説明

自脱型のコンバイン

【課題】コンバインにおいて、刈取部及び機体の左右バランスを良いものにする。
【解決手段】右及び左のデバイダ29,30、右及び左のデバイダ29,30の間の略中央位置に備えられた中央のデバイダ31を刈取部4に備え、右(左)及び中央のデバイダ29,30の間の各々に2つの植付条を入り込ませて作物を刈取可能に構成する。右及び左のデバイダ29,30の位置と右及び左のクローラ走行装置1,2の右及び左端部1a,2aとが正面視で略同じ位置に位置するように構成する。運転座席13の機体左右方向の中央部と中央のデバイダ31との間の機体左右方向の間隔L5と、扱胴17が回転駆動される軸芯P1と中央のデバイダ31との間の機体左右方向の間隔L6とを、略同じに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、右及び左のクローラ走行装置で支持された機体に、脱穀装置と穀粒回収部とを備え、機体の前部に刈取部を備えた自脱型のコンバインにおいて、全体の配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
自脱型のコンバインでは、例えば特許文献1に開示されているような構成を備えたものがある。
特許文献1では、右及び左のデバイダ(特許文献1の第1,2,3図の4A,4C)、中央のデバイダ(特許文献1の第1,2,3図の4B)、右及び中央のデバイダの間に備えられた引き起し装置(特許文献1の第1,2,3図の3)、左及び中央のデバイダの間に備えられた引き起し装置(特許文献1の第1,2,3図の3’)を、刈取部に備えている。右のデバイダの位置と右のクローラ走行装置(特許文献1の第2図の6)の右端部とが、正面視で略同じ位置に位置するように構成し、左のデバイダの位置と左のクローラ走行装置(特許文献1の第2図の6)の左端部とが、正面視で略同じ位置に位置するように構成している。
【0003】
特許文献1では、刈取部の機体左右方向の中央部から中央のデバイダを左のデバイダ側に偏位して配置しており、左及び中央のデバイダの間隔よりも、右及び中央のデバイダの間隔を大きなものに設定している。これにより、左及び中央のデバイダの間に1つの植付条を入り込ませて作物を刈り取り、右及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物を刈り取るように構成している。
右(左)のデバイダの位置と右(左)のクローラ走行装置の右端部(左端部)とを、正面視で略同じ位置に配置することによって、中割り作業(圃場の中央を刈り取るような状態で、刈取部の右及び左側の両方に未刈りの作物がある状態)が行えるように構成している(中割り作業時に、右(左)のクローラ走行装置の右端部(左端部)で、未刈りの作物を踏まない)。
【0004】
【特許文献1】特公昭57−12562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自脱型のコンバインでは、隣接するデバイダの間に1つの植付条を入り込ませて作物を刈り取るのが一般的な構成である。これに対して特許文献1では、右及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物を刈り取るように構成しており、少ないデバイダや引き起し装置により多数の植付条の作物を刈り取ろうとするものである。
【0006】
特許文献1では、右(左)のデバイダの位置と右(左)のクローラ走行装置の右端部(左端部)とを、正面視で略同じ位置に配置した場合、刈取部の機体左右方向の中央部から中央のデバイダを左のデバイダ側に偏位して配置している。これにより、刈取部や機体の左右バランスの面で改善の余地がある。
本発明は自脱型のコンバインにおいて、右(左)のデバイダの位置と右(左)のクローラ走行装置の右端部(左端部)とを、正面視で略同じ位置に配置した場合、刈取部や機体の左右バランスを良いものにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I]
(構成)
本発明の第1特徴は、右及び左のクローラ走行装置で支持された機体に、脱穀装置と穀粒回収部とを備え、機体の前部に刈取部を備えた自脱型のコンバインにおいて、次のように構成することにある。
右及び左のデバイダと、右及び左のデバイダの間の略中央位置に備えられた中央のデバイダと、右及び中央のデバイダの間に備えられた引き起し装置と、左及び中央のデバイダの間に備えられた引き起し装置とを、刈取部に備える。右及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物を刈取可能に、左及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物を刈取可能に、刈取部を構成する。
右のデバイダの位置と右のクローラ走行装置の右端部とが、正面視で略同じ位置に位置し、左のデバイダの位置と左のクローラ走行装置の左端部とが、正面視で略同じ位置に位置するように構成する。
機体前後方向の軸芯周りに回転駆動される扱胴を脱穀装置に備えて、脱穀装置と運転座席とを機体左右方向に並べて備え、運転座席の機体左右方向の中央部と中央のデバイダとの間の機体左右方向の間隔と、扱胴が回転駆動される軸芯と中央のデバイダとの間の機体左右方向の間隔とを、略同じに設定する。
【0008】
(作用)
本発明の第1特徴によると、右(左)のデバイダの位置と右(左)のクローラ走行装置の右端部(左端部)とを、正面視で略同じ位置に備えた場合、右及び左のデバイダの間の略中央位置に中央のデバイダが備えられている(右及び左のクローラ走行装置の間の略中央位置に中央のデバイダが備えられている)。右及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物が刈取可能に構成され、左及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物が刈取可能に構成されている。
【0009】
これにより、本発明の第1特徴によると、刈取部の右及び左側部分において、略同量の作物が刈り取られるようになり(刈取部の右及び左側部分において、刈り取られる作物の量が一方に偏るようなことがなくなり)、刈取部の左右バランスが良いものとなる。
この場合、右(左)のデバイダの位置と右(左)のクローラ走行装置の右端部(左端部)とが、正面視で略同じ位置に備えられているので、特許文献1と同様に中割り作業が支障なく行える。
右及び左のクローラ走行装置の間の略中央位置に中央のデバイダが備えられることにより、刈取部の左右方向の中央位置と、右及び左のクローラ走行装置の左右方向の中央位置とが、正面視で略同じ位置に位置する状態となるので、刈取部と機体(右及び左のクローラ走行装置)とのバランスが良いものとなる。
【0010】
自脱型のコンバインでは、刈取部の後側において、機体前後方向の軸芯周りに回転駆動される扱胴を脱穀装置に備え、脱穀装置と運転座席とを機体左右方向に並べて配置した型式が多くある。
本発明の第1特徴によると、運転座席の機体左右方向の中央部と中央のデバイダとの間の機体左右方向の間隔と、扱胴が回転駆動される軸芯と中央のデバイダとの間の機体左右方向の間隔とが、略同じ値に設定されているので、運転座席(運転者)及び扱胴による機体の左右バランスの崩れが小さなものになる(運転座席(運転者)及び扱胴により機体の左右バランスが良いものになる)。
【0011】
(発明の効果)
本発明の第1特徴によると、右(左)のデバイダの位置と右(左)のクローラ走行装置の右端部(左端部)とを、正面視で略同じ位置に備えることにより、中割り作業が支障なく行えると言う利点をそのまま備えながら、刈取部や機体の左右バランスを良いものにすることができ、刈取部と機体(右及び左のクローラ走行装置)とのバランスを良いものにすることができて、走行性能の安定化を図ることができた。
【0012】
[II]
(構成)
本発明の第2特徴は、本発明の第1特徴の自脱型のコンバインにおいて次のように構成することにある。
右及び左のクローラ走行装置と刈取部とに動力を伝達するミッションケースを、右及び左のクローラ走行装置の間の前部で中央のデバイダの後方に備える。エンジンをミッションケースに対し運転座席側に備える。刈取部を機体に支持する支持フレームをミッションケースに対し脱穀装置側に備える。
【0013】
(作用)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第2特徴によると、右及び左のクローラ走行装置と刈取部とに動力を伝達するミッションケースを備える場合、ミッションケースを右及び左のクローラ走行装置の間の前部で中央のデバイダの後方に備えることにより、ミッションケースが右及び左のクローラ走行装置の間の略中央位置に位置することになるので、ミッションケースによる機体の左右バランスの崩れが小さなものになる(ミッションケースにより機体の左右バランスが良いものになる)。
【0014】
前述のようにミッションケースを右及び左のクローラ走行装置の間の前部で中央のデバイダの後方に備えた場合、本発明の第2特徴によると、エンジンをミッションケースに対し運転座席側に備え、刈取部を機体に支持する支持フレームをミッションケースに対し脱穀装置側に備えている。
これにより、機体において運転座席側にエンジンの重量が掛かり、脱穀装置側に刈取部(支持フレーム)の重量が掛かることになるので、エンジン及び刈取部(支持フレーム)による機体の左右バランスの崩れが小さなものになる(エンジン及び刈取部(支持フレーム)により機体の左右バランスが良いものになる)。
【0015】
(発明の効果)
本発明の第2特徴によると、本発明の第1特徴と同様に前項[I]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第2特徴によると、ミッションケース、エンジン及び刈取部(支持フレーム)により機体の左右バランスを良いものにすることができて、走行性能の安定化を図ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[1]
図1,2,3に示すように、右のクローラ走行装置1及び左のクローラ走行装置2で支持された機体3において、機体3の前部に刈取部4が昇降自在に支持されており、機体3の左側部分に自脱型の脱穀装置5が支持され、機体3の右側部分の前側に運転部6が支持されて、機体3の右側部分の後側にホッパー7(穀粒回収部に相当)が支持され、機体3の後部に排ワラ細断装置8が支持されて自脱型のコンバインが構成されている。図4及び図7に示すように、右及び左のクローラ走行装置1,2の間に、ミッションケース9が備えられて機体3に固定され、ミッションケース9から右及び左に延出された車軸ケース10の端部に、右及び左のクローラ走行装置1,2のスプロケット1b,2bが支持されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、機体3においてミッションケース9の右側部分(運転座席13側の部分)にエンジン11が支持されており、エンジン11の動力がベルト伝動装置(図示せず)を介してミッションケース9に伝達され、ミッションケース9に備えられた静油圧式無段変速装置(図示せず)で変速されて、右及び左のクローラ走行装置1,2のスプロケット1b,2bに伝達される。ミッションケース9に伝達された動力がベルト伝動装置(図示せず)を介して刈取部4に伝達される。
【0018】
図2,3,4に示すように、エンジン11を覆うように運転部6が構成されている。エンジン11を覆うボンネット12、ボンネット12の上部に支持された運転座席13、ボンネット12の前側に備えられた操縦部14、ボンネット12の左側に備えられたサイドパネル15等を備えて、運転部6が構成されている。機体3の操向操作及び刈取部4の昇降操作を行う操作レバー16が操縦部14に備えられ、静油圧式無段変速装置を変速操作する変速レバー17がサイドパネル15に備えられている。
【0019】
図1,3,4に示すように、機体前後方向の軸芯P1周りに回転自在な扱胴17、扱胴17の下側に備えられた受網18、受網18の下側に備えられた選別部(図示せず)、扱胴17に沿って配置されたフィードチェーン19等を備えて、脱穀装置5が構成されている。図2,3,4に示すように、機体3の右側部分において運転部6(運転座席13)の後側で脱穀装置5の右側にホッパー7が支持され、ホッパー7に2個の開閉操作自在な排出口7aが備えられており、脱穀装置5の1番物回収部(図示せず)とホッパー7とに亘って搬送装置20が接続されて、作業者が立つステップ21が備えられている。機体3の後部の略全幅に亘って排ワラ細断装置8が支持されており、排ワラ細断装置8は複数の円盤カッター(図示せず)を備えて構成されている。
【0020】
後述する[4]に記載のように、刈取部4によって刈り取られた作物の株元がフィードチェーン19に渡され、作物の穂先が横倒れ姿勢で脱穀装置5の入口5aに挿入されて、作物の穂先が扱胴17と受網18との間で脱穀処理される。作物の穂先から分離して受網18から漏下した穀粒が選別部で選別処理され、1番物回収部から搬送装置20を介してホッパー7に供給される。
ステップ21に立つ作業者は、ホッパー7の排出口7aの下側に回収袋(図示せず)を位置させて、穀粒をホッパー7の排出口7aから回収袋に供給するのであり、回収袋が満杯になると回収袋を閉じて圃場に落とし、ホッパー7の排出口7aの下側に次の回収袋を位置させて、前述と同様な操作を行う。
脱穀処理の終了した作物(排ワラ)は、脱穀装置5から出てフィードチェーン19から排ワラチェーン(図示せず)に渡されて、排ワラ細断装置8に供給され、細断処理されて圃場に落とされる。
【0021】
[2]
次に刈取部4において、右、中央及び左のデバイダ29,30,31、刈取装置28、右及び左の引き起し装置33,34等について説明する。
図1,2,3に示すように、機体3においてミッションケース9の左側部分(脱穀装置5側の部分)に、パイプ状の支持フレーム22が機体左右方向の軸芯P2周りに上下に揺動自在に支持されており、支持フレーム22を昇降操作する油圧シリンダ23が機体3と支持フレーム22とに亘って接続されている。
【0022】
図1,2,3,7に示すように、支持フレーム22の前部にパイプ状の横フレーム24が固定されて、横フレーム24から右のデバイダフレーム25、左のデバイダフレーム26及び中央のデバイダフレーム27が、機体前後方向に沿って前側に延出されており、右のデバイダフレーム25の前部に右のデバイダ29が固定され、左のデバイダフレーム26の前部に左のデバイダ30が固定されて、中央のデバイダフレーム27の前部に中央のデバイダ31が固定されている。分草杆57が左のデバイダ30から後側に延出されており、図1及び図3に示す作用姿勢及び起立した格納姿勢に操作自在に構成されている。
【0023】
図1,2,7に示すように、右及び左、中央のデバイダフレーム25,26,27に亘ってバリカン型式の刈取装置28が支持されている。図3及び図4に示すように、刈取装置28の前側において、右及び中央のデバイダフレーム25,27の間に右の引き起し装置33が固定され、左及び中央のデバイダフレーム26,27の間に左の引き起し装置34が固定されている。図1,2,3,4に示すように、右及び左の引き起し装置33,34の上部に亘ってアーチ状の連結部材32が固定され、中央のデバイダ31と連結部材32とに亘って丸棒状の分草部材35が固定されている。
【0024】
図5に示すように、支持フレーム22に伝動軸(図示せず)が内装され、エンジン11の動力が伝動軸に伝達されて、伝動軸が横フレーム24に挿入されており、伝動軸の動力が横フレーム24に内装された伝動軸44にベベルギヤ43を介して伝達される。図5及び図7に示すように、横フレーム24に伝動軸48が上下向きに備えられて、伝動軸44の動力がベベルギヤ47を介して伝動軸48に伝達されており、伝動軸48の動力が右の引き起し装置33の上部に伝達される。
【0025】
図5及び図7に示すように、パイプ状の支持フレーム36が横フレーム24の左端部に上下向き固定され、機体左右方向の中央側に傾斜するように配置されている。支持フレーム36に伝動軸46が内装されて、伝動軸44の動力がベベルギヤ45を介して伝動軸46に伝達されており、伝動軸46の動力が左の引き起し装置34の上部に伝達される。駆動軸42が横フレーム24の右端部に上下向きに支持され、伝動軸44の動力がベベルギヤ49を介して駆動軸42に伝達されており、駆動軸42により刈取装置28が駆動される。
【0026】
図4に示すように、右及び左の引き起し装置33,34は起伏自在な引き起し爪33a,34aを備えている。伝動軸46,48(図5参照)の動力により、右及び左の引き起し装置33,34の引き起し爪33a,34aが、正面視(図4参照)において右及び左のデバイダ29,30の付近から下方に突出して、地面に沿って機体左右中央側(中央のデバイダ31側)に移動し、正面視(図4参照)において中央のデバイダ31の付近から分草部材35に沿って上方に移動するように回転駆動される。
【0027】
[3]
次に刈取部4において、右及び左のパッカー37,38、右及び左の掻き込み装置39,40、挟持搬送装置53及び係止搬送装置54等について説明する。
図5及び図6に示すように、右及び左の引き起し装置33,34の後側で、横フレーム24及び刈取装置28の上側に、右のパッカー37及び左のパッカー38が備えられ、右及び左のパッカー37,38の上側に、右の掻き込み装置39及び左の掻き込み装置40が備えられている。
【0028】
図5及び図6に示すように、円筒軸50が伝動軸48に相対回転自在に外嵌されて、円筒軸50の下部に右のパッカー37が固定されており、支持フレーム36に固定された支持フレーム51に左のパッカー38が回転自在に支持されている。右及び左のパッカー37,38は、平面視(図6参照)で大きなギヤ形状をしており互いに咬合している。
【0029】
図5及び図6に示すように、右の掻き込み装置39は、円筒軸50に相対回転自在に外嵌されて回り止めされた平板状の支持板39a、円筒軸50に固定された駆動プーリー39b、支持板39aに回転自在に支持された従動プーリー39c、駆動及び従動プーリー39b,39cに巻回されたベルト39d、ベルト39dに備えられた多数の掻き込み爪39e等を備えて構成されている。
【0030】
図5及び図6に示すように、左の掻き込み装置40は、支持フレーム51に固定された平板状の支持板40a、左のパッカー38に備えられた駆動プーリー38a、支持板40aに回転自在に支持された従動プーリー40b、駆動及び従動プーリー38a,40bに巻回されたベルト40c、ベルト40cに備えられた多数の掻き込み爪40d等を備えて構成されている。
【0031】
図6に示すように、中央のデバイダフレーム27に丸棒状の右の案内部材55が固定されて片持ち状に後側に延出され、右の案内部材55の後部が右の掻き込み装置39(掻き込み爪39e)の上側に位置している。中央のデバイダフレーム27に丸棒状の左の案内部材56が固定されて片持ち状に後側に延出され、左の案内部材56の後部が左の掻き込み装置40(掻き込み爪40d)の上側に位置している。
【0032】
図5及び図6に示すように、伝動軸48から右の引き起し装置33の上部に伝達された動力が分岐して円筒軸50の上部に伝達されて、円筒軸50が図6の紙面反時計方向に回転駆動される。これにより、右のパッカー37及び右の掻き込み装置39(ベルト39d)が、図6の紙面反時計方向に回転駆動されるのであり、右のパッカー37に連動して左のパッカー38が図6の紙面時計方向に回転駆動されて、左の掻き込み装置40(ベルト40c)が図6の紙面時計方向に回転駆動される。
【0033】
図1,3,6に示すように、支持フレーム22の上側に挟持搬送装置53が機体前後方向に沿って支持されている。挟持搬送装置53は突起付きの搬送チェーン53a、及び搬送チェーン53aに沿って配置されたガイドレール(図示せず)を備えて構成されて、搬送チェーン53aが図6の紙面反時計方向に回転駆動される。
【0034】
図1,3,6に示すように、挟持搬送装置53の上側に係止搬送装置54が機体前後方向に沿って支持されている。係止搬送装置54は起伏自在な係止爪54a、及び係止爪54aに沿って配置されたガイドレール(図示せず)を備えて構成されて、係止爪54aが図6の紙面反時計方向に回転駆動される。
【0035】
[4]
次に刈取部4において、作物の刈り取りの流れについて説明する。
図3及び図6に示すように、右及び中央のデバイダ29,31の間に入り込んだ作物が右の引き起し装置33により引き起されながら、作物の株元が右のパッカー37及び右の掻き込み装置39(掻き込み爪39e)により、右の案内部材55に向かって送られながら、作物の株元が刈取装置28により刈り取られる。左及び中央のデバイダ30,31の間に入り込んだ作物が左の引き起し装置34により引き起されながら、作物の株元が左のパッカー38及び左の掻き込み装置40(掻き込み爪40d)により、左の案内部材56に向かって送られながら、作物の株元が刈取装置28により刈り取られる。
【0036】
図3及び図6に示すように、右のパッカー37及び右の掻き込み装置39(掻き込み爪39e)と右の案内部材55との間に送られた作物、並びに、左のパッカー38及び左の掻き込み装置40(掻き込み爪40d)と左の案内部材56との間に送られた作物が、右及び左のパッカー37,38の間に合流し、右及び左の掻き込み装置39,40の間に合流して、合流した作物の株元が挟持搬送装置53の始端部に渡され、合流した作物の穂先が係止搬送装置54の始端部に渡される。
挟持及び係止搬送装置53,54により作物が横倒れ姿勢に変更されながら後側に搬送され、横倒れ姿勢の作物の株元がフィードチェーン19の始端部に渡されて、前項[1]に記載のように、脱穀装置5において作物が脱穀処理される。
【0037】
図1及び図6に示すように、挟持及び係止搬送装置53,54の終端部を支点として、挟持及び係止搬送装置53,54が一体で上下に揺動自在に支持されており、挟持及び係止搬送装置53,54を上下に揺動操作することにより、合流した作物を挟持及び係止搬送装置53,54が受け取る位置を稈長方向に沿って変更することができるのであり、フィードチェーン19が受け取る作物の株元の位置を稈長方向に沿って変更することができる。挟持及び係止搬送装置53,54を上下に揺動操作する電動モータ(図示せず)が備えられており、作物の穂先の位置を検出する位置センサー52が挟持及び係止搬送装置53,54に備えられている。
【0038】
これにより、位置センサー52の検出に基づいて電動モータにより挟持及び係止搬送装置53,54が自動的に上下に揺動操作され、フィードチェーン19が受け取る作物の株元の位置が稈長方向に沿って変更されて、作物の長さに関係なく、フィードチェーン19から脱穀装置5に入る作物の長さが設定値に維持される(作物の扱き深さ制御)。
【0039】
[5]
次に刈取部4において、右及び左の掻き込み装置39,40、挟持及び係止搬送装置53,54等の位置関係について説明する。
図6に示すように、刈取部4において、右及び左のパッカー37,38、右及び左の掻き込み装置39,40が略左右対称に配置されているのに対して、挟持及び係止搬送装置53,54は刈取部4の左側部分(運転部6の反対側)(脱穀装置5側)に偏位して配置されている。図5に示すように、右及び左のパッカー37,38が略同じ高さに配置されているのに対して、左の掻き込み装置40よりも右の掻き込み装置39が高い位置に配置されている。
【0040】
平面視(図6参照)において、右の掻き込み装置39の掻き込み爪39eの前側の通過軌跡と中央のデバイダフレーム27との間の角度A11と、左の掻き込み装置40の掻き込み爪40dの前側の通過軌跡と中央のデバイダフレーム27との間の角度A12とにおいて、角度A11と角度A12とが略同じ値となっており、角度A11,A12が90°に近い値となっている。これにより、右の掻き込み装置39の掻き込み爪39eの前側の通過軌跡、及び左の掻き込み装置40の掻き込み爪40dの前側の通過軌跡が、機体左右方向に沿った状態となっており、横フレーム24に沿った状態となっている。
【0041】
平面視(図6参照)において、右及び左の掻き込み装置39,40の掻き込み爪39e,40dの前側の通過軌跡の間の角度A1(角度A11,A12の和)と、左の掻き込み装置40の掻き込み爪40dの前側の通過軌跡と挟持搬送装置53の搬送チェーン53aの前側の通過軌跡との間の角度B1とにおいて、角度A1が角度B1よりも大きな値となっている。前項[4]に記載のように、挟持及び係止搬送装置53,54の自動的な上下の揺動操作が行われ、作物の扱き深さ制御が行われた場合、角度B1が変化しても、変化する角度B1の最大値よりも角度A1が大きな値になる(変化する角度B1の最大値が角度A1よりも小さな値になる)。
【0042】
図5及び図6に示すように、角度A1(角度A11,A12)が大きく、角度B1が小さなものになることにより、右及び左の掻き込み装置39,40の掻き込み爪39e,40dの前側の通過軌跡から、挟持及び係止搬送装置53,54の終端部までの機体前後方向の長さが短くなり、刈取部4の機体前後方向の長さが短いものとなる。
角度B1が小さなものになると、挟持及び係止搬送装置53,54の始端部が運転部6(サイドパネル15の前部15a)に接近することになる。この場合、サイドパネル15の前部15aが斜めに切り欠かれており、挟持及び係止搬送装置53,54の始端部がサイドパネル15の前部15aの前側に干渉することなく入り込む。
【0043】
右及び左の引き起し装置33,34が正面視(図3及び図4参照)で三角形状である点(右及び左の引き起し装置33,34の下部に比べて、右及び左の引き起し装置33,34の上部の機体左右方向の幅が小さなものである点)、支持フレーム36が機体左右方向の中央側に傾斜するように配置されている点(図5参照)、並びに、挟持及び係止搬送装置53,54の始端部が運転部6(サイドパネル6の前部15a)に接近している点により(図6参照)、左の引き起し装置34の左側(図3及び図4の紙面右側)、並びに、挟持及び係止搬送装置53,54の左側(図3及び図6の紙面右側)に、比較的大きな空間が形成されている。
【0044】
これにより、分草杆57を起立した格納姿勢に操作する際に、分草杆57を前述の空間に十分に入り込むようにして格納姿勢に操作することにより、格納姿勢において分草杆57が刈取部4から左側にあまり出ない状態となる。
分草杆57を格納姿勢に操作した状態においても、左の引き起し装置34の左側(図3及び図4の紙面右側)、並びに、挟持及び係止搬送装置53,54の左側(図3及び図6の紙面右側)に、比較的大きな空間が形成されることになるので、枕扱き作業(機体3及び刈取部4を停止させ、脱穀装置5及びフィードチェーン19を作動させた状態で、既に刈り取った作物を圃場の作業者が手でフィードチェーン19の始端部に供給して、作物の脱穀処理を行う作業)が楽に行える。
【0045】
[6]
次に、刈取部4及び各部の位置関係について説明する。
図3,4,7に示すように、右のデバイダ29の先端部の位置(右のデバイダフレーム25)と、右のクローラ走行装置1の右端部1aとが、正面視(図4参照)で略同じ位置に位置している(又は、右のデバイダ29の先端部の位置(右のデバイダフレーム25)が、右のクローラ走行装置1の右端部1aよりも、正面視(図4参照)で少し機体左右方向の中央側に位置している)。左のデバイダ30の先端部の位置(左のデバイダフレーム26)と、左のクローラ走行装置2の左端部2aとが、正面視(図4参照)で略同じ位置に位置している。
【0046】
図3,4,7に示すように、右及び左のデバイダ29,30の間の略中央位置に中央のデバイダ31が位置しており、右及び中央のデバイダ29,31の先端部(右及び中央のデバイダフレーム25,27)の機体左右方向の間隔L1と、左及び中央のデバイダ30,31の先端部(左及び中央のデバイダフレーム26,27)の機体左右方向の間隔L2とにおいて、間隔L1と間隔L2とが略同じ値となっている。平面視(図6参照)において、右及び左の引き起し装置33,34の引き起し爪33a,34a先端部の真下に、中央のデバイダフレーム27が位置している。
【0047】
図4及び図7に示すように、右及び左のクローラ走行装置1,2の右及び左端部1a,2aの間の略中央位置にミッションケース9が備えられており、右のクローラ走行装置1の右端部1aとミッションケース9との機体左右方向の間隔L3と、左のクローラ走行装置2の左端部2aとミッションケース9との機体左右方向の間隔L4とにおいて、間隔L3と間隔L4とが略同じ値となっている。
【0048】
図4及び図7に示すように、中央のデバイダ31(中央のデバイダフレーム27)の後方(真後ろ)にミッションケース9が備えられている。
これにより、ミッションケース9の左側部分(脱穀装置5側の部分)に支持フレーム22が備えられて、横フレーム24の機体左右方向の中央部から左側にオフセットした位置に支持フレーム22が固定された状態(横フレーム24における左及び中央のデバイダフレーム26,27の間の部分に支持フレーム22が固定された状態)となっており、刈取部4の全体の重心が支持フレーム22に位置している。間隔L1と間隔L3とが略同じ値となっており、間隔L2と間隔L4とが略同じ値となっている。
【0049】
図4に示すように、運転座席13(運転部6)の機体左右方向の中央部と中央のデバイダ31(中央のデバイダフレーム27)(ミッションケース9)との間の機体左右方向の間隔L5と、扱胴17が回転駆動される軸芯P1と中央のデバイダ31(中央のデバイダフレーム27)(ミッションケース9)との間の機体左右方向の間隔L6とにおいて、間隔L5と間隔L6とが略同じ値となっている。
正面視(図4参照)において、運転座席13(運転座席13の座部)と脱穀装置5の入口5aとが略同じ高さに位置しており、平面視(図3参照)において、運転座席13(運転座席13の背もたれ部)の横隣(真横)に脱穀装置5の入口5aが位置している。
【0050】
[7]
次に、刈取部4と圃場の植付条との位置関係について説明する。
図8及び図9に示すように、作物C11,C12,C2が、間隔L7(例えば300mm程度)で植え付けられていたとする。この場合、間隔L1,L2が間隔L7よりも大きく、間隔L7の2倍よりも少し小さな値に設定されている。
【0051】
図8に示すように、中割り作業において、右及び中央のデバイダ29,31の間に未刈りの作物C11の2つの植付条D11が入り込むように、左及び中央のデバイダ30,31の間に未刈りの作物C11の2つの植付条D11が入り込むように、機体3の位置を設定するのであり、前項[4]に記載のように4つの植付条D11の未刈りの作物C11が刈り取られる。
【0052】
図8に示す中割り作業において、右のデバイダ29の先端部及び右のクローラ走行装置1の右端部1aが、刈り取られる未刈りの作物C11の植付条D11と、刈り取られない未刈りの作物C12の植付条D12との間に位置するのであり、右のクローラ走行装置1が刈り取られない未刈りの作物C12を踏むようなことがない(右のクローラ走行装置1の右端部1aが圃場の土を右側に押し出しても、圃場の土が刈り取られない未刈りの作物C12の株元に滞留するようなことが少ない)。
【0053】
図8に示す中割り作業において、左のデバイダ30の先端部及び左のクローラ走行装置2の左端部2aが、刈り取られる未刈りの作物C11の植付条D11と、刈り取られない未刈りの作物C12の植付条D12との間に位置するのであり、左のクローラ走行装置2が刈り取られない未刈りの作物C12を踏むようなことがない(左のクローラ走行装置2の左端部2aが圃場の土を左側に押し出しても、圃場の土が刈り取られない未刈りの作物C12の株元に滞留するようなことが少ない)。
【0054】
図9に示すように、回り刈り作業(圃場の作物の外周部分を刈り取る作業)において、右のデバイダ29の先端部が既刈りの作物C2の植付条D2に位置するように、機体3の位置を設定する。これにより、右及び中央のデバイダ29,31の間に未刈りの作物C11の1つの植付条D11が入り込み、左及び中央のデバイダ30,31の間に未刈りの作物C11の2つの植付条D11が入り込んで、前項[4]に記載のように3つの植付条D11の未刈りの作物C11が刈り取られる。
【0055】
図9に示す回り刈り作業において、左のデバイダ30の先端部及び左のクローラ走行装置2の左端部2aが、刈り取られる未刈りの作物C11の植付条D11と、刈り取られない未刈りの作物C12の植付条D12との間に位置するのであり、左のクローラ走行装置2が刈り取られない未刈りの作物C12を踏むようなことがない(左のクローラ走行装置2の左端部2aが圃場の土を左側に押し出しても、圃場の土が刈り取られない未刈りの作物C12の株元に滞留するようなことが少ない)。
【0056】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]において、右のデバイダ29の先端部の位置(右のデバイダフレーム25)が、右のクローラ走行装置1の右端部1aよりも、正面視(図4参照)で少し機体左右方向の外側に位置するように構成してもよい。左のデバイダ30の先端部の位置(左のデバイダフレーム26)が、左のクローラ走行装置2の左端部2aよりも、正面視(図4参照)で少し機体左右方向の中央側又は外側に位置するように構成してもよい。
【0057】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第2別形態]において、ホッパー7に代えてグレンタンク(図示せず)(穀粒回収部)を備え、グレンタンクに穀粒を貯留するように構成して、グレンタンクの穀粒を排出するアンローダ(図示せず)を備えてもよい。
【0058】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態][発明の実施の第1別形態][発明の実施の第2別形態]において、運転部6、ホッパー7(グレンタンク)及びエンジン11等を機体3の左側部分に備え、脱穀装置5、フィードチェーン19、支持フレーム22、挟持及び係止搬送装置53,54を機体3の右側部分に備えて、自脱型のコンバインを構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】自脱型のコンバインの左側面図
【図2】自脱型のコンバインの右側面図
【図3】自脱型のコンバインの平面図
【図4】自脱型のコンバインの正面図
【図5】刈取部の横フレーム、右及び左のパッカー、右及び左の掻き込み装置の付近の縦断正面図
【図6】刈取部の右及び左のパッカー、右及び左の掻き込み装置、挟持及び係止搬送装置の付近の平面図
【図7】刈取部の右及び左、中央のデバイダ(デバイダフレーム)、支持フレーム、ミッションケース、右及び左のクローラ走行装置の位置関係を示す平面図
【図8】中割り作業において、刈取部の右及び左、中央のデバイダ、右及び左のクローラ走行装置の位置関係を示す平面図
【図9】回り刈り作業において、刈取部の右及び左、中央のデバイダ、右及び左のクローラ走行装置の位置関係を示す平面図
【符号の説明】
【0060】
1 右のクローラ走行装置
1a 右のクローラ走行装置の右端部
2 左のクローラ走行装置
2a 左のクローラ走行装置の左端部
3 機体
4 刈取部
5 脱穀装置
7 穀粒回収部
9 ミッションケース
11 エンジン
13 運転座席
17 扱胴
22 支持フレーム
29 右のデバイダ
30 左のデバイダ
31 中央のデバイダ
33,34 引き起し装置
D11 植付条
L5、L6 間隔
P1 軸芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右及び左のクローラ走行装置で支持された機体に、脱穀装置と穀粒回収部とを備え、機体の前部に刈取部を備えた自脱型のコンバインであって、
右及び左のデバイダと、前記右及び左のデバイダの間の略中央位置に備えられた中央のデバイダと、前記右及び中央のデバイダの間に備えられた引き起し装置と、前記左及び中央のデバイダの間に備えられた引き起し装置とを、前記刈取部に備え、
前記右及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物を刈取可能に、前記左及び中央のデバイダの間に2つの植付条を入り込ませて作物を刈取可能に、前記刈取部を構成して、
前記右のデバイダの位置と右のクローラ走行装置の右端部とが正面視で略同じ位置に位置し、前記左のデバイダの位置と左のクローラ走行装置の左端部とが正面視で略同じ位置に位置するように構成し、
機体前後方向の軸芯周りに回転駆動される扱胴を前記脱穀装置に備えて、前記脱穀装置と運転座席とを機体左右方向に並べて備え、
前記運転座席の機体左右方向の中央部と中央のデバイダとの間の機体左右方向の間隔と、前記扱胴が回転駆動される軸芯と中央のデバイダとの間の機体左右方向の間隔とを、略同じに設定してある自脱型のコンバイン。
【請求項2】
前記右及び左のクローラ走行装置と刈取部とに動力を伝達するミッションケースを、前記右及び左のクローラ走行装置の間の前部で中央のデバイダの後方に備えて、
エンジンを前記ミッションケースに対し運転座席側に備え、前記刈取部を機体に支持する支持フレームをミッションケースに対し脱穀装置側に備えてある請求項1に記載の自脱型のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−115140(P2010−115140A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−290165(P2008−290165)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】