脂質および重合体に加えて、ある物質の組成物を用いた微粒子の調製が本発明の一部であると意図される。当該物質は、安定性および上述の基準に適合するように微粒子が調整されるように供給される。
【0135】
プロピレングリコールは、脂質粒子の分散または溶解を容易にすることによって、濁りを除去するために加えられ得る。また、ポリプロピレングリコールは、増粘剤として機能し得る。増粘剤としてのポリプロピレングリコールは、微粒子の膜または表面の表面張力を上昇させることによって微粒子の形成および安定性を向上させる。ポリプロピレンは、付加的な層としてさらに機能することが考えられる。当該層は、微粒子の膜または表面を被い、このようにしてさらなる安定性を提供する。このような基本的または補助的なさらなる安定化化合物の例として、使用可能な従来の界面活性剤(例えば、米国特許第4,684,479号明細書および米国特許第5,215,680号明細書)がある。
【0136】
補助的および基本的なさらなる安定化化合物としては、ピーナッツ油、キャノーラ油、オリーブ油、ベニバナ油、トウモロコシ油、またはあらゆる他の油といった物質が挙げられる。当該あらゆる他の油は、本明細書において上述した要件および指示に合致して安定化剤としての使用に好適であり、摂取可能であることが通常に知られているものである。
【0137】
さらに、混合したミセルの系の製造に使用される化合物は、基本的または補助的な安定化化合物としての使用に好適であり得る。これらの化合物としては、これらに限定されないが、ラウリルトリメチルアンモニウム ブロマイド(ドデシル−)、セチルトリメチルアンモニウム ブロマイド(ヘキサデシル−)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム クロライド(アルキル=C12、C14、C16)、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム ブロマイド/クロライド、ベンジルジメチル ヘキサデシルアンモニウム ブロマイド/クロライド、ベンジルジメチル テトラデシルアンモニウム ブロマイド/クロライド、セチル−ジメチルエチルアンモニウム ブロマイド/クロライド、またはセチルピリジニウム ブロマイド/クロライドが挙げられる。
【0138】
本発明に使用されるリポソームは、本明細書に記載の種々の付加的または補助的な安定化剤のなかから選択することによって、大きさ、溶解性および熱安定性に基づいて制御され得ることが見出されている。これらの薬剤は、脂質の被膜とのこれらの物理的な相互作用によってだけではなく、リポソームの表面の粘性および表面張力を改変するそれらの能力によってもまた、微粒子のこれらの要素に影響を与えることができる。したがって、本発明に使用されるリポソームは、例えば1つ以上の多種多様な(a)粘性改変剤;(b)乳化剤および/または可溶化剤;(c)懸濁化剤および/または増粘剤;(d)合成懸濁化剤;ならびに(e)浸透圧向上剤(tonicity rising agent)の添加によって、好ましく改変され得、さらに安定化され得る。(a)粘性改変剤としては、これらに限定されないが、炭水化物ならびにそれらのリン酸化誘導体およびスルホン酸化誘導体;ならびにポリエーテル(好ましくは400〜100000の範囲内の分子量を有する);ジヒドロキシアルカンおよびトリヒドロキシアルカンならびにこれらの重合体(好ましくは200〜5000の範囲内の分子量を有する)が挙げられる。(b)乳化剤および/または可溶化剤は、また所望の改変およびさらなる安定化を達成するために、脂質と共に使用され得る。(b)乳化剤および/または可溶化剤としては、例えばこれらに限定されないが、アラビアゴム、コレステロール、ジエタノールアミン、グリセロールモノステアレート、ラノリンアルコール、レチシン、モノグリセリドおよびジグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー 188、ポロキサマー 184、およびポロキサマー 181)、ポリオキシエチレン 50 ステアレート、ポリオキシ 35 キャスターオイル、ポリオキシ 10 オレイルエーテル、ポリオキシ 20 セトステアリルエーテル、ポリオキシ 40 ステアレート、ポリソルベート 20、ポリソルベート 40、ポリソルベート 60、ポリソルベート 80、プロピレングリコール ジアセテート、ポリプロピレン モノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モノラウリル酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミンならびに乳化蝋が挙げられる。(c)懸濁化剤および/または増粘剤は、脂質と共に使用され得る。(c)懸濁化剤および/または増粘剤としては、これらに限定されないが、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、泥膏、カルボマー 934P、カルボキシメチルセルロース、カルシウムおよびナトリウムおよびナトリウム12、カラゲナン、セルロース、デキストラン、ゼラチン、グアールガム、イナゴマメガム、ビーガム(veegum)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル メチルセルロース、マグネシウム−アルミニウム−ケイ酸塩、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントゴム、キサンタムガム、アルファ−d−グルコノラクトン、グリセロールならびにマンニトールが挙げられる。(d)合成懸濁化剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレングリコール、およびポリソルベートといったものが使用され得る。(e)浸透圧向上剤としては、これらに限定されないが、ソルビトール、プロピレングリコールおよびグリセロールといった薬剤が挙げられ得る。
【0139】
水性環境を作り出すために採用され得る希釈剤としては、これらに限定されないが、安定化した微粒子の製造および維持、またはMRIの造影剤としてのそれらの利用に干渉しない、脱イオン化水またはあらゆる数の溶解した塩を含有する水など;ならびに通常の食塩水および生理食塩水が挙げられる。
【0140】
気体および気体の前駆物質が充填された小胞を調製する安定化物質として有用な生物適合性の重合体は、無電荷の半合成(改変した天然)起源のもの、または合成起源のものであり得る。本明細書において使用されるとき、重合体という用語は、2つ以上の繰り返し単量体単位、好ましくは10以上の繰り返し単量体単位から構成される化合物を意味する。本明細書において使用されるときに、半合成の重合体(または改変した天然の重合体)という表現は、ある様式において化学的に合成されている天然の重合体を意味する。本発明における使用に好適な例示的な天然の重合体としては、天然に生じるポリサッカライドが挙げられる。当該ポリサッカライドとしては、例えば、アラビナン、フルクタン、フカン(fucans)、ガラクタン、ガラクツロナン、グルカン、マンナン、(例えば、イヌリンといった)キシラン、レバン(levan)、フコイダン、カラギナン、ガラクトカロロース、ペクチン酸、ペクチン(アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、ポリデキストロース、プスツラン(pustulan)、キチン、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガム、スターチおよび種々の他の天然ホモポリマーもしくはヘテロポリマーが挙げられる)が挙げられる。種々の他の天然ホモポリマーもしくはヘテロポリマーは、例えば、1つ以上のアルドース、ケトース、酸またはアミンを含有する重合体である。アルドース、ケトース、酸またはアミンは、アルドース、ケトース、酸またはアミンは、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、アロース、アルトロース、ルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリチルトース(erytirulose)、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、およびノイラミニン酸、ならびにこれらの天然に生じる誘導体である。したがって、好適な重合体としては、例えば、アルブミンといったタンパク質が挙げられる。例示的な半合成の重合体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルメチルロース、メチルセルロース、メチルセルロース、およびメトキシセルロースが挙げられる。本発明における使用に好適な、例示的な合成重合体としては、(例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンおよびポリエチレンテレフタレートといった)ポリエチレン、(例えば、ポリプロピレングリコールといった)ポリプロピレン、(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルクロライドおよびポリビニルピロリドンといった)ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン、ポリスチレンが挙げられる)、ポリ酪酸、フッ化炭化水素、(例えば、ポリテトラフルオロエチレンといった)フッ化炭素、およびポリメチルメタクリレート、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。安定化化合物として重合体を採用する小胞の調製方法は、本開示事項が当該技術に公知の情報と組み合わせられる場合に、本開示に接した当業者に容易に理解される。当該技術に公知の情報は、例えば、米国特許第5,205,290号明細書に記載および言及の情報である。米国特許第5,205,290号明細書は、言及によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0141】
代替可能に、1つ以上の抗菌剤および/または保存剤が、上記組成物の調合物に包含され得る。抗菌剤および保存剤は、例えば、安息香酸ナトリウム、4級アンモニウム塩、アジ化ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、エチレンジアミン、モノチオグリセロール、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、重亜硫酸カリウム、2酸化硫黄、および有機水銀塩である。他の従来の方法(例えば、放射線照射)によっても達成され得るそのような滅菌は、安定化された小胞が侵入性の環境下において(例えば、血管内的または腹腔内的に)画像化するために使用される場合に、必要である。滅菌に適した方法は、本開示を元にして当業者に理解される。
【0142】
(ジサッカライド)
上述の付加的な成分に加えて、ジサッカライドが、リポソームの安定性を向上させるために加えられ得る水性溶液の添加の前にか、または当該水溶液の添加と共に乾燥脂質に加えられ得る。好適なジサッカライドの非限定的な例としては、これらに限定されないが、トレハロース、スクロース、マルトース、ラクトース、メリビオース、ガラクトース、グルコース、フルクトース、またはラクトースが挙げられる。一般的に、ジサッカライドは、10mgの総タンパク質につき約50〜約100mg(すなわち、約1:10のタンパク質対ジサッカライドの比率)含まれる。
【0143】
(抗膜試薬)
さらに、抗がん(または“抗膜”)剤として知られる他の脂質が、本明細書に記載の組成物および方法と共に使用され得る。本明細書に記載の組成物に加えられ得るのは、例えば、エデルフォシン(Edelfosine)(sn−ET−18−OCH3または1−O−オクタデシル−2−O−メチル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン)、または他のリン脂質(例えば、リゾホスファチド、カルディオリピン、セラミド、スフィンゴミエリン、スフィンゴシン、セレブロシド、コレステロール、これらの脂質の改変形態、および上述の脂質のあらゆる組み合わせ)である。例示的な組成物は、Sap C(100μM)+DOPS(280μM)+エデルフォシン(20μM);またはSap C(100μM)+DOPS(290μM)+エデルフォシン(10μM)を包含し得る。エデルフォシンの量は、約2〜50μMの範囲内であり得;DOPSの量は、約250〜298μMの範囲内であり得、ここでSap Cは約100μMである。他の例示的な範囲は、1:3:0.2〜1:10:0.7のSap C:DOPS:エデルフォシンのモル比を含み得る。Sap Cが説明されている場合に、本明細書に記載の他のプロサポシン誘導体化タンパク質またはポリペプチドが置き換えられ得るか、または組み合わせて使用され得ることを理解されるべきである。
【0144】
本発明は、最も好ましい実施形態に関して説明されているが、付加的な実施形態は、特許請求の範囲の発明の範囲および精神の範囲内である。本発明の好ましい手段は、本発明を説明することを目的としているに過ぎず、以下の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】ヒトサポシン Cおよびその機能ドメインのアミノ酸配列を示す図である。
【図2】0.1%のDOPS/DPPC/DHPCのSANSデータを示す図である。
【図3】0.1重量%のDOPS/DPPC/DHPCに関する改変したギニエプロットの結果を示す図である。
【図4】DOPS/DPPC/DHPC混合物(AおよびB)、およびH1ドープした混合物(CおよびD)、およびH2ドープした混合物の代表的なTEM画像を示す図である。
【図5】単層の2重膜を有する3軸楕円小胞の提唱モデルを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔優先権〕
本願は、2006年10月20日出願の米国仮出願第60/862,321号(発明の名称“Spontaneously Forming Ellipsoidal Phospholipid UnilamellarVesicles”)および2007年4月27日出願の米国出願第11/741,323号に対する優先権を主張する。
【0002】
〔関連出願〕
本願は、2005年3月29日発行の米国特許第6,872,406号(発明の名称“Fusogenic Properties of Saposin C and Related Proteins and Peptides for Application to Transmembrane Drug Delivery Systems”);および米国特許出願公開第10/801,517号、米国特許出願公開第2004/022799号(発明の名称“Saposin C-DOPS: A Novel Anti-Tumor Agent”)に関連する。すべての文献は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0003】
〔発明の分野〕
本発明は、標的化薬物送達および改善された治療学に使用されるリン脂質組成物に関する。薬学的因子がリン脂質膜内に収納され、かつ膜融合タンパク質によって送達が促進される。より詳細には、薬学的因子がリポソーム内に収納され、かつサポシン Cを用いて送達が促進される。当該サポシン Cは、上記リポソームと会合している。
【0004】
〔背景〕
リポソームは、同心の2重膜によって形成される脂質膜によって取り囲まれた水性の空洞を中央に有する、微細な小胞である。リポソームは、単層(1つの脂質2重膜のみを有する)、オリゴラメラー(oligolamellar)または多層(複数の2重膜を有する)であり得る。それらの構造によって、リポソームは、水性の内部に親水性の物質、または脂質膜に疎水性の物質のいずれかを組み込むことができる。
【0005】
薬物送達用の小胞として、リポソームは原理上、多くの利点を有している。無毒の構成要素からなり、一般的に非免疫原性であり、非刺激性であり、かつ生分解性であるだけでなく、リポソームは、非常に多種類の治療薬を封入し、保持し、輸送し、かつ放出できるので、これによって有害な副作用を低減できる。リポソームは、薬物の徐放にとっての支持体を形成すること、および特定の細胞種もしくは身体の一部に送達することができる。また、リポソームの治療的利用は、遊離した形態において毒性のある薬物の送達を包含する。
【0006】
リポソームは、リン脂質の混合物に機械的な力を加えることによって、一般的に形成される。例えば、多種多様な方法が、リポソーム組成物の調製に現在使用されている。当該方法としては、溶媒透析、フレンチプレス(French press)、押出(凍結融解を伴うかまたは伴わない)、逆相蒸発、単純な凍結融解、超音波処理、キレート透析、ホモジナイゼーション、溶媒浸出、微小乳化、自発的な形成、溶媒蒸発、フレンチプレス細胞技術、および制御下における界面活性剤透析などが挙げられる。例えば、Madden et al., Chemistry and Physics of Lipids, 1990を参照すればよい。また、リポソームは、振とうおよびボルテックスを要する種々の処理によって形成され得る。
【0007】
リポソームに関する問題点としては、コロイドの不安定性、量産化における滅菌の困難さ、および製造における単回処理ごとの変動性が挙げられる。リポソームの調製および製造は、浸出またはホモジナイゼーションの後に、有機溶媒の除去を典型的に含む。これらの処理は、リポソームの構成要素を極端な条件にさらし得る。当該極端な条件とは、例えば、脂質およびリポソームに取り込まれている他の分子を分解し得る、上昇した圧力、上昇した温度および高いせん断条件である。
【0008】
リポソームの調製は、2重膜のサイズおよび数の非常に不均一な分布をしばしば特徴とする。小規模において最適化された条件は、通常、うまく大規模化できず、かつ大規模な単回処理の調整は、取り扱いにくく非常な労力を要する。
【0009】
リポソーム応用に関する他の問題点は、コロイドの不安定性である。懸濁物におけるリポソームは、貯蔵、過熱および種々の添加物の添加によって凝集し得、かつ融合し得る。これらの安定性の問題のために、リポソームはしばしば凍結乾燥される。凍結乾燥は費用および時間がかかる。再構成によってサイズ分布がしばしば拡大し、かつ封入された物質がリポソームから漏出し得る。
【0010】
すべてではないがほとんどの公知のリポソーム懸濁物は、熱理学的に安定ではない。公知の懸濁物におけるリポソームは、そのリポソームの形成に用いられたエネルギーによって、より高いエネルギー状態に動力学的に捕捉される。エネルギーは、熱、超音波、押出、またはホモジナイゼーションとして供給され得る。あらゆる高エネルギー状態はより低い遊離エネルギーになろうとするので、公知のリポソーム調合物は、凝集、融合、沈降およびリポソーム結合物質の漏出を伴う問題に直面する。このため、これらの問題のいくつかを回避し得る熱力学的に安定なリポソーム調合物が求められている。
【0011】
このため、現在のリポソーム調合物に伴うこれらの問題に対処する新たな方法および材料を開発することが求められている。
【0012】
〔発明の要約〕
本発明は、一般的に、疾患の治療または個体に対する活性な因子の送達に有用なリポソームの集団を形成する組成物に関する。当該組成物は、a)少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質;b)少なくとも1つの短鎖リン脂質;およびc)プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを備えている。ここで、上記リポソームは、水性溶液の添加によって自発的に形成される。
【0013】
1つの実施形態において、上記陰イオン性のリン脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルイノシトール(DOPI)およびジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)からなる群から選択され得る。
【0014】
さらなる実施形態において、上記短鎖リン脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択され得る。
【0015】
上記組成物は、1モード(monomodal)、2モード(bimodal)、もしくは3モード(trimodal)の単層小胞のサイズ分布を有するリポソームの上記集団、または扁平楕円体の単層小胞と3軸楕円の単層小胞とよって構成されるリポソームの上記集団をさらに備え得る。
【0016】
さらなる実施形態において、上記組成物において上記プロサポシン誘導体化タンパク質は、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5またはこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である。
【0017】
さらに他の実施形態において、リポソームを形成する上記組成物は、DOPS、DPPC、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドが、サポシン C、H1 ペプチド、H2 ペプチド、H3 ペプチド、H4 ペプチド、H5 ペプチドもしくはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0018】
さらに他の実施形態において、リポソームを形成する上記組成物は、DOPS、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドが、サポシン C、H1 ペプチド、H2 ペプチド、H3 ペプチド、H4 ペプチド、H5 ペプチドもしくはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0019】
さらに他の実施形態において、リポソームを形成する上記組成物は、DOPS、DHPS、DPPC、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドが、サポシン C、H1 ペプチド、H2 ペプチド、H3 ペプチド、H4 ペプチド、H5 ペプチドもしくはこれらの混合物からなる群から選択される。
【0020】
さらに他の実施形態において、上記組成物は、薬学的に活性な因子をさらに包含する。
【0021】
〔図面の簡単な説明〕
本明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の1つ以上の実施形態を例証し、かつ詳細な説明と共に本発明の原理および実施を説明する役割を果たす.
図1:ヒトサポシン Cおよびその機能ドメインのアミノ酸配列.
図2:0.1%のDOPS/DPPC/DHPCのSANSデータ.
図3:0.1重量%のDOPS/DPPC/DHPCに関する改変したギニエプロット(Guinier plot).
図4:DOPS/DPPC/DHPC混合物(AおよびB)、およびH1ドープした混合物(CおよびD)、およびH2ドープした混合物の代表的なTEM画像.
図5:単層の2重膜を有する3軸楕円小胞の提唱モデル。
【0022】
〔発明の詳細な説明〕
(略語)
Sap C、サポシン C;DOPG、ジオレオイルホスファチジルグリセロール;DOPS、ジオレオイルホスファチジルセリン;PC、ホスファチジルコリン;PG、ホスファチジルグリセロール;PS、ホスファチジルセリン;DMPC、ジミリスチルホスファチジルコリン。
【0023】
(定義)
本発明の組成物および方法について記載する前に、もちろん変更し得るものとしての特定の方法論、手段および調合物に本発明が限定されてないことについて、理解されるべきである。また、本明細書において用いられる専門用語が、特定の実施形態を説明するためのものであることについて、理解されるべきである。そして当該専門用語が、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物によってのみ限定される本発明の範囲を制限することを意図しないことについて、理解されるべきである。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形“a”、“and”および“the”は、明確に断りがない限り、複数の対象を含む。特に定義しない限り、本明細書において使用される技術用語および科学用語のすべては、本発明が属する技術における当業者に通常に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書に記載されている類似または等価のあらゆる方法、手段および材料が、発明の実施または試験に使用され得るが、ここでは例示的な方法、手段および材料が説明されている。
【0025】
用語“投与された”および“投与”は、患者に対する生体適合性物質の投与を一般的に指す。生体適合性物質としては、例えば、脂質組成物および/または小胞組成物およびフラッシュ因子(flush agents)が挙げられる。したがって、“投与された”および“投与”は、例えば、脂質組成物および/または小胞組成物および/またはフラッシュ因子の血管への注入を指す。また、用語“投与された”および“投与”は、所望の領域に対する脂質組成物および/または小胞組成物および/またはフラッシュ因子の送達を指し得る。
【0026】
本明細書において使用されるとき、用語“アミノ酸”または“アミノ酸配列”は、オリゴペプチド配列、ペプチド配列、ポリペプチド配列、もしくはタンパク質配列、またはこれらのあらゆる断片、ならびに天然に生じる分子または合成分子を指す。ここで、“アミノ酸配列”は、天然に生じるタンパク質分子を指すために本明細書において挙げられ、“アミノ酸配列”および同様の用語は、列挙されたタンパク質分子と関連する完全に未処置のアミノ酸配列にアミノ酸配列を限定することを意図していない。
【0027】
用語“両親媒性脂質”は、親水性の“頭部”基および疎水性の“尾部”基を有し、かつ膜形成能を有する分子を意味する。
【0028】
“類似物”によって、本発明のペプチドのアミノ酸配列における、ペプチドの融合誘導特性に悪影響を与えない置換または変更を意図される。したがって、類似物は、本明細書に与えられているペプチドと実質的に同一のアミノ酸配列を有し、かつ1つ以上のアミノ酸残基が化学的に類似のアミノ酸と保存的に置換された、ペプチドを包含し得る。保存的な置換の例としては、非極性(疎水性)残基の他の非極性残基との置換が挙げられる。非極性残基は、例えば、イソロイシン、バリン、ロイシンまたはメチオニンである。同様に本発明は、1つの極性(親水性)残基の(例えば、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間およびグリシンとセリンとの間)の置換が挙げられる。さらに、塩基性残基(例えば、リジン、アルギニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸)の他の塩基性残基との置換、または1つの酸性残基(例えば、アスパラギン酸またはグルタミン酸)の他の酸性残基との置換が包含される。
【0029】
本明細書において使用されるときに、用語“陰イオン性のリン脂質膜”および“陰イオン性のリポソーム”は、脂質の構成要素を含有し、かつ生理学的pHにおいて全体的に負の電荷を有する、リン脂質膜またはリン脂質リポソームを指す。
【0030】
“陰イオン性のリン脂質”は、負の電荷を有するリン脂質(リン酸塩、硫酸塩およびグリセロールに基づく脂質が挙げられる)を意味する。
【0031】
“生物活性因子”は、本質的に治療的または診断的な用途と関連して使用される物質を指す。当該物質は、例えば、患者における疾患の有無を診断する方法、および/または患者における疾患を処置する方法において使用される。また、本明細書において使用されるときに、“生物活性因子”は、インビトロおよび/またはインビボにおいて生物学的作用を発揮できる物質を指す。生物活性因子は、無電荷であり得るか、または正または負に帯電し得る。好適な生物活性因子の例としては、診断薬、薬学的因子、薬物、合成有機分子、タンパク質、ペプチド、ビタミン、ステロイドおよび遺伝学的材料(ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが挙げられる)が挙げられる。
【0032】
用語“〜(内)に含まれる”は、薬剤が外部環境から保護されるように、リン脂質膜に包まれている薬剤を指す。この用語は、“封入される”と交換可能に使用され得る。
【0033】
本明細書において使用されるとき、用語“欠失”は、1つ以上のアミノ酸またはヌクレオチドの非存在を生じるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列における変更を指す。
【0034】
本明細書において使用されるとき、用語“誘導”は、ポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の化学修飾を指す。ポリヌクレオチドの化学修飾の例としては、アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換が挙げられる。誘導ポリヌクレオチドは、天然分子の少なくとも1つの生物学的機能を保持するポリペプチドをコードする。誘導ポリペプチドは、例えば、糖鎖付加、または誘導されたポリペプチドの少なくとも1つの生物学的機能を保持するあらゆる過程によって、修飾されたポリペプチドである。
【0035】
本明細書において使用されるとき、用語“融合誘導タンパク質または融合誘導ポリペプチド”は、2つの別個の2重膜に加えられた場合に、それらを単一の膜へと融合させることができるタンパク質またはポリペプチドを指す。融合誘導タンパク質は、細胞またはモデル膜を密接な接触状態にさせ、かつそれらを融合させる。
【0036】
本明細書において使用されるとき、単語“挿入”または“付加”は、天然に生じる分子に見られる配列に対して、1つ以上のアミノ酸残基またはヌクレオチドの付加をそれぞれ生じるアミノ酸配列またはヌクレオチド配列の変化を指す。
【0037】
用語“脂質”および“リン脂質”は、交換可能に使用され、かつ脂質が水性懸濁物において示すことが知られている種々の異なる構造配列を備える脂質、リン脂質またはこれらの誘導体を含む構造を指すために使用される。これらの構造としては、これらに限定されないが、脂質2重膜小胞、ミセル、リポソーム、乳濁質、小胞、脂質リボンまたは脂質シートが挙げられる。脂質は、単独に使用され得るか、または当業者が特定の用途に所望される特性を与えること理解するあらゆる組み合わせにおいて使用され得る。さらに、脂質構造物およびリポソーム形成の技術的局面は、当業者に公知であり、かつ当該分野において通常に実施される方法のあらゆるものが、本発明にとって使用され得る。
【0038】
“脂質組成物”は、典型的に水性媒体における、脂質化合物を備える組成物を指す。例示的な脂質組成物としては、懸濁物、乳濁物および小胞化合物が挙げられる。“脂質調合物”は、生物活性因子をも備える脂質組成物を指す。
【0039】
“リポソーム”は、一般的に球状を有する、両親媒性化合物の集団または凝集体(典型的に1つ以上の同心の層(例えば、2重膜)の形態である脂質化合物が挙げられる)を指す。また、それらは本明細書において脂質小胞とも呼ばれ得る。
【0040】
用語“長鎖脂質”は、約13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24の炭素鎖長を有する脂質を指す。1つの実施形態において、鎖長は、18、19または20の鎖長から選択される。本発明と共に使用され得る脂質の例は、ウェブサイトwww.avantilipids.comにおいて入手可能である。本発明と共に使用され得る長鎖脂質の代表的な例としては、これらに限定されないが、以下の脂質:14:0 PS 1,2−ジミリストイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DMPS);16:0 PS 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DPPS);17:0 PS 1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0 PS 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DSPS);18:1 PS 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(DOPS);18:2 PS 1,2−ジイリノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);20:4 PS 1,2−ジアラキドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);22:6 PS 1,2−ジドコサヘキサエノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);16:0−18: 1 PS 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩)(POPS);16:0−18:2 PS 1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);16:0−22:6 PS 1−パルミトイル−2−ドコサヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−18:1 PS l−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−18:2 PS 1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−20:4 PS 1−ステアロイル−2−アラキドノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);18:0−22:6 PS 1−ステアロイル−2−ドコサヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);16:0 PC 1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン[DPPC];17:0 PC 1,2−ジヘプタデカノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0 PC 1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC);16:1 PC (Cis) 1 ,2−ジパルミトレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:1 Trans PC 1,2−ジパルミテライドイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:1 PC Delta6 (cis)1,2−ジペトロセリノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:2 PC (cis)1,2−ジイリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:3 PC (cis)1,2−ジイリノレノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;20:1 PC (cis)1,2−ジエイコセノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;22:1 PC (cis) 1,2−ジエウロコイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;22:0 PC 1,2−ジベヘノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;24:1 PC (cis)1,2−ジネルボノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18:0 PC l−パルミトイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18: 1 PC 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18:2 PC 1−パルミトイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0−18:1 PC 1−ステアロイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0−18:2 PC 1−ステアロイル−2−リノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:1−18:0 PC 1−オレオイル−2−ステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:1−16:0 PC 1−オレオイル−2−パルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;18:0−20:4 PC 1−ステアロイル−2−アラキドニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;16:0−18:1 PG 1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩)(POPG);18:1 PG 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩)(DOPG);18:1 PA 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスフェート(1ナトリウム塩)(DOPA);18:1 PI 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホイノシトール(アンモニウム塩);16:0’(D31)−18:1 PI 1−パルミトイル(D31)−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホイノシトール(アンモニウム塩);18:1 PE 1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DOPE);18:2 PE 1,2−ジイリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンが挙げられる。
【0041】
本明細書において使用されるとき、用語“核酸”または“核酸配列”は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはこれらの断片を指す。“核酸”は、少なくとも2つの塩基−糖−リン酸塩の組み合わせからなる糸状のものを指す(ポリヌクレオチドは、120単量体単位を超えて含有することによって、オリゴヌクレオチドと区別される)。ヌクレオチドは、核酸重合体の単量体単位である。この用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびオリゴヌクレオチドメッセンジャーRNAの形態であるリボ核酸(RNA)、アンチセンス、プラスミドDNA、プラスミドDNAの一部またはウイルスに由来する遺伝学的材料を包含する。アンチセンスは、DNAおよび/またはRNAの機能を干渉するポリヌクレオチドである。核酸という用語は、少なくとも2つの塩基−糖−リン酸塩の組み合わせからなる糸状のものを指す。天然の核酸は、リン酸塩骨格を有し、人工核酸は、同じ塩基を含有するが、他の種類の骨格を含み得る。ヌクレオチドは、核酸重合体の単量体単位である。この用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を包含する。RNAは、tRNA(転移RNA)、siRNA(短鎖干渉RNA)、snRNA(核内小分子RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、およびリボザイムの形態であり得る。DNAは、プラスミドDNA、ウイルスDNA、直鎖DNA、もしくは染色体DNAまたはこれらの群の誘導体の形態であり得る。さらに、DNAおよびRNAのこれらの形態は、1本鎖、2本鎖、3本鎖または4本鎖であり得る。また、この用語は、PNA(ペプチド核酸)、siNA(短鎖干渉核酸)、ホスホロチオネート、および未処理の核酸のリン酸塩骨格の他の変異体を包含する。
【0042】
本明細書において使用されるとき、用語“ヌクレオチドから作られる薬学的因子”または“ヌクレオチドから作られる医薬品”は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたは核酸を包含する薬学的因子または医薬品を指す。
【0043】
“患者”または“対象”または“個体”は、動物(哺乳類、好ましくはヒトが挙げられる)を指す。
【0044】
本明細書において使用されるとき、“薬学的因子”または“活性因子”または“薬物”は、患者に対して好適に投与された場合に所望の治療効果を誘導可能な、あらゆる化学的もしくは生物学的な物質、化合物または組成物を指す。いくつかの薬物は、インビボにおいて薬学的活性を有する代謝物に転換される、不活性な形態の固体である。本発明の目的から、用語“薬学的因子”、“活性因子”および“薬物”は、不活性な薬物および活性な代謝物を包含する。
【0045】
用語“薬学的有効投与量、薬学的有効量、治療有効投与量または治療有効量”は、所望の生物学的結果を誘導するために十分な投与量のレベルを指す。その結果は、薬学的因子の送達、疾患もしくは生体系のあらゆる他の所望の変質の徴候、症状または原因の緩和であり得、かつ活性物の実際の量は、患者の身体的状態、処置される病気の進行などに依存する。
【0046】
本明細書において使用されるとき、用語“ペプチド類似物”は、保存的アミノ酸置換によってか、またはペプチドの生物学的活性を破壊しない位置にある1つ以上非保存的なアミノ酸置換、アミノ酸欠失、もしくはアミノ酸挿入によってのみ未処置のペプチドとアミノ酸配列が異なるペプチドを指す。上記保存的アミノ酸置換は、例えば、LeuのValへの置換、またはArgのLysへの置換などである。上記生物学的活性は、この場合、ペプチドの融合誘導特性である。また、本明細書において使用されるとき。ペプチド類似物は、その配列の一部またはすべてとして、1つ以上のアミノ酸類似物、アミノ酸の構造を模倣する構造、および/またはペプチドもしくは他のペプチド類似物以外の分子に見られる天然のアミノ酸を包含し得る。
【0047】
本明細書において使用されるとき、用語“プロサポシン誘導体化タンパク質およびプロサポシン誘導体化ポリペプチド”は、これらに限定されないが、天然に生じるサポシン A、B、CおよびDを包含する。この用語は、類似もしくは実質的に類似の生物学的活性を有する、合成サポシン誘導体化タンパク質および合成サポシン誘導体化ペプチドおよびペプチド類似物をさらに包含する。当該生物学的活性は、例えば、膜構造を組織化する膜相互作用、脂質と結合する膜相互作用および転写機能、脂質提示、膜再構成、膜固着などである。サポシン Cおよびそれらから誘導体されたポリペプチドは、本発明の1つの実施形態において使用され得る。この用語は、本明細書に記載されているか、および/または当該技術において公知であるH1、H2、H3、H4またはH5断片、ならびに生物学的に活性なこれらに対する等価物といった断片をさらに包含し得る。
【0048】
用語“短鎖脂質”は、4、5、6、7、8、9、10、11または12の炭素鎖長を有する脂質を指す。1つの実施形態において、炭素鎖長は6、7、8、9または10である。1つの実施形態において、炭素鎖長は6、7または8である。負に帯電した短鎖脂質の例は、ウェブサイトwww.avantilipids.comにおいて入手可能である。本発明と共に使用され得る短鎖脂質の例としては、これらに限定されないが、06:0 PS(DHPS)1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);08:0 PS 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−L−セリン](ナトリウム塩);03:0 PC 1,2−ジプロピオニル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;04:0 PC 1,2−ジブチロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;05:0 PC 1,2−ジバレロイル−sn−グリセロ− 3−ホスホコリン;06:0 PC(DHPC)1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;07:0 PC 1,2−ジヘプタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;08:0 PC 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;09:0 PC 1,2−ジノナノイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン;06:0 PG 1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩);08:0 PG 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−[ホスホ−rac−(1−グリセロール)](ナトリウム塩);06:0 PA 1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3 −ホスフェート(1ナトリウム塩);08:0 PA 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ− 3−ホスフェート(1ナトリウム塩);06:0 PE 1,2−ジヘキサノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン;08:0 PE 1,2−ジオクタノイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミンが挙げられる。
【0049】
本明細書において使用されるとき、用語“短鎖干渉核酸”、“siNA”、“短鎖干渉RNA”、“siRNA”、“短鎖干渉核酸分子”、“短鎖干渉オリゴヌクレオチド分子”、または“化学修飾短鎖干渉核酸分子”は、例えば配列特異的な様式においてRNA干渉“RNAi”または遺伝子抑制を媒介することによって、遺伝子発現またはウイルス複製を阻害できるか、または下方制御できる、あらゆる核酸分子を指す。例示的な実施形態の範囲において、siNAは、自己相補的なセンス領域およびアンチセンス領域を備える2本鎖ポリヌクレオチド分子である。ここで、アンチセンス領域は、発現の下方制御の対象である標的核酸分子におけるヌクレオチド配列、またはそれらの一部に対して相補的である分子配列を備える。そして、センス領域は、上記標的核酸配列またはそれらの一部と一致する(すなわち、実質的に同じ配列である)ヌクレオチド配列を備える。“siNA”は、例えば、短い2本鎖の核酸(または任意により長いこれら前駆体)であり、かつ標的細胞において受容できないほどに毒性である、小分子干渉核酸を意味する。本発明に範囲において有用なsiNAの長さは、ある実施形態において約21〜23bpの長さに最適化される。しかし、有用なsiNA(siRNAが挙げられる)の長さを特に限定するものではない。例えば、siNAは、前駆体の形態において、細胞に対して最初に提示され得る。上記前駆体は、siNAの最終的な形態または処理を受けた形態と実質的に異なる。siNAの最終的な形態または処理を受けた形態は、細胞に存在して、かつ標的細胞に対する送達によってか、または送達の後に遺伝子抑制活性を発揮する。siNAの前駆形態の例としては、前駆配列エレメントが挙げられる。当該前駆配列エレメントは、遺伝子抑制の媒介のために細胞内において活性なsiNAをもたらすための送達時または送達の後に、処理されるか、分解されるか、改変されるか、または切断される。このようにして、ある実施形態において、本発明の範囲内にある有用なsiNAは、前駆型の長さ(例えば、標的細胞内において活性な処理されたsiNAを生じる約100〜20塩基対、50〜100塩基対、または50塩基対未満)を有する。他の実施形態において、有用なsiNAまたはsiNAの前駆体は、約10〜49bp、15〜35bp、または約21〜30bpの長さである。
【0050】
本明細書において使用されるとき、用語“自発的に形成される”は、当該技術において公知の意味を包含することを意図される。ここで、リポソームの形成は、リン脂質の混合物に対して最小に機械的な力を加えること必要とするか、または機械的な力を加えることを必要としない。しかし、機械的な力(例えば、ボルテックスまたは混合を介して)がリポソーム組成物の形成を容易にするために適用され得ることについて理解されるべきである。
【0051】
本明細書において使用されるとき、用語“安定な”または“安定化された”は、小胞が分解(例えば、小胞構造または封入された気体または気体の前駆体の損失が挙げられる)に対して、有益な期間にわたって実質的に耐性であることを意味する。典型的に、本発明に採用される小胞は、好ましい有効期間を有しており、通常の環境条件において少なくとも2〜3週間にわたって元の構成物のうち少なくとも約90%の体積がしばしば残存する。好ましい形態において、小胞は、少なくとも約1ヶ月、好ましくは少なくとも約2ヶ月、より好ましくは少なくとも約6ヶ月、より一層好ましくは少なくとも約18ヶ月、その上さらに好ましくは約3年以下にわたって好ましく安定である。また、本明細書に記載の小胞(気体および気体の前駆体が充填された小胞)は、悪条件(例えば、通常の環境条件において受ける温度および圧力より高いか、または低い温度および圧力)においてさえ安定である。
【0052】
“小胞”は、1つ以上の内部空間を形成する1つ以上の壁または膜の存在を特徴とする球状の物体である。小胞は、例えば脂質(本明細書に記載の種々の脂質が挙げられる)、タンパク質性材料、重合体材料(天然重合体、合成重合体および半合成重合体が挙げられる)、または界面活性剤から調製され得る。好ましい小胞は、脂質から形成される壁または膜を備える小胞である。これらの好ましい小胞において、脂質は、単分子膜または2重膜の形態であり得る。そして、単分子膜または2重膜の脂質は、1つ以上の単分子膜または2重層の形成に使用され得る。2つ以上の単分子膜または2重膜の場合、単分子膜または2重膜は同心であり得る。脂質は、単層小胞(1つの単分子膜または2重膜を備える)、オリゴラメラー小胞(約2または約3つの単分子膜または2重膜を備える)または多層小胞(約3つ以上の単分子膜または2重膜を備える)の形成に使用され得る。同様に、タンパク質または重合体から調製された小胞は、1つ以上の同心の壁または膜を備え得る。タンパク質または重合体から調製された小胞の壁または膜は、実質的に安定(均一)であり得るか、またはそれらは多孔性または半孔性であり得る。本明細書に記載の小胞としては、リポソーム、ミセル、気泡、超微粒気泡、微粒子、脂質−、重合体−、タンパク質−および/または界面活性剤−被覆気泡、超微粒気泡および/または微粒子、マイクロバルーン、エーロゲル、ならびに包接体結合小胞などと通常に呼ばれる物質が挙げられる。小胞の内部空間は、液体(例えば、水性溶液が挙げられる)気体、気体の前駆体、および/または固体材料もしくは溶液材料(例えば、所望の標的リガンドおよび/または生物活性因子が挙げられる)を用いて充填され得る。
【0053】
(詳細)
本開示の対象は、単層のリン脂質小胞に一般的に関する。当該単層のリン脂質小胞は、例えば、選択されたリン脂質と水性溶液の組み合わせによって自発的に形成され得るリポソームである。小胞は、容易に形成され、安定であり、漏出がなく(すなわち、それらの内容物を放出しない)、かつ広範な大きさに及ぶ。プロサポシン誘導体化タンパク質(例えば、プロサポシン C、および/またはSap CのH1領域およびH2領域)は、リン脂質小胞に組み込まれ得る。本明細書に記載のリン脂質小胞、またはリポソームは、疾患の処置に有用である。脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ペプチドを含有するリポソームは、例えば疾患状態(例えば、がん)の処置において、付加的な薬学的因子の非存在下において治療薬として使用され得る。また、当該リポソームは、特に生物学的膜を通過する送達が有効な場合に、薬学的に活性な因子の送達および投与にさらに使用され得る。
【0054】
簡単に述べると、本発明のリポソームは、1つ以上の陰イオン性の長鎖脂質および1つ以上のプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを、通常に包含する。ここで、脂質の特定の組み合わせはリポソームの自発的な形成を可能にする。
【0055】
1つの実施形態において、リポソームは、1つ以上の陰イオン性の長鎖脂質、1つ以上の短鎖リン脂質、および1つ以上のプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドもしくはこれらの類似物もしくはこれらの誘導体から構成される。
【0056】
さらなる実施形態において、本発明のリポソームは、そのような処置を必要とする個体に対する1つ以上の薬学的因子の送達のために、1つ以上の薬学的因子をさらに備え得る。
【0057】
本明細書に記載のリポソームの製造方法は、1つ以上の乾燥リン脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドもしくはこれらの類似物もしくはこれらの誘導体を準備する工程;混合物を形成するための水性溶液を加える工程;混合物にリポソームを形成させる工程を包含する。
【0058】
代替可能な実施形態において、上記方法は、1つ以上の乾燥リン脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドもしくはこれらの類似物もしくはこれらの誘導体を準備する工程;第1の混合物を形成するために有機溶媒を加える工程;第1の混合物を凍結乾燥する工程;第2の混合物を形成するために第1の混合物に水性溶液を加える工程;第2の混合物にリポソームを形成させる工程を包含し得る。1つ以上の乾燥リン脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質および/または少なくとも1つの短鎖リン脂質を備え得る。プロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドは、サポシン CまたはH1、H2、H3、H4もしくはH5といった断片であり得る。
【0059】
本発明の他の実施形態において、タンパク質−脂質組成物のpHは、酸性である。本発明の他の実施形態において、上記組成物のpHは約6.8〜2の間である。本発明の他の実施形態において、上記組成物のpHは約5.5〜2の間である。本発明の他の実施形態において、上記組成物のpHは約5.5〜3.5の間である。
【0060】
他の実施形態において、乾燥形態のタンパク質および脂質の組成物は酸を用いて処理される。1つの実施形態において、上記酸は酸性緩衝液または有機酸である。他の実施形態において、上記酸は、タンパク質の少なくとも一部をプロトン化するに十分な程度に加えられる。ここで、上記組成物は約5.5〜約2のpHを有する。他の実施形態において、上記酸は、タンパク質を実質的にプロトン化するに十分な程度に加えられる。ここで、上記組成物は約5.5〜約2のpHを有する。
【0061】
さらなる実施形態において、タンパク質の少なくとも一部をプロトン化するに十分な程度の酸を用いて処理されている、タンパク質および脂質の乾燥粉末組成物は、それから実質的に中和される。1つの実施形態において、pHは中性のpH緩衝液を用いて中和される。1つの実施形態において、生じるリポソームの大きさを十分に制御する中性のpH緩衝液を用いて中和される。他の実施形態において、pHは、生じるリポソームの大きさを十分に制御して約200nmの平均直径を有するリポソームを提供する、中性のpH緩衝液を用いて中和される。他の実施形態において、リポソームは50〜350nmの間の平均直径を有する。他の実施形態において、リポソームは150〜250nmの間の平均直径を有する。他の実施形態において、緩衝液が上記組成物に加えられて、約5〜約14、好ましくは約7〜約14、より好ましくは約7〜約12、より一層好ましくは約7〜約10、その上さらに好ましくは約8〜約10の、最終の組成物のpHを提供する。
【0062】
本発明のリポソームおよび関連する方法は、当該リポソームが機械的な力の使用を必要としないような、水性溶液の添加によって自発的に形成され得ることを特徴とする。さらに、生じるリポソームの集団は、1年以上の程度の延長された有効期間を有する。したがって本発明のいくつかの実施形態において、当業者は、試薬および装置における低い資産投資を伴う、リポソームに基づく送達系および処理を容易に提供し得、かつ毒性試薬に対するばくろおよび当該試薬の処理に関わる費用を低減する。
【0063】
(融合誘導タンパク質または融合誘導ポリペプチド)
小さな(〜80アミノ酸の)熱安定性の糖タンパク質のファミリーであるサポシンは、スフィンゴ糖脂質の分解経路における種々のリソソーム酵素のインビボ加水分解活性にとって必須である。Grabowski, G.A., Gatt, S., and Horowitz, M. (1990) Crit. Rev. Biochem. MoI. Biol. 25, 385-414; Furst, W., and Sandhoff, K., (1992) Biochim. Biophys. Acta 1126, 1-16; Kishimoto, Y., Kiraiwa, M., and O'Brien, J.S. (1992) J. Lipid. Res. 33, 1255-1267を参照すればよい。サポシンファミリーの4つの構成要素であるA、B、CおよびDは、単一の前駆体タンパク質であるプロサポシンから、タンパク質分解的に加水分解される。Fujibayashi, S., Kao, F.T., Hones, C, Morse, H., Law, M., and Wenger, D. A. (1985) AmJ. Hum. Genet. 37, 741-748;O'Brien, J.S., Kretz, K.A., Dewji, N., Wenger, D.A., Esch, F., and Fluharty, A.L. (1988) Science 241, 1098-1101;Rorman, E.G., and Grabowski, G.A. (1989) Genomics 5, 486-492;Nakano, T., Sandhoff, K., Stumper, J., Christomanou, H., and Suzuki, K. (1989) J. Biochem. (Tokyo) 105, 152-154;Reiner, O., Dagan, O., and Horowitz, M. (1989) J.Mol.Neurosci. 1, 225-233を参照すればよい。サポシンA、B、CおよびDに関する完全なアミノ酸配列は、遺伝的機構およびプロサポシンのcDNA配列と同様に報告されている。Fujibayashi, S., Kao, F. T., Jones, C, Morse, H., Law, M., and Wenger, D. A. (1985) Am. J. Hum. Genet. 37, 741- 748;O'Brien, J. S., Kretz, K. A., Dewji, N., Wenger, D. A., Esch, E, and Fluharty, A. L. (1988) Science 241, 1098-1101;Rorman, E. G., and Grabowski, G. A. (1989) Genomics5, 486-492を参照すればよい。開始コドンに変異を有するプロサポシンの完全な欠損は、関連するリソソーム加水分解酵素の欠損と共通する、複数のスフィンゴ糖脂質の基質の蓄積を引き起こす。Schnabel, D., Schroder, M., Furst, W., Klien, A., Hurwitz, R., Zenk, T., Weber, J., Harzer, K., Paton, B.C., Poulos, A., Suzuki, K., and Sandhoff, K. (1992) J. Biol. Chem. 267, 3312-3315を参照すればよい。
【0064】
サポシンは、スフィンゴ脂質活性化タンパク質または補酵素と定義されている。サポシンA、B、CおよびDは、完全に保存された6つのシステイン残基を含めて、構造的に約50〜60%の類似性を有する(Furst, W., and Sandhoff, K., (1992) Biochim. Biophys. Acta 1126, 1-16を参照すればよい)。完全に保存された6つのシステイン残基は、配列が同定されている3つの内部ドメインジスルフィド架橋を形成する(Vaccaro, A.M., Salvioli, R., Barca, A., Tatti, M., Ciaffoni, F., Maras, B., Siciliano, R., Zappacosta, F., Amoresano, A., and Pucci, P. (1995) J. Biol. Chem. 270, 9953-9960参照すればよい)。サポシンのすべては、N末端側の半分にある保存された配列と共に1つの糖鎖付加部位を含んでいる。しかし、糖鎖付加は、これらの活性に必須ではない。Qi. X., and Grabowski, G.A. (1998) Biochemistry 37, 11544-11554;Vaccaro, A.M., Ciaffoni, F., Tatti, M., Salvioli, R., Barca, A., Tognozzi, D., and Scerch, C. (1995) J. Biol. Chem. 270, 30576-30580を参照すればよい。さらに、サポシン AはC末端側の半分に第2の糖鎖付加部位を有する。
【0065】
サポシンならびにサポシン様タンパク質およびサポシン様ドメインのすべては、溶液において“サポシンフォールド(saposin fold)”を含む。このフォールドは、3つの保存されたジスルフィド構造および種々の両親媒性ペプチドを特徴とする、複数のαらせんバンドルモチーフである。溶液におけるこの共通するサポシンフォールド構造にもかかわらず、サポシンおよびサポシン様タンパク質は、特定の加水分解酵素によるリソソームのスフィンゴ脂質(SL)およびスフィンゴ糖脂質(GSL)の分解の亢進において、種々のインビボにおける生物学的機能を有する。これらの役割のために、サポシンは、リソソームのスフィンゴ脂質およびスフィンゴ糖脂質の代謝の制御において中心的な位置を占めている。
【0066】
この機能の非存在下において、スフィンゴ糖脂質は脳に蓄積して、ゴーシェ病を引き起こす。Pampols, T.; Pineda, M.; Giros, M. L.; Ferrer, I.; Cusi, V.; Chabas, A.; Sammarti, F. X.; Vanier, M. T.; Christomanou, H. Acta Neuropatol. 1999, 97, 91-97を参照すればよい。スフィンゴ糖脂質(GSL)の蓄積から生じる他の疾患は、リソソームの酵素およびサポシン活性化因子の欠損によっても引き起こされる、異染性白質萎縮症である(Zhang, X. L.; Rafi, M. A.; DeGaIa, G.; Wenger, D. A. Proc NatlAcad Sci USA 1990, 87, 1426-1430; Schnabel, D.; Schroder, M.; Sandhoff, K. FEBS Lett1991, 284, 57-59を参照すればよい)。また、酵素活性における特定の役割だけでなく、Sap Cは、神経突起生成の活性化、ガングリオシドおよびGSLの膜間輸送、脂質抗原提示ならびに膜融合誘導の活性化を行う能力を有する。PS ULVと結合したSap Cの静脈内投与が、蛍光標識リン脂質の中枢神経系への輸送能の証明に使用されていることも注目すべきである。したがって、組み合わせたSap C−PS複合体は、神経疾患および脳疾患の処置に特異的な薬物および遺伝子の新たな送達系に自身を適合させ得る。
【0067】
本発明における使用に好適な融合誘導タンパク質および融合誘導ポリペプチドとしては、これらに限定されないが、サポシンファミリーのタンパク質(例えば、サポシン C)が挙げられる。また、サポシン Cの相同物が含まれる。ここで、当該相同物は、断片が類似または実質的に類似の生物学的活性を有するように、少なくとも80%の配列相同性、または少なくとも90%の配列相同性を有している。サポシン Cをコードする遺伝コードの変質に起因して、100%の配列相同性が本発明の実施にとって必須ではないことは、当業者によって容易に理解される。
【0068】
ペプチドまたはペプチド類似物の例としては、Ser−Asp−Val−Tyr−Cys−Glu−Val−Cys−Glu−Phe−Leu−Val−Lys−Glu−Val−Thr−Lys−Leu−Ile−Asp−Asn−Asn−Lys−Thr−Glu−Lys−Glu−Ile−Leu−Asp−Ala−Phe−Asp−Lys−Met−Cys−Ser−Lys−Leu−Pro(配列番号1);
Val−Tyr−Cys−Glu−Val−Cys−Glu−Phe−Leu−Val−Lys−Glu−Val−Thr−Lys−Leu−Ile−Asp−Asn−Asn−Lys−Thr−Glu−Lys−Glu−Ile−Leu−Asp−Ala−Phe−Asp−Lys−Met−Cys−Ser−Lys−Leu−Pro(配列番号2)、
ならびにこれらの誘導体、類似物、相同物、断片および混合物が挙げられる。
【0069】
また、以下の式:h−u−Cys−Glu−h−Cys−Glu−h−h−h−Lys−Glu−h−u−Lys−h−h−Asp−Asn−Asn−Lys−u−Glu−Lys−Glu−h−h−Asp−h−h−Asp−Lys−h−Cys−u−Lys−h−h
(ここで、hは疎水性アミノ酸(VaI、Leu、Ile、Met、Pro、Phe、およびAlaが挙げられる)であり;かつuは無電荷の極性アミノ酸(Thr、Ser、Tyr、Gly、Gln、およびAsnが挙げられる)である)のポリペプチドが含まれる。
【0070】
ヒトSap Cの機能的ドメインは、図1に示されている。6つのシステイン(太字)およびN−糖鎖付加コンセンサス配列(*)が、表されている。2つのらせん状ドメイン、H1(YCEVCEFLVKEVTKLID)およびH2(EKEILDAFDKMCSKLPK)は、それに応じて表示されている。略語MBDおよびFDは、それぞれ膜結合ドメインおよび融合誘導ドメインを意味する。融合誘導ドメインは、H1ペプチドおよびH2ペプチドを含むSap C分子のアミノ末端側の半分に位置する。Sap Cおよびその2つのらせん状ドメインペプチド(H1およびH2)の、脂質膜の不安定化および再構成に対する影響は、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて試験されている。Sap Cが酸性膜を不安定化および再構成して、膜の表面により厚い“パッチ”を形成でき、最終的に2重膜の分解を導くことについて、AFMによって示されている。また、Sap Cによって生じる膜の不安定化は、曲率の高度な異常が膜の不安定化を促進することを示唆する、異常から始まる。その一方、H1またはH2のいずれも、単独では膜構造に対する有意な影響を有していない。H2は、膜の異常が存在し、かつそれから棒状構造に凝集する場合に、脂質と相互作用する傾向にある。AFMの結果は、Sap CならびにそのH1断片およびH2断片の、支持される膜に対する影響を示す。しかし、小胞の安定性および形態に対するこれらのタンパク質の潜在的な影響は分かっていない。ここで、SANSは、Sap C、H1およびH2の存在および非存在における小胞を性質決定するために使用される。この技術は、小胞の大きさ、形状および多分散性に関する中構造の情報、ならびに膜の厚さに関する微小構造の情報の両方を明らかにする。
【0071】
(リン脂質膜およびリポソームの形成)
リポソームは、同心の脂質2重膜からなる微小小胞であり、かつ本明細書において使用されるとき、球状の2重膜として配列された両親媒性脂質から構成される小さな小胞を指す。リポソームは、構造的に、数百オングストロームから数ミリメートルの大きさを有して、長い管から球状の大きさおよび形状に変動する。全体の形状に関係なく、2重膜は、薄層のそれぞれを隣り合う薄層から分ける水性層を有する密接した同心の薄層として、一般的に組織化されている。小胞の大きさは、直径が約20〜30000nmの範囲内である。標的組織に対するリポソームの特異的な送達は、上記標的組織への治療薬の送達に適したリポソームの大きさを選択することによって達成される。上記標的組織は、例えば、増殖細胞集団、新生組織、炎症性組織、および感染組織である。例えば、180nmの平均直径を有するリポソームは、固形腫瘍に集積せず、140nmの平均直径を有するリポソームは、同じ固形腫瘍の周辺部に集積し、かつ110nmの平均直径を有するリポソームは、固形腫瘍の周辺部および中心部に集積する。
【0072】
通常、リポソームは、脂質の混合物に対して機械的な力を加えることによって形成される。例えば、種々の方法がリポソーム組成物の調製に現在使用されている。当該種々の方法は、例えば、溶媒透析、フレンチプレス、押出(凍結融解を伴うかまたは伴わない)、逆相蒸発、単純な凍結融解、超音波処理、キレート透析、ホモジナイゼーション、溶媒浸出、微小乳化、自発的な形成、溶媒蒸発、溶媒透析、フレンチプレス細胞技術、および制御下における界面活性剤透析などが挙げられる。例えば、Madden et al., Chemistry and Physics of Lipids, 1990を参照すればよい。また、リポソームは、振とうまたはボルテックスを含む種々の処理によって形成され得る。しかし、リポソームが機械的な力の適用を必要とせずに自発的に形成される方法および組成物を提供できることは、付加的な設備および工程が不要であり、これによってこれらの調製に関する時間および費用を低減させるという点において有益である。本発明はこの要求に対処する。
【0073】
低い多分散性を有する単層小胞(ULV)の自発的な形成は、長鎖および短いアシル鎖を含有する3元リン脂質の状態図に見られ得る。例えば、Nieh, M-P.; Harroun, T. A.; Raghunathan; V. A., Glinka; C. J.; J. KatsarasBiophys. J. 2004, 86, 2615-2629; Egelhaaf, S. U.; Schurtenberger, P. Phys. Rev. Lett. 1999, 82, 2804-2807; Nieh, M.-P.; Raghunathan, V. A.; Kline, S. R.; Harroun, T. A.; Huang, C-Y.; Pencer, J.; Katsaras, J. Langmuir2005, 21, 6656-6661を参照すればよい。UVLは、温度を上昇させること(Lesieur, P.; Kiselev, M. A.; Barsukov, L. L; Lombardo, D. J. Appl. Cryst. 2000, 33, 623-627; Nieh, M.-P.; Harroun, T. A.; Raghunathan, V. A.; Glinka, C. J.; Katsaras, J. Phys. Rev. Lett. 2003, 91, 158105を参照すればよい)、または2重膜の円盤状のミセルを希釈すること(V. A., Glinka; C. J.; J. Katsaras Biophys. J. 2004, 86, 2615-2629を参照すればよい)のいずれかによって形成される。ここで、短鎖脂質は、2重膜の円盤の高い曲率の周縁に集まって、その端部のエネルギーを最小にする。円盤状の2重膜のミセルからULVへの転移は、長鎖脂質のゲル−液状結晶に対応する温度(主転移温度)において生じる。当該転移は、長鎖脂質と短鎖脂質との間の上昇した混和性レベルが円盤状の端部から短鎖脂質を分散させることを意味する。円盤状の端部からの短鎖脂質の分散が、線張力を増加させ、かつ剛性の係数を減少させる。この一連の現象は、単分散したULVの形成を生じる。Fromherz, P. Chem. Phys. Lett. 1983, 94, 259-266を参照すればよい。これらのULVは、延長された期間(すなわち、数週間)にわたって安定である(Nieh, M.-P.; Harroun, T. A.; Raghunathan, V. A.; Glinka, C. J.; Katsaras, J. Phys. Rev. Lett. 2003, 91, 158105を参照すればよい)。よって、これらのULVは、このため薬物担体として良好な候補物と考えられる。
【0074】
(リポソームを自発的に形成する組成物および方法)
リポソーム形成の1つの方法は、長鎖脂質および短鎖脂質の使用に関する。ここで、両方の脂質の種は、少量の酸性の長鎖脂質(例えば、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG))を用いてドープされた2飽和の両性イオンリン脂質である。本開示において、リポソームの自発的な形成の1つの実施形態に係る形態が記載されている。この実施形態において、リポソームの自発的な形成に使用される脂質の混合物は、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびジヘキサノイルホスファチジルコリン(それぞれDPPCおよびDHPC)、ならびに酸性の長鎖脂質であるジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)を包含する。しかし、本発明の範囲内における好適な他の実施形態に到達するために、種々の変更および置換がこの組み合わせに対してなされ得ることは、当業者にとって容易に理解される。この混合物は、少なくとも1つのプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドまたはこれらの変異体もしくは類似物をさらに含む。
【0075】
自発的に形成されるリポソームは、以下の工程:1)乾燥脂質および少なくとも1つのプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドの混合物を準備する工程;2)上記混合物に水性溶液を加える工程;3)上記混合物にリポソームを形成させる工程の実施によってなされ得る。ここで、上記リポソームは、安定であり、かつ当該リポソームの形成のために機械的な力を加える必要がない。1つの実施形態において、上記脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質を包含する。1つの実施形態において、上記脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖脂質および少なくとも1つの短鎖リン脂質を包含する。プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドは、サポシン C(配列番号2)、H1(配列番号3)、H2(配列番号4)、H3(配列番号5)、H4(配列番号6)、H5(配列番号7)およびこれらの混合物からなる群から選択され得る。プロサポシンは配列番号1に表されている。プロサポシン誘導体化タンパク質は、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5およびこれらの混合物の、類似物または誘導体をさらに包含する。
【0076】
水性溶液は、生理学的に適合可能なあらゆる溶液であり得る。さらに、当該溶液は、リポソームが自発的に形成するように、脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドの可溶化能を有する。水性溶液の非限定的な例としては、例えば、水、脱イオン水、生理食塩水、およびリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)が挙げられる。水性溶液を加えた状態におけるタンパク質および脂質の総モル濃度は、約300μMまたは約400μMまたは約500μMまたは約1000μM以下である。水性溶液のpHは、約7.4または約7.0〜7.6、または約6.8〜7.8である。
【0077】
水性溶液の添加後に、脂質およびタンパク質の混合物は、自発的にリポソームを形成する。しかし、リポソームの形成を早めるかまたはそうでなければ容易にするために、上記混合物がボルテックスされ得るか、または混合され得ることについて、当業者は容易に理解する。
【0078】
代替可能な実施形態において、上記方法は、1つ以上の乾燥脂質およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを準備する工程;第1の混合物の形成のために有機溶媒を加える工程;第1の混合物を凍結乾燥する工程;第2の混合物を形成するために第1の混合物に水性溶液を加える工程;第2の混合物にリポソームを形成させる工程を包含し得る。1つ以上の上記乾燥脂質は、少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質および/または少なくとも1つの短鎖リン脂質を包含し得る。プロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドは、サポシン CまたはH1、H2、H3、H4もしくはH5といった断片であり得る。この実施形態において、有機溶媒は、あらゆる好適な有機溶媒(例えば、t−ブタノール(好ましくは)、イソプロパノール、1−プロパノールエタノール、エチルエーテル、メタノール、またはDMSO)であり得る。有機溶媒は、凍結乾燥の前における最終的な第1の混合物の約80〜90%または約70〜95%または約50〜95%を構成する。第1の混合物は、リポソームを形成するために使用される水性溶液の添加までに、数ヶ月または数年にわたって保存され得る。
【0079】
双性イオン脂質のみではなくて、DOPSといった負に帯電した長鎖脂質の使用は、サポシン Cもしくはその断片(例えば、H1ペプチドおよびH2ペプチド)と酸性脂質の凝集体との間の相互作用を最適化すると考えられる。そして、負に帯電した長鎖脂質の使用は、リポソームの自発的な形成にとって特異に適合され、疾患の処置用のリポソームを形成する新規かつ有用な方法を提供する。代替可能な実施形態において、負に帯電した長鎖脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジル−グリセロール(DOPG)、1,2−ジオレオイル−ホスファチジルイノシトール(DOPI)および1,2−ジオレオイル−ホスファチジン酸(DOPA)、またはこれらの組み合わせから選択され得る。本発明の負に帯電した長鎖脂質は、約14〜約24の炭素、または約18〜約20の炭素の長さの炭素鎖を有する、あらゆる長鎖リン脂質であり得る。脂質の網羅的なリストは、www.avantilipids.comにおいて入手可能である。当業者は、これらの脂質が本発明において使用され得ることを十分に理解する。長鎖脂質および短鎖脂質のあらゆる組み合わせが使用され得ると同時に、いくつかの組み合わせはより安定なリポソームを生じる。例えば、本発明を限定することを意図しないが、以下のものは、リポソームが形成される組成物の選択肢の指針となり得る。約20〜約24の炭素の長さの長鎖が使用される場合に、約6〜約8の長さを有する短鎖脂質は、リポソームの安定性を向上させるために使用され得る。約14〜約18の長さの長鎖が使用される場合に、約6〜約7の長さを有する短鎖脂質は、リポソームの安定性を向上させるために使用され得る。脂質のこれらの組み合わせがより安定なリポソームを生じるが、他の組み合わせは、首尾よく使用され得、かつ否定されることを意図されない。
【0080】
安定なULV形成にとっての可能性は、本発明に記載のような短鎖脂質および長鎖脂質の添加を介してさらに最大化される。短鎖脂質は、当業者によって理解されるようなあらゆる好適な短鎖脂質であり得る。1つの実施形態において、例えば、短鎖脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)といった無電荷の短鎖ホスファチジルコリン脂質である。また、短鎖脂質は、DHPSといった短鎖ホスファチジルセリン脂質であり得る。本明細書に記載のような短鎖脂質の添加に伴って、形成されるリポソームの集団は、一般的に単分散している。短鎖脂質なしでは、上記集団は、多分散しており、生じるリポソームの大きさおよび形状に変動を有する。短鎖リン脂質の添加の結果として、単分散した集団を得ることが可能であり、生じる調製物の薬物動態および生体利用効率の制御能を向上させる。
【0081】
1つの特定の実施形態において、サポシン−Cリポソームを合成するために使用される脂質混合物は、負に帯電した脂質ジオレオイルホスファチジル−セリン(DOPS)を包含する。ここで、無電荷の長鎖脂質ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)および無電荷の短鎖脂質ジヘキサノイルホスファチジルコリン(DHPC)の少量が加えられる。この特定の実施形態において、[DOPS]:[DPPC]のモル比は、([DPPC]+[DOPS])/[DHPC]=約4という条件において、1:1〜10:1の範囲内である。代替可能な実施形態において、DHPCはDHPSに置き換えられるか、DHPSと組み合わせられる。
【0082】
電荷および長さが一致する当該技術において公知のあらゆる脂質が、使用され得る。サポシン Cの少量を用いてドープされた脂質のこの組成物を含有するサンプルは、不安定化しない。しかし、高濃度のサポシン Cを伴うと、大きな凝集体がこの系に使用する溶液から沈殿し得る。これは膜の不安定化を意味する。DOPS/DPPC/DHPCサンプルは24ヶ月にわたって安定である。つまり、無電荷の長鎖脂質および短鎖脂質の添加が、凝集体の安定性を増強することを示している。しかし、長鎖脂質および短鎖脂質のあらゆる組み合わせが、本明細書に記載のような発明にしたがって使用され得る。表1は、本発明の方法の実施に使用され得る長鎖脂質および短鎖脂質の非限定的な例を示す。
【0083】
【表1】
【0084】
さらに、脂質鎖における飽和炭化水素の存在または非存在は、リポソームの安定性に影響を与える。例えば、約18以上の鎖長を有する脂質が使用され、リン脂質は飽和化または不飽和化、好ましくは不飽和化され得る。約14〜約16の炭素を有する脂質といったより短い長鎖脂質に関して、脂質は不飽和化され得るが、飽和脂質の利用によって本発明の性能が向上される。
【0085】
脂質の比率の非限定的な例は以下の通りである。組成物における選択された負のリン脂質に対する選択された無電荷のリン脂質のモル比は、約1対10(約10%の無電荷のリン脂質)、または約1対5(約20%の無電荷のリン脂質)、または約1対1(約50%の無電荷のリン脂質)である。組成物における選択された短鎖脂質に対する選択された長鎖脂質のモル比は、約4対1(約20%の短鎖)であり得、かつ約10対1(10%の短鎖)〜約3対1(約33%の短鎖)であり得る。
【0086】
1つの実施形態における長鎖対短鎖の比率の一例は、[無電荷の長鎖脂質]+[酸性の長鎖脂質]/[無電荷の短鎖脂質]または[陰イオン性の短鎖脂質]=約4である。他の例としての1つの実施形態において、混合物におけるDOPS対DPPCのモル比は、([DPPC]+[DOPS])/DHPC=約4という条件において、約10〜8対1、または約7〜6対1、または約5〜3対1または約1〜2対1である。他の実施形態において、[無電荷の長鎖脂質]+[酸性の長鎖脂質]/[無電荷の短鎖脂質または陰イオン性の短鎖脂質]は、約2〜約10または約3〜約8または約4〜約7であり得る。本発明における使用に適した脂質は、当該技術に公知のあらゆる脂質、またはwww.avantilipids.comにおいて提供されるようなあらゆる脂質から選択され得る。
【0087】
本発明のリポソームは、1つ以上の薬学的因子および/または造影剤をさらに備え得る。1つ以上の薬学的因子および/または造影剤は、水性の内部もしくは2重膜の間に捕捉されているか、または2重膜内にある疎水性分子を捕捉することによって捕捉されている。種々の技術が、選択された宿主組織に対して封入された薬物を標的化し、かつ感受性組織から離すためのリポソームを使用することに採用され得る。これらの技術としては、リポソームの大きさ、それらの正味の表面電荷、およびそれらの投与経路を操作することが挙げられる。
【0088】
また、本発明のリポソームは、受動輸送経路によって送達され得る。リポソームの受動輸送は、種々の投与経路(例えば、静脈内、皮下、筋肉内および局所)の利用に関する。いずれの経路もリポソームの局在に差異を生じる。
【0089】
また、本発明のリポソームは、血液脳関門を越える治療薬または造影剤の送達に理想的である。本発明は、治療薬を含有するリポソームがCNSにこれらの薬剤を送達するために使用され得る方法に関する。ここで、薬剤は、上述の脂質およびサポシン C、プロサポシンもしくはサポシンの変異体を包含するリポソーム内に含まれている。治療薬を含有するリポソームは、当該技術において一般的に容認される方法を用いて、IV注入、IM注入、経鼻送達、またはあらゆる他の経血管薬物送達法を介して投与され得る。
【0090】
理論によって限定されることを意図せずに、サポシン媒介膜融合がどのように生じるかについての1つの考え得る機序は、タンパク質構造変化を介するものである。プロサポシン誘導体化タンパク質に属するサポシン Aおよびサポシン Cは、高度なアミノ酸同一性/類似性を示す。両方のタンパク質は、両親媒性のらせん状バンドルモチーフに折りたたまれることが計算的に予測されている。サポシンフォールドは、一般的に、5つの両親媒性αらせんを有する通常の超2次構造である。5つの両親媒性αらせんは、単一の球状ドメインに折りたたまれ、かつ両方のタンパク質に共通している。1つの実施形態において、折りたたみは、アミノ末端における中心に位置するらせんに沿っている。らせん2および3は一方の側からくるまれ、かつらせん4および5は他方の側からくるまれている。このフォールドが、膜相互作用にとっての接合点を提供し得る。
【0091】
サポシン媒介の陰イオン性のリン脂質膜との膜融合に関する機序は、2段階からなる過程であると考えられる。第1の段階において、正に帯電したアミノ酸(塩基の形態)であるサポシンのリジン(Lys)およびアルギニン(Arg)と、負に帯電したリン脂質膜との間の静電相互作用が、これらの2つの種の間に結合を生じる(図1を参照すればよい)。第2の段階において、2つの隣接するサポシンタンパク質のらせんの間における分子内疎水性相互作用が、2つの膜を、膜の融合を生じさせるために十分密接に近接した状態にする(図2を参照すればよい)。
【0092】
このため、本発明によれば、サポシン、特にサポシン Cの脂質との結合は、約5.5以下のpH範囲を一般的に必要とする。これは、膜とサポシン Cの最初の結合が、サポシン Cの正に帯電した塩基性アミノ酸残基の陰イオン性膜との静電相互作用を介して生じるからである。このため、静電相互作用を多くもたらすために、それらのプロトン化形態にある塩基性アミノ酸を有することが非常に好ましい。これは、脂質混合物とプロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを混合する前に、プロサポシン誘導体化タンパク質またはプロサポシン誘導体化ポリペプチドに対する酸性溶液の添加によって達成され得る。
【0093】
代替可能に、サポシンファミリーのタンパク質から誘導される、関連融合タンパク質および関連融合ペプチドは、この低pH範囲の制限を有しないものがあり得る。このため、他の膜融合タンパク質および膜融合ペプチドのpH範囲は、生理学的pH(約7のpH)〜より低いpHの範囲にあり得る。
【0094】
(DOPS/DPPC/DHPCリポソームの構造解析)
粉末の形態のDOPS(負に帯電した長鎖脂質)、DPPC(無電荷の長鎖脂質)およびDHPC(無電荷の短鎖脂質)(Avanti Polar Lipids、アラバスター、ALから入手可能である)は、さらに精製することなく使用される。DLS測定に関して、[DOPS]:[DPPC]のモル比は、すべてのサンプルに関して([DPPC]+[DOPS])/[DHPC]=4の条件において、1:1〜10:1の範囲内である。乾燥脂質混合物は、ろ過した超純水(Millipore EASYpure UV)に、10質量%の総脂質濃度において溶解され、かつボルテックスおよび4〜50℃の温度循環によって混合される。
【0095】
タンパク質を含有するリポソームの調製に関して、Sap Cは、IPTG誘導化pET系を用いたE. coilにおいて過剰発現され、かつHisタグタンパク質は、ニッケルカラムから溶出された。透析の後に、HPLCクロマトグラフィーによって以下のようにさらに精製された。C4逆相カラムが10分間に渡って0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を用いて平衡化された。それから、タンパク質は、0.1%TFAのアセトニトリル溶液の直線勾配(0〜100%)において60分に渡って以上溶出された。タンパク質の主要なピークが回収され、かつ凍結乾燥された。同時にタンパク質濃度が上述のように測定された。H1ペプチド(YCEVCEFLVKEVTKLID)およびH2ペプチド(EKEILDAFDKMCSKLPK)は、SynPep株式会社(カリフォルニア、USA)によって合成され、かつ1.5mg/mLの濃度においてD2Oに溶解された。[DOPS]/[DPPC]=10および([DPPC]+[DOPS])/DHPC=4の条件を有する0.1質量%の脂質溶液は、それから体積比12:1の2つのペプチド溶液(1.5mg/mL)、および1:1の体積比を有するSap C溶液に加えられた。これによって、膜の不安定化を誘導するために必要とされるSap Cの濃度よりも高い、62.5μMの最終ペプチド(またはSap C)濃度になった([脂質]/[ペプチド]のモル比=22/1)。また、6.25μMのSap C([脂質]/[Sap C]=220/1)のみを含有するサンプルが、比較のために調製された。
【0096】
Sap C−ULV複合体の構築において、DOPS/DPPC/DHPC ULV系に対する組成物の影響は、Sap C−膜相互作用の研究に好適な系として特徴づけされた。特に、この脂質混合物の凝集体の形態は、動的光散乱(DLS)、透過型電子顕微鏡(TEM)およびSANS測定を介して、決定された。それから、SANSは、これらのULVに対するH1、H2およびSap Cの影響を特徴付けるために使用された。
【0097】
ペプチドの非存在下における凝集体に関して、DLSおよびTEMの結果によって、200nm以下および500nm未満のオーダーの直径を有するULVの2モードの集合が存在することが確かめられる。これは、扁平な小胞および3軸楕円の殻に関する、形態要素の組み合わせを用いたSANSデータによく一致する。SANSデータは、Sap Cが高濃度(62.5μM)においてULVの凝集を促進する一方において、低濃度(6.25μM)においてULV構造が乱されないことを明らかにする。H1およびH2の両方は膜厚のわずかな減少を誘導する。H1ペプチドは、ULVの大きさまたはそれらのサイズ分布の変動を示さない。その一方で、H2ペプチドは、存在する2つのULV凝集体の間における平衡状態を変動させる。定性的に、これらの結果は以前のAFMの発見と一致する。
【0098】
生じるリポソームの構造および安定性を決定するために、はじめにホモジナイズした10質量%の溶液が5、2、1、0.5、0.1質量%のサンプルに、漸次的に希釈される。DLS測定の前に、0.1質量%のストック脂質サンプルが、5、50および200倍に希釈され、かつN4+粒子測定器(Coulter、Miami、FL)を用いて分析される。この方法を用いて、系の希釈が粒子のサイズに影響しないことが確認された。SANS実験に関して、同じサンプル調製手順が[DOPS]/[DPPC]=10のサンプルに適用された。サンプル調製手順は、0.5質量%の総脂質濃度を有するサンプルを得るために、H2Oの代わりにD2O(99.99%、Chalk River Laboratory、Shalk River、ON)が使用された点を除いて同じである。それから、0.5質量%のサンプルは、酸性緩衝液を用いて、0.1および0.05質量%の混合物にさらに希釈された。上記酸性緩衝液は、同じ体積の0.1Nの酢酸ナトリウム(NaAc)および0.1Nの酢酸(HAc)から構成される。生じた溶液は、D2Oにおいて4.78±0.02のpHを有し、かつD2Oを用いた12倍希釈の間、安定であった。
【0099】
SANS実験は、米国標準技術局(NIST)中性子研究センター(NCNR、Gaithersburg、Maryland、USA)に設置されている30m NG7 SANS機器において実施された。8.09オングストロームの波長(λ)の中性子、中性子屈折光学および長いサンプル−検出器間の距離(SDD=15.3m)を用いることによって、最も低い散乱ベクトル[q=4π/λ・sin(θ/2)、ここでθは散乱角である]に達した。また、2つの他のSDD(5mおよび1m)が使用された。他の2つのSDDを使用することによって、3つのすべてのSDDに関して、0.002〜0.35オングストロームの範囲内の組み合わせたqを包含する。未加工の2次元データ検出器のバックグラウンド、細胞なしの散乱およびサンプル透過について補正された。それから、補正されデータは、光線の中心について環状に平均化されて、通常の1次元データを生じた。それから、これらのデータは、公知の入射光線放射束を用いて、絶対強度スケール(absolute intensity scale)に関して見積もられた。非干渉性のプラトーが、10〜20高いqのデータ点の強度を平均化すること、および低減したデータを引くことによって決定された。
【0100】
ULVの大きさは、N4+サブミクロン粒子粒径分析器(Coulter、Miami、FL)を用いた、陽子相関分光分析23、24によって決定された。大きな粒子が、20〜800nmの間の粒径を有して多分散した状態において見られた。ANOVA分析は、統計学的有意性および標準偏差を表すエラーバーを決定するために使用された。
【0101】
TEM画像は、80kVの加速電圧において運転させたヒタチTEM(H−7600、日立、日本)を用いて撮影された。各サンプルの液滴は、支持フォルムバール膜(support formvar film)に覆われたニッケル網(200目、30〜75nmの範囲の厚さ、Electron Microscopy Science、PA)上に載せられた。網は、TEM分析の前に2時間室温において、ろ紙上に置かれた。バックグラウンドが高倍率において最適化されると同時に、所望の領域が低倍率(50〜1000倍)に設定された。単一の小胞は、最大50000万倍において観察され得た。TEM顕微鏡写真は、適切な画像収集ソフトウェアを有する、デュアルAMT CCDカメラ(2k×2k、16ビット)を用いて撮影された。
【0102】
Sap Cが、酸性条件下の負に帯電した不飽和脂質(すなわち、DOPS)の存在下においてのみ機能するので23、この系は、主にDOPSならびに少量のDPPCおよびDHPCから構成される。種々の[DOPS]/[DPPC]モル比のサンプル(表1)のDLSの結果は、[DOPS]/[DPPC]=10のサンプルのみが2モードのサイズ分布を示す一方において、残りのサンプルが少なくとも3つの集団を含有することを示している。この理由から、[DOPS]/[DPPC]=10のサンプルのみが、これらのULVの構造に対するSap C、H1およびH2の影響をさらに調べるために使用された。また、DLSのデータは、DOPS/DPPC/DHPCサンプルの構造が12ヶ月に渡って安定であることを示している(表2)。これは、DPPCおよびDHPCの添加が、DOPSを超音波処理することと比べて、これらの凝集体の安定性を劇的に増強するという証拠であり、かつこれらが実用され得る可能性を提供する。
【0103】
DLSの結果から予測されるようなULVの見かけの大きさ、または流体力学的半径は、ULVが球状であるという仮定に基づいていることを留意すべきである。長球の小胞または扁平な小胞に関する文献29に詳細が論じられているように、小胞の軸率の正確な決定には、DLSおよび静的光散乱(SLS)のそれぞれによる、小胞の流体力学的半径および回転の半径の測定が必要である。楕円小胞に関して、見かけの流体力学的半径は、扁平な小胞または長球の小胞のそれぞれについてのULVの大きさまたは表面積を、多少(<10%)の過小評価または過大評価される。
【0104】
【表2】
【0105】
図2は、0.1質量%の脂質混合物([DOPS]/[DPPC]=10)、ならびに酢酸D2O緩衝液における、H1およびH2をドープした脂質混合物のSANSデータを示している。低濃度(6.25μM)のSap Cは、ULVの大きさまたはそれらの膜構造の乱れを示さない(非ドープの混合物と同様である)。高濃度(62.5μM)のSap Cの場合には、Sap C添加の脂質系は、溶液から沈殿する(SANSに受け容れられない)大きな凝集体を形成する。この観察はSap Cが膜を不安定化する23というこれまでの研究と一致する。このため、われわれは、小胞の構造に対するH1およびH2の影響にのみ焦点を絞っている。0.1%のDOPS/DPPC/DHPC(△)、H1をドープした混合物(□)、およびH2をドープした混合物(○)のSANSデータが、図2に示されている。実線はデータに対する最良適合を表している。矢印によって指し示されている2つの広いピークは、系にある相関長の結果である。点線および長点の線のそれぞれは、0.1%の非ドープ系を適合させるために使用された、3軸楕円殻モデルおよび扁平殻モデルの結果である。図2に示されているSap C非ドープのサンプルの散乱曲線は、それらが2つの広いピークを含むという通常の特徴を共有している。0.01オングストローム−1未満のqおよび0.03オングストローム−1未満のqの間に中心を有する2つの広いピークは、系に2つの相関長が存在することを示している。また、これらのピークの由来をより理解するために、0.05質量%の単一の脂質混合物が試験された。0.05質量%のサンプルのSANSデータは、0.1質量%のサンプルデータと重ねるために縮小され得る。これによって、2つの広いピークが凝集体の形態に固有のものであり、かつ粒子間の相互作用の結果ではないことを示している。
【0106】
q>0.06オングストローム−1について、3つ1組のデータの間において強度の違いは見られない。改変したギニエプロットの分析30(クラツキ−ポロッドプロットとしても知られる)は、3つのサンプルのすべてに適用された。ここで、ln(I・q2)は、5×10−3〜2.5×10−2オングストローム−2の範囲にあるq2の条件における直線関係を有する。これは層状構造の存在を示している。図3は、0.1質量%のDOPS/DPPC/DHPC混合物(○)、H1をドープした系(△)、およびH2をドープした系(□)に関する改変したギニエプロットを示している。線はデータの最良適合を表している。それから、2重膜の厚さは、ルート12を掛けた傾斜の平方根から得られる。最良適合の結果は、非ドープの混合物が最も厚い(37.7±0.7オングストローム)2重膜を形成する一方において、H1をドープした2重膜およびH2をドープした2重膜がわずかに薄い(それぞれ35.8±0.8、36.2±0.6オングストローム)ことを示している。
【0107】
q≦0.06オングストローム−1について、H1をドープした系の散乱曲線は、H2をドープした散乱曲線と比べて、非ドープの脂質混合物の散乱曲線と類似している。つまり、これは、H1ペプチドを用いた膜のドープによって凝集体の形態に有意な変化が起こらないことを示している。また、この観察は以前のAFMの報告と一致している。当該報告において、H1は、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルセリン(POPS)に対して影響しないことが見出された。H2をドープしたサンプルのSANSデータの場合には、単一の脂質混合物のSANSデータとの定性的な差が、qの低い領域(q<0.003オングストローム−1)の傾斜、ならびに2つのピークの幅および強度に観察された。
【0108】
3つのサンプルのすべてのTEM画像が得られ、かつ形態の2つの集団を有する粒子が観察された。図4は、DOPS/DPPC/DHPC混合物(AおよびB)、およびH1をドープした混合物(CおよびD)、およびH2をドープした混合物の代表的なTEM画像を示している。3軸楕円の小胞(すなわち、A、CおよびE)は、すべてが同様の大きさ(150〜200nm×600〜800nmの投影断面積)である。このとき、3軸楕円の小胞は、約10〜150nmの投影半径を有する扁平小胞である。これらの容積は、層状3軸楕円小胞に関する以下の数学モデルに従って、SANSデータの最良適合の結果と一致する。
【0109】
3軸楕円の単層小胞に関するモデルは、3つの主軸、acore、bcoreおよびccore(acore≦bcore≦ccore)に沿った異なる中心長を有する楕円殻として表される。軸、ashell、bshellおよびcshellに沿った殻の長さは、それぞれ(acore+l)、(bcore+l)および(ccore+l)と定義される(ここでlは2重膜の厚さである)。この近似は、2重膜の通常の傾向に従って、ULV全体に渡って一定の2重膜の厚さを仮定していないことに留意すべきである。したがって、考えられるすべての方向に渡って平均化された3軸楕円殻に関する形成因子Ptriax(q)は、
【0110】
【数1】
【0111】
【数2】
として表され得る。ここで、j1は、1次楕円ベッセル関数であり、
【0112】
【数3】
であり、uiは、
【0113】
【数4】
と定義され(iはshellまたはcoreを表す)、かつVtotalおよびVcoreのそれぞれは、楕円体の全容積および中心部の容積である。ρD2Oおよびρlipidは、D2Oおよび脂質の散乱長密度を意味する。
【0114】
扁平な楕円体小胞に関して、形成因子Poblate(q)は、ccore=bcoreにすることによって得ることができる。したがって、uiは、
【0115】
【数5】
になる。さらに、シュルツ関数f(a)は、以下の式
【0116】
【数6】
(ここで、<a>はaの平均である)に示されるような短軸(すなわち、acore)の分布を説明するために使用される。pは、ρ/<a>と定義される多分散度である。ここで、ρはaの標準偏差である。pとして適当な値は、0〜1の範囲内である45。ガンマ関数Γ(1/p2)は、シュルツ関数の積分を標準化するために使用される。等式A−3は、
【0117】
【数7】
となって等式A−1内に入れられる。
【0118】
次に、相互作用しない小胞(扁平な楕円体および3軸楕円体)にとっての総散乱強度は、
【0119】
【数8】
と記載され得る。ここで、ΦlipおよびΦoblateのそれぞれは、溶液における脂質および扁平殻の総量の体積分率である。適合手法は、IGORプログラミングコードに記載されている。IGORプログラミングコードは、NIST SANSグループによって開発されたデータ分析パッケージから修正されている。
【0120】
3軸楕円体の単層2重膜小胞にとっての提唱モデルが図5に示されている。親水性領域(頭部基)および疎水性領域(炭化水素尾部)が示されている。扁平小胞の場合には、bはcと等しい。
【0121】
1つの形態は、150〜200nm以下の半径を有する、環状の2次元投影を有する。一方において、他の形態は、それぞれ600〜800nmの長さの長軸および100〜200nmの長さの短軸を有する、引き伸ばされた楕円投影を有する。この結果はDLSデータと一致する。しかし、2モード分布は、投影に対して直交する軸に沿った粒子の厚さに依存して、球状の楕円体小胞の混合物、または扁平な3軸楕円体小胞の混合物のいずれかであり得る。前者(球状の楕円体小胞の混合物)は、われわれのSANSデータと適合しない。われわれは、SANSの結果と適合する扁平な3軸楕円体小胞殻を包含するモデルを作り出している(上述した3軸の2重膜単層小胞に関する数学モデルを参照すればよい)。扁平な形態は、2つの等しい主軸および1つの多分散の副軸を有する(図4のB、D、F)。一方において、3軸楕円体の形態は、長さが異なる3つの軸を有する(図4のA、C、E)。このモデルは、8つの適合要素を必要とする。8つの要素とは、すなわち、3軸楕円体の小胞に関する3つの軸、扁平な殻に関する2つの軸、扁平な形態に関する短軸の多分散性、2重膜の厚さおよび3軸対扁平の集団の比率である。しかし、TEMおよびDLS測定、ならびにクラツキ−ポロッド分析からの結果は、2重膜の厚さ、ならびに扁平な殻の場合の2つの主軸の長さおよび3軸楕円の殻にとっての2つの長軸の長さが、われわれにとって制限される。これによって、短軸の長さ、扁平殻の短軸の多分散性、および3軸対辺鄙の集団比率を、自由な要素として残せる。最良適合の結果は、扁平楕円体および3軸楕円体が40±5オングストロームの厚さを有することを示している。これは、改変したギニエプロットから得られた結果よりもわずかに大きい。3軸楕円体の最も短い軸および扁平な形態の副軸のそれぞれは、250±20オングストロームおよび100±10オングストロームである。これらの特性は、SANSデータにおける広い(0.01オングストローム以下および0.03オングストローム以下)ピークを生じる。さらに、扁平な形態の主軸の長さ(150nm以下)および楕円体の形態の2つの長軸の長さ(200nm以下および500nm以下)に関する最良適合は、図4に示されるTEMの結果と一致する。扁平楕円体の集団の割合は、H2をドープした混合物の場合に40±10%以下であり、一方、非添加またはH1をドープした混合物に関して60±10%以下であることが分かった。3軸楕円体小胞の集団が大きいことを示す第1のピークのより高い強度がH2をドープした系に見られることは、最良適合の結果と一致する。このため、H2ペプチドが3軸楕円体の小胞の形成に好ましいと考えられる。要約すると、3つの手法のすべては、2つの形態(すなわち、3軸楕円体および扁平楕円体)の存在を指し示している。
【0122】
Sap CおよびSap C断片(H1およびH2)を用いたULV系の形成に使用されるDPPC/DHPC/DOPS混合物は、意外なことに予測しなかった脂質混合物の挙動を示した。われわれの当初の予測は、われわれの以前の実験結果3に基づいて、単分散した球状のULVの形成にとって好適な条件を見つけることであった。しかし、上述したように、われわれは、DPPC/DHPC/DOPSがULVを形成すると同時に、DLSによって調べられた混合物のサイズ分布が多モードであることを見出している。2モードに分散したULVの場合に、われわれは、各集団が非球状の形態および狭いサイズ分布を有することを見出している。この観察は、われわれにこのULV形成に関する機序がDMPC/DHPC/DMPG混合物に生じる機序とは異なるという推測を導く。
【0123】
以前の研究において、われわれは、低い多分散性のULVの形成が、ミセル(2胞性)の形態を2重膜にした低い温度からこの系を加熱することが必要なことを見出した。ULVの大きさは、2つの胞の大きさに依存することが見出された。さらに、ULVの大きさは、周辺の線張力、2重膜の曲げ剛性および2つの胞の融合の割合といった因子によっておそらく改変された。さらに、DMPC/DHPC/DMPGの2つの胞→ULVの転移は、23℃以下において生じる、DMPCのゲル→液晶の転移と密接な関連していた。DPPC/DHPC/DOPSが類似の挙動を示した場合には、2胞性の形態が−11℃付近またはそれ以下において見られるだろう。−11℃はDOPSの脂肪酸鎖が融解転移を受ける温度である。高温においてDMPC/DHPC/DMPG混合物が広いサイズ分布を有するULVの形成を生じるので3、われわれは、ここでのULVの形成機序が以前に調べられた機序とは異なると推論する。
【0124】
これまでの技術は、希釈によって、かつ集団的な膜の変動の結果として、単一のDOPSの層状の重なりが、多分散したULVの形成を完全に許容することを示唆している。これは、2モードの集団のリポソームを形成するための利用とは関係なく示唆されている。したがって、単一のDOPSの懸濁によってULVも形成できるが、われわれは、ここで生じる形成の機序としてはこれを捨てることができる。われわれは、観察された非球状のULVが、ULVの高い曲率の領域を占めている無電荷の短鎖DHPCを有することによって、安定化されていると同時に、長鎖DPPCが安定な2重膜に必要とされる剛性を提供することを推測している。
【0125】
本開示は、2モードのULVサイズ分布が観察されるが、個々の集団の多分散性がかなり小さいという、上述の予期されなかった発見を示している。当該発見は、これらの2つの集団が、材料を自由に変更し得る平衡状態、最小のエネルギー状態を示すことであり得るか、または個々のULVがこれらの2つの形態の間において転換可能な流体力学的構造であることであり得る。形態が自由に転移するという考えは、これまでに論理的に予測されており、かつこれまでの実験的観察と類似でもあり得る。ここで、遊離した長球の小胞は扁平な小胞に、そして逆に場合も同じく転移する29、35、36。
【0126】
また、楕円体のULVの形態は、予想外であるが、膜の側方における異質性の結果であり得る。飽和および不飽和の脂質を含有する3成分の混合物が側方に偏りを示し得ることは、最近SANSによって示されている37。さらに、ゲル→液晶の転移を経て上昇する温度に応じて、巨大なULVにおける複合化された球状−多角形−楕円体の転移が見出されている38。外見上、多角形の形状(図4のB)は、おそらく2つの相の間における側方の相の分離から生じた。ここで、DOPSおよびDHPC脂質はLα相であると同時に、DPPCはゲル相である。さらに、異なる炭化水素鎖の長さを有する脂質の異なる種に起因して、各ドメインは、楕円の軸のそれぞれの長さを決めることに寄与し得る。われわれが知る限り、単一のリン脂質の系または単一の脂質の混合物に由来する多分散した3軸楕円体の小胞は、これまで報告されていないが、アクチンの重合体化によって誘導される扁平な形状または不規則な形状をした小胞に転移する球状の小胞の例がある。われわれは、その結果が膜内における側方への分離に起因すると推測する。
【0127】
高いqのデータに対する最良適合は、2重膜の厚さが38〜40オングストロームの間にあるという結果を生じる。楕円殻モデルが、主軸に沿った一定の2重膜の厚さ、および2重膜の全体に渡って均一な散乱長密度を仮定しているので、2重膜の厚さに関する値は、より詳細なモデルから得られる値よりもわずかに大きいと予想され得る。改変したギニエプロットは、H1をドープしたULVおよびH2をドープしたULVと比較して、非ドープのULVがより厚い2重膜を有することを示している。これは、H1およびH2が2重膜に対する薄膜化の影響を有するが、それらが2重膜を不安定化することを証明する。WangらはH1およびH2がSap C誘導膜融合を阻害できることを報告している。これは、それらがSap Cと同じようにDOPS部位におそらく結合し、このようにしてSap Cの膜との相互作用を弱める。また、これらの結果は、H1が膜融合の阻害においてH2よりも有効であることを示した。これは、H1が2重膜の薄膜化に対するより大きな影響を有することと一致している。
【0128】
以前のAFMの研究は、H2が膜に対してパッチを形成したことを示している。これは、2重膜欠損の領域を構成する棒状構造であると推測された。SANSデータは、非ドープのULVおよびH1をドープしたULVと比べて、集団が、H2の添加によって扁平なULVから3軸のULVへと粒子形態を変化させることを示している。短鎖DHPCは膜に欠陥を作り出すことが知られているので、脂質混合物は、3軸楕円体ULVの好ましい形成を導く、H2の会合にとって好適な環境を提供し得る。
【0129】
SANS、TEMおよびDLSの利用を介して、DOPS/DPPC/DHPCの混合物によって仮定される種々の形態が特徴付けられた。2つの低い多分散性の形態、すなわち扁平なULVおよび3軸楕円体のULVが観察される。ここで、ULV形成の機序は、これまでに報告されている機序とは異なると考えられる。また、当該機序は、低い多分散性のULVが、ゲル→液晶の転移を受ける長鎖脂質の非存在下においてさえ形成され得ることを証明している。SANSの結果は、以前のAFMデータと一致して、H1およびH2が2重膜の形態を不安定化しないことを示している。しかし、H1は2重膜の薄膜化により大きな影響を有することを示している。さらに、H2ペプチドの添加は、扁平楕円体の小胞に対する3軸楕円体の小胞の比率を増加させる。これは、おそらく、種々の脂質構成要素の混和性の変化に起因する。一方、Sap Cの添加は、膜を不安定化し、かつ大きな凝集体の溶液からの沈殿を生じる。
【0130】
リポソーム小胞が種々の治療学にとって有効な担体であることが、さらなる証拠によって示唆される。しかし、疾患の処置および商業的な実現性における特定の系の有効性が、第1に重要である。本開示において、ホスファチジルセリン含有ULVが自発的に形成することを示し、高い安定性を有し、かつ低い多分散性を有することが証明される。記載されている手順は、Sap C結合ULVの大規模化した産業的製造に好適であり、Sap C−PS ULVの開発に有用である。Sap C−PS ULVは、それから治療薬のインビボ輸送に関して試験され得る。
【0131】
本発明の長鎖脂質は、約14〜約24の炭素を有する長さの炭素鎖、または約18〜約20の炭素を有する長さの炭素鎖を有する、あらゆる長鎖脂質であり得る。脂質の網羅的なリストは、www.avantilipids.comにおいてにおいて入手可能である。当業者は、これらの脂質が本発明に使用され得ることを十分に理解する。長鎖脂質および短鎖脂質のあらゆる組み合わせが使用され得ると同時に、いくつかの組み合わせがより安定なリポソームを生じる。例えば、本発明を限定することを意図しないが、以下のものが、リポソームが形成される組成物の選択肢を導き得る。リポソームの安定性を向上させるために、約20〜約24の炭素の長さを有する長鎖脂質が使用され、約6〜約8の長さを有する短鎖脂質が使用される。リポソームの安定性を向上させるために、約14〜約18の長さを有する長鎖が使用され、約6〜約7の長さを有する短鎖脂質が使用される。脂質のこれらの組み合わせがより安定なリポソームを生じる。一方において、他の組み合わせが首尾よく使用され得、かつこれらが否定されることを意図しない。表2は、より安定なリポソームを生成するために使用され得るリン脂質の組み合わせの例を説明する。しかし、これらの例は、リン脂質の他の組み合わせが本発明と共に使用され得ないことを意味しない。
【0132】
【表3】
【0133】
さらに、リポソームの安定性は、脂質鎖における飽和炭化水素の存在または非存在に影響を受ける。例えば、約18以上の鎖長を有する脂質が使用され、リン脂質は、飽和または不飽和、好ましくは不飽和であり得る。約14〜約16の炭素を有する長鎖脂質といったより短い長鎖脂質に関して、脂質は不飽和であり得るが、飽和脂質の使用によって、本発明の向上した性質が生じる。
【0134】
(付加的な試薬)
また、上述の生物適合性の脂質および重合体に加えて、ある物質の組成物を用いた微粒子の調製が本発明の一部であると意図される。当該物質は、安定性および上述の基準に適合するように微粒子が調整されるように供給される。
【0135】
プロピレングリコールは、脂質粒子の分散または溶解を容易にすることによって、濁りを除去するために加えられ得る。また、ポリプロピレングリコールは、増粘剤として機能し得る。増粘剤としてのポリプロピレングリコールは、微粒子の膜または表面の表面張力を上昇させることによって微粒子の形成および安定性を向上させる。ポリプロピレンは、付加的な層としてさらに機能することが考えられる。当該層は、微粒子の膜または表面を被い、このようにしてさらなる安定性を提供する。このような基本的または補助的なさらなる安定化化合物の例として、使用可能な従来の界面活性剤(例えば、米国特許第4,684,479号明細書および米国特許第5,215,680号明細書)がある。
【0136】
補助的および基本的なさらなる安定化化合物としては、ピーナッツ油、キャノーラ油、オリーブ油、ベニバナ油、トウモロコシ油、またはあらゆる他の油といった物質が挙げられる。当該あらゆる他の油は、本明細書において上述した要件および指示に合致して安定化剤としての使用に好適であり、摂取可能であることが通常に知られているものである。
【0137】
さらに、混合したミセルの系の製造に使用される化合物は、基本的または補助的な安定化化合物としての使用に好適であり得る。これらの化合物としては、これらに限定されないが、ラウリルトリメチルアンモニウム ブロマイド(ドデシル−)、セチルトリメチルアンモニウム ブロマイド(ヘキサデシル−)、アルキルジメチルベンジルアンモニウム クロライド(アルキル=C12、C14、C16)、ベンジルジメチルドデシルアンモニウム ブロマイド/クロライド、ベンジルジメチル ヘキサデシルアンモニウム ブロマイド/クロライド、ベンジルジメチル テトラデシルアンモニウム ブロマイド/クロライド、セチル−ジメチルエチルアンモニウム ブロマイド/クロライド、またはセチルピリジニウム ブロマイド/クロライドが挙げられる。
【0138】
本発明に使用されるリポソームは、本明細書に記載の種々の付加的または補助的な安定化剤のなかから選択することによって、大きさ、溶解性および熱安定性に基づいて制御され得ることが見出されている。これらの薬剤は、脂質の被膜とのこれらの物理的な相互作用によってだけではなく、リポソームの表面の粘性および表面張力を改変するそれらの能力によってもまた、微粒子のこれらの要素に影響を与えることができる。したがって、本発明に使用されるリポソームは、例えば1つ以上の多種多様な(a)粘性改変剤;(b)乳化剤および/または可溶化剤;(c)懸濁化剤および/または増粘剤;(d)合成懸濁化剤;ならびに(e)浸透圧向上剤(tonicity rising agent)の添加によって、好ましく改変され得、さらに安定化され得る。(a)粘性改変剤としては、これらに限定されないが、炭水化物ならびにそれらのリン酸化誘導体およびスルホン酸化誘導体;ならびにポリエーテル(好ましくは400〜100000の範囲内の分子量を有する);ジヒドロキシアルカンおよびトリヒドロキシアルカンならびにこれらの重合体(好ましくは200〜5000の範囲内の分子量を有する)が挙げられる。(b)乳化剤および/または可溶化剤は、また所望の改変およびさらなる安定化を達成するために、脂質と共に使用され得る。(b)乳化剤および/または可溶化剤としては、例えばこれらに限定されないが、アラビアゴム、コレステロール、ジエタノールアミン、グリセロールモノステアレート、ラノリンアルコール、レチシン、モノグリセリドおよびジグリセリド、モノエタノールアミン、オレイン酸、オレイルアルコール、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー 188、ポロキサマー 184、およびポロキサマー 181)、ポリオキシエチレン 50 ステアレート、ポリオキシ 35 キャスターオイル、ポリオキシ 10 オレイルエーテル、ポリオキシ 20 セトステアリルエーテル、ポリオキシ 40 ステアレート、ポリソルベート 20、ポリソルベート 40、ポリソルベート 60、ポリソルベート 80、プロピレングリコール ジアセテート、ポリプロピレン モノステアレート、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、モノラウリル酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸、トロラミンならびに乳化蝋が挙げられる。(c)懸濁化剤および/または増粘剤は、脂質と共に使用され得る。(c)懸濁化剤および/または増粘剤としては、これらに限定されないが、アラビアゴム、寒天、アルギン酸、モノステアリン酸アルミニウム、ベントナイト、泥膏、カルボマー 934P、カルボキシメチルセルロース、カルシウムおよびナトリウムおよびナトリウム12、カラゲナン、セルロース、デキストラン、ゼラチン、グアールガム、イナゴマメガム、ビーガム(veegum)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル メチルセルロース、マグネシウム−アルミニウム−ケイ酸塩、メチルセルロース、ペクチン、ポリエチレンオキシド、ポビドン、アルギン酸プロピレングリコール、酸化ケイ素、アルギン酸ナトリウム、トラガカントゴム、キサンタムガム、アルファ−d−グルコノラクトン、グリセロールならびにマンニトールが挙げられる。(d)合成懸濁化剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレングリコール、およびポリソルベートといったものが使用され得る。(e)浸透圧向上剤としては、これらに限定されないが、ソルビトール、プロピレングリコールおよびグリセロールといった薬剤が挙げられ得る。
【0139】
水性環境を作り出すために採用され得る希釈剤としては、これらに限定されないが、安定化した微粒子の製造および維持、またはMRIの造影剤としてのそれらの利用に干渉しない、脱イオン化水またはあらゆる数の溶解した塩を含有する水など;ならびに通常の食塩水および生理食塩水が挙げられる。
【0140】
気体および気体の前駆物質が充填された小胞を調製する安定化物質として有用な生物適合性の重合体は、無電荷の半合成(改変した天然)起源のもの、または合成起源のものであり得る。本明細書において使用されるとき、重合体という用語は、2つ以上の繰り返し単量体単位、好ましくは10以上の繰り返し単量体単位から構成される化合物を意味する。本明細書において使用されるときに、半合成の重合体(または改変した天然の重合体)という表現は、ある様式において化学的に合成されている天然の重合体を意味する。本発明における使用に好適な例示的な天然の重合体としては、天然に生じるポリサッカライドが挙げられる。当該ポリサッカライドとしては、例えば、アラビナン、フルクタン、フカン(fucans)、ガラクタン、ガラクツロナン、グルカン、マンナン、(例えば、イヌリンといった)キシラン、レバン(levan)、フコイダン、カラギナン、ガラクトカロロース、ペクチン酸、ペクチン(アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、ポリデキストロース、プスツラン(pustulan)、キチン、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガム、スターチおよび種々の他の天然ホモポリマーもしくはヘテロポリマーが挙げられる)が挙げられる。種々の他の天然ホモポリマーもしくはヘテロポリマーは、例えば、1つ以上のアルドース、ケトース、酸またはアミンを含有する重合体である。アルドース、ケトース、酸またはアミンは、アルドース、ケトース、酸またはアミンは、エリスロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、アロース、アルトロース、ルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリチルトース(erytirulose)、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、およびノイラミニン酸、ならびにこれらの天然に生じる誘導体である。したがって、好適な重合体としては、例えば、アルブミンといったタンパク質が挙げられる。例示的な半合成の重合体としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルメチルロース、メチルセルロース、メチルセルロース、およびメトキシセルロースが挙げられる。本発明における使用に好適な、例示的な合成重合体としては、(例えば、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンおよびポリエチレンテレフタレートといった)ポリエチレン、(例えば、ポリプロピレングリコールといった)ポリプロピレン、(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルクロライドおよびポリビニルピロリドンといった)ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン、ポリスチレンが挙げられる)、ポリ酪酸、フッ化炭化水素、(例えば、ポリテトラフルオロエチレンといった)フッ化炭素、およびポリメチルメタクリレート、ならびにこれらの誘導体が挙げられる。安定化化合物として重合体を採用する小胞の調製方法は、本開示事項が当該技術に公知の情報と組み合わせられる場合に、本開示に接した当業者に容易に理解される。当該技術に公知の情報は、例えば、米国特許第5,205,290号明細書に記載および言及の情報である。米国特許第5,205,290号明細書は、言及によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0141】
代替可能に、1つ以上の抗菌剤および/または保存剤が、上記組成物の調合物に包含され得る。抗菌剤および保存剤は、例えば、安息香酸ナトリウム、4級アンモニウム塩、アジ化ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、アスコルビン酸パルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、クロロブタノール、デヒドロ酢酸、エチレンジアミン、モノチオグリセロール、安息香酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ソルビン酸カリウム、重亜硫酸カリウム、2酸化硫黄、および有機水銀塩である。他の従来の方法(例えば、放射線照射)によっても達成され得るそのような滅菌は、安定化された小胞が侵入性の環境下において(例えば、血管内的または腹腔内的に)画像化するために使用される場合に、必要である。滅菌に適した方法は、本開示を元にして当業者に理解される。
【0142】
(ジサッカライド)
上述の付加的な成分に加えて、ジサッカライドが、リポソームの安定性を向上させるために加えられ得る水性溶液の添加の前にか、または当該水溶液の添加と共に乾燥脂質に加えられ得る。好適なジサッカライドの非限定的な例としては、これらに限定されないが、トレハロース、スクロース、マルトース、ラクトース、メリビオース、ガラクトース、グルコース、フルクトース、またはラクトースが挙げられる。一般的に、ジサッカライドは、10mgの総タンパク質につき約50〜約100mg(すなわち、約1:10のタンパク質対ジサッカライドの比率)含まれる。
【0143】
(抗膜試薬)
さらに、抗がん(または“抗膜”)剤として知られる他の脂質が、本明細書に記載の組成物および方法と共に使用され得る。本明細書に記載の組成物に加えられ得るのは、例えば、エデルフォシン(Edelfosine)(sn−ET−18−OCH3または1−O−オクタデシル−2−O−メチル−sn−グリセロ−3−ホスホリルコリン)、または他のリン脂質(例えば、リゾホスファチド、カルディオリピン、セラミド、スフィンゴミエリン、スフィンゴシン、セレブロシド、コレステロール、これらの脂質の改変形態、および上述の脂質のあらゆる組み合わせ)である。例示的な組成物は、Sap C(100μM)+DOPS(280μM)+エデルフォシン(20μM);またはSap C(100μM)+DOPS(290μM)+エデルフォシン(10μM)を包含し得る。エデルフォシンの量は、約2〜50μMの範囲内であり得;DOPSの量は、約250〜298μMの範囲内であり得、ここでSap Cは約100μMである。他の例示的な範囲は、1:3:0.2〜1:10:0.7のSap C:DOPS:エデルフォシンのモル比を含み得る。Sap Cが説明されている場合に、本明細書に記載の他のプロサポシン誘導体化タンパク質またはポリペプチドが置き換えられ得るか、または組み合わせて使用され得ることを理解されるべきである。
【0144】
本発明は、最も好ましい実施形態に関して説明されているが、付加的な実施形態は、特許請求の範囲の発明の範囲および精神の範囲内である。本発明の好ましい手段は、本発明を説明することを目的としているに過ぎず、以下の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】ヒトサポシン Cおよびその機能ドメインのアミノ酸配列を示す図である。
【図2】0.1%のDOPS/DPPC/DHPCのSANSデータを示す図である。
【図3】0.1重量%のDOPS/DPPC/DHPCに関する改変したギニエプロットの結果を示す図である。
【図4】DOPS/DPPC/DHPC混合物(AおよびB)、およびH1ドープした混合物(CおよびD)、およびH2ドープした混合物の代表的なTEM画像を示す図である。
【図5】単層の2重膜を有する3軸楕円小胞の提唱モデルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質;
b)少なくとも1つの短鎖リン脂質;および
c)プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチド
を含有している、リポソームの集団を形成する組成物であって、
リポソームが水性溶液の添加によって自発的に形成される、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの上記陰イオン性のリン脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルイノシトール(DOPI)およびジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの上記短鎖リン脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
リポソームの上記集団は、1モード、2モード、または3モードの単層小胞のサイズ分布を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
リポソームの上記集団が、扁平楕円体の単層小胞および3軸楕円体の単層小胞から構成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
上記プロサポシン誘導体化タンパクは、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5またはこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
DOPS、DPPC、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドがサポシン C、H1、H2、H3、H4、H5もしくはこれらの混合物からなる群から選択される、リポソームを形成する組成物。
【請求項8】
DPPCに対するDOPSの割合は約2〜約20の範囲内である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
上記リポソームは、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびヘキサノイルホスファチジルコリンから構成されており、
ここで、陰イオン性の長鎖脂質、無電荷の長鎖脂質および短鎖脂質は、
式:[無電荷の長鎖脂質]+[陰イオン性または無電荷の長鎖脂質]/(陰イオン性または無電荷の短鎖脂質)=約2〜約20
によって規定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
薬学的に活性な因子をさらに含有している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
a.少なくとも1つの陰イオン性のリン脂質、少なくとも1つの長鎖リン脂質、および少なくとも1つのプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを準備する工程
b.水性溶液を加える工程
c.少なくとも1つの上記陰イオン性のリン脂質、少なくとも1つの上記長鎖リン脂質、および少なくとも1つの上記プロサポシン誘導体化タンパク質もしくは上記プロサポシン誘導体化ポリペプチドを上記水性溶液と混合して、1モード、2モードまたは3モードの単層小胞のサイズ分布を有するリポソームの集団を自発的に形成させる工程
を包含する、リポソームの集団の製造方法。
【請求項12】
少なくとも1つの上記陰イオン性のリン脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、1,2−ジオレオイルホスファチジルイノシトール(DOPI)、および1,2−ジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの上記短鎖リン脂質は、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンである、請求項15に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの上記短鎖リン脂質は、DHPC、DHPS、またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項15】
リポソームの上記集団は、扁平楕円体の単層小胞および3軸楕円体の単層小胞から構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
上記プロサポシン誘導体化タンパク質は、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5またはこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびサポシン Cを含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびH1を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびH5を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPC、サポシン C、H1およびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびサポシン Cを含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびH1を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびH5を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、サポシン C、H1およびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
DPPCまたはDHPSに対するDOPSの割合は約2から約20である、請求項11〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
上記リポソームは、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびヘキサノイルホスファチジルコリンから構成され、
ここで、陰イオン性の長鎖脂質、無電荷の長鎖脂質および短鎖脂質の量は、
式:[無電荷の長鎖脂質]+[陰イオン性の長鎖脂質]/[短鎖脂質]=約2〜約10
によって規定される、請求項11〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
上記短鎖脂質は陰イオン性または無電荷である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記リポソームは薬学的に活性な因子をさらに含有している、請求項11〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
a)少なくとも1つの陰イオン性の長鎖リン脂質;
b)少なくとも1つの短鎖リン脂質;および
c)プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチド
を含有している、リポソームの集団を形成する組成物であって、
リポソームが水性溶液の添加によって自発的に形成される、組成物。
【請求項2】
少なくとも1つの上記陰イオン性のリン脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイルホスファチジルイノシトール(DOPI)およびジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも1つの上記短鎖リン脂質は、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、およびホスファチジルエタノールアミンからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
リポソームの上記集団は、1モード、2モード、または3モードの単層小胞のサイズ分布を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
リポソームの上記集団が、扁平楕円体の単層小胞および3軸楕円体の単層小胞から構成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
上記プロサポシン誘導体化タンパクは、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5またはこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
DOPS、DPPC、DHPC、およびプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを包含し、当該プロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドがサポシン C、H1、H2、H3、H4、H5もしくはこれらの混合物からなる群から選択される、リポソームを形成する組成物。
【請求項8】
DPPCに対するDOPSの割合は約2〜約20の範囲内である、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
上記リポソームは、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびヘキサノイルホスファチジルコリンから構成されており、
ここで、陰イオン性の長鎖脂質、無電荷の長鎖脂質および短鎖脂質は、
式:[無電荷の長鎖脂質]+[陰イオン性または無電荷の長鎖脂質]/(陰イオン性または無電荷の短鎖脂質)=約2〜約20
によって規定される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
薬学的に活性な因子をさらに含有している、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
a.少なくとも1つの陰イオン性のリン脂質、少なくとも1つの長鎖リン脂質、および少なくとも1つのプロサポシン誘導体化タンパク質もしくはプロサポシン誘導体化ポリペプチドを準備する工程
b.水性溶液を加える工程
c.少なくとも1つの上記陰イオン性のリン脂質、少なくとも1つの上記長鎖リン脂質、および少なくとも1つの上記プロサポシン誘導体化タンパク質もしくは上記プロサポシン誘導体化ポリペプチドを上記水性溶液と混合して、1モード、2モードまたは3モードの単層小胞のサイズ分布を有するリポソームの集団を自発的に形成させる工程
を包含する、リポソームの集団の製造方法。
【請求項12】
少なくとも1つの上記陰イオン性のリン脂質は、ジオレオイルホスファチジルセリン(DOPS)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、1,2−ジオレオイルホスファチジルイノシトール(DOPI)、および1,2−ジオレオイルホスファチジン酸(DOPA)からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの上記短鎖リン脂質は、ホスファチジルセリンまたはホスファチジルコリンである、請求項15に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの上記短鎖リン脂質は、DHPC、DHPS、またはこれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項15】
リポソームの上記集団は、扁平楕円体の単層小胞および3軸楕円体の単層小胞から構成されている、請求項15に記載の方法。
【請求項16】
上記プロサポシン誘導体化タンパク質は、サポシン C、H1、H2、H3、H4、H5またはこれらの混合物からなる群から選択される1つ以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびサポシン Cを含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびH1を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPCおよびH5を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPC、サポシン C、H1およびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびサポシン Cを含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項23】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびH1を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項24】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項25】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、およびH5を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項26】
上記リポソームは、DOPS、DPPC、DHPS、サポシン C、H1およびH2を含有している、請求項15に記載の方法。
【請求項27】
DPPCまたはDHPSに対するDOPSの割合は約2から約20である、請求項11〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
上記リポソームは、ジオレオイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルコリンおよびヘキサノイルホスファチジルコリンから構成され、
ここで、陰イオン性の長鎖脂質、無電荷の長鎖脂質および短鎖脂質の量は、
式:[無電荷の長鎖脂質]+[陰イオン性の長鎖脂質]/[短鎖脂質]=約2〜約10
によって規定される、請求項11〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
上記短鎖脂質は陰イオン性または無電荷である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上記リポソームは薬学的に活性な因子をさらに含有している、請求項11〜29のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図5】
【公表番号】特表2010−507580(P2010−507580A)
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533551(P2009−533551)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/081880
【国際公開番号】WO2008/051818
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509111098)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (1)
【氏名又は名称原語表記】CHILDREN’S HOSPITAL MEDICAL CENTER
【住所又は居所原語表記】3333 Burnet Avenue,MLV 7032,Cincinnati,OH 45229−3039,United States of America
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/081880
【国際公開番号】WO2008/051818
【国際公開日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(509111098)チルドレンズ ホスピタル メディカル センター (1)
【氏名又は名称原語表記】CHILDREN’S HOSPITAL MEDICAL CENTER
【住所又は居所原語表記】3333 Burnet Avenue,MLV 7032,Cincinnati,OH 45229−3039,United States of America
【Fターム(参考)】
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