説明

自脱型コンバインの穀稈供給構造

【課題】 機体前部に刈取り部を横移動可能に配備した自脱型コンバインの穀稈供給構造において、穀稈供給台を簡単な構造で所定位置に維持することができるようにする。
【解決手段】 脱穀装置5に備えられたフィードチェーン15の始端部を上方から覆い隠す枕脱穀用の穀稈供給台45を刈取り部3の機体横外側部位に横移動自在に支持するとともに、この穀稈供給台45に係脱自在な係止部材52を脱穀装置5に装備し、係止部材52が穀稈供給台45に係合した状態では、刈取り部3の横移動にかかわらず穀稈供給台45がフィードチェーン15に対して横方向一定位置に保持されるよう構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前部に刈取り部を横移動可能に配備した自脱型コンバインの穀稈供給構造に関する。
【背景技術】
【0002】
刈取り部を横移動可能に機体前部に連結する技術は、機体横幅に対して刈取り部の刈り幅が小さい2条刈り程度の小型の自脱型コンバインに有効に利用されるものであり、通常の刈取り形態である回り刈り時には、未刈り側となる機体横一側方(一般には左側方)に刈取り部を移動させ、圃場の中央を突っ切る中割り作業時や非作業時には刈取り部を逆方向に移動させて機体横幅内に位置させる。
【0003】
つまり、刈取り部を機体横一側方に移動させる回り刈り時においては、刈取り部は走行機体よりも未刈り側に突出して、刈り幅が未刈り側のクローラ走行装置の踏み代より未刈り側に張り出した状態とし、これによって、未刈り側のクローラ走行装置で未刈り穀稈の株元を踏みつけたり、未刈り側のクローラ走行装置の圃場への沈下によって排出された泥が未刈り穀稈の株元近くで盛り上がるのを防止して、次行程で刈取り装置が泥をかみ込むことなく刈取りを行うことができるのである。ここで、刈取り部の刈幅(左右両端のデバイダの間隔)は基準刈取り条数(2条)より1条多い刈取りが可能な寸法に予め設定されており、刈取り部を機体横幅内に移動させて行う中割り作業においては、左右のクローラ走行装置で未刈り穀稈を踏み倒すことなく3条刈りを行うことができるのである。
【0004】
ところで、自脱型コンバインにおける作業の一環として、枕地形成のために手刈りした穀稈を脱穀処理する枕脱穀作業がある。この枕脱穀作業においては、機体を停止するとともに、刈取り部の駆動を休止し、手刈り穀稈を脱穀装置に装備されたフィードチェーンの始端部に手挿し供給することになる。この手挿し供給を容易に行うために、刈取り部に装備した穀稈供給台をフィードチェーンの始端部近くまで延出し、手刈り穀稈を穀稈供給台に一旦仮り置きした後、適量づつフィードチェーンの始端部に供給することができるように構成したものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
前記穀稈供給台は、枕脱穀作業における穀稈の仮り置きに利用するのみならず、通常の刈取り作業中には搬送されてくる刈取り穀稈の株元部を上方から押さえ込んでフィードチェーンの始端部に導くガイド部材としての機能を備えており、刈取り部の横移動にかかわらずフィードチェーンに対しては横方向一定位置に維持されていることが必要となる。
【0006】
そこで、上記特許文献1の従来手段では、刈取り部に備えた横向きロッドに穀稈供給台を横スライド可能に支持するとともに、コイルバネによって横外方にスライド付勢し、かつ、ワイヤによって所定位置から横外方へ移動するのを牽制阻止し、もって、回り刈りのために刈取り部が横外方に移動操作されても、コイルバネを圧縮変形させることで穀稈供給台を所定位置に維持するようにしている。
【特許文献1】特開2004−275031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、穀稈供給台は、刈取り穀稈が搬送されることで塵埃やワラ屑が多く飛散する刈取り部に装備されているものであるために、塵埃やワラ屑がコイルスプリングやワイヤに付着して機能が低下するおそれがあるとともに、穀稈供給台の位置を維持するための必要部品が多く、コスト高になるきらいがあった。
【0008】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、横移動する刈取り部に穀稈供給台を装備する穀稈供給構造において、穀稈供給台を簡単な構造で所定位置に維持することができるようにすることを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、機体前部に刈取り部を横移動可能に配備した自脱型コンバインの穀稈供給構造であって、
脱穀装置に備えられたフィードチェーンの始端部を上方から覆い隠す枕脱穀用の穀稈供給台を前記刈取り部の機体横外側部位に横移動自在に支持するとともに、この穀稈供給台に係脱自在な係止部材を脱穀装置に装備し、係止部材が穀稈供給台に係合した状態では、刈取り部の横移動にかかわらず穀稈供給台がフィードチェーンに対して横方向一定位置に保持されるよう構成してあることを特徴とする。
【0010】
上記構成によると、通常時には、係止部材を穀稈供給台に係合させておくことで、刈取り部の横移動にかかわらず穀稈供給台をフィードチェーンに対して横方向一定位置に保持しておくことができ、また、係止部材を穀稈供給台から外すことで、刈取り部を正規の取り付け位置から移動させて刈取り部内方のメンテナンスを行うことができる。
【0011】
従って、第1の発明によると、穀稈供給台を横移動可能に刈取り部に支持する箇所に、横移動用のコイルバネや移動規制用のワイヤなどを装備する必要がなく、穀稈から発生した塵埃やワラ屑の付着によって機能が損なわれるおそれなく、かつ、部品点数が少なく故障の発生し難い簡素な構造で穀稈供給台の位置保持を行うことが可能となった。
【0012】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記係止部材を前記脱穀装置の前部に上下揺動可能に連結して、下方への揺動によって前記係止部材が穀稈供給台に係合し、上方への揺動によって前記係止部材が穀稈供給台から離れるよう構成してあるものである。
【0013】
上記構成によると、係止部材が自重によって穀稈供給台に係合作用することになり、簡単な構造で所望の係合状態を確実に維持させることができ、第1の発明の上記効果を助長する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、自脱型コンバインが示されている。この自脱型コンバインは、左右一対のクローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に2条刈り仕様の刈取り部3が昇降および横移動自在に連結されるとともに、走行機体2に運転部4、脱穀装置5、および、穀粒回収タンク6、等が搭載された構造となっている。
【0015】
刈取り部3には、植立穀稈を所定の刈取り姿勢に引起す左右一対の引起し装置7、引起した植立穀稈を切断するバリカン型の刈取り装置8、刈取り穀稈を後方に掻き込む左右一対の補助搬送ベルト9、刈取り穀稈の株元を掻き込み合流す左右一対の回転パッカ10、刈取り穀稈を後方上方に向けて搬送する供給搬送装置11、等を備えて構成されており、刈取り部3全体が後部基端の横向き支点Pを中心に上下揺動自在に支持されるとともに、油圧シリンダ12で昇降駆動されるようになっている。
【0016】
前記供給搬送装置11は、株元挟持搬送機構13と穂先係止搬送機構14とから構成されており、供給搬送装置11全体を前記横向き支点Pを中心に上下揺動調節することで、刈取り穀稈に対する挟持位置を上下に変更して、脱穀装置5の横外側に備えられたフィードチェーン15への穀稈受渡し位置を稈長方向に変更調節する扱き深さ調節機能が備えられている。なお、供給搬送装置11は刈取り穀稈の稈長検出に基づいて図示されない駆動機構によって上下揺動駆動され、稈長にかかわらず脱穀装置5に挿入される穀稈長さを一定に維持する自動扱深さ制御が行われるようになっている。
【0017】
刈取り部3には、引起し装置7、刈取り装置8、補助搬送ベルト9、回転パッカ10、等を支持する角パイプ材からなる刈取り部フレーム17が前下がり傾斜姿勢で備えられており、この刈取り部フレーム17の後端基部が、走行機体2の前端部に配備された基台18の上部に前記横向き支点Pを中心として上下揺動可能に連結支持されている。前記油圧シリンダ12は単動型のものが使用されており、その伸長作動によって刈取り部3が駆動上昇され、油圧シリンダ12の自由短縮作動によって刈取り部3が自重下降されるようになっている。
【0018】
図5,6に示すように、前記刈取りフレーム17の基部には前記横向き支点Pと同心の筒状に構成された横向き基端ボス部17aが備えられており、この横向き基端ボス部17aに左右に貫通されたカウンター軸19が、前記基台18の上部に配備された左右一対の軸受けブラケット21,22を介して回転自在に支架されている。なお、以後の説明における左右方向の呼称は機体に対する呼称であり、図5,6の正面図では呼称と図面での左右方向とが逆になる。
【0019】
前記カウンター軸19の右端には入力プーリ23が取り付けられており、ミッションケース24に備えられたPTO軸(図示せず)とカウンター軸19とがベルトテンション式の刈取りクラッチを介してベルト連動されている。また、前記基端ボス部17aからは前方上方に向けて丸パイプ材からなる伝動ケース25が延出され、この伝動ケース25に挿通した伝動軸26とカウンター軸19とがベベルギヤ連動され、カウンター軸19から伝動軸26に伝達された動力で引起し装置7、刈取り装置8、補助搬送ベルト9、回転パッカ10が駆動されるようになっている。
【0020】
図4に示すように、左側の軸受けブラケット21から左外方に貫通突出されたカウンター軸19には、カウンター軸軸心周り、つまり、横向き支点P周りに回動可能にベベルギヤケース27が装備されるとともに、カウンター軸19にベベルギヤ連動された伝動軸28がベべルギヤケース27から斜め上方に延出され、この伝動軸28から取り出された動力で前記供給搬送装置11の株元挟持搬送機構13および穂先係止搬送機構14が駆動されるようになっている。
【0021】
なお、カウンター軸19に刈取り部駆動用動力を伝達する図示されない前記PTO軸は前進走行速度と同調した速度で駆動されるものであり、これによって、刈取り部3の各機構が走行速度と同調した速度で駆動されるようになっている。
【0022】
上記のように構成された刈取り部3は横移動および旋回開放可能に支持されており、以下にそれらの構造を図5〜図8に基づいて詳細に説明する。
【0023】
前記基台18の左側箇所には縦向き軸心Xを中心に旋回可能な鋳造製の旋回ブラケット31が配備され、この旋回ブラケット31の上面に左側の軸受けブラケット21が連結固定されるとともに、旋回ブラケット31から右方向(機体内方)に向けて板金構造の旋回アーム32が延出されている。この旋回アーム32から更に右方向に突出された延長支持部32aに右側の軸受けブラケット22が支持され、この軸受けブラケット22が主フレーム16に立設した右側基台18aの上面にボルト33によって脱着自在に連結されている。
【0024】
前記旋回アーム32には刈取り部横移動機構34が装着されている。この刈取り部横移動機構34には、旋回アーム32に横向き支点a周りに揺動可能に支持された矩形ループ状の揺動支持枠35、この揺動支持枠35の左右アーム間に亘って横架支承されたネジ軸36、ネジ軸36に螺合装着された可動片37、揺動支持枠35に装備されたネジ軸駆動用の電動モータ38、等が備えられており、前記揺動支持枠35の下端横杆部35aに備えた連結片35bと前記油圧シリンダ12のピストンロッド12aとが挿抜可能な連結ピン39で連結されている。なお、図13に示すように、連結ピン39には連結板39aと取っ手39bが備えられており、通常は連結板39aをボルト40によって連結片35bに締付け固定することでピストンロッド12aとの連結状態が維持され、ボルト40を外して連結ピン39を抜き取ることで刈取り部横移動機構34と油圧シリンダ12との連結が解除されるようになっている。
【0025】
刈取りフレーム部17の横向き基端ボス部17aは左右の軸受けブラケット21,22の間においてカウンター軸19に沿って左右にスライド移動可能に支持されるとともに、横向き支点P周りに自重下降揺動可能な刈取り部フレーム17が前記揺動支持枠35の下端横杆部35aに受け止め支持されており、油圧シリンダ12によって揺動支持枠35が横向き支点a周りに揺動されることで、この揺動支持枠35に受け止め支持された刈取り部3が横向き支点P周りに上下揺動されるようになっている。そして、揺動支持枠35による刈取り部フレーム受止め箇所の上方において刈取り部フレーム17が前記可動片37に荷重を掛けることなく上方から係合されており、ネジ軸36が電動モータ38によって回転駆動されて可動片37が左右にネジ送り移動されることによって刈取り部3全体が一定ストロークで横移動されるようになっている。なお、揺動支持枠35には刈取り部フレーム17の上面近接位置を横切る規制ロッド41が横架固定されており、刈取り部フレーム17が揺動支持枠35の下端横杆部35aから浮き上がって可動片37から外れることが阻止されている。
【0026】
横移動可能な刈取り部3は、基本的には左右のストロークエンドのいずれか一方に移動されて使用されるものであり、通常の刈取り形態である回り刈り作業時には、図3に示すように、刈取り部3を左側ストロークエンド(図6参照)まで移動させて、刈取り部3の左端を左側クローラ走行装置1の踏み代より左側に張り出した状態とする。また、圃場の中央を突っ切って刈取り収穫する中割り作業時には、刈取り部3を右側ストロークエンド(図5参照)に移動させて機体横幅内に位置させる。また、圃場外での移動走行、トラック荷台へ搭載しての移動、あるいは、ガレージへの格納、等の非作業時にも刈取り部3を右側ストロークエンドに移動させる。
【0027】
なお、図4に示すように、刈取り部3に装備された供給搬送装置11の前端部は、横向き支点Pを中心とする円弧状に形成されて立設固定された案内杆42に上下スライド可能に係合案内されて、供給搬送装置11が上下揺動して扱き深さ調節作動できるように構成されるとともに、刈取り部3が横移動されると供給搬送装置11が基端の伝動軸28の軸心b周りに相対的に横揺動されるようになっている。つまり、刈取り部3が横移動されると、案内杆42に前端部を係合支持された供給搬送装置11の前端部は常に引起し装置7の後方位置に在るよう追従移動するが、供給搬送装置11の後端部はフィードチェーン15の始端近傍位置に在り、これによって、刈取り部3の横移動位置にかかわらず引起し装置7から供給搬送装置11の始端部への穀稈受け渡し、および、供給搬送装置11の終端部からフィードチェーン15の始端部への穀稈受け渡しがそれぞれ円滑に行われるようになっている。
【0028】
図14,15に示すように、刈取り部3の左外側部には枕脱穀作業に用いる穀稈供給台45が装備されている。図16,17に示すように、穀稈供給台45は、金属板材を比較的大きい左右幅を有する下向きコの字状に屈曲して形成されたものであり、左側の引起し装置7の背部に引起し装置支持フレームを兼ねて立設されたパイプ製の引起し駆動ケース46に支持アーム47を介して上下揺動可能に装着支持されている。この支持アーム47は丸棒材を略L形に屈曲して形成したものであり、その横軸部47aが引起し駆動ケース46に設けたパイプ製のブラケット48に横移動可能かつ横向き支点cを中心に上下揺動可能に挿通支持されている。そして、前記支持アーム47の後端部に穀稈供給台45の後部が横向き支点eを中心に上下揺動可能に枢支連結されるとともに、穀稈供給台45の下方に備えられたガイド杆49がフィードチェーン15の始端部に上方から自重載置されるようになっている。
【0029】
また、脱穀装置5の左側面の上部には、フィードチェーン15に上方から対向して配備される挟持レール50を支持するレール台51が固定配備されるとともに、このレール台51の前端部に、支点f周りに上下揺動可能な係止部材52が装備されている。この係止部材52の遊端部には、穀稈供給台45の前後中間付近に上方から係合する下向きコの字状の係合作用部52aが備えられている。この係合作用部52aは前後方向に比較的長く構成されており、係合作用部52aに係合された穀稈供給台45は前後向き姿勢のままで左右移動が阻止された状態となる。
【0030】
従って、図17に示すように、係止部材52を振り下ろしてその係合作用部52aを穀稈供給台45に係合させておくと、刈取り部3が横移動されても、支持アーム7対してブラケット8が横移動するだけとなり、刈取り部3がいかなる横方向位置にあっても穀稈供給台45はフィードチェーン15に対して一定の横方向位置に保持され、供給搬送装置11によって搬送されてきた穀稈の株元がガイド杆49の下面で案内されてフィードチェーン15の始端部に円滑に乗り上げ供給されることになる。
【0031】
また、走行を停止するとともに刈取り部3の駆動を休止して枕脱穀作業を行う場合には、図14中の仮想線で示すように、係止部材52を振り上げで穀稈供給台45の上面を開放し、手刈り穀稈を停止している供給搬送装置11の上に載せかけるとともにその株元側を穀稈供給台45に仮置きし、仮置きした穀稈から適当量づつ掴み分けたの穀稈を穀稈供給台45の後方に移動させて、供給台後方に露出しているフィードチェーン15に供給するのである。
【0032】
このコンバインにおいては、通常の刈取り収穫作業において刈取り部3を地面高さに応じて追従昇降させて刈高さを一定にするために以下のような構造が備えられている。
【0033】
つまり、図9に示すように、刈取り部3が刈取り作業高さ域まで自重下降されると、前記刈取り部横移動機構34における揺動支持枠35の下端横杆部35aが、走行機体2の前端下部に装着された弾性バランス機構61に弾性的に接当支持されるようになっている。
【0034】
この弾性バランス機構61は、走行機体2を構成する主フレーム16の前端部に初期圧縮を与えられたコイルバネ62を所定の前向き突出姿勢に配備して構成されたものであり、主フレーム16に固定された後方のバネ受けカップ64aと、カップ中心に装着した支持ロッド63に支持された前方のバネ受けカップ64bとの間に前記コイルバネ62を所定姿勢で挟持し、支持ロッド63の前端に装着したナット65を締め込み操作してコイルバネ62の初期圧縮量を調整することができるようになっている。また、前方のバネ受けカップ64bの前面には受け板67が斜め交差して装着されており、この受け板67が揺動支持枠35の下端横杆部35aを接当支持するよう構成されている。
【0035】
このように構成された弾性バランス機構61の初期圧縮荷重は刈取り部3の重量より幾分小さい値となるように上記調節手段を用いて予め調整されており、揺動支持枠35の下端横杆部35aを接当支持することで圧縮変形され、刈取り部3の重量の一部が弾性バランス機構61のバネ力によって相殺され、刈取り部3の前方下部に配備した橇状の接地体68が比較的小さい接地圧で圃場面に接地するようになっている。このように、刈取り部3を自重下降させて軽く接地支持させて刈取り走行を行うことで、圃場に起伏があったり、走行機体2の前後傾斜姿勢が変化しても、刈取り部3が圃場面に接地追従して一定の刈り高さが維持されるのである。なお、前記弾性バランス機構61におけるコイルバネ62の周囲にはゴム製の泥除けカバー69が巻き付け装着されて、弾性バランス機構61への泥などの異物の付着および侵入が防止されている。
【0036】
なお、前記接地体68は平面形状が先細りで断面形状を舟形に形成した板金材で構成されており、図18,19に示すように、刈取り部3の前端に配備された3つのデバイダ71の支持杆72に溶接固定されている。また、接地体68の後部は、前記支持杆72を差込み連結するパイプ製の分草フレーム73の下方にまで延出され、接地体68に働く接地圧が分草フレーム73によっても直接に支持されるようになっている。
【0037】
また、上記のように構成された刈取り部3は、点検整備のために左横外側方に旋回揺動することが可能となっている。つまり、右側の軸受けブラケット22および旋回アーム32の遊端部を基台18aに連結しているボルト33を外すと、旋回アーム32と旋回ブラケット31とが一体に縦向き支点X周りに旋回可能となり、この旋回アーム32に支持されている刈取り部3が刈取り部横移動機構34とともに旋回可能となる。
【0038】
軸受けブラケット21には操作ロッド81が横スライド可能に挿通支持され、この操作ロッド81の右側貫通端部に下降ロック用のブロック部材82が連結されている。また、操作ロッド81の左側端部は延出されて操作ノブ83が取り付けられており、機体横外方から操作ロッド81を押し引き操作できるようになっている。なお、通常は操作ロッド81が機体外方に引き出し操作されて、ブロック部材82は旋回ブラケット31の上面端部より左側に寄ったロック解除位置ur(図5参照)に載置保持されている。
【0039】
刈取り部3を前方に向かう通常の収穫用位置から、図3に示すように、機体の左横外側方に旋回開放するには、先ず、刈取り部3を所定高さ以上に上昇させた状態で左側ストロークエンドまで横移動させる。次に、操作ロッド81を機体内方に押し込み操作してブロック部材82を前記ロック解除位置urから旋回ブラケット31の端部近くの下降ロック位置r(図6参照)に移動させる。次に、刈取り部3を下降(自重下降)させて、刈取り部フレーム17の基部に連結固定した接当金具84と旋回ブラケット31の上面との間にブロック部材82を挟持して、それ以上に刈取り部3が下降されるのを阻止する。このようにブロック部材82を介して下降が阻止された状態では刈取り部3は地上から少し浮き上がった高さで保持されることになる。
【0040】
次に、刈取り部フレーム7と油圧シリンダ9のピストンロッド9aとを連結していた連結ピン29を引き抜いてその連結を解除するとともに、右側の軸受けブラケット22および旋回アーム32の遊端部を基台8に連結していたボルト33を外す。これによって刈取り部3を地面から少し浮かした状態のまま縦軸心X周りに揺動開放することができる。
【0041】
なお、刈取り部3が左側ストロークエンドまで移動されていない状態では、前記接当金具84が旋回ブラケット31から右横方向に外れていて、上記のようにロック部材82を介しての下降ロックを行うことができず、刈取り部3の旋回開放操作ができない状態となっている。
【0042】
また、刈取り部3の旋回開放操作に先立って、図14中の仮想線で示すように、穀稈供給台45を支持アーム47と共に前端の支点c周りに振り上げ揺動して、前倒れ姿勢の起立格納姿勢に切り換えて後方に倒れないようにするとともに、刈取り部3の未刈り側である左外側部に起伏揺動可能に配備した分草杆75を取外しておく。
【0043】
図18,21に示すように、前記分草杆75の前端には後ろ向きの支点ピン76が備えられ、左端デバイダ71の背部に設けられた支持金具77に前方から差し込み支持されている。また、刈取り部3の左側下方箇所に前記支点ピン76を通る前後方向軸心d周りに回動可能かつ摩擦保持可能に基端回動アーム78が配備され、分草杆75の前後中間に一体装備された中間支持アーム75aが前記基端回動アーム78に連結ピン79を介して脱着自在に連結されている。そして、これら支点ピン76および連結ピン79に装着された抜け止めピン80を抜き取ることで、分草杆75全体を前方に抜き外すことができるようになっている。
【0044】
〔他の実施例〕
【0045】
(1)図22に示すように、前記接地体68を、固定された機体内側の接地部材68aと、前端支点g周りに横揺動可能な機体外側の接地部材68bとで構成するとともに、機体外側の接地部材68bをバネ70によって外側に揺動付勢し、機体外側の接地部材68bが障害物Sに接触しても自動的に後退変位するようにして実施するもよい。
【0046】
(2)図23に示すように、前記接地体68を、固定された機体内側の接地部材68aと、前端支点g周りに横揺動可能、かつ、長孔・ボルト91によって調節固定可能な機体外側の接地部材68bとで構成し、地面の硬軟等に応じて接地体68の接地幅を調節できるようにして実施するもよい。
【0047】
(3)前記係止部材52の先端部に前後一対の係止ピン(あるいは前後に長い係止板)を下向きに突設し、この係止ピンあるいは係止板を穀稈供給台45の上面の前後に形成した一対の係止孔(あるいは前後に長いスリット)に挿入係合させることで、刈取り部3の横移動にかかわらず穀稈供給台45を前後向き姿勢のままで横方向一定位置に保持しておくこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】自脱型コンバインの側面図
【図2】自脱型コンバインの平面図
【図3】刈取り部開放作動を示す平面図
【図4】刈取り部における基部を示す側面図
【図5】旋回操作不能位置に横移動された刈取り部の基部を示す正面図
【図6】旋回操作可能位置に横移動された刈取り部の基部を示す正面図
【図7】刈取り部の基部を示す平面図
【図8】刈取り部の横移動構造を示す側面図
【図9】刈取り部の弾性バランス支持構造を示す側面図
【図10】弾性バランス機構の正面図
【図11】弾性バランス機構の横断平面図
【図12】刈取り部横移動機構を示す側面図
【図13】油圧シリンダ連結部の縦断正面図
【図14】脱穀装置の穀稈供給部を示す側面図
【図15】穀稈供給台の平面図
【図16】位置規制が解除された穀稈供給台の縦断正面図
【図17】位置規制された穀稈供給台の縦断正面図
【図18】刈取り部の接地部を示す側面図
【図19】刈取り部の接地部を示す平面図
【図20】接地体の縦断正面図
【図21】分草杆支持構造を示す一部切欠き平面図
【図22】別実施例の接地体を示す横断平面図
【図23】更に別の実施例の接地体を示す横断平面図
【符号の説明】
【0049】
3 刈取り部
5 脱穀装置
15 フィードチェーン
45 穀稈供給台
52 係止部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体前部に刈取り部を横移動可能に配備した自脱型コンバインの穀稈供給構造であって、
脱穀装置に備えられたフィードチェーンの始端部を上方から覆い隠す枕脱穀用の穀稈供給台を前記刈取り部の機体横外側部位に横移動自在に支持するとともに、この穀稈供給台に係脱自在な係止部材を脱穀装置に装備し、係止部材が穀稈供給台に係合した状態では、刈取り部の横移動にかかわらず穀稈供給台がフィードチェーンに対して横方向一定位置に保持されるよう構成してあることを特徴とする自脱型コンバインの穀稈供給構造。
【請求項2】
前記係止部材を前記脱穀装置の前部に上下揺動可能に連結して、下方への揺動によって前記係止部材が穀稈供給台に係合し、上方への揺動によって前記係止部材が穀稈供給台から離れるよう構成してある請求項1記載の自脱型コンバインの穀稈供給構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−211955(P2006−211955A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27990(P2005−27990)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】